JP7282635B2 - 非空気圧タイヤ、及び、非空気圧タイヤの製造方法 - Google Patents

非空気圧タイヤ、及び、非空気圧タイヤの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、車両からの荷重を支持する支持構造体を備えた非空気圧タイヤ(non-pneumatic tire)と、その非空気圧タイヤの製造方法に関する。
近年、空気入りタイヤに代用するための非空気圧タイヤが種々提案されている。かかる非空気圧タイヤは、車両からの荷重を支持する支持構造体を備えており、その支持構造体は、環状の外側リングと、外側リングのタイヤ径方向内側に同心円状に設けられた環状の内側リングと、外側リングと内側リングとを連結するスポークとを有する。外側リングのタイヤ径方向外側には、接地面を形成する環状のトレッドが設けられる。また、荷重支持力が高められるよう、繊維層によって外側リングを補強した構造が知られている(例えば、特許文献1)。
本発明者は、補強効果を更に高めるために、繊維配列体を含む繊維層とエラストマー層とをタイヤ径方向に交互に重ねて積層体を形成し、それによって外側リングを補強することを検討した。タイヤ幅方向に対して90度の角度で(即ち、タイヤ周方向に)繊維材が延在する繊維配列体では、1本または複数本の繊維材がタイヤ周方向に沿って螺旋状に巻回されたジョイントレス構造を採用可能であるが、タイヤ幅方向に対して90度未満の角度で繊維材が延在する繊維配列体では、帯状をなす繊維配列体の端部同士を互いに接合させたスプライス構造が採用されることになる。
スプライス構造の繊維配列体は、その端部同士を接合してなるスプライス部を有する。具体的には、端部同士を突き合わせて接合したバットスプライスか、端部同士を重ね合わせて接合したラップスプライスの何れかが採用される。しかし、バットスプライスでは、トレッドがタイヤ周方向のバックリングを起こした際に、スプライス部を起点としたセパレーションを生じる恐れがある。また、ラップスプライスでは、スプライス部において局部的な増加を伴うため、タイヤのユニフォミティ、特にRFV(ラジアルフォースバリエーション)の悪化が懸念される。
特表2014-503394号公報
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、スプライス構造の繊維配列体を含む繊維層を有しつつ、耐セパレーション性やユニフォミティの悪化を抑制できる非空気圧タイヤと、その非空気圧タイヤの製造方法を提供することにある。
本発明の非空気圧タイヤは、車両からの荷重を支持する支持構造体を備え、前記支持構造体は、環状の外側リングと、前記外側リングのタイヤ径方向内側に同心円状に設けられた環状の内側リングと、前記外側リングと前記内側リングとを連結するスポークとを有し、前記外側リングのタイヤ径方向外側に、複数の繊維層を有する環状の積層体が設けられており、前記複数の繊維層のうち少なくとも一層が、タイヤ幅方向に対して90度未満の角度で延在する繊維材が配列されたスプライス構造の第1繊維配列体を含み、前記第1繊維配列体の端部同士を接合してなるスプライス部が前記スポークのタイヤ周方向位置に設定されている。
スポークのタイヤ周方向位置にスプライス部が設定されていることにより、そうでない場合に比べて、即ちスポークが設けられていない領域のタイヤ周方向位置にスプライス部が設定された場合に比べて、タイヤ周方向のバックリングがスプライス部に影響を及ぼしにくくなるとともに、スプライス部によるタイヤ径方向の変動を生じにくい。このため、スプライス構造の繊維配列体を含む繊維層を有していながら、耐セパレーション性やユニフォミティの悪化を抑制できる。
前記複数の繊維層のうち少なくとも一層が、前記第1繊維配列体に加え、タイヤ幅方向に対して90度の角度で延在する繊維材が配列されたジョイントレス構造の第2繊維配列体を含むものでもよい。これにより、外側リングの周方向剛性を高めてバックリングの発生を抑え、耐セパレーション性の悪化をより効果的に抑制できる。
前記複数の繊維層のうち最外層が前記第1繊維配列体を含むことが好ましい。最外層は耐セパレーション性やRFVに及ぼす影響が大きいため、最外層が第1繊維配列体を含むことにより更に有用となる。
