以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る接合層の評価方法及び接合層評価装置、本発明のヒータチップについて説明をする。
明細書で記載する実施形態では、半田により電極間に形成した接合層を評価するとして説明をする。しかし、本発明は半田等による接合層に限定するものではない。
例えば、銀ペーストあるいは銅ペーストにより接着した接合層、放電加工による形成した接合層、高周波誘導加熱による接合層、電磁誘導加熱による接合層、圧着により接着した接合層等に対しても適用できることは言うまでもない。接合層105は導電性材料には限定されず、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の有機絶縁物等であってもよい。
本発明は加温、あるいは加熱した電極間等に配置あるいは形成された接合層を、赤外線カメラ等を用いて観測するものである。したがって、電極を有する電子部品、配線基板等に限定されるものではない。
接合層105は接合部105と呼ぶこともある。接合層105は層状に限定されるものではなく、立体的に、あるいは独立して接合部105として形成または構成される場合もある。本発明は、接続部の多種多様な構成あるいは構造にも適用できる。
発明を実施するための形態を説明するための各図面において、同一の機能を有する要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。また、本発明の実施例は、それぞれの実施例の一部または全部をそれぞれ組み合わせることができる。
図2は本発明の接合層評価装置に使用する本発明のヒータチップ109の平面図及び断面図である。図2(a)はヒータチップ109の平面図である。図2(b)は図2(a)のAA’線における断面図であり、図2(c)は図2(a)のBB’線における断面図である。
ベース基板106として、SiC(シリコンカーバイド)が例示される。SiCはシリコン (Si) と炭素 (C) で構成される化合物半導体材料である。SiCの単結晶は高熱伝導度であり、内部温度分布が小さく、また、耐熱温度も高く、ベース基板106として好ましい。その他、ベース基板106として絶縁性があり、熱伝導性の良好なサファイアガラス等のガラス基板、アルミナまたは窒化珪素からなるセラミック基板が例示される。
SiCセラミックスやAlNセラミックスあるいはAlN(窒化アルミニウム)あるいはAlNを充填した基板のような材料は電気を通さないが、熱は良く通す物質のため、本発明のヒータチップ109の基板106として採用できる。
また、ベース基板106として、窒化アルミニウム(Aluminum nitride, AlN)が例示される。AlNはアルミニウムの窒化物あり、無色透明のセラミックスである。アルミナイトライドともいう。AlNは熱伝導率が230W/mKと高い。
ベース基板106として、BeO(ベリリウム酸化物:通称ベリリア)は熱伝導率が270 W/mKと高く、使用できことができる。
AlNは、ホットプレス等でディスク状に加工してセラミック製品にすることがあるが、その基本は粉末である。その粉末の粒径を制御することが求められるが、還元窒化法では0.1μm以下のものから10μm程度のものまで製造できる。シリコン樹脂等にフィラーとして使う場合には、粒径の異なるAlN粒を組み合わせて使うとフィラーの充填率は向上する。
還元窒化法は、アルミナ(Al2O3)とカーボン(C)を混ぜたものを窒化しAlNとする。その後、酸化して、AlN粒の表面を酸化膜で覆う。直接窒化法と比べ、表面酸化膜の厚さは2倍の11Å(オングストローム)程度になる。最後の酸化処理によって、粒表面のイミド基(N-H)やアミド基(N-H2)を除去し、純粋なAlN粒ができる。
本明細書では、説明を容易にするため。ベース基板106は、SiCからなる基板として説明をする。しかし、ベース基板106は、先に例示したように熱伝導性が良好で、絶縁性または半導体性を有する基板であれば、いずれのものであっても採用できることは言うまでもない。また、ベース基板106は複数の材料からなる基板を重ねたものを採用してよい。
ベース基板106の厚みは、0.1mm以上0.8mm以下とする。ただし、ベース基板106の厚みは、薄い方が薄膜ヒータ117からの熱が接合層105に伝達されやすい。しかし、ベース基板106の厚みが薄いと、薄膜ヒータ117が形成されている箇所と形成されていない箇所で、接合層105での温度分布が発生しやすい。ヒータチップ109の大きさは、3mm角以上10mm角以下のサイズが好ましい。
本発明は、ヒータチップ109の薄膜ヒータ117の配線幅、接合層105の形成面積、接合層105厚みを考慮して、熱シミュレーションを実施する。熱シミュレーションによりヒータチップ109の大きさ、厚みを設計している。図2において、一例として、ヒータチップ109のサイズは、幅W1は3mm以上30mm以下、幅W2は3mm以上30mm以下である。
薄膜ヒータ117及び温度プローブ116はNi(ニッケル)-P、またはNiで形成あるいは構成する。
SiC基板106の裏面には、Ni-Pめっきによる薄膜(Ni-P膜111d)が形成され、Ni-P膜111dの表面には金めっき膜112cが形成されている。なお、薄膜111は、Ni-P膜として説明するが、他に、NiあるいはNi-Bで薄膜111を形成してもよい。薄膜111は接合層105と密着良く接合できる材料であれば、いずれの材料物であってもよい。ニッケル(Ni)以外に、例えば、錫、銀、金、銅、鉛、亜鉛、あるいはこれらの合金等が例示される。ただし、適切な抵抗が存在する必要がある。薄膜ヒータ117等は発熱素子として使用するからである。
薄膜111は、接合層105と密着でき、抵抗値が比較的高いNiまたはNi-Pを使用することが好ましい。
以後、本明細書あるいは図面では、説明を容易にするため、特に断りがない場合は、薄膜111は、Ni-P膜111として説明する。
Ni-P膜111dの膜厚は、1μm以上10μm以下の膜厚が好ましい。特に、2μm以上6μm以下の膜厚にすることが好ましい。
金めっき膜112cの膜厚は0.01μm以上とする。金めっき膜112cはNi-P膜111dの表面の酸化あるいは汚染を防止あるいは抑制する機能を有する。なお、金めっき膜112の膜厚は0.5μm以下とすることが好ましい。 SiC基板106の表面には、薄膜ヒータ117、温度プローブ116が形成される。薄膜ヒータ117、温度プローブ116は、Ni-Pめっきによる薄膜(Ni-P膜111d)で形成される。Niの他、白金(Pt)で構成あるいは形成してもよい。その他、亜鉛、錫、鉛、クロム等も使用することができる。金属以外、例えば、炭素(C)等の有機材料で形成することもできる。
図3に図示するように薄膜ヒータ117の膜厚(μm)と薄膜ヒータ117の薄膜ヒータ117のシート抵抗値(Ω/sq)は、略線形の関係にある。
図3に図示するように、薄膜ヒータ117の膜厚が厚くなると、シート抵抗値(Ω/sq)が相対的に小さくなり非線形の関係となる傾向にある(薄膜ヒータ117の膜厚(μm)>10.0(μm))。また、薄膜ヒータ117の膜厚が薄くなると、シート抵抗値(Ω/sq)が相対的に高くなり非線形の関係となる傾向にある(薄膜ヒータ117の膜厚(μm)<0.1(μm))。SiC基板106の粗面化状態、薄膜ヒータ117が曲線状に形成されているためと思われる。
薄膜ヒータ117の膜厚とシート抵抗値(Ω/sq)とが線形の関係になる領域を採用することが好ましい。したがって、薄膜ヒータ117の膜厚は、0.1(μm)以上7.5(μm)以下とすることが好ましく、シート抵抗値(Ω/sq)は0.25(Ω/sq)以上1.00(Ω/sq)とすることが好ましい。なお、薄膜ヒータ117の抵抗値は、5Ω以上300Ω以下とすることが好ましい。
温度プローブ116は薄膜ヒータ117と同一材料、同一プロセス工程で形成される。薄膜ヒータ117がNi-P膜の場合、温度プローブ116もNi-P膜で形成される。薄膜ヒータ117と温度プローブ116を同一材料で形成することにより、低コストが可能になる。温度プローブ116は配線幅を細く形成することにより、温度プローブ116の抵抗値は薄膜ヒータの抵抗値よりも高く設計する。
温度プローブ116には定電流を印加する。温度プローブ116の抵抗値を高くすることにより、抵抗値変化が大きくなり、定電流に対する温度プローブ116端子間の電圧変化が大きくなる。したがって、温度プローブ116が検出する薄膜ヒータ117の温度変化に関する感度が良好になる。温度プローブ116の抵抗値は、20Ω以上、1kΩ以下に作製する。
温度プローブ116の両端には端子電極114a、端子電極114bを形成する。薄膜ヒータ117の両端には端子電極115a、端子電極115bを形成する。
端子電極114の表面等には金めっき膜112を形成する。端子電極115の表面等には金めっき膜112を形成する。金めっき膜112cの膜厚は0.01μm以上とする。
薄膜ヒータ117、温度プローブ116上には、金めっき膜112は形成しない。金めっき膜112を形成すると、薄膜ヒータ117、温度プローブ116の抵抗値が低下し、発熱あるいは温度変化に関する感度が低下するからである。
薄膜ヒータ117、温度プローブ116上には、0.05μm以上5μm以下の厚みからなる、SiO2膜、SiNx膜、SiON膜のうち、少なくとも1種類の膜を形成し、薄膜ヒータ117、温度プローブ116の表面が酸化あるいは汚染されることを抑制する。
117は薄膜ヒータとして説明するが、これに限定するものではない。薄膜ヒータ117は基板106を加熱するために配置または形成したものである。薄膜ヒータ117の代替えとして、ニクロム線を組み込んだ面ヒータ、ペルチェ素子を用いたヒータ等を使用してもよい。ニクロム線を組み込んだ面ヒータ、ペルチェ素子に流す電流によりベース基板106を加熱することができる。
端子電極114及び端子電極115には、リード線121を半田付け、あるいはプローブ(図示せず)を圧接し、電流電源装置803が出力する定電流を端子電極114または端子電極115に印加する。
図19、図20は、本発明のヒータチップ109の製造方法の説明図である。図19はヒータチップの製造方法を示すフローチャートである。図20(a)~図20(f)は、ヒータチップ109の製造方法を説明するための説明図である。
SiC基板106の表面にマスク501を塗布する(図19S11、図20(b))。マスク501としては、アルカリ可溶タイプのアクリルポリマーを含むものが好ましい。
次に、フェムト秒レーザ装置を用いて、SiC基板106の表面を粗化する(図19S12、図20(c))。フェムト秒レーザ光502またはピコ秒レーザ光502を照射し、SiC基板106の表面の、薄膜ヒータ117、温度プローブ116、端子電極114、端子電極115に対応する部分を除去して、角溝状の凹部503を形成する。フェムト秒レーザ光502等の照射により、凹部503の底面及び側面は粗化(粗面化)される。
凹部503は溝状の形状として説明するが、溝状に限定されるものではなく、SiC基板106の表面に傷、あるいは表面のみが粗面化された構成あるいは形状も含む。
フェムト秒レーザ光502による粗面化は、端子電極114、端子電極115に対応する箇所にも実施される。粗面化される箇所に、Ni-P膜111が形成される。
端子電極114、端子電極115部は粗化される面積が大きい。温度プローブ116部は粗化される線幅が細い。温度プローブ116部は粗化を大きくする(粗化により発生する凹凸を深くする)ように、粗化される面積に依存して粗化状態を変化させることが好ましい。
粗化状態は、フェムト秒レーザ光502のレーザ強度、照射するレーザパルスの移動速度を変更あるいは設定することにより容易に実現できる。
SiC基板106に裏面にも、Ni-P膜111dが形成される。したがって、SiC基板106のNi-P膜111dが形成される箇所にも、フェムト秒レーザ光502による粗面化が実施される。
フェムト秒レーザ装置は、一般にパルス幅が、サブピコ秒から数十フェムト秒のフェムト秒レーザ光502を発生する。サブピコ秒から数十フェムト秒の超短パルスのレーザ光502を材料に照射した場合、材料の熱拡散特性時間に比べてパルス幅が十分に短いため、光エネルギーを有効に照射部に投入できる。
その結果、照射周辺部への熱影響を局限することが可能であり、高精度な微細加工が実現できる。また、レーザ光の電場強度が非常に高いので、ビームが集光されたところにのみ、選択的に加工することができる。
