1.第1実施形態
1-1.酸素濃縮装置の構成
図1に示す第1実施形態の酸素濃縮装置10は、外部から取り込んだ空気から酸素を濃縮して酸素濃縮ガスを供給する装置である。酸素濃縮装置10の出口11から排出された酸素濃縮ガスは、例えば図示しないカニューラを介して患者に供給される。酸素濃縮装置10は、定置型の酸素濃縮器であり、例えば商用電源を駆動源として駆動する。酸素濃縮装置10は、取込口13から取り込んだ空気から酸素を濃縮して酸素濃縮ガスを生成し、出口11から排出する。
酸素濃縮装置10には、空気を取り込む取込口13と、空気から分離された窒素を排出する排気口15と、酸素濃縮ガスを排出する出口11と、が形成されている。酸素濃縮装置10は、取込流路21と、排出流路23と、排気流路25と、バイパス流路27と、を備えている。酸素濃縮装置10は、吸気フィルタ31と、コンプレッサ33と、第1吸着筒41と、第2吸着筒42と、一対の逆止弁43と、製品タンク45と、レギュレータ47と、比例弁49と、第1三方弁51と、第2三方弁52と、排気バッファ53と、パージ弁55と、圧力検出部57と、温度検出部59と、制御部60と、発音部61と、第1保持部71A,71Bと、第2保持部72A,72Bと、を備えている。
取込流路(第1流路)21は、第1吸着筒41及び第2吸着筒42の上流側の流路であり、コンプレッサ33から各吸着筒41,42が保持する吸着層へ供給される空気が流通する。具体的には、取込流路21は、取込口13から取り込んだ空気を第1保持部71A,71Bを介してそれぞれ第1吸着筒41及び第2吸着筒42に供給する流路である。取込流路21は、途中で分岐して、第1供給路21Aと第2供給路21Bとに分かれている。第1供給路21A及び第2供給路21Bは、それぞれ第1吸着筒41及び第2吸着筒42に接続されている。取込流路21における分岐前の流路には、取込口13側から順に吸気フィルタ31、コンプレッサ33が設けられている。
コンプレッサ(加圧部)33は、取込口13と第1保持部71A,71Bとの間に介在しており、取込口13から取り込んだ空気を圧縮して第1保持部71A,71Bに排出し得る。コンプレッサ33は、第1吸着筒41及び第2吸着筒42の吸着層に対し空気を供給して加圧する。
第1保持部71A,71Bは、例えば筒状に構成され、取込流路21に設けられている。具体的には、第1保持部71A,71Bは、それぞれ第1供給路21A及び第2供給路21Bに設けられている。第1保持部71A,71Bは、例えばゼオライト系の吸湿材によって構成される吸湿層を着脱自在に保持する。この吸湿層は、酸素より窒素を優先的に吸着する吸着材としても機能する。第1保持部71A,71Bに収容される吸湿層は、コンプレッサ33から送り込まれた圧縮空気から水分を吸収して、乾燥した圧縮空気を下流側の第1吸着筒41及び第2吸着筒42にそれぞれ供給する。
第1吸着筒41及び第2吸着筒42は、取込口13から取り込んだ空気から酸素を濃縮して酸素濃縮ガスを排出する機能を有する。各吸着筒41,42は、コンプレッサ33から送り込まれた圧縮空気が導入されるとともに、酸素よりも窒素を優先的に吸着する吸着層が筒内に配置された構成をなしている。吸着層は、例えば加圧されると空気中の窒素を酸素に優先して吸着し、減圧されると吸着した窒素を放出して吸着層の再生を行うゼオライト系の窒素吸着材である。各吸着筒41,42は、酸素濃縮ガスを生成し、生成した酸素濃縮ガスを排出流路23に排出する。
排出流路(第2流路)23は、第1吸着筒41及び第2吸着筒42の下流側の流路であり、吸着層で生成された酸素濃縮ガスが流通する。具体的には、排出流路23は、各吸着筒41,42から出口11へと酸素濃縮ガスを流す流路である。排出流路23は、各吸着筒41,42に対して個別に接続されており、出口11に向かう途中で合流および分流して、最終的に1本の流路となって出口11につながっている。
排出流路23における合流前の流路には、各吸着筒41,42に対応して逆止弁43が設けられている。逆止弁43は、各吸着筒41,42から出口11側への気体の流入を許容する一方、出口11側から各吸着筒41,42への気体の流入を遮断する機能を有する。
