JP7274241B2 - 部材、部材の製造方法、パーマネント形状変更済み部材の製造方法、パーマネント形状変更済み部材、細胞培養基材、結紮デバイス、及び、積層体 - Google Patents
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Description
より詳細には、非特許文献1に記載されたフィルムにおいて、T形状は、変形の仕方により様々に変更できるものの、加熱を受けて戻った際のP形状は、元々フィルムを成形した際の形状に依存し、変更できなかった。
また、本発明は部材の製造方法、パーマネント形状変更済み部材の製造方法、パーマネント形状変更済み部材、細胞培養基材、結紮デバイス、及び、積層体を提供することも課題とする。
式1で表される硬化性化合物を硬化させてなる結晶性を有する硬化物と、
エステル交換触媒と、を含有する部材。
(式1中、L1はポリオキシアルキレンカルボニル基を表し、X1は硬化性基を有する基を表し、R1は水素原子、又は、前記硬化性基を有さない1価の置換基を表し、qは2以上の整数を表し、pは0以上の整数を表し、qが2かつpが0のとき、M1は単結合、又は、2価の基を表し、qが2かつpが1以上のとき、及び、qが3以上のとき、M1はp+q価の基を表し、複数あるR1、L1、及び、X1はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
[2]
オキシアルキレンカルボニル基からなる繰り返し単位を有し、分子内に少なくとも2つ以上のヒドロキシ基を有する高分子化合物、を更に含有する、[1]に記載の部材。
[3]
形状記憶能を有する、[1]又は[2]に記載の部材。
[4]
示差走査熱量測定の昇温過程で、35~60℃に吸熱ピークが観測される、[1]~[3]のいずれかに記載の部材。
[5]
前記硬化性化合物が以下の式1Bで表される、[1]~[4]のいずれかに記載の部材。
(式1B中、M1Bは、r価の基であり、L1Bはポリオキシアルキレンカルボニル基を表し、X1Bは硬化性基を有する基を表し、rは2以上の整数を表し、複数あるL1B、及び、X1Bはそれぞれ同一でも異なってもよい。)
[6]
前記硬化性化合物が以下の式1Cで表される、[1]~[5]のいずれかに記載の部材。
(式1C中、AL1は直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表し、X1Cは硬化性基を有する基を表し、tは2~100の数を表す。)
[7]
前記硬化性化合物が以下の式1Dで表される、[1]~[5]のいずれかに記載の部材。
(式1D中、AL2は直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表し、X1Dは硬化性基を有する基を表し、wは2~100の数を表す。)
[8]
前記高分子化合物が、以下の式2で表される、[1]~[7]のいずれかに記載の部材。
(式2中、L2はポリオキシアルキレンカルボニル基を表し、Y2はヒドロキシ基を有する基を表し、R2は水素原子、又は、ヒドロキシ基を有さない1価の置換基を表し、n2は2以上の整数を表し、m2は0以上の整数を表し、n2が2かつm2が0のとき、M2は単結合、又は、2価の基を表し、n2が2かつm2が1以上のとき、及び、n2が3以上のとき、M2はm2+n2価の基を表し、複数あるL2、R2、及び、Y2はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
[9]
前記高分子化合物が、式2Bで表される、[1]~[8]のいずれかに記載の部材。
(式2B中、L2Bはポリオキシアルキレンカルボニル基を表し、Y2Bはヒドロキシ基を有する基を表し、n2Bは2以上の整数を表し、M2はn2B価の基を表し、複数あるL2B、及び、Y2Bはそれぞれ同一でも異なってもよい。)
[10]
前記高分子化合物が、式2Cで表される、[1]~[9]のいずれかに記載の部材。
(式2C中、AL3は直鎖状、又は、分岐鎖状のアルキレン基を表し、gは2~100の数を表す。)
[11]
前記高分子化合物が、式2Dで表される、[1]~[9]のいずれかに記載の部材。
(式2D中、AL3は直鎖状、又は、分岐鎖状のアルキレン基を表し、hは2以上の数を表す。)
[12]
前記エステル交換触媒がスズを含有する[1]~[11]のいずれかに記載の部材。
[13]
[1]~[12]のいずれかに記載の部材の製造方法であって、
前記硬化性化合物と、前記高分子化合物と、硬化剤とを含有する組成物にエネルギーを付与して前記硬化性化合物を硬化させ、前記高分子化合物を含有する硬化物を得ることと、
前記エステル交換触媒、及び、溶媒を含有する溶液と、前記硬化物とを接触させて、部材を得ることと、を有する部材の製造方法。
[14]
[1]~[12]のいずれかに記載の部材を応力下で加熱して、エステル交換反応させて、パーマネント形状変更済み部材を得る、パーマネント形状変更済み部材の製造方法。
[15]
[1]~[12]のいずれかに記載の部材を応力下で加熱して、エステル交換反応させて、パーマネント形状変更済み部材を得る、部材のパーマネント形状を変更する方法。
[16]
[1]~[12]のいずれかに記載の部材を応力下で加熱して、エステル交換反応させて得られたパーマネント形状変更済み部材。
[17]
[16]に記載のパーマネント形状変更済み部材を応力下で加熱して、エステル交換反応させて、異なるパーマネント形状への変更済み部材を得る、異なるパーマネント形状への変更済み部材の製造方法。
[18]
[16]に記載のパーマネント形状変更済み部材を応力下で加熱して、エステル交換反応させて、異なるパーマネント形状への変更済み部材を得る、部材のパーマネント形状を、異なるパーマネント形状へ変更する方法。
[19]
[16]に記載のパーマネント形状変更済み部材を応力下で加熱して、エステル交換反応させて得られた、異なるパーマネント形状への変更済み部材。
[20]
パーマネント形状を有する[1]~[12]、[16]及び[19]のいずれかに記載の部材を、応力下で100℃以下の温度でテンポラリー形状に変形させ、その後、部材の結晶融点以上でかつ120℃未満の温度に加熱して、当該テンポラリー形状を当該パーマネント形状に戻す、部材のテンポラリー形状をパーマネント形状に戻す方法。
[21]
