JP7278250B2 - タングステン窒化物を有するスピン軌道トルクスイッチング素子 - Google Patents

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Description

本発明は、スピン軌道トルク(spin-orbit torque;SOT)基盤のスイッチング素子に関するものとして、より詳細には、低い電流でスピン軌道トルク(spin-orbit torque、SOT)スイッチングができるタングステン層/タングステン窒化物層多層薄膜を含むスピン軌道トルク(spin-orbit torque;SOT)基盤のスイッチング素子に関する。
スピン軌道トルク(spin-orbit torque;SOT)スイッチング基盤の磁気ランダムアクセスメモリ(Magnetic Random Access Memory;MRAM)は、磁気トンネル接合(magnetic tunnel junction;MTJ)を核心素子として有する。
図1は、通常の磁気トンネル接合(magnetic tunnel junction;MTJ)を示す。
図1に示すように、磁気トンネル接合10(magnetic tunnel junction;MTJ)は、スピントルク発生層/自由層/トンネルバリア層/固定層で構成される。
自由層14と固定層18の相対的な磁化方向によってトンネルバリア層16を通過するトンネリング電流の電気抵抗値が変わる。磁気トンネル接合10は、このようなトンネル磁気抵抗(tunneling magnetoresistance;TMR)現象を用いて情報を保存する。
磁気トンネル接合10は、高いトンネル磁気抵抗(TMR)比(ratio)、高い書き込み安定性、低い書き込み電流、及び高集積化を実現するために、垂直磁気異方性(perpendicular magnetic anisotropy;PMA)特性を有する。垂直磁気異方性は、磁性層の磁化方向が磁性層面に垂直であることを意味する。
自由層14に隣接するスピントルク発生層12に面内電流Icが流れるとき、スピントルク発生層12はスピン軌道トルク(spin-orbit torque;SOT)によってスピンホール効果(spin Hall effect)又はラシュバ効果(Rashba effect)を用いて自由層のスイッチングを誘導する。スピン軌道トルクはスピン伝達トルク(spin-transfer torque;STT)の書き込み(writing)方式より高速、低電流、及び低消耗電力で情報を書き込む。
しかし、スピン軌道トルク(SOT)MRAMが商用化されるために、より低い電流注入によって自由層の磁化反転を誘導できるスピントルク発生層の物質及び構造が求められる。
本発明の解決しようとする課題は、低いスイッチング臨界電流において書き込み動作を行うSOT-MRAMを提供することである。自由層に接触して面内電流を提供するスピントルク発生層がタングステン層/タングステン窒化物層の多層薄膜を含む場合、SOT-MRAMのスピン軌道トルク効果が増強され、書き込み動作のためのスイッチング臨界電流が減少する。タングステン窒化物層は、窒素がドーピングされたタングステン又はタングステン窒化物を含む。
本発明の解決しようとする課題は、スピンホール発生層としてタングステン層/タングステン窒化物層構造を使用したとき、タングステン窒化物層の所定の厚さと所定の窒素濃度で垂直磁気異方性が発現するSOT-MRAMを提供することである。
本発明の解決しようとする課題は、低温と高温の過酷な環境下でも動作し、その後常温に戻った後も正常作動するSOT-MRAMを提供することである。
本発明の解決しようとする課題は、低い臨界電流を有するとともに無磁場スイッチング動作を行うSOT-MRAMを提供することである。
本発明の一実施例による磁気素子は、固定された磁化方向を有する固定層と、スイッチングされる磁化方向を有する自由層と、前記固定層と前記自由層との間に介在するトンネル絶縁層と、面内電流が流れるにつれて前記自由層にスピン電流を注入するスピントルク発生層と、を含む。前記スピン電流は、スピン軌道トルクによって前記自由層の磁化方向をスイッチングする。前記固定層及び前記自由層は、垂直磁気異方性を有し、前記スピントルク発生層は、順次積層されたタングステン層及びタングステン-窒化物層を含む。前記タングステン-窒化物層は、前記自由層に隣接して配置される。
本発明の一実施例において、前記タングステン-窒化物層の厚さは0.2nmであり、前記タングステン窒化物層において窒素の原子パーセント(atomicpercent)が5%ないし42%である。
本発明の一実施例において、前記タングステン窒化物層において窒素の原子パーセント(atomic percent)は、2%ないし29%であり、前記タングステン-窒化物層の厚さは0.2nmないし0.8nmである。
本発明の一実施例において、前記タングステン窒化物層において窒素の原子パーセント(atomic percent)は、2%ないし5%であり、前記タングステン-窒化物層の厚さは0.2nmないし3nmである。
本発明の一実施例において、前記タングステン-窒化物層は結晶質WN(111)相を含むか、又は、前記タングステン-窒化物層は、結晶質WN(111)相及び結晶質WN(100)相を含む。
本発明の一実施例において、前記タングステン層は、前記自由層と垂直に整列される。
本発明の一実施例において、前記スピントルク発生層は、面内磁気異方性を有する強磁性層をさらに含み、前記タングステン層は、前記強磁性層と前記タングステン窒化物層との間に配置される。
本発明の一実施例において、前記タングステン-窒化物層の比抵抗は350μΩ・cm以上である。
本発明の一実施例による磁気素子は、固定された磁化方向を有する固定層と、スイッチングされる磁化方向を有する自由層と、前記固定層と前記自由層との間に介在するトンネル絶縁層と、面内電流が流れるにつれて前記自由層にスピン電流を注入するスピントルク発生層と、前記自由層と前記スピントルク発生層との間に配置されたタングステン窒化物層を含む。前記スピン電流は、スピン軌道トルクによって前記自由層の磁化方向をスイッチングする。前記固定層及び前記自由層は、垂直磁気異方性を有し、前記スピントルク発生層はタングステン層を含み、前記タングステン-窒化物層は、前記自由層と垂直に整列される。
本発明の一実施例による磁気素子は、固定された磁化方向を有する固定層と、イッチングされる磁化方向を有する自由層と、前記固定層と前記自由層との間に介在するトンネル絶縁層と、面内電流が流れるにつれて前記自由層にスピン電流を注入するスピントルク発生層と、を含む。前記スピン電流は、スピン軌道トルクによって前記自由層の磁化方向をスイッチングする。前記固定層及び前記自由層は、垂直磁気異方性を有し、前記スピントルク発生層はタングステン-窒化物層を含み、前記タングステン-窒化物層において窒素の原子パーセント(atomic percent)は、2%ないし5%であり、前記タングステン-窒化物層は、前記自由層に隣接して配置される。
本発明の実施例によれば、タングステン層/タングステン窒化物層の多層構造を用いたSOTスイッチング素子は、従来の単一タングステン層を使用した素子より低い書き込み電流で作動する。
本発明の実施例によれば、自由層に接触して面内電流を提供するスピントルク発生層がタングステン層/タングステン窒化物層を含む場合、SOT-MRAMのスピン軌道トルク効果が増強され、書き込み動作のためのスイッチング臨界電流が減少する。
