以下の各図においては、必要に応じて相互に直交する座標軸としてXYZ軸を付し、各矢印が指す方向を+方向とし、+方向と反対の方向を-方向とする。なお、+Z方向を上方ということもあり、+Z方向から見ることを平面視あるいは平面的という。また、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせている。
1.第1実施形態
1.1.液晶装置の構成
本実施形態では、電気光学装置として薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor)を備えたアクティブ駆動型の液晶装置を例示する。まず、本実施形態に係る液晶装置100の構成について図1から図3を参照して説明する。なお、図2は、図1の線分H-H’を含み、YZ平面に沿う断面を示している。
図1に示すように、本実施形態に係る液晶装置100は、素子基板10および対向基板20を備える。素子基板10と対向基板20とは、略矩形であって、対向基板20の外縁に沿って配置されるシール材60を介して重ねられて接合される。シール材60の内側には、マトリクス状に配列された複数の画素Pを含む表示領域Eが設けられる。
素子基板10は、データ線駆動回路101、2つの走査線駆動回路102、検査回路103、および複数の外部接続用端子104を有する。素子基板10は平面的に対向基板20よりも大きい。素子基板10には、対向基板20と重ならない領域に複数の外部接続用端子104が設けられ、複数の外部接続用端子104とシール材60との間にデータ線駆動回路101が設けられる。
シール材60と表示領域Eとの間には、表示領域Eを囲む見切り部24が設けられる。見切り部24は、略矩形であって、2辺がY軸に沿い、他の2辺がX軸に沿う。Y軸に沿う上記2辺には、各々走査線駆動回路102が平面的に重ねられて配置される。2つの走査線駆動回路102は、配線107を介して電気的に接続される。X軸に沿う上記2辺のうち、+Y方向の1辺には検査回路103が平面的に重ねられて配置される。検査回路103は、後述するデータ線と電気的に接続される。
データ線駆動回路101および2つの走査線駆動回路102は、外部接続用端子104と電気的に接続される。対向基板20の四隅には上下導通部106が設けられる。
図2に示すように、素子基板10、対向基板20およびシール材60に囲まれた領域に液晶層50が封入される。液晶層50は正または負の誘電異方性を有する液晶を含む。素子基板10は、基板本体としての基板10s、導光部70、TFT30を含む配線層40、画素電極15、および配向膜18を含み、これらの構成が基板10sから液晶層50に向かって上記の順番で設けられる。素子基板10の詳細な構成は後述する。
対向基板20は、基板20s、見切り部24、絶縁層25、対向電極21、および配向膜22を含み、これらが基板20sから液晶層50に向かって上記の順番で設けられる。
絶縁層25は、例えば、酸化シリコンなどの透光性の無機材料から成る。なお、本明細書において透光性とは、可視光の透過率が50%以上であることをいう。
対向電極21は、共通電極であって、例えばITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電膜から成る。対向電極21は、上述した上下導通部106を介して、素子基板10の配線層40の信号配線と電気的に接続される。
配向膜18,22には、酸化シリコンなどの無機配向膜、またはポリイミドなどの有機配向膜が用いられる。基板10s,20sには、例えば、ガラス基板や石英基板などの透光性および絶縁性を有する平板が用いられる。
液晶装置100は、透過型であって、光Lが素子基板10から入射し、液晶層50を介して対向基板20から出射される。液晶装置100には、ノーマリーホワイトモードやノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。液晶装置100は、光Lの入射側と出射側とに偏光素子を備えていてもよい。
図3に示すように、液晶装置100は、互いに絶縁された信号配線として、データ線6、走査線3および容量線8を各々複数有する。走査線3はX軸に沿って延在し、データ線6および容量線8はY軸に沿って延在する。
画素電極15、TFT30および容量素子16は、走査線3とデータ線6および容量線8とによって区分された領域に画素Pごと設けられ、画素Pの画素回路を構成する。走査線3、データ線6および容量線8などの信号配線類は、上述の配線層40に設けられる。
走査線3は、スイッチング素子であるTFT30のゲートに電気的に接続される。データ線6は、TFT30のデータ線側ソースドレイン領域に電気的に接続される。走査線3は、同一行に設けられたTFT30のオン、オフを一斉に制御する。画素電極15は、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域に電気的に接続される。
データ線6は、上述のデータ線駆動回路101に電気的に接続され、データ線駆動回路101から供給される画像信号を画素Pに供給する。画像信号は、各データ線6へ線順次に供給されてもよく、隣り合う複数のデータ線6へグループごとに供給されてもよい。
走査線3は、上述の走査線駆動回路102に電気的に接続され、走査線駆動回路102から供給される走査信号を画素Pに供給する。走査信号は、走査線3へ所定のタイミングにてパルス的に線順次で供給される。
走査信号の入力によりTFT30が一定期間オン状態とされ、画像信号が所定のタイミングで画素電極15に書き込まれる。画像信号は、画素電極15を介して液晶層50に所定レベルで書き込まれ、画素電極15と液晶層50を挟んだ対向電極21との間で一定期間保持される。保持された画像信号がリークするのを防ぐため、画素電極15と対向電極21との間に設けられた液晶容量に対して、容量素子16が電気的に並列接続される。容量素子16は、TFT30と容量線8との間の層に設けられる。
