JP7291993B2 - 車両のバッテリ固定構造 - Google Patents

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Description

本発明は、車両に搭載されるバッテリを固定する構造に関する。
特許文献1,2は、自動車のエンジンルーム内にバッテリを固定する構造として、直方体状のバッテリを車体に固定される台座部に載置すると共に、この台座部に門型の拘束部材を取り付ける構造を開示する。
上述の門型の拘束部材を構築する部材として、特許文献1,2は、押さえ部又は押さえ板部と、ロッド部材とを開示する。押さえ部等はバッテリの上面側に配置される。ロッド部材は、押さえ部等と台座部とを連結し、バッテリの側面に沿って配置される。ロッド部材の上端部はねじ切りされており、押さえ部等に設けられた孔を通って突出した箇所にナットが締め付けられる。
特開2007-131158号公報 特開2017-124663号公報
バッテリの周囲にワイヤーハーネスが配置されることがある。このワイヤーハーネスにおける通常時の配置位置は予め設定されている。しかし、正面衝突や側方衝突等が生じた際には、ワイヤーハーネスは、所定の配置位置から変位する。この変位状態を正確に予想することは難しい。そのため、ワイヤーハーネスが上方に変位すると、バッテリの上面側に配置されている上述の押さえ部又は押さえ板部のエッジに接して、損傷したり切断されたりすることが考えられる。従って、正面衝突時や側方衝突時等といったワイヤーハーネスが大きく変位し得る状況に対して、バッテリの周囲に配置されるワイヤーハーネスにおける上方への変位を抑制できることが望まれる。
そこで、本発明の目的の一つは、正面衝突時等でバッテリの周囲に配置されるワイヤーハーネスの損傷を防止できる車両のバッテリ固定構造を提供することにある。
本発明の一態様に係る車両のバッテリ固定構造は、
バッテリが載置される台座部と、
前記バッテリの上側の角部に配置されるブラケットと、
前記台座部と前記ブラケットとを連結するロッド部とを備え、
前記ブラケットは、
前記ロッド部の上端部が挿通される孔と、
前記孔の開口縁から前記バッテリに対向する車両部材に向かって延設される張出部とを備え、
前記張出部は、
車両上方からの平面視において、前記バッテリと前記車両部材との間に配置されるワイヤーハーネスの少なくとも一部に重複して配置される。
上記の車両のバッテリ固定構造では、ブラケットの張出部がワイヤーハーネスの少なくとも一部を上方から覆うように配置される。そのため、正面衝突時や側方衝突時等において、バッテリが相対的に車両部材側に変位すると、ワイヤーハーネスの一部は、ロッド部と車両部材とブラケットの張出部とで囲まれる空間に拘束される。この拘束状態では、ワイヤーハーネスとブラケットのエッジとが接触し難い、好ましくは実質的に接触しない。従って、上記の車両のバッテリ固定構造は、正面衝突時や側方衝突時等において、バッテリの周囲に配置されるワイヤーハーネスがブラケットによって、損傷したり破断されたりすることを防止できる。
また、上記の車両のバッテリ固定構造は、張出部を有するように、ブラケットの一部を大きくすれば構築できる。このような上記の車両のバッテリ固定構造は、従来の構造に比較して部品点数及び構築手順の増加を招き難い点で、製造性にも優れる。製造コストの増大も小さい。
実施形態1に係る車両のバッテリ固定構造を車両上方からみた平面図である。 実施形態1に係る車両のバッテリ固定構造を左前方からみた斜視図である。 実施形態1に係る車両のバッテリ固定構造を示す斜視図である。 実施形態1に係る車両のバッテリ固定構造に備えられるブラケットの変位状態を説明する図である。
[実施形態1]
以下、図1~図4を参照して、本発明に係る車両のバッテリ固定構造を具体的に説明する。
図中の同一符号は、同一名称物を示す。図中の「FR」は車両の前方、「RR」は車両の後方、「LH」は車両の左方、「RH」は車両の右方、「UP」は車両の上方、「LWR」は車両の下方を示す。以下、単に、前方、後方等と呼ぶ。左右方向は、車幅方向に相当する。
(概要)
