以下、本発明による回転電機制御装置を図面に基づいて説明する。以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態を図1~図10に示す。図1に示すように、回転電機制御装置としてのECU10は、回転電機であるモータ80の駆動を制御するものであって、モータ80とともに、例えば車両のステアリング操作を補助するための操舵装置としての電動パワーステアリング装置8に適用される。
図1は、電動パワーステアリング装置8を備えるステアリングシステム90の構成を示す。ステアリングシステム90は、操舵部材であるステアリングホイール91、ステアリングシャフト92、ピニオンギア96、ラック軸97、車輪98、および、電動パワーステアリング装置8等を備える。
ステアリングホイール91は、ステアリングシャフト92と接続される。ステアリングシャフト92には、操舵トルクを検出するトルクセンサ94が設けられる。トルクセンサ94は、第1センサ部194および第2センサ部294を有しており、各々自身の故障検出ができるセンサが二重化されている。ステアリングシャフト92の先端には、ピニオンギア96が設けられる。ピニオンギア96は、ラック軸97に噛み合っている。ラック軸97の両端には、タイロッド等を介して一対の車輪98が連結される。
運転者がステアリングホイール91を回転させると、ステアリングホイール91に接続されたステアリングシャフト92が回転する。ステアリングシャフト92の回転運動は、ピニオンギア96によってラック軸97の直線運動に変換される。一対の車輪98は、ラック軸97の変位量に応じた角度に操舵される。
電動パワーステアリング装置8は、モータ80、モータ80の回転を減速してステアリングシャフト92に伝える動力伝達部としての減速ギア89、および、ECU10等を備える。すなわち、本実施形態の電動パワーステアリング装置8は、所謂「コラムアシストタイプ」であり、ステアリングシャフト92が駆動対象といえる。モータ80の回転をラック軸97に伝える所謂「ラックアシストタイプ」等としてもよい。
図1~図4に示すように、モータ80は、操舵に要するトルクの一部または全部を出力するものであって、電源としてのバッテリ101、201から電力が供給されることにより駆動され、減速ギア89を正逆回転させる。モータ80は、3相ブラシレスモータであって、ロータ860およびステータ840を有する。
モータ80は、第1モータ巻線180および第2モータ巻線280を有する。モータ巻線180、280は電気的特性が同等であり、共通のステータ840に、互いに電気角30[deg]ずらしてキャンセル巻きされる。これに応じて、モータ巻線180、280には、位相φが30[deg]ずれた相電流が通電されるように制御される。通電位相差を最適化することで、出力トルクが向上する。また、6次のトルクリプルを低減することができ、騒音、振動の低減することができる。また、電流も分散されることで発熱が分散、平準化されるため、各センサの検出値やトルク等、温度依存の系統間誤差を低減可能であるとともに、通電可能な電流量を増やすことができる。なお、モータ巻線180、280は、キャンセル巻きされていなくてもよく、電気的特性が異なっていてもよい。
以下、第1モータ巻線180の通電制御に係る第1インバータ部120および第1制御部150等の組み合わせを第1系統L1、第2モータ巻線280の通電制御に係る第2インバータ部220および第2制御部250等の組み合わせを第2系統L2とする。また、第1系統L1に係る構成を主に100番台で付番し、第2系統L2に係る構成を主に200番台で付番する。また、第1系統L1および第2系統L2において、同様または類似の構成には、下2桁が同じとなるように付番する。以下適宜、「第1」を添え字の「1」、「第2」を添え字の「2」として記載する。
駆動装置40は、モータ80の軸方向の一方側にECU10が一体的に設けられており、いわゆる「機電一体型」であるが、モータ80とECU10とは別途に設けられていてもよい。ECU10は、モータ80の出力軸とは反対側において、シャフト870の軸Axに対して同軸に配置されている。ECU10は、モータ80の出力軸側に設けられていてもよい。機電一体型とすることで、搭載スペースに制約のある車両において、ECU10とモータ80とを効率的に配置することができる。
モータ80は、ステータ840、ロータ860、および、これらを収容するハウジング830等を備える。ステータ840は、ハウジング830に固定されており、モータ巻線180、280が巻回される。ロータ860は、ステータ840の径方向内側に設けられ、ステータ840に対して相対回転可能に設けられる。
シャフト870は、ロータ860に嵌入され、ロータ860と一体に回転する。シャフト870は、軸受835、836により、ハウジング830に回転可能に支持される。シャフト870のECU10側の端部は、ハウジング830からECU10側に突出する。シャフト870のECU10側の端部には、マグネット875が設けられる。
ハウジング830は、リアフレームエンド837を含む有底筒状のケース834、および、ケース834の開口側に設けられるフロントフレームエンド838を有する。ケース834とフロントフレームエンド838とは、ボルト等により互いに締結されている。リアフレームエンド837には、リード線挿通孔839が形成される。リード線挿通孔839には、モータ巻線180、280の各相と接続されるリード線185、285が挿通される。リード線185、285は、リード線挿通孔839からECU10側に取り出され、基板470に接続される。
ECU10は、カバー460、カバー460に固定されているヒートシンク465、ヒートシンク465に固定されている基板470、および、基板470に実装される各種の電子部品等を備える。カバー460は、外部の衝撃から電子部品を保護したり、ECU10の内部への埃や水等の浸入を防止したりする。カバー460は、カバー本体461、および、コネクタ部103、203が一体に形成される。コネクタ部103、203は、カバー本体461と別体であってもよい。コネクタ部103、203の端子463は、図示しない配線等を経由して基板470と接続される。コネクタ数および端子数は、信号数等に応じて適宜変更可能である。コネクタ部103、203は、駆動装置40の軸方向の端部に設けられ、モータ80と反対側に開口する。
