以下に、本開示によるヒータを実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示によるヒータが限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
また、以下に示す実施形態では、「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」といった表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密に「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、たとえば製造精度、設置精度などのずれを許容するものとする。
また、以下参照する各図面では、説明を分かりやすくするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする直交座標系を示す場合がある。
また、以下で参照する各図は、説明の便宜上の模式的なものである。したがって、細部は省略されることがあり、また、寸法比率は必ずしも現実のものとは一致していない。
(ヒータの構成について)
まず、実施形態に係るヒータの構成について図1および図2を参照して説明する。図1は、実施形態に係るヒータの構成を示す模式的な斜視図である。また、図2は、図1に示すII-II線における模式的な断面図である。
図1および図2に示すように、実施形態に係るヒータ1は、たとえば、円板状の基体3と、基体3の内部に位置するコイル5と、基体3の下面32から下方へ延びているパイプ7と、パイプ7内に挿通されている一対の配線部材9とを有する。
基体3は、加熱対象物の一例としてのウエハ(不図示)が載置される上面31(加熱面の一例に相当)を有する。コイル5は、通電によって発熱する発熱抵抗体である。パイプ7は、たとえば、基体3を下方から支持する。また、パイプ7は、内部に挿通される配線部材9を保護する。配線部材9は、基体3の内部に位置するコイル5に端子13を介して電気的に接続されており、端子13を介してコイル5に電力を供給する。
上記のように構成されたヒータ1は、配線部材9および端子13を介した通電によってコイル5が発熱することによって加熱面である上面31を加熱する。これにより、上面31に載置されたウエハを加熱することができる。
(基体について)
基体3の上面31は、概ね平面である。基体3の平面形状及び各種の寸法は、加熱対象物の形状および寸法等を考慮して適宜に設定されてよい。たとえば、実施形態では、基体3の平面形状が円形である場合を例に挙げて説明するが、基体3の平面形状は、四角形等の多角形状であってもよい。
基体3は、たとえばセラミックスからなり、絶縁性を有する。基体3を構成するセラミックスは、たとえば、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al2O3、アルミナ)、炭化珪素(SiC)、窒化珪素(Si3N4)等を主成分とする焼結体である。なお、主成分は、たとえば、その材料の50質量%以上または80質量%以上を占める材料である(以下、同様。)なお、基体3の主成分が窒化アルミニウムである場合、基体3は、イットリウム(Y)の化合物を含んでいてもよい。Y化合物としては、たとえば、YAG(Y3Al5O12)およびY2O3を挙げることができる。
(パイプについて)
パイプ7は、上下が開口した中空状の部材である。パイプ7の形状は適宜に設定されてよい。たとえば、実施形態では、パイプ7が、径が一定の円筒形状を有する場合を例に挙げて説明するが、パイプ7の径は必ずしも一定であることを要しない。また、パイプ7には、冷媒またはパージガスが流れる流路が形成されてもよい。
パイプ7は、セラミックス等の絶縁材料から構成されてもよいし、金属等の導電材料から構成されてもよい。パイプ7を構成するセラミックスは、たとえば、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al2O3、アルミナ)、炭化珪素(SiC)、窒化珪素(Si3N4)等を主成分とする焼結体である。
(配線部材について)
配線部材9は、パイプ7の内部に挿通されている。基体3の下面32には、端子13が露出しており、配線部材9は、その一端が端子13に接続される。
配線部材9は、たとえば、可撓性の電線であってもよいし、可撓性を有さないロッド状のものであってもよい。
(端子について)