排出流路23における合流後の流路には、一対の吸着筒41,42側から順に、製品タンク45、レギュレータ47、比例弁49が設けられている。製品タンク45は、各吸着筒41,42から排出された酸素濃縮ガスを蓄える容器である。
第2保持部72A,72Bは、例えば筒状に構成され、排出流路23において比例弁49の下流側(出口11に近い部分)に設けられている。排出流路23は、比例弁49の下流側で分岐して、第1排出流路23Aと第2排出流路23Bとに分かれている。そして、第2保持部72A,72Bは、それぞれ第1排出流路23A及び第2排出流路23Bに設けられている。第2保持部72A,72Bは、例えばゼオライト系の吸湿材によって構成される吸湿層を着脱自在に保持する。この吸湿層は、酸素より窒素を優先的に吸着する吸着材としても機能する。第2保持部72A,72Bに収容される吸湿層は、比例弁49から送られる空気によって水分が脱離されるため、第2保持部72A,72Bから加湿された空気が出口11側へと送られる。
排出流路23における第2保持部72A,72Bの下流側には、出口11に向かう途中で合流して、1本の流路となって出口11につながっている。排出流路23の出口11付近には排出流路23を流れる気体の流量を検知する流量センサや、排出流路23を流れる気体の酸素濃度を検知する酸素センサ、バクテリアの通過を阻止するバクテリアフィルタなどを設けてもよい。
上述した取込流路21における分岐後の各々の供給路21A,21Bには、各吸着筒41,42に対応して三方弁51,52がそれぞれ設けられている。各三方弁51,52は、排気流路25に接続されており、排気流路25を介して排気口15に接続されている。排気流路25には、排気バッファ53が設けられている。三方弁51は、第1吸着筒41を加圧状態と減圧状態とに切り替える。加圧状態は、コンプレッサ33と第1吸着筒41との間の流路が開放され、且つ第1吸着筒41と排気口15との間の流路が閉塞されることで、第1吸着筒41に空気が供給される状態である。減圧状態は、コンプレッサ33と第1吸着筒41との間の流路が閉塞され、且つ第1吸着筒41と排気口15との間の流路が開放されることで、第1吸着筒41から排気流路25を介して酸素濃縮装置10の外部へ空気が排出され第1吸着筒41内の圧力が減圧される状態である。
三方弁52は、第2吸着筒42を加圧状態と減圧状態とに切り替える。加圧状態は、コンプレッサ33と第2吸着筒42との間の流路が開放され、且つ第2吸着筒42と排気口15との間の流路が閉塞されることで、第2吸着筒42に空気が供給される状態である。減圧状態は、コンプレッサ33と第2吸着筒42との間の流路が閉塞され、且つ第2吸着筒42と排気口15との間の流路が開放されることで、第2吸着筒42から排気流路25を介して酸素濃縮装置10の外部へ空気が排出され第2吸着筒42内の圧力が減圧される状態である。
三方弁51は、制御部60と電気的に接続されており、制御部60から制御信号が与えられることで、加圧状態と減圧状態とを切り替える。同様に、三方弁52は、制御部60と電気的に接続されており、制御部60から制御信号が与えられることで、加圧状態と減圧状態とを切り替える。具体的には、各三方弁51,52は、駆動電力が与えられていない状態では加圧状態となり、駆動電力が与えられている状態では減圧状態となる。
バイパス流路27は、各吸着筒41,42の出口11側同士を接続する流路である。バイパス流路27には、パージ弁55が設けられている。パージ弁55は、バイパス流路27を開放して第1吸着筒41と第2吸着筒42とが連通する連通状態と、バイパス流路27を閉塞して第1吸着筒41と第2吸着筒42とが連通しない非連通状態と、を切り替える。パージ弁55は、制御部60と電気的に接続されており、制御部60から制御信号が与えられることで、連通状態と非連通状態とを切り替える。具体的には、パージ弁55は、駆動電力が与えられていない状態ではバイパス流路27を閉塞した状態となり、駆動電力が与えられている状態ではバイパス流路27を開放した状態となる。
