以下に、実施の形態にかかる維持管理計画立案システムおよび維持管理計画立案方法を図面に基づいて詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる維持管理計画立案システムの構成の一例を示す図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる維持管理計画立案システム1は、構造物情報記憶部10と、社会的影響情報記憶部11と、入力部12と、表示部13と、表示処理部14と、第1の情報取得部15と、第2の情報取得部16と、計画立案部17と、出力部18と、計画情報記憶部19とを備える。
維持管理計画立案システム1は、複数の構造物に対する維持管理の計画である維持管理計画を立案する。構造物は、例えば、道路、橋、またはトンネルであるが、道路、橋、およびトンネル以外の構造物であってもよい。
構造物情報記憶部10は、複数の構造物の各々の情報を含む構造物情報を記憶する。構造物情報は、モデル情報、工事時費用情報、工事可否情報、および非工事時費用情報を構造物毎に含む。なお、以下において、一部の構造物の情報も構造物情報と記載する場合がある。
図2は、実施の形態1にかかる維持管理計画立案システムの構造物情報記憶部に記憶される構造物情報の一例を示す図である。図2に示すように、構造物情報は、構造物識別情報、劣化履歴情報、モデル情報、工事時費用情報、工事可否情報、および非工事時費用情報を含む。構造物識別情報は、構造物ID(IDentifier)を示す情報であり、構造物毎に固有に割り当てられた情報である。
劣化履歴情報は、構造物の過去の劣化状態の遷移を示す情報であり、過去から現在までの各年と構造物の健全度とを関連付けた情報である。構造物の健全度は、構造物の劣化状態を示す情報の一例であり、A,B,C,D,Eなどのアルファベットで表され、E,D,C,B,Aの順に健全度が高くなる。換言すれば、A,B,C,D,Eの順に劣化状態が悪くなる。図2に示す例では、2018年の健全度は、「B」であり、2019年の健全度は、「C」であり、2020年の健全度は、「D」であり、2021年の健全度は、「A」である。なお、2021年は、現在の年であるとする。構造物の劣化状態は、健全度に代えて劣化度などで示されてもよく、アルファベットに代えて数字などで表されてもよい。
モデル情報は、構造物の劣化状態の遷移を示す遷移モデルの情報であり、現在の年から数年後までの各年と構造物の健全度とを関連付けた情報である。図2に示す例では、現在の年である2021年の健全度は、「A」であり、1年後の2022年の健全度は、「B」であり、2年後の2023年の健全度は、「C」であり、3年後の2024年の健全度は、「D」である。また、4年後の2025年の健全度は、「E」であり、5年後の2026年の健全度は、「E」である。
なお、2025年の健全度と2026年の健全度とは同じ「E」であるが、2025年の健全度より2026年の健全度の方が低く、2025年の健全度は、「E1」で表すことができ、2026年の健全度は、「E1」よりも低い「E2」で表すことができる。
遷移モデルの情報は、予測される構造物の劣化状態の遷移を示す情報であり、例えば、複数の構造物の劣化履歴情報を統計的に処理することによって生成される。なお、遷移モデルの情報は、経験的または感覚的に予測される劣化状態の遷移を示す情報であってもよく、機械学習によって生成された劣化状態の遷移を示す情報であってもよい。
工事時費用情報は、構造物の劣化状態と構造物に対する工事の費用との関係を示す情報である。工事は、構造物を修繕するための作業であり、修繕工事とも呼ばれる。図2に示す例では、構造物に対する工事の費用は、2021年~2023年では、0円であり、2024年では、3百万円であり、2025年では、10百万円であり、2026年では、20百万円である。
工事可否情報は、構造物の劣化状態と工事の可否との関係を示す情報である。工事の可否は、工事可能フラグで示される。かかる工事可能フラグは、工事が可である場合に「1」であり、工事が不可である場合に「0」である。図2に示す例では、工事可能フラグは、2021年~2023年では、「0」であり、2024年~2026年では、「1」である。なお、工事の可否は、工事可能フラグ以外の情報で示されてもよい。
非工事時費用情報は、構造物の劣化状態と工事を行わない場合に必要になる費用との関係を示す情報であり、リスク対策費用情報とペナルティ費用情報とを含む。リスク対策費用情報は、構造物の劣化状態と工事を行わない場合のリスク対策費用との関係を示す情報である。ペナルティ費用情報は、構造物の劣化状態と工事を行わない場合のペナルティ費用との関係を示す情報である。
リスク対策費用は、工事以外の方法で構造物の劣化に対するリスクを回避するために必要になる費用である。リスク対策費用は、構造物がトンネルであり且つトンネルの内壁の健全度が低い場合、例えば、内壁剥落防止用のネットを内壁に取り付けるために必要になる費用である。また、リスク対策費用は、構造物が道路であり且つ道路に浮きなどがある場合、交通止めまたは片側通行を行うために必要になる費用である。
図2に示す例では、リスク対策費用は、2021年~2023年では、0円であり、2024年では、0.5百万円であり、2025年では、百万円である。2026年では、構造物で崩落、落石、または陥没などの事故が発生すると予測され、すでにリスクが生じていると予測されるため、リスク対策費用は設定されていない。
ペナルティ費用は、構造物で崩落、落石、または陥没などの事故が発生した場合に必要になる費用であり、例えば、構造物がトンネルであり事故が崩落事故の場合、崩落によって生じた物的被害または人的被害などを補償するために必要になる費用である。図2に示す例では、ペナルティ費用は、2021年~2025年では、0円であり、2026年では、500百万円である。
なお、図2に示す工事時費用情報、工事可否情報、リスク対策費用情報、およびペナルティ費用情報の各々に、構造物の劣化状態の情報が含まれるが、構造物の劣化状態の情報は、工事時費用情報、工事可否情報、リスク対策費用情報、およびペナルティ費用情報に対して共通の情報であってもよい。図3は、実施の形態1にかかる維持管理計画立案システムの構造物情報記憶部に記憶される構造物情報の他の例を示す図である。図3に示す構造物情報では、構造物の劣化状態と、構造物に対する工事の費用と、工事の可否と、リスク対策費用と、ペナルティ費用とが互いに関連付けられた情報が含まれる。
図1に戻って、維持管理計画立案システム1の説明を続ける。社会的影響情報記憶部11は、社会的影響情報を記憶する。社会的影響情報は、工事による社会的影響を抑制するための情報を含む。工事による社会的影響を抑制するための情報は、複数の構造物のうち同時に工事を行うことが禁止される2以上の構造物の組み合わせを示す同時工事禁止情報を含む。
例えば、2つの橋が陸地と島との間に架け渡されており、これらの2つの橋を工事すると、陸地と島との間の通行ができない場合に、これら2つの橋の組み合わせが、同時に工事を行うことが禁止される構造物の組み合わせとして同時工事禁止情報に設定される。また、並行に延在する2つの道路があり、これらの2つの道路を工事すると、交通渋滞が許容範囲外になる場合に、これら2つの道路の組み合わせが、同時に工事を行うことが禁止される構造物の組み合わせとして同時工事禁止情報に設定される。
図4は、実施の形態1にかかる社会的影響情報記憶部に記憶される同時工事禁止情報の一例を示す図である。図4に示す同時工事禁止情報では、同時に工事を行うことが禁止される構造物の組み合わせとして、2以上の構造物IDが関連付けられている。図4に示す同時工事禁止情報では、構造物ID「001」の構造物と構造物ID「003」の構造物との組み合わせと、構造物ID「002」の構造物と構造物ID「005」の構造物との組み合わせとが同時に工事を行うことが禁止される構造物の組み合わせとして各々設定されている。
図1に戻って、維持管理計画立案システム1の説明を続ける。入力部12は、例えば、キーボードおよびマウスを含み、維持管理計画立案システム1の利用者によって操作される。なお、入力部12は、タッチパネルまたはその他の入力手段であってもよい。
