JP7273428B2

JP7273428B2 - 医療用イメージガイダンスマーカー

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Publication number: JP7273428B2
Application number: JP2021530543A
Authority: JP
Inventors: 宏治沖原; 理浮村
Original assignee: KYOTO PREFECTURAL UNIVERSITY OF MEDICINE
Current assignee: KYOTO PREFECTURAL UNIVERSITY OF MEDICINE
Priority date: 2019-07-10
Filing date: 2020-06-11
Publication date: 2023-05-15
Anticipated expiration: 2040-06-11
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Description

本発明は、医療用イメージガイダンスマーカーに関する。

現在、磁気共鳴画像診断処理装置（ＭＲＩ）、超音波、ＣＴ等のイメージガイド下における癌治療が普及している。また、臓器内の癌の画像そのものの描出能だけでは特定できない場合であっても、針生検査等を実施した場所を、空間座標として記録しておく技術がある。ここで、画像で癌病巣の存在部位が判明した場合、あるいは、針生検査で癌の存在が判明した場合に、その癌病巣の空間的な存在部位に、種々のイメージングモダリティーで可視化可能な埋め込み型マーカーを留置しておけば、癌病巣の３次元位置情報の把握が容易になる。特に、ＣＴと異なり、ＭＲＩと超音波は放射線被曝の全くない画像技術であり、繰り返し長時間使用可能であるので、イメージガイダンスとして利用しやすい特徴を持っている。しかも、ＭＲＩおよび超音波の画像技術の進歩はめざましく、例えば、前立腺癌の画像技術において、ＣＴにはない特徴をＭＲＩおよび超音波は備えており、両者を組み合わせた場合に、診断精度が向上することが多数報告されている。そこで、両者の併用、すなわち、診断とガイダンスのように異なった目的で両者の利点を生かした使用・併用が臨床上必要である場面が少なくない。しかし、ＭＲＩおよび超音波については、画像化の際に、埋め込み型マーカーを使用する場合に、マーカーによるアーチファクト（ａｒｔｉｆａｃｔ）を生じやすく、画像の精度を劣化させる欠点がある。アーチファクトとは、ＭＲＩ等の磁場環境内においては、磁場中の金属の磁化率とその周辺領域における生体組織の磁化率の差により、像にゆがみが生じる現象である。超音波診断においては、音響陰影等を指す。アーチファクトの発生の程度によっては、正確な手術や診断の妨げとなる場合がある。

前記埋め込み型マーカーの材料は、医療用材料として、生体適合性、耐食性、加工性等の特性が要求される。これらの要求に対してこれまで実用化されている金属材料として、ステンレス、Ｃｏ－Ｃｒ合金、Ｐｔ－Ｗ合金等がある（例えば、特許文献１参照）。しかし、これらの実用例のある医療用材料は、生体組織との磁化率の差が大きくアーチファクトを抑制することができなかった。そこで、アーチファクトフリーを考慮した合金として、ＡｕとＰｄとの合金やＡｕとＰｔとの合金が提案されている（例えば、特許文献２～４参照）。しかし、これらの合金は、磁場環境内でのアーチファクトに対して一定の効果は認められるものの、超音波診断等におけるアーチファクトの抑制は十分なものとはいえなかった。

特表２０１０－５３６４９１号公報特許第４５２３１７９号公報特許第５５５００２７号公報特許第５５８２４８４号公報

そこで、本発明は、少なくともＭＲＩ、超音波、ＣＴの３種の断層イメージングモダリティーすべてにおいて適用可能であり、アーチファクトを最小限にした生体組織内留置型の医療用イメージガイダンスマーカーを提供することを目的とする。

前記目的を達成するために、本発明の医療用イメージガイダンスマーカーは、生体組織内留置型の医療用断層イメージガイダンスマーカーであって、磁化率が－１３ｐｐｍ～－５ｐｐｍの範囲内にある合金からなり、コイル型の形状を有しており、前記コイルは、線径が０．１５ｍｍ以上０．４５ｍｍ以下の範囲内のワイヤから形成されており、コイル径が０．５５ｍｍ以上１．２０ｍｍ以下の範囲内にあり、前記コイルのピッチは、０．３ｍｍ以上１．５ｍｍ以下の範囲内にあるとともに、前記線径の１．８倍以上４倍以下の範囲内にあることを特徴とする。