実施形態1に係る車両のバッテリ固定構造1は、代表的には、自動車の車体の前方に設けられるエンジンルーム100に構築されて、車載電装品に電力供給を行うバッテリ10を車体に固定することに利用される。
バッテリ10は、代表的には、直方体状である(図2)。バッテリ10の平面形状は、図1に示すように、車両上方からの平面視において、長方形状である。
バッテリ10は、台座部2と、台座部2に取り付けられる門型の拘束部3とによって支持される(図1,図2)。台座部2は、図示しない適宜な取付金具によって車体に固定される。門型の拘束部3は、拘束部3の各下端部が台座部2に取り付けられることによって、台座部2に一体化される(図3)。なお、図3は、バッテリ10を省略している。
特に、実施形態1の車両のバッテリ固定構造1は、拘束部3を構成する部材として、バッテリ10の上側の角部に配置されるブラケット31を備える(図1,図2)。ブラケット31は、バッテリ10から離れる側に張り出した箇所である張出部315を備える。張出部315は、図1に示すように、車両上方からの平面視において、バッテリ10と、バッテリ10の周囲に配置される車両部材5との間に配置されるワイヤーハーネス8の少なくとも一部に重複して配置される(図4も参照)。張出部315は、衝突時等においてワイヤーハーネス8が上方に変位することを抑制する。
以下、バッテリ10が載置される箇所の周囲の構造、台座部2、拘束部3を順に説明する。次に、ブラケット31の張出部315を詳細に説明する。
(周囲の構造)
本例では、バッテリ10は、長方形状の上面11の長辺に沿った方向が車幅方向に対応し、上面11の短辺に沿った方向が前後方向に対応するように配置される。バッテリ10の周囲の車両部材5のうち、例えば、バッテリ10より後方に配置される車両部材5として、車体を構成するサスペンションタワー、ダッシュパネル等が挙げられる。図1等は、車両部材5としてサスペンションタワーを例示する。バッテリ10は、側面12のうち、後方の面と車両部材5との間に所定の間隔をあけて、車両部材5に対向して配置される。本例では、バッテリ10は、車両部材5より前方に配置されて、バッテリ10における上述の後方の面と車両部材5との間には、所定の間隔に応じた大きさを有する空間が設けられる。
バッテリ10の後方に設けられる空間、即ちバッテリ10における上述の後方の面と車両部材5との間に設けられる空間には、ワイヤーハーネス8が配置される。つまり、本例では、ワイヤーハーネス8の前方にバッテリ10が配置され、ワイヤーハーネス8の後方に車両部材5が配置される。
ワイヤーハーネス8は、代表的には複数の電線束であり、車載電装品と、電源であるオルタネータ又はバッテリ10とに接続されて、電力供給路や信号伝送路に利用される。図1等は、ワイヤーハーネス8に備えられる電線数が2本である場合を示すが、適宜変更できる。電線数は1本でもよい。
本例では、ワイヤーハーネス8の一部に拘束バンドが装着されている。この拘束バンドと取付金具50とが接続される。取付金具50は、車両部材5であるサスペンションタワーに固定されている。そのため、ワイヤーハーネス8の一部は、取付金具50を介して、車両部材5に支持される。従って、正面衝突等が生じていない通常時では、ワイヤーハーネス8がバッテリ10と車両部材5との間に配置された状態が維持される。
(台座部)
台座部2は、バッテリ10の底面からバッテリ10を支持する部材である。本例の台座部2は、台板部21と、側壁部22とを備える。
台板部21には、バッテリ10が載置される(図2)。代表的には、台板部21上にトレー20が載置され、トレー20上にバッテリ10が載置される。そのため、トレー20及び台板部21の平面形状は、直方体状のバッテリ10の底面に対応して、長方形状である(図1)。また、トレー20及び台板部21は、バッテリ10の底面より若干大きい平面積を有する。
側壁部22は、図2,図3に示すように、台板部21の周縁から上方に向かって立設される。側壁部22は、台板部21に載置されたバッテリ10の側面12のうち、下方の領域を囲む。