表示部13は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイである。表示処理部14は、表示部13に画像を表示する。例えば、表示処理部14は、計画対象の複数の構造物に対する維持管理計画の条件を示す情報である計画条件情報を設定するための計画条件設定画像を表示部13に表示したり、計画立案部17によって立案された維持管理計画を示す画像である維持管理計画画像を表示部13に表示したりする。
図5は、実施の形態1にかかる表示部に表示される計画条件設定画像の一例を示す図である。図5に示す計画条件設定画像50には、計画年数を入力するための入力枠51と、計画初年を入力するための入力枠52と、年間予算を入力するための入力枠53と、計画対象の構造物を選択するための選択枠54とが含まれる。維持管理計画立案システム1の利用者は、入力部12を操作することによって、入力枠51への計画年数の入力、入力枠52への計画年初の入力、入力枠53への年間予算の入力、および選択枠54での構造物の選択を行うことができる。
図5に示す例では、入力枠51には、計画年数として9年が設定され、入力枠52には、計画初年として2022年が設定され、入力枠53には、年間予算として2022年~2030年の各年において1千万円が設定されている。また、選択枠54では、計画対象の構造物としてAAA橋およびBBB橋などが選択されている。
図1に戻って、維持管理計画立案システム1の説明を続ける。第1の情報取得部15は、入力部12から利用者によって入力される計画条件情報を取得する。計画条件情報は、計画対象の複数の構造物に対する維持管理の計画初年、計画年数、および年間予算を示す情報であり、計画年数を示す情報、計画初年を示す情報、年間予算を示す情報、および計画対の複数の構造物の識別情報を含む。
第2の情報取得部16は、第1の情報取得部15で取得された計画対象の複数の構造物の識別情報に基づいて、計画対象の複数の構造物に関する構造物情報を構造物情報記憶部10から取得する。第2の情報取得部16で取得される構造物情報は、計画対象の複数の構造物の情報であり、計画対象の各構造物のモデル情報、工事時費用情報、工事可否情報、および非工事時費用情報を含む。
例えば、第2の情報取得部16は、図5に示すように計画対象の構造物としてAAA橋およびBBB橋が選択された場合、AAA橋の識別情報およびBBB橋の識別情報に基づいて、AAA橋およびBBB橋の各々のモデル情報、工事時費用情報、工事可否情報、および非工事時費用情報を含む構造物情報を取得する。
計画立案部17は、第1の情報取得部15で取得された計画条件情報と第2の情報取得部16で取得された構造物情報とに基づいて、計画対象の複数の構造物に対する維持管理計画を立案する。
計画立案部17は、例えば、計画初年から計画終年までの各年において年間の年間費用が年間予算内に収まり且つ予め設定された条件を満たすように、維持管理計画を立案することができる。予め設定された条件は、例えば、計画初年から計画終年までの総費用が最小になるという条件、または、計画初年から計画終年までの各年で必要な費用のバラツキが最小になるという条件である。
計画立案部17は、例えば、各構造物の劣化状態の変化と必要な費用とをノードとエッジとで示すネットワークモデルから維持管理計画を立案するための最適化問題を定式化し、分枝限定法などのアルゴリズムで最適解を求めることで、維持管理計画を立案することができる。
計画立案部17は、ネットワークモデル生成部21と、最適化演算部22とを備える。ネットワークモデル生成部21は、計画条件情報と構造物情報とに基づいて、各構造物の劣化状態の変化と必要な費用とをノードとエッジとで示すネットワークモデルを生成する。最適化演算部22は、ネットワークモデル生成部21によって生成されたネットワークモデルから維持管理計画を立案するための最適化問題を定式化し、分枝限定法などのアルゴリズムで最適解を求める。以下、ネットワークモデル生成部21および最適化演算部22の動作について具体的に説明する。
図6は、実施の形態1にかかる遷移モデルに対するネットワークモデルの一例を示す図である。計画立案部17のネットワークモデル生成部21は、図6に示すように、構造物情報に含まれるモデル情報に基づいて、計画対象の各構造物についてのネットワークをモデリングする。計画立案部17によって生成されるネットワークモデルは、年に対する劣化状態を各々示す複数のノードと、2つのノード間を各々結ぶ有向な複数のエッジとを含む。
図6に示すネットワークモデル21は、2021年~2026年の劣化状態を示す6つのノード31~36を含む。2021年の劣化状態を示すノード31は、健全度「A」で示され、2022年の劣化状態を示すノード32は、健全度「B」で示され、2023年の劣化状態を示すノード33は、健全度「C」で示される。また、ネットワークモデル21において、2024年の劣化状態を示すノード34は、健全度「D」で示され、2025年の劣化状態を示すノード35は、健全度「E」で示され、2026年の劣化状態を示すノード36は、健全度「E」で示される。
また、図6に示すネットワークモデル21は、エッジ41~45を含む。エッジ41は、ノード31からノード32へ向かうエッジであり、エッジ42は、ノード32からノード33へ向かうエッジであり、エッジ43は、ノード33からノード34へ向かうエッジである。また、エッジ44は、ノード34からノード35へ向かうエッジであり、エッジ45は、ノード35からノード36へ向かうエッジである。
次に、ネットワークモデル生成部21は、図6に示すネットワークモデル21と、工事可否情報とに基づいて、工事を実施した場合のネットワークモデル22を生成する。図7は、実施の形態1にかかる工事を実施した場合のネットワークモデルの一例を示す図である。図7に示すネットワークモデル22は、工事可否情報が図2に示す場合の例を示している。
図2に示す例では、工事可能フラグは、2021年~2023年では、「0」であり、2024年~2026年では、「1」である。そのため、2024年~2026年の各々の年では、工事が可能であり、ネットワークモデル22では、図7に示すように、図6に示すネットワークモデル21から、3つのノードと3つのエッジが追加される。
追加される3つのノードは、健全度「A」で示される2025年~2027年のノード37,38,39である。また、追加される3つのエッジは、ノード34からノード37へ向かうエッジ46、ノード35からノード38へ向かうエッジ47、およびノード36からノード39へ向かうエッジ48である。
次に、ネットワークモデル生成部21は、図7に示すネットワークモデル22と、工事時費用情報とに基づいて、工事費用を追加した場合のネットワークモデル23を生成する。図8は、実施の形態1にかかる工事費用を追加した場合のネットワークモデルの一例を示す図である。図8に示すネットワークモデル23は、工事時費用情報が図2に示す場合の例を示している。
図2に示す例では、工事費用は、2021年~2023年では、0円であり、2024年では、3百万円であり、2025年では、10百万円であり、2026年では、20百万円である。そのため、図8に示すネットワークモデル23では、図7に示すネットワークモデル22に対し、エッジ41,42,43に「0」が割り当てられ、エッジ46に「3」が割り当てられ、エッジ47に「10」が割り当てられ、エッジ48に「20」が割り当てられている。なお、エッジに割り当てられる工事費用の単位は、百万円である。
次に、ネットワークモデル生成部21は、図8に示すネットワークモデル23と、非工事時費用情報に含まれるリスク対策費用情報とに基づいて、リスク対策費用を追加した場合のネットワークモデル24を生成する。図9は、実施の形態1にかかるリスク対策費用を追加した場合のネットワークモデルの一例を示す図である。図9に示すネットワークモデル24は、リスク対策費用情報が図2に示す場合の例を示している。
図2に示す例では、リスク対策費用は、2021年~2023年では、0円であり、2024年では、0.5百万円であり、2025年では、百万円である。そのため、図9に示すネットワークモデル24では、図8に示すネットワークモデル23に対し、エッジ41,42,43には「0」が割り当てられたままであり、エッジ44に「0.5」が割り当てられ、エッジ45に「1.0」が割り当てられている。なお、エッジに割り当てられるリスク対策費用の単位は、百万円である。