1.2.素子基板の構成
素子基板10の詳細な構成について図4を参照して説明する。図4では、図1の線分J-J’を含み、XZ平面に沿う断面の一部を拡大して示している。また、図4では、図示の便宜上、導光部70のマイクロレンズアレイにおける個々のレンズの数が実際とは異なる。
図4に示すように、素子基板10は、絶縁性基板110、配線層40、画素電極15、および配向膜18を備える。絶縁性基板110は、基板10sと導光部70とを含む。
基板10sには、空洞Sを有する凹部11が設けられる。凹部11は、基板10sの上方の表面に設けられた窪みである。凹部11は平面視にて略矩形である。空洞Sは、凹部11と導光部70とに囲まれた気密空間である。空洞Sは、空気などの気体を含んでもよく、真空であってもよい。なお、空洞Sは気密空間でなくてもよい。
基板10sの上方に導光部70が配置される。導光部70は、レンズ部材72と、第1透光層74および第2透光層76と、遮光層701とを有する。
レンズ部材72は、基板10sと一体に、且つ凹部11の底面10tと空洞Sを介して離間して設けられる。レンズ部材72は、複数のレンズ721を有するマイクロレンズアレイ720を含む。レンズ721は、基板10s側に向かって突出する凸状レンズであって、断面形状が略半円状の曲面を有する。複数のレンズ721は、上述した複数の画素Pのそれぞれに、平面的に対応して配置される。複数のレンズ721が平面的にマトリクス状に配置されて、マイクロレンズアレイ720が形成される。レンズ部材72の形成材料としては、酸化シリコン、窒化シリコンなどが挙げられる。本実施形態では、レンズ部材72は酸化シリコンから成る。
レンズ部材72は、貫通孔722,723を有する。貫通孔722,723はレンズ部材72を±Z方向に貫通する。貫通孔722は、マイクロレンズアレイ720の+X方向に設けられる。貫通孔723は、マイクロレンズアレイ720の-X方向に設けられる。
レンズ部材72と凹部11の空洞Sとの間、すなわちレンズ部材72における空洞Sに面する表面と、凹部11の底面10tを含む内面とに、反射防止部材80が設けられる。反射防止部材80は、上記の箇所の他に、後述する第1透光層74の接続部742,743とレンズ部材72との界面などにも設けられる。なお、反射防止部材80は、上記の箇所に全て設けられることが好ましいが、レンズ部材72における空洞S側の表面以外には設けられずともよい。
レンズ部材72は、空洞Sに対して反射防止部材80を介して配置される。マイクロレンズアレイ720は、空洞S側から入射する光Lを画素Pごとに集光する。各画素Pの平面的な中心または重心と各レンズ721の主点とが、対応されて配置される。例えば、光Lのうち、各レンズ721の主点を通過するように-Z方向からマイクロレンズアレイ720に入射する成分は、マイクロレンズアレイ720内を直進して図示しない液晶層50へ出射される。
一方、各レンズ721に対して、平面的に上記主点と重ならない領域に入射した光Lの成分は、空洞Sとレンズ部材72との屈折率差によって画素Pの平面的な中心側へ向かって屈折される。すなわち、光Lのうちで、マイクロレンズアレイ720がない場合に配線層40の信号配線類などに遮られる成分を、マイクロレンズアレイ720で屈折させることによって活用可能となる。
空洞Sの屈折率は1.00であり、本実施形態におけるレンズ部材72の屈折率は約1.46である。したがって、空洞Sとマイクロレンズアレイ720との屈折率差は約0.46となる。酸化アルミニウムのレンズ層と石英の基板本体とから成る従来の構成と比べて、本実施形態では屈折率差が大きくなり屈折力が大きくなる。すなわち、光Lをより有効に活用することができる。なお、酸化シリコンは十分な透過率を有している。ここで、本明細書における屈折率とは、特に限定されないが、例えば波長が589.3nmのナトリウムのD線における屈折率をいう。
反射防止部材80には-Z方向から光Lが入射する。反射防止部材80は、界面における光Lの反射を低減して、素子基板10における光Lの透過率を向上させる。上記界面とは、具体的には、基板10sと空洞Sとの界面、および空洞Sとレンズ部材72との界面を指す。
反射防止部材80の形成材料としては、TFT30などを形成する際の高温プロセスなどに対する耐熱性や不純物汚染防止、レンズ部材72への被覆性が確保可能であれば特に限定されない。本実施形態では、反射防止部材80は、酸化シリコン層と窒化シリコン層とが積層された誘電体多層膜から成る。
詳しくは、本実施形態の反射防止部材80では、レンズ部材72の表面および底面10tから空洞S側に向かって、厚さ約30nmの窒化シリコン、厚さ約20nmの酸化シリコン、厚さ約60nmの窒化シリコン、厚さ約90nmの酸化シリコンの順番で4層が積層される。酸化シリコンおよび窒化シリコンでは、上記高温プロセスに対する耐熱性が確保され、不純物汚染を防止できる。これに加えて、付き回り性が良好な減圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて設けることが可能であり、良好な被覆性も得られる。ここで、本明細書における厚さとは、底面10tなどの基材表面の法線方向における層厚をいう。なお、基材がレンズ721のように断面形状が平面でない場合には、基材の形状に沿った層厚をいう。
光Lの波長を550nmとした場合に、空気と酸化シリコンとの界面の反射率は約3.5%となる。これに対して反射防止部材80を設けることにより、空洞Sとレンズ部材72との界面における反射率は約0.5%まで低減されて、光Lの透過率が向上する。また、光Lが凹部11の底面10tから空洞Sへ出射される際にも、反射防止部材80によって、上記と同様に反射率が低減されて透過率が向上する。なお、反射防止部材80の厚さや層数は上記に限定されず、素子基板10の光学的設計に基づいて適宜調整されてよい。
