JP7291453B1 - スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池、水処理システム、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の運転方法、および、水処理システムの運転方法 - Google Patents

スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池、水処理システム、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の運転方法、および、水処理システムの運転方法 Download PDF

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Abstract

【課題】損失水頭を低下でき、且つ、スラッジ・ブランケット層内における上昇流速を稼ぐことができるスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池、水処理システム、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の運転方法、および、水処理システムの運転方法を提供すること。【解決手段】スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池4は、平面視において矩形状とされ、且つ、底面が水平とされ、仕切り壁42で沈澱部43と集泥ホッパー部44とに分割された躯体41と、スラッジ・ブランケット層S高の全てまたは一部の底部構造を逆錘形または逆錘台形とし、沈澱部43の底面全体に設置される小形水槽45と、小形水槽45の近傍に被処理水を流入させる被処理水流入配管46と、スラッジ・ブランケット層Sの上方に形成される清澄分離ゾーンC内を上昇する沈澱水を集水する集水装置47と、を備え、沈澱部43において、小形水槽45の底部近傍の上昇流速が最も大きい。【選択図】図1

Description

本発明は、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池、水処理システム、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の運転方法、および、水処理システムの運転方法に関する。
従来、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池が知られている(例えば、特許文献1等)。特許文献1では、被処理水中の懸濁粒子をフロック化するスラッジ・ブランケット槽の上部に配置され開口部を有する複数の板から構成される傾斜板において、開口部の下側辺の断面の先端形状として傾斜方向に沿って、45°以下の片側における交差状態の形成、又は90°以下の両側における交差状態の形成、又は半円形状の突出状態の形成、又は傾斜方向を長軸とする半楕円形状による突出状態の形成を採用している。これにより、特許文献1では、傾斜板下側端の剪断力により傾斜板抑留面に向かう渦流が輸送する3μm以上微フロックと傾斜板抑留面上の微フロックとの衝突により沈澱水に流出する3μm以上微フロックの流出個数の低減できるが、傾斜板最上端および傾斜板の開口部の下側辺における双子渦の発生に伴う下側辺上部へのスラッジの堆積が沈澱池水面にまで成長するので、沈澱水への流出を阻止することができるようにしている。
特許第6792739号
ところで、特許文献1のようなスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池を採用する水処理システムでは、当該スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の後段に粗ろ過池と砂ろ過池から構成される2段ろ過システムを採用することにより、ろ過水濁度をより低減したいとの要望がある。ただし、このような粗ろ過池と砂ろ過池とが直列的に配置される2段ろ過システムを採用する場合、粗ろ過池および砂ろ過池に通水させるための動水勾配が必要になるが、このような動水勾配を稼ぐために、例えば、ポンプ等で揚水してしまうと多大な電力を消費してしまうことから望ましくない。そのため、水処理システムの取水時点の位置水頭を利用して砂ろ過池まで通水することが望ましいことから、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池における損失水頭はできるだけ小さくすることが望まれる。ただし、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池における損失水頭を小さくするために、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池内の通水速度を低下させてしまうと、スラッジ・ブランケット層内における上昇流速を稼ぐことができず、形成されたフロックが沈澱してしまうため、良好なスラッジ・ブランケット層が維持できないといった問題があった。
本発明の目的は、損失水頭を低下でき、且つ、スラッジ・ブランケット層内における上昇流速を稼ぐことができるスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池、水処理システム、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の運転方法、および、水処理システムの運転方法を提供することにある。
本発明のスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池は、平面視において矩形状とされ、且つ、底面が水平とされた躯体であって、前記躯体と同一高さの仕切り壁で沈澱部と集泥ホッパー部とに分割された前記躯体と、スラッジ・ブランケット層高の全てまたは一部の底部構造を逆錘形または逆錘台形とし、前記沈澱部の底面全体に設置される小形水槽と、前記小形水槽の近傍に被処理水を流入させる被処理水流入配管と、前記スラッジ・ブランケット層の上方に形成される清澄分離ゾーン内を上昇する沈澱水を集水する集水装置と、を備え、前記沈澱部において、前記小形水槽の底部近傍の上昇流速が最も大きいことを特徴とする。
本発明では、沈澱部の底面全体に小型水槽を設置し、当該小型水槽の形状を逆錘形または逆錘台形とすることにより、小形水槽の底部に向かうに従って当該小型水槽の容量が小さくなるので、小形水槽の底部近傍の上昇流速を最も大きくすることができる。そのため、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池内の通水速度を低下させたとしても、スラッジ・ブランケット層が形成される小型水槽内の上昇流速を大きくすることができる。したがって、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池における損失水頭を低下でき、且つ、スラッジ・ブランケット層内における上昇流速を十分に稼ぐことができる。
本発明のスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池において、前記集泥ホッパー部は、前記仕切り壁によって所定寸法に分割されていることが好ましい。
この構成では、仕切り壁によって沈澱部と分割された集泥ホッパー部が複数設けられるため、の余剰フロックを高濃度に濃縮でき、排泥回数を削減することができる。
本発明のスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池において、平面視において、前記小形水槽の底部の面積は、前記小形水槽の天端の全表面積の1/10以下であることが好ましい。
この構成では、小形水槽の底部の面積が当該小形水槽の天端の全表面積の1/10以下であるので、逆錘形または逆錘台形とされた小型水槽の側面の傾斜を急峻とすることができる。そのため、小形水槽の底部に向かうに従って当該小型水槽の容量が顕著に小さくなるので、小型水槽の底部近傍の上昇流速を大きくすることができ、小型水槽底部への既存フロックの沈澱・堆積を抑制できる。
本発明のスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池において、前記被処理水の流入配管を介して前記沈澱部の前記小形水槽に流入した後、前記集水装置によって集水されるまでの前記被処理水の損失水頭は1.2m以下であり、且つ、前記小形水槽の天端面より上の前記被処理水の上昇流速が3.6m/hr以下であることが好ましい。
この構成では、沈澱部における被処理水の損失水頭が1.2m以下であり、且つ、小形水槽の天端面より上の被処理水の上昇流速が3.6m/hr以下であるので、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池における損失水頭を低下でき、且つ、スラッジ・ブランケット層内における上昇流速を十分に稼ぐことができる。
本発明のスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池において、前記小形水槽の前記被処理水の流入に伴う乱流を所定空間内に留めるための阻流板を備えることが好ましい。
この構成では、小型水槽は被処理水の流入に伴う乱流を所定空間内に留めるための阻流板を備えるので、小型水槽内において発生した乱流の剪断力により、阻流板上方のスラッジ・ブランケット層内の既存フロックの破壊を抑制できる。
本発明のスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池において、前記スラッジ・ブランケット層の上方に形成される清澄分離ゾーン内に配置され、前記沈澱水中の3μm以上微フロックの残留個数を所定値以下に低減するために取付間隔が狭く多段に積層された上向流式傾斜板装置を備えることが好ましい。
この構成では、スラッジ・ブランケット層の上方に形成される清澄分離ゾーン内に、沈澱水中の3μm以上微フロックの残留個数を所定値以下に低減するために取付間隔が狭く多段に積層された上向流式傾斜板装置が配置されるので、沈澱水の3μm以下の粒子と3μm以上の微フロックとの残留個数および濁度を所定値以下に低下させることができる。
本発明の水処理システムは、上述のスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池と、前記スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の前段に設けられ、前記被処理水を撹拌可能に構成された急速撹拌池と、前記急速撹拌池に流入する前記被処理水中の懸濁粒子を集塊化するための無機凝集剤を注入可能に構成された無機凝集剤注入装置と、前記スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の後段に設けられ、前記集水装置で集水された前記沈澱水をろ過可能に構成されたろ過池と、重力濃縮後の濃縮汚泥の所定量を貯留する汚泥貯留池と、を備えることを特徴とする。
本発明では上述と同様の作用効果を奏することができる。
本発明の水処理システムにおいて、前記被処理水、前記急速撹拌池の複数の撹拌槽内水、前記沈澱水、ろ過水の単位容積当たりの懸濁粒子の径と個数を連続的に計測する高感度濁度計をそれぞれ備えることが好ましい。
この構成では、被処理水、急速撹拌池の複数の撹拌槽内水、沈澱水、ろ過水の単位容積当たりの懸濁粒子の径と個数を連続的に監視でき、異常の発生等を迅速に検知することができる。
本発明の水処理システムにおいて、前記集泥ホッパー部内に堆積した濃縮汚泥もしくは前記汚泥貯留池内の汚泥を、前記急速撹拌池の被処理水高感度濁度計の前段に返送する返送配管を備えることが好ましい。
この構成では、被処理水の濁度が例えば4度以下に低下して、スラッジ・ブランケット層のスラッジ濃度が低下した場合でも、集泥ホッパー部内または汚泥貯留池内の汚泥を返送配管により返送することで、スラッジ・ブランケット層の既存フロック濃度を安定的に維持させることができる。
本発明の水処理システムにおいて、前記急速撹拌池は、直列に接続された複数の撹拌槽と、複数の前記撹拌槽にそれぞれに設けられ、前記撹拌槽内の前記被処理水を撹拌する撹拌機と、を有することが好ましい。
この構成では、急速撹拌池は、直列に接続された複数の撹拌槽と、当該撹拌槽にそれぞれに設けられる撹拌機とを有するので、被処理水の3μm以下の粒子と無機凝集剤の粒子との撹拌を十分に行うことができる。
本発明の水処理システムにおいて、前記撹拌機は、回転することで前記被処理水を撹拌する撹拌翼を有し、前記撹拌翼の回転速度を可変させることができるように構成されていることが好ましい。
通常、一旦建設された急速撹拌池の急速撹拌時間の増加は困難である。しかし、この構成では、撹拌機の撹拌翼の回転速度を可変させることができるので、例えば、被処理水の3μm以下の粒子の流入個数や無機凝集剤の注入量、水温等に応じて撹拌翼の回転速度を可変でき、急速撹拌時間を増減することによって、3μm以下の粒子の低減効果を確実に確保できる。