次に、ネットワークモデル生成部21は、図9に示すネットワークモデル24と、非工事時費用情報に含まれるペナルティ費用情報とに基づいて、ペナルティ費用を追加した場合のネットワークモデル25を生成する。図10は、実施の形態1にかかるペナルティ費用を追加した場合のネットワークモデルの一例を示す図である。図10に示すネットワークモデル25は、ペナルティ費用情報が図2に示す場合の例を示している。
図2に示す例では、ペナルティ費用は、2021年~2025年では、0円であり、2026年では、500百万円である。そのため、図10に示すネットワークモデル25では、図9に示すネットワークモデル24に対し、健全度「D」で示される2027年のノード310と、ノード36からノード310へ向かうエッジ49とが追加され、エッジ49に「500」が割り当てられている。なお、エッジに割り当てられるペナルティ費用の単位は、百万円である。
次に、ネットワークモデル生成部21は、図10に示すネットワークモデル25に基づいて、工事後のノードおよびエッジを追加したネットワークモデル26を生成する。図11は、実施の形態1にかかる工事後のノードおよびエッジを追加したネットワークモデルの一例を示す図である。図11に示すネットワークモデル26は、図10に示すネットワークモデル25に対し、ノード311~324と、エッジ410~425とが追加される。
ノード37,311~315およびエッジ410~414は、ノード31~36およびエッジ41~45を4年ずらした位置にあり、ノード38,316~318およびエッジ415~418は、ノード31~34およびエッジ41~44を5年ずらした位置にある。また、ノード39,319~321およびエッジ419~421は、ノード31~34およびエッジ41~43を6年ずらした位置にある。ネットワークモデル生成部21は、上述した処理によって、計画対象の構造物毎のネットワークモデル26を生成する。
図1に戻って、計画立案部17の説明を続ける。計画立案部17の最適化演算部22は、計画対象の構造物毎のネットワークモデル26から維持管理計画を立案するための最適化問題を定式化し、分枝限定法などのアルゴリズムで最適解を求めることで、維持管理計画を立案する。
ここで、「I」を構造物IDとし、「J1」を計画初年とし、「JN」を計画終年とし、「K」を健全度とする。Nは2以上の整数である。最適化演算部22は、以下において説明する第1~第5の制約条件と目的関数とで表される最適化問題をネットワークモデル26から定式化する。
第1の制約条件は、エッジを通過するか否かを示す制約条件であり、下記式(1)で示される。第1の制約条件において、i∈I、j=j1-1,j1,・・・,jN、およびka,kb∈Kである。また、「xi,j-1,ka,j,kb」は、構造物IDが「i」である構造物において、年「j-1」の健全度「ka」のノードから年「j」の健全度「kb」のノードへ向かうエッジを表す。エッジを通過する場合、xi,j-1,ka,j,kb=1であり、エッジを通過しない場合、xi,j-1,ka,j,kb=0である。なお、エッジを通過するとは、ネットワークモデル26に含まれるエッジであることを意味し、エッジを通過しないとは、ネットワークモデル26に含まれないエッジであることを意味する。
第2の制約条件は、計画初年の1年前の年の健全度のノードと計画初年の健全度のノードとを結ぶエッジは必ず通過するという制約条件であり、下記式(2)で表される。下記式(2)において、i∈Iであり、「j0」は、計画初年の1年前の年を表し、「j1」は、計画初年を表し、「k0」は、年「j0」の健全度を表し、「k1」は、年「j1」の健全度を表す。
第3の制約条件は、各ノードにおいて入ってくるエッジを通過する和と出て行くエッジを通過する和が等しいことを条件とする。かかる第3の制約条件は、年「j」の健全度「k」のノードにおいて下記式(3)で表される。下記式(3)において、i∈I、j=j1-1,j1,・・・,jN-1、およびk,ka,kb∈Kである。
第4の制約条件は、同時に工事を行うことが禁止される構造物の組み合わせにおいて同じ年に工事可能な構造物の数は1以下であることを条件とする。かかる第4の制約条件は、下記式(4)で表される。下記式(4)において、Ip∈I、p=1,2,・・・,Pおよびka,kb∈Kである。Pは、例えば、3以上の整数であり、Ipは、同時に工事を行うことが禁止される構造物の構造物IDの集合である。
第5の制約条件は、年間に必要な費用である年間費用が年間予算内であることを条件とする。かかる第5の制約条件は、下記式(5)で表される。下記式(5)において、j=j1,・・・,jNであり、「ci,j-1,ka,j,kb」は、年「j-1」の健全度「ka」のノードから年「j」の健全度「kb」のノードへ向かうエッジの年間費用に対応する重みを示し、「aj」は、年「j」の年間予算である。Nは、2以上の整数である。
目的関数は、累計費用を最小化するための関数であり、下記式(6)で表される。
最適化演算部22は、上述した第1~第5の制約条件の下、上記式(6)の解として分枝限定法などのアルゴリズムで最適解を求めることで、維持管理計画を立案する。これにより、維持管理計画立案システム1は、将来的に工事が必要になる構造物を含む複数の構造物に対する維持管理計画を立案することができる。なお、目的関数は、例えば、計画初年から計画終年までの各年で必要な費用のバラツキを最小化するための関数であってもよい。この場合、最適化演算部22は、年間費用を平準化した維持管理計画を立案することができる。これによっても、維持管理計画立案システム1は、将来的に工事が必要になる構造物を含む複数の構造物に対する維持管理計画を立案することができる。
図12は、実施の形態1にかかる最適化演算部によって求められた最適解の一例を示す図である。図12に示す例では、2021年から2030年までにおいて、白抜き丸で示されるノード31,32,33,34,37,311,312,313,322,324を通るルートの総費用が最も少ない経路が最適解である。ノード31,32,33,34,37,311,312,313,322,324を通るルートでは、計画初年から計画終年までの各年の年間費用の合計である総費用が6百万円である。
図1に戻って、維持管理計画立案システム1の説明を続ける。維持管理計画立案システム1の出力部18は、計画立案部17によって立案された維持管理計画を示す情報を出力する。例えば、出力部18は、維持管理計画を示す情報を計画情報記憶部19に出力することで、維持管理計画を示す情報を計画情報記憶部19に記憶させる。また、出力部18は、サーバまたは端末装置などへネットワークを介して維持管理計画を示す情報を不図示の通信部に送信させることもできる。
維持管理計画を示す情報には、計画対象の各構造物を示す情報、計画対象の各構造物に対して工事が行われる年を示す情報が含まれる。なお、維持管理計画を示す情報には、計画初年から計画終年までの各年の年間費用を示す情報が含まれてもよい。年間費用には、工事が行われる年では、工事費用が含まれ、工事が行われない年では、リスク対策費用またはペナルティ費用が含まれる。
計画情報記憶部19は、計画立案部17によって立案された維持管理計画を示す情報に加え、実績情報を記憶する。実績情報は、例えば、過去の年間費用を示す情報、過去に実施された維持管理計画を示す情報、過去に実施された工事の情報、過去に実施されたリスク対策の情報、および過去に発生した崩落、落石、陥没などの事故の情報を含む。
表示処理部14は、維持管理計画を示す情報を計画情報記憶部19から読み出し、読み出した維持管理計画を示す情報に基づいて、維持管理計画を示す画像である維持管理計画画像を表示部13に表示させることができる。また、表示処理部14は、実績情報を計画情報記憶部19から読み出し、読み出した実績情報を示す情報を表示部13に表示させることもできる。
図13は、実施の形態1にかかる維持管理計画立案システムの表示部に表示される維持管理計画画像の一例を示す図である。図13に示す維持管理計画画像には、計画対象の構造物として、AAA橋、BBB橋、およびCCC橋が含まれ、AAA橋、BBB橋、およびCCC橋の各々に対して工事が行われる年の欄に矢印の記号が示されている。
表示処理部14は、維持管理計画を示す情報に基づいて、各年の年間費用を示すグラフの画像である年間費用グラフ画像を表示部13に表示させることができる。図14は、実施の形態1にかかる維持管理計画立案システムの表示部に表示される年間費用グラフ画像の一例を示す図である。
