JP7300090B2 - 自動変速機 - Google Patents

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Description

本発明は、車両に搭載される自動変速機に係り、流体伝動装置を介することなく駆動源に連結される自動変速機に関する。
従来、車両に搭載される変速機として、エンジンなどの駆動源に連結されたトルクコンバータなどの流体伝動装置と、この流体伝動装置に連結されると共に複数の遊星歯車機構およびクラッチやブレーキなどの複数の摩擦締結要素を備えた変速機構と、を備え、クラッチやブレーキを締結/解放する油圧室の油圧制御によって複数の摩擦締結要素を選択的に締結し、これにより、複数の遊星歯車機構の動力伝達経路を切り換えて、減速比の異なる複数の変速段を形成するようにした自動変速機が知られている。
このような自動変速機において、摩擦締結要素のクラッチは、外側回転部材および内側回転部材を有し、外側回転部材の内周側および内側回転部材の外周側には、それぞれ、スプライン部が設けられ、各スプライン部には、内側にスプライン部を有する複数の摩擦板と、外側にスプライン部を有する複数の摩擦板が交互に配置されているクラッチが知られている。
また、自動変速機において、摩擦締結要素のブレーキは外側部材および内側部材と、クラッチと同様に外側部材および内側部材にスプライン係合される複数の摩擦板と、を有する湿式多板ブレーキが知られている。このブレーキでは、クラッチと異なり、その外側部材または内側部材の一方が変速機ケースに固定され、他方が回転部材となる。
このような自動変速機に対し、近年、自動変速機の多段化や軽量化の要求などに応じて流体伝動装置を廃止する傾向がある。この場合、1速の変速段および後進の変速段で締結される少なくとも1つの摩擦締結要素をスリップ制御することによりエンジンストールを回避しながら円滑な発進を実現することが考えられる。
ここで、摩擦締結要素をスリップ制御する場合、自動変速機ケース内で油圧室が回転するクラッチに比べて、変速機ケースに固定され、油圧室が回転しないブレーキの方が締結時の制御性が良いことが知られている。
ここで、例えば特許文献1には、ピストンを、付勢部材によって解放側から締結側に向けて付勢して、複数の摩擦板の各隙間がゼロクリアランス状態(複数の摩擦板は接触しているが締結力は働いていないような摩擦板間の隙間がゼロとなる状態、または、複数の摩擦板が接触直前の隙間がほぼゼロの近接位置となる状態)となるようなゼロクリアランス位置まで予め移動させ、その後、ピストンを、締結用油圧によって付勢して複数の摩擦板を締結するようにしたブレーキが開示されている。
この特許文献1の自動変速機では、発進用の摩擦締結要素として、低速ギヤ段および後退ギヤ段で共通して締結されるブレーキを採用している。たとえば、特許文献1では、1速段から5速段、および、後退段において、ブレーキB1が共通して締結されるよう設定されている。そして、このブレーキB1は、付勢部材により複数の摩擦板をゼロクリアランス位置に付勢するように構成されたゼロクリアランス機構を備えている。
特開2019-143706号公報
ここで、近年、流体伝動装置を備えていない自動変速機において、1速段および後進段での発進の応答性を高めるだけでなく、さらに、1速段以外の低速ギヤ段での発進や低速走行時の再加速時や車速調整などにおいても、高い応答性や高い精度のスリップ制御を行う要望がなされている。このような要望に応えるためには、1速を含む複数の前進低速ギヤ段と後退ギヤ段を形成するために選択的に締結される摩擦締結要素の制御の応答性を高める必要がある。制御の応答性を高めるためには、そのような選択的に締結される摩擦締結要素に、上述した特許文献1のようなゼロクリアランス機構を採用することが考えられる。
しかしながら、選択的に締結される摩擦締結要素として、複数の前進低速ギヤ段で締結される摩擦締結要素と、後進ギヤ段で締結される摩擦締結要素とが、共通の摩擦締結要素として設定されていないもの、たとえば、1速~5速段を形成するために選択的に締結されるブレーキと、後進段を形成するために選択的に締結されるブレーキとが異なる自動変速機では、それらの少なくとも2つのブレーキに、それぞれ、特許文献1のようなゼロクリアランス機構を採用する必要が生じてしまう。ここで、ゼロクリアランス機構は、自動変速機の基本構成に追加して設けられる機構であるので、一般的にスペースとコストがかかる。従って、ゼロクリアランス機構を少なくとも2つのブレーキに採用しようとすると、自動変速機内での占有スペースの制約を受け、また、コスト面でも不利となるという問題が生じる。
そこで、本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、自動変速機内での摩擦締結要素の占有スペースやコストを抑制しつつ、1速段および後進段での発進に加え、1速段以外の低速ギヤ段での発進、低速走行時の再加速時および車速調整などにおいて応答性を高めたスリップ制御を行うことができる自動変速機を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は、所定数の変速段を形成するための複数の遊星歯車機構と、これらの遊星歯車機構による動力伝達経路を切り換えて所定数の変速段を形成するために選択的に締結される複数の摩擦締結要素とを備え、所定数の変速段の各変速段では複数の摩擦締結要素のうち4つの摩擦締結要素が非締結状態となるよう構成され、流体伝動装置を介することなく駆動源に連結された自動変速機であって、複数の摩擦締結要素において、複数の前進用かつ低速用の変速段を形成するために締結される摩擦締結要素と、後進用の変速段を形成するために締結される摩擦締結要素とが共通の摩擦締結要素として設定されず、複数の遊星歯車機構のうちの所定の遊星歯車機構の所定の回転要素を自動変速機の変速機ケースに締結して所定数の変速段を形成する動力伝達経路上に、複数の摩擦締結要素とは独立した1つの付加的摩擦締結要素を設け、この付加的摩擦締結要素は、複数の摩擦板と、これらの摩擦板を押圧するピストンと、このピストンを複数の摩擦板がゼロクリアランス状態となるように締結方向に付勢する付勢部材と、を備え、付加的摩擦締結要素は、複数の前進用かつ低速用の変速段および後進用の変速段において、複数の摩擦板をゼロクリアランス状態からスリップ制御可能に構成されている、ことを特徴としている。
