JP7301555B2 - 電気二重層キャパシタ及び電気二重層キャパシタの製造方法 - Google Patents
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Description
蓄電デバイスにおいて、炭素質原料を賦活し表面積を大きくした多孔質炭素を電極に用いるとファラドオーダーの大容量が得られることが知られている。容量は表面積が大きいほど大きくなると考えられてきた。
電気二重層キャパシタは電池と比べると容量が小さい欠点があるが、出力密度を意味する瞬発力とサイクル特性に優れ、安全性に優れた蓄電デバイスである。瞬発力を高めるため、電解液は電気伝導度が高い硫酸水溶液(848mS/cm)、または耐電圧が高い有機溶媒にテトラフルオロボレートを含ませた電解液が用いられている。
そして、用いた多孔質炭素について、BET比表面積測定結果、BJH法による容積測定結果、GCMG法(Grand Canonical Monte Carlo method)による容積の測定結果などを駆使し、研究した結果、多孔質炭素の細孔と容量増加との確実な相関を見出すことができなかった。
図10は、NaCl水溶液中においてCl-イオンが水和していると考えた場合のイメージ図を示している。
電解液をNaCl水溶液とした場合、電気二重層キャパシタを充電すると図10に示すCl-イオンは、多孔質炭素の孔の表面近傍に移動し、電気二重層を形成する。多孔質炭素の表面積が大きいほど、容量は大きくなると考えられるが、容量は電気二重層に存在するCl-量と、多孔質炭素表面とCl-量との距離にも依存すると考えられる。
電気二重層を形成しているCl-イオンは、多孔質炭素の表面に1層並ぶのか、それとも複数層重なって並ぶのかは不明であるので、この事情から容量の解析は困難である。同様に、対極側のNa+の容量解析も困難である。
図11は1つのイメージ図であり、理想的にマクロ孔100内にメソ孔101が形成され、メソ孔101内にミクロ孔102が形成され、それらが分布していると推定した状態を例示している。実際の多孔質炭素が図11に示す構造と同等であるか否かの確証はないが、種々の大きさの孔が混在して表面を構成していることは確かである。
このため、本発明者は、他の細孔測定方法について検討し、前述したマクロ孔100とメソ孔101とミクロ孔102の分布を含めて多孔質炭素表面の孔の状態を把握しつつ細孔を評価できる方法と電気二重層キャパシタの容量増加の関係について研究を進めた。
(4)前記一態様の電気二重層キャパシタにおいて、前記セパレータはセルロース繊維またはガラス繊維からなることが好ましい。
セルロース繊維またはガラス繊維は、安全な材料で、絶縁性がよく、かつNaCl水溶液との耐食性がよく、濡れ性がよいため好ましい。これらの材料からなるセパレータは内部に空孔があり、この空孔にNaCl水溶液が保持されるので好ましい。
(6)前記一態様の電気二重層キャパシタの製造方法において、濃度が5%以上26%未満のNaCl水溶液を用いることが好ましい。
(7)前記一態様の電気二重層キャパシタの製造方法において、白金、金、銀、チタン、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、亜鉛、錫、炭素、導電性高分子のいずれかを含む集電体を用いることが好ましい。
また、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更し表示しているため、各部材の相対的な大きさが図面に示す形態に限らないのは勿論である。
一般的に多孔質炭素において、細孔径2nm未満をミクロ孔、2~50nmをメソ孔、50nm超をマクロ孔と分類されている。さらにミクロ孔は、0.7~2nmをスーパーミクロ孔、0.7nm未満をウルトラミクロ孔と分類されている。
多孔質炭素とは、表面に多数の細孔が形成されている炭素からなり、広範囲な大きさの細孔径分布を有している。例えば活性炭、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト、グラフェンなどが挙げられる。原料は例えばやし殻、竹、シイ、スギ、稲わら、麦わら、籾殻、おがくず、ケナフなどの植物や、石油、石炭、樹脂などの炭素質材料、アセチレンなど炭素を含んだガスが挙げられる。
ただしBET比表面積と細孔径分布は互いに関連しているため、1つの物性のみを変化させることを1つの製造条件だけで制御することは難しい。また製造条件で原料からの収率も変化する。