[1]~[12]、[16]及び[19]のいずれかに記載の部材を有する細胞培養基材。
[22]
[1]~[12]、[16]及び[19]のいずれかに記載の部材を有する結紮デバイス。
[23]
[1]~[12]、[16]及び[19]のいずれかに記載の部材と、前記部材上に配置された接着剤層と、を有する積層体。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、パーマネント形状(「P形状」ともいう。)とは、内部(残留)応力が緩和された状態、言い換えれば、熱力学的に最も安定な形状を意味し、典型的には、外部から応力を与えない状態で、結晶の融解温度以上に部材を加熱して、その後、室温まで冷却した際に得られる形状を意味する。
なお、結晶の融解温度とは、部材の示差走査熱量測定(昇温速度10℃/分)を行い、その昇温過程における吸熱ピークのピークトップの温度を意味する(複数の吸熱ピークを有する場合、最も高温側のピークのピークトップ温度とする)。
なお、融解温度「以上」とは、示差走査熱量測定の吸熱ピークの高温側の終端温度程度でよい。
また、部材の示差走査熱量測定は、後述する実施例に記載の方法により行うものとする。
なお、結晶化温度とは、部材の示差走査熱量測定(冷却温度10℃/分)を行い、その冷却過程における発熱ピークのピークトップの温度を意味する。
また、部材の示差走査熱量測定は、後述する実施例に記載の方法により行うものとする。
本発明に係る部材(以下、「本部材」ともいう。)は、後述する式1で表される硬化性化合物を硬化させてなる結晶性を有する硬化物と、エステル交換触媒と、を含有する部材である。本部材は、オキシアルキレンカルボニル基;*-O-R-C(=O)-*(Rはアルキレン基を表し、*は結合位置を表す)からなる繰り返し単位を有し、分子内に少なくとも2つ以上のヒドロキシ基を有する高分子化合物、を更に含有することが好ましい。
すなわち、硬化物のネットワーク(3次元網目構造)に高分子化合物が絡み合った半相互侵入高分子網目構造(semi-IPN、IPNは、interpenetrating polymer networkの略)を形成しやすいものと推測される。
更に、上記高分子化合物は分子内に少なくとも2つ以上のヒドロキシ基を有している。このため、エステル交換反応によって、いわば架橋構造の組み換えのような構造の変化が硬化物と高分子化合物との間で起こるものと推測される。
なお、本部材が前記の高分子化合物を含有しない場合には、上記で説明した機序において、高分子化合物が有するオキシアルキレンカルボニル基及びヒドロキシ基を、式1で表される硬化性化合物が有し得るオキシアルキレンカルボニル基及びヒドロキシ基に置き換えて、本発明の効果が得られる同様の機序を推測することが可能である。
次に、本部材の各成分について詳述する。
本部材は、後述する式1で表される硬化性化合物を硬化させてなる結晶性を有する硬化物を含有する。
本部材中における硬化物の含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する部材が得られる点で、部材の質量の全体を100質量%としたとき、1~99質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましい。
なお、部材は、硬化物の1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。部材が、硬化物を2種以上含有する場合には、その合計含有量が上記数値範囲内であることが好ましい。
硬化物の結晶は、後述するとおり、P形状からT形状に変形された際の形状の変化を固定し、加熱により融解してT形状からP形状への変更を引き起こすための要因のひとつである。
また、Semi-IPN構造がより形成されやすい点では、後述する硬化性化合物と高分子化合物と硬化剤とを含有する組成物を調製し、組成物にエネルギーを付与して硬化性化合物を硬化させて、高分子化合物を含有する硬化物を得て、その後、硬化物にエステル交換触媒を添加して、部材を得るのが好ましい。
硬化物と高分子化合物とがSemi-IPN構造を形成している場合、ヒドロキシ基とオキシアルキレンカルボニル基とが硬化物内においてより近くに配置されやすいと推測され、より大きな形状変化を与えた時の形状の維持(書換)能が高くなるものと推測される。
硬化性化合物は、以下の式1で表される化合物である。
ポリオキシアルキレンカルボニル基とは、オキシアルキレンカルボニル基を繰り返し単位として有する高分子鎖からなる2価の基であり、具体的には、以下の式IIで表される基である。
なかでも、より優れた本発明の効果を有する部材が得られる点で、L2としては、炭素数が2~10個の直鎖状のアルキレン基が更に好ましい。
溶媒:重水素化クロロホルム(CDCl3)
試料濃度:~10mg/mL(1mass/vol%)
基準物質:テトラメチルシラン(TMS)
測定手法:1H測定 共鳴周波数300MHz
X1の硬化性基を有する基としては特に制限されないが、以下の式(III)で表される基が好ましい。
L3の2価の基としては特に制限されないが、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-NR20-(R20は水素原子又は1価の有機基を表す)、アルキレン基(炭素数1~10個が好ましい)、シクロアルキレン基(炭素数3~10個が好ましい)、アルケニレン基(炭素数2~10個が好ましい)、及び、これらの組み合わせ等が挙げられる。なかでも、より優れた本発明の効果を有する部材が得られる点で、L3としては、単結合、又は、-O-、-C(O)-、アルキレン基、-NR20-、及び、これらの組み合わせが好ましい。
なお、本明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル、及び、メタクリロイルのいずれか一方、又は、両方を意味する。
L3としては、窒素原子、3価の炭化水素基(炭素数1~10個が好ましい。なお、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でもよく脂肪族炭化水素基でもよい。)、又は、3価の複素環基(5員環~7員環の複素環基が好ましい)が挙げられ、炭化水素基にはヘテロ原子(例えば、-O-)が含まれていてもよい。L3の具体例としては、グリセロール残基、トリメチロールプロパン残基、フロログルシノール残基、及び、シクロヘキサントリオール残基等が挙げられる。