フェムト秒レーザ光502のパルスを照射することにより、薄膜ヒータ117、温度プローブ116を形成する部分に対応するマスク501の部分が除去され、凹部503が形成される。
配線のパターニング(薄膜ヒータ117、温度プローブ116等)は、マスク501の表面に形成されたマークに基づいて行ってもよい。SiC基板106上に形成された位置決めマーク124等に基づいて位置決めを行う。
SiC基板106上に形成された位置決めマーク124をカメラで取り込み、位置決めマーク124を画像認識して位置決めマーク124位置と設計座標を比較し、パターニング(薄膜ヒータ117、温度プローブ116等)位置(レーザ光を照射する箇所)に位置決めしてレーザ光502を照射する。
SiC基板106に対し酸性脱脂剤を用い、例えば45℃、5分の条件で脱脂を行う(図19S13)。
塩酸系水溶液を用いてプリディップ処理を行う(図19S14)。保持時間は、一例として、2分である。
次に、Sn-Pd触媒504を凹部503の表面、及びマスク501の残存している部分の表面に付与する(図19S15、図20(d))。Sn-Pd触媒504はコロイド状の粒子であり、Sn-Pdの核部の表面にSn-rich層、及びSn2+層が順に形成されている。
次に、活性化を行う(図19S16)。Sn-Pd触媒504を付与したSiC基板106を塩酸系の溶液に浸漬することでSnの層が除去され、内部のPd触媒が露出する。Pd触媒が露出するので、Sn-Pd触媒504が存在する部分において、無電解Ni-Pめっき液による反応が生じる。
アルカリ溶液を用いて、マスク501を剥離する(図19S17、図20(e))。SiC基板106のマスク501が剥離された部分にはSn-Pd触媒504が存在しない。
SiC基板106の表面に無電解Ni-Pめっきを行い、薄膜ヒータ117、温度プローブ116が形成される(図19S18、図20(f))。無電解Ni-Pめっき液としては、酸性領域から中性領域で次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする還元析出型の無電解Ni-Pめっき液を用いることができる。
キレート剤としては、リンゴ酸、またはクエン酸、またはマロン酸、酒石酸等のオキシカルボン酸、または酢酸やコハク酸等のモノカルボン酸、アンモニアやグリシン等のアミン類を単独もしくは複数併用して用いることができる。無電解Ni-Pめっき液中の還元剤がSiC基板106上で電子を放出するように触媒として機能するPdが付与されている。したがって、無電解Niめっき液中のNiイオンが、還元剤の酸化反応で放出される電子によって還元され、SiC基板106の表面に析出し、薄膜ヒータ117、温度プローブ116が形成される。
本実施形態によれば、難めっき材料からなるSiC基板106に対して、密着性が良好なNi-Pめっきを行うことができる。
本実施の形態においては、マスク501を用い、薄膜ヒータ117、温度プローブ116に対応するSiC基板106の粗化部分のみにSn-Pd触媒504を残存させて、めっきを行うので、薄膜ヒータ117、温度プローブ116のパターニングの精度が良好であり、表面研磨が不要である。
配線パターンに対応する部分以外の部分がマスク501により保護された状態で、配線パターンが容易に形成される。粗化部のみに無電解Ni-Pめっきを行うので、所望の厚みの薄膜ヒータ117等を形成することができる。
ヒータチップ109は1つのSiC基板に複数個がマトリックス状に、かつ同時に作製される。各ヒータチップ109は、Ni-P膜が形成後、各ヒータチップ109の外枠部に、炭酸ガスレーザ光、YAGレーザ光等が照射されて削られ(レーザダイシング)、個片に分割される。また、ダイシング加工(湿式)、スクライブ(乾式)により、ヒータチップ109個片に分割してもよい。
図21は、本発明の実施の形態に係る接合層評価装置の構成についての説明図である。図21(a)は作製されたヒータチップ109を示す。図21(a)のヒータチップ109は図21(b)に図示するように、銅プレート104と接合層105で接合される。
銅プレート104は0.1mm以上2mm以下の銅板である。銅プレート104は、無酸素銅板であることが好ましい。銅プレート104の表面には、Ni-P膜111aが形成される。また、銅プレート104の表面には、Ni-P膜111bが形成される。Ni-P膜111a、Ni-P膜111bの膜厚、形成方法は、Ni-P膜111aと同様であるので説明を省略する。また、Ni-P膜111の表面には金めっきで金を形成することが好ましい。
本発明の実施例では、104は銅プレートとして説明するが、これに限定するものではない。プレート104の表面に半田と接合するNi-P膜111が良好に形成されており、熱伝導性が良好なプレートであれば、銅以外の材質でプレート104を形成してもよい。例えば、セラミックプレート、ステンレスプレート、ニッケルプレート、銀プレートが例示される。本明細書では説明を容易にするため、銅プレート104として説明をする。
Ni-P膜111aの表面には金めっき膜112aが形成され、Ni-P膜111bの表面には金めっき膜112bが形成される。金めっき膜112a、金めっき膜112bの形成方法は、金めっき膜112cと同様であるので説明を省略する。
ヒータチップ109のNi-P膜112cと銅プレート104のNi-P膜112aとの間に評価する接合層105が形成される。一例として、接合層105は半田であり、半田シート(半田クリーム)が銅プレート104上にスクリーン印刷される。半田シート上にヒータチップ109が実装される。実装後、銅プレート104とヒータチップ109は一体として、所定条件に設定されたリフロー炉に投入される。なお、半田シートの代わりに半田ペーストを用いても良い。
接合層105は、半田等による接合層に限定するものではない。例えば、銀ペーストあるいは銅ペーストにより接着した接合層、放電加工による形成した接合層、高周波誘導加熱による接合層、電磁誘導加熱による接合層等に対しても適用できることは言うまでもない。また、有機物を押圧して接着した接合層、絶縁物も接合層であり、赤外線サーモグラフティカメラ108等で温度情報△Tを測定することができる。
赤外線サーモグラフティカメラ108は、接合層105等を2次元的な温度分布を測定できる。2次元的に測定することにより、A点、B点等を中心に温度の変化を測定することができる。しかし、A点、B点等、特定の位置の温度情報△Tを得る目的であれば、放射温度計で測定することにより温度情報△Tを取得できる。
本明細書では、説明を容易にするため、接合層105は半田クリームまたは半田シートをリフロー工程で加熱することにより形成したものとして説明をする。
以降の説明において、赤外線サーモグラフティカメラ108を用いて温度分布等を測定するとして説明するが、これに限定するものではなく、放射温度計等により温度を測定しても良いことは言うまでもない。
リフロー工程で半田付けする場合は、あらかじめ半田クリーム等を指定の場所に印刷しておき、それをリフロー炉で加熱し、半田クリーム等を溶かすことによって部品を接合する。
半田クリームは印刷された状態は一見、正常に半田付けされたように見えるが、半田は細かい粒の状態なので正常な機能を果たせない。これをリフロー炉で加熱することで粒同士だった半田が接合し、フラックスも熱で気化させることで、通常の半田と同じ状態なり、半田付けされる。
リフロー半田で溶けている半田の温度と、リフロー半田の炉の温度も異なる。使用部品の熱耐性を考慮し、適正な工程設計をすることが重要になる。
本発明の接合層評価装置で、接合層の温度情報△Tを測定することにより、接合層を定量的に評価し、また、接合層の詳細な設計ができるようになる。
本発明の接合層の評価方法及び接合層評価装置では、ヒータチップ109で接合層105を加熱し、加熱条件(リフロー炉条件)に対応する変化あるいは加熱状態を異ならせる。また、接合層の材料混合状態(フラックスと半田の混合割合等)、使用材料の差異(フラックスあるいは半田材料の差異等)を異ならせて形成した接合層105を形成する。形成した接合層105を赤外線サーモグラフティカメラ108等で測定し、温度分布状態、温度情報△T等を取得する。温度情報△Tの取得により、接合層の寿命、接合特性を定量的に評価する。
図21(b)に図示するように、ヒータチップ109と銅プレート104は接合層105で接合される。次に、図21(c)に図示するように、A方向から、ヒータチップ109、銅プレート104、接合層105は同時に、薄膜ヒータ117端のCC’線まで研磨加工される。
研削加工とは、一例として、砥石車と呼ばれる円状の大きな工具を高速回転させ、その表面を加工するものに当てることにより、その表面を滑らかな状態に整える。この砥石車の表面には大きめの砥粒が無数につけられており、これによって対象物の表面の微小突起等を削ることができる。
好ましくは、研磨は、CP(Cross section polisher)加工(イオンミリング)で行うことが好ましい。CP加工(イオンミリング)とは、集束していないブロードなアルゴンイオンビームを試料に照射し、試料原子を弾き飛ばすスパッタリング現象を利用して試料を削ることである。試料の表面にアルゴンイオンビームを入射させ、試料を作製する。CP加工では、研磨面に熱が発生せず、接合層105での熱による影響がない。
次に、図21(d)に図示するように、研磨加工した面に感光性ポリイミド膜を形成する。感光性ポリイミド膜は、スピンコート方法、スリットコート方法、スクリーン印刷による方法、インクジェットによる吹付ける方法、スプレーコート方法、ダイコート方法、ドクターナイフコート方法、フレキソ印刷等により、研磨加工した面に形成される。感光性ポリイミド膜を形成する箇所は少なくも接合層105を含む。
図21(d)の矢印に図示するように、露光は、任意のパターンを有するフォトマスクを介して、200~2000mJの照射量、紫外線等を照射することにより行う。
現像液としては、アルカリ現像液、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ等の水溶液を用いることができる。現像は、15℃~60℃程度で0.5分間~10分間程度行われる。硬化のための加熱は、120℃~200℃程度で30分間~120分間程度行われる。
物体はその表面から赤外線を放射しており、物体表面の温度は赤外線の量によって決まる。また、赤外線は空間を伝ってエネルギーを運ぶという特徴がある。この空間を伝ってきた赤外線を、赤外線サーモグラフティカメラ108は光学的に読み取り、物体と接触させることなく温度を測定する。赤外線サーモグラフティカメラ108はオートフォーカスの機能を有する。
測定対象物が放射する実際の熱放射エネルギー量と、同じ温度の完全放射体(黒体)の熱放射エネルギー量の比を放射率と呼ぶ。
完全放射体(黒体)はそこに入射する全てのエネルギーを吸収し、その温度に対応したエネルギーを熱放射する。赤外線サーモグラフティカメラ108では完全放射体(黒体)の放射率を1.0として校正されており、実際の物体測定では放射率を予め設定し、補正する。
研磨加工面の構成材料あるいは構成組成が異なると、熱放射エネルギー量の比である放射率が異なる。しかし、研磨加工面の構成材料あるいは構成組成に、補正をすると補正による差異が発生する可能性がある。また、研磨された金属のように反射率の高い物体は放射率の測定に適さない。
図21(d)に図示するように、本発明は、研磨加工面の接合層105に感光性ポリイミド膜107を形成する。感光性ポリイミド膜107の放射率を測定し、予め設定しておけば、研磨加工面の構成材料あるいは構成組成の影響を受けず、形成した接合層105を赤外線サーモグラフティカメラ108、放射温度計等で測定し、温度分布状態、温度情報△T等を精度よく取得することができる。温度情報△T等の取得により、接合層の寿命、接合特性を定量的に評価できる。
以上の実施例では、研磨加工面に感光性ポリイミド膜107を形成するとしたが、これに限定するものではない。例えば、耐熱性のポリイミドフィルム107を貼り付けてもよい。また、耐熱性のポリイミドフィルム107を接合層105等に密着して配置してもよい。
ポリイミドフィルム107あるいはポリアミドフィルム107として、米国デュポン社のカプトン(登録商標)、宇部興産のユーピレックス(登録商標)、ユニチカのユニアミド(登録商標)が例示される。
赤外線サーモグラフティカメラ108、放射温度計は、赤外線放射を温度測定に利用するため、測温抵抗体や熱電対と比べ応答速度が早い。熱容量の小さい物体、熱伝導率の小さい物体、微小面積の物体の温度測定が可能である。非接触で温度測定を行うことができる。