制御部(報知部)60は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びI/O(Input/Output)を有するマイクロコンピュータを備えている。制御部60は、圧力検出部57及び温度検出部59と電気的に接続されており、圧力検出部57が検知した圧力を示す情報及び温度検出部59が検知した温度を示す情報を取得し得る。制御部60は、コンプレッサ33、各三方弁51,52、及びパージ弁55と電気的に接続されており、これらの機器の動作を制御する。制御部60は、発音部61と電気的に接続されており、発音部61の動作を制御する。
発音部(報知部)61は、メロディ、メッセージなどの音声を発する装置であり、例えば、スピーカやスピーカに対して音声信号を与える駆動回路などを備え、制御部60からの指示に対応した音声を発するように動作する。例えば、発音部61は、制御部60からの指示によって、吸湿層の乾燥が一定程度完了したことを外部に知らしめる報知を行う。
圧力検出部57は、第1吸着筒41又は第2吸着筒42内の圧力を検出する公知の圧力センサとして構成されている。圧力検出部57は、検出した圧力を示す情報を、制御部60に出力する。
温度検出部(外部温度検出部)59は、熱電対などの公知の温度センサとして構成され、第2保持部72A,72Bの温度、および第2保持部72A,72Bの外部の温度を検出する。具体的には、温度検出部59は、第2保持部72A,72Bの筒表面に設けられる状態で、第2保持部72A,72Bの表面温度を検出する。また、温度検出部59は、第2保持部72Aが収容された空間(酸素濃縮装置10の外郭を構成するケースの内部空間)内の所定位置に設けられる状態で、第2保持部72A,72Bの外部の温度(装置内部温度)を検出する。温度検出部59は、検出した温度を示す情報を、制御部60に出力する。
1-2.酸素濃縮装置の動作
酸素濃縮装置10は、電源がオフの状態では、三方弁51,52が加圧状態となり、パージ弁55がバイパス流路27を閉塞した状態となる。酸素濃縮装置10は、図示しない電源スイッチが操作された場合に、電源がオンの状態となり、以下の動作を行う。
酸素濃縮装置10は、取込口13から取り込んだ空気をコンプレッサ33によって圧縮させて一対の吸着筒41,42側に排出させる。酸素濃縮装置10は、図2に示すように、制御部60によって第1~第6制御が行われる。制御部60は、まず、第1制御として、三方弁51を制御して第1吸着筒41を加圧状態とし、三方弁52を制御して第2吸着筒42を加圧状態とし、パージ弁55を制御して第1吸着筒41と第2吸着筒42とを連通状態とする。これにより、コンプレッサ33で圧縮された空気は、各三方弁51,52を介してそれぞれ第1保持部71A,71Bに供給される。第1保持部71A,71Bに収容される吸湿層は、圧縮空気から水分を吸収する。第1保持部71A,71Bから排出された圧縮空気は、各吸着筒41,42に供給される。各吸着筒41,42は、圧縮された空気から窒素を吸着することで酸素を濃縮した酸素濃縮ガスを生成し、生成した酸素濃縮ガスを出口11側に排出する。また、第1吸着筒41と第2吸着筒42は、パージ弁55および各三方弁51,52を介して連通状態となっている。そのため、各吸着筒41,42において、筒内圧力が均等化する。各吸着筒41,42から排出された酸素濃縮ガスは、製品タンク45に蓄えられる。
次に、制御部60は、第2制御として、三方弁51を制御して第1吸着筒41を加圧状態とし、三方弁52を制御して第2吸着筒42を減圧状態とし、パージ弁55を制御して第1吸着筒41と第2吸着筒42とを非連通状態とする。第2吸着筒42を排気口15と連通させることで、第2吸着筒42は減圧され、第2吸着筒42から吸着した窒素が放出される。第1保持部71Aに収容される吸湿層は、引き続き、コンプレッサ33から供給される圧縮空気から水分を吸収する。第1吸着筒41は、引き続き、第1保持部71Aを通過した圧縮空気から窒素を吸着することで酸素を濃縮した酸素濃縮ガスを生成し、生成した酸素濃縮ガスを出口11側に排出する。
次に、制御部60は、第3制御として、三方弁51を制御して第1吸着筒41を加圧状態とし、三方弁52を制御して第2吸着筒42を減圧状態とし、パージ弁55を制御して第1吸着筒41と第2吸着筒42とを連通状態とする。第1吸着筒41と第2吸着筒42は、連通状態であるため、第1吸着筒41から出口11側に排出される酸素濃縮ガスの一部は、バイパス流路27を通じて第2吸着筒42に出口11側から流入する。このように、排気中の第2吸着筒42に酸素濃縮ガスを流入させることで、第2吸着筒42が放出した窒素を排気口15側に送り出す。これにより、窒素の排出が効率的に行われる。したがって、第1吸着筒41によって酸素濃縮ガスを生成している間に、第2吸着筒42を再生し、継続的に酸素濃縮ガスを供給する。
