以下、本発明の検査装置および検査方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の検査装置は、第1基板と、前記第1基板と対向して配置された第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、電圧の印加により着色を呈する着色領域を区画する封止部と、前記着色領域内に配置されたエレクトロクロミック素子と、前記封止部の前記エレクトロクロミック素子に対する外側に、前記第1基板側から前記第2基板側に向かって形成された第1穴部を埋めるように設けられた第1導電部と、前記第2基板側から前記第1基板側に向かって形成された第2穴部を埋めるように設けられた第2導電部と、を有するエレクトロクロミックシートにおける導通を検査するものであり、前記エレクトロクロミック素子は、前記第1基板の前記第2基板側に積層された、第1電極と、前記第2基板の前記第1基板側に積層された、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に形成され、前記電圧の印加により着色を呈する着色層とを備えており、前記第1電極は、前記第1基板と、前記封止部および前記第1導電部との間において、当該エレクトロクロミックシートの平面視で、前記着色領域から延伸して、前記第1導電部まで到達して、前記第1導電部に電気的に接続するようにパターニングして設けられ、前記第2電極は、前記第2基板と、前記封止部および前記第2導電部との間において、当該エレクトロクロミックシートの平面視で、前記着色領域から延伸して、前記第2導電部まで到達して、前記第2導電部に電気的に接続するようにパターニングして設けられており、前記第1導電部および前記第2導電部は、それぞれ、前記エレクトロクロミックシートにおいて、異なる位置で露出しており、当該検査装置は、前記エレクトロクロミックシートを固定する固定手段と、前記エレクトロクロミック素子に前記電圧を印加する電源と、当該電源の正極側に電気的に接続された第1印加電極と、前記電源の負極側に電気的に接続された第2印加電極とを有する印加手段と、前記第1印加電極および前記第2印加電極の移動により、前記第1導電部に前記第1印加電極が接触し、かつ、前記第2導電部に前記第2印加電極が接触する接触位置と、前記第1導電部に前記第1印加電極が接触せず、かつ、前記第2導電部に前記第2印加電極が接触しない非接触位置とに、前記第1印加電極および前記第2印加電極を配置させ得る移動手段と、を備えている。
本発明の検査装置は、エレクトロクロミックシートを用いた眼鏡用レンズの製造の際に、その製造の途中において、エレクトロクロミックシートが備えるエレクトロクロミック素子における不具合の発生の有無を検査する検査方法に用いられるものである。
また、このエレクトロクロミックシートは、加熱下における熱曲げ加工を施すことで湾曲形状とされたものが、例えば、眼鏡の一種であるサングラスが備えるレンズ(眼鏡用レンズ)が有する湾曲ウエハとして用いられ、サングラスが備えるスイッチのON/OFFの切り替えにより、このレンズを、発色と消色とを、任意のタイミングで切り替えが可能なものとするために使用される。このエレクトロクロミックシートの検査に本発明の検査装置を用いることで、前記レンズを製造する際に、その製造途中において、エレクトロクロミックシートが備えるエレクトロクロミック素子における導通の可否、すなわち、エレクトロクロミック素子における不具合の発生の有無を容易に検査することができる。
そこで、以下では、本発明の検査装置および検査方法、さらには、この検査装置(検査方法)により検査がなされるエレクトロクロミックシートを説明するのに先立って、まず、このエレクトロクロミックシートを湾曲ウエハとして備えるサングラスについて説明する。
なお、本明細書においては、少なくとも1つの「エレクトロクロミック素子」を内部に備えるものを、総じて「エレクトロクロミックシート」と言うこともある。
<サングラス>
図1は、エレクトロクロミックウエハを湾曲形状とした湾曲ウエハを有するレンズを備えるサングラスの実施形態を示す斜視図である。なお、図1において、サングラスを使用者の頭部に装着した際に、レンズの使用者の目側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面と言う。
サングラス100は、図1に示すように、フレーム20と、レンズ30(眼鏡用レンズ)とを備えている。
なお、本明細書中において、「レンズ(眼鏡用レンズ)」とは、集光機能を有するものと、集光機能を有していないものとの双方を含むこととする。
フレーム20は、使用者の頭部に装着され、レンズ30を使用者の目の前方近傍に配置させるためのものである。
このフレーム20は、リム部21と、ブリッジ部22と、テンプル部23と、ノーズパッド部24とを有している。
リム部21は、リング状をなし、右目および左目にそれぞれ対応して1つずつ設けられており、それぞれの内側にレンズ30が装着される。これにより、使用者は、レンズ30を介して、外部の情報を視認することができる。
このレンズ30は、エレクトロクロミックウエハ150(エレクトロクロミックシート)を熱曲げ加工することで湾曲形状とされた湾曲ウエハ120を備え、エレクトロクロミックウエハ150(湾曲ウエハ120)が有するエレクトロクロミック素子60への電圧の印加の切り替えにより、任意のタイミングにおける発色と消色とが、可逆的に行われるものである。そして、レンズ30は、リム部21の内側に装着した際に、リム部21にブリッジ部22およびテンプル部23が連結される連結部に対応する位置に、それぞれ、接続端子を備えており、この接続端子が、後述するテンプル部23が備えるスイッチ25および電池26に、配線を介して、電気的に接続されている。
また、ブリッジ部22は、棒状をなし、使用者の頭部に装着された際に、使用者の鼻の上部の前方に位置して、一対のリム部21を連結する。
テンプル部23は、つる状をなし、各リム部21のブリッジ部22が連結されている位置の反対側における縁部に連結されている。このテンプル部23は、使用者の頭部に装着する際に、使用者の耳に掛けられる。
このテンプル部23は、その表面で操作可能に露出するスイッチ25と、内蔵された電池26とを有している。スイッチ25と電池26とは、配線を介して、レンズ30が備える接続端子に、電気的に接続されている。これにより、レンズ30が備える湾曲ウエハ120が有するエレクトロクロミック素子60に対して、スイッチ25の操作によって、プラス電圧およびマイナス電圧の印加、さらには電圧の非印加の切り替えを行うことができる。
ノーズパッド部24は、サングラス100を使用者の頭部に装着する際に、各リム部21における使用者の鼻に対応する縁部に設けられ、使用者の鼻に当接し、このとき使用者の鼻の当接部に対応した形状をなしている。これにより、装着状態を安定的に維持することができる。
フレーム20を構成する各部の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種金属材料や、各種樹脂材料等を用いることができる。なお、フレーム20の形状は、使用者の頭部に装着し得るものであれば、図示のものに限定されない。
レンズ30は、各リム部21に、それぞれ1つずつ装着されている。このレンズ30は、光透過性を有し、全体形状が外側に向って湾曲した板状をなす部材であり、樹脂層35(成形層)と、エレクトロクロミックウエハ150が、加熱下における熱曲げ加工により、湾曲凸面と湾曲凹面とを備える湾曲形状とされた湾曲ウエハ120とを有している。
樹脂層35は、光透過性を有し、レンズの裏側に位置し、レンズ30に、集光機能を付与する際には、この樹脂層35が集光機能を有している。
樹脂層35の構成材料としては、光透過性を有する樹脂材料であれば、特に限定されないが、例えば、各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のような各種硬化性樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられるが、中でも、後述する湾曲ウエハ120が備える第1基板11を主材料として構成する樹脂材料と、同種もしくは同一であるのが好ましい。これにより、樹脂層35と湾曲ウエハ120との密着性の向上を図ることができる。また、樹脂層35と湾曲ウエハ120(第1基板11)との間における屈折率差を低く設定することができるため、樹脂層35と湾曲ウエハ120との間において、光が乱反射されるのを的確に抑制または防止し得ることから、優れた光透過率をもって、樹脂層35と湾曲ウエハ120との間で光を透過させることができる。なお、樹脂層35と湾曲ウエハ120が備える第1基板11との間における屈折率差は、0.2以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。これにより、前記屈折率差を低く設定することで得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
樹脂層35の厚さは、特に限定されず、例えば、0.5mm以上5.0mm以下であるのが好ましく、1.0mm以上3.0mm以下であるのがより好ましい。これにより、レンズ30における、比較的高い強度と、軽量化との両立を図ることができる。
湾曲ウエハ120は、樹脂層35の外側の面、すなわち、湾曲凸面上に、かかる形状に対応して湾曲形状をなして接合され、湾曲形状とされたエレクトロクロミックウエハ150(エレクトロクロミックシート)で構成されるものである。この湾曲ウエハ120をレンズ30が備えることにより、サングラス100に、エレクトロクロミックウエハ150が有するエレクトロクロミック素子60への電圧の印加の切り替えにより、任意のタイミングにおける発色と消色とが、可逆的に行われる機能が付与される。このように、湾曲ウエハ120が、エレクトロクロミックウエハ150を湾曲形状としたもので構成されるが、エレクトロクロミックウエハ150の詳細な説明は、後に行うこととする。
なお、前述の通り、サングラス100が備えるレンズ30は、集光機能を有するものであっても、集光機能を有していないもののいずれであってもよい。
また、サングラス100は、前述のように、フレーム20を有するものの他、ファッション性、軽量性等の観点から、フレームのない構成をなすものであってもよい。
さらに、本実施形態では、レンズ30を備える眼鏡を、サングラス100に適用することとしたが、これに限定されず、この眼鏡は、例えば、度付き眼鏡、伊達メガネ、風雨、塵芥、薬品等から眼を保護するゴーグル等であってもよい。
以上のような構成をなすサングラス100(眼鏡)において、サングラス100が備えるレンズ30は、例えば、以下に示すような、レンズ30の製造方法を経ることで製造される。
<レンズの製造方法>