図21(c)で説明したように、観察面はCC’線で研磨される。研磨により表面に平滑化され、良好な観察ができる。研磨された接合層は、反射率が高い場合があり、この場合は放射率の測定に適さない。
本発明は研磨された観察する面に、感光性ポリイミド膜107、ポリイミドフィルム107、ポリアミドフィルム107等を形成または配置する。ポリイミドフィルム107等を観察面に形成または配置することにより、赤外線放射率が安定し、精度よく赤外線放射率を測定することができる。
なお、感光性ポリイミド膜107は、硬化させず、塗付状態であっても放射率は安定して測定することができる。
次に、図21(e)に図示するように、銅プレート104と加熱冷却プレート101とを取り付ける。取り付けは、一例として、放熱グリス118を使用する。放熱グリス118で、変性シリコンのグリスが例示される。このグリスに、熱伝導率の高い金属あるいは金属酸化物の粒子(フィラー)を混合したものを採用することが好ましい。
粒子として主に用いられるのは銅や銀、アルミニウム等の他に、アルミナや酸化マグネシウム、窒化アルミニウム等も用いられる。これらの単体、もしくは混合物を、それらの粒子直径に見合った分散方法を用いて分散させる。
塗布直後は適度な粘度を維持しても、使用後時間が経過すると劣化し硬化することがある。そのため固形化したグリスに、接合する材質の線膨張係数の差によってクラックが入る場合があり、伝導特性が低下する場合がある。
放熱グリス118との接続は、上下を押さえつけるだけでも良いが、特に高温が想定される場合は、低温リフローを実施し、確実な密着を確保することが好ましい。
図21(e)に図示するように、接合層105及び当該近傍を、ポリイミド、ポリアミドのフィルムまたは膜を介して、赤外線サーモグラフティカメラ108等で観察する。
赤外線サーモグラフティカメラ108はXYZステージ110に搭載される。XYZ(X軸、Y軸、Z軸)ステージ110は、X軸方向(左右方向)の移動と位置決め、Y軸方向(接合層105とカメラ108の距離)の移動と位置決め、Z軸方向(上下方向)の移動と位置決めを行う。XYZステージ110の軸移動は1μmの位置決め精度を有する。また、必要に応じて、θ方向にも回転する。
加熱冷却プレート101をXYZステージ110に搭載あるいは積載し、加熱冷却プレート101をX軸、Y軸、Z軸方向に移動あるいは位置決めしても良いことは言うまでもない。
図1は、本発明の接合層の評価方法及び接合層評価装置の説明図である。加熱冷却プレート101内には、循環水パイプ102が配置されている。
チラー(冷却・加温装置)103と、加熱冷却プレート101、加熱冷却プレート101とチラー103間を循環する循環水パイプ102を有する。加熱冷却プレート101には、評価対象物の接合層105を有するヒータチップ109及び銅プレート104が積載されている。
薄膜ヒータ117には、電流電源装置803bから端子電極115a、端子電極115bを介して、定電流Ib(図7参照)を印加する。温度プローブ116は、電流電源装置803aから端子電極114a、端子電極114bを介して、定電流Ia(図7を参照)を印加する。
薄膜ヒータ117に定電流Iaを流し、接合層105を加熱する。評価結果あるいは評価の途中に、評価サンプルの評価を停止、あるいは制御方法を変更する。
赤外線サーモグラフティカメラ108で観察して取得される温度情報△Tあるいは温度情報△Tの変化で、評価サンプルの特性変化を判定あるいは判定する。あるいは、接合層105の特性、状態を評価する。
本発明の接合層の評価方法において、接合層105の劣化、あるいは特性変化にあわせて、外部条件を変更あるいは設定する。
例えば、接合層105の変化が大きい場合あるいは、接合層105の温度が所定値より高い場合は、ヒータチップ109に流す電流Ibを小さくする。また、循環水パイプ102に流れる冷媒(水等)の温度を下げる。接合層105の変化が小さい場合、あるいは、接合層105の温度が所定値より低い場合は、ヒータチップ109に流す電流Ibを大きくする。また、循環水パイプ102に流れる冷媒(水等)の温度を上げる。
チラー103は水や熱媒体の液温を管理しながら循環させることで、機器等の温度を一定に保つことができるように構成している。主に冷却に用いる場合が多いが、冷やすだけでなく温めることもできる。様々な温度の制御を実施できるように構成している。
なお、本明細書では循環水として説明するが、水に限定されるものではない。エチレングリコール、グリセリン等でも良いし、強制空冷であってもよい。チラー103は循環水パイプ102内の液体を、例えば、水温マイナス1℃からプラス100℃までの範囲で制御して試験ユニットの加熱冷却プレート101に供給する。加熱冷却プレート101は十分に大きな熱容量を持っている。
本実施例では加熱冷却プレート101を使用したが、加熱プレートと冷却プレートを別体とし、加熱冷却プレート以外の熱源・冷熱源を用いて加熱・冷却するものであってもよい。
本発明の接合層の評価方法、接合層評価装置では、接合層105及び当該近傍の温度分布状態を測定、あるいは取得することにより、接合層105を定量的に評価する。
接合層105等は、接合層105内のボイドの状態、半田の金属材料の合金割合、フラックスの含有、半田の金属材料の種類、半田金属材料への不純物の溶融割合で特性等が異なる。これらは、リフロー条件(温度、時間、温度変化速度)等によっても変化あるいは異なる。
通常のボイドは主にガス化したフラックスがフィレット内にとどまって発生する。リードが細い、または小さい場合には、半田量が十分であれば融点以上を長くすることでかなり解消することができる。これは、フラックス効果で溶融半田の表面張力が抑えられ、熱対流することによってガスがフィレット内部から放出され、解消される。同時に、基板や部品リード表面からのガスも放出される。
パッケージあるいは実装部品形態であるBGA、CSPでは部品の下に半田が印刷されるため、発生したガスは部品下部にとどまりやすくなる。しかし、ボール分だけ部品と基板に隙間があるので、半田の流動性が保持される限りにおいて、ガスはボール内から外へ放出される。
逆に、リードレス部品やパワー系部品では部品と基板ランド間に隙間がない。そのため、発生ガスやフラックス残渣はそのまま部品下にとどまり、大きなボイドを形成する。
ボイドは実装時に発生したガスが、半田の流動性不足や溶融時間の短さ等の理由で外部に排出されなかった際に発生する。
電子部品、基板、半田ペーストが吸湿し、リフロー時に水蒸気として発生する。半田印刷時に発生した粒子間の隙間がリフロー後、ボイドとなる。プリント配線板や電子部品に凹部があり、その上に実装すると凹部と部品間に隙間ができ、半田が流れ込むことなくボイドとなる。クラックの経路にボイドがあるとクラックの進行が加速する。ボイドの占有率と疲労寿命の関係が示されている。
本発明の接合層の評価方法、接合層評価装置は、温度分布状態、温度情報△T等を取得することにより、接合層105及び当該接合層105近傍の状態を定量的に評価でき有効である。
熱疲労試験により接合層105に劣化が発生している部分とその周囲には、温度情報△Tが大きい。温度情報△Tはヒータチップ109による過熱(加熱)状態及び過熱(加熱)時間に対応して変化する。時間経過後の温度分布を測定することにより、接合部105の寿命予測ができる。
本発明の接合層の評価方法、接合層評価装置は用いると、クラックの発生が加熱の初期段階で確認できる。また、発明の接合層の評価方法、接合層評価装置を用いることにより、ボイドの分布状態、フラックスの分布状態、接合層105の金属あるいは組成材質、合金状態等による温度情報△T、温度分布データを取得あるいは測定することができる。
取得あるいは測定した温度情報△T、温度分布データにより、接合層105の状態を定量的に評価できる。また、接合層105の特性、寿命予測、故障率を定量的に評価、判定することができる。
本発明の接合層の評価方法、接合層評価装置は用いると、接合層105の劣化に関して、劣化が進行しているか、進展速度を算出して、残存寿命を非破壊で容易に把握、あるいは算出することができる。
接合層(接合層)105の劣化診断を行うためには、まず、温度分布の測定データから温度差分を抽出し、また、必要に応じて時間経過の温度差分を抽出する。
その後、抽出されたデータを解析することにより、接合層105の特性評価、接合層105の劣化あるいは変化を検出することができる。また、このデータの解析により、接合層の寿命を評価あるいは予測することも可能である。
赤外線サーモグラフィカメラの場合、温度分布の測定データを画像表示して、得られたデータ画像から時間経過の温度差分を抽出し、クラック、剥離等の発生している箇所を特定することができる。クラックの長さや大きさを計測することにより、温度分布の測定データの解析を行うことができる。また、接合層105の特性評価、接合層105の劣化あるいは変化を検出することができる。
図7は、本発明の接合層の評価方法及び接合層評価装置の動作の説明図である。制御回路804には、放射温度計、あるいは赤外線サーモグラフティカメラ108からの温度情報△Tが入力され、温度情報△Tに基づいてチラー103を制御する。あるいは、温度情報△Tを所定値にするように、チラー103を制御する。
制御回路804は、XYZステージ110を制御し、赤外線サーモグラフティカメラ108を移動し、接合層105に所定位置に位置決めする。また、所定間隔で接合層105位置を変化させ、温度情報△Tを取得する。
制御回路804は、電流電源装置803aの定電流回路802a、スイッチ回路801aを制御し、温度プローブ116に定電流Iaを印加する。定電流Iaは端子電極114aと端子電極114b間に印加される。
制御回路804は、電流電源装置803bの定電流回路802b、スイッチ回路801bを制御し、薄膜ヒータ117に定電流Ibを印加する。定電流Iaは端子電極115aと端子電極115b間に印加される。
薄膜ヒータ117は、定電流Ibにより発熱し、発熱した熱は、SiC基板106を伝熱し、接合層105を加熱する。薄膜ヒータ117の発熱温度は、温度プローブ116の抵抗値を増加させる。
温度プローブ116の周囲に薄膜ヒータ117が形成または配置されている。薄膜ヒータ117の温度と、温度プローブ116の抵抗値は線形の関係となるように、ヒータチップ109が構成されている。
温度プローブ116には、定電流Iaが供給されている。温度プローブ116の抵抗値が高くなると、温度プローブ116の端子電極114aと端子電極114b間の電圧も温度に比例して変化する。電圧計122aで、温度プローブ116の端子電極114aと端子電極114b間の電圧を測定することにより、薄膜ヒータ117の発熱温度(SiC基板106の温度)を取得できる。
本明細書では循環水パイプ102に流れる冷媒は循環水として説明するが、水に限定されるものではない。エチレングリコール、グリセリン、フロン等でもよいし、強制空冷であってもよい。
チラー103は循環水パイプ102内の液体を、例えば、水温マイナス1℃からプラス100℃までの範囲で制御して、試験ユニットの加熱冷却プレート101に供給する。加熱冷却プレート101は十分に大きな熱容量を持っている。
本発明の実施形態では加熱冷却プレート101を使用したが、加熱プレートと冷却プレートを別体とし、加熱冷却プレート以外の熱源・冷熱源を用いて加熱・冷却するものであってもよい。
電流電源装置803は、薄膜ヒータ117または温度プローブ116に供給する定電流Iaまたは定電流Ibを出力する。電流電源装置803は、制御回路804からの制御信号に同期させて、薄膜ヒータ117または温度プローブ116に電力(電流、電圧)を供給する。また、電流電源装置803は、出力する最大電圧値を設定することができる。
スイッチ回路801は、電流電源装置803が出力する定電流の供給をオン(供給)オフ(遮断)させる。スイッチ回路801は制御回路804からの信号に基づき、オン(定電流を出力)またはオフ(定電流を遮断)に設定または制御される。通常、スイッチ回路801は試験開始前にオンされ、接合層105の試験中はオン状態に維持される。
図7において、電流電源装置803a、電流電源装置803bは、各1台の電流電源装置を図示している。電流電源装置803は各1台に限定されるものではない。例えば、2台以上の電流電源装置803a、2台以上の電流電源装置803bを保有させてもよい。電流電源装置803a、電流電源装置803bの台数が増加するほど、多種多様な電流Ia、電流Ibの波形、あるいは電圧波形を発生させることができる。
