JP7270056B2 - アルミニウム合金ダイカスト、ダイカストユニット及びその製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金ダイカスト、ダイカストユニット及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、接合部材が圧入されるアルミニウム合金ダイカスト、接合部材がアルミニウム合金ダイカストに固定されたダイカストユニット及びその製造方法に関するものである。
例えば、自動車ボディを軽量化するために、自動車ボディの鋼板の一部をアルミニウム合金ダイカストに変更する場合、その鋼板とアルミニウム合金ダイカストとを接合する必要がある。異種金属同士をスポット溶接などにより接合すると脆い金属間化合物が形成されてしまうため、鋼板とアルミニウム合金ダイカストとを重ねた部分にセルフピアスリベットなどの接合部材を圧入して、鋼板とアルミニウム合金ダイカストとを機械的に接合することがある。
このように、アルミニウム合金ダイカストの被圧入部の表面に接合部材を圧入してダイカストユニットを製造するとき、被圧入部の裏面が延び変形するため、アルミニウム合金の組成などにもよるが、被圧入部の裏面に割れが発生することがある。特許文献1には、鋳造後のアルミニウム合金ダイカストに熱処理を施してアルミニウム合金ダイカストの延性を向上することで、被圧入部の裏面に割れを生じ難くすることが記載されている。特許文献1では、鋳造後のアルミニウム合金ダイカストを460~500℃で0.25~1.5時間保持して空冷した後、180℃で3時間保持する熱処理を行っている。
特開2010-90459号公報
しかしながら、上記従来の技術のような熱処理条件で、例えば、自動車ボディに使われる比較的大きなアルミニウム合金ダイカスト全体に熱処理(溶体化処理)を施す場合には、その熱処理に伴うアルミニウム合金ダイカストの変形を防止する治具にアルミニウム合金ダイカストを固定することがあり、大きな熱処理空間が必要になることがある。特に生産数が多い車種に用いられるアルミニウム合金ダイカストにおいて、多くのアルミニウム合金ダイカストに熱処理を施す大型の熱処理炉が必要になったり、その熱処理炉を配置するための大きな建屋が必要になったりすることがある。このようにして、アルミニウム合金ダイカストのうち被圧入部以外の本体部まで加熱されると、その本体部の加熱に要する熱エネルギーが無駄になったり、アルミニウム合金ダイカスト全体を加熱する大型の設備が必要になったりする等の問題点がある。
また、本体部の内部にガスが鋳包まれている場合には、本体部が加熱されると、本体部にブリスターが発生することがある。そこで本体部にガスが鋳包まれないよう、アルミニウム合金ダイカストを高真空ダイカスト法などの特殊ダイカスト法で鋳造する必要があったり、蒸発してガスとなる離型剤などの使用量を減らす必要があったりすることがある。さらに、本体部の加熱時に本体部が変形することがあるため、変形を防止するための治具で本体部を加熱時に保持する必要があったり、加熱後に本体部の変形を矯正する工程が必要になったりすることがある。加熱後の冷却(焼き入れ)時に本体部が変形することを防止するために、加熱後のアルミニウム合金ダイカストを水冷せず、大量の空気を衝突させてアルミニウム合金ダイカストを冷却する衝風冷却を用いることがある。また、加熱された本体部の延性が向上して、その本体部の耐力が低下するおそれ等の課題がある。
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、本体部の耐力を確保しつつ被圧入部を割れ難くできると共に製造時に本体部への熱処理を不要にできるアルミニウム合金ダイカスト、ダイカストユニット及びその製造方法を提供することを目的とする。
