(1)実施形態の概要
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
一態様に係る吸収性物品は、吸収コアと、前記吸収コアよりも肌面側に配置され、着用者の肌に当接するトップシートと、を有し、前記トップシートには、酸価が6.6mg/g以下であって、過酸化物価が30meq/mg以下のオリーブ油が配置されており、前記オリーブ油の少なくとも一部は、前記トップシートの肌対向面に設けられている。本態様によれば、劣化していないオリーブ油を肌に付着させることができるため、肌に対する悪影響を抑制しつつ、オリーブ油による効能を使用者に付与できる。
好ましい一態様によれば、前記オリーブ油は、前記トップシートの肌対向面と前記トップシートの非肌対向面のそれぞれに設けられてよい。本態様によれば、トップシートの肌対向面に配置されたオリーブ油によって、肌の水分を保持しつつ、トップシートの非肌対向面に配置されたオリーブ油によって、一旦吸収された体液が肌に移行することを抑制し、肌を清潔な状態で維持できる。
好ましい一態様によれば、トップシートには、前記トップシートの前記厚さ方向の全域に亘って前記オリーブ油が付されていない非配置領域を有してよい。非配置領域では、トップシートの厚さ方向の全域にわたってオリーブ油が配置されてなく、オリーブ油が配置された領域と比較して、体液の非肌面側への移行を促進できる。よって、体液の吸収コアへの移行性を維持できる。
好ましい一態様によれば、少なくとも前記トップシートを厚さ方向に圧縮したシート圧搾部を有し、前記オリーブ油の少なくとも一部は、前記シート圧搾部に設けられてよい。一般的に、シート圧搾部が形成される領域は、シート圧搾部の形成工程において加熱され、オリーブ油が変性し、狙った機能が十分に発揮されないおそれがある。しかし、本実施の形態のオリーブ油は、酸化が進んでいないオリーブ油であるため、熱が付与されても劣化の程度を抑え、狙った機能を発揮し続けることができる。
好ましい一態様によれば、トップシートを少なくとも厚さ方向に圧縮したシート圧搾部を有し、前記トップシートは、凸部と、前記凸部よりも厚さ方向に凹む凹部と、を有し、前記シート圧搾部の少なくとも一部は、前記凹部に設けられてよい。シート圧搾部の少なくとも一部は、前記凹部に形成されているため、仮にシート圧搾部におけるオリーブ油が酸化した場合であっても当該酸化したオリーブ油を肌から離して配置でき、酸化したオリーブ油による不具合を抑制できる。
好ましい一態様によれば、前記トップシートを少なくとも厚さ方向に圧縮したシート圧搾部を有し、前記トップシートは、凸部と、前記凸部よりも厚さ方向に凹む凹部と、を有し、前記オリーブ油は、前記凸部及び前記凹部のそれぞれに配置されてよい。凸部に配置されたオリーブ油は、肌に触れ易く、肌に対する効能を付与できる。一方、凹部に配置されたオリーブ油は、常に肌に触れ難い。肌に触れやすい部分と触れにくい部分にオリーブ油を配置することで、オリーブ油が一度に肌に移行せず、継続的に肌に移行しやすく、オリーブ油の効能を発揮し続け易い。
好ましい一態様によれば、前記トップシートの肌対向面のオリーブ油の坪量は、前記トップシートの非肌対向面のオリーブ油の坪量よりも高くてよい。トップシートの肌対向面のオリーブ油の坪量が高いため、着用者に対してオリーブ油の効能を付与できる。一方、トップシートの非肌対向面のオリーブ油の坪量が比較的低いため、オリーブ油が配置されていることに起因して接着剤が接合し難い等の不具合を抑制できる。
好ましい一態様によれば、前記トップシートの非肌対向面には、弾性部材が接合されてよい。内側領域のオリーブ油の密度が低いため、弾性部材のトップシートに対する接合状態を維持できる。また、弾性部材の収縮によってトップシートを着用者に密着させ、着用者に対してオリーブ油の効能を付与できる。
