本開示は、簡便な操作で骨の内固定部材セットの各要素を組付け、それらの分離を困難にすることができる内固定部材セットおよび内固定部材を提供する。
以下では、内固定部材本体がスクリューである場合について、説明する。図1は、生体用のインプラント100の構成の一例を概略的に示す図である。図1の例では、インプラント100は人の脊椎用のインプラントである。インプラント100は体内の複数の腰椎210、仙骨220および腸骨230を相互に固定する。
インプラント100はスクリューアセンブリ110とスクリューアセンブリ1とロッド130とを含んでいる。これらは、生体適合性を有する材料によって構成される。当該材料は、例えば、チタン、チタン合金、コバルトクロム合金およびステンレス鋼の少なくともいずれか一つを含む。
図1の例では、各腰椎210の右側および左側に、それぞれスクリューアセンブリ110が埋入され、仙骨220の右側および左側に、それぞれスクリューアセンブリ1が埋入されている。図1の例では、各スクリューアセンブリ1は、仙骨220の第2仙椎の仙骨翼を入口として、仙腸関節を貫通し、大座骨切痕の直上の腸骨230内に埋入される。
図1の例では、右側に位置するスクリューアセンブリ110およびスクリューアセンブリ1は、1本のロッド130によって相互に連結される。ロッド130は円柱形状を有している。左側に位置するスクリューアセンブリ110およびスクリューアセンブリ1は、別の1本のロッド130によって相互に連結される。
各スクリューアセンブリ110はスクリュー111と結合部材112と締結部材113とを含んでいる。結合部材112は筒状形状を有しており、その内部にスクリュー111のヘッドが配置される。スクリュー111は結合部材112から外側に延在しており、腰椎210に埋入される。スクリュー111のヘッドは結合部材112に対して回転可能である。よって、スクリュー111を腰椎210に埋入した状態で、結合部材112の姿勢を調整することができる。
結合部材112はロッド130の長手方向の一部を挿入可能であり、挿入状態でロッド130の長手方向の当該一部を横から挟む。結合部材112の姿勢は、スクリュー111を腰椎210に埋入した状態で、ロッド130を挿入できるように調整される。締結部材113は例えばボルトであり、結合部材112に締結される。この締結により、ロッド130が結合部材112内で固定される。
スクリューアセンブリ1も、スクリューアセンブリ110と同様に、スクリュー2と結合部材3と締結部材7とを含んでいる。結合部材3は筒状形状を有しており、その内部にスクリュー2のヘッド22が回転可能に配置される。スクリュー2は結合部材3から外側に延在している。スクリュー2は仙骨220および腸骨230に埋入される。以下では、仙骨220および腸骨230を纏めて対象骨とも呼ぶ。スクリュー2のヘッド22は結合部材3に対して回転可能であるので、スクリュー2が対象骨に埋入された状態で、結合部材3の姿勢を調整することができる。
結合部材3はロッド130の長手方向の一部を挿入可能であり、挿入状態においてロッド130の長手方向の当該一部を横から挟む。結合部材3の姿勢は、スクリュー2が対象骨に埋入された状態で、結合部材3にロッド130が挿入できるように調整される。締結部材7は例えばボルトであり、結合部材3に締結されてロッド130を固定する。
このようなインプラント100において、スクリューアセンブリ110は腰椎210に埋入されており、スクリューアセンブリ1は仙骨220および腸骨230に埋入されている。そして、スクリューアセンブリ110およびスクリューアセンブリ1はロッド130によって相互に連結される。よって、腰椎210、仙骨220および腸骨230を相互に固定することができる。
ところで、腸骨230は仙骨220に対して横方向に位置しているので、スクリュー2は横方向に延在する。例えば、右側に位置するスクリューアセンブリ1のスクリュー2は右側に延在し、左側に位置するスクリューアセンブリ1のスクリュー2は左側に延在する。つまり、スクリュー2の結合部材3に対する回転範囲は、スクリューアセンブリ110とは異なって、等方的である必要がなく、結合部材3に対して片側に広ければよい。
以下、このようなスクリューアセンブリ1の一例について詳述する。図2は、スクリューアセンブリ1の構成の一例を概略的に示す断面図であり、図3は、スクリューアセンブリ1の構成の一例を概略的に示す分解断面図であり、図4は、スクリューアセンブリ1の構成の一例を概略的に示す分解斜視図である。
スクリューアセンブリ1は内固定部材の一例たるスクリュー2と結合部材3と締結部材7とを含んでいる。スクリュー2は対象骨に埋入される部材である。結合部材3はスクリュー2とロッド130とを結合する部材であり、インナー部材4およびアウター部材5を含む。スクリューアセンブリ1は、スクリュー2、インナー部材4、アウター部材5および締結部材7を部品として含んでおり、これらを組み立てることで構成される。これらの組立前の状態をスクリューセット1A(内固定部材セット)とも呼ぶ。図3および図4では、これらが分離されているので、スクリューセット1Aを示している、と把握することもできる。以下では、まず各構成を概説した後に詳述する。
スクリュー2は、内固定部材本体の一例たるスクリュー本体21と、ヘッド22とを含んでいる。スクリュー本体21は長尺状の形状を有している。スクリュー本体21は先端側から対象骨に埋入される。ヘッド22は略球形状を有しており、スクリュー本体21の他の一端(基端ともいう)に連結されている。
アウター部材5は、第1開口5aおよび第2開口5bを有する略筒状形状を有している。具体的には、アウター部材5は仮想中心軸Q1を中心とした略円筒形状を有している。このアウター部材5はスクリュー2のヘッド22を回転可能に保持する。アウター部材5の内周面には、ヘッド22の仮想球面B1に沿う球状凹面51cが形成されており、ヘッド22はこの球状凹面51cに嵌まる。ヘッド22は後述のように締結部材7によってアウター部材5の内部で固定されるものの、少なくとも締結前においては、ヘッド22はアウター部材5の内部で回転可能である。なお、アウター部材5の材料としては、高強度のコバルトクロム合金を用いることができる。