本発明の実施例によれば、SOT-MRAMは低温と高温の過酷な環境下でも作動し、その後常温に戻った後にも正常作動する。
本発明の実施例によれば、面内磁化強磁性層タングステン層/タングステン窒化物層の多層構造は、低い臨界電流を有するとともに無磁場スイッチング動作を行うSOT-MRAMを提供する。
通常の磁気トンネル接合(magnetic tunnel junction;MTJ)を示す。 本発明の一実施例による磁気素子を示す断面図である。 本発明の一実施例による磁気素子を示す図面である。 図3Aの断面図である。 本発明の一実施例によるSOTスイッチング挙動を測定するための磁気素子である。 本発明の一実施例によるNガスの流量比Qに伴うタングステン窒化物層の窒素の原子パーセント(nitrogen atomic percent)を示す。 本発明の一実施例によるタングステン窒化物層の窒素の原子パーセントn(nitrogen atomic percent)に伴う有効異方性エネルギKu、effを示す。 本発明の一実施例によるタングステン窒化物層の厚さtW-Nによる有効異方性エネルギKu、effを示す。 本発明の一実施例による窒素の原子パーセントnに伴うスピンホール角度の絶対値|ξDL|を示す。 本発明の一実施例によるタングステン窒化物層の厚さtW-Nに伴うスピンホール角度の絶対値|ξDL|を示す。 W-N=0.2nmでnの条件別電流に伴う抵抗を示す。 W-N=0.2nmでnの条件別外部磁場に伴うスイッチング電流を示す。 W-N=0.2nmでnに伴う規格化されたスイッチング電流及び垂直磁気異方性を示す。 n=29%から nに伴う規格化されたスイッチング電流及び垂直磁気異方性を示す。 W(5nm)/WN(tW-N=0.2nm)/CoFeB(0.9nm)/MgO(1nm)/Ta(2nm)構造でnの関数として比抵抗ρxx(resistivity)を示す。 厚さ40nmのタングステン窒化物層のGIXRD(Grazing Incidence X-ray Diffraction)結果を示す。 nの関数として40nmの厚さを有するタングステン窒化物層の比抵抗を図示する。 n=5%の場合、平面内のTEMイメージ(in-plane TEM images)と選択された領域回折(selected area diffraction;SAD)パターンを示す。 n=34%の場合、平面内のTEMイメージ(in-plane TEM images)と選択された領域回折(selected area diffraction;SAD)パターンを示す。 n=42%の場合、平面内のTEMイメージ(in-plane TEM images)と選択された領域回折(selected area diffraction;SAD)パターンを示す。 +200 Oeの外部磁場Hex下で様々な温度で面内電流に伴う抵抗を示す。 様々な温度で外部磁場に伴うスイッチング電流を示す。 本発明の一実施例によるW(5nm)/WN(tW-N;n)/CoFeB(0.9nm)/MgO(1nm)/Ta(2nm)構造における窒素の含量nとWN層の厚さに伴う実験結果を示す。 本発明のもう一つの実施例による磁気素子を示す断面図である。 本発明のもう一つの実施例による磁気素子を示す断面図である。
非磁性層NM/強磁性層FM構造において、強磁性層NMの磁化は、面内電流が非磁性層NMに注入される際に生成されたスピン軌道トルク(SOT)によって反転される。SOT-スイッチング基盤メモリ又はロジック素子は、従来のスピン-伝達-トルク-スイッチングされたデバイス(spin-transfer-torque-switched devices)に比べ、エネルギ消費減少及び高速スイッチングのメリットを提供する。しかし、商用化のためには2つの主要な障害物を解決しなければならない。すなわち、外部磁場がない状態で決定的スイッチング(deterministic switching)と非常に低いスイッチング電流が求められる。
スピン軌道トルク(Spin-orbit torque;SOT)は、面内電流を注入することによって、非磁性層NM/強磁性層FM構造における強磁性層の磁化を反転させることに使用される。スピン軌道トルクは、磁気ランダムアクセスメモリのための新しいメカニズムとして相当な関心を集めた。様々な重金属の中で、β-相(β-phase)タングステン膜は比較的高いSOT効率を示す。したがって、β-相(β-phase)タングステン膜は、スピン電流発生層の潜在的な材料(potential meterial)として考慮される。
本発明の一実施例によれば、我々は、W/WN/CoFeB/MgOホールバ(Hall bar)構造で向上したSOT及びより低いSOT誘導スイッチング電流を報告する。CoFeB層は垂直磁化された。前記WN層は窒素反応性環境(nitrogen reactive environment)でスパッタリング蒸着される。前記WN層の組成は微細構造及び電気的特性に影響を与える。測定されたSOT効率は0.54であり、スイッチング電流は40%ないし42%の窒素原子パーセントを含むサンプルで、前記WN層を含まないサンプルより約1/5に減少する。
本発明の一実施例によれば、W/WN/CoFeB/MgO構造は、低いスイッチング電流を提供する。面内磁化強磁性層がタングステン層下部に配置された場合、無磁場スイッチングが実現される。
以下、添付した図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。しかし、本発明は、ここで説明される実施例に限られるものではなく、異なる形態で具体化されることもある。むしろ、ここで紹介される実施例は、開示された内容が徹底かつ完全になるよう、そして当業者に本発明の思想が十分伝えるように提供されるものである。図面において、構成要素は、正確を期するために誇張されたものである。明細書全体に亘って、同一の要素は、同一の参照番号で表される。
図2は、本発明の一実施例による磁気素子を示す断面図である。
図2に示すように、磁気素子100は、固定された磁化方向を有する固定層150と、スイッチングされる磁化方向を有する自由層130と、前記固定層と前記固定層との間に介在されるトンネル絶縁層140と、面内電流Icが流れるいつれて前記自由層にスピン電流を注入するスピントルク発生層120と、を含む。前記スピン電流は、スピン軌道トルクによって前記自由層130の磁化方向をスイッチングする。前記固定層150及び前記自由層130は、垂直磁気異方性を有する。前記スピントルク発生層120は、順次積層されたタングステン層122及びタングステン-窒化物層124を含む。前記タングステン-窒化物層124は、前記自由層130に隣接して配置される。前記磁気素子100は、SOT-MRAMである。前記固定層150、前記トンネル絶縁層140、及び前記自由層130は、磁気トンネル接合を構成する。
固定層150は、固定された磁化方向を有し、垂直磁気異方性を有する強磁性層を含む。前記固定層150は、単層構造又は多層構造である。
自由層130は、垂直磁気異方性を有し、SOTによって磁化方向をスイッチングする。前記自由層130は0.9nm厚さのCoFeBである。前記自由層130は、単層構造又は多層構造に変形される。
トンネル絶縁層140は、トンネル電流が流れる絶縁体として、1nm厚さのMgOである。前記トンネル絶縁層140は、前記固定層150と自由層130との間に配置される。