図11を基に説明した通り、マクロ孔の表面積は小さいため、マクロ孔は、電気二重層キャパシタの容量にあまり寄与していないと考えられる。また、電解液は溶液に溶質を溶かしたものであり、アニオンとカチオンが溶媒和した状態で存在していると考えられ、多孔質炭素の細孔径が小さくなるほど、イオンが入りにくくなり、電気二重層キャパシタの容量も小さくなると考えられる。
ガス吸着法とは、試料にN2、Ar、CO2、H2などを吸着させてその吸着等温線を測定し、比表面積、細孔容積、細孔径分布などを求める方法である。
一般的に吸着等温線はI型~VI型まで分類されている。通常、吸着質にN2を、吸着温度を77Kとして測定されることが多く、主にI型、II型、IV型の吸着等温線が得られる。得られた吸着等温線からBET法で比表面積を、BJH法、DH法、CI法などでメソ孔の容積を、tプロット法やαS法などでミクロ孔の容積を計算することができると考えられている。
図5に、後述する実施例で得られた結果を示すが、異なる8種類の多孔質炭素を本発明者が準備し、同じ吸着質にN2、吸着温度を77Kとして吸着等温線を測定し、BET法で比表面積を求め、これら多孔質炭素からなる電極と、NaCl水溶液を電解液に用いた電気二重層キャパシタの容量を測定し、用いた多孔質炭素の質量で容量を割った値との散布図を示した。
図5から、BET法で求めた比表面積が大きくなるほど、ある程度容量が大きくなる傾向が見られたが、相関係数が小さく、同じBET比表面積で容量が異なる場合もあり、一概にBET比表面積だけでは説明できないことがわかった。
結果を図4に示す。図4は、後述する実施例で得られた結果を示すが、メソ孔容積は前述の場合の同じ8種類の多孔質炭素に対し、吸着質にN2を選択し、吸着温度を77Kとして吸着等温線を測定し、BJH(Barrett-Joyner-Halenda)法で求めた。図4に示すように電気二重層キャパシタの容量とBJH法で求めたメソ孔容積との相関は全く見られず、メソ孔容積は容量にあまり影響していないと考えられる。
図3に示すように、電気二重層キャパシタの容量とtプロット法で求めた細孔径2nm未満の細孔容積との相関はBJH法で求めた容積よりよかったが十分ではなかった。
そこで本発明者は、N2より動的分子径が小さいCO2を用い、298Kで吸着等温線を測定した。298KのCO2測定は吸着温度が高く、拡散速度も速いため、小さな細孔までCO2が侵入できると考えられる。また、電気二重層キャパシタが用いられる温度は室温付近が多いため、同じ温度領域での解析がよいと考えた。
GCMC法は、従来の吸着相が液体状態であると仮定(Kelvin理論)して解析するのに対し、固体表面からの吸着密度が周期的に変化していくとして解析する方法である。このデータは1.39nm以下のスリット幅の容積である。
DA法はDR式(DubininとRadushkevich)の概念を拡張したもので、以下の(1)式~(3)式で表される。
DA法の考えによると、細孔への吸着は壁面に吸着層が積層していくのではなく、細孔空間への容積充填であるとして充填率を定義したものである。電気二重層のイオン分布は諸説あるが、電極平面の最も近い位置に吸着するヘルムホルツモデルと電極平面からの距離の関数で拡散するグイ-チャップマンモデルを考慮すると、細孔におけるDA法と電気二重層の吸着状態のモデルは似ていることから相関が強くなるのではないかと推測した。
各式において、Rは気体定数、Tは絶対温度、εは吸着の特性自由エネルギー(気相から吸着層に1molの気体を移動する仕事)、pは吸着質の圧力、p0は飽和蒸気圧を表す。また、C’は(2)式においてlog10Vをlogn 10(p0/p)に対してプロットした時の傾きである。
(2)式に示すlog10Vをlogn 10(p0/p)に対し図表上にプロットして、直線の切片からVpを求めることができる。DA指数nは最も直線性がよい値を選択した。nは多孔質炭素の種類によって異なり1.2~1.6の範囲であった。
吸着等温線の測定はいろいろな要因で曲がるため、上述のnを変化させて強制的に直線にするとnの値は1.2~1.6の範囲となった。
上述のプロットは、直線状になればなるほど、理論に良く合致していることとなる。nの値を変えると、上に凸のあるいは下に凸のブロットとなることもあり、最も直線性が良くなる指数を選択することが好ましい。
