JP7305952B2 - 樹脂充填方法 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂充填方法に関するものである。特に、本発明は、熱可塑性樹脂シートを用いた樹脂充填方法に関するものである。
樹脂材料を所望の形状に成形して得られる樹脂成形体は、優れた機能性を奏し得ることから多様な用途に応用されている。近年、樹脂材料によって奏されうる耐熱性や光学特性が顕著に向上しつつあることから、結像光学系にて従来から用いられてきたガラス製の光学素子に代えて、樹脂成形体よりなる光学素子を用いることが検討されている。
結像光学系の中でも、近年、スクリーン等の反射物が無い「空中」にて、映像又は画像を結像することができるイメージング装置が注目を集めている。そのようなイメージング装置には、特殊な構造を有する光学素子が用いられている。
例えば、特許文献1では、それぞれ立設状態で隙間を有して平行配置された帯状光反射面を多数備える第1、第2の光制御パネルを、それぞれの帯状光反射面を平面視して直交させて、重ね合わせて形成する立体像結像装置の製造方法が開示されている。特許文献1にかかる製造方法では、透明板材の表側に、傾斜面と垂直面とを有する断面三角形の溝、及び隣り合う溝によって形成される断面三角形の凸条がそれぞれ平行配置された第1、第2の光制御パネルの成型母材を得て、かかる成型母材の溝の垂直面のみに選択的に鏡面を形成し、その後、透明板材より融点が低い透明樹脂のシートを、凸条を向かい合わせた状態で挟み込み、真空状態で加熱かつ押圧して、溝を透明樹脂によって充填することができる。
特許第6203978号明細書
ここで、上記特許文献1にかかる製造方法では、透明樹脂のシート及び透明板材の選定基準として、透明板材の融点が透明樹脂のシートの融点よりも高くなることを定めていた。そして、特許文献1にかかる製造方法では、透明樹脂のシートを用いて溝を充填するにあたり、透明樹脂のシートが溶解し、透明板材が溶解しない温度に加熱していた。しかしながら、特許文献1では、透明樹脂のシートを用いて溝を樹脂充填する際の加熱及び圧力の詳細な条件については開示していなかった。樹脂のシートを用いて溝を樹脂充填するに際して、熱及び圧力を印加する態様は、凸条の変形を抑制しつつ、樹脂による溝の充填率を高める、という点に関して関連性の高い因子である。よって、特許文献1にかかる立体像結像装置の製造方法には、断面三角形の凸条よりなるパターンが変形することを抑制することと、溝に対する樹脂の充填率を高めることとを高いレベルで両立する、という点で、改善の余地があった。
そこで、本発明は、基材の有する凹凸パターン形状が変形することを効果的に抑制することができるとともに、基材に対して熱可塑性樹脂を良好に充填することができる、樹脂充填方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、凹凸パターンを形成する樹脂のビカット軟化温度と、樹脂シートのビカット軟化温度とが、所定の関係を満たし、且つ、これらを積層して減圧状態とした後に、所定の態様で加温して熱プレスすることで、基材の有する凹凸パターン形状が変形することを効果的に抑制することができるとともに、基材に対して熱可塑性樹脂を良好に充填することができることを新たに見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の樹脂充填方法は、凹部及び凸部よりなる凹凸パターンを片側に有する基材の前記凹部に対して、熱可塑性樹脂シートを用いて熱可塑性樹脂を充填する樹脂充填方法であって、前記基材が、熱可塑性樹脂基材であり、該熱可塑性樹脂基材のビカット軟化温度が、前記熱可塑性樹脂シートのビカット軟化温度よりも高く、前記基材の前記凹凸パターン上に、前記熱可塑性樹脂シートを直接積層して積層体とし、該積層体をチャンバー内に配置して該チャンバー内を減圧状態とする減圧工程と、前記チャンバー内にて、前記積層体の前記熱可塑性樹脂シートを、シート加温温度Hs℃で加温するとともに、前記積層体の前記基材を加温せずに、或いは、基材加温温度Hb℃で加温しながら、前記積層体をプレスする熱プレス工程と、をこの順で含み、前記熱プレス工程における、前記シート加温温度Hs℃が、前記熱可塑性樹脂シートのビカット軟化温度以上であり、且つ、前記基材加温温度Hb℃が、前記シート加温温度Hs℃以下であるとともに、前記基材のビカット軟化温度以下であることを特徴とする。このように、熱可塑性樹脂基材のビカット軟化温度よりも、ビカット軟化温度が低い熱可塑性樹脂シートを用い、更に、基材と熱可塑性樹脂シートとを積層して減圧状態としてから所定の態様で熱プレスすることで、基材の有する凹凸パターン形状が変形することを効果的に抑制することができるとともに、基材に対して熱可塑性樹脂を良好に充填することができる。
なお、「ビカット軟化温度」は、実施例に記載の方法により測定することができる。
また、本発明の樹脂充填方法にて、前記基材のビカット軟化温度が、前記熱可塑性樹脂シートのビカット軟化温度よりも、30℃以上高いことが好ましい。基材のビカット軟化温度が、熱可塑性樹脂シートのビカット軟化温度よりも30℃以上高ければ、熱可塑性樹脂基材に設けられた凹凸パターンのパターン形状が変化することを一層効果的に抑制することができる。
さらにまた、本発明の樹脂充填方法にて、前記熱プレス工程における前記シート加温温度Hs℃が、前記熱可塑性樹脂シートのビカット軟化温度よりも、40℃以上180℃以下大きいことが好ましい。シート加温温度Hs℃が、上記条件を満たす場合には、熱可塑性樹脂シート由来の熱可塑性樹脂による基材凹部の充填率を効果的に高めることができるとともに、基材の凹凸パターンが変形することを効果的に抑制することができる。
