JP7281100B2 - カリウムイオン電池用電解液、カリウムイオン電池、カリウムイオンキャパシタ用電解液、及び、カリウムイオンキャパシタ - Google Patents

カリウムイオン電池用電解液、カリウムイオン電池、カリウムイオンキャパシタ用電解液、及び、カリウムイオンキャパシタ Download PDF

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Description

本発明は、カリウムイオン電池用電解液、カリウムイオン電池、カリウムイオンキャパシタ用電解液、及び、カリウムイオンキャパシタに関する。
現在、高エネルギー密度での充放電が可能な電池(二次電池)として、非水電解質を使用し、リチウムイオンを正極と負極との間で移動させて充放電を行うようにしたリチウムイオン電池が多く利用されている。
リチウムイオン電池の原料として使用されるリチウムは、資源量が比較的限定されており、高価である。また、資源が主として南米に偏在しており、日本では全量を海外からの輸入に依存している。そこで、電池の低コスト化及び安定的な供給確保のために、リチウムに代わってカリウムを用いるカリウムイオン二次電池の開発が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
カリウムは海水及び地殻に豊富に含まれるため、リチウムに比べて安定した供給が期待できる。また、リチウムはアルミニウム等の多くの金属と合金を形成するため、電極の集電体に使用する金属が銅などに限られるのに対し、カリウムはアルミニウムと合金を形成しないため、銅の代わりにより安価なアルミニウムを使用することが可能になる。
さらに、炭酸エステル系溶媒中でのカリウムの標準電極電位はリチウムよりも約0.1V低いことから電池の高電圧化が可能である。またカリウムイオンは負電荷とのクーロン相互作用が弱いことから電池の高出力化が可能である。したがってカリウムイオン電池は高電圧かつ高出力な二次電池として期待される。
国際公開第WO2016/059907号
カリウムイオン電池の実用化に向けて、電池を構成する諸部材の最適化が検討されており、カリウムイオン電池用の電解液としても種々のカリウム塩化合物や溶媒を用いたものが検討されている。
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、クーロン効率及びレート特性を改善しうるカリウムイオン電池用電解液、及び、前記カリウムイオン電池用電解液を備えるカリウムイオン電池を提供することである。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、クーロン効率及びレート特性を改善しうるカリウムイオンキャパシタ用電解液、及び、前記カリウムイオンキャパシタ用電解液を備えるカリウムイオンキャパシタを提供することである。
<1>溶媒とカリウム塩化合物とを含み、前記カリウム塩化合物はヘキサフルオロリン酸カリウムと、カリウムビス(フルオロスルホニル)アミド及びカリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドからなる群より選択される少なくとも1種とを含み、前記カリウム塩化合物全体に占める前記ヘキサフルオロリン酸カリウムの割合が70モル%~95モル%である、カリウムイオン電池用電解液。
<2><1>に記載のカリウムイオン電池用電解液を備える、カリウムイオン電池。
<3>黒鉛を含む電極をさらに備える、<2>に記載のカリウムイオン電池。
<4>アルミニウムを含む部材をさらに備える、<2>又は<3>に記載のカリウムイオン電池。
<5>溶媒とカリウム塩化合物とを含み、前記カリウム塩化合物はヘキサフルオロリン酸カリウムと、カリウムビス(フルオロスルホニル)アミド及びカリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドからなる群より選択される少なくとも1種とを含み、前記カリウム塩化合物全体に占める前記ヘキサフルオロリン酸カリウムの割合が70モル%~95モル%である、カリウムイオンキャパシタ用電解液。
<6><5>に記載のカリウムイオンキャパシタ用電解液を備える、カリウムイオンキャパシタ。
本発明によれば、クーロン効率及びレート特性を改善しうるカリウムイオン電池用電解液、及び、前記カリウムイオン電池用電解液を備えるカリウムイオン電池が提供される。また本発明によれば、クーロン効率及びレート特性を改善しうるカリウムイオンキャパシタ用電解液、及び、前記カリウムイオンキャパシタ用電解液を備えるカリウムイオンキャパシタが提供される。
本実施形態に係るカリウムイオン電池10の一例を示す模式図である。 黒鉛電極の充放電測定結果を示すグラフである。 黒鉛電極の充放電測定結果を示すグラフである。 黒鉛電極のレート特性の評価結果を示すグラフである。 黒鉛電極の溶媒依存性の評価結果を示すグラフである。 実施例で行った溶媒依存性の評価結果を示すグラフである。 アルミニウム腐食抑制性の評価結果を示すグラフである。 アルミニウム腐食抑制性の評価結果を示す電子顕微鏡写真である。 正極の充放電測定結果を示すグラフである。 正極の充放電測定結果を示すグラフである。 電解液のイオン伝導度の測定結果を示すグラフである。 カリウムイオン電池の充放電測定結果を示すグラフである。 カリウムイオン電池の充放電測定結果を示すグラフである。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本実施形態において2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