本発明の水処理システムにおいて、前記ろ過池は、前記集水装置で集水された前記沈澱水が流入する粗ろ過池と、前記粗ろ過池でろ過された粗ろ過水が流入する砂ろ過池と、を有することが好ましい。
この構成では、ろ過池は、沈澱水が流入する粗ろ過池と、当該粗ろ過池でろ過された粗ろ過水が流入する砂ろ過池とを有するので、粗ろ過池および砂ろ過池により直列的に沈澱水をろ過することができる。そのため、ろ過水の単位容積当たりの懸濁粒子の径や個数を十分少なくすることができる。さらに、沈澱水に残留した3μm以上の微フロックによってろ過池が閉塞してしまい、洗浄頻度が高くなってしまうことを抑制できる。
本発明の水処理システムにおいて、前記沈澱部の内部において前記上向流式傾斜板装置を通過していない前記被処理水を、ドレン洗浄後の前記粗ろ過池と逆流洗浄後の前記砂ろ過池に流入させる未処理沈澱水流入配管を各々備えることが好ましい。
この構成では、沈澱部の内部において上向流式傾斜板装置を通過していない未処理沈澱水処理水を、ドレン洗浄後の粗ろ過池と逆流洗浄後の砂ろ過池に流入させる未処理水流入配管を各々備えるので、ドレン洗浄後の粗ろ過池および逆流洗浄後の砂ろ過池のろ層の熟成効果を迅速且つ確実に発揮させることができる。
本発明のスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の運転方法は、平面視において矩形状とされ、且つ、底面が水平とされた躯体であって、前記躯体と同一高さの仕切り壁で沈澱部と集泥ホッパー部とに分割された前記躯体と、スラッジ・ブランケット層高の全てまたは一部の底部構造を逆錘形または逆錘台形とし、前記沈澱部の底面全体に設置される小形水槽と、前記小形水槽の近傍に被処理水を流入させる被処理水流入配管と、前記スラッジ・ブランケット層の上方に形成される清澄分離ゾーン内を上昇する沈澱水を集水する集水装置と、を備えるスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の運転方法であって、前記沈澱部において、前記小形水槽の底部近傍の上昇流速が最も大きく、且つ、前記小形水槽内を前記被処理水が上昇するにしたがって、前記被処理水の上昇流速が順次低下し、前記小形水槽の天端から前記集水装置までの上昇流速が最も小さくなることを特徴とする。
本発明では上述と同様の作用効果を奏することができる。
本発明のスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の運転方法において、前記集泥ホッパー部内に堆積した汚泥の界面を測定可能に構成された汚泥界面計の指示値、または、タイマーの設定値に従って、前記集泥ホッパー部内に堆積した濃縮汚泥を系外に排泥することが好ましい。
この構成では、集泥ホッパー部内に堆積した汚泥の界面を測定可能に構成された汚泥界面計の指示値、または、タイマーの設定値に従って、集泥ホッパー部内に堆積した濃縮汚泥を系外に排泥するので、集泥ホッパー部内の濃縮汚泥を適切なタイミングで排泥することができる。
本発明のスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の運転方法において、前記沈澱部への前記被処理水の流入停止に当たり、前記沈澱部内の懸濁液の全量を汚泥貯留池に貯留し、前記沈澱部への前記被処理水の流入が停止した停止状態から、前記沈澱部に前記被処理水を流入する運転状態にする際に、前記汚泥貯留池内の濃縮汚泥を、予め前記沈澱部に供給して前記スラッジ・ブランケット層内の既存フロック濃度を高めると同時に、予め定めた過剰な無機凝集剤を注入することが好ましい。
この構成では、沈澱部の内部を空にした状態から、沈澱部への被処理水の流入を開始させる際に、汚泥貯留池内の濃縮汚泥を、予め沈澱部に供給してスラッジ・ブランケット層内の既存フロック濃度を高めると同時に、予め定めた過剰な無機凝集剤を注入するので、適正なスラッジ濃度のスラッジ・ブランケット層を迅速に形成させることができる。さらに、低濁度の沈澱水を運転再開当初から獲得できる。なお、本来の必要最少の無機凝集剤注入量への変更は、低濁度の沈澱水が確実に獲得できることを確認してから実施すれば良く、且つ半日後のスラッジ・ブランケット層内の既存フロックは、低強度、低密度、高比抵抗から高強度、高密度、低比抵抗に変化する。
本発明の水処理システムの運転方法は、平面視において矩形状とされ、且つ、底面が水平とされた躯体であって、前記躯体と同一高さの仕切り壁で沈澱部と集泥ホッパー部とに分割された前記躯体、スラッジ・ブランケット層高の全てまたは一部の底部構造を逆錘形または逆錘台形とし、前記沈澱部の底面全体に設置される小形水槽、前記小形水槽の近傍に被処理水を流入させる被処理水流入配管、前記スラッジ・ブランケット層の上方に形成される清澄分離ゾーン内を上昇する沈澱水を集水する集水装置、および、前記スラッジ・ブランケット層の上方に形成される清澄分離ゾーン内に配置され、前記沈澱水中の3μm以上微フロックの残留個数を所定値以下に低減するために取付間隔が狭く多段に積層された上向流式傾斜板装置を備えるスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池と、前記スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の前段に設けられ、前記被処理水を撹拌可能に構成された急速撹拌池と、前記急速撹拌池に流入する前記被処理水中の懸濁粒子を集塊化するための無機凝集剤を注入可能に構成された無機凝集剤注入装置と、前記スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の後段に設けられ、前記集水装置で集水された前記沈澱水をろ過可能に構成されたろ過池と、重力濃縮後の濃縮汚泥の所定量を貯留する汚泥貯留池と、を備える水処理システムの運転方法であって、前記急速撹拌池の無機凝集剤の注入量は、高感度濁度計で計測した前記被処理水中の単位容積当たりの3μm以下粒子の流入個数に基づいて決定することを特徴とする。
本発明では上述と同様の作用効果を奏することができる。さらに、急速撹拌池の無機凝集剤の注入量を、高感度濁度計で計測した被処理水中の単位容積当たりの3μm以下の粒子の流入個数に基づいて決定するので、無機凝集剤の注入量を低減することができ、高強度、高密度、低比抵抗の3μm以下の粒子と3μm以上の微フロックの形成により、運転コスト及び水処理に伴うCO2発生量の削減に貢献できる。
本発明の水処理システムの運転方法において、必要最少の無機凝集剤注入量と前記急速撹拌池のGT値の凝集条件で、前記被処理水の3μm以下粒子を低減・集塊化して、一旦形成された60μm以上大型微フロックの破壊を高強度、高密度、低比抵抗の3μm以上微フロックの増加に留めて、前記急速撹拌池の出口水の3μm以下粒子と3μm以上微フロックの流出個数を最少化することが好ましい。
この構成では、無機凝集剤注入量と急速撹拌池のGT値の凝集条件により、急速撹拌池の出口水の3μm以下粒子と3μm以上微フロックの流出個数を最少化することができる。その際、急速撹拌池内で一旦形成された大型微フロックの破壊は起こるが、同破壊を高強度、高密度、低比抵抗の3μm以上微フロックの増加に留めると、後続のスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池、粗ろ過池、砂ろ過池の3μm以上微フロックの除去率は高く、一方3μm以下粒子の除去率は最も低いので、3つの凝集固液分離装置にとって、上の凝集条件で大型微フロックの破壊は起こるものの、その実態はあくまでも集塊化となるため、各処理水濁度は高くなることがない。
本発明の水処理システムの運転方法において、前記被処理水と前記急速撹拌池の複数の撹拌槽内水との単位容積当たりの懸濁粒子の径と個数を高感度濁度計で連続的に計測した場合、前記被処理水と前記急速撹拌池の複数の撹拌槽内水の単位容積当たりの3μm以下粒子の個数のプロットは、急速撹拌時間に対する片対数グラフにおいて直線で近似できることが好ましい。
この構成では、被処理水と急速撹拌池の複数の撹拌槽内水の単位容積当たりの3μm以下粒子の個数のプロットは、急速撹拌時間に対する片対数グラフにおいて直線近似できるので、急速撹拌池のn槽目までの撹拌槽内水の単位容積当たりの3μm以下の粒子の個数のプロットの動きを解析して、急速撹拌池出口水の3μm以下粒子の残留個数が所定値よるも多くなる場合に、同解析結果に基づいて、(n+1)槽目の急速撹拌池への無機凝集剤の再注入量を決定することにより、急速撹拌池出口水の3μm以下粒子の残留個数を所定の個数に無機凝集剤の再注入量を適正に制御することができる。
本発明の水処理システムの運転方法において、前記急速撹拌池のGT値の増減を必要とする際に、急速撹拌強度G値の増減によって、前記急速撹拌池のGT値を増減することが好ましい。
この構成では、急速撹拌強度G値の増減によって急速撹拌池のGT値を増減するので、急速撹拌池を増設することなく、急速撹拌池のGT値を増減できる。
本発明の水処理システムの運転方法において、砂ろ過水の単位容積当たりの全懸濁粒子に占める3μm以下粒子の比率は99%以上であることが好ましい。
この構成では、砂ろ過水の3μm以下の粒子と3μm以上の微フロックとの残留個数および砂ろ過水濁度を低減することができる。
本発明の水処理システムの運転方法において、前記集泥ホッパー部内の汚泥または前記汚泥貯留池内の濃縮汚泥を、被処理水濁度が10度以上となるように、前記急速撹拌池の前記被処理水の高感度濁度計の前段に返送して、急速撹拌池の凝集処理を行うことにより、前記スラッジ・ブランケット層内の既存フロックの消失を回避することが好ましい。
この構成では、被処理水の濁度が例えば4度以下に低下して、スラッジ・ブランケット層のスラッジ濃度が低下した場合でも、集泥ホッパー部内または汚泥貯留池内の汚泥を返送することで、スラッジ・ブランケット層のスラッジ濃度を維持させることができる。
本発明の水処理システムの運転方法において、前記ろ過池は、前記集水装置で集水された前記沈澱水が流入する粗ろ過池と、前記粗ろ過池でろ過された粗ろ過水が流入する砂ろ過池と、を有し、前記粗ろ過池の損失水頭または粗ろ過水濁度のいずれか一方が予め定めた値を越えた際に前記粗ろ過池の自動ドレン洗浄を行い、前記砂ろ過池の損失水頭また砂ろ過水濁度のいずれか一方が予め定めた値を越えた際に前記砂ろ過池の逆流洗浄を行うことが好ましい。
この構成では、粗ろ過池の自動ドレン洗浄および砂ろ過池の逆流洗浄を適切なタイミングで実行することができる。従来の凝集沈澱池と砂ろ過池の組み合わせでは、沈澱水に残留した3μm以上の微フロックが砂ろ過池の砂粒空隙を早期に閉塞させるため、ろ過継続時間は短くなり、砂ろ過池の逆流洗浄頻度は高くなるという課題があった。これに対し、この構成では、高強度、高密度、低比抵抗の既存フロックの形成と相俟って、砂ろ過池の逆流洗浄コストの削減効果を向上出来る。
本発明の水処理システムの運転方法において、前記ろ過池は、前記集水装置で集水された前記沈澱水が流入する粗ろ過池と、前記粗ろ過池でろ過された粗ろ過水が流入する砂ろ過池と、を有しドレン洗浄後の前記粗ろ過池と、逆流洗浄後の前記砂ろ過池とのそれぞれのろ層の熟成を促進させるために、前記上向流式傾斜板装置を通過していない前記被処理水を、ドレン洗浄後の前記粗ろ過池と逆流洗浄後の前記砂ろ過池とにそれぞれ流入させることが好ましい。
この構成では、沈澱部の内部において上向流式傾斜板装置を通過していない被処理水を、ドレン洗浄後の粗ろ過池と逆流洗浄後の砂ろ過池に流入させるので、ドレン洗浄後の粗ろ過池および逆流洗浄後の砂ろ過池のろ層の熟成を迅速に発揮させることができる。
本発明の水処理システムの運転方法において、前記被処理水と前記急速撹拌池の複数の撹拌槽内水の単位容積当たりの懸濁粒子の径と個数を高感度濁度計で連続的に計測し、急速撹拌時間に対する片対数グラフにおいて直線で近似される前記被処理水から前記急速撹拌池のn槽目までの撹拌槽内水の単位容積当たりの3μm以下粒子の個数のプロットの動きを人工知能で解析して、同解析結果に基づいて、(n+1)槽目の前記急速撹拌池への無機凝集剤の再注入量を決定することが好ましい。
この構成では、急速撹拌時間に対する片対数グラフにおいて直線で近似される被処理水から急速撹拌池のn槽目までの撹拌槽内水の単位容積当たりの3μm以下粒子の個数のプロットの動きを人口知能で解析して、同解析結果に基づいて、(n+1)槽目の急速撹拌池への無機凝集剤の再注入量を決定するので、無機凝集剤の再注入量を適正に制御することができる。そのため、急速撹拌池出口水の3μm以下の粒子の残留個数を低減することができる。
本発明の水処理システムの運転方法において、前記上向流式傾斜板装置を備えた前記スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の損失水頭は0.6m以下であり、上昇流速は1.8m/hr以下であることが好ましい。