さらにまた、本発明の樹脂充填方法にて、前記減圧工程において、前記チャンバー内の圧力をゲージ圧で-70kPa以下とすることが好ましい。減圧工程にてかかる圧力範囲まで減圧することで、基材と、該基材の凹部に充填された熱可塑性樹脂シート由来の熱可塑性樹脂との間の界面に気泡が包含されることを効果的に抑制することができる。
さらにまた、本発明の樹脂充填方法は、前記熱プレス工程において、前記積層体をプレスするプレス圧を、低圧から高圧に変化させることを含むことが好ましい。かかる態様で熱プレス工程におけるプレス圧を変化させることで、基板に設けられた凹凸パターン形状が変形することを一層効果的に抑制することができる。
本発明の樹脂充填方法によれば、基材の有する凹凸パターン形状が変形することを効果的に抑制することができるとともに、基材に対して熱可塑性樹脂を良好に充填することができる。
本発明で用い得る基材の一例の概略構造、及びかかる基材上に熱可塑性樹脂シートを配置した状態を示す図(図1の上図)、さらには、かかる概略構造を有する基材の凹部に対して熱可塑性樹脂シートを用いて熱可塑性樹脂を充填した状態のイメージ図(図1の下図)を併せて示す図である。 本発明の一例に従う樹脂充填方法を説明するための概略図である。 基材の凹凸パターンが変形した場合の態様の一例を示す模式図である。 基材の凹凸パターンが変形した場合の態様の他の一例を示す模式図である。 接合工程を説明するための図である。 本発明の樹脂充填方法を経て形成可能な光学素子の一例の概略図である。 本発明の樹脂充填方法を経て得られた充填構造体における、基材の凹凸パターンの形状の変化を評価する際の評価方法を説明するための図である。 本発明の樹脂充填方法を経て得られた充填構造体における、基材の凹部の空隙率を評価する際の評価方法を説明するための図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面はあくまで概略図に過ぎず、各図面における縮尺はこれに限定されるものではない。また、各図面において、同一の構成部については同じ参照符号を付して示す。
そして、本発明の樹脂充填方法は、空中で映像又は画像を結像することができるイメージング装置に備えられうる、特殊な構造を有する光学素子を製造する際に、好適に採用することができる。
本発明の樹脂充填方法は、凹部及び凸部よりなる凹凸パターンを片側に有する基材の凹部に対して、熱可塑性樹脂シートを用いて熱可塑性樹脂を充填する樹脂充填方法である。そして、本発明の樹脂充填方法では、基材として、熱可塑性樹脂基材を用い、該熱可塑性樹脂基材のビカット軟化温度が、熱可塑性樹脂シートのビカット軟化温度よりも高いことを必要とする。そして、本発明の樹脂充填方法は、基材の凹凸パターン上に、熱可塑性樹脂シートを直接積層して積層体とし、該積層体をチャンバー内に配置して該チャンバー内を減圧状態とする「減圧工程」と、チャンバー内にて、積層体の熱可塑性樹脂シートを、シート加温温度Hs℃で加温するとともに、積層体の基材を加温せずに、或いは、基材加温温度Hb℃で加温しながら、積層体をプレスする「熱プレス工程」と、をこの順で含むことを特徴とする。さらに、熱プレス工程における、シート加温温度Hs℃が、熱可塑性樹脂シートのビカット軟化温度以上であり、且つ、基材加温温度Hb℃が、シート加温温度Hs℃以下であるとともに、基材のビカット軟化温度以下であることを特徴とする。
本発明の樹脂充填方法において、熱可塑性樹脂基材のビカット軟化温度よりも、ビカット軟化温度が低い熱可塑性樹脂シートを用い、更に、基材と熱可塑性樹脂シートとを積層して減圧状態としてから所定の態様で熱プレスすることで、基材の有する凹凸パターン形状が変形することを効果的に抑制することができるとともに、基材に対して熱可塑性樹脂を良好に充填することができる。
以下、本発明の樹脂充填方法で用いうる基材、熱可塑性樹脂シート、及び本発明の樹脂充填方法に含まれる各工程について、それぞれ詳述する。
(基材)
基材は、凹部及び凸部よりなる凹凸パターンを片側に有することを必要とする。基材の「片側」とは、基材の主面(表面及び裏面)の何れか一方を指す。そして、基材における、凹凸パターンを有さない側の面は、平坦面であり得る。ここで、凸部は、例えば、種々の形状の凸条により形成されうる。そして、凹部は、複数の凸部(凸条)が基材の主面上で平行配置されている状態にて、隣接する凸部(凸条)間の間隙として構成されうる。
ここで、凸部(凸条)の形状は特に限定されることなく、例えば、凸条の平行配置方向に沿って得た切断面が三角形状又は略三角形状となるような形状であり得る。図1に、本発明の樹脂充填方法で用い得る基材の一例の概略構造、及びかかる概略構造の基材上に熱可塑性樹脂シートを配置した状態を示す図(図1の上図)、さらには、かかる概略構造を有する基材の凹部に対して熱可塑性樹脂シートを用いて熱可塑性樹脂を充填した状態のイメージ図(図1の下図)を併せて示す。図1に示すように、基材10は、一方の主面上に断面三角形状の凸条11を有し、かかる凸条11間の間隙12である凹部を有している。凸条(凸部)11及び間隙(凹部)12は、併せて凹凸パターンを成している。また、基材10の他方の主面14は平坦面となっている。後述するが、本発明の樹脂充填方法では、かかる形状の基材10に対して、凹凸パターンの直上に、熱可塑性樹脂シート20を積層して、減圧状態としてから、所定の熱プレス工程を実施することで、間隙(凹部)12が熱可塑性樹脂シート20由来の熱可塑性樹脂20’により充填されてなる構造体を得ることができる。なお、凸条(凸部)11は、基材10の主面に対して垂直(略垂直)な垂直面13を有しており、かかる垂直面13は、任意で、鏡面として構成されうる。垂直面13が鏡面として構成されている場合には、かかる基材10を用いて得た構造体は、図4を参照して後述するような特殊な形状の光学素子を形成するための光制御パネルとして良好に用いることができる。
