以下、本発明のさらに具体的な例示的な実施の形態のうちのいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
図1には、本発明の例示的な一実施形態に従う柱体引抜システム(「長手部材引抜システム」の一例であり、以下、「システム」という。)10が分解斜視図で示されている。
<<システムの用途>>
同図に示すように、このシステム10は、既設の柱体(「長手部材」の一例)12をその設置場所から引き抜いて撤去するために使用される。
具体的には、同図および図2に示すように、このシステム10は、既設の柱体12であって土中に埋設された基礎部14(例えば、コンクリート製、モルタル製、主成分としてセメントを含有する材料製など)内に埋設されたものを、その基礎部14を土中に残したまま、その基礎部14から引き抜いて撤去するために使用される。
<<システムの基本構成>>
図1および図3-図7に示すように、このシステム10は、柱体12を非侵襲的にかつ全周弾性締付け方式で把持するチャック20と、そのチャック20を柱体12に装着する作業を支援するための取付治具22と、柱体12の引抜作業中に基礎部14が柱体12と共に上昇することを阻止するためのベースユニット24と、柱体12を基礎部14から引き抜くための軸力をチャック20を介して柱体12に付与するジャッキ26とを備えている。
このシステム10は、さらに、柱体12を基礎部14から引き抜くための軸力をチャック20を介して柱体12に追加的に付与するホイスト30と、そのホイスト30が例えば吊下げ状態で設置される多段積上げ式の足場32とを備えている。
このシステム10においては、図1、図5および図11に示すように、柱体12を引き抜くために外部からチャック20に作用する荷重が、柱体12の軸線からオフセットした直線の方向に作用する集中的な偏心荷重である。
<<システムによって達成される複数の課題>>
1.引抜作業の非破壊作業化および低振動・低騒音化
本実施形態においては、引抜作業のために小形クレーンなどの重機を使用せず、また、振動工具などを用いて基礎部14を破壊することを必要とすることなく、柱体12を基礎部14から引き抜く。さらに、衝撃的な荷重を柱体12に付加することなく、柱体12を基礎部14から引き抜く。それにより、引抜作業およびそれに伴う設備撤去作業を非破壊作業とするとともに低振動・低騒音化して近隣住民に迷惑をかけないように作業を遂行する。
2.作業に必要な労力(工数および工期)の削減
本実施形態においては、現場に大形の設備や重機を搬入することも基礎部14を破壊することも必要とすることなく、柱体12を基礎部14から引き抜く。さらに、作業に必要な設備を分解組立て式とし、搬入・搬出の際における搬送車両内の占有スペースを削減してそれらの作業を容易にする。それにより、引抜作業を含む全体的な撤去作業に必要な労力を削減する。
3.作業および設備の簡易化ならびに作業コストの削減
本実施形態においては、特別な設備や大形の設備を用いず、例えば、手持ち可能な手動式の引上機、持上機または押上機(例えば、手動式ジャッキ26や手動式ホイスト30など)や、現場で分解組立可能なチャック20を用いて柱体12を引き抜く。それにより、作業および設備の簡易化ならびに作業コストの削減が容易となる。
4.引き抜いた柱体の再利用化
本実施形態においては、柱体12をチャック20で非侵襲的に、すなわち、引抜き後に柱体12に圧痕などの補修不能な痕跡が残らないように引き抜く。柱体12が非侵襲的に引き抜かれるため、同じ柱体12を別の現場において追加の補修なしで再利用することが可能となり、資源の有効利用が可能となるとともに別の現場についての設備コストが削減される。
<<チャックの基本構成>>
<基本的原理>
チャック20は、概略的には、既設の柱体12をその設置場所(同図に示す例においては、基礎部14)から引き抜くという用途において柱体12に軸力および回転力のうち少なくとも軸力を準静的に付与するために柱体12に着脱可能に、弾性的にかつ非侵襲的に装着される。
<接触層>
このチャック20は、少なくとも半径方向において弾性を有する(半径方向弾性(圧縮弾性)および長さ方向弾性(曲げ弾性)のうち少なくとも前者を有する)とともに少なくとも表層において軟質材を有する筒状の接触層40(後に図16および図17を参照して詳説する)を有する。その「筒状の接触層」は、柱体12が円柱体または円筒体である場合には、円筒状の接触面または円筒接触面として構成される。
このチャック20は、その接触層40を介し、その接触層40が柱体12の外周面を実質的に全周的に(または、外周面の1周分より短い領域で部分的にないしは局部的に)包囲する状態で、その柱体12の外周面に弾性的に圧縮状態で接触するように構成される。
それにより、このチャック20は、その柱体12をそれの弾性域内において締め付けることによってその柱体12をそれの外周面に圧痕が実質的に残らないように非侵襲的に把持するように構成される。よって、このチャック20は、「全周弾性締付けチャック」と称することが可能である。
<外枠>
このチャック20は、さらに、接触層40を背後から支持する状態で保持する外枠50(後に図9-図15を参照して詳説する)を備えている。
その外枠50は、柱体12の周方向に並ぶ複数の分割体52に分割されている。各分割体52は、複数枚のプレートの積層体として構成されている。それらプレートは、厚さおよび材質に関し、それぞれ互いに一致するが、これに代えて、例えば、軸方向位置に応じて異なる厚さまたは材質を有するように構成してもよい。
<クランプ機構>
それら分割体52を、このチャック20が柱体12を把持する把持状態で組み付けるために、このチャック20は、それら分割体52を、平面視における複数の位置において、周方向に着脱可能に連結するクランプ機構80(後に図18および図19を参照して詳説する)を備えている。
<<チャックの基本的特徴>>
チャック20として重要な性能は、装置サイズや負荷の大きさの割に大きな摩擦力がチャック20の内面と柱体12の外面との間に発生することである。一方、一般に、摩擦力は、表面摩擦係数と抗力(半径方向応力)と有効接触面積との積に応じて増加する。
1.接触層40の表面摩擦係数を増加させるための対策
接触層40は、それの表層素材(例えば、後述の被覆層42の素材)として軟質材を使用する。その軟質材は、弾性体、合成樹脂、エラストマーまたはゴムを含む。
2.柱体12と接触層40との間の接触面積を増加させるための任意選択的な複数の対策
(1)接触層40は、それが金属製の一部品として構成される場合より高い圧縮変形特性を有し、それにより、柱体12の外面に対する接触層40の半径方向における形状追従性を増加させる。例えば、接触層40は、外枠50からの半径方向力の負荷によって潰れて扁平化し易い軟質材を使用する。
(2)接触層40は、それが金属製の一部品として構成される場合より高い曲げ変形特性を有し、それにより、柱体12の外面に対する接触層40の軸方向における形状追従性を増加させる。例えば、接触層40は、ジャッキ26からの曲げモーメントの負荷によって曲がり易い軟質材を使用する。
(3)外枠50は、半径方向力に対して半径方向に弾性変形し易い低弾性変形部(例えば、幅狭プレートとしての後述の小形プレート54)と、半径方向力に対して半径方向に弾性変形し難い高弾性変形部(例えば、幅広プレートとしての後述の大形プレート56)とを、それぞれ、接触層40を背後から支持する位置に、かつ、それぞれ互いに異なる軸方向位置に有し、それにより、接触層40の柱体12の外面に対する接触層40の軸方向における形状追従性を増加させる。