レンズ部材72における空洞Sと反対側、すなわちマイクロレンズアレイ720上方には、遮光層701、および透光性部材としての、第1透光層74および第2透光層76が配置される。詳しくは、レンズ部材72の上方を被覆して第1透光層74が設けられる。第1透光層74は透光性および絶縁性を有する。第1透光層74は、平板状の基部741および接続部742,743を有する。基部741は、マイクロレンズアレイ720の上方に接している。接続部742は、レンズ部材72の貫通孔722を介して-Z方向へ延在し、底面10tと反射防止部材80を介して接する。接続部743は、レンズ部材72の貫通孔723を介して-Z方向へ延在し、底面10tと反射防止部材80を介して接する。
反射防止部材80は、レンズ部材72における空洞Sと反対側、すなわちレンズ部材72の上方と基部741との間には設けられていない。これは、マイクロレンズアレイ720と基部741との間に反射防止部材80が介在すると、反射率が増加して光Lの透過率が低下するためである。
第1透光層74の上方には、平面的にマイクロレンズアレイ720と重ならない位置に遮光層701が設けられる。遮光層701は、平面視にてマイクロレンズアレイ720を略矩形の枠状に囲む。遮光層701は遮光性を有する。本明細書において遮光性とは、可視光の透過率が10%以下であることをいう。なお、好ましい遮光性は可視光の透過率が5%以下である。遮光層701の形成材料には、例えば、金属または金属化合物が採用可能である。
遮光層701および第1透光層74の上方を被覆して、第2透光層76が設けられる。第2透光層76は透光性および絶縁性を有する。第2透光層76は、マイクロレンズアレイ720を透過する光Lの光路長を調整する。第2透光層76の層の厚さを調整することで、マイクロレンズアレイ720による光Lの集光位置を所望の位置に調整可能である。なお、光Lの光路長は、基部741および第2透光層76の厚さ、または第2透光層76の屈折率の変更によって調整されてもよい。
第1透光層74および第2透光層76の形成材料としては、酸化シリコン、窒化シリコンなどが挙げられ、これらの中でも酸化シリコンを主に含むことが好ましい。これによって、第1透光層74および第2透光層76における光Lの透過率が向上する。また、窒化シリコンを主に含む場合と比べて、液晶装置100の製造時などに、素子基板10を構成する他の層に含まれる成分が第1透光層74および第2透光層76に移行することが抑えられる。そのため、第1透光層74および第2透光層76における劣化の進行が抑えられる。なお、レンズ部材72、第1透光層74および第2透光層76には、同じ形成材料を用いることが好ましい。これによれば、異なる形成材料を用いる場合と比べて、各々が接する界面において反射が低減されて透過率が向上する。
第1透光層74および第2透光層76におけるレンズ部材72と反対側、すなわち第2透光層76の上方に、トランジスターとしてのTFT30を含む配線層40が備わる。配線層40は、遮光層461、TFT30、走査線3、容量線8、およびデータ線6などの信号配線類と、絶縁体45とを有する。なお、図4における、上記信号配線類の配置は一例であって、これに限定されない。また、図4では、容量素子16などの上記以外の信号配線類の図示を省略すると共に、図示の便宜上、データ線6の延在方向が実際とは異なっている。
絶縁体45は、透光性および絶縁性を有する。絶縁体45は、第1層間絶縁層451、第2層間絶縁層452、第3層間絶縁層453、第4層間絶縁層454、および第5層間絶縁層455を含む。第1層間絶縁層451は、第2透光層76上に設けられ、遮光性を有する遮光層461とTFT30との間に配置される。第2層間絶縁層452は、第1層間絶縁層451上に設けられ、TFT30と走査線3との間に配置される。第3層間絶縁層453は、第2層間絶縁層452上に設けられ、走査線3と容量線8との間に配置される。第4層間絶縁層454は、第3層間絶縁層453上に設けられ、容量線8とデータ線6との間に配置される。第5層間絶縁層455は、第4層間絶縁層454上に配置され、データ線6を被覆する。
TFT30、走査線3、容量線8、およびデータ線6などの各種信号配線類と、遮光層461とは、例えば、導電性を有する金属または金属化合物などを含む。絶縁体45に含まれる上述した各層は、例えば、酸化シリコンなどのシリコン系の無機材料を含む。
配線層40は、光Lが透過する複数の透光領域A11と、各種信号配線類が配置される複数の配線領域A12とを有する。透光領域A11は平面的に略矩形である。複数の透光領域A11は、画素Pに対応して、平面視にてマトリクス状に配置される。配線領域A12は光Lを遮蔽する。配線領域A12は、平面的に透光領域A11を囲んで格子状に配置される。
配線層40上には、複数の画素電極15が配置される。1つの画素電極15と1つの透光領域A11とは平面的に重なる。すなわち、1つの画素Pに対して、1つの画素電極15および1つの透光領域A11が配置される。画素電極15は、例えば、上述した対向電極21と同様にITOやIZOなどの透明導電膜から成る。画素電極15を被覆して配向膜18が設けられる。
上述したように光Lは、マイクロレンズアレイ720を直進し、あるいはマイクロレンズアレイ720で屈折され、透光領域A11から配向膜18を介して、図示しない液晶層50へ出射される。本実施形態では、素子基板10から光Lが入射する構成を例示したが、これに限定されない。光Lの入射は対向基板20からであってもよい。また、本発明のレンズ部材72、空洞Sおよび反射防止部材80は、対向基板20に配置されてもよい。