凸条の形状が「三角形状」である場合の、より詳細な形状としては、図1に示すような直角三角形状であって、直角を成す2つの辺のうち、長さの短い方の辺が基材の一方の主面に一致するように配置された形状が挙げられる。また、「略三角形状」としては、直角三角形の頂点に相当する角の部分が、あたかも面取り(例えば、C面取り、R面取り、及びその他のランダムな形状等)されたかのような形状となっている場合;及び、つぶれて曲がったような形状となっている場合等が挙げられる。さらにまた、「略三角形状」としては、直角三角形の斜辺に相当する辺が、直線ではなく、曲線、1つ以上の折れ曲がり点を有する折れ線である場合等が挙げられる。なお、曲線又は折れ線である場合に、これらの線は凸状ではなく凹状でありうる。
基材を構成する熱可塑性樹脂は、「熱可塑性」、即ち、樹脂に対して熱を加えれば軟らかくなり、冷却すれば硬くなることを繰り返す性質を有する限りにおいて特に限定されることなく、あらゆる樹脂を用いることができる。好ましくは、本発明の基材を構成する熱可塑性樹脂は、非晶性であり得る。なお、樹脂が「非晶性である」とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて融点を測定することができないことを意味する。
具体的には、基材を構成する熱可塑性樹脂は、脂環式構造含有樹脂が挙げられ、中でも、ノルボルネン系樹脂を好適に用いることができ、特に、ノルボルネン系開環重合体よりなる樹脂を好適に用いることができる。なお、基材を構成する熱可塑性樹脂、及び後述する熱可塑性樹脂シートのうちの少なくとも一方が、透明樹脂であることが好ましい。本発明の樹脂充填方法を経て得られる光学素子等の製品の透明性を高めることができるからである。なお、「透明」とは、厚さ3mmの射出成形片を用いて、JIS K7375:2008に従って測定した全光線透過率が、80%以上であることを意味する。
熱可塑性樹脂よりなる基材、即ち、熱可塑性樹脂基材のビカット軟化温度は、後述する熱可塑性樹脂シートのビカット軟化温度よりも高い必要がある。熱可塑性樹脂基材のビカット軟化温度が熱可塑性樹脂シートのビカット軟化温度よりも高いように、材料を選定することで、熱可塑性樹脂基材に設けられた凹凸パターンのパターン形状が変化することを効果的に抑制することができる。さらに、かかる効果を一層高める観点から、熱可塑性樹脂基材のビカット軟化温度が、熱可塑性樹脂シートのビカット軟化温度よりも、30℃以上大きいことが好ましく、45℃以上大きいことがより好ましく、60℃以上大きいことがさらに好ましい。
さらに、熱可塑性樹脂基材のビカット軟化温度は、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましく、140℃以上であることが特に好ましい。かかる基材は耐熱性に優れるため、結果的に、本発明の樹脂充填方法を経て得られる光学素子等の製品の性能を高めることができる。
そして、上記のような形状及び性状を有する熱可塑性樹脂基材は、所望の片側に所定の凹凸パターンを良好に成形することが可能である限りにおいて特に限定されることなく、射出成形法、プレス成形法、及びロール成形法等の既知の成形方法に従って製造することができる。任意で、基材の凹凸パターンの少なくとも一部(例えば、図1を参照して説明したような垂直面13)を、鏡面として形成する場合の方途としては、特に限定されることなく、スパッタリング及び金属蒸着等の既知の鏡面形成方法が挙げられる(例えば、特許第6203978号明細書参照)。
(熱可塑性樹脂シート)
本発明の樹脂充填方法で用いる熱可塑性樹脂シートは、上述した基材(熱可塑性樹脂基材)のビカット軟化温度よりも低いビカット軟化温度を有する限りにおいて特に限定されることなく、あらゆる熱可塑性樹脂シートでありうる。熱可塑性樹脂シートとしては、上述した基材と同様に、熱可塑性である限りにおいてあらゆる樹脂よりなるシートを用いることができる。さらに、熱可塑性樹脂シートは、ビカット軟化温度が105℃未満であることが好ましく、100℃未満であることがより好ましく、90℃未満であることがより好ましく、80℃未満であることがさらに好ましい。
また、熱可塑性樹脂シートの屈折率が、基材を構成する熱可塑性樹脂の屈折率の0.8倍以上1.2倍以下であることが好ましく、0.9倍以上1.1倍以下であることがより好ましい。なお、「屈折率」は、実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、熱可塑性樹脂シートの厚みは、基材の凹凸パターンの凹部のサイズに応じて、適宜選択することができる。
そして、熱可塑性樹脂シートの製造方法としては、特に限定されることなく、所望の性状を満たす熱可塑性樹脂ペレットを調製又は入手し、溶融押出成形法等の既知の成形方法を採用することができる。かかる成形方法にて成形条件を適宜変更することで、所望の厚みの熱可塑性樹脂シートを得ることができる。勿論、熱可塑性樹脂シートとして、所望の性状を満たす上市製品を用いることも可能である。
(準備工程)
なお、以下に説明する本発明の樹脂充填方法を構成する各工程に先立って、任意で、上述したような、基材を製造する工程、及び/又は、熱可塑性樹脂シートを製造する工程を含んでも良い。
(減圧工程)