基板470は、例えばプリント基板であり、リアフレームエンド837と対向して設けられる。基板470には、2系統分の電子部品が系統ごとに独立して実装されており、完全冗長構成をなしている。本実施形態では、1枚の基板470に電子部品が実装されているが、複数枚の基板に電子部品を実装するようにしてもよい。
基板470の2つの主面のうち、モータ80側の面をモータ面471、モータ80と反対側の面をカバー面472とする。図3に示すように、モータ面471には、インバータ部120を構成するスイッチング素子121、インバータ部220を構成するスイッチング素子221、角度センサ126、226、カスタムIC135、235等が実装される。角度センサ126、226は、マグネット875の回転に伴う磁界の変化を検出可能なように、マグネット875と対向する箇所に実装される。
カバー面472には、コンデンサ128、228、インダクタ129、229、および、制御部150、250を構成するマイコン等が実装される。図3では、制御部150、250を構成するマイコンについて、それぞれ「150」、「250」を付番した。コンデンサ128、228は、バッテリ101、201から入力された電力を平滑化する。また、コンデンサ128、228は、電荷を蓄えることで、モータ80への電力供給を補助する。コンデンサ128、228、および、インダクタ129、229は、フィルタ回路を構成し、バッテリを共用する他の装置から伝わるノイズを低減するとともに、駆動装置40からバッテリを共用する他の装置に伝わるノイズを低減する。なお、図3中には図示を省略しているが、電源リレー122、222、モータリレー125、225、および、電流センサ127、227等についても、モータ面471またはカバー面472に実装される。
図4に示すように、ECU10は、インバータ部120、220、制御部150、250、および、マイコン間通信部301等を備える。ECU10には、コネクタ部103、203が設けられる。第1コネクタ部103には、第1電源端子105、第1グランド端子106、第1IG端子107、第1通信端子108、および、第1トルク端子109が設けられる。
第1電源端子105は、図示しないヒューズを経由して第1バッテリ101に接続される。第1電源端子105を経由して第1バッテリ101の正極から供給された電力は、電源リレー122、インバータ部120、および、モータリレー125等を経由して、第1モータ巻線180に供給される。第1グランド端子106は、ECU10の内部の第1系統のグランドである第1グランドGND1と、ECU10の外部の第1系統のグランドである第1外部グランドGB1とに接続される。車のシステムにおいては金属ボデーが共通のGNDプレーンとなっており、第1外部グランドGB1はGNDプレーン上の接続ポイントの1つを示し、第2バッテリ201の負極もこのGNDプレーン上の接続ポイントに接続される。
第1IG端子107は、イグニッションスイッチ等である車両の始動スイッチと連動してオンオフ制御される第1スイッチを経由して第1バッテリ101の正極と接続される。第1IG端子107を経由して第1バッテリ101から供給された電力は、第1カスタムIC135に供給される。第1カスタムIC135には、第1ドライバ回路136、第1回路電源137、図示しないマイコン監視モニタ、および、図示しない電流モニタアンプ等が含まれる。
第1通信端子108は、第1車両通信回路111と、第1車両通信網195とに接続される。第1車両通信網195と第1制御部150とは、第1車両通信回路111を経由して、送受信が可能に接続される。また、第1車両通信網195と第2制御部250とは、情報を受信可能に接続され、第2制御部250が故障しても、第1制御部150を含む第1車両通信網195に影響がないように構成される。
第1トルク端子109は、トルクセンサ94の第1センサ部194と接続される。第1センサ部194の検出値は、第1トルク端子109および第1トルクセンサ入力回路112を経由して、第1制御部150に入力される。ここで第1センサ部194および第1制御部150は、このトルクセンサ入力回路系の故障が検出されるように構成される。
第2コネクタ部203には、第2電源端子205、第2グランド端子206、第2IG端子207、第2通信端子208、および、第2トルク端子209が設けられる。第2電源端子205は、図示しないヒューズを経由して第2バッテリ201の正極に接続される。第2電源端子205を経由して第2バッテリ201から供給された電力は、電源リレー222、インバータ部220、および、モータリレー225等を経由して、第2モータ巻線280に供給される。第2グランド端子206は、ECU10の内部の第2系統のグランドである第2グランドGND2と、ECU10の外部の第2系統のグランドである第2外部グランドGB2とに接続される。車のシステムにおいては金属ボデーが共通のGNDプレーンとなっており、第2外部グランドGB2はGNDプレーン上の接続ポイントの1つを示し、さらに、第2バッテリ201の負極もこのGNDプレーン上の接続ポイントに接続される。ここで、少なくとも異なった系統は、GNDプレーン上の同一の接続ポイントに接続しないよう構成される。
第2IG端子207は、車両の始動スイッチと連動してオンオフ制御される第2スイッチを経由して第2バッテリ201の正極と接続される。第2IG端子207を経由して第2バッテリ201から供給された電力は、第2カスタムIC235に供給される。第2カスタムIC235には、第2ドライバ回路236、第2回路電源237、図示しないマイコン監視モニタ、および、図示しない電流モニタアンプ等が含まれる。