図2は、エレクトロクロミックウエハを湾曲形状とした湾曲ウエハを有するレンズの製造方法を説明するための模式図、図3は、エレクトロクロミックウエハを得るのに用いられる素子封止連結シートを示す平面図、図4は、エレクトロクロミックウエハの実施形態を示す平面図、図5は、図4に示すエレクトロクロミックウエハの主要部分におけるA-A線縦断面図、図6は、湾曲ウエハを有するレンズを示す平面図、図7は、図6に示すレンズの主要部分におけるB-B線縦断面図、図8は、図4に示すエレクトロクロミックウエハおよび図6に示すレンズが備えるエレクトロクロミック素子を示す縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図2、図5、図7、図8の上側および図3、図4、図6の紙面手前側を「上」、図2、図5、図7、図8の下側および図3、図4、図6の紙面奥側を「下」と言う。また、図7において、湾曲ウエハ120は、実際には湾曲状をなしているが、説明の便宜上、平板状をなすものとして記載している。
以下、エレクトロクロミックウエハ150を湾曲形状とした湾曲ウエハ120を備えるレンズ30の製造方法の各工程を詳述する。
[1]まず、第1基板11と第2基板12と封止部55とエレクトロクロミック素子60とを有し、封止部55により区画された着色領域70に対応して設けられた複数のエレクトロクロミック素子60が第1基板11と第2基板12との間に挟持された素子封止連結シート110を光学シートとして用意する(図3参照)。この素子封止連結シート110において、複数のエレクトロクロミック素子60は、第1基板11と第2基板12との間で、封止部55を介して連結され第1基板11と第2基板12と封止部55とで封止されている。すなわち、素子封止連結シート110は、図3に示すように、全体形状が平板状(シート状)をなしており、その面方向において、複数のエレクトロクロミックウエハ150が格子状をなして配置された状態で連結された構成をなしているものである。
そして、この素子封止連結シート110の両面に、保護フィルム50(マスキングテープ)を貼付することで、素子封止連結シート110の両面に保護フィルム50が貼付された連結シート積層体210を得る(図2(a)参照)。
[2]次に、図2(b)に示すように、用意した連結シート積層体210を、すなわち、素子封止連結シート110の両面に保護フィルム50を貼付した状態で、素子封止連結シート110を、各エレクトロクロミック素子60に対応して、その厚さ方向に打ち抜くことで、連結シート積層体210が平面視で円形状をなすものに個片化された、素子積層体250を得る。すなわち、両面に保護フィルム50を貼付した状態をなして、各エレクトロクロミック素子60に対応して、円形状に個片化されたエレクトロクロミックウエハ150(個片化ウエハ)を得る(図4、図5参照)。
[3]次に、図2(c)に示すように、円形状に個片化された素子積層体250に対して、加熱下で熱曲げ加工を施すことで、素子積層体250を、一方の面側が湾曲凹面とされ、他方の面側が湾曲凸面とされた湾曲形状をなす湾曲素子積層体220とする。これにより、平板状をなすエレクトロクロミックウエハ150(個片化ウエハ)を、両面に保護フィルム50が貼付された状態で、湾曲形状をなす湾曲ウエハ120とすることができる。
この熱曲げ加工は、通常、プレス成形または真空成形により実施される。
この際の素子積層体250(エレクトロクロミックウエハ150)の加熱温度(成形温度)は、後述の通り、本実施形態では、エレクトロクロミックウエハ150が基板11、12を備え、基板11、12の溶融または軟化温度を考慮して、好ましくは110℃以上170℃以下程度、より好ましくは130℃以上160℃以下程度に設定される。加熱温度をかかる範囲内に設定することにより、エレクトロクロミックウエハ150の変質・劣化を防止しつつ、エレクトロクロミックウエハ150を軟化または溶融状態として、エレクトロクロミックウエハ150を確実に熱曲げして、湾曲形状をなす湾曲ウエハ120とすることができる。
[4]次に、熱曲げがなされた湾曲ウエハ120から、保護フィルム50を剥離させる。その後、図2(d)に示すように、湾曲形状とされた湾曲凹面を備える金型40に、金型40の湾曲凹面と湾曲ウエハ120の湾曲凸面とが当接するようにして、湾曲ウエハ120を吸着させた状態で、例えば、インサート射出成形法等を用いて、この湾曲ウエハ120の湾曲凹面に、樹脂材料を主材料として構成される樹脂層35(成形層)を射出成形する。すなわち、溶融状態とされた樹脂層35の構成材料を、湾曲ウエハ120の湾曲凹面に、接触させた状態で冷却して固化させることにより、湾曲ウエハ120の湾曲凹面に、接着剤層等を介することなく、樹脂層35を、直接、接触させた状態で成形する。これにより、熱曲げがなされた湾曲ウエハ120と、樹脂層35とを備えるレンズ30が製造される。
この樹脂層35を射出成形する際における、溶融状態とするための樹脂層35の構成材料の加熱温度(成形温度)は、樹脂層35の構成材料の種類に応じて適宜設定されるが、樹脂層35の構成材料が、後述する湾曲ウエハ120が備える第1基板11の構成材料と、同種もしくは同一である場合、好ましくは180℃以上320℃以下程度、より好ましくは230℃以上300℃以下程度に設定される。加熱温度をかかる範囲内に設定することにより、湾曲ウエハ120の湾曲凹面に、溶融状態とされた樹脂層35の構成材料を、確実に供給することができる。
また、インサート射出成形法の中でも、射出圧縮成形法が好ましく用いられる。射出圧縮成形法は、金型40の中に樹脂層35を形成するための樹脂材料を低圧で射出した後、金型を40高圧で閉じてこの樹脂材料に圧縮力を加える方法をとるため、成形体としての樹脂層35ひいてはレンズ30に成形歪みや成形時の樹脂分子の局所的配向に起因する光学的異方性が生じにくいことから好ましく用いられる。また、樹脂材料に対して均一に加わる金型圧縮力を制御することにより、一定比容で樹脂材料を冷却することができるので、寸法精度の高い樹脂層35を得ることができる。
そして、製造されたレンズ30を、図6に示すように、その縁部を切削するトリミング加工を施すことで、その形状がリム部21の内側の形状に合致する切取物とされ、その後、このレンズ30(切取物)を、リム部21の内側に装着することで、サングラス100として使用される。
以上のような工程を経る、レンズ30の製造方法において、前記工程[2]で、素子封止連結シート110を、円形状に個片化する(打ち抜く)ことで得られるエレクトロクロミックウエハ150は、前記工程[2]における素子封止連結シート110の打ち抜きによるエレクトロクロミックウエハ150の形成や、エレクトロクロミックウエハ150に対する熱曲げ加工による湾曲ウエハ120の形成、前記工程[3]におけるエレクトロクロミックウエハ150に対する熱曲げ加工による湾曲ウエハ120の形成、および、前記工程[4]におけるエレクトロクロミックウエハ150が湾曲形状とされた湾曲ウエハ120の湾曲凹面に対する樹脂層35の形成により、湾曲形状とされたり、熱履歴を経ること等に起因して、エレクトロクロミックウエハ150(湾曲ウエハ120)が、その内部に備えるエレクトロクロミック素子60に不具合(エラー)が生じることがある。そのため、前記工程[2]の後、前記工程[3]の後、および前記工程[4]の後に、エレクトロクロミックウエハ150が備えるエレクトロクロミック素子60における不具合の有無を知ること、すなわち、エレクトロクロミック素子60の検査を容易に実施することができれば、不良品となるレンズ30の生産を排除することができる。
そこで、以下では、本発明の検査装置および検査方法を、エレクトロクロミックウエハ150(湾曲ウエハ120)に適用して、エレクトロクロミックウエハ150(湾曲ウエハ120)が備えるエレクトロクロミック素子60における不具合(導通)の有無を検査する場合を一例に説明する。
また、上記の要求に対して、本発明の検査装置および検査方法において検査がなされるエレクトロクロミックウエハ150すなわち被検査物であるエレクトロクロミックシートとして、本実施形態では、エレクトロクロミック素子60が備える第1電極13および第2電極14に電気的に接続された第1導電ポスト17および第2導電ポスト18が、それぞれ、エレクトロクロミックウエハ150の面方向(長手方向)における端部において、エレクトロクロミックウエハ150の平面視で、異なる位置で露出しているものを用いる場合について説明する。
<エレクトロクロミックウエハ>
エレクトロクロミックウエハ150は、本実施形態では、図4、図5に示すように、第1基板11と、第2基板12と、封止部55と、エレクトロクロミック素子60と、第1導電ポスト17と、第2導電ポスト18と、第3導電ポスト51と、第4導電ポスト52と、第1補助電極15と、第2補助電極16と、を備えている。
以下、このエレクトロクロミックウエハ150を構成する各部材について説明する。
第1基板11は、エレクトロクロミック素子60を含む他の部材を支持するとともに、第1基板11と、第2基板12との間に、エレクトロクロミック素子60を含む他の部材を配置させる、エレクトロクロミックウエハ150の厚さ方向における最外層を構成し、エレクトロクロミック素子60等を保護する保護層としての機能を有している。
エレクトロクロミックウエハ150において、第1基板11と第2基板12とが、エレクトロクロミックウエハ150の厚さ方向における最外層を構成することで、エレクトロクロミック素子60を含む他の部材は、エレクトロクロミックウエハ150の表面に露出していない。そのため、このエレクトロクロミックウエハ150を、湾曲形状をなすものとした湾曲ウエハ120をレンズ30が備えるものに適用した際に、エレクトロクロミック素子60に砂ほこりや、さらには雨等が衝突したり、エレクトロクロミック素子60が他の部材等により摩耗されるのを、確実に防止することができる。したがって、この衝突や摩擦により、エレクトロクロミック素子60の特性に悪影響を及ぼすのを確実に防止することができる。
この第1基板11は、透明性を有する樹脂材料を主材料で構成されるものであれば、特に限定されないが、熱可塑性を有する透明樹脂(ベース樹脂)を主材料として含有するものであることが好ましい。
この透明樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂等の透明性を備える樹脂が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂であるのが好ましく、特にポリカーボネート系樹脂であるのが好ましい。ポリカーボネート系樹脂は、透明性(透光性)や剛性等の機械的強度に富み、さらに耐熱性も高いため、透明樹脂にポリカーボネート系樹脂を用いることで、第1基板11における透明性や第1基板11の耐衝撃性、耐熱性を向上させることができる。
このポリカーボネート系樹脂としては、各種の樹脂を用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、その主鎖に芳香族環を備えており、これにより、より優れた強度を有する第1基板11を得ることができる。
この芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、例えば、ビスフェノールとホスゲンとの界面重縮合反応、ビスフェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応等により合成される。
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAや、下記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノール(変性ビスフェノール)等が挙げられる。