減圧工程では、基材の凹凸パターン上に、熱可塑性樹脂シートを直接積層して積層体とし、該積層体をチャンバー内に配置して該チャンバー内を減圧状態とする。積層体を内部に配置するためのチャンバーとしては、密閉性を有している限りにおいて特に限定されることなく、あらゆるチャンバーを用いることができる。具体的には、「チャンバー」は、真空プレス装置に備えられた真空隔室でありうる。なお、本工程、及び後続する熱プレス工程は、共に、真空プレス装置を用いて実施することができる。
なお、「減圧状態」とは、減圧工程を開始する前の雰囲気の圧力状態(通常、大気圧)よりも、低圧状態であるということを意味し、具体的には、ゲージ圧で-70kPa以下の圧力とすることが好ましく、ゲージ圧で-90kPa以下の圧力とすることがより好ましい。減圧工程にてかかる圧力範囲まで減圧することで、基材と、該基材の凹部に充填された熱可塑性樹脂シート由来の熱可塑性樹脂との間の界面に気泡が包含されることを効果的に抑制することができる。
図2を参照して、かかる減圧工程から、後続する熱プレス工程までの具体的な操作及びその効果をより詳細に説明する。図2は、本発明の一例に従う樹脂充填方法に含まれる減圧工程~熱プレス工程までの流れを説明するための概略図である。図2に示すように、基材10及び熱可塑性樹脂シート20よりなる積層体に対して、近い順に、任意の、上側剥離シート31及び下側剥離シート32、並びに、上側支持板41及び下側支持板42をこの順で配置する。なお、図2では、明確のために、基材10及び熱可塑性樹脂シート20の積層体以外の各要素を、図上矢印で図示する押圧方向にて相互に離間して図示しているが、実際の配置状態では、これらの要素は相互に隣接していてもよい。また、図示しないが、図2に示された全要素は、チャンバー内に配置されている。上側剥離シート31及び下側剥離シート32、積層体が他の要素に貼り付くことを抑制するように機能し、積層体を構成し得る各種熱可塑性樹脂に対して剥離性を奏し得る限りにおいて、特に限定されることなく、例えばポリイミド等のあらゆる材料よりなる。また、上側支持板41及び下側支持板42は積層体を支持するように機能し、積層体の積層位置にずれが生じること、及び、積層体に対する熱及び圧力の入力を均一化するように機能する。なお、上側支持板41及び下側支持板42は、例えば、SUS板等であり得る。
実際の操作上は、まず、下側支持板42(任意)上に、下側剥離シート32(任意)、基板10、熱可塑性樹脂シート20、上側剥離シート31(任意)、及び上側支持板41(任意)をこの順で配置することができる。
ここで、上側プレス板51と、熱可塑性樹脂シート20とは、本工程では上側プレス板51の熱が熱可塑性樹脂シート20に伝導しないよう、十分に離間させた状態とすることが重要である。即ち、減圧工程では、熱可塑性樹脂シートを加温しないようにすること、より詳細には、熱可塑性樹脂シートをシート加温温度Hs℃で加温しないようにすることが重要である。後続する熱プレス工程に先立って、減圧工程を実施することにより、基材と、該基材の凹部に充填された熱可塑性樹脂シート由来の熱可塑性樹脂との間の界面に気泡が包含されることを効果的に抑制することができる。
なお、基材の凹凸パターンの凹部を効果的に減圧状態として、熱可塑性樹脂シート20由来の熱可塑性樹脂による基材10の凹部の充填率を高める観点から、基材10を下側にして、チャンバー内に配置することが好ましい。
また、減圧工程にて減圧されたチャンバー内の雰囲気は、熱プレス工程においても略そのままの圧力で保持される。
(熱プレス工程)
熱プレス工程では、チャンバー内にて、積層体の熱可塑性樹脂シートを、シート加温温度Hs℃で加温するとともに、積層体の基材を加温せずに、或いは、基材加温温度Hb℃で加温しながら、積層体をプレスする。この際に、シート加温温度Hs℃は、熱可塑性樹脂シートのビカット軟化温度以上である必要がある。シート加温温度Hs℃が熱可塑性樹脂シートのビカット軟化温度未満である場合には、熱可塑性樹脂シートが軟化せず、基材の凹部に熱可塑性樹脂を充填することができない。さらに、シート加温温度Hs℃が、熱可塑性樹脂シートのビカット軟化温度よりも、40℃以上180℃以下大きいことが好ましく、60℃以上130℃以下大きいことがより好ましい。シート加温温度Hs℃が、かかる好適下限値以上であれば、熱可塑性樹脂シート由来の熱可塑性樹脂による基材凹部の充填率を効果的に高めることができるとともに、基材の凹凸パターンが変形することを効果的に抑制することができる。また、シート加温温度Hs℃が上記好適上限値以下であれば、基材の凹凸パターンが変形することを効果的に抑制することができる。
一方、熱プレス工程では、基材側は、全く加温しないか、或いは、基材加温温度Hb℃で加温する。この際に、基材加温温度Hb℃が、シート加温温度Hs℃以下であるとともに、基材のビカット軟化温度以下である。基材加温温度Hb℃がかかる上限値以下であることで、基材の凹凸パターンが変形することを効果的に抑制することができる。
このように、シート加温温度Hs℃が低すぎる場合及び高すぎる場合、並びに、基材加温温度Hb℃が高すぎる場合のそれぞれにおいて、基材の凹凸パターンに変形が発生し得る。シートの加温温度Hs℃が低すぎる場合には、熱プレス工程にて熱可塑性樹脂シートが充分に軟化していない状態でプレスが行われるため、プレス圧の印加により基材側の凹凸パターンの凸部の頂点が変形する虞がある。かかる場合における凹凸パターンの変形態様の一例を、図3に模式的に示す。図3において、凸条(凸部)11の頂点が潰れて曲がった状態になっていることが分かる。また、シートの加温温度Hs℃が高すぎる場合、及び基材加温温度Hb℃が高すぎる場合には、熱プレス工程にて基材が過剰に軟化してしまう虞がある。かかる場合における凹凸パターンの変形態様の一例を、図4に模式的に示す。図4において、凸条(凸部)11の頂点が溶けて丸まってしまい、変形した状態になっていることが分かる。
