JP7280986B1 - 物品の製造方法、接着剤組成物および発泡性接着シート - Google Patents

物品の製造方法、接着剤組成物および発泡性接着シート Download PDF

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Abstract

【課題】接着強度を向上させることが可能な、物品の製造方法、ならびにそれに用いられる接着剤組成物および発泡性接着シートを提供する。【解決手段】第一部材および第二部材の間に、熱硬化性樹脂および熱膨張性マイクロカプセルである発泡剤を配置し、接着剤組成物を加熱して発泡硬化させ、第一部材および第二部材を接着する接着工程を有する物品の製造方法であって、上記発泡剤の発泡率を縦軸とした発泡率-時間曲線における、ピークの長時間側の曲線にピークの頂点で引いた接線の傾きをA、ピークの頂点の時間をT1とし、熱流-時間曲線における、発熱ピークの長時間側の曲線に発熱ピークの頂点で引いた接線の傾きをB、発熱ピークの頂点の時間をT2としたとき、A<Bであり、T1<T2となるように、上記接着剤組成物を加熱する、物品の製造方法を提供する。【選択図】図1

Description

本開示は、物品の製造方法、ならびにそれに用いられる接着剤組成物および発泡性接着シートに関する。
部材同士を接着する接着剤は、様々な分野で用いられており、その接着方法も、多くの方法が知られている。
近年では、発泡剤を含有する接着剤組成物を使用することが提案されている(例えば、特許文献1~2)。
特許第6223477号公報 特開2019-203062号公報
発泡剤を含有する接着剤組成物において、加熱条件については、例えば特許文献1には、熱発泡剤の熱発泡温度(発泡開始温度)をT1とし、接着層の硬化開始温度をT2としたとき、T1≦T2の関係を満足することが開示されている。
しかしながら、本開示の発明者らが、発泡剤を含有する接着剤組成物の加熱条件について検討したところ、発泡剤の発泡開始温度と接着層の硬化開始温度とを所定の関係とする場合であっても、接着強度が低下する場合があることを知見した。接着強度が低下すると、発泡剤を含有する接着剤組成物により接着された部材の信頼性や耐久性等が劣るという問題がある。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、接着強度を向上させることが可能な物品の製造方法、ならびにそれに用いられる接着剤組成物および発泡性接着シートを提供することを主目的とする。
本開示の一実施形態は、第一部材および第二部材の間に、熱硬化性樹脂および発泡剤を含有する接着剤組成物を配置する配置工程と、上記接着剤組成物を加熱して発泡硬化させ、上記第一部材および上記第二部材を接着する接着工程と、を有する物品の製造方法であって、上記発泡剤は、熱膨張性マイクロカプセルであり、上記発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、上記接着工程での加熱条件で、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、上記発泡剤の発泡率を縦軸とした発泡率-時間曲線において、ピークの長時間側の曲線にピークの頂点で引いた接線の傾きをAとし、上記接着剤組成物に対して、上記接着工程での加熱条件で、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、熱流を縦軸としたDSC曲線において、発熱ピークの長時間側の曲線に発熱ピークの頂点で引いた接線の傾きをBとしたとき、A<Bであり、上記発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、上記発泡剤の発泡率を縦軸とした発泡率-時間曲線において、ピークの頂点の時間をT1とし、上記接着剤組成物から上記発泡剤を除いた組成物に対して、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、熱流を縦軸としたDSC曲線において、発熱ピークの頂点の時間をT2としたとき、上記接着工程では、T1<T2となるように、上記接着剤組成物を加熱する、物品の製造方法を提供する。
本開示の他の実施形態は、熱硬化性樹脂および発泡剤を含有する接着剤組成物であって、上記発泡剤は、熱膨張性マイクロカプセルであり、上記発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、室温から上記発泡剤の最大発泡温度まで5分間で昇温し、上記発泡剤の最大発泡温度で保持する加熱条件で、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、上記発泡剤の発泡率を縦軸とした発泡率-時間曲線において、ピークの長時間側の曲線にピークの頂点で引いた接線の傾きをCとし、上記接着剤組成物に対して、上記加熱条件で、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、熱流を縦軸としたDSC曲線において、発熱ピークの長時間側の曲線に発熱ピークの頂点で引いた接線の傾きをDとしたとき、C<Dである、接着剤組成物を提供する。
また、本開示の他の実施形態は、接着層を有する発泡性接着シートであって、上記接着層が、上述の接着剤組成物を含有する、発泡性接着シートを提供する。
本開示における物品の製造方法は、接着強度を向上させることが可能であるという効果を奏する。
本開示における物品の製造方法を例示する工程図である。 本開示における発泡性接着シートを例示する概略断面図である。 発泡剤についての発泡率-時間曲線を例示するグラフである。 接着剤組成物についてのDSC曲線を例示するグラフである。 発泡剤についての発泡率-時間曲線と、接着剤組成物についてのDSC曲線とを例示するグラフである。 発泡剤についての発泡率-時間曲線と、接着剤組成物から発泡剤を除いた組成物についてのDSC曲線とを例示するグラフである。 本開示における発泡性接着シートを例示する概略断面図である。 本開示における発泡性接着シートを例示する概略断面図である。 製造例1~3の接着剤組成物について、発泡剤についての発泡率-時間曲線と、接着剤組成物についてのDSC曲線とを例示するグラフである。 接着剤組成物1について、発泡剤についての発泡率-時間曲線と、接着剤組成物から発泡剤を除いた組成物についてのDSC曲線とを例示するグラフである。 接着剤組成物4について、発泡剤についての発泡率-時間曲線と、接着剤組成物から発泡剤を除いた組成物についてのDSC曲線とを例示するグラフである。 加熱温度および加熱温度での保持時間と、接着強度との関係を示すグラフである。 加熱温度および加熱温度での保持時間と、凝集破壊率との関係を示すグラフである。
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面側に」または「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。
また、本明細書において、「シート」には、「フィルム」と呼ばれる部材も含まれる。また、「フィルム」には、「シート」と呼ばれる部材も含まれる。また、本明細書における数値範囲は、平均的な値の範囲である。
以下、本開示における物品の製造方法、ならびにそれに用いられる接着剤組成物および発泡性接着シートについて、詳細に説明する。
A.物品の製造方法
本開示における物品の製造方法は、第一部材および第二部材の間に、熱硬化性樹脂および発泡剤を含有する接着剤組成物を配置する配置工程と、上記接着剤組成物を加熱して発泡硬化させ、上記第一部材および上記第二部材を接着する接着工程と、を有する物品の製造方法であって、上記発泡剤は、熱膨張性マイクロカプセルであり、上記発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、上記接着工程での加熱条件で、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、上記発泡剤の発泡率を縦軸とした発泡率-時間曲線において、ピークの長時間側の曲線にピークの頂点で引いた接線の傾きをAとし、上記接着剤組成物に対して、上記接着工程での加熱条件で、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、熱流を縦軸としたDSC曲線において、発熱ピークの長時間側の曲線に発熱ピークの頂点で引いた接線の傾きをBとしたとき、A<Bであり、上記発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、上記発泡剤の発泡率を縦軸とした発泡率-時間曲線において、ピークの頂点の時間をT1とし、上記接着剤組成物から上記発泡剤を除いた組成物に対して、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、熱流を縦軸としたDSC曲線において、発熱ピークの頂点の時間をT2としたとき、上記接着工程では、T1<T2となるように、上記接着剤組成物を加熱する、製造方法である。
本開示における物品の製造方法について、図面を参照して説明する。図1(a)~(b)は、本開示における物品の製造方法を例示する工程図である。また、図1(a)~(b)は、図2に例示する発泡性接着シートを用いる、物品の製造方法の例である。図2に示すように、発泡性接着シート10は、熱硬化性樹脂および発泡剤を含有する接着剤組成物を含有する接着層1を有している。物品の製造方法においては、まず、図1(a)に示すように、第一部材20aおよび第二部材20bの間に、発泡性接着シート10を配置する。次に、図1(b)に示すように、発泡性接着シート10の接着層に含まれる接着剤組成物を加熱して発泡硬化させる。発泡硬化後の接着シート11により、第一部材20aおよび第二部材20bは接着(接合)される。これにより、第一部材20aおよび第二部材20bの間に接着シート11が配置された物品100が得られる。
本開示において、発泡剤は、熱膨張性マイクロカプセルであり、樹脂からなるシェルの内部に炭化水素等の熱膨張剤が内包されている。ここで、熱膨張性マイクロカプセルにおいては、加熱すると、シェルを構成する樹脂が軟化するとともに、炭化水素等の熱膨張剤の圧力が上昇し、熱膨張性マイクロカプセルが膨張する。膨張によってシェルが薄くなるため、さらに加熱を続けると、熱膨張性マイクロカプセルから熱膨張剤が抜けてしまい、熱膨張性マイクロカプセルが収縮する。そのため、発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、接着工程での加熱条件で、示差走査熱量測定を行ったとき、例えば図3に示すような、時間を横軸、発泡剤の発泡率を縦軸とした発泡率-時間曲線が得られる。