(式(1A)中、Xは、炭素数1~18のアルキル基、芳香族基または環状脂肪族基であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基であり、mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、pは、繰り返し単位の数である。)
なお、前記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノールとしては、具体的には、例えば4,4’-(ペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ペンタン-3,3-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフェノール、1,1’-(シクロヘキサンジイル)ジフェノール、2-シクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,3-ビスシクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
特に、ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールに由来する骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を主成分とするのが好ましい。かかるビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を用いることにより、第1基板11は、さらに優れた強度を発揮する。
また、第1基板11は、光透過性を有していれば、その色は、無色であっても、赤色、青色、黄色等、如何なる色であってもよい。
これらの色の選択は、第1基板11に染料または顔料を含有させることにより可能になる。この染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、および塩基性染料等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
染料の具体例としては、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクトブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35等が挙げられる。
第1基板11は、必要に応じて、上述した、透明樹脂、染料または顔料の他に、さらに、酸化防止剤、フィラー、可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
また、この第1基板11は、延伸されたものであってもよいし、非延伸のものであってもよい。
さらに、第1基板11の波長589nmでの屈折率は、1.3以上1.8以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。第1基板11の屈折率n1を上記数値範囲とすることにより、スイッチ25のON/OFFの切り替えにより、発色(着色)と消色とを、任意のタイミングで切り替えることができるエレクトロクロミック素子60としての機能を阻害するのを、的確に抑制または防止することができる。
第1基板11は、その平均厚さが好ましくは0.1mm以上10.0mm以下、より好ましくは0.3mm以上5.0mm以下に設定される。第1基板11の平均厚さがかかる範囲内に設定されることで、エレクトロクロミックウエハ150の薄型化を図りつつ、エレクトロクロミックウエハ150に撓みが生じるのを的確に抑制または防止することができる。
第2基板12は、第1基板11と対向して配置されており、エレクトロクロミック素子60を含む他の部材を支持するとともに、第1基板11と第2基板12との間に、エレクトロクロミック素子60を含む他の部材を配置させる、エレクトロクロミックウエハ150の厚さ方向における最外層を構成し、エレクトロクロミック素子60を保護する保護層としての機能を有している。
エレクトロクロミックウエハ150において、第1基板11と第2基板12とが、エレクトロクロミックウエハ150の厚さ方向における最外層を構成することで、エレクトロクロミック素子60を含む他の部材は、エレクトロクロミックウエハ150の表面に露出していない。そのため、このエレクトロクロミックウエハ150を、湾曲形状をなすものとした湾曲ウエハ120をレンズ30が備えるものに適用した際に、エレクトロクロミック素子60に砂ほこりや、さらには雨等が衝突したり、エレクトロクロミック素子60が他の部材等により摩耗されるのを、確実に防止することができる。したがって、この衝突や摩擦により、エレクトロクロミック素子60の特性に悪影響を及ぼすのを確実に防止することができる。
また、第2基板12を構成する構成材料としては、第1基板11で挙げたのと同様のもので構成することができる。なお、第2基板12の構成材料と、第1基板11の構成材料とは、同一(同種)のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
さらに、この第2基板12は、第1基板11と同様に、延伸されたものであってもよいし、非延伸のものであってもよい。
また、第2基板12の波長589nmでの屈折率は、第1基板11の屈折率n1と、同じであってもよく、異なっていてもよいが、1.3以上1.8以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。第2基板12の屈折率n2を上記数値範囲とすることにより、スイッチ25のON/OFFの切り替えにより、発色と消色とを、任意のタイミングで切り替えることができるエレクトロクロミック素子60としての機能を阻害するのを、的確に抑制または防止することができる。
また、第2基板12は、その平均厚さが、第1基板11と、同じであってもよく、異なっていてもよいが、例えば、0.1mm以上10.0mm以下であるのが好ましく、0.3mm以上5.0mm以下であるのがより好ましい。第2基板12の平均厚さがかかる範囲内に設定されることで、エレクトロクロミックウエハ150の薄型化を図りつつ、エレクトロクロミックウエハ150に撓みが生じるのを的確に抑制または防止することができる。
エレクトロクロミック素子60は、スイッチ25のON/OFFの切り替えにより、発色(着色)と消色とを、任意のタイミングで切り替え得る発光素子であり、封止部55により区画された着色領域70に設けられている。
このエレクトロクロミック素子60は、本実施形態では、第1基板11に、第2基板12側に向かって、順次積層された、第1電極13および第1エレクトロクロミック層63と、第2基板12に、第1基板11側に向かって、順次積層された、第2電極14および第2エレクトロクロミック層64と、第1エレクトロクロミック層63と第2エレクトロクロミック層64との間に充填された電解質層65とを備えている(図8参照)。
第1電極13および第2電極14は、それぞれ、スイッチ25の切り替えにより、エレクトロクロミック素子60にプラス電圧またはマイナス電圧を印加した際に、第1電極13と第2電極14との間に電子を供給するか、または、第1電極13と第2電極14との間から電子を受け取る電極である。
これら第1電極13および第2電極14の構成材料としては、透明性を有する導電材料であれば、特に限定されるものではないが、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、FTO(F-doped Tin Oxide)、ATO(Antimony Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In2O3、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
第1電極13および第2電極14は、その平均厚さが、エレクトロクロミック層63、64の酸化還元反応に必要な電気抵抗値が得られるように調整され、例えば、第1電極13および第2電極14の構成材料としてITOを用いた場合には、それぞれ独立して、好ましくは50nm以上200nm以下程度、より好ましくは100nm以上150nm以下程度に設定される。
第1エレクトロクロミック層63は、酸化反応によって着色を呈する材料を主材料として含有し、これにより、着色がなされる層である。
この第1エレクトロクロミック層63に、主材料として含まれる、酸化反応によって着色を呈する材料としては、特に限定されず、例えば、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物を重合した重合物、トリフェニルアミンのようなトリアリールアミン誘導体、ビスアクリダン化合物、プルシアンブルー型錯体、ベンジジンおよび酸化ニッケルが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
プルシアンブルー型錯体としては、例えば、Fe(III)4[Fe(II)(CN)6]3からなる材料が挙げられる。
これらの中でも、定電圧で動作可能であり、繰返し耐久性に優れ、高コントラストなエレクトロクロミック素子が得られる点から、特に、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物を重合した重合物が好ましく用いられる。
なお、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物は、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物とは異なる他のラジカル重合性化合物を含み、かかる組成物を重合した重合物は、これらのラジカル重合性化合物が架橋した架橋物で構成されていてもよい。
このような第1エレクトロクロミック層63の平均厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上30μm以下程度であるのが好ましく、0.4μm以上10μm以下程度であるのがより好ましい。
第2エレクトロクロミック層64は、還元反応によって透明から着色を呈するエレクトロクロミック材料を主材料として含有し、これにより、着色がなされる層である。
第2エレクトロクロミック層64は、第1エレクトロクロミック層63と同じ色調のレクトロクロミック材料を用いることが好ましい。これにより、最大発色濃度の向上が図られ、その結果、コントラストを改善することできる。
また、これに対して、異なる色調の材料を用いた場合には、混色が可能となる。また、第1電極13と第2電極14との両極側で、酸化反応と還元反応とにより着色させることで、エレクトロクロミック素子60の駆動電圧を効果的に低減し得ることから、エレクトロクロミック素子60の繰返し耐久性の向上が図れる。
第2エレクトロクロミック層64に、主材料として含まれる、還元反応によって着色を呈する材料としては、特に限定されず、例えば、無機エレクトロクロミック化合物、有機エレクトロクロミック化合物、導電性ポリマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機エレクトロクロミック化合物としては、例えば、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化イリジウム、酸化チタンなどが挙げられ、中でも、酸化タングステンが好ましい。酸化タングステンは、還元電位が低いことに基づいて、発消色電位が低く、さらに、無機材料であるため耐久性に優れることから、好ましく用いられる。
