以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。以下の説明では、本発明に係る蛍光測定装置の代表例として、被測定物に励起光を照射したときの被測定物からの光に由来する2つの光の干渉により形成される干渉縞に基づいてインターフェログラムを取得し、当該インターフェログラムをフーリエ変換することで被測定物から放出される蛍光の分光スペクトルを測定する、フーリエ変換型蛍光測定装置について説明する。
[実施の形態1]
実施の形態1に係る蛍光測定装置100では、透過させる光の偏光方向が互いに直交する2つの偏光子により励起光をカットする。
図2は、実施の形態1に係る蛍光測定装置100の構成を示す模式図である。蛍光測定装置100は、励起光出射部110、偏光分離部120、第2光ファイバ130およびスペクトル分光部140を有する。
励起光出射部110は、直線偏光の励起光を出射する。実施の形態1に係る励起光出射部110は、光源111、第1光ファイバ112および第1偏光子113を有する。
光源111は、励起光を出射する。光源111から出射される励起光は、直線偏光や円偏光などの励起光であってもよいし、非偏光の励起光であってもよい。光源111の例には、発光ダイオード(LED)およびレーザーダイオード(LD)が含まれる。たとえば、光源111は、特定波長の励起光を照射する単色LED、または白色LEDである。蛍光測定装置100をスペクトル計測器として使用する観点からは、LEDの発光色は、白色であることが好ましい。
第1光ファイバ112は、光源111から出射された励起光を第1偏光子113に導光する。第1光ファイバ112は、光源111および第1偏光子113の間に配置されている。第1光ファイバ112の種類は、蛍光測定装置100の構成に応じて、適宜選択されうる。第1光ファイバ112の種類の例には、シングルモード方式の光ファイバ、マルチモード方式の光ファイバおよび偏波保持ファイバが含まれる。
第1偏光子113は、光源111から出射された励起光に含まれる、所定の偏光方向に偏光している励起光を透過させる。これにより、第1偏光子113は、光源111から出射され、第1光ファイバ112を介して導光された励起光を直線偏光の光にする。第1偏光子113は、光源111から出射された励起光の光路上に配置されている。実施の形態1では、第1偏光子113は、第1光ファイバ112の出射端に接するように配置されている。
第1偏光子113の種類の例には、偏光フィルタおよびワイヤーグリッド偏光子が含まれる。たとえば、第1偏光子113は、ヨウ素を含むポリビニルアルコール(PVA)を有する偏光フィルタ、またはフッ化カルシウム(CaF2)製の基板にアルミニウムワイヤが平行に配置されたワイヤーグリッド偏光子である。第1偏光子113は、既製品であってもよい。
なお、光源111が直線偏光の励起光を出射する光源であり、かつ第1光ファイバ112が偏波保持ファイバである場合には、励起光の偏光方向を維持した状態で励起光を導光することができるため、第1偏光子113を省略することができる。すなわち、光源111が直線偏光の光を出射する光源であり、かつ第1光ファイバ112が偏波保持ファイバであることは、蛍光測定装置100の部品点数を減少させる観点から好ましい。
偏光分離部120は、励起光が被測定物1に照射されたときの被測定物1からの光に含まれる、励起光の偏光方向に直交する方向に偏光している直線偏光の光を分離する。実施の形態1では、偏光分離部120は、偏光子であり、第1偏光子113を透過した励起光の偏光方向に直交する方向に偏光している直線偏光の光を透過させる。偏光分離部120を構成する偏光子の種類の例については、第1偏光子113と同じである。
被測定物1からの光には、直線偏光の励起光と、ランダム偏光の蛍光とが含まれている。より具体的には、被測定物1からの光には、励起光出射部110から出射された直線偏光の励起光が被測定物1で反射した反射光と、励起光出射部110から出射された直線偏光の励起光が被測定物1を透過した透過光と、被測定物1から放出された蛍光とが含まれている。これらの光のうち、実施の形態1に係る蛍光測定装置100の偏光分離部120は、被測定物1から放出された蛍光のうちの、励起光の偏光方向に直交する方向に偏光している直線偏光の成分を透過させて、分離する。
偏光分離部120は、励起光が被測定物1に照射されたときの被測定物1からの光の光路上に配置されている。実施の形態1では、偏光分離部120は、被測定物1から放出された蛍光と、励起光出射部110から出射された励起光の被測定物1からの反射光との光路上に配置されている。
第2光ファイバ130は、偏光分離部120で分離された直線偏光の光をスペクトル分光部140に導光する。第2光ファイバ130は、偏光分離部120およびスペクトル分光部140の間に配置されている。実施の形態1では、第2光ファイバ130の出射端面の形状は、円形状であり、第2光ファイバ130から出射される光の光束形状を規定する。第2光ファイバ130の出射端面を含む面を、特に「入射開口設置面S」ともいう(後述の図3A参照)。第2光ファイバ130は、その中心がフーリエ変換レンズ144の光軸OAに重なるように配置されている(後述の図3A参照)。また、第2光ファイバ130の種類の例については、第1光ファイバ112と同じである。
スペクトル分光部140は、偏光分離部120で分離された直線偏光の光(実施の形態1では、蛍光の一部)の分光スペクトルを測定する。スペクトル分光部140の種類は、プリズムや回折格子などの光学部品を使用した分散型のスペクトル分光器であってもよいし、フーリエ変換型のスペクトル分光器であってもよい。実施の形態1に係る蛍光測定装置100におけるスペクトル分光部140は、後述するフーリエ変換型のスペクトル分光器である。装置の小型化および検出される蛍光強度の大きさの観点からは、スペクトル分光部140は、フーリエ変換型のスペクトル分光器であることが好ましい。
図3Aは、実施の形態1に係る蛍光測定装置100におけるスペクトル分光部140の構成を示す模式図である。図3Aに示されるように、スペクトル分光部140は、第3偏光子(特許請求の範囲では、「第4偏光子」と称している)141、偏光分割複屈折素子142、検光子(特許請求の範囲では、「第3偏光子」と称している)143、フーリエ変換レンズ144、検出部145および処理部146を有する。
第3偏光子141は、第2光ファイバ130から出射された光に含まれる、所定の偏光方向の偏光成分を透過させる。実施の形態1では、第3偏光子141は、後述の検光子143が透過させる偏光の偏光方向に対して同一方向の偏光成分または直交方向の偏光成分を透過させる。実施の形態1では、図3Aに示されるように、第3偏光子141は、後述の干渉縞のラインに平行なD1方向の偏光成分を透過させる。第3偏光子141は、第2光ファイバ130および偏光分割複屈折素子142の間において、偏光分離部120で分離された直線偏光の光の光路上に配置されている。第3偏光子141の大きさは、透過する光の光束幅などに応じて、適宜設定されうる。第3偏光子141の種類の例については、第1偏光子113と同じである。
また、第3偏光子141が透過させる偏光の偏光方向と、検光子143が透過させる偏光の偏光方向とが同一である場合と、直交する場合とでは、形成される干渉縞の位相が逆転するのみであり、測定される蛍光の分光スペクトルは同じである。
なお、第2光ファイバ130が偏波保持ファイバである場合には、第2光ファイバ130から出射される光は、直線偏光の光の偏光方向を維持した状態で励起光を導光することができるため、第3偏光子141を省略することができる。すなわち、第2光ファイバ130が偏波保持ファイバであることは、蛍光測定装置100の部品点数を減少させる観点から好ましい。蛍光測定装置100が偏光分離部120および第3偏光子141の両方を有する場合には、これらが透過させる光の偏光方向は、互いに同一であることが好ましい。