第2通信端子208は、第2車両通信回路211と、第2車両通信網295とに接続される。第2車両通信網295と第2制御部250とは、第2車両通信回路211を経由して、送受信が可能に接続される。また、第2車両通信網295と第1制御部150とは情報を受信可能に接続され、第1制御部150が故障しても、第2制御部250を含む第2車両通信網295に影響がないように構成される。
第2トルク端子209は、トルクセンサ94の第2センサ部294と接続される。第2センサ部294の検出値は、第2トルク端子209および第2トルクセンサ入力回路212を経由して、第2制御部250に入力される。ここで第2センサ部294および第2制御部250は、このトルクセンサ入力回路系の故障が検出されるように構成される。
図4では、通信端子108、208は、それぞれ別途の車両通信網195、295に接続されているが、同一の車両通信網に接続されてもよい。また、図4では、車両通信網195、295として、CAN(Controller Area Network)を例示しているが、CAN-FD(CAN with Flexible Data rate)やFlexRay等、CAN以外の規格のものを用いてもよい。以下適宜、制御部150、250と車両通信網195、295との通信をCAN通信という。また、本実施形態では、車両通信網195、295が、通信網302を構成する(図9参照)。
第1インバータ部120は、スイッチング素子121を有する3相インバータであって、第1モータ巻線180の電力を変換する。第2インバータ部220は、スイッチング素子221を有する3相インバータであって、第2モータ巻線280の電力を変換する。
第1電源リレー122は、第1電源端子105と第1インバータ部120との間に設けられる。第1モータリレー125は、第1インバータ部120と第1モータ巻線180との間の各相に設けられる。第2電源リレー222は、第2電源端子205と第2インバータ部220との間の各相に設けられる。第2モータリレー225は、第2インバータ部220と第2モータ巻線280との間に設けられる。
本実施形態では、スイッチング素子121、221、電源リレー122、222、および、モータリレー125、225は、いずれもMOSFETであるが、IGBT等の他の素子を用いてもよい。図5に示すように、第1電源リレー122をMOSFETのように寄生ダイオードを有する素子で構成する場合、寄生ダイオードの向きが逆向きとなるように2つの素子123、124を直列に接続することが望ましい。第2電源リレー222も同様であるので図示を省略する。これにより、バッテリ101、201が誤って逆向きに接続された場合に、逆向きの電流が流れるのを防ぐことができる。電源リレー122、222は、メカリレーであってもよい。
図4に示すように、第1スイッチング素子121、第1電源リレー122および第1モータリレー125は、第1制御部150によりオンオフ作動が制御される。第2スイッチング素子221、第2電源リレー222および第2モータリレー225は、第2制御部250によりオンオフ作動が制御される。
第1角度センサ126は、モータ80の回転角を検出し、検出値を第1制御部150に出力する。第2角度センサ226は、モータ80の回転角を検出し、検出値を第2制御部250に出力する。ここで、第1角度センサ126と第1制御部150、および第2角度センサ226と第2制御部250は、各々の角度センサ入力回路系の故障が検出されるように構成される。
第1電流センサ127は、第1モータ巻線180の各相に通電される電流を検出する。第1電流センサ127の検出値は、カスタムIC135内の増幅回路にて増幅され、第1制御部150に出力される。第2電流センサ227は、第2モータ巻線280の各相に通電される電流を検出する。第2電流センサ227の検出値は、カスタムIC235内の増幅回路にて増幅され、第2制御部250に出力される。
第1ドライバ回路136は、第1制御部150からの制御信号に基づき、第1スイッチング素子121、第1電源リレー122および第1モータリレー125を駆動する駆動信号を各素子に出力する。第2ドライバ回路236は、第2制御部250からの制御信号に基づき、第2スイッチング素子221、第2電源リレー222および第2モータリレー225を駆動する駆動信号を各素子に出力する。
回路電源137は、電源端子105およびIG端子107に接続され、第1制御部150に電力を供給する。回路電源237は、電源端子205およびIG端子207に接続され、第2制御部250に電力を供給する。
制御部150、250は、マイコン等を主体として構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、RAM、I/O及び、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。制御部150、250における各処理は、ROM等の実体的なメモリ装置(すなわち、読み出し可能非一時的有形記録媒体)に予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理であってもよいし、専用の電子回路によるハードウェア処理であってもよい。後述の外部制御部350も同様である。ここで、第1制御部150、および第2制御部250は、例えばロックドステップデュアルマイコン等を使用し、各々の自身の故障が検出されるように構成される。制御部150、250は、マイコン間通信部301により、モータ80の駆動制御に係る情報である制御情報を相互に送受信可能である。図中適宜、第1制御部150を「マイコン1」、第2制御部250を「マイコン2」とする。
第1制御部150は、駆動制御部151、モード選択部152、および、異常監視部155を有する。駆動制御部151は、第1スイッチング素子121のオンオフ作動を制御することで、第1モータ巻線180の通電を制御する。また、駆動制御部151は、第1電源リレー122および第1モータリレー125のオンオフ作動を制御する。
第2制御部250は、駆動制御部251、モード選択部152、および、異常監視部255を有する。駆動制御部251は、第2スイッチング素子221のオンオフ作動を制御することで、第2モータ巻線280の通電を制御する。また、駆動制御部251は、第2電源リレー222および第2モータリレー225のオンオフ作動を制御する。駆動制御部151、251は、例えば電流フィードバック制御によりモータ80の駆動を制御するが、モータ制御の制御手法の詳細は、電流フィードバック制御以外であってもよい。