本発明の非空気圧タイヤの製造方法は、環状の外側リングと、前記外側リングのタイヤ径方向内側に同心円状に設けられた環状の内側リングと、前記外側リングと前記内側リングとを連結するスポークと、を有する支持構造体を作製する第1の工程と、前記外側リングのタイヤ径方向外側に、複数の繊維層を有する環状の積層体を設ける第2の工程とを備え、前記第2の工程では、前記複数の繊維層のうち少なくとも一層を形成する際に、タイヤ幅方向に対して90度未満の角度で延在する繊維材が配列されたスプライス構造の第1繊維配列体を配置し、前記第1繊維配列体の端部同士を接合してなるスプライス部を前記スポークのタイヤ周方向位置に設定する。
スポークのタイヤ周方向位置にスプライス部が設定されることにより、そうでない場合に比べて、即ちスポークが設けられていない領域のタイヤ周方向位置にスプライス部が設定された場合に比べて、タイヤ周方向のバックリングがスプライス部に影響を及ぼしにくくなるとともに、スプライス部によるタイヤ径方向の変動を生じにくい。このため、スプライス構造の繊維配列体を含む繊維層を有していながら、耐セパレーション性やユニフォミティの悪化を抑制できる。
前記第2の工程では、帯状の前記第1繊維配列体を前記外側リングのタイヤ径方向外側に巻き付けるとともに、前記第1繊維配列体の始端部と終端部とを接合してなる前記スプライス部を前記スポークのタイヤ周方向位置に設定するものでもよい。かかるスプライス部では耐セパレーション性やユニフォミティの悪化が特に懸念されるため、スポークのタイヤ周方向位置にスプライス部を設定する構成がより一層有用になる。また、ユニフォミティの悪化を抑制するうえでは、前記始端部と前記終端部とを互いに突き合わせて接合することが好ましい。
前記第2の工程では、タイヤ幅方向に対して90度の角度で延在する繊維材が配列されたジョイントレス構造の第2繊維配列体を配置し、前記第1繊維配列体と前記第2繊維配列体とをタイヤ径方向に積層するものでもよい。これにより、外側リングの周方向剛性を高めてバックリングの発生を抑え、耐セパレーション性の悪化をより効果的に抑制できる。
本発明に係る非空気圧タイヤの一例を示す正面図 非空気圧タイヤのタイヤ子午線断面図 非空気圧タイヤの一部を示す斜視図 外側リングの内周面を示す展開図 スプライス部を模式的に示す正面図 スポークのタイヤ径方向外側端の周辺を示す拡大正面図 非空気圧タイヤの製造方法を概念的に示す説明図 別実施形態の非空気圧タイヤにおける外側リングの内周面を示す展開図
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、非空気圧タイヤTの一例を示す正面図であり、一部を拡大して示している。図2は、その非空気圧タイヤTのタイヤ子午線断面図であり、図1のA-A断面図に相当する。図3は、図2に示した非空気圧タイヤの一部を示す斜視図である。
図1に示すように、非空気圧タイヤTは、車両からの荷重を支持する支持構造体SSを備える。支持構造体SSは、環状の外側リング1と、その外側リング1のタイヤ径方向内側RDiに同心円状に設けられた環状の内側リング2と、外側リング1と内側リング2とを連結するスポーク3とを有する。スポーク3は、タイヤ周方向CDに各々独立して複数設けられている。
外側リング1、内側リング2及びスポーク3は、基本的には互いに同じ材料で形成されていることが好ましい。これにより、支持構造体SSを製造する際には、例えば注型成形法を用いて、それらを容易に一体成形することができる。本実施形態では、支持構造体SSが弾性材料で一体成形されており、つまりは外側リング1、内側リング2及び複数のスポーク3が一体的に成形されている。
本明細書において、弾性材料とは、JISK7312に準拠した引張試験により10%伸長時の引張応力として求められる引張モジュラスが100MPa以下の材料を指す。支持構造体SSに十分な耐久性と適度な剛性を付与する観点から、弾性材料の引張モジュラスは5~100MPaが好ましく、7~50MPaがより好ましい。母材として用いられる弾性材料としては、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂が挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリ塩化ビニルエラストマー、ポリウレタンエラストマーが用いられる。架橋ゴムを構成するゴム材料としては、天然ゴムの他に、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(水添NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴムなどの合成ゴムが用いられる。これらのゴム材料は、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