なお、L4の好適形態としては、4価の炭化水素基(炭素数1~10個が好ましい。なお、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でもよく脂肪族炭化水素基でもよい。)、4価の複素環基(5~7員環の複素環基が好ましい)が挙げられ、炭化水素基にはヘテロ原子(例えば、-O-)が含まれていてもよい。L4の具体例としては、ペンタエリスリトール残基、及びジトリメチロールプロパン残基等が挙げられる。
なお、L5の好適形態としては、5価の炭化水素基(炭素数2~10が好ましい。なお、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でもよく脂肪族炭化水素基でもよい。)、又は、5価の複素環基(5~7員環の複素環基が好ましい)が挙げられ、炭化水素基にはヘテロ原子(例えば、-O-)が含まれていてもよい。L5の具体例としては、アラビニトール残基、フロログルシドール残基、及びシクロヘキサンペンタオール残基等が挙げられる。
なお、L6の好適形態としては、6価の炭化水素基(炭素数2~10が好ましい。なお、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でもよく脂肪族炭化水素基でもよい。)、又は、6価の複素環基(6~7員環の複素環基が好ましい)が挙げられ、炭化水素基にはヘテロ原子(例えば、-O-)が含まれていてもよい。L6の具体例としては、マンニトール残基、ソルビトール残基、ジペンタエリスリトール残基、ヘキサヒドロキシベンゼン、及び、ヘキサヒドロキシシクロヘキサン残基等が挙げられる。
また、M1が7価以上の基である場合には、式4a~式4dで表した基を組み合わせた基を用いることができる。
また、qは、2以上の整数を表し、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下が更に好ましく、4以下が特に好ましい。
硬化性基を有さない1価の置換基としては特に制限されないが、例えば、*-L″-R′で表される基が挙げられる。
上記式中、L″は、単結合、又は、2価の基を表し、R′は、水素原子、炭化水素基(直鎖状、分岐鎖状、若しくは、環状のいずれであってもよい)、(ポリ)オキシアルキレンカルボニル基を表し、*は結合位置を表す。
また、R1は、ヒドロキシ基を有さない基が好ましい。
L1Bはポリオキシアルキレンカルボニル基を表し、X1Bは硬化性基を有する基を表し、その形態は、好適形態を含め、すでに説明した式1におけるL1、及び、X1と同様である。
また、硬化性化合物の分子量分布(Mw/Mn)としては特に制限されないが、一般に、1.00~1.50が好ましい。
なお、硬化性化合物の数平均分子量、重量平均分子量は、後述する実施例に記載した方法によりGPC(Gel Permeation Chromatography)測定により求められる値を意味する。
硬化性化合物の製造方法としては特に制限されないが、より簡便に硬化性化合物が得られる点で、環状化合物を開環重合して得られた前駆体化合物に、硬化性基を有する基を導入して得る方法が好ましい。
金属触媒としては特に制限されないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、遷移金属類、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、及び、アンチモン等の脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、及び、アルコラート等が挙げられる。
より具体的には、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第二スズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、テトラフェニルスズ、スズメトキシド、スズエトキシド、スズブトキシド、酸化アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム-イミン錯体、四塩化チタン、チタン酸エチル、チタン酸ブチル、チタン酸グリコール、チタンテトラブトキシド、塩化亜鉛、酸化亜鉛、ジエチル亜鉛、三酸化アンチモン、三臭化アンチモン、酢酸アンチモン、酸化カルシウム、酸化ゲルマニウム、酸化マンガン、炭酸マンガン、酢酸マンガン、酸化マグネシウム、及び、イットリウムアルコキシド等の化合物が挙げられる。
開始剤としては特に制限されないが、1価又は2価以上のアルコールが挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、特に制限されないが、炭素数1~20個のアルキル基等が挙げられる。
1価のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、ペンチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、n-デシルアルコール、n-ドデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ラウリルアルコール、エチルラクテート、及び、ヘキシルラクテート等が挙げられる。
開始剤の使用量は、特に制限されないが、環状化合物1kg当たり、好ましくは0.0001~0.04モル程度が好ましい。
開環重合は、環状化合物の揮散を防ぐため、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。重合温度は、特に制限されないが、100~250℃が好ましい。
重合時間としては特に制限されないが、0.1~48時間程度が好ましい。
環状化合物の開環重合で得られた前駆体化合物に硬化性基を導入する方法としては特に制限されないが、例えば、前駆体化合物が有するヒドロキシ基に対して反応性を示す置換基、及び、硬化性基の両方を有する化合物を反応させる方法(イ)、並びに、前駆体化合物が有するヒドロキシ基を他の官能基に置換し、この置換基に対して反応性を示す官能基、及び、硬化性基の両方を有する化合物を反応させる方法(ロ)等が挙げられる。なかでも、より簡便に硬化性化合物(マクロモノマー)が得られる点で、(イ)の方法が好ましい。