以下では、各構成の位置関係を説明すべく、第2開口5b側を下側と呼び、第1開口5a側を上側と呼ぶ。ここでいう上側および下側は鉛直方向とは関係がなく、アウター部材5の形状に対して設定される。また、以下では、第2開口5bを下側開口5bとも呼び、第1開口5aを上側開口5aとも呼ぶ。
スクリュー2のスクリュー本体21はアウター部材5よりも下側においてヘッド22からアウター部材5の外側を延在している。ヘッド22がアウター部材5に対して回転可能であるので、スクリュー2はヘッド22を中心として結合部材3に対して振り運動することが可能である。ここでいう振り運動とは、ヘッド22を中心としてスクリュー本体21の先端が仮想球面に沿って移動することをいう。つまり、スクリュー本体21のアウター部材5に対する傾斜角は可変である。
インナー部材4はアウター部材5の内部に収納されており、ヘッド22よりも上側に位置している。インナー部材4は後述のように締結部材7によってヘッド22を下側に押圧する。この押圧により、ヘッド22はインナー部材4および球状凹面51cの下側部分によって挟持される。これにより、ヘッド22の回転位置が固定される。また、インナー部材4はヘッド22の干渉部26(後述)と当接してヘッド22の回転範囲を制限する。この点は後に詳述する。
アウター部材5の内部には、その上側開口5aから、ロッド130の長手方向の一部が挿入される。締結部材7はアウター部材5の上側開口5aに挿入される。締結部材7は例えば六角穴つきボルトなどのボルトであって、アウター部材5の上端部の内周面に螺合する。締結部材7の先端はロッド130に当接してロッド130を下側に押圧する。この押圧により、ロッド130はインナー部材4を下側に押圧し、インナー部材4がヘッド22を下側に押圧する。これにより、ロッド130およびヘッド22がアウター部材5の内部で固定される。
以下、上述の各構成の一例について、より詳しく説明する。
図示の例では、スクリュー本体21は、仮想中心軸Q3を中心とした略円柱形状を有しており、その外周面にねじ山(不図示)が形成される。ねじ山は、スクリュー本体21の先端から他の一端に向かって螺旋状に形成される。このスクリュー本体21は上述のように対象骨に埋入される。仙骨220および腸骨230に埋入されるスクリュー2は、S2AIスクリューとも呼ばれる。スクリュー本体21は、スクリュー2の軸部とも呼ばれる。
ヘッド22はスクリュー本体21の一端に連結されている。スクリュー本体21およびヘッド22は同一材料で互いに一体に構成されてもよい。ヘッド22は略球形状を有している。ヘッド22は仮想中心軸Q3上に位置しており、より具体的な一例として、ヘッド22の中心が仮想中心軸Q3の上に位置するとよい。
図3を参照して、ヘッド22は一対の部分球面部23,24と平坦帯部25と干渉部26とを含んでいる。一対の部分球面部23,24は仮想球面B1に沿う形状を有している。図示の例では、仮想球面B1の直径はスクリュー本体21の直径よりも大きい。部分球面部23はスクリュー本体21の一端に連結されている。
平坦帯部25は、ヘッド22の大円の全周に沿って形成された帯状の平坦面である。ここでいう大円とは、仮想球面B1がその中心を通る平面と交わる円である。平坦帯部25は、仮想球面B1の中心を通る仮想中心軸Q4を中心とした略円柱形状を有している。図示の例では、仮想中心軸Q4は仮想中心軸Q3に対して交差している。つまり、平坦帯部25は、スクリュー本体21が延在する仮想中心軸Q3に対して傾斜している。平坦帯部25は部分球面部23,24の間に位置しており、これらに連結されている。平坦帯部25の直径は、部分球面部23,24が沿う仮想球面B1の直径よりも小さい。この平坦帯部25は後に説明するように、ヘッド22をアウター部材5の下側開口5bから内部に挿入する際に利用される。
干渉部26は、部分球面部23,24が沿う仮想球面B1から逸脱した形状を有している。図示の例では、干渉部26は部分球面部24から径方向外側に突出している。図示の例では、干渉部26は仮想球面B1よりも径方向外側に突出している。図示の例では、干渉部26はスクリュー本体21とは反対側のヘッド22の端部に位置しており、仮想中心軸Q3に沿って、スクリュー本体21とは反対側に突出している。
干渉部26の頭頂面の外周縁は略円形状を有する(図4も参照)。具体的な一例として、干渉部26は、仮想中心軸Q3を中心とした略円柱形状を有する。この干渉部26は、アウター部材5の内部においてインナー部材4の内周面41a(より具体的には、後述の干渉面41c)と当接し、ヘッド22の結合部材3に対する回転範囲を制限する。この点は後に詳述する。
図4の例では、干渉部26は、仮想中心軸Q3のまわりでスクリュー2を回転させるための工具(不図示)と嵌合可能な形状を有している。より具体的な一例として、干渉部26の頭部面には、嵌合穴27が形成されている。嵌合穴27は、仮想中心軸Q3に沿って見て、工具の断面に応じた形状を有しており、図4の例では、滑らかな星形形状を有している。図4では、嵌合穴27の頂点は6つであるものの、その個数は適宜変更し得る。嵌合穴27には、これと略同形状の断面を有する工具が挿入される。医療従事者は当該工具を用いてスクリュー2を仮想中心軸Q3のまわりで回転させることにより、スクリュー2を対象骨に埋入することができる。なお、嵌合穴27は、星形形状に限らず、すりわり、十字穴、H型、六角穴、四角穴などの他の形状を有していてもよい。
アウター部材5は、仮想中心軸Q1を中心とした略筒状形状を有している。より具体的な一例として、アウター部材5は筒状部材51と一対の側壁52とを含んでいる。筒状部材51は筒状形状を有しており、図示の例では、仮想中心軸Q1を中心とした略円筒形状を有している。
図示の例では、筒状部材51の内周面51aは円柱面51b、球状凹面51cおよび円柱面51dによって形成される。円柱面51b、球状凹面51cおよび円柱面51dは上側から下側に向かってこの順で位置しており、互いに連続する。円柱面51dの下端周縁はアウター部材5の下側開口5bを形成する。
