JP7284984B2 - 熱可塑性樹脂組成物及び緩衝部材 - Google Patents
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Description
(1)優れた透明性及び柔軟性(緩衝性)を有しつつ、成形体の被接着面にウレタン系コート剤等の保護層を形成しない状態でも接着性に優れた成形体を形成する。
(2)成形体の被接着面に保護層を形成する工程を省略できるため、緩衝部材等の生産性が向上すると共に製造コストも抑えることができる。
JIS K7136:2000に準拠して、分光ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製ヘーズメーター、SH 7000)を用いて各試験片のヘイズ測定を行った。試験片としては、実施例及び比較例における各熱可塑性樹脂組成物を縦50mm×横50mm×厚み3mmにそれぞれ成形したものを用いた。ヘイズ値が30%以下の場合を優良(○)、30%を超える場合を不可(×)とした。
JIS K6253に準拠するアスカーCデュロメータ(SRIS 0101規格)を用いて、各試験片の硬度測定を行った。試験片としては、実施例及び比較例における各熱可塑性樹脂組成物を縦60mm×横60mm×厚み12mmにそれぞれ成形したものを用いた。柔軟性(緩衝性)の評価としては、アスカーC55未満を良好「○」、55以上を不適「×」と判定した。
JIS K6854-3に準拠して、各試験片の剥離接着強さの測定を行った。図1及び図2を用いて剥離接着強さの試験方法について具体的に説明する。図1は試料片50の構成を概略的に示しており、図2は試料片の剥離接着強さ試験方法を図示している。図1に示す試料片50は次のようにして作製した。実施例及び比較例における各熱可塑性樹脂組成物をストリップ状(幅20mm×長さ60mm×厚さ3mm)にそれぞれ成形して試験片51とした。この試験片51を同じくストリップ状に作製したウレタン片52(株式会社クラレ製 クラミロンU2195、幅20mm×長さ60mm×厚さ3mm)と接着剤53によって接着し、試料片50を得た。より詳しくは、試験片51及びウレタン片52の表面をアセトンに浸したキムワイプ(登録商標)で拭いた後、60℃で5分間乾燥させた。試験片51とウレタン片52の片面にそれぞれ接着剤(Henkel社製、LOCTITE(登録商標)BONDACE 812TF)を塗布し、60℃で5分間乾燥する工程を2回行った後、速やかに試験片51及びウレタン片52を貼り合わせた。試験片51側を上にした状態で載置し、ハンドローラにて2~3kgf/cm2の力を加えて圧着させることによって、試料片50を得た。この試料片50を12時間養生した後、図2(A)及び(B)に示すように、引っ張り試験機(株式会社島津製作所製オートグラフ(登録商標)、AT-100N)により、試料片50の試験片51とウレタン片52とを剥離させ、剥離接着強さを測定した。なお、図2において、54は固定側引張り治具、55は可動側引張り治具である。ロードセルは1kN(100kgf)であり、試験スピードは50mm/分、固定側引張り治具54及び可動側引張り治具55間の初期間隙は20mmであった。
以下の手順で本実施例の熱可塑性樹脂組成物を製造し、その効果の評価を行った。表1に示す各構成成分を用い、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)として、屈折率1.5173、A硬度87のSEBS(A1)を37.45g、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)として、屈折率1.5005、C硬度67のTPU(B1)を87.37g、第1の可塑剤(C1)として、分子量1200のパラフィンオイル(C11)を31.83g、第2の可塑剤(C2)として、屈折率1.4600のアジピン酸エステル(C21)を3.35gそれぞれ個別に秤量した。次にSEBS(A1)とパラフィンオイル(C11)とを室温で混合した後、100℃で12時間加熱し、SEBS(A1)にパラフィンオイル(C1)をよく吸収及び分散させ、第1の混合物(I)を得た(予備混合工程)。他方、TPU(B1)とアジピン酸エステル(C21)とを室温で混合した後、100℃で36時間加熱し、TPU(B1)にアジピン酸エステル(C21)をよく吸収及び分散させ、第2の混合物(II)を得た(予備混合工程)。第1の混合物(I)と第2の混合物(II)の屈折率をJIS K7105に準拠して、屈折率計(株式会社アタゴ、DR-M2)で波長589nmの偏光フィルタを用いて測定した。第1の混合物(I)の屈折率と第2の混合物の屈折率との差は、0.003以下であり、両者の屈折率は略同程度の近似した値であった。得られた第1の混合物(I)と第2の混合物(II)を手攪拌でドライブレンドした後、バッチ式の二軸混練機(株式会社トーシン製 TD3-10MDX型)で160~190℃、回転数40rpmで25分間混練し(混練工程)、160gの熱可塑性樹脂組成物を得た。この組成物を上述した熱可塑性樹脂組成物の各評価方法で用いる所定の試験片形状に170℃、総荷重5tonf(面圧13.9MPa)の条件下で10分間の加熱プレス成形し、得られた試験片を用いて物性等の評価を行った。なお、上記屈折率測定に用いた第1の混合物(I)と第2の混合物(II)の試料は、上記熱可塑性樹脂組成物の作製とは別に屈折率測定用として、同じ配合割合と手順で第1の混合物(I)と第2の混合物(II)を各160g準備し、それぞれバッチ式の二軸混練機(株式会社トーシン製 TD3-10MDX型)で160~210℃、回転数40rpmで25分間混練したのち、15mm×10mm×厚み6mmに加熱プレス成形したものを試験片とした。