(4)外枠50は、接触層40に背後から接触してそれを収容する支持面(例えば、後述の複数本の縦溝58)を有する。その支持面は、前記低弾性変形部に対応する第1部分支持面(例えば、後述の浅溝60)と、前記高弾性変形部に対応する第2部分支持面(例えば、後述の深溝62)とを有する。それら浅溝60および深溝62は、いずれも、接触層40から最も遠い遠位部64,66を有する。
それにより、接触層40のうち、前記低弾性変形部に対応する部分は、前記高弾性変形部に対応する部分より、前記圧縮状態において、半径方向圧縮量が大きい。それにより、周方向に扁平化して潰れる量も大きくなるように構成され、それにより、柱体12と接触層40との間の接触面積を増加させる。
3.接触層40に作用する抗力を増加させるための任意選択的な複数の対策
(1)外枠50が柱体12の周方向に並ぶ複数の分割体52に分割される場合に、チャック20は、さらに、複数の分割体52を互いに連結して柱体12に締め付けるときに複数の分割体52に作用する締付力の一部を半径方向力に変換して接触層40に作用させる第1の力変換機構を含む。
その第1の力変換機構は、クランプ機構80のうち、クランプ位置Bにおける接線方向に対して傾斜する方向に延びる斜め部材(後述の第2周方向クランプ部)を含む。その斜め部材は、複数の分割体52を互いに連結して柱体12に締め付けるときに複数の分割体52に作用する締付力の一部を半径方向力に変換する。これにより、外枠50によって接触層40に作用する抗力がその接触層40の周方向に均等化され、その結果、抗力の周方向における総和が増加することが期待される。
(2)チャック20は、前記偏心荷重の一部を半径方向力に変換して接触層40に作用させる第2の力変換機構を含む。
その第2の力変換機構は、外枠50の積層構造を含む。
具体的には、外枠50が、柱体12の軸方向に延びるブロックとしてではなく、積層体として、すなわち、柱体12を横断する方向に延びる複数枚のプレート54,56が、個々のプレートのすべり運動および傾動が許容される状態で、柱体12の軸方向に積層された積層体として構成される。
その積層体は、自身に前記偏心荷重が作用すると、複数枚のプレート54,56のそれぞれの内側端面が接触層40の軸方向領域にフィットする向きのすべり変形および傾動が発生する。このことは、積層体が接触層40の軸方向領域にできる限り長い部分にわたって接触する状態の実現に寄与すると推測される。これにより、前記偏心荷重が外枠50に作用するにもかかわらず、外枠50によって接触層40に作用する抗力がその接触層40の軸方向に均等化され、その結果、抗力の軸方向における総和が増加することが期待される。
4.接触層40がそれの表層素材として軟質材を使用する場合に、接触層40の耐久性を増加させる対策
接触層40は、前記軟質材を背後から支持する裏板として金属を使用するという二重構造を採用する。
5.締付前のチャック20において後述の紐状体44が意に反してチャック20の縦溝58から落下することを阻止するための対策
複数本の縦溝58のうちの少なくとも一部は、それの長さ方向において深さが変化する深さ変化部を含む。その深さ変化部は、例えば、後述の浅溝60と深溝62とが縦溝58の長さ方向において互いに接触する部分である。
その深さ変化部は、前記少なくとも一部の縦溝58から、対応する紐状体44が軸方向に離脱することを阻止する抜け止めとして作用する。
このチャック20の例示的かつ具体的な部品構成については、後に詳説する。
<<ジャッキ>>
このシステム10は、さらに、柱体12をチャック20を介して基礎部14から引き抜くために、そのチャック20にそれの下向き面または他の部位に上向きの力を付加するジャッキ26(「第1のユニット」の一例)を備えている。
そのジャッキ26は、駆動源(駆動方式)として、手動式を採用しているが、これに代えて、流体式またはモータ式を採用してもよい。また、このジャッキ26は、倍力方式として、油圧式を採用しているが、これに代えて、てこ式、ねじ式、モータ式もしくは圧縮空気式またはそれらの部分的なもしくは全体的な組合せを採用してもよい。また、このジャッキ26は、操作方式として、直接操作式を採用しているが、これに代えて、遠隔制御式を採用してもよい。
図6には、ジャッキ26が側面図で示されている。そのジャッキ26に類似するものは例えば特開2002-87767号公報に開示されている。
ジャッキ26は、水平に延びる概して板状のベース90と、そのベース90上に立設された中空円筒状(上側に底部を有するボトル状)のハウジング92とを有する。そのハウジング92内にシリンダ94が配置され、それにより、ハウジング92の内部空間がシリンダ94内の空間とシリンダ外のタンク室96とに仕切られている。
シリンダ94の内部空間にラム100が液密かつ摺動可能に嵌合され、それにより、ラム100の下端部とベース90またはハウジング92との間に液圧室102が形成されている。それらタンク室96および液圧室102に共通の作動液(オイルなど)が充填されている。
ラム100は、ベース90に対して直角に延びている。ラム100の上端部はハウジング92から突出しており、ラム100は、その突出端部(例えば、受金)においてチャック20に係合可能である。
ジャッキ26は、さらに、ポンプ104を有し、そのポンプ104もベース90に装着されている。ポンプ104にはプランジャー106が液密かつ摺動可能に嵌合されており、そのプランジャー106の一端部とベース90との間に加圧室108が形成されている。その加圧室108は、作動液の流れ方向を制御する複数のバルブユニット110(例えば、複数の逆止弁)を介して流体的に液圧室102およびタンク室96に接続されている。
プランジャー106の他端部がポンプ104から突出している。その突出端部は、ハウジング92またはベース90に固定されたピン112の周りに揺動可能に連結されたソケット114(例えば、ハンドル用スリーブ)の一端部に回動可能に連結されている。
そのソケット114には、作業者によって上下動させられるレバー116(例えば、ハンドル)が着脱可能に挿入される。作業者は、そのレバー116を上下に反復的に揺動させることにより、液圧室102を加圧し、その液圧室102内の圧力はラム100に作用する。
液圧室102が加圧されていない状態においては、ラム100が同図において実線で示す最大収縮位置すなわち最低位に位置している。
これに対し、レバー116が操作されてジャッキ26が駆動された結果、液圧室が加圧されている状態においては、ラム100が同図において二点鎖線で示す最大伸長位置すなわち最高位まで上昇することが可能である。このとき、ラム100は、それと係合しているチャック20に上向きの力を揚力として印加する。ラム100の最高位と最低位との差が揚程である。
<<ベースユニット>>
図3に例示するように、このシステム10は、さらに、柱体12を引き抜く際にそれに連れて基礎部14が土壌から持ち上がることを機械的に阻止するために、その基礎部14を少なくとも部分的に覆うように載置されるベースユニット24(「変位抑止部」の一例)を備えている。
図4に例示するように、ベースユニット24は、現場で組み立てて分解することが可能であるよう分解組立て式として構成されている。このベースユニット24は、中空構造を有しており、それの中央部を柱体12が貫通することが可能となっている。このベースユニット24は、基礎部14を少なくとも部分的に覆うようにその基礎部14に載置されるベースを有している。