円柱面51bは、仮想中心軸Q1を中心とした略円柱形状を有している。この円柱面51bの直径は、ヘッド22の部分球面部23,24が沿う仮想球面B1の直径よりも小さい。
球状凹面51cは、筒状部材51の内周面51aの全周に亘って形成された凹形状を有している。球状凹面51cの凹形状は仮想球面B1に沿う形状を有しており、その直径は仮想球面B1の直径と同一、または、仮想球面B1の直径よりも若干大きい。仮想中心軸Q1は例えば球状凹面51cの中心を通る。球状凹面51cの上端周縁は円柱面51bの下端周縁と連続する。
円柱面51dは、仮想中心軸Q2(図3参照)を中心とした略円柱形状を有している。図示の例では、仮想中心軸Q2は仮想中心軸Q1と交差している。円柱面51dの直径は仮想球面B1の直径よりも小さく、ヘッド22の平坦帯部25の直径と同一、または、平坦帯部25の直径よりも若干大きい。円柱面51dの上端周縁は球状凹面51cの下端周縁と連続する。円柱面51dの上端周縁および球状凹面51cの下端周縁は、仮想中心軸Q1に対して傾斜している。円柱面51dの下端周縁はアウター部材5の下側開口5bを形成する。図示の例では、円柱面51dの下端周縁は、仮想中心軸Q1に対して略直交する面上に位置している。つまり、円柱面51dの上端周縁および下端周縁は互いに傾斜しており、その幅(つまり、仮想中心軸Q2に沿う長さ)は周方向の位置に応じて相違する。図3で言えば、円柱面51dの幅は左側において狭く、右側において広い。この技術的な意義については後に述べる。
スクリュー2のヘッド22は後に詳述するように、アウター部材5の下側開口5bを介してアウター部材5の内部へと挿入されて、球状凹面51cに回転可能に嵌まる。
筒状部材51の上端部には、一対の側壁52が立設されている。一対の側壁52および筒状部材51は同じ材料で互いに一体に構成されてもよい。一対の側壁52は仮想中心軸Q1に対して互いに反対側に位置し、仮想中心軸Q1に沿って上側に延在する。一対の側壁52の互いに向かい合う内周面52aは、仮想中心軸Q1を中心とした仮想円柱面に沿った湾曲形状を有しており、当該内周面52aには、不図示のねじ溝が形成される。一対の側壁52は間隔を空けて互いに対向するので、一対の側壁52の間の空間は上側に開口しつつ、仮想中心軸Q1に交差する交差方向にアウター部材5を貫通する。
ロッド130は、その長手方向が交差方向に沿う姿勢で、一対の側壁52の内部に挿入される。このとき、ロッド130の長手方向の一部が一対の側壁52の間に挿入され、その他の部分がアウター部材5の両側から突出する。
一対の側壁52の仮想中心軸Q1に沿う長さはロッド130の直径よりも長い。したがって、ロッド130が一対の側壁52の間に挿入された状態で、一対の側壁52はロッド130よりも上側に突出している。
締結部材7は例えばボルトであって、一対の側壁52の内周面52aに螺合する。締結部材7の先端はロッド130に当接し、ロッド130を下側に押圧する。これにより、ロッド130が結合部材3に結合される。
インナー部材4はアウター部材5の内部において、ロッド130とスクリュー2のヘッド22との間に位置している。インナー部材4は、締結部材7が取り付けられていない状態で、仮想中心軸Q1に沿って移動可能である。つまり、この状態では、インナー部材4は、ヘッド22から離れた第1位置(以下、上位置と呼ぶ)と、当該上位置よりも下側開口5b側の第2位置(以下、下位置と呼ぶ)との間で移動可能である。インナー部材4は下位置においてヘッド22に当接してもよい。この場合、締結部材7が取り付けられることにより、インナー部材4はロッド130によって下側に押圧される。これにより、インナー部材4は下位置に移動してヘッド22に当接し、ヘッド22を下側に押圧する。ヘッド22はアウター部材5の球状凹面51cの下側部分と、インナー部材4とによって挟持される。
図示の例では、インナー部材4は下部材41と一対の側壁42とを含んでいる。下部材41は少なくとも下側に開口する形状を有している。図示の例では、インナー部材4には、下部材41を仮想中心軸Q1に沿って貫通する内部空間が形成されている。この内部空間は下部材41の上側にも開口し、下側にも開口する。この内部空間は、下部材41の内周面41aによって形成される。図示の例では、内周面41aは部分球面41bと干渉面41cと天面41dとによって形成される。
図5は、インナー部材4の構成の一例を示す斜視図であり、図6から図9は、インナー部材4の下部材41の切断面を概略的に示す図である。図5では、インナー部材4を仮想断面A1で切断して得られる2つの部分の一方が示されている。仮想断面A1は、仮想中心軸Q1を含む面である。図6から図9は、仮想中心軸Q1に垂直な断面を下側から上側に順に示している。具体的には、図6から図9は、それぞれ、図5に示すI-I線、II-II線、III-III線およびIV-IV線に沿った仮想的な切断面を概略的に示している。つまり、図6は、最も下側の位置における下部材41の断面を示し、図9は、最も上側の位置における下部材41の断面を示している。
部分球面41bは、ヘッド22の仮想球面B1に沿う湾曲形状を有しており、ヘッド22に当接する。部分球面41bはヘッド22に対して上側から当接するので、部分球面41bはインナー部材4の下面であると把握することもできる。図示の例では、部分球面41bは仮想断面A1に対して略対称となる形状を有している。仮想断面A1は仮想中心軸Q1を含む面であり、図6から図8では二点鎖線で示されている。図6から図8を参照して、部分球面41bは各断面においてインナー部材4の周方向の一部のみに形成されており、部分球面41bの周方向の長さは上側に向かうにつれて短くなっている。また、部分球面41bは上側に向かうにつれて、仮想中心軸Q1に近づく。
図5を参照して、干渉面41cは部分球面41bの上端縁部から上側に延在している。図2および図3も参照して、この干渉面41cは、ヘッド22の干渉部26が移動する移動空間H1を形成する。ヘッド22を中心としてスクリュー2を結合部材3に対して振り運動させると、干渉部26はこの移動空間H1内において、ヘッド22の中心のまわりで移動する。干渉部26が干渉面41cに当接することにより、それ以上のヘッド22の回転が規制される。つまり、干渉面41cはヘッド22の回転範囲を制限する。
