JP7291191B2 - 微細金属粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、微細金属粒子の製造方法に関する。
金属を微粒化する技術として、固体金属の粉砕や、溶融した金属を噴射冷却するアトマイズ法(例えば、特許文献1参照)等がある。
特開2018-141223号公報(0031段落)
しかしながら、従来の多くの技術はマイクロメートルオーダーの粒径までの微粒化技術であり、サブミクロンオーダーの粒径まで金属を微粒化することには不向きである。
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも1つの実施形態は、金属をサブミクロンオーダーの粒径まで微粒化することができる微細金属粒子の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本開示に係る微細金属粒子の製造方法は、粒径の範囲が2μm~3mmの範囲である金属粒子を準備するステップと、炭化水素を含む供給ガスを前記金属粒子に供給し前記金属粒子に粒界を生じさせるステップとを含み、前記供給ガスと前記金属粒子との接触は600℃~900℃の温度で行われる。
本開示の微細金属粒子の製造方法によれば、炭化水素をカーボン及び水素に直接分解する反応の触媒として金属粒子が機能する。この触媒作用の過程で、生成した水素による水素侵食によって金属粒子に粒界が生じ、この粒界を起点として、金属粒子から微粒子がマイグレーションにより移動し、生成したカーボンと反応して金属カーバイドが形成される。水素侵食に伴って金属のカーバイド化が進行し、サブミクロンオーダーの粒径の微粒子に分割されていく。このようにして、金属をサブミクロンオーダーの粒径まで微粒化することができる。
本開示の一実施形態に係る微細金属粒子の製造方法を実施するための装置の構成模式図である。 本開示の一実施形態に係る微細金属粒子の製造方法の効果を検証するための実験装置の構成模式図である。 実施例1の実験結果を表す図である。 比較例1の実験結果を表す図である。 比較例2の実験結果を表す図である。 実施例1の実験開始前及び実験終了後の触媒(金属粒子)の写真である。 実施例1の触媒作用のメカニズムを説明するための図である。 実施例1の触媒作用のメカニズムの第1段階における触媒の粒子の表面の写真である。 実施例1の触媒作用のメカニズムの第2段階における触媒の粒子の表面の写真である。 実施例1の触媒作用のメカニズムの第4段階における触媒の粒子の表面の写真である。 実施例1の触媒作用のメカニズムの第1段階及び第4段階における触媒の粒子のX線回折パターンである。 実施例2~4の実験結果を表す図である。 実施例3の実験開始前における鉄粉の表面像を走査型電子顕微鏡によって撮影した写真である。 実施例3の実験開始後5時間経過時における鉄粉の表面像を走査型電子顕微鏡によって撮影した写真である。 実施例3の実験開始後10時間経過時における鉄粉の表面像を走査型電子顕微鏡によって撮影した写真である。 実施例3の実験開始後30時間経過時における鉄粉の表面像を走査型電子顕微鏡によって撮影した写真である。 実施例3の実験開始前と、実験開始後5時間経過時と、実験開始後10時間経過時と、実験開始後30時間経過時とのそれぞれにおける鉄粉の粒度分布を示すグラフである。 実施例2~7における反応温度とメタン転化率のピーク値との関係を示すグラフである。 炭素鋼の平衡状態における金属組織相図である。 実施例8~11におけるメタンの分圧とメタン転化率のピーク値との関係を示すグラフである。 実施例12の実験結果を表す図である。 実施例13の実験結果を表す図である。 実施例14の実験結果を表す図である。 実施例15の実験結果を表す図である。 実施例16の実験開始前におけるニッケル粒子の表面像を走査型電子顕微鏡によって撮影した写真である。 実施例16の実験開始後50時間経過時におけるニッケル粒子の表面像を走査型電子顕微鏡によって撮影した写真である。 実施例17及び比較例3の実験結果を表す図である。 実施例18及び19並びに比較例4の実験結果を表す図である。
以下、本開示の実施形態による微細金属粒子の製造方法について、図面に基づいて説明する。以下で説明する実施形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
<本開示の一実施形態に係る微細金属粒子の製造方法を実施するための装置の構成>
図1に示されるように、本開示の一実施形態に係る微細金属粒子の製造方法を実施するための装置1は、微粒化される金属粒子2が収容された反応器3を備えている。反応器3には、反応器3の内部、特に金属粒子2を昇温するための加熱装置4(例えば、スチームが流通するジャケット等)が設けられている。反応器3には、炭化水素を含む供給ガスを反応器3に供給するための原料供給ライン5と、反応器3から流出する流出ガスが流通する流出ガス流通ライン6とが接続されている。