モード選択部152、252は、モータ80の駆動制御に係る駆動モードを選択する。本実施形態の駆動モードには、協調駆動モード、独立駆動モード、および、片系統駆動モードが含まれ、通常時、協調駆動モードによりモータ80の駆動を制御する。
協調駆動モードでは、制御部150、250が共に正常であって、マイコン間通信が正常であるとき、少なくとも1つの値を系統間にて共有して、各系統を協調させてモータ80の駆動を制御する。本実施形態では、制御情報として電流指令値、電流検出値および電流制限値を共有する。また本実施形態では、第1制御部150をマスター制御部、第2制御部250をスレーブ制御部とし、第1制御部150は、電流指令値を第2制御部250へ送信し、制御部150、250にて同一の電流指令値を用いることで電流指令値を共有する。共有される電流指令値は、電流制限後の値であってもよいし、電流制限前の値としてもよい。本実施形態では、協調駆動モードにおいて、2系統の電流和と電流差を制御する、いわゆる「和と差の制御」にて電流制御を行う。第1系統L1、第2系統L2およびマイコン間通信が正常である場合を通常時とし、通常時、協調駆動モードにてモータ80を駆動する。
独立駆動モードでは、他系統の制御情報を用いず、各系統が独立して、2系統にてモータ80の駆動を制御する。片系統駆動モードでは、一方の系統を停止し、他系統の制御情報を用いず、1系統にてモータ80の駆動を制御する。
異常監視部155は、自系統である第1系統L1の異常の監視を行う。また、自系統にて自系統を停止すべき異常が生じた場合、第1制御部150は、第1インバータ部120、第1電源リレー122および第1モータリレー125の少なくとも1つをオフにする。
また、異常監視部155は、第2制御部250との通信状態、および、第2系統L2の動作状態を監視する。第2系統L2の動作状態の監視方法として第2系統L2の異常を検出したときに自系統を停止する回路(例えば、第2インバータ部220、第2電源リレー222、および第2モータリレー225)またはマイコン間通信に係る通信線のうち、少なくとも1つの状態を監視し、非常停止しているか否かを判断する。本実施形態では、第2ドライバ回路236から第2電源リレー222に出力される第2リレーゲート信号Vrg2を取得する他系統リレー監視回路139が設けられ、第2リレーゲート信号Vrg2に基づいて第2電源リレー222の状態を監視する。
異常監視部255は、自系統である第2系統L2の異常の監視を行う。また、自系統にて自系統を停止すべき異常が生じた場合、第2制御部250は、第2インバータ部220、第2電源リレー222および第2モータリレー225の少なくとも1つをオフにする。
異常監視部255は、第1制御部150との通信状態、および、第1系統L1の動作状態を監視する。第1系統L1の動作状態の監視方法として第1系統L1の異常を検出したときに自系統を停止する回路(例えば、第1インバータ部120、第1電源リレー122、および第1モータリレー125)またはマイコン間通信に係る通信線のうち、少なくとも1つの状態を監視し、非常停止しているか否かを判断する。本実施形態では、第1ドライバ回路136から第1電源リレー122に出力される第1リレーゲート信号Vrg1を取得する他系統リレー監視回路239が設けられ、第1リレーゲート信号Vrg1に基づいて第1電源リレー122の状態を監視する。
第2制御部250における第1系統L1の監視において、他系統リレー情報として、リレーゲート信号Vrg1に替えて、電源リレー122を構成する2つの素子123、124の中間電圧、制御部150から出力されるリレー駆動信号、または、電源リレー122とインバータ部120との間のリレー後電圧を用いてもよい。第1制御部150における第2系統L2の監視についても同様である。
以下、他系統リレー監視回路から取得される情報を「他系統リレー情報」、他系統リレー情報に基づいて他系統の動作状態を監視することを「他系統リレー監視」、監視されるリレーを「他系統リレー」という。また、他系統リレーがオンされているべきタイミングにて、他系統リレーがオフである旨の情報が取得された場合、「他系統リレー情報が異常である」とする。
異常監視部155、255は、マイコン間通信異常が生じており、かつ、他系統リレー情報が異常である場合、他系統にて異常が生じており、他系統が停止していると判定する。一方の系統が異常停止している場合、正常系統にてモータ80の駆動制御を継続する。また、異常監視部155、255は、マイコン間通信異常が生じており、かつ、他系統リレー情報が正常である場合、他系統は駆動中であって、マイコン間通信異常が生じていると判定する。すなわち、本実施形態では、マイコン間通信状態および他系統リレー監視により、生じている異常が、他系統の制御部の異常なのか、マイコン間通信異常なのか、を切り分けている。
本実施形態では、モータ80から出力される出力トルクであるアシストトルクTaを、操舵トルクTsに応じて設定している。図6では、横軸を操舵トルクTs、縦軸をアシストトルクTaとし、協調駆動モードおよび独立駆動モードにおいて、2系統合計の出力を実線、第1系統L1の出力を破線で示す。
図6に示すように、アシストトルクTaは、操舵トルクTsが上限到達値Ts2までの範囲において、操舵トルクTsが大きくなるにつれて大きくなり、操舵トルクTsが上限到達値Ts2以上の範囲において、出力上限値Ta_max2となる。破線で示すように、第1系統L1と第2系統L2とで性能等が同じであれば、第1系統L1と第2系統L2とで1/2ずつモータ80の出力を担う。すなわち、1系統での出力上限値Ta_max1は、2系統での出力上限値Ta_max2の1/2となっている。また、1系統での操舵トルクTsに対するアシストトルクTaの増加割合は、2系統時の1/2となっている。なお、図6では、アシストトルクTaは、出力上限値Ta_max2までの範囲にて、操舵トルクTsの増加に伴って線形的に増加しているが、非線形で増加するようにしてもよい。