側壁部22は、台板部21の平面形状に対応して、概ね長方形の枠状である(図1)。側壁部22のうち、上記長方形の長辺に沿った箇所の一部には、拘束部3のロッド部33が取り付けられる(図2,図3)。以下、側壁部22のうち、上記長辺に沿った箇所を長辺壁と呼ぶ。本例では、長辺壁は、車幅方向に沿って配置される。長辺壁におけるロッド部33が取り付けられる箇所は、長辺壁の長手方向の中央及びその近傍の箇所である。
本例では、側壁部22における二つの長辺壁のうち、前方に配置される長辺壁は、長辺壁の表裏に貫通する孔25を備える。孔25には、二つのロッド部33のうち、後述する係止ロッド35のフックが引っ掛けられる。後方に配置される長辺壁には、後述する固定ロッド34が溶接等によって固定される。後方の長辺壁において、固定ロッド34が固定される箇所の高さは、後方の長辺壁における長手方向の端部の高さ及び前方の長辺壁の高さより高い。また、後方の長辺壁において、固定ロッド34が固定される箇所の長辺方向に沿った長さは、固定ロッド34の下端側の領域の長さに概ね対応している。そのため、溶接箇所が大きく確保される。
台座部2は、代表的には、金属板のプレス成形体である。そのため、台座部2は、重量物であるバッテリ10を安定して支持できる。
(拘束部)
拘束部3は、バッテリ10を上方から台座部2側に押さえる部材である。拘束部3は、上述のように門型に構成されて、台座部2に載置されたバッテリ10の上面11と、側面12のうち対向する二面とを囲む。本例の拘束部3はバッテリ10における上下方向の位置、及び前後方向の位置を規制する。
図2に示すように、本例の拘束部3は、二つのブラケット31,32と、二つのロッド部33と、連結部36と、二つのナット37,38とを備える。ブラケット31,32は、バッテリ10の上側の角部にそれぞれ配置される。各ロッド部33は、台座部2とブラケット31,32とを連結する。連結部36は、両ブラケット31,32間を連結する。ナット37,38は、各ロッド部33の上端部に取り付けられる。
〈ブラケット〉
本例のブラケット31,32は、いわば帯材が階段状に成形された部材であり、上段部310と、下段部311と、連結壁部312とを備える。
上段部310は、バッテリ10の上面11に接して配置され、上面11を押さえる。
下段部311は、ロッド部33が挿通される孔31h(図4)を備える。孔31hは、下段部311の表裏に貫通する。下段部311は、孔31hから突出されるロッド部33の上端部に取り付けられるナット37,38を配置可能な大きさを有する。
連結壁部312は、上段部310と下段部311とを連結し、バッテリ10の側面12に沿って配置される。
本例では、ブラケット31,32は、バッテリ10の上面11において前方の長辺の中央及びその近傍、後方の長辺の中央及びその近傍にそれぞれ配置される。つまり、ブラケット31,32は、バッテリ10の上側かつ後方の角部と、上側かつ前方の角部とに対向配置される。後方の角部は、バッテリ10の上面11と、バッテリ10の側面12のうち、上面11の長辺に沿った後方の面とがつくる角部である。前方の角部は、バッテリ10の上面11と、側面12のうち上記長辺に沿った前方の面とがつくる角部である。
〈ロッド部〉
各ロッド部33は、上下方向に沿って配置される。本例では、両ロッド部33は、台座部2に載置されたバッテリ10の側面12のうち前後の二面を挟む(図1)。
各ロッド部33の上端部は、ブラケット31,32との連結端である。各ロッド部33の上端部は、ブラケット31,32の孔31hを挿通した状態でナット37,38が締め付けられることで、ブラケット31,32に連結される。
各ロッド部33の下端部は、台座部2との連結端である。本例では、各ロッド部33における台座部2との連結構造が異なる。一方のロッド部33である固定ロッド34は、台座部2に溶接によって固定される。他方のロッド部33である係止ロッド35は、下端部にフックを備えて、台座部2に係止される。
詳しくは、固定ロッド34は、図3に示すように上部ロッド341と、下部ブラケット342とを備える。上部ロッド341と下部ブラケット342の上方領域とは溶接によって固定される。下部ブラケット342の下方領域と台座部2の側壁部22、ここでは上述の後方の長辺壁とは溶接によって固定される。いわば、固定ロッド34は、台座部2から上方に向かって突出するように設けられており、この突出状態が維持される。