また、DR法は分布関数のパラメータn=2としているが、DA法はnを限定していないため、実測した種々の多孔質炭素に見合った細孔容積を測定できると考えられる。それ故、DA法で求めた細孔容積と電気二重層キャパシタ容量との相関が強くなったと考えられる。
図1に示した実施例における結果が示す通り、DA法で求めた細孔容積と電気二重層キャパシタの容量との関係はGCMC法より求めた関係より強い相関が見られた。
測定範囲は細孔径分布の小さい順からGCMC法<tプロット法<BJH法である。細孔容積と容量との相関係数R2は0.66(GCMC法、図2参照)、0.47(tプロット法、図3参照)、0.83(DA法、図1参照)、相関なし(BJH法、図4参照)であった。
DA法で求めた細孔の容積は、0.8~2.0cm3/gであると電気二重層キャパシタの容量が大きくなり好ましい。電気二重層キャパシタの容量を大きくする意味において、より好ましいのは0.8~2.5cm3/gの範囲であり、さらに好ましいのは0.8cm3/g以上の範囲でできるだけ大きい値である。
上述の細孔容積範囲は、図1に示した近似直線(y=18.642x+3.245)から、50F/gになる多孔質炭素が存在すると仮定すると、x=2.5cm3/gを採用できる。
賦活剤または賦活温度や時間などの製造条件を調整することで小さな細孔の容積をより多く形成できると考えられる。
導電助剤も多孔質であると、容量が増えるため好ましい。例えばバインダーはポリテトラフルオロエチレン、PVDF、SBR、CMC、ポリアクリル酸など挙げられる。
多孔質炭素は原料から炭化や賦活などの工程を行って作られるが、多孔質炭素に炭素以外の原料成分が残る場合がある。このような残渣があってもDA法で求めた容積が0.8cm3/g以上であればよい。また多孔質炭素の表面状態はほとんどわかっていないが、疎水性であり、室温で酸素と反応することが知られている。各種形態をとる炭素の結晶子の端では炭素原子の規則的な配列が切れ、任意の元素と結合して表面官能基を形成することが知られている。例えばカルボキシル基、フェノール性ヒドロキシル基、カルボニル基が挙げられる。
これら含酸素系官能基以外にも硫黄、水素、塩素を含む官能基が存在していると考えられる。これらは多孔質炭素を製造する際の原料や炭化、賦活方法によって変化する。また多孔質炭素は多くの様々な物質を吸着する性質があるため、保管環境や保管期間によっても変化すると考えられる。
よって多孔質炭素の炭素成分は多い方がよい。好ましくは多孔質炭素をCHN分析(Elemental Analysis(Carbon,Hydrogen,Nitrogen)したとき、多孔質炭素の炭素成分が65質量%以上である。より好ましいのは80%以上、より好ましいのは90%以上である。
清浄にする方法としては熱処理、水蒸気処理、薬品処理などが挙げられ、これらを併用してもよい。これらは吸着物質によって最適な処理方法があると考えられる。
熱処理は空気中または不活性ガス中または真空中で加熱するだけの容易な方法である。熱だけで取れない場合、水または電解液または各種薬品を用いて処理してもよい。
加圧熱水処理は密閉容器中に多孔質炭素と水を入れ加熱する方法で、密閉容器中の圧力が上昇し、100℃以上の水で処理することができる。さらに加熱すると水は臨界点に達し、さらに加熱すると水は超臨界状態に達する。超臨界状態の水は通常の水と性質が異なり、油などの有機物を溶かすユニークな性質を持つため、無害な水だけで100℃以上の処理ができ、表面をより清浄にすることができると考えられる。
Shannon et al., Acta A 32 (1976) 751によると、Na+のイオン半径は0.1nm、Cl-のイオン半径は0.18nmであると考えられている。Na+とCl-は水にどの程度溶媒和しているか不明であるが、電圧が加えられると多孔質炭素の細孔表面に移動すると考えられる。
電解液がNaCl水溶液からなるとは、不純物としてカルシウムの硫酸塩、カリウムの硫酸塩、マグネシウムの硫酸塩、ナトリウムの硫酸塩、炭酸塩、臭化物塩、カルシウムの塩化物、カリウムの塩化物、マグネシウムの塩化物などを含んでもよい。NaClの純度は特に限定しないが97%以上が好ましく、より好ましいのは99%以上である。また電極への濡れ性をよくするため界面活性剤を添加してもよいし、電気性能向上のための添加剤を含ませてもよい。