本発明の実施例において、電流電源装置803として説明するが、電流電源装置803は定電流を出力するものに限定されるものではない。
例えば、電流電源装置803に最大電圧を設定できるものを使用する。一定の条件で、設定された最大電圧において、所定の定電流を出力できるように機能させることが例示される。また、定電流を出力する場合に、出力端子電圧を所定の最大電圧を設定できるように構成することが例示される。
本発明において、電流電源装置803は、定電流のみ出力する装置ではなく、電圧、電流を出力あるいは設定できる電源装置であってもよいことは言うまでもない。
図7の実施例において、電流電源装置803で定電流を発生させるとして説明するが、定電流は、薄膜ヒータ117の抵抗の状態に応じて、印加電圧を調整することによっても実現できる。したがって、本発明において、電流を出力する電流電源装置803に限定するものではなく、電圧出力の電源装置で構成してもよいことはいうまでもない。また、電流+電圧出力の電源装置で構成してもよいことはいうまでもない。
電流電源装置803bは、定電流Ibを薄膜ヒータ117に供給する。薄膜ヒータ117は印加される定電流Ibに対応して発熱する。発熱した熱は、SiC基板106を伝熱し、接合層105を加熱する。SiC基板106は熱伝導性が高い。一方、銅プレート104は加熱冷却プレート101により一定温度に保持される。
接合層105の上側は、SiC基板106側からの薄膜ヒータ117の熱により加熱され、接合層105の下側は、銅プレート104により、一定温度に維持される。したがって、接合層105は上側から下側に温度情報△Tが発生する。放射温度計、赤外線サーモグラフティカメラ108等は、主として接合層105上側の温度と接合層105下側の温度を測定する。当該温度差を温度情報△Tとして取得する。
薄膜ヒータ117に定電流Ibが印加され、薄膜ヒータ117が発熱する。温度プローブ116には定電流Iaが印加される。定電流Iaは比較的小さい電流であり、当該定電流Iaで温度プローブ116が発熱することはほとんどないか、発熱は発生しない。薄膜ヒータ117に定電流Ibが印加され、薄膜ヒータ117が発熱する薄膜ヒータ117の発熱により温度プローブ116が加熱される。温度プローブ116は加熱される温度プローブ116の端子間電圧と温度の関係は予め取得しておく。
温度プローブ116が加熱されると、温度プローブ116の端子間電圧(電圧計122aで測定)が変化する。制御回路804は端子間電圧を取得し、SiC基板106が所定の温度となるように、薄膜ヒータ117に流す定電流Ibを調整する。定電流Ibは、0.2A以上2A以下である。定電流Ibの設定刻みは、1mA以下とすることが好ましい。
以上の実施例では、定電流Ibの調整は、温度プローブ116の端子間電圧を測定して、薄膜ヒータ117に流す定電流Ibを調整するとした。
定電流Ibの設定及び調整は、放射温度計、赤外線サーモグラフティカメラ108等でSiC基板106の温度あるいは接合部105の温度を測定することによっても実施できる。赤外線サーモグラフティカメラ108で温度情報△Tを測定し、温度情報△Tが所定値あるいは所定の範囲内か否かで、薄膜ヒータ117に流す定電流Ibを調整する。
赤外線サーモグラフティカメラ108等による温度情報△Tと、温度プローブ116の端子間電圧(電圧計122aで測定)の両方を加味して、薄膜ヒータ117に流す定電流Ibを調整しても良いことは言うまでもない。
スイッチ回路801bをオンオフして、薄膜ヒータ117に流す定電流Ibをオンオフし、薄膜ヒータ117の発熱を調整あるいは設定してもよい。
本発明のヒータチップ109は図2の構成だけではなく、多種多様な構成が例示される。例えば、図4、図5、図6、図12、図15、図16等の構成あるいは構造が例示される。ヒータチップ109の基板106は、SiC、AlN等で構成されている。
図4の基板106の表面には薄膜ヒータ117が渦巻き状あるいは同心状に形成または配置されている。同様に温度プローブ116も渦巻き状または同心状に形成または配置されている。
薄膜ヒータ117を、渦巻き状あるいは同心状に構成あるいは形成することにより、SiC基板106等を均一に加熱することができる。薄膜ヒータ117には端子電極115a及び端子電極115bに定電流Ibを印加する。
薄膜ヒータ117には端子電極115a及び端子電極115bに定電流Ibを印加する。温度プローブ116には端子電極114a及び端子電極114bに定電流Iaを印加する。
なお、薄膜ヒータ117は、ジグザグ状に形成する構成、四角形状に形成する構成、放射状に形成する構成も例示される。また、ヒータチップ109に複数の薄膜ヒータ117を形成または配置してもよいことは言うまでもない。以上の事項は、温度プローブ116に関しても同様である。
一例として、図7は、1つの銅プレート104に、1つのSiC基板106と接合層105が配置された実施例を図示している。しかし、本発明はこれに限定するものではない。
図8は、加熱冷却プレート101に1つの銅プレート104が配置され、1つの銅プレート104に複数の接合層105が形成された実施例である。各接合層105はそれぞれヒータチップ109に挟持されている。
接合層105aはヒータチップ109aと銅プレート104間に挟持されている。接合層105bはヒータチップ109bと銅プレート104間に挟持されている。接合層105cはヒータチップ109cと銅プレート104間に挟持されている。接合層105dはヒータチップ109dと銅プレート104間に挟持されている。接合層105eはヒータチップ109eと銅プレート104間に挟持されている。
それぞれの接合層105のA点及びB点の温度は、赤外線サーモグラフティカメラ108等で測定される。XYZステージ110に赤外線サーモグラフティカメラ108が配置され、XYZステージ110上を赤外線サーモグラフティカメラ108が移動し、各接合層105のA点、B点位置の温度情報△Tを取得する。
各接合層105(接合層105a~接合層105e)は、接合層105を構成する材料あるいは組成を異ならせることにより、多様な接合層105の情報(特性、寿命等)を同時に得ることができる。
また、各接合層105(接合層105a~接合層105e)のヒータチップ109の温度を異ならせることにより、接合層105を加温する温度に対して、多様な接合層105の情報(特性、寿命等)を同時に得ることができる。
なお、赤外線サーモグラフティカメラ108で接合層105の温度を測定するとしてが、温度に限定するものではない。温度に相関あるいは比例する値もしくは情報であればいずれのデータであっても良いことは言うまでもない。
なお、図8の本発明は、図17、図18で説明する事項あるいは内容を適用することにより、より効果を発揮できる。
図9は、本発明の接合層の評価方法及び接合層評価装置の説明図である。Ni-P膜111dと接合層105間には金めっき膜112cが形成され、Ni-P膜111aと接合層105間には金めっき膜112aが形成される。接合層105の形成により、金が接合層105に拡散するため、金の層は消滅するため、図示していない。
薄膜ヒータ117に定電流Ibが印加されることにより、薄膜ヒータ117が発熱し、発生した熱はSiC基板106に伝熱される。発熱した熱により接合層105に拡散部901が発生する。拡散部901では、熱により接合層105を構成する材料、組成が移動し、あるいは特性が変化する。また、クラック発生、ボイドの拡大、フラックス等の流出等が発生する。これらの変化あるいは発生により、接合層105の温度状態、温度情報△Tが変化する。
接合層105の構造あるいは材料により、初期状態(薄膜ヒータ117で加熱し、接合層105が所定の温度になった状態)として特有の温度情報△T、あるいは温度情報△Tの差異が発生する。当該初期状態の温度情報△Tで接合層105を定量的に評価あるいは接合層105の特性を把握することができる。
以上のように、本発明は、初期状態の温度情報△Tで接合層105を定量的に評価あるいは接合層105の特性を把握することができる。また、接合層105を加熱、あるいは加温することにより接合層105が変化する。温度情報△Tの取得により、変化状態を定量的に測定でき、寿命あるいは特性劣化状態あるいは経時変化を定量的に把握することができる。
接合層105は、上側が薄膜ヒータ117により加熱される。銅プレート104は加熱冷却プレート101により所定温度に維持されている。したがって、接合層105は上側から下側に温度分布が発生する、また、接合層105は上側から下側に温度情報△Tが変化する。
接合層105が均一に形成されていると熱移動は容易になり、また、熱分布は均一となり、温度情報△Tも均一となる。接合層105にクラックあるいはボイドが発生していると、クラックあるいはボイド部分で熱移動が小さくなる。したがって、熱分布は不均一となり、温度情報△Tも接合層105の各部分で異なる。
図10に図示するように、薄膜ヒータ117が発熱することにより、接合層105に点線で示すような温度分布が発生する。温度分布は接合層105の組成、構造、材料を示す。
図10に図示するように、接合層105のA点、B点での温度を赤外線サーモグラフティカメラ108で測定をする。A点、B点の温度(温度情報△T)から温度情報△Tを求める。温度情報△Tで接合層105の状態を定量的に把握することができる。
接合層105において、赤外線サーモグラフティカメラ108で複数個所の温度情報△Tを取得し、接合層105の複数点間で温度情報△Tを求めることにより、接合層105を定量的に評価することができる。また、接合層105を加熱または過熱し、所定の時間の経過後と初期状態での温度情報△Tを比較することにより、接合層105の寿命あるいは劣化を定量的に測定することができる。
図10では、放射温度計、赤外線サーモグラフティカメラ108で、A点及びB点の温度情報△Tを測定するとした。詳細に接合層105の特性、構造、寿命等を測定あるいは把握するには、図11に図示するように、3点以上の箇所で温度情報△Tを取得する。
図11では、9点の測定点を等間隔(d/2)で測定している。dは略接合層105の膜厚とする。図11に図示するように、接合層105をマトリックス状に温度情報△Tを取得する。取得した各点の温度情報△Tから各点間の温度情報△Tを求める。
温度情報△Tは、故障率と相関がある。図14は温度情報△Tと故障率との関係を模式的に図示した説明図である。
温度情報△Tが小さい場合、接合層105が均一、ボイドあるいはクラック等が発生してないか、または少ない。温度情報△Tが大きい場合、温度情報△Tが不均一な場合等は、接合層105に不均一材料混合、ボイド、クラック等が発生している場合が多い。
図14に図示するように、温度情報△Tが△T1以下の場合は、故障率がF1までと一定以下である。しかし、温度情報△Tが△T1以上の場合、△T1を超えると急激に故障率が大きくなる。
接合部105は、所定の故障率F2以下に収める必要があるとすると、温度情報△Tは△T2以下となるようにする必要がある。
各接合層105を作製し、赤外線サーモグラフティカメラ108で温度情報△Tを取得することにより、接合層105を定量的に評価でき、故障率を把握できる。また、薄膜ヒータ117で接合層105を過熱することにより、接合層105の寿命、劣化を定量的に測定あるいは把握することができ、故障率を予測することができる。
図14のグラフを、作製した接合部105の試料の温度情報△Tと当該故障率を測定、あるいは取得して作成する。グラフを作成することにより、新たに作製した接合部105を赤外線サーモグラフティカメラ108等で温度情報△Tを取得することにより、故障率が定量的に予測することができる。
図12は、薄膜ヒータ117で接合層105を加熱した状態を熱シミュレーションした状態を図示したものである。薄膜ヒータ117により、接合層105には、温度分布が発生する。
熱シミュレーションは、Ni-P膜111の膜厚・配置位置、薄膜ヒータ117の膜厚・配置位置、ヒータチップ109の形状・配置位置、ヒータチップ109に印加電流、温度プローブ116の形状・配置位置、接合層105の材料あるいは組成と膜厚等の情報のうち、少なくとも1つ以上の情報を設定することにより、実現することができる。
赤外線サーモグラフティカメラ108で取得するA点、C点、B点の温度情報△Tも熱シミュレーションで求めることができる。熱シミュレーションした値と赤外線サーモグラフティカメラ108で測定した値との相関をとることができる。