端子13は、たとえば、コイル5の長さ方向両端に接続されている。端子13は、基体3の厚み方向(上下方向)に延在しており、基体3の下面32から露出している。これにおり、基体3の外部からコイル5へ電力を供給可能となっている。一対の端子13は、たとえば、基体3の中央部に位置している。
(コイルの構成について)
次に、コイル5の構成について図3を参照して説明する。図3は、基体3の平面透視図である。
図3に示すように、コイル5は、たとえば1本の細長い線材50を有しており、かかる線材50がコイル軸100の回りに螺旋状に巻き回されることによって構成される。コイル軸100は、仮想的な軸線であり、所定のパターンを描きながら基体3の上面31に沿って(たとえば、上面31と平行に)延在している。図示の例において、コイル軸100は、基体3を半円状に2分割した各領域において、円周方向に往復するように所謂ミアンダ状に延びている。換言すれば、コイル軸100は、円周の一部が途切れた欠円状に湾曲するとともに互いに並列(たとえば平行)に延びている複数の延在部110と、互いに隣り合う2つの延在部110の一方から他方への折り返し部分を構成している複数の屈曲部120とを有している。
線材50は、電流が流れることによって熱を生じる金属等の導体である。線材50を構成する導体は、適宜に選択されてよく、たとえば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、プラチナ(Pt)、インジウム(In)またはこれらを主成分とする合金である。また、線材50は、上記金属を含む導電ペーストを焼成して得られるものであってもよい。すなわち、線材50は、ガラス粉末および/またはセラミックス粉末等の添加剤を含むものであってもよい。
基体3を構成する材料は、コイル5の全体を覆っているとともにコイル5の内側にも充填されており、ひいては、線材50の外周面の全面に接している。
なお、本明細書では、コイル軸100および線材軸200の用語を用いる。これは、たとえば、コイル5に直交する断面という場合に、コイル5の経路すなわちコイル軸100に直交する断面、および、線材50の経路すなわち線材軸200に直交する断面のいずれであるかを明確にするためである。コイル軸100の位置は、コイル5の形状等から合理的に判断されてよく、線材軸200の位置は、線材50の形状等から合理的に判断されてよい。
平面透視において、コイル軸100の回りに螺旋状に巻き回されている線材50は、コイル軸100を基準として振動する波形状をなしている。実施形態において、コイル5は、基体3に対して1つのみ設けられており、コイル軸100は、その一端から他端まで自己に対して交差することなく延びている。
(コイルの配置について)
実施形態に係るコイル5は、コイル軸100のうち周方向において隣り合う2つの屈曲部120同士の間隔が、これら屈曲部120に共通に繋がる2つの延在部110同士の間隔よりも狭くなるように配置される。
具体的には、図3に示すように、コイル軸100のうち屈曲部120に位置する線材50と、当該屈曲部120に周方向において隣り合う他の屈曲部120に位置する線材50との接線同士の間隔をTと規定する。また、コイル軸100のうち延在部110に位置する線材50と、当該延在部110に径方向において隣り合う他の延在部110に位置する線材50との接線同士の間隔をKとする。この場合、実施形態に係るコイル5は、間隔Tが間隔Kよりも狭くなるように配置される。
間隔Tが広すぎると、屈曲部120間の領域が他の領域と比較して温度の低いクールスポットになるおそれがある。また、屈曲部120におけるコイル5のピッチ(側面透視におけるコイル5の波形状の繰り返し単位の水平長さ(波長))は、延在部110におけるコイル5のピッチP(図6参照)と比較して広くなることから、屈曲部120における発熱量は、延在部110における発熱量よりも相対的に少なくなる傾向にある。
そこで、実施形態に係るヒータ1では、間隔Tが間隔Kよりも狭くなるようにコイル5が配置されている。これにより、屈曲部120間の領域における温度を他の領域における温度に近づけることができる。したがって、実施形態に係るヒータ1によれば、均熱性を向上させることができる。
なお、「屈曲部120におけるコイル5のピッチが延在部110におけるコイル5のピッチと比較して広い」は、別の観点によれば、「屈曲部120における隣り合う波同士の開き角度θ1が、延在部110における隣り合う波同士の開き角度θ2よりも大きい」と言い換えることもできる。
(コイルの配置の変形例)
ここで、図3に示すコイル5の配置の変形例について説明する。図4は、第1変形例に係るコイル5の配置を示す平面透視図である。