この構成では、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の損失水頭を十分に小さくすることができる。さらに、水処理システムの各プロセスの損失水頭の合計を低減できるので、水処理システム入口の揚水ポンプの全揚程の低下により、揚水ポンプの動力コストを削減できる。
本発明の一実施形態に係る水処理システムの概略構成を示す図。 急速撹拌池およびスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の概略を示す断面図。 急速撹拌池およびスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の概略を示す平面図。 パイロットプラントの急速撹拌池、高速凝集沈澱池、粗ろ過池、砂ろ過池を示す写真。 パイロット試験に用いた上向流式傾斜板装置を示す写真。 実証試験(1年間)の淀川右岸表流水と汚泥処理系返流水から成る被処理水の高感度濁度計で計測した全懸濁粒子の流入個数に占める3μm以下粒子の比率の動きを示す図。 実証試験(1年間)の淀川右岸表流水と汚泥処理系返流水から成る被処理水の高感度濁度計の3μm以下粒子の流入個数と被処理水濁度が、比例関係から大きく外れる事例があったことを示す図。 砂ろ過池の懸濁粒子の粒子径と砂ろ過水の全懸濁粒子に占める比率を示す図。 実証試験(1年間)における各プロセス水における懸濁粒子の比率を示す図。 実証試験(1年間)の淀川右岸表流水と汚泥処理系返流水から成る被処理水の直列的に6槽に分割された押出流れの急速撹拌池の低ALT比(被処理水の濁度Tに対する無機凝集剤のアルミニウムALの比率:0.05)の凝集条件と急速撹拌時間T値9分における、急速撹拌強度G値150s-1、450s-1、650s-1、1500s-1の4条件の3μm以下粒子の集塊化・低減及び大型微フロックの破壊に伴う3μm以下粒子の増加の挙動。 ポリ塩化アルミニウム(PAC)の注入量を、被処理水濁度4度:14.5mg/L、同10度:35mg/L、同20度:42mg/L、同50度:45mg/Lと各々定めた一例を示す図。 実証試験の逆流洗浄後の砂ろ過池に沈澱水を直接流入させた際のフロキュレータ機能を担う砂層表層の熟成過程の集塊化の挙動を、捨て水配管に砂ろ過水が流出を開始した時点から1時間にわたり、3μm以下粒子と7μm以上微フロックの個数を概ね1分間隔で、高感度濁度計を用いて計測して、別途計測した沈澱水の両懸濁粒子の個数から除去率を算出した図。 実証試験(1年間)の淀川右岸表流水と汚泥処理系返流水から成る被処理水の粗ろ過池と砂ろ過池の0.5-1μm粒子から60μm以上微フロックの除去率、及び両ろ過水濁度の一例を示す図。 実証試験(1年間)の淀川右岸表流水と汚泥処理系返流水から成る被処理水を、必要最少の無機凝集剤注入量と急速撹拌池のGT値との凝集条件で集塊化・低減して、取付間隔が狭く多段に積層された上向流傾斜板を備えた新しいスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池を上向流速3.2m/hと2.24m/hの処理条件で連続運転した際の、沈澱水濁度を比較した一例を示す図。 実証試験(1年間)の淀川右岸表流水と汚泥処理系返流水から成る被処理水を、必要最少の無機凝集剤注入量と急速撹拌池のGT値との凝集条件で集塊化・低減して、取付間隔が狭く多段に積層された上向流傾斜板を備えた新しいスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池を上向流速3.2m/hと2.24m/hの処理条件で連続運転した際の、粗ろ過池の損失水頭の動きと近似線を示す図。 実証試験(1年間)の淀川右岸表流水と汚泥処理系返流水から成る被処理水を、必要最少の無機凝集剤注入量と急速撹拌池のGT値との凝集条件で集塊化・低減して、取付間隔が狭く多段に積層された上向流傾斜板を備えた新しいスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池を上向流速3.2m/hと2.24m/hの処理条件で連続運転した際の、砂ろ過池の損失水頭の動きと近似線を示す図。 砂ろ過池の逆流洗浄後の砂層の熟成に及ぼす取付間隔が狭く多段に積層された上向流傾斜板の未処理沈澱水と処理沈澱水の影響を示す図。
[実施形態]
本発明の一実施形態に係る水処理システム1を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の水処理システム1の概略構成を示す図であり、図2は、急速撹拌池2およびスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池4の概略を示す断面図であり、図3は、急速撹拌池2およびスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池4の概略を示す平面図である。
図1~図3に示すように、本実施形態の水処理システム1は、急速撹拌池2と、無機凝集剤注入装置3と、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池4と、ろ過池5と、排泥池6と、排水池7と、排泥濃縮槽8と、排水濃縮槽9と、汚泥貯留池10とを備え、浄水処理システムとして機能するように構成されている。
ここで、Conventionalと呼ばれる急速ろ過システムは、概ね150年の長い歴史を重ねてきた。同急速ろ過システムの開発技術者は、砂ろ過池の正しい粒子分離機構を理解できなかったので、フロック形成池でフロック破壊が起こると、沈澱水濁度とろ過水濁度が同時に高くなり、急速ろ過システム自体成立しなくなることから、過剰な無機凝集剤を注入して、凝集沈澱池のために大きなフロックを形成して、フロック破壊を回避する凝集処理方法の採用を強く主張した。1950年代の米国の水道研究者は、Conventionalな急速ろ過システムの開発技術者の凝集処理方法に関する強い主張を踏襲して「凝集理論」公表した。世界の水道技術者は、両主張を正しいと思い込むという課題があった。しかも、1997~1998年の我が国で高感度濁度計が開発されるまでの急速ろ過システムは、凝集・固液分離プロセスが分離対象とする懸濁粒子の径と個数を特定できないという課題があった。また、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池と砂ろ過池の粒子分離機構は、接触フロック形成であると報告されたにもかかわらず、世界の水道技術者は、両プロセスをフロック形成池と同じ「水流が持つ位置エネルギーを撹拌エネルギーに変換できるフロキュレータ」であると認識できないという課題があった。以上の諸課題を解決できなかったため、急速ろ過システムと呼ばれる水処理システムは、概ね150年間の長きにわたり運転コストを削減できないという課題を抱えてきた。
これに対し、本実施形態の水処理システム1は、従来のConventionalと呼ばれる急速ろ過システムの凝集条件と正反対の、フロック破壊が起こる「必要最少の無機凝集剤注入量とGT値の急速撹拌条件」で、3μm以下粒子を集塊化・低減し、高強度、高密度、低比抵抗の3μm以上微フロックを形成して、固液分離することによって低濁度の沈澱水、粗ろ過水、砂ろ過水を順次獲得し、且つ急速ろ過システムと呼ばれる水処理システムの運転コスト(無機凝集剤コスト、汚泥処理・処分コスト、砂ろ過池の逆流洗浄コスト、急速ろ過システムの無効水量、急速ろ過システム入口の揚水ポンプ動力コスト(≒急速ろ過システムの全プロセス入口の損失水頭の総計))を最少化するための新しいスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池、水処理システム、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の運転方法、および水処理システムの運転方法を提供することにある。なお、以上の事実を肯定する文献が実在するため、本技術は世界の水道が直面する浄水処理に伴うCO2発生量の削減に貢献できる。
「水道施設設計指針」(公益社団法人日本水道協会、2010、以下参考文献1と記す)では、フロック形成池のみを「水流自体のエネルギーによる撹拌」と解説している(187頁参照)。しかし、「Contact Filtration:Particle Size and Ripening」(Clark, S.C.,Jour.of AWWA,Vol.,pp.61~71,1992、以下参考文献2と記す)および、「接触高速凝集沈澱池の一般特性」(丹保憲仁、水道協会雑誌、第386号、pp.38~46、1966.1.、以下参考文献3と記す)では、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池4とろ過池5の粒子分離機構を接触フロック形成であると説明している。したがって、水処理システム1の全てのプロセスは流体力学に従い、従来のフロック形成池と同じ「水流が持つ位置エネルギーを撹拌エネルギーに変換できるフロキュレータ」であり、後述の式(2)に従うと考えなければならない。
[急速撹拌池2]
急速撹拌池2は、ダム水や河川水等の被処理水中の懸濁粒子と無機凝集剤注入装置3から注入される無機凝集剤とを撹拌可能に構成されている。本実施形態では、急速撹拌池2は、直列に接続された押出流れの複数の撹拌槽21と、複数の撹拌槽21にそれぞれに設けられ、撹拌槽21内の被処理水を撹拌する撹拌機22と、を有する。そして、撹拌機22は、回転することで被処理水を撹拌する撹拌翼23を有する。本実施形態では、撹拌翼23は、回転速度を可変させることができるように構成されている。これにより、急速撹拌池2では、急速撹拌強度G値に急速撹拌時間T値を乗じたGT値の増減を必要とする際に、急速撹拌強度G値の増減によって急速撹拌池2のGT値を増減することができるように構成されている。
また、本実施形態では、各撹拌槽21内の被処理水の単位容積当たりの懸濁粒子の径と個数を連続的に計測する高感度濁度計(図示略)が設けられている。
参考文献1では、フロック形成がCampとSteinの衝突頻度式に従い、大きなフロックを形成してフロック破壊を回避すると解説している(186頁参照)。ところが、「Orthokinetic Flocculation in Water Purification」(Harris, H. S., Kaufman, W. J. and Krone, R.B., Journal of the Sanitary Engineering Division Proceedings of the American Society of Civil Engineers, SA 6, pp.5027 December,1966,以下参考文献4と記す)および「Growth Kinetics of Hydroxide Flocs」(Francois, R. J., Jour. of AWWA, Vol. 80,pp.92~96,1988,以下参考文献5と記す)では、フロック形成が式(1)のorthokineticなフロック形成式に従うと説明した。参考文献4は、直列に接続された押出流れの複数のフロック形成池は、一次粒子(より具体的には3μm以下粒子)の低減に有効であると説明した。また、参考文献5は、初期粒子(より具体的には3μm以下粒子)の集塊化・低減のプロットが、片対数グラフ上を直線で近似できると説明した。発明者は、参考文献4と参考文献5の主張が、急速撹拌池で成立することを、まずカオリンを用いた基礎実験で検証し、実証試験で再検証した。その結果、参考文献1の凝集理論の急速混和池で起こる懸濁粒子の不安定化の解説を含めて、凝集沈澱池から砂ろ過池に至る全ての解説は、誤りであることが明らかとなった。その証拠として、参考文献1は、フロック形成池を多孔壁で複数槽に分割したので、必ず短絡流が起こり、3μm以下粒子の低減にとって好ましくない。また、フロック形成池のGT値23000~210000は、大きなフロックの形成とフロック破壊の回避のための良い撹拌条件であると解説したので、3μm以下粒子の低減のためGT値ではないことが明らかである。本実証試験における急速撹拌池のGT値は、後述のように243000であった。改めて急速撹拌池の正しいGT値を求めることが必要になる。
dni/dt= - (α・β・nj)ni・・・式(1)
ここで、α:衝突効率、β:衝突頻度、ni:単位容積当たりの流入粒子i(3μm以下粒子)の個数濃度、nj:単位容積当たりの既存フロックjの個数濃度である。
[無機凝集剤注入装置3]
無機凝集剤注入装置3は、急速撹拌池2の前段において、急速撹拌池2に流入する被処理水中の3μm以下の粒子を集塊化・低減するためのポリ塩化アルミニウムや塩化第二鉄等の無機凝集剤を被処理水に注入可能に構成されている。本実施形態では、無機凝集剤注入装置3は、前述した高感度濁度計で計測した前記被処理水中の単位容積当たりの3μm以下粒子の流入個数に基づいて無機凝集剤の注入量を決定するように構成されている。