この目的を達成するために本発明のアルミニウム合金ダイカストは、質量比で、7.5~11.5%のSiと、0.1~0.6%のMgと、0.2~0.9%のMnと、0.2%以下のTiと、0.1%以下のSrと、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金製であって、接合部材が圧入される圧入表面と、前記圧入表面の反対側に位置する圧入裏面とを有する被圧入部と、前記圧入表面の縁に連なる本体表面と、前記圧入裏面の縁に連なる本体裏面とを有して前記被圧入部と一体成形されている本体部と、を備え、前記圧入裏面のロックウェル硬さHRFを平均した前記被圧入部の平均硬さは、前記本体表面または前記本体裏面のロックウェル硬さHRFを平均した前記本体部の平均硬さよりも小さい。
また、本発明のアルミニウム合金ダイカストは、質量比で、7.5~11.5%のSiと、0.1~0.6%のMgと、0.2~0.9%のMnと、0.2%以下のTiと、0.1%以下のSrと、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金製であって、接合部材が圧入される圧入表面と、前記圧入表面の反対側に位置する圧入裏面とを有する被圧入部と、前記圧入表面の縁に連なる本体表面と、前記圧入裏面の縁に連なる本体裏面とを有して前記被圧入部と一体成形されている本体部と、を備え、前記圧入裏面からの深さが0.02mm~0.5mmの範囲における前記被圧入部の初晶Al以外の結晶の平均円形度が、前記本体表面または前記本体裏面からの深さが0.02mm~0.5mmの範囲における前記本体部の初晶Al以外の結晶の平均円形度よりも大きい。
また、本発明のダイカストユニットの製造方法は、質量比で、7.5~11.5%のSiと、0.1~0.6%のMgと、0.2~0.9%のMnと、0.2%以下のTiと、0.1%以下のSrと、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金製のアルミニウム合金ダイカストと、前記アルミニウム合金ダイカストの圧入表面に圧入される接合部材と、を備えるダイカストユニットを製造する方法であって、前記アルミニウム合金ダイカストの一部を加熱し、その加熱部分のうち前記圧入表面の反対側の圧入裏面の中心が420℃以上になったら加熱を終了することで、前記加熱部分を被圧入部とする加熱工程と、前記加熱工程後から所定時間以内に、前記被圧入部の前記圧入表面に前記接合部材を圧入し、前記被圧入部の前記圧入裏面を延び変形させる圧入工程と、を備えている。
なお、本発明のアルミニウム合金ダイカストは、前記被圧入部の平均硬さが前記本体部の平均硬さよりも小さいことと、前記被圧入部の初晶Al以外の結晶の平均円形度が前記本体部の初晶Al以外の結晶の平均円形度よりも大きいこととを両立しても良い。
請求項1記載のアルミニウム合金ダイカストは、圧入裏面のロックウェル硬さHRFを平均した被圧入部の平均硬さが、本体表面または本体裏面のロックウェル硬さHRFを平均した本体部の平均硬さよりも小さい。基本的に平均硬さが小さい程、その物体の延性が高くなるので、被圧入部に接合部材を圧入して被圧入部が延びる場合に、被圧入部を割れ難くできる。さらに、被圧入部の延性と比べて本体部の延性が低いので、本体部の耐力の低下を防ぎ所定の耐力を確保できる。
アルミニウム合金ダイカストは、質量比で、7.5~11.5%のSiと、0.1~0.6%のMgと、0.2~0.9%のMnと、0.2%以下のTiと、0.1%以下のSrと、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金製である。このような組成のアルミニウム合金では、鋳造後のアルミニウム合金ダイカストに熱処理を施さないと、アルミニウム合金ダイカストの延性が低く、アルミニウム合金ダイカストに接合部材が圧入されて延びた部分に割れが発生し易くなる。この組成のアルミニウム合金ダイカストの被圧入部の延性が本体部の延性よりも高くなっているので、接合部材が圧入される被圧入部を割れ難くするために被圧入部に熱処理を施して、接合部材が圧入されない本体部に熱処理を施さずに、アルミニウム合金ダイカストを製造したことが分かる。