このように構成された本発明によれば、複数の摩擦締結要素において、複数の前進用かつ低速用の変速段を形成するために締結される摩擦締結要素と、後進用の変速段を形成するために締結される摩擦締結要素とが共通の摩擦締結要素として設定されず、所定の遊星歯車機構の所定の回転要素を自動変速機の変速機ケースに締結して所定数の変速段を形成する動力伝達経路上に、複数の摩擦締結要素とは独立した1つの付加的摩擦締結要素を設け、この付加的摩擦締結要素は、複数の前進用かつ低速用の変速段および後進用の変速段において、複数の摩擦板をゼロクリアランス状態からスリップ制御可能に構成されているので、自動変速機内での摩擦締結要素の占有スペースやコストを抑制しつつ、1速段および後進段での発進に加え、1速段以外の低速ギヤ段での発進、低速走行時の再加速時および車速調整などにおいて応答性を高めたスリップ制御を行うことができる。
すなわち、このように構成された本発明によれば、複数の前進用かつ低速用の変速段を形成するために締結される摩擦締結要素と、後進用の変速段を形成するために締結される摩擦締結要素とが共通の摩擦締結要素として設定されておらず、そのような複数の前進用かつ低速用の変速段および後進用の変速段におけるゼロクリアランス状態からのスリップ制御を、独立した付加的摩擦締結要素により、単独制御することができるので、1速段および後進段での発進に加え、1速段以外の低速ギヤ段での発進、低速走行時の再加速時および車速調整などを行う際に、応答性を高めたスリップ制御が可能となる。また、付加的摩擦締結要素は独立して1つ設けられるので、スリップ制御専用として自動変速機内の1カ所に集約することができ、これにより、自動変速機の構成を簡素化して、摩擦締結要素の占有スペースやコストを抑制することができる。また、付加的摩擦締結要素は、全ての変速段において各変速段形成時は常時締結であるので、特定の変速段で解放されることによるドラグトルクの増加の懸念も無いものである。
また、本発明において、好ましくは、付加的摩擦締結要素は、自動変速機の変速機ケースに固定されるブレーキであり、付加的摩擦締結要素のブレーキは、ピストンを複数の摩擦板の締結方向に付勢する作動油が供給される締結用油圧室と、ピストンを複数の摩擦板の解放方向に付勢する作動油が供給される解放用油圧室と、を備え、付加的摩擦締結要素によるスリップ制御は、締結用油圧室の作動油の油圧および解放用油圧室の作動油の油圧を制御することにより行われる。
このように構成された本発明によれば、より効果的かつより確実に、応答性を高めた摩擦締結要素のスリップ制御を行うことができる。
また、本発明において、好ましくは、駆動源はエンジンであり、自動変速機の入力軸にエンジンが接続されている。
また、本発明において、好ましくは、駆動源はエンジンおよびモータであり、自動変速機の入力軸にモータを介してエンジンが接続されている。
また、本発明において、好ましくは、モータとエンジンとの間にエンジンの自動変速機への動力伝達を切り離すクラッチが設けられている。
このように構成された本発明によれば、エンジンおよび/またはモータによるハイブリッド走行時、および、モータのみを駆動源とする走行時においても、ゼロクリアランス状態からの応答性の高い摩擦締結要素のスリップ制御を行うことができる。
また、本発明において、好ましくは、モータの下流側の動力伝達経路上に、自動変速機に作動油を供給するオイルポンプが設けられている。
このように構成された本発明によれば、モータのみを駆動源とする走行時においても、オイルポンプを作動させて、作動油を自動変速機に供給することができる。
本発明の自動変速機によれば、自動変速機内での摩擦締結要素の占有スペースやコストを抑制しつつ、1速段および後進段での発進に加え、1速段以外の低速ギヤ段での発進、低速走行時の再加速時および車速調整などにおける応答性を高めた摩擦締結要素のスリップ制御を行うことができる。
本発明の第1実施形態による自動変速機のスケルトン図である。 本発明の第1実施形態による自動変速機の摩擦締結要素の締結表である。 本発明の第1実施形態による自動変速機の付加的摩擦締結要素のブレーキを示す断面図である。 図3と同様に示す、ブレーキの複数の摩擦板のゼロクリアランス状態を説明するためのブレーキの断面図である。 本発明の第2実施形態による自動変速機のスケルトン図である。 本発明の第2実施形態による自動変速機の摩擦締結要素の締結表である。
まず、図1乃至図4により、本発明の第1実施形態による自動変速機を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による自動変速機のスケルトン図であり、図2は、本発明の第1実施形態による自動変速機の摩擦締結要素の締結表であり、図3は、本発明の第1実施形態による自動変速機の付加的摩擦締結要素のブレーキを示す断面図であり、図4は、図3と同様に示す、ブレーキの複数の摩擦板のゼロクリアランス状態を説明するためのブレーキの断面図である。この第1実施形態では、8速段の自動変速機の例を説明する。