偏光分割複屈折素子142は、偏光分離部120で分離された直線偏光の光を、偏光方向が互いに異なる第1偏光および第2偏光(常光線および異常光線)に分割する。このとき、透過する光があらかじめ第3偏光子141を透過していることで、光が楕円偏光または特定の偏光方向の直線偏光であっても、第1偏光の強度と第2偏光の強度とを等しくすることができる。これにより、干渉縞の明暗の差が最大となる。また、実施の形態1では、偏光分割複屈折素子142は、第1偏光および第2偏光の偏光方向が互いに直交するように、入射した対象光を分割する。偏光分割複屈折素子142は、例えば、第3偏光子141が透過させる光の偏光方向(実施の形態1では、D1方向)を基準(0°)としたときに、+45°の方向と、−45°の方向に光を分割する。偏光分割複屈折素子142は、第3偏光子141および検光子143の間の光路上に配置されている。
偏光分割複屈折素子142の例には、サバール板、ウオラストンプリズムおよびシェアリングプリズムが含まれる。実施の形態1では、偏光分割複屈折素子142は、サバール板である。サバール板は、例えば、方解石(炭酸カルシウム)や二酸化チタンなどからなる2枚の結晶板を、偏光方向が重ならないように張り合わせることで作製されうる。また、偏光分割複屈折素子142は、既製品であってもよい。
偏光分割複屈折素子142の大きさは、透過する光の光束幅などに応じて、適宜設定されうる。また、詳細については後述するが、サバール板の結晶板の厚さおよび屈折率は、第1偏光および第2偏光の、所望の光線分離距離に応じて適宜設定されうる。
検光子143は、第1偏光に含まれている、所定の偏光方向の第1偏光成分と、第2偏光に含まれている、所定の偏光方向と同一方向の第2偏光成分とを透過させる。実施の形態1では、前述のとおり、検光子143は、第3偏光子141が透過させる偏光の偏光方向と同一の方向(D1方向)の第1偏光成分および第2偏光成分を透過させる。検光子143は、偏光分割複屈折素子142およびフーリエ変換レンズ144の間において、第1偏光および第2偏光の光路上に配置されている。また、検光子143の大きさは、透過する光の光束幅などに応じて、適宜設定されうる。検光子143の種類の例については、第1偏光子113と同じである。
実施の形態1では、第3偏光子141、偏光分割複屈折素子142および検光子(第4偏光子)143は、互いに接着されている。このような構成とすることは、装置の小型化および低コスト化の観点から好ましい。
フーリエ変換レンズ144は、第1偏光成分および第2偏光成分を重ね合わせて、第1偏光成分および第2偏光成分の干渉縞を形成する。フーリエ変換レンズ144は、検光子143と、検出部145の撮像素子との間の光路上に配置されている。
フーリエ変換レンズ144の焦点距離f2は、形成しようとする干渉縞領域の所望の大きさに応じて適宜調整されうる。たとえば、フーリエ変換レンズ144の焦点距離f2を大きくすると、形成される干渉縞形成領域の面積を大きくすることができる。
フーリエ変換レンズ144の直径は、透過する光の光束幅などに応じて、適宜設定されうる。また、フーリエ変換レンズ144の形状および材料は、適宜選択されうる。フーリエ変換レンズ144の例には、凸レンズおよび凹レンズが互いに貼り合わされたアクロマートレンズや、閉回路テレビ(CCTV)レンズ、Fマウントレンズなどの写真撮影用レンズが含まれる。フーリエ変換レンズ144の材料の例には、樹脂およびガラスが含まれる。フーリエ変換レンズ144は、例えば、射出成形法により作製されてもよいし、既製品であってもよい。
検出部145は、フーリエ変換レンズ144により形成された干渉縞の強度分布に基づいて偏光分離部120で分離された直線偏光の光のインターフェログラムを取得し、取得したインターフェログラムを処理部146に出力する。検出部145は、干渉縞を撮像するための撮像素子を有する。検出部145は、フーリエ変換レンズ144からフーリエ変換レンズ144の焦点距離f2離れた位置に配置されている。言い換えると、検出部170は、撮像素子の受光面が第2光ファイバ130の出射端面に対する共役面上に位置するように配置されている。検出部145は、例えば、撮像装置および出力装置を含む公知の半導体装置である。
撮像素子の受光面の大きさおよび形状は、干渉縞形成領域の形状や大きさなどに応じて適宜設定されうる。撮像素子は、例えば、干渉縞を2次元的に撮像し、干渉縞の強度分布に基づいて、被測定物1から放出された蛍光のインターフェログラムを取得することができる電荷結合素子(CCD)や相補性金属酸化膜半導体(CMOS)などの個体撮像素子である。
処理部146は、検出部145で取得されたインターフェログラムを処理する。具体的には、処理部146は、処理部146は、インターフェログラムをフーリエ変換して、偏光分離部120で分離された直線偏光の光(実施の形態1では、蛍光の一部)の分光スペクトルを算出する。処理部146は、例えば、演算装置、記憶装置、入力装置および出力装置を含む公知のコンピュータやマイコンなどによって構成される。
(蛍光測定装置における光路)
次いで、実施の形態1に係る蛍光測定装置100における光路について説明する。まず、光源111から出射された励起光は、第1光ファイバ112を介して第1偏光子113に導光される。所定の偏光方向に偏光している直線偏光の励起光が第1偏光子113を透過する。第1偏光子113を透過した直線偏光の励起光は、被測定物1に照射される。
被測定物1からの光に含まれる、蛍光のうちの、励起光の偏光方向に直交する方向に偏光している直線偏光の成分は、偏光分離部120を透過する。同時に、被測定物1からの光に含まれる、蛍光のうちの前述の直線偏光の成分以外の蛍光成分と、直線偏光の励起光とは、偏光分離部120により遮断される。これにより、前記所定の偏光方向に偏光している直線偏光の蛍光は、被測定物1からの光から分離される。
次いで、偏光分離部120で分離された直線偏光の蛍光は、第2光ファイバ130を介して、第3偏光子141に導光される。実施の形態1では、分離された蛍光の光線のうちD1方向の偏光成分のみが、第3偏光子141を透過する。第3偏光子141を透過した直線偏光の蛍光は、偏光分割複屈折素子142を透過して第1偏光および第2偏光にそれぞれ分割される。次いで、第1偏光に含まれているD1方向の第1偏光成分と、第2偏光に含まれているD1方向の第2偏光成分とは、検光子143およびフーリエ変換レンズ144を透過し、互いに重ね合わされる。これにより、検出部145が有する撮像素子の受光面上に、干渉縞aが形成される。
(干渉縞およびインターフェログラム)
図3Bは、実施の形態1に係る蛍光測定装置100で形成される干渉縞aと、干渉縞aに基づいて取得されるインターフェログラムとを示す模式図である。実施の形態1に係る蛍光測定装置100では、図3Bに示されるように、干渉縞aに基づいて、インターフェログラムが得られる。フーリエ変換レンズ144の光軸OAを含み、かつ干渉縞のラインに平行なD1方向に沿った面を境界面とすると、干渉縞aは、境界面の両側に亘って対照的に形成されている。このとき、干渉縞aのラインの並び方向に沿うD2方向において、光軸OAに近いほど干渉縞aの強度振幅は大きく、光軸OAからの遠くなるほど干渉縞の強度振幅は小さくなる。このため、干渉縞aに基づいて取得されるインターフェログラムは、上記境界面に相当する基準面から離れるほど強度振幅が小さくなる対称的な形状となる(以下、「両側インターフェログラム」ともいう)。インターフェログラムは、最大光路差長L(干渉縞形成領域内に形成された干渉縞における、0次の干渉に基づくラインと、最も高次の干渉に基づくラインとの間隔xに基づいて算出される光路差長)に亘って有効な波形情報となる。両側インターフェログラムの形状は、基準面の両側において対称であるため、一方の側のインターフェログラムのみが、有効な波形情報となる。
(スペクトル分光部の光学設計)
次いで、蛍光測定装置100におけるスペクトル分光部140の光学設計の手順について説明する。
1)偏光分割複屈折素子およびフーリエ変換レンズの決定
測定対象とする分光スペクトルの波長領域を可視光領域(約300[nm]〜約800[nm])とすると、測定する蛍光の波長の下限値は、可視光の最短波長として300[nm]に設定される。すなわち、蛍光の波数の上限値は、上記最短波長の逆数をとって、3333[1/mm]となる。サンプリング定理より、蛍光の波形を適切にサンプリングするために必要な空間サンプリング周波数は、上記波数の上限値を2倍した、6666[1/mm]となる。また、ピクセルピッチがp[mm]である撮像素子の空間サンプリング周波数f