好ましい一態様によれば、前記オリーブ油の酸価は、2.0mg/g以下であってよい。本態様によれば、オリーブ油の劣化した臭いを抑制できる。好ましい一態様によれば、前記オリーブ油の過酸化物価は、20meq/mg以下であってよい。本態様によれば、オリーブ油の劣化した臭いを抑制できる。
(2)実施形態に係る吸収性物品
以下、図面を参照して、実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
本発明に係る吸収性物品は、着用者の体液を吸収できる吸収性物品である。着用対象は、乳幼児及び高齢者を例示できる。吸収性物品は、尿を吸収する使い捨ておむつ及び失禁パッドであってもよいし、経血を吸収する生理用ナプキンであってもよいし、おりものを吸収するおりものシートであってもよい。使い捨ておむつは、パンツ型おむつであってもよいし、テープ型おむつであってもよい。実施形態に係る吸収性物品は、テープ型の使い捨ておむつである。図1は、実施形態に係る吸収性物品1の展開状態の肌面側から見た模式平面図である。図2は、実施形態に係る吸収性物品1の展開状態の非肌面側から見た模式平面図である。図1及び図2に示す模式平面図は、吸収性物品1を皺が形成されない状態まで伸長させた伸長状態を示している。図3は、図1に示すA-A線に沿った模式断面図である。模式断面図において、説明の便宜上、各部材が厚さ方向Tにおいて離間していることがあるが、実際の製品においては厚さ方向Tに接している。
吸収性物品1は、互いに直交する前後方向L及び幅方向Wを有する。前後方向Lは、身体前側と身体後側とに延びる方向によって規定される。言い換えると、前後方向Lは、展開された吸収性物品1において前後に延びる方向である。また、吸収性物品1は、前後方向Lと幅方向Wの両方の直交する厚さ方向Tを有する。厚さ方向Tは、着用者側に向かう肌面側T1と、肌面側T1と反対側の非肌面側T2と、に延びる。吸収性物品1は、前胴回り域S1と、後胴回り域S2と、股下域S3と、を有する。前胴回り域S1は、着用対象の前胴回り(腹部)に対向する領域である。後胴回り域S2は、着用対象の後胴回り(背部)に対向する領域である。股下域S3は、着用対象の股下に位置し、前胴回り域S1と後胴回り域S2との間に配置された領域であり、脚回り開口部65が設けられて領域であってよい。脚回り開口部65は、使い捨ておむつの外側縁から幅方向の内側に凹む部分である。ここで、本発明における外側縁とは、幅方向Wにおける外側の縁であり、外側部とは、幅方向Wにおける外側の縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分である。また、内側縁とは、幅方向Wにおける内側の縁であり、内側部とは、幅方向Wにおける内側の縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分である。
吸収性物品1は、吸収材料を含む吸収コア31を含む。吸収コア31は、粉砕パルプもしくは高吸収性ポリマー(SAP)、又はこれらの混合物等の吸収材料を含む。吸収コア31は、図示しないコアラップによって覆われてよい。吸収コア31とコアラップによって吸収体が構成されてよい。コアラップは、ティッシュ又はSMS不織布によって構成され、吸収コア31の肌面側T1と吸収コア31の非肌面側T2に配置されてよい。図3に示すように、吸収性物品1は、吸収コア31よりも肌面側T1に位置する肌側シート20を有する。肌側シート20は、吸収コア31を覆い、かつ吸収性物品1の全体に亘って配置されている。本実施形態の肌側シート20は、トップシート21、セカンドシート23、及びコアラップを含む。トップシート21は、吸収コア31の幅方向Wの中心を跨いで配置されたセンターシート21Cと、トップシート21の外側部を覆うサイドシート21Sと、を有する。トップシート21は、例えば不織布や開孔プラスチックフィルムのような透液性シートによって構成されていてよい。