本例の上部ロッド341は、I字状の丸棒材である。上部ロッド341の先端部は、ねじ切りされており、この先端部にはナット37が締め付けられる。本例の下部ブラケット342は、帯材が四角樋状に成形された部材である。下部ブラケット342のエッジがバッテリ10側、即ちワイヤーハーネス8とは離れる側に配置されるように、下部ブラケット342は台座部2に固定される。ここでは、下部ブラケット342のエッジは、前方に向いている。
係止ロッド35は、上述のようにねじ切りされた上端部と、J字状のフックに成形された下端部とを備える。係止ロッド35のフックは、台座部2の側壁部22、ここでは上述の前方の長辺壁に設けられた孔25に係止される。フックの先端は、バッテリ10から離れる側、ここでは前方に向いている。
〈連結部〉
連結部36は、ブラケット31,32の上段部310と共に、バッテリ10の上面11を押える。本例の連結部36は、棒状の部材であり、各端部がブラケット31,32に溶接等によって固定される。そのため、ブラケット31,32と連結部36とは一体物として取り扱える。本例では、図1に示すように、連結部36の軸方向が前後方向に沿うように、連結部36は上面11に配置される。
〈構成材料〉
拘束部3を構成する各部材の構成材料はいずれも、代表的には、金属が挙げられる。金属は強度に優れるため、金属からなる拘束部3は、重量物であるバッテリ10を安定して支持できる。また、金属は、溶接、ねじ切り、プレス成形等を行える。例えば、ブラケット31,32は、代表的には、金属板を所定の形状にプレス成形等することで容易に製造できる。
〈張出部〉
二つのブラケット31,32のうち、ワイヤーハーネス8が近接して配置される後方のブラケット31は、張出部315を備える。張出部315は、上述の下段部311の一部であり、下段部311に設けられる孔31hの開口縁から、バッテリ10に対向する車両部材5に向かって延設される。図1,図2は、下段部311における張出部315の境界線を二点鎖線で仮想的に示す。
本例の張出部315は、孔31hの開口縁から、バッテリ10に対して左斜め後方に位置する車両部材5に向かって延びている。このような張出部315を含むブラケット31の下段部311は、前後方向に対して、左斜め後方に延びる舌片状に設けられている。
また、図4に示すように、本例のブラケット31は、フランジ部313を備える。フランジ部313は、張出部315より上方に配置される。本例では、ブラケット31は、張出部315の周縁から上方に向かって立設される壁部を備える。フランジ部313は、この壁部の周縁から外方、ここでは後方に向かって延設される。また、本例では、フランジ部313は、張出部315を含めて、下段部311の全体に設けられている。
ここで、下段部311は、ナット37,38を配置可能であり、かつ小型化、軽量化の観点から、通常、ナット37,38の外径より若干大きい程度に調整される。本例では、前方に配置されるブラケット32の下段部311において、係止ロッド35から突出する大きさは、ナット38の半径より若干大きい程度に調整されている。
これに対し、張出部315において、固定ロッド34に備えられる上部ロッド341から車両部材5に向かって突出する大きさ、即ち突出量は、ナット37の半径より格段に大きい。本例では、図1に示すように、平面視において、フランジ部313のエッジ314のうち、張出部315の周縁から延設される箇所が車両部材5に近接して配置されるように、上記突出量が調整されている。
本例では、上述の突出量は、平面視において、ワイヤーハーネス8を構成する電線のうち、最も車両部材5に近接して配置される電線の少なくとも一部に重複する大きさである。また、本例では、孔31hの開口縁からエッジ314までの長さであって、車両部材5に向かう方向に沿った長さは、ナット37の外径以上である。
〈構築手順〉
門型の拘束部3は、例えば、以下のようにして構築する。