また、本開示において、接着剤組成物は、熱硬化性樹脂を含有する。そのため、接着剤組成物に対して、接着工程での加熱条件で、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、熱流を縦軸としたDSC曲線においては、例えば図4に示すように、熱硬化性樹脂の硬化反応による発熱ピークが見られる。
図5は、発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、接着工程での加熱条件で、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、発泡剤の発泡率を縦軸とした発泡率-時間曲線と、接着剤組成物に対して、接着工程での加熱条件で、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、熱流を縦軸としたDSC曲線とを重ね合わせたグラフである。図5に示すように、発泡剤についての発泡率-時間曲線31において、ピークの長時間側の曲線にピークの頂点で引いた接線L1の傾きをAとする。また、接着剤組成物についてのDSC曲線32において、発熱ピークの長時間側の曲線に発熱ピークの頂点で引いた接線L2の傾きをBとする。このとき、A<Bである。
本開示においては、A<Bであることにより、発泡剤の収縮が進行する前に、熱硬化性樹脂の硬化反応を進行させ、熱硬化性樹脂を十分に硬化させることができる。そのため、発泡時の接着層の厚さを維持することができ、接着強度を向上させることができる。
一方、A≧Bである場合には、熱硬化性樹脂の硬化反応が進行する前に、発泡剤の収縮が進行してしまう。そのため、発泡時の接着層の厚さを維持することができず、接着強度が低下する可能性がある。
図6は、発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、発泡剤の発泡率を縦軸とした発泡率-時間曲線と、接着剤組成物から発泡剤を除いた組成物に対して、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、熱流を縦軸としたDSC曲線とを重ね合わせたグラフである。図6に示すように、発泡剤についての発泡率-時間曲線33において、ピークの頂点の時間をT1とする。また、接着剤組成物から発泡剤を除いた組成物についてのDSC曲線34において、発熱ピークの頂点の時間をT2とする。このとき、接着工程では、T1<T2となるように、接着剤組成物を加熱する。
本開示においては、接着工程では、T1<T2となるように、接着剤組成物を加熱することにより、熱硬化性樹脂の硬化反応が進行する前に、発泡剤の膨張を進行させ、発泡剤を十分に膨張させることができる。そのため、発泡時の接着層の厚さを厚くすることができ、接着強度を向上させることができる。
一方、T1≧T2である場合には、発泡剤の膨張が進行する前に、熱硬化性樹脂の硬化反応が進行してしまう。そのため、発泡剤の膨張が阻害され、発泡時の接着層の厚さが薄くなり、接着強度が低下する可能性がある。
このように本開示においては、接着剤組成物が、A<Bを満たしており、かつ、接着工程では、T1<T2となるように、接着剤組成物を加熱することにより、接着強度を向上させることができる。したがって、本開示における物品の製造方法により得られる物品の信頼性や耐久性等を向上させることが可能である。
以下、本開示における物品の製造方法の各工程および接着剤組成物について説明する。
1.接着剤組成物
本開示における接着剤組成物は、熱硬化性樹脂および発泡剤を含有する。また、発泡剤は、熱膨張性マイクロカプセルである。
(1)特性
本開示における接着剤組成物においては、発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、後述の接着工程での加熱条件で、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、発泡剤の発泡率を縦軸とした発泡率-時間曲線において、ピークの長時間側の曲線にピークの頂点で引いた接線の傾きをAとし、接着剤組成物に対して、後述の接着工程での加熱条件で、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、熱流を縦軸としたDSC曲線において、発熱ピークの長時間側の曲線に発熱ピークの頂点で引いた接線の傾きをBとしたとき、A<Bである。
ここで、発泡剤に対する示差走査熱量測定(DSC)は、以下の方法により行う。まず、発泡剤0.16mg~0.17mgを容器に秤量する。次いで、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、窒素ガスの流量20ml/min、かつ、接着工程での加熱条件で、昇温および保持を行う。
カメラを搭載した示差走査熱量計は、示差走査熱量計による熱物性を測定するととともに、示差走査熱量測定中の試料の形態や色彩等の変化を観察することができる。カメラを搭載した示差走査熱量計においては、DSCデータと画像データとが同期している。そのため、発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、示差走査熱量測定を行うことにより、発泡剤の発泡挙動を分析することができる。具体的には、まず、画像データから、発泡剤が占める面積を求める。このとき、例えば図3に示すように、すべての画像データのうち、時間が0のときの発泡剤が占める面積の値を、発泡剤の発泡率が0%であるとし、発泡剤が占める面積が最大となる値を、発泡剤の発泡率が100%であるとする。時間経過に伴う発泡剤の発泡率の変化は、例えば図3に示すような、発泡率-時間曲線として示される。カメラを搭載した示差走査熱量計は、例えば、日立ハイテクサイエンス社製「高感度型示差走査熱量計 DSC7000X」を用いることができる。
なお、発泡剤に対して示差走査熱量測定(DSC)を行うに際しては、接着剤組成物を溶剤に溶解させて発泡剤を分離してもよい。溶剤は、接着剤組成物に含まれる発泡剤以外の成分を溶解することが可能な溶剤であれば特に限定されず、接着剤組成物に含まれる熱硬化性樹脂の種類等に応じて適宜選択される。例えば、接着剤組成物に使用される溶剤を用いることができる。具体的には、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン等を用いることができる。
また、発泡剤についての発泡率-時間曲線において、ピークの長時間側の曲線にピークの頂点で引いた接線は、以下の方法により求める。ピークの頂点は、発泡剤の発泡率が100%を示す点である。また、ピークの長時間側の曲線において、発泡剤の発泡率が70%を示す点を求める。そして、例えば図5に示すように、ピークの頂点(発泡剤の発泡率が100%を示す点)と、ピークの長時間側の曲線における発泡剤の発泡率が70%を示す点とを結んだ直線を、ピークの長時間側の曲線にピークの頂点で引いた接線L1とする。
なお、発泡率-時間曲線におけるピークとは、曲線がベースラインから離れてから再度ベースラインに戻るまでの部分をいう。
また、接着剤組成物に対する示差走査熱量測定(DSC)は、以下の方法により行う。まず、接着剤組成物5.00mg~5.03mgを容器に秤量する。次いで、示差走査熱量計を用いて、窒素ガスの流量20ml/min、かつ、接着工程での加熱条件で、昇温および保持を行う。
なお、接着剤組成物に対して示差走査熱量測定(DSC)を行うに際しては、例えば接着剤組成物が溶剤を含有する場合には、溶剤を蒸発させてから、示差走査熱量測定を行う。
また、接着剤組成物についてのDSC曲線において、発熱ピークの長時間側の曲線に発熱ピークの頂点で引いた接線は、以下の方法により求める。まず、発熱ピークの頂点の熱流を求める。また、発熱ピークの頂点の熱流を100%としたとき、発熱ピークの長時間側の曲線において、熱流が70%を示す点を求める。そして、発熱ピークの頂点と、発熱ピークの長時間側の曲線における熱流が70%を示す点とを結ぶ直線を、発熱ピークの長時間側の曲線に発熱ピークの頂点で引いた接線とする。例えば図5においては、発熱ピークの頂点の熱流hf1を100%としたとき、熱流hf2は熱流hf1の70%を示す点である。発熱ピークの頂点(熱流hf1を示す点)と、熱流hf2を示す点とを結んだ直線を、発熱ピークの長時間側の曲線に発熱ピークの頂点で引いた接線L2とすることができる。
なお、接着剤組成物についてのDSC曲線は、ベースラインを0とする。
また、DSC曲線における発熱ピークとは、曲線がベースラインから離れてから再度ベースラインに戻るまでの部分をいう。
また、発泡剤についての発泡率-時間曲線と、接着剤組成物についてのDSC曲線とは、以下の方法により、重ね合わせて、一つのグラフにする。まず、横軸は時間であるため、発泡剤についての発泡率-時間曲線の横軸と、接着剤組成物についてのDSC曲線の横軸とは、一致する。また、縦軸については、発泡剤についての発泡率-時間曲線におけるベースラインの位置と、接着剤組成物についてのDSC曲線におけるベースラインの位置とを、一致させる。このとき、発泡剤についての発泡率-時間曲線は、ベースラインを0とする。また、上述したように、接着剤組成物についてのDSC曲線は、ベースラインを0とする。さらに、縦軸については、発泡剤についての発泡率-時間曲線におけるピークの頂点(発泡剤の発泡率が100%を示す点)の位置と、接着剤組成物についてのDSC曲線における発熱ピークの頂点の位置とを、一致させる。これにより、例えば図5に示すようなグラフが得られる。
また、接着剤組成物が複数の発泡剤を含有する場合は、少なくとも1つの発泡剤について、A<Bを満たしていればよい。中でも、接着剤組成物に含まれる複数の発泡剤のうち、含有量が多い発泡剤について、A<Bを満たすことが好ましい。特に、接着剤組成物に含まれる複数の発泡剤のすべてについて、A<Bを満たすことが好ましい。
発泡剤についての発泡率-時間曲線において、ピークが複数ある場合には、少なくとも1つのピークについて、A<Bを満たしていればよい。発泡率-時間曲線において、ピークが複数ある場合は、通常、接着剤組成物が複数の発泡剤を含有する。中でも、すべてのピークについて、A<Bを満たすことが好ましい。
また、接着剤組成物についてのDSC曲線において、熱硬化性樹脂の硬化反応による発熱ピークが複数ある場合には、少なくとも1つの発熱ピークについて、A<Bを満たしていればよい。DSC曲線において、熱硬化性樹脂の硬化反応による発熱ピークが複数ある場合は、例えば、接着剤組成物が複数の熱硬化性樹脂を含有する。中でも、熱硬化性樹脂の硬化反応による複数の発熱ピークのうち、傾きBが小さい発熱ピークについて、A<Bを満たすことが好ましい。特に、すべての発熱ピークについて、A<Bを満たすことが好ましい。
接着剤組成物においては、A<Bである。中でも、BはAより非常に大きいことが好ましい。傾きBが大きい場合には、熱硬化性樹脂の硬化速度が速くなる。また、傾きAが小さい場合には、発泡剤の収縮速度が遅くなる。そのため、BがAより非常に大きい場合には、発泡剤の収縮が進行する前に、熱硬化性樹脂を十分に硬化させることができ、接着強度を向上させることができる。