一対のサイドシート21Sのそれぞれは、防漏ギャザー60を構成してよい。サイドシート21Sの内側部は、折り返されて重なっており、重なったサイドシート21S間には、前後方向Lに伸縮する防漏弾性部材61が設けられてよい。防漏弾性部材61は、前後方向Lに伸縮する糸ゴムによって構成されてよい。防漏ギャザーは、防漏弾性部材61の収縮によって肌面側T1に起立し、吸収性物品1の幅方向の中心の側方において横漏れを防ぐ壁を形成する。
図4は、図1に示すB部分の拡大平面図である。図5は、図3に示すC部分の拡大断面図である。図4に示すように、吸収性物品1は、少なくともトップシート21を厚さ方向に圧縮したシート圧搾部28を有してよい。シート圧搾部28は、平面視にて間隔を空けて複数設けられてよい。本実施の形態のシート圧搾部28は、点状であり、前後方向Lに間隔を空けて配置されているとともに、幅方向Wに間隔を空けて配置されている。シート圧搾部28は、吸収性物品1の肌面側T1から視認可能に構成されてよい。また、図5に示すように、トップシート21は、凸部211と、凸部211よりも厚さ方向Tに凹む凹部212と、を有してよい。凸部211及び凹部212は、前後方向Lに延びており、幅方向Wに交互に配置されてよい。凸部211は、吸収材料の坪量が凹部212よりも高い部分であってもよいし、吸収材料の坪量が凹部212と同じであるが、密度が凹部212よりも低い部分であってもよい。本実施の形態では、トップシート21を構成するセンターシート21Cに、シート圧搾部28、凸部211及び凹部212が設けられており、サイドシート21Sに、シート圧搾部28、凸部211及び凹部212が設けられていない。
吸収性物品1は、吸収コア31よりも非肌面側T2に位置する非肌側シート25を有する。非肌側シート25は、吸収コア31を覆い、かつ使い捨ておむつの全体に亘って配置されている。本実施形態の非肌側シート25は、バックシート26と外装シート27を含む。バックシート26は、液不透過性のシートであり、ポリエチレンシート、ポリプロピレン等を主体としたラミネート不織布、通気性の樹脂フィルム、スパンボンド、又はスパンレース等の不織布に通気性の樹脂フィルムが接合されたシートなどを用いることができる。外装シート27は、バックシート26の非肌面側T2に設けられてよい。外装シート27は、液透過性の不織布によって構成されてよい。バックシート26の幅方向Wの長さは、外装シート27の幅方向Wの長さよりも短く、バックシート26の前後方向Lの長さは、外装シート27の前後方向Lの長さよりも短くてよい。吸収性物品1は、吸収コア31よりも非肌面側T2において水分との接触によって変色するインジケータ70を有する。インジケータ70は、吸収コア31が体液を吸収することによって変色し、吸収性物品1の非肌面側T2から体液の吸収状態を把握できるように構成されている。インジケータ70は、吸収コア31よりも非肌面側に配置されてよく、バックシート26又は外装シート27に設けられていてよい。好ましくは、インジケータ70は、バックシート26の肌側面に設けられていてよい。
後胴回り域S2には、ファスニングテープ90が設けられている。ファスニングテープ90は、ベース部92と係止部93を有する。ベース部92の少なくとも一部は、肌側シート20と非肌側シート25の間に接合され、かつ肌側シート20と非肌側シート25から幅方向Wの外側に延出する。係止部93は、ベース部92上に設けられ、前胴回り域S1のターゲット部95(図2参照)に着脱可能に止着される。ファスニングテープ90は、後胴回り域S2において幅方向Wに沿って延び、ターゲット部95に止着されることにより、吸収性物品1を着用者の身体に保持する。ターゲット部95は、前胴回り域S1に配置されており、ファスニングテープ90がそれぞれ止着するように構成されている。なお、変形例において、吸収性物品1は、ターゲット部を備えずに、非肌側シート25の非肌側面にファスニングテープ90が止着するように構成されてよい。