図14に示す年間費用グラフ画像は、2022年から2030年までの各年の年間費用と年間予算との関係を示すグラフの画像が含まれる。なお、表示処理部14は、維持管理計画を示す情報に基づいて、維持管理計画画像と年間費用グラフ画像とをまとめて1つの画像として表示部13に表示させることができる。また、維持管理計画画像は、複数の構造物に対する維持管理計画を表形式で示す画像が含まれるが、表形式に代えて、リスト形式で維持管理計画を表す画像であってもよい。
つづいて、フローチャートを用いて維持管理計画立案システム1による処理を説明する。図15は、実施の形態1にかかる維持管理計画立案システムによる処理の一例を示すフローチャートである。
図15に示すように、維持管理計画立案システム1の第1の情報取得部15は、入力部12から計画条件情報を取得する(ステップS10)。また、維持管理計画立案システム1の第2の情報取得部16は、ステップS10で取得された計画条件情報に基づいて、構造物情報記憶部10から計画対象の各構造物の情報を取得する(ステップS11)。
維持管理計画立案システム1の計画立案部17は、ステップS10で取得された計画条件情報とステップS11で取得された計画対象の各構造物の情報とに基づいて、計画対象の構造物のネットワークモデル26を生成する(ステップS12)。
次に、第2の情報取得部16は、社会的影響情報記憶部11から計画対象の構造物の構造物IDを含む同時工事禁止情報を取得する(ステップS13)。そして、計画立案部17は、ステップS13で取得された同時工事禁止情報と、ステップS10で取得された計画条件情報に含まれる年間予算を示す情報と、ステップS12で生成したネットワークモデル26とから、最適化問題を定式化し、分枝限定法などのアルゴリズムで総費用が最小になる最適解を得る(ステップS14)。
出力部18は、ステップS14で得られた最適解に基づいて、維持管理計画、および年間費用などの統計結果を出力し、出力結果を計画情報記憶部19に記憶する(ステップS15)。維持管理計画立案システム1は、ステップS15の処理を終了すると、図15に示す処理を終了する。
維持管理計画立案システム1は、サーバ装置で構成されてもよく、クライアント装置で構成されてもよく、2つ以上のサーバ装置で構成されてもよく、クライアント装置とサーバ装置とで構成されてもよい。例えば、維持管理計画立案システム1は、処理サーバと、データサーバと、クライアント装置とで構成されてもよい。
維持管理計画立案システム1が2つ以上の装置で構成される場合、2つ以上の装置の各々は、例えば、図16に示すハードウェア構成を有する。また、維持管理計画立案システム1が1つの装置で構成される場合、維持管理計画立案システム1は、例えば、図16に示すハードウェア構成を有する。図16は、実施の形態1にかかる維持管理計画立案システムを構成する装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図16に示すように、維持管理計画立案システム1を構成する2つ以上の装置の各々は、プロセッサ101と、メモリ102と、入力装置103と、ディスプレイ104と、通信装置105とを備えるコンピュータを含む。なお、維持管理計画立案システム1を構成する2つ以上の装置のうち一部の装置は、入力装置103およびディスプレイ104などを有しない構成であってもよい。維持管理計画立案システム1を構成する2つ以上の装置間は、通信装置105を用いて情報の送受信が行われる。
プロセッサ101、メモリ102、入力装置103、ディスプレイ104、および通信装置105は、例えば、バス106によって互いに情報の送受信が可能である。構造物情報記憶部10、社会的影響情報記憶部11、および計画情報記憶部19は、メモリ102によって実現される。入力部12は、入力装置103によって実現される。表示部13は、ディスプレイ104で実現される。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、表示処理部14、第1の情報取得部15、第2の情報取得部16、計画立案部17、および出力部18などの機能の一部または全部を実行する。プロセッサ101は、例えば、処理回路の一例であり、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、およびシステムLSI(Large Scale Integration)のうち一つ以上を含む。
メモリ102は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、およびEEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)のうち一つ以上を含む。また、メモリ102は、コンピュータが読み取り可能なプログラムが記録された記録媒体を含む。かかる記録媒体は、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルメモリ、光ディスク、コンパクトディスク、およびDVD(Digital Versatile Disc)のうち一つ以上を含む。なお、維持管理計画立案システム1を構成する装置は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)およびFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路を含んでいてもよい。
以上のように、実施の形態1にかかる維持管理計画立案システム1は、第1の情報取得部15と、第2の情報取得部16と、計画立案部17と、出力部18とを備える。第1の情報取得部15は、複数の構造物に対する維持管理計画の条件を示す計画条件情報を取得する。第2の情報取得部16は、複数の構造物の各々の劣化状態の遷移を示す遷移モデルの情報と複数の構造物の各々に対する工事の費用と劣化状態との関係を示す情報とを含む構造物情報を取得する。計画立案部17は、計画条件情報および構造物情報に基づいて、複数の構造物に対する維持管理計画を立案する。出力部18は、計画立案部17によって立案された維持管理計画を示す情報を出力する。これにより、維持管理計画立案システム1は、将来的に工事が必要になる構造物を含む複数の構造物に対する維持管理計画を立案することができる。
また、計画条件情報は、複数の構造物に対する維持管理の計画年数を示す情報を含む。計画立案部17は、計画年数の期間における工事費用の合計を目的関数とする演算を行い、かかる演算の結果に基づいて維持管理計画を立案する。これにより、維持管理計画立案システム1は、例えば、予め定められた制約条件の下で、計画年数の期間における各年の費用の合計が最小になるように維持管理計画を立案することができ、構造物のライフサイクルコストの適正化を図ることができる。
また、計画条件情報は、複数の構造物に対する維持管理の年間予算を示す情報を含む。計画立案部17は、年間に必要な費用である年間費用が年間予算内である計画を維持管理計画として立案する。これにより、維持管理計画立案システム1は、年間費用が年間予算内である維持管理計画を立案することができる。
また、構造物情報は、複数の構造物の各々について劣化状態と工事の可否との関係を示す情報を含む。これにより、維持管理計画立案システム1は、工事が不要である劣化状態では構造物の工事が行われないように維持管理計画を立案することができる。
また、構造物情報は、複数の構造物の各々について劣化状態と工事を行わない場合に必要になる費用との関係を示す情報を含む。これにより、維持管理計画立案システム1は、工事を行わない場合に必要になる費用を年間費用に含めることができ、より適切な維持管理計画を立案することができる。
また、第1の情報取得部15は、複数の構造物のうち同時に工事が行われることが禁止される2以上の構造物の組み合わせを示す同時工事禁止情報を取得する。計画立案部17は、構造物情報、同時工事禁止情報、および計画条件情報に基づいて、複数の構造物に対する維持管理計画を立案する。これにより、維持管理計画立案システム1は、交通制限による利便性の低下などのような工事による社会的影響を踏まえた維持管理計画を立案することができる。
また、計画立案部17は、複数の構造物の各々の劣化状態の変化をノードとエッジとで示すネットワークモデル26を生成し、生成したネットワークモデル26に基づいて、維持管理計画を立案する。これにより、維持管理計画立案システム1は、将来的に工事が必要になる構造物を含む複数の構造物に対する維持管理計画を立案することができる。
実施の形態2.
