JP7270407B2 - 建築板 - Google Patents

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本発明は、主として、床材などの内装材や棚板などの家具材として使用される建築板に関し、特に、店舗や住宅などにおいて、店主や家主のこだわり(コンセプト、趣味嗜好など)に応じて新品でありながらビンテージ感を醸し出すことのできる建築板に関する。
「ビンテージ」とは「年代物」、「古くて価値がある」、「年月を経てほど良く味わいが出ている」などの意味を表す語であるが、近年では、趣味や価値観の多様化に伴い、新品であっても「ビンテージ」もののような外観や印象(ビンテージ感)を与えることに対する要望が強くなってきている。
床材などの内装材や棚板などの家具材に代表される建築材についても、ビンテージ感のある製品が望まれるようになり、従来は、通常の方法によって製造した建築材に対してエイジング加工(シャビー加工、アンティーク加工などとも呼ばれる。)を施すことによってビンテージ感を表現している。エイジング加工は、新品の製品に対して長年使い込んできたような外観ないし印象(ビンテージ感)を与える加工であり、木製品について言えば、新品を塗装した後、その塗装面をデザイン性に考慮しながら削り、さらに、汚れや劣化した色を想定した主としてブラウン基調のステイン(色素が素材に染み込んで着色される着色剤)で仕上げ塗装する工程からなる(非特許文献1)。
特開2011-183631号公報 特許第5754836号公報(段落0005)
DIYer(s)、「新品の木材を海外の古材っぽく加工する方法」、[online]、平成28年6月3日、[平成31年1月15日検索]、インターネット(URL:https://diyers.co.jp/articles/oldboard_a)
しかしながら、上記従来技術のようなビンテージ加工は手作業による幾つかの工程を要し、工業製品として大量生産するにはコスト的に見合わない。本発明者らは、このような加工を行わずにビンテージ感を醸し出すことができる新規の手法を模索していく中で、針葉樹材からなる木質材を圧密処理して得た建築板に着目した。
従来の木質材の圧密処理としては、店舗などで使用される土足対応可能な床材において表面が硬く傷がつきにくいものとするために、主として無垢材を対象として、一対の加熱プレート間に対象材を挟んで両側から長時間圧縮することにより、全体を略均一に圧縮して硬度を増大させることが、特許文献1などに公知である。
しかしながら、特許文献2に記載されるように、節を有する木材(無垢材)を圧密処理すると、1)節部を圧密しきれないので、節部表面が膨れた状態となり、平滑にならない、2)節部に割れや亀裂が発生する、3)節部から溶出したヤニ等の樹脂分が平板プレス機の熱盤に付着し、圧密木材を熱盤から容易に取り出すことができなくなる、4)節部が黒褐色になり、意匠感を損なう、5)圧密する際に、平板プレス機の熱盤の表面を窪ませてしまう等の問題が発生する(段落0005の記載から抜粋)ことから、節を有する木材は圧密処理には適さないものと考えられていた。
本出願人は、良質な広葉樹単板が枯渇化している現状に鑑みて、少なくとも最表面の単板が針葉樹単板からなる合板を圧密処理することを検討した。針葉樹単板には節を有するものが多く、特に日本農林規格(JAS)の「普通合板の表板に針葉樹単板を用いたものの板面の品質の基準」のB、CまたはDのいずれかの針葉樹単板は比較的大きな寸法の生き節、死に節、抜け節などを多数有している。より詳しくは、合板の日本農林規格(JAS)の第4条第1項には普通合板の規格が定められており、普通合板の表板に針葉樹単板を用いた場合の板面の品質基準を定める第4条第5項によれば、生き節、死に節、抜け節や、穴、埋め木、入り皮、やにつぼ、腐れ、開口した割れ、横割れ、虫穴などの有無や大きさなどによって品質基準がA~Dに分類されている。この中で品質基準Aが最も品質が良く、生き節、死に節、抜け節などの欠損が少なく、その寸法も小さいが、品質基準B~Dになると、その順に品質が低下し、生き節、死に節、抜け節などの欠損が多くなり、その寸法も大きくなる(図4参照)。