JP7276850B2 - 底質環境改善資材 - Google Patents

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Description

本発明は、海や湖、池や川などの底質の環境を改善するための資材に関する。
海や湖、池や川などの水辺の底の状態は、海面漁業や内水面漁業をはじめ、様々な水産業に大きな影響を与えることが知られている。
特に、底質のヘドロ化が進行すると、酸素供給が不充分で腐敗が進み硫化水素臭等の悪臭を発したり、海面の変色など景観上の問題を生じせしめ、更には船舶の航行を困難にすることもある。
そこで、底質環境の改善を行うべく浚渫作業が行われることもあるが、ヘドロを浚った窪みに再びヘドロが堆積するなどして、底質環境を根本的に改善するのは難しいのが現状である。
そこで近年、微生物資材を水域に沈めて底質環境を改善させるよう構成した底質環境改善資材が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
このような底質環境改善資材によれば、底部に新たな環境改善微生物を生着させることができ、底質の改善を図ることができるとしている。
特開2016-069594号公報
しかしながら、上記従来の底質環境改善資材は生菌を使用していることから、流通時や保管時においても繁殖や発酵が進んでしまうため、品質が変化しやすいという問題があった。
また、潮の満ち引きや川の流れなど、水流によって資材が移動してしまい、底質改善を行いたい部位に資材を留めておくことが困難という問題もある。ただこの場合にも、所定期間が経過した後はできるだけ広い範囲に底質の環境改善効果を波及させたいため、資材を散逸させることができればより望ましいといえる。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、流通時や保管時は品質が変化しにくく、ハンドリングに優れ、また、水流によって流されにくく、更には、有用菌が比較的高濃度で集合した部位を時限的に底部に出現させ、その後底部に拡散して広範囲に改善効果をもたらすことが可能な底質環境改善資材を提供する。
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る底質環境改善資材では、15~25重量部の乾燥水苔に底質改善微生物発酵液を過飽和状態に含浸させた液濡水苔と、150~155重量部の粒状の鉄鋼スラグと、を生分解性樹脂にて形成したメッシュ状の袋内に収容してなることとした。
また、前記底質改善微生物発酵液は、0.6重量部の乾燥ステビア茎粉末と、0.6重量部の米ぬか粉末と、0.6重量部の乾燥おから粉末と、耐塩性の酵母を少なくとも含有する11~13重量部の汽水と、を混合した混合液を所定時間静置する静置工程と、前記静置工程を経た混合液を所定の容器に収容し、収容された混合液に同混合液の収容形状の外表面上のいずれの位置からも10cm以上であり、且つ、外表面上の少なくともいずれかの位置から17cm以下となる弱殺菌領域を形成する容器収容工程と、前記容器収容工程を経て混合液を収容した所定の容器を加熱空間内に配置し、同加熱空間を常温常圧の状態から約2.5気圧で150~160℃の状態にまで45~60分掛けて昇温し、約2.5気圧で150~160℃の状態を1~3分間維持し、その後加熱空間を約2気圧で115~125℃の状態にまで3~5分間掛けて降温設定し、約2気圧で115~125℃の状態を20~40分間維持し、更に加熱空間を常温常圧の状態にまで24~30時間掛けて降温させて、前記混合液中に加熱選抜された微生物を残存させる微生物選抜工程と、少なくとも微生物が液相に移行可能な手段により前記微生物選抜工程を経た混合液を固液分離して微生物含有液を得る固液分離工程と、得られた微生物含有液に糖源を添加して常温常圧で所定時間発酵し、微生物含有液のpHを4.5以下で、且つ、酸化還元電位を-100mV以下とする第1の発酵工程と、第1の発酵工程を経た微生物含有液にステビア茎の熟成液を添加してpHが3.1以下となるまで発酵させて不良発酵防止剤とする第2の発酵工程と、を得て得られた発酵液であることにも特徴を有する。
本発明に係る底質環境改善資材によれば、15~25重量部の乾燥水苔に底質改善微生物発酵液を過飽和状態に含浸させた液濡水苔と、150~155重量部の粒状の鉄鋼スラグと、を生分解性樹脂にて形成したメッシュ状の袋内に収容して構成したため、流通時や保管時は品質が変化しにくく、ハンドリングに優れ、また、水流によって流されにくく、更には、有用菌が比較的高濃度で集合した部位を時限的に底部に出現させ、同部位にて環境を改善可能な有用菌を優勢に保ちつつ馴化させ、その後底部に拡散して広範囲に改善効果をもたらすことが可能な底質環境改善資材を提供することができる。
本発明は、海や湖、池や川などの底質の環境を改善するための資材に関するものであり、特に、流通時や保管時は品質が変化しにくく、ハンドリングに優れ、また、水流によって流されにくく、更には、有用菌が比較的高濃度で集合した部位を時限的に底部に出現させ、同部位にて環境を改善可能な有用菌を優勢に保ちつつ馴化させ、その後底部に拡散して広範囲に改善効果をもたらすことが可能な底質環境改善資材を提供するものである。
すなわち、本実施形態に係る底質環境改善資材は、液濡水苔と粒状の鉄鋼スラグとをメッシュ状の袋内に収容して構成している点で特徴的である。
ここで、本明細書において底質改善とは、底質環境の改善を図る対象の水底領域において、同領域の底土から分取した水(以下、検体水ともいう。)に関し、ORP値を改善処理前のORP値よりも高い値とし、且つ、硫化水素が検出されている場合にはその濃度を改善処理前の濃度よりも低下させることを主な目標としている。