また、無機凝集剤注入装置3は、被処理水と急速撹拌池2の各撹拌槽21内の単位容積当たりの懸濁粒子の径と個数を高感度濁度計で連続的に計測し、急速撹拌時間T値に対する片対数グラフにおいて直線で近似される被処理水から急速撹拌池2のn槽目までの撹拌槽21内水の単位容積当たりの3μm以下粒子の個数のプロットの動きを人工知能で解析して、同解析結果に基づいて、(n+1)槽目の急速撹拌池2への無機凝集剤の再注入量を決定するように構成されていてもよい。
参考文献1は、砂ろ過池の正しい粒子分離機構を理解できなかったため、過剰な無機凝集剤を注入して、大きなフロックを形成して、フロック破壊を回避する凝集処理を推奨してきた。したがって、急速ろ過システムと呼ばれる水処理システムは、開発されて以来150年間の長きにわたり、運転コストを削減できることに気付かなかった。
しかし、「急速砂ろ過におけるろ過機構に関する研究(I)」(佐藤敦久、水道協会雑誌、第427号、pp.16~25、1970.4、以下参考文献6と記す)は、従来の急速ろ過システムの凝集処理方法に疑問を持ち、少ない無機凝集剤注入量による運転法を追求した。
「砂ろ過の抑留機序に関する研究(II)」(丹保憲仁ら、水道協会雑誌、第484号、pp.2~25、1975.1、以下参考文献7と記す)は、直接ろ過法の砂ろ過池の最適凝集条件を低ALT比であると報告した。また、「汚泥処理上からみた合理的浄水方法の研究」(丹保憲仁編、土木学会、p.290他、1980、以下参考文献8と記す)は、浄水場の汚泥処理コストの削減のための凝集条件を低ALT比と報告した。急速ろ過システムは、直接ろ過法の急速撹拌池と砂ろ過池の間に凝集沈澱池を配置したものであるため、その最適凝集条件は低ALT比でなければならず、より具体的には「必要最少の無機凝集剤注入量と急速撹拌池のGT値の2条件」である。
[スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池4]
スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池4は、躯体41と、仕切り壁42と、沈澱部43と、集泥ホッパー部44と、小形水槽45と、被処理水流入配管46と、集水装置47と、上向流式傾斜板装置48とを備える。さらに、本実施形態では、集水装置47で集水した沈澱水の単位容積当たりの懸濁粒子の径と個数を連続的に計測する高感度濁度計(図示略)を備える。
躯体41は、平面視において矩形状とされ、且つ、底面が水平とされている。そして、躯体41は、当該躯体41と同一高さの仕切り壁42によって沈澱部43と集泥ホッパー部44とに分割されている。
仕切り壁42には開口部421が形成されており、沈澱部43内の余剰フロックは開口部421下端をオーバーフローして集泥ホッパー部44に流入するように構成されている。本実施形態では、集泥ホッパー部44は、仕切り壁42によって所定寸法に分割されている。これにより、沈澱池43内部の余剰フロックを集泥ホッパー部44内にて高濃度に濃縮できるので、排泥回数を削減することができる。
また、本実施形態では、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池4は、集泥ホッパー部44内に堆積した汚泥の界面を測定可能に構成された汚泥界面計の指示値、または、タイマーの設定値に従って、集泥ホッパー部44内に堆積した濃縮汚泥を汚泥貯留池10に排泥するように構成されている。
小形水槽45は、沈澱部43の底面全体に設置され、スラッジ・ブランケット層Sの高さの全てまたは一部の底部構造を逆錘形または逆錘台形にするように構成されている。具体的には、断面視で、小形水槽45の側面の勾配は60度となるように構成されている。
また、本実施形態では、平面視において、小形水槽45の底部の面積は、小形水槽45の天端の全表面積の1/10以下になるように構成されている。これにより、逆錘形または逆錘台形とされた小形水槽45の側面の傾斜を急峻とすることができるので、小形水槽45の底部に向かうに従って当該小形水槽45の容量が顕著に小さくなる。そのため、小形水槽45の底部近傍の上昇流速を大きくすることができ、結果として小形水槽45の底面への既存フロックの沈澱・堆積を回避できる。
ここで、参考文献1は、迂流式フロック形成池のみを「水流自体のエネルギーによる撹拌」であり、以下の式(2)に従うと解説した(187頁参照)。しかし、水処理システム1の全てのプロセスは流体力学に従い、「水流が持つ位置エネルギーを撹拌エネルギーに変換できるフロキュレータ」であり、式(2)に従うと考えてはじめて、小形水槽45内の上昇流速の変化を説明できる。
P=ρgQhf/V・・・式(2)
ここで、ρ:水の密度(kg/m3)、Q:各プロセスの単位時間当たりの流入量(m3/s)、hf:各プロセスの損失水頭(すなわち、プロセス入口と出口の水位差)(m)、V:各プロセスの池容積(m3)、g:重力の加速度(=9.8m/s2)である。
小形水槽45内の撹拌エネルギーPは、式(2)の各プロセスの池内流速をvと仮定すると、損失水頭hf ∝ v2、各プロセスの単位時間当たりの流入量Q ∝ vであるため、池内流速vの3乗に比例する。
実公昭46-21170号公報(以下参考文献9と記す)は、参考文献1のp201の図-5.5.19のスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の底部構造を真似て出願した。ところが、参考文献9の図面、請求項、詳細な説明は、いずれも高速凝集沈澱池の天端から下のみの記述にとどまっていて、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池入口の損失水頭と逆錘形または逆錘台形の底部構造と池内流速vとの関係について一切言及していないため、式(2)の事実に気付かなかったと判断される。
また、本実施形態では、小形水槽45は、被処理水の流入に伴う乱流を所定空間内に留めるための阻流板451を備える。具体的には、小形水槽45の底面又はスラッジ・ピットの底面から0.5m直上近傍に、上に凸の多角錘状または円錐状の阻流板451を固定設置する。これにより、阻流板451と小形水槽45の底面またはスラッジ・ピットの底面の空間内に急速撹拌池出口水の位置エネルギーを撹拌エネルギーに変換した乱流をとどめて、小形水槽45の底面またはスラッジ・ピットの底面への高強度、高密度、低比抵抗の既存フロックの沈澱・堆積を阻止する。そして、小形水槽45の躯体41と阻流板451との間の狭い間隙を10m/時以下の流速でスラッジ・ブランケット層S内に流入させる。
これにより、小形水槽45内の乱流は、阻流板451で阻止されるため、スラッジ・ブランケット層内の既存フロックの破壊を抑制できる。
なお、小形水槽45の底部には汚泥を、排泥池6および排泥濃縮槽8を介して、汚泥貯留池10に貯留するためのピットを設けることができる。すなわち、本実施形態のスラッジ・ピットは、逆錘形または逆錘台形の小形水槽45の下方に設けられる。
被処理水流入配管46は、小形水槽45の近傍に急速撹拌池2から流出された被処理水を流入させるように構成されている。
集水装置47は、沈澱部43の上方に懸架される所謂集水トラフであり、スラッジ・ブランケット層Sの上方に形成される清澄分離ゾーンC内を上昇する沈澱水を集水するように構成されている。
上向流式傾斜板装置48は、スラッジ・ブランケット層Sの上方に形成される清澄分離ゾーンC内に配置され、沈澱水中の3μm以上微フロックの残留個数を所定値以下に低減するために取付間隔が狭く多段に積層されている。例えば、上向流式傾斜板装置48は、50mm以下、5mm以上のピッチ幅で傾斜板が多段に積層されて取り付けられている(以下の実施例では、ピッチ幅11mmの傾斜板を採用した)。
ここで、本実施形態では、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池4は、沈澱部43への被処理水の流入停止に当たり、沈澱部43内のスラッジを汚泥貯留池10に排泥し、沈澱部43への被処理水の流入が停止した停止状態から、沈澱部43に被処理水を流入する運転状態にする際に、汚泥貯留池10内の濃縮汚泥を、返送配管61にて予め沈澱部43に供給してスラッジ・ブランケット層S内の既存フロック濃度を高めると同時に、無機凝集剤注入装置3は予め定めた過剰な無機凝集剤を注入するように構成されている。これにより、適正なスラッジ濃度のスラッジ・ブランケット層Sを迅速に形成させることができ、通水開始当初より低濁度の沈澱水を安定して獲得できる。
また、本実施形態では、集泥ホッパー44部内の汚泥または汚泥貯留池10内の濃縮汚泥を、被処理水濁度が10度以上となるように、急速撹拌池2の被処理水の高感度濁度計の前段に返送するように構成されている。これにより、被処理水の濁度が、例えば4度以下に低下して、スラッジ・ブランケット層Sの既存フロック濃度が低下した場合でも、集泥ホッパー部44内または汚泥貯留池10内の汚泥を返送することで、スラッジ・ブランケット層Sの既存フロック濃度を維持させることができる。
[ろ過池5]
ろ過池5は、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池4の集水装置47にて集水された沈澱水をろ過可能に構成されている。本実施形態では、ろ過池5は、粗ろ過池51と、砂ろ過池52と、上向流式傾斜板装置の未処理沈澱水流入配管53とを備える。
さらに、本実施形態では、粗ろ過水および砂ろ過水の単位容積当たりの懸濁粒子の径と個数を連続的に計測する高感度濁度計(図示略)を備える。
前述したように、参考文献1では、砂ろ過池の正しい粒子分離機構を理解できなかった。参考文献2は、砂ろ過池が以下に説明する式(3)のIwasakiの清澄化方程式に従うと説明し、砂層表層の38mm(全砂層高600mm)が熟成に係わる一方で、後続の砂層(砂層高562mm)の熟成の程度は低いと説明した。すなわち、砂層表層は式(1)のorthokineticなフロック形成式に従うフロキュレータ機能を担って、3μm以下粒子を3μm以上微フロックに集塊化し、一方後続の砂層は砂層表層内で集塊化された除去率の高い3μm以上微フロックを再抑留して固液分離機能を担う。なお、砂層表層で集塊化を受けた3μm以下粒子と3μm以上微フロックは、砂層表層内の剪断力で必ず破壊・剥離されるが、後続の砂層の固液分離性能は極めて高いため、砂層表層内で起こるフロック破壊の影響を受けることなく、低濁度の砂ろ過水を獲得できることが、砂ろ過池が急速ろ過システムの最終処理として選択された理由である。ここで、砂ろ過池入口の損失水頭が砂粒の流れに対する裏面空隙に形成する双子渦は、砂層表層のフロキュレータ機能と後続の砂層の3μm以上微フロックの再抑留の双方に係わっている。
「高容量ろ過池の研究-ラシヒリング2階ろ過池の提案-高容量濾過池(I)」(丹保憲仁、小林三樹、水道協会雑誌、第571号、pp.37~50、1982、以下参考文献10と記す)は、急速撹拌池出口水に残留した3μm以上微フロックが砂ろ過池の砂粒空隙を早期に閉塞させることに気付き、ろ過継続時間をより長くするという課題の解決に向けて、砂ろ過池の与圧空間に粗ろ過池を前置した高容量ろ過池を提案し、中空円筒ろ材の空隙率は高いほど好ましいと報告した。発明者は、空隙率概ね80%の中空円筒ろ材を開発する一方、淀川右岸表流水および汚泥処理系返流水から成る被処理水を対象に1年間にわたる実証試験で、高容量ろ過池の処理性能を再検証した。
dc/dz= - λ・c ・・・式(3)
ここで、c:単位ろ層の単位容積当たりの流入粒子の個数、dz:単位ろ層高、λ:ろ過係数である。
なお、式(3)のdzを式(1)のdtに置き換えると、式(3)のcは式(1)のniに等しいため、式(3)のろ過係数λは、式(1)の積(α・β・nj)に等しい。したがって、砂ろ過池の粒子分離機構は、接触フロック形成(砂層表層内の既存フロックと被処理水の3μm以下粒子の衝突反応)であることが2つの方程式から明らかになる。
粗ろ過池51は、集水装置47で集水された沈澱水が流入するように構成されている。本実施形態では、粗ろ過池51は、空隙率が80%程度と高い中空接触材をろ材として採用した。また、粗ろ過池51は、ろ層が閉塞した場合に単独ドレン洗浄を可能に構成されている。
砂ろ過池52は、粗ろ過池51でろ過された粗ろ過水が流入するように構成されている。本実施形態では、砂ろ過池52は、粗ろ過池51のろ材である中空接触材よりも粒径の小さい珪砂などのろ材で構成されている。また、砂ろ過池52は、ろ層が閉塞した場合に逆流洗浄を可能に構成されている。
未処理沈澱水流入配管53は、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池4における上向流式傾斜板装置48を通過していない未処理沈澱水を、粗ろ過池51および砂ろ過池52に流入させることができるように構成されている。
本実施形態では、ドレン洗浄後の粗ろ過池51および逆流洗浄後の砂ろ過池52に対して、上向流式傾斜板装置48を通過していない未処理沈澱水を、未処理沈澱水流入配管53を介して流入させるように構成されている。これにより、ドレン洗浄後の粗ろ過池51および逆流洗浄後の砂ろ過池のろ層の熟成を迅速且つ確実に発揮させることができる。