1.3.液晶装置の製造方法
本実施形態に係る液晶装置100の製造方法について、図5から図16を参照して説明する。なお、以下の説明においては図4も参照する。
ここで、図6、図7、図9、図10、図12から図16の模式断面図では、図4に相当する領域を拡大して示している。また、図8、図11の概略平面図では、素子基板10における、表示領域Eおよびその周辺の領域を示している。なお、以降参照する各図においては、図4と同様にマイクロレンズアレイ720における各レンズ721の数が実際とは異なる。また、特に断りがない限り、上記概略平面図の説明は平面視した状態を述べるものとする。
液晶装置100の製造方法は、以下に述べる素子基板10の製造方法を含み、素子基板10の製造方法に備わる工程以外では公知の技術が採用可能である。そのため、以下の説明では、素子基板10の製造方法についてのみ述べることとする。また、素子基板10の製造方法においても、特に断りがない限り公知の技術が採用可能である。
図5に示すように、素子基板10の製造方法は、工程S1から工程S11を備えている。以下、工程S1から工程S11の各工程について説明する。なお、図5に示した工程フローは一例であって、これに限定されるものではない。
工程S1では、基板10sに凹部11を形成する。本実施形態では、基板10sに平板状の石英基板を用いて、乾式エッチングまたは湿式エッチンにより凹部11を設ける。凹部11の平面的な形状は略矩形とする。このとき、後に設けるマイクロレンズアレイ720の各レンズ721が、凹部11内の上方の表面である底面10tと離間するように、凹部11のZ軸に沿う深さを調整する。そして工程S2へ進む。
工程S2では、凹部11内に空洞Sを設けるための犠牲層を形成する。犠牲層は、第1犠牲層51と第2犠牲層52とを含む。まず、凹部11内および基板10sの上方の表面に、第1犠牲層51を設ける。第1犠牲層51は、例えば、多結晶シリコンを形成材料として含み、CVD法を用いて設けられる。次いで、凹部11内および基板10sに設けられた第1犠牲層51を被覆して、第2犠牲層52を設ける。第2犠牲層52は、例えば、酸化シリコンを形成材料として含み、CVD法を用いて設けられる。第1犠牲層51と第2犠牲層52とは、後工程にて別々に除去するため、異なる形成材料を用いることが好ましい。
次いで、図6に示すよう、基板10sの上方の面に平坦化する。詳しくは、第1犠牲層51および第2犠牲層52が設けられた基板10sの上方の面に対して、CMP(Chemical&Mechanical Polishing)処理などの平坦化処理を施す。平坦化処理によって、第1犠牲層51および第2犠牲層52は、凹部11内にのみ残り、それ以外の基板10sの上方からは除去される。
次いで、図7に示すよう、マイクロレンズアレイ720を設けるための凹レンズ群510を、第2犠牲層52に形成する。凹レンズ群510は、マイクロレンズアレイ720の複数のレンズ721に対応するレンズ用凹部511を含む。複数のレンズ用凹部511は、複数のレンズ721と平面的に重なるようにマトリクス状に配置される。複数のレンズ用凹部511は、半球状の窪みであって、例えばエッチングによって凹部11内の第2犠牲層52に設けられる。
次いで、図8に示すように、凹レンズ群510を含む基板10sの上方を被覆して第3犠牲層53を設ける。第3犠牲層53は凹部11よりもやや広く配置される。第3犠牲層53は、例えば、多結晶シリコンを形成材料として含み、CVD法を用いて設けられる。第3犠牲層53には、第1犠牲層51と同一の形成材料を用いることが好ましい。そして工程S3へ進む。
工程S3では、レンズ部材72を形成する。まず、第3犠牲層53の上方を、例えばCVD法を用いてレンズ部材72で被覆する。これにより、レンズ部材72のマイクロレンズアレイ720は、第3犠牲層53を介して凹レンズ群510の形状に倣って設けられる。レンズ部材72は、上述したように酸化シリコンから成る。レンズ部材72を設けた後に、レンズ部材72の上方の面にCMP処理などの平坦化処理を施す。
次いで、図9に示すように、例えばエッチングによって、レンズ部材72に貫通孔722,723を設ける。貫通孔722,723は、マイクロレンズアレイ720の両端に設けられる。このとき、第3犠牲層53がエッチングストッパーとして機能する。そのため、貫通孔722,723により、レンズ部材72を貫通して第3犠牲層53が上方に露出する。そして工程S4に進む。
工程S4では、空洞Sを形成する。まず、レンズ部材72と貫通孔722,723内の第3犠牲層53との上方を被覆して、第4犠牲層54を設ける。第4犠牲層54は、例えば、多結晶シリコンを形成材料として含み、CVD法を用いて設けられる。
次いで、図10に示すように、例えばエッチングを用いて、貫通孔722,723内の第4犠牲層54および第3犠牲層53を貫通する開口部502,503を設ける。開口部502,503は、貫通孔722,723内において、第2犠牲層52を上方に露出させる。このとき、開口部502,503内では、第2犠牲層52の一部も-Z方向にエッチングされる。図11に示すように、開口部502は貫通孔722に包含され、開口部503は貫通孔723に包含される。換言すれば、開口部502の面積は貫通孔722の面積より小さく、開口部503の面積は貫通孔723の面積より小さい。
次いで、開口部502,503を介したエッチングによって、凹部11内の第2犠牲層52を除去する。該エッチングには、第1犠牲層51および第3犠牲層53に対して高い選択比を有するガスなどを用いる。具体的には、例えば、第2犠牲層52が酸化シリコンである場合には、フッ化水素エッチングガスなどのフッ素ガスによるガスエッチング、またはフッ化水素などのフッ素系溶液を用いた湿式エッチングを用いる。特に、第2犠牲層52の除去にガスエッチングを用いる際には、エッチングガスに対する第2犠牲層52のエッチングレートは、第1犠牲層51、第3犠牲層53および第4犠牲層54の各エッチングレートよりも速いことが好ましい。これによって、第2犠牲層52を除去し、第1犠牲層51、第3犠牲層53および第4犠牲層54を残すことが可能となる。