接着剤組成物においては、例えば、発泡剤である熱膨張性マイクロカプセルのシェルの厚さを調整することにより、傾きAを制御することができる。具体的には、熱膨張性マイクロカプセルのシェルの厚さが厚いと、傾きAが小さくなる傾向にある。一方、熱膨張性マイクロカプセルのシェルの厚さが薄いと、傾きAが大きくなる傾向にある。
また、接着剤組成物においては、例えば、接着剤組成物の組成を調整することにより、傾きBを制御することができる。例えば、接着剤組成物が硬化剤をさらに含有する場合には、傾きBが大きくなる傾向にある。また、例えば、接着剤組成物が硬化剤および硬化触媒をさらに含有する場合には、傾きBがより大きくなる傾向にある。また、例えば、接着剤組成物が多官能の熱硬化性樹脂を含有する場合には、傾きBが大きくなる傾向にある。
また、発泡剤についての発泡率-時間曲線において、ピークの頂点(発泡剤の発泡率が100%を示す点)から、発泡剤の収縮が安定するまでの時間は、例えば、0.5分以上60分以下であり、1分以上45分以下であってもよい。上記時間が短すぎると、傾きAが大きくなり、A<Bを満たさなくなる可能性がある。また、上記時間が長すぎると、発泡剤の発泡倍率が低下する可能性がある。
また、接着剤組成物についてのDSC曲線において、発熱ピークの頂点から、ベースラインに至るまでの時間は、例えば、0.1分以上30分以下であり、0.2分以上10分以下であってもよく、0.3分以上5分以下であってもよい。上記時間が長すぎると、傾きBが小さくなり、A<Bを満たさなくなる可能性がある。また、上記時間が短すぎると、保管安定性が低下する可能性がある。
後述するように、本開示において発泡性接着シートを用いる場合であって、発泡性接着シートが第一の接着層および第二の接着層を有する場合は、第一の接着層および第二の接着層のうち、少なくとも一方の接着層に含有される接着剤組成物が、発泡剤を含有していればよい。第一の接着層および第二の接着層のうち、一方の接着層に含有される接着剤組成物のみが発泡剤を含有する場合には、発泡剤を含有する接着剤組成物について、上述の特性を満たしていればよい。また、第一の接着層に含有される接着剤組成物および第二の接着層に含有される接着剤組成物の両方が発泡剤を含有する場合には、少なくとも一方の接着層に含有される接着剤組成物について、上述の特性を満たしていればよい。中でも、第一の接着層および第二の接着層の両方の接着層に含有される接着剤組成物について、上述の特性を満たすことが好ましい。
(2)組成
本開示における接着剤組成物は、熱硬化性樹脂および発泡剤を含有する。また、発泡剤は、熱膨張性マイクロカプセルである。
(a)発泡剤
発泡剤は、熱膨張性マイクロカプセルである。発泡剤としては、一般に接着剤組成物に使用される熱膨張性マイクロカプセルを用いることができる。
熱膨張性マイクロカプセルは、炭化水素等の熱膨張剤をコアとし、アクリロニトリルコポリマー等の樹脂をシェルとすることが好ましい。
発泡剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
発泡剤の発泡開始温度は、熱硬化性樹脂の軟化温度以上であり、かつ、熱硬化性樹脂の硬化反応の活性化温度以下であることが好ましい。発泡剤の発泡開始温度は、例えば、70℃以上であり、100℃以上であってもよい。発泡開始温度が低すぎると、発泡が早期に開始され、樹脂成分の柔軟性や流動性が低い状態で発泡が生じ、均一な発泡が生じにくい可能性がある。一方、発泡剤の発泡開始温度は、例えば、210℃以下である。発泡開始温度が高すぎると、樹脂成分が劣化する可能性がある。
なお、熱硬化性樹脂の軟化温度は、JIS K7234に規定される環球式軟化温度試験法を用いて測定できる。
発泡剤の平均粒径は、例えば、10μm以上であってもよく、13μm以上であってもよく、17μm以上であってもよい。また、発泡剤の平均粒径は、接着層の厚さ以下であることが好ましく、例えば、44μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、24μm以下であってもよい。
なお、発泡剤の平均粒径は、レーザー回折散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径である。また、発泡剤の平均粒径を測定するに際しては、接着剤組成物を溶剤に溶解させて発泡剤を分離する。溶剤は、接着剤組成物に含まれる発泡剤以外の成分を溶解することが可能な溶剤であれば特に限定されず、接着剤組成物に含まれる熱硬化性樹脂の種類等に応じて適宜選択される。例えば、接着剤組成物に使用される溶剤を用いることができる。具体的には、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン等を用いることができる。
発泡剤の最大発泡温度での発泡倍率は、例えば1.5倍以上であり、3倍以上であってもよい。一方、発泡剤の最大発泡温度での発泡倍率は、例えば15倍以下であり、10倍以下であってもよい。
発泡剤の含有量は、接着剤組成物に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、0.5質量部以上であり、2質量部以上であってもよく、3質量部以上であってもよく、4質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよい。一方、発泡剤の含有量は、接着剤組成物に含まれる樹脂成分100質量部に対して、例えば25質量部以下であり、20質量部以下であってもよく、15質量部以下であってもよい。
(b)熱硬化性樹脂
熱硬化性樹脂としては、一般に接着剤組成物に使用される熱硬化性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂は、例えば金属製の部材のように、第一部材や第二部材が透明性を有さない場合でも適用可能である。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。
中でも、エポキシ樹脂が好ましい。この場合、接着剤組成物は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂と、硬化剤と、発泡剤とを含有することが好ましい。一般に、エポキシ樹脂を含有する接着剤組成物は、機械的強度、耐熱性、絶縁性、耐薬品性等に優れており、硬化収縮が小さく、幅広い用途に用いることができる。
以下、エポキシ樹脂について例を挙げて説明する。
(エポキシ樹脂)
本開示におけるエポキシ樹脂は、少なくとも1つ以上のエポキシ基またはグリシジル基を有し、硬化剤との併用により架橋重合反応を起こして硬化する化合物である。エポキシ樹脂には、少なくとも1つ以上のエポキシ基またはグリシジル基を有する単量体も含まれる。
エポキシ樹脂としては、例えば、芳香族系エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環系エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂やゴム変性エポキシ樹脂等の変性エポキシ樹脂が挙げられる。また、他の具体例としては、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリコール型エポキシ樹脂、ペンタエリスリトール型エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノール骨格の繰り返し単位の数によって、常温で液体の状態、または常温で固体の状態で存在することができる。主鎖のビスフェノール骨格が、例えば2以上10以下であるビスフェノールA型エポキシ樹脂は、常温で固体である。特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、耐熱性向上を図ることができる点で好ましい。
エポキシ樹脂は、1官能のエポキシ樹脂であってもよく、2官能のエポキシ樹脂であってもよく、3官能のエポキシ樹脂であってもよく、4官能以上のエポキシ樹脂であってもよい。
(c)アクリル樹脂
本開示において、接着剤組成物が、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含有する場合、エポキシ樹脂と相溶するアクリル樹脂をさらに含有していてもよい。アクリル樹脂は、エポキシ樹脂と相溶した樹脂である。アクリル樹脂は、エポキシ樹脂と相溶することから、接着層の靭性を向上させやすい。その結果、発泡硬化後の接着性を向上させることができる。さらに、アクリル樹脂が、発泡剤(例えば、シェル部がアクリロニトリルコポリマーの樹脂である発泡剤)の相溶化剤として働き、均一に分散、発泡することで、発泡硬化後の接着性が向上すると考えられる。また、アクリル樹脂による柔軟性が発揮され、発泡硬化後の基材に対する密着性や発泡硬化後の耐割れ性の向上を図ることができる。また、アクリル樹脂がエポキシ樹脂と相溶することで、接着層の表面の硬度を高く保つことができる。一方、アクリル樹脂がエポキシ樹脂と非相溶であると、接着層の表面に柔軟な部位が形成されるため、第一部材や第二部材との界面が滑りにくくなり、作業性が低下することがある。
本開示におけるアクリル樹脂は、エポキシ樹脂と相溶している。ここで、アクリル樹脂がエポキシ樹脂と相溶していることは、例えば、接着剤組成物を用いて接着層を作製し、その接着層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したときに、ミクロンサイズの島が発生していないことから確認することができる。より具体的には、島の平均粒径が1μm以下であることが好ましい。中でも、島の平均粒径は、0.5μm以下であってもよく、0.3μm以下であってもよい。サンプル数は多いことが好ましく、例えば100以上である。観察するエリア面積は、100μm×100μmの範囲、もしくは、接着層の厚さが100μm以下の場合は、厚さ×100μmの範囲で行う。
アクリル樹脂は、極性基を有していてもよい。極性基としては、例えば、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、ニトリル基、アミド基が挙げられる。