<カリウムイオン電池用電解液及びカリウムイオンキャパシタ用電解液>
本実施形態に係るカリウムイオン電池用電解液及びカリウムイオンキャパシタ用電解液(以下、単に電解液ともいう)は、溶媒とカリウム塩化合物とを含み、前記カリウム塩化合物はヘキサフルオロリン酸カリウム(以下、KPFともいう)と、カリウムビス(フルオロスルホニル)アミド(以下、KFSAともいう)及びカリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(以下、KTFSAともいう)からなる群より選択される少なくとも1種とを含み、前記カリウム塩化合物全体に占めるKPFの割合が70モル%~95モル%である。
現在、正極集電体として用いるアルミニウム箔を不動態化できることから、カリウム塩化合物としてKPFを含む電解液がカリウムイオン電池に主に用いられている。しかしながら、KPFを含む電解液を用いたカリウムイオン電池はクーロン効率(特に、負極として黒鉛電極を用いた場合)に改善の余地がある。
KPFを含む電解液のクーロン効率を改善する手法としては、クーロン効率に優れる別のカリウム塩化合物を併用することが考えられる。しかしながら、溶媒に溶解可能なカリウム塩化合物の量が限られることを考慮すると、KPFと別のカリウム塩化合物とを併用することはKPFの使用量の低下につながり、KPFを用いることの利点が損なわれるおそれがある。
本発明者らの検討の結果、KPFと併用するカリウム塩化合物としてKFSA及びKTFSAからなる群より選択される少なくとも1種を用いると、KPFの使用量の低下を抑えつつクーロン効率を有効に改善できることがわかった。
さらに本発明者らの検討の結果、KPFと併用するカリウム塩化合物としてKFSA及びKTFSAからなる群より選択される少なくとも1種を用いると、レート特性も改善することがわかった。
KPFに加えてKFSA及びKTFSAからなる群より選択される少なくとも1種を含む電解液がクーロン効率に優れている理由は必ずしも明らかではないが、後述する実施例で確認されたように、KPFを単独で使用する場合に比べてより安定した不動態被膜が黒鉛電極表面に形成されることが考えられる。
KPFに加えてKFSA及びKTFSAからなる群より選択される少なくとも1種を含む電解液がレート特性に優れている理由は必ずしも明らかではないが、上記と同様に、KPFを単独で使用する場合に比べてより安定した不動態被膜が黒鉛電極表面に形成されることが考えられる。
本発明の電解液によればさらに、カリウム塩化合物としてKFSA及びKTFSAからなる群より選択される少なくとも1種のみを含む電解液に比べ、集電体などにアルミニウムを使用した場合にアルミニウムの腐食が抑制されるという効果が得られる。
本実施形態においてKPFとは下記構造式(a)で表されるカリウム塩化合物であり、KFSAとは下記構造式(b)で表されるカリウム塩化合物であり、KTFSAとは下記構造式(c)で表されるカリウム塩化合物である。
Figure 0007281100000001
電解液に含まれるKPFの量は、カリウム塩化合物全体に占めるKPFの割合が70モル%~95モル%となる量であれば特に制限されない。KPFの利点を充分に確保する観点からは、カリウム塩化合物全体に占めるKPFの割合は75モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、85モル%以上であることがさらに好ましい。
電解液に含まれるKFSA及びKTFSAからなる群より選択される少なくとも1種の量は、カリウム塩化合物全体に占めるKPFの割合が70モル%~95モル%となる量であれば特に制限されない。アルミニウムを含む部材の腐食を抑制する観点からは、カリウム塩化合物全体に占めるKFSA及びKTFSAからなる群より選択される少なくとも1種の割合は25モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、15モル%以下であることがさらに好ましい。
電解液は、必要に応じてKPF、KFSA及びKTFSA以外のカリウム塩化合物を含有してもよい。KPF、KFSA及びKTFSA以外のカリウム塩化合物としては、フルオロホウ酸カリウム(KBF)、過塩素酸カリウム(KClO)、KCF、KN(SO等が挙げられる。
電解液がKPF、KFSA及びKTFSA以外のカリウム塩化合物を含有する場合、その量はカリウム塩化合物全体の20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましい。
電解液に含まれるカリウム塩化合物全体の濃度は特に制限されず、電解液のイオン伝導度、粘度、カリウム塩化合物の溶解性等に応じて調整できる。例えば、0.5mol/kg~1.5mol/kgの範囲内であってもよい。