流出ガス流通ライン6には、バグフィルタやサイクロン等の固気分離装置7を設けてもよい。後述するように、流出ガスには水素が含まれているが、流出ガス中の水素を精製するための、すなわち水素濃度を上昇させるための水素精製装置11を流出ガス流通ライン6に設けてもよい。水素精製装置11の構成は特に限定しないが、例えば、圧力変動吸着(PSA)装置等を使用することができる。この装置1を用いることにより、後述する方法で微細金属粒子を製造するとともに水素の製造も可能となる。装置1に固気分離装置7や水素精製装置11を設けることにより、水素の純度を高め、固体の不純物の混入を抑制することもできる。
後述するが、金属粒子2の触媒作用による反応によって、炭化水素から水素とカーボンとが生成される。このカーボンの多くは金属粒子2に付着するため、カーボンが付着した微細金属粒子が製造されることになる。このため、装置1には、微細金属粒子からカーボンを除去するためのカーボン除去装置8を設けてもよい。カーボン除去装置8は、反応器3からカーボン除去装置8へ金属粒子2及び微細金属粒子を供給するための供給ライン9と、カーボン除去装置8から反応器3へ金属粒子2及び微細金属粒子を戻すための戻りライン10とを介して反応器3と連通するように構成することができる。カーボン除去装置8の構成は特に限定するものではなく、例えば、金属粒子2及び微細金属粒子を攪拌することによって金属粒子2及び微細金属粒子の粒子同士を互いに擦れ合わせることのできる回転式配管(キルン)等を用いることができる。カーボン除去装置8のその他の構成としては、水素と水蒸気と酸素とによってカーボンをメタンや一酸化炭素、二酸化炭素に転換させて金属粒子2及び微細金属粒子からカーボンを除去するものも使用可能である。尚、微細金属粒子としてカーボンが付着したものでもよい場合には、装置1にカーボン除去装置8を設けなくてもよい。
反応器3内では金属粒子2の各粒子は静置した状態でもよいし、上向きに供給ガスを噴出させることによって粒子を供給ガス中に懸濁浮遊させた状態である流動床の状態にしてもよい。金属粒子2が流動床を形成する場合には、金属粒子2及び微細金属粒子同士が互いに擦れ合うことで、金属粒子2及び微細金属粒子に付着したカーボンは粒子から物理的に除去される。このため、金属粒子2が流動床を形成するための流動床形成装置(反応器3内で触媒を支持するためのプレート12であって供給ガスが通過する複数の穴が形成されたもの)を、カーボン除去装置8としてもよい。
金属粒子2を形成する金属は、鉄、ニッケル、コバルト、又はこれらのうちの少なくとも2つの合金である。金属粒子2の粒径の範囲は2μm~3mmの範囲であることが好ましい。また、供給ガスは炭化水素のみを含んでもよいが、炭化水の他に不活性ガス(窒素又は希ガス)を含んでもよい。
<本開示の一実施形態に係る微細金属粒子の製造方法>
次に、本開示の一実施形態に係る微細金属粒子の製造方法について説明する。反応器3内に、微粒化される金属粒子2を収容する。次に、原料供給ライン5を介して反応器3内に供給ガスを供給し、反応器3内で供給ガスを金属粒子2に接触させる。この際、供給ガス中の炭化水素は、金属粒子2の触媒作用によって水素とカーボンに直接分解される。この分解反応(「直接分解反応」とも言う)における炭化水素としてメタンを例にすると、下記の反応式(1)で表される反応が反応器3内で生じる。
CH→2H+C ・・・(1)
尚、この分解反応を促進するために、加熱装置4によって金属粒子2の温度を600℃~900℃の範囲に維持することが好ましい。この温度範囲の技術的意義については後述する。
この分解反応における金属粒子2の触媒作用の具体的なメカニズムについては後述するが、この分解反応の触媒作用の過程において金属粒子を形成する金属が微粒化され、微細金属粒子が製造される。この分解反応で生成したカーボンは金属粒子2及び微細金属粒子に付着し、生成した水素は、未反応の炭化水素とともに流出ガスとして反応器3から流出し、流出ガス流通ライン6を流通する。水素の回収は、流出ガス流通ライン6を流通する流出ガスを回収することによって行われる。
反応器3への供給ガスの供給を停止した後に、反応器3から金属粒子2及び微細金属粒子を回収することができる。金属粒子2が全て所望の粒径を有する微細金属粒子となるとは限らないので、必要であれば、回収した金属粒子2及び微細金属粒子を公知の方法で粒径ごとに分類してもよい。また、必要であれば、供給ライン9を介して反応器3からカーボン除去装置8に金属粒子2及び微細金属粒子を供給し、金属粒子2及び微細金属粒子に付着したカーボンを除去してもよい。カーボンの除去後にさらに金属の微粒化を行う場合には、戻りライン10を介してカーボン除去装置8から反応器3に金属粒子2及び微細金属粒子を戻し、上述した動作を再び行うこともできる。
<実施例1>