図4に示すように、コイル軸100に含まれる複数の延在部110のうち基体3の径方向において隣り合う2つの延在部110を「延在部110A1」、「延在部110A2」と規定する。ここでは、基体3の外周部に最も近い延在部110を「延在部110A1」と規定し、その1つ内周側に位置する延在部110を「延在部110A2」と規定している。
第1変形例に係るヒータ1Aでは、これら延在部110A1,110A2間の折り返し部分を構成する2つの屈曲部120のうち、一方の屈曲部120が相対的に基体3の径方向外側に位置し、他方の屈曲部120が相対的に基体3の径方向内側に位置している。これは、言い換えれば、延在部110A1(110A2)の両端のうち、一端が相対的に基体3の径方向外側に位置し、他端が相対的に基体3の径方向内側に位置しているとも言える。ここでは、基体3の径方向において、延在部110A1の一端P1が、延在部110A2の他端P4よりも内側に位置する場合を例示しているが、延在部110A1の一端P1は、基体3の径方向において、延在部110A1の他端P2と延在部110A2の他端P4との間に位置していてもよい。この場合、延在部110A2の他端P4は、基体3の径方向において、延在部110A1の一端P1と延在部110A2の一端P3との間に位置することとなる。
このように、基体3の径方向に隣り合う延在部110A1,110A2同士を繋ぐ2つの屈曲部120のうち一方が他方に対して相対的に基体3の径方向外側または内側にずれて位置していてもよい。これにより、クールスポットが蛇行することで、均熱性をさらに向上させることができる。
図5は、第2変形例に係るコイル5の配置を示す側面透視図である。図5には、コイル軸100に含まれる複数の延在部110のうちの1つである延在部110Bと、かかる延在部110Bの両端に位置する2つの屈曲部120Bを示している。
図5に示すように、第2変形例に係るヒータ1Bにおいて、コイル軸100は、少なくとも、1つの延在部110Bの両端に位置する2つの屈曲部120Bにおいて、上下方向(基体3の厚み方向)にオーバーラップしていてもよい。すなわち、一方の屈曲部120Bに位置する線材50が他方の屈曲部120Bに位置する線材50の上方または下方に位置していてもよい。これにより、基体3を平面透視した場合の屈曲部120B同士の間隔を0未満にすることができることから、クールスポットが生じることをより確実に抑制することができる。したがって、均熱性をさらに向上させることができる。
(コイルの配置に関するその他の変形例)
上述した実施形態では、延在部110におけるコイル5のピッチが複数の延在部110間で同一である場合の例を示したが(図3参照)、これに限らず、たとえば、複数の延在部110のうち基体3の外周部に最も近い延在部110におけるコイル5のピッチを、その他の延在部110におけるコイル5のピッチよりも狭くしてもよい。
基体3の外周部に最も近い延在部110は、他の延在部110と比べて基体3の周囲の雰囲気に熱が奪われやすいため、基体3の外周部の温度が相対的に低くなるおそれがある。これに対し、基体3の外周部に最も近い延在部110におけるコイル5のピッチを相対的に狭くすることで、基体3の外周部に最も近い延在部110における発熱量を相対的に増やすことができる。これにより、周囲の雰囲気に奪われる分の発熱量が補われるため、均熱性のさらなる向上を図ることができる。
また、複数の延在部110のうち基体3の外周部に最も近い延在部110(外周側延在部の一例)における線材50の径を、その他の延在部110(内周側延在部の一例)における線材50の径よりも小さくしてもよい。線材50の径が小さくなるほど線材50の電気抵抗は高くなる。したがって、基体3の外周部に最も近い延在部110における線材50の径を相対的に小さくすることで、基体3の外周部に最も近い延在部110における発熱量を相対的に増やすことができる。これにより、周囲の雰囲気に奪われる分の発熱量が補われるため、均熱性のさらなる向上を図ることができる。
(コイルの形状について)
次に、コイル5の形状について図6および図7を参照して説明する。図6は、コイル5の平面透視図である。また、図7は、コイル5の側面透視図である。なお、平面透視図とは、基体3の上面31を上方から見た場合の透視図であり、側面透視図とは、基体3の側面を側方から見た場合における透視図である。