前駆体化合物のヒドロキシ基と反応させる化合物の使用量としては、特に制限されないが、ヒドロキシ基に対し、0.1~10モル当量程度が好ましい。
すでに説明したとおり、本部材は硬化性化合物を硬化させた硬化物を含有する。この硬化物を得る方法は特に制限されないが、硬化性化合物を含有する組成物にエネルギーを付与して得る方法が好ましい。
組成物中における硬化性化合物の含有量としては、一般に、5~80質量%が好ましい。なお、組成物は、硬化性化合物の1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有していてもよい。組成物が、2種以上の硬化性化合物を含有する場合には、その合計含有量が上記数値範囲内であることが好ましい。
硬化剤は、硬化性化合物に作用して、硬化反応を起こさせる機能を有する化合物である。
硬化剤としては、特に制限されず、公知の化合物が使用できる。例えば、熱エネルギーの付与により硬化が進行する熱硬化剤、及び/又は、光照射(光エネルギーの付与)により反応が進行する光硬化剤が使用できる。
光硬化剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、キサントン、及び、チオキサントン等の芳香族ケトン化合物;2-エチルアントラキノン等のキノン化合物;アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、及び、2,2-ジメトキシー2-フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン化合物;メチルベンゾイルホルメート等のジケトン化合物;1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-ベンゾイル)オキシム等のアシルオキシムエステル化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド化合物;テトラメチルチウラム、及び、ジチオカーバメート等のイオウ化合物;過酸化ベンゾイル等の有機化酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;有機スルフォニウム塩化合物;ヨードニウム塩化合物;フォスフォニウム化合物;等が挙げられる。
組成物は、溶媒を含有していてもよい。組成物が含有する溶媒としては特に制限されないが、硬化性化合物、後述する高分子化合物、及び、硬化剤を溶解、及び/又は、分散させ得るものであって、硬化反応中に蒸発しにくい溶媒を選択すればよい。
例えば、硬化剤として過酸化ベンゾイル(BPO)を用いる場合、硬化反応の温度は80℃程度となるため、沸点が硬化反応の温度以上となる溶媒が好ましい。このような溶媒を用いると、硬化反応中の溶媒の蒸発がより抑制できるので、気泡の混入がより少ない硬化物が得られやすい。このような溶媒としては例えば、キシレン、酢酸ブチル、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)、及び、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
組成物は、オキシアルキレンカルボニル基からなる繰り返し単位を有し、分子内に少なくとも2つ以上のヒドロキシ基を有する高分子化合物、を更に含有することが好ましい。高分子化合物は硬化性基を有しない。そのため、硬化性化合物の硬化反応には寄与しない。しかし、硬化性化合物と高分子化合物とを予め均一に分散させ、そのうえで硬化性化合物を硬化させると、硬化物と高分子化合物との間でSemi-IPN構造がより形成されやすい。
また、式2中、Y2はヒドロキシ基を有する基を表す。本明細書において、ヒドロキシ基を有する基とは、ヒドロキシ基そのもの、又は、その構造中にヒドロキシ基を部分構造として有する原子団を意味する。
Y2のヒドロキシ基を有する基としては特に制限されないが、以下の式(IV)で表される基が好ましい。
L5の2価の基としては特に制限されないが、式III中のL3として説明した基と好適形態を含めて同様である。
式2中、m2は0以上の整数を表し、2以下が好ましく、1以下がより好ましく、0が更に好ましい。
また、n2は、2以上の整数を表し、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下が更に好ましく、4以下が特に好ましい。
なお、式2B中、L2B、Y2B、M2Bはそれぞれ、好適形態を含めて、式2中のL2、M2、及び、Y2と同様である。
また、n2Bは、2以上の整数を表し、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下が更に好ましく、4以下が特に好ましい。
式2C中、AL3のアルキレン基は、式1C中のAL1のアルキレン基と同様の基が挙げられ、好適形態も同様である。
gとしては特に制限されないが、2以上が好ましく、10以上がより好ましく。100以下が好ましく、50以下がより好ましく、35以下が更に好ましい。
hとしては特に制限されないが、2以上が好ましく、100以下が好ましく、50以下がより好ましく、20以下が更に好ましい。
高分子化合物の製造方法としては特に制限されないが、より簡便に高分子化合物が得られる点で、環状化合物を開環重合する方法が好ましい。
なお、環状化合物を開環重合する方法としては、硬化性化合物の製造方法として説明した前駆体化合物の製造方法が適用でき、好適形態も同様である。
本部材は、エステル交換触媒を含有する。エステル交換触媒は、ヒドロキシ基と、(ポリ)オキシアルキレンカルボニル基のエステル結合との間のエステル交換反応を促進する機能を有し、公知の化合物を特に制限なく使用できる。
部材中におけるエステル交換触媒の含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する部材が得られる点で、一般に部材の全質量に対して、0.001~5質量%が好ましい。なお、部材は、エステル交換触媒の1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有していてもよい。部材が2種以上のエステル交換触媒を含有する場合には、その合計含有量が上記数値範囲内であることが好ましい。