本開示の発明者らは、金属粒子2を触媒として使用することにより、反応式(1)の活性を長く維持でき、この反応の過程で、金属粒子2を微粒化して微細金属粒子を製造可能であることを見出した。以下に説明するように、金属粒子2を触媒として使用した場合の実施例1と、担持触媒を使用した場合の比較例1及び2と対比することでその効果を明らかにする。尚、実施例1で使用する金属粒子は、株式会社ニラコから入手可能な鉄粉(粒径は43μm以下)である。比較例1で使用する触媒は、MgO製の担体に活性成分としての鉄及びモリブデンを担持させた担持触媒である。鉄の含有量は2.7質量%であり、モリブデンの含有量は0.3質量%であり、担体の粒径は約1mmである。比較例2で使用する触媒は、比較例1の触媒に対して鉄の含有量を16質量%に変更したものである。
実施例1と比較例1及び2とを対比するための実験装置の構成を図2に示す。実験装置20は、実施例1並びに比較例1及び2それぞれの触媒22を収容した内径16mmの石英製の反応器23を備えている。反応器23は、電気炉24で加熱可能になっている。反応器23には、メタン及びアルゴンをそれぞれ供給するための原料供給ライン25と、メタンの直接分解反応によって生成した水素を含む流出ガスが反応器23から流出後に流通する流出ガス流通ライン26とが接続されている。すなわち、実施例1並びに比較例1及び2のそれぞれにおいて、反応器23に供給される供給ガスは、メタンとアルゴンとの混合ガス又はメタンのみのガスである。流出ガス流通ライン26は、流出ガスの組成を測定するためのガスクロマトグラフィー27に接続されている。実施例1並びに比較例1及び2のそれぞれの実験条件を下記表1にまとめる。
Figure 0007291191000001
実施例1並びに比較例1及び2のそれぞれの実験結果を図3~5に示す。図3には、流出ガス中のメタン及び水素の濃度の経時変化と、メタン転化率の経時変化とが示されている。図4及び5にはそれぞれ、メタン転化率の経時変化が示されている。メタン転化率は、下記式(2)で定義される。比較例1では、メタン転化率は、実験開始直後に急激に上昇した後に、実験開始から1時間が経過する前あたりから低下している。比較例2では、実験開始から1時間が経過する当たりまでメタン転化率がほぼ一定であり、その後にメタン転化率が低下している。一方、実施例1ではメタン転化率は、最大値まで上昇するのに約7時間程度かかっているものの、その後は実験開始後14時間経過まではほぼ一定である。実施例1では、実験開始から14時間後に、アルゴンの供給を停止するとともにメタンの供給量を増加させて供給ガスの流量を100cc/minに維持した上で、供給ガスの組成をメタン100%に変更している。その後、実験開始後20時間経過したタイミングで実験を終了している。実験開始後14~20時間の間のメタン転化率もほぼ一定である。
転化率=(1-(未反応のメタン量/原料のメタン量))×100 ・・・(2)
この結果から、比較例1及び2に対して、実施例1では反応式(1)で表される反応の活性が大幅に長く維持されていることが分かった。しかも、実施例1の条件では、メタン転化率は90%に近い値となっており、供給されたメタンの大部分が分解される結果となっている。これは、供給ガスの組成(供給ガス中のメタンの含有量)を変更しても同じ結果である。
また、実施例1の実験開始前及び実験終了後における触媒の写真を図6に示す。実験開始前の触媒層の高さは1.0cmであったのに対し、実験終了後の触媒層の高さは約10.5cmまで増加している。これは、反応式(1)で表される反応の生成物としてのカーボンが触媒に付着することによって嵩が増加しているためであり、水素の生成量に応じた量のカーボンも生成していることが確認できた。
この実験結果から、本開示の発明者らは、実施例1では、比較例1及び2で使用した従来の担持触媒とは違うメカニズムで触媒が機能していると考えている。すなわち、従来の担持触媒を用いた場合は、実験開始直後から触媒作用が機能するものの、生成したカーボンが触媒の活性点を覆うことによってメタンが活性点に到達できなくなるため、早い段階で活性が低下すると考えている。これに対し、実施例1のように鉄粉から構成された触媒を用いた場合は、比較例1及び2と同じように生成したカーボンが鉄粉の表面に付着しても、新たな活性点を発現させることで活性が維持されるのでないかと考えている。以下に、実施例1における触媒作用のメカニズムを詳細に説明する。
図7に示されるように、触媒の粒子30にメタンが到達し始めた第1段階では、触媒の活性は非常に低いため、反応式(1)で表される反応の反応速度は非常に遅い。しかし、徐々にこの反応が生じ始め、水素及びカーボンが生成し始める。続く第2段階において、水素侵食によって触媒の粒子30に粒界31が生じる。この粒界31を起点として、触媒の粒子30から鉄の微粒子がマイグレーションにより移動し、生成したカーボンと反応して鉄カーバイド32が形成される。この鉄カーバイド32が触媒の活性点となる。触媒の粒子30におけるこのような活性点の数が徐々に増えていくことにより、反応式(1)で表される反応の活性が上昇する。