図6および図7に示すように、コイル5は、平面透視および側面透視において、コイル軸100を基準として波状に振動している。ここで、図6および図7には、コイル5における同一の部分が図示されている。この点についての理解を容易にするために、図6および図7には、コイル5における同一の部分をc1~c10で示している。図6に示す平面透視において、部分c1,c3,c5,c7,c9は、波の腹(部分c1,c5,c9は山、部分c3,c7は谷)に相当するが、図7に示す側面透視においては、コイル軸100と交わる波の中点(節)に相当する。また、図6に示す平面透視において、部分c2,c4,c6,c8,c10は、波の中点(節)に相当するが、図7に示す側面透視においては、波の腹(部分c4,c8は山、部分c2,c6,c10は谷)に相当する。
図6および図7に示すように、平面透視におけるコイル5の開き角度θ3は、側面透視におけるコイル5の開き角度θ4よりも小さい。開き角度とは、コイル5が形作る波形状における隣り合う2つの山の一方から他方までを1サイクルとした場合、1サイクルにおける一方の山と谷とを通る直線および谷と他方の山とを通る直線とのなす角度をいう。たとえば、図6には、部分c5(一方の山)と部分c7(谷)とを通る直線および部分c7(谷)と部分c9(他方の山)とを通る直線とのなす角度を開き角度θ3として示している。
このように、平面透視におけるコイル5の開き角度θ3を側面透視におけるコイル5の開き角度θ4よりも小さくすることで、均熱性を向上させることができる。
なお、平面透視におけるコイル5の開き角度θ3と側面透視におけるコイル5の開き角度θ4との大小関係は、開き角度θ3をなす直線を通るコイル5の部分(たとえば、図6における部分c5~c9)と、開き角度θ4をなす直線を通るコイル5の部分(たとえば、図7における部分c4~c8)とが重複している箇所において比較されればよい。
図6および図7に示すように、図6に示す平面透視において、山(たとえば、部分c1)と谷(たとえば、部分c3)とのコイル軸100に直交する方向に沿った距離をコイル5の幅Wと規定する。また、図7に示す側面透視において、山(たとえば、部分c4)と谷(たとえば、部分c2)とのコイル軸100に直交する方向に沿った距離をコイル5の高さHと規定する。
この場合、コイル5の幅Wは、コイル5の高さHよりも大きい。すなわち、コイル5は、基体3の上下方向と比較して、加熱面である上面31に沿った方向である基体3の水平方向に相対的に広がっている。したがって、実施形態に係るヒータ1によれば、均熱性を向上させることができる。
(線材の断面形状について)
次に、コイル5を構成する線材50の断面形状について図8を参照して説明する。図8は、図6に示すVIII-VIII線における模式的な断面図である。なお、図6に示す二点鎖線は、線材50の軸線(線材50の中心を通る線材50の長手方向に沿った仮想的な線、以下「線材軸200」と呼ぶ)を示している。以下の説明において、線材50の断面とは、線材50が延びる方向に直交する断面、言い換えれば、線材軸200に直交する断面のことをいう。また、図8に示す二点鎖線は、線材50の断面積と同一の断面積を有する真円TCを示している。
図8に示すように、線材50の断面形状は、真円TCよりも潰れた形状である。具体的には、線材50の断面形状は、加熱面である基体3の上面31と直交する方向すなわち上下方向に潰れた楕円形状を有しており、上下方向の幅D1(最上点から最下点までの距離)は真円TCの直径D0(以下、「線材50の円相当径D0」と呼ぶ場合がある)よりも短く、水平方向の幅D2(水平方向の一端から他端までの距離)は円相当径D0よりも長い。
このように、実施形態に係るヒータ1は、線材50の断面形状が真円TCよりも潰れた形状であるため、たとえば線材50の断面形状が真円である場合と比べて、線材50の線材軸200まわりの回動が抑制される。このため、実施形態に係るヒータ1によれば、基体3の内部において線材50が回動することによって基体3の内部にクラックが生じることを抑制することができる。すなわち、耐久性を向上させることができる。
図8に示す断面形状は、少なくとも、側面透視におけるコイル5の波形の山および谷に相当する部分(たとえば、図7に示す部分c2,c4,c6,c8,c10)において表れる。かかる断面形状は、必ずしもきれいな楕円形状であることを要さず、たとえば、楕円形状の一部に後述する平坦部51や凹部52が位置していてもよい。
図8では、線材50の断面形状が上下方向に潰れている場合の例を示したが、線材50の断面形状の潰れ方向は、必ずしも上下方向(基体3の厚み方向)であることを要しない。この点について図9を参照して説明する。図9は、図3に示すIX-IX線における模式的な断面図である。