ここで、本実施形態では、粗ろ過池51は、損失水頭または粗ろ過水濁度のいずれか一方が予め定めた値を越えた際に自動ドレン洗浄を行うように構成されている。また、砂ろ過池52は、損失水頭また砂ろ過水濁度のいずれか一方が予め定めた値を越えた際に逆流洗浄を行うように構成されている。
これにより、粗ろ過池51の自動ドレン洗浄および砂ろ過池の逆流洗浄を適切なタイミングで実行することができる。
[汚泥貯留池10]
汚泥貯留池10は、沈澱部43および集泥ホッパー部44から排泥された汚泥、および、粗ろ過池51および砂ろ過池52から排出されたドレン排水および洗浄排水を、それぞれ排泥池6および排水池7に受け入れ、排泥濃縮槽8および排水濃縮槽9にて濃縮された濃縮汚泥を貯留するように構成されている。
そして、本実施形態では、集泥ホッパー部44内の汚泥または汚泥貯留池10内の濃縮汚泥を、被処理水濁度が10度以上となるように、急速撹拌池2の被処理水の高感度濁度計の前段に返送して、急速撹拌池2の凝集処理を行うことにより、スラッジ・ブランケット層内の既存フロックの消失を回避するように構成されている。
これにより、被処理水の濁度が例えば4度低下して、スラッジ・ブランケット層Sの既存フロック濃度が低下した場合であっても、集泥ホッパー部44内または汚泥貯留池10内の濃縮汚泥を返送することで、スラッジ・ブランケット層Sの既存フロック濃度を安定的に維持させることができる。
[実施例]
次に、本発明の実施例について説明する。
図4は、パイロットプラントの急速撹拌池、高速凝集沈澱池、粗ろ過池、砂ろ過池を示す写真である。当該パイロットプラントでは、淀川右岸表流水および汚泥処理系返流水から成る被処理水を1年間にわたり処理した。なお、当該パイロットプラントは、図1に示す水処理システム1と同様のプロセスフローを有している。
急速撹拌池は鋼板製角槽(0.25mW×0.25mL×0.50mH)の6槽直列の押し出し流れで、処理水量0.9m3/時の急速撹拌時間Tは9.0分であった。急速撹拌機は撹拌軸に等間隔で三段の撹拌翼を備える。
スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池は鋼板製角槽(0.6mW×0.47mL、断面積:0.282m2、スラッジ・ブランケット層高:1.8m)で、処理水量0.9m3/時の上向流速は3.2m/時であり、清澄分離ゾーンに取付ピッチ11mm×高さ52mmH×3段の上向流傾斜板を設置し、コンセントレータ(断面積0.078m2、高さ1.8m)からの排泥は自然流下で間欠的に行った。
ろ過池は、単独自動ドレン洗浄可能な粗ろ過池を砂ろ過池に前置し、別置とした。粗ろ過池は鋼板製角槽(0.45mW×0.45mL×直線部1.25mH、ろ過面積:0.203m2)で、処理水量0.9m3/時のろ過速度は106.7m/日であり、中空接触材(外径4mm×内径3.5mm×長さ4mm)は充填量0.162m3、層高0.8m、空隙率は概ね80%であった。砂ろ過池は鋼板製角槽(0.3mW×0.7mL、ろ過面積:0.21m2)で、処理水量0.9m3/時のろ過速度は102.9m/日であり、ろ床に高密度ポリエチレン製の多孔板を備えた集水装置を採用し、珪砂(有効径:0.65mm、均等係数:1.4)を0.73m充填した。
図5は、パイロット試験に用いた上向流式傾斜板装置を示す写真である。上向流傾斜板は、ピッチ幅を5mm以上であって、50mm以下(実証試験では、ピッチ幅11mmを採用した)であるフロック形成用傾斜板を設置し、かつ、被処理水が当該傾斜板を通過する前の濁度に比し、通過した後の濁度が4/5以下となるように構成されている。
図6は、実証試験(1年間)の淀川右岸表流水と汚泥処理系返流水から成る被処理水の高感度濁度計で計測した全懸濁粒子の流入個数に占める3μm以下粒子の比率の動きを示す図である。
図6の実証試験の期間において、実証試験の高感度濁度計の被処理水濁度は、3.4度~313度と概ね100倍変化したが、被処理水の全懸濁粒子数に占める3μm以下粒子の比率の大半は、96~99%の狭い範囲にとどまった。
元阪神水道企業団のKawamuraは、1953年9月の台風の際に、淀川右岸表流水の被処理水濁度が50000度になったと報告した。しかし、今日までの桂川上流のダム建設や河川改修などによって、実証試験を行った2012年4月~2013年3月時点の最高濁度は1000度(浄水場の被処理水濁度計の記録の1回のみ)であった。すなわち、ダムが建設されるまでは、径の大きな懸濁粒子が下流に運ばれるのに対して、ダムが建設されると、径の大きな懸濁粒子はダム湖内に沈澱するため、被処理水の全懸濁粒子数に対する3μm以下粒子の比率は、96~99%の狭い範囲に収まったと考えられる。
図7は、実証試験(1年間)の淀川右岸表流水と汚泥処理系返流水から成る被処理水の高感度濁度計の3μm以下粒子の流入個数と被処理水濁度が、比例関係から大きく外れる事例があったことを示す図である。
従来の急速ろ過システムでは、光学濁度計の被処理水濁度に基づいて無機凝集剤注入量を制御していた。同無機凝集剤注入量の制御法の課題は、時折起こる砂ろ過水濁度の上昇と指摘されてきた。その理由は、図8に示すように、高感度濁度計の被処理水の3μm以下粒子の流入個数(濁度47.9度、3μm以下粒子の単位容積当たりに流入個数45000000個/mL)のように、近似線の濁度と3μm以下の粒子の個数の関係を大きく上回った場合に顕著に表れると考えられる。このようケースでは、3μm以下の粒子に付着を与える無機凝集剤粒子の水中残留量の不足に起因して、急速撹拌池出口水の3μm以下粒子の残留個数が多くなるため、沈澱水濁度、粗ろ過水濁度、砂ろ過水濁度がそれぞれ上昇することにある。急速ろ過システムの処理目的は、従来の大きなフロックの形成とフロック破壊の回避ではなく、凝集固液分離装置にとって除去率が最も低く、砂ろ過水に必ず残留する3μm以下粒子の集塊化・低減であり、とりわけ砂ろ過池の最適凝集条件が低ALT比であるとされてきたが、高感度濁度計を使用して計測すると、本来被処理水の3μm以下粒子の流入個数に基づいて、必要最少の無機凝集剤の注入量と急速撹拌池のGT値とを制御することが最も好ましいことが示唆された。
図8は、東京都水道局の杉並区の蛇口水中の全懸濁粒子に占め各径懸濁粒子の比率の一例を示す図である。なお、図8は、過剰な無機凝集剤注入条件のフロック形成池で、大きなフロックを形成してフロック破壊を回避する従来の急速ろ過システムを運転してきた東京都水道局の蛇口水の全懸濁粒子に占める3μm以下粒子の比率を示すものであり、実証試験の砂ろ過水の99.7%と概ね同じ99.1%であった。また、蛇口水の濁度は0.012度、全懸濁粒子の個数は2091個/mLで、3μm以下粒子の個数は2073個/mLであった。
東京都水道局の各浄水場の被処理水は、利根川上流のダム放流水であるから、被処理水の全懸濁粒子に占める3μm以下粒子の比率は、淀川右岸表流水と同様高いと考えられる。したがって、東京都水道局は、薬品沈澱池やスラリー循環型高速凝集沈澱池のために大きなフロックの形成を主張してきたが、大きなフロックは3μm以下粒子の集塊物である。したがって、高感度濁度計を用いて計測すると、東京都水道局の急速ろ過システムは、実証試験と同じ3μm以下粒子を集塊化・低減していて、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池に取付間隔狭く多段に積層した上向流傾斜装置を採用して、沈澱池内で破壊された3μm以上微フロックを分離できるようにすると、実証試験と同じ凝集条件で処理ができる。
図9は、実証試験(1年間)における各プロセス水における懸濁粒子の比率の推移の一例を示す図である。図9に示すように、実証試験(1年間)の淀川右岸表流水と汚泥処理系返流水から成る被処理水、被処理水を処理した急速撹拌池出口水、沈澱水、粗ろ過水、砂ろ過水の全懸濁粒子に占める3μm以下粒子の比率は、それぞれ97.5%、91.6%、98.4%、99.4%、99.7%であった。
図9は、急速撹拌池の各槽で3μm以下粒子が順次集塊化・低減されて減少する一方、3-15μm微フロックと15μm以上微フロックが順次増加し、同急速撹拌池出口水を沈澱、粗ろ過、砂ろ過すると、それぞれ3μm以下粒子が集塊化・低減されると同時に、3-15μm微フロックと15μm以上微フロックが高率分離される。
なお、実証試験における砂ろ過水は、濁度0.020度であり、全懸濁粒子の個数は10169個/mL、3μm以下粒子の個数は10142個/mLであった。このように、砂ろ過水濁度は僅か0.008度の違いであったが、3μm以下粒子の漏洩個数は概ね5倍の開きがあった。すなわち、必要最少の無機凝集剤の注入量と急速撹拌池のGT値の凝集条件は、過剰な無機凝集剤を注入する従来のフロック形成池の凝集条件と比べて、より困難であることがわかる。
図10は、実証試験(1年間)の淀川右岸表流水と汚泥処理系返流水から成る被処理水の直列的に6槽に分割された押出流れの急速撹拌池の低ALT比(0.05)の凝集条件と急速撹拌時間T値9分における、急速撹拌強度G値150s-1、450s-1、650s-1、1500s-1の4条件の3μm以下粒子の集塊化と、大型微フロックの破壊に伴う3μm以下粒子の低減と増加との挙動の一例を示す図である。
図10に示すように、実証試験(1年間)の直列的に6槽に分割された押出流れの急速撹拌池の150s-1と450s-1の2つの事例により、参考文献4および参考文献5が説明した「押出し流れのフロック形成池」の場合と同様に、片対数グラフ上3μm以下の粒子のプロットは、直線で近似できることを検証できた。したがって、直列的に6槽に分割された押出流れの急速撹拌池は、「水流が持つ位置エネルギーを撹拌エネルギーに変換できるフロキュレータ」であり、上述の式(1)、式(2)にそれぞれ従う。
急速撹拌強度G値150s-1の3μm以下粒子の削減個数は、第1槽目が1178257個/mL、第2槽目が260425個/mL、3槽目が338488個/mL、4槽目が198558個/mL、第5槽目が107824個/mLに対して、第6槽目が90680個/mLであり、3μm以下粒子のプロットは直線で近似されたが、次の急速撹拌強度G値450s-1と比べて急速撹拌池出口水の3μm以下粒子の流出個数は十分低減できなかった。
急速撹拌強度G値450s-1の3μm以下粒子の削減個数は、第1槽目が1043146個/mL、第2槽目が415237個/mL、3槽目が179254個/mL、4槽目が193404個/mL、第5槽目が90526個/mLに対して、第6槽目が54788個/mLであり、3μm以下粒子のプロットは直線で近似され、しかも急速撹拌池出口水の3μm以下粒子は203080個/mLであり、概ね最少化されたと判断された。
急速撹拌強度G値650s-1の3μm以下粒子の削減個数は、第1槽目が1271873個/mL、第2槽目が435426個/mL、3槽目が146634個/mL、4槽目が113845個/mL、第5槽目が45711個/mLに対して、第6槽目が5587個/mLと微減にとどまった。次の急速撹拌強度G値1500s-1の場合と同様に、無機凝集剤粒子の水中残留量の減少により、衝突が起こっても付着力の減少のため、第5槽目と第6槽目の3μm以下粒子の残留個数は、急速撹拌強度G値の450s-1の第6槽目の203080個/mLよりも少なくなったが、175935個/mLと170348個/mLであり、プロットは横這いとなった。
急速撹拌強度G値1500s-1の3μm以下粒子の削減個数は、第1槽目が1298303個/mL、第2槽目が371667個/mL、3槽目が209675個/mL、第4槽目が42784個/mLと3μm以下粒子の低減は、概ね第4槽目で完了した。しかし、過大なGT値の採用のため、無機凝集剤粒子の水中残留量が第4槽目で減少して、付着力を与えられなくなったため、第5槽目が521127個/mL、第6槽目が963228個/mLと、大型微フロックの破壊が3μm以上微フロックの増加にとどまらずに、本来低減すべき3μm以下粒子の大幅増加に繋がった事例である。
以上のように、急速撹拌池は、必要最少の無機凝集剤注入量と急速撹拌池のGT値との凝集条件で、急速撹拌池出口水の3μm以下粒子の最少化により、沈澱水、粗ろ過水、砂ろ過水の3μm以下粒子を各々最少化するための役割を担う。その際、急速撹拌池出口水の無機凝集剤粒子の水中残留量は概ね零となることが理想である。
実証試験(1年間)の淀川右岸表流水と汚泥処理系返流水から成る被処理水の直列的に6槽に分割された押出流れの急速撹拌池のGT値は、上述のように243000であった。
上述のように、従来のフロック形成池のGT値23000~210000は、大きなフロックを形成して、フロック破壊を回避する目的で採用されて来たもので、フロック形成池を短絡流が生じる多孔壁で分割したことを含めて、3μm以下粒子の最少化を目的としたものではないことが明らかであるから、参考文献1の急速混和池から砂ろ過池までの解説は全て誤りである。