図7に図示するように、赤外線サーモグラフティカメラ108は接合層105の端面の温度情報△Tを取得する。取得した温度情報△Tを用いて、薄膜ヒータ117に印加する定電流Ibを可変あるいは設定する。
赤外線サーモグラフティカメラ108の測定と、変化させる定電流Ibとは同期を取ることが好ましい。定電流Ibを変化させたタイミングに同期して、赤外線サーモグラフティカメラ108の測定を実施する。また、変化させる定電流Ibと温度プローブ116の端子電圧の測定も同期させることが好ましい。
薄膜ヒータ117に印加する定電流Ibの設定は、図7、図13に図示するように、端面からt距離離れた位置(深さ方向)である接合層105の中央部D点での温度情報△Tを取得し、中央部D点の温度情報△Tを用いて定電流Ibを設定できることが好ましい。
中央部D点での温度情報△Tは直接測定することはできない。本発明は図12に図示するように、熱シミュレーションを実施し、図13に図示するように端面b1からt距離離れたD点の下層での熱シミュレーションによるA点、B点、C点の温度情報△Tを求める。
熱シミュレーションを実施することにより、例えば、図13(b1)がb1線での熱シミュレーションによる温度分布状態、図13(b2)がb2線での熱シミュレーションによる温度分布状態、図13(b3)がb3線での熱シミュレーションによる温度分布状態として求まる。また、b1線での温度分布情報に赤外線サーモグラフィカメラによる温度情報△Tを使用して、熱シミュレーションによりb2線及びb3線の温度分布状態を求めてもよい。この場合、実測値に基づいた熱シミュレーションになるため、より正確にb1線及びb3線の温度分布状態を求めることができる。
本発明は、熱シミュレーションにより接合層105の中央部または任意の箇所の温度情報△Tを求め、求めた温度情報△Tに基づき薄膜ヒータ117の定電流Ibを制御する。したがって、温度制御を精度よく実施することができる。
薄膜ヒータ117、温度プローブ116はベース基板106の上面に形成するとしたが、これに限定するものではない。例えば、ベース基板106が接合層105に接する面に形成してもよい。例えば、Ni-P膜111dとベース基板106間に、薄膜ヒータ117と温度プローブ116のうち少なくとも一方を形成してもよい。この構成の場合は、ベース基板106の下面に、薄膜ヒータ117等を形成し、薄膜ヒータ117等上にSiO2等の絶縁膜を形成し、その上に、Ni-P膜111dを形成する。
銅プレート104にはNi-P膜111a、ベース基板106にはNi-P膜111dを形成するとした。Ni-P膜111は接合層105の電極または金属層(金属膜)として想定される。Ni-P膜111は接合層105と密着性を良好なものとするために形成する。
接合層105に種類に応じて、適時、適切な材料を選定すればよいことは言うまでもない。例えば、接合層105が半田の場合は、ニッケル(Ni)、錫、鉛等が例示される。接合層105がエポキシ樹脂等の有機物の場合は、エポキシ樹脂用プライマーが例示される。この場合は、エポキシ樹脂用プライマー111は電極ではなく、接触層(接触層)として機能する。
本明細書及び図面等において、ベース基板106は基板として説明するがこれに限定するものではない。ベース基板106は、フィルムとしてベースフィルム106であってもよい。少なくとも、部材に薄膜ヒータ117等の発熱材と、接合のための仲介層111dを有するものであればいずれの構成であってもよい。
本明細書及び図面等において、銅プレート104として説明するが、銅プレート104はプレートに限定されるものではない。プレートはフィルムあるいはシートであってもよい。また、厚みのある個体部材であってもよいことは言うまでもない。銅プレート104は、一方の面に接合のための仲介層111aを有するものであればいずれの構成であってもよい。
薄膜ヒータ117及び温度プローブ116は薄膜に限定されるものではない。線材等で構成され、一定の厚みを有する構成物であってもよいことは言うまでもない。薄膜ヒータ117は面状発熱体ヒータ、セラミックヒータ、フィルムヒータ、面状発光体カーボン、ペルチェ素子からなるヒータ等が例示される。なお、ヒータとは加熱手段であればいずれのものであってもよい。温度プローブ116は、熱電対、放射温度計等であっても良いことは言うまでもない。
本明細書等において、銅プレート104の裏面に加熱冷却プレート101を配置し、銅プレート104を所定温度に維持するとしたが、これに限定するものではない。例えば、加熱冷却プレート101の表面にNi-P膜111aを直接形成し、当該Ni-P膜111aとSiC基板106のNi-P膜111d間に接合層105を配置してもよい。
銅プレート104の機能として、1つは接合層105の片面を、均一な所定温度にするために採用する。したがって、銅プレート104は金属に限定されるものではない。例えば、AlN、SiC、セラミック等伝熱性が高いプレート、あるいはシートを採用することができる。プレート104は、少なくとも接合層105との接触面積以上の面積があり、当該面積部において均質な熱伝導率を有する部材である。
ポリイミドシート107はシートに限定されるものではない。板状の樹脂部材を粘着材等で接合層105に貼り付けても良い。また、アクリル系、エポキシ系等の樹脂を塗布してもよい。また、ポリイミドに限定されるものでななく、前駆体のポリアミド等を採用してもよい。
温度を測定あるいは取得する手段として、赤外線サーモグラフティカメラ108を例示した。しかし、接合層105及び当該近傍の温度を、非接触で測定できるものであればいずれのものでも採用できる。例えば、放射温度計が例示される。
図5は、本発明の他の実施例におけるヒータチップ109の平面図(図5(a)、図5(b))、及び断面図(図5(c))である。なお、図5(c)は図5(a)または図5(b)のAA’線での断面図である。なお、図5、図6において、温度プローブ116等は図示することを省略している。
図2等との差異は、主として薄膜ヒータ117部の厚みを端子電極115部よりも薄くし、薄膜ヒータ117の抵抗値を高くした点である。薄膜ヒータ117は、無電解Ni-Pで形成されている。薄膜ヒータ117のa部(端子電極115下)の無電解Ni-Pは厚く、薄膜ヒータ117のb部(主として発熱に寄与する部分)の無電解Ni-Pは薄く形成されている。少なくともa部よりb部の無電解Ni-P膜は薄くなるように形成されている。b部の膜厚を薄く形成することにより抵抗値が高くなる。したがって、薄膜ヒータ117に定電流を印加した際に、b部の抵抗値が高いことからb部の発熱を大きくすることができる。
なお、図5(b)において、幅L1部と幅L2部の膜厚を異ならしてもよい。幅L2部よりも幅L2部の膜厚を薄くすることにより、幅L2の発熱が大きくなる。
温度プローブ116、薄膜ヒータ117は、表面にレーザ光を照射する、あるいは表面を研磨して、抵抗値を高くしても良い。 本明細書、図面に記載して説明載する事項は、他の図面、明細書との差異を中心に説明する。したがって、図5、図6等で説明あるいは記載する事項は、本明細書、図面の記載あるいは内容を流用、あるいは、全部または一部を組み合わせることができることは言うまでもない。
なお、以上の事項は本発明の明細書、図面に関して同様である。本発明の明細書及び図面に記載した事項は、相互に流用、組み合わせ、入れ替えをすることができる。
図5(a)に図示するヒータチップ109は、薄膜ヒータ117が幅L1で形成されるとともに、厚みbで形成されている。また、厚みaに対応する無電解Ni-Pは端子部であり、表面に端子電極(金めっき膜)115が形成されている。
図5(b)に図示するヒータチップ109は、薄膜ヒータ117が幅L1の部分と幅L2の部分で形成されている。薄膜ヒータ117の幅L2は、幅L1よりも狭く形成されている。幅L2部を幅L1部よりも幅を狭くしていることより、幅L2部の抵抗値が高くなり、幅L2部に集中して発熱させることができる。
薄膜ヒータ117は、厚みbで形成されている。また、厚みaに対応する無電解Ni-Pは端子部であり、表面に端子電極(金めっき膜)115が形成されている。
図5(b)の構成では、端子電極115aと端子電極115b間に定電流を印加した場合、幅L2部分で抵抗値が高いため、幅L2部分での発熱が大きくなる。したがって、ヒータチップ109の薄膜ヒータ117の幅L2部での発熱が大きく、幅L2部の下のサンプルの接合層105への加温あるいは加熱もしくは過熱状態が良好となる。
図5の実施例では、端子電極115a、端子電極115b間の薄膜ヒータ117は1本であった。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
図5の実施例では、薄膜ヒータ117の太さは、2段階であったが、図6(b)に図示するように3段階以上であってもよい。
また、図5、図6の実施例は、主として薄膜ヒータ117に関して説明しているが、これに限定するものではなく、例えば、温度プローブ116についても同様に適用することができることは言うまでもない。
図5では、薄膜ヒータ117は、1本であるが、図6(a)、図6(b)に図示するように、端子電極115a、端子電極115b間に形成または配置する薄膜ヒータ117は複数本にしてもよい。
また、図6(b)では、薄膜ヒータ117の幅は2段階(幅L1、幅L2)であったが、図6(b)に図示するように、3段階(幅L1、幅L2、幅L3)以上としてもよい。定電流駆動の場合、薄膜ヒータ117の幅が狭い部分は、単位配線幅あたりに流れる電流の大きさが大きくなる。したがって、幅が狭い箇所での発熱量が大きくなる。図6(b)では、幅L3部の下のサンプルの接合層105への加温が良好となる。
図6(a)において、端子電極115a、端子電極115b間に薄膜ヒータ117a、薄膜ヒータ117bの2本が、形成または配置されている。薄膜ヒータ117は、幅L1の部分と幅L2の部分を有する。幅L1の部分は、長さが短い。また、端子電極115の近傍に配置されている。幅L1の部分は、端子電極115から薄膜ヒータ117の幅L2部分に流入する電流が集中することを回避するために形成されている。
図6では、端子電極115a、端子電極115b間に薄膜ヒータ117a、薄膜ヒータ117bの2本が形成または配置されているとしているが、これに限定するものではない。3本以上であっても良いことは言うまでもない。
図6(b)において、端子電極115a、端子電極115b間に薄膜ヒータ117a、薄膜ヒータ117bの2本が、形成または配置されている。薄膜ヒータ117は、幅L1の部分と幅L2と幅L3の部分を有する。幅L1の部分は、長さが短い。また、端子電極115の近傍に配置されている。幅L1の部分は、端子電極115から薄膜ヒータ117の幅L2部分に流入する電流の集中を回避するために形成されている。
幅L1の部分と幅L2と幅L3の部分の3段階に限定されるものではなく、4段階以上であってもよい。また、滑らかに幅を変化させたものであっても良いことは言うまでもない。また、薄膜ヒータ117の中央部あるいは途中に端子115等を形成あるいは配置してもよい。また、薄膜ヒータ117は、複数の幅が繰り返して形状に構成してもよい。 幅L3の部分は、幅L2の部分より細く形成されている。したがって、定電流駆動の場合、薄膜ヒータ117の幅が狭い部分は、単位配線幅あたりに流れる電流の大きさが大きくなる。したがって、幅L3部の発熱が最も大きくなり、幅L3部の下のサンプルの接合層105への加温が良好となる。
以上の薄膜ヒータ117の形状等に関する事項は、温度プローブ116に対しても適用できることは言うまでもない。
以下、図面を参照しながら、本発明のヒータチップの他の実施例について説明をする。主として先に記載した実施例との差異点を中心に説明し、同一あるいは類似の場合は、説明を省略する場合がある。特に記載のない事項は、先に説明した実施例と同一あるいは類似である。
図15は、第2の実施例における本発明のヒータチップの平面図及び断面図である。図15(b)は図15(a)のAA’線における断面図であり、図15(c)は図15(a)のBB’線における断面図である。
ベース基板106は、図2の実施例と同様に、SiC(シリコンカーバイド)、サファイアガラス等のガラス基板、AlNセラミックスあるいはAlN(窒化アルミニウム)等の絶縁基板あるいは半導体基板が例示される。
ベース基板106は、SiCからなる基板として説明をする。しかし、ベース基板106は熱伝導性が良好で、絶縁性または半導体性を有する基板であれば、いずれのものであっても採用できることは言うまでもない。