片系統駆動モードでの出力特性を図7に示す。図7では、片系統駆動時の第1系統L1の出力を実線、通常時の2系統合計の出力を破線で示す。片系統駆動モードにおいて、操舵トルクTsが上限到達値Ts1までの範囲にて、操舵トルクTsに対するアシストトルクTaの増加割合を2倍にすることで、操舵トルクTsに対するアシストトルクTaを協調駆動時と同じにしている。また、操舵トルクTsが上限到達値Ts1より大きい範囲において、アシストトルクTaは、操舵トルクTsによらず、片系統駆動での出力上限値Ta_max1となり、2系統駆動時よりアシストトルクTaが小さくなる。なお、定格電流等に余裕があれば、片系統駆動モードにおける出力上限値Ta_max1を2系統駆動での出力上限値Ta_max2以下の範囲にて引き上げてもよい。
図8は、制御部150、250の通信状態を模式的に示している。図8(a)に示すように、制御部150、250が共に正常であって、マイコン間通信が正常である場合、2系統での協調駆動モードにてモータ80を駆動する。図8(b)に示すように、制御部150、250が共に正常であって、マイコン間通信が異常である場合、2系統での独立駆動モードにてモータ80を駆動する。図8(c)に示すように、第2制御部250が異常である場合、第1系統でL1での片系統駆動モードにてモータ80を駆動する。
本実施形態では、他系統リレー監視により、マイコン間通信異常か、制御部自体の異常かを切り分けている。ここで、例えばグランド断線等の他系統の電圧を正しく検出できない異常が生じた場合、異常状態を誤判定する虞がある。例えば、他系統が停止しているにも関わらず、マイコン間通信異常と誤判定し、独立駆動に移行すると、図6の1系統分の出力となり、出力が通常時の半分となる。この対策として、マイコン間通信異常時に各系統の出力を高めた場合、制御部150、250が共に正常であると、2系統駆動にて出力が高められるため、通常時よりも過出力となる虞がある(図16参照)。
そこで本実施形態では、マイコン間通信が異常になった場合、マイコン間通信に用いるマイコン間通信部301とは別の通信網302から取得される情報に基づいて他系統の状態を検出し、駆動モードおよび出力特性を決定する。
制御部150、250は、自身が正常であることを示す正常情報を通信網302に送信するとともに、他の制御部から送信される正常情報を通信網302から取得する。ここで、制御部150、250は、異常判定に関し、他系統の制御部が正常にCAN通信できていることがわかればよく、正常情報は、例えばフラグ等であってもよい。また、他系統の制御部から通信網302に送信される何らかの情報を、正常情報として用いてもよい。
制御部150、250は、他の制御部から正常情報が取得できた場合、他系統が正常であると判定し、正常情報が取得できない場合、他系統が異常であると判定する。なお、通信網302を介した正常情報は、異常判定に用いられるものであって、モータ80の駆動制御に用いるものではない。したがって、通信網302を介した正常情報の送受信周期は、マイコン間通信周期よりも長くてもよい。
図9では、図8同様、制御部150、250の通信状態を模式的に示しており、制御部150、250と、車両通信網195、295との接続については、車両通信回路111、211等の記載を省略している。図9(a)に示すように、第2制御部250が異常である場合、第1制御部150は、マイコン間通信により制御情報を第2制御部250から取得することができない。また、通信網302を経由した正常情報が途絶するため、第2制御部250の異常と判定し、片系統駆動モードに移行し、通常時とは出力特性を変更する。具体的には、図7に示すように、操舵トルクTsが上限到達値Ts1までの範囲にて、操舵トルクTsに対するアシストトルクTaの増加割合を2倍にする。
図9(b)に示すように、マイコン間通信が異常である場合、第1制御部150は、制御情報を第2制御部250から取得することができない。また、マイコン間通信が異常であっても、第2制御部250が正常であれば、第1制御部150は、通信網302から正常情報を取得可能である。この場合、協調駆動時と出力特性を変えずに独立駆動モードに移行する。
本実施形態の駆動モード選択処理を図10のフローチャートに基づいて説明する。この処理は、制御部150、250にて共通して、所定の周期で実行される。実際には、マイコン間通信以外の要素も考慮したモード選択が行われるが、ここでは、主にマイコン間通信状態に着目して簡略的に記載する。また、各判定は1回での判定ではなく、所定時間継続や、所定時間内に所定回数積算にて判定するようにしてもよい。後述の実施形態に係る制御フローについても同様である。以下、ステップS101の「ステップ」を省略し、単に記号「S」と記す。他のステップも同様である。
S101では、制御部150、250は、マイコン間通信が正常か否か判断する。ここでは、マイコン間通信により制御情報が取得可能である場合、肯定判断し、取得不能である場合、否定判断する。マイコン間通信が正常であると判断された場合(S101:YES)、S102へ移行し、駆動モードを協調駆動モードとする。マイコン間通信が正常ではないと判断された場合(S101:NO)、S103へ移行する。
S103では、制御部150、250は、他系統リレー情報が正常か否か判断する。他系統リレー情報が正常はないと判断された場合(S103:NO)、S106へ移行する。他系統リレー情報が正常であると判断された場合(S103:YES)、S104へ移行する。
S104では、制御部150、250は、他系統のCAN通信が正常か否か判断する。ここでは、通信網302を経由して正常情報が取得された場合、肯定判断し、正常情報が途絶判定期間に亘って途絶している場合、否定判断する。他系統のCAN通信が正常であると判断された場合(S104:YES)、S105へ移行し、駆動モードを独立駆動モードとする。独立駆動モードは2系統駆動となるので、出力特性は通常時と変更しない。他系統のCAN通信が正常でないと判断された場合(S104:NO)、他系統にてグランド断線等の電圧異常が生じていると判定し、S106へ移行する。S106では、正常系統の制御部は、駆動モードを片系統駆動モードとし、図7にて説明したように、出力特性を変更する。