スピントルク発生層120は、非磁性導電性金属を含む。前記スピントルク発生層120は、順次積層されたタングステン層122及びタングステン-窒化物層124を含む。前記スピントルク発生層120に面内電流Icが流れると、前記スピントルク発生層120は、配置平面に垂直な方向(自由層方向)にスピン電流Isを提供する。前記スピン電流Isは、スピンホール効果(Spin Hall effect;SHE)又はスピンホール効果(Spin Hall effect;SHE)によってSOT生成する。前記SOTは、前記自由層130の磁化をスイッチングする。スピントルク発生層120の両端は、接続電極120a、120bを介して面内電流を印加する外部回路に連結される。
前記タングステン-窒化物層124の厚さと組成に応じてスイッチング電流が変化する。また、前記タングステン-窒化物層124の厚さと組成に応じて、前記自由層の磁化特性が変更される。すなわち、タングステン-窒化物層124の厚さと組成は、所定の範囲内で前記自由層130に垂直磁化異方性特性を提供する。前記自由層140が垂直磁気異方性を発現する場合、タングステン-窒化物層124の厚さが減少し、窒素の濃度が増加するにつれてスイッチング電流が減少する。
具体的に、前記タングステン-窒化物層124の厚さは0.2nmであり、前記タングステン-窒化物層124において窒素の原子パーセント(atomicpercent)が5%ないし42%である。この場合、前記自由層130は垂直磁気異方性を維持しつつ、窒素の原子パーセント(atomicpercent)が増加するにつれてスイッチング電流が減少する。一方、窒素の原子パーセント(atomicpercent)が42%を超える場合、前記自由層130は垂直磁気異方性が消失し、面内磁気異方性を有する。
前記タングステン-窒化物層124において窒素の原子パーセント(atomicpercent)は2%ないし29%であり、前記タングステン-窒化物層124の厚さは0.2nmないし0.8nmである。この場合、前記自由層130は、垂直磁気異方性を維持する。
前記タングステン-窒化物層124において窒素の原子パーセント(atomicpercent)は2%ないし5%であり、前記タングステン-窒化物層の厚さは0.2nmないし3nmである。この場合、前記自由層130は、垂直磁気異方性を維持する。
前記タングステン-窒化物層124は、結晶質WN(111)相(phase)を含むか、又は、前記タングステン-窒化物層124は結晶質WN(111)相及び結晶質WN(100)相を含む。この場合、前記自由層130は、垂直磁気異方性を維持する。
電極160は、前記固定層150上に配置されて外部回路に連結される。
図3Aは、本発明の一実施例による磁気素子を示す図面である。
図3Bは、図3Aの断面図である。
図3A及び図3Bに示すように、磁気素子200は、スイッチングされる磁化方向を有する自由層130と、前記自由層下部に配置されたトンネル絶縁層140と、面内電流が流れるにつれて前記自由層にスピン電流を注入するスピントルク発生層120と、を含む。前記固定層及び前記自由層130は垂直磁気異方性を有し、前記スピントルク発生層120は順次積層されたタングステン層122及びタングステン-窒化物層124を含む。前記タングステン-窒化物層124は、前記自由層130に隣接して配置される。キャッピング層162は、前記トンネル絶縁層140上に配置され、前記トンネル絶縁層140を保護する。前記キャッピング層162はタンタルである。
SOTは、非磁性層NM又はスピントルク発生層のスピンホール効果(Spin Hall effect;SHE)又は非磁性層NM/強磁性層FMインタフェースのRashba-Edelstein効果によって発生する。非磁性層NM/強磁性層FM構造において、非磁性層NM/強磁性層FMインタフェースに垂直な方向がz方向であり、x方向に沿って非磁性層NMに面内電流Icが注入されると、この2つの効果のためy方向のスピンが蓄積される。この場合、SOTによって発生したトルクは、下記のように
Figure 0007278250000001

Figure 0007278250000002
の2つの成分として表現される。
Figure 0007278250000003
ここでτDLは、ダンピング-ライク(damping-like;DL)-SOTである。τFLはフィールド-ライク(field-like;DL)-SOTである。いかなるSOTが磁化反転(magnetization reversal)に及ぼす影響が支配的なのかは論争の余地がある。しかし、本発明の課題は、SOTのサイズを増加させてスイッチング電流を減らすことである。
SOTの効率で定義される注入面内電流密度Jに対するスピン電流密度Jの比率をスピンホール角度(Spin Hall Angle;SHA、ξSH=J/J)という。スピンホール角度ξSHが増加するにつれて、磁化を逆転させるためにはより低いスイッチング電流が必要となる。重金属(heavy metal)の場合、スピンホール角度ξSHは大きいことが知られており、スピンホール角度ξSHはタングステンWで~0.33、タンタリウムTaで~0.15及び白金Ptで~0.10の水準である。
本発明の一実施例によれば、スイッチング電流を減らすためにタングステン窒化物層124が非磁性層NMと強磁性層FMとの間に挿入され、タングステン窒化物層124の厚さと組成を制御した。それに応じて、スピンホール角度ξSHが0.54に増加する。また、電流-誘導SOTスイッチング挙動がタングステン窒化物層124がない値の約1/5に減少する。とても薄いタングステン窒化物層124(厚さ0.2nm)でもSOTスイッチング挙動は窒素原子N含量に応じて変わる。
本発明の一実施例によれば、Si100ウェハ上に300nm 厚さのSiO層が蒸着される。前記SiO層上にW/WN/CoFeB/MgO/Ta層が順次積層される。タングステン層122及びタングステン-窒化物層124はDCマグネトロンスパッタリングシステムによって蒸着される。
DCマグネトロンスパッタリングシステムは、5x10-9Torrの初期真空で金属蒸着のために使用された。作業圧力(working pressure)はArガス雰囲気で1.3mTorrである。前記タングステン窒化物層124は、反応性スパッタリングによって蒸着された。注入されたAr及びNガスの比率は、一定の作動圧力で制御された。DC電力密度は、2.5W/cmに固定される。
RFマグネトロンスパッタリングシステムは、5x10-9Torrの初期真空及び6mTorrの作動圧力でトンネル絶縁層140の蒸着に使用された。前記トンネル絶縁層130はMgOである。RF電力密度は1.6W/cmに固定される。
磁気素子の積層構造は、Si/SiO/W(5nm)/WN(tW-N)/CoFeB(0.9nm)/MgO(1nm)/Ta(2nm)である。タングステン窒化物層124の厚さtW-Nは、0ないし3nmに変わり、タングステン窒化物層124の組成は、Qを0ないし50%に変化させて調整した。ここで、Qはスパッタリングの間、総ガス流量[Ar+N]に対するNガス流量[N]の比Q=[N]/[Ar+N]である。
自由層130は、CoFeB(0.9nm)である。前記キャッピング層162の蒸着の後、すべてのサンプルは10-6Torrで1時間摂氏300度のファーニス(furnace)でアニーリングされた。前記キャッピング層162は、保護層として動作する。