濃度が5%未満ではNaCl水溶液の電気伝導度が悪く、濃度が26%以上になると水への溶解度を超えNaClが析出し、電気伝導度が飽和してしまう。より好ましい濃度は10~22%である。濃度26%のNaCl水溶液を多孔質炭素からなる電極に滴下すると、水溶液をはじいてしまいドーム状の水滴となり、すぐにNaClの析出が観察された。濃度0~22%でもはじくが、すぐにNaClの析出は観察されなかった。
これらの元素または材料を含んだ集電体は、電気伝導度がよく、かつNaCl水溶液に対する耐食性に優れる。これら元素または材料の単体または合金であってもよいし、2種以上を重ね合わせたクラッド板でもよいし、これらの元素または材料の粉末を樹脂に分散させたものでもよい。
このため、チタンまたは炭素を用いて+側と-側の集電体と端子を構成し、前述と同等の充電試験を行った場合、この構成の電気二重層キャパシタは、ガス発生や腐食がなく耐食性に優れた電気二重層キャパシタとなった。
図7に示す電気二重層キャパシタKは、正極側と負極側の電極1、2と、電極1を備えた集電体3と、電極2を備えた集電体4と、電極1、2間に介在されたセパレータ5と、これら全体を収容する外装体10、20を備えている。外装体10は、例えば、耐熱性樹脂層11とアルミニウム層(アルミニウム箔)12と熱融着樹脂層13を積層したアルミラミネートフィルムからなる。外装体20は、例えば、耐熱性樹脂層21とアルミニウム層(アルミニウム箔)22と熱融着樹脂層23を積層したアルミラミネートフィルムからなる。
電極1、2はセパレータ5の表裏に密着するように設けられ、電極1側の集電体3は外装体10の内面側に設置され、電極2側の集電体4は外装体20の内面側に設置されている。さらに、図7に示すように集電体3の一部に電気的に接続された端子6が外装体10と外装体20の溶着部分を挿通して外部に導出されている。なお、図7では略されているが、集電体4の一部にも他の端子が接続され、この端子も端子6と同様に外装体10と外装体20の溶着部分を挿通して外部に導出されている。
電極1と集電体3または電極2と集電体4は導電性接着剤で接着してもよい。導電性接着剤は例えばエポキシ、フェノール、ウレタン、アクリル、シリコーン、ポリイミドなどの樹脂と白金、金、銀、チタン、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、亜鉛、錫、炭素、導電性高分子の単体、またはこれらを含んだ化合物である導電フィラーを混合したものが挙げられる。
集電体3、4は電極の電気を集める働きをするものである。集電体はNaCl水溶液と触れるため前述の耐食性の良い材料を用いるのが好ましい。
端子6の一部は外装内部でNaCl水溶液と触れるため、耐食性がよい前述の材料が好ましい。外装外部の端子6はNaCl水溶液と触れないため、電気伝導度がよい材料を使用環境に応じて適宜選択するとよい。集電体3と端子6の接合部は同じ材料であると接合性がよい。特にチタンはNaCl水溶液との耐食性に優れるとともに、金属アレルギーを起こしにくく生体適合性にも優れる。これら集電体や端子も安全な材料で構成することが好ましい。
まず、外装体10、20の中に電極1、2とセパレータ5を入れた後、NaCl水溶液を注入する。するとNaCl水溶液は電極1、2に濡れないがセパレータ5に濡れる。そしてすぐに外装体10と外装体20で封止することでNaCl水溶液の水の揮発を最小限にすることができる。そして外装体を封止した状態で長時間放置するだけで電極をNaCl水溶液で濡らすことができる。このような製造工程を採用することで、容易に電気特性の優れた電気二重層キャパシタを製造することができる。
また、セパレータ5は薄く絶縁性のため、電気二重層キャパシタの組み立て時に風や静電気で位置がずれてしまうことがある。そのため、セパレータ5と外装体20の内面を接合部30で接合してもよい。接合部30による接合は、接着剤で接合してもよいし、セパレータ5と外装体20の一部を熱溶着してもよい。
アルミラミネートフィルムではなく、前述のNaCl水溶液と耐食性に優れた材料を金属箔12または22に用いると、熱融着樹脂層13または23に穴があっても腐食やガス発生がなくなるため好ましい。また一般的に電解液に非水溶媒を用いたものは空気中の水分が外装内部に侵入し性能劣化のおそれがあるため、樹脂フィルムの間にガスバリア性が優れたアルミニウム箔を挟んだアルミラミネートフィルムが多用されているが、本発明の電解液はNaCl水溶液であるため、空気中の水分が外装内部に侵入しても性能劣化しにくいと考えられる。よってアルミニウム箔12または22を用いず、外装は単層または多層の樹脂フィルムだけで構成すると安価になると考えられる。