一例を挙げるならば、ORP値が負の値、例えば-500~-150mVの検体水が分取された水底領域を、ORP値がより高い値、好ましくは正の値、例えば100mV~200mVのORP値を示す検体水が分取される水底領域としたり、2~5ppmの硫化水素が検出される検体水が分取された水底領域を、より低い値、好ましくは0.5ppm以下の値で検出され、又は測定装置の検出限界以下として検出されない水底領域とすることと言える。
ここで液濡水苔は、15~25重量部の乾燥水苔に底質改善微生物発酵液を過飽和状態に含浸させたものである。
乾燥水苔は、園芸用として一般に使用される乾燥された水苔を使用することができる。一例を挙げるならば、ミズゴケ科に分類される水棲植物の乾燥物を採用することができる。
底質改善微生物発酵液は、底質環境改善の対象領域に存在する余剰な有機物、例えばヘドロ状となった領域を好気的に分解して底質環境を改善できる微生物(以下、底質改善微生物とも称する。)によって発酵され底質改善微生物の代謝産物を含有する液であり、水底において乾燥水草を足場としつつ底質改善微生物の菌叢を形成させるためのスタータとして機能する液である。
この底質改善微生物の種類は特に限定されるものではないが、例えば、後述する汽水領域より採取した汽水中に含まれる微生物群の中から、後述のスクリーニング手法に従い選抜された微生物、特に、好塩性(耐塩性)の酵母を多く含んだ細菌叢を用いるのが望ましい。
すなわち、底質改善微生物発酵液は、上述の底質改善微生物の発酵による発酵代謝産物が含まれ、菌勢や菌量が高められた液であれば特に限定されるものではないが、例えば以下に説明する所定の静置工程と、容器収容工程と、微生物選抜工程と、固液分離工程と、第1の発酵工程と、第2の発酵工程とを経て製造された液を採用することができる。これら工程を経ることにより、汽水由来の好塩性(耐塩性)酵母を中心とし、その他原料等に由来する微生物群(例えば乳酸菌群など)との共生によって水底の有機物の分解に長けた微生物叢を構築して、効率的な底質の改善効果に寄与する。
ここで静置工程は、不良発酵防止剤に含まれるエキス分の抽出原料となる資材(以下、総称してエキス抽出資材ともいう。)と、好塩性(耐塩性)の酵母を少なくとも含有する汽水とを混合し、静置しながら汽水中にエキス分を溶出させる工程であり、0.6重量部の乾燥ステビア茎粉末と、0.6重量部の米ぬか粉末と、0.6重量部の乾燥おから粉末と、好塩性(耐塩性)の酵母を少なくともを含有する11~13重量部の汽水と、を混合した混合液を所定時間静置する工程である。本静置工程では、これらエキス抽出資材と汽水とを所定量ずつ混合し、例えば常温にて所定時間静置する。静置に要する時間は、例えば15~20日間とすることができる。
また、容器収容工程は、前記静置工程を経た混合液を所定の容器に収容し、収容された混合液に同混合液の収容形状の外表面上のいずれの位置からも10cm以上であり、且つ、外表面上の少なくともいずれかの位置から17cm以下となる弱殺菌領域を形成して後述の微生物選抜工程において加熱した際に完全滅菌が行われないようにする工程である。
また、微生物選抜工程は、前記容器収容工程を経て混合液を収容した所定の容器を加熱空間内に配置し、同加熱空間を常温常圧の状態から約2.5気圧で150~160℃の状態にまで45~60分掛けて昇温し、約2.5気圧で150~160℃の状態を1~3分間維持して第1の加熱工程を行い、その後加熱空間を約2気圧で115~125℃の状態にまで3~5分間掛けて降温設定し、約2気圧で115~125℃の状態を20~40分間維持して第2の加熱工程を行い、更に加熱空間を常温常圧の状態にまで24~30時間掛けて降温させて降温工程を行い、前記混合液中に加熱選抜された微生物を残存させる工程である。
また、固液分離工程は、少なくとも微生物が液相に移行可能な手段により前記微生物選抜工程を経た混合液を固液分離して微生物含有液を得る工程である。固液分離は、必ずしも完全に固形分を除去する必要はなく、選抜した微生物を液相に移行させながら大まかに固形分を除き流動性を向上させる程度のイメージである。このような固液分離は、例えば布製の袋等に混合液を収容し、洗濯機の脱水機能等を利用して行うことができる。また、一般の固液分離装置を利用して微生物を液相に残せる程度の遠心力を付与して固液分離を行うようにしても良いし、同じく布製の袋に混合液を収容して搾汁することで液相を得ても良い。
また、第1の発酵工程は、得られた微生物含有液に糖源を添加して常温常圧で所定時間発酵し、微生物含有液のpHを4.5以下で、且つ、酸化還元電位を-100mV以下とする工程である。
また、第2の発酵工程は、第1の発酵工程を経た微生物含有液にステビア茎の熟成液を添加してpHが3.1以下となるまで発酵させて不良発酵防止剤とする工程である。微生物含有液に対するステビア茎熟成液の添加量は、微生物含有液0.38重量部に対して0.38~0.4重量部程度とすることができる。
ここで、本第2の発酵工程にて使用するステビア茎の熟成液は、ステビア茎を水等に浸漬してエキス分を抽出しつつ、ステビア茎由来の微生物によって発酵を行うことにより得られた発酵液(以下、ステビア茎簡易熟成液ともいう。)を用いることもできる。
しかしながら、ステビア茎の熟成液は、ステビア茎分散液調製工程と、ステビア茎分散液容器収容工程と、ステビア茎由来微生物選抜工程と、ステビア茎抽出液調製工程と、抽出液濃縮工程と、熟成工程と、を経て調製するのがより望ましい。