なお、上述したシート加温温度Hs℃、及び基材加温温度Hb℃は、加温されたシート/基材自体の温度ではなく、シート/基材に対して熱を入力する手段、例えば、図2に示す上側プレス板51/下側プレス板52を加熱する際の温度設定を意味する。
そして、上側プレス板51/下側プレス板52を上記したような所定の温度に調節するタイミングは特に限定されることなく、例えば、上述した減圧工程の前段階でありうる。
そして、熱プレス工程では、プレス(即ち、プレス圧を印加すること)に先立ち、熱源(例えば、真空プレス装置におけるプレス板)を加熱対象である基材及び/又は熱可塑性樹脂シートに対して接近又は(圧がかからない態様で)接触させることで、基材、及び任意で熱可塑性樹脂シートを加熱して、軟化させることができる。少なくとも基材が充分に加熱され軟化した後に、上側プレス板51を押下して加圧する/下側プレス板52を押し上げて加圧することで、積層体を熱プレスすることができる。なお、かかる加熱及び軟化に要する時間は、熱可塑性樹脂シートの性状に応じて任意に設定することができ、例えば、1分以上10分以内であり得る。
さらに、熱プレス工程において、積層体をプレスするプレス圧を、低圧から高圧に変化させることが好ましい。好ましくは、低圧側のプレス圧は、2MPa以下であり、高圧側のプレス圧は、2MPa以上である。なお、低圧側のプレス圧よりも高圧側のプレス圧の方が高い。かかる態様で熱プレス工程におけるプレス圧を変化させることで、基板に設けられた凹凸パターン形状が変形することを一層効果的に抑制することができる。低圧側のプレス圧は、通常、0.1MPa以上であり、高圧側のプレス圧は、通常、10MPa以下であり得る。なお、プレス圧は、ゲージ圧である。
また、熱プレス工程におけるプレス時間は、使用する熱可塑性樹脂シート20の性状に応じて適宜調節することができる。例えば、上記したように、プレス圧を低圧から高圧に変化させる操作を実施する場合には、低圧プレス及び高圧プレスを、それぞれ、10秒~5分間にわたって実施することができる。低圧プレス時間及び高圧プレス時間が、それぞれこの範囲であれば、基材の凹凸パターンが変形することを抑制し、基材凹部の充填率を効果的に高めることができる。
そして、高圧プレス時間経過後に、チャンバー内の圧力を大気圧に戻す。その後、上側プレス板51を上昇させる/下側プレス板52を下降させることにより、基材の凹凸パターンのうちの凹部が熱可塑性樹脂シート由来の熱可塑性樹脂により充填されてなる構造体の保持を解放して、チャンバー内から取り出す。
このようにして得ることができる、基材の凹凸パターンのうちの凹部が熱可塑性樹脂シート由来の熱可塑性樹脂により充填されてなる構造体(以下、「充填構造体」とも称する)は、任意で、下記の接合工程に処され、特殊な形状の光学素子として機能させることができる。なお、この場合、「基材」は、基材の凹凸パターンに含まれる各凸部の垂直面が、ミラー面を有してなるものでありうる。なお、任意で、充填構造体の端部を切り落として、所望の形状に整形しても良い。
(接合工程)
任意で行い得る接合工程について、図5を参照して説明する。図5にて、2つの充填構造体以外の他の要素は、図2と同様である。図5に示す2つの充填構造体は、構成、サイズ等同一であるが、接合の際に互いに異なる向きとなるように配置されている。以下、便宜的に、図上上側に配置した充填構造体を上側充填構造体100と称し、図上下側に配置した充填構造体を下側充填構造体200と称することとする。
接合工程では、まず、上側充填構造体100及び下側充填構造体200を位置合わせして積層してチャンバー内に配置する。「位置合わせ」の際には、上側充填構造体100における凸条の整列方向と、下側充填構造体200における凸条の整列方向が、平面視して直交(88℃~92℃の範囲)するように、上側充填構造体100及び下側充填構造体200を配置する。より詳細には、上記のように位置合わせされてなる光学素子では、上側充填構造体100の凸条の垂直面に形成された鏡面、及び下側充填構造体200の凸条の垂直面に形成された鏡面が、平面視した場合に相互に直交(88℃~92℃の範囲)するような空間配置が得られる。かかる鏡面の空間配置を有する光学素子は、空中で映像又は画像を結像することができるイメージング装置に好適に用いることができる。
次いで、接合工程では、上述した(減圧工程)と同様にして、チャンバー内を減圧状態とする。接合工程にてチャンバー内を減圧する際の好適な圧力も、(減圧工程)の項目にて上述した圧力と同様である。
その後、上側プレス板51を押下する/下側プレス板52を押し上げることにより、上側充填構造体100及び下側充填構造体200の積層体を熱プレスする。上側プレス板51及び下側プレス板52の加熱温度は、用いた熱可塑性樹脂シートのビカット軟化温度以上であって、用いた熱可塑性樹脂基材のビカット軟化温度未満である限りにおいて特に限定されることなく、あらゆる温度であり得る。なお、上側プレス板51/下側プレス板52を上記したような所定の温度に調節するタイミングは、特に限定されることなく、例えば、接合工程の前段階でありうる。
接合工程における熱プレスにあたり、上述した(熱プレス工程)と同様に、プレス圧を、低圧から高圧に変化させることが好ましい。また、低圧プレス時間及び高圧プレス時間も、(熱プレス工程)の項目で上述した好適な範囲を満たすことが好ましい。
そして、所定の態様による熱プレスを終えた後に、チャンバー内の圧力を大気圧に戻す。その後、上側プレス板51を上昇させる/下側プレス板52を下降させることにより、相互に接合された上側充填構造体100及び下側充填構造体200の保持を解放して、チャンバー内から取り出す。