本発明の医療用イメージガイダンスマーカーにおいて、前記コイルのコイル長が６ｍｍ以上７ｍｍ以下の範囲内にあることが好ましい。

本発明の医療用イメージガイダンスマーカーにおいて、前記磁化率が－１３ｐｐｍ～－５ｐｐｍの範囲内にある合金が、Ａｕ－Ｐｔ合金であることが好ましい。

本発明の医療用イメージガイダンスマーカーにおいて、前記Ａｕ－Ｐｔ合金は、Ｐｔ濃度が３４質量％以上３６質量％以下、残部Ａｕからなり、さらに、Ｘ線回折分析におけるＰｔ（１１１）面のピーク強度（Ｘ）とＡｕ（１１１）面のピーク強度（Ｙ）との比（Ｘ／Ｙ）が、０．０１以下となるα単相組織を有する合金であることが好ましい。

あるいは、前記Ａｕ－Ｐｔ合金は、Ｐｔ濃度２４質量％以上３４質量％未満、残部Ａｕからなり、α相マトリックスに、少なくとも、α相よりもＰｔ濃度の高いＰｔリッチ相が分布する材料組織を有し、前記Ｐｔリッチ相は、α相のＰｔ濃度に対して１．２～３．８倍のＰｔ濃度のＡｕ－Ｐｔ合金からなり、任意断面における前記Ｐｔリッチ相の面積率が１～２２％であることが好ましい。

本発明によると、少なくともＭＲＩ、超音波、ＣＴの３種の断層イメージングモダリティーすべてにおいて適用可能であり、アーチファクトを最小限にした生体組織内留置型の医療用イメージガイダンスマーカーを提供することができる。本発明の医療用イメージガイダンスマーカーは、前立腺癌のイメージガイダンス治療に、特に好適に使用できる。

図１は、本発明の医療用イメージガイダンスマーカーを模式的に示した図である。図２は、本発明の医療用イメージガイダンスマーカーおよび従来品のマーカーのＣＴ画像である。上段は縦断像であり、下段は横断像である。図３は、本発明の医療用イメージガイダンスマーカーおよび従来品のマーカーのＭＲＩ装置による撮像結果である。上段は縦断像であり、下段は横断像である。図４は、本発明の医療用イメージガイダンスマーカーおよび従来品のマーカーの超音波画像である。上段は水平画像であり、下段は約４０度傾斜の画像である。図５は、本発明の医療用イメージガイダンスマーカーおよび比較例の医療用イメージガイダンスマーカーの超音波画像（水平画像）である。

本発明の医療用イメージガイダンスマーカーについて、例をあげて説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。

図１は、本発明に係る医療用イメージガイダンスマーカーを模式的に示した図である。医療用イメージガイダンスマーカー１００は、コイル型の形状を有している。本発明においては、マーカーを構成する材料とともに、コイルの形状（線径ｄ、コイル径Ｄ、ピッチｐ）を規定したことが特徴である。

本発明の医療用イメージガイダンスマーカーは、磁化率が－１３ｐｐｍ～－５ｐｐｍの範囲内にある合金からなる。アーチファクトを抑えるためには、材料の磁化率（体積磁化率）が生体組織の磁化率と近似していることが重要である。単に磁化率を低くすればよいのではない。生体組織の磁化率は、その主要構成成分である水に起因し、水の磁化率は－９ｐｐｍである。本発明においては、水の磁化率に対し±４ｐｐｍの磁化率、すなわち、－１３ｐｐｍ～－５ｐｐｍの範囲内にある合金をその材料とすることで、アーチファクトを低減させることを可能としている。ここで、磁化率とは、超伝導量子干渉素子（ＳＱＵＩＤ）装置（カンタム・デザイン社製７Ｔ－ＳＱＵＩＤ磁束計）にて、測定温度３７℃で測定を行った体積磁化率である。