電解液に含まれる溶媒の種類は特に制限されず、非水電解液として一般的に使用されるものから選択できる。エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ペンタエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の溶媒が好ましく、電位窓およびイオン伝導度の観点からは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル系溶媒がより好ましい。電解液に含有される溶媒は、1種のみであっても2種以上の組み合わせであってもよい。
電解液に含有される溶媒の全質量に対し、炭酸エステル系溶媒の占める割合が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、99質量%以上であることが最も好ましい。
溶媒としては、脱水剤で脱水を行った後に精留を行ったものを使用してもよい。脱水剤としては、例えば、モレキュラーシーブス、芒硝、硫酸マグネシウム、水素化カルシウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウムアルミニウム等が挙げられる。また、精留を行わずに脱水剤による脱水のみを行った溶媒を使用してもよい。
電解液に含有される溶媒の含有量は、特に制限はなく、上述したカリウム塩化合物の好ましい濃度範囲を満たす量であることが好ましい。
電解液は、カリウム塩化合物及び溶媒に加え、必要に応じて他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、公知の添加剤を用いることができ、例えば、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、エチレンサルファイト(ES)等が挙げられる。あるいは、過充電防止剤、脱水剤、脱酸剤等が挙げられる。
<カリウムイオン電池>
本実施形態に係るカリウムイオン電池は、本実施形態に係るカリウムイオン電池用電解液を備えるカリウムイオン電池である。
本実施形態に係るカリウムイオン電池は、カリウムイオン二次電池として好適に用いることができる。
本実施形態に係るカリウムイオン電池は、電解液のほか正極及び負極を備えることが好ましく、電解液のほか正極、負極及びセパレータを備えることがより好ましい。
本実施形態のカリウムイオン電池は、黒鉛を含む電極を備えていてもよい。黒鉛を含む電極としては、黒鉛を含む負極が挙げられる。
本実施形態のカリウムイオン電池は、アルミニウムを含む部材を備えていてもよい。アルミニウムを含む部材としては、電極の集電体、ケース等が挙げられる。
本実施形態に係るカリウムイオン電池は、電池ケース、スペーサー、ガスケット、スプリング等のリチウムイオン電池で使用される公知の各種材料を特に制限されず備えていてもよい。
本実施形態に係るカリウムイオン電池を作製する方法は特に制限されず、公知の方法に従って実施することができる。作製される電池の形状及びサイズは特に制限されず、円筒状、角型、コイン型等の種々の形状及び任意のサイズを採用することができる。
(正極)
本実施形態に係るカリウムイオン電池が、正極を備える場合、正極は、カリウムイオン電池用正極活物質(以下、正極活物質ともいう)を含むことが好ましい。
-正極活物質-
正極活物質の種類は特に制限されず、公知のカリウムイオン電池用の正極活物質を用いることができる。
正極活物質として具体的には、K[Fe(CN)のカリウム塩(M=Fe、Mn、Co、Ni、Cr又はCuを表し、xは0以上2以下の数を表し、yは0.5以上1.5以下の数を表し、zは0.5以上1.5以下の数を表す。)、KFeSOF、リン酸鉄カリウム化合物、リン酸バナジウムカリウム化合物、活性炭、α-FePO、K0.3MnO、無水ペリレン等が挙げられる。
正極活物質の形状は、特に制限はなく、所望の形状であればよいが、正極形成時の分散性の観点から、粒子状の正極活物質であることが好ましい。
正極活物質の形状が粒子状である場合、本正極活物質の算術平均粒子径は、分散性及び正極の耐久性の観点から、10nm~200μmであることが好ましく、50nm~100μmであることがより好ましく、100nm~80μmであることが更に好ましく、200nm~50μmであることが特に好ましい。
正極活物質の算術平均粒子径は、レーザー回折/散乱法により測定される。具体的には、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(例えば、(株)堀場製作所製のLA-950)を使用し、分散媒:水、レーザー波長:650nm及び405nmの条件で好適に測定することができる。正極に含まれた状態の正極活物質の算術平均粒子径は、正極に含まれる正極活物質を、溶剤等を使用して、又は、物理的に分離し、測定することができる。
正極は、正極活物質以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に制限はなく、電池の正極の作製に用いられる公知の添加剤を用いることができる。具体的には、導電助剤、結着剤等が挙げられる。
また、正極は、耐久性及び成形性の観点から、正極活物質、導電助剤及び結着剤を含むことが好ましい。
正極の形状及び大きさは、特に制限はなく、使用する電池の形状及び大きさに合わせ、所望の形状及び大きさとすることができる。