アクリル樹脂は、アクリル酸エステル単量体の単独重合体であり、上記単独重合体を2種以上含む混合成分であってもよく、2種以上のアクリル酸エステル単量体の共重合体であり、共重合体を1以上含む成分であってもよい。また、アクリル樹脂は、上記単独重合体と上記共重合体との混合成分であってもよい。アクリル酸エステル単量体の「アクリル酸」には、メタクリル酸の概念も含まれる。具体的には、アクリル樹脂は、メタクリレートの重合体とアクリレートの重合体との混合物であってもよく、アクリレート-アクリレート、メタクリレート-メタクリレート、メタクリレート-アクリレート等のアクリル酸エステル重合体であってもよい。中でも、アクリル樹脂は、2種以上のアクリル酸エステル単量体の共重合体((メタ)アクリル酸エステル共重合体)を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する単量体成分としては、例えば、特開2014-065889号公報に記載の単量体成分が挙げられる。上記単量体成分は、上述した極性基を有していてもよい。上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、エチルアクリレート-ブチルアクリレート-アクリロニトリル共重合体、エチルアクリレート-アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート-アクリロニトリル共重合体が挙げられる。なお、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等の「アクリル酸」には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の「メタクリル酸」も含まれる。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、ブロック共重合体が好ましく、さらにメタクリレート-アクリレート共重合体等のアクリル系ブロック共重合体が好ましい。アクリル系ブロック共重合体を構成する(メタ)アクリレートとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジジルが挙げられる。これらの「アクリル酸」には、「メタクリル酸」も含まれる。
メタクリレート-アクリレート共重合体の具体例としては、メチルメタクリレート-ブチルアクリレート-メチルメタクリレート(MMA-BA-MMA)共重合体等のアクリル系共重合体が挙げられる。MMA-BA-MMA共重合体には、ポリメチルメタクリレート-ポリブチルアクリレート-ポリメチルメタクリレート(PMMA-PBA-PMMA)のブロック共重合体も含まれる。
アクリル系共重合体は、極性基を有していなくてもよく、また一部に上述した極性基を導入した変性物であってもよい。上記変性物は、エポキシ樹脂と相溶しやすいため、接着性がより向上する。
中でも、アクリル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が10℃以下である第一重合体部分と、ガラス転移温度(Tg)が20℃以上である第二重合体部分とを有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体であることが好ましい。このような(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、柔らかいセグメントとなる第一重合体部分と、硬いセグメントとなる第二重合体部分とを有する。このような共重合体を添加することにより、接着層は、硬化後の靭性が向上して接着力をより高めることができる。
上記の効果の発現は、以下のように推定できる。上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体のような、柔らかいセグメントと、硬いセグメントとを併せ持つアクリル樹脂を用いることで、硬いセグメントが耐熱性に寄与し、柔らかいセグメントが靱性ないし柔軟性に寄与するため、耐熱性、靱性、柔軟性が良好な接着層が得られる。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第一重合体部分および第二重合体部分の少なくとも一方は、エポキシ樹脂に対して相溶性を有する。第一重合体部分がエポキシ樹脂に対して相溶性を有する場合には、柔軟性を高めることができる。また、第二重合体部分がエポキシ樹脂に対して相溶性を有する場合には、凝集性や靱性を高めることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、中でもブロック共重合体であることが好ましく、特に、相溶部位を重合体ブロックA、非相溶部位を重合体ブロックBとするA-B-Aブロック共重合体であることが好ましい。さらには、第一重合体部分が非相溶部位、第二重合体部分が相溶部位であり、第一重合体部分を重合体ブロックB、第二重合体部分を重合体ブロックAとするA-B-Aブロック共重合体であることが好ましい。
また、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、第一重合体部分または第二重合体部分の一部に上述の極性基を導入した変性物であってもよい。
上記の第一重合体部分および第二重合体部分を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体の具体例としては、上記のMMA-BA-MMA共重合体が挙げられる。
アクリル樹脂の含有量は、接着剤組成物に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、1質量部以上であり、3質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよく、7質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよい。アクリル樹脂の含有量が少なすぎると、発泡硬化後の接着性および接着層の基材に対する密着性が低下する可能性がある。一方、アクリル樹脂の含有量は、接着剤組成物に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、60質量部以下であり、50質量部以下であってもよく、40質量部以下であってもよく、35質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよい。アクリル樹脂の含有量が多すぎると、膜強度が低下する可能性がある。
(d)硬化剤
本開示における接着剤組成物は、硬化剤をさらに含有することができる。
接着剤組成物が、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含有する場合、硬化剤としては、一般にエポキシ樹脂系接着剤に使用される硬化剤を用いることができる。
硬化剤は、23℃で固体であることが好ましい。23℃で固体である硬化剤は、23℃で液体である硬化剤と比較して、保存安定性(ポットライフ)を長くすることができる。また、硬化剤は、潜在性硬化剤であってもよい。また、硬化剤は、通常、熱により硬化反応が生じる硬化剤である。また、硬化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
硬化剤の反応開始温度は、例えば110℃以上であり、130℃以上であってもよい。反応開始温度が低すぎると、反応が早期に開始され、樹脂成分の柔軟性や流動性が低い状態で硬化が生じ、均一な硬化が生じにくい可能性がある。一方、硬化剤の反応開始温度は、例えば、200℃以下である。反応開始温度が高すぎると、樹脂成分が劣化する可能性がある。なお、エポキシ樹脂の他に、例えばフェノール樹脂等の耐熱性が高い樹脂を使用する場合には、樹脂成分の劣化が少ないため、硬化剤の反応開始温度は、例えば300℃以下であってもよい。硬化剤の反応開始温度は、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。
硬化剤の具体例としては、イミダゾール系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、チオール系硬化剤が挙げられる。
イミダゾール系硬化剤としては、例えば、イミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールや、イミダゾール化合物のカルボン酸塩、エポキシ化合物との付加物が挙げられる。また、イミダゾール系硬化剤は、ヒドロキシル基を有することが好ましい。ヒドロキシ基同士の水素結合で結晶化するため、反応開始温度が高くなる傾向にある。
フェノール系硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂が挙げられる。さらに、フェノール樹脂としては、例えば、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。発泡硬化後の基材に対する密着性や発泡硬化後の耐割れ性等の観点から、Tgが110℃以下のフェノール型ノボラック樹脂が特に好ましい。また、フェノール系硬化剤およびイミダゾール系硬化剤を併用してもよい。その場合、イミダゾール系硬化剤を硬化触媒として用いることが好ましい。
アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)等の脂肪族アミン;ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m-フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)等の芳香族アミン;脂環式アミン;ポリアミドアミンが挙げられる。また、アミン系硬化剤として、ジシアンジアミド(DICY)等のジシアンジアミド系硬化剤、有機酸ジヒドラジド系硬化剤、アミンアダクト系硬化剤、ケチミン系硬化剤を用いることができる。
酸無水物系硬化剤としては、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)等の脂環族酸無水物(液状酸無水物);無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等の芳香族酸無水物が挙げられる。
イソシアネート系硬化剤としては、例えば、ブロックイソシアネートが挙げられる。
チオール系硬化剤としては、例えば、エステル結合型チオール化合物、脂肪族エーテル結合型チオール化合物、芳香族エーテル結合型チオール化合物が挙げられる。
中でも、イミダゾール系硬化剤以外の硬化剤と、イミダゾール系硬化剤とを併用することが好ましい。その場合、イミダゾール系硬化剤を硬化触媒として用いることが好ましい。
硬化剤の含有量は、接着剤組成物に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、1質量部以上、40質量部以下である。例えば、硬化剤としてイミダゾール系硬化剤を主成分として用いる場合、硬化剤の含有量は、接着剤組成物に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、1質量部以上、15質量部以下であることが好ましい。一方、硬化剤としてフェノール系硬化剤を主成分として用いる場合、硬化剤の含有量は、接着剤組成物に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、5質量部以上、40質量部以下であることが好ましい。なお、硬化剤としてイミダゾール系硬化剤またはフェノール系硬化剤を主成分として用いるとは、硬化剤において、イミダゾール系硬化剤またはフェノール系硬化剤の質量割合が最も多いことをいう。