以上のように、直列多槽に分割された押出流れの急速撹拌池のGT値は、被処理水の3μm以下粒子の流入個数の増加や凝集処理特性などによって変化する。予め、決められた被処理水を対象に急速撹拌池のGT値を計測できる場合はまだしも、急速撹拌池のGT値を計測できない場合は、土木構造物の急速撹拌時間T値を予め決めなければならない。また、例えば取水源の変更などを含めて、急速撹拌強度G値は増減可能な急速撹拌機を選定しておくことが望まれる。
図11は、ポリ塩化アルミニウム(PAC)の注入量を、被処理水濁度4度:14.5mg/L、同10度:35mg/L、同20度:42mg/L、同50度:45mg/Lとそれぞれ定めた際のパイロットプラントで採用した注入量制御に用いた一例を示す図である。
実際の浄水場では、被処理水濁度の上下限値を例えば4度~1000度と仮定すると、多数の曲がりを持つ折れ線グラフを描くことにより、被処理水濁度の変化に併せて連続的にポリ塩化アルミニウム(PAC)の注入量が決められてきた。
ポリ塩化アルミニウム(PAC)の注入量を急速撹拌池のGT値が上回った場合は、無機凝集剤粒子の水中残留量が僅かに不足して、急速撹拌池の第6槽目の3μm以下粒子の残留個数が、第5槽目を上回る結果となって表れるため、ポリ塩化アルミニウム(PAC)の注入量の増加の検討が必要になる。これとは逆に、ポリ塩化アルミニウム(PAC)の注入量が急速撹拌池のGT値を上回っていれば、処理水濁度は問題ないが、運転コストの削減のために、ポリ塩化アルミニウム(PAC)の注入量を目標値に向かって下げてゆくことが必要になる。
実証試験では、従来のフロック形成池のように急速撹拌時間T値40分を選択できなかったこと、及びフロックの破壊を当初から許容していたため、急速撹拌強度G値450s-1を選択した。しかし、フロック形成池の単位時間、単位容積当たりの仕事量は、急速撹拌強度G値の二乗に比例する(参考文献1の187頁参照)。したがって、急速撹拌池の撹拌動力コストの削減のために、従来のフロック形成池と同様に、所定のGT値の下で、最も低い急速撹拌強度G値を採用することが好ましい。
以上の説明により、「必要最少の無機凝集剤注入量及び急速撹拌池のGT値」は、「必要最少のGT値を持つ直列多槽に分割された押出流れの急速撹拌池を運転して、被処理水の3μm以下粒子を集塊化・低減する一方、一旦形成された大型微フロックの破壊を3μm以上微フロックの増加にとどめて、急速撹拌池出口水の高強度、高密度、低比抵抗の3μm以下粒子と3μm以上微フロックの流出個数を最少化できる必要最少の無機凝集剤注入量」と定義できる。
今後、実際の浄水場で採用する無機凝集剤の注入量制御法は、従来の被処理水濁度に替えて、高感度濁度計で計測された被処理水の3μm以下粒子の流入個数を対象に、注入量をトライアンドエラーで決める必要がある。
図12は、実証試験の逆流洗浄後の砂ろ過池に上向流傾斜板未処理沈澱水を直接流入させた際のフロキュレータ機能を担う砂層表層の熟成過程(捨て水工程とも呼ぶ)の集塊化の挙動を、捨て水配管に砂ろ過水が流出を開始した時点から1時間にわたり、3μm以下粒子と7μm以上微フロックの個数を概ね1分間隔で、高感度濁度計を用いて計測して、別途計測した沈澱水の両懸濁粒子の個数から除去率を算出した図である。
図12に示すように、逆流洗浄後の砂ろ過池に沈澱水を流入させても、砂ろ過水は直ちに捨て水配管に流出する訳ではなく、砂ろ過池の水位が捨て水配管の流出レベルに達してはじめて、砂ろ過水は捨て水配管に流出してくる。砂ろ過池の3μm以下粒子の除去率は、捨て水配管出口への砂ろ過水の流出開始直後の72%から同10分後の31%まで概ね直線的に低下した。流出開始直後の3μm以下粒子の除去率72%は、逆流洗浄に使用した砂ろ過水が捨て水配管出口に最初に流出したことを示していて、同10分後の31%までの3μm以下粒子の除去率の直線的な低下は、沈澱水の3μm以下粒子が砂ろ過水に漏洩したことを示している。一方、7μm以上微フロックの除去率は、流出開始時の92.5%に始まり、流出開始11分後に99.6%を越えた直後から、3μm以下粒子の除去率は上昇に転じて、同60分後に70.4%まで上昇した。以上のように、砂ろ過池に流入した3μm以下粒子は、砂層表層内の既存の7μm以上微フロックとの衝突と付着による凝集反応で集塊化・低減されたことがわかる。
ところが、従来の砂ろ過池の粒子分離機構は、緩速ろ過池の「輸送」「付着」「浄化」の3つのメカニズムに分けて説明されてきたため、急速ろ過システムが開発されて150年が経過したにもかかわらず、急速ろ過池の粒子分離のメカニズムは明らかにされてこなかった。
すなわち、砂層表層に7μm以上微フロックが捕捉されても、3μm以下粒子を除去できる訳ではなく、砂層表層に捕捉された7μm以上微フロックが既存フロックjとして機能してはじめて、3μm以下粒子iの除去率が向上に転じる。参考文献2は、同凝集反応をContact Filtrationと呼び、接触フロック形成であると理解されてきた。
さらに、砂層表層内の3μm以下粒子と7μm以上微フロックの2粒子の衝突の際の付着は、通常急速撹拌池内で2粒子が獲得した付着力に基づく。ところが、急速ろ過池入口への無機凝集剤の再注入により、粒子除去率の向上が既に説明されてきたように、無機凝集剤の水中残留量の増加は、付着力を向上させる。
以上により、「凝集理論」の物理的凝集説に基づく懸濁粒子の荷電中和(参考文献1の急速混和池の説明参照)は実在しないことが明らかである。したがって、上で説明したように、急速撹拌池はフロック形成池と同じ「水流が持つ位置エネルギーを撹拌エネルギーに変換できるフロキュレータ」である。また、高速凝集沈澱池、粗ろ過池、砂ろ過池は、上述の式(1)、式(2)、式(3)に従う。
図13は、実証試験(1年間)の淀川右岸表流水と汚泥処理系返流水から成る被処理水の粗ろ過池と砂ろ過池の0.5-1μm粒子から60μm以上微フロックの除去率、及び両ろ過水濁度の一例を示す図である。
図13に示すように、粗ろ過池と砂ろ過池は、沈澱水に残留した3μm以下粒子と3μm以上微フロックをそれぞれ固液分離した。粗ろ過池と砂ろ過池の除去率は、3μm以下粒子が最も低く、3μm以上微フロックの除去率は、径が大きくなるほど高くなり、両ろ過水濁度は、各々0.042度と0.020度であり十分低かったが、沈澱水に残留した3μm以下粒子と3μm以上微フロックは、粗ろ過池で予め固液分離された結果、砂ろ過池への3μm以上微フロックの流入は大幅に削減されたことがわかる。すなわち、従来の急速ろ過システムの砂ろ過池の砂粒空隙容積は極めて小さいが、粗ろ過池で固液分離された3μm以下粒子と3μm以上微フロックが砂ろ過池に流入していたため、砂ろ過池のろ過継続時間は自ずと短くなっていた。
図14は、実証試験(1年間)の淀川右岸表流水と汚泥処理系返流水から成る被処理水を、必要最少の無機凝集剤注入量と急速撹拌池のGT値との凝集条件で集塊化・低減して、取付間隔が狭く多段に積層された上向流傾斜板を備えた新しいスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池を上向流速3.2m/hと2.24m/hの処理条件で連続運転した際の、沈澱水濁度を比較した一例を示す図である。なお、図14に示す例では、上向流速3.2m/hの場合の直列多槽に分割された押出流れの急速撹拌池のGT値は243,000(=450×1.5分×6槽×60)であったが、上向流速2.24m/hの場合のGT値は231,000(=450×2.14分×4槽×60)と概ね同等となるように設定した。
図14に示すように、沈澱水の濁度は、浄水場の汚泥返流水の日間変動の影響を大きく受けただけでなく、実証試験の粗ろ過池の単独・自動ドレン洗浄、砂ろ過池の逆流洗浄及びスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の集泥ホッパー(コンセントレータ)からの濃縮汚泥の引抜きなどの各装置の停止の影響を受けて、その都度一時的に高くなった。したがって、図14の沈澱水の濁度のグラフは、上の要因に基づくピーク濁度のプロットを消去して表現した。
上向流速2.24m/hの沈澱水濁度は、以下説明する上向流速の低下に伴う沈澱処理効果の向上のため、上向流速3.2m/hと比べて低くなったことが明らかである。
取付間隔が狭く多段に積層された上向流傾斜板を備えた新しいスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の上向流速を低下すると、単位時間(dt)当たりの懸濁粒子iの流入個数(dni)は減少する一方、単位容積(m3)当たりの既存フロックjの個数濃度(dnj)は増加するため、スラッジ・ブランケット層のフロック形成速度(dni/dt)は増大する。それに加えて、上で説明したように、高速凝集沈澱池、粗ろ過池、砂ろ過池は、「水流が持つ位置エネルギーを撹拌エネルギーに変換できるフロキュレータ」である。
したがって、池内流速vの3乗に比例するスラッジ・ブランケット層内の撹拌強度G値(剪断力)が低下することによる既存フロックjの破壊の軽減と相俟って、沈澱水濁度は明らかに低くなり、沈澱水の3μm以下粒子と3μm以上微フロックの流出個数は最少化された。
図15、図16は、実証試験(1年間)の淀川右岸表流水と汚泥処理系返流水から成る被処理水を、必要最少の無機凝集剤注入量と急速撹拌池のGT値との凝集条件で集塊化・低減して、取付間隔が狭く多段に積層された上向流傾斜板を備えた新しいスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池を上向流速3.2m/hと2.24m/hの処理条件で連続運転した際の、粗ろ過池と砂ろ過池の損失水頭の動きと近似線を示す図である。
図15、図16に示すように、取付間隔が狭く多段に積層された上向流傾斜板を備えた新しいスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の上向流速を3.2m/hから2.24m/hに低下させると、単独・自動ドレン洗浄可能な粗ろ過池と砂ろ過池のろ過速度106.7m/日と102.9m/日は、各々74.9m/日と72.2m/日に低下した。
その結果、取付間隔が狭く多段に積層された上向流傾斜板を備えた新しいスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池と同様に、両ろ過池の単位時間(dt)当たりの3μm以下粒子の流入個数(dni)は減少して、両ろ過池のフロック形成速度(dni/dt)は低くなり、結果として単独・自動ドレン洗浄可能な粗ろ過池と砂ろ過池の損失水頭の近似線は、各々実線から破線に変化した。
参考文献7は、高ALT比の凝集条件で形成された低強度、低密度、高比抵抗の3μm以上微フロックを捕捉した砂ろ過池の損失水頭の動きは二次曲線であり、ろ過継続時間は短くなる傾向にあった。一方、低ALT比の凝集条件で形成された高強度、高密度、低比抵抗の3μm以上微フロックを捕捉した砂ろ過池の損失水頭の動きは直線で近似できると説明された。したがって、図15、図16の単独・自動ドレン洗浄可能な粗ろ過池と砂ろ過池との損失水頭の上昇は緩やかであり、概ね直線で近似されたことから、本実証試験の凝集条件は、無機凝集剤は従来の急速ろ過システムのように過剰注入ではないことがわかる。
図15、図16の単独・自動ドレン洗浄可能な粗ろ過池と砂ろ過池の損失水頭の上昇は、ろ過速度106.7m/日と102.9m/日からそれぞれ74.9m/日と72.2m/日に低下すると、緩やかになる。すなわち、砂ろ過池の逆流洗浄コストの削減のための必須要件は、(i)急速撹拌池で高強度、高密度、低比抵抗の3μm以上微フロックを形成すること、(ii)粒子分離効率の高い粗ろ過池を前置して、砂ろ過池の単位時間当たりの3μm以上微フロックの流入個数を低減すること、(iii)ろ過速度を低減して、砂ろ過池の単位時間当たりの3μm以上微フロックの流入個数を低減すること、の3点である。
従来のConventionalな急速ろ過システムの薬品沈澱池の表面負荷率は、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の表面負荷率の概ね半分である。したがって、薬品沈澱池をスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池に改造すると、上昇流速は最大値3.6m/hの概ね半分で運転できる。
図17は、上述の図12が実証試験の逆流洗浄後の砂ろ過池に上向流傾斜板未処理沈澱水を直接流入させたのに対して、上向流傾斜板処理沈澱水を直接流入させた際のフロキュレータ機能を担う砂層表層の熟成効果(捨て水工程とも呼ぶ)の集塊化の挙動の違いを比較検証した図である。図17は、上述の図12と同様に、捨て水配管に砂ろ過水が流出を開始した時点から1時間にわたり、3μm以下粒子と7μm以上微フロックの個数を概ね1分間隔で、高感度濁度計を用いて計測して、別途計測した沈澱水の両懸濁粒子の個数から除去率を各々算出して比較した。