吸収性物品1は、着用者のウエストを囲むウエスト開口3.5を有する。ウエスト開口3.5は、使い捨ておむつの後端縁10Rと前端縁10Fによって構成され、ファスニングテープ90がターゲット部95に止着した状態で腰回りを囲む部分である。肌側シート20と非肌側シート25の間には、前後方向Lに延びる脚回り弾性部材67が設けられてよい。脚回り弾性部材67は、吸収コア31よりも幅方向Wの外側において、少なくとも股下域S3において脚回り開口部65に沿って配置されてよい。なお、変形例において、肌側シート20と非肌側シート25の間には、幅方向Wに延びる腰回り弾性部材が設けられてよい。腰回り弾性部材の収縮によって、着用者の腰回りに対するフィットを向上できる。
本実施の形態の吸収性物品1の少なくともトップシート21には、オリーブ油が配置されている。次いで、オリーブ油について説明する。オリーブ油は、エクストラ・ヴァージンオリーブ油、ヴァージンオリーブ油、オーディナリー・ヴァージンオリーブ油、ランパンテ・ヴァージンオリーブ油、精製オリーブ油、ピュアオリーブ油、精製オリーブポマース油、オリーブポマース油を例示できる。オリーブ油が配置されているため、着用者及び装着補助者にオリーブ油の効能を付与できる。オリーブ油の効能は、例えば、肌に対する潤いを付与したり、肌を保湿したり、肌を滑らかに維持したり、香りを付与したりできる。
図6は、トップシートを構成する繊維55を示す拡大模式図である。図6Aは、不織布を構成する繊維55を示す拡大模式図である。図6Bは、図6AのD-D断面図を示す模式断面図である。本実施の形態のトップシート21を構成する繊維55は、繊維本体551と油層552を有する。繊維本体551の表面は、親水性を有する繊維処理剤からなる油層552により覆われている。油層552には、オリーブ油が存在する。このように繊維本体551を覆う油層552によって、トップシート21にオリーブ油を付与している。そのため、繊維本体の表面の略全体にオリーブ油を配置でき、トップシートの肌対向面及び非肌対向面のみならず、厚さ方向の内側の部分にもオリーブ油を配置できる。また、変形例において、トップシート21を成形した後にオリーブ油又はオリーブ油を含む繊維処理剤を塗布することによって、オリーブ油をトップシート21に付与してもよい。
オリーブ油の少なくとも一部は、トップシート21の肌対向面に配置されている。オリーブ油がトップシート21の肌対向面に配置されているため、着用者の肌にオリーブ油が接触し、肌の水分を保護したり、肌を滑らかに維持したりできる。トップシート21の肌対向面の全面に亘ってオリーブ油が配置されていてもよいし、間欠的に配置されてよい。本実施の形態のオリーブ油は、繊維本体551の表面に配置されており、繊維55が配置された領域に配置され、繊維55間の隙間Gには配置されていない。
オリーブ油は、上述のように、品質等級等によって区別された複数の種類が流通している。吸収性物品1にオリーブ油を設ける際に、肌に対する刺激、オリーブ油の劣化、及び吸収性物品1を構成する構成部材の劣化等の悪影響を抑制しつつ適切なオリーブ油を選択する観点では、改善の余地があった。出願人が鋭意研究した結果、酸価が6.6mg/g以下であって、過酸化物価が30meq/mg以下のオリーブ油が適切であることがわかった。酸価が6.6mg/g以下であって、過酸化物価が30meq/mg以下のオリーブ油は、エクストラ・ヴァージンオリーブ油、ヴァージンオリーブ油、オーディナリー・ヴァージンオリーブ油を例示できる。酸価が6.6mg/g以下のオリーブ油は、酸化が進んでなく、肌に対して酸化が進んでいないオリーブ油を接触させることができる。酸化された(酸価の高い)オリーブ油は、低級脂肪酸が増加し、皮膚を刺激するおそれがある。