第1段階から第2段階までの上記説明の検証をするために、第1段階及び第2段階のそれぞれにおける触媒の粒子30の表面の写真を撮影し、それぞれ図8及び図9に示す。第1段階では、図8に示されるように、触媒の粒子には鉄の微粒子は確認されず、オーステナイト特有の平滑面が確認される。これに対し、第2段階では、図9に示されるように、触媒粒子にはサブミクロンオーダーの縞模様が確認できる。このことから、水素侵食に伴って鉄のカーバイド化が進行し、サブミクロンオーダーの鉄の微粒子に分割されて、活性点の前駆体が形成されていると考えられる。
図7に示されるように、第2段階に続く第3段階では、活性点である鉄カーバイド32にメタンが吸着し、メタンが水素及びカーボンに分解され、カーボン33は鉄カーバイド32と触媒の粒子30との間に堆積する。続く第4段階では、鉄カーバイド32にメタンが吸着し、メタンが水素及びカーボンに分解されると、カーボンは、鉄カーバイド32と、既に堆積しているカーボンとの間に堆積する。このようにしてカーボン33が触媒の粒子30から延びるように成長していく。鉄カーバイド32は、成長するカーボンの上部(触媒の粒子30から離れた方の端部)に存在することになるので、カーボン33によるメタンの鉄カーバイド32への到達の阻害効果はほとんどない。
第3段階から第4段階までの上記説明を検証するために、第4段階における触媒の粒子30の表面の写真を撮影して図10に示す。第4段階では、サブミクロンオーダーの鉄の微粒子の表面にカーボンが析出し、コアシェル構造を形成している状態が確認される。このサブミクロンオーダーの鉄の微粒子は、活性点としての鉄カーバイド(セメンタイト(FeC)/マルテンサイト(Fe1.880.12))であると考えられる。尚、鉄カーバイドの周りに存在するカーボンは、活性点の担体としての機能を有することになり、活性点の安定化や高性能化にも寄与するものと考えられる。
第1段階の状態の触媒の粒子30と、第4段階の状態の触媒の粒子30とのそれぞれのX線回折パターンを図11に示す。第1段階の状態では、触媒の粒子30を形成する鉄単体のα-Fe(フェライト)のピークのみが見られるのに対し、第4段階の状態では、α-Fe(フェライト)のピークだけではなく、グラファイト及びマルテンサイト(Fe1.880.12)のそれぞれのピークも確認できる。この結果からも鉄カーバイドの存在が確認され、活性点がサブミクロンオーダーの鉄の微粒子(鉄カーバイド)であることが裏付けられる。尚、第4段階の状態のX線回折パターンにはマルテンサイトのピークのみが確認され、セメンタイトのピークが確認されないのは、X線回折パターンの撮影時に触媒の粒子30を室温まで急速に冷却した影響ではないかと考えている。
図7に示されるように、第4段階の後に第5段階は必ずしも生じるものではないが、第5段階では、自然に又は物理的な力の作用でカーボン33が触媒の粒子30から剥がれる。そうすると、活性点としての鉄カーバイド32は触媒の粒子30から無くなってしまうが、鉄カーバイド32は触媒の粒子30から継続的に出現していくので、活性点の急激な減少も生じない。
このような第1段階から第4段階(場合によっては第5段階も含む)までのメカニズムによって、実施例1の実験結果の特徴、すなわち、実験開始から5時間経過までにゆっくりと反応の活性が上昇することと、その後の反応の活性は長時間安定することとは十分に説明することができる。この反応によって、43μm以下の粒径を有する鉄粉が微粒化されて、サブミクロンオーダーの微細鉄粒子が生成されたことが確認された。
<実施例2~4>
次に、図2に示される実験装置20を用いて、反応温度の異なる実施例2~4の実験を行った。実施例2~4それぞれの実験条件を下記表2にまとめる。尚、実施例2~4で用いた触媒は、実施例1で用いた触媒と同じである。
Figure 0007291191000002
実施例2~4それぞれの実験結果を図12に示す。図12には、メタンの転化率の経時変化が示されている。実施例2~4それぞれのメタン転化率の大小関係によれば、反応温度が高くなるほどメタン転化率のピーク値は高くなり、同ピーク値に達するまでの時間は短くなると言える。
実施例2及び3では、実験開始から20時間までの間にメタン転化率が最高値に達した後に減少に転じ、実施例4では、実験開始から40時間までは非常に緩やかにメタン転化率が上昇し、その後に非常に緩やかな減少に転じている。実施例4では、反応温度の低さによって触媒作用の作用、特に、上述した第2段階までのメカニズムの発現が遅くなったことにより、メタン転化率の最高値が低くなったためと考えられる。