次いで、第1犠牲層51、第3犠牲層53および第4犠牲層54をエッチングにより除去する。このとき、凹部11内の第1犠牲層51および第3犠牲層53は、貫通孔722,723を介して除去する。これにより、図12に示すように、凹部11内の空洞Sと共に、空洞Sに面するマイクロレンズアレイ720が設けられる。なお、図示を省略するが、マイクロレンズアレイ720を含むレンズ部材72は、貫通孔722,723以外の領域で基板10sと一体に形成される。
具体的なエッチングの方法としては、例えば、第1犠牲層51、第3犠牲層53および第4犠牲層54が多結晶シリコンから成る場合には、上記エッチングは、六フッ化硫黄などのフッ素系ガスによる乾式エッチング、フッ酸および硝酸の混合液などを用いた湿式エッチング、あるいは三フッ化塩素などのフッ素系エッチングガスを用いたガスエッチングを用いることが好ましい。第1犠牲層51、第3犠牲層53および第4犠牲層54に同一の形成材料を用いることによって、これらを一括で除去することができる。なお、本明細書においては、ガスエッチングとは単にガスを供給して行うエッチングをいい、乾式エッチングとはプラズマエッチングおよびイオンビームエッチングを含みガスエッチングを含まない。そして工程S5へ進む。
工程S5では、図13に示すように反射防止部材80を形成する。反射防止部材80は、上述したように、酸化シリコン層および窒化シリコン層を含む4層から成り、減圧CVD法を用いて設けられる。これにより、底面10tを含む凹部11内、マイクロレンズアレイ720の空洞S側の表面、貫通孔722,723の壁面、およびレンズ部材72の上方の面が反射防止部材80で被覆される。そして工程S6へ進む。
工程S6では、第1透光層74を形成する。まず、図14に示すように、レンズ部材72の上方を被覆して、接続部742,743を設けるための接続層740を設ける。接続層740は、例えば、酸化シリコンを形成材料として含み、CVD法を用いて設けられる。このとき、貫通孔722,723を介して、凹部11の底面10tまで接続層740を到達させる。これにより、接続層740の一部が、底面10tと反射防止部材80を介して接する接続部742,743となる。接続部742,743は貫通孔722,723とも反射防止部材80を介して接して設けられるため、空洞Sが閉塞された空間となる。
次いで、図15に示すように、レンズ部材72上方の接続層740を除去する。接続層740の除去には、例えばCMP処理などを用いる。このとき、レンズ部材72の上方の反射防止部材80まで除去する。これにより、接続層740は、接続部742,743を除いて除去される。
次いで、図16に示すように、レンズ部材72および接続部742,743の上方に、第1透光層74を形成する。第1透光層74は、例えば、酸化シリコンを形成材料として含み、CVD法を用いて設けられる。第1透光層74には、形成した後に上方の面に対してCMP処理などの平坦化処理を施す。そして工程S7へ進む。
工程S7では、第1透光層74の上方に遮光層701を形成する。遮光層701は、例えば、金属または金属化合物を形成材料として含む。遮光層701は、CVD法を用いて設けられた後に、平面視にてマイクロレンズアレイ720を囲む形状にマスクを用いてパターニングされる。そして工程S8へ進む。
工程S8では、第1透光層74および遮光層701の上方を被覆して、第2透光層76を形成する。第2透光層76は、例えば、酸化シリコンを形成材料として含み、CVD法を用いて設けられる。第2透光層76には、形成した後に上方の面に対してCMP処理などの平坦化処理を施す。第1透光層74および第2透光層76の厚さは、上述したように液晶装置100における光学的な設計に応じて設定される。そして工程S9へ進む。
工程S9では、配線層40を形成する。これらの形成には公知の製造方法が採用可能である。例えば、遮光層461、TFT30、走査線3、容量線8、およびデータ線6などの信号配線類は、スパッタリング法または蒸着法によって金属層を形成した後に、レジストマスクを用いたエッチングによってパターニングされる。また、TFT30は、公知の方法にて半導体層を含む構成で設けられる。配線層40のうち絶縁体45が含む複数の層は、例えば、各々が酸化シリコンを含み、CVD法などを用いて設けられ後にマスクを用いてパターニングされる。そして工程S10へ進む。
工程S10では、配線層40上に画素電極15を形成する。画素電極15は、例えばCVD法などを用いて設けられ後にマスクを用いてパターニングされる。そして工程S11へ進む。
工程S11では、画素電極15上を被覆して配向膜18を形成する。配向膜18は、例えば、ポリイミドを形成材料として含み、CVD法を用いて設けられた後にラビング処理が施される。以上により、図4に示した素子基板10が製造される。
本実施形態の液晶装置100によれば、従来よりも光Lの利用効率およびレンズ部材72の精度を向上させることができる。詳しくは、レンズ部材72が空洞Sに面して設けられるため、レンズ部材72が接する媒質である空気の屈折率は約1となる。そのため、レンズ部材72と媒質との屈折率差を大きくして、実質的にレンズ部材72の屈折力を大きくすることができる。また、レンズ部材72の空洞S側には反射防止部材80が設けられるため、レンズ部材72と媒質との界面における光Lの反射が低減される。そのため、光Lの反射による損失が抑えられて透過率を向上させることができる。
