JP7299586B2 - 生体試料中のエチルアミン定量法 - Google Patents

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Description

本発明は、液体クロマトグラフ-質量分析計を用いて、生体試料中のエチルアミンを検出し、定量する方法に関する。
茶は、古くから世界中で習慣的に飲用されており、現在では世界人口の3分の2以上によって消費されていると推計されている。これは、製法の違いにより多くの種類が存在するため、香りや味等を楽しむ嗜好品として幅広く飲用されているほかに、様々な健康増進作用を有することが理由として挙げられる。
茶、特に緑茶に含まれる主な成分として、カテキンを含むポリフェノール、アルカロイド、アミノ酸、食物繊維、脂質、臭気成分、ビタミン及びミネラル等が知られているが、その中でも、アミノ酸の一種であるテアニンは、健康増進作用を有する成分の1つとして注目されている。テアニンは、グルタミン酸の側鎖のカルボキシル基とエチルアミンがアミド結合した構造から成る。ヒトが茶を飲用すると、テアニンは速やかに体内に吸収され、大部分はグルタミン酸とエチルアミンに加水分解されるが、一部は赤血球に取り込まれる(非特許文献1)。
テアニンの効能に関する研究では、降圧作用(非特許文献2)、抗うつ作用(非特許文献3)及び睡眠の質の改善作用(非特許文献4)等が報告されているが、これらはテアニンを投与した際に現れる感情や生理現象の変化を観察している研究であり、生体試料中のテアニンは測定されていない。
テアニンが測定されている報告例がほとんど無い理由として、テアニンの血中半減期が非常に短いことが考えられる。茶の飲用後におけるテアニンの体内動態に関する報告によると、茶の摂取から12時間以内に、テアニンの大部分が血中から消失すると考えられるため(非特許文献1)、摂取後なるべく間を置かずに採血する必要がある。このことが、テアニンを測定する上での障壁になっていると推察される。
現在までに、テアニンの分析法はいくつか報告されているが、特許文献1及び特許文献2において報告されている方法は、いずれも茶成分を抽出した試料や標準溶液を混合して得られた試料を測定した方法である。これらの方法では、生体試料中に含まれる様々な物質が、テアニンの濃度測定に影響を及ぼす可能性があるため、生体試料中のテアニンの測定に適していないと考えられる。非特許文献1において報告されている方法は、ヒト血漿中のテアニンを測定しているが、茶の摂取から12時間以上経過後に採取した検体では、感度不足のためテアニンを検出できなくなると推察される。近年の分析手法の発達により、高感度検出が可能な質量分析計(MS)を使用した分析法の報告もあるが(特許文献3)、前述の方法と同様に、標準溶液を混合して得られた試料を測定したものにすぎず、また、多成分を同時に測定する方法であり、テアニンに対する感度は不十分と考えられる。
特開平01-240855号公報 特開2007-155465号公報 国際公開第2005/116629号
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これらの理由により、茶成分のテアニンを直接分析することは、茶の摂取状況の把握やテアニンに関するより詳細な研究を行うための手段として、必ずしも適切ではないと考えられる。また、簡便性や迅速性を前提とする臨床検査に用いるには障壁が高い。
そこで、本発明者らは、テアニンの代謝物であるエチルアミンに注目した。エチルアミンの血中半減期は、テアニンと比較して有意に長く、茶の摂取から24時間経過後でも血中で検出される(非特許文献1)。それゆえ、茶を摂取した直後に採取した試料だけでなく、茶を摂取した量や頻度が不明な試料においても、客観的に茶の摂取状況を把握するためには、テアニンよりも体内での滞留時間が長いエチルアミンを測定対象とする方がより望ましいと考えられる。
これまでの報告によると、エチルアミンは、チーズ(非特許文献5)やワイン(非特許文献6)等にも含まれているが、それらに含まれるエチルアミンの量は、茶と比較して少ないため、日常的に茶を摂取する文化がある日本人において、茶の摂取量と血中のエチルアミンの量に正の相関関係がある可能性は十分に考えられる。茶に限らず、チーズやワインの摂取量と体内のエチルアミンの量との関係を研究する場合、それらに含まれるエチルアミンの量が少ない分、さらに高感度な分析法が必要になると予測される。
それゆえ、生体試料中のエチルアミンを、簡便、迅速かつ高感度に測定する方法が必要とされるが、テアニン同様にそのような方法は存在しない。例えば、非特許文献1及び非特許文献7において報告されているO-フタルアルデヒド誘導体化によるヒト血漿中エチルアミン分析法の定量下限値は約5ng/mLであり、十分な感度を有しているとは言い難い。このような分析法では、エチルアミンは本当に存在しないのか、分析法の感度不足により検出されないのか、判然としない。
また、他の分析法において、最も高感度な分析法の定量下限値は1.72ng/mLであるが(非特許文献8)、大気中のエチルアミンを測定対象としている方法であり、生体試料中のエチルアミンの測定には未対応である。すなわち、現在報告されている測定系では、エチルアミンの生体試料中濃度や体内動態を正確に把握することができず、結果としてテアニンに関する研究も進展しない。
