JP7282009B2 - 溶接装置、および接合部材の製造方法 - Google Patents
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例えば特許文献1には、金属からなる複数枚の板の積層体である被接合物と当接する一方の電極と、被接合物を挟んで一方の電極と対向する他方の電極と、両電極のうち少なくとも一方を加圧し、被接合物を両電極によって挟持させる加圧機構と、両電極に電流を供給する溶接電源とを備えた溶接装置において、各電極を、モリブデン、タングステン、鉄、ニッケル、チタンのうち少なくとも1つの元素を含む金属または合金で構成することが開示されている。
また、例えば特許文献2には、電極を介して被接合部材に電流を流し、この電流によって発生する抵抗熱によって被接合部材を接合する抵抗溶接方法であって、電気抵抗値が前記被接合部材よりも高く、かつ、融点が前記被接合部材の沸点よりも高い抵抗部材を、前記被接合部材と前記電極との間に介在させることが開示されている。
また、ろう材を挟んだ2枚の金属板に対して加圧および通電を行うことで、ろう材を溶融および固化させることにより、2枚の金属板を接合するろう接と呼ばれる技術においても、ろう材を溶融および固化して得られる接合部に、接触抵抗等に起因する偏りが生じることがあった。
本発明は、ろう接における局所的な接合部の形成を抑制することを目的とする。
請求項2に記載された発明は、熱伝導率が、前記被接合部材<前記ろう材<前記電極<前記金属体であることを特徴とする請求項1記載の溶接装置である。
請求項3に記載された発明は、前記電極はカーボン単体を含有する材料で構成され、
前記金属体は、タングステンと銀、またはタングステンと銅の複合材料で構成されることを特徴とする請求項2記載の溶接装置である。
請求項4に記載された発明は、第1の被接合部材と第2の被接合部材とを有する被接合部材を、電気抵抗率が当該被接合部材よりも大きいろう材を用いて接合してなる接合部材の製造方法であって、前記ろう材よりも電気抵抗率の大きい電極である第1の電極と第2の電極とであって、当該第1の電極と前記第1の被接合部材とを対峙させおよび当該第2の電極と前記第2の被接合部材とを対峙させるに際して、前記被接合部材よりも電気抵抗率が小さい金属体からなる第1の金属体と第2の金属体とであって、前記第1の電極と前記第1の被接合部材との間に当該第1の金属体を、および前記第2の電極と前記第2の被接合部材との間に当該第2の金属体を配置し、前記ろう材が挟まれている前記被接合部材を前記第1の電極および前記第2の電極により押圧し、前記第1の金属体を当該第1の電極および前記第1の被接合部材に当接させ、および前記第2の金属体を当該第2の電極および前記第2の被接合部材に当接させ、前記第1の電極および前記第2の電極に電圧を印加することを特徴とする接合部材の製造方法である。
本実施の形態では、図示しない内燃機関のシリンダ内に、渦状に燃料を噴霧するために用いられる燃料噴霧オリフィスプレート100(後述する図2参照)を例とし、その製造方法および構成に関する説明を行う。なお、以下の説明で参照する図面における各部の大きさや厚さ等は、実際の寸法とは異なっている場合がある。
図1は、接合部材またはオリフィスプレートの一例としての燃料噴霧オリフィスプレート100の製造方法を示す図である。本実施の形態では、シート10と、シート10の片面にメッキによって形成されたろう材30と、ろう材が形成されていないシート20とを用いて、燃料噴霧オリフィスプレート100の製造を行っている。
準備工程220は、第1シート取得工程と、第2シート取得工程とを含んで構成される。第1シート取得工程では、導電性を有する金属の板材であるシート10に、メッキにて片面にろう材30が形成されたシートロール材Aを取得する。また、第2シート取得工程では、導電性を有する金属の板材であって、ろう材が形成されていないシート20のロール材であるシートロール材Bを取得する。
抜き工程230では、シート10とシート20とに各種の孔を形成する。片面にろう材30が形成されたシート10には金型231を用いて加工を施し、シート20には金型235を用いて加工を施している。この例では、抜き工程230で、シート10にスワール溝を含む各種の孔を形成しており、シート20には各種の孔を形成している。
重ね工程240では、抜き工程230にてそれぞれに各種の孔が形成されたシート10とシート20とが重ね合わされる。ここで、本実施の形態では、シート10とシート20とを重ね合わせる際、シート10の片面に設けられたろう材30を、シート20の一方の面に接触させるようにしている。換言すれば、重ね工程240では、シート10とシート20とによって、ろう材30を挟み込むようにしている。