レンズ部材72は、基板10sと一体に設けられるため、接合などの手法でレンズ部材72と基板10sとを組み立てる場合と比べて、凹部11の底面10tとレンズ部材72との間隔、および基板10sとレンズ部材72との平行度などの精度を向上させることができる。以上によって、光Lの利用効率およびレンズ721の精度が向上する液晶装置100を提供することができる。
反射防止部材80は、基板10sにおける凹部11の底面10tを含む内面に設けられているため、底面10tと空洞Sとの界面においても光Lの反射が低減されて、透過率をさらに向上させることができる。
レンズ部材72における空洞Sと反対側に第1透光層74および第2透光層76を備えるため、液晶装置100を透過する光Lの波長に応じて第1透光層74および第2透光層76の厚さを設定することにより、レンズ部材72の焦点距離を調節することができる。
反射防止部材80は、レンズ部材72における空洞Sと反対側には設けられていない。そのため、レンズ部材72における空洞Sと反対側に、レンズ部材72の焦点距離を調節するための第1透光層74や第2透光層76を設ける際に、透過率の低下を抑制することができる。詳しくは、反射防止部材80がレンズ部材72と上記の層との間に互いに接して介在すると、それらの界面で光Lの反射が起きやすくなる。そのため、反射防止部材80を設けないことで透過率の低下が抑えられる。
第1透光層74および第2透光層76におけるレンズ部材72と反対側にTFT30を備えるため、TFT30をスイッチング素子として用いて、液晶装置100の階調を調整することができる。
反射防止部材80は、酸化シリコン層と窒化シリコン層とが積層されて成るため、液晶装置100の製造工程において、TFT30形成などの高温プロセスに対する反射防止部材80の耐熱性が確保される。そのため、反射防止部材80における熱による変質や劣化を抑えることができる。また、酸化シリコン層および窒化シリコン層は減圧CVD法を用いて設けることが可能である。減圧CVD法は他の成膜法と比べて被覆性が良好であるため、マイクロレンズアレイ720などに対する反射防止部材80の被覆性を向上させることができる。
2.第2実施形態
本実施形態では、第1実施形態と同様に、電気光学装置として画素ごとにTFTを備えたアクティブ駆動型の液晶装置を例示する。本実施形態に係る液晶装置は、第1実施形態の液晶装置100に対して、マイクロレンズアレイを含むレンズ部材を対向基板に配置したものである。そのため、第1実施形態と同一の構成部位については、同一の符号を使用し、重複する説明は省略する。
2.1.対向基板の構成
本実施形態の液晶装置に備わる対向基板220の構成について、図17を参照して説明する。図17では、第1実施形態の図1における線分J-J’に相当する部位の対向基板を拡大して示している。また、図17では、図示の便宜上、導光部のマイクロレンズアレイにおける個々のレンズの数が実際とは異なる。
図17に示すように、対向基板220は、基板本体としての基板220s、導光部90、対向電極221、および配向膜222を備える。基板220sには、空洞S’を有する凹部211が設けられる。凹部211は、基板220sの-Z方向の表面に設けられた窪みである。凹部211は、平面視にて略矩形である。空洞S’は、凹部211と導光部90とに囲まれた気密空間である。空洞S’は、空気などの気体を含んでもよく、真空であってもよい。なお、空洞S’は気密空間でなくてもよい。
基板220sの-Z方向に導光部90が配置される。導光部90は、レンズ部材92と、第1透光層94および第2透光層96と、見切り部224とを有する。
レンズ部材92は、基板220sと一体に、且つ凹部211の底面220tと空洞S’を介して離間して設けられる。レンズ部材92は、複数のレンズ921を有するマイクロレンズアレイ920を含む。レンズ921は、上方に向かって突出する凸状レンズであって、断面形状が略半円状の曲面を有する。複数のレンズ921は、上述した複数の画素Pのそれぞれに平面的に対応して配置される。複数のレンズ921が平面的にマトリクス状に配置されて、マイクロレンズアレイ920が形成される。レンズ部材92には、第1実施形態のレンズ部材72と同様な形成材料が採用可能である。
レンズ部材92は、貫通孔922,923を有する。貫通孔922,923はレンズ部材92を±Z方向に貫通する。貫通孔922は、マイクロレンズアレイ920の+X方向に設けられる。貫通孔923は、マイクロレンズアレイ920の-X方向に設けられる。
レンズ部材92と凹部211の空洞S’との間、すなわちレンズ部材92における空洞S’に面する表面と、凹部211の底面220tを含む内面とに、反射防止部材280が設けられる。反射防止部材280は、上記の箇所の他に、後述する第1透光層94の接続部942,943とレンズ部材92との間などにも設けられる。なお、反射防止部材280は、上記の箇所に全て設けられることが好ましいが、レンズ部材92における凹部211の空洞S’側の表面以外には、設けられずともよい。
レンズ部材92は、空洞S’に対して反射防止部材280を介して配置される。マイクロレンズアレイ920は、空洞S’側から入射する光Lを画素Pごとに集光する。各画素Pの平面的な中心と各レンズ921の主点とは、平面的に重なる。例えば、光Lのうち、各レンズ921の主点を通過するように+Z方向からマイクロレンズアレイ920に入射する成分は、マイクロレンズアレイ920内を直進して図示しない液晶層50へ出射される。
一方、各レンズ921に対して、平面的に上記主点と重ならない領域に入射した光Lの成分は、空洞S’とレンズ部材92との屈折率差によって画素Pの平面的な中心側へ向かって屈折される。
空洞S’の屈折率は1.00であり、本実施形態の酸化シリコンから成るレンズ部材92の屈折率は約1.46である。したがって、空洞S’とマイクロレンズアレイ920との屈折率差は約0.46となり、光Lをより有効に活用することができる。