ステビア茎分散液調製工程は、乾燥ステビア茎の粉末に水を加えてステビア茎の分散液を調製する工程であり、具体的には、1重量部の乾燥ステビア茎粉末に対して10重量部±2重量部程度の水を添加して調製する。
ステビア茎分散液容器収容工程は、前述の容器収容工程と略同様に後述のステビア茎由来微生物選抜工程において加熱した際に完全滅菌が行われないよう、弱殺菌領域を形成可能な容器に収容する工程である。
このステビア茎分散液容器収容工程における弱殺菌領域は、所定の容器内に収容したステビア茎分散液の収容形状のうち、外表面上のいずれの位置からも10cm以上であり、且つ、外表面上の少なくともいずれかの位置から17cm以下となる内部領域である。より好ましくは、外表面上のいずれの位置からも17cmを越える非選抜領域が形成されず弱殺菌領域を形成可能な容器を用いる。
ステビア茎由来微生物選抜工程もまた前述の微生物選抜工程と同様、ステビア茎分散液を加熱して、ステビア茎由来の微生物を選抜する工程であり、細かくは第1のステビア茎加熱工程と、第2のステビア茎加熱工程とで構成される。
第1のステビア茎加熱工程は、ステビア茎分散液容器収容工程を経てステビア茎分散液を収容した所定の容器を加熱空間内に配置し、同加熱空間を常温常圧の状態から約2.5気圧で150~160℃の状態にまで30~40分掛けて昇温し、約2.5気圧で150~160℃の状態を1~3分間維持する。
第2のステビア茎加熱工程は、第1のステビア茎加熱工程に引き続き、加熱空間を約2気圧で115~125℃の状態にまで3~5分間掛けて降温設定し、約2気圧で115~125℃の状態を20~40分間維持する。
そして、この第1のステビア茎加熱工程と、第2のステビア茎加熱工程とを経た後に、85~95℃まで冷却を行うことにより、ステビア茎分散液中に加熱選抜された乾燥ステビア茎由来の微生物を残存させる。
ステビア茎抽出液調製工程は、ステビア茎由来微生物選抜工程を経たステビア茎分散液から、固液分離により液相を得る工程である。
具体的には、前述の第2のステビア茎加熱工程に引き続き、85~95℃まで降温させたステビア茎分散液を、少なくとも微生物が液相に移行可能な手段により固液分離して、液相をステビア茎の抽出液として得る。このステビア茎抽出液は、Brix値が2.0~4.0でステビア茎由来の微生物が含まれたものである。
抽出液濃縮工程は、ステビア茎抽出液を加熱して煮詰めることにより、所定の濃度まで濃縮することでステビア茎濃縮液を得る工程である。具体的には、ステビア茎抽出液を加熱して煮詰め、常温程度に冷却された状態においてBrix値が4.0~7.0でpHが6.0以下、ORPが10~99mVとなるように濃縮を行う。
熟成工程は、ステビア茎濃縮液を常温下にて発酵を伴いながら熟成させ、pHが5.0以下でORPが-100mV以下のステビア茎熟成液を得る工程である。
このように、ステビア茎分散液調製工程と、ステビア茎分散液容器収容工程と、ステビア茎由来微生物選抜工程と、ステビア茎抽出液調製工程と、抽出液濃縮工程と、熟成工程と、を経ることで、不良発酵防止剤の製造に適したステビア茎の熟成液を得ることができる。
そして、前述した静置工程と、容器収容工程と、微生物選抜工程と、固液分離工程と、第1の発酵工程と、第2の発酵工程とを経て製造された液を底質改善微生物発酵液として採用すれば、ヘドロ等が蓄積した底質の改善をより堅実に行うことができる。
なお、この底質改善微生物発酵液は上述した方法によって得られるものではあるが、これは当該底質改善微生物発酵液の製造方法を限定しているものではなく、底質改善微生物発酵液を、静置工程と容器収容工程と微生物選抜工程と固液分離工程と第1の発酵工程と第2の発酵工程との製造方法によって特定しているものである。
一般に、植物粉末や米ぬか、おから、汽水の如き天然物には、他の天然物と同様に、様々な成分や微生物が複雑な状態や配合比で含まれている。そして、上述のスクリーニング環境下で、他の微生物が利用し得なかった成分を利用できたり、ある微生物の代謝産物に利用価値を見出しうる所定の微生物が選抜され、更にはこれら原料を構成する成分の存在により好適な発酵が可能な底質改善微生物発酵液として機能しうるものと考えられる。
しかしながら、このような底質改善を生起する微生物叢を構成する個々の菌を同定したりその菌数を定量することや、各原料に由来する成分の種類や濃度を規定することは、製造過程での微生物による発酵代謝やその産物まで勘案すると、所定のパラメーター等で直接特定することは、不可能であるか又はおよそ実際的でない。
従って、底質改善微生物発酵液を製造方法で特定したのは、底質改善微生物発酵液は製造方法によってしか特定できないためである。また、本実施形態に係る底質環境改善資材の構成要素としての底質改善微生物発酵液についても同様である。但し、出願人が本願を権利化するに際し、底質改善微生物発酵液の製造方法の一部又は全部について意図的に限定する解釈を行うことを妨げるものではない。
底質改善微生物発酵液は、乾燥水苔に過飽和状態に含浸させる。ここで過飽和状態とは乾燥水苔が含浸保持できる底質改善微生物発酵液の量を超えて添加することを意味しており、仮に手で摘みながら持ち上げると底質改善微生物発酵液が水苔から滴り落ちる程度の量である。このように乾燥水苔に対して底質改善微生物発酵液を過飽和状態に添加することで液濡水苔を調製することができる。
鉄鋼スラグは、鉄鋼製品の製造過程で副生したスラグであり、特に3~10mm程度の粒状としたものが好適である。