しかし、酸価を規定することで、消費者にとって安全なオリーブ油を配合の吸収性物品を提供できる。また、過酸化物価が30meq/mg以下であることで、酸化していないオリーブ油を配合の吸収性物品を消費者に提供できる。オリーブ油の過酸化物価が30meq/mg以下であるため、オリーブ油が自動化酸化し難く、ヒドロペルオキシドが生成され難い。ヒドロペルオキシドが生成されると、金属イオンによって分解され、ペルオキシラジカルを経て、再びヒドロペルオキシドが生成され、過酸化物価が更に高くなる。過酸化物価が高くなると、肌に対する刺激が生じる恐れがある。しかし、オリーブ油の過酸化物価が低い状態を維持し易く、肌に対する刺激を抑制した吸収性物品を提供できる。また、オリーブ油は元々酸化しにくい不飽和脂肪酸なので、配合時から低い過酸化物価のオリーブ油を使用することで、より肌に対する刺激を抑制した吸収性物品を提供できる。オリーブ油の劣化を抑制できるため、色や香りの劣化を抑制し、着用者が香り等の違和感を得難く、安心して使用し続けることができる。
ここで、オリーブ油の酸価及び過酸化物価は、以下の方法によって測定できる。酸価は、加熱油脂劣化度判定用試験紙 AV-CHECK/ADVANTECを用いて測定できる。詳細には、測定対象であるオリーブ油を5ml測定し、試験紙にオリーブ油を付着させる。2秒経過した後に試験紙上の測定対象を濾紙で拭き取る。30秒経過後に試験紙の色を確認し、目視にて色見本と試験紙の色を比較して、酸価を測定する。また、過酸化物価は、POV試験紙(過酸化物価試験紙)/SIBATA(柴田化学)を用いて測定できる。詳細には、測定対象であるオリーブ油を5ml測定し、試験部の前面に付着させる。3分間経過した後、均一に発色するまで水道水で洗い流す。次いで、水を払い、平坦な場所に20秒置いた後に試験紙の色を確認し、目視にて色見本と試験紙の色を比較して、過酸化物価を測定する。なお、オリーブ油を5ml抽出できない場合には、オリーブ油が配置された面に試験紙に付着させることによって、試験紙にて酸価及び過酸化物価を測定してもよい。
オリーブ油は、トップシート21の肌対向面とトップシート21の非肌対向面のそれぞれに配置されてよい。トップシート21の非肌対向面にオリーブ油による膜を形成でき、尿等の体液がトップシート21を透過して吸収コア31に移行した際に、一旦移行した体液が肌側に戻りにくくなる。トップシート21の肌対向面に配置されたオリーブ油によって、肌の水分を保持しつつ、トップシートの非肌対向面に配置されたオリーブ油によって、一旦吸収された体液が肌に移行することを抑制し、肌を清潔な状態で維持できる。
トップシート21には、トップシート21の厚さ方向Tの全域に亘ってオリーブ油が付されていない非配置領域を有してよい。非配置領域は、例えば、繊維間の隙間Gが厚さ方向Tに連続している領域である。非配置領域では、トップシートの厚さ方向の全域にわたってオリーブ油が配置されてなく、オリーブ油が配置された領域と比較して、体液の非肌面側への移行を促進できる。よって、体液の吸収コアへの移行性を維持できる。また、トップシートの平面にわたってオリーブ油が配置されている構成と比較して、オリーブ油が常に肌に触れ続け難く、オリーブ油の劣化をより抑制できる。
オリーブ油の少なくとも一部は、シート圧搾部28に設けられてよい。一般的に、シート圧搾部28が形成される領域は、シート圧搾部28の形成工程において加熱される。シート圧搾部28が形成される前にオリーブ油がトップシート21に付されていると、シート圧搾部28の形成工程において加熱され、オリーブ油が変性し、狙った機能が十分に発揮されないおそれがある。しかし、本実施の形態のオリーブ油は、酸化が進んでいないオリーブ油であるため、熱が付与されても劣化の程度を抑え、狙った機能を発揮し続けることができる。