したがって、本発明の目的は、簡便、迅速かつ高感度に生体試料中のエチルアミン濃度を定量できる分析法を確立することによって、茶あるいはテアニンの摂取状況を把握するという要望を達成できる測定系を提供することである。
なお、本明細書において、測定とは、検出、分析、定量等と同義で用いるものとする。また、試料とは、検体と同義で用いるものとする。
本発明者らは、前記の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、生体試料に有機溶媒を添加して、撹拌、遠心分離後、上清の一部をダンシルクロリド及び炭酸水素ナトリウムと混合し、加熱、放冷した試料を液体クロマトグラフ-トリプル四重極型質量分析計(LC-MS/MS)で測定することで、生体試料中のエチルアミンを高感度に定量できることを見出した。本発明は、この知見に基づいて成し遂げられたものである。
すなわち、本発明は以下を提供する:
[1] 生体試料中のエチルアミンを定量する方法であって、
(i)前記生体試料中のエチルアミンを誘導体化試薬と反応させる工程、
(ii)液体クロマトグラフィーにより前記生体試料中の誘導体化されたエチルアミンを分離する工程、及び、
(iii)前記(ii)の工程で分離された生体試料に由来する誘導体化されたエチルアミンを質量分析計で分析する工程、
を含む方法。
[2] 前記工程(ii)において、ギ酸アンモニウム、アセトニトリル及びギ酸を含有する移動相を用いる、[1]に記載の方法。
[3] 前記工程(ii)が、移動相中でのアセトニトリルの濃度を増大させる工程を含む、[2]に記載の方法。
[4] 前記工程(ii)が、移動相中でのアセトニトリルの濃度を第1のアセトニトリル濃度から第2のアセトニトリル濃度まで増大させる工程を含み、
前記第1のアセトニトリル濃度が0%以上であり、
前記第2のアセトニトリル濃度が30%~70%である、
[2]又は[3]に記載の方法。
[5] 前記工程(ii)が、移動相中でのギ酸アンモニウムの濃度を減少させる工程を含む、[2]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 前記工程(ii)が、移動相中でのギ酸の濃度を0.03%~0.065%まで増大させる工程を含む、[2]~[4]のいずれかに記載の方法。
[7] 前記誘導体化試薬が、オルトフタルアルデヒド、フルオレサミン、ナフタレン-
2,3-ジカルボキシアルデヒド、ダンシルクロリド、3,5-ジニトロベンゾイルクロリド、ベンゼンスルホニルクロリド、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジルクロロホルメート、9-フルオレニルメチルクロロホルメート、9-フルオレニルメトキシカルボニルクロリド、3,4-ジヒドロ-6,7-ジメトキシ-4-メチル-3-オキソキノキサリン-2-カルボニルクロリド、6-アミノキノリル-N-ヒドロキシスクシニルイミド、4-フルオロ-7-ニトロベンゾフラザン、4-クロロ-7-ニトロベンゾフラザン、フルオレセインイソチオシアネート、7-フルオロ-4-(N,N-ジメチルアミ
ノスルホニル)ベンゾフラザン及び1,2-ナフトキノン-4-スルホナートからなる群
より選択されるいずれかの物質である、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8] 前記生体試料が、前記工程(i)の前に除タンパク法により前処理される、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9] 前記質量分析計が、四重極型、四重極タンデム型、イオントラップ型、イオントラップ四重極ハイブリッド型、磁場偏向型、飛行時間型及び四重極飛行時間ハイブリッド型からなる群より選択されるいずれかのタイプである、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10] 前記質量分析計により検出されたエチルアミン由来のピーク面積値を内部標準物質由来のピーク面積値で除したピーク面積比に基づいて、前記エチルアミンを定量する、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
本発明により、従来のエチルアミンの分析法と比較して、生体試料中のエチルアミン濃度を正確かつ高感度(例えば0.400ng/mL)の感度で定量することが可能となる。さらに、迅速な測定が可能(例えば測定時間は1検体あたり2.8分)であるため、短時間で多検体を測定することが可能となる。
また、後述するように、本発明を利用して茶の摂取状況が不明な検体を測定する際に、感度不足により測定値が定量下限値未満となる検体を大幅に減少させることができる。
これにより、例えば、後ろ向きコホート研究において、茶の摂取状況が不明なヒト血中のエチルアミン濃度と、検体採取から数年後における各種疾患の罹患率等を調査することで、未だ知られていない茶の効能を明らかにする等、臨床研究への応用が期待される。