しかし、アーチファクトの発生を抑えるためには、材料の最適化のみでは十分ではなく、マーカーの形状にも依存することが判明した。外形が円筒形状であっても、中身が詰まっている棒状のものと、細い線を巻きつけるようにして形成した中空のコイル形状とでは、アーチファクトの発生に差があることを見出し、さらに、コイルのピッチｐ（線間隔）もアーチファクトの発生に影響を及ぼすことを見出したのである。その結果、少なくともＭＲＩ、超音波、ＣＴの３種のイメージングモダリティーすべてにおいて適用可能であり、アーチファクトを最小限にした体内留置型の医療用イメージガイダンスマーカーが得られた。

本発明の医療用イメージガイダンスマーカーの形状は、具体的には、上述の磁化率を有する材料からなる線径ｄが０．１５ｍｍ以上０．４５ｍｍ以下の範囲内のワイヤから形成されてなる、コイル径Ｄが０．５５ｍｍ以上１．２０ｍｍ以下の範囲内にあり、前記コイルのピッチｐは、０．３ｍｍ以上１．５ｍｍ以下の範囲内にあるとともに、ワイヤの線径ｄの１．８倍以上４倍以下の範囲内にあるものである。ピッチｐは、線径ｄの２倍以上３．５倍以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは２倍以上３倍以下の範囲内である。前記線径ｄは、コイル径Ｄの２０％以上４０％以下の範囲内であることが好ましい。本発明の医療用イメージガイダンスマーカーの形状は、例えば、前立腺に適用する場合には、線径ｄが０．２ｍｍ以上０．３ｍｍ以下の範囲内のワイヤから形成されてなる、コイル径Ｄが０．６ｍｍ以上１．０ｍｍ以下の範囲内にあり、かつ、前記コイルのピッチｐが０．５ｍｍ以上０．８ｍｍ以下の範囲内にあることが好ましい。

従来からコイル形状のマーカーとして用いられているものは、コイルの隣接して巻かれたワイヤ間に空隙が生じないように密着してワイヤが巻かれてコイルを形成している。すなわち、コイルのピッチｐがワイヤの線径ｄとほぼ等しいものであった。本発明の医療用イメージガイダンスマーカーでは、線径ｄに対してピッチｐを大きくして、コイルの隣接して巻かれたワイヤ間に空隙を設けている。後述のように、同じ素材でもワイヤを密着させずに間隔を設けたほうが、超音波画像におけるアーチファクト（音響陰影）を抑えられることが判明した。前記コイルのピッチｐは、０．６ｍｍ以上０．７ｍｍ以下の範囲内にあることが、特に好ましい。

コイル長Ｌは、医療用イメージガイダンスマーカーを埋め込む臓器によって、適宜選択が可能であるが、特に前立腺に適用する場合には、６ｍｍ以上７ｍｍ以下の範囲内にあることが好ましい。前立腺の場合には、留置箇所周囲の組織の特性上、マーカーが短すぎると組織内で動いてしまうため、６ｍｍ以上７ｍｍ以下の範囲内にあると位置安定性が得られ、好ましい。本発明のマーカーが埋め込まれる臓器としては、前立腺、肺、肝臓、胆嚢、腎臓、膵臓、乳房などが挙げられ、前立腺が喫緊に利用が可能である。

磁化率が－１３ｐｐｍ～－５ｐｐｍの範囲内にある前記合金は、Ａｕ－Ｐｔ合金であることが好ましい。Ａｕ－Ｐｔ合金は、ＭＲＩ画像でアーチファクトフリーとすることができる点で、好適な材料である。また、金（Ａｕ）のみであると、規定のコイル型の形状とした場合に柔らかすぎるため、取扱い性の観点からも、Ｐｔを適量加えたＡｕ－Ｐｔ合金であることが好ましい。

前記Ａｕ－Ｐｔ合金は、Ｐｔ濃度が３４質量％以上３６質量％以下、残部Ａｕからなり、さらに、Ｘ線回折分析におけるＰｔ（１１１）面のピーク強度（Ｘ）とＡｕ（１１１）面のピーク強度（Ｙ）との比（Ｘ／Ｙ）が、０．０１以下となるα単相組織を有する、特許第５５５００２７号に記載の合金であることが好ましい。