その他の樹脂としては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが用いられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などが用いられる。成形性や加工性の観点から、上述した弾性材料の中では、ポリウレタン樹脂が好ましく用いられる。尚、弾性材料として発泡材料を使用してもよく、上記の熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂を発泡させたものを使用できる。
外側リング1は、タイヤ周方向CDに沿って環状をなす円筒体により形成されている。タイヤTのユニフォミティを向上させる観点から、外側リング1の厚みT1は一定であることが好ましい。スポーク3からの力を十分に伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、厚みT1はタイヤ断面高さTHの2~20%が好ましく、10~15%がより好ましい。一般的な自動車用空気入りタイヤの代用を想定した場合、外側リング1の内径は420~750mmが好ましく、470~680mmがより好ましい。同じく自動車用タイヤの代用を想定した場合において、タイヤ幅方向WDにおける外側リング1の幅W1は100~300mmが好ましく、120~250mmがより好ましい。
外側リング1のタイヤ径方向外側RDoには、接地面を形成する環状のトレッド4が設けられている。トレッド4は、ゴムで形成されているが、樹脂で形成されていてもよい。トレッド4がゴムで形成される場合、従来の空気入りタイヤが備えるトレッドゴムと同様のゴム組成物が好ましく用いられる。トレッド4が樹脂で形成される場合、支持構造体SSの構成材料と同じ樹脂が好ましく用いられる。濡れた路面での走行性能を高めるために、トレッド4の外周面に種々のトレッドパターンを設けることが可能である。
内側リング2は、タイヤ周方向CDに沿って環状をなす円筒体により形成されている。タイヤTのユニフォミティを向上させる観点から、内側リング2の厚みT2は一定であることが好ましい。スポーク3からの力を十分に伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、厚みT2はタイヤ断面高さTHの2~10%が好ましく、3~9%がより好ましい。一般的な自動車用空気入りタイヤの代用を想定した場合、内側リング2の内径は250~500mmが好ましく、320~440mmがより好ましい。同じく自動車用タイヤの代用を想定した場合において、タイヤ幅方向WDにおける内側リング2の幅W2は100~300mmが好ましく、120~250mmがより好ましい。
内側リング2のタイヤ径方向内側RDiには、車軸やリムとの適合用部材(図示せず)を設けることが可能である。内側リング2の内周面には、その適合用部材の嵌合性を保持するための凹凸を設けてもよい。
複数のスポーク3は、それぞれタイヤ径方向RDに延びて外側リング1と内側リング2とを連結する。スポーク3の各々のタイヤ径方向外側端は外側リング1の内周面に接合され、スポーク3の各々のタイヤ径方向内側端は内側リング2の外周面に接合されている。タイヤTのユニフォミティを向上させる観点から、タイヤ周方向CDにおけるスポーク3の間隔Gは一定であることが好ましい。間隔Gは、例えば0.1mm以上であり、典型的には1mm以上に設定されている。接地圧の均一化を図るとともに、ノイズの増大を抑える観点から、間隔Gは10mm以下が好ましい。
本実施形態では、複数のスポーク3が、外側リング1のタイヤ幅方向一方側WD1(以下、単に「一方側WD1」と呼ぶ場合がある)から内側リング2のタイヤ幅方向他方側WD2(以下、単に「他方側WD2」と呼ぶ場合がある)へ向かって延びる第1スポーク31と、外側リング1の他方側WD2から内側リング2の一方側WD1へ向かって延びる第2スポーク32とを含む例を示す。互いに隣り合う第1スポーク31及び第2スポーク32は、タイヤ周方向CDから見てX字型に配置されている。複数のスポーク3は、タイヤ周方向CDに沿って交互に配列された第1スポーク31と第2スポーク32とにより構成されている。尚、スポーク3の形状は特に限定されるものではない。
