JP7284067B2 - 検出装置、検出システムおよび検出方法 - Google Patents
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Description
(配管、保温材の構成)
図1は、本発明の各実施形態における配管および保温材の構成例を示す第1図である。
図1(a)は、配管101の配設方向に対して平行な面から見た側面図を示している。保温材102は、所定の厚さで円筒状の空洞を中心軸に含む形状を有し、配管101の外面を覆っている。保温材102は、配管101に接触した界面を介して、配管101に伝搬する振動波を伝達することができる材料で形成されている。また、配管101は、支持部材(シュー、配管を固定・支持する台、枠など)202によって支持されている。
図2に劣化した保温材102の一例を示す。製油所などのプラントでは、配管101の上に人が乗ったり、配管101の上を人が歩いたりすることがある。保温材102の劣化は、そのように人に踏みつけられて生じることが多い。劣化が生じると、保温材102には、図示するように径方向に空隙104が生じ、上側半円が例えば2つに割れる。保温材102の外側は、板金103によって覆われているので、このような割れは、外部からの目視によって確認することができない。そこで、発明者は、図2に示すように保温材102の上側半円を保温材102aと保温材102bの2つに割り、その外側を板金103で覆って、保温材102が劣化した状態を模擬した図1に示すような実験環境を構築した。また、その一方で、配管101の外側を、劣化のない状態の保温材102および板金103で覆った正常系の実験環境を構築した。そして、発明者は、それぞれの実験環境で、フランジ201に打撃を加えることにより、その打撃波が、保温材102の表面で振動センサ11によってどのように計測されるかを観察した。
保温材102が劣化していない実験環境でフランジ201に対して打撃を加えた場合、配管101を伝搬する打撃波は、配管101の外面と保温材102との界面において波形が変化すること無く、図3に例示するような正弦波に近しい波形として振動センサ11により計測される。
(検出装置の構成)
図5は、本発明の第一実施形態における検出システムの一例を示す図である。
図示するように図5に示す検出システム1は、検出装置10、振動センサ11、打撃機構18及び打撃体18Bを備えている。
打撃機構18は、例えば、図示しない制御装置により、打撃体18B(例えば、ソレノイドリレー、磁歪振動子)を駆動し、フランジ201に対して衝突させる。これにより、所定の強度の物理的な打撃をフランジ201に加える。あるいは、打撃機構18を設けず、作業者が、打撃体18Bとしてハンマーなどを用いて、フランジ201を叩き、配管101に対して打撃を与えてもよい。
振動センサ11と検出装置10は接続されていて、振動センサ11は、計測した振動データを検出装置10へ出力する。
演算部13は、振動データ取得部12が取得した振動データに対して、振動データが複合波か否かを判定するために必要な所定の処理を行う。第一実施形態では、演算部13は振動データを2階微分する。また、演算部13は、2階微分した振動データと、振動データ取得部12が取得した振動データ(0階微分した振動データ)とを比較して、相関係数Rを演算する。
記憶部16は、振動データ取得部12が取得した振動データ、保温材102の劣化判定処理において演算された諸々のデータを記憶する。
図6に保温材102に劣化が生じている場合に計測される振動データの一例を示す。図6において、縦軸は振幅の大きさ、横軸は角度を示している。
図6(a)に示す波形は、振動データ取得部12が取得した振動データである。図6(b)に示す波形は、振動データ取得部12が取得した振動データを1階微分して得られる波形データである。図6(c)に示す波形は、振動データ取得部12が取得した振動データを2階微分して得られる波形データである。図6(a)~図6(c)において囲った部分P1~P3は、理想的な波形と比べて乱れがある箇所である。2階微分を施した図6(c)の波形において、この乱れが強く現れている。この例のように振動センサ11にて得られた波形について2階微分を施すことで共振によって発生した振動が強調される。本実施形態では、共振によって発生した振動を抽出するために、演算部13が振動データを2階微分した波形データを演算する。なお、元々の打撃波に、共振によって発生した振動が重畳されていない場合(つまり、保温材が劣化していない場合)、振動データに2階微分を施しても乱れの無い正弦波に近い波形となる。