また、乾燥水苔と粒状の鉄鋼スラグとの配合割合は、15~25重量部の乾燥水苔に対し、150~155重量部の粒状の鉄鋼スラグとするのが好ましい。もし仮に乾燥水苔に対する鉄鋼スラグの割合が150重量部よりも下回ると、吸着力低下や比重量不足、更には底質改善効果が乏しくなるという問題がある。また、乾燥水苔に対する鉄鋼スラグの割合が155重量部よりも上回ると過酸化鉄となる場合があり、また、鉄イオンの供給過多によって底質改善効果が乏しくなったり、底質を乱してしまうおそれがある。
液濡水苔と粒状の鉄鋼スラグを収容するメッシュ状の袋は生分解性樹脂にて形成されており、例えば水底にて3~5ヶ月経過した際に液濡水苔や粒状の鉄鋼スラグを集合させておく機能が失われる程度の強度にて構成している。このようなメッシュ状の袋は、例えばポリ乳酸にて形成した厚みが0.1mm程度の不織布などで実現することができる。
そして、このようなメッシュ状の袋内に液濡水苔と粒状の鉄鋼スラグとを収容することで本実施形態に係る底質環境改善資材が構築される。
このように、底質環境改善資材は、粒状の鉄鋼スラグが15~25重量部の乾燥水苔に対して150~155重量部配合されているため、過飽和状態に添加された底質改善微生物発酵液中の微生物は、鉄鋼スラグからの溶出成分、特に鉄イオンによって生育が抑制されることとなり、流通時や保管時は品質変化を防止でき、保管時間等に比較的左右されることなく、略均一な初発菌数で底質の環境改善を開始させることができる。
また、底質環境改善資材は、液濡水苔と粒状の鉄鋼スラグとがメッシュ状の袋内に収容された構成、より具体的には、内容物の少ない土嚢の如く、袋を掴んで遠方へ放り投げることができる構成としており、特に粒状の鉄鋼スラグが含まれているため遠投に適した重量を有しながらも変形可能な柔軟性を備えていることから、ヘドロの発生した広い領域においても作業者は底質環境改善資材を容易に配置できるという良好ハンドリング性を有している。
また、上述の如くメッシュ状の袋で液濡水苔と粒状の鉄鋼スラグとをひとまとめとしつつ、着底した袋内で粒状の鉄鋼スラグが広く広がり底質環境改善資材を水底に安定して固定することができるため、水流によって流されにくいという効果を発揮できる。
また、メッシュ袋は生分解性樹脂にて形成しているため、着底後所定期間経過すると、微生物等によりメッシュ袋が自然崩壊することとなり、袋により拘束された状態であった液濡水苔や粒状の鉄鋼スラグは、水流等によって自ずと拡散し散逸する。
すなわち、着底後一定期間は液濡水苔や粒状の鉄鋼スラグを集合させその場に留めることで底質改善微生物が比較的高濃度で存在する状態を時限的に出現させることとなる。それゆえ、この期間は底質改善微生物がヘドロ環境に存在する微生物群に比して優勢に増殖することが助長され、併せて底質改善微生物のヘドロ環境への馴化が進行する。
そして、増菌し馴化した底質改善微生物は、メッシュ袋の自然崩壊に伴って乾燥水草(液濡水苔)と共に周辺環境へ拡散し、更に広範囲に亘って底質の改善効果を発揮することとなる。なおこの拡散時にも、底質改善微生物が単に広がるのではなく、底質改善微生物の拠り所となる水草と共に広がるため、拡散した先での底質改善微生物の着生をより助長することができる。
なお、底質環境改善資材の水中への投入は、流通時における底質改善微生物の繁殖や発酵の抑制状態からの離脱のトリガーとなり、上述の如く底質改善微生物は増殖や馴化を開始する。すなわち、流通時は滴るほど乾燥水草に含浸させた底質改善微生物発酵液を介して鉄鋼スラグ由来の鉄イオンが高濃度に存在し底質改善微生物の増殖や発酵を抑制するが、水中への投入により鉄イオンの希釈が起こり、これを契機として底質改善微生物は増殖や馴化を開始するのである。
以下、本実施形態に係る底質環境改善資材について、具体的な製造例を参照しながら更に詳説する。
〔1.底質改善微生物発酵液の調製〕
(1-1)底質改善微生物のスクリーニング
20L容量のステンレス容器(直径32cmで高さ38cm)内に、0.85kgの乾燥ステビア茎粉末と、0.85kgの米ぬか粉末と、0.85kgの乾燥おから粉末とを投入し、更に山口県の阿武川河口の汽水域(塩分濃度が0.8~1.0%程度の領域)にて採取された汽水17kgを添加して攪拌混合したものを数バッチ調製し、常温で一晩(約15~17時間)静置した(静置工程)。この静置した混合物の微生物検査の結果、検出された幾つかの微生物の中から、少なくともLactobacillus buchneriの存在が確認された。
また、採取した汽水について別途微生物検査を行ったところ、汽水中には150cfu/mlの濃度で耐塩性酵母群が含まれていることが確認された。
次いで、約20.31L容量の蓋付きステンレス容器P1(内径28cmで高さ33cmの円筒状)内に静置工程を経た混合液を20L収容し、容器内に弱殺菌領域を形成させた(容器収容工程)。また、同様に、約21.04L容量の蓋付きステンレス容器Q1(内径20cmで高さ67cmの円筒状)に、静置工程を経た混合液を20.41L収容し、ステンレス容器Q1内に収容された混合液の収容形状を直径20cmで高さ65cmの円柱状として弱殺菌領域を形成した。併せて、約32.67L容量の蓋付きステンレス容器R1(内径34cmで高さ36cmの円筒状)に、静置工程を経た混合液を30.85L収容し、ステンレス容器R1内に収容された混合液の収容形状を直径34cmで高さ34cmの円柱状として弱殺菌領域を形成した。
次に、加圧クッカー内に、混合液を各ステンレス容器P1Q1,R1ごと収納し、約2.5気圧で150~160℃の状態にまで45~60分掛けて昇温し、約2.5気圧で150~160℃の状態を1~3分間維持させた(第1の加熱工程)。
次に、引き続いて約2気圧で115~125℃の状態にまで3~5分間掛けて降温し、約2気圧で115~125℃の状態を20~40分間維持させた(第2の加熱工程)。