図1は、ヒト血清を前処理後、ダンシル化されたエチルアミン(a)及び内部標準物質(以下、単に「IS」と記載することがある)のエチルアミン-d3(b)をLC-MS/MSで測定した際のクロマトグラムを示す図である。 図2は、ヒト血清にエチルアミン標準溶液(ヒト血清中0.5ng/mL相当)を添加した試料を前処理後、ダンシル化されたエチルアミンをLC-MS/MSで測定した際のクロマトグラムを示す図である。 図3は、ヒト血清1000検体のエチルアミン測定値を示したヒストグラム(~10ng/mLまで)を示す図である。
以下において、本発明の実施形態について詳細に説明するが、利用方法の態様については、これに限定されるものではない。
本発明は、生体試料中のエチルアミン定量法である。具体的には、ダンシルクロリド等の誘導体化試薬によりエチルアミン及びISを誘導体化する工程と、誘導体化後の溶液を用いて、LC-MS/MSによりエチルアミンを定量する工程を含む。本発明は、好ましくは、さらに、生体試料において夾雑物を除去する工程を含む。
[生体試料]
本明細書において、生体試料として、エチルアミンを含有し得る生体試料であれば限定されないが、例えば、ヒト、サル等の霊長目、イヌ等のネコ目、ブタ等の偶蹄目、ウサギ等の重歯目、マウス若しくはラット等の齧歯目から得られた試料を用いることができる。生体試料の種類は、限定されないが、例えば、全血、血漿、血清、唾液、尿、便、喀痰、精液、涙、鼻汁、膣、鼻、直腸、咽頭並びに尿道のスワブ、排出物、分泌物及びバイオプシー組織試料等が挙げられるが、具体的には、血清、血漿又は尿であることが好ましい。本発明において、生体試料は、採取されたものをそのまま使用することができるが、当業者であれば必要に応じて水や生理食塩水による希釈、ホモジナイズする等、必要に応じて処理を加えて使用することができ、その条件は適宜設定することができる。
以下、生体試料を有機溶媒で前処理して除タンパク(タンパク質除去)した後、エチルアミン及びISをダンシルクロリドにより誘導体化して、LC-MS/MSで測定する条件を例に記載をするが、本発明はこれに限定されるものではない。
[前処理]
生体試料に含まれる夾雑物は、妨害ピークやシグナル強度に対するイオンサプレッションやエンハンスメント(マトリックス効果)の原因となるため、LC-MS/MSで測定する前に、適宜前処理を実施して除去することが望ましい。前処理方法は、生体試料から夾雑物を除去でき、ダンシル化されたエチルアミン及びISがLC-MS/MSで測定できれば特に制限はない。例えば、生体試料から夾雑物を除去する方法として、希釈、濃縮、凍結、融解、加熱、乾燥、破砕、懸濁、滅菌、固形分の除去、除タンパク法、液液抽出法又は固相抽出法等が挙げられる。本発明において、前処理方法は、エチルアミン及びISの分析法として後述する液体クロマトグラフ(以下、単に「LC」と記載することがある)、MSとそれらを使用した分析の諸条件、及び夾雑物の種類等に応じて適宜選択できる。当該前処理方法は、常法に基づいて行うことができる。また、当該前処理は、単独の方法で実施してもよく、適宜複数の方法を組み合わせて実施してもよい。
具体的な前処理方法として、例えば、除タンパク法を用いることができる。除タンパク法には、限定されないが、例えば、過塩素酸、トリクロロ酢酸若しくはメタリン酸等の酸の添加、アセトン、アセトニトリル、メタノール若しくはエタノール等の有機溶媒の添加、加熱、冷却、限外ろ過又は超遠心分離等の方法が挙げられる。また、除タンパク法は、単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いても、エチルアミンの測定値に影響を与えないものであればよい。
本発明において、後述する誘導体化反応における影響を考慮し、除タンパク法の種類を決定することができる。例えば、採取された生体試料に、水、IS及びメタノールを添加し、撹拌、遠心分離後、上清の一部又は全部を回収する(工程1)。この工程で、血清とメタノールを混合することにより、血清中のタンパク質が変性して沈殿する。
前処理における回収率が低いと、定量感度が低下し、測定の精度も落ちる。また、夾雑物の除去が不十分な場合には、エチルアミンと誘導体化試薬の反応効率も低下するだけでなく、マトリックス効果の影響を受けやすくなる。そのため、回収率の向上と夾雑物の除去を両立できる前処理方法が好ましい。
[誘導体化反応]
本発明において、誘導体化反応を実施することで、生体試料中のエチルアミンを高感度かつ選択的に定量することが可能となる。ここでいう誘導体化とは、分析対象であるエチルアミンの分離能の改善や、イオン化効率を高め検出感度を向上させるために実施される
工程であって、当業者であればエチルアミンの構造と性質を考慮して、誘導体化試薬を適宜選択して使用することができる。
エチルアミンは構造中にプロトン化しやすいアミノ基を有するため、LC-MS/MS測定において、ポジティブモードにより高感度な検出が期待される。一般的に、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法を使用した測定において、感度を決定付ける要件として、クロマトグラフィーの移動相のpH、塩濃度及び有機溶媒濃度等の条件が挙げられるが、移動相のpHを酸性にすることによって、ESI法でプロトン化が促進され、高感度化が期待される。
しかし一方で、酸性の溶媒を使用した場合、エチルアミンは極性の高さゆえに、クロマトグラフィーによる分離時に汎用される逆相カラムへの保持力が弱まるというデメリットがある。その結果、試料中の夾雑物との分離が不十分となり、妨害ピークやマトリックス効果の影響を受ける可能性が高まる。