図7の縦軸は、2階微分した波形データ(図6(c))の振幅の大きさを、所定の値で規格化した値を示す。横軸は、元の振動データ(図6(a))の振幅の大きさを、所定の値で規格化した値を示す。図7の各点は、図6(a)の波形データと図6(c)の振動データの同じ角度におけるそれぞれの振幅を規格化した値をプロットしたものである。
図7より2階微分した波形データと元の振動データの相関係数Rを求めると、R=0.68である。また、図3(a)に例示した理想とする正弦波に近い振動データについて、同様に振動データと2階微分した波形データの相関係数Rを計算すると、R=9.1となった。振動データが正弦波に近ければ、相関係数Rは1に近づき、振動データが複合波の場合にはRは所定の閾値より小さくなる。
次に図1の構成を前提として、保温材102の劣化を検出する処理について説明する。
図8は、本発明の第一実施形態における検出処理の一例を示すフローチャートである。
まず、フランジ201に打撃を加える(ステップS11)。振動センサ11-A,11-B,11-Cは、この打撃による振動データを計測する。振動センサ11-A,11-B,11-Cは、計測した振動データを検出装置10へ出力する。検出装置10では、振動データ取得部12が、振動センサ11-A~11-Cから振動データを取得し(ステップS12)、各センサ別に、取得した振動データと時刻とを対応付けて記憶部16に記録する。
次に図9~図11を参照して、第二実施形態における保温材102の劣化の検出方法について説明する。第二実施形態では、演算部13が、振動センサ11が計測した振動データに対して1階微分した第1波形データと3階微分した第2波形データとを演算して、両者の相関係数R´を計算する。判定部14は、相関係数R´を閾値と比較して、保温材102の劣化を検出する。以下、第一実施形態と同様の処理、構成については第一実施形態と同じ符号を付し、簡単に説明する。
図9に振動センサ11が計測した振動データV0と、振動データV0を2階微分して得られる波形データV2とを示す。図9の縦軸は振幅の大きさ、横軸は時間を示している。図示するように振動データV0は、正弦波に近い波形を描きながら右肩下がりとなる波形を示す。換言すれば、振動データV0は、時間の経過に応じて変化するバイアス成分を含んでいる。振動データV0が、以下の式(1)で近似できるとする。
f(t)=sin(ωt)-αt・・・・(1)
すると、1階微分、2階微分、3階微分の波形データは、それぞれ、以下の式(2)、式(3)、式(4)で表すことができる。
df(t)/dt=ω・cos(ωt)-α・・・・(2)
d2f(t)/dt2=-ω2・sin(ωt)・・・・(3)
d3f(t)/dt3=-ω3・cos(ωt)・・・・(4)
ここで、αはバイアス成分の時間変化係数、tは時間、ωは角周波数である。
図10に振動データV0を1階微分して得られる波形データV1と、振動データV0を3階微分して得られる波形データV3とを示す。図10の縦軸は振幅の大きさ、横軸は時間を示している。演算部13は、振動データV0に対して1階微分、3階微分を施し、さらに波形データV1と波形データV3の相関係数R´を計算する。この例の場合、相関係数R´は0.91である。判定部14は、この結果を所定の閾値(例えば、0.8)と比較して、保温材102は劣化していないと判定する。
次に振動データが時間変化バイアス成分(-αt、あるいは+αt)を含む場合の保温材102の劣化検出処理の流れについて説明する。図8と同様の処理については、詳細な説明を省略する。
図11は、本発明の第二実施形態における検出処理の一例を示すフローチャートである。
まず、フランジ201に打撃を加える(ステップS11)。振動センサ11-A~11-Cは、打撃が加えられた後の振動データを計測する。振動データ取得部12は、振動センサ11-A~11-Cから振動データを取得する(ステップS12)。次に演算部13が、振動センサ11-A~11-Cの各々が計測した振動データに対して移動平均法などを実行し、ノイズを除去する(ステップS13)。
