JP7283190B2 - 分光測定装置及び分光測定方法 - Google Patents
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Description
光の干渉を利用した分光測定において、可動ミラーのスキャンを不要にして測定の高速化を図る技術として、光路差を時間的に連続して変化させるのではなく、空間的に連続して変化させる技術が特許文献1や特許文献2に開示されている。
しかしながら、発明者の研究によると、このような技術を対象物の分光特性を測定する用途に用いる場合、対象物の光学的性質によっては特有の課題が生じ、そのために測定精度が低下する問題が発生し得ることが判った。
この出願の発明は、この知見に基づいて為されたものであり、マルチチャンネル型のフーリエ変換分光計の構成を備えた分光測定装置において、対象物の光学的性質によって測定精度の低下が生じるのを防止することを目的とする。
また、上記課題を解決するため、干渉光学系は、分離素子としてサバール板を備えたシアリング干渉光学系であり得る。
また、上記課題を解決するため、分光測定装置は、シアリング干渉光学系が、対象物からの光を中間集光位置に集光させる光学素子を備え、対象物からの光を中間集光位置に集光させた後、アレイ受光器の受光面上で二つの光を重ね合わせる光学系であり、サバール板は、前記光学素子の出射側に配置されているという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、分光測定装置は、サバール板が中間集光位置に配置されているという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、本願の分光測定方法は、光源からの光を対象物に照射する照射ステップと、照射ステップにおいて光が照射された対象物からの光を干渉光学系によりアレイ受光器の受光面上で干渉させ、干渉光をアレイ受光器に受光させる受光ステップと、アレイ受光器からの出力信号を演算手段により処理してスペクトルを算出する演算ステップとを備えている。この方法において、干渉光学系はケーラー照明光学系を構成しており、受光ステップは、対象物からの光でアレイ受光器の受光面をケーラー照明するステップであり、且つ、対象物からの光を分離素子で二つの光に分け、分けられた二つの光を合波素子によりアレイ検出器の受光面上で重ね合わせるステップである。
また、上記課題を解決するため、分光測定方法は、干渉光学系が分離素子としてサバール板を備えたシアリング干渉光学系であり、受光ステップが対象物からの光をサバール板により二つに分けるステップであるという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、分光測定方法は、受光ステップが、対象物からの光を中間集光位置に集光させた後、アレイ受光器の受光面上で二つの光を重ね合わせるステップであり、サバール板が、中間集光位置に対象物からの光を集光させる光学素子の出射側に配置されているという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、分光測定方法は、サバール板が中間集光位置に配置されているという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、分光測定方法は、対象物の出射側の面が散乱面又はランベルト面であるという構成を持ち得る。
また、干渉光学系が、サバール板を備えたシアリング干渉光学系であると、全体としてコンパクトになり、装置が小型化される。
また、中間集光位置に対象物の像を結像させるレンズの出射側にサバール板が配置されていると、サバール板の作用との関係でスペクトル測定の精度が低下する恐れがなくなる。
また、サバール板が中間集光位置に配置されていると、サバール板のサイズを小さくでき、コスト上のメリットがある。
また、対象物の出射側の面が散乱面又はランベルト面であると、アレイ検出器の受光面で照度分布がより均一となり、良好な測定結果が安定して得られる。
図1は、実施形態の分光測定装置の概略図である。図1に示す分光測定装置は、対象物に光を照射し、光照射された対象物からの光のスペクトルを測定する装置である。この装置は、前述したマルチチャンネル型のフーリエ変換分光計の構成を採用している。