このように、実施例2~4についても実施例1と同様に、反応式(1)で表される反応の活性が大幅に長く維持されていることが分かった。これにより、反応温度が750℃~900℃の範囲では、実施例1と同様に、触媒として使用した金属粒子である鉄粉が微粒化されて、サブミクロンオーダーの微細鉄粒子が生成されているのではないかと考えられる。そこで、実施例3について、サブミクロンオーダーの微細鉄粒子の生成挙動を評価するために、実験開始前と、実験開始後5時間経過時(反応の第2段階に相当)と、実験開始後10時間経過時(反応の第3段階に相当)と、実験開始後30時間経過時(反応の第4段階に相当)とのそれぞれにおける鉄粉の表面像を走査型電子顕微鏡(SEM)によって撮影した。それらの写真を図13~16に示す。
図13の写真から、実験開始前の鉄粉には鉄の微粒子は確認されない。図14の写真から、反応の第2段階では、ミクロンオーダーの粒子の表面にサブミクロンオーダーの微細鉄粒子が生成し始めていることが確認される。図15の写真から、反応の第3段階では、ミクロンオーダーの粒子が減少してきて、残るミクロンオーダーの粒子の周囲にサブミクロンオーダーの微細鉄粒子が増加していることが確認される。図16の写真から、反応の第4段階では、ミクロンオーダーの粒子の周囲に、カーボンが付着したサブミクロンオーダーの微細鉄粒子が存在し、さらにその周囲に、鱗片上のカーボンが存在することが確認される。このように、SEM写真から、反応式(1)で表される反応の進行とともに、触媒として使用する鉄粉が微粒化されていく様子を確認することができた。
次に、このような鉄粉の微粒化の様子について定量的な評価を行った。具体的には、実験開始前と、実験開始後5時間経過時(反応の第2段階に相当)と、実験開始後10時間経過時(反応の第3段階に相当)と、実験開始後30時間経過時(反応の第4段階に相当)とのそれぞれにおける鉄粉の粒度分布を求め、その結果に基づいて評価を行った。粒度分布は、以下の手順(A)~(E)に従い、撮影したSEM写真(図13~16)の画像解析により行った。
(A)触媒を樹脂埋めし、クロスセクションポリッシャにて断面出しを行った。
(B)(A)の断面SEM観察を実施し、触媒の反射電子像を撮影した。反射電子像では、金属粒子の信号が像(写真では白い部分)として得られる。
(C)得られた反射電子像の画像の二値化処理(反転処理)を行った。これにより、金属粒子に相当する部分が黒色化される。
(D)(C)の反転画像から、黒色部分を抽出して、粒子ごとの面積情報を抽出した。尚、この抽出作業に使用した解析ソフトは「ImageJ(https://ja.wikipedia.org/wiki/ImageJ)」である。
(E)真球の断面を想定して、得られた面積情報から各粒子の粒径を算出した。
上記(A)~(E)の手順で求めた粒度分布を図17に示す。実験開始前の鉄粉の粒度分布のピークが数十μmであったのに対し、実験時間が経過するほど、サブミクロンオーダーの粒径のピークが上昇していることがわかる。この結果から、反応式(1)で表される反応の進行とともに、触媒として使用する鉄粉が微粒化されていく様子を定量的に確認することができた。
また、上記手順の(D)で得られた粒子ごとの面積情報から、全金属に対するサブミクロンオーダーの粒子の体積比率を算出した。反応の各段階における体積比率を下記表3に示す。
Figure 0007291191000003
実験開始後、反応が第2段階、第3段階、第4段階と経過するに従い、サブミクロンオーダーの粒子の体積比率が上昇していることからも、触媒として使用する鉄粉が微粒化されていく様子を定量的に確認することができた。
また、上記手順(B)で得られた反射電子像又は上記手順(C)で得られた二値化処理済の反射電子像から、金属及びカーボンの面積情報を抽出し、反応の各段階において触媒中の金属含有率(=(金属の体積)/((金属の体積)+(カーボンの体積))×100)を算出した。その結果を下記表4に示す。
Figure 0007291191000004
反応式(1)で表される反応の反応機構の説明で述べたように、金属触媒における炭化水素ガスの分解が進行すると、水素が生成されるとともにカーボンが触媒に蓄積されていくことから、実施例2~4のメタン転化率の経時変化は図12に示されるように、触媒中の金属含有率を低下させていきながら、又は、カーボン含有率を増加させていきながら上昇し、ピークに達した後は減少する推移を示す。金属がカーボンと複合化された状態で触媒活性を発現しており、この状態で触媒活性の向上に寄与していると考えられる。
<実施例5~7>
実施例2~4の実験結果から、750℃から900℃の温度でメタンを鉄粉に接触させることによってメタンが水素とカーボンとに分解する反応が生じ、この反応によって、鉄粉が微粒化されて、サブミクロンオーダーの微細鉄粒子が生成されたことが確認された。次に、750℃未満の反応温度で実施例5~7の実験を行った。実施例5~7それぞれの実験条件を下記表5にまとめる。実施例5~7において反応温度以外の条件は実施例2~4と同じであり、実施例5~7で用いた触媒は、実施例1~4で用いた触媒と同じである。
Figure 0007291191000005