次に、加圧クッカーの加熱スイッチを切り、加圧クッカーの内部温度が常温常圧の状態となるまで24~30時間掛けて降温させた(降温工程)。
そして、加圧クッカーの蓋を開けて、各ステンレス容器P1,Q1,R1内に底質改善微生物のスクリーニングが行われた混合液を得た。この混合液の微生物検査の結果、検出された幾つかの微生物の中から、少なくともLactobacillus buchneriの存在が確認された。
〔2.ステビア茎の熟成液の調製〕
まず、所定の容器に1kgの乾燥ステビア茎粉末に対して10±2kgの水を添加して満遍なく混合し、ステビア茎の分散液を調製した(ステビア茎分散液調製工程)。なお、このステビア茎の分散液は数バッチ調製した。
次に、約12.27L容量の蓋付きステンレス容器P2(内径25cmで高さ25cm)内に、ステビア茎分散液調製工程にて調製したステビア茎分散液12Lを収容し、容器内に収容したステビア茎分散液に弱殺菌領域を形成させた(ステビア茎分散液容器収容工程)。また、同様に、約21.04L容量の蓋付きステンレス容器Q1(内径20cmで高さ67cmの円筒状)に、ステビア茎分散液調製工程にて調製したステビア茎分散液を12L収容し、ステンレス容器Q1内に収容されたステビア茎分散液の収容形状を直径20cmで高さ38cmの円柱状として弱殺菌領域を形成した。併せて、約32.67L容量の蓋付きステンレス容器R1(内径34cmで高さ36cmの円筒状)に、ステビア茎分散液調製工程にて調製したステビア茎分散液を30.85L収容し、ステンレス容器R1内に収容されたステビア茎分散液の収容形状を直径34cmで高さ34cmの円柱状として弱殺菌領域を形成した。
次に、加圧クッカー内に、ステビア茎分散液をステンレス容器P2,Q1,R1ごと収納し、約2.5気圧で150~160℃の状態にまで30~40分掛けて昇温し、約2.5気圧で150~160℃の状態を1~3分間維持させた(第1のステビア茎加熱工程)。
次に、引き続いて約2気圧で115~125℃の状態にまで3~5分間掛けて降温設定し、約2気圧で115~125℃の状態を20~40分間維持させた(第2のステビア茎加熱工程)。
次に、加圧クッカーの加熱を終了し、加圧クッカーの内部が略常圧(開蓋可能な圧力)となり約85~95℃となったのを見計らって、ステビア茎分散液を収容したステンレス容器P2,Q1,R1を加圧クッカーから取出し、綿製の布袋内にステビア茎分散液を移した。
ステビア茎分散液を収容した布袋は、熱い状態のまま脱水装置に供し、固液分離を行ってステビア茎抽出液を得た(ステビア茎抽出液調製工程)。このステビア茎抽出液は、Brix値が2.0~4.0であり、別途行った微生物検査によりステビア茎由来の微生物であるLactobacillus属の微生物がステンレス容器P2,Q1,R1のいずれにも含まれていることが確認された。
次に、得られたステビア茎抽出液を耐熱性の所定容器にそれぞれ収容し、ガスコンロ上に載置して4~5時間程度加熱しつつ煮詰めることでステビア茎濃縮液の調製を行った(抽出液濃縮工程)。その後、加熱を終了し、常温まで放置冷却したした後にステビア茎濃縮液について理化学検査を行ったところ、Brix値が4.0~7.0でpHが6.0以下、ORPが10~99mVであることが確認された。
次に、得られたステビア茎濃縮液をステンレス製のフック付の発酵熟成缶(12L容量)に収容し、常温環境下にて静置して熟成を行った(熟成工程)。熟成中は、ステンレス容器P2,Q1,R1のいずれのステビア茎濃縮液からも発酵臭を伴うガスの発生があり、ステンレス容器P2,Q1,R1の容器形状の差異に拘わらず略同程度の発酵を伴っていることが確認された。
そして、熟成中のステビア茎濃縮液のpHが5.0以下で、且つ、ORPが-100mV以下となった時点でステビア茎熟成液とした。また、この時点においてもステンレス容器P2,Q1,R1の容器形状に由来する異常発酵などの差異は認められず、この後の実験においてステビア茎熟成液は、いずれも同じものとして扱うこととした。
〔3.底質改善微生物発酵液の調製〕
前述の〔1.底質改善微生物のスクリーニング〕により降温工程を経て底質改善微生物のスクリーニングが行われたステンレス容器P1,Q1,R1中の混合液をそれぞれ別個に綿製の布袋内に収容し、この布袋を脱水装置に供して固液分離を行って微生物含有液を得た(固液分離工程)。
次に、フック付の発酵熟成缶(12L容量)に固液分離した微生物含有液約9kgをステンレス容器P1,Q1,R1別に入れ、0.1kgのメープルシロップを糖源としてそれぞれ添加して均一に攪拌し、常温常圧で大凡20~30日間静置して発酵を行わせた(第1の発酵工程)。
この第1の発酵工程の初期段階では、微生物含有液の液表面に上澄みが生成するが、これは発明者らの経験上、発酵を緩慢化させるため数日毎に取り除いた。また、この初期段階を経過すると、微生物含有液はあたかもビールのような感じで泡立ち初め、微生物により発酵が行われていることが確認された。
そして、微生物含有液のpHが4.5以下で、且つ、酸化還元電位が-100mV以下となった時点で第1の発酵工程を終了した。なお、この時点においてステンレス容器P1,Q1,R1の間における容器形状の差異に由来する異常発酵などの違いは確認されなかった。
次に、第1の発酵工程を経た微生物含有液に対し、前述の〔2.ステビア茎の熟成液の調製〕にて得られたステビア茎熟成液を添加して均一に攪拌し、常温常圧で大凡20~25日間静置して発酵を行わせた(第2の発酵工程)。