<<取付治具>>
図3に例示するように、このシステム10は、さらに、作業者がチャック20を柱体12に装着する作業を支援することを目的として、組付け前のチャック20を下方から支持するために取付治具22を備えている。その取付治具22は、中空構造を有しており、それの下面においてベースユニット24の上面に接触する一方、それの上面においてチャック20の下面を支持する。
作業者は、この取付治具22を用いることにより、チャック20を柱体12に対して相対的に、軸方向においても半径方向においても暫定的に位置決めし、その状態で、クランプ機構80(図1、図18および図19参照)を用いることにより、複数の分割体52を柱体12と共に締め付け、それにより、チャック20を柱体12に組み付ける。
この取付治具22も、現場で組み立てて分解することが可能であるよう分解組立て式として構成されてもよい。
<<ホイスト>>
図7に例示するように、このシステム10は、さらに、ジャッキ26のみではその揚程が不足するために柱体12を基礎部14から剥離して部分的に引き抜くことは可能であるが完全に引き抜くことは不可能である場合に、チャック20に上向きの力を追加的に付加するホイスト30(またはウインチ)(「第2のユニット」の一例)を備えている。
そのホイスト30は、例えばチェーンブロックを有し、チェーン120とそれの先端に連結されたフック122とを用いてチャック20の連結具としてのアイボルト124(図7参照)に接続され、それにより、チェーン120を巻き上げて引き上げることにより、そのチャック20を柱体12と共に引き揚げ、それにより、柱体12を基礎部14内において引っ張って最終的に基礎部14から引き抜くために使用される。
そのホイスト30は、駆動源(駆動方式)として、手動式を採用しているが、これに代えて、モータ式、油圧式または圧縮空気式またはそれらの部分的なもしくは全体的な組合せを採用してもよい。また、このホイスト30は、操作方式として、直接操作式を採用しているが、これに代えて、遠隔制御式を採用してもよい。
<<多段積上げ式の足場>>
図7に例示するように、このシステム10は、さらに、ホイスト30の設置位置を高所化するために、そのホイスト30が設置される足場32を複数段数分備えている。同図において実線で示す足場32は、1段目の足場32を示している。ホイスト30の設置位置をさらに高所化するために、同図に二点鎖線で示すように、2段目の足場32が1段目の足場32に積み上げて設置される。各足場32は、現場で組み立てて分解することが可能である分解組み立て式として構成されている。
[チャックの例示的かつ具体的な部品構成]
<<外枠>>
図9に、図1に示す複数の分割体52のうちの一つを代表的に拡大して斜視図で示すように、外枠50は、柱体12の軸方向に延びる1個のブロック(例えば、金属製ブロック)としてではなく、柱体12を横断する方向に延びる複数枚のプレート54,56が柱体12の軸方向に積層された積層体として構成される。
同図に示すように、複数枚のプレート54,56は、複数枚(図示の例では、4枚)の大形プレート56(図12参照)と、複数枚の小形プレート54(図13参照)とから構成されている。種類の如何を問わず、各プレート54,56の1周分の周縁は、柱体12の外面に最も近い内側縁と、最も離れた外側縁と、柱体12の中心から見て右側および左側にそれぞれ位置する右側縁および左側縁とに分割される。
図9および図10に示すように、複数枚の小形プレート54が複数枚の大形プレート56により3つのグループに分割され、各グループごとに、隣接する2枚の大形プレート56により、積層状態にある複数枚の小形プレート54がサンドイッチされる。
複数枚の大形プレート56については、図12に示すように、それら大形プレート56を所定の相対位置関係で積層して締め付けるために、各大形プレート56に複数の貫通穴が形成されている。それら貫通穴のうちの一部は、複数の分割体52の締付力が周方向に均等化するように、チャック20の中心から等角度で延び出る複数本の放射線(図において一点鎖線で示す)上に配置されている。
前記複数の貫通穴のうちの一部は、各大形プレート56に複数の位置D,E,F,G,H1,H2およびJにおいて形成されている。
具体的には、各大形プレート56ごとに、2個の位置Dは、それぞれ、各大形プレート56の内側縁の両端部に位置する。また、各大形プレート56ごとに、1個の位置Eは、各大形プレート56の外側縁の中央部に位置する。
また、各大形プレート56ごとに、1個の位置Fは、各大形プレート56の右側縁のほぼ中央部に位置する。また、各大形プレート56ごとに、1個の位置Gは、各大形プレート56の左側縁のほぼ中央部に位置しており、その位置Gは、柱体12の中心からの距離に関し、位置Fとは異なっている。すなわち、位置Fと位置Gとは、同心円上に存在しないように位置決めされているのである。
また、各大形プレート56ごとに、2個の位置H1は、それぞれ、各大形プレート56の外側縁の両端部に位置する。また、各大形プレート56ごとに、2個の位置H2は、2個の位置H1と同様に、それぞれ、各大形プレート56の外側縁の両端部に位置するが、位置H2は、柱体12の中心からの距離に関し、位置H1とは異なっている。
また、各大形プレート56ごとに、2個の位置Jは、それぞれ、同じ大形プレート56における位置H1およびH2の左側対および位置H1およびH2の右側対のそれぞれの周方向内側に位置する。
具体的には、概して正三角形を成す三角形の3個の頂点にそれぞれ位置する位置H1,H2およびJより成るグループが、外周縁の両側にそれぞれ配置され、それら2つのグループは、同じ大形プレート56において、それの中心線(各大形プレート56の中心角位置(同図において「中心」で示す)と位置Eとを通過する直線)に関して左右対称的に配置されている。
複数枚の小形プレート54については、図10に示すように、それら小形プレート54を、外枠50の軸方向(各小形プレート54の厚さ方向)に積層され、かつ、大形プレート56に対して所定の周方向位置関係を有する状態で締め付けるために、図13に示すように、各小形プレート54に複数の貫通穴が形成されている。それら貫通穴は、図12に示す位置Dと同心である位置Kに形成されている。
図10に側面断面図で示すように、それら大形プレート56および小形プレート54は、複数の貫通穴のうち所定のものに棒状締結具130が貫通させられて締結されることにより、積層状態で締め付けられる。棒状締結具130の例としては、シャフト(ねじ切りなし)または長ねじ(少なくとも両端部においてねじ切されたもの)があり、また、他の例として、ナットやアイボルトなどがある。
同図においては、複数枚の大形プレート56および複数枚の小形プレート54に位置D(位置K)において棒状締結具130として長ねじが貫通させられ、その長ねじのうち、最も外側の2枚の大形プレート56から突出したそれぞれの端部にナット132が締結される。同様に、複数枚の大形プレート56に位置Eにおいて棒状締結具130として長ねじが貫通させられ、その長ねじのうち最も外側の2枚の大形プレート56から突出した端部にナット132が締結される。
この場合、互いに隣接した2枚の大形プレート56の間にスペーサ134(スリーブまたはカラー)が、棒状締結具130によって挿通される状態で配置されている。それにより、互いに隣接した2枚の大形プレート56間の軸方向間隔が定義される。