このような任意の接合工程を経て得ることができる接合された2つの充填構造体(光制御パネル)よりなる「光学素子」の構造の一例の概略図を、図6に示す。図6に示す光学素子300は、充填構造体100及び200が熱可塑性樹脂シート由来の熱可塑性樹脂を介して相互に接合されてなる構造体である。充填構造体100は、凸条(凸部)101、かかる凸条101の垂直面に形成された鏡面103、及び隣接する凸条101間の間隙により定義される凹部102を備える。また、充填構造体200は、凸条(凸部)201、かかる凸条の垂直面に形成された鏡面203、及び隣接する凸条(凸部)201間の間隙により定義される凹部202を備える。図中、破線にて、充填構造体100の内部構造として備えられている凸条(凸部)101,201等の輪郭を示す。充填構造体100における凸条(凸部)101の整列方向と、充填構造体200における凸条(凸部)201の整列方向とが、平面方向で相互に直交している。このため、鏡面103及び鏡面203の向きも、平面方向で相互に直交している。このような構造を有する光学素子は、空中で映像又は画像を結像することができるイメージング装置に好適に用いることができる。
以下、本発明について実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「部」は、特に断らない限り、質量基準である。また、圧力はゲージ圧力である。各例における測定及び評価は、以下の方法により行った。
<ビカット軟化温度>
熱可塑性樹脂基材及び熱可塑性樹脂シートの形成材料である各樹脂を用いて、それぞれ厚さ3mmの射出成形片を作製し、試験試料とした。かかる試験試料を用いて、JISK7206:2016のB50法に準拠して、HDTテスターS-3M(東洋精機製作所社製)を使用し、ビカット軟化温度を測定した。
<屈折率>
カルニュー屈折計(カルニュー光学工業社製、KPR-200)を用いてVブロック法により測定した。基材樹脂層及び充填樹脂層の形成材料である各樹脂を用いて40mm×40mm×3.0mmの樹脂成形体を使用し、25℃で、波長587.6nmの光における屈折率を測定した。
<基材の凹凸パターン形状の変形>
―評価方法―
基材の凹凸パターンの変形を評価するにあたり、下記式(1)に従って凸部の垂直面の垂直性パラメータの値を算出した。
H1/H0・・・(1)
(式(1)にて、H1は、略三角形状の凸部の垂直面において基材の主面に対して垂直な部分の長さ(高さ)を示し、H2は、略三角形状の凸部の斜面に一致する直線が、垂直面に沿う基材主面の法線と交差する位置の高さである。H0及びH1の関係について明確にするために、図7を示す。)
図7は、基材の一方の主面上に設けられた複数の凸部11の整列方向における断面図である。図7において、直角三角形状の凸部11は、垂直面13を有している。そして、かかる垂直面と、凸部11の斜辺(斜面)15とにより、凸部11間の間隙(凹部)12の少なくとも一部が画定されている。そして、凸部11の垂直面に一致する主面Msの法線である直線Lv及び凸部11の斜辺(斜面)15に一致する直線Lhは交点Cで交差する。この場合、垂直面13と直線Lvとが一致する最高点の高さが上記H1に相当し、交点Cの高さが上記H0に相当する。
かかる断面を、実施例、比較例で作製した光制御パネルを主面方向で9等分して得た各区画について取得し、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX-1000)を用いて、各断面あたり10個の凸部を観察して、垂直性パラメータ(VI)の値を算出した。得られた90個の値の平均値を、下記の基準に従って評価した。
―評価基準―
A:0.85以上
B:0.7以上、0.85未満
C:0.7未満
<基材の凹凸パターンにおける凹部の空隙率>
―評価方法―
基材の凹凸パターンにおける凹部が、熱可塑性樹脂シート由来の熱可塑性樹脂により充填されなかった割合を示す、「空隙率」を下記式(2)に従って算出した。
L1/L0・・・(2)
(式(2)にて、L1は、熱可塑性樹脂により充填されなかった隙間の高さを、L0は、凸部の高さを示す。L1及びL0の関係を明確にするために、図8を示す。)
図8は、基材の一方の主面上に設けられた複数の凸部11の整列方向における断面図である。図8において、直角三角形状の凸部11は、垂直面13を有している。そして、かかる垂直面と、隣接する凸部11の斜辺(斜面)15とにより、凸部11間の間隙(凹部)の少なくとも一部が画定されている。熱可塑性樹脂シート20由来の熱可塑性樹脂20’が、かかる間隙(凹部)の一部を充填し、間隙(凹部)の一部が空隙Gとして残留している。このような場合に、基材の主面Msから、空隙Gの最高点までの高さをL1とし、凸部の最高点の高さをL0とする。
かかる断面を、実施例、比較例で作製した光制御パネルを主面方向で9等分して得た各区画について取得し、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX-1000)を用いて、各断面あたり10個の凹部を観察して、「空隙率」の値を算出した。得られた90個の値の平均値を、下記の基準に従って評価した。
―評価基準―
A:0.01未満
B:0.01以上、0.1未満
C:0.1以上
<基材の準備>
熱可塑性樹脂(日本ゼオン社製、ZEONEX(登録商標)K26R、非晶性、厚さ3mmの射出成形片での、JIS K7375:2008に従う全光透過率92%、屈折率1.534)を用いて、下記寸法の凹凸パターンを有する基材を、下記条件に従う射出成形法により成形して基材としてのプリズムプレート得た。かかる基材について、上記方法に従って測定したビカット軟化温度は147℃であった。
プリズム部サイズ:100mm×100mm
プリズム金型形状:幅500μm、高さ500μm
成形装置:射出成形装置((株)日本製鋼所製J450EL II)