反射防止部材280は、界面における光Lの反射を低減して、対向基板220における光Lの透過率を向上させる。上記界面とは、具体的には、基板220sと空洞S’との界面、および空洞S’とレンズ部材92との界面を指す。
反射防止部材280の形成材料としては、レンズ部材92への被覆性が確保可能であれば特に限定されない。本実施形態では、対向基板220に反射防止部材280を配置するため、TFT30形成時などの高温プロセスに対する耐熱性の制約がない。そのため、反射防止部材280の形成材料には、酸化シリコンおよび窒化シリコンの他に、酸化アルミニウム、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムなども採用可能である。反射防止部材280には、これらのうちの1種類を単層で、あるいは2種類以上を積層して用いる。
詳しくは、本実施形態の反射防止部材280では、レンズ部材92の表面および底面220tから空洞S’側に向かって、厚さ約30nmの窒化シリコン、厚さ約20nmの酸化シリコン、厚さ約60nmの窒化シリコン、厚さ約90nmの酸化シリコンの順番で4層が積層される。これらの層の形成には、上述した減圧CVD法以外にALD(Atomic Layer Deposition)法などのその他の方法も採用可能である。ALD法によれば、減圧CVD法と同様に、レンズ部材92などに対する反射防止部材280の被覆性を向上させることができる。
レンズ部材92における空洞S’と反対側、すなわちマイクロレンズアレイ920の-Z方向には、遮光性を有する見切り部224、および透光性部材としての、第1透光層94および第2透光層96が配置される。詳しくは、レンズ部材92の-Z方向を被覆して第1透光層94が設けられる。第1透光層94は透光性および絶縁性を有する。第1透光層94は、平板状の基部941および接続部942,943を有する。基部941は、マイクロレンズアレイ920の上方に接している。接続部942は、レンズ部材92の貫通孔922を介して上方へ延在し、反射防止部材280を介して底面220tと接する。接続部943は、レンズ部材92の貫通孔923を介して上方へ延在し、反射防止部材280を介して底面220tと接する。
ここで、反射防止部材280は、レンズ部材92における空洞S’と反対側、すなわちレンズ部材92の-Z方向と基部941との間には設けられていない。これは、マイクロレンズアレイ920と基部941との間に反射防止部材280が介在すると、反射率が増加して光Lの透過率が低下するためである。
第1透光層94の-Z方向には、平面的にマイクロレンズアレイ920と重ならない位置に見切り部224が設けられる。見切り部224は、平面視にてマイクロレンズアレイ920を略矩形の枠状に囲む。
見切り部224および第1透光層94の-Z方向を被覆して、第2透光層96が設けられる。第2透光層96は透光性および絶縁性を有する。第2透光層96は、マイクロレンズアレイ920を透過する光Lの光路長を調整する。第2透光層96の層の厚さを調整することで、マイクロレンズアレイ920による光Lの集光位置を所望の位置に調整可能である。なお、光Lの光路長は、基部941および第2透光層96の厚さ、または第2透光層96の屈折率の変更によって調整されてもよい。第1透光層94および第2透光層96には、第1実施形態に第1透光層74および第2透光層76と同様な形成材料が採用可能である。
第1透光層94および第2透光層96におけるレンズ部材92と反対側、すなわち第2透光層96の-Z方向を被覆して対向電極221が配置される。対向電極221は、共通電極であって、例えばITOやIZOなどの透明導電膜から成る。対向電極221は、図示しない上下導通部106を介して素子基板の信号配線と電気的に接続される。
対向電極221の-Z方向を被覆して配向膜222が配置される。配向膜222には、第1実施形態の配向膜22と同様な形成材料が採用可能である。
対向基板220の製造には公知の製造方法が採用可能であり、導光部90の製造には第1実施形態の導光部70と同様な製造方法が採用可能である。
本実施形態の対向基板220を備える液晶装置によれば、第1実施形態の液晶装置100と同様な効果を得ることができる。
3.第3実施形態
3.1.電子機器
本実施形態の電子機器として投射型表示装置を例示する。
図18に示すように、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置1000は、光源としてのランプユニット1001、色分離光学系としてのダイクロイックミラー1011,1012、電気光学パネルである3個の液晶装置1B,1G,1R、3個の反射ミラー1111,1112,1113、3個のリレーレンズ1121,1122,1123、色合成光学系としてのダイクロイックプリズム1130、投射光学系としての投射レンズ1140を備えている。
ランプユニット1001には、例えば、放電型の光源を採用している。光源の方式はこれに限定されず、発光ダイオード、レーザーなどの固体光源を採用してもよい。
ランプユニット1001から射出された光は、2個のダイクロイックミラー1011,1012によって、各々異なる波長域の3色の色光に分離する。3色の色光とは、略赤色の光、略緑色の光、略青色の光である。以降の説明において、上記略赤色の光を赤色光Rともいい、上記略緑色の光を緑色光Gともいい、上記略青色の光を青色光Bともいう。
ダイクロイックミラー1011は、赤色光Rを透過させると共に、赤色光Rよりも波長が短い、緑色光Gおよび青色光Bを反射させる。ダイクロイックミラー1011を透過した赤色光Rは、反射ミラー1111で反射され、液晶装置1Rに入射する。ダイクロイックミラー1011で反射された緑色光Gは、ダイクロイックミラー1012によって反射された後、液晶装置1Gに入射する。ダイクロイックミラー1011で反射された青色光Bは、ダイクロイックミラー1012を透過して、リレーレンズ系1120へ射出される。