あるいは、前記Ａｕ－Ｐｔ合金は、Ｐｔ濃度２４質量％以上３４質量％未満、残部Ａｕからなり、α相マトリックスに、少なくとも、α相よりもＰｔ濃度の高いＰｔリッチ相が分布する材料組織を有し、前記Ｐｔリッチ相は、α相のＰｔ濃度に対して１．２～３．８倍のＰｔ濃度のＡｕ－Ｐｔ合金からなり、任意断面における前記Ｐｔリッチ相の面積率が１～２２％である、特許第５５８２４８４号に記載の合金であることが好ましい。

これらのＡｕ－Ｐｔ合金は、生体適合性、耐食性および加工性等の医療用合金として要求される特性が良好であるとともに、アーチファクトフリーの材料として好適な磁化率を有している。また、上述のように、コイルの形状については、隣接して巻かれたワイヤ間に間隔を設けることでアーチファクト（音響陰影）が少なくなるが、形状に起因する物理的な強度は弱くなる。この点については、材料に白金を加えた合金を用いることで、例えばＡｕ単体のコイル形状のマーカーに比べて、強度を高めることができ、前記所望の形状でも本発明の用途に十分な強度を得ることができる。

ところで、外照射放射線治療用のマーカーは、数種類が上市されているが、いずれも金（Ａｕ）製であった。これらは、体内に留置しておき、治療前ＣＴで位置情報を把握するためのものであり、例えば、癌病巣の周囲に留置して用いていた。癌病巣の中心に留置すると、マーカー起因のアーチファクトのために、癌病巣の観察ができないからである。本発明の医療用イメージガイダンスマーカーは、アーチファクトの影響を考慮する必要がないため、癌病巣の中心部に留置して、治療経過を直接観察したり、治療対象位置の特定に使用することができる。従来のマーカーも、治療対象位置の特定は可能であったが、癌病巣の周囲の数箇所に留置して癌病巣との位置関係を同定することが必要である。そのため、マーカー留置のための穿刺を複数回行う必要があった。本発明の医療用イメージガイダンスマーカーでは、対象となる位置に直接留置すればよいので、一箇所の留置でよいため、穿刺回数を減らすことができ、患者の負担を少なくすることができるという利点もある。

なお、本発明の医療用イメージガイダンスマーカーは、１６ゲージ～２０ゲージのイメージガイド穿刺針内部をスムースに通る形状である。本発明の医療用イメージガイダンスマーカーの表面は、伸線加工された合金ワイヤ表面のままとすることで、平滑な状態を維持することができる。この状態であると、マーカーを体内に穿刺挿入する際の挿入抵抗を可能な限り減じることができる。あるいは、コイル形状に加工する前の合金ワイヤ表面に、または、コイル加工後のコイル表面に、ショットピーニングやサンドブラスト等の手段を講じることにより、医療用イメージガイダンスマーカーの表面に、微細な凹凸を付与することも可能である。この状態であると、穿刺挿入時の挿入抵抗は増加するものの、医療用イメージガイダンスマーカーの体内への留置後に、組織内での意図しない移動を妨げるアンカー効果を得ることができる。また、超音波Ｂモード（断層）画像においては、前記微細な凹凸が付与されることで、エコー乱反射を増加させることに伴う描画性を向上させることができる。上述のとおり、本発明の医療用イメージガイダンスマーカーは、コイルの隣接して巻かれたワイヤ間に空隙を設けていることで、最小限の音響陰影にとどめることができるので、臨床で普及しつつあるＭＲＩ画像のｄｉｃｏｍｄａｔａを融合し、超音波ガイダンスで穿刺手技を行う際、不可欠のマーカーとなる。

本発明の医療用イメージガイダンスマーカーは、外照射放射線治療のみならず、監視療法等の癌病巣標的治療にも適用が可能である。さらに、本発明の医療用イメージガイダンスマーカーは、Ｘ線、粒子線を用いた従来の前立腺癌外照射治療において、コーンビームＣＴ装置を用いた位置合わせを目的とした用途にも使用可能である。

［ＣＴ画像］
図２は、本発明の医療用イメージガイダンスマーカー（実施例）および従来品のマーカー（比較例）のＣＴ画像である。上段は縦断像であり、下段は横断像である。ＭａｒｋｅｒＡおよびＭａｒｋｅｒＢは本発明の医療用イメージガイダンスマーカーである。ＭａｒｋｅｒＣおよびＭａｒｋｅｒＤは従来品（上市品）の金（Ａｕ）製マーカーである。各マーカーは次のとおりである。