すなわち、エステル交換触媒は、組成物にエネルギー付与して硬化性化合物を硬化させた後、硬化物に添加されることが好ましい。
エチル-、プロピル-、及び、ブチルジルコネート等のジルコン酸アルキル;
ビスマス(2-エチルヘキサノエート)、ビスマスネオデカノエート、及び、ビスマステトラメチルヘプタンジオエート等のビスマス酸アルキル;
ジブチルスズジラウレート、2-エチルヘキサン酸スズ(オクチル酸スズ)、ジオクチルスズジネオデカノエート、及び、ジメチルスズジオレエート等のスズ酸アルキル等が挙げられる。
部材の製造方法としては特に制限されず、上記各成分を混合して、成形すればよい。混合の順番も特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する部材が得られる点で、すでに説明した組成物にエネルギーを付与して、硬化性化合物を硬化させて得られた硬化物に対して、エステル交換触媒を添加することが好ましい。
なかでも、更に優れた本発明の効果を有する部材が得られる点で、部材の製造方法は、以下の各工程を有することが好ましい。
・触媒含侵工程:エステル交換触媒、及び、溶媒を含有する溶液と、硬化物とを接触させて部材を得る工程。
・乾燥工程:部材を乾燥させ、溶媒の少なくとも一部を除去する工程。
硬化工程は、硬化性化合物と、硬化剤と、高分子化合物を含有する組成物にエネルギーを付与して、組成物を硬化させる工程である。付与するエネルギーの種類は硬化剤の種類によって適宜選択されればよく、加熱、及び/又は、光照射が好ましい。
なお、加熱温度・時間、及び、光照射の強度等は、部材の形状、及び、硬化剤の種類等によって適宜選択されればよい。
より具体的には、加熱の温度としては、例えば、40~200℃であってもよい。また、加熱の時間としては、例えば、1分~24時間であってもよい。
触媒含侵工程は、エステル交換触媒、及び、溶媒を含有する溶液と、硬化物とを接触させる工程である。溶液と硬化物とを接触させる方法としては特に制限されないが、溶液に硬化物を浸漬する方法が挙げられる。
なお、溶液に使用する溶媒は、触媒を溶解し、かつ、硬化物を膨潤させ得るものが好ましい。膨潤した硬化物の内部に触媒が取り込まれることにより、より迅速にP形状を変更可能な部材が得られる。
溶媒の種類としては特に制限されないが、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトン、及び、N,N-ジメチルホルムアミド等が使用できる。
なお、浸漬の温度、及び、時間は、部材の大きさ及び厚み等によって適宜選択されればよいが、例えば、20~50℃の溶液に、1分間~24時間浸漬する方法が挙げられる。
乾燥工程は、部材を乾燥させて、部材に含有される溶媒の少なくとも一部を除去する工程である。乾燥の方法は特に制限されず、例えば、20~50℃で、1分~24時間静置する方法、及び、減圧下で保持する方法等が挙げられる。なお、乾燥条件は、部材の形状、及び、厚み等によって適宜選択されればよい。
本部材は、上記のような特徴を有するため、細胞培養基材、及び、結紮デバイス等の医療器具等に適用できる。また、本部材は、基材と、基材上に配置された接着剤層とを有する接着テープの基材等としても使用することができる。
本部材の使用方法としては特に制限されないが、上述したとおり、本部材はP形状を複数回にわたり変更できるという特徴を有する。そのため、製造した本部材を応力下でエステル交換反応が起こる程度の温度に加熱することで、パーマネント形状を変更させた部材(パーマネント形状変更済み部材)を得ることができる。
加熱温度としては、例えば、120~160℃が好ましく、加熱時間は、部材の形状、及び、大きさ等に応じて適宜定めればよいが、一般に0.5~4時間が好ましい。
この反応は、架橋構造の組み換えのような現象であり、応力が緩和されて、部材の変形が固定されることで、P形状が変更され、P形状変更済み部材が得られる。
1回目のP形状の変更により、当初の部材に含まれていた硬化物、及び、高分子化合物との間では架橋構造の組み換えが起こって構造が変化しているため、2回目以降の変更では、当初の部材に含まれていた硬化物、及び、高分子化合物との間の反応とは異なる反応も起こる。
しかし、2回目以降のP形状の変更であっても、部材中に存在するヒドロキシ基と(ポリ)オキシアルキレンカルボニル基とのエステル交換反応によって、架橋構造の組み換えが起こることは共通している。そのため、この反応により得られる「P形状変更済み部材」の構造は2回目以降の変更であっても明確に理解される。
本発明に係る細胞培養基材は、すでに説明した本部材を有する細胞培養基材である。図1は本発明の一実施形態である細胞培養基材100の斜視図である。
細胞培養基材100は、フィルム状の部材からなる。
なお、細胞培養基材100は、部材からなるが、本発明に係る細胞培養基材は、本部材を有していればよく、更に他の構成を有していてもよい。例えば、フィルム状の本部材上に、別のポリマーによる被覆層を有していてもよい。上記被覆層により、例えば、細胞の接着性を調整してもよい。
次に、棒状の型101を準備する(ステップS12、図中b)。
次に、棒状の型101に、細胞培養基材100を巻き付ける(ステップS13、図中c)。
また、保持時間はフィルムの形状、及び、大きさ等に応じて適宜定めればよいが、一般に0.5~4時間が好ましい。
このとき、保持時間としては特に制限されないが、一般に0.1~60分が好ましい。
応力が維持されたまま結晶化することで、応力が残ったまま構造が固定されT形状が記憶される。
Temp(3)の温度は適宜調整可能であるが、一般に、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、60℃以下が好ましく、40℃以下が更に好ましい。
なお、培養細胞層は、Temp(2)まで加熱した後に形成されてもよい。
本培養基材は、複雑な形状を有する培養細胞層の形成が必要な技術分野、例えば、体外におけるヒト組織の培養等に用いることができる。この場合、細胞の培養温度が37℃であれば、例えば、Temp(2)をそれ以上であって、細胞の活性を失わない程度の温度に調整すればよい。Temp(2)は硬化物の結晶の融解温度を調整することで調整でき、その方法はすでに説明したとおりである。