図9には、平面透視においてコイル5が形作る1つの波(山から山まで)に含まれる任意の2点を通るように線材50を切った断面図を示している。図9に示すように、線材50の断面形状の潰れ方向は、1サイクル内の少なくとも2点について異なっていてもよい。たとえば、図9に示す例では、2つの断面がともに楕円形状を有しており、そのうちの一方の潰れ方向(短軸L1の延在方向)は上下方向に沿っているのに対し、他方の潰れ方向(短軸L2の延在方向)は上下方向に対して傾斜している。このように、断面形状の潰れ方向が不揃いであることにより、コイル5の位置が変動しにくくなることから、コイル5が変動することによって基体3の内部にクラックが生じることを抑制することができる。したがって、実施形態に係るヒータ1によれば、耐久性を向上させることができる。
コイル5は、少なくとも屈曲部120において、1つの波における線材50の断面形状の潰れ方向が不揃いとなる。なお、コイル5は、延在部110においても同様に、1つの波における線材50の断面形状の潰れ方向が不揃いであってもよい。
(線材の断面形状の他の例について)
線材50の断面形状は、一様であることを要しない。以下、線材50の断面形状の他の例について図10および図11を参照して説明する。図10および図11は、線材50の断面形状の他の例を示す模式的な断面図である。
たとえば、図10に示すように、線材50の断面形状は、曲線状の輪郭の一部に平坦部51を有する形状であってもよい。平坦部51は、線材50の線材軸200に沿って(すなわち、紙面奥行き方向に沿って)延在するものとする。このように、線材50の断面形状の一部に平坦部51が存在することで、たとえば線材50の断面形状が真円である場合と比べて、線材50の線材軸200まわりの回動が抑制される。これにより、基体3の内部において線材50が回動することによって基体3の内部にクラックが生じることが抑制される。したがって、実施形態に係るヒータ1によれば、耐久性を向上させることができる。
ここでは、平坦部51が線材50の下部に位置する場合の例を示しているが、平坦部51の位置は、図示の例に限定されない。また、ここでは、平坦部51が直線状である場合の例を示したが、平坦部51は厳密に直線であることを要さず、多少の凹凸が存在していてもよい。
また、図11に示すように、線材50の断面形状は、曲線状の輪郭の一部に凹部52を有する形状であってもよい。凹部52は線材50の内側に向かって凹んでいる。このように、線材50の断面形状の一部に凹部52が存在することにより、凹部52の内部に基体3の材料が入り込んで線材50を拘束することで、線材50の線材軸200まわりの回動を抑制することができる。したがって、実施形態に係るヒータ1によれば、耐久性を向上させることができる。
なお、凹部52の深さは、線材50の平均径(たとえば、円相当径D0)の1/20以上1/5未満である。
ここでは、凹部52が線材50の上部に位置する場合の例を示しているが、凹部52の位置は、図示の例に限定されない。
(コイル軸に沿ってコイルを投影した形状について)
図12は、コイル軸100に沿った方向にコイル5を投影した投影図である。なお、図12には、コイル軸100が直線であると仮定した場合におけるコイル5の投影図を示している。
図12に示すように、コイル軸100に沿った方向にコイル5を投影した場合の外輪郭55および内輪郭56は、いずれも、上下方向に潰れた楕円形状である。具体的には、外輪郭55の上下方向における幅D11は、外輪郭55の水平方向における幅D12よりも短い。同様に、内輪郭56の上下方向における幅D13は、内輪郭56の水平方向における幅D14よりも短い。
このように、コイル軸100に沿った方向にコイル5を投影した場合の外輪郭55および内輪郭56の形状は、真円よりも潰れた形状であってもよい。これにより、投影した形状が真円である場合と比較して、コイル5の位置が変動しにくくなることから、コイル5が変動することによって基体3の内部にクラックが生じることを抑制することができる。したがって、実施形態に係るヒータ1によれば、耐久性を向上させることができる。
また、上下方向における外輪郭55と内輪郭56との間隔D15は、水平方向における外輪郭55と内輪郭56との間隔D16よりも小さい。すなわち、コイル5は、上下方向における厚みが水平方向における厚みと比較して薄い。線材50の径が小さくなるほど線材50の電気抵抗は高くなる。したがって、コイル5の水平方向における厚みを相対的に薄くすることで、基体3の上面31に沿った方向における発熱量を相対的に増やすことができる。これにより、均熱性の向上を図ることができる。