以上説明したように、本実施形態のECU10は、モータ巻線180、280を有するモータ80の駆動を制御するものであって、複数のインバータ部120、220と、複数の制御部150、250と、マイコン間通信部301と、を備える、インバータ部120、220は、モータ巻線180、280の通電を切り替える。制御部150、250は、インバータ部120、220に対応して設けられ、モータ巻線180、280の通電を制御することでモータ80の駆動を制御する。マイコン間通信部301は、制御部150、250間にて、モータ80の駆動制御に用いられる制御情報を送受信する。
制御部150、250は、マイコン間通信部301とは別の通信網302との通信により、他の制御部の状態を検出可能であって、マイコン間通信部301による通信に異常が生じている場合、通信網302からの情報を用いてモータ80の駆動モードを選択する。
本実施形態では、対応して設けられるインバータ部120、220と制御部150、250との組み合わせを系統とする。駆動モードには、協調駆動モード、独立駆動モード、および、片系統駆動モードが含まれる。協調駆動モードは、マイコン間通信部301を経由して他の制御部から取得された制御情報、および、自身の制御部にて演算した制御情報を用いて複数系統にてモータ巻線180の通電を制御する。独立駆動モードは、他の制御部の制御情報を用いず、複数系統にてモータ巻線180、280の通電を制御する。片系統駆動モードは、他の制御部から取得された制御情報を用いず、1系統にてモータ巻線180、280の通電を制御する。ここで、3系統以上であっても、1系統にてモータ80を駆動する駆動モードを「片系統駆動モード」とする。
制御部150、250は、マイコン間通信部301による通信が正常である場合、駆動モードを協調駆動モードとする。制御部150、250は、マイコン間通信部301による通信に異常が生じ、かつ、通信網302を経由して他の制御部からの情報が途絶した場合、他系統が停止しているとみなし、駆動モードを片系統駆動モードとする。制御部150、250は、マイコン間通信部301に異常が生じ、かつ、通信網302を経由して他の制御部からの情報を取得可能である場合、他系統は正常であって、マイコン間通信異常が生じているとみなし、駆動モードを独立駆動モードとする。これにより、マイコン間通信に異常が生じた場合であっても、駆動モードを適切に選択することができるので、異常が生じた場合であってもモータ80の駆動を適切に制御することができる。
制御部150、250は、異常が生じたときにオフされるリレー情報を他系統リレー情報として、他の制御部からマイコン間通信部301および通信網302とは別途に取得可能であって、マイコン間通信部301による通信に異常が生じた場合、他系統リレー情報および通信網302からの情報を用いて駆動モードを選択する。これにより、グランド断線等の他系統の電圧を正しく検出できない異常が生じた場合であっても、異常状態を適切に切り分け、駆動モードを適切に選択することができる。
制御部150、250は、マイコン間通信部301による通信に異常が生じ、通信網302を経由した他の制御部からの情報が途絶した場合、片系統駆動モードに移行し、自系統の出力を通常時より高める。また、マイコン間通信部301による通信に異常が生じ、通信網302を経由して他の制御部からの情報を取得可能である場合、独立駆動モードに移行し、自系統の出力を通常時と同等にする。ここで、「出力を高める」とは、ある入力パラメータ(本実施形態では操舵トルクTs)に対して出力(本実施形態ではアシストトルクTa)が設定される場合、入力パラメータに対する出力の傾き、および、出力上限の少なくとも一方を高めるものとする。本実施形態では、上限到達値Ts1以下の領域において、操舵トルクTsに対するアシストトルクTaの傾きを大きくしていることが「出力を高める」に対応する。また、「通常時と同等」とは、例えばアシストトルクTaを指令値とし、操舵トルクTsに応じたアシストトルク指令値が通常時(本実施形態では協調駆動時)と同じであればよく、制御の違いにより生じる程度の出力差は許容されるものとする。これにより、モータ80の出力を適切に制御することができる。
(第2実施形態)
第2実施形態を図11に示す。本実施形態では、他系統リレー監視が省略されているものとする。ここで、マイコン間通信部301と通信網302の二重故障が生じた場合、制御部150、250は、他系統停止と認識し、片系統駆動モードに移行するが、実際には、両系統に通電されるため、出力特性を変更していると、過出力になる(図16参照)。ここで、制御中に過出力状態になると、急にステアリングホイール91が軽くなる舵抜けの状態になり、車両が運転者の意図しない挙動となる虞がある。そこで本実施形態では、制御部150、250にてアシスト制御が開始されている場合は、独立制御モードとし、制御部150、250の起動時に片系統駆動モードに移行させる。
本実施形態の駆動モード選択処理を図11のフローチャートに基づいて説明する。S201およびS202の処理は、図10中のS101およびS102の処理と同様である。S201にて否定判断された場合、S203へ移行する。S203の処理は、図10中のS104と同様であって、他系統のCAN通信が正常か否か判断する。他系統のCAN通信が正常であると判断された場合(S203:YES)、S205へ移行し、他系統のCAN通信が正常でないと判断された場合(S203:NO)、S204へ移行する。
S204では、制御部150、250は、アシスト制御開始後か否かを判断する。ここでは、始動スイッチがオンされた後、アシスト制御開始から始動スイッチがオフされるまでの間は肯定判断される。一方、マイコン間通信およびCAN通信異常となった後、始動スイッチがオフされ、始動スイッチが再オンされたとき、S204にて否定判断される。アシスト制御開始後であると判断された場合(S204:YES)、S205へ移行し、駆動モードを独立駆動モードとする。アシスト制御開始後ではないと判断された場合(S204:NO)、すなわち制御部150、250の起動時である場合、S206へ移行し、駆動モードを片系統駆動モードとする。なお、片系統駆動モードに移行した後は、アシスト制御を開始してからも片系統駆動モードを継続する。