そこで、本発明者らは、エチルアミンを誘導体化することで、良好に定量できることを見出した。誘導体化試薬として、例えば、オルトフタルアルデヒド、フルオレサミン、ナフタレン-2,3-ジカルボキシアルデヒド、ダンシルクロリド、3,5-ジニトロベンゾイルクロリド、ベンゼンスルホニルクロリド、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジルクロロホルメート、9-フルオレニルメチルクロロホルメート、9-フルオレニルメトキシカルボニルクロリド、3,4-ジヒドロ-6,7-ジメトキシ-4-メチル-3-オキソキノキサリン-2-カルボニルクロリド、6-アミノキノリル-N-ヒドロキシスクシニルイミド、4-フルオロ-7-ニトロベンゾフラザン、4-クロロ-7-ニトロベンゾフラザン、フルオレセインイソチオシアネート、7-フルオロ-4-(N,N-ジ
メチルアミノスルホニル)ベンゾフラザン及び1,2-ナフトキノン-4-スルホナート
等が知られているが、上述した以外の誘導体化試薬であっても、当業者であれば、誘導体化試薬の特質とエチルアミンの極性、分子量又は(光、熱、酸素、pH等に対する)安定性等の化学的性質測定を考慮し、誘導体化試薬を選択することができる。
これらの誘導体化試薬は、プレカラム誘導体化試薬であってもポストカラム誘導体化試薬であっても使用することができるが、臨床検査等の多検体処理や自動化等の事情を考慮して、ポストカラム誘導体化試薬を選択してもよい。
以下では、誘導体化試薬としてダンシルクロリドを使用した場合を例に説明をするが、本発明はこれに限定されるものではない。
誘導体化反応工程として、例えば、工程1により得られた上清に、ダンシルクロリド溶液及びアルカリ性の試薬又は溶液を添加する(工程2)。添加するアルカリ性の試薬としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム若しくは水酸化ナトリウム等、又はそれらを溶解させた溶液を使用してもよい。具体的には、炭酸水素ナトリウムが好ましい。炭酸水素ナトリウムを添加することで、混合溶液はアルカリ性になり、エチルアミン及びISのダンシル化反応を促進させることができる。添加するアルカリ性の試薬又は溶液の濃度やpH等の条件は、当業者であれば適宜設定することができる。
工程2により得られた混合溶液を加熱し、放冷後、撹拌する(工程3)。加熱することで、エチルアミン及びISがダンシルクロリドと速やかに反応し、ダンシル化されたエチルアミン及びISが生成する。工程3により得られた反応溶液は、LC-MS/MSで分析することができる。
[分析]
LCとMSの構成は、ダンシル化されたエチルアミン及びISがLCにより夾雑物から
分離され、MSにより測定できれば特に制限はない。LCとMSは、互いに直列に接続されていてもよいし、それぞれ独立していてもよい。本発明の方法に用いられる装置としては、例えば、LCとMSを直列につないで構成されたLC-MS/MSを用いることができる。LC-MS/MSを用いることにより、LCにより分離されたダンシル化されたエチルアミン及びISを、続けてMSで分析することができる。
[分離工程]
本発明の方法においては、工程3により得られたダンシル化されたエチルアミンと、ダンシル化された生体試料由来のエチルアミン以外のアミノ官能基含有化合物を含む夾雑物を液体クロマトグラフィーにより分離する(工程4)。
LCは、送液ポンプ、脱気ユニット、オートサンプラ及びカラムオーブンを備えるものが好ましく、システムコントローラや検出器が接続されていてもよい。LCとして、例えば、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いることができる。HPLCによる分離条件は、本明細書の記載及び常法に基づいて、当業者であれば適宜条件を設定できる。なお、LCとして、HPLCより迅速に高感度で分離分析が可能な、超高速液体クロマトグラフ(UHPLC)を用いてもよい。UHPLCによる分離条件は、HPLCの条件設定を行う場合の検討と同様に行うことができ、当業者であれば適宜条件を設定できる。
クロマトグラフィーに用いる移動相は、ダンシル化されたエチルアミン及びISが夾雑物から分離され、MSにより測定できれば特に制限はない。例えば、pHを一定に保ちうること、有機溶媒と混合しても安定であること、試料成分と不必要な反応を起こさないこと、化学修飾基の切断や担体の溶解といったカラムの固定相や装置を劣化させないものであること、あるいは不揮発性の塩によりMSでの測定を阻害しないこと等の条件を満たすものが好ましく、これらの溶液を単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
移動相の組成、塩濃度及びpHは、ダンシル化されたエチルアミン及びISの性状や夾雑物の種類等の諸条件に応じて適宜設定できる。例えば、移動相の組成、塩濃度及びpHが、ダンシル化されたエチルアミンのイオン化効率を高めるように設定されるのが好ましい。また、イオン化された割合を示すイオンカウントを使用して、移動相の組成、塩濃度及びpHを設定することもできる。また、移動相の組成、塩濃度及びpHは、ダンシル化されたエチルアミン及びISが妨害ピークやマトリックス効果の影響を受けないように設定されるのが好ましい。