このような品質基準B~Dの針葉樹単板は、従来、床材などの内装材や棚板などの家具材として使用するには適しないものとされていたが、考察と実験を重ねた結果、このような針葉樹単板であっても圧密処理することにより、生き節、死に節、抜け節などの欠損を生かしてビンテージ感を有する斬新な外観表面が得られることの知見を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、生き節、死に節、抜け節などを多数有する針葉樹単板を少なくとも最表面に有する木質積層板を圧密処理して店舗フロアや家具、棚板などに好適に用いることができるビンテージ調の建築板を提供することである。従来の針葉樹合板などの表面単板には、生き節、死に節、抜け節などが少数で寸法も小さい上記JAS品質基準Aの針葉樹単板が用いられており、品質基準B、C、Dの針葉樹単板は、少なくとも表面単板としては用いることができないものと認識されていたが、本発明では、この従来の技術常識から脱却し、表面単板として上記JASによる品質基準B、CまたはDに該当する針葉樹単板を使用し、該表面単板に多数内在する大きな欠損を積極的に生かして斬新な表面模様を有する建築板を提供しようとするものである。
上記課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、少なくとも最表面の単位構成板が日本農林規格(JAS)の「普通合板の表板に針葉樹単板を用いたものの板面の品質の基準」のB、CまたはDのいずれかである針葉樹単板からなる木質積層板を圧密処理して得られる建築板であって、1)最表面の単位構成板の生き節または/および死に節が表面から2枚目の単位構成板に喰い込んで形成される節の模様、および/または、2)最表面の単位構成板の抜け節に、表面から2枚目の単位構成板の前記抜け節に対向する部分が変形して入り込んで形成される穴埋部が、建築板の表面模様として現れることを特徴とする。
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の建築板において、前記木質積層板において単位構成板同士がフェノール系接着剤で接着されていることを特徴とする。
請求項3に係る本発明は、請求項1または2記載の建築板において、前記木質積層板が針葉樹合板または針葉樹LVLまたはこれらの任意複合板であることを特徴とする。
本発明による建築板は、木質積層板を圧密処理して得られるので、木質積層板の各単位構成板が圧縮されて密度が大きくなると共に、板全体も圧縮されて密度が大きくなるので、板全体の強度が増大し、且つ、表面硬度も増大して傷付きにくいものとなる。したがって、通常の床材としてだけでなく、店舗などで使用される土足対応可能な床材としても有効に使用することができる。
また、一般に普及している針葉樹合板などにおいてはJASの上記品質基準Aに該当する良質な針葉樹単板が最表面の単板に用いられているのに対し、本発明による建築板は、少なくとも最表面に位置する単位構成板に、比較的大きな寸法の生き節、死に節、抜け節などを多数有するJASの上記品質基準B~Dの針葉樹単板を用いてなる木質積層板を圧密処理して得られるものであるが、最表面の品質基準B~Dの針葉樹単板が有する生き節や死に節は圧密によってその周囲が密接して欠落が防止され、また、抜け節は圧密時にその下方に隣接する単位構成板の一部が入り込んで穴埋部が形成される。圧密後には最表面の針葉樹単板の表面全体が平滑かつ面一に形成されるので、パテ剤などで充填処理する必要がなく、衣類などを引っ掛けることもない。
また、第一単位構成板において、抜け節以外の部分は大きく圧縮されて密度が大きくなるので表面が濃い色に観察されるのに対し、抜け節の部分には第二単位構成板の一部が入り込むだけでほとんど圧縮されず、密度も変わらないので表面が薄い色に観察され、第一単位構成板の表面に濃淡差が生じる。これにより、新品でありながら長年使い込まれて傷や日焼け、汚れなどにより劣化したかのような外観が得られ、荒々しくビンテージ感が強調された独特の風合いが醸し出される。第一単位構成板に品質基準Aの針葉樹単板を用いた木質積層板を用いた場合、生き節や死に節が圧密によって欠落が防止されると共に、抜け節に下方の単位構成板の一部が入り込んで穴埋部が形成される効果は同様に発揮されるが、これらの欠損の個数が少なく且つ寸法も小さいため、微細な斑点状の模様として観察されるにすぎず、ビンテージ感が強調された外観を与えることができない(図4参照)。