アニーリングの後、磁気特性は振動試料型磁力計(vibrating sample magnetometer;VSM)を使用して室温で測定された。電気的特性を測定するために、幅5μm及び長さ35μmのホールバ(Hall bar)構造を有する素子は、フォトリソグラフィを用いて製造される。高調波測定(harmonics measurement)を使用してSOT効率が測定される。測定中に、注入された交流電流AC及び周波数fはそれぞれ1mA及び13.7Hzにそれぞれ固定された。
図4は、本発明の一実施例によるSOTスイッチング挙動を測定するための磁気素子である。
図4に示すように、SOTスイッチング挙動を決定するために、直径4μmのドット型パターンは、ホールバ構造でキャッピング層162、トンネル絶縁層140、及び自由層130を順次に異方性エッチングして形成される。スイッチング特性は、プローブステーション(probe station)を使用して測定される。10μsのパルス幅を有するパルス電流Ipulseが素子にx方向に印加され、結晶性スイッチング(deterministicswitching)のために外部磁場Hexがx軸方向に印加された。磁気素子200aは、ホールバ構造でドット型の自由層130、トンネル絶縁層140、及びキャッピング層162を有する。
タングステン窒化物層124の抵抗は、4点プローブ(four-point probe)を使用して測定された。タングステン窒化物層124の組成を確認するためにラザフォード後方散乱(Rutherford backscattering;RBS)分析を行った。前記タングステン窒化物層124の微細構造は、0.5度の固定角ですれすれ入射X線回折装置(grazing incidence X-ray diffraction device)を使用して分析された。前記タングステン窒化物層124の微細構造は、透過電子顕微鏡を使用して観測された。
図5は、本発明の一実施例によるNガスの流量比Qに伴うタングステン窒化物層の窒素の原子パーセント(nitrogen atomic percent)を示す。
図5に示すように、Qはスパッタリングの間、総ガス流量[Ar+N]に対するNガス流量[N]の比Q=[N]/[Ar+N]である。タングステン窒化物層124の窒素原子の原子パーセント(nitrogen atomic percent)は、ラザフォード後方散乱装置によって測定された。
タングステン窒化物層124の窒素原子含量を分析した。Nガス流量の比Qは0、4、8、15、20、30、40、そして50%である。ラザフォード後方散乱(RBS)を使用して検査した40nmの厚さのタングステン窒化物薄膜のQの関数として窒素の原子パーセントnを示す。Q=4%で、窒素の原子パーセントnは5%でとても小さい。Q=8%で、Nの原子パーセントnは29%で急激に増加する。Q=20%で、窒素の原子パーセントnは33%である。しかし、Q=20%とQ=30%との間で、窒素の原子パーセントnは再び40%で急激に増加する。Q=40%で、窒素の原子パーセントnは42%である。
図6は、本発明の一実施例によるタングステン窒化物層の窒素の原子パーセントn(nitrogen atomic percent)に伴う有効異方性エネルギKu、effを示す。
図6に示すように、磁気素子200は、W/(5nm)/WN(0.2nm)/CoFeB(0.9nm)/MgO(1nm)/Ta(2nm)構造を有する。前記タングステン窒化物層124の窒素の原子パーセントn(nitrogen atomic percent)に伴う有効異方性エネルギKu、effが分析された。タングステン窒化物層124の窒素の原子パーセントn(nitrogen atomic percent)は、0~42%の範囲で変更された。有効異方性エネルギKu、effは、nが増加するにつれて減少する。タングステン窒化物層124の厚さtW-Nが0.2nmで固定されたとき、垂直磁気異方性PMAは窒素の原子パーセントnが0%ないし最大42%の範囲内で発生した。しかし、窒素の原子パーセントnが42%を超えると、PMAは発生しなかった。有効異方性エネルギKu、effは、n=0%で2.87Merg/cmであり、n=42%で1.81Merg/cmに減少した。したがって、nが増加するにつれてPMAの強度は減少した。有効異方性エネルギKu、effは、平面内(in-plane)及び平面外(out-of-plane)M-Hループの面積を用いて計算された。
図7は、本発明の一実施例によるタングステン窒化物層の厚さtW-Nによる有効異方性エネルギKu、effを示す。
図7に示すように、磁気素子200は、W(5nm)/WN(tW-N)/CoFeB(0.9nm)/MgO(1nm)/Ta(2nm)構造を有する。我々はタングステン窒化物層124の厚さtW-Nを0.2nm~3nmの範囲で変更した。
タングステン窒化物層124の厚さtW-NがtW-N≧0.4nmの場合、垂直磁気異方性PMAはn≦29%に対してのみ発現した。n=29%で、タングステン窒化物層124の厚さtW-Nが1nmより大きいとき、垂直磁気異方性PMAは消えた。
タングステン窒化物層124の厚さtW-Nが1.0 nmを超えると、nに関係なく垂直磁気異方性PMAが消えた。
垂直磁気異方性PMAは高密度磁気ランダムアクセスメモリMRAMに必須であるため、我々は垂直磁気異方性PMAが現れる範囲で、タングステン窒化物層124の厚さ及び組成を有する構造でSOTを照射した。磁気輸送特性(magneto-transport characterization)を照射するために、垂直磁気異方性PMAを有する磁気素子は、フォトリソグラフィを使用して幅5μm及び長さ35μmのホールバ構造で製造された。
我々は、PMA磁気素子でSOTの評価に広く使用される高調波方法によって磁気輸送特性を測定した。AC電流が磁気素子に注入され、外部磁場Hexの下で磁化が平衡状態にあるとき、第1高調波成分は次のように極角θ及び
Figure 0007278250000004
を用いて表現される。
[数1]
Figure 0007278250000005
ここで、RAHEは異常ホール抵抗(anomalous Hall resistance)を表し、RPHEは平面ホール抵抗(planar Hall resistance)を表す。熱電電圧(thermoelectric voltage)に関連する2次高調波成分(second harmonic component;Rxy 2ω)は次の通りである。
[数2]
Figure 0007278250000006
ここで、IはAC電流の振幅を表し、αは異常なNernst効果係数を表し、∇Tはジュール熱(Joule heating)による熱寄与度(thermal contribution)を表す。
=BDL+BFL+BOeは、電流誘導フィールドの合計(sum of the current-induced field)を表す。ここで、BDLはダンピング-ライクフィールド(damping-like field)、BFLはフィールド-ライクフィールド(field-like field)、BOeはOerstedフィールドである。BDL及びBFLは、それぞれDL-SOT及びFL-SOTによって生成された有効磁場である。磁化は、有効磁場の方向に振動する。
面内磁化状態θ=π/2において、DL-SOT及びFL-SOTは、磁化が平面でそれぞれ垂直及び水平に振動するように誘発する。数式2は、次のように再作成する。
[数3]