結紮デバイスは、腫瘍、及び、ポリープ等の生体隆起部を結紮して血流を遮断したり、生体隆起部を除去したりするのに用いられる器具である。
本発明に係る結紮デバイスについて、図を用いて説明する。図3は、本発明の一実施形態である結紮デバイス200の模式図である。結紮デバイス200は、フィルム状の部材からなる。
次に、準備した棒状の型に部材を巻き付ける(ステップS23、図中i)。
次に、棒状の型に固定した状態でTemp(1)まで加熱し、所定時間保持し、その後冷却する(ステップS24、図中i)。Temp(1)については、エステル交換反応が起こる温度であり、すでに説明したとおりである。
この工程で、結紮デバイスのP形状が書き換えられる。
図5は本発明の一実施形態に係る積層体の模式的な断面図である。積層体300は、部材301と、部材301上に配置された接着剤層302とを有する。
積層体300は、接着剤層302を有するため、被着体に対して接着可能であり、更に、形状記憶能を有するため、被着体に対して所望の応力を与える等の機能を有する。
4分岐型50量体PCL(ポリカプロラクトン)「4b50PCL」を以下の手順に沿って合成した。
まず、開始剤としてペンタエリトリトール(0.34g、0.0025mol)を丸底フラスコに秤量し、6時間減圧乾燥させた。次に、上記丸底フラスコに、窒素雰囲気下でε-カプロラクトン(52.84mL、0.5mol)とオクチル酸スズ(触媒量、15滴)を添加した。次に、窒素雰囲気を維持したまま丸底フラスコを120℃のオイルバス中に浸漬し、開環重合反応を開始させた。24時間の反応後、得られたポリマーをTHF(テトラヒドロフラン、150mL)に溶解させた後、ジエチルエーテル/ヘキサン混合溶媒(1:1vol/vol%、2L)に滴下して再沈殿させた。デカンテーション後、1晩減圧乾燥を行って、4b50PCL(回収率:~100%)を得た。
4分岐型10量体PCL「4b10PCL」を以下の手順に従って合成した。
まず、開始剤としてペンタエリトリトール(1.7366g、0.0125mol)を丸底フラスコに秤量し、6時間減圧乾燥させた。次に、上記丸底フラスコに、窒素雰囲気下でε-カプロラクトン(52.84mL、0.5mol)とオクチル酸スズ(触媒量、15滴)を添加した。次に、窒素雰囲気を維持したまま丸底フラスコを120℃のオイルバス中に浸漬し、開環重合反応を開始させた。24時間の反応後、得られたポリマーをTHF(150mL)に溶解させた後、ジエチルエーテル/ヘキサン混合溶媒(1:1vol/vol%、2L)に滴下して再沈殿させた。デカンテーション後、1晩減圧乾燥を行って、4b10PCL(回収率:~100%)を得た。
なお、GPCの結果から求めた4b10PCLの数平均分子量は3800で、Mw/Mnは1.12だった。
測定装置: 「Shodex(商標)」GPC-101
検出器:示差屈折率(RI)検出器
使用カラム:「Shodex(商標)」GPC KF-804L(サンプル)+GPC KF-806L(リファレンス)(8.0mmI.D.×300cm×2本)
カラム温度:40℃
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)、流速0.8mL/分
試料:THFに、0.1mass%で溶解させ、0.45μmのメンブレンフィルタでろ過
分子量標準ポリマー:ポリスチレン(分子量=2550、5060、10200、18500、37900)、0.1 mass%
2分岐型20量体PCL(2b20PCL)を以下の手順に沿って合成した。
まず、開始剤として1,4-ブタンジオール(1.1mL、0.0125mL)を丸底フラスコに秤量し、6時間減圧乾燥させた。次に、上記丸底フラスコに窒素雰囲気下でε-カプロラクトン(52.84mL、0.5mol)とオクチル酸スズ(触媒量、15滴)を添加した。次に、窒素雰囲気を維持したまま丸底フラスコを120℃のオイルバス中に浸漬し、開環重合反応を開始させた。24時間の反応後、得られたポリマーをTHF(150mL)に溶解させた後、ジエチルエーテル/ヘキサン混合溶媒(1:1vol/vol%、2L)に滴下して再沈殿させた。デカンテーション後、1晩減圧乾燥を行って、2b20PCL(回収率:~100%)を得た。
なお、GPCの結果から求めた2b20PCLの数平均分子量は3600で、Mw/Mnは1.16だった。
その結果、4b10PCLは10、2b20PCLは18だった。
測定装置:300MHz NMR(JEOL社製)
溶媒:重水素化クロロホルム(CDCl3)
試料濃度:~10mg/mL(1mass/vol%)
基準物質:テトラメチルシラン(TMS)
測定手法:1H測定 共鳴周波数300MHz
観測スペクトル幅:0ppm~10ppm
スピニング:オフ
パルス角:90°
積算回数:8回
ダミースキャン:2回
測定温度:室温(20~25℃)℃
4分岐型50量体PCLマクロモノマー「4b50PCL-m」を以下の手順に沿って合成した。
まず、4b50PCL(40.0g、0.0016mol)を秤量し、丸底フラスコに移し、THF(テトラヒドロフラン;300mL)に溶解させた。完全に溶解した後に、脱水したトリエチルアミン(10.2mL、0.073mol)を添加し、しばらく攪拌した。次に、丸底フラスコを氷冷し、アクリロイルクロライド(5.38mL、0.067mol)を添加し、反応を開始させた。1日間反応させた後、メタノール中に再沈殿させた。不純物の除去のため、再沈殿を3回繰り返して、「4b50PCL-m」(回収率:~80%)を得た。
4分岐型10量体PCLマクロモノマー「4b10PCL-m」を以下の手順に従って合成した。
まず、4b10PCL(51.95g、0.011mol)を秤量し、丸底フラスコに移し、THF(300mL)に溶解させた。完全に溶解した後に、脱水したトリエチルアミン(27.97mL、0.2mol)を添加し、しばらく攪拌した。次に、丸底フラスコを氷冷し、アクリロイルクロライド(10.98mL、0.135mol)を添加し、反応を開始させた。1日間反応させた後、メタノール中に再沈殿させた。不純物の除去のため、再沈殿を3回繰り返して「4b10PCL-m」(回収率:~94%)を得た。
2分岐型10量体PCLマクロモノマー「2b20PCL-m」を以下の手順に沿って合成した。
