JP7300092B2 - ホウ素およびマンガンを含有するスラグの処理方法ならびに土木建築用資材の製造方法。 - Google Patents
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Description
スラグが緑色を呈していると、路盤材をはじめとする土木建築資材用材料として利用するにあたり障害となる。一般的に、土木建築資材用材料には、灰色、黒色、茶色などの彩度の低いものが使用されており、鮮やかな色の材料が使われることはほとんどない。特に、鮮やかな緑色の材料は、施工者や関係者に視覚的な違和感を与え、通常の土木建築材用材料でないとの印象を持たれたり、有害物が含まれるとの懸念をいだかせたりする可能性があり、好ましくない。
[1]ホウ素およびマンガンを含有するスラグの処理方法であって、溶融した状態にある処理対象スラグを、1000℃に到達するまでの冷却速度を10℃/min以上として冷却し、凝固させる第一工程と、前記凝固したスラグを、最大寸法150mm以下に破砕する第二工程と、前記破砕されたスラグを、1000~600℃の温度範囲で1時間以上保持する第三工程と、を有することを特徴とする、ホウ素およびマンガンを含有するスラグの処理方法。
[2]前記処理対象スラグが、マンガンを5質量%以上含有している、[1]に記載のホウ素およびマンガンを含有するスラグの処理方法。
[3]前記第一工程において、前記処理対象スラグを鉄板上に流し出して冷却する、[1]または[2]に記載のホウ素およびマンガンを含有するスラグの処理方法。
[4][1]乃至[3]のいずれか一項に記載のスラグの処理方法により得られたスラグを材料として使用することを特徴とする、土木建築用資材の製造方法。
本発明の一実施形態は、ホウ素およびマンガンを含有する処理対象スラグを、溶融した状態から1000℃まで、10℃/min以上の冷却速度で冷却し、凝固させる第一工程を有する。
なお、ここでの冷却は、溶融状態にあるスラグを1000℃より低い温度まで冷却するものであってもよく、また10℃/min以上の冷却速度を1000℃より低い温度まで保持するものであってもよい。
本発明の一実施形態は、第一工程で得られた凝固したスラグを、最大寸法150mm以下に破砕する第二工程を有する。
凝固したスラグを最大寸法150mm以下に破砕するとスラグの破砕面を十分に多く発生させることができ、このことにより、スラグの比表面積が増え、次の第三工程でのマンガンの酸化が進行しやすくなる。また、土木建築用材料には、通常、長さ40mm以下の破砕ないし篩い分けされたスラグが使用されるので、凝固したスラグを最大寸法150mm以下に破砕しておくと、最終的製品である土木建築用材料としての目的粒度に調整可能しやすくなる。前記最大寸法は、100mm以下とすることが好ましい。ここで、最大寸法とは、破砕されたスラグ片における最大長を意味する。
本発明の一実施形態は、前記第二工程で破砕されたスラグを1000~600℃の温度範囲で1時間以上保持する第三工程を有する。
破砕されたスラグを1000~600℃の温度範囲で1時間以上保持することで、含有するホウ素の安定性を保持しつつ、マンガンの酸化を十分に進行させてMnOの量を低減し、これに由来する緑色の呈色を抑制することができる。
破砕されたスラグは、第一工程での高速冷却によりホウ素の安定性が高まり、ホウ素が溶出しにくくなっているが、1000℃を超える高温で保持すると、ホウ素の安定性が損なわれ、ホウ素の溶出量の増大を招く。したがって、ホウ素の溶出量を増加させないために、保持温度は1000℃以下でなければならない。すでに記載したように、ホウ素の溶出の多寡は、スラグ中に常温で存在するガラス相中のホウ素の安定性に依存する。具体的には、急冷して凝固したスラグでは、ガラス中のホウ素の安定性が高いためこれが溶出しにくく、反対に徐冷して凝固したスラグではホウ素が溶出し易くなる。そして、凝固したスラグを1000℃を超える高温で保持することは、実質的にスラグを徐冷する(低冷却速度)ことになるので、ホウ素の溶出を招く。