Figure 0007278250000007
異方性磁場Hより十分大きい外部磁場Bextが印可されると、磁化がフィルムの平面内にある場合、熱勾配(thermal gradient)による抵抗の寄与は一定であると仮定できる。平面ホール効果(planar Hall effect)の2次項(second term)は、
Figure 0007278250000008
の時に消滅する。このような仮定の下で、数式3はDL-SOTによる有効フィールドである、BDLを計算するために近似化する。その次にBFL+BOeが得られる。
[数4]
Figure 0007278250000009
その後、我々はSOT効率を計算することができる。スピンホール角度(Spin Hall Angle、ξ)は、次の通りである。
[数5]
Figure 0007278250000010
ここで、eは電磁電荷を表し、hはプランク定数を表し、Mは自由層の飽和磁化を表し、tFMは自由層の厚さを表し、Jは電流密度を表す。
スピンホール角度ξDLを得るために、我々は外部磁場Bextの方向を変化させて高調波測定を行った。我々は、磁気素子の異方性磁場H値の2倍より大きい約13-18kOeの外部磁場Bextを印加する。
タングステンのFL-SOT効率がDL-SOT効率より約10倍小さいことが知られているため、本発明ではDL-SOTによるスピンホール角度ξDLのみを考慮する。
図8は、本発明の一実施例による窒素の原子パーセントnに伴うスピンホール角度の絶対値|ξDL|を示す。
図9は、本発明の一実施例によるタングステン窒化物層の厚さtW-Nに伴うスピンホール角度の絶対値|ξDL|を示す。
図8及び図9に示すように、|ξDL|は、nが増加するにつれて漸進的に増加して、n=40%で最大0.54に到達する。このスピンホールの角度は、タングステン単独のものより遥かに大きい。n>40%の場合、|ξDL|は若干減る。
W(5nm)/CoFeB/MgO構造(n=0%、tW-N=0nm)において、5nm厚さのW薄膜はβ-相Wであると予想され、スピンホール角度の絶対値|ξDL|は0.32±0.02である。
W(5nm)/WN(tW-N)/CoFeB(0.9nm)/MgO(1nm)/Ta(2nm)構造で、|ξDL|は、n=29%の条件でtW-Nによって変化する。|ξDL|は、tW-N=0.2nmでタングステン窒化物層124がないより若干高い。しかし、0.2nmより大きいタングステン窒化物層124の厚さで、tW-Nが増加するにつれて、|ξDL|は次第に減少する。この結果は、とても薄いタングステン窒化物層124がSOT特性を向上させることができることを示す。
しかし、tW-Nが0.2nmを超えるとき、バルクタングステン窒化物の特性が次第に現れて、SOT効率がタングステン窒化物層124がないよりも低い。それにもかかわらず、tW-Nが0.2nmを超えるとき、スイッチングのための臨界電流は減少する。
図10は、tW-N=0.2nmでnの条件別電流に伴う抵抗を示す。
図10に示すように、外部磁場Hex=+200Oeが磁気素子200aにx軸方向に印加された場合、自由層130の決定的なスイッチングはnにかかわらず発生する。
スイッチング電流ISWは、nが増加するにつれて減少し、スイッチング方向は、nが変化するにつれて反時計回りに一定に維持される。
タングステン窒化物層124がないW/CoFeB/MgO構造(n=0%)において、スイッチング電流ISWは、8.58±0.08mAであり、スイッチング電流密度JSWは33.0MAcm)である。スイッチング電流ISWは、nが増加するにつれて次第に減少し、n=40%から1.49±0.16mAであり、タングステン窒化物層124のない構造より5倍小さい。
図11は、tW-N=0.2nmでnの条件別外部磁場に伴うスイッチング電流を示す。
図11に示すように、スイッチング動作の外部磁場の依存性が表示される。全ての窒素含量nにおいて、外部磁場Hexが増加するにつれて、スイッチング電流ISWは減少する傾向がある。外部磁場Hex方向が+xから-xに変更されると、スイッチング方向が時計回りに変更されるが、スイッチング電流ISWはほぼ同一に維持される。この結果は、良好な電流-誘導SOTスイッチング動作が発生することを確認させる。また、タングステン窒化物層124がSOT-MRAMに適用される場合、電力消費を減少させる。
次に、スイッチング電流ISWの減少が|ξDL|上昇に起因する。SOTによるスイッチング電流Isw SOは、次のように表現される。
[数6]
Figure 0007278250000011
ここで、ANMは、電流が注入される非磁性層(又はスピンホール発生層)の厚さを表し、HK、effは、異方性磁場を表す。tFMは、自由層の厚さである。Mは、自由層の飽和磁化である。Hexは、外部磁場である。
数式6で、HexはHK、effに比べて小さく、MK、eff/2が有効異方性エネルギKu、effと同じであるため無視してよい。したがって、tFM及びANMが固定されると、SOTによるスイッチング電流Isw SOは有効異方性エネルギKu、effに正比例する。
タングステン窒化物層124の挿入がKu、effの劣化(degradation)に影響を与えるため、我々はスイッチング電流ISWが有効異方性エネルギKu、effの減少によって影響を受ける可能性を調べる。
図12は、tW-N=0.2nmでnに伴う規格化されたスイッチング電流及び垂直磁気異方性を示す。
図13は、n=29%でnに伴う規格化されたスイッチング電流及び垂直磁気異方性を示す。
図12及び13に示すように、それぞれn及びtW-Nの関数としてISW及びKu、effの正規化された値を示す。
図12に示すように、スイッチング電流ISWと有効異方性エネルギKu、effがnの増加するにつれて減少するが、その減少率はか相当異なることを示す。n=34%で始まり、スイッチング電流ISWは有効異方性エネルギKu、effよりも急速に減少し始め、この差はnが増加するにつれて大きくなる。
再び、図9に示すように、|ξDL|はタングステン窒化物層124の厚さtW-Nが増加するにつれて減少する。それにもかかわらず、図13に示すように、スイッチング電流ISWのタングステン窒化物層124の厚さtW-Nが増加するにつれて減少する。
しかし、tW-Nが変わるにつれてISWの減少はnを増加させる場合と異なって、Ku、effの割合とほぼ同一の傾向がある。したがって、SOT効率向上ではなく、Ku、effの変化によって、tW-Nが増加するにつれてISWは減少する。この結果は、nの増加によるISWの減少が向上したSOT効率及びKu、effの減少によって大きく影響を受けることを表す。とても薄いタングステン窒化物層124の挿入は、SOTスイッチング効率を向上させる。したがって、窒素の原子パーセントnが約40%である薄いタングステン窒化物層124は、SOT-MRAMの電力消費の側面で相当な利点を提供する。
FM/NMインタフェースで挿入されたタングステン窒化物層124の構成がSOT効率にいかなる影響を及ぼすかを議論する。向上した効率の可能な原因の一つは、不純物が存在するため電気抵抗の変化である。スピンホール効果SHEの可能な原因である真性及びサイドジャンプ散乱(Intrinsic and side-jump scattering)は、材料の比抵抗ρxxと関連がある。
材料の不純物は、散乱とρxx値を増加させ、ξSHを向上させることができる。我々はHall bar素子でρxxを測定し、|ξDL|の向上がW-N層でnが増加するにつれてρxxが増加したためであることを証明する。