図4及び図5に示すように、シート圧搾部28の少なくとも一部は、凹部212に設けられてよい。シート圧搾部28は、加工時に熱が発生し、シート圧搾部28が設けられていない領域と比較して、オリーブ油の酸化が進み易い。シート圧搾部28の少なくとも一部は、凹部212に形成されているため、仮にシート圧搾部28におけるオリーブ油が酸化した場合であっても当該酸化したオリーブ油を肌から離して配置でき、酸化したオリーブ油による不具合を抑制できる。なお、変形例において、オリーブ油は、凸部211及び凹部212のそれぞれに配置されてよい。凸部211に配置されたオリーブ油は、肌に触れ易く、肌に対する効能を付与できる。一方、凹部に配置されたオリーブ油は、常に肌に触れ難い。肌に触れやすい部分と触れにくい部分にオリーブ油を配置することで、オリーブ油が一度に肌に移行せず、継続的に肌に移行しやすく、オリーブ油の効能を発揮し続け易い。
トップシート21の肌対向面(外面)213のオリーブ油の坪量は、トップシート21の非肌対向面(内面)214のオリーブ油の坪量よりも高い。トップシート21が吸収性物品1の外面に配置されている場合には、着用者等がトップシート21に触れた際に、着用者等にオリーブ油を転写でき、着用者等に対してオリーブ油の効能を付与できる。また、トップシート21が吸収性物品1の外面よりも内側に配置されている(例えば、セカンドシート23の)場合には、吸収性物品1の外面が押圧された際に、吸収性物品1の外面にオリーブ油が滲み出やすく、着用者等に対してオリーブ油の効能を付与できる。トップシート21の内面は、トップシート21よりも内側に位置する他の構成部材に接着剤を介して接合したり、他の構成部材に溶着されたりする。このとき、トップシート21の内面214のオリーブ油の坪量が比較的低いため、オリーブ油が配置されていることに起因して接着剤が接合し難い等の不具合を抑制できる。
トップシートの外面のオリーブ油の坪量及びトップシートの内面のオリーブ油の坪量は、以下の方法によって比較できる。2枚の濾紙を用意し、それぞれにヘキサンを含侵させる。一方の濾紙をトップシートの外面に当て、他方の濾紙をトップシートの内面に当てて、2枚の濾紙のそれぞれにトップシートのオリーブ油を移行する。濾紙に移行したオリーブ油の坪量によって、トップシートの外面のオリーブ油の坪量及びトップシートの内面のオリーブ油の坪量を比較する。濾紙に移行したオリーブ油の坪量は、周知の方法によって測定でき、例えば、高速液体クロマトグラフ(HPLC)法を用いることができる。なお、繊維処理剤にオリーブ油が略均一に含まれている場合には、繊維処理剤の坪量を比較することによって、当該比較結果をオリーブ油の比較結果に置きかえることができる。
図5に示すように、トップシート21は、トップシート21の外面213から内側に延びる外側領域R11と、トップシート21の内面214から外側に延びる内側領域R12と、を有してよい。外側領域R11と内側領域R12は、隣接していてよい。本実施の形態の外側領域R11は、センターシート21Cの肌対向面から非肌面側T2に延び、内側領域R12は、外側領域R11よりも非肌面側T2に位置し、センターシート21Cの非肌対向面から肌面側T1に延びる。外側領域R11の平均繊維径は、内側領域R12の平均繊維径よりも小さい。すなわち、外側領域R11は、内側領域R12よりも平均繊維径が小さい領域である。外側領域R11は、内側領域R12と比較して、平均繊維径が比較的小さく、繊維の表面積が大きくなり易い。オリーブ油が付着可能な表面積を確保し、外側領域R11のオリーブ油の含有量を高めることができる。一方、内側領域R12は、外側領域R11と比較して、平均繊維径が比較的大きく、繊維間の空隙が大きくなり易い。内側領域R12に接する接着剤が繊維間の空隙に入り込み易くなり、接着剤による接着力を確保し易い。内側領域R12の厚さは、外側領域R11の厚さよりも厚くてよい。繊維間の空隙を確保し易い内側領域の厚さを大きくすることにより、接着剤を保持しやすく、接着剤による接着力をより確保し易い。