移動相として、例えば、A液(水系)とB液(有機溶媒系)の2種類を使用することが好ましい。A液には、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化アンモニウム、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリエチルアミン、テトラヒドロフラン、又は有機溶媒等が含まれてもよい。具体的には、ギ酸アンモニウム水溶液が好ましい。B液には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、又はアセトニトリル等を使用してもよく、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化アンモニウム、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリエチルアミン、テトラヒドロフラン、又は水等が含まれてもよい。具体的には、アセトニトリル/ギ酸が好ましい。
以下、A液(水系)としてギ酸アンモニウム水溶液を、B液(有機溶媒系)としてアセトニトリル/ギ酸を用いた態様を例として説明するが、本発明は本態様に限定されるものではない。
2種類以上の移動相を組み合わせて使用する場合、総流量に対する各移動相の含有率を適宜変化させてもよい。比率の変化速度は一定であってよく、そうでなくてもよい。また
、比率は増減を繰り返してもよい。アセトニトリル及びギ酸は、分離工程の全期間において移動相に含有されていてもよく、そうでなくてもよい。変化は、連続的な変化(グラジエント)であってもよく、断続的な変化(ステップワイズ)であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。グラジエント又はステップワイズの条件は、ダンシル化されたエチルアミン及びISの性状や夾雑物の種類等の諸条件に応じて適宜設定することができる。
移動相の流速は、例えば、0.1~1.5mL/minの範囲で設定することができる。具体的には、0.2~1.0mL/minが好ましく、0.7mL/minがより好ましい。
グラジエント条件は、例えば、以下に記載の条件のように設定することができる。すなわち、移動相中のアセトニトリル濃度(v/v%)が、第1の濃度(M1)から第2の濃度(M2)まで徐々に増大するよう、アセトニトリル濃度にグラジエントをかけることができる。M1及びM2は、ダンシル化されたエチルアミン及びISの性状や夾雑物の種類等の諸条件に応じて適宜設定できる。M1は、例えば、0%以上、10%以上又は20%以上であってよく、30%未満であってよい。M2は、例えば、30%以上又は40%以上であってよく、70%以下又は65%以下であってよい。具体的には、例えば、移動相中のアセトニトリル濃度が30~65%まで徐々に増大するよう、アセトニトリル濃度にグラジエントをかけてよい。アセトニトリル濃度の変化速度は、一定であってもよく、そうでなくてもよい。アセトニトリル濃度は、M1からM2に変化するまでに、増減を繰り返してもよい。
アセトニトリル濃度は、M2に到達した後、さらに変化してもよい。例えば、アセトニトリル濃度は、M2に到達した後、さらに増大してもよく、減少してもよく、増減を繰り返してもよい。例えば、アセトニトリル濃度は、M2に到達した後、再度M1に変化するまでに増減を繰り返してもよい。具体的には、例えば、M2に到達した後、95%まで増加させ、続けて30%まで減少してもよい。
また、例えば、ダンシル化されたジメチルアミン等、ダンシル化されたエチルアミン及びISの測定に影響を与える可能性がある物質との溶出時間の重複を避けるために、グラジエント条件を適宜設定することができる。
分離工程は、移動相中のギ酸濃度(v/v%)を増減させる工程を含んでいてよい。すなわち、例えば、移動相中のギ酸濃度が、第1の濃度(A1)から第2の濃度(A2)まで徐々に増大するよう、ギ酸濃度にグラジエントをかけることができる。A1及びA2は、ダンシル化されたエチルアミン及びISの性状や夾雑物の種類等の諸条件に応じて適宜設定できる。A1及びA2は、例えば、0~0.1%の範囲内で設定することができる。具体的には、例えば、移動相中のギ酸濃度が0.03~0.065%まで徐々に増大するよう、ギ酸濃度にグラジエントをかけてよい。ギ酸濃度の変化速度は、一定であってもよく、そうでなくてもよい。ギ酸濃度は、増減を繰り返してもよい。ギ酸濃度は、A2に到達した後、さらに変化してもよい。例えば、ギ酸濃度は、A2に到達した後、さらに減少してもよく、増大してもよく、増減を繰り返してもよい。
濃度のグラジエントは、組成の異なる2種又はそれ以上の溶液を、比率を変化させながら混合することができる。溶液の組み合わせは、所望のグラジエントが形成されるよう、適宜選択することができる。
グラジエントは、アセトニトリル及びギ酸の両濃度にまとめてかけてよい。例えば、ギ酸を含有しアセトニトリルを含有しない第1の溶液と、アセトニトリルを含有しギ酸を含
有しない第2の溶液とを、比率を変化させながら混合することで、アセトニトリル及びギ酸の両濃度にグラジエントをかけることができる。第1の溶液としては、例えば、ギ酸そのものやギ酸含有水溶液が挙げられる。第2の溶液としては、アセトニトリルそのものやアセトニトリル含有水溶液が挙げられる。