熱可塑性樹脂組成物の構成成分である、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)、第1の可塑剤(C1)及び第2の可塑剤(C2)の配合比を以下表2に示すように夫々変更した以外は、実施例1と同様にして、各実施例の熱可塑性樹脂組成物を得た。実施例1と同様に、得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて物性評価用の試験片を成形し、物性等の評価を行った。
熱可塑性樹脂組成物の構成成分である、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)、第1の可塑剤(C1)及び第2の可塑剤(C2)の配合比を以下表3に示すように夫々変更した以外は、実施例1と同様にして、各実施例の熱可塑性樹脂組成物を得た。実施例1と同様に、得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて物性評価用の試験片を成形し、物性等の評価を行った。実施例7~11の結果を表3に示す。
熱可塑性樹脂組成物の構成成分である、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)、第1の可塑剤(C1)及び第2の可塑剤(C2)の配合比を以下表4に示すように夫々変更した以外は、実施例1と同様にして、各実施例の熱可塑性樹脂組成物を得た。なお、実施例14においては、第2の可塑剤(C2)として、実施例1~13で用いたアジピン酸エステル(C21)に替えて、グリセリン脂肪酸エステル(C22)を用いた。実施例1と同様に、得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて物性評価用の試験片を成形し、物性等の評価を行った。実施例12~14の結果を表4に示す。
表1に示す各構成成分を用い、以下表4の配合割合に示すように、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)としてSEBS(A1)を32.94g、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)としてTPU(B1)を56.464g、第1の可塑剤(C1)としてパラフィンオイル(C11)を52.08g、第2の可塑剤(C2)としてアジピン酸エステル(C21)を7.536g、相溶化剤として無水マレイン酸変性SEBS(D1)を10.98gそれぞれ個別に秤量した。次にSEBS(A1)とパラフィンオイル(C11)と無水マレイン酸変性SEBS(D1)とを室温で混合した後、100℃で12時間加熱し、SEBS(A1)にパラフィンオイル(C1)と無水マレイン酸変性SEBS(D1)をよく吸収及び分散させ、第1の混合物(I)を得た(予備混合工程)。他方、TPU(B1)とアジピン酸エステル(C21)とを室温で混合した後、100℃で36時間加熱し、TPU(B1)にアジピン酸エステル(C21)をよく吸収及び分散させ、第2の混合物(II)を得た(予備混合工程)。第1の混合物(I)と第2の混合物(II)の屈折率をそれぞれ測定し、両者の差の値を絶対値として求めた。第1の混合物(I)の屈折率と第2の混合物の屈折率との差は、0.003以下であり、両者の屈折率は略同程度の近似した値であった。得られた第1の混合物(I)と第2の混合物(II)を実施例1と同様の方法で混練し、160gの熱可塑性樹脂組成物を得た。実施例1と同様に、得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて物性評価用の試験片を成形し、物性等の評価を行った。実施例15の結果を表4に示す。
スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)、第1の可塑剤(C1)及び第2の可塑剤(C2)の配合比を以下表5に示すように夫々変更した以外は、実施例1と同様にして、各比較例の組成物を得た。実施例1と同様に、得られた組成物を用いて物性評価用の試験片を成形し、物性等の評価を行った。比較例1~4の結果を表5に示す。
スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)、第1の可塑剤(C1)及び第2の可塑剤(C2)の配合比を以下表6に示すように夫々変更した以外は、実施例1と同様にして、各比較例の組成物を得た。実施例1と同様に、得られた組成物を用いて物性評価用の試験片を成形し、物性等の評価を行った。比較例5~8の結果を表6に示す。