同図に示すように、各棒状締結具130と各貫通穴との間にすきま(棒状締結具130のねじ部の最大外径と貫通穴の最小内径との差を意味し、以下、「ねじすきま」という)が残されている。そのねじすきまは、直径寸法で1mm程度であり、また、例えば、穴径等級として2級以上である。
<外枠をすべり運動可能な積層体として構成することによる効果>
以上説明したように、外枠50は、積層体として構成され、かつ、各々薄板である複数枚のプレート54,56が比較的大きいねじすきまのもとで互いに締結されることによってすべり運動可能な積層体が構成されるが、そのことによる効果を検討する。
図11(a)には、比較例として、チャック20の外枠50が一体型(ブロック)である場合に前記偏心荷重に応答する外枠50の挙動の分析結果が部分側面断面図で示されている。
この比較例においては、同図(b)を参照して後述する実施例と同様に、柱体12を挟んで相対向する一対のジャッキ26からそれぞれ外枠50に偏心荷重がそれぞれ互いに並列的にかついずれも上向きに作用する。各偏心荷重を原因として、外枠50にそれぞれ曲げモーメントが互いに逆向きに作用する。
この比較例においては、実施例と同様に、各曲げモーメントを原因とし、外枠50にそれぞれ半径方向力が、その外枠50の軸方向において、外枠50のうちジャッキ26に対する近位点(接触点(力点)、最下点)から遠位点(最上点)に向かうにつれて増加する非一様パターンで分布するように作用すると推測される。
このような力学条件において、この比較例においては、外枠50が、剛体としての金属製ブロックとして構成されている。そのため、この比較例においては、外枠50が、それ自体は変形することなく、曲げモーメントに応答して傾動(角変位)する。
その結果、外枠50には、それの近位点において、柱体12の外面から半径方向外向きに離れる一方、遠位点において、柱体12の外面に半径方向内向きに接近する向きの剛体変位(角変位すなわち剛体全体の傾動)が発生する。
そのため、この比較例においては、チャック20が、それの近位点において、柱体12の外面から局部的に浮き上がると推測される。そうすると、外枠50に作用する半径方向力の分布パターンの非一様性が強調される。
その結果、この比較例においては、接触層40に発生する抗力が近位点において局所的に低下し、その接触層40と柱体12との間の摩擦力も局所的に低下し、ひいては、接触層40に発生する抗力の軸方向における総和も低下すると推測される。
これに対し、同図(b)には、本発明の実施例として、チャック20の外枠50がすべり運動可能な積層体である場合に偏心荷重に応答する外枠50の挙動の分析結果が部分側面断面図で示されている。
この実施例においては、すべり運動可能な積層体としての外枠50に前記偏心荷重が作用すると、前記曲げモーメントを原因として、複数枚のプレート54,56の個別のすべり運動および傾動が発生すると推測される。そうすると、外枠50自体に、全体的に、すべり変形および傾動が発生し、それにより、接触層40が、それの内面が柱体12の外面に軸方向に全体的に接触する状態に維持されると推測される。
これにより、前記偏心荷重が外枠50に作用するにもかかわらず、接触層40が柱体12の外面に接触する軸方向領域の面積の減少が抑制されるとともに、外枠50に作用する半径方向力の分布パターンの非一様性が強調されることが抑制される。その結果、外枠50によって接触層40に作用する抗力が軸方向において均等化され、それにより、抗力の総和が増加すると推測される。
<<接触層>>
接触層40は、図17(a)に示すように、各々円形断面を有する複数本の紐状体44が、柱体12の周方向に離散的に配置される複数の離散体として、柱体12と同心の仮想円筒面(「仮想筒状面」の一例)に沿って並んだ構造を有する。同図(b)および図16に示すように、各紐状体44は、主として金属より成る心材46と、その心材46を被覆する被覆層42(「表層」の一例)であって主として軟質材より成るものとを含む。その被覆層42を構成する素材は、「表層素材」の一例である。
<接触層の構造>
各紐状体44の一例は、図16に示すように、樹脂被覆ワイヤロープである。その樹脂被覆ワイヤロープは、心材46としてワイヤロープを有し、被覆層42として合成樹脂製のスリーブを有し、表面が合成樹脂で被覆されて成るワイヤロープとして構成される。
ここに、「ワイヤロープ」は、各々、複数本の素線をより合せて成る複数本のストランド(小綱、小塊)をコア(鋼心、心綱)の周りにより合せて構成される。「素線」の材質は、金属であり、例えば、ステンレス鋼、タングステン、チタン合金などである。また、「コア」は、繊維心や金心とも称される。また、「被覆層42」を構成する素材は、合成樹脂(PVC、ナイロン、ポリエチレンなど)(「軟質材」の一例)である。
<接触層の力学的特性>
被覆層42は、柔軟性(屈曲性)を有する。また、心材46は、前記複数本の素線間のスリップおよび前記複数本のストランド間のスリップが許容される結果、単線より成る心材46より高い柔軟性(直径方向における圧縮変形し易さ(例えば、ストランドのくずれ易さ、つぶれ易さ)、長さ方向に対して交差する方向における屈曲し易さ)を有する。
さらに、被覆層42および心材46は、いずれも、それぞれの素材の弾性により、除荷後は、無負荷時(自然状態)の断面形状(円形など)および全体形状(直線)に復元する。さらに、被覆層42は、金属製の被覆層42より高い柔軟性(直径方向における圧縮変形し易さ、長さ方向に対して交差する方向における屈曲し易さ)を有する。
力学的特性に関する被覆層42および心材46間の違いを説明するに、被覆層42は、心材46より高い表面摩擦係数を有し、これに対し、心材46は、被覆層42より高い弾性復元性(例えば、曲げ方向における弾性復元性、圧縮方向における弾性復元性など)を有する。
本実施形態においては、各ワイヤロープの少なくとも一端部に端末加工が施されている。具体的には、既製金具としてのスリープ、クリップがロープ・エンドに圧着かしめされている。その既製金具が端末に存在するため、各ワイヤロープが図1に示すように外枠50の内面に保持される際、各ワイヤロープが自重で落下することが防止される。
<<外枠>>
<すべり運動可能な積層体>
図10,図12,図13および図14(a)に示すように、外枠50は、半径方向力に対して半径方向に弾性変形し易い低弾性変形部としての小形プレート54と、半径方向力に対して半径方向に弾性変形し難い高弾性変形部としての大形プレート56とをそれぞれ互いに異なる軸方向位置に有する。図14(a)は、図13に示す小形プレート54を、図12に示す大形プレート56に仮想的に重ねて対比する状態で示す平面図である。
具体的には、前記低弾性変形部は、図14(a)に示すように、幅寸法W1を有する幅狭プレートとしての小形プレート54である。これに対し、高弾性変形部は、同図に示すように、幅寸法W1より長い幅寸法W2を有する幅広プレートとしての大形プレート56である。
図14(a)に示す小形プレート54においては、複数個の浅溝60が、同図(b)に示すように、チャック20の中心を中心とする真円弧(真円の円弧)に沿って配列される。
これに代えて、同図(b)に例示するように、小形プレート54が有する円弧形状とは異なる円弧形状を採用してもよい。その異なる円弧形状の一例は、図示されているように、真円弧の半径R1より長い半径R2を有する扁平円弧である。
この例においては、真円弧に沿って複数の浅溝60が、それらに対応する複数本の紐状体44と共に配列される場合と比較し、各紐状体44の、柱体12の中心からの半径方向距離が短くなり、その分、対応する複数の小形プレート54の半径方向外向きの撓み量が増加する。