実施例2~4では、実験開始後メタン転化率が上昇し、メタン転化率がピークに達した後は減少する挙動を示した。実施例5~7のメタン転化率の経時変化は示さないが、実施例5~7でも同様の挙動を示す。すなわち、実施例2~7のそれぞれにおいてメタン転化率のピーク値が存在する。図18に、実施例2~7における反応温度とメタン転化率のピーク値との関係を示す。
図18によれば、600℃~900℃の反応温度において、反応温度が低くなるほどメタン転化率のピーク値が低くなることが分かった。ただし、反応温度が600℃であっても、メタン転化率のピーク値は約5%を維持している。鉄粉を触媒とすれば、反応式(1)で表される反応の活性が大幅に長く維持されることが実施例1~4から分かっているので、実施例5~7においても反応式(1)で表される反応の活性は長く維持されるはずである。そうすると、実施例5~7におけるメタン転化率のピーク値が約5%~20%弱であっても、反応式(1)で表される反応が長く持続することにより、この反応の触媒として使用される鉄粉が微粒化されて、サブミクロンオーダーの微細鉄粒子が生成されるものと考えられる。従って、600℃から900℃の温度でメタンを鉄粉に接触させることによってメタンが水素とカーボンとに分解する反応が生じ、この反応によって、鉄粉が微粒化されて、サブミクロンオーダーの微細鉄粒子が生成されるものと考えられる。
尚、炭素鋼の平衡状態における金属組織相図を図19に示している(引用元:https://www.monotaro.com/s/pages/readingseries/kikaibuhinhyomensyori_0105/)。これによれば、727℃以上で鉄相はγ-Fe(オーステナイト)に変化する。このため、反応式(1)で表される反応中は、触媒の鉄がオーステナイトの状態となるので、供給ガス中のメタンと反応して鉄カーバイドを形成し、これが活性点となって新たな活性点を発現させることができると考えらえる。このような金属組成相図に基づく理論的に考察からは、727℃以上の反応温度であれば、鉄粉が微粒化されて、サブミクロンオーダーの微細鉄粒子が生成されるものと理解できる。
<実施例8~11>
次に、図2に示される実験装置20を用いて、メタンの分圧の異なる実施例8~11の実験を行った。実施例8~11それぞれの実験条件を下記表6にまとめる。尚、実施例8~11において反応温度、触媒量、触媒層の高さ、供給ガスの流量、及び空間速度は実施例2~4と同じであり、実施例8~11で用いた触媒は、実施例1~7で用いた触媒と同じである。
Figure 0007291191000006
図20に、実施例8~11におけるメタンの分圧とメタン転化率のピーク値との関係を示す。図20によれば、0.025MPa~0.1MPaのメタンの分圧において、メタンの分圧が大きくなるほどメタン転化率のピーク値が緩やかに低下することが分かった。ただし、メタンの分圧が0.025MPaのときのメタン転化率のピーク値が60%弱であるのに対し、メタンの分圧が0.1MPaのときのメタン転化率のピーク値が50%弱であることからすれば、メタンの分圧が上記範囲内であれば、メタンの分圧がメタン転化率のピーク値に与える影響は小さいと言える。鉄粉を触媒とすれば、反応式(1)で表される反応の活性が大幅に長く維持されることが実施例1~4から分かっているので、実施例8~11においても反応式(1)で表される反応の活性は長く維持されるはずである。そうすると、この反応の触媒として使用される鉄粉が微粒化されて、サブミクロンオーダーの微細鉄粒子が生成されるものと考えられる。従って、メタンの分圧が0.025MPa~0.1MPaであれば、600℃から900℃の温度でメタンを鉄粉に接触させることによってメタンが水素とカーボンとに分解する反応が生じ、この反応によって、鉄粉が微粒化されて、サブミクロンオーダーの微細鉄粒子が生成されるものと考えられる。
<実施例12~15>
次に、図2に示される実験装置20を用いて、粒径の異なる触媒(鉄製粒子)を用いた実施例12~15の実験を行った。実施例12~15それぞれの実験条件(触媒の粒径を含む)を下記表7にまとめる。実施例12~15において触媒量、触媒層の高さ、供給ガスの流量、及び空間速度は実施例2~4と同じである。
Figure 0007291191000007
実施例12の触媒は、高純度化学研究所から入手可能な鉄粉であり、篩によって0.04~0.15mmの範囲の粒径のものを選別して使用した。実施例13の触媒は、高純度化学研究所から入手可能な鉄製粒子であり、篩によって2~3mmの範囲の粒径のものを選別して使用した。実施例14及び15の触媒はそれぞれ、高純度化学研究所から入手可能なカルボニル鉄の粉末である。
