JP7285480B2 - 消費電力推定装置および消費電力推定方法 - Google Patents
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Description
一方、図38(b)に示すように、中小規模ビルでは建物全体の電力量を把握する親メータMのみを設置し、機器毎・用途毎の電力量を把握する子メータmを設置しない場合が多い。そのため、機器別の電力情報を取得することができず、電力消費の無駄がどこで発生しているのかを知ることができない。しかし、親メータMの電力情報から機器別または用途別の電力消費量を推定することができれば、無駄な電力消費を削減することが可能になる。
機器別消費電力推定とは、機械上に蓄積された総消費電力量データを用いて各機器の消費電力量を推定する技術である。機器別消費電力推定は、各機器への測定器の導入や通信機能を持った機器への買い替えを必要としないため、低コストで機器ごとの消費電力を「見える化」することができる。
特許文献1には、家庭内等の複数の機器それぞれの消費電力等を求める機器分離を、階層型の隠れマルコフモデル(FHMM)を活用することで行うことが記載されている。
また、特許文献2には、複数棟をまとめて管理するサイトにおいて、各棟に電力メータを設置せずとも棟別の電力量を知ることが記載されている。
また、非特許文献2には、機器別消費電力推定のためのBuilding Energy Assessment Resource(BEAR)というボトムアップの手法が提案されている。
また、非特許文献3には、ビル内での総消費電力の推移データに基づき、非負値行列分解による機器別消費電力推定とそのインタラクティブな可視化システムに関する提案がなされている。
この消費電力推定装置は、情報取得部と、消費電力推定部と、を備える。
情報取得部は、建物内に設置された電力メータが計測した前記総消費電力量、前記機器の制御情報および前記機器が設けられる空間の在所率情報を取得する。
消費電力推定部は、前記総消費電力量の推移履歴を行列構造として持つ観測行列を、機器の電力消費パターンを行列構造として持つ基底行列と、前記電力消費パターンの発生状況を行列構造として持つ発生行列とに分離することで、機器毎または用途毎の消費電力量を推定する。
また、消費電力推定部は、過去の前記総消費電力量、前記制御情報および前記在所率情報を用いて前記電力消費パターンを推定するものであり、前記基底行列および前記発生行列を下記消費電力推定式(2)により算出する。
この消費電力推定方法は、情報取得ステップと、消費電力推定ステップと、を備える。
情報取得ステップでは、建物内に設置された電力メータが計測した前記総消費電力量、前記機器の制御情報および前記機器が設けられる空間の在所率情報を取得する。
消費電力推定ステップでは、前記総消費電力量の推移履歴を行列構造として持つ観測行列を、機器の電力消費パターンを行列構造として持つ基底行列と、前記電力消費パターンの発生状況を行列構造として持つ発生行列とに分離することで、機器毎または用途毎の消費電力量を推定する。
また、前記消費電力推定ステップでは、過去の前記総消費電力量、前記制御情報および前記在所率情報を用いて前記電力消費パターンを推定し、前記基底行列および前記発生行列を下記消費電力推定式(2)により算出する。
建物(例えば、ビル)の管理において、総消費電力量の他に自然または容易に習得できる情報が存在する。本発明の発明者は、その情報の中から非負値行列因子分解(NMF: Nonnegative Matrix Factorization)に基づく機器別消費電力推定に有用性が期待できる情報として「機器の制御情報」および「在所率情報」に着目した。以下では、この二つの情報を「補助情報」と呼ぶ場合がある。
在所率情報は、機器別消費電力の推定を行う空間での人の多さを示す情報であり、例えば、空間を複数の領域に分割した場合における領域単位での人の在/不在の割合である。なお、在所率情報は、人の多い/少ないを示す程度の情報であってもよい。
また、第2実施形態として、補助情報である「機器の制御情報」および「在所率情報」を活用しつつ、「機器の定格値」を考慮して機器別消費電力推定を行う場合を示す。
<第1実施形態に係る消費電力推定システムの構成>
図3を参照して、第1実施形態に係る消費電力推定システム100の構成について説明する。消費電力推定システム100は、複数の機器の各々の消費電力量を加算した全体の消費電力量から、各々の機器の消費電力量を推定するシステムである。消費電力推定システム100は、電力を使用する様々な場面で使用することができ、消費電力量を推定する対象となる機器は、種類、用途などが特に限定されるものではない。つまり、消費電力推定システム100は、複数の機器の消費電力量を加算した全体の消費電力量が分かる任意の範囲について、各々の機器の消費電力量を推定することができる。