次に、制御部60は、第4制御として、三方弁51を制御して第1吸着筒41を加圧状態とし、三方弁52を制御して第2吸着筒42を加圧状態とし、パージ弁55を制御して第1吸着筒41と第2吸着筒42とを連通状態とする。これにより、コンプレッサ33で圧縮された空気は、各三方弁51,52を介してそれぞれ第1保持部71A,71Bに供給される。第1保持部71A,71Bに収容される吸湿層は、圧縮空気から水分を吸収する。第1保持部71A,71Bから排出された圧縮空気は、各吸着筒41,42に供給される。各吸着筒41,42は、圧縮された空気から窒素を吸着することで酸素を濃縮した酸素濃縮ガスを生成し、生成した酸素濃縮ガスを出口11側に排出する。また、第1吸着筒41と第2吸着筒42は、パージ弁55および各三方弁51,52を介して連通状態となっている。そのため、第1吸着筒41から第2吸着筒42に酸素濃縮ガスが供給され、各吸着筒41,42の筒内圧力が均等化する。これにより、第2吸着筒42は、第3制御で第1吸着筒41が生成した酸素濃縮ガスの一部を排気することなく、続く第5制御での出口11側への排出に利用する。
次に、制御部60は、第5制御として、三方弁51を制御して第1吸着筒41を減圧状態とし、三方弁52を制御して第2吸着筒42を加圧状態とし、パージ弁55を制御して第1吸着筒41と第2吸着筒42とを非連通状態とする。第1吸着筒41を排気口15と連通させることで、第1吸着筒41は減圧され、第1吸着筒41から吸着した窒素が放出される。第1保持部71Bに収容される吸湿層は、引き続き、コンプレッサ33から供給される圧縮空気から水分を吸収する。第2吸着筒42は、第4制御から引き続き、第1保持部71Bを通過した圧縮空気から窒素を吸着することで酸素を濃縮した酸素濃縮ガスを生成し、生成した酸素濃縮ガスを出口11側に排出する。
次に、制御部60は、第6制御として、三方弁51を制御して第1吸着筒41を減圧状態とし、三方弁52を制御して第2吸着筒42を加圧状態とし、パージ弁55を制御して第1吸着筒41と第2吸着筒42とを連通状態とする。第1吸着筒41と第2吸着筒42は、連通状態であるため、第2吸着筒42から出口11側に排出される酸素濃縮ガスの一部は、バイパス流路27を通じて第1吸着筒41に出口11側から流入する。このように、排気中の第1吸着筒41に酸素濃縮ガスを流入させることで、第1吸着筒41が放出した窒素を排気口15側に送り出す。これにより、窒素の排出が効率的に行われる。したがって、第1吸着筒41によって酸素濃縮ガスを生成している間に、第1吸着筒41を再生することができ、継続的に酸素濃縮ガスを供給することができる。
以上のように、加圧状態となる吸着筒の切り替えを繰り返すことで、継続的に酸素濃縮ガスが供給されるガス供給制御が行われる。そして、製品タンク45に蓄えられた酸素濃縮ガスは、第2保持部72A,72Bなどを介して出口11から排出される。
1-3.吸湿層の交換
酸素濃縮装置10がガス供給制御を開始した時点では、第1保持部71A,71Bに保持される吸湿層は、使用前の状態(水分の吸収が行われていない状態)である。そのため、図3に示すように、第1保持部71A,71Bに保持される吸湿層及び各吸着筒41,42の吸着層で十分に窒素を吸着でき、酸素濃縮装置10から供給される酸素濃度は、初期状態(ガス供給制御を開始した時点の状態)で高い濃度を示している。なお、初期状態での酸素濃度を100%とする。また、窒素の分圧が低くなるため、第1吸着筒41内の最高圧が低い値(147kPa(G)程度)となる。
そして、酸素濃縮装置10がガス供給制御を繰り返し行うことで、第1保持部71A,71Bに保持される吸湿層は、劣化状態(水分を初期状態よりも多く吸収している状態)となる。そのため、図3に示すように、第1保持部71A,71Bに保持される吸湿層で十分に窒素を吸着できず、酸素濃縮装置10から供給される酸素濃度は、初期状態よりも低い値(97.0kPa(G)程度)となる。また、窒素の分圧が高くなるため、第1吸着筒41内の最高圧が高い値(151kPa(G)程度)となる。