正極は、カリウムイオン電池の出力及び充放電容量の観点から、カリウムイオン電池用正極活物質を、正極の全質量(後述する集電体を除く)に対し、10質量%以上含むことが好ましく、20質量%以上含むことがより好ましく、50質量%以上含むことが更に好ましく、70質量%以上含むことが特に好ましい。
-導電助剤-
正極は、正極活物質を、所望の形状に成形し、正極としてそのまま用いてもよいが、正極のレート特性(出力)を向上させるために、導電助剤を更に含むことが好ましい。
本実施形態に用いられる導電助剤としては、カーボンブラック類、黒鉛類、カーボンナノチューブ(CNT)、気相成長炭素繊維(VGCF)等の炭素が好ましく挙げられる。
カーボンブラック類としては、アセチレンブラック、オイルファーネス、ケッチェンブラック等が挙げられる。中でも、導電性の観点から、アセチレンブラック及びケッチェンブラックよりなる群から選ばれた少なくとも1種の導電助剤であることが好ましく、アセチレンブラック又はケッチェンブラックであることがより好ましい。導電助剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
正極が導電助材を含む場合、正極活物質と導電助剤との混合比は、特に制限はないが、正極における導電助剤の含有量は、正極に含まれる正極活物質の全質量に対し、1質量%~80質量%であることが好ましく、2質量%~60質量%であることがより好ましく、5質量%~50質量%であることが更に好ましく、5質量%~25質量%であることが特に好ましい。上記範囲であると、より高出力の正極が得られ、また、正極の耐久性に優れる。
導電助剤と正極活物質との混合方法としては、正極活物質を、不活性ガス雰囲気下で導電助剤と共に混合することにより、正極活物質を導電助剤によりコートすることができる。不活性ガスとしては、窒素ガスやアルゴンガス等を用いることができ、アルゴンガスを好適に用いることができる。
また、導電助剤と正極活物質とを混合する際に、乾式ボールミルや、少量の水等の分散媒を加えたビーズミル等の粉砕分散処理をしてもよい。粉砕分散処理をすることにより導電助剤と正極活物質との密着性及び分散性を高め、電極密度を上げることができる。
-結着剤-
正極は、成形性の観点から、結着剤を更に含むことが好ましい。結着剤は特に制限はなく、公知の結着剤を用いることができ、高分子化合物が好ましく挙げられる。高分子化合物として具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-HFP-TFE系フッ素ゴム)等のフッ素ゴム、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、芳香族ポリアミド等のポリアミド樹脂、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、その水素添加物、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、その水素添加物、シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン等のゴム状重合体、ポリアミドイミド等のポリイミド樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン-α-オレフィン(炭素数2~12)共重合体、ポリグルタミン酸、デンプン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系高分子化化合物、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリロニトリル等のアクリル系高分子化合物などが挙げられる。結着剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
電極密度を高くするという観点から、結着剤として用いられる材料の密度は、1.2g/cmより大きいことが好ましい。
また、電極密度を高くし、かつ接着力を高める点から、結着剤の重量平均分子量は、1,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることが更に好ましい。重量平均分子量の上限は特に制限されないが、200万以下であることが好ましい。
正極活物質と結着剤との混合比は、特に制限はないが、正極における結着剤の含有量は、正極に含まれる正極活物質の全質量に対し、0.5質量%~30質量%であることが好ましく、1質量%~20質量%であることがより好ましく、2質量%~15質量%であることが更に好ましい。上記範囲であると、成形性及び耐久性に優れる。
正極活物質と導電助剤と結着剤とを含む正極の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、正極活物質と導電助剤と結着剤とを混合して加圧成形を行ってもよいし、また、後述するスラリーを調製して正極を形成する方法であってもよい。
-集電体-
本実施形態に用いられる正極は、集電体を更に含むことが好ましい。
集電体としては、ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)等の導電性の材料を含むものが挙げられる。中でも、アルミニウムを含む集電体が好ましい。
集電体の形状は、特に制限されず、箔、板、メッシュ、エキスパンドグリッド(エキスパンドメタル)、パンチドメタル等が挙げられる。メッシュの目開き、線径、メッシュ数等は特に限定されず、従来公知のものを使用できる。