まず、2b20PCL(50.58g、0.0109mol)を秤量し、丸底フラスコに移し、THF(300mL)に溶解させた。完全に溶解した後に、脱水したトリエチルアミン(13.47mL、0.0968mol)を添加し、しばらく攪拌した。次に、丸底フラスコを氷冷し、アクリロイルクロライド(5.29mL、0.0652mol)を添加し、反応を開始させた。1日間反応させた後、メタノール中に再沈殿させた。不純物の除去のため、再沈殿を3回繰り返して「2b20PCL-m」(回収率:~94%)を得た。
4b50PCL-mの500mgと、2b20PCLの200mg、及び、過酸化ベンゾイルの10mg(4b50PCL-mの2質量%)を、キシレンの695μLに加え、攪拌して溶解させ、溶液(組成物)を得た。
次に、上記溶液をガラス基板の上に滴下し、膜厚調整用のポリテトラフルオロエチレン製スペーサー(0.2mm)を介してガラス基板で挟み込み、溶液が漏れ出さないようにクリップで固定し、80℃のオーブンに入れた。これを3時間以上保持して熱重合(硬化)させた後、ガラス基板から硬化後のフィルムを剥離させ、アセトン中で膨潤させた。アセトンを数回交換することでフィルムの精製を行った。
精製後、メタノール中でフィルムを収縮させた後、減圧乾燥を1晩行うことで、Semi-IPNフィルムを得た。なお、フィルムは(縦)10cm×(横)10cm×(厚み)0.2mmの大きさで作成し、後述する評価では約(縦)6cm×(横)5mm×(厚み)0.2mmに切り出して使用した。
上述のように切り出したSemi-IPNフィルムを上記エステル交換触媒液に室温で30分間浸漬し、エステル交換触媒を含侵させた。
使用した硬化性化合物の種類、及び、量、並びに、使用した高分子化合物の種類、及び、量を表1に記載したとおりとした以外は実施例1と同様にして部材2~5を調製した。
高分子化合物を使用しなかったことを除いては実施例1と同様にして実施例6の部材6を調製した。
エステル交換触媒液に浸漬させなかったことを除いては実施例1と同様にして比較例1の部材C1を調製した。
上記各部材の処方を表1に示した。なお、表1における空欄は、その化合物を使用しなかったことを意味する。
DSC測定は、示差走査熱量分析計(エスアイアイ社製、「X-DSC 7000」;熱流束型)を用いて行った。
使用した試料は、以下のとおりである。
・実施例6の部材6
・比較例1の部材C1
・実施例1の部材1
・部材1を140℃に加熱して、その後冷却したエステル交換反応1回後の部材1(「部材11」という。)
・部材11を更に140℃に加熱して、その後冷却した部材12
・部材12を更に140℃に加熱して、その後冷却した部材13
試料量・サイズ:サンプル量は約10mgとし、上記サンプルパンに入るように切断して使用した。
ガス流量: N2雰囲気(50mL/min)
開始温度: 120℃
昇温速度: 10℃/min
終了温度: -10℃
冷却速度: 10℃/min
次に、試料の温度が-10℃に達した後、今度は10℃/minの速度で120℃まで昇温させ、-10℃から120℃までの昇温プロセスのDSC測曲線を昇温過程として取得した。
部材1を図15に示した。調製直後の部材1のP形状は図15に示すとおり、「フィルム状」であった。次に、この部材1をポリテトラフルオロエチレン製の棒にらせん状に巻き付け、その端部をクリップで固定した。その状態の部材1を図16に示した。
この状態のまま、部材1を140℃(Temp(1))のオーブンに入れ、2時間保持した。保持後、室温に冷却し、クリップと棒とを取り外した状態の部材1を図17に示した。
なお、この「らせん状」がT形状ではないことは、後述する「形状記憶能の評価」において説明する。
上記の結果から、部材1は複数回にわたってP形状を任意に変更できることがわかった。
次に、形状記憶能を評価した。まず、P形状が「らせん状」の部材1(図22)を60℃(Temp(2))に加熱し、引き伸ばして、その状態のまま、20℃(Temp(3))まで冷却し、再び室温に戻した。その結果、らせんが引き伸ばされた形のT形状が記憶された(図23)。次に、T形状の部材1を60℃のオーブンに入れたところ、その形状がらせん状のP形状に戻った(図24)。
部材1と同様の形状(フィルム状)に調製した部材C1を、ポリテトラフルオロエチレン製の棒に巻き付け、その端部をクリップで固定した。この状態のまま、部材C1を140℃のオーブンに入れ、2時間保持した。保持後、室温に冷却し、クリップと棒とを取り外した状態の部材C1は、部材1と同様にらせん状に変形したままだった。この状態の部材C1を2つ調製した。
更に、らせん状の部材C1の他方の1個を60℃のオーブンに入れたところ、こちらも、部材C1の形状はほぼ「フィルム状」に戻った。
これは、らせん状の部材C1を引き伸ばした後に再加熱した際、らせん状には戻らず、ほぼフィルム状に戻ったことからも明らかである。
従って、所定の成分を含有しない比較例の部材C1は、本発明の所望の効果を有していなかった。
PCL(ポリカプロラクトン)架橋体やSemi-IPN型架橋体で起こるエステル交換反応に関する条件検討を、熱機械分析装置(TMA450:ティー・エイ・インスツルメント社)により、下記の手順で、測定した。
TMA(熱機械分析)測定方法:
1:部材1、部材6及び部材C1の試料を3cm×0.4cmの短冊状に切り出し、8mm長さとなるよう治具にセット。
2:サンプルへ0.01Nの負荷荷重を与え、所定温度(100~150℃)を設定し温度を平衡化。
3:温度平衡化後に30%のひずみを与え、その後ひずみは一定に維持。
4:その際の時間に対する応力緩和を測定。
図26は、高分子化合物を含まない試料(部材6)でも、温度依存的な大きな応力緩和を示しており、これは、エステル交換反応が起きていることを意味すると考えられる。
図25は、高分子化合物を含むSemi-IPN型試料(部材1)では、図26に比べて、経過時間に対する応力の低下が顕著であって応力緩和がより大きいこと(温度依存的により大きな応力緩和)を示しており、これは、高分子化合物の存在が、エステル交換反応の速度及び効率を促進することを意味すると考えられる。
図27は、エステル交換触媒を含まない試料(部材C1)では、100~150℃の温度域で大きな応力緩和を示さないことを示しており、これは、エステル交換反応が起きていないことを意味すると考えられる。エステル交換反応を起こすには、エステル交換触媒の使用が必須である。