車両からの荷重を十分に支持しつつ、軽量化や動力伝達の向上、耐久性の向上を図る観点から、スポーク3の本数は50~300本が好ましく、100~200本がより好ましい。本実施形態では、複数のスポーク3が、50本の第1スポーク31と50本の第2スポーク32とにより構成されている(図1参照)。外側リング1及び内側リング2からの力を十分に伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、スポーク3の引張モジュラスは5~180000MPaが好ましく、7~50000MPaがより好ましい。弾性材料を繊維で補強した繊維補強材料を用いることにより、スポーク3の引張モジュラスを高めてもよい。
第1スポーク31は、タイヤ径方向RD及びタイヤ幅方向WDに延びる長尺板状に形成されている。第1スポーク31は、タイヤ周方向CDに沿った板厚tと、板厚tよりも大きい板幅wとを有する。板厚tは、長尺方向PLに沿って一定でもよいが、図1のようにタイヤ径方向外側RDoに向かって漸増していることが好ましい。かかる場合でも、外側リング1の内周面とスポーク3の各々のタイヤ径方向外側端との接合部5において、板厚tは板幅wよりも小さい。本実施形態では、板厚方向PTがタイヤ周方向CDに一致している。
外側リング1及び内側リング2からの力を十分に伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、板厚tは8~30mmが好ましく、10~25mmがより好ましい。同様の観点から、板幅wは5~25mmが好ましく、10~20mmがより好ましい。また、耐久性を向上させつつ接地圧分散を小さくする観点から、板幅wは、板厚tの110%以上が好ましく、115%以上がより好ましい。第2スポーク32は、タイヤ赤道面TEに関して第1スポーク31と対称的に配置されていること以外は第1スポーク31と同様に形成されているので、重複した説明を省略する。
第1スポーク31は、内端部3a、中央部3b及び外端部3cで構成されている。中央部3bは、タイヤ径方向RDにおける第1スポーク31の高さ中央31cを中心とした範囲Xを含み、この範囲Xは第1スポーク31の高さhの30~70%である。タイヤ幅方向WDにおける中央部3bの板幅wbは一定であるのに対し、外端部3cの板幅wcはタイヤ径方向外側RDoに向かって漸増している。同様に、内端部3aの板幅waはタイヤ径方向内側RDiに向かって漸増している。これにより、外側リング1及び内側リング2との接合部における応力集中を低減して耐久性を向上できる。
図4は、外側リング1の内周面を示す展開図である。外側リング1のタイヤ径方向外側には、複数の繊維層7を有する積層体6が設けられている。積層体6は、タイヤ周方向CDに沿って環状に形成されている。積層体6は、複数の繊維層7と、その複数の繊維層7の間に介在するエラストマー層8とを有する。即ち、繊維層7とエラストマー層8とがタイヤ径方向RDに交互に積層されている。補強効果を確保する観点から、積層体6の幅W6(図2参照)は外側リング1の幅W1の10%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。
本実施形態において、複数の繊維層7は、最外層71と、最内層72と、その最外層71と最内層72との間に配置された中間層73との三層で構成されている。中間層73は省略可能であり、複数の繊維層7は、その複数の繊維層7において最もタイヤ径方向外側RDoに配置される最外層71と、同じく最もタイヤ径方向内側RDiに配置される最内層72とを含む、少なくとも二層で構成される。
この非空気圧タイヤTでは、最外層71及び最内層72が、それぞれ、タイヤ幅方向WDに対して90度未満の角度で延在する繊維材91cが配列されたスプライス構造の第1繊維配列体91を含む。タイヤ幅方向WDに対する繊維材91cの角度は、10度以下が好ましく、6度以下がより好ましく、本実施形態ではタイヤ幅方向WDと実質的に平行となる0度である。また、繊維材91cは、接合部5の長手方向D5に沿って延びていることが好ましい。第1繊維配列体91は、複数の繊維層7のうち少なくとも一層に含まれていればよいが、最外層71に含まれていることが有益である。
複数の繊維材91cは互いに平行に配列され、その各々が、タイヤ幅方向WDにおける第1繊維配列体91の一端から他端まで連続して延びている。繊維材91cの材料は、特に限定されないが、例えば、レーヨンコード、ナイロンコード、ポリエステルコード、アラミドコードなどの有機繊維や、スチールコードなどの金属繊維が好ましく用いられ、この点は後述する繊維材92cにおいても同様である。繊維材91cは、ゴムや樹脂などのエラストマーによって被覆されている。