また、有機エレクトロクロミック化合物としては、例えば、アゾベンゼン系、アントラキノン系、ジアリールエテン系、ジヒドロプレン系、ジピリジン系、スチリル系、スチリルスピロピラン系、スピロオキサジン系、スピロチオピラン系、チオインジゴ系、テトラチアフルバレン系、テレフタル酸系、トリフェニルメタン系、トリフェニルアミン系、ナフトピラン系、ビオロゲン系、ピラゾリン系、フェナジン系、フェニレンジアミン系、フェノキサジン系、フェノチアジン系、フタロシアニン系、フルオラン系、フルギド系、ベンゾピラン系、メタロセン系等の低分子系有機エレクトロクロミック化合物などが挙げられ、中でも、ビオロゲン系化合物、ジピリジン系化合物が好ましい。これらの化合物は、発消色電位が低く、良好な色値を示すことから好ましく、用いられる。
ビオロゲン系化合物としては、例えば、特許第3955641号公報、特開2007-171781号公報等に記載のものが挙げられる。また、ジピリジン系化合物としては、例えば、特開2007-171781号公報、特開2008-116718号公報等に記載のものが挙げられる。
さらに、導電性ポリマーとしては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、またはこれらの誘導体等が挙げられる。
このような第2エレクトロクロミック層64の平均厚さは、特に限定されないが、0.2μm以上5.0μm以下程度であるのが好ましく、1.0μm以上4.0μm以下程度であるのがより好ましい。前記平均厚さが、0.2μm未満であると、エレクトロクロミック材料の種類によっては、発色濃度が得難くなるおそれがあり、5.0μmを超えると、製造コストが増大すると共に、エレクトロクロミック材料の種類によっては、着色によって視認性が低下するおそれがある。
電解質層65は、第1エレクトロクロミック層63と第2エレクトロクロミック層64との間に充填され、イオン電導性を有する電解質を含有するものである。
この電解質としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩や酸類、アルカリ類の支持塩等が挙げられ、具体的には、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3COO、KCl、NaClO3、NaCl、NaBF4、NaSCN、KBF4、Mg(ClO4)2、Mg(BF4)2等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの他、電解質の材料としては、イオン性液体を用いることもできる。このイオン性液体の中でも、有機のイオン性液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造を有していることから、取り扱いが容易であるため好ましく用いられる。
有機のイオン性液体の分子構造として、カチオン成分としては、例えば、N,N-ジメチルイミダゾール塩、N,N-メチルエチルイミダゾール塩、N,N-メチルプロピルイミダゾール塩等のイミダゾール誘導体;N,N-ジメチルピリジニウム塩、N,N-メチルプロピルピリジニウム塩等のピリジニウム誘導体;トリメチルプロピルアンモニウム塩、トリメチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム系等が挙げられる。また、アニオン成分としては、大気中での安定性を考慮して、フッ素を含んだ化合物を用いることが好ましく、例えば、BF4
-、CF3SO3
-、PF4
-、(CF3SO2)2N-、(SO2F)2N-等が挙げられる。
このような電解質の材料としては、カチオン成分とアニオン成分とを任意に組み合わせたイオン性液体であることが好ましい。
イオン性液体は、光重合性モノマー、オリゴマー、および液晶材料のいずれかに直接溶解させてもよい。なお、これらの材料に対する溶解性が悪い場合には、少量の溶媒に溶解させた溶液を得た後に、この溶液を光重合性モノマー、オリゴマー、および液晶材料のいずれかと混合することで溶解させてもよい。
溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2-ジメトキシエタン、1,2-エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類、またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。
第1エレクトロクロミック層63と第2エレクトロクロミック層64との間に、電解質層65として、充填される電解質は、低粘性の液体である場合の他、例えば、ゲル状や高分子架橋型、液晶分散型等の様々な形態をとることが可能である。そして、これらの中でも、電解質は、ゲル状、固体状に形成することが好ましい。これにより、エレクトロクロミック素子60の素子強度向上や、信頼性向上等を図ることができる。
電解質層65を、固体状をなすものとする方法としては、例えば、電解質と溶媒とを含む液体をポリマー樹脂中に保持する方法が好ましい。これにより、電解質層65の高いイオン伝導度と固体強度との双方を得ることができる。また、ポリマー樹脂としては、例えば、光硬化性樹脂であることが好ましい。これにより、熱重合や、溶媒の気化により固体状をなす電解質層65を得る場合と比較して、低温かつ短時間で、固体状をなす電解質層65ひてはエレクトロクロミック素子60を得ることができる。
電解質層65の平均厚さは、特に限定されないが、好ましくは10μm以上100μm以下程度、より好ましくは20μm以上80μm以下程度に設定される。
なお、第1電極13と第2電極14との間における各層の間には、例えば、絶縁性多孔質層、保護層等の中間層が設けられていてもよい。
エレクトロクロミック素子60を、上記のような構成のものとすることで、スイッチ25のON/OFFの切り替えにより、発色(着色)と消色とを、任意のタイミングで切り替え得るものとし得る。
なお、本実施形態では、エレクトロクロミック素子60において、第1電極13と第2電極14との間に位置する、第1エレクトロクロミック層63と電解質層65と第2エレクトロクロミック層64とにより、着色層が構成されるが、この着色層は、かかる構成のものに限定されず、電圧の印加により着色を呈するものであればよく、例えば、第1エレクトロクロミック層63と第2エレクトロクロミック層64とのうちいずれか一方が省略されたものであってもよい。
封止部55は、第1基板11と第2基板12との間に配置され、着色領域70を区画して、エレクトロクロミック素子60を、この着色領域70内に封止する機能を有している。
この封止部55の構成材料としては、透明性を有する絶縁性材料であれば、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂材料や、シリコン酸化物(SiO2)、シリコン酸窒化物(SiON)、アルミ酸化物(Al2O3)等の無機酸化物等が挙げられる。
封止部55は、その平均厚さが、エレクトロクロミック素子60の平均厚さに応じて調整され、例えば、好ましくは20μm以上100μm以下程度、より好ましくは40μm以上80μm以下程度に設定される。
以上のように、エレクトロクロミックウエハ150は、第1基板11と第2基板12との間において、封止部55で区画された着色領域70にエレクトロクロミック素子60が配置された構成をなしている。
そして、かかる構成をなすエレクトロクロミックウエハ150において、エレクトロクロミック素子60が備える第1電極13および第2電極14は、それぞれ、図3~図7に示すように、エレクトロクロミックウエハ150を用いてレンズ30を形成して、リム部21の内側に装着した際に、リム部21にブリッジ部22およびテンプル部23が連結される連結部に対応する位置において、封止部55で区画された着色領域70を越えて(延伸して)、パターニングされた配線として、引き巡らさられている。
第1導電ポスト17は、上記のように、配線として、着色領域70から延伸して設けられた第1電極13に、平面視で重なるように、封止部55を貫通して設けられた貫通孔である第1スルーホール53を埋めるように設けられている。すなわち、第1基板11と、封止部55および第1導電ポスト17との間において、配線として着色領域70を越えて設けられた、第1電極13は、第1導電ポスト17に到達するまで延伸されている(図4、図5参照)。
そして、この第1導電ポスト17は、第1補助電極15を介して、第1電極13に、電気的に接続され、さらに、エレクトロクロミックウエハ150の面方向における端部において、エレクトロクロミックウエハ150を用いてレンズ30を形成して、リム部21の内側に装着した際に、エレクトロクロミックウエハ150の平面視で、ブリッジ部22側(図4、図5における右側)となる位置で露出している。
また、第2導電ポスト18は、配線として、着色領域70から延伸して設けられた第2電極14に、平面視で重なるように、封止部55を貫通して設けられた貫通孔である第2スルーホール54を埋めるように設けられている。すなわち、第2基板12と、封止部55および第2導電ポスト18との間において、配線として着色領域70を越えて設けられた、第2電極14は、第2導電ポスト18に到達するまで延伸されている(図4、図5参照)。
そして、この第2導電ポスト18は、第2補助電極16を介して、第2電極14に、電気的に接続され、さらに、エレクトロクロミックウエハ150の面方向における端部、すなわちエレクトロクロミックウエハ150の外周面において、エレクトロクロミックウエハ150を用いてレンズ30を形成して、リム部21の内側に装着した際に、テンプル部23側(図4、図5における左側)となる位置で露出している。
このように、エレクトロクロミックウエハ150の面方向(長手方向)における端部、すなわち、図4に示すように、全体形状が円盤状(厚さの薄い円柱状)をなすエレクトロクロミックウエハ150の外周面において、エレクトロクロミックウエハ150の平面視で、ブリッジ部22側とテンプル部23側とのように、異なる位置で第1導電ポスト17と第2導電ポスト18とが露出しており、これら第1導電ポスト17と第2導電ポスト18とが、それぞれ、第1電極13と第2電極14とに電気的に接続されている。
したがって、エレクトロクロミックウエハ150の面方向における端部において、エレクトロクロミックウエハ150の平面視で、異なる位置で露出する第1導電ポスト17と第2導電ポスト18とを介して、第1電極13と第2電極14との間に電圧を印加し得る。すなわち、第1導電ポスト17と第2導電ポスト18とを、第1電極13と第2電極14との間に電圧を印加する際の接続端子として用いることができる。よって、前記工程[2]の後や、前記工程[3]の後、および前記工程[4]の後に、エレクトロクロミックウエハ150(湾曲ウエハ120)に対して、本発明の検査装置500を用いた検査方法(本発明の検査方法)を適用して、第1導電ポスト17と第2導電ポスト18とを介して、第1電極13と第2電極14との間に電圧を印加することにより、エレクトロクロミックウエハ150が、その内部に備える、エレクトロクロミック素子60の検査を容易に実施することができ、よって、エレクトロクロミックウエハ150の内部に設けられたエレクトロクロミック素子60における不具合の発生の有無を容易に知ることができる。すなわちエレクトロクロミックウエハ150が備えるエレクトロクロミック素子60の検査を実施することができるが、その詳細については後に説明することとする。