図示の例では、干渉面41cも仮想断面A1に対して略対称の形状を有しており、円弧柱面41caおよび円弧柱面41cbによって構成される。円弧柱面41caは、仮想中心軸Q5を中心とした円柱面に沿った形状を有している。ただし、円弧柱面41caはインナー部材4の周方向の一部のみに形成されている。図6から図8に例示するように、部分球面41bを通る断面では、円弧柱面41caの周方向の両端は、それぞれ部分球面41bの周方向の両端と連続しており、当該断面において、円弧柱面41caおよび部分球面41bは全体として環状形状を形成する。仮想中心軸Q5は仮想断面A1上に位置して仮想中心軸Q1からずれた軸であり、仮想中心軸Q1と略平行である。
円弧柱面41cbは部分球面41bよりも上側に位置している。円弧柱面41cbは、仮想中心軸Q1を中心とした円柱面に沿った形状を有している。ただし、円弧柱面41cbはインナー部材4の周方向に一部のみに形成されている。図9に例示するように、部分球面41bよりも上側の断面では、円弧柱面41cbの周方向の両端はそれぞれ円弧柱面41caの周方向の両端と連続しており、当該断面において円弧柱面41caおよび円弧柱面41cbは全体として環状形状を形成する。
円弧柱面41caの上端周縁は、天面41dの外周縁に連結されている。天面41dは仮想中心軸Q1に沿って見て、三日月状の形状を有している(図5も参照)。天面41dの内周縁は、後述の側壁42の内周面の下端周縁と連続しており、円弧柱面41cbの上端周縁も側壁42の内周面の下端周縁と連続する。
下部材41の上端部には、一対の側壁42が立設されている。一対の側壁42および下部材41は同じ材料で互いに一体に構成されてもよい。一対の側壁42は、アウター部材5の一対の側壁52が対向する方向において、互いに向かい合って配置される。図示の例では、側壁42の向かい合う方向は、仮想断面A1に含まれる。
インナー部材4がアウター部材5の内部に位置する状態で、一対の側壁42はそれぞれアウター部材5の一対の側壁52の間に位置している。一対の側壁42の間にはロッド130が挿入される。このとき、ロッド130の長手方向の一部が一対の側壁42の間に挿入され、他の部分はインナー部材4の両側から突出する。一対の側壁42の上端は、ロッド130が挿入された状態で、ロッド130の上端よりも下側に位置している。
図示の例では、一対の側壁42は、下部材41の上端面の外周縁よりも内側に立設されているので、一対の側壁42の外周面と下部材41の上端面とは段差43を形成する。一方、アウター部材5において、一対の側壁52の内周面52aは、筒状部材51の内周面51aよりも内側に位置しており、内周面51a,52aはストッパー面53aを介して互いに連結される。
これによれば、アウター部材5の内部においてインナー部材4を上側に移動させると、下部材41の上端面の外周縁がアウター部材5のストッパー面53aに当接する。よって、インナー部材4がアウター部材5の上側開口5aから抜けることを回避できる。
図示の例では、スクリューアセンブリ1はC字状部材6も含んでいる。C字状部材6はC字形状を有している。つまり、C字状部材6は、リング形状をその周方向の一部で切断して得られた形状を有している。C字状部材6の内周面は、ヘッド22の平坦帯部25に沿う平坦な円柱形状を有し、外周面は、ヘッド22の仮想球面B1に沿う湾曲形状を有している。C字状部材6の幅はヘッド22の平坦帯部25の幅と略等しい。C字状部材6の内径は平坦帯部25の直径と略同一、または、平坦帯部25の直径よりも若干小さい。
C字状部材6は弾性変形可能である。C字状部材6は、その内周面がヘッド22の平坦帯部25と向かい合うように、ヘッド22の平坦帯部25に取り付けられる。これによって、ヘッド22およびC字状部材6からなる構造体を、より球形状に近づけることができる。
次に、このスクリューアセンブリ1の組立方法について説明する。図10は、スクリューアセンブリ1を組み立てる途中の様子の一例を概略的に示す図である。
まず、医療従事者はインナー部材4をアウター部材5の内部に挿入する。具体的には、インナー部材4をアウター部材5の下側開口5bを通って内部に挿入する。この状態では、インナー部材4はアウター部材5に固定されておらず、仮想中心軸Q1に沿って移動可能である。図10の例では、インナー部材4が上位置に位置する状態を示している。
図10に例示するように、円柱面51dの幅(仮想中心軸Q2に沿う幅)は周方向において相違している。図10で言えば、右側に向かうほど円柱面51dの幅は増加する。一方で、インナー部材4の部分球面41bの長さL1(仮想中心軸Q1を含む断面における長さ:図5も参照)も、周方向において相違している。図10で言えば、右側に向かうほど部分球面41bの長さL1は増加する。言い換えれば、医療従事者は、部分球面41bのうち長さL1の長い部分が、円柱面51dのうち幅の広い部分に近くなる姿勢で、インナー部材4をアウター部材5の内部に挿入する。
次に、医療従事者はC字状部材6をアウター部材5の内部に挿入する。具体的には、医療従事者はC字状部材6の両端が互いに近づくようにC字状部材6を弾性変形させる。これにより、C字状部材6の外径をアウター部材5の下側開口5bの直径よりも小さくすることができる。医療従事者は、この縮径させたC字状部材6をアウター部材5の下側開口5bを通って内部に挿入し、球状凹面51cに嵌める。このとき、医療従事者は、C字状部材6の内周面がアウター部材5の円柱面51dと平行となるように、C字状部材6を球状凹面51cに嵌める。これにより、C字状部材6の内周面および円柱面51dが連続した一つの円柱面を構成する。