成形条件:射出速度50mm/秒、保圧50MPa
そして、得られたプリズムプレートの垂直面に対して、金属蒸着により鏡面を形成した。
<熱可塑性樹脂シートの準備>
<<熱可塑性樹脂シート1の準備>>
熱可塑性樹脂(ZEONEX(登録商標)5000、非晶性、厚さ3mmの射出成形片での、JIS K7375:2008に従う全光透過率92%、屈折率1.531)をフィルム押出し成形機(GSIクレイオス社製、単軸押出機、φ=20mm、)により、下記の製膜条件に従ってシート状に成形して、熱可塑性樹脂シート1(上記方法に従って測定したビカット軟化温度が69℃)を得た。
製膜条件:材料としての熱可塑性樹脂を220℃で溶融し、溶融した熱可塑性樹脂をTダイから押し出し、冷却し、裁断して、厚み300μm、幅280mmのシートを得た。
<<熱可塑性樹脂シート2の準備>>
熱可塑性樹脂として、ZEONOR(登録商標)1060R(非晶性、厚さ3mmの射出成形片での、JIS K7375:2008に従う全光透過率92%、屈折率1.531)を用い、溶融温度を230℃に変更した以外は、熱可塑性樹脂シート1の準備の際と同様の操作を行って、熱可塑性樹脂シート2(上記方法に従って測定したビカット軟化温度が104℃)を得た。
<<熱可塑性樹脂シート3の準備>>
熱可塑性樹脂として、ZEONEX(登録商標)K26Rを用い、溶融温度を250℃に変更した以外は、熱可塑性樹脂シート1の準備の際と同様の操作を行って、熱可塑性樹脂シート3(上記方法に従って測定したビカット軟化温度が147℃)を得た。
(実施例1)
上記に従って準備した基材、及び熱可塑性樹脂シート1(ビカット軟化温度:69℃)を用いて、真空プレス装置(ミカドテクノス社製、真空熱加圧装置「VS30-3030」)により下記の各工程を行った。減圧工程に先立って、真空プレス装置の下側プレス板を30℃(基材加温温度Hb℃)、上側プレス板を170℃(シート加温温度Hs℃)に設定し、かかる設定温度まで昇温させた。
<減圧工程>
まず、下側プレス板上に、下側支持板、下側剥離シート、基材、熱可塑性樹脂シート1、及び上側剥離シートをこの順で配置し、上側剥離シート側に、基材-熱可塑性樹脂シート1の積層体に対して圧力がかからないようにして、上側支持板を配置した。かかる位置関係を保持したまま、積層体を真空チャンバー内に導入した。
そして、真空チャンバー内をゲージ圧で-100kPaまで減圧した。
<熱プレス工程>
熱プレス工程では、まず、上側プレス板を下降させて、基板から10mm離れた位置で停止し、5分間保持した。その後、上側プレス板を下降させて、圧力1MPaで積層体を加圧し、1分間保持した後に、さらに上側プレス板を下降させて、5MPaまで昇圧して、1分間保持した。そして、真空チャンバー内を大気圧に戻した後に上側プレス板を上昇させて、真空チャンバーから、充填構造体である樹脂充填済みのプリズムプレートを取り出した。
得られたプリズムプレートについて、上記に従って各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例2~3、5~6)
シート加温温度Hs℃を、表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、充填構造体としての樹脂充填済みのプリズムプレートを得て、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
シート加温温度Hs℃、及び基材加温温度Hb℃を、それぞれ表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、充填構造体としての樹脂充填済みのプリズムプレートを得て、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例7)
熱可塑性樹脂シートとして、ビカット軟化温度が104℃である熱可塑性樹脂シート2を用い、更に、シート加温温度Hs℃を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、充填構造体としての樹脂充填済みのプリズムプレートを得て、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例8)
減圧工程におけるチャンバー内の圧力を、ゲージ圧で-80kPaに変更した以外は、実施例1と同様にして、充填構造体としての樹脂充填済みのプリズムプレートを得て、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例9)
熱プレス工程にて、積層体をプレスするプレス圧を、低圧から高圧に変化させず、5MPaで一定とした以外は、実施例1と同様にして、充填構造体としての樹脂充填済みのプリズムプレートを得て、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
熱可塑性樹脂シートとして、ビカット軟化温度が147℃である熱可塑性樹脂シート3を用いた以外は、実施例1と同様にして、充填構造体としての樹脂充填済みのプリズムプレートを得て、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
熱可塑性樹脂シートとして、ビカット軟化温度が147℃である熱可塑性樹脂シート3を用い、シート加温温度Hs℃を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、充填構造体としての樹脂充填済みのプリズムプレートを得て、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1と同様の<減圧工程>及び<熱プレス工程>に代えて、下記のような順序に従う各種操作を行った以外は、実施例1と同様にして充填構造体としての樹脂充填済みのプリズムプレートを得た。