これら第1導電ポスト17および第2導電ポスト18の構成材料としては、導電材料であれば、特に限定されるものではないが、例えば、銀ペーストのような導電性ペーストが挙げられる他、金および銅等の金属またはその合金等が挙げられる。
また、第1導電ポスト17および第2導電ポスト18は、それぞれ独立して、その平均厚さが好ましくは20μm以上100μm以下程度、より好ましくは40μm以上80μm以下程度に設定される。エレクトロクロミックウエハ150の面方向における端部で露出する第1導電ポスト17と第2導電ポスト18との平均厚さを、かかる範囲内に設定することで、第1導電ポスト17と第2導電ポスト18とを、第1電極13と第2電極14との間に電圧を印加する際の接続端子として、容易に用いることができる。
なお、第1導電ポスト17と第2導電ポスト18とは、前述の通り、エレクトロクロミックウエハ150の面方向における端部、すなわちエレクトロクロミックウエハ150の外周面において、エレクトロクロミックウエハ150の平面視で、異なる位置で露出しているが、これら第1導電ポスト17および第2導電ポスト18の前記端部における露出は、以下のようにして実現される。すなわち、前記工程[2]において、素子封止連結シート110を、各エレクトロクロミック素子60に対応して、その厚さ方向に打ち抜くことで、平面視で円形状をなすものに個片化されたエレクトロクロミックウエハ150を得る際に、この打ち抜きを、平面視で第1導電ポスト17および第2導電ポスト18を通過するように実施することで実現することができる。
また、第1導電ポスト17および第2導電ポスト18を通過する、素子封止連結シート110の打ち抜きにより、第1スルーホール53および第2スルーホール54は、それぞれ、その壁部(内周面)の一部が欠損したものとなるが、本明細書中では、このような欠損が生じているものも含めてスルーホールと言う。
さらに、第1スルーホール53および第2スルーホール54は、本実施形態では、ともに、封止部55を厚さ方向に貫通する貫通孔としたが、これに限定されず、第1スルーホール53は、第1基板11側から第2基板12側に向かって形成され、その底部に封止部55が残存する穴であってもよいし、第2スルーホール54は、第2基板12側から第1基板11側に向かって形成され、その頂部に封止部55が残存する穴であってもよい。
なお、かかる構成をなすエレクトロクロミックウエハ150において、第1導電ポスト17、第2導電ポスト18、第1スルーホール53および第2スルーホール54が、それぞれ、エレクトロクロミックシートにおける、第1導電部、第2導電部、第1穴部および第2穴部を構成する。
第3導電ポスト51は、配線として、着色領域70から延伸して設けられた第1電極13に、平面視で重なり、かつ、第1スルーホール53よりも着色領域70側(内側)の位置、すなわち、平面視で第1導電ポスト17とエレクトロクロミック素子60との間の位置で、封止部55を貫通して設けられた貫通孔である第3スルーホール57を埋めるように設けられている(図5参照)。そして、この第3導電ポスト51は、第1補助電極15を介して、第1電極13に、電気的に接続されている。
この第3導電ポスト51は、エレクトロクロミックウエハ150(湾曲ウエハ120)を用いて得られたレンズ30を、図6、図7に示すように、リム部21の内側に装着するために、リム部21の形状(レンズ形状)に対応して切り取られた切取物とすることを目的に、その縁部を切削するトリミング加工を施した際に、エレクトロクロミックウエハ150の平面視で、ブリッジ部22側(図6、図7における右側)となる位置で露出することとなる。
また、第4導電ポスト52は、配線として、着色領域70から延伸して設けられた第2電極14に、平面視で重なり、かつ、第2スルーホール54よりも着色領域70側(内側)の位置、すなわち、平面視で第2導電ポスト18とエレクトロクロミック素子60との間の位置で、封止部55を貫通して設けられた貫通孔である第4スルーホール58を埋めるように設けられている(図5参照)。そして、この第4導電ポスト52は、第2補助電極16を介して、第2電極14に、電気的に接続されている。
この第4導電ポスト52は、エレクトロクロミックウエハ150(湾曲ウエハ120)を用いて得られたレンズ30を、図6、図7に示すように、リム部21の内側に装着するために、リム部21の形状に対応して切り取られた切取物とすることを目的に、その縁部を切削するトリミング加工を施した際に、エレクトロクロミックウエハ150の平面視で、テンプル部23側(図6、図7における左側)となる位置で露出することとなる。
このように、レンズ30を、リム部21の内側に装着するために、その縁部を切削するトリミング加工を施して切取物とした際に、エレクトロクロミックウエハ150(湾曲ウエハ120)の面方向(長手方向)における端部、すなわち、図6に示すように、全体形状がほぼ円盤状をなす湾曲ウエハ120の外周面において、ブリッジ部22側とテンプル部23側とのように、異なる位置で第3導電ポスト51と第4導電ポスト52とが露出しており、これら第3導電ポスト51と第4導電ポスト52とが、それぞれ、第1電極13と第2電極14とに電気的に接続されている。
したがって、トリミング加工が施されたレンズ30(切取物)を、リム部21の内側に装着した際に、これら第3導電ポスト51および第4導電ポスト52は、それぞれ、テンプル部23が備えるスイッチ25および電池26に、配線を介して、電気的に接続される接続端子を構成する。
これら第3導電ポスト51および第4導電ポスト52の構成材料としては、導電材料であればよく、例えば、第1導電ポスト17および第2導電ポスト18の構成材料として挙げたのと、同様のものを用いることができる。
また、第3導電ポスト51および第4導電ポスト52は、それぞれ独立して、その平均厚さが好ましくは20μm以上100μm以下程度、より好ましくは40μm以上80μm以下程度に設定される。トリミング加工が施されたレンズ30において、エレクトロクロミックウエハ150(湾曲ウエハ120)の面方向における端部で露出する第3導電ポスト51および第4導電ポスト52の平均厚さを、かかる範囲内に設定することで、第3導電ポスト51および第4導電ポスト52を、スイッチ25および電池26に、配線を介して、電気的に接続される接続端子として、容易に用いることができる。
なお、レンズ30に対するトリミング加工により、第3スルーホール57および第4スルーホール58は、それぞれ、その壁部(内周面)の一部が欠損したものとなるが、本明細書中では、このような欠損が生じているものも含めてスルーホールと言う。
さらに、第3スルーホール57および第4スルーホール58は、本実施形態では、ともに、封止部55を厚さ方向に貫通する貫通孔としたが、これに限定されず、第3スルーホール57は、第1基板11側から第2基板12側に向かって形成され、その底部に封止部55が残存する穴であってもよいし、第4スルーホール58は、第2基板12側から第1基板11側に向かって形成され、その頂部に封止部55が残存する穴であってもよい。
また、第1スルーホール53および第3スルーホール57と、第2スルーホール54および第4スルーホール58とは、本実施形態では、それぞれ、異なるスルーホールとして、すなわち別体として封止部55に設けることとしたが、これに限定されず、例えば、第1スルーホール53と第3スルーホール57とは、封止部55を介在することなく、一体的に形成された1つのスルーホールで構成されていてもよいし、第2スルーホール54および第4スルーホール58とは、封止部55を介在することなく、一体的に形成された1つのスルーホールで構成されていてもよい。
第1補助電極15は、配線として、着色領域70から延伸して設けられた第1電極13に、第1基板11とは反対側の表面において積層して設けられ、かつ、第1スルーホール53に形成された第1導電ポスト17および第3スルーホール57に形成された第3導電ポスト51に、電気的に接続されている。すなわち、第1電極13と、第1導電ポスト17および第3導電ポスト51との間には、これらを互いに電気的に接続する第1補助電極15が形成されている。
また、第2補助電極16は、配線として、着色領域70から延伸して設けられた第2電極14に、第2基板12とは反対側の表面において積層して設けられ、かつ、第2スルーホール54に形成された第2導電ポスト18および第4スルーホール58に形成された第4導電ポスト52に、電気的に接続されている。すなわち、第2電極14と、第2導電ポスト18および第4導電ポスト52との間には、これらを互いに電気的に接続する第2補助電極16が形成されている。
これら第1補助電極15および第2補助電極16は、それぞれ、第1電極13および第2電極14の抵抗値よりも、その抵抗値が低く設定されている。そのため、第1電極13と第1補助電極15との積層体、および、第2電極14と第2補助電極16との積層体で、それぞれ、エレクトロクロミック素子60に電気的に接続された配線を構成することで、これら配線(積層体)に、より優れた電気導電性を付与することができる。
これら第1補助電極15および第2補助電極16の構成材料としては、それぞれ、第1電極13および第2電極14よりも抵抗値が低いものであれば、特に限定されないが、優れた導電性を備えるものが用いられ、例えば、銀、アルミニウム、銅、クロムおよびモリブデン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、第1補助電極15および第2補助電極16は、それぞれ独立して、その平均厚さが好ましくは1nm以上100nm以下程度、より好ましくは5nm以上50nm以下程度に設定される。これにより、第1補助電極15および第2補助電極16に、補助電極としての機能を確実に付与することができる。
以上のような構成をなしているエレクトロクロミックウエハ150の総厚は、特に限定されないが、0.3mm以上10.0mm以下であるのが好ましく、0.5mm以上5.0mm以下であるのがより好ましい。これにより、エレクトロクロミックウエハ150に優れた強度を付与しつつ、エレクトロクロミックウエハ150を、湾曲形状をなす湾曲ウエハ120に成形する際に、このエレクトロクロミックウエハ150に優れた熱成形性を付与することができる。
<検査装置>
上述したような構成をなしているエレクトロクロミックウエハ150すなわち被検査物であるエレクトロクロミックシートに対して、前記工程[2]の後、前記工程[3]の後、および前記工程[4]の後に、本発明の検査装置500を用いた検査方法(本発明の検査方法)を実施することで、エレクトロクロミックウエハ150(湾曲ウエハ120)が備えるエレクトロクロミック素子60における不具合(導通)の有無を知ることができる。そこで、以下では、エレクトロクロミックウエハ150(湾曲ウエハ120)の検査装置500および検査装置500を用いた検査方法について、順次、説明する。
<<第1実施形態>>