（実施例１）ＭａｒｋｅｒＡ
Ａｕ－３０Ｐｔ合金製。線径ｄは０．２ｍｍ、コイル径Ｄは０．８ｍｍ、コイルのピッチｐは０．６ｍｍである。
（実施例２）ＭａｒｋｅｒＢ
Ａｕ－３０Ｐｔ合金製。線径ｄは０．２ｍｍ、コイル径Ｄは０．８ｍｍ、コイルのピッチｐは０．７ｍｍである。
（比較例１）ＭａｒｋｅｒＣ
「ＶＩＳＩＣＯＩＬマーカプレロード」ＶＣ－０７６－０１０－ＰＬ０．７５×１０ｍｍ（セティ・メディカルラボ株式会社製）
Ａｕ製。コイル径Ｄは、０．７５ｍｍであり、コイルの隣接して巻かれた線同士が密着している。
（比較例２）ＭａｒｋｅｒＤ
「ＡＣＣＵＬＯＣゴールドマーカー」ＭＴＮＷ８８７８７２１８Ｇ×２０ｃｍ０．９×３ｍｍ（ＣＩＶＣＯ社製）
Ａｕ製。直径０．９ｍｍ、長さ３ｍｍの円柱形マーカーである。

実施例１、実施例２および後述の実施例３で用いたＡｕ－３０Ｐｔ合金は、Ｐｔ濃度が３０質量％のＡｕ－Ｐｔ合金であって、特許第５５８２４８４号に記載の方法により、８００℃で２４時間の熱処理を行ったものである。使用した製造ロットにおける前記合金の磁化率は－７ｐｐｍであった。なお、Ａｕの磁化率は、－３４ｐｐｍである。

図２において、マーカーの周囲に黒く抜けている箇所がアーチファクトである。実施例１および実施例２の医療用イメージガイダンスマーカーは、ＣＴ画像において、縦断像、横断像ともにアーチファクトがほとんど見られないことがわかる。それに対して、比較例１および比較例２のマーカーは、縦断像、横断像ともにアーチファクトが見られる。比較例のマーカーは、マーカーの留置に伴い生じるアーチファクトによって、画像による判定が困難となる場合がある。そのため、要観察域の境界部分に留置して位置情報を把握する用途には十分であるが、要観察域内への留置はされていない。一方、実施例１および実施例２の医療用イメージガイダンスマーカーは、アーチファクトが最小限となっているので、要観察域内への留置も可能である。

［ＭＲＩ画像］
図３は、図２と同じマーカーのＭＲＩ装置による撮像結果である。上段は縦断像であり、下段は横断像である。図３においても図２と同様に、実施例１および実施例２の医療用イメージガイダンスマーカーは、ＭＲＩ画像において、縦断像、横断像ともにアーチファクトがほとんど見られないことがわかる。それに対して、比較例１および比較例２のマーカーは、縦断像、横断像ともにアーチファクトが見られている。

［超音波画像１］
図４は、本発明の医療用イメージガイダンスマーカー（実施例）および従来品のマーカー（比較例）の超音波画像である。上段はマーカーを水平留置した状態での超音波画像であり、下段はマーカーを約４０°傾斜させて斜めに留置した状態での超音波画像である。ＭａｒｋｅｒＦは本発明の医療用イメージガイダンスマーカーである。ＭａｒｋｅｒＥは従来品（上市品）の金（Ａｕ）製マーカーである。図中のＭａｒｋｅｒＤは、前記の比較例２のマーカーである。その他の各マーカーは次のとおりである。

（実施例３）ＭａｒｋｅｒＦ
Ａｕ－３０Ｐｔ合金製。線径ｄは０．３ｍｍ、コイル径Ｄは０．８ｍｍ、コイルのピッチｐは０．６ｍｍである。
（比較例３）ＭａｒｋｅｒＥ
「ＡＣＣＵＬＯＣゴールドマーカー」（ＣＩＶＣＯ社製）
Ａｕ製。直径１．２ｍｍ、長さ３ｍｍの円柱形マーカーである。