消費電力量記憶部41には、テナント2の消費電力量が所定の時間間隔(例えば、30分周期)で記憶されている。制御情報記憶部42には、機器毎の「ON/OFF」に関する制御情報が履歴として記憶されている。在所率情報記憶部43には、人の在/不在に関する在所率情報が履歴として記憶されている。
消費電力推定部52は、SBNMFを用いて全体の消費電力量から機器毎の消費電力量を推定する。消費電力推定部52は、補助情報として機器の制御情報および在所率情報を利用する。処理の詳細は後記する。
推定結果出力部53は、消費電力推定部52によって推定された機器毎または用途毎の消費電力量を出力する。推定結果出力部53による出力の方法は特に限定されず、推定結果出力部53は、例えば、機器毎または用途毎の消費電力量を表示装置に表示する。
<1>機器の制御情報の活用に関して
機器の電力消費パターンを学習している際に、制御情報(例えば、ON/OFF情報)との乖離がみられた場合には罰則を与え、制御情報に沿うように電力消費パターンを学習させる。ただし、電力消費パターンに基づいた再現誤差と補助情報の整合性に基づいた誤差のいずれも最小化するため、必ずしも学習された電力消費パターンが制御情報に沿うとは限らない。そのため、消費電力量を推定する際に、機器がOFFの時間帯については消費電力量を「0(ゼロ)」として置き換える。
在所率と各機器の消費電力量との関係について、照明器具とコンセントにて正の相関関係がみられることが実験により分かっている。図4に各機器と在所率との関係を示す。図4に示したように、特に照明器具に対して消費電力を推定する際に在所率を考慮することが有用だという一般的な傾向が示唆されるため、照明器具の電力消費パターンのうちの一つが在所率と関係を持つという仮定をおき、その関係の度合いを表すパラメータとの積によりこれを表すことにする。また、コンセントに関しては、消費電力量が在所率に比例するものとベースとして常に存在するものとに分けられると仮定を置いたうえで、在所率に関する1次関数として扱う。
表1を適宜参照して、第1実施形態に係る消費電力推定方法の定式化について説明する。表1は、ここで説明する数式の記号表である。なお、表1には、第2実施形態で説明する記号が一部含まれている。
制御履歴情報については、ON/OFF情報を表し、図5に示す式(4.1)のように定義する。また、全機器の集合は、R=R0∪Rb∪Rv∪Rbvとする。
機器rに対する消費電力の推定値Y(ハット付き)rは、図6に示す式(4.2)~式(4.5)のようになる。
式(4.6)の第2項は、制御履歴としてOFF情報が得られているにもかかわらず電力消費が存在している場合にかかる罰則であり、第3項は制御履歴としてON情報が得られているにもかかわらず電力消費が小さくなっている場合にかかる罰則である。図8に、推定された電力量と第1項、第2項それぞれの罰則との関係を示す。
Xr,cr,brについては、式(4.7)において極値問題を解くことで更新式が導出できる。γkは、在所率から影響を受ける電力消費パターンにかかるもののみを更新し、それぞれ図9に示す式(4.8)~式(4.13)で表される。また、Arは、貪欲法によって図7の式(4.7)の目的関数値を小さくするよう、各要素について更新がなされる。
各テナントにみられる特徴的な1日の電力消費パターンの個数Kを具体的に与えるため、事前に学習データに基づいてチューニングを行う必要がある。ここでは、4-foldの交差検定(CV:cross validation)により具体的なKを与えることを想定する。4-fold CVは対象としている学習データの期間を4分割し、そのうちの1つを評価期間、残りを学習期間として全事例が一回ずつ評価期間となるよう検証を繰り返し、その平均的な振る舞いに基づき適切なパラメータを選定するというものである。ここでは、図7の式(4.6)の目的関数について、各期間の平均をとり、その値が最も小さくなる電力消費パターンの個数を適切な個数として採用する。図10に4-fold CVに基づくパラメータチューニングの概要を示す。
第1実施形態に係る消費電力推定方法のアルゴリズムを図12に示す。図12は、本発明の第1実施形態に係る消費電力推定方法のアルゴリズムの例示である。図12に示すアルゴリズムに記載される括弧書きの数字「(x.x):x部分は数字」は、定式化で説明した数式に対応している。
図13ないし図16を参照して(適宜、図1~図12を参照)、第1実施形態に係る消費電力推定システム100を用いた消費電力推定方法について説明する。