まず、図1および図2により、自動変速機1の概略構成を説明する。
図1に示すように、この自動変速機1は、駆動源であるエンジン2にトルクコンバータなどの流体伝動装置を介することなく連結されている。自動変速機1は、後述する変速機ケース20(図3参照)内に、エンジン2に連結される入力軸4と、図示しない出力軸(被駆動軸)に連結される出力ギヤ6と、を有している。自動変速機1の入力軸4には、エンジン2のトルク変動を吸収するダンパ8が設けられている。
自動変速機1は、第1プラネタリギヤセットPG1および第2プラネタリギヤセットPG2を備えている(以下、プラネタリギヤセットをギヤセットという)。
自動変速機1は、さらに、4つのクラッチ46C、Low、R37、High、および、2つのブレーキ28B、L/Rを備えている。これらクラッチ46C、Low、R37、Highおよびブレーキ28B、L/Rは、ギヤセットPG1,PG2による動力伝達経路を切り替えるために、選択的に締結または解放される摩擦締結要素である。
さらに、本実施形態による自動変速機1は、後述する付加的摩擦締結要素であるブレーキB1を備えている。
第1ギヤセットPG1はダブルピニオン型であり、回転要素として、サンギヤS1と、リングギヤR1と、サンギヤS1と噛み合う第1ピニオンギヤS1aと、リングギヤR1と噛み合う第2ピニオンギヤP1bと、ピニオンギヤP1a、P1bを支持するキャリヤC1とを備えている。ピニオンギヤP1a、P1bは互いに噛み合っている。
第2ギヤセットPG2はダブルサンギヤ/ダブルピニオン型であり、回転要素として、軸方向に2分割された第1サンギヤS2aおよび第2サンギヤS2bと、リングギヤR2と、第1サンギヤS2aおよびリングギヤR2と噛み合う第1ピニオンギヤP2aと、第1ピニオンギヤP2aおよび第2サンギヤS2bと噛み合う第2ピニオンギヤP2bと、第1ピニオンギヤP2aを支持するキャリヤC2を備えている。
自動変速機1では、第1ギヤセットPG1のキャリヤC1が、入力軸4に常時連結されると共に、クラッチ46C、クラッチR37、ブレーキ28Bを介して第2ギヤセットPG2の第1サンギヤS2aに断接可能に連結される。
ここで、クラッチLowの外側摩擦板がスプライン係合された外側回転部材とクラッチR37の内側摩擦板がスプライン係合された内側回転部材とは互いに連結されており、それらは、自動変速機1の中心軸線周りで同期して回転するように構成されている。これらのクラッチLowの外側回転部材およびクラッチR37の内側回転部材には、第1ギヤセットPG1のリングギヤR1が連結されている。これにより、リングギヤR1は、クラッチLowを介して第2ギヤセットPG2の第2サンギヤS2bに断接可能に連結されると共に、クラッチLow、クラッチR37を介して、第2ギヤセットPG2の第1サンギヤS2aに断接可能に連結される。
第1ギヤセットPG1のサンギヤS1は、ブレーキB1(付加的摩擦締結要素)を介して、自動変速機1の変速機ケース20に断接可能に連結される。より詳細には、本実施形態では、第1ギヤセットPG1のサンギヤS1から、このサンギヤS1を自動変速機1の変速機ケース20に常時締結する締結部までの動力伝達経路(動力伝達部材)上に、ブレーキB1を設けている。本実施形態では、後述するように、ブレーキB1のハブ部材22(図3参照)が変速機ケース20に固定され、ブレーキB1のドラム部材24がサンギヤS1に連結されている。
本実施形態による自動変速機1は、後述するように、このブレーキB1の締結により所定の変速段を形成する際、ブレーキB1の複数の摩擦板26(図3参照)を、コイルスプリング(付勢部材)34によりゼロクリアランス位置に付勢しつつ、油圧制御によりスリップ制御を行うように構成されている。
次に、第2ギヤセットPG2の第1サンギヤS2aは、上述したように、第1ギヤセットPG1のキャリヤC1またはリングギヤR1に断接可能に連結されると共に、ブレーキ28Bを介して自動変速機1の変速機ケース20に断接可能に連結される。
第2ギヤセットPG2のキャリヤC2は、クラッチHighを介して入力軸4に断接可能に連結されると共に、ブレーキL/Rを介して自動変速機1の変速機ケース20に断接可能に連結される。
第2ギヤセットPG2のリングギヤR2は、出力ギヤ6に常時連結されている。
ギヤセットPG1、PG2、クラッチ46C、Low、R37、High、ブレーキ28B、L/R、B1、その他油圧機構などは、変速機ケース20(図3参照)内に収容されている。
以上の構成により、この第1実施形態による自動変速機1では、図2の締結表(○は締結を示す)に示すように、摩擦締結要素であるクラッチ46C、Low、R37、Highおよびブレーキ28B、L/Rを選択的に締結することにより、ギヤセットPG1、PG2による動力伝達経路を切り換えて、前進の1~8速段と、後進段(2速段)とが形成されるようになっている。
また、この第1実施形態による自動変速機1では、付加的摩擦締結要素であるブレーキB1(図2中の○は、スリップ制御を含む締結を示す)により、1速段および後進段での発進、1速段以外の低速ギヤ段での発進、低速走行時の再加速時および車速調整などにおいて、ゼロクリアランス状態からの高い応答性のスリップ制御が行われる。
なお、本実施形態では、図2に示す締結表に基づいて切り換えられる自動変速機1の動力伝達経路の違いによって、ブレーキB1により、1~5速段(1st~5th)、7速段(7th)および後進段(Rev1)において、ゼロクリアランス状態からのスリップ制御が可能となっている。なお、変形例として、第1実施形態の構成に対し、自動変速機1のギヤセット、摩擦締結要素および締結テーブル(締結データ)の構成を変更して、全ての変速段において、スリップ制御を可能にしても良い。