(e)その他の成分
本開示における接着剤組成物は、例えば熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、樹脂成分として、上記のエポキシ樹脂およびアクリル樹脂のみを含有していてもよく、他の樹脂をさらに含有していてもよい。他の樹脂としては、例えばウレタン樹脂が挙げられる。
接着剤組成物に含まれる樹脂成分に対する、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂の合計の割合は、例えば70質量%以上であり、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
接着剤組成物に含まれる樹脂成分の含有量は、例えば60質量%以上であり、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。
接着剤組成物は、必要に応じて、例えばシランカップリング剤、充填剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、架橋剤、着色剤等の添加剤を含有していてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ系シランカップリング剤が挙げられる。充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物、二酸化チタン等の無機充填剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤が挙げられる。
接着剤組成物は、溶媒を含有していてもよく、溶媒を含有していなくてもよい。なお、本明細書における溶媒は、厳密な溶媒(溶質を溶解させる溶媒)のみならず、分散媒も含む広義の意味である。また、接着剤組成物に含まれる溶媒は、接着剤組成物を塗布乾燥して接着層を形成する際に揮発して除去される。
(3)調製方法
接着剤組成物は、上述した各成分を混合し、必要に応じて混練、分散することにより、得ることができる。混合および分散方法としては、一般的な混練分散機、例えば、二本ロールミル、三本ロールミル、ペブルミル、トロンミル、ツェグバリ(Szegvari)アトライター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、デスパー、高速ミキサー、リボンブレンダー、コニーダー、インテンシブミキサー、タンブラー、ブレンダー、デスパーザー、ホモジナイザー、超音波分散機が適用できる。
2.配置工程
本開示における配置工程は、第一部材および第二部材の間に、上記接着剤組成物を配置する工程である。
第一部材および第二部材の間に上記接着剤組成物を配置する際には、例えば、接着剤組成物を含有する接着層を有する発泡性接着シートを用い、第一部材および第二部材の間に、発泡性接着シートを配置してもよい。また、例えば、液状の接着剤組成物を用い、第一部材および第二部材の少なくとも一方の面に、液状の接着剤組成物を塗布してもよい。中でも、発泡性接着シートを用い、第一部材および第二部材の間に、発泡性接着シートを配置することが好ましい。発泡性接着シートは、取扱性および作業性に優れる。
発泡性接着シートを用いる場合、発泡性接着シートは、例えば、接着剤組成物を含有する接着層のみを有していてもよく、接着剤組成物を含有する第一の接着層と、接着剤組成物を含有する第二の接着層とを有していてもよく、接着剤組成物を含有する第一の接着層と、基材と、接着剤組成物を含有する第二の接着層とをこの順に有していてもよい。
なお、発泡性接着シートについては、後述する。
また、発泡性接着シートを用いる場合、第一部材および第二部材の間に発泡性接着シートを配置する方法は、第一部材および第二部材の種類等に応じて適宜選択される。例えば、第一部材および第二部材のうち、一方の部材に発泡性接着シートを配置し、発泡性接着シートの一方の部材とは反対の面側に他方の部材を配置する方法;第一部材および第二部材の間の隙間に発泡性接着シートを挿入する方法;第一部材の穴や溝等に発泡性接着シートを配置した後、第一部材の穴や溝等の中の発泡性接着シートを配置した後の隙間に第二部材を挿入する方法等が挙げられる。また、例えば、第一部材が穴や溝を有しており、第一部材の穴や溝に第二部材を配置して接着する場合には、第二部材に発泡性接着シートを貼り付けた後、第一部材の穴や溝に、発泡性接着シートが貼り付けられた第二部材を配置する方法;第一部材の穴や溝に発泡性接着シートを貼り付けた後、発泡性接着シートが貼り付けられた第一部材の穴や溝に、第二部材を配置する方法等が挙げられる。
また、液状の接着剤組成物を用いる場合、第一部材および第二部材の間に液状の接着剤組成物を配置する方法は、第一部材および第二部材の種類等に応じて適宜選択される。例えば、第一部材および第二部材のうち、一方の部材に液状の接着剤組成物を塗布し、液状の接着剤組成物の塗膜に他方の部材を配置する方法;第一部材および第二部材の間の隙間に液状の接着剤組成物を注入する方法;第一部材の穴や溝等に液状の接着剤組成物を塗布した後、第一部材の穴や溝等の中の液状の接着剤組成物を塗布した後の隙間に第二部材を挿入する方法等が挙げられる。また、例えば、第一部材が穴や溝を有しており、第一部材の穴や溝に第二部材を配置して接着する場合には、第二部材に液状の接着剤組成物を塗布した後、第一部材の穴や溝に、液状の接着剤組成物が塗布された第二部材を配置する方法;第一部材の穴や溝に液状の接着剤組成物を塗布した後、液状の接着剤組成物が塗布された第一部材の穴や溝に、第二部材を配置する方法等が挙げられる。
液状の接着剤組成物の塗布方法は、特に限定されず、例えば、ロールコート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、ロッドコ-ト、ブレードコート、バーコート、ワイヤーバーコート、ダイコート、リップコート、ディップコート等が挙げられる。
3.接着工程
本開示における接着工程は、上記接着剤組成物を加熱して発泡硬化させ、第一部材および第二部材を接着する工程である。
本開示においては、上記発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、上記発泡剤の発泡率を縦軸とした発泡率-時間曲線において、ピークの頂点の時間をT1とし、上記接着剤組成物から上記発泡剤を除いた組成物に対して、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、熱流を縦軸としたDSC曲線において、発熱ピークの頂点の時間をT2としたとき、接着工程では、T1<T2となるように、上記接着剤組成物を加熱する。
ここで、発泡剤に対する示差走査熱量測定(DSC)は、以下の方法により行う。まず、発泡剤0.16mg~0.17mgを容器に秤量する。次いで、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、窒素ガスの流量20ml/min、かつ、所定の昇温速度、加熱温度、保持時間、昇温速度で、昇温および保持を行う。
また、接着剤組成物から発泡剤を除いた組成物に対する示差走査熱量測定(DSC)は、以下の方法により行う。まず、接着剤組成物から発泡剤を除いた組成物5.00mg~5.03mgを容器に秤量する。次いで、示差走査熱量計を用いて、窒素ガスの流量20ml/min、かつ、所定の昇温速度、加熱温度、保持時間、昇温速度で、昇温および保持を行う。このとき、発泡剤に対する示差走査熱量測定(DSC)と、接着剤組成物から発泡剤を除いた組成物に対する示差走査熱量測定(DSC)とでは、加熱条件を同一とする。
また、発泡剤についての発泡率-時間曲線と、接着剤組成物から発泡剤を除いた組成物についてのDSC曲線とは、以下の方法により、重ね合わせて、一つのグラフにする。横軸は時間であるため、発泡剤についての発泡率-時間曲線の横軸と、接着剤組成物から発泡剤を除いた組成物についてのDSC曲線の横軸とは、一致する。これにより、例えば図6に示すようなグラフが得られる。
また、接着剤組成物が複数の発泡剤を含有する場合は、少なくとも1つの発泡剤について、T1<T2を満たしていればよい。中でも、接着剤組成物に含まれる複数の発泡剤のうち、含有量が多い発泡剤について、T1<T2を満たすことが好ましい。特に、接着剤組成物に含まれる複数の発泡剤のすべてについて、T1<T2を満たすことが好ましい。
発泡剤についての発泡率-時間曲線において、ピークが複数ある場合には、少なくとも1つのピークについて、T1<T2を満たしていればよい。発泡率-時間曲線において、ピークが複数ある場合は、通常、接着剤組成物が複数の発泡剤を含有する。中でも、すべてのピークについて、T1<T2を満たすことが好ましい。
また、接着剤組成物が複数の熱硬化性樹脂を含有する場合は、接着剤組成物に含まれる複数の熱硬化性樹脂のすべてについて、T1<T2を満たしていることが好ましい。
接着剤組成物から発泡剤を除いた組成物についてのDSC曲線において、熱硬化性樹脂の硬化反応による発熱ピークが複数ある場合には、すべての発熱ピークについて、T1<T2を満たしていることが好ましい。
接着工程では、T1<T2となるように、上記接着剤組成物を加熱する。
接着工程においては、例えば、室温から加熱温度までの昇温時間を調整することにより、発泡剤についての発泡率-時間曲線における、ピークの頂点の時間T1と、接着剤組成物から発泡剤を除いた組成物についてのDSC曲線における、発熱ピークの頂点の時間T2とを制御することができる。具体的には、室温から加熱温度までの昇温時間が短いと、T1がT2よりも短時間側になる傾向にある。一方、室温から加熱温度までの昇温時間が長いと、T1がT2よりも長時間側になる傾向にある。
また、接着工程での加熱温度は、例えば、発泡剤の最大発泡温度の±40℃の範囲内であることが好ましく、発泡剤の最大発泡温度の±30℃の範囲内であることがより好ましく、発泡剤の最大発泡温度の±20℃の範囲内であることがさらに好ましい。加熱温度が上記範囲よりも高いと、熱硬化性樹脂が硬化していても、発泡剤が収縮することによって、発泡時の接着層の厚さを維持することができず、接着強度が低下する可能性がある。一方、加熱温度が上記範囲よりも低いと、発泡剤の膨張が不十分になり、接着強度が低下する可能性がある。この場合、発泡硬化後の接着剤組成物と第一部材または第二部材との間で、界面破壊が生じやすくなる可能性がある。
なお、発泡剤の最大発泡温度は、発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、発泡剤の発泡率を縦軸とした発泡率-時間曲線において、ピークの頂点の温度をいう。この場合、示差走査熱量測定における加熱条件は、例えば、昇温速度31℃/minとすることができる。