実施例３、比較例２および比較例３のどのマーカーも、超音波画像において明瞭に認識可能であることがわかる。図４において、マーカーの周囲に影のように黒く抜けている箇所が音響陰影（アーチファクト）である。実施例３の医療用イメージガイダンスマーカーは、水平留置の状態の超音波画像、斜めに留置した状態での超音波画像ともに音響陰影が極めて少ないことがわかる。それに対して、比較例２および比較例３のマーカーは、水平留置の状態の超音波画像、斜めに留置した状態での超音波画像ともに音響陰影が広い範囲に見られることがわかる。なお、図４では実施例として、線径ｄが０．３ｍｍ、ピッチｐが０．６ｍｍの医療用イメージガイダンスマーカーを示しているが、線径ｄが０．２ｍｍの医療用イメージガイダンスマーカーについても同様の結果となった。なお、実施例において、ピッチｐを変えたマーカーを作成して超音波画像を観察したところ、水平留置した状態では、ピッチｐが０．６ｍｍ以上であると、よりアーチファクトが少なくなることがわかった。また、斜めに留置した状態では、ピッチｐが０．５ｍｍ～０．８ｍｍの範囲で、よりアーチファクトが少なくなることがわかった。

なお、他の比較例として、Ａｕ製、２５ゲージ針対応、長さ１０ｍｍ（比較例６、ＧＡ２００－１０）および２０ｍｍ（比較例７、ＧＡ２００－２０）のＮａｓｌｕｎｄＭｅｄｉｃａｌ社製マーカー「ＧｏｌｄＡｎｃｈｏｒ」（商品名）について、超音波画像を確認した。このマーカーは、体内留置前は直線形状であるが、体内留置する際には、小さく丸められた球体状（直径０．７５ｍｍ）となる。この球体状となった状態では、超音波画像でのマーカーの位置情報の認識が極めて困難であった。

［超音波画像２］
図５は、本発明の医療用イメージガイダンスマーカー（実施例）および比較例の医療用イメージガイダンスマーカーの超音波画像である。図５は、マーカーを水平留置した状態での超音波画像である。ＭａｒｋｅｒＡ、ＭａｒｋｅｒＧ、ＭａｒｋｅｒＨの各マーカーは、全て同じ材料（Ａｕ－３０Ｐｔ）からなり、線径ｄとピッチｐを変えたものである。ＭａｒｋｅｒＡは、前記の実施例１のマーカーである。その他の各マーカーは次のとおりである。

（比較例４）ＭａｒｋｅｒＧ
Ａｕ－３０Ｐｔ合金製。線径ｄは０．２ｍｍ、コイル径Ｄは０．８ｍｍである。コイルのピッチｐは０．２ｍｍであり、コイルの隣接して巻かれた線同士が密着している。
（比較例５）ＭａｒｋｅｒＨ
Ａｕ－３０Ｐｔ合金製。線径ｄは０．３ｍｍ、コイル径Ｄは０．８ｍｍである。コイルのピッチｐは０．３ｍｍであり、コイルの隣接して巻かれた線同士が密着している。

実施例１、比較例４および比較例５のマーカーは、同じ素材であるが、コイルのピッチｐの大きさにより、音響陰影に差異が生じていることがわかる。コイルの隣接して巻かれた線同士が密着しているもの（比較例４および比較例５）では、マーカーより深部に多重エコーに伴うアーチファクト（すじに見える音響陰影部分）が見られた。線径ｄに対してピッチｐを大きくして、実施例１（ＭａｒｋｅｒＡ）のようにコイルの隣接して巻かれたワイヤ間に空隙を設けることで、超音波画像におけるアーチファクト（音響陰影）が抑えられていることがわかる。

［動物実験］
イヌを用いた動物実験を行った。イヌの前立腺は、ヒトの前立腺に極めて類似しており、超音波穿刺も全く同じ手技で可能であることから、実験にはイヌを選択した。実験動物の詳細は次のとおりである。
動物種イヌ
系統ビーグル
性別雄
月齢６３～８２箇月齢
使用匹数５匹
使用時体重範囲９．５５～１０．９０ｋｇ