まず、実施例と同様に、真空プレス装置の下側プレス板を30℃(基材加温温度Hb℃)、上側プレス板を170℃(シート加温温度Hs℃)に設定し、かかる設定温度まで昇温させた。
次いで、下側プレス板上に、下側支持板、下側剥離シート、基材、熱可塑性樹脂シート1、及び上側剥離シートをこの順で配置し、上側剥離シート側に、基材-熱可塑性樹脂シート1の積層体に対して圧力がかからないようにして、上側支持板を配置した。かかる位置関係を保持したまま、積層体を真空チャンバー内に導入した。
ここで、上側プレス板を下降させて、基板から10mm離れた位置で停止し、5分間保持した。その後、真空チャンバー内をゲージ圧で-100kPaまで減圧した。即ち、本例では、減圧工程よりも先に熱プレス工程を開始した。
そして、上側プレス板を下降させて、圧力1MPaで積層体を加圧し、1分間保持した後に、さらに上側プレス板を下降させて、5MPaまで昇圧して、1分間保持した。そして、真空チャンバー内を大気圧に戻した後に上側プレス板を上昇させて、真空チャンバーから充填構造体である、樹脂充填済みのプリズムプレートを取り出した。
得られたプリズムプレートについて、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
なお、得られた充填構造体の断面を目視観察したところ、基材と、該基材の凹部に充填された熱可塑性樹脂シート1由来の熱可塑性樹脂との間の界面に気泡が包含されていた。
(比較例4)
熱可塑性樹脂シートとして、ビカット軟化温度が104℃である熱可塑性樹脂シート2を用い、更に、シート加温温度Hs℃及び基材加温温度Hb℃を、それぞれ表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、充填構造体としての樹脂充填済みのプリズムプレートを得て、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例5)
基材加温温度Hb℃を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、充填構造体としての樹脂充填済みのプリズムプレートを得て、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 0007305952000001
表1より、熱可塑性樹脂基材のビカット軟化温度よりも、ビカット軟化温度が低い熱可塑性樹脂シートを用い、更に、基材と熱可塑性樹脂シートとを積層して減圧状態としてから所定の態様で熱プレスした実施例1~9では、基材の有する凹凸パターン形状が変形することを効果的に抑制することができるとともに、基材に対して熱可塑性樹脂を良好に充填することができたことが分かる。一方、基材のビカット軟化温度と熱可塑性樹脂シートのビカット軟化温度が同じであった比較例1~2、基材と熱可塑性樹脂シートとの積層体の載置された雰囲気を減圧状態とする前に熱プレス工程を実施した比較例3、ビカット軟化温度未満の加温温度で熱可塑性樹脂シートを加温した比較例4、更に、基材のビカット軟化温度を超える基材加温温度Hb℃で基材を加温した比較例5では、基材の有する凹凸パターン形状が変形することを抑制することと、基材に対して熱可塑性樹脂を良好に充填することとを両立することができなかったことが分かる。
本発明の樹脂充填方法によれば、基材の有する凹凸パターン形状が変形することを効果的に抑制することができるとともに、基材に対して熱可塑性樹脂を良好に充填することができる。
10 基材
11 凸条(凸部)
12 間隙(凹部)
13 垂直面
14 主面(平坦面)
15 斜辺(斜面)
20 熱可塑性樹脂シート
31 上側剥離シート
32 下側剥離シート
41 上側支持板
42 下側支持板
51 上側プレス板
52 下側プレス板
100 上側充填構造体
200 下側充填構造体
101,201 凸条(凸部)
102,202 凹部
103,203 鏡面
300 光学素子
MS 主面

Claims (3)

  1. 凹部及び凸部よりなる凹凸パターンを片側に有する基材の前記凹部に対して、熱可塑性樹脂シートを用いて熱可塑性樹脂を充填する樹脂充填方法であって、
    前記基材が、熱可塑性樹脂基材であり、該熱可塑性樹脂基材のビカット軟化温度が、前記熱可塑性樹脂シートのビカット軟化温度よりも30℃以上高く、
    前記基材の前記凹凸パターン上に、前記熱可塑性樹脂シートを直接積層して積層体とし、該積層体をチャンバー内に配置して該チャンバー内を減圧状態とする減圧工程と、
    前記チャンバー内にて、前記積層体の前記熱可塑性樹脂シートを、シート加温温度Hs℃で加温するとともに、前記積層体の前記基材を加温せずに、或いは、基材加温温度Hb℃で加温しながら、前記積層体をプレスする熱プレス工程と、
    をこの順で含み、
    前記熱プレス工程における、前記シート加温温度Hs℃が、前記熱可塑性樹脂シートのビカット軟化温度よりも、40℃以上180℃以下大きく、且つ、前記基材加温温度Hb℃が、前記シート加温温度Hs℃以下であるとともに、前記基材のビカット軟化温度以下である、樹脂充填方法。
  2. 前記減圧工程において、前記チャンバー内の圧力をゲージ圧で-70kPa以下とする、請求項に記載の樹脂充填方法。
  3. 前記熱プレス工程において、前記積層体をプレスするプレス圧を、低圧から高圧に変化させることを含む、請求項1又は2に記載の樹脂充填方法。
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