台座部2にバッテリ10を載置した状態において、バッテリ10の後方に立設される固定ロッド34の上端部をブラケット31の孔31hに挿通する。その結果、ブラケット31がバッテリ10の上側かつ後方の角部に配置される。本例では、ブラケット31,32と連結部36とが一体化されているため、自動的に、ブラケット32がバッテリ10の上側かつ前方の角部に配置され、連結部36がバッテリ10の上面11に配置される。
次に、ブラケット32の下面から、係止ロッド35の上端部をブラケット32の孔31hに挿通させる。また、係止ロッド35の下端部のフックを台座部2の孔25に引っ掛ける。
次に、ブラケット31,32の孔31hから突出する固定ロッド34,係止ロッド35の上端部にナット37,38を締め付ける。
以上の工程により、門型の拘束部3が組み立てられる。また、ナット37,38の締結によって、ブラケット31,32及び連結部36は、バッテリ10を台座部2側に押さえる。
構築された拘束部3において、ブラケット31に備えられる張出部315は、バッテリ10の後方に位置する車両部材5に向かって突出するように配置される。
(衝突時の挙動)
次に、主に図4を参照して、実施形態1の車両のバッテリ固定構造1について、正面衝突時の挙動を説明する。図4は、通常時を実線で示し、正面衝突時を二点鎖線で仮想的に示す。
通常時、バッテリ10の後方であって、バッテリ10と車両部材5との間に配置されるワイヤーハーネス8の少なくとも一部、本例では概ね全部は、ブラケット31に備えられる張出部315によって、上方から覆われる。いわば、ワイヤーハーネス8は、実線で示すように、バッテリ10の側面12のうち後方の面と、後方の車両部材5と、上方の張出部315とで囲まれる空間に収納される。更には、ワイヤーハーネス8は、バッテリ10における上記後方の面より後方に位置するロッド部33、本例では固定ロッド34と、車両部材5と、張出部315とで囲まれる空間に収納される。
正面衝突時、バッテリ10が相対的に車両部材5側に変位すると、二点鎖線で示すように、上述の空間における前後方向の大きさが狭められる。そのため、上述の空間に配置されるワイヤーハーネス8は、固定ロッド34と、車両部材5と、張出部315とで囲まれる空間に拘束される。
本例では、更に、正面衝突時にブラケット31が相対的に車両部材5側に変位すると、張出部315より先に、張出部315より上方に位置するフランジ部313のエッジ314が車両部材5に接する。そのため、ブラケット31は、車両部材5によって後方への変位が妨げられると共に押し上げられて、上方に向かって変形する。即ち、フランジ部313は、相対的に上方に変位する。その結果、フランジ部313のエッジ314、即ちブラケット31のエッジ314は、ワイヤーハーネス8から遠ざかるように上方に変位する。
(主な効果)
実施形態1の車両のバッテリ固定構造1は、上述の台座部2とブラケット31とロッド部33とを備え、更にブラケット31が張出部315を備える。そのため、実施形態1の車両のバッテリ固定構造1は、正面衝突時、張出部315によって、上述のようにワイヤーハーネス8を拘束して、ワイヤーハーネス8が上方に変位することを抑制できる。従って、ブラケット31のエッジ314とワイヤーハーネス8とが接触し難い、好ましくは実質的に接触しない。このような実施形態1の車両のバッテリ固定構造1は、正面衝突時に、バッテリ10の周囲に配置されるワイヤーハーネス8がブラケット31のエッジ314によって損傷したり切断されたりすることを防止できる。そのため、ワイヤーハーネス8が断線されることで電動式ロックが解除できない等といった事態が生じることが防止される。
本例の車両のバッテリ固定構造1は、張出部315とフランジ部313とが上下の段差形状であることで、上述のように衝突時等でエッジ314がワイヤーハーネス8から遠ざかることからも、エッジ314とワイヤーハーネス8との接触を回避し易い。
また、実施形態1の車両のバッテリ固定構造1は、張出部315を備えるようにブラケット31を大きく設計すれば、車両のバッテリ固定構造1を容易に構築できるため、製造性に優れる上に、製造コストの増大も少ない。即ち、従来の構造に対して、部品点数及び構築手順の増加が少ない又は実質的に無い。
更に、本例の車両のバッテリ固定構造1は、以下の効果を奏する。