本発明の医療用イメージガイダンスマーカーとしては、次のものを用いた。
（実施例４）コイルピッチｐ＝０．７ｍｍ
実施例４の医療用イメージガイダンスマーカーは、Ａｕ－３０Ｐｔ合金製であり、線径ｄは０．３ｍｍ、コイル径Ｄは０．８ｍｍ、コイルのピッチｐは０．７ｍｍである。
（実施例５）コイルピッチｐ＝０．９ｍｍ
実施例５の医療用イメージガイダンスマーカーは、Ａｕ－３０Ｐｔ合金製であり、線径ｄは０．３ｍｍ、コイル径Ｄは０．８ｍｍ、コイルのピッチｐは０．９ｍｍである。

実施例４および実施例５で用いたＡｕ－３０Ｐｔ合金は、Ｐｔ濃度が３０質量％のＡｕ－Ｐｔ合金であって、特許第５５８２４８４号に記載の方法により、８００℃で２４時間の熱処理を行ったものである。使用した製造ロットにおける前記合金の磁化率は－６．３ｐｐｍであった。

（麻酔）
チアミラールナトリウム２２．５ｍｇ／ｋｇ（麻酔状況により投与量を増減、１７～２３ｍｇ／ｋｇ）を静脈内投与により導入麻酔後、気管カニューレを気道に挿管し、アコマ動物用人工呼吸器により人工呼吸を行った。アコマ動物用麻酔器により混合ガス（Ａｉｒ：Ｏ_２＝３：０．２を目安）と２．０％イソフルラン（イソフルラン吸入麻酔液「ファイザー」、マイラン製薬株式会社製）の吸入により麻酔を行った。

（前立腺重量）
５匹のイヌの前立腺重量は次のとおりであった。
イヌ１２９．４ｇ
イヌ２２０．６ｇ
イヌ３１４．７ｇ
イヌ４１１．１ｇ
イヌ５１７．１ｇ

（マーカー留置）
本発明の医療用イメージガイダンスマーカーおよび従来品のマーカーを、各々のイヌの前立腺右葉と左葉とに、次のとおり留置した。
イヌ１
前立腺両葉に、実施例４のマーカー（コイルピッチ０．７ｍｍ）を各葉２本ずつ留置を試みたが、右葉に留置した２本のマーカーが近傍に留置されたため、新たに、先行２マーカーより離れた位置に１本のマーカーを留置した。左葉は予定どおり２マーカーを留置した。
イヌ２
前立腺両葉に、実施例５のマーカー（コイルピッチ０．９ｍｍ）を各葉２本ずつ留置した。
イヌ３
前立腺右葉に、実施例４のマーカー（コイルピッチ０．７ｍｍ）と実施例５のマーカー（コイルピッチ０．９ｍｍ）とを１本ずつ留置した。前立腺左葉に、比較例２のマーカー（「ＡＣＣＵＬＯＣゴールドマーカー」ＭＴＮＷ８８７８７２１８Ｇ×２０ｃｍ０．９×３ｍｍ（ＣＩＶＣＯ社製））を２本留置した。
イヌ４
前立腺右葉に、実施例４のマーカー（コイルピッチ０．７ｍｍ）と実施例５のマーカー（コイルピッチ０．９ｍｍ）とを１本ずつ留置した。前立腺左葉に、比較例１のマーカー（「ＶＩＳＩＣＯＩＬマーカプレロード」ＶＣ－０７６－０１０－ＰＬ０．７５×１０ｍｍ（セティ・メディカルラボ株式会社製））を２本留置した。
イヌ５
前立腺右葉に、実施例４のマーカー（コイルピッチ０．７ｍｍ）と実施例５のマーカー（コイルピッチ０．９ｍｍ）とを１本ずつ留置した。前立腺左葉に、比較例６のマーカー（「ＧｏｌｄＡｎｃｈｏｒ」ＧＡ２００－１０（ＮａｓｌｕｎｄＭｅｄｉｃａｌ社製））を２本留置した。