その結果、この例においては、柱体12の直径が同じであっても、より大きな反発力が各小形プレート54から各紐状体44に作用し、それにより、接触層40に半径方向(厚さ方向)に作用する抗力が増加し、それに伴い、接触力に発生する摩擦力も増加する。このように、摩擦力が増幅されるという効果が得られるのである。
<外枠における複数本の縦溝>
図1に示すように、外枠50は、複数本の紐状体44のそれぞれに背後から接触してそれら紐状体44を収容する複数本の縦溝58(「溝」の一例)を有する。各縦溝58は、図15(b)に示すように、複数の浅溝60と複数の深溝62とであって一列に並んだものの集まりである。
各紐状体44は、同図(d)に例示するように、柱体12によって各紐状体44が圧縮される圧縮状態において、対応する浅溝60内において、潰されて、周方向に伸展するように扁平化する。同様に、各紐状体44は、図示しないが、柱体12によって各紐状体44が圧縮される圧縮状態において、対応する深溝62内においても、潰されて、周方向に伸展するように扁平化するが、その程度は浅溝60におけるより少ない。
各縦溝58(浅溝60および深溝62)は、同図(a)に示すように、外枠50の内側縁において開口する部分円を成す断面形状(紐状体44の断面形状をほぼ補完する断面形状)を有する。複数本の縦溝58は、複数枚の小形プレート54にそれぞれ形成された複数本の浅溝60(「第1部分溝」の一例)と、複数枚の大形プレート56にそれぞれ形成された複数本の深溝62(「第2部分溝」の一例)とが、それぞれ同位相で一列に縦方向に配列されることによって構成される。
深溝62の深さを「Q1」で表す一方、浅溝60の深さを「Q2」で表すと、両者間の大小関係がQ1>Q2という不等式で表現される。よって、同図(a)に示すように、深溝62は、浅溝60の断面形状より大きい部分円を成す断面形状を有するように構成される。
図13および図15(a)-(c)に示すように、各小形プレート54の内側縁に複数個の浅溝60が一列に配列されている。各浅溝60は、概して半円を成す断面形状を有するように構成される。これに対し、図12および図15(a)-(c)に示すように、各大形プレート56の内側縁に複数個の深溝62が一列に配列されている。
ここに、図15(a)は、図12に示す大形プレート56における複数の深溝62のうちの一つと、図13に示す小形プレート54における複数の浅溝60のうちの一つであって対応するものとを、図9に示す積層体を真上から見た状態で、拡大して示す平面図である。また、同図(b)は、それら深溝62および浅溝60を有する複数枚のプレート54,56を示す正面図である。また、同図(c)は、それら深溝62および浅溝60を有する複数枚のプレート54,56を示す側面断面図である。
それら浅溝60および深溝62は、いずれも、柱体12の外面に最も近い近位部64,66と最も遠い遠位部68,70とを有する。
浅溝60の近位部64は、柱体12の外面に対し、深溝62の近位部66と概して同じ相対位置にあるが、浅溝60の遠位部68は、深溝62の遠位部70より柱体12の外面に接近している
その結果、各紐状体44のうち、小形プレート54および浅溝60に対応する部分は、大形プレート56および深溝62に対応する部分より、各紐状体44が柱体12によって圧縮される状態において、同図(d)に例示するように、半径方向圧縮量が大きく、それにより、周方向に扁平化して潰れる量も大きい。
それにより、各紐状体44と柱体12との間に増幅された抗力ひいては摩擦力が発生し、さらに、各紐状体44と柱体12との間に拡大された接触領域が形成される。
<<クランプ機構>>
<基本構成>
クランプ機構80は、複数の分割体52を周方向に相互に連結して合体させる周方向クランプ部82(第1周方向クランプ部84および第2周方向クランプ部86)と、各分割体52ごとに、複数枚のプレート54,56を軸方向に相互に連結して合体させるための軸方向クランプ部88とを含んでいる。
<周方向クランプ部>
周方向クランプ部82は、図12に例示するように、例えば、クランプ位置AおよびBにおいて、棒状締結具としての長ねじまたはシャフトが、互いに隣接した2個の分割体52を周方向または斜め方向に締め付けるように構成される。
図18(a)には、複数のクランプ位置Aに使用される第1周方向クランプ部84が平面図で、同図(b)には側面図でそれぞれ示されている。
その第1周方向クランプ部84は、クランプ位置H1およびH2をそれぞれ貫通する第1長ねじ140と、クランプ位置Jを貫通する第2長ねじ142とを含み、さらに、それら長ねじ140,142を周方向に連結するアイボルト144、ナット146およびプレート148から成るセットを、軸方向に並列するように2組分含んでいる。位置Jの第2長ねじ142がアイボルト144のアイ部を貫通する。プレート148が、第2長ねじ142の反対側において、位置H1およびH2をそれぞれ貫通する2本の第1長ねじ140,140に跨って配置される。
図19(a)には、複数のクランプ位置Bに使用される第2周方向クランプ部86が平面図で、同図(b)には側面図でそれぞれ示されている。
その第2周方向クランプ部86は、クランプ位置Gを貫通する長ねじ160と、クランプ位置Fを貫通する第1アイボルト162とを含み、さらに、それら長ねじ160と第1アイボルト162とを周方向に対して斜めの方向に連結する第2アイボルト164およびナット166から成るセットを少なくとも1組分含んでいる。
第1アイボルト162のボルト部が位置Fの貫通穴を貫通してナット168によって締結され、また、同じアイボルト162のアイ部に第2アイボルト164のボルト部が貫通する。位置Gの長ねじ160が第2アイボルト164のアイ部を貫通する。
図12に示すように、クランプ位置Bにおいては、第2アイボルト164が、半径方向にも周方向にも交差する方向に延びている。この第2アイボルト164は、クランプ位置Bにおける接線方向に対して傾斜する方向に延びる前述の斜め部材として作用する。
そのようなジトメトリが第2周方向クランプ部86に与えられた結果、この第2周方向クランプ部86のおかげで、互いに隣接した2個の分割体52に、周方向力に加えて半径方向力が作用する。このことは、第2アイボルト164の軸力すなわちそれら分割体52の締付け力の一部が接触層40の半径方向力に変換されたことを意味する。
<軸方向クランプ部>
軸方向クランプ部88は、図10に例示するように、各分割体52ごとに、例えば、クランプ位置DおよびEにおいて、長ねじまたはシャフトである棒状締結具130がすべてのプレート54,56または複数枚の大形プレート56のみを貫通する状態でそれら部材を締め付けるように構成される。
具体的には、図10には、前述のように、クランプ位置Dにおいてすべてのプレート54,56がそれらを貫通する長ねじ130によって締め付けられる様子と、クランプ位置Eにおいて複数枚の大形プレート56が、それら間に所定のすきまがスペーサ134によって確保される状態で、長ねじ130によって締め付けられる様子が示されている。
<<柱体引抜方法>>
<概要>
図21には、前述のシステム10を用いて柱体12を引き抜く方法の一例が工程図で示されている。
この柱体引抜方法によれば、図5および図7に示すように、柱体12が基礎部14から段階的に引き抜かれる。