また、本実施形態は、図2に示すように、ブレーキB1は、全ての変速段において各変速段形成時に常時締結されているので、特定の変速段でブレーキが解放されることによるドラグトルクの増加の懸念が無いよう構成されている。
次に、図3により、本発明の実施形態による自動変速機1におけるブレーキB1の構成について説明する。なお、以下で説明する、図3に示すドラム部材(24)などの各回転部材は、自動変速機1の中心軸線(入力軸4)周りに回転する部材であり、自動変速機1の中心軸線周りに線対称に形成されている。また、図3に示すハブ部材(22)などの各固定部材も、自動変速機1の中心軸線(入力軸4)周りに線対称に形成されている。
図3に示すように、ブレーキB1は、変速機ケース20に固定されたハブ部材22と、第1ギヤセットPG1のサンギヤS1に結合され、自動変速機1の径方向に回転可能に構成されたドラム部材24と、ハブ部材22とドラム部材24との間に軸方向に並ぶよう配置された複数の摩擦板26と、複数の摩擦板26を締結するためのピストン28とを有している。
ブレーキB1には、ハブ部材22の径方向内側に、ピストン28を締結方向に付勢する締結用作動油が供給される締結用油圧室30と、 ピストン28を解放方向に付勢する解放用作動油が供給される解放用油圧室32とが形成されている。作動油は、エンジン2の駆動力により作動する所定のオイルポンプ(本実施形態では自動変速機1内に組み込まれている)から供給され、バルブボディで、作動油の油圧が制御されるようになっている。
ブレーキB1は、ハブ部材22の径方向内側に、ピストン28に締結方向に付勢するスプリング34を備え、このスプリング34は、締結用油圧室30内に設けられている。
ブレーキB1は、変速機ケース20の内側で隔壁を構成するとともにハブ部材22を支持するハブ支持部材36を備えている。
ハブ部材22の径方向内側には、油圧室(30、32)を形成するための第1油圧室形成部材38、第2油圧室形成部材40およびピストン油圧室形成部42が設けられている。ピストン油圧室形成部42は、ピストン28の一部であり、ピストン28の径方向内方側に形成されている。第1油圧室形成部材38は、ハブ部材22の径方向内側に固定され、第2油圧室形成部材40は、第1油圧室形成部材38に固定されている。
締結用油圧室30は、ピストン28の油圧室形成部42、第1油圧室形成部材41および第2油圧室形成部材40によって区画された空間部によって形成されている。
解放用油圧室32は、ピストン28の油圧室形成部42および第1油圧室形成部材38によって区画された空間部によって形成されている。
ピストン28の油圧室形成部42は、スプリング34の付勢力を受けるようになっている。
次に、変速機ケース20に固定されたハブ部材22およびハブ支持部材36の構成について説明する。
ハブ部材22は、変速機ケース20の径方向に延びる縦壁部22aと、縦壁部22aの径方向内側の端部から軸方向に延びる円筒部22bとを有する。
ハブ部材22は、縦壁部22aの外周面にスプラインが形成されたスプライン部22cを有し、スプライン部22cが変速機ケース20の内周面のスプライン部20aにスプライン係合されて変速機ケース20に結合されている。
ハブ部材22の円筒部22bは、外周面にスプラインが形成されたスプライン部22dを有し、このスプライン部22dに、摩擦板26を構成する複数の固定側摩擦板44がスプライン係合されている。
一方、これらの複数の固定側摩擦板44に対向して、後述する回転側摩擦板45が設けられている
ハブ支持部材36は、変速機ケース20の径方向に延びる縦壁部36aを有する。ハブ支持部材36の縦壁部36aには、摩擦板26に潤滑用作動油を供給する潤滑用供給油路(図示せず)が形成されている。
ハブ支持部材36の縦壁部36aの外周面は、変速機ケース20の内周面20bに係合されている。ハブ支持部材36は、スナップリング46により抜け止めが図られると共に回り止めピン48を用いて変速機ケース20に固定され、変速機ケース20に結合されている。
変速機ケース20の下方には、ブレーキB1の油圧室30、32や摩擦板26などに作動油を供給するバルブボディ(図示せず)が設けられている。ハブ支持部材36は、バルブボディに接続するためのバルブボディ接続部を有し、変速機ケース20に形成された潤滑用供給油路がバルブボディに接続される。
ハブ支持部材36の縦壁部36aには、締結用油圧室30に締結用作動油を供給する締結用供給油路(図示せず)が形成されると共に、解放用油圧室32に解放用作動油を供給する解放用供給油路 (図示せず)が形成されている。
ハブ支持部材36の縦壁部36aには、段差部36bが形成されている。この段差部36bは、ハブ支持部材36の縦壁部36aにハブ部材22の縦壁部22aが当接したときに、ハブ部材22の縦壁部22aの内周側が係合するように形成されている。
次に、第1および第2油圧室形成部材38、40および油圧室形成部42の構成について説明する。
第1油圧室形成部材38は、ハブ部材22の円筒部22bの径方向内側に設けられ、変速機ケース20の径方向に延びる縦壁部38aと、縦壁部38aの径方向外側端縁部から軸方向に延びる第1円筒部38bと、縦壁部38aの径方向内側端縁部から軸方向に延びる第2円筒部38cとを有している。
第1油圧室形成部材38の第1円筒部38bは、ハブ部材22の円筒部22bの内周面に当接するように延びるフランジ部38dを有し、この当接により、第1円筒部38bと円筒部22bとの間に潤滑用供給油路L1が形成されている。
後述するように、ブレーキB1の締結時および解放時においてスリップ制御を行う際には、この潤滑用供給油路L1を通じて複数の摩擦板44、45に潤滑用作動油が供給される。