また、接着工程において、室温から加熱温度までの昇温時間は、例えば、0.1分以上60分以下であり、0.3分以上45分以下であってもよく、0.5分以上30分以下であってもよい。昇温時間が短すぎると、昇温速度が速くなり、オーバーシュートが発生して、目標温度からのずれが大きくなる可能性がある。一方、昇温時間が長すぎると、T1<T2を満たさなくなる可能性がある。
また、接着工程において、加熱温度での保持時間は、例えば、0.5分以上240分以下であり、1分以上120分以下であってもよく、2分以上60分以下であってもよい。加熱温度が高く、かつ、保持時間が長い場合には、熱硬化性樹脂が硬化していても、発泡剤が収縮することによって、発泡時の接着層の厚さを維持することができず、接着強度が低下する可能性がある。
4.発泡性接着シート
本開示における発泡性接着シートは、上記接着剤組成物を含有する接着層を少なくとも有する。
また、発泡性接着シートは、接着層のみを有していてもよく、第一の接着層と、第二の接着層とを有していてもよく、第一の接着層と、基材と、第二の接着層とをこの順に有していてもよい。第一の接着層および第二の接着層の間に基材が配置されている場合には、発泡性接着シートの取扱性および作業性を良くすることができる。一方、発泡性接着シートが基材を有さない場合には、発泡性接着シート全体の厚さを薄くすることができる。そのため、例えば、狭い隙間にも発泡性接着シートを挿入可能である。
例えば図2に示す発泡性接着シート10は、接着層1のみを有している。また、例えば図7に示す発泡性接着シート10は、第一の接着層1aと、基材2と、第二の接着層1bとをこの順に有している。
(1)接着層
接着層は、上記接着剤組成物を含有する。
接着層の厚さは、特に限定されないが、発泡剤の平均粒径以上であることが好ましく、例えば10μm以上であり、15μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。接着層が薄すぎると、基材との密着性および発泡硬化後の接着性を十分に得ることができない可能性がある。一方、接着層の厚さは、例えば200μm以下であり、150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。接着層が厚すぎると、面質が悪化する可能性がある。
ここで、接着層の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)により観察される発泡性接着シートの厚さ方向の断面から測定した値であり、無作為に選んだ10箇所の厚さの平均値とすることができる。なお、発泡性接着シートが有する他の層の厚さの測定方法についても同様とすることができる。
接着層は、連続層であってもよく、不連続層であってもよい。不連続層としては、例えば、ストライプ、ドット等のパターンが挙げられる。また、接着層の表面が、エンボス等の凹凸形状を有していてもよい。
接着層は、例えば、上記接着剤組成物を塗布し、溶剤を除去することで形成することができる。塗布方法としては、例えば、ロールコート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、ロッドコ-ト、ブレードコート、バーコート、ワイヤーバーコート、ダイコート、リップコート、ディップコート等が挙げられる。
(2)基材
基材は、絶縁性を有することが好ましい。また、基材は、シート状であることが好ましい。基材は、単層構造を有していてもよく、複層構造を有していてもよい。また、基材は、内部に多孔構造を有していてもよく、有していなくてもよい。
基材としては、例えば、樹脂基材、不織布が挙げられる。
樹脂基材に含まれる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、芳香族ポリエステル等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリウレタン;ポリアミド、ポリエーテルアミド等のポリアミド樹脂;ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド樹脂;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のポリスルホン樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のポリエーテルケトン樹脂;ポリフェニレンサルファイド(PPS);変性ポリフェニレンオキシド等が挙げられる。樹脂のガラス転移温度は、例えば80℃以上であり、140℃以上であってもよく、200℃以上であってもよい。また、樹脂として、液晶ポリマー(LCP)を用いてもよい。
不織布としては、例えば、セルロース繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、液晶ポリマー繊維、ガラス繊維、金属繊維、カーボン繊維等の繊維を含む不織布が挙げられる。
基材は、接着層との密着性を高めるため、表面処理が施されていてもよい。
基材の平均厚さは、特に限定されず、例えば2μm以上であり、5μm以上であってもよく、9μm以上であってもよい。また、基材の平均厚さは、例えば200μm以下であり、100μm以下であってもよく、50μm以下であってもよい。
(3)その他の構成
本開示における発泡性接着シートは、上記の接着層および基材に加えて、必要に応じて、他の構成を有していてもよい。
(a)中間層
本開示における発泡性接着シートは、基材および接着層の間に中間層を有していてもよい。中間層が配置されていることにより、接着層の基材に対する密着性を向上させることができる。さらには、中間層が配置されていることで、例えば、発泡性接着シートを折り曲げた際に屈曲部にかかる応力を緩和したり、発泡性接着シートを切断した際に切断部にかかる応力を緩和したりすることができる。その結果、発泡性接着シートの屈曲時や切断時において基材からの接着層の浮きや剥がれを抑制することができる。
例えば、図8に示す発泡性接着シート10においては、基材2および第一の接着層1aの間に第一の中間層3aが配置され、基材2および第二の接着層1bの間に第二の中間層3bが配置されている。なお、図8においては、発泡性接着シート10は、第一の中間層3aおよび第二の中間層3bの両方を有するが、いずれか一方のみを有していてもよい。
中間層に含まれる材料としては、基材と接着層との密着性を高めることができ、かつ、応力を緩和することができる材料であれば特に限定されず、基材および接着層の材料等に応じて適宜選択される。例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、それらの少なくとも2種以上を共重合させた重合体、それらの架橋体、およびそれらの混合物等が挙げられる。
架橋体は、上記の樹脂を硬化剤により架橋した架橋体である。硬化剤としては、例えば、イソシアネート系硬化剤が挙げられる。また、例えば、反応基/NCO当量を1とした場合、樹脂に対してイソシアネート系硬化剤を、0.5質量%以上、20質量%以下の割合で添加することが好ましい。
中でも、中間層は、架橋された樹脂を含有することが好ましい。なお、架橋された樹脂とは、高温にしても溶融しないものをいう。これにより、高温下での接着力、つまり耐熱性を向上させることができる。
中間層の厚さは、特に限定されないが、例えば0.1μm以上であり、0.5μm以上であってもよく、1μm以上であってもよい。中間層が薄すぎると、発泡性接着シートの屈曲時および切断時の基材からの接着層の剥がれを抑制する効果が十分に得られない可能性がある。一方、中間層の厚さは、例えば4μm以下であり、3.5μm以下であってもよい。中間層自体は、通常、耐熱性が高くないため、中間層が厚すぎると、耐熱性(高温下での接着力)が低下する可能性がある。
中間層は、例えば、樹脂組成物を塗布し、溶剤を除去することで形成することができる。塗布方法としては、例えば、ロールコート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、ロッドコ-ト、ブレードコート、バーコート、ワイヤーバーコート、ダイコート、リップコート、ディップコートが挙げられる。
(4)発泡性接着シート
本開示における発泡性接着シートの厚さは、例えば10μm以上であり、20μm以上であってもよい。一方、発泡性接着シートの厚さは、例えば1000μm以下であり、200μm以下であってもよい。
(5)発泡性接着シートの製造方法
本開示における発泡性接着シートの製造方法は、特に限定されない。例えば、発泡性接着シートが基材を有さない場合には、セパレータの一方の面に上記接着剤組成物を塗布および乾燥することによって、接着層を形成した後、接着層からセパレータを剥離する方法を挙げることができる。また、例えば、発泡性接着シートが、第一の接着層と基材と第二の接着層とをこの順に有する場合には、基材の両面にそれぞれ、上記接着剤組成物を塗布および乾燥することによって、第一の接着層および第二の接着層を形成する方法を挙げることができる。第一の接着層および第二の接着層は、順次形成してもよく、同時に形成してもよい。また、例えば、基材の一方の面に上記接着剤組成物を塗布および乾燥することによって第一の接着層を形成し、また、セパレータの一方の面に上記接着剤組成物を塗布および乾燥することによって第二の接着層を形成し、基材の他方の面に第二の接着層およびセパレータをラミネートする方法も挙げられる。
5.第一部材および第二部材
本開示における第一部材および第二部材は、物品の用途等に応じて適宜選択される。第一部材および第二部材は、接着および絶縁が必要な部材であることが好ましい。例えば、電気・電子機器の部品が挙げられる。
B.接着剤組成物
本開示における接着剤組成物は、熱硬化性樹脂および発泡剤を含有する接着剤組成物であって、上記発泡剤は、熱膨張性マイクロカプセルであり、上記発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、室温から上記発泡剤の最大発泡温度まで5分間で昇温し、上記発泡剤の最大発泡温度で保持する加熱条件で、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、上記発泡剤の発泡率を縦軸とした発泡率-時間曲線において、ピークの長時間側の曲線にピークの頂点で引いた接線の傾きをCとし、上記接着剤組成物に対して、上記加熱条件で、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、熱流を縦軸としたDSC曲線において、発熱ピークの長時間側の曲線にピークの頂点で引いた接線の傾きをDとしたとき、C<Dである。