sは下記式(1)で表される。したがって、上記撮像素子により蛍光を測定するために必要な入射光の波形の拡大率αは、下記式(2)で表される。
下記表1は、拡大率αと、フーリエ変換レンズ144の焦点距離f2[mm]と、(サバール板)を構成する結晶板(方解石)の1枚当りの厚さt[mm]と、偏光分割複屈折素子142の光線分離距離d[mm]との関係を示す。
使用する撮像素子のピクセルピッチpが分かっていれば、上記式(1)および上記式(2)に基づいて、蛍光の測定に必要な拡大率αを算出できる。そして、算出した拡大率αに基づいて、表1から使用すべき偏光分割複屈折素子142(サバール板)を構成する結晶板1枚当たりの厚さt[mm]と、使用すべきフーリエ変換レンズ144の焦点距離f2[mm]とを決定することができる。
偏光分割複屈折素子142がサバール板の場合、サバール板の光線分離距離dは、下記式(3)により表されることが知られている。したがって、使用すべきサバール板の厚さtが決定されると、同時に光線分離距離dも決定される。
[上記式(3)において、tはサバール板を構成する結晶板の厚さであり、n
oは常光線に対する結晶の屈折率であり、n
eは異常光線に対する結晶の屈折率である。]
たとえば、撮像素子の受光面のサイズが2/3インチ(8.8[mm]×6.6[mm])、画像サイズが1.0Mピクセル、かつピクセルピッチpが7.5[μm]のとき、上記式(1)より、空間サンプリング周波数fsは133[1/mm]となる。したがって、上記式(2)より、必要な拡大率αは約50倍となる。上記表1から拡大率αとして51.4倍に着目すると、サバール板を構成する結晶板1枚当りの厚さtを2[mm]、フーリエ変換レンズの焦点距離f2を16[mm]と決定することができる。このとき、表1から、サバール板による光線分離距離dが0.311[mm]となることがわかる。
2)波数分解の算出
測定の高精度化の観点からは、撮像素子の受光面上における干渉縞形成領域の面積は、大きいことが好ましい。実施の形態1では、干渉縞形成領域の形状は円形状であるため、干渉縞形成領域の面積は干渉縞形成領域の直径に相当する。撮像素子の受光面上に形成される干渉縞形成領域の直径の最大値D[mm]は、干渉縞形成領域の形状および数、ならびに撮像素子の受光面の大きさに応じて決定される。同じ形状であり、かつ同じ大きさのn個の干渉縞形成領域が、長手方向の長さがy[mm]である撮像素子の受光面に形成される場合に、受光面上に形成されうる干渉縞形成領域の直径の最大値D[mm]は、下記式(4)で表される。以下、干渉縞形成領域の直径Dとは、干渉縞形成領域の直径の最大値を意味するものとする。
一般的に、波数分解Δσは、インターフェログラムにおける最大光路差長Lに依存し、下記式(5)で表される。最大光路差長Lは、干渉縞形成領域内に形成された干渉縞における、0次の干渉に基づくラインと、最も高次の干渉に基づくラインとの間隔xに基づいて算出される光路差長である。波長分解Δσは、数値が小さいほど分解能が高く、より高精度に蛍光の分光スペクトルを測定できることを意味する。図3Bに示されるように、上記の間隔xは、干渉縞形成領域の半径D/2に相当する。また、両側インターフェログラムにおける最大光路差長Lは、下記式(6)で表されることが知られている。したがって、前述した手順により、偏光分割複屈折素子142の光線分離距離dと、フーリエ変換レンズ144の焦点距離f
2と、干渉縞形成領域の直径の最大値Dとは、決定できるため、下記式(5)および下記式(6)に基づいて、蛍光測定装置100の波数分解Δσを算出することができる。
たとえば、前述した手順により決定された、偏光分割複屈折素子142の光線分離距離(d=0.311[mm])と、フーリエ変換レンズ144の焦点距離(f2=16[mm])と、干渉縞形成領域の直径の最大値(D=φ2.9[mm])とを上記式(5)および上記式(6)に代入すると、蛍光測定装置100における波数分解Δσを360[1/cm]と算出することができる。
波数分解Δσは、偏光分割複屈折素子142の厚さt(光線分離距離d)、フーリエ変換レンズ144の焦点距離f2および干渉縞形成領域の直径Dに基づいて調整することができる。たとえば、受光面のサイズが大きい撮像素子を使用して、形成される干渉縞の面積を大きくしたりすることで、干渉縞形成領域の直径Dを大きくして、波数分解Δσを小さくすることができる。
以上の手順により、被測定物1から放出される蛍光の分光スペクトルを測定するためのスペクトル分光部140の光学設計を行うことができる。
(効果)
実施の形態1に係る蛍光測定装置100では、偏光分離部120により、励起光を被測定物1に照射したときの光に含まれる、励起光をカットしつつ、蛍光のみを分離して、蛍光の分光スペクトルを測定することができる。このように、実施の形態1に係る蛍光測定装置100は、偏光を利用することで、高価な光学フィルタを使用することなく、被測定物1からの光に含まれる蛍光の分光スペクトルを測定することができる。これにより、装置の低コスト化を実現することができる。
[実施の形態2]
実施の形態2に係る蛍光測定装置200では、偏光子およびλ/4板により構成される光アイソレータにより励起光をカットする。
実施の形態2に係る蛍光測定装置200では、偏光分離部220の構成のみが実施の形態1に係る蛍光測定装置100と異なる。そこで、実施の形態1に係る蛍光測定装置100と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
図4は、実施の形態2に係る蛍光測定装置200の構成を示す模式図である。蛍光測定装置200は、励起光出射部110、偏光分離部220、第2光ファイバ130およびスペクトル分光部140を有する。
偏光分離部220は、第1偏光子113およびλ/4板221を有する。すなわち、励起光出射部110に含まれる第1偏光子113は、λ/4板221とともに偏光分離部220としても機能する。第1偏光子113は、λ/4板221とともに光アイソレータを構成している。
λ/4板221は、透過する光にλ/4の位相差を与えて、入射する直線偏光を円偏光に変換するか、入射する円偏光を直線偏光にする。λ/4板221は、第1偏光子113を透過した直線偏光の光と、被測定物1で反射した円偏光の光との光路上に配置されている。実施の形態2では、λ/4板221は、第1光ファイバ112の出射端と、第2光ファイバ130の入射端とに接するように配置されている。
λ/4板221の大きさは、透過する光の光束幅などに応じて適宜設定されうる。λ/4板221の材料の例には、水晶および方解石が含まれる。
(蛍光測定装置における光路)
次いで、実施の形態2に係る蛍光測定装置200における光路について説明する。まず、光源111から出射された励起光は、第1光ファイバ112を介して第1偏光子113に導光される。所定の偏光方向に偏光している直線偏光の励起光が第1偏光子113を透過する。次いで、第1偏光子113を透過した直線偏光の励起光は、λ/4板221で円偏光の励起光に変換される。円偏光の励起光は、被測定物1に照射され、被測定物1で反射する。このとき、被測定物1で反射した反射光(戻り光)の円偏光の回転方向は変わらない。
被測定物1で反射した反射光は、λ/4板221で前記所定の偏光方向と直交する方向に偏光している直線偏光の励起光に変換される。このため、λ/4板221を透過した直線偏光の励起光は、第1偏光子113を透過できず、遮断される。また、被測定物1から放出され、λ/4板221を透過した蛍光のうち、第1偏光子113で遮断された励起光の偏光方向と同一の方向に偏光している直線偏光の成分は第1偏光子113を透過する。同時に、被測定物1から放出され、λ/4板221を透過した蛍光のうちの前述の直線偏光の成分以外の蛍光成分は遮断される。これにより、前記所定の偏光方向に偏光している直線偏光の蛍光は、被測定物1からの光から分離される。
次いで、偏光分離部220で分離された直線偏光の蛍光は、第2光ファイバ130を介して、第3偏光子141に導光される。実施の形態2では、分離された蛍光のうちD1方向の偏光成分のみが、第3偏光子141を透過する。第3偏光子141を透過した直線偏光の蛍光は、偏光分割複屈折素子142を透過して第1偏光および第2偏光にそれぞれ分割される。次いで、第1偏光に含まれているD1方向の第1偏光成分と、第2偏光に含まれているD1方向の第2偏光成分とは、検光子143およびフーリエ変換レンズ144を透過し、互いに重ね合わされる。これにより、検出部145が有する撮像素子の受光面上に、干渉縞aが形成される。