実施例12~15それぞれの実験結果を図21~24に示す。実施例12~15のいずれも、実施例1のようにメタン転化率の最高値がほぼ90%に達することはなく、それぞれの実施例でタイミングは異なるものの、メタン転化率が徐々に上昇して最高値に達した後に徐々に低下する挙動を示した。図21に示されるように、実施例12では、実験開始から約18時間経過後にメタン転化率が最高値に達し、図22に示されるように、実施例13では、実験開始から約51時間経過後にメタン転化率が最高値に達している。また、図23及び24のそれぞれに示されるように、実施例14及び15のそれぞれでは、実験開始から約1時間経過後にメタン転化率が最高値に達している。
このように、実施例12~15についても実施例1と同様に、反応式(1)で表される反応の活性が大幅に長く維持されていることが分かった。したがって、実施例12~15の実験結果を実施例1~4の実験結果と併せると、触媒として使用した鉄製粒子の粒径が2μm~3mmの範囲では、実施例1と同様に、鉄製粒子が微粒化されて、サブミクロンオーダーの微細鉄粒子が生成されているのではないかと考えられる。
<実施例16>
次に、図2に示される実験装置20を用いて、ニッケル粒子を触媒として用いた実施例16の実験を行った。実施例16の実験条件は実施例3の実験条件と同じである。ニッケル粒子は、株式会社ニコラから入手可能であり、粒子径の範囲は2~40μmである。
実験開始前におけるニッケル粒子の表面像を走査型電子顕微鏡によって撮影した写真を図25に示し、実験開始後50時間経過時におけるニッケル粒子の表面像を走査型電子顕微鏡によって撮影した写真を図26に示す。実験開始前のニッケル粒子の粒径が数μmレベルであったのに対し、実験開始後50時間経過時にはニッケル粒子の粒径が数nm~数十nmになっていることから、鉄だけではなくニッケルに対しても本開示の方法を適用してニッケルを微粒化できることがわかった。尚、本開示の方法を適用して鉄及びニッケルを微粒化できることから、実験はしていないが、以下の理由でコバルトに対しても本開示の方法を適用して微粒化できるものと本開示の発明者らは考えている。炭化水素化合物の熱分解に対する触媒作用の立場から金属を分類すると、安定な炭化物を作るグループに、例えばチタン、ジルコニウム、タンタルが属し、安定な炭素-金属結合を期待できないために活性がないグループに、例えば銅、銀、金、白金、パラジウムが属し、活性が大きいグループとして、例えば鉄、ニッケル、コバルトが属することが知られている。このことから、コバルトに対しても本開示の方法を適用して微粒化できるものと本開示の発明者らは考えている。また、鉄、ニッケル、コバルトの単体だけではなく、これらのうちの少なくとも2つの合金に対しても本開示の方法を適用して微粒化できるものと本開示の発明者らは考えている。
<実施例17>
次に、図2に示される実験装置20を用いて、水素処理を施した鉄製粒子を用いた実施例17及び水素処理を施していない鉄製粒子を用いた比較例3の実験を行った。実施例17及び比較例3で用いた鉄製粒子は、株式会社ニコラから入手可能な電解鉄であり、鉄の純度が99質量%であり、平均粒径は45μmである。実施例17における水素処理は、水素20vol%及びアルゴン80vol%の800℃のガスを空間速度6000(h-1)で鉄製粒子に2時間供給することにより行った。その後に行われる実験(微粒化実験)の条件は実施例3と同じである。
実施例17及び比較例3それぞれの実験結果、すなわちメタン転化率の推移を図27に示す。水素処理を施した鉄製粒子を用いた実施例17のほうが、水素処理を施していない鉄製粒子を用いた比較例3に比べて、メタン転化率が大きくなっている。このことから、水素処理を施すことにより鉄すなわち金属の微粒化が促進されることが予想される。本開示の発明者らは、金属粒子に水素を供給すると、水素侵食によって金属粒子に粒界が生じ、この粒界を起点として触媒粒子から金属の微粒子がマイグレーションにより移動することで、金属の微粒化の進行が促進されると考えている。
<実施例18及び19>
次に、図2に示される実験装置20を用いて、一酸化炭素処理を施した鉄製粒子を用いた実施例18及び19と、一酸化炭素処理を施していない鉄製粒子を用いた比較例4の実験を行った。実施例18及び19並びに比較例4で用いた鉄製粒子は、株式会社ニコラから入手可能な電解鉄であり、鉄の純度が99質量%であり、平均粒径は36μmである。実施例18では、一酸化炭素処理の後にさらに水素処理も施した。実施例19では、一酸化炭素処理のみを施した。実施例18及び19の一酸化炭素処理の条件と、実施例18の水素処理の条件と、実施例18及び19並びに比較例4の微粒化実験の条件とを下記表8にまとめる。
Figure 0007291191000008