一方で、第2保持部72A,72Bに保持される吸湿層は、第1保持部71A,71Bに保持される吸湿層、および各吸着筒41,42を通過して乾燥した空気(例えば相対湿度が1%程度の濃縮酸素)が供給される。そのため、使用前に水分を吸収している状態であっても、水分が脱離することになる(再生した吸湿層となる)。第2保持部72A,72Bに収容される吸湿層は、比例弁49から送られる空気によって水分が脱離されるため、第2保持部72A,72Bから加湿された空気が出口11側へと送られる。
そして、第1保持部71A,71Bに保持されて水分を吸収した吸湿層(劣化した吸湿層)と、第2保持部72A,72Bに保持されて水分を吸収していない吸湿層又は再生した吸湿層と、の交換を行う。すなわち、再生した吸湿層を第1保持部71A,71Bに保持させるとともに、劣化した吸湿層を第2保持部72A,72Bに保持させる。これにより、酸素濃縮装置10がガス供給制御を継続する際に、第1保持部71A,71Bに保持させた吸湿層でコンプレッサ33から供給される空気から十分に水分を吸収することができ、第2保持部72A,72Bに保持される吸湿層で水分が脱離することになる(再生した吸湿層となる)。そのため、図3に示すように、第1保持部71A,71Bに保持される吸湿層及び吸着筒41,42の吸着層で十分に窒素を吸着でき、酸素濃縮装置10から供給される酸素濃度は、初期状態に近い高い濃度(100%程度)となる。また、窒素の分圧が低くなるため、吸着筒41内の最高圧が低い値(145kPa(G)程度)となる。
続いて、第2保持部72A,72Bに保持された吸湿層から水分が脱離した場合、この再生した吸湿層と、第1保持部71A,71Bに保持され水分を吸収して劣化した吸湿層と、の交換を行う。吸湿層の交換タイミングは、第2保持部72A,72Bに保持された吸湿層からの水分の脱離が一定程度完了した時点とすることができる。例えば、酸素濃縮装置10の出口11から排出される濃縮酸素の湿度は、図4に示すように時間変化する。なお、時間が0の時点での相対湿度(1%程度)は、第2保持部72A,72Bに吸湿層が保持されていない状態で供給される濃縮酸素の相対湿度である。酸素濃縮装置10の運転時間(ガス供給制御を繰り返し行う時間)が10時間程度では、相対湿度が1%程度となり、この状態で吸湿層からの水分の脱離(乾燥)が完了したと判断する。
第1保持部71A,71Bに保持される吸湿層と、第1吸着筒41又は第2吸着筒42に保持される吸着層の体積比は、例えば、1:3~1:5とする。これにより、吸湿層側の体積を大きくしすぎないため、過剰に水分を吸収して再生後に濃縮酸素の酸素濃度を低下させる問題が生じなくなる。また、吸着層側体積を小さくしすぎないため、吸着層まで水分が吸着して吸湿層を再生しても十分な再生効果が得られない問題が生じなくなる。
1-4.報知制御
ここで、図5のフローチャートを用いて、酸素濃縮装置10における吸湿層の交換時期の報知制御について説明する。制御部60は、例えば酸素濃縮装置10の電源が投入されたことを条件として、上述したガス供給制御とともに、吸湿層の交換時期の報知制御を開始する。
制御部60は、まず、ステップS11で、第2保持部72Aの温度、および第2保持部72Aの外部の温度を検出する。具体的には、制御部60は、第2保持部72Aの温度として、温度検出部59によって検出された第2保持部72Aの筒表面温度を示す情報を取得する。制御部60は、第2保持部72Aの外部の温度として、第2保持部72Aが収容された空間(酸素濃縮装置10の外郭を構成するケースの内部空間)の温度(装置内部温度)を示す情報を取得する。