図14は、W(5nm)/WN(tW-N=0.2nm)/CoFeB(0.9nm)/MgO(1nm)/Ta(2nm)構造でnの関数として比抵抗ρxx(resistivity)を示す。
図14に示すように、ρxxをtW-N=0.2nmでnの関数で表す。ρxx値は、たいていのn値でほぼ一定であるが、n=40%で急速に増加する。n=40%で、|ξDL|は最大である。この結果は、ξDLに対する抵抗の影響を無視することはできないが、ξDLがW/WN/CoFeB/MgO構造の抵抗に正確に比例しなかったことを示す。したがって、抵抗以外の他の要素がSOT効率に影響を及ぼすものと解釈される。
もう一つの可能な原因は、結晶性(crystallinity)又は相(phase)のようなタングステン窒化物層124の微細構造の影響である。この仮定を確認するために、nが増加するにつれてWフィルムの微細構造変化を観察した。
しかし、0.2nmの厚さの超薄膜タングステン窒化物層の微細構造変化を分析することが非常に難しい。したがって、約40nm厚さのタングステン窒化物フィルムを分析して、このような変化が超薄層(ultrathin layer)でも発生すると仮定した。
図15は、厚さ40nmのタングステン窒化物層のGIXRD(Grazing Incidence X-ray Diffraction)結果を示す。
図15に示すように、スパッタリング中にNガスが注入されなければ(n=0%)、Wピークが2θ=40度近くで明確に表す。ここで、我々がSOT測定に用いた5nm厚さのWフィルムは、β-W相(phase)であり、40nm厚さのWNフィルムはα-W相(phase)である。40nm厚さのWNフィルムで、nが5%に増加した後、W(110)ピークは急激に減少し、線幅は広がり、ピークは左側に移動してWNピークに接近する。この結果は、nが増加するにつれてWNが形成し始め、Wの結晶性が減少することを表す。
次に、nがさらに増加するにつれて、ピークの線幅はさらに広がり、ピークは次第に左側に移動してn=34%でWN(111)ピークとほぼ一致する。これは、nが30%を超えるとW相が殆どなくなり、ナノ結晶質WN薄膜だけが存在することを表す。
nが40%を超えると、ピークは左側にさらに移動してWN(100)ピークに接近し、n=42%でピークがより鮮やかになって結晶性が向上することを表す。この結果は、W-Nバイナリ位相ダイアグラム(binary phase diagram)と一致する。
窒素原子の含量が増加するにつれて、段階は W → W+WN → WN →WN+WN の順で表れる。ここで、WNはおよそn=34%で表れる。位相イアグラムは、実験結果とほぼ一致する。
次に、タングステン窒化物フィルムの比抵抗を測定し、以前の研究で報告されたものと比較した。
図16は、nの関数として40nmの厚さを有するタングステン窒化物層の比抵抗を図示する。
図16に示すように、点線はXRD分析によって予測されたタングステン窒化物相変化(phase change)の境界を示す。タングステン窒化物層の比抵抗がn=29%になるまで、200-260μΩ・cmで維持されるが、n>30%で350μΩ・cm以上に急速に増加する。
nが40%を超えると、比抵抗が再び500μΩ・cm以上に急激に増加する。スパッタリングされたタングステン窒化物層の抵抗は、圧力、スパッタリング電力及び温度のような蒸着条件に大きく依存する。しかし、一般的に総ガス流量[Ar+N]に対するNガス流量[N]の比Qが増加するにつれて、比抵抗が増加する。また、結晶性が増加するにつれて非抵抗が減少する。これは我々の実験の結果と一致する。
実験結果は、n=40%まで比抵抗(resistivity)が増加した後、n=42%で決定性が増加するにつれて比抵抗が若干減少することを示す。
ピーク強度が小さすぎてXRDを使用して位相を安定的に索引化できなかったため、XRD分析以外にも、我々はナノ結晶のように見えるため、TEMを使用して40nm厚さのタングステン窒化物層を分析する。
図17は、n=5%の場合、平面内のTEMイメージ(in-plane TEM images)と選択された領域回折(selecte area diffraction;SAD)パターンを示す。
図17に示すように、n=5%のとき、多結晶グレーン(polycrystalline grains)がナノ結晶質マトリックスに表れる。
n=5%のとき、SADパターンは、WとWNが共存することを示す。内側の点線円は、WN(111)グレーンを表す。WN(111)グレーンは、高速フーリエ変換イメージでWN(111)に索引された(indexed)リングパターンにマスクを適用することによって識別される。
多結晶グレン(polycrystalline grains)は、WNであり、窒素が注入されるときW薄膜が殆どナノ結晶(nanocrystalline)になることを表す。
図18は、n=34%の場合、平面内のTEMイメージ(in-plane TEM images)と選択された領域回折(selected area diffraction;SAD)パターンを示す。
図18に示すように、明確なリングパターンを有するTEM及びSADイメージは、ナノ結晶性WN(111)のみがn=34%で存在することを表す。
図19は、n=42%の場合、平面内のTEMイメージ(in-plane TEM images)と選択された領域回折(selected area diffraction;SAD)パターンを示す。
図19に示すように、n=42%の場合、ナノ結晶質マトリックスに他のグレーンが形成される。SADパターンにWN(100)が表れる。したがって、XRDとTEMの結果は一致し、WN薄膜の位相がnに依存することを確認する。
改善されたSOT効果の原因を探すために、我々はタングステン窒化物層の挿入に対するnの影響を調べた。
図14及び図16に示すように、磁気素子の比抵抗ρxx値と40nm厚さのタングステン窒化物フィルムの比抵抗は若干異なる。しかし、磁気素子の比抵抗ρxx値と40nm厚さのタングステン窒化物フィルムの比抵抗は、いずれもn=40%で最大値を示す。
図14の磁気素子において、0.2nm厚さのタングステン窒化物層は、他のフィルムの総厚さに比べてとても薄い。したがって、比抵抗に対する0.2nm厚さのタングステン窒化物層の影響は支配的でない。
また、微細構造分析を超薄膜に完全な正確度で適用することは難しいが、nの値はタングステン窒化物層の微細構造に影響を及ぼすと予想される。
相(phase)及び結晶度(crystallinity)の変化のような微細構造変化は非抵抗の変化を伴う。したがって、比抵抗と微細構造は別途考慮されにくい。
タングステン窒化物層の窒素含量を調整すると、|ξDL|を増加させ、ISWを減少させる。しかし、タングステン窒化物層に依存する向上したSOTスイッチング動作の物理的起源に対する追加研究が必要である。
MRAMアプリケーションに対するW/WN(tW-N=0.4nm)/CoFeB/MgO構造の適合性を確認するために、低温及び高温での磁気素子温度の安定性に対して議論する。
スイッチング電流の温度依存性を決定するために、次の順序で温度を変化させるtW-N=0.4nm及びn=29%を有する素子で試験を行った。
(1)室温(RT) → (2)-100℃ → (3)RT → (4)+100℃ → (5)RT.