実施の形態2に係る蛍光測定装置200で取得されるインターフェログラムと、光学設計とについては、実施の形態1に係る蛍光測定装置100と同じであるため、その説明を省略する。
(効果)
実施の形態2に係る蛍光測定装置200は、実施の形態1に係る蛍光測定装置100と同様の効果を有する。
なお、上記実施の形態2では、光源111から出射された励起光と、偏光分離部220で分離された直線偏光の蛍光とを別々の光ファイバで導光する蛍光測定装置200について説明した。しかし、実施の形態2に係る蛍光測定装置200は、この態様に限定されない。図5は、実施の形態2の変形例に係る蛍光測定装置200’の構成を示す模式図である。蛍光測定装置200’では、光源111から出射された励起光と、偏光分離部220で分離された直線偏光の蛍光とは、第1分岐部112’および第2分岐部130’を有する2分岐型光ファイバで導光してもよい。これにより、蛍光測定装置200’の部品点数を減少させることができる。
[実施の形態3]
実施の形態3に係る蛍光測定装置300では、偏光ビームスプリッタにより励起光をカットする。
実施の形態3に係る蛍光測定装置300では、励起光出射部310および偏光分離部320の構成と、第1光ファイバ112および第2光ファイバ130の代わりに第3光ファイバ350を有する点とが実施の形態1に係る蛍光測定装置100と異なる。そこで、実施の形態1に係る蛍光測定装置100と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
図6は、実施の形態3に係る蛍光測定装置300の構成を示す模式図である。蛍光測定装置300は、励起光出射部310、第3光ファイバ350、偏光分離部320およびスペクトル分光部140を有する。
励起光出射部310は、直線偏光の励起光を出射する。実施の形態3に係る励起光出射部310は、光源111、第1レンズ314、偏光ビームスプリッタ315および第2レンズ316を有する。
第1レンズ314は、光源111から出射された励起光を平行光にする。第1レンズ314は、光源111および偏光ビームスプリッタ315の間において、光源111から出射される励起光の光路上に配置されている。第1レンズ314の直径、形状および材料については、フーリエ変換レンズ144と同じである。
偏光ビームスプリッタ315は、所定の偏光方向に偏光している直線偏光の光を透過させ、所定の偏光方向に直交する方向に偏光している直線偏光の光を反射する。これにより、偏光ビームスプリッタ315は、光源111から出射された励起光を所定の偏光方向の直線偏光の光にする。また、実施の形態3では、偏光ビームスプリッタ315は、偏光分離部320としても機能する。偏光ビームスプリッタ315は、第1レンズ314および第2レンズ316の間の光路上に配置されている。偏光ビームスプリッタ315の種類は、特に限定されず、プレート型偏光ビームスプリッタであってもよいし、キューブ型偏光ビームスプリッタであってもよい。偏光ビームスプリッタ315は、既製品であってもよい。
第2レンズ316は、偏光ビームスプリッタ315を透過した光を集光する。また、第2レンズ316は、第3光ファイバ350により導光された被測定物1からの光を平行光にする。第2レンズ316の直径、形状および材料の例については、フーリエ変換レンズ144と同じである。
第3光ファイバ350は、励起光出射部310から出射された励起光を被測定物1に導光する。また、第3光ファイバ350は、被測定物1からの光を偏光分離部320に導光する。第3光ファイバ350の種類の例については、第1光ファイバ112と同じである。
詳細については後述するが、実施の形態3では、被測定物1に照射される直線偏光の励起光と、被測定物1で反射される直線偏光の励起光とは、第3光ファイバ350内の同じ光路を通る。光は光速で移動するため、光が光ファイバ内を往復する間、光ファイバの状態は維持される。このため、直線偏光の光は、光ファイバ内の同一の光路において、偏光方向を維持した状態で可逆的に往復できる。したがって、光ファイバの入射口に入射する前の光の偏光状態と、光ファイバにより導光され、被測定物で反射され、かつ光ファイバにより導光され、上記入射口に戻った光の偏光状態とは、同じになる。第3光ファイバ350がマルチモード方式の光ファイバであっても、第3光ファイバ350の入射口に入射する前の直線偏光の励起光の偏光状態と、第3光ファイバ350により導光され、被測定物1で反射され、かつ第3光ファイバ350により導光され、上記入射口に戻った励起光の偏光状態とは、同じになる。
なお、実施の形態3に係る蛍光測定装置300は、第2光ファイバ130を有しておら、偏光分離部320で分離された直線偏光の光は、スペクトル分光部140に直接入射する。実施の形態3では、スペクトル分光部140は、偏光分離部320で分離された直線偏光の光の光路上に配置されている。
(蛍光測定装置における光路)
次いで、実施の形態3に係る蛍光測定装置300における光路について説明する。まず、光源111から出射された励起光は、第1レンズ314により平行光にされ、偏光ビームスプリッタ315に到達する。このとき、励起光に含まれている、所定の偏光方向に偏光している励起光は、偏光ビームスプリッタ315を透過し、所定の偏光方向に直交する方向に偏光している励起光は、偏光ビームスプリッタ315で反射する。偏光ビームスプリッタ315を透過した直線偏光の励起光は、第2レンズ316により集光され、第3光ファイバ350に入射する。直線偏光の励起光は、第3光ファイバ350により導光され、被測定物1に照射される。
被測定物1で反射した直線偏光の励起光と、被測定物1から放出された蛍光とは、第3光ファイバ350に入射する。被測定物1からの光は、第3光ファイバ350により第2レンズ316に導光される。被測定物1からの光は、第2レンズ316により平行光にされ、偏光ビームスプリッタ315に到達する。被測定物1からの光に含まれる、蛍光のうちの、励起光の偏光方向に直交する方向に偏光している直線偏光の成分は、偏光分離部320(偏光ビームスプリッタ315)でスペクトル分光部140に向けて反射される。同時に、被測定物1からの光に含まれる、蛍光のうちの前述の直線偏光の成分以外の蛍光成分と、直線偏光の励起光とは、偏光分離部320(偏光ビームスプリッタ315)を透過して、カットされる。これにより、前記所定の偏光方向に直交する方向に偏光している直線偏光の蛍光は、被測定物1からの光から分離される。
次いで、実施の形態3では、分離された直線偏光の蛍光のうちD1方向の偏光成分のみが、第3偏光子141を透過する。第3偏光子141を透過した直線偏光の蛍光は、偏光分割複屈折素子142を透過して第1偏光および第2偏光にそれぞれ分割される。次いで、第1偏光に含まれているD1方向の第1偏光成分と、第2偏光に含まれているD1方向の第2偏光成分とは、検光子143およびフーリエ変換レンズ144を透過し、互いに重ね合わされる。これにより、検出部145が有する撮像素子の受光面上に、干渉縞aが形成される。
実施の形態3に係る蛍光測定装置300で取得されるインターフェログラムと、光学設計とについては、実施の形態1に係る蛍光測定装置100と同じであるため、その説明を省略する。
(効果)
実施の形態3に係る蛍光測定装置300は、実施の形態1に係る蛍光測定装置100と同様の効果を有する。
[実施の形態4]
実施の形態4に係る蛍光測定装置400では、実施の形態1に係る蛍光測定装置100と同様に、透過させる光の偏光方向が互いに直交する2つの偏光子により励起光をカットする。また、蛍光測定装置400は、複数の地点における蛍光の分光スペクトルを同時に測定する。
実施の形態4に係る蛍光測定装置400では、偏光分離部420の構成と、第2光ファイバ130の数と、スペクトル分光部440の構成とが実施の形態1に係る蛍光測定装置100と異なる。そこで、実施の形態1に係る蛍光測定装置100と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