集電体を備える正極を作製する方法は特に制限されないが、正極活物質と必要に応じて導電助剤及び結着剤とを、有機溶媒又は水と混合して正極活物質スラリーを調製し、これを集電体に塗工する方法が例示できる。
正極活物質スラリーの調製に用いる有機溶剤としては、N,N-ジメチルアミノプロピリアミン、ジエチルトリアミン等のアミン系;エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のエーテル系;メチルエチルケトン等のケトン系;酢酸メチル等のエステル系、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
正極活物質スラリーを集電体上に塗工する方法としては、例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法、静電スプレー法等を挙げることができる。
(負極)
カリウムイオン電池が負極を備える場合、負極は、負極活物質を含むことが好ましい。
負極活物質としては、黒鉛、コークス類、ハードカーボン、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体等の炭素材料、KTi(PO、P、Sn、Sb、MXene(複合原子層物質)などが挙げられる。これらの中でも、黒鉛及びハードカーボンが好ましく、黒鉛がより好ましい。負極活物質としては、カリウム金属も好適に用いることができる。更に、負極としては、国際公開第2016/059907号に記載の負極も好適に用いることができる。負極活物質は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
負極活物質の形状としては、天然黒鉛のような薄片状、メソカーボンマイクロビーズのような球状、黒鉛化炭素繊維のような繊維状、粒子状の凝集体等が挙げられ、特に制限されない。負極活物質としての炭素材料は、導電助剤としての役割を果たす場合もある。
本実施形態における黒鉛とは、黒鉛系炭素材料のことをいう。黒鉛系炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等が挙げられる。天然黒鉛としては鱗片状黒鉛、塊状黒鉛等が挙げられ、人造黒鉛としては塊状黒鉛、気相成長黒鉛、鱗片状黒鉛、繊維状黒鉛等が挙げられる。これらの中でも、充填密度が高い等の理由で、鱗片状黒鉛及び塊状黒鉛が好ましい。また、2種以上の黒鉛が併用されてもよい。
黒鉛の平均粒子径は、上限値として30μmが好ましく、15μmがより好ましく、10μmが更に好ましく、下限値として0.5μmが好ましく、1μmがより好ましく、2μmが更に好ましい。黒鉛の平均粒子径は、電子顕微鏡観察の方法により測定する値である。
黒鉛としては、また、面間隔d(002)が3.354~3.370Å(オングストローム、1Å=0.1nm)であり、結晶子サイズLcが150Å以上であるもの等が挙げられる。
ハードカーボンは、2,000℃以上の高温で熱処理してもほとんど積層秩序が変化しない炭素材料であり、難黒鉛化炭素とも呼ばれる。ハードカーボンとしては、炭素繊維の製造過程の中間生成物である不融化糸を1,000℃~1,400℃程度で炭化した炭素繊維、有機化合物を150℃~300℃程度で空気酸化した後、1,000℃~1,400℃程度で炭化した炭素材料等が例示できる。ハードカーボンの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造されたハードカーボンを使用することができる。ハードカーボンの平均粒子径、真密度、(002)面の面間隔等は特に限定されず、適宜好ましいものを選択して実施することができる。
負極活物質層中の負極活物質の含有量は特に限定されないが、負極全体(後述する集電体を除く)のうち80質量%~95質量%であることが好ましい。
負極の形態としては、負極活物質のみからなるもの、負極活物質に加えて負極活物質及び結着剤を含むものが挙げられる。さらには、集電体と集電体の表面に形成された負極活物質層とからなるもの等が挙げられる。負極に用いる集電体は特に制限されず、上述した正極に用いられる集電体を好適に用いることができる。中でも、アルミニウムを含む集電体が好ましい。
負極の形状及び大きさは、特に制限はなく、使用する電池の形状及び大きさに合わせ、所望の形状及び大きさとすることができる。
(セパレータ)
カリウムイオン電池は、セパレータを更に備えていてもよい。
セパレータは、正極と負極とを物理的に隔絶して、内部短絡を防止する役割を果たす。具体的には、多孔質材料からなり、その空隙には電解質が含浸され、電池反応を確保するために、イオン透過性(特に、少なくともカリウムイオン透過性)を有する。
セパレータとしては、例えば、多孔膜、不織布などが使用できる。セパレータは、多孔膜の層又は不織布の層のみで形成してもよく、組成、形態等の異なる複数の層を組み合わせた積層体であってもよい。積層体としては、組成の異なる複数の樹脂多孔層を有する積層体、多孔膜の層と不織布の層とを有する積層体などが例示できる。
セパレータの材質は、電池の使用温度、電解質の組成などを考慮して選択でき、樹脂等の有機材料及びガラス等の無機材料が好ましく挙げられる。