次に、医療従事者はスクリュー2のヘッド22をアウター部材5の内部に挿入する。具体的には、まず、医療従事者は、ヘッド22の平坦帯部25がアウター部材5の下側開口5bの周縁に沿うようにスクリュー2をアウター部材5に対して傾斜させる。言い換えれば、医療従事者は、平坦帯部25の仮想中心軸Q4がアウター部材5の円柱面51dの仮想中心軸Q2と略一致するように、スクリュー2を傾斜させる。また、医療従事者は、干渉部26がインナー部材4の部分球面41bと向かい合うように、スクリュー2の傾斜姿勢を調整する。図10の例では、干渉部26は、部分球面41bのうち長さL1の長い部分と向かい合っている。図10で言えば、干渉部26が仮想中心軸Q1に対して右側に位置し、スクリュー本体21が左下に延在するように、スクリュー2を傾斜させる。
平坦帯部25の直径は円柱面51dの直径以下であるので、この状態で、スクリュー2のヘッド22を、下側開口5bを介してアウター部材5に対して抜き差しすることができる。以下では、この状態でのヘッド22のアウター部材5に対する回転位置を基準回転位置と呼ぶ。
そして、医療従事者はこの基準回転位置を維持しつつ、ヘッド22をアウター部材5の下側開口5bから内部に挿入する。これにより、C字状部材6がヘッド22の平坦帯部25に取り付けられ、以後、C字状部材6がヘッド22と一体に回転する。
図11は、スクリューアセンブリ1を組み立てる途中の様子の一例を概略的に示す断面図である。図11においては、スクリュー2のヘッド22がアウター部材5の内部に位置しており、その回転位置は基準回転位置である。この状態でも、インナー部材4は上位置に位置している。インナー部材4が上位置に位置するときには、インナー部材4はヘッド22の回転を規制しない。
以下では、基準回転位置でヘッド22の干渉部26が占めるアウター部材5の内部の空間を所定空間H2と呼ぶ。インナー部材4が上位置に位置するときには、インナー部材4はこの所定空間H2よりも上側に位置している。
図12は、ヘッド22が結合部材3に対して回転する様子の一例を概略的に示す図である。図12では、インナー部材4が上位置に位置している。この状態では、スクリュー2のスクリュー本体21がアウター部材5の下端に当接する、または、ヘッド22の干渉部26がアウター部材5の円柱面51bに当接することで、ヘッド22の結合部材3に対する回転範囲が規定される。図12では、ヘッド22の回転範囲を回転範囲R1で示している。このヘッド22の回転範囲は、アウター部材5に対するスクリュー本体21の傾斜角の角度範囲を示している。
円柱面51bは、仮想中心軸Q1を中心とした円柱形状を有しており、アウター部材5の下端もほとんど仮想中心軸Q1を中心とした円形状を有するので、回転範囲R1は仮想中心軸Q1を中心としてほとんど等方的に設定される。
次に、医療従事者は、ヘッド22の干渉部26が所定空間H2から退避するように、ヘッド22を中心としてスクリュー2をアウター部材5に対して変位させる。言い換えれば、医療従事者は干渉部26が仮想中心軸Q1に平行な方向においてインナー部材4の部分球面41bと対向しない回転位置まで、スクリュー2を変位させる。図13は、スクリューアセンブリ1を組み立てる途中の様子の一例を概略的に示す断面図である。図13の例では、ヘッド22の干渉部26はインナー部材4の部分球面41bと対向しない。言い換えれば、ヘッド22の干渉部26は移動空間H1内に位置している。図13の例では、仮想中心軸Q1,Q3が互いに一致する状態を示しているものの、必ずしもこれに限らない。要するに、干渉部26がインナー部材4の部分球面41bと対向しない位置に、干渉部26を移動させればよい。
次に、医療従事者は、インナー部材4を下側に移動させる。図14は、スクリューアセンブリ1を組み立てる途中の様子の一例を概略的に示す断面図である。図14の例では、インナー部材4が下位置に位置している。この状態では、インナー部材4の部分球面41bはスクリュー2の部分球面部23、部分球面部24およびC字状部材6の少なくともいずれかに当接する。また、インナー部材4の一部(干渉部411と呼ぶ)は所定空間H2内に位置する。干渉部411の下面は、部分球面41bのうち長さL1の長い部分である。インナー部材4の干渉部411は後に詳述するようにヘッド22の干渉部26と干渉可能である。
図15は、ヘッド22が結合部材3に対して回転する様子の一例を概略的に示す図である。図15では、インナー部材4が下位置に位置している。この状態では、スクリュー2の干渉部26はインナー部材4の干渉面41cによって囲まれた移動空間H1内に位置する。インナー部材4はヘッド22の回転範囲を制限することができる。具体的には、スクリュー2の干渉部26がインナー部材4の干渉面41cに当接することにより、ヘッド22の回転範囲が規定される。図15では、この状態でのヘッド22の回転範囲を回転範囲R2で示している。干渉部26は、アウター部材5の円柱面51bよりも内側に位置するインナー部材4の干渉面41cに当接するので、回転範囲R2は回転範囲R1よりも小さくなる。しかも、インナー部材4の干渉部411が所定空間H2内に位置しているので、干渉部26は所定空間H2に移動することできず、ヘッド22は基準回転位置に位置することができない。つまり、回転範囲R1には基準回転位置が含まれるのに対して、回転範囲R2には基準回転位置が含まれない。
したがって、インナー部材4が下位置に位置する状態では、ヘッド22の回転位置を基準回転位置にすることができず、スクリュー2をアウター部材5の内部から抜くことができない。
図15に例示するように、回転範囲R2は仮想中心軸Q1に対して偏って設定される。図15の例では、スクリュー本体21は仮想中心軸Q1に対して右側において、ヘッド22を中心に振り運動可能であるものの、その反対側にはあまり移動できない。しかしながら、図1に例示するインプラント100においては、例えば右側のスクリューアセンブリ1のスクリュー2は結合部材3に対して右側に延在できればよく、左側のスクリューアセンブリ1のスクリュー2は結合部材3に対して左側に延在できればよい。よって、ヘッド22の回転範囲R2が仮想中心軸Q1に対して偏っていても、スクリューアセンブリ1の利用に支障は生じない。図15において、仮想中心軸Q1を零度とし、反時計回り方向を正とすると、回転範囲R2の上限値は例えば35度程度である。