電気二重層キャパシタは、リチウムイオン二次電池のような発火や破裂といった報告はほとんどないが、過度な電圧が印加されるとNaCl水溶液が電気分解し、圧力が上昇して膨らむおそれがある。
特に大型なものほど危険性が高くなるため、外装の一部に薄肉部を設けてもよい。
外装の材料は特に限定しないが例えばNaCl水溶液と触れる部分は耐食性がある前述の導電性材料に加えて、セラミック、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートなども挙げられる。NaCl水溶液と触れない部分は使用環境に応じて適宜選択するとよい。
そのため、炭化や賦活条件を原料に応じて変化させないと、一定の比表面積や細孔径分布をもった多孔質炭素を製造しにくくなる。したがって、多孔質炭素のDA法で求めた細孔容積が一定になるように炭化や賦活条件を変更すれば、電気二重層キャパシタを製造しなくても、容量を推定することができ、同じ容量をもった多数の電気二重層キャパシタを作成することができる。また、市販の多孔質炭素を選定する際、または検査する際に、DA法で求めた細孔容積を測定することが有効な方法である。
まず、各多孔質炭素A~Hを300℃で3時間前処理してから、吸着質にN2を選択し、吸着温度を77Kとして吸着等温線を測定し、等温線分類に基づいて分類した。
BET比表面積は得られた吸着等温線がI型の場合ISO9277に基づいてp/po=0~0.1の範囲、I型以外ではp/po=0.05~0.35の範囲から求めた。
各多孔質炭素A~Hのメソ孔容積(メソ孔:2~50nm)はBJH法を用い、得られた吸着等温線のp/poが0.990~0.385までの容積を累積して求めた。また、得られた吸着等温線からtプロット法を用いて細孔径2nm未満(ミクロ孔)の容積を求めた。
また、圧力が0.5~100kPaまでの吸着等温線を測定し、細孔の容積をDA法で求めた。{log(p0/p)}nとlogMのプロットが直線となるようにDA指数nを調整した。ここでp0は飽和蒸気圧、pは圧力、Mは試料1gあたりに吸着した質量である。結果を図1~図5と表3に示す。
これらは株式会社アナテック・ヤナコの炭素・水素・窒素同時定量装置CHNコーダー、MT-5で測定した。燃焼炉950℃、酸化炉850℃、還元炉550℃、ヘリウム(キャリヤーガス)200ml/min、酸素20ml/minで行った。CHN分析は試料を完全燃焼させて発生した気体から定量分析を行う。そのためOthersの大部分は酸素と考えられる。残渣はCHN測定後に残った固体の質量であり、つまり完全燃焼で気化しなかったものである。
電解液は蒸留水にNaCl(関東化学 純度99.5%以上)を溶かし、濃度18.9%のNaCl水溶液を作製した。次に、表1の多孔質炭素Aとケッチェンブラックとポリテトラフルオロエチレンをそれぞれ質量比6:3:1で混合し、厚み0.2mmのシートを作製した。このシートを15mm×18.5mmに切断し電極1とした。
チタンからなる集電体3とチタンからなる端子6を溶接して接合し、電極1を炭素フィラーの導電性接着剤で接着した。端子6の一部に樹脂7を溶着した。同様に電極2は電極1と同じとし、集電体4と端子はチタンから構成し、電極2を炭素フィラーの導電性接着剤で接着した。
次に、アルミラミネートフィルム10、20を四角に切断し、熱融着性脂層13と集電体3および熱融着性脂層23と集電体4を接着剤で固定した。次に、電極2の上にガラス繊維からなるセパレータ5を置き、接着剤からなる接合部30で固定した。次に、これらを100℃で3時間熱処理し、アルミラミネートフィルム10、20の外周3辺をヒートシールした。
多孔質炭素Aを多孔質炭素Bに変えた以外は実施例1と同じ構成の電気二重層キャパシタを作製した。
「実施例3」
多孔質炭素Aを多孔質炭素Cに変えた以外は実施例1と同じ構成の電気二重層キャパシタを作製した。
「実施例4」
多孔質炭素Aを多孔質炭素Dに変えた以外は実施例1と同じ構成の電気二重層キャパシタを作製した。
多孔質炭素Aを多孔質炭素Eに変えた以外は実施例1と同じ構成の電気二重層キャパシタを作製した。
「参考例6」
多孔質炭素Aを多孔質炭素Fに変えた以外は実施例1と同じ構成の電気二重層キャパシタを作製した。
多孔質炭素Aを多孔質炭素Gに変えた以外は実施例1と同じ構成の電気二重層キャパシタを作製した。
「比較例2」
多孔質炭素Aを多孔質炭素Hに変えた以外は実施例1と同じ構成の電気二重層キャパシタを作製した。