なお、ここでは、外輪郭55および内輪郭56の両方が楕円形状である場合の例を示したが、外輪郭55および内輪郭56のうち少なくとも外輪郭55が楕円形状であればよい。すなわち、たとえば外輪郭55が楕円形状であるのに対し、内輪郭56は真円であってもよい。
(ヒータの製造方法)
次に、ヒータ1の製造方法について説明する。ヒータ1の製造方法においては、たとえば、基体3、パイプ7および配線部材9が個別に作成される。その後、これらの部材が互いに固定される。なお、基体3とパイプ7は一部または全部が一体的に作成されてもよい。パイプ7および配線部材9の製造方法は、たとえば、公知の種々の方法と同様とされてよい。
基体3は、たとえばホットプレスを用いた方法により製造される。この場合の基体3の製造方法について図13を参照して説明する。図13は、コイル5および基体3の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図13に示すように、まず、コイル5の作成が行われる(ステップS101)。コイル5の作成方法は、公知の種々の方法と同様とされてよい。たとえば、コイル5は、線材50を熱間加工することによって作成される。具体的には、直線状に延びる軸状部材に線材50を巻き回し、その後、軸状部材を引き抜くことによってコイル5が作成される。
つづいて、ホットプレスが行われる(ステップS102)。具体的には、まず、ステップS101において作成したコイル5とセラミックス原料粉末とを型の内部に配置し、型を介してコイル5およびセラミックス原料粉末を加圧する。加圧は、たとえば、上型と下型とが基体3の厚み方向に接近することによってなされる。その後、コイル5およびセラミックス原料粉末は加圧された状態で焼成される。これにより、コイル5を内蔵した基体3が作成される。
(間隔T<間隔Kの補足)
屈曲部120同士の間隔Tを延在部110同士の間隔Kよりも狭くすることの効果について、別の観点から説明する。図14は、コイルの配置の一例を示す側面透視図である。また、図15は、コイルの配置の一例を示す平面透視図である。
図14に示すように、間隔Tは、周方向に隣り合う2つの屈曲部120のうち、一方の屈曲部120と他方の屈曲部120との最短距離に相当する。具体的には、間隔Tは、一方の屈曲部120に位置する線材50の端部(他方の屈曲部120に最も近い部分)a1と、他方の屈曲部120に位置する線材50の端部(一方の屈曲部120に最も近い部分)a2との距離に相当する。
ここで、図14に示すように、端部a1の位置と端部a2の位置とは、基体3の深さ方向(Z軸方向)にずれている場合がある。
ヒータ1の加熱・冷却に伴い、コイル5には、コイル軸100に沿った方向(図14では左右方向)に熱応力が発生する。なお、図14には、端部a1,a2において発生する熱応力の方向を二点鎖線で示している。端部a1の位置と端部a2の位置とが基体3の深さ方向にずれている場合、両端部a1,a2における熱応力の発生位置も基体3の深さ方向にずれる。このような場合、基体3に引張応力が発生し、これにより基体3にクラックが生じるおそれがある。なお、図14には、引張応力の方向を半長短鎖線で示している。
かかる引張応力は、特に、屈曲部120間の領域において発生し易い。これに対し、実施形態に係るヒータ1では、「間隔T<間隔K」としており、間隔Tが比較的狭いため、屈曲部120間において発生する引張応力を小さくすることができる。したがって、実施形態に係るヒータ1によれば、基体3(特に屈曲部120間の領域)にクラックが発生することを抑制することができる。言い換えれば、耐久性を向上させることができる。
また、図15に示すように、端部a1と端部a2とは、基体3の径方向にずれている場合がある。この場合も同様に、屈曲部120間の領域において引張応力が発生して基体3にクラックが発生するおそれがある。これに対しても、実施形態に係るヒータ1によれば、間隔Tが比較的狭いため、屈曲部120間において発生する引張応力を小さくすることができる。したがって、基体3にクラックが発生することを抑制することができる。
また、基体3の深さ方向および基体3の径方向の両方において端部a1,a2の位置ずれが生じる場合もある。この場合も同様に、間隔Tが比較的狭くすることで、屈曲部120間において発生する引張応力を小さくすることができる。