このスクリューアセンブリ1は次のようにして、人体の骨に埋入される。まず、医療従事者は、仮想中心軸Q3が仮想中心軸Q1に沿うように、ヘッド22を中心としてスクリュー2を結合部材3に対して変位させる(図14参照)。この状態では、干渉部26の頭部面がアウター部材5の上側開口5aから視認可能となる。次に、医療従事者は、不図示の工具をアウター部材5の上側開口5aに挿入し、干渉部26の頭頂面に形成された嵌合穴27に嵌合させる。そして、医療従事者は当該工具を回転させてスクリュー2を仮想中心軸Q1のまわりで回転させて、対象骨にスクリュー本体21を埋入させる。
次に、医療従事者は結合部材3の姿勢を調整する。具体的には、医療従事者はロッド130の挿入に適した回転位置に結合部材3をスクリュー2のヘッド22に対して回転させる。インナー部材4が下位置に位置する状態では、結合部材3をヘッド22に対して基準回転位置に移動させることはできない。よって、作業中に結合部材3がヘッド22から外れにくい。なお、重力がインナー部材4に対して下側に作用する場合には、インナー部材4は重力によって下位置に維持され得る。あるいは、インナー部材4とアウター部材5との間の摩擦力により、インナー部材4が下位置に維持されてもよい。あるいは、インナー部材4およびアウター部材5が仮係止構造を有してもよい。インナー部材4がアウター部材5に対して仮係止されることで、インナー部材4が下位置に維持されてもよい。
次に、医療従事者はロッド130をアウター部材5の上側開口5aから挿入し、所定の工具を用いて締結部材7をアウター部材5の内周面52aに螺合させる。これにより、締結部材7がロッド130、インナー部材4およびヘッド22を下側に押圧し、これらが一体的に締結される。
以上のようにして、スクリューアセンブリ1を対象骨に移植しつつ、ロッド130をスクリューアセンブリ1に結合することができる。
本スクリューアセンブリ1によれば、インナー部材4は、ヘッド22を押圧してアウター部材5とともにヘッド22を保持する機能と、スクリュー2の結合部材3に対する回転範囲を回転範囲R2に制限して、スクリュー2を抜けにくくする機能とを含む。よって、簡便な操作でスクリューアセンブリ1の各要素の分離を困難にすることができる。また、これらが別部材で構成される場合に比して、部品点数を低減することができ、管理を容易にできる。
また、上述の例では、インナー部材4には、仮想中心軸Q1に沿ってインナー部材4を貫通する中空部が形成されている。よって、医療従事者は、アウター部材5の内部にインナー部材4およびスクリュー2のヘッド22を配置した状態で、所定の工具を用いてスクリュー2を回転させることができる(図14参照)。したがって、この状態で、スクリュー2を対象骨に埋入することができる。
また、締結部材7の締結により、ロッド130を結合部材3に結合しつつ、インナー部材4を下側に押圧して下位置に位置させることができる。よって、当該締結により、インナー部材4の回転範囲の制限機能を発揮させつつ、インナー部材4およびヘッド22を固定することができる。なお、インナー部材4の下位置への移動は締結部材7の締結に限らず、種々の手法により、行ってもよい。
また、上述の例では、インナー部材4の部分球面41bがヘッド22およびC字状部材6に当接する。よって、ヘッド22およびC字状部材6からなる構造体とインナー部材4との接触面積を大きくすることができ、当該構造体の固定力を向上することができる。
また、上述の例では、ヘッド22が基準回転位置に位置する状態(図11参照)で、干渉部26はアウター部材5の内部空間のうち、その中央部よりも内周面51aに近い所定空間H2に位置している。より具体的には、基準回転位置において、干渉部26は仮想中心軸Q2と交差しない。言い換えれば、基準回転位置において、干渉部26は仮想中心軸からずれて位置している。移動空間H1は、アウター部材5の内部空間のうち、少なくともこの所定空間H2を含まない空間である。よって、所定空間H2が当該内部空間の中央部、つまり、仮想中心軸Q1側に位置すると、移動空間H1の体積が小さくなり、ひいては、回転範囲R2を狭くする。上述の例では、所定空間H2は仮想中心軸Q1と交差せず、当該空間の端に位置するので、移動空間H1を大きく設定することができ、回転範囲R2を広くすることができる。
また、上述の例では、ヘッド22の平坦帯部25は、スクリュー本体21が延在する仮想中心軸Q3に対して傾斜している(図10参照)。言い換えれば、平坦帯部25の仮想中心軸Q4は仮想中心軸Q3と交差している。よって、基準回転位置において、スクリュー本体21は、アウター部材5の円柱面51dの仮想中心軸Q2に対して傾斜した方向に沿って延在する。図12の例では、基準回転位置は、回転範囲R1の左側の端に略一致している。
上述のように、インナー部材4はヘッド22の回転範囲を、基準回転位置を含まない回転範囲R2に制限する(図15参照)。図12および図15から理解できるように、回転範囲R2の左側の端は回転範囲R1の左側の端(基準回転位置)よりも右側に位置している。これにより、回転範囲R2は回転範囲R1よりも狭くなる。
さて、平坦帯部25の仮想中心軸Q4をスクリュー本体21の仮想中心軸Q3と一致するように設定する場合も考えられる。図16は、スクリュー2の他の一例であるスクリュー2Aを結合部材3に挿入する様子の一例を概略的に示す図である。スクリュー2Aはスクリュー本体21のヘッド22に対する延在方向という点で、スクリュー2と相違する。スクリュー2Aでは、スクリュー本体21が延在する仮想中心軸Q3は平坦帯部25の仮想中心軸Q4と略一致する。この場合、基準回転位置において、スクリュー本体21はより仮想中心軸Q1に近い方向に延在する。
図17は、スクリュー2Aのヘッド22が結合部材3に対して回転する様子の一例を概略的に示す図である。図17の例では、干渉部26は所定空間H2から移動空間H1に退避され、インナー部材4が下位置に位置している。これにより、ヘッド22の回転範囲が回転範囲R2Aに制限される。図15および図17から理解できるように、回転範囲R2Aは回転範囲R2よりも狭い。逆に言えば、ヘッド22の平坦帯部25を、スクリュー本体21が延在する仮想中心軸Q3に対して傾斜させることにより、回転範囲R2を広く設定することができる。