実施例1の電気二重層キャパシタがどの程度の充電電圧に耐えるかを調べるため、それぞれ0.8V、1.0V、1.2V、1.4V、1.6Vで3分充電し、10mAで0Vまで放電し放電時間を測定した。これを1サイクルとし、繰り返しサイクル試験を行った結果を図8に示す。
サイクルが進むにつれ放電時間が増えた理由は、多孔質炭素を空気中に放置していたため、何らかの物質が表面に吸着してしまい、実施例に記載の処理で取れず、サイクル試験の進行によって徐々に取れてきたためと考えられる。多孔質炭素の表面は可能な限り清浄な状態にしてから電気二重層キャパシタを作成する必要があると考えられる。
実施例1~4、参考例5、6と比較例1~2の電気二重層キャパシタを前述の通り500サイクル充放電した後、1.2V3分で充電し、放電電流を0.01、0.05、0.1、0.5、1、5 、10、50、100mAの各電流で0Vまで放電した。
この結果、多孔質炭素の種類で放電電流値による容量低下の影響が異なった。すべての電気二重層キャパシタは小電流で自己放電の影響により容量が小さくなり、大電流で内部抵抗の影響により容量が小さくなった。すべての電気二重層キャパシタは放電電流1mAで容量が最大だったため、容量は放電電流1mAで求めた。
ここでIは放電電流(A)、U1は充電電圧の80%(V)、U2は充電電圧の40%(V)、t1は放電開始からU1になるまでの時間(s)、t2は放電開始からU2になるまでの時間(s)である。
これらの結果を図1~図5と表3にそれぞれ示す。
BJH法で求めた多孔質炭素の容積と電気二重層キャパシタの容量について、先に図4を基に説明した如く、相関はなかった。
tプロット法はN2の77Kで測定し、GCMC法はCO2の298Kで測定した。
tプロット法による測定結果を表3と図3に示し、GCMC法による結果を表3と図2に示す。
図2、図3と表3に示す結果を比較するとGCMC法の相関係数がよかったが、十分ではなかった。
6・・・端子、7・・樹脂、10、20・・・アルミラミネートフィルム、
11、21・・・耐熱性樹脂層、12、22・・・アルミニウム層、
13、23・・・熱融着樹脂層、30・・・接合部。
Claims (7)
- 多孔質炭素を集電体上に備えた正極側または負極側の電極と、前記電極を分離するセパレータと、電解液を備え、
CHN分析値において、前記多孔質炭素の炭素成分が70.15~91.97質量%であり、
吸着質にCO 2 を選択し、吸着温度を298KとしたDubinin-Astakhov法で求めた前記多孔質炭素の細孔容積が1.14~1.83cm3/gであり、前記多孔質炭素のBET比表面積が1050~2227m 2 /gであり、前記電解液がNaCl水溶液からなる電気二重層キャパシタ。 - 前記NaCl水溶液の濃度が5%以上26%未満である請求項1に記載の電気二重層キャパシタ。
- 前記集電体は白金、金、銀、チタン、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、亜鉛、錫、炭素、導電性高分子のいずれかを含む請求項1または請求項2に記載の電気二重層キャパシタ。
- 前記セパレータはセルロース繊維またはガラス繊維からなる請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電気二重層キャパシタ。
- 多孔質炭素を集電体上に備えた正極側または負極側の電極と、前記電極を分離するセパレータと、NaCl水溶液からなる電解液とを備えた電気二重層キャパシタを製造する場合、
吸着質にCO 2 を選択し、吸着温度を298KとしたDubinin-Astakhov法で求めた細孔容積が1.14~1.83cm3/gであり、BET比表面積が1050~2227m 2 /gの多孔質炭素であって、CHN分析値において、炭素成分が70.15~91.97質量%である多孔質炭素を用いる電気二重層キャパシタの製造方法。 - 濃度が5%以上26%未満のNaCl水溶液を用いる請求項5に記載の電気二重層キャパシタの製造方法。
- 白金、金、銀、チタン、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、亜鉛、錫、炭素、導電性高分子のいずれかを含む集電体を用いる請求項5または請求項6に記載の電気二重層キャパシタの製造方法。
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