図13に示すように、最初に、電力推定を行う者は、消費電力を推定する期間(評価期間)を指定する(ステップS1)。評価期間は任意であってよく、例えば評価期間として1ヶ月間を指定した場合、1ヶ月間を1日単位で消費電力の推定を行う。情報取得部51は、評価期間の指定を受け付け、消費電力推定部52は、記憶部40から評価期間に対応するデータを取得する。例えば、評価期間として1ヶ月間が指定された場合、消費電力推定部52は、1ヶ月分の消費電力量を取得する。
図14を参照して、パラメータの決定処理について説明する。ここでの処理は、前記説明したパラメータチューニングの内容に対応している。つまり、各テナントにみられる特徴的な1日の電力消費パターンの個数K、さらに制御履歴情報との乖離に対する罰則の大きさを調整するパラメータλ1,λ2,αについては、4-fold CVに基づいて決定する。
図15を参照して、候補パラメータを用いた消費電力分離の交差検証処理について説明する。ここでの処理は、前記説明したパラメータチューニングにおける4-fold CVの内容に対応している。
図16を参照して、ステップS23における対象テナントの消費電力の分離処理(パラメータ決定前)について説明する。ここでの処理は、前記説明した定式化およびアルゴリズムの内容に対応している。
図16を参照して、ステップS3における対象テナントの消費電力の分離処理(パラメータ決定後)について説明する。ここでの処理は、前記説明した対象テナントの消費電力の分離処理(パラメータ決定前)と同様であり、定式化およびアルゴリズムの内容に対応している。そのため、ここでは、ステップS23における消費電力の分離処理(パラメータ決定前)との相違点について主に説明する。
<第2実施形態に係る消費電力推定システムの構成>
図17を参照して、第2実施形態に係る消費電力推定システム200の構成について説明する。消費電力推定システム200は、複数の機器の各々の消費電力量を加算した全体の消費電力量から、各々の機器の消費電力量を推定するシステムである。ここでは、第1実施形態に係る消費電力推定システム100(図3参照)との相違点について主に説明する。
消費電力推定部62は、SBNMFを用いて全体の消費電力量から機器毎の消費電力量を推定する。消費電力推定部62は、補助情報として機器の制御情報および在所率情報を利用する。また、消費電力推定部62は、定格値を考慮した消費電力推定を行う。処理の詳細は後記する。
推定結果出力部63は、消費電力推定部62によって推定された機器毎または用途毎の消費電力量を出力する。推定結果出力部63による出力の方法は特に限定されず、推定結果出力部63は、例えば、機器毎または用途毎の消費電力量を表示装置に表示する。
<1>機器の制御情報および<2>在所率情報の活用に関しては、第1実施形態と同様なので説明を省略する。
SBNMFをはじめとする機器別・用途別の消費電力量推定技術は、機器毎の電力消費パターンを足し合わせることにより全体の消費電力の再現を行う。このような分解は、テナント毎、機器毎に複数の特徴的な電力消費行動の存在、またそれらが空間的に独立な形で生起している状況下でうまく働く。図18にこれらSBNMFで想定される状況を示す概念図を示す。
また、パラメータqrの値を適切に与えることで、電力消費パターンの単純な和でもなく、いずれかの最大値でもなく、中間的な電力量表現で与えられるような、実空間の一部についてのみ消費行動が競合するような状況下での推定も可能になる。
パラメータqrがそのテナントにおいて適切な値となっているのであれば、従来アプローチで生じていた過大な推定が抑えられ、定格値を考慮した自然な推定が可能になる。
表1を適宜参照して、第2実施形態に係る消費電力推定方法の定式化について説明する。なお、第1実施形態と説明が重複する部分については、説明を省略する場合がある。
また、電力消費パターンの足し合わせ方についてパラメータqrを導入し、このパラメータqrは、各機器について図22の式(5.3)のように値をとるものとする。
Xr,cr,brについては,図23の式(5.8)において勾配法に基づいて解くことで更新式が導出でき、それぞれ図24および図25に示す式(5.9)~式(5.14)で表される。また、Arは、貪欲法によって図23の式(5.8)の目的関数値を小さくするよう、各要素について更新がなされる。
各テナントにみられる特徴的な1日の電力消費パターンの個数K、各機器の電力消費パターンの足し合わせ方を決めるパラメータqr、さらに制御履歴情報との乖離に対する罰則の大きさを調整するパラメータλ1,λ2,αについては、4-fold CVに基づいて決定する。ただし、初めにパラメータλ1,λ2,αを固定したうえで最適な電力消費パターンの個数Kと電力消費パターンの足し合わせ方を決めるパラメータqrを決定し、そのパターンの個数Kとパラメータqrの下でパラメータλ1,λ2,αを2段階でチューニングするという方法をとる。