具体的には、実施形態の分光測定装置は、光源1と、光源1からの光が照射された対象物Sからの光を受光するアレイ受光器2と、光照射された対象物Sからの光をアレイ受光器2の受光面上で干渉させる干渉光学系3と、アレイ受光器2からの出力信号を処理してスペクトルを算出する演算手段4とを備えている。
光源1からの光の照射位置に対象物Sを保持するため、この実施形態で受け板5が設けられている。この実施形態では、対象物Sの透過光を分光測定するので、受け板5は測定波長域において透明な材質となっている。
図1に示すように、サバール板31の入射側には偏光子33が配置されており、サバール板31の出射側には検光子34が配置されている。偏光子33は、対象物Sから出た無偏光の光を直線偏光光に変換するためのものである。例えば、方解石等の結晶系の偏光板、偏光フィルムや染料系偏光板のような有機系の偏光板、さらにはワイヤーグリッド偏光板のようなグリッド偏光板等が偏光子33として使用できる。
前述したように、サバール板31は、対象物Sの一点から出た光を互いに平行な光路に沿って進む二つの光に分離する。いま、二つの光の組が三つあるとし、これらを光L11とL21、光L12とL22、光L13とL23とする。光L11とL21、光L12とL22、光L13とL23は、サバール板31からの出射角がそれぞれ等しい。但し、組と組との関係では出射角は異なっており、光軸Aから離れるほど出射角は大きい。これらの光L11~L13,L21~L23において、各二つの光は光路差を持ってサバール板31を出射している。光路差Δdは、サバール板31を出射した際の出射角と、サバール板31を出射して平行に進む際の光路のずれ幅に比例する。光路のずれ幅は一定であり、出射角は光軸Aから離れるに従って大きくなるから、二つの光L11,L21の光路差をΔd1、光L12,L22の光路差をΔd2、光L13,L23の光路差をΔd3とすると、Δd1<Δd2<Δd3となる。尚、この例では、L11,L21は光軸A上を進んできた光が分離された光であるので、Δd1=0である。
演算手段4は、プロセッサ41や記憶部(ハードディスク、メモリ等)42を備えている。記憶部42に記憶されたプログラムには、アレイ受光器2からの出力信号(インターフェログラム)を処理してスペクトルを算出するスペクトル算出プログラム43が含まれる。スペクトル算出プログラム43は、離散フーリエ変換を含む演算処理を行ってスペクトルを算出する。尚、記憶部42には、基準スペクトルデータを記録したファイル44が記憶されている。基準スペクトルデータは、対象物Sを配置しない状態で予め測定したスペクトルデータであり、吸収スペクトル等の算出の際に参照される。
より具体的な例を示すと、実施形態の分光測定装置は、錠剤のような固体化成品の検査に利用され得る。この場合、この種の製品は、表面に刻印がされていて細かな凹凸がある場合がある。この凹凸が上記のようにスペクトル測定の精度低下の要因となり得る。
一方、ケーラー照明光学系の場合、対象物Sの一点からの光は、出射角に応じて受光面上の異なる点に分散して集光するので、対象物Sの光学特性に空間的・周期的な変化があったとしても、その変化は受光面上ではキャンセルされる。したがって、スペクトルの測定精度が低下することはない。
図6に結果を示すシミュレーション実験では、図5(1)(2)に示す干渉光学系3をそれぞれ使用し、対象物Sのシミュレーションとして、図6(1)に示すような二つの異なる発光分布の光源を想定した。発光分布Aは均一な強度分布であり、発光分布Bは正弦波状に異なる強度分布である。つまり、対象物Sからの光がこのような均一又は正弦波状の強弱分布を持っているとしてシミュレーションを行った。波長については、1050nmの単一波長であるとし、この光の干渉光により得られたデータについてフーリエ変換を行うシミュレーションとした。
また、図6(3A)(3B)には、ケーラー照明光学系を使用した場合のフーリエ変換結果が示されている。同様に、図6(3A)は、均一な強度分布Aの場合のフーリエ変換結果、図6(3B)は周期的に変化する強度分布Bの場合のフーリエ変換結果を示す。
一方、図6(3A)と(3B)とを比べると判るように、ケーラー照明光学系の場合、対象物Bからの光の強度が空間的に一定の場合と周期的に変化する場合とで、フーリエ変換の結果は全く一緒となっている。即ち、ケーラー照明の場合、対象物Sの発光強度分布はフーリエ変換の精度に影響を与えることがないことがシミュレーションによって確認された。このような点を考慮し、実施形態の分光測定装置は、干渉光学系3としてケーラー照明光学系を構成するものを採用している。