セパレータに用いる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン樹脂;ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンサルファイドケトンなどのポリフェニレンサルファイド樹脂;芳香族ポリアミド樹脂(アラミド樹脂など)などのポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂などが例示できる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
セパレータは、ガラス(好ましくは、ガラス繊維)、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂およびポリフェニレンサルファイド樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。中でも、ガラスフィルター(ガラス濾紙)がより好ましい。
セパレータは、無機フィラーを含んでもよい。無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、ゼオライト、チタニア等のセラミックス、タルク、マイカ、ウォラストナイトなどが例示できる。無機フィラーは、粒子状又は繊維状であることが好ましい。
セパレータ中の無機フィラーの含有量は、10質量%~90質量%であることが好ましく、20質量%~80質量%であることがより好ましい。
セパレータの形状又は大きさは特に限定されず、所望の電池の形状等に合わせて選択できる。
図1は、本実施形態に係るカリウムイオン電池10の構成の一例を示す模式図である。ただし、本実施形態に係るカリウムイオン電池が、これに限定されないことは言うまでもない。図1に示すカリウムイオン電池10は、コイン型電池であり、電池ケース12、ガスケット14、負極16、セパレータ18、正極20、スペーサー22、スプリング24、及び、正極側の電池ケース26を備えている。セパレータ18には、本実施形態に係る電解液(不図示)が含浸されている。
<カリウムイオンキャパシタ>
本実施形態に係るカリウムイオンキャパシタは、本実施形態に係るカリウムイオンキャパシタ用電解液を備える。
また、本実施形態に係るカリウムイオンキャパシタは、電解液として本実施形態に係るカリウムイオンキャパシタ用電解液を用い、リチウムイオンの代りにカリウムイオンを用いること以外、例えば、従来のリチウムイオンキャパシタと同様の構成で基本的に作製することができる。
また、前記カリウムイオン電池において前述した各構成部材を、本実施形態に係るカリウムイオンキャパシタにも好適に用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
<電解液の調製>
以下に示すカリウム塩化合物及び溶媒を使用して、以下に示すカリウム塩化合物の濃度となるように混合することにより、各電解液を作製した。使用した化合物の詳細を以下に示す。
カリウムビス(フルオロスルホニル)アミド(KFSA):SOLVIONIC SA社製
ヘキサフルオロリン酸カリウム(KPF):東京化成工業(株)製
エチレンカーボネート(EC):キシダ化学(株)製
プロピレンカーボネート(PC):キシダ化学(株)製
ジエチルカーボネート(DEC):キシダ化学(株)製
エチルメチルカーボネート(EMC):キシダ化学(株)製
実施例1:KPF:KFSA(モル比3:1)のEC:DEC(体積比1:1)溶液(カリウム塩化合物の濃度:1mol/kg)
実施例2:KPF:KFSA(モル比9:1)のEC:DEC(体積比1:1)溶液(カリウム塩化合物の濃度:0.75mol/kg)
比較例1:KPFのEC:DEC(体積比1:1)溶液(カリウム塩化合物の濃度:0.75mol/kg)
比較例2:KFSAのEC:DEC(体積比1:1)溶液(カリウム塩化合物の濃度:1mol/kg)
比較例3:KPF:KFSA(モル比1:1)のEC:DEC(体積比1:1)溶液(カリウム塩化合物の濃度:1mol/kg)
<黒鉛電極の充放電特性>
(1)黒鉛電極の作製
粘度調整用の水に、結着剤としてのポリアクリル酸ナトリウム塩(PANa、キシダ化学(株)製、分子量200万~600万)を10質量部添加し、更に、負極活物質としての黒鉛(SECカーボン(株)製SNO3、粒子径約3μm)を90質量部添加し、乳鉢で混合撹拌して、負極合剤スラリーを得た。得られた負極合剤スラリーを、負極集電体であるアルミニウム箔上に塗布し、150℃の真空乾燥機内で乾燥させ、電極シートを得た。この電極シートを電極打ち抜き機で直径10mmの円形に打ち抜いたものを黒鉛電極とした。得られた黒鉛電極の集電体を含まない部分の厚さは0.02mm~0.03mm、質量は0.5mg~1mgであった。
(2)コインセルの作製
前記で作製した黒鉛電極、対極としてカリウム金属(アルドリッチ社製)、セパレータ(ガラスフィルター、ADVANTEC(株)製)、SUS-Alクラッド電池ケース及びポリプロピレン製ガスケット(宝泉(株)製CR2032)、スペーサー(材質:SUS、直径16mm×高さ0.5mm、宝泉(株)製)、及び、板ばね(材質:SUS、内径10mm、高さ2.0mm、厚さ0.25mm、宝泉(株)製ワッシャー)を用いて充放電測定用のコインセルを作製し、セパレータを実施例1、2及び比較例1、2で調製した電解液で含浸させた。電解液の使用量は、セパレータが電解液で十分満たされる量(0.15mL~0.3mL)とした。