続いて、制御部60は、ステップS12で、ステップS11で検出した第2保持部72Aの温度の変化が所定の状態で、かつ第2保持部72Aの外部の温度との差が所定値以下であるか否か判断する。具体的には、制御部60は、第2保持部72Aの温度が一定程度(例えば2~3℃)下がった後、第2保持部72Aの温度が上昇し、第2保持部72Aの温度と第2保持部72Aの外部の温度との差が所定値(例えば1℃)以下になったか否か判断する。ここで、水分を含んだ吸湿層を第2保持部72A,72Bに保持させた場合、吸湿層から水分が脱離することに応じて第2保持部72A,72Bの温度が低下し、その後、使用の進行に応じて水分の脱離が生じにくくなると脱離吸熱が生じにくくなるため、第2保持部72A,72Bの温度は上昇する。このように第2保持部72A,72Bの温度が上昇すると、第2保持部72A,72Bの温度とその外部温度との差が徐々に縮まることになる。そのため、第2保持部72Aの温度が上昇し、第2保持部72Aの温度とその外部温度との差が所定値以下になったことで、吸湿層の乾燥が一定程度完了したことになる。
制御部60は、ステップS12で、「第2保持部72Aの温度の変化が所定の状態で、かつ第2保持部72Aの外部の温度との差が所定値以下である状態」でないと判断する場合、Noに進み、再びステップS11を行う。具体的には、第2保持部72Aの温度が上昇していない場合や、第2保持部72Aの温度が上昇しても第2保持部72Aの外部の温度との差が所定値以下とならない場合には、ステップS12でNoに進む。一方で、制御部60は、ステップS12で、第2保持部72Aの温度が所定の上昇状態であると判断する場合、Yesに進み、ステップS13を行う。
制御部60は、ステップS13で、報知処理を行う。具体的には、制御部60は、発音部61に対して、吸湿層の乾燥が一定程度完了したことを外部に知らしめる音声を発するように指示を与える。吸湿層の乾燥が一定程度完了したことは、例えば、酸素濃縮装置10から供給される濃縮酸素の相対湿度が、1%程度となった状態である。発音部61は、制御部60から指示を受けると、スピーカからメロディ、メッセージなどの音声を発生させる。例えば、発音部61は、「吸湿層の交換をしてください」、「吸湿層の乾燥が完了しました」などのメッセージをスピーカから音声として出力する。なお、吸湿層の乾燥が一定程度完了したことの報知の方法は、発音部61による音声の出力の他に、ランプの点灯や、液晶ディスプレイでのメッセージの表示などであってもよい。制御部60は、ステップS13の処理を行うと、図5の報知制御を終了する。
1-5.効果
上述した酸素濃縮装置10では、吸着層よりも上流側の取込流路21において吸湿層を保持することができるため、コンプレッサ33から取込流路21を介して供給される空気から水分を除去し、吸着層に乾燥空気を送ることができる。よって、この酸素濃縮装置10は、吸着層に水分が蓄積することに起因する吸着層の劣化を抑制し、吸着層から濃縮酸素を良好に放出する機能を継続的に維持することができる。
更に、この酸素濃縮装置10は、吸着層の上流側の第1保持部71A,71Bで保持される吸湿層と、下流側の第2保持部72A,72Bで保持される吸湿層とが交換可能とされている。第1保持部71A,71Bで吸湿層を保持しつつ第2保持部72A,72Bで他の吸湿層を保持した状態で使用を継続すると、第1保持部71A,71Bで保持される吸湿層は水分が徐々に蓄積してゆくため、その状態を継続しすぎると、その吸湿層において十分な吸湿機能を果たせなくなる。
しかし、上記酸素濃縮装置10は、ある程度水分が蓄積したタイミングで第1保持部71A,71Bに保持されていた吸湿層を第2保持部72A,72Bに保持させ、第2保持部72A,72Bに保持されていた吸湿層を第1保持部71A,71Bに保持させるように交換する対応が可能となる。このように交換がなされると、吸着層の上流側(第1保持部71A,71B)に配置されることで水分が蓄積した吸湿層を、吸着層の下流側(第2保持部72A,72B)に配置し直して乾燥した濃縮酸素に晒すことができる。
よって、第2保持部72A,72Bに配置し直された吸湿層は、酸素濃縮装置10の使用中に徐々に水分が脱離してゆき、水分除去機能を十分に有する吸湿層に再生し得る。一方で、上記交換により、吸着層の下流側(第2保持部72A,72B)に配置されていた吸湿層(再生が図られた吸湿層)を吸着層の上流側(第1保持部71A,71B)に配置し直すと、交換後には、再生された吸湿層によって吸着層の上流側での水分除去を継続することができる。
このような機能を有するため、上記酸素濃縮装置10は、交換の度に新規の吸湿層を多量に補充するような対応が不要なものとなり、吸湿層の必要量を抑えつつ吸湿機能をより長く維持し得る装置となる。