他方、MnOの酸化反応を進行させるため保持温度は600℃以上で、保持時間は1時間以上でなければならない。酸化反応は高温ほど速く進行するが、前述のとおり保持温度の上限は1000℃である。そこで、1000℃以下でマンガンの酸化を十分に進行させるため、保持時間を1時間以上確保する。ただし、保持温度が600℃より低いとマンガンの酸化がほとんど進まなくなるので、保持温度の下限は600℃とする。
本発明の他の実施形態に係る土木建築資材の製造方法は、上述した3つの工程を有するスラグの処理方法により得られたスラグを材料として使用して、これを土木建築用資材とする土木建築用資材の製造方法である。
ホウ素およびマンガンを含有するスラグとして、表1に示す組成を有する4種類のスラグ(A~D)を準備した。
他方、比較例1、2では、種々の厚みで鉄板上に流し出して凝固させたスラグを、前記の実施例と同様にピットに落下させて最大寸法150mm以下に破砕したのち、保熱ピットに運搬せず、600℃以下まで1時間未満で到達するように処理した。また、比較例3では、前記の実施例と同様に鉄板上に流し出して凝固したスラグ(厚さ30mm)を、ピットに落下させずに取り出し、これを前記の実施例で用いた保熱ピット内に厚さ30mmの層として8層積み重ね、1000~600℃の範囲での保持時間として120分を確保した。なお、比較例3では、凝固したスラグを鉄板から取り出すときに、その一部が破損したが、これにより生成したスラグ片の最大寸法は、200mm以上であった。
また、該各スラグについて、路盤材粒度までさらに破砕した際の外観を確認した。粒度調整したスラグを1t以上の山にして、その山から3m程度離れた位置から目視で観察し、外観を評価した。その結果、実施例1~4に係る処理を行ったスラグでは、破砕直後から表面が褐色を呈してしており、路盤材として好ましい外観を有すると判定された(判定結果:○)。他方、比較例1および比較例3に係る処理を行ったスラグでは、表面が強い緑色を呈しており、その外観は路盤材として好ましくないものと判定された(判定結果:×)。また、比較例2に係る処理を行ったスラグでは、表面が「褐色がかった緑色」を呈しており、その外観は路盤材としてやや好ましくないものと判定された(判定結果:△)。
各実施例および比較例について、処理条件ならびに処理後のスラグのホウ素溶出量および外観(色)の判定結果を、まとめて表2に示す。
他方、実施例1~3はいずれも、1000~600℃での保持により、スラグ片表面からの距離が遠い部分にまで酸素が拡散してマンガンが十分に酸化することで、路盤材粒度である40mm以下に破砕した後のスラグ粒の破砕面の色が褐色を呈し、路盤材として好ましい外観となっている。
Claims (4)
- ホウ素およびマンガンを含有するスラグの処理方法であって、
溶融した状態にある処理対象スラグを、1000℃に到達するまでの冷却速度を10
℃/min以上として冷却し、凝固させる第一工程と、
前記凝固したスラグを、最大寸法150mm以下に破砕する第二工程と、
前記破砕されたスラグを、1000~600℃の温度範囲で1時間以上保持する第三
工程と、
を有することを特徴とする、ホウ素およびマンガンを含有するスラグの処理方法。 - 前記処理対象スラグが、マンガンを5質量%以上含有している、請求項1に記載のホウ素およびマンガンを含有するスラグの処理方法。
- 前記第一工程において、前記処理対象スラグを鉄板上に流し出して冷却する、請求項1または2に記載のホウ素およびマンガンを含有するスラグの処理方法。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスラグの処理方法により得られたスラグを材料として使用することを特徴とする、土木建築用資材の製造方法。
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