ここで、独立駆動モードでは、それぞれの系統における出力特性を通常時と変えないため、S204にて肯定判断されて独立駆動モードとする場合であって、他系統失陥で他系統が停止している場合、実際には、1系統での駆動となるため、操舵トルクTsに対するアシストトルクTaは通常時の半分になる(図6参照)。また、S204にて肯定判断されて独立駆動モードとする場合であって、マイコン間通信およびCAN通信の二重故障が生じており、他系統が駆動中であると、2系統での駆動となるので、操舵トルクTsに対するアシストトルクTaは通常時と同じになる。これにより、仮に二重故障が生じた場合であっても、制御中は出力特性が変更されないので、過出力になることはなく、急にステアリングホイール91が軽くなることでの舵抜けを防ぐことができる。
また、片系統駆動モードでは、出力特性を通常時より高める。そのため、他系統失陥で他系統が停止している場合、操舵トルクTsが上限到達値Ts1までは、操舵トルクTsに対するアシストトルクTaは通常時と同様であって、出力上限値Ta_max1にて頭打ちされる。一方、マイコン間通信およびCAN通信の二重故障の場合、起動時に出力特性が変更されると、アシスト開始から通常時より過出力になり、運転者には通常時より操舵が軽く感じられる可能性はあるものの、制御中の切り替えではなく、かつ、二重故障というレアケースのため許容する。
本実施形態では、マイコン間通信部301による通信に異常が生じ、通信網302を経由した他の制御部からの情報が途絶した場合であって、出力維持判定条件が成立している場合、自系統の出力を通常時と同等にし、出力維持判定条件が非成立となった場合、自系統の出力を通常時より高める。本実施形態では、アシスト制御開始後から始動スイッチがオフされるまでが出力維持判定条件が成立しているとし、始動スイッチ再オン後である起動時、出力維持判定条件が非成立である。換言すると、始動スイッチがオンされてからオフされるまでの期間を「トリップ」とすると、マイコン間通信異常および通信網302からの情報途絶は発生したトリップ中は出力を変更せず、次のトリップから出力を高める。これにより、出力維持判定条件が成立しているときの過出力を防ぐことができる。
(第3実施形態)
第3実施形態を図12に示す。本実施形態の駆動モード選択処理を図12に示す。S301~S306の処理は、図10中のS101~S106の処理と同様である。S303にて否定判断された場合、S308へ移行し、駆動モードを片系統駆動モードとする。S304にて否定判断された場合、S306にて駆動モードとし、S307にて定数切替処置を行う。
本実施形態では、協調駆動または独立駆動にて2系統で駆動している場合と、1系統で駆動している場合とで、一部の制御定数を異ならせている。例えば、電流フィードバック制御にてPI制御を行っている場合、Pゲインをモータインダクタンスに応じて設計している。2系統駆動時と1系統駆動時とでは、系統間の相互インダクタンスの影響が異なるため、最適な値が異なる。したがって、本実施形態では、2系統駆動時と1系統駆動時とで、Pゲインを異なる値としている。
Vq=R×Iq+(L+M)×dIq/dt ・・・(1)
式(1)中のVqはq軸電圧、Iqはq軸電流、Rはモータ抵抗、Lはモータ自己インダクタンス、Mはモータ相互インダクタンスを示す。式(1)中の(L+M)の部分が2系統駆動時と1系統駆動時とで異なる。
S304にて否定判断されて片系統駆動モードに移行する場合、マイコン間通信とCAN通信との二重故障が生じている虞があり、この場合、S306では、片系統駆動モードに移行するものの、実際には2系統で駆動される可能性がある。ここで、片系統駆動用のPゲインを用いると、実際の通電状況との不整合により、電流制御が不安定になる虞がある。そこで本実施形態では、CAN通信途絶にて片系統駆動モードに移行する場合、定数切替処置を行い、通常の片系統駆動モードとは異なるPゲインを用いて制御を行う。本実施形態では、CAN通信途絶にて片系統駆動モードに移行する場合、独立駆動モード用のPゲインを用いる。
本実施形態では、制御部150、250は、通信網302を経由した他の制御部からの情報の途絶により通常時と駆動モードを変更する場合、通信網302を経由した他の制御部からの情報途絶以外の条件にて駆動モードを変更する場合と異なる制御定数を用いる。本実施形態にて変更する制御定数は電流フィードバック制御のPゲインであるが、それ以外の値を変更してもよい。これにより、通信網302の異常が生じていた場合の制御の不整合を防ぐことができる。
(第4実施形態)
第4実施形態を図13~図15に示す。上記実施形態では、他系統の状態を通信網302から相互に取得し、それぞれの制御部150、250で異常判定を行い、駆動モードを選択する。図13は、図9に対応する図であって、本実施形態では、通信網302に接続される制御部150、250とは別のECU等である外部制御部350にて制御部150、250の状態を判定する。制御部150、250は、外部制御部350から通信網302を経由して判定結果を受信して駆動モードを切り替える。外部制御部350は、例えば車両全体の制御を司る上位ECUや、自動運転制御を司る自動運転ECU等とすることができる。
外部制御部350での状態判定処理を図14のフローチャートに基づいて説明する。この処理は、外部制御部350にて所定の周期で実行される。S451では、外部制御部350は、第1制御部150の通信状態が異常か否か判断する。ここでは、外部制御部350は、第1制御部150からの正常情報が通信網302から取得されれば正常判定し、第1制御部150からの情報が途絶判定期間に亘って途絶している場合、異常判定する。第2制御部250についても同様に判定する。第1制御部150の通信状態が正常であると判断された場合(S451:NO)、S454へ移行する。第1制御部150の通信状態が異常であると判断された場合(S451:YES)、S452へ移行する。