スプライス構造の第1繊維配列体91は、帯状をなす第1繊維配列体91の端部同士を互いに接合することにより形成される。その端部同士を接合してなるスプライス部91sは、繊維材91cの延在方向(本実施形態ではタイヤ幅方向WD)に沿って形成される。スプライス部91sとしては、図5(A)のように端部同士を突き合わせて接合したバットスプライスか、図5(B)のように端部同士を重ね合わせて接合したラップスプライスの何れかが採用される。スプライス部91sは、エラストマー層8の界面及び/または繊維材91cの位置に基づき、製造後の非空気圧タイヤTにおいても判別可能である。
図6のように、スプライス部91sは、スポーク3のタイヤ周方向位置に設定されている。この非空気圧タイヤTでは、スポーク3が設けられた領域A1と、スポーク3が設けられていない領域A2とがタイヤ周方向CDに交互に配置されており(図4及び図6参照)、その領域A1にスプライス部91sが配置されている。このため、タイヤ周方向CDのバックリングがスプライス部91sに影響を及ぼしにくく、更にはスプライス部91sによるタイヤ径方向RDの変動を生じにくい。その結果、バットスプライスが採用されても耐セパレーション性の悪化が抑制され、ラップスプライスが採用されてもユニフォミティ(主としてRFV)の悪化が抑制される。
本実施形態では、積層体6に複数の第1繊維配列体91が含まれているが、それら全ての第1繊維配列体91のスプライス部91sが、それぞれ領域A1に配置されることが好ましい。また、複数の第1繊維配列体91は、タイヤ周方向CDに離れた位置にスプライス部91sを有することが好ましい。例えば第1繊維配列体91が二つある場合、一方のスプライス部91sは他方のスプライス部91sから半周分ずれて位置することが好ましい。更に、スプライス部91sは、スポーク3のタイヤ周方向位置の中央部となる領域A1cに配置されることが好ましい。領域A1cは、タイヤ周方向CDにおける領域A1の中央を中心とした、領域A1のタイヤ周方向長さの80%(より好ましくは50%)の範囲の領域である。
本実施形態では、最外層71及び最内層72が、それぞれ第1繊維配列体91に加え、タイヤ幅方向WDに対して90度の角度で(即ち、タイヤ周方向CDに)延在する繊維材92cが配列されたジョイントレス構造の第2繊維配列体92を含む。第2繊維配列体92は、最外層71及び最内層72の両方に限らず、複数の繊維層7のうち、第1繊維配列体91を含む少なくとも一層に含まれていてもよい。第2繊維配列体92は第1繊維配列体91のタイヤ径方向内側に積層されているが、これらの位置関係が逆でもよい。ジョイントレス構造の第2繊維配列体92は、ゴムまたは樹脂をトッピングした一本又は複数の繊維材92cをタイヤ周方向CDに沿って螺旋状に巻回することにより形成できる。
中間層73は、タイヤ周方向CDに延在する繊維材92cがタイヤ幅方向WDに配列された第2繊維配列体92を含む。中間層73は、第1繊維配列体91などの他の繊維配列体を含んでいてもよいが、軽量化を図る観点から、本実施形態のように第2繊維配列体92のみを含むことが好ましい。また、非空気圧タイヤTの耐荷重性能を高めるために、二層以上の第2繊維配列体92で中間層73を構成することも可能である。
本実施形態において、エラストマー層8はゴムで形成されているが、これに限られず、例えば樹脂で形成されていてもよい。エラストマー層8の構成材料は、上述した繊維材91cにトッピングされる材料と同種の材料であることが好ましいが、異種の材料でも構わない。エラストマー層8が樹脂で形成される場合、その樹脂材料は外側リング1の母材と同種の材料であることが好ましい。エラストマー層8の厚みは、例えば0.1~20mmである。
図4のように、本実施形態では、接合部5がタイヤ幅方向WDにおける一方側WD1と他方側WD2とで互い違いになるよう、タイヤ周方向CDに沿って千鳥状に配置されている。接合部5は矩形状をなし、その接合部5の長手方向D5は板厚方向PTに直交している。スポーク3は、接合部5の長手方向D5がタイヤ幅方向WDに対して90度未満の角度をなすように設けられている。タイヤ幅方向WDに対する長手方向D5の角度は89度以下が好ましく、60度以下がより好ましい。本実施形態では、タイヤ幅方向WDに対する長手方向D5の角度が0度であり、長手方向D5がタイヤ幅方向WDに一致している。領域A1では、タイヤ幅方向WDの少なくとも一部に接合部5が配置されているのに対し、領域A2には接合部5が配置されていない。