また、上述の例では、インナー部材4の干渉面41cは仮想円柱面に沿う湾曲形状を有しており、ヘッド22の干渉部26の頭頂面の外周縁は円形状を有している。これによれば、干渉部26の外周縁を干渉面41cに当接したままヘッド22を回転させたときに、干渉部26は滑らかに干渉面41cに沿って滑ることができる。よって、医療従事者はヘッド22を中心としてスクリュー2をアウター部材5に対して滑らかに変位させることができる。
また、上述の例では、アウター部材5の円柱面51dの仮想中心軸Q2は、アウター部材5の仮想中心軸Q1に対して傾斜している。以下、この傾斜に起因する効果について述べる。
図18は、アウター部材5の他の一例であるアウター部材5Aの構成の一例を概略的に示す図である。アウター部材5Aにおいては、円柱面51dの仮想中心軸Q2はアウター部材5Aの仮想中心軸Q1と一致している。
図18の例では、干渉部26は移動空間H1と向かい合っているものの、スクリュー2の平坦帯部25の仮想中心軸Q4が円柱面51dの仮想中心軸Q2と一致しているので、この状態でスクリュー2のヘッド22をアウター部材5Aの下側開口5bから内部に挿入することができる。よって、図18の実線で示すヘッド22のアウター部材5Aに対する回転位置も基準回転位置である。しかしながら、図18の例では、干渉部26が移動空間H1と向かい合っている。よって、この状態でヘッド22をアウター部材5Aの内部に挿入すると、インナー部材4を下位置に移動させたとしても、ヘッド22の回転位置を図18の基準回転位置に位置することができる。つまり、インナー部材4は、適切にスクリュー2の回転範囲を制限できない。
もちろん、アウター部材5Aであっても、二点鎖線(仮想線)で示す姿勢でスクリュー2のヘッド22をアウター部材5Aの内部に挿入すればよい。つまり、干渉部26が所定空間H2と向かい合う姿勢で、ヘッド22をアウター部材5Aに挿入すればよい。そして、図14に例示するように、干渉部26が移動空間H1内に位置するようにヘッド22を中心としてスクリュー2を変位させ、図15に例示するように、インナー部材4を下位置に移動させれば、スクリュー2の回転範囲を、基準回転位置を含まない回転範囲R2に制限することができる。
しかしながら、アウター部材5Aでは、インナー部材4の回転範囲の制限機能を発揮できなくする図16の姿勢でも、スクリュー2のヘッド22をアウター部材5Aに挿入可能であるので、医療従事者は組み立てに失敗する可能性がある。つまり、アウター部材5Aを用いれば、作業性はさほど高くない。
これに対して、アウター部材5の円柱面51dの仮想中心軸Q2が、アウター部材5の仮想中心軸Q1に対して傾斜していると、干渉部26が移動空間H1に向かい合う姿勢ではヘッド22をアウター部材5の内部に挿入できない。図19は、スクリュー2のヘッド22をアウター部材5の内部に挿入する様子の一例を概略的に示す図である。図19の例では、スクリュー2の干渉部26は移動空間H1と向かい合っている。また、スクリュー2の平坦帯部25の仮想中心軸Q4は、アウター部材5の円柱面51dの仮想中心軸Q2と一致している。
この姿勢では、スクリュー本体21は、仮想中心軸Q1に対してアウター部材5の円柱面51dのうち幅(仮想中心軸Q2に沿う幅)の広い方に延在している。図19で言えば、スクリュー本体21は右下に延在している。よって、スクリュー本体21のうち平坦帯部25に最も近い部分211が、円柱面51dのうち幅の広い部分側(図19の右側)に位置する。しかも、スクリュー本体21と平坦帯部25との間の最小距離Δd(仮想中心軸Q2に沿う距離の最小値)は、円柱面51dの幅の最大値Wよりも小さい。
図20は、このスクリュー2をアウター部材5の内部に挿入する様子の一例を概略的に示す図である。ヘッド22をアウター部材5の下側開口5bから内部に挿入すると、図20に例示するように、適切な位置まで挿入する前に、スクリュー本体21の部分211がアウター部材5の下端に当接する。つまり、この姿勢では、ヘッド22をアウター部材5の内部に挿入できない。
医療従事者は、ヘッド22をアウター部材5へ挿入できるように、仮想中心軸Q2のまわりでヘッド22を回転させる。これにより、図10の姿勢で、ヘッド22がアウター部材5に挿入される。ヘッド22の挿入後には、上述のように、干渉部26が移動空間H1内に位置するように、ヘッド22を中心としてスクリュー2を変位させ、インナー部材4を下側に移動させる。これにより、ヘッド22の回転範囲が、基準回転位置を含まない回転範囲R2に制限される。言い換えれば、スクリュー2のヘッド22をアウター部材5の下側開口5bから抜けにくくすることができる。
以上のように、アウター部材5によれば、インナー部材4の機能を発揮できない姿勢ではヘッド22をアウター部材5の内部に挿入できないので、医療従事者はスクリューアセンブリ1を組み立てやすく、作業性を向上することができる。
また、上述の例では、スクリューアセンブリ1はC字状部材6を含んでいる。これにより、ヘッド22およびC字状部材6からなる構造体を、より球形状に近づけることができる。よって、インナー部材4の部分球面41bと当該構造体との接触面積を向上することができ、ヘッド22の保持力を向上することができる。
以上のように、スクリューアセンブリ1は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない多数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
例えば、干渉部26の外周縁は必ずしも円形である必要はなく、楕円形状を有していてもよい。あるいは、干渉部26の外周縁が滑らかな星形形状を有していてもよい。この星形形状の各頂点は所定の仮想円の上に位置しているとよい。これによっても、干渉部26の外周縁をインナー部材4の干渉面41cの当接させたままで、滑らかにヘッド22を回転させることができる。この場合、干渉部26の外周縁と略同形状の断面を有するナットドライバを用いて、スクリュー2を仮想中心軸Q3のまわりで回転させることができる。