第2実施形態に係る消費電力推定方法のアルゴリズムを図27に示す。図27は、本発明の第2実施形態に係る消費電力推定方法のアルゴリズムの例示である。図27に示すアルゴリズムに記載される括弧書きの数字「(x.x):x部分は数字」は、定式化で説明した数式に対応している。
第2実施形態に係る消費電力推定システム200を用いた消費電力推定方法について、パラメータqを用いている点や使用する数式が異なる点以外は第1実施形態の処理の流れと同様である。
(実験の概要)
業務ビルに存在するテナント「28室」を対象として、計測された部屋単位の30分平均総電力消費量データから機器別消費電力推定をする。学習データ期間、評価データ期間はともに「2018/8/1~2018/8/31」の31日間とし、補助情報としては照明器具と空調機器の制御履歴情報、各テナントの在所率情報、照明器具と空調機器の定格値を利用する。また、精度の評価を行う際には照明器具、空調機器、コンセントの30分平均電力消費量を用いている。
(1)SBNMFに基づく手法 ・・・第1実施形態に係る手法
(2)拡張SBNMFに基づく手法・・・第2実施形態に係る手法
また、いずれも補助情報を利用しており、各機器についてRb={空調機器},Rv={コンセント},Rbv={照明器具}とした推定を行う。
評価期間における2手法の推定結果について、各テナントの機器ごとのMRをプロットした箱ひげ図を図30に示す。箱部は上位25%点、中央値、上位75%を表す。また、四分位範囲の1.5倍を超える値については、外れ値としてプロットされ、ひげ部はそれぞれ最大値、最小値を表す。図30より、特に照明に関して変化の見られるテナントが存在することがわかる。
また、図33より、MRはコンセントについては差がなかったものの、照明と空調に対して向上していることがわかる。
さらに,図34より、誤差の分散についても照明と空調の値が大きく減少しており、提案手法は精度の向上につながったといえる。
また、図36より、MRは照明と空調に対して向上していることがわかる。さらに、図37より、誤差の分散についても照明と空調の値が大きく減少しており、第2実施形態に係る手法は精度の向上につながったといえる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。
3 消費電力推定装置
10 機器群
20 電力メータ
30 人検知センサ
40 記憶部
41 消費電力量記憶部
42 制御情報記憶部
43 在所率情報記憶部
50,60 制御部
51,61 情報取得部
52,62 消費電力推定部
53,63 推定結果出力部
100,200 消費電力推定システム
Claims (3)
- 非負値行列因子分解によって総消費電力量から機器毎または用途毎の消費電力量を推定する消費電力推定装置であって、
建物内に設置された電力メータが計測した前記総消費電力量、前記機器の制御情報および前記機器が設けられる空間の在所率情報を取得する情報取得部と、
前記総消費電力量の推移履歴を行列構造として持つ観測行列を、機器の電力消費パターンを行列構造として持つ基底行列と、前記電力消費パターンの発生状況を行列構造として持つ発生行列とに分離することで、機器毎または用途毎の消費電力量を推定する消費電力推定部と、を備え、
前記消費電力推定部は、過去の前記総消費電力量、前記制御情報および前記在所率情報を用いて前記電力消費パターンを推定するものであり、
前記基底行列および前記発生行列を下記消費電力推定式(2)により算出する、
- 前記消費電力推定部は、
ON/OFF制御が可能な機器に関して、機器の制御情報に基づいてOFFの時間帯については消費電力量を「ゼロ」として推定し、また、
在所率と消費電力量とに相関関係がある機器に関して、その相関関係の度合いを表すパラメータとの積により消費電力量を推定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の消費電力推定装置。 - 非負値行列因子分解によって総消費電力量から機器毎または用途毎の消費電力量を推定する消費電力推定方法であって、
建物内に設置された電力メータが計測した前記総消費電力量、前記機器の制御情報および前記機器が設けられる空間の在所率情報を取得する情報取得ステップと、
前記総消費電力量の推移履歴を行列構造として持つ観測行列を、機器の電力消費パターンを行列構造として持つ基底行列と、前記電力消費パターンの発生状況を行列構造として持つ発生行列とに分離することで、機器毎または用途毎の消費電力量を推定する消費電力推定ステップと、を備え、
前記消費電力推定ステップでは、過去の前記総消費電力量、前記制御情報および前記在所率情報を用いて前記電力消費パターンを推定し、
前記基底行列および前記発生行列を下記消費電力推定式(2)により算出する、
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