接合工程250では、重ね工程240にてシート10とシート20とを重ね合わせてなる積層体が、第1の電極251aと第2の電極251bとによって上下から挟み込まれ、シート10とシート20とが、ろう材30を用いてろう接により接合される。なお、接合工程250の詳細については後述する。
噴霧孔形成工程260では、接合工程250で接合されたシート10およびシート20のうち、シート10に設けられたスワール溝を介して露出するシート20に、金型261を用いて複数の噴霧孔を形成する。
打ち抜き工程270では、シート10およびシート20を接合してなる帯状体に対し、金型271を用いて外形を打ち抜くプレス加工を施すことで、燃料噴霧オリフィスプレート100を作製する。なお、燃料噴霧オリフィスプレート100が打ち抜かれた帯状体(切断屑)は、再度ロール状に巻き取られ、その後廃棄される。
取り出し工程280では、以上のようにして製造された燃料噴霧オリフィスプレート100が取り出される。
図2(a)、(b)は、上述した製造方法により製造された燃料噴霧オリフィスプレート100の構成を説明するための図である。図2(a)は上面から燃料噴霧オリフィスプレート100を眺めた上面図、図2(b)は、図2(a)に示す上面図の断面BBを示した図である。なお、図2(a)、(b)には、上述した打ち抜き工程270における打ち抜きによって燃料噴霧オリフィスプレート100に形成される切断面101も、併せて示している。
次に、上述した接合工程250の詳細について説明を行う。ここでは、最初に、接合工程250で用いる溶接装置の構成について説明を行い、続いて、この溶接装置を用いた接合工程250におけるろう接の手順について説明を行う。
図3は、接合工程で用いられる溶接装置250aの構成を説明するための図である。
本実施の形態の溶接装置250aは、第1の電極251aと第2の電極251bとを有する電極を備えている。なお、図1に示したように、第1の電極251aは、重ね合わされたシート10およびシート20のうち、シート10に対峙して配置される。これに対し、第2の電極251bは、シート20に対峙して配置される。また、溶接装置250aには、第1の電極251aとシート10との間に設けられる第1の金属体252aと、第2の電極251bとシート20との間に設けられる第2の金属体252bとが用いられている。
第1の電極251aおよび第2の電極251bをそのままシート10およびシート20に接触させて、電流を流すと、シート10およびシート20に挟まれたろう材30のうち、接触抵抗の高い部分が局所的に高温になりやすい。そのために、ろう接させたい箇所の全体を均一に接合することが困難となる。そこで、本実施の形態では、第1の金属体252aを第1の電極251aとシート10との間に設け、かつ、第2の金属体252bを第2の電極251bとシート20との間に設け、第1の金属体252aおよび第2の金属体252bを熱の拡散体として機能させている。
そして、電気抵抗率および熱伝導率の比較結果から、第1の金属体252aおよび第2の金属体252bは、これらの中で最も電気抵抗率が小さく且つ最も熱伝導率が大きくなっていることがわかる。
図4は、溶接装置250aを用いたろう接の手順を説明するための図である。図4(a)は、図1と同様に側方から第1の電極251aおよび第2の電極251b等を眺めた図であり、図4(b)は上下方向(鉛直方向)の上方からシート10とシート20とを眺めた図である。
ここでは、通電に伴って生じる、第1の電極251aおよび第2の電極251bからろう材30へと至る熱の流れについて説明を行う。
次に、第1の金属体252aおよび第2の金属体252bは、第1の電極251aおよび第2の電極251bから受け取った熱を、シート10およびシート20に伝達する。また、第1の電極251aと第1の金属体252aとの境界および第2の電極251bと第2の金属体252bとの境界では、通電に伴い、両者の接触抵抗に起因する抵抗値によって発熱が生じ、第1の金属体252aおよび第2の金属体252bは、この境界で発生した熱をシート10およびシート20に伝達する。さらに、第1の金属体252aおよび第2の金属体252bは、通電に伴い、自身が有する抵抗値によって自己発熱し、自身が発生した熱をシート10およびシート20に伝達する。
本発明者は、接合工程250で用いる溶接装置250aとして、第1の金属体252aおよび第2の金属体252bを備えたものと、第1の金属体252aおよび第2の金属体252bを備えないものとを用意した。そして、それぞれの溶接装置250aを用いて、シート10とシート20とのろう接を行い、得られた接合部50の状態に関する評価を行った。なお、ここでは、第1の金属体252aおよび第2の金属体252bを備えた溶接装置250aによる製造を実施例と称し、第1の金属体252aおよび第2の金属体252bを備えない溶接装置250aによる製造を比較例と称する。