次に図12~図14を参照して、第三実施形態における保温材102の劣化の検出方法について説明する。第一実施形態、第二実施形態では共振によって発生した振動を強調するために微分処理を施した。これに対して、第三実施形態では、振動センサ11が計測した振動データが複合波か否かを判定するために、演算部13Aが、振動データに対して周波数解析を行う。
本発明の第三実施形態に係る構成のうち、本発明の第一実施形態に係る検出装置10を構成する機能部と同じものには同じ符号を付し、それぞれの説明を省略する。第三実施形態に係る検出装置10Aは、第一実施形態の演算部13に代えて演算部13A、判定部14に代えて判定部14Aを備える。
演算部13Aは、振動センサ11が計測した振動データをAR法などにより周波数解析する。演算部13Aは、周波数解析することにより、振動データに含まれる周波数成分の数をカウントする。
判定部14Aは、振動データ取得部12が取得した振動データに、異なる周波数の振動が複数含まれる場合、保温材102は劣化していると判定する。判定部14Aは、振動データに複数の振動が含まれていない場合、保温材102は劣化していないと判定する。
図13に波形データを周波数解析した結果のグラフを示す。図13(a)は、保温材102が劣化していない実験環境で計測された振動データを周波数解析した結果の一例を示す図である。図13(b)は、保温材102が劣化した実験環境で計測された振動データを周波数解析した結果の一例を示す図である。図13(a)、図13(b)の縦軸はスペクトル波形の振幅、横軸は周波数を示している。
保温材102が劣化していない場合、配管101を伝搬する打撃波は、上記の図3に例示するように複合波とならず、正常波形として振動センサ11により検出される。この振動データを周波数解析すると、図13(a)に示すようにピークが1つだけ現れる。
次に第三実施形態の劣化検出処理の流れについて説明する。図8、図11と同様の処理については詳細な説明を省略する。
図14は、本発明の第三実施形態における検出処理の一例を示すフローチャートである。
まず、フランジ201に打撃を加える(ステップS11)。振動センサ11-A~11-Cは、打撃が加えられた後の振動データを計測する。振動データ取得部12は、振動センサ11-A~11-Cから振動データを取得する(ステップS12)。次に演算部13Aが、振動センサ11-A~11-Cの各々が計測した振動データに対して移動平均法などを実行し、ノイズを除去する(ステップS13)。
10、10A・・・検出装置
11、11-A、11-B、11-C・・・振動センサ
12・・・振動データ取得部
13・・・演算部
14・・・判定部
15・・・出力部
16・・・記憶部
18・・・打撃機構
18B・・・打撃体
101・・・配管
102、102a、102b・・・保温材
102B・・・空間
103・・・板金
201・・・フランジ
202・・・支持部材
Claims (4)
- 配管を振動させたときに該配管を覆う保温材を伝わって検出された振動データを取得する振動データ取得部と、
前記振動データが複合波か否かを判定するための処理を前記振動データに対して行う演算部と、
前記振動データが複合波の場合に、前記保温材に劣化が生じていると判定する判定部と、
を備え、
前記演算部は、前記振動データを周波数解析し、
前記判定部は、前記周波数解析に基づいて、前記振動データに複数の周波数成分が含まれていると、前記保温材が劣化していると判定する、
検出装置。 - 前記演算部は、前記処理の前に、前記振動データに対して移動平均法を実行する、
請求項1に記載の検出装置。 - 保温材で覆われた配管における前記保温材の劣化を検出する検出システムであって、
振動センサと、
請求項1または請求項2に記載の検出装置と、
を有する検出システム。 - 配管を振動させたときに該配管を覆う保温材を伝わって検出された振動データを取得するステップと、
前記振動データが複合波か否かを判定するための処理を前記振動データに対して行うステップと、
前記振動データが複合波の場合に、前記保温材に劣化が生じていると判定するステップと、
を含み、
前記処理を前記振動データに対して行うステップでは、前記振動データを周波数解析し、
前記判定するステップでは、前記周波数解析に基づいて、前記振動データに複数の周波数成分が含まれていると、前記保温材が劣化していると判定する、
ことを特徴とする検出方法。
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