リレーレンズ系1120は、リレーレンズ1121,1122,1123、反射ミラー1112,1113を有している。青色光Bは、緑色光Gや赤色光Rと比べて光路が長いため、光束が大きくなりやすい。そのため、リレーレンズ1122を用いて光束の拡大を抑えている。リレーレンズ系1120に入射した青色光Bは、反射ミラー1112で反射されると共に、リレーレンズ1121によってリレーレンズ1122の近傍で収束される。そして、青色光Bは、反射ミラー1113およびリレーレンズ1123を経て、液晶装置1Bに入射する。
投射型表示装置1000における、光変調装置である液晶装置1R,1G,1Bには、第1実施形態の電気光学装置としての液晶装置100が適用されている。また、液晶装置1R,1G,1Bとして、第2実施形態の液晶装置を適用してもよい。
液晶装置1R,1G,1Bのそれぞれは、投射型表示装置1000の上位回路と電気的に接続される。これにより、赤色光R、緑色光G、青色光Bの階調レベルを指定する画像信号がそれぞれ外部回路から供給され、上位回路で処理される。これにより、液晶装置1R,1G,1Bが駆動されて、それぞれの色光が変調される。
液晶装置1R,1G,1Bによって変調された赤色光R、緑色光G、青色光Bは、ダイクロイックプリズム1130に3方向から入射する。ダイクロイックプリズム1130は、入射した赤色光R、緑色光G、青色光Bを合成する。ダイクロイックプリズム1130において、赤色光Rおよび青色光Bは90度に反射され、緑色光Gは透過する。そのため、赤色光R、緑色光G、青色光Bは、カラー画像を表示する表示光として合成され、投射レンズ1140に向かって射出される。
投射レンズ1140は、投射型表示装置1000の外側を向いて配置されている。表示光は、投射レンズ1140を介して拡大されて射出され、投射対象であるスクリーン1200に投射される。
本実施形態では、電子機器として投射型表示装置1000を例示したが、これに限定されない。本発明の電気光学装置は、例えば、投射型のHUD(Head-Up Display)、直視型のHMD(Head Mounted Display)、パーソナルコンピューター、デジタルカメラ、液晶テレビなどの電子機器に適用されてもよい。
本実施形態によれば、液晶装置1R,1G,1Bにおける光の利用効率およびレンズ部材の精度が向上して、従来よりも明るく鮮明な画像を投射する投射型表示装置1000を提供することができる。
以下に、実施形態から導き出される内容を記載する。
電気光学装置は、空洞を有する凹部が設けられた基板本体と、凹部の底面と離間して設けられたレンズ部材と、レンズ部材と凹部の空洞との間に設けられた反射防止部材と、を備える。
この構成によれば、電気光学装置において、従来よりも光の利用効率およびレンズ部材の精度を向上させることができる。詳しくは、レンズ部材が空洞に面して設けられるため、レンズ部材が接する媒質の屈折率は約1となる。そのため、レンズ部材と媒質との屈折率差を大きくして、実質的にレンズ部材の屈折力を大きくすることができる。また、レンズ部材と空洞との間には反射防止部材が設けられるため、レンズ部材と媒質との界面における光の反射が低減される。そのため、光の反射による損失が抑えられて透過率を向上させることができる。
レンズ部材は、例えば基板本体と一体に設けられるため、接合などの手法でレンズ部材と基板本体とを組み立てる場合と比べて、凹部の底面とレンズ部材との間隔、および基板本体とレンズ部材との平行度などの精度を向上させることができる。以上によって、光の利用効率およびレンズの精度が向上する電気光学装置を提供することができる。
上記の電気光学装置において、反射防止部材は、基板本体における凹部の底面を含む内面に設けられていることが好ましい。
この構成によれば、凹部の底面と空洞との界面においても光の反射が低減されて、透過率をさらに向上させることができる。
上記の電気光学装置は、レンズ部材における空洞と反対側に透光性部材を備えることが好ましい。
この構成によれば、電気光学装置を透過する光の波長に応じて透光性部材の厚さを設定することにより、レンズ部材の焦点距離を調節することができる。
上記の電気光学装置において、反射防止部材は、レンズ部材における空洞と反対側には設けられていないことが好ましい。
この構成によれば、透過率の低下を抑えることができる。詳しくは、反射防止部材がレンズ部材と透光性部材との間に互いに接して介在すると、それらの界面で光の反射が起きやすくなる。そのため、反射防止部材を設けないことで透過率の低下が抑えられる。
上記の電気光学装置は、透光性部材におけるレンズ部材と反対側にトランジスターを備えることが好ましい。
この構成によれば、トランジスターをスイッチング素子として用いて、電気光学装置の階調を調整することができる。
上記の電気光学装置において、反射防止部材は、酸化シリコン層と窒化シリコン層とが積層されていることが好ましい。
この構成によれば、電気光学装置の製造工程において、トランジスター形成などの高温プロセスに対する反射防止部材の耐熱性が確保される。そのため、反射防止部材における熱による変質や劣化を抑えることができる。また、酸化シリコン層および窒化シリコン層は減圧CVD法を用いて設けることが可能である。減圧CVD法は他の成膜法と比べて被覆性が良好であるため、レンズ部材などに対する反射防止部材の被覆性を向上させることができる。
電子機器は、上記の電気光学装置を備える。
この構成によれば、電気光学装置における光の利用効率およびレンズの精度が向上して、従来よりも表示品質が向上する電子機器を提供することができる。