図20は、+200Oeの外部磁場Hex下で様々な温度で面内電流に伴う抵抗を示す。
図20に示すように、SOTによるスイッチングは、全ての温度で反時計回りにうまく行われる。
図21は、様々な温度で外部磁場に伴うスイッチング電流を示す。
図21 に示すように、温度が(1)室温(RT)で(2)-100℃に減少すると、スイッチング電流が増加する。温度が(3)室温(RT)で+(4)100℃に増加するとスイッチング電流が減少する。SOT-誘導スイッチング電流は、熱変動によって低温より高温で減少することが広く知られている。しかし、スイッチング電流は、(1)初期室温状態、(3)冷却後室温状態及び(5)加熱後室温状態で一定に維持される。このような結果は、素子が多様な温度の劣悪な環境で作動することができ、低温及び高温環境を経験した後にも作動電流を変更せずに正常に作動することを確認した。したがって、これは、WN層を使用する構造がSOT-MRAM応用に適することを意味する。
我々は、タングステン窒化物層を有するW/WN/CoFeB/MgO構造のインターフェースエンジニアリングによって、SOTの向上及びSOT-誘導スイッチング電流の減少を調査した。テンステン窒化物層の窒素含量が40%に増加したとき、我々は0.54の高いSOT効率とW/CoFeB/MgO構造の値の約1/5でスイッチング電流の減少を観察した。
XRD及びTEMを通じて多様な窒素含量を有するフィルムの微細構造を分析した。結果は、SOT向上がテンステン窒化物層の組成に依存する比抵抗だけでなく、微細構造変化(タングステンがWN及びWN上に変化するとき)によって引き起こされることを突き止めた。
図22は、本発明の一実施例によるW(5nm)/WN(tW-N;n)/CoFeB(0.9nm)/MgO(1nm)/Ta(2nm)構造における窒素の含量nとWN層の厚さに伴う実験結果を示す。
図22に示すように、PMAは垂直磁気異方性を表し、IMAは面内異方性を表す。WN層において原子パーセント(atomic percent)は、2%ないし29%であり、前記WN層の厚さは0.2nmないし0.8nmである。この場合、前記自由層(CoFeB(0.9nm)は、垂直磁気異方性を維持する。
前記WN層において窒素の原子パーセント(atomic percent)は、2%ないし5%であり、前記WN層の厚さは0.2nmないし3nmである。この場合、前記(CoFeB(0.9nm)は、垂直磁気異方性を維持する。
前記WN層は結晶質WN(111)相を含むか、又は、前記WN層は結晶質WN(111)相及び結晶質WN(100)相を含む。この場合、前記自由層(CoFeB(0.9nm)は、垂直磁気異方性を維持する。
一方、タングステン層がなく、5nmのWN層のみある磁気素子の場合、窒素の含量nが2%ないし5%でのみ、自由層は垂直磁気異方性を表す。
図23は、本発明のもう一つの実施例による磁気素子を示す断面図である。
図23に示すように、磁気素子300は、固定された磁化方向を有する固定層150と、スイッチングされる磁化方向を有する自由層130と、前記固定層と前記自由層との間に介在されるトンネル絶縁層140と、面内電流が流れるにつれて前記自由層にスピン電流を注入するスピントルク発生層320と、前記自由層と前記スピントルク発生層との間に配置されたタングステン-窒化物層324と、を含む。前記スピン電流は、スピン軌道トルクによって前記自由層130の磁化方向をスイッチングする。前記固定層150及び前記自由層130は、垂直磁気異方性を有し、前記スピントルク発生層320は、タングステン層を含み、前記タングステン-窒化物層324は、前記自由層と垂直に整列される。
前記タングステン-窒化物層324の厚さと組成に応じてスイッチング電流が変化される。また、前記タングステン-窒化物層324の厚さと組成に応じて、前記自由層の磁化特性が変更される。すなわち、タングステン-窒化物層324の厚さと組成は、所定の範囲内で前記自由層130に垂直磁化異方性特性を提供する。前記自由層140が垂直磁気異方性を発現する場合、タングステン-窒化物層324の厚さが減少し、窒素の濃度が増加するにつれてスイッチング電流が減少する。
具体的に、前記タングステン-窒化物層324の厚さは、0.2nmであり、前記タングステン-窒化物層324において窒素の原子パーセント(atomic percent)が5%ないし42%である。この場合、前記自由層130は垂直磁気異方性を維持しつつ、窒素の原子パーセント(atomic percent)が増加するにつれてスイッチング電流が減少する。一方、窒素の原子パーセント(atomic percent)が42%を超える場合、前記自由層130は垂直磁気異方性を消失し、面内磁気異方性を有する。
前記タングステン-窒化物層324において窒素の原子パーセント(atomic percent)は2%ないし29%であり、前記タングステン-窒化物層324の厚さは0.2nmないし0.8nmである。この場合、前記自由層130は、垂直磁気異方性を維持する。
前記タングステン-窒化物層324において窒素の原子パーセント(atomic percent)は2%ないし5%であり、前記タングステン-窒化物層の厚さは0.2nmないし3nmである。この場合、前記自由層130は、垂直磁気異方性を維持する。
前記タングステン-窒化物層324は、結晶質WN(111)相(phase)を含み、又は前記タングステン-窒化物層324は結晶質WN(111)相及び結晶質WN(100)相を含む。この場合、前記自由層130は、垂直磁気異方性を維持する。
スピントルク発生層320の両端は、面内電流を印加する外部回路に連結される。
図24は、本発明のもう一つの実施例による磁気素子を示す断面図である。
図24に示すように、磁気素子(400)は、固定された磁化方向を有する固定層150と、スイッチングされる磁化方向を有する自由層130と、前記固定層と前記自由層との間に介在されるトンネル絶縁層140と、面内電流が流れるにつれて前記自由層にスピン電流を注入するスピントルク発生層420と、を含む。前記スピン電流は、スピン軌道トルクによって前記自由層130の磁化方向をスイッチングする。前記固定層150及び前記自由層130は、垂直磁気異方性を有し、前記スピントルク発生層420は順次積層されたタングステン層122及びタングステン-窒化物層124を含む。前記タングステン-窒化物層124は、前記自由層130に隣接して配置される。