実施例では、第1の電極251aおよび第2の電極251bとして、炭素(C)を含むグラファイトを用いた。第1の電極251aおよび第2の電極251bの電気抵抗率は1.5~2.0×10-5(Ω・cm)、熱伝導率は100~250(W/m・K)、融点は3550以上(℃)であった。
比較例では、第1の金属体252aおよび第2の金属体252bを備えない溶接装置250aを用いた。すなわち、図3に示す溶接装置250aから、第1の金属体252aおよび第2の金属体252bを取り外したものを用いた。また、第1の電極251aおよび第2の電極251b、シート10およびシート20、そしてろう材30としては、実施例と同じものを用いた(表1参照)。
実施例および比較例の溶接装置250aでは、電源装置253による電源制御方式として、直流インバータ制御を採用した。ここで、電源装置253では、トランスとしてNT-IN8222Lを用いた。また、加圧機構254による加圧力としては、最初に積層体を挟み込んだ状態で0.75(N)の力をかけ、その後さらに3.75(N)の力を加えることにより、合計で4.5(N)の力を付与するようにした。さらに、通電時に供給する電流は1000~3000(A)とし、接合に要する時間、換言すれば、4.5(N)の力を付与しながら通電を行う時間は、5~10(sec)とした。なお、接合部50となるろう材30の温度は、非接触型の温度計を使用して監視を行うようにし、リミット温度を850(℃)に設定するとともに、測定温度がリミット温度を超えたら通電を停止させるようにした。
実施例および比較例のろう接後の積層体に対し、超音波探傷検査による評価を行った。より具体的に説明すると、ろう接後の各積層体に対し、超音波探傷検査装置を用いて撮影を行い、シート10とシート20との間に存在するために、外部からの確認が困難な接合部50の状態を観察した。
図6は、良好な接合部50の状態の他の例を示す図である。
図6に示す例においても、接合部50が、スワール溝13の周囲を切れ目なく囲っている。ただし、図6に示す例では、スワール溝13の形成部位と接合部50との形成部位との間に、例えばろう材30が溶融しなかったり、あるいは、溶融はしたものの固化した際にシート20と接触することができなかったりすることにより、接合部50にはなれなかった部位が存在している。
Claims (4)
- 第1の被接合部材と第2の被接合部材とを有する被接合部材をろう材により接合するための溶接装置であって、
電圧が印加され、前記第1の被接合部材に対峙する第1の電極と前記第2の被接合部材に対峙する第2の電極とを有する電極と、
前記第1の電極と前記第1の被接合部材との間に設けられる第1の金属体と、前記第2の電極と前記第2の被接合部材との間に設けられる第2の金属体と、を有する金属体と、
を有し、
電気抵抗率が、
前記金属体<前記被接合部材<前記ろう材<前記電極
であることを特徴とする溶接装置。 - 熱伝導率が、
前記被接合部材<前記ろう材<前記電極<前記金属体
であることを特徴とする請求項1記載の溶接装置。 - 前記電極はカーボン単体を含有する材料で構成され、
前記金属体は、タングステンと銀、またはタングステンと銅の複合材料で構成されること
を特徴とする請求項2記載の溶接装置。 - 第1の被接合部材と第2の被接合部材とを有する被接合部材を、電気抵抗率が当該被接合部材よりも大きいろう材を用いて接合してなる接合部材の製造方法であって、
前記ろう材よりも電気抵抗率の大きい電極である第1の電極と第2の電極とであって、当該第1の電極と前記第1の被接合部材とを対峙させおよび当該第2の電極と前記第2の被接合部材とを対峙させるに際して、
前記被接合部材よりも電気抵抗率が小さい金属体からなる第1の金属体と第2の金属体とであって、前記第1の電極と前記第1の被接合部材との間に当該第1の金属体を、および前記第2の電極と前記第2の被接合部材との間に当該第2の金属体を配置し、
前記ろう材が挟まれている前記被接合部材を前記第1の電極および前記第2の電極により押圧し、前記第1の金属体を当該第1の電極および前記第1の被接合部材に当接させ、および前記第2の金属体を当該第2の電極および前記第2の被接合部材に当接させ、
前記第1の電極および前記第2の電極に電圧を印加する
ことを特徴とする接合部材の製造方法。
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