第1油圧室形成部材38の第2円筒部38cの外周面38eは、解放用油圧室32を形成している。第2油圧室形成部材40の外周面は、シール部材50と共にピストン28に係合されている。第1油圧室形成部材38および第2油圧室形成部材40は、締結ボルト51によって、ハブ支持部材36に結合されている。
ピストン油圧室形成部42に対向する、第2油圧室形成部材40の対向面40aには、ピストン28の解放位置を調整するシム部材52が配置されている。
コイルスプリング34のコイル部の内方には、ピストン油圧室形成部42から延びるストッパ部54が設けられ、シム部材52は、このストッパ部54に当接するようになっている。シム部材52は、ピストン28のストッパ部54がシム部材52に当接するときに、ピストン28を所定の解放位置に規制するようになっている。
また、このようなシム部材52により、たとえば、スプリング、摩擦板、ピストン等のブレーキB1を構成する部材に付勢力や厚さのばらつきが生じた場合において、シム部材52の厚さを適切に選択することで、摩擦板44、45の後述するスリップ制御の応答性の低下を抑制することができる。
次に、ドラム部材24について説明する。
ドラム部材24は、軸方向に延びる円筒部24aと、この円筒部24aから変速機ケース20の径方向に延びる縦壁部24bとを有する。円筒部24aは、ハブ部材22の円筒部22bの外周側に対向するように配置されている。
ドラム部材24の縦壁部24bには、 ギヤセットPG1における回転部材としてのサンギヤS1(図1参照)が結合されている。ドラム部材24の円筒部24aは、その内周面にスプラインが形成されたスプライン部24cを有し、このスプライン部24cには、摩擦板26を構成する回転側摩擦板45がスプライン係合されている。複数の固定側摩擦板44と複数の回転側摩擦板45とは、軸方向に交互に配置されている。
次に、ピストン28およびピストン28を付勢するスプリング34の構成について説明する。
ピストン28は、ハブ部材22の円筒部22bとドラム部材24の円筒部24aとの間に配置されている。ピストン28は、第1油圧室形成部材38の第2円筒部38cの外周面38eに摺動自在に係合されている。ピストン28は、第2油圧室形成部材40によって抜け止めされる。
ピストン28は、上述したように、摩擦板26を押圧する押圧部56と、油圧室90を形成する油圧室形成部42と、押圧部56と油圧室形成部42とを連結する連結部58と、を有する。
ピストン28の押圧部56は摩擦板26の側方に配置され、ピストン28の油圧室形成部42は、ハブ部材22の径方向内側に配置され、ピストン28の連結部58は、押圧部56と油圧室形成部42とを連結するように径方向内側に延びている。
連結部58には、ピストン28が摩擦板26の方向に移動するとき、ハブ部材22の円筒部22bと干渉しないようにするための孔58aが形成されている。
ピストン28の油圧室形成部42の径方向内側端縁部は、第1油圧室形成部材38の第2円筒部38cの外周面38eに係合されている。この係合部には、油圧室形成部42と第1油圧室形成部材38との間をシールするシール部材、および、油圧室形成部42と、第1油圧室形成部材38との間をシールするシール部材が設けられている。
スプリング34は、径方向に所定間隔をおいて複数設けられ、それぞれ、環状に形成されたリテーナ60に、スプリング34の両端部が保持されている。各コイルスプリング34のほぼ中心軸線上には、ピストン28の各ストッパ部54が設けられている。
ピストン28は、シム部材52の厚さを調整することによって、解放位置におけるピストン28の押圧部56の押圧面56aと摩擦板26との隙間を所定値に保持することができるようになっている。
次に、図3および図4により、スプリング34によるピストン28の付勢力および本実施形態による摩擦板26のゼロクリアランス状態について説明する。
スプリング34は、リテーナ60およびシム部材52を介して、ピストン28の油圧室形成部42により支持されている。スプリング34の付勢力は、スプリング34が自由長さとなったときに、ピストン28により押圧された摩擦板26(44、45)が、図4に示すようなゼロクリアランス位置になるよう設定されている。
ここで、ゼロクリアランス位置とは、本実施形態では、複数の摩擦板44、45間のゼロクリアランス状態として、図4に示すように、複数の摩擦板26は接触しているが締結力は働いていないような複数の摩擦板44、45の間の隙間が無くなった状態となるような位置である。また、変形例として、ゼロクリアランス位置は、ピストン28が摩擦板26(44、45)に対して接触直前のほぼゼロ距離の近接位置となる状態となるようなゼロクリアランス位置であっても良い。
本実施形態では、このようなゼロクリアランス位置を実現するためのブレーキB1の構成/機構をゼロクリアランス機構という。なお、図4は、複数の摩擦板44、45のゼロクリアランス状態/ゼロクリアランス位置を説明するための図であり、複数の摩擦板44、45は、摩擦を発生させる摩擦材を含むものとして図示している。
このようにして、スプリング34は、ピストン28に、解放位置からゼロクリアランス位置まで締結方向に付勢力を作用させるようになっている。そして、ピストン28および摩擦板44、45がゼロクリアランス位置にあるときに締結用油圧室30に締結用油圧を供給すると、ピストン28が複数の摩擦板26を押圧して、複数の摩擦板26が、ハブ部材22の縦壁部22aとピストン28との間で相対回転不能になる締結状態となる。