すなわち、この柱体引抜方法は、図5に示すように、ジャッキ26を駆動させることにより、チャック20に、それを柱体12と共に基礎部14から離間させる向きの軸力を衝撃的な力ではなく準静的な力として付与し、それにより、柱体12を基礎部14から部分的にまたは完全に引き抜く工程と、ジャッキ26の使用だけでは柱体12を基礎部14から引き抜くことができない場合に、図7に示すように、ホイスト30を駆動させることにより、チャック20に、それを柱体12と共に基礎部14から離間させる向きの軸力を準静的に追加的に付与し、それにより、柱体12を基礎部14から完全に引き抜く工程とを含むように構成されるのである。
1.第1工程:設備の搬入・組立
引抜作業に必要な複数の設備(図3および図4に示すベースユニット24、図3に示す取付治具22、同図に示すチャック20、図5に示すジャッキ26、図7に示すホイスト30、同図に示すチェーン120、同図に示す足場32など)が、それらの保管場所において、分解状態でトラックなどの搬送車両に搬入され、目的地である現場(例えば、設備撤去が要望される場所としての使用済み駐車場など)まで搬送される。
それら設備が現場に到着すると、それら設備が作業者によって組み立てられる。
2.第2工程:ジャッキ26による引抜作業
<概要>
この工程は、ジャッキ26を駆動させることにより、チャック20に、それを柱体12と共に基礎部14から離間させる向きの軸力を衝撃的な力(衝撃荷重)ではなく準静的な力(準静的荷重)として付与し、それにより、柱体12を基礎部14から引き抜く工程を主体とするものである。
ここに、「準静的な力(準静的荷重)」は、大きさが時間と共に変化する点で静止荷重ではなく、かつ、動的荷重のうち衝撃荷重を除くものとして定義される。「準静的な力(準静的荷重)」は、具体的には、例えば、衝撃荷重より低い速度で大きさが時間と共に変化する荷重であり、また、大きさが漸増フェーズや漸減フェーズ、保持フェーズなどを経て推移する荷重である。
<準備作業>
引抜作業に先立ち、必要な複数の設備(ベースユニット24、取付治具22、チャック20、ジャッキ26など)が現場で組み立てられる。
具体的には、図2(a)に示すように、引抜き前の準備段階においては、柱体12、チャック20および基礎部14が一体的に配置される。
具体的には、この準備段階においては、図4に示すように、まず、柱体12の上昇に伴って基礎部14が持ち上がることを抑止するために、その基礎部14を覆うように、中空のベースユニット24(「変位抑止部」の一例)が設置される。図5には、そのベースユニット24の一例が斜視図で示されている。この例においては、柱体12がベースユニット24の中央部を貫通している。
次に、ベースユニット24の上面に中空の取付治具22が、それの中央部を柱体12が貫通する状態で設置される。
続いて、チャック20が、それの組付け完了前であって柱体12をそれの直径方向両側からアクセス可能な状態で、取付治具22の上面に載置される。この状態で、チャック20が柱体12を把持するように、複数の分割体52がクランプ機構80を用いることによって締め付けられる。これにより、チャック20による柱体12の把持作業が完了する。
その後、複数個のジャッキ26が、ベースプレートの上面に、柱体12をそれの直径方向両側から挟むように対向する位置に載置される。このとき、各ジャッキ26は最大収縮位置にあり、通常、設置作業の都合上、そのジャッキ26の上端面とチャック20の下面との間にすきまが設けられる。
図12の平面視においてジャッキ26(負荷位置、ジャッキ位置)Cで示すように、各ジャッキ26は、それのラム100の上端部において、チャック20の下面に、柱体12の中心から偏心した位置に局所的に接触する。
このようにして各ジャッキ26の設置が完了すると、図5に示すように、取付治具22が柱体12から撤去される。これにより、ジャッキ26による引込み作業の準備が完了する。
<本作業>
作業者によってジャッキ26のレバー116が反復揺動させられる。それにより、ジャッキ26の揚力が増加し、このとき、図5および図11に示すように、その揚力がジャッキ26からチャック20に集中偏心荷重として作用する。
ジャッキ26は、柱体12の軸線を挟むように片側に1個ずつ対向配置されており、それら2個のジャッキ26は、一人または二人の作業者により、それぞれの揚力がほぼ互いに同期して上昇するように操作される。それらジャッキ26の共同作用により、柱体12に、基礎部14から引き抜かれる向きの軸力が付与される。複数個のジャッキ26の対向配置および同期的駆動により、それらジャッキ26のそれぞれの偏心荷重に起因した逆向きの曲げモーメントが柱体12において相殺される傾向が生じる。
引抜き前においては、ジャッキ26のラム100の上面とチャック20の下面との間にすきまがあるから、作業者がジャッキ26を駆動させると、そのすきまが消滅するまでは、例えば図22にグラフで示すように、それの揚力は、ラム100の重量および摩擦力に打ち勝つ力までは増加する。やがてジャッキ26とチャック20とが図12におけるジャッキ位置Cにおいて接触する。
ところで、引抜き前においては、柱体12と基礎部14とがそれらの表面同士において一体化している。そのため、柱体12を基礎部14から引き抜くためには、両者間の付着力(例えば、接着力、接合力など)に打ち勝つ力を柱体12に付加することが必要である。その力は、柱体12を基礎部14から分断し、剥離するために必要な力である。さらに、柱体12と基礎部14との間の最大静止摩擦係数に打ち勝つ力を柱体12に付加することも必要であると推測される。
ここに、引抜きに必要な力は、例えば、柱体12が基礎部14から引き抜かれることに対して抵抗する力、すなわち、引き抜き抵抗力(または引き抜き耐力)に打ち勝つ力である。本実施形態においては、システム10の構成上、引抜きに必要な力に、柱体12の重量とチャック20の重量との和に打ち勝つ力も含まれる。
そのため、ジャッキ26とチャック20との接触後、作業者がジャッキ26を駆動させ続けると、ジャッキ26の揚力が増加するが、それが引き抜き抵抗力に到達するまでは、チャック20も柱体12も上昇せず、静止状態にある。このフェーズにおいては、作業者によってジャッキ26のレバー116が反復揺動させられてジャッキ26の揚力が増加しても、ラム100が上昇せず、その代わりに、ジャッキ26内の作動液が圧縮されることになると推測される。
やがて、ジャッキ26の揚力が引き抜き抵抗力に打ち勝つに至ると、チャック20も柱体12も上昇を開始するが、このとき、その上昇に必要な力は両者間の動摩擦係数に打ち勝つ力と柱体12の重量とチャック20の重量との和で足りるため、ジャッキ26の揚力が減少する。その後、作業者がジャッキ26を駆動させた分だけ、チャック20も柱体12も上昇する。
やがて、ジャッキ26のラム100が最高位に到達する。このとき、柱体12は基礎部14内に残存する部分を有し、柱体12は基礎部14から完全に引き抜かれていない。なぜなら、ジャッキ26の揚程が柱体12の基礎部14内への初期の埋込み深さより低いためである。
3.第3工程:ホイスト30による追加の引抜段階
<概要>
この工程は、ジャッキ26の使用だけでは柱体12を基礎部14から完全に引き抜くことができない場合に、図7に示すように、作業者がホイスト30を駆動させることにより、チャック20に、それを柱体12と共に基礎部14から離間させる向きの軸力を準静的に追加的に付与し、それにより、柱体12を基礎部14から完全に引き抜く工程を主体とする工程である。
<準備作業>