また、上述の例では、干渉部26はヘッド22の径方向外側に突出しているものの、必ずしもこれに限らない。要するに、インナー部材4が下位置に位置するときに、ヘッド22の干渉部26と当接して、ヘッド22の回転範囲を、基準回転位置を含まない回転範囲R2に制限できればよい。例えば、干渉部26はヘッド22の径方向内側に凹む凹部であってもよい。この場合、インナー部材4は、下位置に位置する状態で、当該凹部に遊挿入される干渉部を含んでいてもよい。当該干渉部は、インナー部材4が上位置に位置するときには、凹部よりも外側に位置しており、ヘッド22と当接しない。干渉部は例えば棒状の突起部である。干渉部が凹部に遊挿されると、ヘッド22は干渉部と凹部との間の隙間に応じた回転範囲で回転可能となる。つまり、干渉部が凹部の周縁に当接することにより、ヘッド22の回転範囲が回転範囲R2に制限される。
図23は、他の実施形態としてのスクリューアセンブリ1の構成の一例を概略的に示す断面図である。図23の例では、インナー部材4は下位置に位置しており、ヘッド22の基準回転位置への回転がインナー部材4と干渉部26との当接によって制限される。図23の例では、回転範囲R21のうち最も左側の位置が、インナー部材4と干渉部26との当接によって規定される。
図23の例では、スクリュー本体21はヘッド22を中心に回転することにより、アウター部材5の下端部の一部に当接可能である。具体的には、図23の例では、インナー部材4の円弧柱面41caの径がより大きく設定されている。よって、ヘッド22を図23の左側から右側に向かって回転させると、干渉部26がインナー部材4の円弧柱面41caに当接するよりも前に、スクリュー本体21がアウター部材5の下端部に当接する。つまり、本実施形態では、ヘッド22の回転範囲R21はスクリュー本体21とアウター部材5の下端部との当接によっても規定される。図23の例では、回転範囲R21のうち最も右側の位置が、アウター部材5の下端部とスクリュー本体21との当接によって規定されるが、この時インナー部材4と干渉部26は当接しない。
図24は、アウター部材5の下端部のうちスクリュー本体21と当接可能な部分51eの一例を模式的に示す図である。図24の例では、部分51eは円弧形状を有しており、部分51eが沿う平面は仮想中心軸Q1に略垂直である。スクリュー本体21は部分51eの円弧形状に沿った範囲内で、ヘッド22を中心として回転可能である。図24の例では、アウター部材5の部分51eは仮想中心軸Q1に対して略垂直であるが、必ずしもこれに限らない。
図25は、他の実施例としてのアウター部材5の部分51eの他の一例を模式的に示す図である。図25の例では、部分51eは、第1領域51fと、第2領域51gとを有する。第2領域51gは第1領域51fよりもアウター部材5の第1開口5aに近い。図25に即して言えば、第2領域51gは第1領域51fよりも上側に位置する。具体的な一例として、部分51eは、第1開口5a側に凹んだ凹部51iを有し、凹部51iが第2領域51gに相当し、部分51eのうち凹部51iよりも両側の部分が第1領域51fに相当する。
このような構成によれば、アウター部材5の部分51eが規制するスクリュー本体21の回転範囲を、その一部において大きくすることができる。図25の例に即して言えば、第2領域51gにおいてスクリュー本体21の回転範囲を広げることができる。言い換えれば、スクリュー本体21が第2領域51gに当接するときのスクリュー本体21の仮想中心軸Q3と仮想中心軸Q1との間の角度θを、スクリュー本体21が第1領域51fに当接するときの角度θよりも大きくすることができる。
図26は、他の実施例としてのアウター部材5の構成の一例を概略的に示す図である。図26に例示するように、部分51eは、アウター部材5の仮想中心軸Q1に垂直な面に対して、傾斜していても良い。より具体的には、部分51eは所定の仮想平面上に沿っており、当該仮想平面が仮想中心軸Q1に垂直な面に対して傾斜していてもよい。図26の例では、部分51eは楕円の一部に沿う形状を有し、その両端から離れるにしたがって、第1開口5a側(図26では仮想中心軸Q1に沿う上側)に向かうように傾斜している。このような構成によると、アウター部材5の下端部が規制するスクリュー本体21の回転範囲の上限を片側において大きくすることができる。図26に即して言えば、スクリュー本体21の回転範囲の上限を右側において大きくすることができる。仮想中心軸Q1に垂直な面に対する仮想平面の傾斜角度は、例えば1~20°である。
なお、部分51eが仮想中心軸Q1に垂直な面に対して傾斜している場合(図26)、部分51eは当然に第1領域51fおよび第2領域51gを有する。例えば、第1領域51fを部分51eの両端部分とみれば、その両端部分の間の部分を第2領域51gとみることができる。
また、アウター部材5はインナー部材4に対して外側に位置するという点で、「アウター」部材と呼ばれているものの、アウター部材5よりも外側に別の部材が配置されても構わない。
また、上述の例では、内固定部材本体が、図21に示すようなスクリュー本体21である例について説明したが、必ずしもこれに限らない。内固定部材本体は生体の骨に設置固定されればよく、その形状は適宜に変更可能である。例えば、内固定部材本体は、図22に示すような生体の骨に係合するフック21Aであっても良い。フック21Aは湾曲した爪形状を有しており、フック21Aが当該骨の外周面に係合する。または、内固定部材本体は、生体の骨に圧入または打ち込まれるピンであっても良い。ピンは例えば先端が尖った棒状形状を有している。ピンはその先端から骨に圧入または打ち込まれる。なお、図2では、スクリュー本体21のねじ山が図示されていないので、内固定部材本体がピンである内固定部材の形状は、図2においてスクリュー2として図示された形状と同様の形状を有している。ただし、この内固定部材においては、ヘッド22は嵌合穴27を有していなくてもよい。
また、上述の例では、内固定部材本体は人体の内部に移植されているものの、必ずしもこれに限らず、人以外の動物に移植してもよい。