S452では、外部制御部350は、第2制御部250の通信状態が異常か否か判断する。第2制御部250の通信状態が異常であると判断された場合(S452:YES)、制御部150、250が共に通信異常状態であるので、駆動モード要求の送信を行わず、本ルーチンを終了する。第2制御部250の通信状態が正常であると判断された場合(S452:NO)、S453へ移行する。S453では、外部制御部350は、駆動モード要求として、第2系統L2での片系統駆動モードを通信網302に送信する。
第1制御部150の通信状態が正常である場合(S451:NO)に移行するS454では、外部制御部350は、第2制御部250の通信状態が異常か否か判断する。第2制御部250の異常であると判断された場合(S454:YES)、S455へ移行し、駆動モード要求として、第1系統L1での片系統駆動モードを通信網302に送信する。第2制御部250の通信状態が正常であると判断された場合(S454:NO)、両系統共の通信状態が正常であるので、駆動モード要求の送信を行わず、本ルーチンを終了する。
制御部150、250での駆動モード選択処理を図15のフローチャートに基づいて説明する。ここでは、第1制御部150での処理として説明し、第2制御部250での処理の説明を省略する。S401およびS402の処理は、図10中のS101およびS102の処理と同様である。
マイコン間通信が異常である場合に移行するS403では、第1制御部150は、外部制御部350からの駆動モード要求が自系統での片系統駆動モードか否かを判断する。ここでは、外部制御部350からの駆動モード要求が取得されていない場合も否定判断する。駆動要求モードが自系統での片系統駆動モードであると判断された場合(S403:YES)、S404へ移行し、駆動モードを自系統での片系統駆動モードとする。なお、ここでは、第2実施形態のように、アシスト制御開始後であれば、出力維持判定条件を満たしているものとし、自系統の出力を通常時と同等にし、出力維持判定条件が非成立になったときに出力を高めるようにしてもよい。また、S404を、CAN通信途絶にて片系統駆動モードに移行しているとみなし、独立駆動モード用のPゲインを用いてもよい。駆動要求モードが自系統での片系統駆動モードではないと判断された場合(S403:NO)、S405へ移行し、駆動モードを独立駆動モードとする。
通信網302は、制御部150、250との通信状態に応じて駆動モードを決定する外部制御部350と接続される。制御部150、250は、通信網302を経由して外部制御部350から送信される駆動要求モードに基づき、駆動モードを選択する。これにより、制御部150、250がそれぞれ異なる通信網に接続されている場合であっても、他系統の状態に応じて適切に駆動モードを選択することができる。
上記実施形態では、ECU10が「回転電機制御装置」、モータ80が「回転電機」、マイコン間通信部301が「第1通信部」、通信網302が「第2通信部」に対応する。ここで、「第1通信部による通信の異常」とは、通信そのものの異常に加え、制御部の異常により他の制御部からの情報を取得できない場合を含む。また、「第2通信部からの情報を用いて回転電機の駆動モードを選択する」とは、第2通信部からの情報が途絶していることを駆動モードの選択に用いることも含む。また、第2通信部を経由した他の制御部からの情報が途絶しているか、情報を取得可能であるかの判定は、外部制御部350にて行ってもよい。
(他の実施形態)
上記実施形態では、他系統リレー監視により、他系統の動作状態を監視する。他の実施形態では、他系統リレー監視による他系統の動作状態の監視を省略してもよい。この場合、図10中のS103の処理を省略してもよい。
上記実施形態では、第2通信部として、ECU10の外部の車両通信網を用いている。他の実施形態では、第2通信部は、制御部150、250間にて通信可能であって、マイコン間通信部301とは別途にECU10の内部にて設けられるものであってもよい。
上記実施形態では、協調駆動モードにおいて、電流指令値、電流検出値および電流制限値を系統間で共有する。他の実施形態では、協調駆動モードにおいて、電流制限値を共有しなくてもよい。上記実施形態では、第1制御部150をマスター制御部、第2制御部250をスレーブ制御部とし、協調駆動モードにおいて、第1制御部150にて演算された電流指令値を制御部150、250にて共通に用いる。他の実施形態では、電流指令値を共有せず、協調駆動モードにおいても、自系統の電流指令値を用いてもよい。また、電流指令値、電流検出値および電流制限値以外の値を共有してもよい。
上記実施形態では、モータ巻線、インバータ部および制御部が2つずつ設けられる。他の実施形態では、モータ巻線は、1つまたは3つ以上であってもよい。また、インバータ部および制御部が3つ以上であってもよい。また、例えば複数のモータ巻線およびインバータ部に対して1つの制御部を設ける、或いは、1つの制御部に対して複数のインバータ部およびモータ巻線を設ける、といった具合に、モータ巻線、インバータ部および制御部の数が異なっていてもよい。上記実施形態では、系統ごとに電源が設けられており、グランドが分離されている。他の実施形態では、1つの電源を複数系統にて共用してもよい。また、複数の系統が共通のグランドに接続されていてもよい。
上記実施形態では、回転電機は、3相のブラシレスモータである。他の実施形態では、回転電機は、ブラシレスモータに限らない。また、発電機の機能を併せ持つ、所謂モータジェネレータであってもよい。上記実施形態では、回転電機制御装置は、電動パワーステアリング装置に適用される。他の実施形態では、回転電機制御装置を、ステアバイワイヤ装置等、操舵を司る電動パワーステアリング装置以外の操舵装置に適用してもよい。また、操舵装置以外の車載装置、または、車載以外の装置に適用してもよい。
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。