また、基体3の径方向に隣り合う延在部110同士の間隔Kを狭くすると、屈曲部120間におけるクラックの発生が助長される結果となる。これは、延在部110間には、延在部110に直交する方向に沿った熱応力が発生するが、間隔Kが狭くなるほどこの熱応力が大きくなることで、屈曲部120間の領域に発生する引張応力が増大されるためである。これに対し、実施形態に係るヒータ1では、間隔Tを間隔Kよりも狭くすることにより、言い換えれば、間隔Kを相対的に大きくすることにより、延在部110間に発生する熱応力を小さくことができる。これにより、屈曲部120間におけるクラックの発生を抑制することができる。
この点についてさらに別の観点で説明する。単純に均熱性を向上させようとした場合、コイル5が存在しない領域の広さを均等にする観点から、間隔Tと間隔Kとを同一にし、さらに、クールスポットを可及的に低減する観点から、間隔Tと間隔Kとをできるだけ小さくすることが考えられる。しかしながら、間隔Tと間隔Kとを同じだけ小さくすると、上述した通り、屈曲部120間の領域に発生する引張応力が増大されてクラックが生じ易くなってしまう。そこで、「間隔T<間隔K」とすることにより、均熱性を向上させつつ、耐久性の向上も図ることができる。
また、基体3の深さ方向および基体3の径方向における端部a1,a2の位置ずれが生じない場合もある。このような場合であっても、実施形態に係るヒータ1によれば、屈曲部120間におけるクラックの発生を抑制することができる。すなわち、たとえば層状の電極と異なり、コイル5は、基体3の厚み方向にも分布する。このため、コイル5の熱膨張・熱収縮が基体3の厚み方向にも起こる。したがって、基体3の深さ方向および基体3の径方向における端部a1,a2の位置ずれが生じていない場合であっても、基体3における屈曲部120間の領域には引張応力が発生し易く、間隔Kを狭くすると、屈曲部120間の領域にクラックが生じるおそれがある。実施形態に係るヒータ1では、間隔Tを間隔Kよりも狭くすることにより、言い換えれば、間隔Kを相対的に大きくすることにより、延在部110間に発生する熱応力を小さくことができる。これにより、屈曲部120間におけるクラックの発生を抑制することができる。
上述してきたように、実施形態に係るヒータ(一例として、ヒータ1,1A,1B)は、加熱面(一例として、上面31)を有する絶縁性の基体(一例として、基体3)と、加熱面に沿って延在する仮想的なコイル軸(一例として、コイル軸100)の回りに線材(一例として、線材50)が螺旋状に巻き回されたコイル(一例として、コイル5)とを有する。また、線材は、線材の軸線(一例として、線材軸200)に直交する断面の形状が真円(一例として、真円TC)よりも潰れた形状である。
これにより、線材の断面形状が真円である場合と比べて線材の回動が抑制されることから基体の内部において線材が回動することによって基体の内部にクラックが生じることを抑制することができる。したがって、実施形態に係るヒータによれば、耐久性を向上させることができる。
線材の断面の形状は、加熱面に直交する方向に潰れていてもよい。線材の断面の形状が、加熱面に沿った方向に相対的に長くなることから、耐久性を向上させることができるとともに、均熱性を向上させることができる。
コイルは、加熱面に沿った方向から基体を透視した側面透視において、コイル軸を基準として振動する波形状をなしていてもよい。この場合、線材の断面の形状は、少なくとも波形状における山(一例として、部分c2,c4,c6,c8,c10)において、加熱面に直交する方向に潰れていてもよい。側面透視における波形状の山は、コイルの中で加熱面に最も近い部位である。したがって、かかる部位における線材の断面形状が加熱面に直交する方向に潰れていることにより、均熱性を効果的に向上させることができる。
コイルは、波形状における隣り合う2つの山の一方から他方までを波形状の1サイクルとした場合、1サイクル内の少なくとも2点において、断面の形状の潰れ方向が異なっていてもよい。断面形状の潰れ方向が不揃いであることにより、コイルの位置が変動しにくくなることから、コイルが変動することによって基体の内部にクラックが生じることを抑制することができる。したがって、実施形態に係るヒータによれば、耐久性を向上させることができる。
コイルは、加熱面に直交する方向から基体を透視した平面透視および加熱面に沿った方向から基体を透視した側面透視において、コイル軸を基準として振動する波形状をなしていてもよい。また、波形状における隣り合う2つの山の一方から他方までを波形状の1サイクルとし、1サイクルにおける一方の山と谷とを通る直線および谷と他方の山とを通る直線とのなす角度を開き角度と定義した場合に、平面透視における開き角度(一例として、開き角度θ3)は、側面透視における開き角度(一例として、開き角度θ4)より小さくてもよい。