具体的には、10L容量の二次発酵缶に、0.75kgの第1の発酵工程を経たステンレス容器P1,Q1,R1いずれかの微生物含有液と、0.75kgのステビア茎熟成液とを収容し、更に水を加えて10kgとし均一に攪拌することで、第2の発酵工程に供する被発酵液の調製を行った。なお、被発酵液に対しては、必要に応じて0.75kg程度の糖源を更に添加しても良く、例えば、オリゴ糖、より好ましくはテンサイ糖を添加することができる。
そして、pHが3.1以下となるまで発酵させた時点で第2の発酵工程を終了し、得られた発酵液を底質改善微生物発酵液とした。また、この時点においてもステンレス容器P1,Q1,R1の容器形状に由来する異常発酵などの差異は認められず、この後の試験において底質改善微生物発酵液は、いずれも同じものとして扱うこととした。底質改善微生物発酵液中のChromatium属に属する光合成細菌群の数は20cfu/ml以下であった。また、耐塩性酵母群の菌数は1,2×106cfu/mlであった。
〔4.鉄鋼スラグ〕
製鉄会社より鉄鋼スラグを入手し、本実施形態に係る底質環境改善資材の製造原料用の鉄鋼スラグとした。同鉄鋼スラグは直径が3~10mm程度の粒状を呈していた。
〔5.水苔〕
ホームセンターにて市販の乾燥水苔を入手し、本実施形態に係る底質環境改善資材の製造原料用の乾燥水苔とした。
〔6.メッシュ袋〕
シンワ株式会社製のポリ乳酸製不織布(型番9051-89-2)を入手し、ヒートシーラーを用いて一辺を開口部とした25cm×25cmの矩形袋状とし、メッシュ袋の形成を行った。ポリ乳酸製不織布の厚みは大凡0.1mmであり、目開きは鉄鋼スラグや水苔が脱落しない程度の大きさ(概ね1mm以下)であった。
〔7.底質環境改善資材〕
次に、上述の底質改善微生物発酵液と鉄鋼スラグ、水苔、メッシュ袋を用いて底質環境改善資材の形成を行った。
まず、メッシュ袋に15~25gの乾燥水苔と150~155gの粒状の鉄鋼スラグとを収容し、ヒートシーラーにて開口をシールしてメッシュ袋収容体を形成した。
次に、得られたメッシュ袋収容体を底質改善微生物発酵液中に浸漬することでメッシュ袋収容体内の乾燥水苔に底質改善微生物発酵液を含浸させて液濡水苔とした。
12~24時間経過後、底質改善微生物発酵液から引き上げて、底質環境改善資材を得た。このとき、乾燥水苔は十分に底質改善微生物発酵液の吸水を完了しており、過飽和状態に含浸されていることが確認された。
得られた底質環境改善資材は、ポリエチレンを主体とするポリアミド複合の樹脂外装袋内に3袋収容し、更に過飽和状態を保つべく所定量の底質改善微生物発酵液を収容して開口をシールして底質環境改善資材包装体とした。収容する底質改善微生物発酵液の量は、例えば約200~2000mlの範囲で特に限定されるものではないが、底質環境改善資材包装体の重量をできるだけ軽くしたい場合には、400~600mlの範囲としたり、底質環境改善資材包装体内に収容された余剰の底質改善微生物発酵液に別途用途等がある場合には1300~1700mlの範囲とすることができる。
〔8.底質環境改善試験(1)〕
次に、製造した底質環境改善資材を用い、底質の環境の改善効果を確認すべくフィールド試験を行った。
具体的には、長崎県佐世保市にて水産卸売業を営むY社において、荷上場として使用している浮桟橋の床下に位置する海の底を対象に底質改善を試みた。荷上場直下の海底は、魚介類の水揚げや漁業資材の積み下ろしにより、有機物が多く堆積し底質が悪化しており、環境改善試験前の状態は、対象領域の底土から分取した検体水によれば、pHは6.34、ORPは-261mV、硫化水素濃度は2.0ppmであった。
この対象領域について底質改善を施すにあたり、本試験では、同対象領域を以下の4つの領域に区分けし、それぞれ異なる条件にてその効果を確認した。
まず、第1の区画には、本実施形態に係る底質環境資材であって、ほぼ製造直後と言える製造して3日以内のものを概ね30m2に1個の割合で合計12個(底質環境改善資材包装体として4袋)配置した。
また、この第1の区画と比較すべく、第2区画には、本実施形態に係る底質環境資材であって、製造後12ヶ月間に亘り倉庫で保管したもの(以下、長期保管資材ともいう。)を、別に区画された360m2の領域に対し概ね30m2に1個の割合で合計12個(長期保管された底質環境改善資材包装体として4袋)配置した。
また更なる比較領域として、第3の区画には、本実施形態に係る底質環境改善資材と略同様であるが粒状の鉄鋼スラグのみ除いた資材であって、ほぼ製造直後と言える製造して3日以内のもの(以下、スラグなし比較品ともいう。)を、別に区画された360m2の領域に対し概ね30m2に1個の割合で合計12個(底質環境改善資材様の包装体として4袋)配置した。
また更なる比較対象として、第4の区画には、製造後12ヶ月間に亘り倉庫で保管したスラグなし比較品(以下、長期保管スラグなし比較品ともいう。)を、別に区画された360m2の領域に対し概ね30m2に1個の割合で合計12個(底質環境改善資材様の包装体として4袋)配置した。
なお、各区画に配置された資材や比較品は、配置当初の位置が分かるようにポールをマーカとして配置した。
まず、各資材や比較品の配置作業時の作業性について確認したところ、第1区画及び第2区画では、資材に配合された粒状の鉄鋼スラグのほどよい重みにより、目標位置への放り投げによる作業を行うことができ、極めて作業性に優れていることが確認された。一方、第3区画及び第4区画では、配置する比較品に粒状の鉄鋼スラグが配合されておらず、メッシュ袋内には液濡水苔があるだけで金属の如き高密度な重量感に欠け、放り投げによる配置は不可能ではないものの目標位置へのコントロールが難しく、第1区画及び第2区画にて使用した本実施形態に係る底質環境改善資材に比して作業性に欠けていた。