（超音波検査結果）
イヌ１
５マーカーすべてについて、音響陰影干渉を生じない結果となった。
イヌ２
４マーカーすべてについて音響陰影干渉を生じず、コイルピッチ０．７ｍｍの実施例４のマーカーを用いたものと比較しても、差がない印象であった。
イヌ３
比較例２のマーカーを留置した前立腺左葉において、マーカーに明瞭な音響陰影を認めた。
イヌ４
比較例１のマーカーを留置した前立腺左葉において、音響陰影の観点からは、実施例４および実施例５のマーカーと対比し、同等であった。
イヌ５
前立腺左葉に留置された比較例６のマーカーは、局在が不明瞭となった（ｐｉｎｐｏｉｎｔのマーカー留置部位のｓｔｒｏｎｇｅｃｈｏが描出されず、球形のｈｉｇｈｅｃｈｏａｒｅａが描出された）。

（ＭＲＩ検査結果）
Ｓｐｉｎｅｃｈｏ法により、ＭＲＩ検査の評価を行った。Ｔ１、Ｔ２では、ｎｅｅｄｌｅｔｒａｃｔおよび周囲の血腫が描出されるためである。
イヌ１、イヌ２
実施例４および実施例５のマーカーでは、ほぼアーチファクトは認められなかった。
イヌ３、イヌ４、イヌ５
比較例２および比較例６のマーカーでは、明瞭なアーチファクトが描出された。比較例１のマーカーは、比較例２および比較例６よりも減弱しているが、アーチファクトが確認された。

以上の動物実験においては、本発明の医療用イメージガイダンスマーカーは、留置時の視認性が良好であること、また、留置時の位置ずれが生じないことが確認できた。ＭＲＩ検査結果からは、比較例のマーカーは、対象部位に１個留置しても顕著なアーチファクトが見られるが、本発明の医療用イメージガイダンスマーカーは、対象臓器の異なる部位に多数留置しても、アーチファクトが見られないことが確認できた。

本発明の医療用イメージガイダンスマーカーは、より生体に侵襲をかけずに、かつ、より詳細に観察あるいは診断が可能となり、ひいてはより精密な治療までをも行うことができる。

１００医療用イメージガイダンスマーカー
ｄ線径
Ｄコイル径
Ｌコイル長
ｐピッチ

Claims

生体組織内留置型の医療用断層イメージガイダンスマーカーであって、
磁化率が－１３ｐｐｍ～－５ｐｐｍの範囲内にある合金からなり、
コイル型の形状を有しており、
前記コイルは、線径が０．１５ｍｍ以上０．４５ｍｍ以下の範囲内のワイヤから形成されており、コイル径が０．５５ｍｍ以上１．２０ｍｍ以下の範囲内にあり、
前記コイルのピッチは、０．３ｍｍ以上１．５ｍｍ以下の範囲内にあるとともに、前記線径の１．８倍以上４倍以下の範囲内にあることを特徴とする、医療用イメージガイダンスマーカー。
前記コイルのコイル長が６ｍｍ以上７ｍｍ以下の範囲内にある、請求項１記載の医療用イメージガイダンスマーカー。
前記磁化率が－１３ｐｐｍ～－５ｐｐｍの範囲内にある合金が、Ａｕ－Ｐｔ合金である、請求項１または請求項２記載の医療用イメージガイダンスマーカー。
前記Ａｕ－Ｐｔ合金は、
Ｐｔ濃度が３４質量％以上３６質量％以下、残部Ａｕからなり、
さらに、Ｘ線回折分析におけるＰｔ（１１１）面のピーク強度（Ｘ）とＡｕ（１１１）面のピーク強度（Ｙ）との比（Ｘ／Ｙ）が、０．０１以下となるα単相組織を有する合金である、請求項３記載の医療用イメージガイダンスマーカー。
前記Ａｕ－Ｐｔ合金は、
Ｐｔ濃度２４質量％以上３４質量％未満、残部Ａｕからなり、
α相マトリックスに、少なくとも、α相よりもＰｔ濃度の高いＰｔリッチ相が分布する材料組織を有し、
前記Ｐｔリッチ相は、α相のＰｔ濃度に対して１．２～３．８倍のＰｔ濃度のＡｕ－Ｐｔ合金からなり、
任意断面における前記Ｐｔリッチ相の面積率が１～２２％である、請求項３記載の医療用イメージガイダンスマーカー。