実験方法:
1:部材1の試料をハサミでバラバラに切り出す(バラバラの状態)。
2:バラバラに切り出した試料を集めて、テフロンシートで挟む。
3:テフロンシートをさらにガラス板で挟み、クリップで4点を留める。
4:140℃のオーブンに入れ、2時間保持する(加圧熱処理)。
101:型
200:結紮デバイス
201:型
202:対象組織
300:積層体
301:部材
302:接着剤層
Claims (25)
- 式1で表される硬化性化合物を硬化させてなる結晶性を有する硬化物と、
エステル交換触媒と、
オキシアルキレンカルボニル基からなる繰り返し単位を有し、分子内に少なくとも2つ以上のヒドロキシ基を有する高分子化合物と、
を含有する部材。
(式1中、L1はポリオキシアルキレンカルボニル基を表し、X1はエチレン性不飽和基を有する基を表し、R1は水素原子、又は、前記エチレン性不飽和基を有さない1価の置換基を表し、qは2以上の整数を表し、pは0以上の整数を表し、qが2かつpが0のとき、M1は単結合、又は、2価の基を表し、qが2かつpが1以上のとき、及び、qが3以上のとき、M1はp+q価の基を表し、複数あるR1、L1、及び、X1はそれぞれ同一でも異なってもよい。) - 形状記憶能を有する、請求項1に記載の部材。
- 示差走査熱量測定の昇温過程で、35~60℃に吸熱ピークが観測される、請求項1又は2に記載の部材。
- 前記エステル交換触媒がスズを含有する請求項1~10のいずれか1項に記載の部材。
- 請求項1~11のいずれか1項に記載の部材の製造方法であって、
前記硬化性化合物と、前記高分子化合物と、硬化剤とを含有する組成物にエネルギーを付与して前記硬化性化合物を硬化させ、前記高分子化合物を含有する硬化物を得ることと、
前記エステル交換触媒、及び、溶媒を含有する溶液と、前記硬化物とを接触させて、部材を得ることと、を有する部材の製造方法。 - 請求項1~11のいずれか1項に記載の部材を応力下で加熱して、エステル交換反応させて、パーマネント形状変更済み部材を得る、パーマネント形状変更済み部材の製造方法。
- 式1で表される硬化性化合物を硬化させてなる結晶性を有する硬化物と、エステル交換触媒と、を含有する部材を応力下で加熱して、エステル交換反応させて、パーマネント形状変更済み部材を得る、パーマネント形状変更済み部材の製造方法。
(式1中、L 1 はポリオキシアルキレンカルボニル基を表し、X 1 はエチレン性不飽和基を有する基を表し、R 1 は水素原子、又は、前記エチレン性不飽和基を有さない1価の置換基を表し、qは2以上の整数を表し、pは0以上の整数を表し、qが2かつpが0のとき、M 1 は単結合、又は、2価の基を表し、qが2かつpが1以上のとき、及び、qが3以上のとき、M 1 はp+q価の基を表し、複数あるR 1 、L 1 、及び、X 1 はそれぞれ同一でも異なってもよい。) - 請求項1~11のいずれか1項に記載の部材を応力下で加熱して、エステル交換反応させて、パーマネント形状変更済み部材を得る、部材のパーマネント形状を変更する方法。
- 式1で表される硬化性化合物を硬化させてなる結晶性を有する硬化物と、エステル交換触媒と、を含有する部材を応力下で加熱して、エステル交換反応させて、パーマネント形状変更済み部材を得る、部材のパーマネント形状を変更する方法。
(式1中、L 1 はポリオキシアルキレンカルボニル基を表し、X 1 はエチレン性不飽和基を有する基を表し、R 1 は水素原子、又は、前記エチレン性不飽和基を有さない1価の置換基を表し、qは2以上の整数を表し、pは0以上の整数を表し、qが2かつpが0のとき、M 1 は単結合、又は、2価の基を表し、qが2かつpが1以上のとき、及び、qが3以上のとき、M 1 はp+q価の基を表し、複数あるR 1 、L 1 、及び、X 1 はそれぞれ同一でも異なってもよい。) - 請求項1~11のいずれか1項に記載の部材を応力下で加熱して、エステル交換反応させて得られたパーマネント形状変更済み部材。
- 式1で表される硬化性化合物を硬化させてなる結晶性を有する硬化物と、エステル交換触媒と、を含有する部材を応力下で加熱して、エステル交換反応させて得られたパーマネント形状変更済み部材。
(式1中、L 1 はポリオキシアルキレンカルボニル基を表し、X 1 はエチレン性不飽和基を有する基を表し、R 1 は水素原子、又は、前記エチレン性不飽和基を有さない1価の置換基を表し、qは2以上の整数を表し、pは0以上の整数を表し、qが2かつpが0のとき、M 1 は単結合、又は、2価の基を表し、qが2かつpが1以上のとき、及び、qが3以上のとき、M 1 はp+q価の基を表し、複数あるR 1 、L 1 、及び、X 1 はそれぞれ同一でも異なってもよい。) - 請求項17又は18に記載のパーマネント形状変更済み部材を応力下で加熱して、エステル交換反応させて、異なるパーマネント形状への変更済み部材を得る、異なるパーマネント形状への変更済み部材の製造方法。
- 請求項17又は18に記載のパーマネント形状変更済み部材を応力下で加熱して、エステル交換反応させて、異なるパーマネント形状への変更済み部材を得る、部材のパーマネント形状を、異なるパーマネント形状へ変更する方法。
- 請求項17又は18に記載のパーマネント形状変更済み部材を応力下で加熱して、エステル交換反応させて得られた、異なるパーマネント形状への変更済み部材。
- パーマネント形状を有する請求項1~11、17~18及び21のいずれか1項に記載の部材を、応力下で100℃以下の温度でテンポラリー形状に変形させ、その後、部材の結晶融点以上でかつ120℃未満の温度に加熱して、当該テンポラリー形状を当該パーマネント形状に戻す、部材のテンポラリー形状をパーマネント形状に戻す方法。
- 請求項1~11、17~18及び21のいずれか1項に記載の部材を有する細胞培養基材。
- 請求項1~11、17~18及び21のいずれか1項に記載の部材を有する結紮デバイス。
- 請求項1~11、17~18及び21のいずれか1項に記載の部材と、前記部材上に配置された接着剤層と、を有する積層体。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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