図7に示すように、作業者により、1段目の足場32が柱体12に対する所定位置に設置される。その足場32の上板からホイスト30が吊り下げされている。ホイスト30からチェーン120が垂下し、そのチェーン120の先端にフック122がある。そのフック122は、チャック20の連結具としてのアイボルト124に連結される。
<本作業>
その後、作業者により、ホイスト30が駆動されてチェーン120が巻き上げられ、それにより、チャック20が柱体12と共に引き上げられる。それにより、柱体12が基礎部14から追加的に引き上げられ、最終的に、柱体12が基礎部14から完全に引き抜かれる。
ただし、1段目の足場32では足りない場合には、図7に二点鎖線で示すように、2段目の足場32が積み上げられ、再度、ホイスト30によってチャック20が柱体12と共に引き上げられる。
図2(b)に示すように、引抜き後の段階においては、柱体12およびチャック20が一体的に配置される一方で、柱体12が基礎部14から上方に分離して配置される。引抜き後においては、基礎部14に、柱体12がそこから引き抜かれた痕跡として、柱体12とほぼ同径の円筒穴(以下、「痕跡穴」という)が出現する。
このとき、基礎部14には、その痕跡穴から全く亀裂が延びていないかまたは亀裂が残るとしてもわずかであり、基礎部14が破壊されることはないことが期待される。
4.設備の解体・搬出
以上のようにして柱体12が基礎部14から完全に引き抜かれると、引き抜かれた柱体12が、作業者により、地上に載置される。さらに、作業者により、チャック20が解体され、それにより、チャック20が柱体12から撤去される。さらに、作業者により、引抜き作業に用いた設備としてのベースユニット24が基礎部14から撤去される。
さらに、作業者により、他の設備も解体される。すべての設備について解体作業が終了すると、作業者により、それら設備が前記搬送車両に搬入され、前記保管場所に戻される。
<<試験例>>
ここで、本発明者が実際に試験を行った例につき、柱体12、チャック20ならびに軸力付与機としてのジャッキ26およびホイスト30のそれぞれの具体的な仕様を説明する。
<柱体の仕様>
直径:114mm
厚さ:2mm
材質:鋼
全長:5.5m
地上長さ:4m
地中長さ:1.5m
<基礎部の仕様>
コンクリート製
<紐状体の仕様>
型番:PVC3-5-200-1M(JIS G 3525 1998)日興製鋼株式会社製
構造:「7本線6より中心繊維」:6本のストランドを有し、各ストランドは7本の素線より成り、複数本のストランドの中心に繊維心がある。
心材:より線
被覆層:PVC(軟質ビニル)
ロープ径(心材径):3mm
被膜外径(みかけ径):5mm
<ジャッキの仕様>
許容荷重(最大揚力):4トン
最低位:194mm
最高位:372mm
揚程:178mm
重量:3.3kg
この試験例においては、前述の実施形態と同様に、1本の柱体12についてジャッキ26が2個、並列配置されて使用されるから、合計の最大揚力は、1個のジャッキ26の最大揚力の2倍に匹敵する8トンであった。
<ホイストの仕様>
定格荷重(最大揚力):0.3トン
揚程:2.5m
この試験例においては、前述の実施形態と同様に、1本の柱体12についてホイスト30が1個使用されるから、最終的な最大揚力は0.3トンのままであった。
<試験結果>
本発明者は、それら仕様を有する設備を用いてこのシステム10を試作し、上記の仕様を有する柱体12および基礎部14に対し、現場で引抜作業を試験的に行った。
その結果、本発明者は、前述のように、ジャッキ26による引抜作業工程において、ジャッキ26の揚力が、図22に例示する時間的推移を示したと認識した。さらに、本発明者は、引抜き後の柱体12のうち、チャック20が装着されていた部分に痕跡はなく、また、前述のように、基礎部14にも、有害な痕跡はなかったことを確認した。
したがって、本発明者は、その撤去された柱体12を別の場所で、実質的な補修を施すことなく、再利用することが可能であったと認識した。さらに、本発明者は、基礎部14を、土壌を掘削することなく現場において埋め戻せば、その基礎部14を土壌から撤去せずに済む可能性もあったと認識した。
さらに、本発明者は、今回の試験により、引抜作業が低振動・低騒音で行うことができたこと、作業に必要な労力(工数および工期)が削減できたこと(作業時間は、例えば、約3時間であった)、および、作業コストが削減できたことを確認した。
<<本実施形態による他の効果>>
本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
柱体12は剛体であるが、その柱体12と接触層40との間の接触は、剛体-軟質体接触として出現し、その剛体-軟質体接触は、剛体同士の接触より、柱体12の表面に対する接触層40の表面のフィットし易さを向上させる。
<<本実施形態に対する各種の変形例>>
以上、本発明のいくつかの例示的な実施形態を説明したが、本発明は他の形態で実施することが可能である。
<チャックによって把持される部分の形状の変形例>
例えば、本実施形態においては、柱体12が、直線部を有する形式の長手部材として構成されており、その直線部に装着されるようにチャック20が構成されている。
これに対し、長手部材が曲線部を有する場合に、その曲線部に装着されるようにチャック20を構成してもよい。また、長手部材がアングル部を有する場合に、そのアングル部に装着されるようにチャック20を構成してもよい。
本実施形態によれば、前述のように、長手部材とチャック20との間の接触が、長手部材が剛体である場合に、剛体-軟質体間の接触となり、チャック20が曲線部またはアングル部というように、直線部ではない非単純な形状を有する場合でも、その形状にフィットすることが容易である。
<柱体の断面形状の変形例>
さらに、本実施形態においては、柱体12が、中空構造を有し、かつ、閉じた断面形状を有する形式の長手部材であるが、中空構造を有し、かつ、開いた断面形状を有する型式の長手部材(例えば、縦スリット入りのパイプ)がチャック20によって把持される態様で本発明を実施してもよい。
さらに、本実施形態においては、柱体12が、中空構造を有し、かつ、周方向に連続した外周面を有する形式の長手部材であるが、中空構造を有し、かつ、周方向において不連続な部分を有する外周面を有する形式の長手部材がチャック20によって把持される態様で本発明を実施してもよい。
また、中実構造を有し、かつ、周方向に連続した外周面または周方向において不連続な部分を有する外周面を有する形式の長手部材がチャック20によって把持される態様で本発明を実施してもよい。
<柱体の設置方式の変形例>
ところで、図8に示すように、本発明によって引抜き(抜去)が可能な柱体12の設置方式が少なくとも3つ、例示的に存在する。
具体的には、同図(a)には、地盤に埋設された基礎部14に柱体12が埋設されて固定される第1の設置方式が示されている。そして、本実施形態においては、柱体12が、第1の設置方式に従って設置された長手部材として構成されている。この場合、前述のように、長手部材としての柱体12が、基礎部14を土中に残したまま、その基礎部14から引き抜かれることになる。
また、同図(b)には、地盤にダイレクトに柱体12が埋設されて固定される第2の設置方式が示されている。柱体12が、第2の設置方式に従って設置された長手部材にチャック20が装着される態様で本発明を実施してもよい。この場合、長手部材としての柱体12が、単独で、土壌から引き抜かれることになる。