図9は、本発明の検査装置の第1実施形態の平面図、図10、図11は、図9に示す検査装置を用いて図4に示すエレクトロクロミックウエハを検査する検査方法を説明するための平面図である。なお、以下では、説明の都合上、図9~図11中の上側を「前」、下側を「後」と言い、図9~図11中の左側を「左」、右側を「右」と言い、図9~図11中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」と言う。
検査装置500は、エレクトロクロミックウエハ150を固定する固定手段510と、エレクトロクロミックウエハ150が備えるエレクトロクロミック素子60に電圧を印加する印加手段520と、印加手段520が備える印加電極523、525を移動させ得る移動手段530と、を備えている。
なお、検査装置500が備える固定手段510、印加手段520および移動手段530は、例えば、それぞれ、検査装置500が備えるフレーム(図示せず)に支持されている。
固定手段510は、被検査物であるエレクトロクロミックシートとしてのエレクトロクロミックウエハ150を、検査装置500に固定するものである。
なお、本実施形態では、2つのエレクトロクロミックウエハ150を、一括して検査することを目的に、固定手段510は、図10、図11に示すように、2つのエレクトロクロミックウエハ150を、前後に並んで、固定することができる構成をなしている。
この固定手段510は、図9~図11に示すように、検査装置500のほぼ中央部に、前後に並んで配置された、2つの載置台511で構成されている。そして、各載置台511において、それぞれ、その前後で立設する2つの壁部により、1つのエレクトロクロミックウエハ150を、その前後方向において挟持し、これにより、エレクトロクロミックウエハ150は、載置台511に固定される。載置台511をかかる構成をなすものとすることで、エレクトロクロミックウエハ150の平面視で、ブリッジ部22側(図4、図5における右側)となる位置で露出している第1導電ポスト17と、テンプル部23側(図4、図5における左側)となる位置で露出している第2導電ポスト18とを、左右方向における異なる位置で露出させた状態で、載置台511にエレクトロクロミックウエハ150を固定することができる。
印加手段520は、固定手段510に固定されたエレクトロクロミックウエハ150が備えるエレクトロクロミック素子60に電圧を印加するものである。
この印加手段520は、図9~図11に示すように、エレクトロクロミック素子60に電圧を印加する電源521と、電源521の正極側に配線522を介して電気的に接続された第1印加電極523と、電源521の負極側に配線522を介して電気的に接続された第2印加電極525と、エレクトロクロミック素子60への電圧の印加とエレクトロクロミック素子60の短絡との切り替えを行うスイッチング素子527と、スイッチング素子527の切り替えを操作者により行い得る手動スイッチ528とを有する。
印加手段520において、スイッチング素子527は、配線522を介して、電源521と、第1印加電極523と、第2印加電極525とに、電気的に接続されており、エレクトロクロミックウエハ150が備えるエレクトロクロミック素子60に、印加電極523、525が電気的に接続されている際に、スイッチング素子527をONとすることで、エレクトロクロミック素子60に電圧が印加され、また、スイッチング素子527をOFFとすることで、エレクトロクロミック素子60を短絡する回路形成がなされている。このように、スイッチング素子527のON/OFFの切り替えにより、エレクトロクロミック素子60を介して、電源521と第1印加電極523と第2印加電極525とが電気的に接続された導通状態と、第1印加電極523と第2印加電極525とが短絡した短絡状態との双方を取り得るように構成されている。したがって、手動スイッチ528の操作者による操作により、スイッチング素子527の切り替えを行うことで、エレクトロクロミック素子60への電圧の印加と、エレクトロクロミック素子60の短絡との切り替えを、所望のタイミングで行うことができる。
また、第1印加電極523は、後述する移動手段530が接触位置に位置するときに、エレクトロクロミックウエハ150の平面視で、ブリッジ部22側(図10、図11における右側)となる位置で露出している第1導電ポスト17に接触する接触部材524を備え、さらに、第2印加電極525は、移動手段530が接触位置に位置するときに、エレクトロクロミックウエハ150の平面視で、テンプル部23側(図10、図11における左側)となる位置で露出している第2導電ポスト18に接触する接触部材526を備えている。
これら接触部材524および接触部材526は、それぞれ、第1印加電極523および第2印加電極525において、上下方向および前後方向に対して移動可能に設けられている。したがって、第1印加電極523および第2印加電極525における、接触部材524および接触部材526の配置位置の微調整を行うことで、移動手段530が接触位置に位置するときに、接触部材524および接触部材526を、それぞれ、第1導電ポスト17および第2導電ポスト18に確実に接触させることができる。このように、第1印加電極523および第2印加電極525を、それぞれ、接触部材524および接触部材526を備える構成とすることで、第1印加電極523(接触部材524)および第2印加電極525(接触部材526)を、第1導電ポスト17および第2導電ポスト18に確実に接触させることができる。
また、これら接触部材524、526は、ぞれぞれ、導電性を有するものであれば如何なる構成をなすものであってもよく、例えば、導電性材料単独で構成されるものであってもよいが、ゴム材料および導電性材料を含有するものであるのが好ましい。これにより、接触部材524、526に、導電性を付与することができるとともに、弾性をも付与し得ることから、接触部材524、526を、導電ポスト17、18に接触させた際に、導電ポスト17、18が傷付くのを、的確に抑制または防止することができる。
接触部材524、526がゴム材料および導電性材料を含有する場合、ゴム材料は、接触部材524、526に弾性を付与するとともに、導電性材料を接触部材524、526に保持するために含まれる。そして、導電性材料は、接触部材524、526に導電性を付与するために含まれるが、その形状は、導電性材料としての機能を発揮し得るものであれば、如何なるものであってもよく、例えば、柱状(ワイヤー状)、粒子状、板状、鱗片状、中空状および不定形状等が挙げられるが、中でも、柱状であることが好ましい。
導電性材料が柱状(ワイヤー状)体をなす場合、この柱状体は、接触部材524、526の厚さ方向の両端において、接触部材524、526の形状を保持するゴム材料から、その両端部がそれぞれ突出していることが好ましい。これにより、接触部材524、526の厚さ方向における導電性を確実に確保することができる。また、この場合、柱状体は、接触部材524、526の厚さ方向に対して傾斜して、柱状体の前記両端部を除く中央部が、接触部材524、526内に埋入していることが好ましい。これにより、接触部材524、526がゴム材料を含有することにより得られる効果を顕著に発揮させて、接触部材524、526に優れた弾性を付与することができる。そのため、接触部材524、526を、導電ポスト17、18に接触させた際に、導電ポスト17、18が傷付くのを、より的確に抑制または防止することができる。
ゴム材料としては、例えば、シリコーンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、ジエン系ゴム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でもシリコーンゴムであるのが好ましい。また、導電性材料としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボン繊維のようカーボン材料、金、アルミニウム、銅、スズ、ニッケル、銀のような金属材料、酸化インジウム、酸化イットリウム、酸化スズのような金属酸化物材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、導電性材料を、柱状をなすものとする場合、導電性材料で構成される柱状体は、銅からなる芯材が金メッキされたもので構成されることが好ましい。これにより、前述した接触部材524、526としての機能を確実に発揮させることができる。
移動手段530は、印加手段520が備える印加電極523、525を、それぞれ左右方向に沿って移動させるものであり、より具体的には、第1導電ポスト17に第1印加電極523が接触し、かつ、第2導電ポスト18に第2印加電極525が接触する接触位置と、第1導電ポスト17に第1印加電極523が接触せず、かつ、第2導電ポスト18に第2印加電極525が接触しない非接触位置とに、第1印加電極523および第2印加電極525を配置させるものである。
この移動手段530は、図9~図11に示すように、第1印加電極523を移動させる第1移動部材533と、第1印加電極523の第1導電ポスト17に対する離間距離を調整する第1エアーシリンダ531と、第2印加電極525を移動させる第2移動部材534と、第2印加電極525の第2導電ポスト18に対する離間距離を調整する第2エアーシリンダ532と、エアーシリンダ531、532の作動の切り替えを操作者により行い得る手動バルブ535とを有している。
第1移動部材533は、本実施形態では、載置台511の右側に位置して、2つの第1印加電極523を、接触部材524が載置台511側を臨むようにして、前後方向に並べて固定している。そして、検査装置500が備えるフレーム(図示せず)に対して、左右方向に移動可能に、支持されている。
また、第2移動部材534は、載置台511の左側に位置して、2つの第2印加電極525を、接触部材526が載置台511側を臨むようにして、前後方向に並べて固定している。そして、検査装置500が備えるフレーム(図示せず)に対して、左右方向に移動可能に、支持されている。
第1エアーシリンダ531は、第1移動部材533に対して、載置台511と反対側(右側)に位置して、第1移動部材533を支持するとともに、その作動により、第1移動部材533の載置台511に対する左右方向における離間距離を調整し得るように、第1移動部材533を移動させる第1移動機構を構成している。これにより、第1エアーシリンダ531を作動させることで、載置台511に対して第1移動部材533を移動させることが可能となる。そのため、第1移動部材533と載置台511との離間距離を所望の大きさに設定することができる。したがって、載置台511に対するエレクトロクロミックウエハ150の固定時において、第1エアーシリンダ531の作動により第1移動部材533を移動させることで、第1導電ポスト17に第1印加電極523が接触する接触位置と、第1導電ポスト17に第1印加電極523が接触しない非接触位置とに、第1移動部材533すなわち第1印加電極523を配置させることができる。