実施例18及び19並びに比較例4それぞれの実験結果、すなわちメタン転化率の推移を図28に示す。実施例18及び19はいずれも比較例4に比べて、実験開始後のメタン転化率の上昇度合いが大きいことがわかった。実験開始後約12時間までは、実施例18は比較例4に比べてメタン転化率が大きく、実験開始後約15時間までは、実施例19は比較例4に比べてメタン転化率が大きいこともわかった。このことから、一酸化炭素処理を施すことにより鉄すなわち金属の微粒化が促進されることが予想される。本開示の発明者らは、金属粒子に一酸化炭素を供給すると、金属粒子の表面で一酸化炭素がカーボンと二酸化炭素とに変換される反応によってカーボンが析出することにより、金属の微粒化の進行が促進されると考えている。
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
[1]一の態様に係る微細金属粒子の製造方法は、
金属粒子(2)を準備するステップと、
炭化水素を含む供給ガスを前記金属粒子(2)に供給するステップと
を含み、
前記供給ガスと前記金属粒子(2)との接触は600℃~900℃の温度で行われる。
本開示の微細金属粒子の製造方法によれば、炭化水素をカーボン及び水素に直接分解する反応の触媒として金属粒子が機能する。この触媒作用の過程で、生成した水素による水素侵食によって金属粒子に粒界が生じ、この粒界を起点として、金属粒子から微粒子がマイグレーションにより移動し、生成したカーボンと反応して金属カーバイドが形成される。水素侵食に伴って金属のカーバイド化が進行し、サブミクロンオーダーの粒径の微粒子に分割されていく。このようにして、金属をサブミクロンオーダーの粒径まで微粒化することができる。
[2]別の態様に係る微細金属粒子の製造方法は、[1]の微細金属粒子の製造方法であって、
前記供給ガスと前記金属粒子(2)との接触後、微細化された金属に付着したカーボンを除去するステップをさらに含む。
このような製造方法によれば、微細化された金属に付着したカーボンが除去されるので、カーボンを含まない純粋な微細金属粒子を得ることができる。
[3]さらに別の態様に係る微細金属粒子の製造方法は、[1]または[2]の微細金属粒子の製造方法であって、
前記金属粒子(2)を形成する金属は、鉄、ニッケル、コバルト、又はこれらのうちの少なくとも2つの合金である。
このような製造方法によれば、鉄製、ニッケル製、コバルト製、又はこれらのうちの少なくとも2つの合金製の微細金属粒子を得ることができる。
[4]さらに別の態様に係る微細金属粒子の製造方法は、[1]~[3]のいずれかの微細金属粒子の製造方法であって、
前記金属粒子(2)の粒径の範囲は2μm~3mmの範囲である。
このような製造方法によれば、最初の金属粒子の大部分を、サブミクロンオーダーの粒径まで微粒化することができる。
[5]さらに別の態様に係る微細金属粒子の製造方法は、[1]~[4]のいずれかの微細金属粒子の製造方法であって、
前記供給ガスにおける炭化水素の分圧は0.025MPa~0.1MPaである。
このような製造方法によれば、炭化水素の直接分解反応の活性を長く維持することができるので、最初の金属粒子の大部分を、サブミクロンオーダーの粒径まで微粒化することができる。
[6]さらに別の態様に係る微細金属粒子の製造方法は、[1]~[5]のいずれかの微細金属粒子の製造方法であって、
前記供給ガスを前記金属粒子(2)に供給する前記ステップの前に、一酸化炭素又は水素の少なくとも一方を前記金属粒子(2)に供給するステップをさらに含む。
金属粒子に一酸化炭素を供給すると、金属粒子の表面で一酸化炭素がカーボンと二酸化炭素とに変換される。この反応によってカーボンが析出することにより、金属の微粒化の進行が促進される。また、金属粒子に水素を供給すると、水素侵食によって金属粒子に粒界が生じ、この粒界を起点として触媒粒子から金属の微粒子がマイグレーションにより移動することで、金属の微粒化の進行が促進される。
2 金属粒子

Claims (5)

  1. 粒径の範囲が2μm~3mmの範囲である金属粒子を準備するステップと、
    炭化水素を含む供給ガスを前記金属粒子に供給し前記金属粒子に粒界を生じさせるステップと
    を含み、
    前記供給ガスと前記金属粒子との接触は600℃~900℃の温度で行われる、微細金属粒子の製造方法。
  2. 前記供給ガスと前記金属粒子との接触後、微細化された金属に付着したカーボンを除去するステップをさらに含む、請求項1に記載の微細金属粒子の製造方法。
  3. 前記金属粒子を形成する金属は、鉄、ニッケル、コバルト、又はこれらのうちの少なくとも2つの合金である、請求項1または2に記載の微細金属粒子の製造方法。
  4. 前記供給ガスにおける炭化水素の分圧は0.025MPa~0.1MPaである、請求項1~のいずれか一項に記載の微細金属粒子の製造方法。
  5. 前記供給ガスを前記金属粒子に供給する前記ステップの前に、一酸化炭素又は水素の少なくとも一方を前記金属粒子に供給するステップをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の微細金属粒子の製造方法。
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