(3)充放電測定
作製したコインセルを用いて、充電電流密度および放電電流密度を定電流モードに設定し、室温(25℃)にて充放電測定を行った。電流密度を25mA/gに設定し、充電電圧を0.0Vまで定電流充電を行った。充電後、充電電圧を0.0V、放電終止電圧が2.0Vになるまで定電流放電を繰り返し行った。クーロン効率を下記式により求めた。結果を図2及び図3に示す。
クーロン効率(%)=放電容量(mAh)/充電容量(mAh)×100
本実施例において、負極の充電はカリウム化、放電は脱カリウム化とし、正極の充電は脱カリウム化、放電はカリウム化とする。
図2及び図3に示すように、カリウム塩化合物としてKPFとKFSAを含む実施例1、2の電解液を用いたコインセルは、カリウム塩化合物としてKPFのみを含む比較例1の電解液を用いたコインセルに比べて高いクーロン効率(%)を示した。また、実施例1、2の電解液を用いたコインセルは、比較例1の電解液を用いたコインセルに比べて充放電サイクルの増加に伴う放電容量(mAh/g)の減少が抑制されていた。
<黒鉛電極のレート特性>
充放電の電流密度を定電流モードに設定し、室温(25℃)にて充放電測定を行った。充電電流密度を0.1C(1C=279mA/g)に固定し、充電電圧が0.0Vになるまで定電流充電を行った。放電電流密度3サイクルごとに0.1C、0.2C、0.5C、1C、2C、4C、6C、8C、10C、15C、0.1Cの順に変え、放電電圧を2.0Vになるまで定電流放電を行った。結果を図4に示す。
図4に示すように、カリウム塩化合物としてKPFとKFSAを含む実施例1、2の電解液を用いたコインセルは、カリウム塩化合物としてKPFのみを含む比較例1の電解液を用いたコインセルに比べて高いレート特性を示した。
<黒鉛電極の溶媒依存性>
実施例2の電解液において、溶媒の組成をEC:DEC(体積比1:1)からEC:PC(体積比1:1)及びEC:EMC(体積比1:1)に変更した以外は上記と同じ条件でコインセルの充放電測定を行った。結果を図5及び図6に示す。
図5及び図6に示すように、カリウム塩化合物としてKPFとKFSAを含む電解液を用いたコインセルは、溶媒の組成を変更しても高いクーロン効率を示した。
<黒鉛電極の表面分析>
上述した充放電試験と同様の条件でコインセルの充放電を10回行った後の黒鉛電極の表面分析を行った。具体的には、大型放射光施設SPring-8のビームラインBL46XUにおいて、硬X線光電子分光(hard X-ray photoemission spectroscopy、HAXPES)により分析を実施した。充放電後の電極は、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内においてDECで洗浄し、グローブボックス内で十分に乾燥させた。測定試料の移動にラミネートパックおよびトランスファーベッセルを利用し、試料が空気暴露しないように装置内へと導入した。励起X線エネルギーを7.94keV、光電子検出角を80°、アナライザーのパスエネルギーを200eVとした。得られたスペクトルの結合エネルギーは、sp炭素の結合エネルギーを284.6eVとして較正し、ピーク強度は、sp炭素の面積強度で規格化した。sp炭素ピークに対する各元素由来のピーク面積比を表1に示す。
Figure 0007281100000002
表1に示すように、KPFとKFSAを含む実施例2の電解液を用いた場合はKPFのみを含む比較例1の電解液を用いた場合に比べてC由来のピーク強度の増大が小さいことから、溶媒由来の有機物の黒鉛電極表面への堆積が少ないと考えられる。
また、KPFとKFSAを含む実施例2の電解液を用いた場合はKPFのみを含む比較例1の電解液を用いた場合に比べてF及びP由来のピーク強度の増大がともに小さいことから、KPFの分解がKFSAの添加によって抑制されていると考えられる。
以上の結果から、KPFとKFSAを含む電解液を用いた場合にKPFのみを含む電解液を用いた場合に比べてクーロン効率が改善することの理由として、電解液中の溶媒又はKPFの分解物の黒鉛電極表面への堆積が少なく、より安定的な不動態被膜が形成されることが考えられる。さらに、S由来のピーク強度にみられるように、実施例2の電解液に含まれるKFSAの分解物が不動態被膜に含まれることも被膜の安定化に寄与していると考えられる。
<アルミニウム腐食抑制性>
実施例1、2及び比較例2、3で得られた各電解液を使用し、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行った。CV測定は、作用電極にアルミニウム箔、対極および参照極にカリウム金属(アルドリッチ社製)を使用し、スキャンレート0.5mV/s、電圧の掃引範囲を2.0V~6.0Vとして測定した。CV測定では、アルミニウムの腐食に伴って酸化電流が生じるため、測定される電流密度が小さいほどアルミニウムの腐食抑制性に優れると考えられる。結果を図7に示す。
図7に示すように、KPF:KFSAのモル比が3:1である実施例1及びKPF:KFSAのモル比が9:1である実施例2の電解液は、KFSAのみを含む比較例2及びKPF:KFSAのモル比が1:1である比較例3の電解液に比べてCV測定で測定される電流密度が小さく、アルミニウムが腐食しにくいと考えられる。