図7は、実施の形態4に係る蛍光測定装置400の構成を示す模式図である。蛍光測定装置400は、励起光出射部110、偏光分離部420、3つの第2光ファイバ130a〜cおよびスペクトル分光部440を有する。
偏光分離部420は、第1偏光分離部420a、第2偏光分離部420bおよび第3偏光分離部420cを有する。
第1偏光分離部420a、第2偏光分離部420bおよび第3偏光分離部420cは、励起光が被測定物1に照射されたときの被測定物1からの光に含まれる、励起光の偏光方向に直交する方向に偏光している直線偏光の光を分離する。第1偏光分離部420a、第2偏光分離部420bおよび第3偏光分離部420cは、実施の形態1に係る蛍光測定装置100の偏光分離部120(偏光子)と同一である。実施の形態4では、第1偏光分離部420a、第2偏光分離部420bおよび第3偏光分離部420cは、互いに異なる位置に配置されている。
3つの第2光ファイバ130a〜cは、偏光分離部420a〜cで分離された直線偏光の光をスペクトル分光部440にそれぞれ導光する。実施の形態4では、第2光ファイバ130aは、第1偏光分離部420aで分離された直線偏光の光をスペクトル分光部440に導光し、第2光ファイバ130bは、第2偏光分離部420bで分離された直線偏光の光をスペクトル分光部440に導光し、第2光ファイバ130cは、第3偏光分離部420cで分離された直線偏光の光をスペクトル分光部440に導光する。3つの第2光ファイバ130a〜cは、偏光分離部420a〜cおよびスペクトル分光部440の間にそれぞれ配置されている。
スペクトル分光部440は、偏光分離部420で分離された直線偏光の光の分光スペクトルを測定する。スペクトル分光部440の種類の例については、実施の形態1に係るスペクトル分光部140と同じである。
図8Aは、実施の形態4に係る蛍光測定装置400におけるスペクトル分光部440の構成を示す模式図である。図8Aに示されるように、スペクトル分光部440は、3つの入射開口447a〜c、コリメータレンズ448、第3偏光子(特許請求の範囲では、「第4偏光子」と称している)141、偏光分割複屈折素子142、検光子(特許請求の範囲では、「第3偏光子」と称している)143、フーリエ変換レンズ144、検出部145および処理部146を有する。
入射開口447は、第2光ファイバ130により導光された直線偏光の光の光束を規定する。実施の形態4では、図8Aに示されるように、入射開口447は、3つの入射開口447a〜cからなる。3つの入射開口447a〜cは、同一平面上に配置されていることが好ましい。実施の形態4では、3つの入射開口447a〜cは、同一平面(入射開口設置面S)上に配置されている。
入射開口447は、蛍光測定装置100内の光学素子を通過した光束が形成する干渉縞形成領域の外形形状を入射開口447と相似な形状に規定する。入射開口447は、第2光ファイバ130の端面であってもよいし、遮光部材に形成された直線偏光の光を通過させるための開口であってもよい。実施の形態4では、入射開口447は、第2光ファイバ130の端面である。また、入射開口447の形状および大きさは、直線偏光の光の干渉縞に基づいてインターフェログラムを取得することができれば特に限定されない。入射開口447の形状(通過する光の光軸に垂直な断面における光束の形状)の例には、円形状、楕円形状および多角形状が含まれる。入射開口447の大きさ(通過する光の光束幅)は、例えば、直径2mm程度である。3つの入射開口447a〜cの形状および大きさは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。実施の形態4では、3つの入射開口447a〜cの形状は円形状であり、3つの入射開口447a〜cの大きさは同じである。
遮光部材の例には、スペクトル分光部440のケースが含まれる。また、入射開口447には、通過する光に対して透明な樹脂フィルムやガラスなどの透光部材が配置されていてもよい。これにより、入射開口447を介してスペクトル分光部440内へ埃が侵入することを防ぐことができる。
3つの入射開口447a〜cの少なくとも1つは、光軸OAに対してオフセット配置されている。実施の形態4では、図8Aに示されるように、入射開口447b,cは、D1方向において光軸OAに対してそれぞれオフセット配置されている。一方、入射開口447aは、その中心が光軸OAに重なるように配置されている。このように、少なくとも1つの入射開口447を光軸OAに対してオフセット配置しつつ、複数の入射開口447を設置することで、被測定物1からの光の分光スペクトルを同時にかつ容易に測定できる。また、3つの入射開口447a〜cは、入射開口設置面S内において干渉縞のラインに平行なD1方向に沿って配列されている。
コリメータレンズ448は、偏光分離部420で分離され、入射開口447で光束を規定された直線偏光の光を平行光にする。これにより、異なる入射開口447からの複数の光線は、平行光とされた状態で、互いに異なる入射角度で偏光分割複屈折素子142に入射する。
コリメータレンズ448は、入射開口447が含まれる入射開口設置面Sから、コリメータレンズ448の焦点距離f1離れた位置に配置されている。コリメータレンズ448の焦点距離f1は、干渉縞形成領域の所望の大きさに応じて適宜調整されうる。たとえば、コリメータレンズ448の焦点距離f1を大きくすると、形成される干渉縞形成領域の面積を小さくすることができる。
また、コリメータレンズ448の直径は、入射開口447(透過する光の光束)の数や、入射開口447の大きさ(透過する光の光束幅)などに応じて、適宜設定されうる。また、コリメータレンズ448の形状および材料は、適宜選択されうる。コリメータレンズ448の例には、凸レンズおよび凹レンズが互いに貼り合わされたアクロマートレンズや閉回路テレビ(CCTV)レンズ、Fマウントレンズなどの写真撮影用レンズが含まれる。コリメータレンズ448の材料の例には、樹脂およびガラスが含まれる。コリメータレンズ448は、例えば、射出成形法により作製されてもよいし、既製品であってもよい。
(蛍光測定装置における光路)
次いで、実施の形態4に係る蛍光測定装置400における光路について説明する。まず、光源111から出射された励起光は、第1光ファイバ112を介して第1偏光子113に導光される。所定の偏光方向に偏光している直線偏光の励起光が第1偏光子113を透過する。第1偏光子113を透過した直線偏光の励起光は、被測定物1に照射される。
被測定物1からの光に含まれる、蛍光のうちの、励起光の偏光方向に直交する方向に偏光している直線偏光の成分は、第1偏光分離部420a、第2偏光分離部420bおよび第3偏光分離部420cをそれぞれ透過する。同時に、被測定物1からの光に含まれる、蛍光のうちの前述の直線偏光の成分以外の蛍光成分と、直線偏光の励起光とは、第1偏光分離部420a、第2偏光分離部420bおよび第3偏光分離部420cによりそれぞれ遮断される。これにより、前記所定の偏光方向に偏光している直線偏光の蛍光は、被測定物1からの光から分離される。
次いで、第1偏光分離部420aで分離された直線偏光の蛍光は、第2光ファイバ130aを介して、スペクトル分光部440(入射開口447a)に導光される。また、第2偏光分離部420bで分離された直線偏光の蛍光は、第2光ファイバ130bを介して、スペクトル分光部440(入射開口447b)に導光される。さらに、第3偏光分離部422で分離された直線偏光の蛍光は、第2光ファイバ130cを介して、スペクトル分光部440(入射開口447c)に導光される。
次いで、入射開口447a〜cを通過して光束形状が円形状に規定された3つの蛍光の光線は、コリメータレンズ448を透過してそれぞれ平行光となる。平行光となった蛍光の光線のうちD1方向の偏光成分のみが、第3偏光子141を透過する。第3偏光子141を透過した3つの直線偏光の光は、偏光分割複屈折素子142を透過して第1偏光および第2偏光にそれぞれ分割される。次いで、第1偏光に含まれているD1方向の第1偏光成分と、第2偏光に含まれているD1方向の第2偏光成分とは、検光子143およびフーリエ変換レンズ144を透過して検出部145が有する撮像素子の受光面上に結像されて、干渉縞a〜cが形成される。