この非空気圧タイヤTの製造方法は、支持構造体SSを作製する第1の工程と、その支持構造体SSの外側リング1のタイヤ径方向外側に、複数の繊維層7を有する環状の積層体6を設ける第2の工程とを備える。図7に概念的に示すように、外側リング1のタイヤ径方向外側には、繊維層7を構成する第1繊維配列体91及び第2繊維配列体92、並びにエラストマー層8が、所要の順序で配置される。第2の工程では、複数の繊維層7のうち少なくとも一層を形成する際に、タイヤ幅方向WDに対して90度未満の角度で延在する繊維材91cが配列されたスプライス構造の第1繊維配列体91を配置し、その第1繊維配列体91のスプライス部91sをスポーク3のタイヤ周方向位置に設定する。
スプライス構造の第1繊維配列体91は、例えば、帯状の第1繊維配列体91を外側リング1のタイヤ径方向外側に巻き付けることにより形成される。第1繊維配列体91を巻き付ける際には、第1繊維配列体91の始端部E1と終端部E2とを接合してなるスプライス部91sをスポーク3のタイヤ周方向位置に設定する。スプライス部91sを精度良く位置決めするためには、始端部E1を巻き始め位置に固定することが有効である。具体的には、巻き始め位置に始端部E1を押し付けて圧着したり、巻き始め位置に接着剤を塗布したり、或いは、巻き始め位置にレーザーまたは超音波を照射して始端部E1を固着したりすることが考えられる。
巻き付けに使用される第1繊維配列体91は、積層体6に対応した幅寸法を有する帯状物(反物)として用意され、回転支持体にセットした支持構造体SSに供給される。第1繊維配列体91の端部の一つを始端部E1として所定の位置に貼り付けた後、支持構造体SSを回転させることで、第1繊維配列体91がタイヤ周方向CDに沿って巻き付けられ、その第1繊維配列体91の終端部E2が始端部E1に接合される。ユニフォミティを向上する観点から、始端部E1と終端部E2とを互いに突き合わせて接合するバットスプライスを採用することが望ましい。エラストマー層8も、これと同様に巻き付けて形成することが可能である。
上述した第1繊維配列体91の帯状物は、例えば下記(1)~(3)のような手順により作製される。即ち、まずは、(1)従来公知のカレンダーロールまたは押出機を用いて、互いに平行に配列された複数の繊維材91cを含む帯状プライを成形する。次に、(2)帯状物の幅寸法に相当する長さで帯状プライを切断し、短冊状プライを形成する。そして、(3)繊維材91cの配列方向となるタイヤ周方向CDに複数の短冊状プライを順次に接合する。第2工程では、巻き付けで生じるスプライス部91sだけでなく、上記(3)で生じる接合箇所もスポーク3のタイヤ周方向位置に設定することが好ましい。
第1繊維配列体91を配置する別の方法として、予め環状に成形した第1繊維配列体91を外側リング1のタイヤ径方向外側にアセンブリしてもよい。このような環状の第1繊維配列体91は、成形ドラムなどの回転支持体を用いて形成されるためにスプライス部91sを有する。アセンブリした環状の第1繊維配列体91を内側の部材(本実施形態では第2繊維配列体92)に面接触させる際には、必要に応じて、接着剤を塗布したり、熱融着させたりしてもよい。かかる方法においても、支持構造体SSに対する第1繊維配列体91の相対的な位相制御により、スポーク3のタイヤ周方向位置にスプライス部91sを設定できる。
第2の工程では、タイヤ幅方向WDに対して90度の角度で延在する繊維材92cが配列されたジョイントレス構造の第2繊維配列体92を配置し、第1繊維配列体91と第2繊維配列体92とをタイヤ径方向に積層する。第2繊維配列体92は、タイヤ周方向CDに沿って繊維材92cを螺旋状に巻回することにより形成できる。本実施形態では、第1繊維配列体91が第2繊維配列体92のタイヤ径方向外側に積層され、その積層体によって最外層71と最内層72が形成されている(図4参照)。但し、これに限られず、第2繊維配列体92を第1繊維配列体91のタイヤ径方向外側に積層してもよく、かかる場合には、第1繊維配列体91のスプライス部91sを堅固にかしめることができる。
本実施形態では、図4のように、一方側WD1に配置された接合部5の長手方向D5(以下、長手方向D51)は、他方側WD2に配置された接合部5の長手方向D5(以下、長手方向D52)と同じ向きで、それらの向きに沿って繊維材91cが延在している。長手方向D51と長手方向D52とは、それぞれタイヤ幅方向WDに一致しているが、これに限られない。例えば図8のように、長手方向D51と長手方向D52とが互いに同じ向きで、それぞれタイヤ幅方向WDに対して傾斜してもよい。また、長手方向D51と長手方向D52とがタイヤ幅方向WDに対して互いに逆向きに傾斜してもよい。