図17を見るとわかるように、上向流傾斜板処理沈澱水を直接流入させた際のフロキュレータ機能を担う砂層表層の熟成効果は、まず7μm以上微フロックの除去率に明らかな違いが表れた。すなわち、上向流傾斜板未処理沈澱水中の単位容積当たりの7μm以上微フロックの流入個数は1818個/mLに対して、上向流傾斜板処理沈澱水中の単位容積当たりの7μm以上微フロックの流入個数は517個/mLと概ね1/3以下に留まった。その結果、上向流傾斜板処理沈澱水を流入させた場合の砂層表層の熟成効果は、上向流傾斜板未処理沈澱水を流入させた場合と比べて明らかに遅くなり、7μm以上微フロックの除去率は低くなった。同様に、3μm以下粒子の除去率の上昇も明らかに低くなり、捨て水ラインへの砂ろ過水の流出開始から60分後の3μm以下粒子の除去率は、上向流傾斜板未処理沈澱水の場合が70.4%であったのに対して、上向流傾斜板処理沈澱水の場合が57.5%にとどまった。以上のように、砂ろ過池の砂層表層の熟成効果(捨て水工程とも呼ぶ)は、単位容積当たりの7μm以上微フロックの流入個数の多い上向流傾斜板未処理沈澱水を使用すると、砂層表層の既存フロックの成長が早くなるため有効になると判断された。
以上のような本実施形態では、次の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、沈澱部43の底面全体に小形水槽45を設置し、当該小形水槽45の形状を逆錘形または逆錘台形とすることにより、小形水槽45の底部に向かうに従って当該小形水槽45の容量が次第に小さくなるので、小形水槽45の底部近傍の上昇流速を最も大きくすることができる。そのため、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池4内の通水速度を低下させたとしても、小形水槽45内の底部近傍の式(2)に従う上昇流速を大きくすることができる。したがって、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池4における損失水頭を低下でき、且つ、スラッジ・ブランケット層S内における上昇流速を十分に稼ぐことができる。さらに、小形水槽45底面への既存フロックの沈澱・堆積を抑制できる。
(2)本実施形態では、仕切り壁42によって沈澱部43と分割された集泥ホッパー部44が複数設けられるため、沈澱部43内部の余剰フロックを高濃度に濃縮でき、排泥回数を削減することができる。
(3)本実施形態では、小形水槽45の底部の面積が当該小形水槽45の天端の全表面積の1/10以下であるので、逆錘形または逆錘台形とされた小形水槽45の側面の傾斜を急峻とすることができる。そのため、小形水槽45の底部に向かうに従って当該小型水槽の容量が顕著に小さくなるので、小形水槽45底部近傍の上昇流速を大きくすることができ、小形水槽45の底部への既存フロックの沈澱・堆積を抑制できる
(4)従来のスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池では、沈澱池底面が平坦であったことから真空塔の設置が不可欠であったため、沈澱部における被処理水の損失水頭が1.2mであり、且つ、上昇流速が3.6m/hr以下であった。これに対し、本実施形態では、沈澱部43における被処理水の損失水頭が1.2m以下であり、且つ、小形水槽45の天端面より上の被処理水の上昇流速が3.6m/hr以下であるので、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池4における損失水頭を低下でき、且つ、スラッジ・ブランケット層S内における上昇流速を十分に稼ぐことができる。さらに、小形水槽45底面への既存フロックの沈澱・堆積を抑制できる。
(5)本実施形態では、小形水槽45は被処理水の流入に伴う乱流を所定空間内に留めるための阻流板451を備えるので、小形水槽45内において発生した乱流の剪断力により、阻流板451上方のスラッジ・ブランケット層内の既存フロックの破壊を抑制できる。
(6)本実施形態では、スラッジ・ブランケット層Sの上方に形成される清澄分離ゾーンC内に、沈澱水中の3μm以上微フロックの残留個数を所定値以下に低減するために取付間隔が狭く多段に積層された上向流式傾斜板装置48が配置されるので、必要最少の無機凝集剤注入量と急速撹拌池のGT値との凝集条件で運転しても、沈澱水の3μm以下の粒子と3μm以上の微フロックとの残留個数および濁度を所定値以下に低下させることができる。
(7)本実施形態では、被処理水、急速撹拌池2の複数の撹拌槽21内水、沈澱水、ろ過水の単位容積当たりの懸濁粒子の径と個数を連続的に監視でき、異常の発生等を迅速に検知、3μm以下粒子の最少化に対処することができる。
また、従来の急速ろ過システムは、沈澱水濁度もしくは砂ろ過水濁度を計測するまで、凝集処理の異常が明らかにならなかった。これに対して実施形態では、被処理水、急速撹拌池2の複数の撹拌槽21内水、沈澱水、ろ過水の単位容積当たりの懸濁粒子の径と個数を連続的に監視できするため、凝集処理の異常の発生等は、急速撹拌池2の第n槽の3μm以下粒子の個数の計測結果を把握すると、迅速に検知することができ、しかも第(n+1)槽に無機凝集剤を所定量再注入することで正常値に戻すことができる。
(8)本実施形態では、被処理水の濁度が例えば4度以下に低下して、スラッジ・ブランケット層Sのスラッジ濃度が低下した場合でも、集泥ホッパー部44内または汚泥貯留池10内の汚泥を返送配管61により返送することで、スラッジ・ブランケット層Sの既存フロック濃度を安定的に維持させることができる。
(9)本実施形態では、急速撹拌池2は、直列に接続された複数の撹拌槽21と、当該撹拌槽21にそれぞれに設けられる撹拌機22とを有するので、被処理水の3μm以下の粒子と無機凝集剤の粒子との撹拌を十分に行うことができ、急速撹拌池出口水の3μm以下粒子の個数を最少化できる。
(10)本実施形態では、撹拌機22の撹拌翼23の回転速度を可変させることができるので、例えば、被処理水の3μm以下の粒子の流入個数や無機凝集剤の注入量、水温等に応じて撹拌翼23の回転速度を可変でき、急速撹拌強度G値を増加することによって、3μm以下の粒子の低減効果を確実に確保できる。
(11)ろ過池5は、沈澱水が流入する粗ろ過池51と、当該粗ろ過池51でろ過された粗ろ過水が流入する砂ろ過池52とを有するので、砂ろ過池52の単位容積当たりの3μm以下粒子と3μm以上微フロックとの流入個数を十分少なくすることができる。さらに、沈澱水に残留した3μm以上の微フロックによってろ過池が閉塞してしまい、洗浄頻度が高くなってしまうことを抑制できる。
(12)本実施形態では、上向流式傾斜板未処理沈澱水を、ドレン洗浄後の粗ろ過池51と逆流洗浄後の砂ろ過池52に流入させるために、未処理沈澱水流入配管53をそれぞれ備えるので、ドレン洗浄後の粗ろ過池51および逆流洗浄後の砂ろ過池52のろ層の熟成効果を迅速且つ確実に発揮させることができる。
(13)本実施形態では、集泥ホッパー部44内に堆積した汚泥の界面を測定可能に構成された汚泥界面計の指示値、または、タイマーの設定値に従って、集泥ホッパー部44内に堆積した濃縮汚泥を系外に排泥するので、集泥ホッパー部44内の濃縮汚泥を適切なタイミングで排泥することができ、しかも従来法と比べて排泥回数を大幅に削減できる。
(14)本実施形態では、沈澱部43の内部を空にした状態から、沈澱部43への被処理水の流入を開始させる際に、汚泥貯留池10内の濃縮汚泥を、予め沈澱部43に供給してスラッジ・ブランケット層S内の既存フロック濃度を高めると同時に、予め定めた過剰な無機凝集剤を注入するので、適正なスラッジ濃度のスラッジ・ブランケット層Sを迅速に形成させることができる。さらに、低濁度の沈澱水を運転再開当初から獲得できる。
(15)本実施形態では、急速撹拌池2の無機凝集剤の注入量を、高感度濁度計で計測した被処理水中の単位容積当たりの3μm以下粒子の流入個数に基づいて決定するので、無機凝集剤の注入量を低減することができ、高強度、高密度、低比抵抗の3μm以下の粒子と3μm以上の微フロックの形成により、運転コスト及び水処理に伴うCO2発生量の削減に貢献できる。
(16)本実施形態では、無機凝集剤注入量と急速撹拌池のGT値の凝集条件により、急速撹拌池の出口水の3μm以下粒子と3μm以上微フロックの流出個数を最少化することができる。その際、急速撹拌池内で一旦形成された大型微フロックの破壊は起こるが、同破壊を高強度、高密度、低比抵抗の3μm以上微フロックの増加に留めると、後続のスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池、粗ろ過池、砂ろ過池の3μm以上微フロックの除去率は高く、一方3μm以下粒子の除去率は最も低いので、3つの凝集固液分離装置にとって、上の凝集条件で大型微フロックの破壊は起こるものの、その実態はあくまでも集塊化となるため、各処理水濁度は高くなることがない。
(17)本実施形態では、被処理水と急速撹拌池2の複数の撹拌槽21内水の単位容積当たりの3μm以下粒子の個数のプロットは、急速撹拌時間に対する片対数グラフにおいて直線で近似できるので、急速撹拌池のn槽目までの撹拌槽内水の単位容積当たりの3μm以下の粒子の個数のプロットの動きを解析して、急速撹拌池出口水の3μm以下粒子の残留個数が所定値よるも多くなる場合に、同解析結果に基づいて、(n+1)槽目の急速撹拌池への無機凝集剤の再注入量を決定することにより、急速撹拌池出口水の3μm以下粒子の残留個数を所定の個数に無機凝集剤の再注入量を適正に制御することができる。
(18)本実施形態では、急速撹拌強度G値の増減によって急速撹拌池2のGT値を増減するので、急速撹拌池2を増設することなく、急速撹拌池のGT値を増減できる。
(19)本実施形態では、急速撹拌池出口水の3μm以下粒子を最少化した上、スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池4と粗ろ過池51で3μm以下粒子を集塊化・低減したので、砂ろ過池52に流入した3μm以下粒子を砂層表層で集塊化・低減すると、砂ろ過水に残留する3μm以下粒子を最少化できる。
(20)本実施形態では、粗ろ過池51の自動ドレン洗浄および砂ろ過池52の逆流洗浄を適切なタイミングで実行することができる。従来の凝集沈澱池と砂ろ過池の組み合わせでは、沈澱水に残留した3μm以上の微フロックが砂ろ過池の砂粒空隙を早期に閉塞させるため、ろ過継続時間は短くなり、砂ろ過池の逆流洗浄頻度は高くなるという課題があった。これに対し、この構成では、高強度、高密度、低比抵抗の既存フロックの形成と相俟って、砂ろ過池の逆流洗浄コスト及び水処理に伴うCO2発生量の削減効果を向上出来る。
(21)本実施形態では、急速撹拌時間に対する片対数グラフにおいて直線で近似される被処理水から急速撹拌池2のn槽目までの撹拌槽21内水の単位容積当たりの3μm以下粒子の個数のプロットの動きを解析して、同解析結果に基づいて、(n+1)槽目の急速撹拌池2への無機凝集剤の再注入量を決定するので、無機凝集剤の再注入量を適正に制御することができる。そのため、急速撹拌池出口水の3μm以下の粒子の残留個数を低減することができる。
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、集水装置47は沈澱部43の上方に懸架された所謂集水トラフにより構成されていたが、これに限定されない。例えば、集水装置は集水用の配管(潜り堰と呼ばれる水面下に配置された多孔配管)により構成されていてもよい。
前記実施形態では、無機凝集剤注入装置3は、ポリ塩化アルミニウムや塩化第二鉄等の無機凝集剤を注入可能に構成されていたが、これに限定されない。例えば、凝集剤注入装置は、有機高分子凝集剤を注入可能に構成されていてもよい。
前記実施形態では、水処理システム1は浄水処理システムとして構成されていたが、これに限定されない。例えば、水処理システムは、工業用水処理システムや産業分野の用排水処理システムとして構成されていてもよい。
1…水処理システム、2…急速撹拌池、3…無機凝集剤注入装置、4…ブランケット型高速凝集沈澱池、5…ろ過池、6…排泥池、7…排水池、8…排泥濃縮槽、9…排水濃縮槽、10…汚泥貯留池、21…撹拌槽、22…撹拌機、23…撹拌翼、41…躯体、42…仕切り壁、43…沈澱部、44…集泥ホッパー部、45…小形水槽、46…被処理水流入配管、47…集水装置、48…上向流式傾斜板装置、51…粗ろ過池、52…砂ろ過池、53…未処理沈澱水流入配管、61…返送配管、421…開口部、451…阻流板、C…清澄分離ゾーン、S…ブランケット層。

Claims (25)

  1. 平面視において矩形状とされ、且つ、底面が水平とされた躯体であって、前記躯体と同一高さの仕切り壁で沈澱部と集泥ホッパー部とに分割された前記躯体と、
    スラッジ・ブランケット層高の全てまたは一部の底部構造を逆錐台形とし、前記沈澱部の底面全体に設置される小形水槽と、
    前記小形水槽の近傍に被処理水を流入させる被処理水流入配管と、
    前記スラッジ・ブランケット層の上方に形成される清澄分離ゾーン内を上昇する水を集水する集水装置と、を備え、
    前記沈澱部において、前記小形水槽の底部近傍の上昇流速が最も大きく、
    平面視において、前記小形水槽の底面の面積が前記小形水槽の天端の全表面積の1/10以下である