(干渉縞およびインターフェログラム)
以上のとおり、実施の形態4では、3つの干渉縞a〜cが形成される。このとき、図8Aに示されるように、干渉縞a〜cの形状は、入射開口447a〜cにより円形状に規定されている。また、入射開口設置面Sと撮像素子の受光面との間の光軸OA上における線分の中点を中心としたときに、干渉縞a〜cは、入射開口設置面S上の3つの入射開口447a〜cに対して点対称の位置に形成されている。
図8Bは、実施の形態4に係る蛍光測定装置400で形成される干渉縞a〜cと、干渉縞a〜cに基づいて取得されるインターフェログラムとを示す模式図である。実施の形態4に係る蛍光測定装置400では、図8Bに示されるように、3つの干渉縞a〜cに基づいて、3つの両側インターフェログラムが得られる。
(蛍光測定装置の光学設計)
次いで、実施の形態4に係る蛍光測定装置400の光学設計の手順について説明する。偏光分割複屈折素子およびフーリエ変換レンズの決定と、波数分解の算出とについては、実施の形態1に係る蛍光測定装置100の光学設計の手順と同様であるため、その説明を省略する。ここでは、コリメータレンズ448の決定について説明する。
まず、入射開口447の大きさ(実施の形態4では、光ファイバ130の開口径)をφとおくと、入射開口447で光束幅をφに規定された光が、直径Dの干渉縞形成領域を形成するときの光学倍率βは、下記式(7)で表される。
光学倍率βは、コリメータレンズ448の焦点距離f
1に対するフーリエ変換レンズ144の焦点距離f
2の比(f
2/f
1)で与えられるため、コリメータレンズ448の焦点距離f
1は、下記式(8)で表される。したがって、実施の形態1で述べた手順により決定されたフーリエ変換レンズ144の焦点距離f
2と、上記式(7)で算出される所望の光学倍率βとに基づいて、使用すべきコリメータレンズ448の焦点距離f
1[mm]を決定することができる。
たとえば、撮像素子の受光面のサイズが2/3インチ(8.8[mm]×6.6[mm])、円形状の干渉縞形成領域が3つ形成される場合、上記式(4)より、上記干渉縞形成領域の直径Dは、φ2.9[mm]となる。光ファイバ130の開口がφ2[mm]のとき、上記式(7)より、光学倍率βは1.5倍となる。そして、上記式(8)より、使用すべきコリメータレンズ120の焦点距離f1を11[mm]と決定することができる。
(効果)
実施の形態4に係る蛍光測定装置400は、実施の形態1に係る蛍光測定装置100と同様の効果を有する。さらに、蛍光測定装置400では、被測定物1から放出された蛍光について複数の地点における蛍光の分光スペクトルを同時に測定することができる。
なお、上記実施の形態4では、干渉縞のラインに平行なD1方向に沿って配列された3つの入射開口447a〜cを有する蛍光測定装置400について説明したが、実施の形態4に係る蛍光測定装置400はこの態様に限定されない。
図9Aは、実施の形態4の変形例1に係る蛍光測定装置400’におけるスペクトル分光部440’の構成を示す模式図である。図9Aに示されるように、蛍光測定装置400’は、干渉縞のラインに平行なD1方向に沿って配列され、かつ干渉縞のラインの並び方向に沿うD2方向において、光軸OAを含み、かつD1方向に沿う面に接するように配置されている3つの入射開口447a’〜c’を有していてもよい。
図9Bは、実施の形態4の変形例1に係る蛍光測定装置400’で形成される干渉縞a’〜c’と、干渉縞a’〜c’に基づいて取得されるインターフェログラムとを示す模式図である。実施の形態4の変形例1に係る蛍光測定装置400’では、図9Bに示されるように、3つの干渉縞a’〜c’が形成される。これら3つの干渉縞a’〜c’に基づいて3つのインターフェログラムが得られる。3つの干渉縞a’〜c’は、光軸OAを含み、かつD1方向に沿った面である境界面を基準としたときに、いずれか一方の側に形成されている。より具体的には、3つの干渉縞a’〜c’は、上記境界面に接するように形成されている。前述したとおり、D2方向において、光軸OAに近いほど干渉縞の振幅強度は大きく、光軸OAからの遠くなるほど干渉縞の振幅強度は小さくなる。このため、干渉縞a’〜c’に基づいて取得されるインターフェログラムは、上記境界面に相当する基準面から離れるほど振幅強度が小さくなる非対称的な形状となる(以下、「片側インターフェログラム」ともいう)。このように片側インターフェログラムが形成されるのは、偏光分割複屈折素子142で分割された第1偏光および第2偏光の光路差が等しくなる位置、すなわち0次の干渉に基づくラインが形成される位置は、常に光軸OA上となるからである。この結果として、片側インターフェログラムは、干渉する2つの光線の光路差長である最大光路差長L(干渉縞形成領域内に形成された干渉縞における、0次の干渉に基づくラインと、最も高次の干渉に基づくラインとの間隔xに基づいて算出される光路差長)に亘って有効な波形情報となる。両側インターフェログラムと比較した場合に、同じ大きさの干渉縞形成領域が形成されたとしても、片側インターフェログラムでは、2倍の光路差長に相当する情報を得ることができる。蛍光測定装置400’では、D2方向において入射開口447a’〜c’をオフセットして配置し、片側インターフェログラムに基づいて分光スペクトルを測定する。
片側インターフェログラムが得られる場合には、両側インターフェログラムが得られる場合と比較して、2倍の光路差長に相当する情報が得られる。すなわち、図9Bに示されるように、干渉縞形成領域内に形成された干渉縞における、0次の干渉に基づくラインと、最も高次の干渉に基づくラインとの間隔xは、干渉縞形成領域の直径Dに相当する。この結果、片側インターフェログラムの最大光路差長Lは、上記式(6)の代わりに下記式(9)で表される。
[上記式(9)において、dは偏光分割複屈折素子142の光線分離距離であり、f
2はフーリエ変換レンズ144の焦点距離であり、Dは干渉縞形成領域の直径である。]
上記式(5)、上記式(6)および上記式(9)からわかるとおり、片側インターフェログラムにおける波数分解は、両側インターフェログラムにおける波数分解より2倍小さくなることがわかる。すなわち、両側インターフェログラムに基づいて対象光の分光スペクトルを測定する場合と比較して、片側インターフェログラムに基づいて対象光の分光スペクトルを測定する場合には、2倍高い分解能で分光スペクトルを測定することができることがわかる。
図10は、実施の形態4の変形例2に係る蛍光測定装置400”におけるスペクトル分光部440”の構成を示す模式図である。図10に示されるように、分光装置400”のスペクトル分光部440”は、アナモフィックコンバータ449”をさらに有していてもよい。
アナモフィックコンバータ449”は、結像面の位置を維持し、フーリエ変換レンズ144の焦点距離をD1方向とD2方向とにおいて異なる値に変化させる。実施の形態4の変形例2では、アナモフィックコンバータ449”は、入射した光を、D2方向における光束幅を一定に維持しつつ、D1方向における光束幅を大きくする。フーリエ変換レンズ144単体の焦点距離と比較して、このアフォーカル系を有するフーリエ変換レンズの合成焦点距離は、より小さくなる。これにより、D1方向における結像倍率は小さくなる。結果として、アナモフィックコンバータ449”は、干渉縞が形成される干渉縞形成領域をラインに平行なD1方向において圧縮することができる。アナモフィックコンバータ449”は、コリメータレンズ448およびフーリエ変換レンズ144の間に配置されている。実施の形態4の変形例2では、アナモフィックコンバータ449”は、検光子143およびフーリエ変換レンズ144の間において、その光軸が光軸OAと合致するように配置されている。
アナモフィックコンバータ449”による干渉縞形成領域の圧縮率(アフォーカル倍率)は、入射開口447の数や大きさ、検出部145の受光素子の受光面のサイズなどに応じて、適宜設定されうる。たとえば、D1方向におけるアフォーカル倍率が1/2倍、かつD2方向におけるアフォーカル倍率が1倍のとき、入射開口447で円形状に規定された光は、アナモフィックコンバータ449”により縦横比(D1方向における長さに対するD2方向における長さの比)が1:2の楕円形状の干渉縞形成領域に干渉縞を形成する。アナモフィックコンバータ449”は、例えば、公知のアナモフィックコンバータレンズである。実施の形態4の変形例2では、アナモフィックコンバータ449”は、負のパワーを有するシリンドリカル形状の第1レンズ群4491”と、正のパワーを有するシリンドリカル形状の第2レンズ群4492”とを有する。