図8の変形例では、第1繊維配列体91の繊維材91cが長手方向D51及び長手方向D52に沿って延在している。スプライス部91sは、繊維材91cの延在方向(この例ではタイヤ幅方向WDに対して傾斜した方向)に沿って形成されている。かかる構成においても、スプライス部91sはスポーク3のタイヤ周方向位置(即ち、領域A1)に設定され、スポーク3が設けられていない領域(即ち、領域A2)には設定されない。タイヤ幅方向WDに対する接合部5の傾斜角度θは、例えば0.1~89度である。一方側WD1と他方側WD2とで傾斜角度θが相違していても構わない。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
1 外側リング
2 内側リング
3 スポーク
4 トレッド
5 接合部
6 積層体
7 繊維層
8 エラストマー層
31 第1スポーク
32 第2スポーク
71 最外層
72 最内層
73 中間層
91 第1繊維配列体
91c 繊維材
91s スプライス部
92 第2繊維配列体
92c 繊維材
CD タイヤ周方向
E1 始端部
E2 終端部
SS 支持構造体
T 非空気圧タイヤ

Claims (7)

  1. 車両からの荷重を支持する支持構造体を備え、
    前記支持構造体は、環状の外側リングと、前記外側リングのタイヤ径方向内側に同心円状に設けられた環状の内側リングと、前記外側リングと前記内側リングとを連結するスポークとを有し、
    前記スポークは、タイヤ周方向に各々独立して複数設けられ、
    前記外側リングの内周面において、前記スポークが設けられた領域A1と、前記スポークが設けられていない領域A2とがタイヤ周方向に交互に配置されており、
    前記外側リングのタイヤ径方向外側に、複数の繊維層を有する環状の積層体が設けられており、
    前記複数の繊維層のうち少なくとも一層が、タイヤ幅方向に対して90度未満の角度で延在する繊維材が配列されたスプライス構造の第1繊維配列体を含み、
    前記第1繊維配列体の端部同士を接合してなるスプライス部が、タイヤ径方向から見て前記領域A1と重なるように前記スポークのタイヤ周方向位置に設定されている、非空気圧タイヤ。
  2. 前記複数の繊維層のうち少なくとも一層が、前記第1繊維配列体に加え、タイヤ幅方向に対して90度の角度で延在する繊維材が配列されたジョイントレス構造の第2繊維配列体を含む、請求項1に記載の非空気圧タイヤ。
  3. 前記複数の繊維層のうち最外層が前記第1繊維配列体を含む、請求項1または2に記載の非空気圧タイヤ。
  4. 環状の外側リングと、前記外側リングのタイヤ径方向内側に同心円状に設けられた環状の内側リングと、前記外側リングと前記内側リングとを連結するスポークと、を有する支持構造体を作製する第1の工程と、
    前記外側リングのタイヤ径方向外側に、複数の繊維層を有する環状の積層体を設ける第2の工程とを備え、
    前記スポークは、タイヤ周方向に各々独立して複数設けられ、
    前記外側リングの内周面において、前記スポークが設けられた領域A1と、前記スポークが設けられていない領域A2とがタイヤ周方向に交互に配置されており、
    前記第2の工程では、前記複数の繊維層のうち少なくとも一層を形成する際に、タイヤ幅方向に対して90度未満の角度で延在する繊維材が配列されたスプライス構造の第1繊維配列体を配置し、前記第1繊維配列体の端部同士を接合してなるスプライス部を、タイヤ径方向から見て前記領域A1と重なるように前記スポークのタイヤ周方向位置に設定する、非空気圧タイヤの製造方法。
  5. 前記第2の工程では、帯状の前記第1繊維配列体を前記外側リングのタイヤ径方向外側に巻き付けるとともに、前記第1繊維配列体の始端部と終端部とを接合してなる前記スプライス部を、タイヤ径方向から見て前記領域A1と重なるように前記スポークのタイヤ周方向位置に設定する、請求項4に記載の非空気圧タイヤの製造方法。
  6. 前記始端部と前記終端部とを互いに突き合わせて接合する、請求項5に記載の非空気圧タイヤの製造方法。
  7. 前記第2の工程では、タイヤ幅方向に対して90度の角度で延在する繊維材が配列されたジョイントレス構造の第2繊維配列体を配置し、前記第1繊維配列体と前記第2繊維配列体とをタイヤ径方向に積層する、請求項4~6いずれか1項に記載の非空気圧タイヤの製造方法。
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