さらに、本発明の一実施形態(請求項2)によれば、単位構成板同士がフェノール接着剤で接着されてなる木質積層板が用いられる。合板などの木質積層板において単位構成板同士を接着する接着剤としては、通常、ユリア樹脂接着剤、メラミン共縮合樹脂接着剤、フェノール系樹脂接着剤などから適宜選択して用いられているが、フェノール系樹脂は赤褐色であるため、圧密処理によって密度が大きくなると濃い赤褐色に変色する。このため、フェノール接着剤を用いて単位構成板同士が接着された木質積層板を圧密すると、第二単位構成板の一部が第一単位構成板の抜け節に入り込んで穴埋部を形成したときに、穴埋部の表面に、第二単位構成板の表面に塗布されて圧密によって濃い赤褐色に変色したフェノール接着剤が現れ、本物の節(濃い赤褐色ないし黒色)のように見え、さらにビンテージ感が強調的に表現される。単位構成板同士を接着する接着剤がユリア樹脂接着剤やメラミン共縮合樹脂接着剤である場合、これらは無色透明であるため、穴埋部の表面も他の(穴埋部以外の)表面と同じような色になり、本物の節のような色に呈色しない。
本発明の一実施形態における圧密処理前の9プライ針葉樹合板の単板積層状態を示す斜視図である。この図において、第三単板から第八単板は図示省略され、また、最裏面の単板の木目は図示省略されている。 図1の9プライ針葉樹合板を圧密処理して得られる本発明の一実施形態による建築板(圧密合板)を示す斜視図である。 図2に示す圧密合板を第二単板の穴埋部で切断したA-A断面図(図3(b))、および、圧密前の9プライ針葉樹合板における同部分の断面図(図3(a))である。 JASによる基準A~Dの表板における生き節、死に節の数および大きさの相違状態を示す説明図である。この図において、黒丸は生き節、白丸は死に節を示しており、各基準における最大個数、最大寸法の生き節、死に節を1m(50×200cm)の範囲にランダムに分布させて図示したものである。
図1ないし図3を参照して、本発明の一実施形態による建築板について説明する。この建築板10は、9枚の針葉樹単板11a~11iを繊維方向を互い違いに直交させて積層した9プライ針葉樹合板12(図3(a)を常法(たとえば特許文献1の段落0063~0077に記載)により圧密処理して得た圧密合板13とし、必要に応じて塗装などによる表面化粧層(図示省略)を形成することによって得られる。
より詳しく説明すると、この建築板10は、9枚のヒノキ単板11a~11iからなる9プライ針葉樹合板12(たとえば、厚さ24mmまたは28mm、平面寸法910mm×1820mm)であってその最表面に位置する第一単板11aとしてJASの上記品質基準がB、CまたはDのいずれかに該当するヒノキ単板を用いたものを約1/2の厚さ(12mmまたは14mm)に圧密処理して得た圧密合板13に対し、表面切削および実加工を施す(床材として使用する場合)と共に塗装による表面化粧層を形成して、建築板10としたものである。
ヒノキのような針葉樹の単板には生き節、死に節、抜け節などを有するものが多く、特に日本農林規格(JAS)の「普通合板の表板に針葉樹単板を用いたものの板面の品質の基準」のB、C、Dの針葉樹単板は、比較的大きな寸法の生き節、死に節、抜け節などを多数有している。以下、説明の便宜上、第一単板11aは大きな抜け節14を有するものとする。
この9プライ針葉樹合板12を常法により上下熱盤間で圧縮率約50%で圧密処理すると、全体が約1/2の厚さに圧縮される。このとき、第一単板11aの抜け節14以外の部分では、各単板11a~11iが略均等に約50%の圧縮率で圧縮され、密度が大きくなって濃色部16として観察されるのに対し、第一単板11aの抜け節14の部分には、その直下に隣接する第二単板11bの部分11b’が第一単板11aの抜け節14に入り込むことになるが、抜け節14以外の部分に比べると第一単板11aが存在しない分だけ圧縮率が低下し、密度も大きく変化しないので、圧密処理前とほぼ同じ明度の薄い色に観察され、第一単板11aの表面に、抜け節14に対応して形成される薄い色の穴埋部15と、その他の濃色部16とで濃淡差が生じる。これにより、新品でありながら長年使い込まれて傷や日焼け、汚れなどにより劣化したかのような外観が得られ、荒々しくビンテージ感が強調された独特の風合いが醸し出される。