尚、この実施形態おいて、中間集光位置f1を形成するレンズ36を前段集光レンズという。前段集光レンズ36については、通常の丸レンズやシリンドリカルレンズ、フライアイレンズ又はロッドレンズなど、適宜のものが用いられる。
尚、フーリエ変換レンズは、各ピクセル21の配列方向で結像作用を有するものの、それに対して垂直な方向では必ずしも結像作用はなくて良い。
実施形態の分光測定装置は、対象物Sの分光分析のために使用される装置であり、測定に先立って対象物Sが受け板5に載置される。光源1からの光が照射光学系により対象物Sに照射される。光の一部は対象物Sを透過し、干渉光学系3に達する。
また、基準スペクトルデータについては予め測定しておくと説明したが、リアルタイムで基準スペクトルデータを取得する場合もあり得る。この場合は、光源1からの光を二つに分け、一方を対象物Sに照射し、他方は対象物Sを経由せずに受光器で受光して基準スペクトルデータとする。
2 アレイ受光器
21 ピクセル
3 干渉光学系
31 サバール板
32 フーリエ変換レンズ
33 偏光子
34 検光子
35 レンズ
36 前段集光レンズ
4 演算手段
43 スペクトル算出プログラム
5 受け板
6 AD変換器
S 対象物
Claims (9)
- 対象物に光を照射する光源と、
光源からの光が照射された対象物からの光を受光するアレイ受光器と、
光源からの光が照射された対象物からの光をアレイ受光器の受光面上で干渉させる干渉光学系と、
アレイ受光器からの出力信号を処理してスペクトルを算出する演算手段と
を備えており、
干渉光学系は、光源からの光が照射された対象物からの光でアレイ受光器の受光面をケーラー照明するケーラー照明光学系を構成しており、且つ、光源からの光が照射された対象物からの光を二つの光に分ける分離素子と、分けられた二つの光をアレイ検出器の受光面上で重ね合わせる合波素子とを備えていることを特徴とする分光測定装置。 - 前記干渉光学系は、前記分離素子としてサバール板を備えたシアリング干渉光学系であることを特徴とする請求項1記載の分光測定装置。
- 前記シアリング干渉光学系は、対象物からの光を中間集光位置に集光させる光学素子を備え、対象物からの光を中間集光位置に集光した後、前記アレイ受光器の受光面上で前記二つの光を重ね合わせる光学系であり、
前記サバール板は、前記光学素子の出射側に配置されていることを特徴とする請求項2記載の分光測定装置。 - 前記サバール板は、前記中間集光位置に配置されていることを特徴とする請求項3記載の分光測定装置。
- 光源からの光を対象物に照射する照射ステップと、
照射ステップにおいて光が照射された対象物からの光を干渉光学系によりアレイ受光器の受光面上で干渉させ、干渉光をアレイ受光器に受光させる受光ステップと、
アレイ受光器からの出力信号を演算手段により処理してスペクトルを算出する演算ステップとを備えており、
干渉光学系はケーラー照明光学系を構成しており、受光ステップは、対象物からの光でアレイ受光器の受光面をケーラー照明するステップであり、且つ、対象物からの光を分離素子で二つの光に分け、分けられた二つの光を合波素子によりアレイ検出器の受光面上で重ね合わせるステップであることを特徴とする分光測定方法。 - 前記干渉光学系は、前記分離素子としてサバール板を備えたシアリング干渉光学系であり、前記受光ステップは、前記対象物からの光をサバール板により二つに分けるステップであることを特徴とする請求項5記載の分光測定方法。
- 前記受光ステップは、前記対象物からの光を中間集光位置に集光させた後、前記アレイ受光器の受光面上で前記二つの光を重ね合わせるステップであり、
前記サバール板は、中間集光位置に前記対象物からの光を集光させる光学素子の出射側に配置されていることを特徴とする請求項6記載の分光測定方法。 - 前記サバール板は、前記中間集光位置に配置されていることを特徴とする請求項7記載の分光測定方法。
- 前記対象物の出射側の面が散乱面又はランベルト面であることを特徴とする請求項5乃至8いずれかに記載の分光測定方法。
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