ベース基板106の厚みは、0.05mm以上0.8mm以下とする。ただし、ベース基板106の厚みは、薄い方が薄膜ヒータ117からの熱が接合層に伝達されやすい。しかし、ベース基板106の厚みが薄いと、薄膜ヒータ117が形成されている箇所と形成されていない箇所で、接合層での温度分布が発生しやすい。
薄膜ヒータ117及び温度プローブ116はNi(ニッケル)-P、またはNiで形成あるいは構成する。Ni-P膜111aの膜厚は、1μm以上10μm以下の膜厚が好ましい。特に、2μm以上6μm以下の膜厚にすることが好ましい。
金めっき膜112の膜厚は0.01μm以上とする。金めっき膜112はNi-P膜111の表面の酸化あるいは汚染を防止あるいは抑制する機能を有する。
SiC基板106の表面には、薄膜ヒータ117、温度プローブ116が形成される。薄膜ヒータ117、温度プローブ116は、Ni-Pめっきによる薄膜(Ni-P膜111d)で形成される。Niの他、白金(Pt)で構成あるいは形成してもよい。その他、亜鉛、錫、鉛、クロム等も使用することができる。金属以外、例えば、炭素(C)で形成することができることは言うまでもない。
温度プローブ116は薄膜ヒータ117と同一材料、同一プロセス工程で形成される。薄膜ヒータ117がNi-P膜の場合、温度プローブ116もNi-P膜で形成される。温度プローブ116は配線幅を細く形成し、全長での抵抗値を高くする。
温度プローブ116には定電流を印加する。温度プローブ116の抵抗値を高くすることにより、抵抗値変化が大きくなり、定電流に対する温度プローブ116端子間の電圧変化が大きくなる。
したがって、温度プローブ116が検出する薄膜ヒータ117の温度変化に関する感度が良好になる。温度プローブ116の抵抗値は、5Ω以上、1kΩ以下に作製する。
温度プローブ116の両端には端子電極114a、端子電極114bを形成する。薄膜ヒータ117の両端には端子電極115a、端子電極115bを形成する。
端子電極114の表面等には金めっき膜112を形成する。金めっき112は、端子電極114部だけでなく、延長して温度プローブ116部のa部まで形成されている。
端子電極115の表面等には金めっき膜112を形成する。金めっき112は、端子電極115部だけでなく、延長して薄膜ヒータ117部のb部まで形成されている。
ただし、薄膜ヒータ117、温度プローブ116上には、金めっき膜112は形成しない。金めっき膜112を形成すると、薄膜ヒータ117、温度プローブ116の抵抗値が低下し、発熱あるいは温度変化に関する感度が低下するからである。薄膜ヒータ117、温度プローブ116のシート抵抗値は、電極端子のシート抵抗値より高くする。
薄膜ヒータ117、温度プローブ116上には、SiO2膜、SiNx膜、SiON膜からなる単層または多層膜を形成してもよい。SiO2膜等の無機薄膜を形成することにより、薄膜ヒータ117、温度プローブ116の表面が酸化あるいは汚染されることを抑制できる。
SiC基板106には薄膜ヒータ117を形成するとして説明するが、これに限定するものではない。薄膜ヒータ117は基板106を加熱するために配置または形成したものである。
薄膜ヒータ117の代替えとして、ニクロム線を組み込んだ面ヒータ、ペルチェ素子を用いたヒータ等を使用してもよい。ニクロム線を組み込んだ面ヒータ、ペルチェ素子に流す電流によりベース基板106を加熱することができる。
研磨加工した端面Cにポリイミド(PI)テープ(シート)107等を貼り付ける。ヒータチップ109としての薄膜ヒータ117に所定の定電流を印加し、定電流による発熱により、半田等による接合層等を加熱しつつ、端面の研磨部を赤外線サーモグラフィティカメラ等で観察あるいは測定する。観察あるいは測定は、ポリイミドフィルムを介して行う。研磨部の接合層の温度を複数点測定し、複数点間の温度情報△Tを求める。
また、研磨加工した端面Cには、感光性ポリイミド膜107を形成する。感光性ポリイミド膜107は、スピンコート方法、スリットコート方法、スクリーン印刷による方法、インクジェットによる吹付ける方法、スプレーコート方法、ダイコート方法、ドクターナイフコート方法、フレキソ印刷等により、研磨加工した面に形成または配置される。
感光性ポリイミド膜107とポリイミド(PI)テープ(シート)107は、基本的には機能が同一または類似である。以下、主にポリイミドテープ107を例示して説明する。なお、ポリイミドテープ107をポリイミド膜107に置き換えても良いことは言うまでもない。
図18は、本発明の接合層等の評価方法の説明図である。赤外線カメラ108で接合層の温度を測定する。赤外線カメラ108で測定する温度は、試験時間に伴い温度が上昇する。設定する所定電流の印加により、温度は上昇する。通常、図18の実線で示すように赤外線カメラ108で測定する温度は、2分以内に定常値となる。
一方、温度プローブ116で温度をモニターする。温度プローブ116でモニターする温度は、試験時間に伴い温度が上昇する。温度プローブ116に流す所定の定電流の印加により、温度は上昇し、通常、図18の点線で示すようにモニターする温度は、2分以内に定常値となる。
温度プローブ116は、ヒータチップ109に形成または配置されている。試験前は、赤外線カメラ108で温度を測定し、定常値になる時間tで、温度プローブ116での温度モニターに切り替える(制御対象切換え)。
以上のように、温度プローブ116を搭載したヒータチップ109を利用することで、高価な赤外線カメラ108を占有する必要がなくなる。例えば、図8の本発明の実施例のように、複数のヒータチップ109による測定あるいは評価試験の場合、1台の赤外線カメラ108で測定あるいは評価等を実施できる。
試験開始前には赤外線カメラ108で温度を制御し、目標の試験温度に調整する。この際、温度プローブ116による温度モニターも実施している状態である。
目標試験温度に到達した時刻tで、温度プローブ116の温度を一定に制御するようにプログラマブルな直流電源装置803に命令を出す。この時点で試験が開始したとする。つまり、温度プローブ116による制御に切替える。
なお、任意の基準で一定時間経過後や、直流電源の出力の継時変化等、再度、赤外線カメラ108での温度制御に変更しても良いことは言うまでもない。
図16に図示するように、端子電極114、端子電極115には、高温半田126が形成または配置され、高温半田126には配線127が取り付けられる。各配線127には電流電源装置803が配置され、電流電源装置803が出力する定電流を端子電極114または端子電極115に印加する。
高温半田は、鉛含有量が90%以上、更に好ましくは95%以上の半田を使用することが好ましい。鉛含有率が高くなると、融点が300℃と高くなり、柔らかいという特性から熱疲労に強くなる。
端子電極115aには高温半田126dが形成または配置され、高温半田126dには配線127dが取り付けられる。端子電極115bには高温半田126eが形成または配置され、高温半田126eには配線127eが取り付けられる。
端子電極114aには高温半田126fが形成または配置され、高温半田126fには配線127fが取り付けられる。端子電極114bには高温半田126gが形成または配置され、高温半田126gには配線127gが取り付けられる。
図16において、aa’間が温度プローブ116となる。aa’間抵抗は、5Ω以上1000Ω以下が好ましい。特に、10Ω以上500Ω以下が好ましい。
主として、bb’間が薄膜ヒータ117として機能する。bb’間抵抗は、5Ω以上500Ω以下が好ましい。特に、10Ω以上200Ω以下が好ましい。
Ni-P層111は、めっき後の配線抵抗の熱安定性に乏しい。薄膜ヒータ117及び温度プローブ116は、試験時に100℃以上300℃以下となり、試験中に温度プローブ116等の配線抵抗が減少する。
そのため、温度プローブを利用した温度測定(電圧から温度への換算)と、制御アプリによる温度制御が困難になる。
本発明は、Ni-P層111のめっき後のヒータチップ109を250℃以上350℃以下の温度で、6時間以上、熱処理を行っている。更に好ましくは、10時間以上の熱処理を行う。
熱処理を行うことにより、薄膜ヒータ117、温度プローブ116の配線抵抗が安定する。図17は、熱処理による抵抗の変化を示すグラフである。
図16に図示する斜線内に半田付けした状態を“半田付け後”と記載している。熱処理前に、半田付けを行う。半田付け無しで熱処理すると端子電極114部、端子電極115部で、半田が濡れなくなる、または、濡れ性が悪化するためである。
図16の斜線内に半田付けすることにより、温度プローブ116、薄膜ヒータ117の抵抗値が低下する。例えば、温度プローブ116は、配線抵抗が130Ωから半田付けにより約50Ωに低下する。薄膜ヒータ117は、配線抵抗が約50Ωから半田付けにより約25Ωに低下する。
半田付け後、熱処理を行うことにより、薄膜ヒータ117及び温度プローブ116の抵抗値は低下する。熱処理時間が、6時間で配線(薄膜ヒータ117及び温度プローブ116)の抵抗値は、ほぼ安定し、熱処理時間が10時間で配線(薄膜ヒータ117及び温度プローブ116)の抵抗値は完全に安定する。また、半田付け無しで熱処理すると端子電極部で、半田が濡れなくなる。
なお、熱処理時間は300℃下での熱処理時間に対する配線抵抗変化を事前に調査した上で決定している。Ni-Pめっきを使用したヒータチップとして成立させるために必須な処理工程である。
端子電極114及び端子電極115には、リード線121を半田付け、あるいはプローブ(図示せず)を圧接し、電流電源装置803が出力する定電流を端子電極114、端子電極115、端子電極124等に印加する。
以下、図面を参照しながら、図5、図6等に図示する本発明のヒータチップ109の作製方法について説明する。
図22、図23、図24、図25において、各図の左側の図面は、ヒータチップの側面図を示しており、各図の左側の図面は、ヒータチップ109の平面図を示している。
図22(a1)、図22(a2)は、SiC基板106である。なお、図2、図20、図21等で説明したように、SiC基板に限定されるものではない。また、図22等は薄膜ヒータ117を中心に説明するが、図2等と同様に温度プローブ116にも適用できることは言うまでもない。
以下、図22、図23、図24、図25、図26等で記載する事項は、主として、他の図面、明細書との差異を中心に説明し、以前に説明した事項と同一あるいは類似の場合は説明を省略する場合がある。
以下に説明あるいは記載する事項は、流用あるいは適時、組み合わせることができることは言うまでもない。また、図22、図23、図24、図25、図26等の記載事項を本明細書、図面の他の実施例に適用できることは言うまでもない。
図22(b1)、図22(b2)に図示するように、SiC基板106の表面にマスク501aを塗布する。同様に、SiC基板106の裏面にマスク501bを塗布する。マスク501としては、アルカリ可溶タイプのアクリルポリマーを含むものが好ましい。
次に、フェムト秒レーザ装置(図示せず)を用いて、SiC基板106の表面を粗化する(図22(c1)、図22(c2))。フェムト秒レーザ光502またはピコ秒レーザ光502を照射し、SiC基板106の表面の、薄膜ヒータ117、端子電極115に対応する部分を粗面化する。なお、図22(c1)は、図22(c2)のAA’線での断面図である。
フェムト秒レーザ光502等の照射により、SiC基板106の端子電極115、薄膜ヒータ117の形成位置が、粗化(粗面化)され、粗化面119aが形成される。
フェムト秒グリーンレーザは、第二高調波であるため、比較的高出力を取り出すことができ、SiC基板106に対しても、照射したレーザ光の吸収が良好である。
フェムト秒グリーンレーザが出射する光の波長は500nm~530nmであるのが好ましい。パルス幅は、1フェムト秒~1000フェムト秒であるのが好ましい。
また、ピコ秒レーザを用いる場合、ピコ秒レーザが出射する光の波長は500nm~530nmであるのが好ましい。パルス幅は、1ピコ秒~10ピコ秒であるのが好ましい。
SiC基板106の表面は、パルス幅の単位がピコ秒であるピコ秒レーザ光、又はフェムト秒であるフェムト秒レーザ光により粗化される。粗化された算術平均粗さRaは0.2μm以上である。算術平均粗さRaは、0.3μm以上、0.4μm以上、0.5μm以上の順により好ましい。
フェムト秒レーザ装置は、一般にパルス幅が、サブピコ秒から数十フェムト秒のフェムト秒レーザ光502を発生する。サブピコ秒から数十フェムト秒の超短パルスのレーザ光502を材料に照射した場合、材料の熱拡散特性時間に比べてパルス幅が十分に短いため、光エネルギーを有効に照射部に投入できる。