その上で、酸素濃縮装置10は、第2保持部72A,72Bに配置した吸湿層が使用中に徐々に水分が脱離するため、加湿された濃縮酸素を供給することができる。
また、上記の酸素濃縮装置10は、吸湿層が酸素より窒素を優先的に吸着する吸着材を有するものであるため、吸着層だけでなく吸湿層によっても窒素を吸着することができ、酸素濃縮を行い得る領域をより確保することができる。但し、単に吸着材を含んだ吸湿層を用いるだけでは、吸湿層の使用が長くなるにつれて水分の吸収が進行し、窒素を吸着する性能が悪化する懸念がある。
しかし、上記酸素濃縮装置10は、上流側(第1保持部71A,71B)での配置によって吸湿層において水分の吸収が進行しても、その吸湿層を第2保持部72A,72Bに保持するように交換することが可能となる。よって、その吸湿層は、水分を離脱させるように再生が図られ、吸湿機能だけでなく、窒素吸着機能をも回復することができる。
上記の酸素濃縮装置10において、水分を含んだ吸湿層を第2保持部72A,72Bに配置した場合、吸湿層から水分が脱離することに応じて、水の脱離吸熱が生じ、第2保持部72A,72Bの温度が低下する。その後、吸湿層から水分が十分に脱離されると水分の脱離が生じにくくなり、脱離吸熱も生じにくくなるため、第2保持部72A,72Bの温度は上昇する。よって、上記酸素濃縮装置10のように、第2保持部72A,72Bの温度が所定の上昇状態となった場合に報知を行えば、水分の脱離が生じにくくなっていること、即ち、吸湿層の乾燥が一定程度完了したことを外部に知らしめることができる。
上記の酸素濃縮装置10において、水分を含んだ吸湿層を第2保持部72A,72Bに配置した場合、吸湿層から水分が脱離することに応じて第2保持部72A,72Bの温度が低下し、その後、使用の進行に応じて水分の脱離が生じにくくなると脱離吸熱が生じにくくなるため、第2保持部72A,72Bの温度は上昇する。このように第2保持部72A,72Bの温度が上昇すると、第2保持部72A,72Bの温度と外部温度との差が徐々に縮まることになる。よって、上記酸素濃縮装置10のように、第2保持部72A,72Bの温度と外部の温度との差が所定値以下になった場合に報知を行えば、吸湿層の乾燥が一定程度完了したことをより正確に検出し、より正確なタイミングで外部に知らしめることができる。
2.第2実施形態
2-1.報知制御の説明
第2実施形態に係る酸素濃縮装置10では、吸湿層の交換時期の報知制御を第1実施形態と異なる方法で行ってもよい。図6は、第2実施形態に係る吸湿層の交換時期の報知制御の流れを示すフローチャートである。
制御部60は、例えば酸素濃縮装置10の電源が投入されたことを条件として、上述したガス供給制御とともに、吸湿層の交換時期の報知制御を開始する。制御部60は、まず、ステップS21で、酸素濃縮装置10の使用時間(上述したガス供給制御を行う時間)の計測を開始する。制御部(計測部)60は、例えば公知のタイマーとしての機能を備えている。ここで、酸素濃縮装置10の使用時間は、第1保持部71A,71Bと第2保持部72A,72Bとの間において吸湿層の交換が行われ、酸素濃縮装置10の電源がオンされた時点から使用の進行に応じた累積経過時間である。また、酸素濃縮装置10の使用時間は、酸素濃縮装置10の電源がオフされた場合でもリセットされない累積時間である。例えば、制御部60は、メモリに累積経過時間を随時記憶する。
制御部60は、ステップS22で、酸素濃縮装置10の使用時間が、所定の経過時間に達したか否か判断する。所定の経過時間は、吸湿層の乾燥が一定程度完了する時間として予め設定された時間である。例えば、図4に示すデータに基づいて、濃縮酸素の相対湿度が1%程度となる時間(10時間程度)を、所定の経過時間とすることができる。ここで、水分を含んだ吸湿層を第2保持部72A,72Bに保持させた場合、その後、酸素濃縮装置10の使用の進行に応じて、吸湿層から水分が脱離していき、使用の進行に応じた累積経過時間が一定程度経過すると吸湿層の乾燥が一定程度完了したことになる。
制御部60は、ステップS22で、酸素濃縮装置10の使用時間が、所定の経過時間に達していないと判断する場合、Noに進み、再びステップS22を行う。一方で、制御部60は、ステップS22で、酸素濃縮装置10の使用時間が、所定の経過時間に達したと判断する場合、Yesに進み、ステップS23を行う。