コイルは、加熱面に直交する方向から基体を透視した平面透視および加熱面に沿った方向から基体を透視した側面透視において、コイル軸を基準として振動する波形状をなしていてもよい。また、平面透視における、波形状の山と谷とのコイル軸に直交する方向に沿った距離は、側面透視における、波形状の山と谷との前記コイル軸に直交する方向に沿った距離より大きくてもよい。これにより、均熱性を向上させることができる。
線材の断面は、楕円形状であってもよい。また、線材の断面は、曲線状の輪郭の一部に平坦部(一例として、平坦部51)を有していてもよい。また、線材の断面は、曲線状の輪郭の一部に、線材の内側に向かって凹んだ凹部(一例として、凹部52)を有していてもよい。これにより、線材の回転を好適に抑制することができることから、基体の内部において線材が回動することによって基体の内部にクラックが生じることを好適に抑制することができる。
コイルは、コイル軸に沿った方向にコイルを投影した場合に表れる外輪郭(一例として、外輪郭55)および内輪郭(一例として、内輪郭56)のうち、少なくとも外輪郭の形状が真円よりも潰れた形状であってもよい。これにより、コイルの位置が変動しにくくなることから、コイルが変動することによって基体の内部にクラックが生じることを抑制することができる。したがって、実施形態に係るヒータによれば、耐久性を向上させることができる。
コイルは、コイル軸に沿った方向にコイルを投影した場合において、加熱面に直交する方向における外輪郭と内輪郭との間隔が、加熱面に沿った方向における外輪郭と内輪郭との間隔より小さくてもよい。線材の径が小さくなるほど線材の電気抵抗は高くなる。したがって、コイルの水平方向における厚みを相対的に薄くすることで、加熱面に沿った方向における発熱量を相対的に増やすことができる。これにより、均熱性の向上を図ることができる。
また、上述してきたように、実施形態に係るヒータ(一例として、ヒータ1,1A,1B)は、加熱面(一例として、上面31)を有する絶縁性の基体(一例として、基体3)と、基体の内部に位置し、加熱面に沿って延在する仮想的なコイル軸(一例として、コイル軸100)の回りに線材(一例として、線材50)が螺旋状に巻き回されたコイル(一例として、コイル5)とを有する。また、コイル軸は、円周の一部が途切れた欠円状に湾曲するとともに互いに並列に延びる2つの延在部(一例として、延在部110)と、2つの延在部の一方から他方への折り返し部分を構成している2つの屈曲部(一例として、屈曲部120)とを有する。そして、加熱面に直交する方向から基体を透視した平面透視において、2つの屈曲部同士の間隔(一例として、間隔T)は、2つの延在部同士の間隔(一例として、間隔K)よりも狭い。具体的には、コイルは、一方の屈曲部に位置する線材と、他方の屈曲部に位置する線材との接線同士の間隔(一例として、間隔T)が、一方の延在部に位置する線材と他方の延在部に位置する線材との接線同士の間隔(一例として、間隔K)よりも狭い。
これにより、屈曲部間の領域における温度を他の領域における温度に近づけることができる。したがって、実施形態に係るヒータによれば、均熱性を向上させることができる。
コイル軸は、2つの屈曲部のうち一方の屈曲部が他方の屈曲部に対して基体の径方向にずれて位置していてもよい。これにより、クールスポットが蛇行することで、均熱性をさらに向上させることができる。
コイル軸は、2つの屈曲部が基体の厚み方向にオーバーラップしていてもよい。これにより、基体を平面透視した場合の屈曲部同士の間隔を0未満にすることができることから、クールスポットが生じることをより確実に抑制することができる。したがって、均熱性をさらに向上させることができる。
コイルは、2つの延在部のうち基体の外周部に近い外周側延在部におけるピッチが、外周側延在部よりも基体の外周部から遠い内周側延在部におけるピッチよりも狭くてもよい。これにより、基体3の周囲の雰囲気に奪われる分の発熱量が補われることから、均熱性のさらなる向上を図ることができる。
コイルは、2つの延在部のうち基体の外周部に近い外周側延在部(一例として、基体3の外周部に最も近い延在部110)における線材の径が、外周側延在部よりも基体の外周部から遠い内周側延在部(一例として、その他の延在部110)における線材の径より小さくてもよい。これにより、基体3の周囲の雰囲気に奪われる分の発熱量が補われることから、均熱性のさらなる向上を図ることができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。