2種又はそれ以上の溶液を混合して移動相を調製する場合、当該2種又はそれ以上の溶液中のアセトニトリル及びギ酸の濃度は、混合後の移動相中のアセトニトリル及びギ酸の濃度が上記例示した移動相中のアセトニトリル及びギ酸の濃度となるよう、混合比率に応じて適宜設定することができる。例えば、ギ酸含有水溶液とアセトニトリルを混合して移動相として用いる場合、ギ酸含有水溶液中のギ酸濃度(v/v%)は、0.05%以上又は0.1%以上であってよく、0.4%以下又は0.2%以下であってよい。具体的には、例えば、0.1~0.2%であってよい。
分離工程は、移動相中でのギ酸アンモニウムの濃度(mM)を減少させる工程を含んでいてよい。すなわち、例えば、移動相中のギ酸アンモニウム濃度が、第1の濃度(B1)から第2の濃度(B2)まで徐々に減少するよう、ギ酸アンモニウム濃度にグラジエントをかけることができる。B1及びB2は、ダンシル化されたエチルアミン及びISの性状や夾雑物の種類等の諸条件に応じて適宜設定できる。B1及びB2は、例えば、1~10mMの範囲内で設定することができる。具体的には、例えば、移動相中のギ酸アンモニウム濃度が3.5~7.0mMまで徐々に減少するよう、ギ酸アンモニウム濃度にグラジエントをかけてよい。ギ酸アンモニウム濃度の変化速度は、一定であってもよく、そうでなくてもよい。ギ酸アンモニウム濃度は、増減を繰り返してもよい。ギ酸アンモニウム濃度は、B2に到達した後、さらに変化してもよい。例えば、ギ酸濃度は、B2に到達した後、さらに減少してもよく、増大してもよく、増減を繰り返してもよい。
クロマトグラフィーに使用する分離カラムは、ダンシル化されたエチルアミン及びISと夾雑物が分離され、MSにより測定できれば特に制限はない。例えば、シリカゲル担体にC30のアルキル鎖が化学結合した充填剤、オクタデシル基(C18)が化学結合した充填剤、オクチル基(C8)が化学結合した充填剤、ブチル基(C4)が化学結合した充填剤又はフェニル基(Ph)が化学結合した充填剤等のカラムを用いることができる。具体的には、C18が化学結合した充填剤を使用したカラムを用いてもよい。充填剤の粒子径は、5.0μm以下であってよく、2.0μm以下が好ましく、1.8μmがより好ましい。カラムの長さは、300mm以下であってよく、150mm以下が好ましく、50mmがより好ましい。カラムの内径は、10mm以下であってよく、4.6mm以下が好ましく、2.1mmがより好ましい。
分離カラムを夾雑物から保護するために、分離カラムのインレット側にガードカラムを接続してもよい。ガードカラムは分離カラムと同じ充填剤及び内径並びに分離カラムより短い長さが好ましいが、これに限定されるものではない。
カラムオーブンにより、分離カラム及びガードカラムに温度をかけてもよい。設定温度は、ダンシル化されたエチルアミン及びISと夾雑物の分離、移動相の種類、流速及び測定機器にかかる圧力等に応じて適宜設定することができる。例えば、20~60℃であってよく、具体的には、30℃であってよい。
[分析工程]
本発明の方法においては、工程4で分離された生体試料に由来する誘導体化されたエチルアミンを質量分析計で分析する(工程5)。MSによる測定条件は、本明細書の記載及び常法に基づいて、当業者であれば適宜条件を設定できる。
MSは、磁場偏向型、四重極型、イオントラップ型、飛行時間型、また、これらのハイブリッド型等の公知のMSであれば使用でき、具体的には、トリプル四重極型質量分析計がより好ましい。トリプル四重極型質量分析計は、イオン源、四重極(Q1)、コリジョンセル、四重極(Q3)及び検出器を備えたMSである。測定対象物質は、イオン源でイオン化され、プリカーサーイオンとなる。特定の質量電荷比(m/z)のイオンのみQ1を通過し、コリジョンセルに充填されたアルゴン等の不活性化ガスに衝突することでプロダクトイオンが生成する。生じたプロダクトイオンのうち、特定のm/zのイオンのみQ3を通過し、検出器によって検出される。イオン化法は、ESI法、大気圧化学イオン化(APCI)法、高速原子衝撃(FAB)法、大気圧光イオン化(APPI)法及び音速イオン化(SSI)法等が挙げられるが、特にESI法が好ましい。測定モードは、ポジティブモード及びネガティブモードがあるが、特にポジティブモードが好ましい。ESI法のポジティブモードでは、プロトン付加体、アンモニウム付加体、ナトリウム付加体又はカリウム付加体等が生成するが、特にプロトン付加体を検出するのが好ましい。スキャンタイプは、多重反応モニタリング(MRM)と選択イオンモニタリング(SIM)があるが、特にMRMが好ましい。
ダンシル化されたエチルアミン及びISを、トリプル四重極型質量分析計を用いてポジティブモードでイオン化し、ESI法及びMRMにより測定する場合、プリカーサーイオンは、プロトン付加体を選択することができる。具体的には、ダンシル化されたエチルアミン及びISのプリカーサーイオンは、それぞれ279.1±0.5及び282.1±0.5に設定することが好ましい。ダンシル化されたエチルアミンのプロダクトイオンは、115.1±0.5、128.1±0.5、156.1±0.5、157.1±0.5、又は264.1±0.5等が使用できる。ダンシル化されたISのプロダクトイオンは、115.1±0.5、156.1±0.5、157.1±0.5、252.1±0.5、又は264.1±0.5等が使用できる。具体的には、ダンシル化されたエチルアミン及びIS共に、156.1±0.5に設定することが好ましい。