実施の形態2にかかる維持管理計画立案システムは、年間予算の制約を除外または緩和して得られる複数の構造物に対する維持管理計画を参考維持管理計画として立案して利用者に参考として提示する処理が追加される点で、実施の形態1にかかる維持管理計画立案システム1と異なる。以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1の維持管理計画立案システム1と異なる点を中心に説明する。
図17は、実施の形態2にかかる維持管理計画立案システムの構成の一例を示す図である。図17に示すように、実施の形態2にかかる維持管理計画立案システム1Aは、表示処理部14、計画立案部17、および出力部18に代えて、表示処理部14A、計画立案部17A、および出力部18Aを備える点で、維持管理計画立案システム1と異なる。
計画立案部17Aは、最適化演算部22に代えて、最適化演算部22Aを備える点で、計画立案部17と異なる。最適化演算部22Aは、最適化演算部22の機能に加え、年間予算の制約条件を除外または緩和して得られる複数の構造物に対する維持管理計画を参考維持管理計画として立案する。
例えば、最適化演算部22Aは、年間予算の制約条件を緩和した最適化問題を定式化し、分枝限定法などのアルゴリズムで最適解を求めることによって、参考維持管理計画を立案する。年間予算の制約条件の緩和は、入力部12から入力された各年の年間予算に基づいて最適化演算部22Aによって行われる。各年の年間予算が図5に示すように、1千万円であるとすると、年間予算の制約条件の緩和は、例えば、各年の年間予算を1.5千万円、2千万円、2.5千万円などといったように予め設定された倍数などで段階的に年間予算を上げていくことによって行われる。
また、最適化演算部22Aは、年間予算の制約条件である第5の制約条件を除外した最適化問題を定式化し、分枝限定法などのアルゴリズムで最適解を求めることによって、参考維持管理計画を立案する。なお、最適化演算部22Aは、年間予算の制約条件を厳しくした最適化問題を定式化し、分枝限定法などのアルゴリズムで最適解を求めることによって、参考維持管理計画を立案することもできる。例えば、各年の年間予算が図5に示すように、1千万円であるとすると、最適化演算部22Aは、制約条件となる年間予算を段階的に下げていくことができる。
出力部18Aは、表示処理部14Aに最適化演算部22Aによって立案された参考維持管理計画の情報を表示処理部14Aおよび計画情報記憶部19に出力する。参考維持管理計画を示す情報には、計画対象の各構造物を示す情報、計画対象の各構造物に対して工事が行われる年を示す情報、各年の年間費用を示す情報とが含まれる。なお、参考維持管理計画を示す情報には、参考維持管理計画を表形式またはリスト形式で表す情報が含まれる。
表示処理部14Aは、最適化演算部22Aによって立案された参考維持管理計画の情報に基づいて、参考維持管理計画を示す画像である参考維持管理計画画像と各年の参考年間費用を示すグラフの画像である参考年間費用グラフ画像とを表示部13に表示させる。各年の参考年間費用は、参考維持管理計画における各年の年間費用である。これにより、維持管理計画立案システム1Aの利用者は、参考維持管理計画における各年の年間費用を把握することができ、年間予算の再考などを行うことで、適切な維持管理計画を得ることができる。
つづいて、フローチャートを用いて維持管理計画立案システム1Aによる処理を説明する。図18は、実施の形態2にかかる維持管理計画立案システムによる処理の一例を示すフローチャートである。なお、図18におけるステップS20~S25の処理は、図15に示すステップS10~S15の処理と同様であるため、説明を省略する。
図18に示すように、維持管理計画立案システム1Aの最適化演算部22Aは、同時工事禁止情報と計画条件情報に含まれる年間予算を示す情報とステップS22で生成されたネットワークモデルとから、年間予算の制約条件を除外または緩和した最適化問題を定式化し、分枝限定法などのアルゴリズムで最適解を得る(ステップS26)。
次に、最適化演算部22Aは、得られた最適解に基づいて、参考維持管理計画、および参考年間費用などの統計結果を表示処理部14Aに出力し、表示処理部14Aによって出力結果を表示部13に表示させる(ステップS27)。維持管理計画立案システム1Aは、ステップS27の処理を終了すると、図18に示す処理を終了する。
なお、最適化演算部22Aは、ステップS24,S25の処理を行わない構成であってもよく、また、ステップS24,S25の処理の前に、ステップS26,S27の処理を行う構成であってもよい。
また、最適化演算部22Aは、ステップS25,S27の処理で立案した維持管理計画、年間費用などの統計結果、参考維持管理計画、および参考年間費用などの統計結果を出力部18Aに出力することができる。出力部18Aは、出力した情報を表示処理部14Aによって表示部13に同時に表示させることができる。その後、最適化演算部22Aは、維持管理計画立案システム1Aの利用者の入力部12への操作によって、利用者に選択された管理計画および年間費用などの統計結果などを出力部18Aに出力し、出力した情報を出力部18Aによって計画情報記憶部19に記憶させることができる。
維持管理計画立案システム1Aは、維持管理計画立案システム1と同様に、サーバ装置で構成されてもよく、クライアント装置で構成されてもよく、2つ以上のサーバ装置で構成されてもよく、クライアント装置とサーバ装置とで構成されてもよい。
実施の形態2にかかる維持管理計画立案システム1Aの計画立案部17Aは、複数の構造物に対する維持管理計画に加え、年間予算の制約条件を除外または緩和して得られる複数の構造物に対する維持管理の計画を参考維持管理計画として立案する。出力部18Aは、維持管理計画を示す情報に加え、参考維持管理計画を示す情報を出力する。これにより、維持管理計画立案システム1Aの利用者は、参考維持管理計画における各年の年間費用を把握することができ、年間予算の再考などを行うことで、適切な維持管理計画を得ることができる。
実施の形態3.
実施の形態3にかかる維持管理計画立案システムは、計画年数の期間における総費用を目的関数とすることに代えて計画年数の期間における工事による騒音被害を示す値の合計を目的関数とする点で、実施の形態1にかかる維持管理計画立案システム1と異なる。以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1の維持管理計画立案システム1と異なる点を中心に説明する。
図19は、実施の形態3にかかる維持管理計画立案システムの構成の一例を示す図である。図19に示すように、実施の形態3にかかる維持管理計画立案システム1Bは、社会的影響情報記憶部11、第2の情報取得部16、および計画立案部17に代えて、社会的影響情報記憶部11B、第2の情報取得部16B、および計画立案部17Bを備える点で、維持管理計画立案システム1と異なる。
社会的影響情報記憶部11Bは、同時工事禁止情報に加えて、複数の構造物の各々について工事による騒音被害を示す値を含む騒音情報を記憶する。工事による騒音被害を示す値は、例えば、工事による騒音被害を数値化した値であり、以下において、騒音被害値と記載する。騒音被害値は、例えば、工事の騒音によって生じる被害のレベルを数値化したものである。
図20は、実施の形態3にかかる社会的影響情報記憶部に記憶される騒音情報の一例を示す図である。図20に示す騒音情報は、構造物の劣化状態と騒音被害値との関係を示す情報である。図20に示す例では、構造物に対する工事による騒音被害値は、2021年~2023年では、「0」であり、2024年では、「10」であり、2025年では、「20」であり、2026年では、「40」である。
図19に示す第2の情報取得部16Bは、第1の情報取得部15で取得された計画対象の複数の構造物の識別情報に基づいて、計画対象の複数の構造物に関する騒音情報を社会的影響情報記憶部11Bから取得する。
計画立案部17Bは、ネットワークモデル生成部21および最適化演算部22に代えて、ネットワークモデル生成部21Bおよび最適化演算部22Bを備える点で、計画立案部17と異なる。ネットワークモデル生成部21Bは、図10に示すネットワークモデル25と、第2の情報取得部16Bで取得された騒音情報とに基づいて、ネットワークモデル25に騒音被害値を追加した場合のネットワークモデル27を生成する。
図21は、実施の形態3にかかる騒音被害値を追加した場合のネットワークモデルの一例を示す図である。図21に示すネットワークモデル27は、騒音情報が図20に示す場合の例を示しており、各エッジ41~49には、互いがカンマによって区切られた年間費用と騒音被害値とが割り当てられている。