図6(b)の幅L3のような、幅が細い箇所も良好に粗面化できる。また、図6(b)に図示する幅L1、幅L2、幅L3のように、幅を容易に、かつ粗面化を安定して形成できる。
フェムト秒レーザ光502は、照射周辺部への熱影響が局限することが可能で、高精度な微細加工が実現できる。フェムト秒レーザ光502のパルスを照射することにより、薄膜ヒータ117等を形成する部分に対応するマスク501の部分が除去され、凹部が形成される。
配線のパターニング(薄膜ヒータ117、温度プローブ116等)は、マスク501の表面に形成されたマークに基づいて行ってもよい。SiC基板106上に形成された位置決めマーク124等に基づいて位置決めを行う。
位置決めマーク124は一例として十字マークである。位置決めマーク124は少なくとも、対角線状(図6(a)参照)あるいは線対称位置(図5(b)参照)等に2箇所を設ける。また、本発明の製造方法では、位置決めマーク124を使用して、薄膜の形成、レーザ照射位置の位置決め、パターニングを行う。
SiC基板106等上に形成された位置決めマーク124をカメラで取り込み、位置決めマーク124を画像認識して位置決めマーク124位置と設計座標を比較し、パターニング(薄膜ヒータ117、温度プローブ116等)位置(レーザ光を照射する箇所)に位置決めしてレーザ光502を照射する。
同様に、図22(d1)、図22(d2)に図示するように、SiC基板106に裏面にも、フェムト秒レーザ光502が照射され、粗化(粗面化)される。SiC基板106の裏面も粗化面119が形成される。
SiC基板106に裏面にも、Ni-P膜111が形成される。したがって、SiC基板106のNi-P膜111が形成される箇所にも、フェムト秒レーザ光502による粗面化が実施される。
図22(d1)は、図22(d2)のAA’線での断面図である。なお、断面図の断面位置に関しては、他の図面においても同様である。
次に、図23(e1)、図23(e2)に図示するように、SiC基板106の裏面にマスキングテープ120bを貼り付ける。マスキングテープ120として、例えば、日東電工N-300が例示される。
マスキングテープ120は、めっき液の浸入を防ぐために使用する。したがって、めっき液の浸入を防止し、防止後、剥離できるものであればいずれのものであってもよい。例えば、マスキングテープ120の代替えとして重合前のポリイミドからなる液を塗布し、ポリイミドからなる液を硬化させたものを使用してもよい。
図22(e2)に図示するように、SiC基板106の表面において、端子電極115、薄膜ヒータ117が形成される部分が、レーザ光の照射により粗化面119aとなっている。他の部分は、マスク501aが残存している。
以上のように、フェムト秒レーザ光502による粗面化は、端子電極114、端子電極115に対応する箇所にも実施される。粗面化される箇所に、Ni-P膜111が形成される。
端子電極115部は粗化される面積が大きい。薄膜ヒータ117部は粗化される線幅が細い。薄膜ヒータ117部は粗化を大きくする(粗化により発生する凹凸を深くする)ように、粗化される面積に依存して粗化状態を変化させることが好ましい。粗化される面積に基づいて算術平均粗さRaを異ならせる。
レーザ光502による粗化は、薄膜が剥離しにくいように、例えば、薄膜プローブ117、温度プローブ116の両端の粗化状態を大きくし、他の部分の粗化状態を両端よりも小さくする等粗化位置により変化させることが好ましい。
例えば、図5(b)、図6(b)では、薄膜ヒート117の幅L1、幅L2、幅L3の箇所の粗化状態あるいは算術平均粗さRaを異ならせてもよい。
図5(b)のように、線幅L1の箇所と、線幅L2の箇所では算術平均粗さRaを異ならせる。図6のように、線幅L1の箇所と、線幅L2の箇所あるいは線幅L3の箇所では算術平均粗さRaを異ならせる。また、温度プローブ116と薄膜ヒート117で算術平均粗さRaを異ならせてもよい。
粗化状態の可変は、フェムト秒レーザ光502のレーザ強度、照射するレーザパルスの移動速度を変更あるいは設定することにより容易に実現できる。
SiC基板106に対し酸性脱脂剤を用い、例えば45℃、5分の条件で脱脂を行う。塩酸系水溶液を用いてプリディップ処理を行う。保持時間は、一例として2分である。
SiC基板106に対し酸性脱脂剤を用い、例えば45℃、5分の条件で脱脂を行う。塩酸系水溶液を用いてプリディップ処理を行う。保持時間は、一例として2分である。
次に、図23(f1)、図23(f2)に図示するように、Sn-Pd触媒504を粗面化された粗化面119、及びマスク501aの残存している部分の表面に付与、塗布あるいは形成する。
Sn-Pd触媒504はコロイド状の粒子であり、Sn-Pdの核部の表面にSn-rich層、及びSn2+層が順に形成されている。
Sn-Pd触媒504を付与したSiC基板106を塩酸系の溶液に浸漬することでSnの層が除去され、内部のPd触媒が露出する。Pd触媒が露出するので、Sn-Pd触媒504が存在する部分において、後述する無電解Ni-Pめっき液による反応が生じる。
次に、図23(g1)、図23(g2)に図示するように、アルカリ溶液を用いて、マスク501aを剥離する。図23(g1)に図示するように、SiC基板106のマスク501が剥離された部分にはSn-Pd触媒504aが存在しない。
次に、図23(h1)、図23(h2)に図示するように、SiC基板106の表面に無電解Ni-Pめっきを行い、薄膜ヒータ117が形成される。
無電解Ni-Pめっき液としては、酸性領域から中性領域で次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする還元析出型の無電解Ni-Pめっき液を用いることができる。
キレート剤としては、リンゴ酸、またはクエン酸、またはマロン酸、酒石酸等のオキシカルボン酸、または酢酸やコハク酸等のモノカルボン酸、アンモニアやグリシン等のアミン類を単独もしくは複数併用して用いることができる。
無電解Ni-Pめっき液中の還元剤がSiC基板106上で電子を放出するように触媒として機能するPdが付与されている。無電解Niめっき液中のNiイオンが、還元剤の酸化反応で放出される電子によって還元され、SiC基板106の表面に析出し、薄膜ヒータ117、端子電極が形成される。
図5、図6では、温度プローブ116を図示していないが、図5、図6の本発明のヒータチップ109は、温度プローブ116を備えてもよいことは言うまでもない。また、以上の図5、図6で記載した事項は、薄膜ヒータ117だけでなく、温度プローブ116にも適用できることは言うまでもない。以上の事項は、以下の記載、図面においても同様である。
本実施形態によれば、フェムト秒レーザ光502で粗化面119を形成することにより、難めっき材料からなるSiC基板106に対して、特殊な薬液またはフォトリソグラフィの技術を用いることなく、容易に、密着性が良好であるNi-Pめっきを行うことができる。
本実施の形態においては、マスク501aを使用して、薄膜ヒータ117、端子電極部に対応するSiC基板106の粗化面119に、Sn-Pd触媒504aを残存させる。Sn-Pd触媒504aにめっき膜を形成する。したがって、薄膜ヒータ117のパターニングの精度が良好であり、表面研磨が不要である。
本実施の形態においては、配線パターンに対応する部分以外の部分がマスク501aにより保護された状態で、めっきパターンが形成される。したがって、粗化部分のみに無電解Ni-Pめっきを行うため所望の厚みの薄膜ヒータ117等を形成することができる。
次に、図24(i1)、図24(i2)に図示するように、薄膜ヒータ117を形成する箇所を中心として、マスキングテープ120aを形成または配置する。端子電極115を形成する部分にはマスキングテープ120aは形成または配置されない。
図24(j1)、図24(j2)に図示するように、図23(h1)、図23(h2)と同様に、SiC基板106の表面に無電解Ni-Pめっきを行い、端子電極115部に無電解Ni-Pめっき膜が形成される。
無電解Ni-Pめっき液としては、図23(h1)、図23(h2)の無電解Ni-Pめっき液を用いる。また、キレート剤等もついても同様であるので、説明を省略する。
図24(j1)に図示するように、薄膜ヒータ117部は無電解Ni-Pめっき膜111aが形成される。端子電極115部は、無電解Ni-Pめっき膜111aと無電解Ni-Pめっき膜111bとが積層されて形成される。したがって、端子電極115部は、薄膜ヒータ117部よりも抵抗値が低くなる。端子電極115部は、抵抗値が小さいため、所定の定電流を印加しても発熱が発生しない。薄膜ヒータ117部は、抵抗値が高いため、所定の定電流の印加により、良好に発熱する。
図24(k1)、図24(k2)に図示するように、端子電極部に置換Au膜(端子電極115)が形成される。端子電極に対応する箇所のNi-P膜111aの表面には端子電極としての金めっき膜115が形成される。
次に、図24(l1)、図24(l2)に図示するように、マスキングテープ120aを剥離させる。マスキングテープ120aの剥離におり、薄膜ヒータとしてのNi-Pめっき膜111aが露出する。
以上の工程により、端子電極115及び薄膜ヒータ117がSiC基板106上に形成される。次に、SiC基板106の裏面にNi-P膜111cを形成する工程を実施する。
図25(m1)、図25(m2)に図示するように、端子電極115及び薄膜ヒータ117としてのNi-Pめっき膜111a上に、マスキングテープ120cを配置または形成する。また、コーティング剤を塗布する。
次に、図25(n1)、図25(n2)に図示するように、Sn-Pd触媒504bを粗面化された粗化面119bの表面に付与、塗布あるいは形成する。Sn-Pd触媒504bはコロイド状の粒子であり、Pd-Snの核部の表面にSn-rich層、及びSn2+層が順に形成されている。
Sn-Pd触媒504bを付与したSiC基板106を塩酸系の溶液に浸漬することでSnの層が除去され、内部のPd触媒が露出する。Pd触媒が露出するので、Sn-Pd触媒504bが存在する部分において、無電解Cuめっき液による反応が生じる。
図25(o1)、図25(o2)に図示するように、SiC基板106の裏面に無電解Ni-Pめっき膜111cが形成される。また、無電解Ni-Pめっき膜111c上に金めっき膜112が形成される。
次に、図25(p1)、図25(p2)に図示するように、マスキングテープ120cを剥離させて、ヒータチップ109が完成する。
図26は、本発明の他の実施例における接合層評価装置の構成についての説明図である。図26(c1)、図26(c2)はヒータチップ109を図示している。ヒータチップ109の裏面には、Ni-Pめっき膜111c、Ni-Pめっき膜111cの表面に金めっき膜112が形成されているが、図が煩雑になるため省略している。
図26(c2)に図示するように、端子電極115には、リード線121を電気的に接続するための半田123が形成され、または配置される。なお、半田123に限定されるものではなく、導電性があり、リード線121と端子電極115とが電気的接続が取れるものであればいずれの構成、材料等であってもよい。例えば、ボンディングワイヤで接続する構成が例示され、異方向性樹脂(ACF)で接続する構成、材料が例示される。
図26(a)に図示するように、無酸素銅板104aと無酸素銅板104b間に半田等の接合層105が配置または形成される。
無酸素銅板104において、接合層105と接する面に、Ni-P膜111、金めっき膜112が形成されるが、図面が煩雑となるため図示していない。
無酸素銅板104bの表面にNi-P膜111が形成され、Ni-P膜111に金めっき膜112が形成されている。2つの金めっき膜112間に、接合層105が配置される。なお、金めっき膜112は接合層105が半田場合、半田内に拡散される。
無酸素銅板104aは、主として放熱板として機能し、無酸素銅板104bはヒータチップ109からの熱を接合層105に伝達する機能を有する。
無酸素銅板104は、熱伝導性が良好なプレートであれば、銅以外の材質でプレートを形成してもよい。例えば、セラミックプレート、ステンレスプレート、ニッケルプレート、銀プレートが例示される。本明細書では説明を容易にするため、また、理解を容易にするため、無酸素銅板104として説明をする。
無酸素銅板104は0.1mm以上2mm以下の銅板である。無酸素銅板104aの表面には、Ni-P膜111が形成される。Ni-P膜111は無酸素銅板104aの表面の全域に形成してもよいし、ヒータチップ109を実装する領域あるいは範囲に特定して形成してもよい。