その他の設定条件として、Dwell time、Q1 PreBias、コリジョンエナジー(CE)、Q3 PreBias、Q1分解能(Q1 Resolution)、Q3分解能(Q3 Resolution)、ネブライザーガスとその流量、ヒーティングガスとその流量、インターフェイス温度、脱溶媒ライン温度、ヒートブロック温度、ドライングガスとその流量及び衝突誘起解離(CID)ガスとそのガス圧等が挙げられるが、当業者であれば適宜設定することができる。測定機器の種類により呼称が異なるものも、本発明で使用可能な条件に含まれる。
本発明において、測定対象物質は、エチルアミンの水素、炭素及び窒素の一部又は全部にH、13C又は15Nの同位体元素が導入された類縁体も含むことができる。これらの化合物の定量には、外部標準法又は内部標準法が利用できる。測定対象物質が定量出来れば特に制限はないが、注入量、前処理操作又は測定における誤差を防ぐことができるため、内部標準法の利用が好ましい。例えば、質量分析により得られたクロマトグラムにおいて、エチルアミン由来のピーク面積値を内部標準物質由来のピーク面積値で除したピーク面積比に基づいて、前記エチルアミンを定量することができる。
ISは試料中に含まれていない成分で、妨害ピークやマトリックス効果の原因となる成分と完全に分離でき、測定対象物質に近い性質や構造を有する化合物が好ましい。例えば、エチルアミンの類縁体を使用することができ、具体的には、エチルアミン-d3がより好ましい。使用するISは当業者であれば適宜選択できる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定する
ものではない。
《実施例1:LC-MS/MS条件》
すべての定量実験は、イオン源にESIユニットを用いたLCMS-8050(島津製作所社製)で実施した。LCは、システムコントローラ(CBM-20A)、2台の送液ポンプ(共にLC-30AD)、脱気ユニット(DGU-20A5R)、オートサンプラ(SIL-30ACMP)及びカラムオーブン(CTO-20AC)で構成されたシステムを使用した。このシステムを、LabSolutions LCMS version
5.82 SP1を用いて制御した。
ダンシル化されたエチルアミン及びISと夾雑物の分離は、分離カラムとしてACQUITY UPLC HSS T3 Column(50mm×2.1mm i.d.,1.8μm)、ガードカラムとしてACQUITY UPLC HSS T3 VanGu
ard Pre-Column(5mm×2.1mm i.d.,1.8μm)のカラム(いずれもWaters社製)を使用し、カラム温度は30℃に設定した。
移動相は、A液に10mMギ酸アンモニウム水溶液、B液にアセトニトリル/ギ酸(1000/1,v/v)を使用した。移動相の流速は、0.7mL/minとし、グラジエント条件を以下:0~2.20分まで、30%B~65%B;2.20~2.21分まで、65%B~95%B;2.21~2.70分まで、95%B均一;2.70~2.71分まで、95%B~30%B;2.71~2.80分まで、30%B均一;のように設定した。
ニードル洗浄溶媒は、メタノール/水(1/1,v/v)を使用した。
オートサンプラは4℃に設定し、サンプル注入量は1μLとした。測定モードはポジティブモードに設定し、ダンシル化されたエチルアミン及びISはMRMで測定した。
MSの各種パラメーターを以下:ネブライザーガス流量(窒素ガス)、3L/min;ヒーティングガス流量(空気)、10L/min;ドライングガス流量(窒素ガス)、10L/min;インターフェイス温度、400℃;ヒートブロック温度、400℃;脱溶媒ライン温度、250℃;CIDガス(アルゴンガス)圧、270kPa;のように設定した。
内標準物質にはエチルアミン-d3を使用した。ダンシル化されたエチルアミン(DNS-EA)及びIS(DNS-IS)の各種パラメーターをそれぞれ表1に示すように設定した。
Figure 0007299586000001
《実施例2:標準溶液の調製》
エチルアミンとISのストック溶液(1mg/mL)を水にて調製した。エチルアミンのストック溶液を水で段階的に希釈し、濃度が2、5、10、25、50、125、200及び250ng/mLのエチルアミン標準溶液を調製した。ISのストック溶液も同様
に水で希釈し、20ng/mLのIS標準溶液を調製した。5、50及び200ng/mLのエチルアミン標準溶液は、測定の精度管理サンプルの調製にも使用した。これらの標準溶液は、使用するまで4℃で保存し、使用時には室温に戻した。
《実施例3:前処理操作及び測定》
ヒト血清50μL(検量線用試料及び精度管理サンプル調製時には水50μL)を1.5mLのポリプロピレン製チューブに分取し、水10μL(検量線用試料調製時には2、5、10、25、50、125、200及び250ng/mLのエチルアミン標準溶液10μL、精度管理サンプル調製時には5、50及び200ng/mLのエチルアミン標準溶液10μL)、IS標準溶液(20ng/mL)10μL及びメタノール200μLを添加した。ミキサーで5秒間撹拌後、4℃で20,000×gで3分間遠心分離し、上清150μLを別の1.5mLのポリプロピレン製チューブに移した。