具体的には、エッジ41~43には、「0,0」が割り当てられており、エッジ44には、「0.5,0」が割り当てられており、エッジ45には、「1,0」が割り当てられており、エッジ46には、「3,10」が割り当てられている。また、エッジ47には、「10,20」が割り当てられており、エッジ48には、「20,40」が割り当てられており、エッジ49には、「500,0」が割り当てられている。例えば、「0,0」は、年間費用が0円であり、騒音被害値が「0」であることを示し、「3,10」は、年間費用が3百万円であり、騒音被害値が「10」であることを示し、「10,20」は、年間費用が10百万円であり、騒音被害値が「20」であることを示す。
次に、ネットワークモデル生成部21Bは、図21に示すネットワークモデル27に基づいて、ネットワークモデル生成部21と同様の処理によって、工事後のノードおよびエッジを追加したネットワークモデルを生成する。工事後のノードおよびエッジを追加したネットワークモデルの各エッジには、ネットワークモデル27と同様に互いにカンマによって区切られた年間費用と騒音被害値とが割り当てられる。ネットワークモデル生成部21Bは、上述した処理によって、工事後のノードおよびエッジを追加した計画対象の構造物毎のネットワークモデルを生成する。
計画立案部17Bの最適化演算部22Bは、ネットワークモデル生成部21Bによって生成された計画対象の構造物毎のネットワークモデルから維持管理計画を立案するための最適化問題を定式化し、分枝限定法などのアルゴリズムで最適解を求めることで、維持管理計画を立案する。
最適化演算部22Bは、上述した第1~第5の制約条件と下記式(7)で示される目的関数とで表される最適化問題をネットワークモデル27に基づいて得られるネットワークモデルから定式化する。下記式(7)で示される目的関数は、騒音被害値を最小化するための関数である。下記式(7)において、「ri,j-1,ka,j,kb」は、年「j-1」の健全度「ka」のノードから年「j」の健全度「kb」のノードへ向かうエッジの騒音被害値に対応する重みを示す。
つづいて、フローチャートを用いて維持管理計画立案システム1Bによる処理を説明する。図22は、実施の形態3にかかる維持管理計画立案システムによる処理の一例を示すフローチャートである。なお、図22におけるステップS30,S31の処理は、図15に示すステップS10,S11の処理と同様であるため、説明を省略する。
維持管理計画立案システム1Bの第2の情報取得部16Bは、ステップS30で取得された計画条件情報に基づいて、社会的影響情報記憶部11Bから計画対象の構造物に対する工事による騒音の状態である騒音情報を取得する(ステップS32)。計画立案部17Bは、ステップS30で取得された計画条件情報とステップS31で取得された計画対象の各構造物の情報とステップS32で取得された騒音情報とに基づいて、計画対象の各構造物のネットワークモデルを生成する(ステップS33)。
次に、第2の情報取得部16Bは、社会的影響情報記憶部11Bから計画対象の構造物の構造物IDを含む同時工事禁止情報を取得する(ステップS34)。そして、計画立案部17Bは、ステップS34で取得された同時工事禁止情報と、ステップS30で取得された計画条件情報に含まれる年間予算を示す情報と、ステップS33で生成したネットワークモデルとから、最適化問題を定式化し、分枝限定法などのアルゴリズムで騒音被害値が最小になる最適解を得る(ステップS35)。
出力部18は、ステップS35で得られた最適解に基づいて、維持管理計画、年間費用などの統計結果を出力し、出力結果を計画情報記憶部19に記憶する(ステップS36)。維持管理計画立案システム1Bは、ステップS36の処理を終了すると、図22に示す処理を終了する。
維持管理計画立案システム1Bは、維持管理計画立案システム1と同様に、サーバ装置で構成されてもよく、クライアント装置で構成されてもよく、2つ以上のサーバ装置で構成されてもよく、クライアント装置とサーバ装置とで構成されてもよい。
また、計画立案部17Bは、計画立案部17Aと同様に、複数の構造物に対する維持管理計画に加え、年間予算の制約条件を除外または緩和して得られる複数の構造物に対する維持管理の計画を参考維持管理計画として立案することもできる。この場合、出力部18は、出力部18Aと同様に、維持管理計画を示す情報に加え、参考維持管理計画を示す情報を出力する。これにより、維持管理計画立案システム1Bの利用者は、参考維持管理計画における各年の年間費用を把握することができ、年間予算の再考などを行うことで、適切な維持管理計画を得ることができる。
また、計画立案部17Bは、さらに、工事による騒音が予め設定された数値以下であることを制約条件に含むように最適化問題を定式化することもできる。この場合、計画立案部17Bは、計画年数の期間における工事による騒音の合計を目的関数とすることに代えて、計画年数の期間における工事費用の合計を目的関数とすることもできる。
以上のように、実施の形態3にかかる維持管理計画立案システム1Bにおいて、計画条件情報は、複数の構造物に対する維持管理の計画年数を示す情報を含む。第2の情報取得部16Bは、複数の構造物の各々に対する工事による騒音の情報を含む騒音情報を取得する。計画立案部17Bは、計画年数の期間における騒音の合計を目的関数とする演算を行い、かかる演算の結果に基づいて維持管理計画を立案する。これにより、維持管理計画立案システム1Bは、騒音被害を抑制した維持管理計画を立案することができる。
実施の形態4.
実施の形態4にかかる維持管理計画立案システムは、工事後の劣化状態が異なる複数の工事方法がある場合において維持管理計画を立案することができる点で、工事後の劣化状態が1つである場合において維持管理計画を立案する実施の形態1にかかる維持管理計画立案システム1と異なる。以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1の維持管理計画立案システム1と異なる点を中心に説明する。
図23は、実施の形態4にかかる維持管理計画立案システムの構成の一例を示す図である。図23に示すように、実施の形態4にかかる維持管理計画立案システム1Cは、構造物情報記憶部10、第2の情報取得部16、および計画立案部17に代えて、構造物情報記憶部10C、第2の情報取得部16C、および計画立案部17Cを備える点で、維持管理計画立案システム1と異なる。
構造物情報記憶部10Cは、複数の構造物の各々について工事による変化後の劣化状態を示す工事後状態情報をさらに含む構造物情報を記憶する点で、工事後状態情報を含まない構造物情報を記憶する構造物情報記憶部10と異なる。
図24は、実施の形態4にかかる構造物情報記憶部に記憶される工事後状態情報の一例を示す図である。図24に示す工事後状態情報は、複数の工事方法の各々について工事前の劣化状態と工事後の劣化状態を示す情報である。図24に示す例では、工事方法は、AA工事方法とBB工事方法の2種類であるが、工事方法は3種類以上であってもよい。
図24に示す例では、工事前の劣化状態が「D」である2024年において、AA工事方法で工事をした場合の工事後の劣化状態は「A」になり、BB工事方法で工事をした場合の工事後の劣化状態は「B」になる。同様に、工事前の劣化状態が「E」である2025年および2026年において、AA工事方法で工事をした場合の工事後の劣化状態は「A」になり、BB工事方法で工事をした場合の工事後の劣化状態は「B」になる。
なお、図24に示す工事後状態情報では、工事前の劣化状態にかかわらず工事後の劣化状態は工事方法によって同じであるが、工事後状態情報は、工事前の劣化状態によって工事後の劣化状態が異なっていてもよい。
また、工事前の劣化状態にかかわらず工事後の劣化状態は工事方法によって同じである場合、構造物情報記憶部10Cに記憶される工事後状態情報は、例えば、AA工事方法による工事後の劣化状態が「A」であり、BB工事方法による工事後の劣化状態が「B」であることを示す情報であればよい。すなわち、工事後状態情報において工事後の劣化状態は工事前の劣化状態に関連付けられてなくてもよい。
図23に示す第2の情報取得部16Cは、第1の情報取得部15で取得された計画対象の複数の構造物の識別情報に基づいて、計画対象の複数の構造物に関する工事後状態情報を含む構造物情報を構造物情報記憶部10Cから取得する。
計画立案部17Cは、ネットワークモデル生成部21に代えて、ネットワークモデル生成部21Cを備える点で、計画立案部17と異なる。ネットワークモデル生成部21Cは、図6に示すネットワークモデル21と、工事可否情報と、工事後状態情報とに基づいて、複数の工事方法の各々で工事を実施した場合のネットワークモデルを生成する。