次に、各資材や比較品の配置作業後の経時変化について検討した。評価は、メッシュ袋の状態、メッシュ袋の当初配置位置からの移動量、pH、ORP、硫化水素濃度について行った。まずは、第1区画及び第2区画の結果を表1に示す。
Figure 0007276850000001
まず第1区画についてであるが、表1からも分かるようにメッシュ袋の状態は、配置後1ヶ月まではほぼ変化が見られなかったものの、2ヶ月目にやや解れたような脆弱化した部位が見られるようになった。なお、表1には記載していないが、メッシュ袋の状態はその後解れが進行し、4ヶ月目にはメッシュ袋の一部は崩壊し、5~6ヶ月目には配置した12個の底質環境改善資材の多くが既に袋ごと海流などによって流失していた。このことから、メッシュ袋の状態が時限的に変化することが確認された。
またメッシュ袋の当初配置位置からの移動については、配置後2ヶ月目までは当初位置のマーカであるポールから1メートルの範囲内であった。またその後の経過を観察したところ、4~6ヶ月経過したあとでも2メートルの範囲内に収まっていた。このことから、本実施形態に係る底質環境改善資材は、水流によっては比較的流されにくいことが示唆された。
また、検体水のpHは前述の如く配置直後は6.34であり、この値は1ヶ月後においてもあまり変化なく6.35であった。しかし、2ヶ月後には値が大きく変化し、5.93となった。
検体水のORP値は、配置直後において-261mVであったが、1ヶ月後には-201mVと電位はやや上昇し、2ヶ月後には-185mVと更に上昇した。なお、その後の経過観察では、最終的に6ヶ月後においてORP値は128mVとなった。
検体水の硫化水素濃度は、配置直後において2.0ppmであったが、1ヶ月後には0.2ppmと大幅に減少し、2ヶ月後には検出限界以下となった。またその後の経過観察では6ヶ月後においても、硫化水素は検出されなかった。
これら第1区画の結果から、メッシュ袋が維持されている着底後一定期間は底質改善微生物がヘドロ環境に存在する微生物群に比して優勢に増殖することが助長され、併せて底質改善微生物のヘドロ環境への馴化が進行し、その後増菌し馴化した底質改善微生物は、メッシュ袋の自然崩壊に伴って乾燥水草(液濡水苔)と共に周辺環境へ拡散し、更に広範囲に亘って底質の改善効果を発揮することが示唆された。
このような第1区画の結果に対し、表1の略右半部に示すように、長期保管資材を使用した第2区画の場合、1ヶ月後のORP値や硫化水素濃度については第1区画での結果よりもやや劣っていたが、2ヶ月後には第1区画と概ね同等の結果となった。
これは、長期保存により試験開始直後における微生物増殖の瞬発力がやや低下していたことに由来すると思われるが、その瞬発力の低下もわずかであり、2ヶ月後には長期保管していない資材と同等の効果を生起することができた。すなわち、第2区画の結果は概ね第1区画の結果と同様であり、12ヶ月間の保管期間が製品に与える品質への影響は小さいものと考えられた。
次に、第3区画及び第4区画の結果を表2に示す。
Figure 0007276850000002
スラグなし比較品を用いた第3区画の結果について言及すると、表2に示すようにメッシュ袋の状態であるが、1ヶ月後に試験場所に訪れたところ、第3区画に配置したスラグなし比較品はいずれも潮流によって失われていた。そこで再度ポールマーカの位置にスラグなし比較品を配置し、錘にて固定することで失われないように対策した。
この結果、2ヶ月(再配置後1ヶ月)の時点では変化は未だ確認されなかったものの、その後の経過観察において3ヶ月(再配置後2ヶ月)の時点で解れが出現し、再配置後4ヶ月目にはメッシュ袋の一部は崩壊し、再配置後5~6ヶ月目には配置した12個の底質環境改善資材の多くが既に袋ごと海流などによって流失していた。このことから、メッシュ袋の状態の時限的な変化は、本実施形態に係る底質環境資材乃至長期保管資材と同様であることが確認された。
またメッシュ袋の当初配置位置からの移動については、前述の通りであり、粒状の鉄鋼スラグを有しないことから、資材自体が容易に流失してしまうようであった。
また、検体水のpHは前述の如く配置直後は6.33であり、資材自体が失われていたため、この値は1ヶ月後においてもあまり変化なく6.35であった。また、2ヶ月後には値が6.11に変化したものの、その変化の度合いは第1区画や第2区画と比較して小幅なものであった。
検体水のORP値は、配置直後において-263mVであったが、1ヶ月後には資材自体が失われていたにも拘わらず-248mVと電位はやや上昇し、2ヶ月後には-222mVと小幅ながらも少しずつ上昇を続けた。これは、定着が困難ながらも製造後間もなくの活性の高い微生物を含む資材が用いられたことにより、資材が海流等によって失われた後も海底に定着し、少しずつではあるが底質環境の改善が図られたためであると考えられる。しかし、錘にて固定した後も飛躍的な底質環境の改善が見られないのは、鉄鋼スラグからの鉄イオンの供給がないためと考えられた。
また検体水の硫化水素濃度は、配置直後に2.1ppmであり、1ヶ月後には1.9ppm、2ヶ月後には1.6ppmと推移した。この硫化水素濃度についてもORPの値と同様に、微生物の底土への定着により若干の底質環境改善が図られたものの、鉄鋼スラグの不存在(鉄イオン不足)により、硫化水素の飛躍的な低減は見られなかったものと考えられる。
これらのことから、底質環境の飛躍的な改善を行うためには、鉄鋼スラグの存在が有用であることが示された。
またこのような第3区画の結果に対し、表2の略右半部に示すように、長期保管スラグなし比較品を用いた第4区画では、メッシュ袋の状態や当初配置位置からの移動の点については同じであったが、底質環境改善効果の点では第3区画の結果よりも更に劣る結果となった。