このチューブに、0.1M炭酸水素ナトリウム水溶液75μLと2mg/mLダンシルクロリドのアセトン溶液150μLを添加し、65℃で30分間加熱することにより、エチルアミンとISをダンシル化した。この反応溶液を室温まで放冷した後、測定用バイアルに全量移した。
このバイアルから1μLをLC-MS/MSに注入し、ダンシル化されたエチルアミン及びISを測定した。ヒト血清を前処理後、ダンシル化したエチルアミン及びISをLC-MS/MSで測定した際のクロマトグラムを図1に、ヒト血清にエチルアミン標準溶液(ヒト血清中0.5ng/mL相当)を添加した試料を前処理後、ダンシル化されたエチルアミンをLC-MS/MSで測定した際のクロマトグラムを図2に示す。
ダンシル化されたエチルアミンのダンシル化されたISに対するピーク面積比をエチルアミンの添加濃度に対して一次回帰して得られた直線を検量線とし、ヒト血清中のエチルアミンを定量した。検量線の定量下限値は、0.400ng/mLであり、1/Xの重み付け(X:ヒト血清中エチルアミン濃度)を用いた。
本発明により構築したヒト血清中のエチルアミン定量法により、血清中のエチルアミンが正確に測定できる。
《実施例4:ヒト血清中のエチルアミン定量結果》
本発明により構築したヒト血清中のエチルアミン定量法を用いて、あらかじめ採取後、冷凍保管していたヒト血清1000検体を測定した際のエチルアミン測定値のヒストグラムを図3に示す。その結果、全体の91.0%である910検体でエチルアミン濃度を定量できた。
また、測定されたエチルアミン濃度の内訳は、0.400~1.00ng/mLの濃度範囲が190件(19.0%)、1.01~2.00ng/mLの濃度範囲が191件(19.1%)、2.01~3.00ng/mLの濃度範囲が121件(12.1%)、3.01~4.00ng/mLの濃度範囲が86件(8.6%)及び4.01~5.00ng/mLの濃度範囲が60件(6.0%)の分布であった。
ヒト血清中エチルアミンの濃度が5.00ng/mL以下の検体は738件であり、全体の73.8%に相当する。従来の生体試料中のエチルアミン分析法を使用した場合には、これらの検体は定量下限値未満となり、茶あるいはテアニンの摂取状況を把握できないことが明らかとなった。
本発明により、血清試料等に存在しているエチルアミンの濃度を、簡便、迅速かつ高感
度に定量することが可能となった。これにより、茶を摂取する習慣と各種疾患の罹患率を調査する後ろ向きコホート研究において、新しい知見が得られる可能性がある。本発明の用途はこれに限らず、茶の効能を調査する研究等での貢献が期待される。

Claims (9)

  1. 生体試料中のエチルアミンを定量する方法であって、
    (i)前記生体試料中のエチルアミンを誘導体化試薬としてダンシルクロリドと反応させる工程、
    (ii)液体クロマトグラフィーにより前記生体試料中の誘導体化されたエチルアミンを分離する工程、及び、
    (iii)前記(ii)の工程で分離された生体試料に由来する誘導体化されたエチルアミンを質量分析計で分析する工程、
    を含む方法。
  2. 前記工程(ii)において、ギ酸アンモニウム、アセトニトリル及びギ酸を含有する移動相を用いる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記工程(ii)が、移動相中でのアセトニトリルの濃度を増大させる工程を含む、請求項2に記載の方法。
  4. 前記工程(ii)が、移動相中でのアセトニトリルの濃度を第1のアセトニトリル濃度から第2のアセトニトリル濃度まで増大させる工程を含み、
    前記第1のアセトニトリル濃度が0%以上であり、
    前記第2のアセトニトリル濃度が30%~70%である、
    請求項2又は3に記載の方法。
  5. 前記工程(ii)が、移動相中でのギ酸アンモニウムの濃度を減少させる工程を含む、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記工程(ii)が、移動相中でのギ酸の濃度を0.03%~0.065%まで増大させる工程を含む、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記生体試料が、前記工程(i)の前に除タンパク法により前処理される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記質量分析計が、四重極型、四重極タンデム型、イオントラップ型、イオントラップ四重極ハイブリッド型、磁場偏向型、飛行時間型及び四重極飛行時間ハイブリッド型からなる群より選択されるいずれかのタイプである、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記質量分析計により検出されたエチルアミン由来のピーク面積値を内部標準物質由来のピーク面積値で除したピーク面積比に基づいて、前記エチルアミンを定量する、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
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