(1)ワイヤーハーネス8が近接して配置されるロッド部33が固定ロッド34であるため、以下の三点によって、ロッド部33がワイヤーハーネス8を傷つけることを抑制できる。
・ フックを有する係止ロッド35に比較して、固定ロッド34からワイヤーハーネス8側に向かって突出する箇所が少ない、本例では実質的に無い。そのため、ワイヤーハーネス8が変位した際に、係止ロッド35のフックがワイヤーハーネス8に刺さること等が防止される。
・ 上部ロッド341が丸棒材である。そのため、上部ロッド341がワイヤーハーネス8に接触しても、ワイヤーハーネス8を傷つけ難い。
・ 下部ブラケット342のエッジがワイヤーハーネス8とは反対側に向いている。そのため、下部ブラケット342のエッジとワイヤーハーネス8とが接触し難い。
(2)ナット37,38が締め付けられていなくても、固定ロッド34と台座部2との連結状態が安定して維持される。そのため、両ロッド部33が係止ロッド35である場合に比較して、拘束部3が構築され易い。
(3)ブラケット31,32と連結部36とが別部材であり、溶接等によって一体化される。そのため、ブラケット31,32は、所定の形状に成形し易く、製造性に優れる。
本発明は、これらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
車両のバッテリ固定構造1は、実施形態1で説明した正面衝突時だけでなく、側方衝突時やオフセット衝突時等において、バッテリ10と車両部材5との間に配置されるワイヤーハーネス8の損傷防止に勿論適用できる。
この場合、バッテリ10、車両部材5及びワイヤーハーネス8の配置位置に応じて、張出部315を設けるとよい。
例えば、バッテリ10の右方及び左方の少なくとも一方に車両部材5及びワイヤーハーネス8が配置される場合、バッテリ10と車両部材5間のワイヤーハーネス8の少なくとも一部に重複して張出部315が配置されるようにブラケット31を構成する。この形態は、側方衝突時、実施形態1で説明したようにロッド部33と、車両部材5と、張出部315とで囲まれる空間にバッテリ10の側方に配置されるワイヤーハーネス8を拘束できる。
その他、実施形態1に対して、以下の少なくとも一つの変更が可能である。
(1)二つのブラケット31,32がいずれも張出部315を備える。
(2)二つのロッド部33がいずれも係止ロッド35である。
(3)ブラケット31は、フランジ部313を備えていない。
(4)ブラケット31,32と連結部36とが一体成型物である。例えば、金属製の帯材をプレス成形等によって、所定の形状に成形することが挙げられる。
1 車両のバッテリ固定構造
2 台座部、20 トレー、21 台板部、22 側壁部、25 孔
3 拘束部、31,32 ブラケット、33 ロッド部、36 連結部
34 固定ロッド、35 係止ロッド、37,38 ナット
310 上段部、311 下段部、312 連結壁部
313 フランジ部、314 エッジ
315 張出部、31h 孔
341 上部ロッド、342 下部ブラケット
5 車両部材、50 取付金具
8 ワイヤーハーネス
10 バッテリ、11 上面、12 側面
100 エンジンルーム

Claims (2)

  1. バッテリが載置される台座部と、
    前記バッテリの上側の角部に配置されるブラケットと、
    前記台座部と前記ブラケットとを連結するロッド部とを備え、
    前記ブラケットは、
    前記ロッド部の上端部が挿通される孔と、
    前記孔の開口縁から前記バッテリに対向する車両部材に向かって延設され、前記車両部材に近接する張出部とを備え、
    前記車両部材は、前記台座部とは独立した部材に設けられており、
    前記張出部は、
    車両上方からの平面視において、前記バッテリと前記車両部材との間に配置されるワイヤーハーネスの少なくとも一部に重複して配置される、
    車両のバッテリ固定構造。
  2. 前記ブラケットは、前記張出部の周縁から上方に向かって立設される壁部と、前記壁部の周縁から外方に向かって延設されたフランジ部とを備える、請求項1に記載の車両のバッテリ固定構造。
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