本実施形態では、このような摩擦板26の締結の際、締結用油圧室30へ供給される作動油の油圧を制御可能となっている。すなわち、本実施形態では、複数の摩擦板26の締結力を、0~100%(完全な締結状態を100%とする)の間で制御することが可能なようにブレーキB1が構成されており、これにより、ブレーキB1のスリップ制御を自在に行うことができる。また、図4に示すようなゼロクリアランス位置からこのような油圧制御を行うので、ブレーキB1のスリップ制御の応答性を高めることができる。また、ブレーキB1のハブ部材22は、変速機ケース20に固定されているので、このようなスリップ制御の高い応答性を安定して得ることができる。
一方、ピストン28が締結位置にあるときに、締結用油圧室30から締結用油圧を排出して解放用油圧室32に解放用油圧を供給すると、ピストン28が解放方向に付勢されて移動され、ピストン28がゼロクリアランス位置に移動される。さらに、ピストン28は、スプリング34の付勢力に抗して解放方向に付勢されて、解放位置に移動される。
本実施形態では、このような摩擦板26の解放の際、解放用油圧室32へ供給される作動油の油圧を制御可能となっている。すなわち、本実施形態では、複数の摩擦板26の締結力を、解放時においても、完全な締結状態である100から0%の間で制御することが可能であり、これにより、ブレーキB1のスリップ制御を自在に行うことができる。
次に、ブレーキB1の作用をより詳細に説明する。
ブレーキB1は、上述したようにスリップ制御される。ブレーキB1の締結時には、まず、上述したゼロクリアランス位置において、締結用油圧室30に、所定の調整可能な油圧の締結用油圧が供給されて複数の摩擦板44、45が0~100%の間の締結力を自在に発生するようスリップ制御され、その後、締結用油圧室30に所定の高い締結用油圧が供給されて複数の摩擦板44、45が完全に締結される。
このような場合のスリップ制御は、主に、前進および後進での発進の際に実行される。
一方、ブレーキB1の解放時には、解放用油圧室32に、所定の調整可能な油圧の解放用油圧が供給されて複数の摩擦板44、45が100~0%の間の締結力を自在に発生するようスリップ制御され、その後、解放用油圧室32に所定の高い解放用油圧が供給されて複数の摩擦板44、45が締結解除される。また、このような解放時におけるスリップ制御の際にも、締結用油圧室30に、所定の調整可能な油圧の締結用油圧が供給されて複数の摩擦板26が0~100%の間の締結力を自在に発生するようスリップ制御される。
このような場合のスリップ制御は、主に、低速走行時の増速および減速や再加速の際に実行され、また、車速調整の際に実行される。
次に、図5乃至図6により、本発明の第2実施形態による自動変速機を説明する。
図5は、本発明の第2実施形態による自動変速機のスケルトン図であり、図6は、本発明の第2実施形態による自動変速機の摩擦締結要素の締結表である。
上述した第1実施形態に対し、この第2実施形態による自動変速機1は6速段の自動変速機であり、かつ、駆動源として、エンジンだけでなく駆動用モータが設けられる点が異なる。以下では、主に、第1実施形態と異なる点のみ説明する。
まず、図5および図6により、第2実施形態による自動変速機1の概略構成を説明する。
図5に示すように、本実施形態による自動変速機1は、駆動源であるエンジン2にトルクコンバータなどの流体伝動装置を介することなく連結されている。また、エンジンの出力軸には、エンジン2のトルク変動を吸収するダンパ8が設けられている。
また、本実施形態では、エンジン2と自動変速機1との間に、駆動用モータ10が設けられると共に、エンジン2の自動変速機1への動力伝達を遮断するためのクラッチ12が設けられている。
このような構成により、本実施形態では、クラッチ12が接続された状態では、エンジン2および/またはモータ10によるハイブリッド走行が可能であり、また、クラッチ12によりエンジン2の動力伝達が遮断されると、モータ10のみでの走行が可能となっている。
本実施形態による自動変速機1を備えた車両では、モータ10のみの走行が可能なので、モータ10の下流側の動力伝達経路に、自動変速機1に作動油を供給するためのオイルポンプ14が設けられている。より具体的には、図5に示すように、オイルポンプ14は、モータ10と自動変速機1との間の入力軸4の部分に設けられた一対のスプロケット16とこれらのスプロケット16に架け渡されたチェーン18により駆動される。このような構成により、モータ10のみによる走行時であっても、オイルポンプ14により、自動変速機1に作動油を供給することが可能となっている。
自動変速機1は、その変速機ケース内に、エンジン2に連結される入力軸4と、図示しない出力軸(被駆動軸)に連結される出力ギヤ6と、第1プラネタリギヤセットPG1および第2プラネタリギヤセットPG2と、を備えている。
本実施形態による自動変速機1は、さらに、ギヤセットPG1,PG2による動力伝達経路を切り替えるために選択的に締結または解放される摩擦締結要素である、3つのクラッチLow、R35、High、および、2つのブレーキ26B、L/Rを備えている。さらに、本実施形態による自動変速機1は、上述した第1実施形態と同様の構成を有する付加的摩擦締結要素であるブレーキB1を備えている。
第1ギヤセットPG1はシングルピニオン型であり、回転要素として、サンギヤS1と、リングギヤR1と、サンギヤS1およびリングギヤR1と噛み合うピニオンギヤP1と、ピニオンギヤP1を支持するキャリヤC1と、を備えている。第1ギヤセットPG1のリングギヤR1は、入力軸4に常時連結されている。
第2ギヤセットPG2はダブルサンギヤ/ダブルピニオン型であり、回転要素として、軸方向に2分割された第1サンギヤS2aおよび第2サンギヤS2bと、リングギヤR2と、第1サンギヤS2aおよびリングギヤR2と噛み合う第1ピニオンギヤP2aと、第1ピニオンギヤP2aおよび第2サンギヤS2bと噛み合う第2ピニオンギヤP2bと、第1ピニオンギヤP2aを支持するキャリヤC2と、を備えている。