制御部60は、ステップS23で、第1実施形態のステップS13と同様に報知処理を行う。制御部60は、ステップS23の処理を行うと、図6の報知制御を終了する。
2-2.効果
上述した酸素濃縮装置10では、水分を含んだ吸湿層を第2保持部72A,72Bに保持させた場合、その後、酸素濃縮装置10の使用の進行に応じて、吸湿層から水分が脱離していく。そして、使用の進行に応じた累積経過時間が一定程度経過すると吸湿層の乾燥が一定程度完了したことになり、そのタイミングで報知を行うことで、吸湿層の乾燥が一定程度完了したことを外部に知らしめることができる。
3.第3実施形態
3-1.酸素濃縮装置の構成
図7に示す第3実施形態に係る酸素濃縮装置10は、第1保持部および第2保持部の構成が第1実施形態と異なっている。第1保持部および第2保持部の構成以外の構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
図7に示すように、第1保持部271は、例えば筒状に構成され、取込流路21に設けられている。具体的には、第1保持部271は、取込流路21において第1供給路21Aと第2供給路21Bとに分岐する前の上流側であって、コンプレッサ33と三方弁51,52との間に設けられている。第1保持部271は、例えばゼオライト系の吸湿材によって構成される吸湿層を着脱自在に保持する。第1保持部271に収容される吸湿層は、コンプレッサ33から送り込まれた圧縮空気から水分を吸収して、乾燥した圧縮空気を、三方弁51,52を介して、下流側の第1吸着筒41及び第2吸着筒42にそれぞれ供給する。
第2保持部272は、例えば筒状に構成され、比例弁49の下流側(出口11に近い部分)に設けられている。第2保持部272は、例えばゼオライト系の吸湿材によって構成される吸湿層を着脱自在に保持する。第2保持部272に収容される吸湿層は、比例弁49から送られる空気によって水分が脱離されるため、第2保持部272から加湿された空気が出口11側へと送られる。
第3実施形態のように第1保持部271を設ける場合であっても、第2保持部272に保持させる吸湿層と交換を行うことで、吸湿層の再生を行うことができ、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
4.他の実施形態
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような例も本発明の技術的範囲に含まれる。
第1実施形態の説明では、図5の報知制御のステップS12において、制御部60は、第2保持部72Aの温度の変化が所定の状態(上昇状態)で、かつ第2保持部72Aの温度と第2保持部72Aの外部の温度との差が所定値(例えば1℃)以下になったか否か判断した。しかしながら、制御部60は、ステップS12で、第2保持部72Aの温度の変化が所定の状態となったか否かの判断のみを行う構成であってもよい。第2保持部72Aの温度の変化が所定の状態になることとは、例えば、第2保持部72Aの温度が所定値(例えば2℃)上昇したことや、第2保持部72Aの温度の時間に対する温度の変化率が所定値(例えば1℃/分)になったことなどであってもよい。
第1実施形態の説明では、図5の報知制御のステップS11において、制御部60は、第2保持部72Aの温度を検出したが、第2保持部72Bの温度を検出してもよく、第2保持部72A,72Bの両方の温度を検出してもよい。そして、制御部60は、ステップS12の処理で、第2保持部72Bの温度や、第2保持部72A,72Bの各温度の平均値が、所定の上昇状態か否か判断してもよい。
第1実施形態の説明において、吸湿層の再生時に、第2保持部72A,72Bを別途用意する熱源を用いて温める構成としてもよい。これにより、吸湿層の再生速度を上げることができ、水分の脱離の程度も向上させることができる。
第1実施形態の説明において、温度検出部59は、第2保持部72A,72Bの温度とともに、第2保持部72A,72Bの外部の温度を検出する構成であった。しかしながら、第2保持部72A,72Bの外部の温度を検出する外部温度検出部を、温度検出部59の他に別途設けてもよい。