撮像素子の受光面上に形成される3個の干渉縞a〜cの形状は、アナモフィックコンバータ449”によってD1方向において圧縮された楕円形状となる。アナモフィックコンバータ449”により、D1方向において干渉縞形成領域を圧縮しても干渉縞の強度分布に変化はないため、取得されるインターフェログラムに影響はない。すなわち、アナモフィックコンバータ449”により、撮像素子の受光面を効率的に利用して、蛍光の分光スペクトル、反射光の分光スペクトルおよび透過光の分光スペクトルを測定することができる。
ここで、実施の形態4の変形例2に係る分光装置400”の光学設計をする場合のアナモフィックコンバータ449”の決定について説明する。アナモフィックコンバータ449”のD
1方向におけるアフォーカル倍率γは、第1レンズ群4491”の焦点距離f
aと、第2レンズ群4492”の焦点距離f
bとにより下記式(10)で表される。一方、アナモフィックコンバータ449”のD
2方向におけるアフォーカル倍率は、1となる。このとき、光学系のフーリエ変換レンズ144の焦点距離f
2は、γ倍される。
上記式(10)より、所望のアフォーカル倍率γを得るために第1レンズ群4491”の焦点距離faと、第2レンズ群4492”の焦点距離fbとを決定することができる。
たとえば、D1方向におけるアフォーカル倍率γを1/2倍とする場合には、焦点距離faが−20[mm]である第1レンズ群4491”と、焦点距離fbが40mmである第2レンズ群4492”とを使用すればよい。D1方向において、撮像素子の受光面上に3個の干渉縞形成領域を形成できる蛍光測定装置は、アフォーカル倍率γが1/2倍であるアナモフィックコンバータ449”を挿入されることで、6個の干渉縞形成領域を形成できるようになる。
図11は、実施の形態4の変形例3に係る蛍光測定装置400'''の構成を示す模式図である。上記実施の形態4では、複数の地点における蛍光の分光スペクトルを測定したが、本実施の形態に係る蛍光測定装置400は、この態様に限定されない。たとえば、蛍光だけでなく、光源111からの励起光の分光スペクトルを検出してもよい。この場合、蛍光測定装置400'''は、励起光をスペクトル分光部440に導光するための第4光ファイバ450'''(特許請求の範囲では、「第3光ファイバ」と称している)をさらに有する。また、分光スペクトル440は、励起光の分光スペクトルをさらに測定し、処理部146は、光源111から出射された励起光の分光スペクトルに基づいて、被測定物1からの光の分光スペクトルを補正する。これにより、蛍光測定装置400'''は、被測定物1から放出された蛍光の分光スペクトルを測定する。
偏光分離部420により分離された後の光に含まれる励起光成分の光量は、偏光分離部420により分離される前の光に含まれる励起光成分の光量と比較して大幅に低減されている。しかし、より高精度な測定を行う観点からは、上記補正処理を行うことが好ましい。これにより、より微弱な蛍光の分光スペクトルを測定することができ、蛍光測定装置により分光スペクトルを測定するために必要な被測定物1の量を低減することができる。
[実施の形態5]
実施の形態5に係る蛍光測定装置500では、検出部が有する撮像素子の受光面上に配置されているカラーフィルタにより励起光をカットする。
図12Aは、実施の形態5に係る蛍光測定装置500の構成を示す模式図である。蛍光測定装置500は、励起光出射部510およびスペクトル分光部540を有する。
励起光出射部510は、光源511を有し、励起光を出射する。
光源511は、励起光を出射する。光源511から出射される励起光は、直線偏光や円偏光などの励起光であってもよいし、非偏光の励起光であってもよい。光源511の例には、発光ダイオード(LED)およびレーザーダイオード(LD)が含まれる。たとえば、光源511は、特定波長の励起光を照射する単色LEDである。また、光源511の発光色は、例えば、青色または緑色である。
スペクトル分光部540は、励起光が被測定物1に照射されたときの被測定物1からの光に含まれる、被測定物1から放出された蛍光の分光スペクトルを測定する。スペクトル分光部540の種類は、フーリエ変換型のスペクトル分光器である。
図12Aに示されるように、スペクトル分光部540は、偏光子541、偏光分割複屈折素子542、検光子(特許請求の範囲では、「偏光子」と称している)543、フーリエ変換レンズ544、検出部545および処理部546を有する。
偏光子541は、被測定物1からの光に含まれる、所定の偏光方向の偏光成分を透過させる。実施の形態5では、偏光子541は、後述の検光子543が透過させる偏光の偏光方向に対して同一方向の偏光成分または直交方向の偏光成分を透過させる。実施の形態1では、図12Aに示されるように、偏光子541は、干渉縞のラインに平行なD1方向の偏光成分を透過させる。偏光子541は、光源511から出射された励起光が被測定物1に照射されたときの被測定物1からの光の光路上に配置されている。偏光子541の大きさは、透過する光の光束幅などに応じて、適宜設定されうる。偏光子541の種類の例については、実施の形態1に係る第1偏光子113と同じである。
また、偏光子541が透過させる偏光の偏光方向と、検光子543が透過させる偏光の偏光方向とが同一である場合と、直交する場合とでは、形成される干渉縞の位相が逆転するのみであり、測定される蛍光の分光スペクトルは同じである。
偏光分割複屈折素子542は、被測定物1からの光を、偏光方向が互いに異なる第1偏光および第2偏光(常光線および異常光線)に分割する。このとき、透過する光があらかじめ偏光子541を透過していることで、透過する光が楕円偏光または特定の偏光方向の直線偏光であっても、第1偏光の強度と第2偏光の強度とを等しくすることができる。これにより、干渉縞の明暗の差が最大となる。また、実施の形態5では、偏光分割複屈折素子542は、第1偏光および第2偏光の偏光方向が互いに直交するように、入射した対象光を分割する。偏光分割複屈折素子542は、例えば、偏光子541が透過させる光の偏光方向(実施の形態5では、D1方向)を基準(0°)としたときに、+45°の方向と、−45°の方向に被測定物1からの光を分割する。偏光分割複屈折素子542は、偏光子541および検光子543の間の光路上に配置されている。
偏光分割複屈折素子542の例は、サバール板、ウオラストンプリズムおよびシェアリングプリズムが含まれる。実施の形態5では、偏光分割複屈折素子542は、サバール板である。サバール板は、例えば、方解石(炭酸カルシウム)や二酸化チタンなどからなる2枚の結晶板を、偏光方向が重ならないように張り合わせることで作製されうる。また、偏光分割複屈折素子542は、既製品であってもよい。
偏光分割複屈折素子542の大きさは、透過する光の光束幅などに応じて、適宜設定されうる。また、実施の形態1で述べたとおり、サバール板の結晶板の厚さおよび屈折率は、第1偏光および第2偏光の、所望の光線分離距離に応じて適宜設定されうる。
検光子543は、第1偏光に含まれている、所定の偏光方向の第1偏光成分と、第2偏光に含まれている、所定の偏光方向と同一方向の第2偏光成分とを透過させる。実施の形態5では、前述のとおり、検光子543は、偏光子541が透過させる偏光の偏光方向と同一の方向(D1方向)の第1偏光成分および第2偏光成分を透過させる。検光子543は、偏光分割複屈折素子542およびフーリエ変換レンズ544の間において、第1偏光および第2偏光の光路上に配置されている。また、検光子543の大きさは、透過する光の光束幅などに応じて、適宜設定されうる。検光子543の種類の例については、実施の形態1に係る第1偏光子113と同じである。
実施の形態5では、偏光子541、偏光分割複屈折素子542および検光子543は、互いに接着されている。このような構成とすることは、装置の小型化および低コスト化の観点から好ましい。
フーリエ変換レンズ544は、第1偏光成分および第2偏光成分を重ね合わせて、第1偏光成分および第2偏光成分の干渉縞を形成する。