図25は、実施の形態4にかかる工事を実施した場合のネットワークモデルの一例を示す図である。図25に示すネットワークモデル28は、工事可否情報が図2に示し且つ工事後状態情報が図24に示す場合の例を示している。
図2に示す例では、工事可能フラグは、2021年~2023年では、「0」であり、2024年~2026年では、「1」である。また、図24に示す工事後状態情報は、AA工事方法による工事後の劣化状態が「A」であり、BB工事方法による工事後の劣化状態が「B」である。したがって、2024年~2026年の各々の年では、工事が可能であり、AA工事方法で工事をした場合の工事後の劣化状態が「A」になり、BB工事方法で工事をした場合の工事後の劣化状態が「B」になる。そのため、図25に示すネットワークモデル28では、図6に示すネットワークモデル21から、6つのノードと6つのエッジが追加される。
6つのノードのうちの3つのノードは、健全度「A」で示される2025年~2027年のノード37,38,39であり、残りの3つのノードは、健全度「B」で示される2025年~2027年のノード325,326,327である。
また、6つのエッジは、図7に示すエッジ46,47,48に加え、エッジ426,427,428を含む。エッジ426は、ノード34からノード325へ向かうエッジである。エッジ427は、ノード35からノード326へ向かうエッジである。エッジ428は、ノード36からノード327へ向かうエッジである。
なお、図24に示すように工事後状態情報において工事後の劣化状態が工事前の劣化状態に関連付けられている場合、ネットワークモデル生成部21Cは、工事可否情報を用いずにネットワークモデル28を生成することができる。
次に、ネットワークモデル生成部21Cは、ネットワークモデル生成部21と同様の処理によって、図25に示すネットワークモデル28と、工事時費用情報と非工事時費用情報に基づいて、工事費用、リスク対策費用、およびペナルティ費用を追加したネットワークモデルを生成する。そして、ネットワークモデル生成部21Cは、ネットワークモデル生成部21と同様の処理によって、工事費用、リスク対策費用、およびペナルティ費用を追加したネットワークモデルに基づいて、工事後のノードおよびエッジを追加したネットワークモデルを生成する。
つづいて、フローチャートを用いて維持管理計画立案システム1Cによる処理を説明する。図26は、実施の形態4にかかる維持管理計画立案システムによる処理の一例を示すフローチャートである。なお、図26におけるステップS40,S43~S45の処理は、図15に示すステップS10,S13~S15の処理と同様であるため、説明を省略する。
維持管理計画立案システム1Cの第2の情報取得部16Cは、ステップS40で取得された計画条件情報に基づいて、構造物情報記憶部10Cから、計画対象の各構造物の情報として工事後状態情報を含む情報を取得する(ステップS41)。計画立案部17Cは、ステップS40で取得された計画条件情報とステップS41で取得された計画対象の各構造物の情報とに基づいて、計画対象の構造物のネットワークモデルを生成する(ステップS42)。
維持管理計画立案システム1Cは、維持管理計画立案システム1と同様に、サーバ装置で構成されてもよく、クライアント装置で構成されてもよく、2つ以上のサーバ装置で構成されてもよく、クライアント装置とサーバ装置とで構成されてもよい。
また、計画立案部17Cは、計画立案部17Aと同様に、複数の構造物に対する維持管理計画に加え、年間予算の制約条件を除外または緩和して得られる複数の構造物に対する維持管理の計画を参考維持管理計画として立案することもできる。この場合、出力部18は、出力部18Aと同様に、維持管理計画を示す情報に加え、参考維持管理計画を示す情報を出力する。これにより、維持管理計画立案システム1Cの利用者は、参考維持管理計画における各年の年間費用を把握することができ、年間予算の再考などを行うことで、適切な維持管理計画を得ることができる。
また、計画立案部17Cは、計画立案部17Bと同様に、計画年数の期間における工事による騒音の合計を目的関数とすることもでき、また、工事による騒音が予め設定された数値以下であることを制約条件にすることもできる。
以上のように、実施の形態4にかかる維持管理計画立案システム1Cにおいて、構造物情報は、複数の構造物の各々について工事による変化後の劣化状態を工事方法毎に示す工事後状態情報を含む。計画立案部17Cは、工事後状態情報に基づいて、計画対象の構造物のネットワークモデルを生成する。これにより、維持管理計画立案システム1Cは、工事方法毎に工事後の劣化状態が異なる場合であっても、将来的に工事が必要になる構造物を含む複数の構造物に対する維持管理計画を立案することができる。
実施の形態5.
実施の形態5にかかる維持管理計画立案システムは、年間工事リソースが年間上限工事リソース以下になる維持管理計画を立案することができる点で、年間費用が年間予算内に収まる維持管理計画を立案する実施の形態1にかかる維持管理計画立案システム1と異なる。以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1の維持管理計画立案システム1と異なる点を中心に説明する。
図27は、実施の形態5にかかる維持管理計画立案システムの構成の一例を示す図である。図27に示すように、実施の形態5にかかる維持管理計画立案システム1Dは、構造物情報記憶部10、表示処理部14、第1の情報取得部15、第2の情報取得部16、および計画立案部17に代えて、構造物情報記憶部10D、表示処理部14D、第1の情報取得部15D、第2の情報取得部16D、および計画立案部17Dを備える点で、維持管理計画立案システム1と異なる。
構造物情報記憶部10Dは、構造物の劣化状態と工事の実行に必要なリソースである工事リソースとの関係を示す工事リソース情報をさらに含む構造物情報を記憶する点で、工事リソース情報を含まない構造物情報を記憶する構造物情報記憶部10と異なる。
図28は、実施の形態5にかかる構造物情報記憶部に記憶された構造物情報に含まれる工事リソース情報の一例を示す図である。図28に示す例では、構造物に対する工事リソースは、2021年~2023年では、「0」であり、2024年では、「5」であり、2025年および2026年では、「10」である。
工事リソースは、例えば、工事の実行に必要な人員の数および機材の数および種類などが数値化されて示されるが、工事の実行に必要な人員の数および機材の数および種類などのうちの一部が数値化されて示されてもよい。なお、工事リソースは、人員と機材の各々が数値化されて示されてもよい。また、工事リソースは、例えば、工事を行う事業者におけるリソースである。
図27に示す表示処理部14Dは、複数の構造物に対する維持管理計画の条件を示す情報である計画条件情報を設定するための計画条件設定画像を表示部13に表示したり、計画立案部17Dによって立案された維持管理計画を示す維持管理計画画像を表示部13に表示したりする。維持管理計画立案システム1Dの利用者は、表示部13に計画条件設定画像が表示されている状態で、入力部12を操作することによって、年間の工事リソースである年間工事リソースを含む計画条件情報を維持管理計画立案システム1Dに入力することができる。
図29は、実施の形態5にかかる表示部に表示される計画条件設定画像の一例を示す図である。図29に示す計画条件設定画像50Dには、年間予算を入力するための入力枠53に代えて、年間上限工事リソースを入力するための入力枠55が含まれる。年間上限工事リソースは、年間の工事リソースの上限値を示す。
維持管理計画立案システム1Dの利用者は、入力部12を操作することによって、入力枠51への計画年数の入力、入力枠52への計画年初の入力、および選択枠54での構造物の選択に加え、入力枠55への年間上限工事リソースの入力を行うことができる。図29に示す例では、入力枠55には、年間上限工事リソースとして2022年~2030年の各年において「50」が設定されている。
図27に示す第1の情報取得部15Dは、入力部12から利用者によって入力される計画条件情報を取得する。計画条件情報は、計画対象の複数の構造物に対する維持管理の計画初年、計画年数、および年間上限工事リソースを示す情報であり、計画年数を示す情報、計画初年を示す情報、年間上限工事リソースを示す情報、および計画対象になる構造物の識別情報を含む。
第2の情報取得部16Dは、第1の情報取得部15Dで取得された計画対象の複数の構造物の識別情報に基づいて、計画対象の複数の構造物に関する構造物情報を構造物情報記憶部10Dから取得する。第2の情報取得部16Dで取得される構造物情報は、計画対象の複数の構造物の各々のモデル情報、工事リソース情報、工事可否情報、および非工事時費用情報を含む。工事リソース情報は、上述した工事リソースの情報である。