前記スピントルク発生層420は、面内磁気異方性を有する強磁性層421をさらに含む。前記タングステン層122は、前記強磁性層421と前記タングステン-窒化物層124との間に配置される。前記強磁性層421の磁化方向は、前記面内電流が流れる方向と平行又は反平行である。前記強磁性層と前記タングステン層との間で界面発生スピン電流が生成される。前記界面発生スピン電流は、z軸成分のスピン分極を有する。これに応じて、面内外磁場なしでスピン-軌道トルクスイッチングが実現できる。
スピントルク発生層420の両端は、接続電極120a、120bを介して面内電流を印加する外部回路に連結される。
以上、本発明を特定の好ましい実施例に対して図示して説明したが、本発明はこのような実施例に限らず、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が特許請求範囲で請求する本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で実施できる様々な形態の実施例を全て含む。
100:磁気素子 120:スピントルク発生層
122:タングステン層 124:タングステン-窒化物層
130:自由層 140:トンネル絶縁層
150:固定層

Claims (6)

  1. 固定された磁化方向を有する固定層と、
    スイッチングされる磁化方向を有する自由層と、
    前記固定層と前記自由層との間に介在するトンネル絶縁層と、
    面内電流が流れるにつれて前記自由層にスピン電流を注入するスピントルク発生層と、
    を含む磁気素子であって、
    前記スピン電流は、スピン軌道トルクによって前記自由層の磁化方向をスイッチングし、
    前記固定層及び前記自由層は、垂直磁気異方性を有し、
    前記スピントルク発生層は、順次積層されたタングステン層及びタングステン-窒化物層を含み、
    前記タングステン-窒化物層は、前記自由層に隣接して配置され
    前記タングステン-窒化物層において窒素の原子パーセント(atomic percent)が5%ないし42%であることを特徴とする磁気素子。
  2. 固定された磁化方向を有する固定層と、
    スイッチングされる磁化方向を有する自由層と、
    前記固定層と前記自由層との間に介在するトンネル絶縁層と、
    面内電流が流れるにつれて前記自由層にスピン電流を注入するスピントルク発生層と、
    を含む磁気素子であって、
    前記スピン電流は、スピン軌道トルクによって前記自由層の磁化方向をスイッチングし、
    前記固定層及び前記自由層は、垂直磁気異方性を有し、
    前記スピントルク発生層は、順次積層されたタングステン層及びタングステン-窒化物層を含み、
    前記タングステン-窒化物層は、前記自由層に隣接して配置され、
    前記タングステン-窒化物層において窒素の原子パーセント(atomic percent)は、2%ないし29%であり、
    前記タングステン-窒化物層の厚さは0.2nmないし0.8nmであることを特徴とする磁気素子。
  3. 固定された磁化方向を有する固定層と、
    スイッチングされる磁化方向を有する自由層と、
    前記固定層と前記自由層との間に介在するトンネル絶縁層と、
    面内電流が流れるにつれて前記自由層にスピン電流を注入するスピントルク発生層と、
    を含む磁気素子であって、
    前記スピン電流は、スピン軌道トルクによって前記自由層の磁化方向をスイッチングし、
    前記固定層及び前記自由層は、垂直磁気異方性を有し、
    前記スピントルク発生層は、順次積層されたタングステン層及びタングステン-窒化物層を含み、
    前記タングステン-窒化物層は、前記自由層に隣接して配置され、
    前記タングステン-窒化物層において窒素の原子パーセント(atomic percent)は、2%ないし5%であり、
    前記タングステン-窒化物層の厚さは0.2nmないし3nmであることを特徴とする磁気素子。
  4. 固定された磁化方向を有する固定層と、
    スイッチングされる磁化方向を有する自由層と、
    前記固定層と前記自由層との間に介在するトンネル絶縁層と、
    面内電流が流れるにつれて前記自由層にスピン電流を注入するスピントルク発生層と、
    を含む磁気素子であって、
    前記スピン電流は、スピン軌道トルクによって前記自由層の磁化方向をスイッチングし、
    前記固定層及び前記自由層は、垂直磁気異方性を有し、
    前記スピントルク発生層は、順次積層されたタングステン層及びタングステン-窒化物層を含み、
    前記タングステン-窒化物層は、前記自由層に隣接して配置され、
    前記タングステン-窒化物層は結晶質W2N(111)相を含むか、又は、
    前記タングステン-窒化物層は、結晶質W2N(111)相及び結晶質WN(100)相を含むことを特徴とする磁気素子。
  5. 固定された磁化方向を有する固定層と、
    スイッチングされる磁化方向を有する自由層と、
    前記固定層と前記自由層との間に介在するトンネル絶縁層と、
    面内電流が流れるにつれて前記自由層にスピン電流を注入するスピントルク発生層と、
    を含む磁気素子であって、
    前記スピン電流は、スピン軌道トルクによって前記自由層の磁化方向をスイッチングし、
    前記固定層及び前記自由層は、垂直磁気異方性を有し、
    前記スピントルク発生層は、順次積層されたタングステン層及びタングステン-窒化物層を含み、
    前記タングステン-窒化物層は、前記自由層に隣接して配置され、
    前記スピントルク発生層は、面内磁気異方性を有する強磁性層をさらに含み、
    前記タングステン層は、前記強磁性層と前記タングステン-窒化物層との間に配置されることを特徴とする磁気素子。
  6. 固定された磁化方向を有する固定層と、
    スイッチングされる磁化方向を有する自由層と、
    前記固定層と前記自由層との間に介在するトンネル絶縁層と、
    面内電流が流れるにつれて前記自由層にスピン電流を注入するスピントルク発生層と、
    を含む磁気素子であって、
    前記スピン電流は、スピン軌道トルクによって前記自由層の磁化方向をスイッチングし、
    前記固定層及び前記自由層は、垂直磁気異方性を有し、
    前記スピントルク発生層はタングステン-窒化物層を含み、
    前記タングステン-窒化物層において窒素の原子パーセント(atomic percent)は、2%ないし5%であり、
    前記タングステン-窒化物層は、前記自由層に隣接して配置されることを特徴とする磁気素子。
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