第2エアーシリンダ532は、第2移動部材534に対して、載置台511と反対側(左側)に位置して、第2移動部材534を支持するとともに、その作動により、第2移動部材534の載置台511に対する左右方向における離間距離を調整し得るように、第2移動部材534を移動させる第2移動機構を構成している。これにより、第2エアーシリンダ532を作動させることで、載置台511に対して第2移動部材534を移動させることが可能となる。そのため、第2移動部材534と載置台511との離間距離を所望の大きさに設定することができる。したがって、載置台511に対するエレクトロクロミックウエハ150の固定時において、第2エアーシリンダ532の作動により第2移動部材534を移動させることで、第2導電ポスト18に第2印加電極525が接触する接触位置と、第2導電ポスト18に第2印加電極525が接触しない非接触位置とに、第2移動部材534すなわち第2印加電極525を配置させることができる。
また、手動バルブ535は、操作者によるON/OFFの切り替えにより、エアーシリンダ531、532の作動を制御する位置切替部として機能するものである。したがって、手動バルブ535のON/OFFの切り替えにより、第1導電ポスト17に第1印加電極523が接触するとともに、第2導電ポスト18に第2印加電極525が接触する接触位置と、第1導電ポスト17に第1印加電極523が接触せず、かつ第2導電ポスト18に第2印加電極525が接触しない非接触位置との双方に、第1移動部材533(第1印加電極523)および第2移動部材534(第2印加電極525)を配置させることができる。
以上のような構成をなす検査装置500を用いて、前記工程[2]の後、前記工程[3]の後、および前記工程[4]の後に得られた、被検査物であるエレクトロクロミックシートとしてのエレクトロクロミックウエハ150が備えるエレクトロクロミック素子60における不具合(導通)の有無が検査される。
以下、検査装置500を用いた、エレクトロクロミックウエハ150の検査方法について、順次説明する。
(検査装置を用いたエレクトロクロミックウエハの検査方法)
この検査装置500を用いたエレクトロクロミックウエハ150の検査方法は、本実施形態では、移動手段530により、第1印加電極523および第2印加電極525を、非接触位置に配置させた状態で、固定手段510にエレクトロクロミックウエハ150を固定する第1工程と、移動手段530の作動により、第1印加電極523および第2印加電極525を、非接触位置から接触位置に配置させることで、第1導電ポスト17に第1印加電極523を接触させ、かつ、第2導電ポスト18に第2印加電極525を接触させる第2工程と、第1導電ポスト17に第1印加電極523を接触させ、かつ、第2導電ポスト18に第2印加電極525を接触させて、エレクトロクロミックウエハ150が備えるエレクトロクロミック素子60に電圧が印加されることによる、着色領域70における着色の有無を確認する第3工程とを有する。
以下、検査装置500を用いたエレクトロクロミックウエハ150の検査方法の各工程について、順次、説明する。
(第1工程)
まず、移動手段530により、第1印加電極523および第2印加電極525を、非接触位置に配置させた状態で、固定手段510にエレクトロクロミックウエハ150を固定する。
(1A-1)まず、被検査物であるエレクトロクロミックシートとして、エレクトロクロミックウエハ150を用意する。このエレクトロクロミックウエハ150としては、前述したレンズの製造方法における、前記工程[2]において、素子封止連結シート110を厚さ方向に打ち抜くことで個片化された個片化ウエハとして得ることができる(図2(b)参照)。
なお、このエレクトロクロミックウエハ150は、前記工程[3]において、湾曲形状とされた湾曲ウエハ120の状態をなしていてもよいし、さらには、前記工程[4]において、湾曲ウエハ120の凹面に樹脂層35が設けられたレンズ30の状態をなしていてもよい。
(1A-2)次いで、移動手段530の作動により、第1印加電極523および第2印加電極525を、非接触位置に配置させる(図10参照)。
この移動手段530の作動は、操作者による手動バルブ535をOFFとする切り替えにより、エアーシリンダ531、532を作動させて、第1移動部材533を載置台511に対して右側に位置させるとともに、第2移動部材534を載置台511に対して左側に位置させることにより行うことができる。
(1A-3)次いで、第1印加電極523および第2印加電極525が、非接触位置に位置する状態を維持しつつ、固定手段510にエレクトロクロミックウエハ150を固定する(図10参照)。
この固定手段510に対するエレクトロクロミックウエハ150の固定は、前後に並んで配置された、各載置台511において、それぞれ、その前後で立設する2つの壁部により、1つのエレクトロクロミックウエハ150を、その前後方向において挟持することで、行うことができる。このとき、エレクトロクロミックウエハ150の平面視で、ブリッジ部22側(図4、図5における右側)となる位置で露出している第1導電ポスト17と、テンプル部23側(図4、図5における左側)となる位置で露出している第2導電ポスト18とを、第1導電ポスト17が右側となり第2導電ポスト18が左側となる、左右方向における異なる位置で露出させた状態で、固定手段510にエレクトロクロミックウエハ150を固定する。
このような工程(1A-1)~工程(1A-3)を経ることで、固定手段510にエレクトロクロミックウエハ150が固定される。
(第2工程)
次に、移動手段530により、第1印加電極523および第2印加電極525を、接触位置に配置させる。
これにより、第1導電ポスト17に第1印加電極523を接触させ、かつ、第2導電ポスト18に第2印加電極525を接触させる。
(2A-1)まず、移動手段530の作動により、第1印加電極523および第2印加電極525を、接触位置に配置させる(図11参照)。
この移動手段530の作動は、操作者による手動バルブ535をONとする切り替えにより、エアーシリンダ531、532を作動させて、第1移動部材533を載置台511に対して右側から左側に位置させるとともに、第2移動部材534を載置台511に対して左側から右側に位置させることにより行うことができる。
なお、第1印加電極523および第2印加電極525を、接触位置に配置させるのに先立って、第1印加電極523および第2印加電極525における、接触部材524および接触部材526の配置位置は、上下方向および前後方向に対して移動させることにより、予め微調整がなされている。これにより、第1印加電極523および第2印加電極525が接触位置に配置された際に、接触部材524および接触部材526を、すなわち、第1印加電極523および第2印加電極525を、それぞれ、第1導電ポスト17および第2導電ポスト18に確実に接触させることができる。
(第3工程)
次に、前記第2工程における、第1導電ポスト17に第1印加電極523を接触させ、かつ、第2導電ポスト18に第2印加電極525を接触させた状態を維持して、エレクトロクロミックウエハ150が備えるエレクトロクロミック素子60に電圧が印加されることによる、着色領域70における着色の有無を確認する。
(3A-1)まず、第1導電ポスト17に第1印加電極523を接触させ、かつ、第2導電ポスト18に第2印加電極525を接触させた状態、すなわち、第1印加電極523および第2印加電極525を、接触位置に配置させた状態で、操作者により、手動スイッチ528をONとする切り替えを行う。
これにより、エレクトロクロミック素子60と電源521とが、第1導電ポスト17と第1印加電極523と配線522と第2導電ポスト18と第2印加電極525とを介して、電気的に接続されることから、電源521によりエレクトロクロミック素子60に電圧が印加される。
このような、電源521によるエレクトロクロミック素子60への電圧の印加により、エレクトロクロミックウエハ150において、エレクトロクロミック素子60に不具合が生じていない場合には、エレクトロクロミック素子60は着色を呈することとなる。
これに対して、エレクトロクロミック素子60に不具合が生じている場合には、エレクトロクロミック素子60は、着色を呈しないか、着色を呈したとしてもその着色の程度が不十分となる。
(3A-2)次いで、第1印加電極523および第2印加電極525を、接触位置に配置させた状態を維持したまま、操作者により、手動スイッチ528をOFFとする切り替えを行う。
これにより、エレクトロクロミック素子60が、第1導電ポスト17と第1印加電極523と配線522と第2導電ポスト18と第2印加電極525とを介して、短絡する。
このような、エレクトロクロミック素子60の短絡により、エレクトロクロミックウエハ150において、エレクトロクロミック素子60に不具合が生じていない場合には、前記工程(3A-1)におけるエレクトロクロミック素子60が着色を呈する状態から消色することとなる。
これに対して、エレクトロクロミック素子60に不具合が生じている場合、前記工程(3A-1)においてエレクトロクロミック素子60が着色を呈しているときには、本工程(3A-2)におけるエレクトロクロミック素子60の短絡によって、エレクトロクロミック素子60は、消色しないか、消色したとしてもその消色の程度が不十分であったりする。また、前記工程(3A-1)においてエレクトロクロミック素子60が着色を呈していないときには、本工程(3A-2)におけるエレクトロクロミック素子60の短絡によっても、エレクトロクロミック素子60が着色を呈しない状態を維持している。
したがって、このような工程(3A-1)と、工程(3A-2)とを少なくとも1回実施して、エレクトロクロミックウエハ150が備えるエレクトロクロミック素子60における、その着色および消色を観察することで、エレクトロクロミック素子60における不具合の発生の有無を知ることができる。すなわち、前記工程(3A-1)および前記工程(3A-2)とを少なくとも1回実施した際に、エレクトロクロミック素子60が、前記工程(3A-1)において着色し、前記工程(3A-2)において消色する場合には、エレクトロクロミックウエハ150が備えるエレクトロクロミック素子60において、不具合が生じていないと判定することができる。
よって、前記工程[2]の後や、前記工程[3]の後、および、前記工程[4]の後に、エレクトロクロミックウエハ150に対して、上記のように、検査装置500を用いた検査方法を実施することで、エレクトロクロミックウエハ150の内部に設けられたエレクトロクロミック素子60における不具合の発生の有無を、容易に知ることができる。すなわち、エレクトロクロミックウエハ150が、その内部に備えるエレクトロクロミック素子60の検査を、容易に実施することができる。そのため、不良品となるレンズ30ひいてはサングラス100の生産を排除することができる。
また、検査装置500は、前述したような第1実施形態の構成のものの他、以下に示すような第2実施形態および第3実施形態の構成のものとしても、エレクトロクロミックウエハ150の内部に設けられたエレクトロクロミック素子60における不具合の発生の有無を知ることができる。
<第2実施形態>
図12は、本発明の検査装置の第2実施形態の平面図である。なお、以下では、説明の都合上、図12中の上側を「前」、下側を「後」と言い、図12中の左側を「左」、右側を「右」と言い、図12中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」と言う。