なお、平均繊維径は、以下の方法によって測定できる。トップシートをはさみで10mm×10mmの寸法で切断する。切断したサンプルの外側領域が観察プレートに当接するように、観察プレート上にサンプルを載置する。デジタルマイクロスコープ VHX-7000/KEYENCEを用いて断面を観察し、サンプルを構成する繊維の繊維径を測定する。なお、繊維径は、切り出した10本の繊維の繊維径の平均値を採用する。外側領域R11と内側領域R12の境界は、切り出した10本の繊維径のうち8本以上の繊維径が異なる箇所としてよい。
外側領域R11の平均繊維径は、1.7dtex以下であり、内側領域R12の平均繊維径は、3.3dtex以上であってよい。内側領域R12の平均繊維径が3.3dtex以上であって、比較的繊維径が大きいため、繊維間の空隙を確保し易い。また、外側領域R11の平均繊維径が1.7dtex以下であって、繊維径が比較的小さいため、繊維間の空隙が小さくなり易い。よって、内側領域R12の繊維間の空隙Gに浸入した体液及び接着剤が外側領域R11に移行し難い。よって、内側領域R12内で接着剤を保持し接着力を確保するとともに、内側領域R12内で体液を保持し、吸収性物品の外面へのリウェットを抑制できる。加えて、トップシート21が吸収性物品1の外面を構成する場合には、着用者等がトップシート21に触れた際に、柔らかく変形したり、滑らかな肌触りとなったり、着用者等が肌に優しい心証を持ちやすい。そのため、オリーブ油の効能に加えて、肌に優しい吸収性物品1であることを着用者等が認識し易い。
内側領域R12の厚さは、外側領域R11の厚さよりも厚くてよい。繊維間の空隙を確保し易い内側領域の厚さを大きくすることにより、厚さ方向の内側に引き込んだ体液を保持しやすく、体液の引き込み性も向上できる。好適には、トップシート21全体に対する内側領域R12の厚さの比率は、80%以上であってよい。繊維間の空隙をより確保し易く、接着剤よる接着力及び体液の引き込み性の向上効果をより奏することができる。内側領域R12の厚さ及び外側領域R11の厚さは、平均繊維径の測定方法と同様にデジタルマイクロスコープ VHX-7000/KEYENCEを用いて断面を観察し、厚さを測定する。
外側領域R11のオリーブ油の密度は、内側領域R12のオリーブ油の密度よりも高くてよい。トップシート21の外側領域R11は、内側領域R12よりも厚さ方向Tの外側に位置しており、吸収性物品1の外面に近く、オリーブ油の密度が高い。そのため、トップシート21が吸収性物品1の外面に配置されている場合には、着用者等がトップシート21に触れた際に、着用者等にオリーブ油を転写でき、着用者等に対してオリーブ油の効能を付与できる。また、トップシート21が吸収性物品1の外面よりも内側に配置されている(例えば、セカンドシート23の)場合には、吸収性物品1の外面が押圧された際に、吸収性物品1の外面にオリーブ油が滲み出やすく、着用者等に対してオリーブ油の効能を付与できる。オリーブ油の密度が低い内側領域R12は、トップシート21の内面を構成し、トップシート21よりも内側に位置する他の構成部材(防漏フィルム、コアラップ、セカンドシート、弾性部材)に接触し、他の構成部材に接着剤を介して接合したり、他の構成部材に溶着されたりする。このとき、オリーブ油の密度が比較的低いため、オリーブ油が配置されていることに起因して接着剤が接合し難い等の不具合を抑制できる。
内側領域R12の繊維の密度は、外側領域R11の繊維の密度よりも低くてよい。内側領域R12の繊維の密度が、外側領域R11の繊維の密度よりも低いため、繊維間の空隙Gを確保し易い。内側領域R12に接する接着剤が繊維間の空隙に入り込み易くなり、接着剤による接着力を確保し易い。加えて、トップシート21内に引き込んだ体液を保持しやすく、体液の引き込み性も向上できる。