図8にCV測定後のアルミニウム箔の表面の電子顕微鏡像を示す。図8に示すように、KPF:KFSAのモル比が3:1である実施例1及びKPF:KFSAのモル比が9:1である実施例2の電解液では、アルミニウム箔の腐食(図中の明度が低い領域)がほぼ観察されなかった。
<正極の充放電特性>
(1)正極の作製
Mn[Fe(CN)]と、ケッチェンブラック(KB、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)と、PVdF(ポリフッ化ビニリデン樹脂、(株)クレハ製#1100)とを70:20:10の質量比で混合後、正極集電体としてアルミニウム箔(宝泉(株)製、厚さ0.017mm)上に塗布したものを電極打ち抜き機で直径10mmの円形に打ち抜いたものを正極とした。得られた正極の集電体を含まない部分の厚さは0.03mm~0.04mm、質量は0.5mg~1mgであった。
(2)コインセルの作製
前記で作製した正極を用いたこと以外は黒鉛電極の充放電試験と同様にしてコインセルを作製した。
(3)充放電測定
作製したコインセルを用いて、充電電流密度および放電電流密度を定電流モードに設定し、室温(25℃)にて充放電測定を行った。電流密度を15mA/gに設定し、充電電圧を4.3Vまで定電流充電を行った。充電後、放電電圧を2.5Vになるまで定電流放電を繰り返し行い、クーロン効率を求めた。結果を図9及び図10に示す。
図9及び図10に示すように、カリウム塩化合物としてKPFとKFSAを含む実施例1、2の電解液を用いたコインセルは、カリウム塩化合物としてKPFのみを含む比較例1の電解液を用いたコインセルと同等の高いクーロン効率を示し、KMn[Fe(CN)]を正極とするカリウムイオン電池に適用可能であることが示唆された。
<イオン伝導度の測定>
実施例及び比較例で得られた各電解液について、カリウム塩化合物の濃度(mol/kg)を変化させながらイオン伝導度(mS/cm)を測定した。
イオン伝導度の測定方法は、ニッコー・ハンセン(株)製のEutech CON2700を用いて室温(25℃)で測定した。測定結果を図11に示す。
図11に示すように、KPFとKFSAを含む実施例1及び実施例2の電解液は、KPFのみを含む比較例1の電解液に比べて高いイオン伝導度を示した。なお、比較例1と実施例2の電解液は、カリウム塩化合物の濃度が1.0mol/kgのときに溶解しなかった。
<カリウムイオン電池の充放電特性>
(1)コインセルの作製
前記で作製した正極と、負極として前記で作製した黒鉛電極とを用いたこと以外は前記と同様にしてコインセルを作製した。
(2)充放電測定
作製したコインセルを用いて、充電電流密度および放電電流密度を定電流モードに設定し、室温(25℃)にて充放電測定を行った。電流密度を15mA/gに設定し、充電電圧を4.3Vまで定電流充電を行った。充電後、放電電圧を1.5Vになるまで定電流放電を繰り返し行い、クーロン効率を求めた。結果を図12及び図13に示す。
図12及び図13に示すように、カリウム塩化合物としてKPFとKFSAを含む電解液を用いた実施例1、2のカリウムイオン電池は、カリウム塩化合物としてKPFのみを含む比較例1の電解液を用いたカリウムイオン電池に比べて優れたクーロン効率を示した。
10:カリウムイオン電池、12:電池ケース(負極側)、14:ガスケット、16:負極、18:セパレータ、20:正極、22:スペーサー、24:板ばね、26:電池ケース(正極側)

Claims (6)

  1. 溶媒とカリウム塩化合物とを含み、前記カリウム塩化合物はヘキサフルオロリン酸カリウムと、カリウムビス(フルオロスルホニル)アミド及びカリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドからなる群より選択される少なくとも1種とを含み、前記カリウム塩化合物全体に占める前記ヘキサフルオロリン酸カリウムの割合が70モル%~95モル%であり、負極集電体にアルミニウムを含む電池に使用するための、カリウムイオン電池用電解液。
  2. 請求項1に記載のカリウムイオン電池用電解液及びアルミニウムを含む負極集電体を備える、カリウムイオン電池。
  3. 黒鉛を含む電極をさらに備える、請求項2に記載のカリウムイオン電池。
  4. 溶媒とカリウム塩化合物とを含み、前記カリウム塩化合物はヘキサフルオロリン酸カリウムと、カリウムビス(フルオロスルホニル)アミド及びカリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドからなる群より選択される少なくとも1種とを含み、前記カリウム塩化合物全体に占める前記ヘキサフルオロリン酸カリウムの割合が70モル%~95モル%であり、負極集電体にアルミニウムを含むキャパシタに使用するための、カリウムイオンキャパシタ用電解液。
  5. 請求項に記載のカリウムイオンキャパシタ用電解液及びアルミニウムを含む負極集電体を備える、カリウムイオンキャパシタ。
  6. 黒鉛を含む電極をさらに備える、請求項5に記載のカリウムイオンキャパシタ
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