例えば、図29に示すように、計画対象の構造物としてAAA橋およびBBB橋が選択された場合、AAA橋およびBBB橋の識別情報に基づいて、AAA橋およびBBB橋の各々のモデル情報、工事リソース情報、工事時費用情報、工事可否情報、および非工事時費用情報を含む構造物情報を取得する。
計画立案部17Dは、第1の情報取得部15Dで取得された計画条件情報と第2の情報取得部16Dで取得された構造物情報とに基づいて、計画対象の複数の構造物の維持管理計画を立案する。
計画立案部17Dは、例えば、計画初年から計画終年までの各年において年間の工事リソースが年間上限工事リソース以内に収まり且つ予め設定された条件を満たすように、維持管理計画を立案することができる。予め設定された条件は、例えば、計画初年から計画終年までの総費用が最小になるという条件、または、計画初年から計画終年までの各年で必要な費用のバラツキが最小になるという条件である。
計画立案部17Dは、ネットワークモデル生成部21および最適化演算部22に代えて、ネットワークモデル生成部21Dおよび最適化演算部22Dを備える点で、計画立案部17と異なる。ネットワークモデル生成部21Dは、図10に示すネットワークモデル25と、第2の情報取得部16Dで取得された構造物情報とに基づいて、ネットワークモデル25に工事リソースを追加した場合のネットワークモデルを生成する。
図30は、実施の形態5にかかる工事リソースを追加した場合のネットワークモデルの一例を示す図である。図30に示すネットワークモデル29は、工事リソース情報が図28に示す場合の例を示しており、各エッジ41~49には、互いにカンマによって区切られた年間費用と工事リソースとが割り当てられている。
具体的には、エッジ41~43には、「0,0」が割り当てられており、エッジ44には、「0.5,0」が関連付けられており、エッジ45には、「1,0」が割り当てられており、エッジ49には、「500,0」が割り当てられている。また、エッジ46には、「3,5」が割り当てられており、エッジ47には、「10,10」が関連付けられており、エッジ48には、「20,10」が割り当てられている。例えば、「0,0」は、年間費用が0円であり、工事リソースが「0」であることを示し、「3,5」は、年間費用が3百万円であり、工事リソースが「5」であることを示し、「10,10」は、年間費用が10百万円であり、工事リソースが「10」であることを示す。
次に、ネットワークモデル生成部21Dは、図30に示すネットワークモデル29に基づいて、ネットワークモデル生成部21と同様の処理によって、工事後のノードおよびエッジを追加したネットワークモデルを生成する。工事後のノードおよびエッジを追加したネットワークモデルの各エッジには、ネットワークモデル29と同様に互いにカンマによって区切られた年間費用と工事リソースとが割り当てられる。ネットワークモデル生成部21Dは、上述した処理によって、工事後のノードおよびエッジを追加した計画対象の構造物毎のネットワークモデルを生成する。
計画立案部17Dの最適化演算部22Dは、計画対象の構造物毎のネットワークモデルから維持管理計画を立案するための最適化問題を定式化し、分枝限定法などのアルゴリズムで最適解を求めることで、維持管理計画を立案する。最適化演算部22Dは、上述した式(1)~式(4)で示される第1~第4の制約条件と、後述する式(8)で示される第6の制約条件と、上述した式(6)で示される目的関数とで表される最適化問題を、ネットワークモデル生成部21Dで生成された複数の構造物のネットワークモデルから定式化する。
第6の制約条件は、年間の工事リソースが年間上限工事リソース以下であることを条件とする。かかる第6の制約条件は、下記式(8)で表される。下記式(8)において、j=j1,・・・,jNであり、「si,j-1,ka,j,kb」は、年「j-1」の健全度「k」のノードから年「j」の健全度「k」のノードへ向かうエッジの工事リソースに対応する重みを示し、「bj」は、年「j」の年間上限工事リソースである。
最適化演算部22Dは、上述した第1~第4の制約条件および第6の制約条件の下、上記式(6)の解として分枝限定法などのアルゴリズムで最適解を求めることで、維持管理計画を立案する。これにより、維持管理計画立案システム1Dは、将来的に工事が必要になる構造物を含む複数の構造物に対する維持管理計画として、年間工事リソースが年間上限工事リソース以下になる維持管理計画を立案することができる。なお、目的関数は、例えば、計画初年から計画終年までの各年で必要な費用のバラツキを最小化するための関数であってもよい。この場合、最適化演算部22Dは、年間費用を平準化した維持管理計画を立案することができる。
つづいて、フローチャートを用いて維持管理計画立案システム1Dによる処理を説明する。図31は、実施の形態5にかかる維持管理計画立案システムによる処理の一例を示すフローチャートである。なお、図31におけるステップS53,S55の処理は、図15に示すステップS13,S15の処理と同様であるため、説明を省略する。
図31に示すように、維持管理計画立案システム1Dの第1の情報取得部15Dは、入力部12から年間上限工事リソースの情報を含む計画条件情報を取得する(ステップS50)。また、維持管理計画立案システム1Dの第2の情報取得部16Dは、ステップS50で取得された計画条件情報に基づいて、構造物情報記憶部10Dから計画対象の各構造物の工事リソースの情報を含む情報を取得する(ステップS51)。
維持管理計画立案システム1Dの計画立案部17Dは、ステップS50で取得された計画条件情報とステップS51で取得された計画対象の各構造物の情報とに基づいて、計画対象の各構造物のネットワークモデルを生成する(ステップS52)。そして、計画立案部17Dは、ステップS50で取得された計画条件情報とステップS53で取得された同時工事禁止情報とステップS52で生成されたネットワークモデルとから、年間工事リソースが年間上限工事リソース以下である制約条件を含む最適化問題を定式化し、分枝限定法などのアルゴリズムで総費用が最小になる最適解を得る(ステップS54)。
維持管理計画立案システム1Dは、サーバ装置で構成されてもよく、クライアント装置で構成されてもよく、2つ以上のサーバ装置で構成されてもよく、クライアント装置とサーバ装置とで構成されてもよい。例えば、維持管理計画立案システム1Dは、処理サーバと、データサーバと、クライアント装置とで構成されてもよい。
また、計画立案部17Dは、計画立案部17Aと同様に、複数の構造物に対する維持管理計画に加え、年間予算の制約条件を除外または緩和して得られる複数の構造物に対する維持管理の計画を参考維持管理計画として立案することもできる。この場合、出力部18は、出力部18Aと同様に、維持管理計画を示す情報に加え、参考維持管理計画を示す情報を出力する。これにより、維持管理計画立案システム1Dの利用者は、参考維持管理計画における各年の年間費用を把握することができ、年間予算の再考などを行うことで、適切な維持管理計画を得ることができる。
また、計画立案部17Dは、計画立案部17Bと同様に、計画年数の期間における工事による騒音の合計を目的関数とすることもでき、また、工事による騒音が予め設定された数値以下であることを制約条件にすることもできる。また、計画立案部17Dは、計画立案部17Cと同様に、工事後状態情報に基づいて、計画対象の構造物のネットワークモデルを生成することもできる。
以上のように、実施の形態5にかかる維持管理計画立案システム1Dの第1の情報取得部15Dは、工事の実行に必要なリソースである工事リソースの情報を取得する。計画条件情報は、工事リソースの年間の上限を示す年間上限工事リソースの情報を含む。計画立案部17Dは、工事リソースが年間上限工事リソース以内である計画を維持管理計画として立案する。これにより、維持管理計画立案システム1Dは、工事リソースに着目して、将来的に工事が必要になる構造物を含む複数の構造物に対する維持管理計画を立案することができる。
なお、計画立案部17,17A,17B,17C,17Dは、計画年数における年間費用または騒音被害値の合計に代えて、リスク対策費用、ペナルティ費用、および健全度のいずれかの合計を目的関数とすることもできる。また、計画立案部17,17A,17B,17C,17Dは、計画年数における年間費用、騒音被害値、リスク対策費用、ペナルティ費用、および健全度の各々の合計のうち2以上を重み付けして合計して得られる値を目的関数とすることもできる。
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。