以下、図12に示す第2実施形態の検査装置500について説明するが、図9~図11に示す第1実施形態の検査装置500との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図12に示す検査装置500では、印加手段520において、スイッチング素子527の構成が異なること以外は、図9に示した検査装置500と同様である。
すなわち、本実施形態では、スイッチング素子527をOFFとした際に、エレクトロクロミック素子60を短絡させるのではなく、単にエレクトロクロミック素子60への電圧の印加がなされないように回路形成がなされている。スイッチング素子527をかかる構成をなすものとすることで、スイッチング素子527のON/OFFの切り替えにより、エレクトロクロミック素子60を介して、電源521と第1印加電極523と第2印加電極525とが電気的に接続された導通状態と、第1印加電極523と第2印加電極525とが電気的に接続されてない非導通状態との双方を取り得るように構成される。したがって、手動スイッチ528の操作者による操作により、スイッチング素子527の切り替えを行うことで、エレクトロクロミック素子60への電圧の印加と、エレクトロクロミック素子60への電圧の印加の解除との切り替えを、所望のタイミングで行うことができる。
したがって、本実施形態の検査装置500を用いたエレクトロクロミックウエハ150の検査方法では、前記第3工程の工程(3A-2)において、操作者により、手動スイッチ528をOFFとする切り替えを行うことで、エレクトロクロミック素子60への電圧の印加を解除させることができる。
このような、エレクトロクロミック素子60への電圧の印加の解除によっても、前記工程(3A-1)におけるエレクトロクロミック素子60が着色を呈する状態から、消色の状態へと変化させることができる。
よって、以上のような構成をなす本実施形態の検査装置500を用いることによっても、第1実施形態における検査装置500を用いた場合と同様に、エレクトロクロミックウエハ150の内部に設けられたエレクトロクロミック素子60における不具合の発生の有無を知ること、すなわちエレクトロクロミックウエハ150が備えるエレクトロクロミック素子60の検査を実施することができる。
ただし、検査装置500を、前記第1実施形態で記載した構成をなすものとすること、すなわち、スイッチング素子527をOFFとした際に、エレクトロクロミック素子60が短絡する構成とすることで、エレクトロクロミック素子60の消色を、より高感度に実施することができる。そのため、スイッチング素子527のON/OFFに基づく、エレクトロクロミック素子60の着色と消色とを、より高感度に切り替え得ることから、エレクトロクロミックウエハ150の検査を、より迅速かつ高感度に実施することができる。
<第3実施形態>
図13は、本発明の検査装置の第3実施形態の平面図である。なお、以下では、説明の都合上、図13中の上側を「前」、下側を「後」と言い、図13中の左側を「左」、右側を「右」と言い、図13中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」と言う。
以下、図13に示す第3実施形態の検査装置500について説明するが、図9~図11に示す第1実施形態の検査装置500との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図13に示す検査装置500では、印加手段520において、スイッチング素子527および手動スイッチ528の形成が省略されていること以外は、図9に示した検査装置500と同様である。
すなわち、本実施形態では、移動手段530の作動により、第1導電ポスト17に第1印加電極523が接触し、かつ、第2導電ポスト18に第2印加電極525が接触する接触位置に、第1移動部材533および第2移動部材534が配置された際に、エレクトロクロミック素子60への電圧の印加がなされるように構成されている。また、第1導電ポスト17に第1印加電極523が接触せず、かつ、第2導電ポスト18に第2印加電極525が接触しない非接触位置に、第1移動部材533および第2移動部材534が配置された際に、エレクトロクロミック素子60への電圧の印加がなされないように構成されている。
よって、本実施形態の検査装置500では、移動手段530が備える手動バルブ535の操作者による操作により、接触位置と非接触位置との第1移動部材533および第2移動部材534の配置位置の切り替えを行うことで、エレクトロクロミック素子60への電圧の印加と、エレクトロクロミック素子60への電圧の印加の解除との切り替えを、所望のタイミングで行うことができる。
したがって、本実施形態の検査装置500を用いたエレクトロクロミックウエハ150の検査方法では、前記第3工程を省略して、前記工程(2A-1)と、前記工程(1A-2)とを実施することにより、エレクトロクロミック素子60への電圧の印加と、エレクトロクロミック素子60への電圧の印加の解除とを、切り替えることができる。
よって、以上のような構成をなす本実施形態の検査装置500を用いることによっても、第1実施形態における検査装置500を用いた場合と同様に、エレクトロクロミックウエハ150の内部に設けられたエレクトロクロミック素子60における不具合の発生の有無を知ること、すなわちエレクトロクロミックウエハ150が備えるエレクトロクロミック素子60の検査を実施することができる。
ただし、検査装置500を、前記第1実施形態で記載した構成をなすものとすることで、すなわち、スイッチング素子527および手動スイッチ528を印加手段520が備える構成とすることで、エレクトロクロミック素子60の着色とエレクトロクロミック素子60の消色との切り替えを、より容易かつ高感度に実施することができるため、エレクトロクロミックウエハ150の検査を、より迅速かつ高感度に実施することができる。
また、前記第1実施形態~第3実施形態では、被検査物であるエレクトロクロミックシートとしてのエレクトロクロミックウエハ150が、エレクトロクロミックウエハ150の外周面で露出する導電ポスト17、18を備える場合について説明したが、エレクトロクロミックウエハ150は、この導電ポスト17、18の形成が省略されたものであってもよい。この場合、図14に示すように、エレクトロクロミックウエハ150を、第1基板11を貫通して第1電極13に電気的に接続された第1導電部材551と、第1基板11を貫通して第4導電ポスト52に電気的に接続された第2導電部材552とを備えるものとし、さらに、検査装置500において、移動手段530が接触位置に位置するときに、接触部材524が第1導電部材551に接触し、接触部材526が第2導電部材552に接触するように、印加電極523、525における接触部材524、526の配置位置を調整することで、かかる構成をなすエレクトロクロミックウエハ150に対しても、検査装置500を用いた検査方法を適用することができる。なお、かかる構成をなすエレクトロクロミックウエハ150においては、第3導電ポスト51、第4導電ポスト52、第3スルーホール57および第4スルーホール58が、それぞれ、エレクトロクロミックシートにおける、第1導電部、第2導電部、第1穴部および第2穴部を構成する。
さらに、前記第1実施形態~第3実施形態では、被検査物であるエレクトロクロミックシートとして、前記工程[2]の後、前記工程[3]の後、および前記工程[4]の後のエレクトロクロミックウエハ150(湾曲ウエハ120)を、検査装置500を用いて検査することとしたが、被検査物であるエレクトロクロミックシートとしては、これらのものに限定されず、例えば、前記工程[4]において、レンズ30の縁部を切削するトリミング加工を施すことで、その形状がリム部21の内側の形状に合致する切取物とされたレンズ30(図6、図7参照)であってもよい。この場合、図7に示すように、レンズ30の面方向(長手方向)における端部において、レンズ30の平面視で、第3導電ポスト51および第4導電ポスト52がそれぞれ異なる位置で露出していることから、検査装置500において、移動手段530が接触位置に位置するときに、接触部材524が第3導電ポスト51に接触し、接触部材526が第4導電ポスト52に接触するように、印加電極523、525における接触部材524、526の配置位置を調整することで、かかる構成をなすレンズ30に対しても、検査装置500を用いた検査方法を適用することができる。なお、かかる構成をなすレンズ30(切取物)においては、第3導電ポスト51、第4導電ポスト52、第3スルーホール57および第4スルーホール58が、それぞれ、エレクトロクロミックシートにおける、第1導電部、第2導電部、第1穴部および第2穴部を構成する。
また、被検査物であるエレクトロクロミックシートとしては、例えば、前記工程[1]において用意される、素子封止連結シート110(図3参照)であってもよい。この場合、図3に示すように、素子封止連結シート110の面方向における端部にまで形成されている第1電極13ならびに第2電極14における、この端部に対応する位置において、それぞれ、図5に示すような、第1スルーホール53および第1導電ポスト17、ならびに、第2スルーホール54および第2導電ポスト18を、素子封止連結シート110が備え、さらに、前記端部に対応する位置において、第1導電ポスト17ならびに第2導電ポスト18が素子封止連結シート110から露出する構成をなす、素子封止連結シート110とすることで、検査装置500において、移動手段530が接触位置に位置するときに、接触部材524が第1導電ポスト17に接触し、接触部材526が第2導電ポスト18に接触するように、印加電極523、525における接触部材524、526の配置位置を調整するようにすれば、かかる構成をなす素子封止連結シート110に対しても、検査装置500を用いた検査方法を適用することができる。なお、かかる構成をなす素子封止連結シート110においては、第1導電ポスト17、第2導電ポスト18、第1スルーホール53および第2スルーホール54が、それぞれ、エレクトロクロミックシートにおける、第1導電部、第2導電部、第1穴部および第2穴部を構成する。
以上、本発明の検査装置および検査方法について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、検査装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
また、本発明では、前記第1~第3実施形態で示した任意の2以上の構成を組み合わせるようにしてもよい。
また、例えば、エレクトロクロミックウエハ150が備えるエレクトロクロミック素子60を構成する各層は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、エレクトロクロミックウエハ150は、基板11、12とエレクトロクロミック素子60との間に、中間層等の他の層をさらに備えるものであってもよい。
なお、前記実施形態では、第1移動部材533および第2移動部材534を、載置台511に対して移動させる、移動機構として、それぞれ、第1エアーシリンダ531および第2エアーシリンダ532を、検査装置500(移動手段530)が備える場合について説明したが、移動機構としては、これに限定されず、第1移動部材533および第2移動部材534を、より優れた精度で位置決めする場合には、移動機構はアクチュエータ等で構成されていてもよい。