ここで、クラッチLowの外側摩擦板がスプライン係合された外側回転部材とクラッチR35の外側摩擦板がスプライン係合された外側回転部材とは互いに連結されており、それらは、自動変速機1の中心軸線周りで同期して回転するように構成されている。これらのクラッチLowの外側回転部材およびクラッチR35の外側回転部材には、第1ギヤセットPG1のピニオンギヤP1を支持するキャリヤC1が連結されている。これにより、キャリヤC1は、クラッチR35、クラッチLowを介して、第2ギヤセットPG2の第2サンギヤS2bに断接可能に連結されると共に、クラッチR35を介して第2ギヤセットPG2の第1サンギヤS2aに断接可能に連結される。
第2ギヤセットPG2の第1サンギヤS2aは、第1ギヤセットPG1のキャリヤC1に断接可能に連結されると共に、ブレーキ28Bを介して、自動変速機1の変速機ケース20に断接可能に連結される。
第2ギヤセットPG2のキャリヤC2は、クラッチHighを介して、入力軸4に断接可能に連結されると共に、ブレーキL/Rを介して、自動変速機1の変速機ケース20に断接可能に連結される。
第2ギヤセットPG2のリングギヤR2は、出力ギヤ6に常時連結されている。
以上の構成により、この第2実施形態による自動変速機1では、図6の締結表(○は締結を示す)に示すように、摩擦締結要素であるクラッチLow、R35、Highおよびブレーキ26B、L/Rを選択的に締結することにより、ギヤセットPG1、PG2による動力伝達経路を切り換えて、前進の1~6速段と、後進段とが形成されるようになっている。
この第2実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、第1ギヤセットPG1のサンギヤS1が、ブレーキB1(付加的摩擦締結要素)を介して、自動変速機1の変速機ケース20に断接可能に連結されており、所定の変速段を形成する際、ブレーキB1の複数の摩擦板44、45を、コイルスプリング34によりゼロクリアランス位置に付勢しつつ、油圧制御によりスリップ制御が行われる。すなわち、ブレーキB1(図6中の○は、スリップ制御を含む締結を示す)により、1速段および後進段での発進、1速段以外の低速ギヤ段での発進、低速走行時の再加速時および車速調整などにおいて、ゼロクリアランス状態からの高い応答性のスリップ制御が行われる。
なお、第2実施形態では、図6に示す締結表に基づいて切り換えられる動力伝達経路の違いによって、1~5速段(1st~5th)および後進段(Rev)において、ゼロクリアランス状態からのスリップ制御が可能となっている。なお、変形例として、第2実施形態の構成に対し、自動変速機1のギヤセット、摩擦締結要素および締結テーブル(締結データ)の構成を変更して、全ての変速段において、スリップ制御を可能にしても良い。
上述した構成により、本実施形態におけるエンジンおよび/またはモータのハイブリッド走行時、および、モータのみを駆動源とする走行時においても、第1実施形態と同様に、ブレーキB1により、ゼロクリアランス状態からの高い応答性での摩擦締結要素のスリップ制御を行うことができる。ブレーキB1の構成および作用は、上述した第1実施形態(図3および図4)と同様であるので、説明を省略する。
なお、この第2実施形態においても、第1実施形態と同様の8速段の自動変速機を採用してもよい。また、上述した第1実施形態において、第2実施形態の6速段の自動変速機を採用してもよい。なお、本発明の上述した第1および第2に実施形態による、独立したブレーキB1およびそのゼロクリアランス機構は、8速段および6速段以外の複数の変速段にも適用可能である。
次に、本発明の実施形態による作用効果を説明する。
まず、本発明の第1および第2の実施形態による自動変速機1は、所定数の変速段(8速段/6速段)を形成するための複数の遊星歯車機構PG1、PG2と、これらの遊星歯車機構による動力伝達経路を切り換えて上記所定数の変速段を形成するために選択的に締結される複数の摩擦締結要素46C、Low、R37、High、28B、L/R(Low、R36、High、26B、L/R)と、を備え、流体伝動装置を介することなく駆動源に連結され、複数の前進用かつ低速用の変速段を形成するために締結される摩擦締結要素Lowと、後進用の変速段を形成するために締結される摩擦締結要素L/Rとが共通の摩擦締結要素として設定されず、複数の遊星歯車機構のうちの遊星歯車機構PG1の回転要素S1を自動変速機1の変速機ケース20に締結して所定数の変速段を形成する動力伝達経路(PG1のサンギヤS1と変速機ケース20との間の動力伝達部材)上に、選択的に締結される複数の摩擦締結要素46C、Low、R37、High、28B、L/R(Low、R36、High、26B、L/R)とは独立した(他の摩擦締結要素とは別の摩擦締結要素であり、かつ、他の摩擦締結要素と連結されていない)1つの付加的摩擦締結要素B1を設け、この付加的摩擦締結要素B1は、複数の摩擦板44、45と、これらの摩擦板を押圧するピストン28と、このピストンを複数の摩擦板44、45がゼロクリアランス状態となるように締結方向に付勢する付勢部材34と、を備え、複数の前進用かつ低速用の変速段および後進用の変速段において、複数の摩擦板44、45をゼロクリアランス状態(図4参照)からスリップ制御可能に構成されている。