ここで、発泡剤に対する示差走査熱量測定(DSC)は、以下の方法により行う。まず、発泡剤0.16mg~0.17mgを容器に秤量する。次いで、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、窒素ガスの流量20ml/min、かつ、室温から発泡剤の最大発泡温度まで5分で昇温し、発泡剤の最大発泡温度で保持する加熱条件で、昇温および保持を行う。
なお、発泡剤についての発泡率-時間曲線において、ピークの長時間側の曲線にピークの頂点で引いた接線の求め方は、上記「A.物品の製造方法」に記載した方法と同様である。
また、接着剤組成物に対する示差走査熱量測定(DSC)は、以下の方法により行う。まず、接着剤組成物5.00mg~5.03mgを容器に秤量する。次いで、示差走査熱量計を用いて、窒素ガスの流量20ml/min、かつ、室温から発泡剤の最大発泡温度まで5分で昇温し、発泡剤の最大発泡温度で保持する加熱条件で、昇温および保持を行う。
なお、接着剤組成物についてのDSC曲線において、発熱ピークの長時間側の曲線に発熱ピークの頂点で引いた接線の求め方は、上記「A.物品の製造方法」に記載した方法と同様である。
また、発泡剤についての発泡率-時間曲線と、接着剤組成物についてのDSC曲線とを重ね合わせて、一つのグラフにする方法は、上記「A.物品の製造方法」に記載した方法と同様である。
また、接着剤組成物が複数の発泡剤を含有する場合は、少なくとも1つの発泡剤について、C<Dを満たしていればよい。中でも、接着剤組成物に含まれる複数の発泡剤のうち、含有量が多い発泡剤について、C<Dを満たすことが好ましい。特に、接着剤組成物に含まれる複数の発泡剤のすべてについて、C<Dを満たすことが好ましい。
発泡剤についての発泡率-時間曲線において、ピークが複数ある場合には、少なくとも1つのピークについて、C<Dを満たしていればよい。発泡率-時間曲線において、ピークが複数ある場合は、通常、接着剤組成物が複数の発泡剤を含有する。中でも、すべてのピークについて、C<Dを満たすことが好ましい。
また、接着剤組成物についてのDSC曲線において、熱硬化性樹脂の硬化反応による発熱ピークが複数ある場合には、少なくとも1つの発熱ピークについて、C<Dを満たしていればよい。DSC曲線において、熱硬化性樹脂の硬化反応による発熱ピークが複数ある場合は、例えば、接着剤組成物が複数の熱硬化性樹脂を含有する。中でも、熱硬化性樹脂の硬化反応による複数の発熱ピークのうち、傾きBが小さい発熱ピークについて、C<Dを満たすことが好ましい。特に、すべての発熱ピークについて、C<Dを満たすことが好ましい。
接着剤組成物においては、C<Dである。CおよびDの関係については、上記「A.物品の製造方法」に記載した、AおよびBの関係と同様である。
また、傾きCを制御する方法は、上記「A.物品の製造方法」に記載した、傾きAを制御する方法と同様である。
また、傾きDを制御する方法は、上記「A.物品の製造方法」に記載した、傾きBを制御する方法と同様である。
また、発泡剤についての発泡率-時間曲線において、ピークの頂点(発泡剤の発泡率が100%を示す点)から、発泡剤の収縮が安定するまでの時間は、上記「A.物品の製造方法」に記載した内容と同様である。
また、接着剤組成物についてのDSC曲線において、発熱ピークの頂点から、ベースラインに至るまでの時間は、上記「A.物品の製造方法」に記載した内容と同様である。
接着剤組成物の組成および調製方法は、上記「A.物品の製造方法」に記載した内容と同様である。
C.発泡性接着シート
本開示における発泡性接着シートは、接着層を有する発泡性接着シートであって、上記接着層が、上述の接着剤組成物を含有する。
接着剤組成物については、上記「B.接着剤組成物」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
また、発泡性接着シートについては、上記「A.物品の製造方法 4.発泡性接着シート」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
本開示における発泡性接着シートは、セパレータを有していてもよい。
セパレータは、接着層から剥離可能であれば特に限定されず、接着層を保護することが可能な程度の強度を有することができる。このようなセパレータとしては、例えば、離型フィルム、剥離紙等を挙げることができる。また、セパレータは、単層構造を有していてもよく、複層構造を有していてもよい。
単層構造のセパレータとしては、例えば、フッ素樹脂系フィルム等が挙げられる。
また、複層構造のセパレータとしては、例えば、基材層の片面または両面に離型層を有する積層体が挙げられる。基材層としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムや、上質紙、コート紙、含浸紙等の紙が挙げられる。離型層の材料としては、離型性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、シリコーン化合物、有機化合物変性シリコーン化合物、フッ素化合物、アミノアルキド化合物、メラミン化合物、アクリル化合物、ポリエステル化合物、長鎖アルキル化合物等が挙げられる。これらの化合物は、エマルジョン型、溶剤型または無溶剤型のいずれもが使用できる。
本開示における発泡性接着シートの用途は、特に限定されない。中でも、本開示における発泡性接着シートは、上述の物品の製造方法に好適に用いられる。
なお、本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
[製造例1~3]
まず、下記表1に示す組成の接着剤組成物1~3を準備した。また、表1に記載した各材料の詳細を下記に示す。なお、表1中の単位は「質量部」である。
・アクリル樹脂:PMMA-PBuA-PMMA(一部にアクリルアミド基)、Tg:-20℃、120℃、Mw:150,000
・エポキシ樹脂A:ビスフェノールAノボラック型、常温固形、軟化温度:70℃、エポキシ当量:210g/eq、Mw:1300、150℃での溶融粘度:0.5Pa・s
・エポキシ樹脂B:BPAフェノキシ型、常温固形、軟化温度:110℃、エポキシ当量:8000g/eq、Mw:50,000
・硬化剤A:α-(ヒドロキシ(又はジヒドロキシ)フェニルメチル)-ω-ヒドロポリ[ビフェニル-4,4’-ジイルメチレン(ヒドロキシ(又はジヒドロキシ)フェニレンメチレン)]
・硬化触媒:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、平均粒子径:3μm、融点:230℃、反応開始温度145℃~155℃、活性領域155℃~173℃(四国化成工業社製、2PHZ-PW)
・発泡剤:熱膨張性マイクロカプセル、平均粒径10μm~16μm、膨張開始温度123℃~133℃、最大膨張温度168℃~178℃、コア:炭化水素、シェル:熱可塑性高分子
・溶剤:メチルエチルケトン
Figure 0007280986000002
離型フィルム(PETセパレータ、ニッパ社製、PET50×1-J2、厚さ50μm)を用いた。上記離型フィルムの剥離処理面に、上記接着剤組成物を、塗工後の厚さが45μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した。その後、オーブンにて100℃で3分間乾燥させて、接着層を形成し、発泡性接着シートを得た。
[評価1]
(1)発泡剤についての示差走査熱量測定
発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス社製「高感度型示差走査熱量計 DSC7000X」)を用いて、室温から180℃までの昇温時間:5分、180℃での保持時間:15分の加熱条件で、示差走査熱量測定を行った。
(2)接着剤組成物についての示差走査熱量測定
接着剤組成物を含有する接着層に対して、示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス社製「高感度型示差走査熱量計 DSC7000X」)を用いて、室温から180℃までの昇温時間:5分、180℃での保持時間:15分の加熱条件で、示差走査熱量測定を行った。
(3)傾きAおよび傾きBの関係
上記「A.物品の製造方法」に記載した方法により、発泡剤についての発泡率-時間曲線と、各接着剤組成物1~3についてのDSC曲線とをそれぞれ、重ね合わせて、グラフを作成した。グラフを図9(a)~(c)に示す。また、上記「A.物品の製造方法」に記載した方法により、発泡剤についての発泡率-時間曲線において、ピークの長時間側の曲線にピークの頂点で引いた接線の傾きAを求めた。また、上記「A.物品の製造方法」に記載した方法により、接着剤組成物を含有する接着層についてのDSC曲線において、発熱ピークの長時間側の曲線に発熱ピークの頂点で引いた接線の傾きBを求めた。
(4)接着強度
冷間圧延鋼板SPCC-SD(長さ100mm×幅25mm×厚さ1.6mm)を2枚用意した。一方の鋼板上にスペーサー(カプトンテープ)を15mm間隔を設けて配置した。スペーサーの厚さは、140μm(日東電工社製のカプトンテープP-221を2枚重ねた厚さ)とした。スペーサーの間に、12.5mm×25mmに切り出し、離型フィルムを剥離した発泡性接着シートを配置し、その上から他方の鋼板を配置し、クリップにて固定し、試験片を得た。試験片をIRヒーター(アドバンス理工社製 ハンディ加熱炉)を用いて、室温から180℃まで5分で昇温し、180℃で30分加熱することで、発泡性接着シートを硬化させた。加熱後の試験片を、JIS K6850に準拠し、テンシロンRTF1350(エーアンドデイ社製)にて、せん断強度(接着強度)を測定した。引張速度は10mm/min、温度23℃とした。
Figure 0007280986000003
[製造例4]
まず、下記組成の接着剤組成物4を準備した。
<接着剤組成物4の組成>
・アクリル樹脂(PMMA-PBuA-PMMA(一部にアクリルアミド基)、Tg:-20℃、120℃、Mw:150,000):40質量部
・エポキシ樹脂C(ビスフェノールA型、常温液状、エポキシ当量:184~194g/eq):45質量部
・エポキシ樹脂D(ジアミノジフェニルメタン型、高粘調液体、エポキシ当量:110~130g/eq):65質量部
・エポキシ樹脂E(シリコーン変性、エポキシ当量:1200g/mol):20質量部
・シランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン):2質量部
・硬化剤B(フェノール・ホルムアルデヒド重縮合物 軟化点80℃、水酸基当量104g/mol):6質量部
・硬化触媒(2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、平均粒子径:3μm、融点:230℃、反応開始温度145℃~155℃、活性領域155℃~173℃(四国化成工業社製、2PHZ-PW)):10質量部
・発泡剤:熱膨張性マイクロカプセル、平均粒径10μm~16μm、膨張開始温度123℃~133℃、最大膨張温度168℃~178℃、コア:炭化水素、シェル:熱可塑性高分子:20質量部