51 試験片(実施例又は比較例の緩衝部材(成形体))
52 ウレタン片
53 接着剤
54 固定側引張り治具
55 可動側引張り治具
Claims (10)
- スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)、第1の可塑剤(C1)及び第2の可塑材(C2)を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と前記ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)との配合割合が、質量比で(A):(B)=25:75~70:30であり、
前記第1の可塑剤(C1)の配合割合が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、85~135質量部であり、
前記第2の可塑剤(C2)の配合割合が、前記ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)100質量部に対して、3.5~18質量部であり、
前記第1の可塑剤(C1)はパラフィンオイルであり、前記第2の可塑剤(C2)はカルボン酸エステルであり、
前記第1の可塑剤(C1)及び前記第2の可塑剤(C2)は、
前記第1の可塑剤(C1)が前記スチレン系熱可塑性エラストマー(A)に混合された状態における混合物の屈折率と、前記第2の可塑剤が前記ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)に混合された状態における混合物の屈折率との差が0.003以下となる配合割合で、配合されていることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - 前記第1の可塑剤(C1)は、重量平均分子量が400~1200のパラフィンオイルであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記第2の可塑剤(C2)は、アジピン酸エステルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- さらに、酸変性スチレン系エラストマー、ポリウレタン系ブロック共重合体及び酸変性ポリオレフィンからなる群から選択される1つ以上の相溶化剤を含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記相溶化剤が、無水マレイン酸変性スチレン系エラストマーであることを特徴とする請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる緩衝部材であって、
ヘイズ値(JIS K7136:2000準拠)が30%以下であり、硬度がアスカーC55未満(SRIS 0101規格)であることを特徴とする緩衝部材。 - 請求項1~5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(A)及び前記ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)に対し、予め、前記第1の可塑剤(C1)及び前記第2の可塑剤(C2)のそれぞれを混合して、第1の混合物(I)及び第2の混合物(II)をそれぞれ得る予備混合工程と、
前記予備混合工程を経た第1の混合物(I)と第2の混合物(II)とを混合し、混練する混練工程とを有し、
前記予備混合工程において、前記第1の混合物(I)の屈折率と前記第2の混合物(II)の屈折率との差が0.003以下となるように、前記第1の可塑剤(C1)及び前記第2の可塑剤(C2)の配合量が調整されることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。 - 前記予備混合工程において、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(A)に、前記第1の可塑剤(C1)と相溶化剤とを混合して、第1の混合物(I)を得ることを特徴とする請求項7に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 請求項7又は8に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、前記ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)、前記第1の可塑剤(C1)としてパラフィンオイル及び前記第2の可塑材(C2)としてカルボン酸エステルを混合し、混練する混練工程を有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。 - 前記混練工程において、さらに相溶化剤を混合して混練することを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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