すなわち、pHの値こそ6.33(直後)→6.28(1ヶ月後)→6.25(2ヶ月後)とわずかながらも低下し続ける傾向が観察されたが、ORPについては配置直後-255mVであった値が、1ヶ月後には-262mV、2ヶ月後には-248mVであり、改善傾向はほぼ観察されなかった。
また、硫化水素濃度についても、2.1ppm(直後)→2.0ppm(1ヶ月後)→1.9ppm(2ヶ月後)と顕著な改善傾向は見られなかった。
これらの結果を勘案すると、長期保管スラグなし比較品は、鉄イオン源となる鉄鋼スラグの不存在に加え、長期保管による微生物活性の低下により底土への定着が著しく劣ることで、底質改善効果が殆ど見られなかったものと考えられた。
〔9.底質環境改善試験(2)〕
次に、製造した底質環境改善資材を用い、底質の環境の改善効果を確認すべく第2のフィールド試験を行った。
水産種苗会社であるO社において、社屋前排水口近辺の干潟を対象に底質改善を試みた。干潟の環境改善試験前の状態は、対象領域の底土から分取した検体水によれば、pHは6.22、ORPは-151mV、硫化水素濃度は検出限界以下(0.1ppm以下)であった。
試験は、前述の底質環境改善試験(1)と同様に、対象領域を第1区画~第4区画に区分けして行った。
その結果、第1区画においてメッシュ袋の状態や当初配置位置からの移動については、前述の試験と同様の傾向が見られた。またpHについては、6.22(直後)→6.42(1ヶ月後)→5.85(2ヶ月後)であり、試験開始直後と2ヶ月後との比較ではpHが低下する傾向が見られたが、1ヶ月後において一度上昇している点については、現在その理由を解明しているところである。
また、ORP値は、-151mV(直後)→41mV(1ヶ月後)→101mV(2ヶ月後)と順調に上昇した。特に着目すべきは、2ヶ月後において100mVを超える電位にまで底質環境の改善が図られた。なお、硫化水素濃度は当初より検出限界以下であり、これは試験終了まで続いた。
一方、その他の区画については、前述の底質環境改善試験(1)と同様の結果が得られた。すなわち、第2区画については、第1区画とほぼ遜色のない底質環境改善効果が確認された。また、第3区画は、若干の底質環境改善効果が観察されたものの、第1区画及び第2区画に比してその効果は著しく低いものであった。また第4区画については、第3区画よりも更に底質環境改善効果は低いものであった。
これらの結果から、本実施形態に係る底質環境改善資材は、流通時や保管時は品質が変化しにくく、ハンドリングに優れ、また、水流によって流されにくく、更には、有用菌が比較的高濃度で集合した部位を時限的に底部に出現させ、その後底部に拡散して広範囲に改善効果をもたらすことが可能であることが示唆された。
上述してきたように、本実施形態に係る底質環境改善資材によれば、底質改善微生物発酵液を15~25重量部の乾燥水苔に過飽和状態に含浸させた液濡水苔と、150~155重量部の粒状の鉄鋼スラグと、を生分解性樹脂にて形成したメッシュ状の袋内に収容してなることとしたため、流通時や保管時は品質が変化しにくく、ハンドリングに優れ、また、水流によって流されにくく、更には、有用菌が比較的高濃度で集合した部位を時限的に底部に出現させ、その後底部に拡散して広範囲に改善効果をもたらすことが可能な底質環境改善資材を提供することができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。

Claims (2)

  1. 底質改善微生物発酵液を15~25重量部の乾燥水苔に過飽和状態に含浸させた液濡水苔と、150~155重量部の粒状の鉄鋼スラグと、を生分解性樹脂にて形成したメッシュ状の袋内に収容してなる底質環境改善資材。
  2. 前記底質改善微生物発酵液は、
    0.6重量部の乾燥ステビア茎粉末と、0.6重量部の米ぬか粉末と、0.6重量部の乾燥おから粉末と、耐塩性酵母を少なくとも含有する11~13重量部の汽水と、を混合した混合液を所定時間静置する静置工程と、
    前記静置工程を経た混合液を所定の容器に収容し、収容された混合液に同混合液の収容形状の外表面上のいずれの位置からも10cm以上であり、且つ、外表面上の少なくともいずれかの位置から17cm以下となる弱殺菌領域を形成する容器収容工程と、
    前記容器収容工程を経て混合液を収容した所定の容器を加熱空間内に配置し、同加熱空間を常温常圧の状態から約2.5気圧で150~160℃の状態にまで45~60分掛けて昇温し、約2.5気圧で150~160℃の状態を1~3分間維持し、その後加熱空間を約2気圧で115~125℃の状態にまで3~5分間掛けて降温設定し、約2気圧で115~125℃の状態を20~40分間維持し、更に加熱空間を常温常圧の状態にまで24~30時間掛けて降温させて、前記混合液中に加熱選抜された微生物を残存させる微生物選抜工程と、
    少なくとも微生物が液相に移行可能な手段により前記微生物選抜工程を経た混合液を固液分離して微生物含有液を得る固液分離工程と、
    得られた微生物含有液に糖源を添加して常温常圧で所定時間発酵し、微生物含有液のpHを4.5以下で、且つ、酸化還元電位を-100mV以下とする第1の発酵工程と、
    第1の発酵工程を経た微生物含有液にステビア茎の熟成液を添加してpHが3.1以下となるまで発酵させて不良発酵防止剤とする第2の発酵工程と、を得て得られた発酵液であることを特徴とする請求項1に記載の底質環境改善資材。
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