図26(b)に図示するように、無酸素銅板104b上に、放熱グリス118を塗布、あるいは放熱グリス118を配置する。
放熱グリス118で、ベースとなるのは、常温からある程度の高温まで、粘度の変化が少ない変性シリコンのグリスである。このグリスに、熱伝導率の高い金属あるいは金属酸化物の粒子(フィラー)を混ぜ込んだものを採用することが好ましい。
粒子として主に用いられるのは銅や銀、アルミニウム等の他に、アルミナや酸化マグネシウム、窒化アルミニウム等も用いられる。これらの単体、もしくは混合物を、それらの粒子直径に見合った分散方法を用いて分散させる。
無酸素銅板104b上に、焼結銀(Ag)ペーストを採用することも好ましい。焼結銀ペーストとして、例えば、三ツ星ベルトのMDotシリーズ(MDot-S5171)が例示される。MDot-S5171は、熱伝導率が15W/m・K以上と高い。
なお、焼結ペーストの熱伝導率は、4W/m・K以上のものを使用することが好ましい。焼結Agペーストの他、焼結銅(Cu)ペーストを用いてもよい。
焼結ペーストは、放熱グリスに比べて、熱伝導性が良好であり、ヒータチップ109の温度を低減できるという特徴を有する。例えば、放熱グリスの場合、半田層を200℃とする場合、放熱グリスの耐熱温度、配線部の半田部の耐熱が不足する場合がある。焼結ペーストの場合は、この課題が発生しない。または、発生が抑制される。
図26(b)では、無酸素銅板104a上に、焼結Agペースト118等を配置するとしたが、ヒータチップ109の裏面に焼結Agペースト118等を塗布し、無酸素銅板104bとヒータチップ109を接合させても良いことは言うまでもない。
図26(c3)に図示するように、無酸素銅板104bに配置された放電グリスまたは焼結ペースト118に図26(c2)のヒータチップ109を配置する。例えば、108が焼結ペーストの場合は、例えば、200℃で60分間、低温で焼結させる。焼結により、ヒータチップ109と無酸素銅板104bとが熱的に接続される。
接合層105は一例として半田シートである。加熱することにより、半田からなる接合層105となる。半田シートが無酸素銅板104b上に配置される。半田シートの代わりに半田ペーストを用いても良い。
図26(d)に図示するように、ヒータチップ109と無酸素銅板104bは接合層105で接合される。また、図26(d)に図示するように、ヒータチップ109、無酸素銅板104b、接合層105は同時に研磨加工され、端面研磨される。端面研磨により、接合層105は鏡面化される。また、必要に応じて、接合層105はCP加工が実施される。
次に、図26(d)に図示するように、研磨加工した面にポリイミドフィルム107が貼り付けられる。もしくは、接合層105面に感光性ポリイミド膜を形成する。
感光性ポリイミド膜は、スピンコート工法、スリットコート工法、スクリーン印刷による工法、インクジェットによる吹付ける工法、スプレーコート工法、ダイコート工法、ドクターナイフコート工法、フレキソ印刷工法等により、研磨加工した面に形成される。感光性ポリイミド膜を形成する箇所は少なくも接合層105を含む。
図26(e)に図示するように、端子電極115上の半田123を介してリード線121が取り付けられる。リード線121には電流電源装置803が接続され、薄膜ヒータ117に定電流等が印加される。
赤外線サーモグラフティカメラ108は、ポリイミドフィルム107を介して、接合層105の2次元的な温度分布を測定する。
接合層105は、半田等による接合層に限定するものではない。例えば、銀ペーストあるいは銅ペーストにより接着した接合層、焼結ペーストからなる接合層、ボンディングワイヤ等の接続部、放電加工による接続部、高周波誘導加熱による接合層、電磁誘導加熱による融着部に対しても適用できることは言うまでもない。また、有機物あるいは無機物を圧着あるいは接触させた接合面に対しても適用できることは言うまでもない。絶縁物、誘電体材料からなる層も接合層であり、赤外線サーモグラフティカメラ108等で温度情報△Tを測定することができる。
以下、本発明の接合層評価装置を使用した接合層の評価方法の実施例について説明する。
発熱源として、本発明のSiC製ヒータチップ109(表面に薄膜ヒータ117、裏面にAg層を有する)を使用した。
ヒータチップ109の裏面、及び無酸素銅板104へ無電解Ni-P膜111/置換金めっき膜112処理し、ヒータチップ109を無酸素銅板104上に半田付けしてサンプルを作製した。
また、ヒータチップ109近傍に無電解Ni-P膜111/置換金めっき膜112処理した両面銅張基板も同時に半田付けした。半田組成はSn-0.7Cu半田、使用する半田シ-トの厚みは100μmとした。
半田付けは大気圧リフロー(ピーク温度250℃10sec)にて実施し、半田付け後のヒータチップ109/無酸素銅板104間の半田厚が100±20μmになったサンプルを使用した。
サンプルの端面を鏡面仕上げ後、ヒータチップ109の薄膜ヒータ117と上述した両面銅張板間をAuワイヤボンディング(Φ25μm)により結線して、加熱冷却プレート101上に配置した。
接合層105と接するNi-P膜111d及びNi-P膜111aと接合層105は研磨または平坦化する。研磨または平坦化することにより、接合層105及び近傍部は平坦になり、鏡面になる。平坦、鏡面にすることにより、接合層105等から放射する赤外線量が、接合層105の温度と良好に相関する。したがって、外線サーモグラフティカメラ108の測定温度精度が向上する。
その後、ヒータチップ109の表面に形成または配置された薄膜ヒータ117に、電流電源装置803bで直流電流を印加して、ヒータチップ109を発熱させ、ヒータチップ109裏面をHot側(加熱側)、銅プレート104側をCold側(冷却側)とする温度勾配を半田接合層へ生じさせた。
生じた温度勾配を可視化するために、サンプルの鏡面仕上げ面を赤外線サーモグラフティカメラ108により観察し、ヒータチップ109裏面のNi-P膜111層(Hot側Ni-P膜111層)と銅プレート104側のNi-P膜111層(Cold側Ni-P膜111層)間の温度差から温度勾配を決定した。
断面の放射率を確保するためにポリイミドテ-プを貼り付けて赤外線サーモグラフティカメラ108による温度測定を実施した。
ヒータチップ109裏面での温度が200℃、銅プレート104温度145℃程度でHot側とCold側のNi-P膜111層間の温度勾配が2571℃/cmになった。
本条件にてTM(サーモマイグレーション)試験を実施した。
TM(サーモマイグレーション)試験時間は5hとした。さらに、温度勾配の有無による影響を把握するため、温度勾配を意図的に発生させない条件として、200℃に設定した恒温槽内に5h保持する200℃放置試験を実施したサンプルも用意した。
TM(サーモマイグレーション)試験及び200℃放置試験後、サンプルの端面を再度鏡面仕上げし、断面SEM観察により半田接合層を観察した。その際、半田接合層の成分分析はエネルギー分散型X線分析法(EDS)により実施した。さらに、各試験前後での半田接合層におけるNiの分布をEDSにより調査した。
初期ではチップ裏面及び銅プレート104側のNi-P膜111層で、ともに合金層(Cu、Ni)6Sn5が形成していることが確認できた。200℃放置試験後では、チップ裏面の合金層が(Ni、Cu)3Sn4に変化しており、銅プレート104側では(Cu、Ni)6Sn5層の下に(Ni、Cu)3Sn4が形成している。(Cu、Ni)6Sn5層の成長に伴う半田中のCu濃度の減少に起因すると推察される。
TM(サーモマイグレーション)試験後では、Hot側であるヒータチップ109裏面のNi-P膜111層が消失していることが判明した。また、Cold側である銅プレート104側のNi-P膜111層はPリッチ層の成長と縦状のボイドの形成及びNi-P膜111層の薄化が確認できるもが、Ni-P膜111層自体は残存している。
このことから、TM(サーモマイグレーション)試験によってHot側Ni-P膜111層の温度を200℃として、Ni-P膜111層間に2000-3000℃/cm程度の温度勾配を発生させると、Hot側Ni-P膜111層が消失することが明らかになった。
さらに、初期ではヒータチップ109裏面のNi-P膜111層上には合金層(Cu、Ni)6Sn5が形成していたが、TM(サーモマイグレーション)試験後ではヒータチップ109裏面のNi-P膜111層上に合金層が確認されていない。それに対して、TM(サーモマイグレーション)試験後の銅プレート104側Ni-P膜111層上は(Ni、Cu)3Sn4が10-30μm程度の厚みで形成していた。
これらのことから、200℃放置試験後とTM(サーモマイグレーション)試験後ではNiの分布に差異があるように見受けられる。
初期及び各試験後での半田接合層でのNiの分布を明らかにするため、EDSによりNiの分布を調べた結果、200℃放置試験後では、ニッケル(Ni)は、ヒータチップ109裏面及び銅プレート104側のNi-P膜111層、及びNi-P膜111層上の合金層部のみに存在していた。TM(サーモマイグレーション)試験後ではヒータチップ109裏面側のNi-P膜111層が消失し、銅プレート104側にNiが拡散していた。
これらのことから、初期にヒータチップ109裏面でNi-P膜111層もしくは(Cu、Ni)6Sn5として存在していたNiは、TM(サーモマイグレーション)試験によってCold側Ni-P膜111層上へ拡散したことがわかる。
TM(サーモマイグレーション)試験中におけるCuの拡散について検討した。初期ではヒータチップ109裏面に(Cu、Ni)6Sn5としてCuは存在していた。TM(サーモマイグレーション)試験後ではヒータチップ109裏面にCuは存在していなかった。
銅プレート104側Ni-P膜111層上では(Ni、Cu)3Sn4がTM(サーモマイグレーション)試験により10-30μm程度にまで厚くなっていたことから、銅プレート104側Ni-P膜111層上に存在するCuの量が増加したと考えられる。
したがって、TM(サーモマイグレーション)試験後では、ヒータチップ109裏面にCuは存在しなくなる一方で、銅プレート104側Ni-P膜111層上に存在するCuが増加していることから、TM(サーモマイグレーション)試験によりCuはHot側であるヒータチップ109裏面からCold側である銅プレート104上へ拡散したと推察される。
本試験では温度勾配が2000-3000℃/cmであり、CuのTM(サーモマイグレーション)発生時の温度勾配として1000℃/cmを超えている。さらに、移動方向がCold側であることも考慮すると、銅プレート104側へのCuの拡散はCuのTM(サーモマイグレーション)に起因する。
TM(サーモマイグレーション)試験後ではヒータチップ109裏面のNi-P膜111層及びAg層が消失し、ヒータチップ109裏面にはSnのみが確認できる。このことから、SnはCuとNiとは反対の拡散方向であるヒータチップ109裏面側へTM(サーモマイグレーション)試験中に拡散している。
Snは1000℃/cm以上で高温側へ拡散すると推測される本試験での温度勾配が2000-3000℃/cmであることから、SnのHot側への拡散はSnのTM(サーモマイグレーション)に起因する。
NiのTM(サーモマイグレーション)に必要な温度勾配は8050℃/cmと見積られている。本試験の温度勾配が2000-3000℃/cm程度であることを考慮すると、NiのTM(サーモマイグレーション)が発生しているとは考えにくい。
現時点では、ヒータチップ109裏面へSnが拡散する環境下ではNi-P膜111層上の合金層が剥離しやすい状態ではないかと考えられる。その場合、合金層が剥離したNi-P膜111層上では新たにNiを含む合金層が形成すると予想される。200℃放置試験よりもNi-P膜111層が消費されやすい環境であったと考えられる。
以上のことから、Sn-0.7Cu/Ni-P膜111半田接合層において、Hot側を200℃とする2000-3000℃/cm程度の温度勾配を発生させると、Hot側Ni-P膜111層が消失することが判明した。
以上のように、本発明の接合層の評価方法及び接合層評価装置は、接合層の評価、構成、寿命等を定量的に評価できる。
以上、本明細書において、実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
本明細書及び図面に記載した事項あるいは内容は、相互に組み合わせることができることは言うまでもない。