このように構成された第1および第2の実施形態によれば、選択的に締結される複数の摩擦締結要素において、複数の前進用かつ低速用の変速段を形成するために締結される摩擦締結要素Lowと、後進用の変速段を形成するために締結される摩擦締結要素L/Rとが共通の摩擦締結要素として設定されず、所定の遊星歯車機構PG1の所定の回転要素S1を自動変速機1の変速機ケース20に締結して所定数の変速段を形成する動力伝達経路上に、選択的に締結される複数の摩擦締結要素46C、Low、R37、High、28B、L/R(Low、R36、High、26B、L/R)とは独立した1つのブレーキ(付加的摩擦締結要素)B1を設け、複数の前進用かつ低速用の変速段(主に1~5速段)および後進用の変速段において、複数の摩擦板をゼロクリアランス状態からスリップ制御可能に構成されている。
従って、このような独立したスリップ制御専用のブレーキB1を設けることにより、1速段および後進段での発進、1速段以外の低速ギヤ段(特に2~5速段)での発進、低速走行時の再加速時および車速調整などにおいて、ゼロクリアランス状態からのスリップ制御により、応答性を高めた単独制御が可能となる。
また、流体伝動装置(いわゆる、トルクコンバータ)を用いずに、応答性の高いスムースな発進などを実現するスリップ制御を可能にする独立した専用のブレーキB1およびそのゼロクリアランス機構を、自動変速機内の1カ所に集約することができると共に自動変速機を簡素化することができ、これにより、自動変速機内での占有スペースやコストを抑制することができる。
また、ブレーキB1は、全ての変速段において各変速段形成時は常時締結であるので、特定の変速段でブレーキB1を解放することによるドラグトルクの増加の懸念が無い。
また、本発明の第1および第2の実施形態では、ブレーキB1は、自動変速機1の変速機ケース20に固定され、ブレーキB1は、ピストン28を複数の摩擦板26(44、45)の締結方向に付勢する作動油が供給される締結用油圧室30と、ピストン28を複数の摩擦板26(44、45)の解放方向に付勢する作動油が供給される解放用油圧室32と、を備え、ブレーキB1によるスリップ制御は、締結用油圧室30の作動油の油圧および解放用油圧室32の作動油の油圧を制御することにより行われるので、より効果的かつより確実に、応答性を高めた摩擦締結要素のスリップ制御を行うことができる。
1 自動変速機
2 エンジン
4 自動変速機の入力軸
6 自動変速機の出力ギヤ
8 ダンパ
10 モータ
12 クラッチ
14 オイルポンプ
20 変速機ケース
22 ハブ部材
22c スプライン部
24 ドラム部材
24c スプライン部
26 複数の摩擦板
28 ピストン
30 締結用油圧室
32 解放用油圧室
34 スプリング(付勢部材)
44 固定側摩擦板
45 回転側摩擦板
56 ピストンの押圧部
56 ピストンの押圧部の押圧面
PG1、PG2 プラネタリギヤセット(遊星歯車機構)
S1、S2a、S2b サンギヤ
R1、R2 リングギヤ
P1a、P1b、P1 ピニオンギヤ
C1、C2 キャリヤ
46C、Low、R37、High、R35 クラッチ(摩擦締結要素)
28B、L/R、26B ブレーキ(摩擦締結要素)
B1 ブレーキ(付加的摩擦締結要素/ゼロクリアランス機構)

Claims (6)

  1. 所定数の変速段を形成するための複数の遊星歯車機構と、これらの遊星歯車機構による動力伝達経路を切り換えて上記所定数の変速段を形成するために選択的に締結される複数の摩擦締結要素とを備え、上記所定数の変速段の各変速段では上記複数の摩擦締結要素のうち4つの摩擦締結要素が非締結状態となるよう構成され、上記複数の流体伝動装置を介することなく駆動源に連結された自動変速機であって、
    上記複数の摩擦締結要素において、複数の前進用かつ低速用の変速段を形成するために締結される摩擦締結要素と、後進用の変速段を形成するために締結される摩擦締結要素とが共通の摩擦締結要素として設定されず、
    上記複数の遊星歯車機構のうちの所定の遊星歯車機構の所定の回転要素を上記自動変速機の変速機ケースに締結して上記所定数の変速段を形成する動力伝達経路上に、上記複数の摩擦締結要素とは独立した1つの付加的摩擦締結要素を設け、
    この付加的摩擦締結要素は、複数の摩擦板と、これらの摩擦板を押圧するピストンと、このピストンを上記複数の摩擦板がゼロクリアランス状態となるように締結方向に付勢する付勢部材と、を備え、
    上記付加的摩擦締結要素は、上記複数の前進用かつ低速用の変速段および上記後進用の変速段において、上記複数の摩擦板を上記ゼロクリアランス状態からスリップ制御可能に構成されている、ことを特徴とする自動変速機。
  2. 上記付加的摩擦締結要素は、上記自動変速機の変速機ケースに固定されるブレーキであり、
    上記付加的摩擦締結要素のブレーキは、上記ピストンを上記複数の摩擦板の締結方向に付勢する作動油が供給される締結用油圧室と、上記ピストンを上記複数の摩擦板の解放方向に付勢する作動油が供給される解放用油圧室と、を備え、
    上記付加的摩擦締結要素によるスリップ制御は、上記締結用油圧室の作動油の油圧および上記解放用油圧室の作動油の油圧を制御することにより行われる、請求項1に記載の自動変速機。
  3. 上記駆動源はエンジンであり、上記自動変速機の入力軸に上記エンジンが接続されている、請求項1または請求項2に記載の自動変速機。
  4. 上記駆動源はエンジンおよびモータであり、上記自動変速機の入力軸に上記モータを介して上記エンジンが接続されている、請求項1または請求項2に記載の自動変速機。
  5. 上記モータと上記エンジンとの間に上記エンジンの上記自動変速機への動力伝達を切り離すクラッチが設けられている、請求項4に記載の自動変速機。
  6. 上記モータの下流側の動力伝達経路上に、上記自動変速機に作動油を供給するオイルポンプが設けられている、請求項4または請求項5に記載の自動変速機。
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