    ことを特徴とするスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池。
  2. 請求項1に記載のスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池において、
    前記集泥ホッパー部は、前記仕切り壁によって所定寸法に分割されている
    ことを特徴とするスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池。
  3. 請求項1に記載のスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池において、
    前記被処理水の流入配管を介して前記沈澱部の前記小形水槽に流入した後、前記集水装置によって集水されるまでの前記被処理水の損失水頭は1.2m以下であり、且つ、前記小形水槽の天端面より上の前記被処理水の上昇流速が3.6m/hr以下である
    ことを特徴とするスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池。
  4. 請求項1に記載のスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池において、
    前記小形水槽の前記被処理水の流入に伴う乱流を所定空間内に留めるための阻流板を備える
    ことを特徴とするスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池。
  5. 請求項1に記載のスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池において、
    前記スラッジ・ブランケット層の上方に形成される清澄分離ゾーン内に配置され、沈澱水中の3μm以上フロックの残留個数を所定値以下に低減するために取付間隔が狭く多段に積層された上向流式傾斜板装置を備える
    ことを特徴とするスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池。
  6. 請求項に記載のスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池と、
    前記スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の前段に設けられ、前記被処理水を撹拌可能に構成された急速撹拌池と、
    前記急速撹拌池に流入する前記被処理水中の懸濁粒子を集塊化するための無機凝集剤を注入可能に構成された無機凝集剤注入装置と、
    前記スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の後段に設けられ、前記集水装置で集水された前記沈澱水をろ過可能に構成されたろ過池と、
    重力濃縮後の濃縮汚泥の所定量を貯留する汚泥貯留池と、を備える
    ことを特徴とする水処理システム。
  7. 請求項に記載の水処理システムにおいて、
    前記被処理水、前記急速撹拌池の複数の撹拌槽内水、前記沈澱水、ろ過水の単位容積当
    たりの懸濁粒子の径と個数を連続的に計測する濁度計をそれぞれ備える
    ことを特徴とする水処理システム。
  8. 請求項または請求項に記載の水処理システムにおいて、
    前記集泥ホッパー部内に堆積した汚泥もしくは前記汚泥貯留池の濃縮汚泥を、前記急速撹拌池の被処理水濁度計の前段に返送する返送配管を備える
    ことを特徴とする水処理システム。
  9. 請求項に記載の水処理システムにおいて、
    前記急速撹拌池は、直列に接続された押出流れの複数の撹拌槽と、複数の前記撹拌槽にそれぞれに設けられ、前記撹拌槽内の前記被処理水を撹拌する撹拌機と、を有する
    ことを特徴とする水処理システム。
  10. 請求項に記載の水処理システムにおいて、
    前記撹拌機は、回転することで前記被処理水を撹拌する撹拌翼を有し、前記撹拌翼の回転速度を可変させることができるように構成されている
    ことを特徴とする水処理システム。
  11. 請求項に記載の水処理システムにおいて、
    前記ろ過池は、前記集水装置で集水された前記沈澱水が流入する粗ろ過池と、前記粗ろ過池でろ過された粗ろ過水が流入する砂ろ過池と、を有する
    ことを特徴とする水処理システム。
  12. 請求項11に記載の水処理システムにおいて、
    前記沈澱部の内部において前記上向流式傾斜板装置を通過していない前記被処理水を、洗浄後の前記粗ろ過池と逆流洗浄後の前記砂ろ過池に流入させる流入配管を各々備える
    ことを特徴とする水処理システム。
  13. 平面視において矩形状とされ、且つ、底面が水平とされた躯体であって、前記躯体と同一高さの仕切り壁で沈澱部と集泥ホッパー部とに分割された前記躯体と、スラッジ・ブランケット層高の全てまたは一部の底部構造を逆錐台形とし、前記沈澱部の底面全体に設置される小形水槽と、前記小形水槽の近傍に被処理水を流入させる被処理水流入配管と、前記スラッジ・ブランケット層の上方に形成される清澄分離ゾーン内を上昇する水を集水する集水装置と、を備えるスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の運転方法であって、
    平面視において、前記小形水槽の底面の面積が前記小形水槽の天端の全表面積の1/10以下であり、
    前記沈澱部において、前記小形水槽の底部近傍の上昇流速が最も大きく、且つ、前記小形水槽内を前記被処理水が上昇するにしたがって、前記被処理水の上昇流速が順次低下し、前記小形水槽の天端から前記集水装置までの上昇流速が最も小さくなる
    ことを特徴とするスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の運転方法。
  14. 請求項13に記載の前記スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の運転方法において、
    前記集泥ホッパー部内に堆積した汚泥の界面を測定可能に構成された汚泥界面計の指示値、または、タイマーの設定値に従って、前記集泥ホッパー部内に堆積した濃縮汚泥を系外に排泥する
    ことを特徴とするスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の運転方法。
  15. 請求項13に記載の前記スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の運転方法において、
    前記沈澱部への前記被処理水の流入停止に当たり、前記沈澱部内の懸濁液の全量を汚泥貯留池に貯留し、
    前記沈澱部への前記被処理水の流入が停止した停止状態から、前記沈澱部に前記被処理水の流入する運転状態にする際に、前記汚泥貯留池内の濃縮汚泥を、予め前記沈澱部に供給して前記スラッジ・ブランケット層内の既存フロック濃度を高めると同時に、予め定めた過剰な無機凝集剤を注入する
    ことを特徴とするスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の運転方法。
  16. 平面視において矩形状とされ、且つ、底面が水平とされた躯体であって、前記躯体と同一高さの仕切り壁で沈澱部と集泥ホッパー部とに分割された前記躯体、スラッジ・ブランケット層高の全てまたは一部の底部構造を逆形または逆台形とし、前記沈澱部の底面全体に設置される小形水槽、前記小形水槽の近傍に被処理水を流入させる被処理水流入配管、前記スラッジ・ブランケット層の上方に形成される清澄分離ゾーン内を上昇する水を集水する集水装置、および、前記スラッジ・ブランケット層の上方に形成される清澄分離ゾーン内に配置され、沈澱水中の3μm以上フロックの残留個数を所定値以下に低減するために取付間隔が狭く多段に積層された上向流式傾斜板装置を備えるスラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池と、前記スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の前段に設けられ、前記被処理水を撹拌可能に構成された急速撹拌池と、前記急速撹拌池に流入する前記被処理水中の懸濁粒子を集塊化するための無機凝集剤を注入可能に構成された無機凝集剤注入装置と、前記スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池の後段に設けられ、前記集水装置で集水された前記沈澱水をろ過可能に構成されたろ過池と、重力濃縮後の濃縮汚泥の所定量を貯留する汚泥貯留池と、を備える水処理システムの運転方法であって、
    前記急速撹拌池の無機凝集剤の注入量は、濁度計で計測した前記被処理水中の単位容積当たりの3μm以下粒子の流入個数に基づいて決定する
    ことを特徴とする水処理システムの運転方法。
  17. 請求項16に記載の水処理システムの運転方法において、
    機凝集剤注入量と前記急速撹拌池のGT値の凝集条件で、前記被処理水の3μm以下粒子を低減・集塊化して、一旦形成された60μm以上のフロックの破壊を3μm以上フロックの増加に留めて、前記急速撹拌池の出口水の3μm以下粒子と3μm以上フロックの流出個数を最少化する
    ことを特徴とする水処理システムの運転方法。
  18. 請求項17に記載の水処理システムの運転方法において、
    前記被処理水と前記急速撹拌池の押出流れの複数の撹拌槽内水との単位容積当たりの懸濁粒子の径と個数を濁度計で連続的に計測した場合、前記被処理水と前記急速撹拌池の押出流れの複数の撹拌槽内の水の単位容積当たりの3μm以下粒子の個数のプロットは、急速撹拌時間に対する片対数グラフにおいて直線で近似できる
    ことを特徴とする水処理システムの運転方法。
  19. 請求項16に記載の水処理システムの運転方法において、
    前記急速撹拌池のGT値の増減を必要とする際に、急速撹拌強度G値の増減によって、前記急速撹拌池のGT値を増減する
    ことを特徴とする水処理システムの運転方法。
  20. 請求項16に記載の水処理システムの運転方法において、
    前記ろ過池は砂ろ過池を備え、前記砂ろ過池でろ過された砂ろ過水の単位容積当たりの全懸濁粒子に占める3μm以下粒子の比率は99%以上である
    ことを特徴とする水処理システムの運転方法。
  21. 請求項16に記載の水処理システムの運転方法において、
    前記集泥ホッパー部内の汚泥または前記汚泥貯留池内の濃縮汚泥を、被処理水濁度が10度以上となるように、前記急速撹拌池の前記被処理水の濁度計の前段に返送して、前記急速撹拌池の凝集処理を行うことにより、前記スラッジ・ブランケット層内のフロックの消失を回避する
    ことを特徴とする水処理システムの運転方法。
  22. 請求項16に記載の水処理システムの運転方法において、
    前記ろ過池は、前記集水装置で集水された前記沈澱水が流入する粗ろ過池と、前記粗ろ過池でろ過された粗ろ過水が流入する砂ろ過池と、を有し、
    前記粗ろ過池の損失水頭または粗ろ過水濁度のいずれか一方が予め定めた値を越えた際に前記粗ろ過池の自動洗浄を行い、
    前記砂ろ過池の損失水頭また砂ろ過水濁度のいずれか一方が予め定めた値を越えた際に前記砂ろ過池の逆流洗浄を行う
    ことを特徴とする水処理システムの運転方法。
  23. 請求項16に記載の水処理システムの運転方法において、
    前記ろ過池は、前記集水装置で集水された前記沈澱水が流入する粗ろ過池と、前記粗ろ過池でろ過された粗ろ過水が流入する砂ろ過池と、を有し
    浄後の前記粗ろ過池と、逆流洗浄後の前記砂ろ過池とのそれぞれのろ層の熟成を促進させるために、前記上向流式傾斜板装置を通過していない前記被処理水を、洗浄後の前記粗ろ過池と逆流洗浄後の前記砂ろ過池とにそれぞれ流入させる
    ことを特徴とする水処理システムの運転方法。
  24. 請求項16に記載の水処理システムの運転方法において、
    前記被処理水と前記急速撹拌池の複数の撹拌槽内水の単位容積当たりの懸濁粒子の径と個数を濁度計で連続的に計測し、
    急速撹拌時間に対する片対数グラフにおいて直線で近似される前記被処理水から前記急速撹拌池のn槽目までの撹拌槽内水の単位容積当たりの3μm以下粒子の個数のプロットの動きを人工知能で解析して、同解析結果に基づいて、(n+1)槽目の前記急速撹拌池への無機凝集剤の再注入量を決定する
    ことを特徴とする水処理システムの運転方法。
  25. 請求項16に記載の水処理システムの運転方法において、
    前記上向流式傾斜板装置を備えた前記スラッジ・ブランケット型高速凝集沈澱池のプロセス入口の損失水頭は0.6m以下であり、上昇流速は1.8m/hr以下である
    ことを特徴とする水処理システムの運転方法。
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