また、同図(c)には、地盤に埋設された基礎部14に柱体12が、それの底端に拡底部16(柱体12の本体部の断面形状から突出する形状を有する部材など)が基礎部14から露出する姿勢で接合された状態で、埋設されて固定される第3の設置方式が示されている。
また、第3の設置方式に従って設置された長手部材にチャック20が装着される態様で本発明を実施してもよい。この場合、長手部材としての柱体12(拡底部16が付着している)が、基礎部14と共に、土壌から引き抜かれることになる。
<接触層の構造の変形例>
本実施形態においては、前述のように、接触層40が、図17(a)および(b)に示すように、各々円形断面を有する複数本の紐状体44が、柱体12の周方向に離散的に配置される複数の離散体として、柱体12と同心の仮想円筒面に沿って並んだ構造を有する。
これに代えて、接触層40は、同図(c)および(d)に示すように、一例として、各々長円断面を有する複数本の紐状体44が、柱体12の周方向に離散的に配置される複数の離散体として、柱体12と同心の仮想円筒面に沿って並んだ構造を有する態様で本発明を実施してもよい。
また、接触層40は、同図(e)に示すように、別の例として、柱体12の周方向に連続した1本の筒状体(スリーブなど)が、柱体12と同心の仮想円筒面に沿って軸方向に延びる構造を有する態様で本発明を実施してもよい。
<紐状体の配列方式の変形例>
本実施形態においては、複数本の紐状体44が、柱体12と実質的に同心である仮想筒状面に沿ってそれの軸線に対して平行に並列的に延びるように配列されている。
これに対し、それら紐状体44が前記仮想筒状面に沿ってそれの軸線の回りをらせん状に並列的に延びるように配列される態様で本発明を実施してもよい。この態様によれば、それら紐状体44と柱体12との間に同じ接触面積を達成するために必要な紐状体44の本数を削減することが容易となる。
<柱体の断面形状の変形例>
本実施形態においては、柱体12が、円柱体(中実)または円筒体ないしは丸パイプ(中空)であるが、それらに代えて、例えば、図20に例示するように、角柱体(中実)または角筒体ないしは角パイプ(中空)として柱体12を構成してもよい。
具体的には、同図(a)は、柱体12の別の例として四角柱または四角筒である場合に適したチャック20を示す平面図であり、同図(b)は、同図(a)に示す接触層40を拡大して示す平面図である。この場合、「仮想筒状面」として「仮想四角筒面」が採用される。
<チャックを上昇させる駆動方式の変形例>
本実施形態においては、柱体12の引抜工程のうちの柱体12の引き抜き抵抗力が大きい初期段階において、ジャッキ26(高出力・低揚程または高出力・ショートストローク)が第1の駆動源として用いられ、そのジャッキ26でチャック20を押し上げることによってそのチャック20が上昇させられる。
その後、引き抜き抵抗力が低下した後続段階において、ジャッキ26に代えてホイスト30(低出力・高揚程または低出力・ロングストローク)が第2の駆動源として用いられ、そのホイスト30でチャック20を引き上げることによってそのチャック20が上昇させられる。
すなわち、本実施形態においては、
(1)駆動源の許容負荷および最大ストロークが駆動源の種類に応じて異なるという事情、具体的には、例えば、ジャッキ26は許容負荷(最大出力、最大揚力など)の大きさに関してはホイスト30より有利であるが、最大ストローク(揚程など)の長さに関してはホイスト30より不利であるという事情(性能的に、互いに欠点を補うという相補的な関係にある2種類の駆動源)と、
(2)引抜に必要な負荷の大きさおよび揚程の長さが引抜工程の段階に応じて異なるという事情、具体的には、例えば、初期段階においては負荷は大きいことが要求されるが揚程は短くてもよいのに対し、後続段階においては揚程は長いことが要求されるが負荷は小さくてもよいという事情と
に鑑み、複数種類の駆動源が、必要な負荷の大きさおよび最大ストロークの長さに応じて、すなわち、引抜工程の段階に応じて使い分けられるのである。
これに対し、引抜工程の各段階(例えば、前記初期段階と前記後続段階)において要求される負荷の最大値とストロークの最大値とを引抜工程の全段階を通じて達成可能な1種類の駆動源を用いれば、引抜工程の全段階を通じて1種類の駆動源を用いるだけで柱体12の引込みを完遂できる。
例えば、その駆動源として高性能な引上機としてのホイスト30またはクレーンなどを採用し、その駆動源によって全工程を通じてチャック20を引き上げることにより、駆動源の切り換えなしで柱体12を引き抜く態様で本発明を実施してもよい。
ところで、本実施形態においては、柱体12の引抜きに先立ち、その柱体12にチャック20を装着するために、作業者は、そのチャック20の複数の分割体52を水平面内において柱体12に接近させる。そのため、チャック20を利用して柱体12の引抜きを行うために、各分割体52が水平移動するためのスペースないしはすきまが必要である。
よって、その柱体12の近くに、図23に例示するような障害物(壁、近隣の建築物など)が存在するような撤去現場においては、作業者がチャック20を柱体12に装着することが困難であるかまたは不可能である。
<別の実施形態>
この問題を解決するために、チャック20を、例えば、図24に例示する非対称ヒンジ組立式チャック170として構成してもよい。
このチャック170は、例えば、平面視において、柱体12が障害物に近いためにすきまが狭い奥側において幅狭または小形となり、柱体12が障害物から遠いためにすきまが広い手前側において幅広または大形となるような非対称形状を有する。
さらに、このチャック170は、例えば、奥側に位置する幅狭の基端部172と、それにヒンジ173によって結合される一対のアーム部174,174であって柱体12を直径方向両側から挟むことが可能であるものと、それらアーム部174,174の間においてそれらアーム部174,174に対してスライド可能なスライド部176とを含むように構成される。
さらに、このチャック170は、例えば、基端部172の内面と、一対のアーム部174,174のそれぞれの内面と、スライド部176の内面とにそれぞれ、1つの円周面が分割された複数の部分円筒面を有する。それら部分円筒面に前述の接触層40と同様な接触層178が構成される。
さらに、この例においては、作業者が、柱体12の奥側を通過するようにチャック170を展開状態で配置する。
その後、作業者は、一対のアーム部174,174を互いに接近させて柱体12を一直径方向Uに圧迫するとともに、基端部172とスライド部176とを互いに接近させて柱体12を、直径方向Uに直角な別の直径方向Vに圧迫することにより、チャック170を柱体12に全周的に弾性的にかつ非侵襲的に押し付ける。
この例においては、基端部172と一対のアーム部174,174とが、一対のレバーが基端部に、それぞれ、一平面(例えば、水平面など)上において揺動可能に連結されたレバー機構であって、接触層178を背後から支持するものを構成すると解釈することが可能である。
なお付言するに、以上例示したいくつかの実施形態においては、チャックにおいて高摩擦力と非侵襲的接触とが両立することが指摘されているが、引き抜かれた柱体12の再利用が要求されない場合には、チャックにおいて非侵襲的接触は実現されなくてもよい。
以上、本発明の例示的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の概要]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。