・溶剤(メチルエチルケトン):114質量部
基材として、ポリエチレンナフタレート(PENフィルム、東洋紡フィルムソリューション社製、テオネックスQ51、厚さ25μm)を用いた。上記基材の一方の面に、上記製造例1で用いた接着剤組成物1を、塗工後の厚さが45μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した。その後、オーブンにて100℃で3分間乾燥させて、第一接着層を形成した。
次に、第二セパレータとして、離型フィルム(PETセパレータ、ニッパ社製、PET50×1-J2、厚さ50μm)を用い、離型フィルムの離型処理面に、上記接着剤組成物4を、塗工後の厚さが45μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した。その後、オーブンにて100℃で3分間乾燥させて、第二接着層を形成した。
次に、基材および第一接着層を有する積層体の基材側の面に、第二セパレータおよび第二接着層を有する積層体の第二接着層側の面をラミネートした。これにより、第一接着層、基材、第二接着層および第二セパレータがこの順に配置された発泡性接着シートを得た。
[評価2]
(1)発泡剤についての示差走査熱量測定
発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス社製「高感度型示差走査熱量計 DSC7000X」)を用いて、室温から180℃までの昇温時間:1分以上65分以下、180℃での保持時間:30分の加熱条件で、示差走査熱量測定を行った。
(2)接着剤組成物から発泡剤を除いた組成物についての示差走査熱量測定
接着剤組成物1、4について、各接着剤組成物から発泡剤を除いた組成物に対して、示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス社製「高感度型示差走査熱量計 DSC7000X」)を用いて、室温から180℃までの昇温時間:1分以上65分以下、180℃での保持時間:30分の加熱条件で、示差走査熱量測定を行った。
(3)時間T1および時間T2の関係
各加熱条件について、発泡剤についての発泡率-時間曲線と、各接着剤組成物から発泡剤を除いた組成物についてのDSC曲線とを、重ね合わせて、グラフを作成した。接着剤組成物1について、昇温時間が5分および65分である場合のグラフをそれぞれ図10(a)、(b)に示す。また、接着剤組成物4について、昇温時間が5分および65分である場合のグラフをそれぞれ図10(a)、(b)に示す。また、発泡剤についての発泡率-時間曲線において、ピークの頂点の時間T1を求めた。また、接着剤組成物から発泡剤を除いた組成物についてのDSC曲線において、発熱ピークの頂点の時間T2を求めた。
(4)接着強度
冷間圧延鋼板SPCC-SD(長さ100mm×幅25mm×厚さ1.6mm)を2枚用意した。一方の鋼板上にスペーサー(カプトンテープもしくはフッ素テープ)を15mm間隔を設けて配置した。スペーサーの厚さは、約370μm(日東電工社製のカプトンテープP-221を2枚と、寺岡製作所社製のフッ素樹脂粘着テープ8410を1枚と重ねた厚さ)とした。スペーサーの間に、12.5mm×25mmに切り出し、第二セパレータを剥離した発泡性接着シートを配置し、その上から他方の鋼板を配置し、クリップにて固定し、試験片を得た。試験片をIRヒーター(アドバンス理工社製 ハンディ加熱炉)を用いて、室温から180℃まで1分以上65分以下で昇温し、180℃で30分加熱することで、発泡性接着シートを硬化させた。加熱後の試験片を、JISK6850に準拠し、テンシロンRTF1350(エーアンドデイ社製)にて、せん断強度(接着強度)を測定した。引張速度は10mm/min、温度23℃とした。
Figure 0007280986000004
表2および表3より、A<Bであり、かつ、接着工程では、T1<T2となるように、接着剤組成物を加熱する場合には、接着強度が向上することが確認された。
[評価3]
(1)発泡剤の最大発泡温度
発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス社製「高感度型示差走査熱量計 DSC7000X」)を用いて、昇温速度31℃/minで、示差走査熱量測定を行った。発泡剤についての発泡率-時間曲線において、ピークの頂点の温度を最大発泡温度とした。最大発泡温度は、174.5℃であった。
(2)発泡剤についての示差走査熱量測定
発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス社製「高感度型示差走査熱量計 DSC7000X」)を用いて、室温から最大発泡温度(174.5℃)までの昇温時間:5分、最大発泡温度(174.5℃)での保持時間:15分の加熱条件で、示差走査熱量測定を行った。
(3)接着剤組成物についての示差走査熱量測定
製造例1~3で用いた接着剤組成物1~3を含有する接着層に対して、示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス社製「高感度型示差走査熱量計 DSC7000X」)を用いて、室温から最大発泡温度(174.5℃)までの昇温時間:5分、最大発泡温度(174.5℃)での保持時間:15分の加熱条件で、示差走査熱量測定を行った。
(4)傾きCおよび傾きDの関係
上記「A.物品の製造方法」に記載した方法により、発泡剤についての発泡率-時間曲線と、各接着剤組成物についてのDSC曲線とをそれぞれ、重ね合わせて、グラフを作成した。また、上記「A.物品の製造方法」に記載した方法により、発泡剤についての発泡率-時間曲線において、ピークの長時間側の曲線にピークの頂点で引いた接線の傾きCを求めた。また、上記「A.物品の製造方法」に記載した方法により、接着剤組成物を含有する接着層についてのDSC曲線において、発熱ピークの長時間側の曲線に発熱ピークの頂点で引いた接線の傾きDを求めた。
(5)接着強度
上記評価1に記載した方法と同様の方法により、接着強度を測定した。
C<Dである場合には、接着強度が向上することが確認された。
[評価4]
(1)接着強度
製造例4の発泡性接着シートについて、上記評価2に記載した方法と同様の方法により、接着強度を測定した。この際、発泡性接着シートを、室温から加熱温度までの昇温時間:15分、加熱温度:150℃以上200℃以下、加熱温度での保持時間:0分以上120分以下の加熱条件で加熱した。結果を図12に示す。
また、接着強度の測定後に、凝集破壊率を算出した。凝集破壊率は、接着面積全体に占める凝集破壊部分の面積の比率である。結果を図13に示す。
図12および図13から、加熱温度には好ましい範囲があることが示唆された。
1 … 接着層
1a … 第一の接着層
1b … 第二の接着層
2 … 基材
10 … 発泡性接着シート
11 … 発泡硬化後の接着シート
20a … 第一部材
20b … 第二部材
100 … 物品

Claims (5)

  1. 第一部材および第二部材の間に、熱硬化性樹脂および発泡剤を含有する接着剤組成物を配置する配置工程と、
    前記接着剤組成物を加熱して発泡硬化させ、前記第一部材および前記第二部材を接着する接着工程と、
    を有する物品の製造方法であって、
    前記発泡剤は、熱膨張性マイクロカプセルであり、
    前記発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、前記接着工程での加熱条件で、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、前記発泡剤の発泡率を縦軸とした発泡率-時間曲線において、ピークの長時間側の曲線にピークの頂点で引いた接線の傾きをAとし、
    前記接着剤組成物に対して、前記接着工程での加熱条件で、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、熱流を縦軸としたDSC曲線において、発熱ピークの長時間側の曲線に発熱ピークの頂点で引いた接線の傾きをBとしたとき、A<Bであり、
    前記発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、前記発泡剤の発泡率を縦軸とした発泡率-時間曲線において、ピークの頂点の時間をT1とし、
    前記接着剤組成物から前記発泡剤を除いた組成物に対して、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、熱流を縦軸としたDSC曲線において、発熱ピークの頂点の時間をT2としたとき、前記接着工程では、T1<T2となるように、前記接着剤組成物を加熱する、物品の製造方法。
  2. 前記接着工程での加熱温度が、前記発泡剤の最大発泡温度の±20℃の範囲内である、請求項1に記載の物品の製造方法。
  3. 前記配置工程では、前記接着剤組成物を含有する接着層を有する発泡性接着シートを用い、前記第一部材および前記第二部材の間に、前記発泡性接着シートを配置する、請求項1または請求項2に記載の物品の製造方法。
  4. 熱硬化性樹脂および発泡剤を含有する接着剤組成物であって、
    前記発泡剤は、熱膨張性マイクロカプセルであり、
    前記発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、室温から前記発泡剤の最大発泡温度まで5分で昇温し、前記発泡剤の最大発泡温度で保持する加熱条件で、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、前記発泡剤の発泡率を縦軸とした発泡率-時間曲線において、ピークの長時間側の曲線にピークの頂点で引いた接線の傾きをCとし、
    前記接着剤組成物に対して、前記加熱条件で、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、熱流を縦軸としたDSC曲線において、発熱ピークの長時間側の曲線に発熱ピークの頂点で引いた接線の傾きをDとしたとき、C<Dであり、
    前記発泡剤に対して、カメラを搭載した示差走査熱量計を用いて、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、前記発泡剤の発泡率を縦軸とした発泡率-時間曲線において、ピークの頂点の時間をT1とし、
    前記接着剤組成物から前記発泡剤を除いた組成物に対して、示差走査熱量測定を行ったときの、時間を横軸、熱流を縦軸としたDSC曲線において、発熱ピークの頂点の時間をT2としたとき、T1<T2となるように加熱して用いられる、接着剤組成物。
  5. 接着層を有する発泡性接着シートであって、
    前記接着層が、請求項4に記載の接着剤組成物を含有する、発泡性接着シート。
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