トップシート21の内面(厚さ方向の内側の面)には、弾性部材が接合され、オリーブ油は、弾性部材と重なる領域に設けられてよい。弾性部材は、脚回り弾性部材67、腰回り弾性部材を例示できる。トップシート21の内面のオリーブ油の坪量が低いため、弾性部材のトップシート21に対する接合状態を維持できる。また、弾性部材は、身体に対して密着する部分であり、着用者等は、当該弾性部材と身体の部位の位置を調整するために、弾性部材と重なる領域を触れ易い。弾性部材と重なる領域に弾性部材を配置することにより、弾性部材の位置を調整する操作の過程で着用者等がオリーブ油に触れ易く、着用者等に対してオリーブ油の効能を付与できる。
次いで、オリーブ油の臭いに対する評価結果を説明する。評価1から評価4は、実施例1から実施例3のオリーブ油を用いて、10人の試験者による臭いの官能評価を行った。実施例1から実施例3のオリーブ油は、酸価が一定であり、過酸化物価が異なっている。表1は、評価結果を示している。評価1は、フレッシュなオリーブ油の臭いを感じるか否かの評価であり、実施例1と実施例3のうち、フレッシュなオリーブ油のよい香りがする方を選択してもらった。表1の数字は、選択した人数である。具体的には、評価1においては、8人の試験者が実施例1のオリーブ油がフレッシュなオリーブ油の臭いがすると評価し、2人の試験者が実施例3のオリーブ油がフレッシュなオリーブ油の臭いがすると評価した。評価1の結果から、過酸化物価は、フレッシュなオリーブ油の臭いに関して、30(meq/mg)よりも10(meq/mg)の方が好適であることがわかった。また、評価2から評価4は、劣化したオリーブ油の臭いを感じるか否かを評価し、劣化したオリーブ油の臭いがする方を選択してもらった。評価2は、実施例1と実施例3のうち、劣化したオリーブ油の香りがする方を選択してもらった。評価2によれば、実施例1は、実施例3よりも劣化したオリーブ油の香りがしないと判断された。評価3は、実施例2と実施例3のうち、劣化したオリーブ油の香りがする方を選択してもらった。評価3によれば、実施例2は、実施例3よりも劣化したオリーブ油の香りがしないと判断された。評価4は、実施例1と実施例2のうち、劣化したオリーブ油の香りがする方を選択してもらった。評価4によれば、実施例1は、実施例2よりも劣化したオリーブ油の香りがしないと判断された。当該結果から、過酸化物価は、オリーブ油の劣化した臭いに関して低い方が好ましい。オリーブ油の過酸化物価は、好ましくは、20(meq/mg)以下であってよく、より好適には、10(meq/mg)以下であってよい。
評価5から評価7は、実施例3から実施例5のオリーブ油を用いて、10人の試験者による臭いの官能評価を行った。実施例3から実施例5のオリーブ油は、過酸化物価が一定であり、酸価が異なっている。評価5から評価7は、劣化したオリーブ油の臭いを感じるか否かを評価し、劣化したオリーブ油の臭いがする方を選択してもらった。評価5は、実施例3と実施例4のうち、劣化したオリーブ油の香りがする方を選択してもらった。評価5によれば、実施例3は、実施例4よりも劣化したオリーブ油の香りがしないと判断された。評価6は、実施例3と実施例5のうち、劣化したオリーブ油の香りがする方を選択してもらった。評価6によれば、実施例3は、実施例5よりも劣化したオリーブ油の香りがしないと判断された。評価7は、実施例4と実施例5のうち、劣化したオリーブ油の香りがする方を選択してもらった。評価7によれば、実施例4は、実施例5よりも劣化したオリーブ油の香りがしないと判断された。当該結果から、酸価は、オリーブ油の劣化した臭いに関して低い方が好ましい。オリーブ油の酸価は、好ましくは、2.0(mg/g)以下であってよく、より好適には、1.0(mg/g)以下であってよい。
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。