また、圧密処理後の建築板10の表面において、第一単板11aの抜け節14に対応して形成される穴埋部15の表面15aには第二単板11bの表面が現れるが、9プライ針葉樹合板12製造の際に第一単板11aと第二単板11bとの間に塗布された接着剤が硬化した被膜を介して観察されることになる。すなわち、該接着剤として赤褐色であるフェノール系樹脂接着剤が用いられた9プライ針葉樹合板12を圧密処理すると、圧密によって密度が大きくなって濃く変色した第二単板11bの一部b’が第一単板11aの抜け節14に入り込んで穴埋部15を形成するので、圧密によって密度が大きくなって濃い赤褐色に変色したフェノール系接着剤が該穴埋部15の表面に現れ、本物の節(濃い赤褐色ないし黒色)のように見え、さらにビンテージ感が強調的に表現される。
なお、図示実施形態では、第一単板11aが単一の抜け節14を有するものとして示されているが、JASの上記基準によるB、C、Dの針葉樹単板には多数の抜け節14を有するものが多い。この場合は、各抜け節14に対応して穴埋部15が形成され、濃色部16との間で表面に複雑な濃淡が表現されることになる。
また、建築板10の裏面側について見ると、最裏面の単板11iに抜け節14がある場合、圧密後に、最裏面の単板11iにおいて、同様に、抜け節14に対応する穴埋部15が形成され、その周囲の濃色部16との間で濃淡が観察されることになる。ただし、たとえばこの建築板10が床材や家具の面材などに用いられる場合は、裏面側の外観は実際上問題とならない。
また、図示実施形態では、第一単板11aの抜け節14が圧密処理によって穴埋部15となってビンテージ感を表現することについて説明したが、第一単板11aに生き節や死に節がある場合は、圧密処理によって節が第二単板11bに喰い込み、また、密度が大きくなった周囲の部分が密接することにより欠落が防止され、節の模様が表現されて木質感が強調される。また、第一単板11aが生き節、死に節、抜け節を有していても、圧密処理後にはこれらの部分を含めて全体に平滑な表面が形成されるので、パテ剤などで充填処理する必要がなく、衣類などを引っ掛けることもない。
以上に本発明の一実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において変形ないし変更して実施可能である。
既述した作用効果は、単板を繊維方向を直交させて複数枚積層してなる合板に限らず、単板を繊維方向を平行にして複数枚積層してなるLVL(単板積層材)など、最表面に位置する単位構成板(針葉樹単板)がJASの上記基準によるB、C、Dのいずれかに該当する木質積層板を圧密処理した場合にも同様に発揮されるものであるから、本発明はこれらの木質積層板を対象として適用可能であり、同様に独特の濃淡差のある模様を有するビンテージ調の外観を表現することができる。
10 建築板
11a~11i 針葉樹単板(単位構成板)
11b’ 圧密処理により第一単板の抜け節に入り込んだ第二単板の部分
12 圧密処理前の9プライ針葉樹合板(木質積層板)
13 圧密処理後の9プライ針葉樹合板(圧密合板)
14 第一単板の抜け節
15 第一単板の抜け節に対応して形成される穴埋部
15a 穴埋部の表面
16 濃色部

Claims (3)

  1. 少なくとも最表面の単位構成板が日本農林規格(JAS)の「普通合板の表板に針葉樹単板を用いたものの板面の品質の基準」のB、CまたはDのいずれかである針葉樹単板からなる木質積層板を圧密処理して得られる建築板であって、1)最表面の単位構成板の生き節または/および死に節が表面から2枚目の単位構成板に喰い込んで形成される節の模様、および/または、2)最表面の単位構成板の抜け節に、表面から2枚目の単位構成板の前記抜け節に対向する部分が変形して入り込んで形成される穴埋部が、建築板の表面模様として現れることを特徴とする建築板。
  2. 前記木質積層板において単位構成板同士がフェノール系接着剤で接着されていることを特徴とする、請求項1記載の建築板。
  3. 前記木質積層板が針葉樹合板または針葉樹LVLまたはこれらの任意複合板であることを特徴とする、請求項1または2記載の建築板。
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