フーリエ変換レンズ544の直径は、透過する光の光束幅などに応じて、適宜設定されうる。フーリエ変換レンズ544の焦点距離f2は、形成しようとする干渉縞形成領域の大きさに応じて適宜調整されうる。たとえば、フーリエ変換レンズ544の焦点距離f2を大きくすると、干渉縞形成領域の面積を大きくすることができる。
また、フーリエ変換レンズ544の形状および材料は、適宜選択されうる。フーリエ変換レンズ544の例には、凸レンズおよび凹レンズが互いに貼り合わされたアクロマートレンズや、閉回路テレビ(CCTV)レンズ、Fマウントレンズなどの写真撮影用レンズが含まれる。フーリエ変換レンズ544の材料の例には、樹脂およびガラスが含まれる。フーリエ変換レンズ544は、例えば、射出成形法により作製されてもよいし、既製品であってもよい。
検出部545は、フーリエ変換レンズ544により形成された干渉縞の強度分布に基づいて被測定物1から放出される蛍光のインターフェログラムを取得し、取得したインターフェログラムを処理部546に出力する。検出部545は、干渉縞を撮像するための撮像素子5451を有する。検出部545は、フーリエ変換レンズ544からフーリエ変換レンズ544の焦点距離f2離れた位置に配置されている。検出部545は、例えば、撮像装置および出力装置を含む公知の半導体装置である。
図12Bは、実施の形態5に係る蛍光測定装置500の検出部545が有する撮像素子5451の受光面の構成を示す模式図である。図12Bに示されるように、検出部545は、干渉縞を撮像するための撮像素子5451と、撮像素子5451上に配列されている、赤色光を透過させる第1カラーフィルタ5452R、緑色光を透過させる第2カラーフィルタ5452G、および青色光を透過させる第3カラーフィルタ5452Bとを有する。実施の形態5では、第1カラーフィルタ5452R、第2カラーフィルタ5452Gおよび第3カラーフィルタ5452Bは、撮像素子5451の受光面上にベイヤー配列されている。
たとえば、第1カラーフィルタ5452Rは、ピーク波長が620〜680nmの赤色光を透過させ、第2カラーフィルタ5452Gは、ピーク波長が520〜580nmの緑色光を透過させ、第3カラーフィルタ5452Gは、ピーク波長が400〜480nmの青色光を透過させる。
撮像素子5451の受光面の大きさおよび形状は、形成される干渉縞形成領域の形状や大きさなどに応じて適宜設定されうる。撮像素子5451は、例えば、干渉縞を2次元的に撮像し、干渉縞の強度分布に基づいて、被測定物1から放出された蛍光のインターフェログラムを取得することができる電荷結合素子(CCD)や相補性金属酸化膜半導体(CMOS)などの個体撮像素子である。
処理部546は、検出部545で取得されたインターフェログラムを処理する。具体的には、処理部546は、インターフェログラムをフーリエ変換して、被測定物1から放出された蛍光の分光スペクトルを算出する。実施の形態5に係る処理部546は、励起光出射部510の光源511が出射する励起光を受光する画素からの出力をカットし、被測定物1から放出された蛍光を受光する画素からの出力だけに基づいてインターフェログラムを処理する。すなわち、処理部546は、第1カラーフィルタ5452R、第2カラーフィルタ5452Gおよび第3カラーフィルタ5452Bのうち、被測定物1から放出された蛍光を透過させつつ、励起光を減衰させるカラーフィルタが受光面上に配置されている画素からの出力に基づいて取得されたインターフェログラムを処理する。
たとえば、光源511が青色の励起光を出射し、検出部545が緑色の蛍光を観察する場合、処理部546は、第3カラーフィルタ5452Bが受光面上に配置されている画素からの出力をカットし、第1カラーフィルタ5452Rおよび第2カラーフィルタ5452Gが受光面上に配置されている画素からの出力に基づいてインターフェログラムを処理する。また、光源511が緑色の励起光を出射し、検出部545が赤色の蛍光を観察する場合、処理部546は、第2カラーフィルタ5452Gおよび第3カラーフィルタ5452Bが受光面上に配置されている画素からの出力をカットし、第1カラーフィルタ5452Rが受光面上に配置されている画素からの出力に基づいてインターフェログラムを処理する。
処理部546は、例えば、演算装置、記憶装置、入力装置および出力装置を含む公知のコンピュータやマイコンなどによって構成される。
(蛍光測定装置における光路)
次いで、実施の形態5に係る蛍光測定装置500における光路について説明する。まず、光源511から出射された励起光は、被測定物1に照射される。次いで、被測定物1からの光に含まれる、D1方向の偏光成分のみが、偏光子541を透過する。偏光子541を透過した直線偏光の光は、偏光分割複屈折素子142を透過して第1偏光および第2偏光に分割される。次いで、第1偏光に含まれているD1方向の第1偏光成分と、第2偏光に含まれているD1方向の第2偏光成分とは、検光子543およびフーリエ変換レンズ544を透過し、互いに重ね合わされる。これにより、検出部545が有する撮像素子5451の受光面上に、干渉縞aが形成される。このとき、干渉縞aは、第1カラーフィルタ5452R、第2カラーフィルタ5452Gおよび第3カラーフィルタ5452Bに亘って受光面上に結像される。
実施の形態5に係る蛍光測定装置500で取得されるインターフェログラムと、光学設計とについては、実施の形態1に係る蛍光測定装置100と同じであるため、その説明を省略する。
(効果)
実施の形態5に係る蛍光測定装置500では、撮像素子5451の受光面において、第1カラーフィルタ5452R、第2カラーフィルタ5452Gおよび第3カラーフィルタ5452Bが配置されている。蛍光の発光色に対応する画素からの出力のみに基づいてインターフェログラムを処理することで、蛍光測定装置500は、被測定物1からの光から励起光をカットして、蛍光の分光スペクトルを測定することができる。このように、実施の形態5に係る蛍光測定装置500は、高価な光学フィルタを使用することなく、被測定物1からの光に含まれる蛍光の分光スペクトルを測定することができる。これにより、装置の低コスト化を実現することができる。
なお、上記実施の形態5に係る蛍光測定装置500では、光ファイバを使用しない態様について説明したが、蛍光測定装置500は、この態様に限定されない。たとえば、蛍光測定装置500は、光源511から出射された励起光を被測定物1まで導光するための光ファイバをさらに有していてもよいし、被測定物1からの光をスペクトル分光部540に導光するための光ファイバをさらに有していてもよい。
また、上記実施の形態5に係る蛍光測定装置500のスペクトル分光部540を、上記実施の形態1〜4に係る蛍光測定装置100〜400に適用することは、励起光をより確実にカットする観点から、好ましい。これにより、より微弱な蛍光の分光スペクトルを測定することができ、蛍光測定装置により分光スペクトルを測定するために必要な被測定物1の量を低減することができる。
また、上記実施の形態1〜4では、光ファイバ(第1光ファイバ112、第2光ファイバ130および第3光ファイバ350の少なくとも1つ)を有する蛍光測定装置100〜400について説明したが、蛍光測定装置100〜400は、光ファイバを有していなくてもよい。たとえば、図3Aにおいて第2光ファイバ130を有しない系である。この場合、スペクトル分光部140は、直線偏光の励起光の進行方向に対して垂直方向に放出される蛍光が偏光子141に入射するように配置される。これによって、励起光がスペクトル分光部140に入射するのを抑制することができる。また、スペクトル分光部の偏光子141を励起光の減衰に使えるため、部品点数を削減することもできる。
さらに、条規実施の形態1〜5では、(第3)偏光子141、541を有する蛍光測定装置100〜500について説明したが、本発明に係る蛍光測定装置は、(第3)偏光子141、541を有していなくてもよい。これは、被測定物1からの光がランダム偏光の光である場合には、(第3)偏光子141、541を透過させなくても、偏光分割複屈折素子142で分離される正常光および異常光の時間平均強度が互いに等しくなり、検光子143、543を透過する第1方向成分および第2方向成分の大きさが互いに等しくなるためである。