アルミニウム合金ダイカストの製造時に本体部への加熱が不要なので、本体部の加熱に要する熱エネルギーを削減できると共に、アルミニウム合金ダイカスト全体を加熱する大型の熱処理炉や、その熱処理炉を配置するための大型の建屋を不要にできる。さらに、被圧入部の加熱条件などにもよるが、本体部が加熱されていないので、本体部にガスが鋳包まれていても、本体部にブリスターを発生し難くできる。そして、ブリスターの原因となるガスが本体部に鋳包まれないように、高真空ダイカスト法などの特殊ダイカスト法でアルミニウム合金ダイカストを鋳造する必要がなくなって、大きな真空装置や金型内の真空シールなどを省略できる可能性がある。さらに、溶湯と反応してガス化する離型剤中の潤滑成分などの使用量や、溶湯と反応してガス化するチップ潤滑剤の使用量を減らしたりする必要がなくなって、生産速度を速くしても鋳造トラブルを生じ難くでき、不良の少ないアルミニウム合金ダイカストの時間当たりの生産数を増加できる可能性がある。また、本体部への加熱を不要にできるので、被圧入部の加熱時に本体部が変形することを抑制できる。そして被圧入部の加熱時に本体部が変形しなければ、加熱時に本体部の変形を防止するための治具を不要にできると共に、加熱後に本体部の変形を矯正する工程を不要にできる。
請求項2記載のアルミニウム合金ダイカストによれば、請求項1記載のアルミニウム合金ダイカストの奏する効果に加え、次の効果を奏する。被圧入部の平均硬さは、本体部の平均硬さに対して10%以上小さい値である。これにより、本体部の耐力を確保しつつ、被圧入部の延性をより向上して被圧入部をより割れ難くできる。
請求項3記載のアルミニウム合金ダイカストは、質量比で、7.5~11.5%のSiと、0.1~0.6%のMgと、0.2~0.9%のMnと、0.2%以下のTiと、0.1%以下のSrと、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金製である。そのため、アルミニウム合金ダイカストには、初晶Alと、初晶Al以外の共晶Si結晶などの結晶とが形成されている。この初晶Al以外の結晶の円形度が大きく1に近い程(真円に近い程)、その初晶Al以外の結晶の近傍での亀裂の発生を抑制できる。そのため、所定部位の初晶Al以外の結晶の円形度を平均した平均円形度が大きい程、その所定部位の延性を向上できる。そして、圧入裏面からの深さが0.02~0.5mmの範囲における被圧入部の初晶Al以外の結晶の平均円形度が、本体表面または本体裏面からの深さが0.02~0.5mmの範囲における本体部の初晶Al以外の結晶の平均円形度よりも大きい。これにより、被圧入部と比べて本体部の耐力を確保しつつ、本体部に対して被圧入部の延性を高くして被圧入部を割れ難くできる。
そして、上記組成のアルミニウム合金では、鋳造後のアルミニウム合金ダイカストに熱処理を施さないと、アルミニウム合金ダイカストの延性が低く、アルミニウム合金ダイカストに接合部材が圧入されて延びた部分に割れが発生し易くなる。この組成のアルミニウム合金ダイカストの被圧入部の延性が本体部の延性よりも高くなっているので、接合部材が圧入される被圧入部を割れ難くするために被圧入部に熱処理を施して、接合部材が圧入されない本体部に熱処理を施さずに、アルミニウム合金ダイカストを製造したことが分かる。その結果、被圧入部の加熱に伴う本体部への熱影響を抑制して本体部の変形やブリスター発生などを抑制できる等の効果を奏する。
請求項4記載のアルミニウム合金ダイカストによれば、請求項3記載のアルミニウム合金ダイカストの奏する効果に加え、次の効果を奏する。圧入裏面からの深さが0.02~0.5mmの範囲における被圧入部の初晶Al以外の結晶の平均円形度が0.48以上である。これにより、被圧入部の延性をより向上して被圧入部をより割れ難くできる。
請求項5記載のアルミニウム合金ダイカストによれば、請求項1から4のいずれかに記載のアルミニウム合金ダイカストの奏する効果に加え、次の効果を奏する。圧入表面または圧入裏面は、周囲の部位に対して結晶構造が異なる溶融部を備えている。これにより、圧入表面または圧入裏面の極表層のみが溶融するような高出力で短時間に圧入表面または圧入裏面が加熱されることで、本体部に対して延性が高い被圧入部が形成されたことが分かる。よって、熱伝導率が高いアルミニウム合金ダイカストの一部を短時間で加熱して被圧入部を形成できるので、アルミニウム合金ダイカストの製造時に必要な熱エネルギーをより削減できると共に、被圧入部の加熱に伴う本体部への熱影響を抑制して本体部の変形やブリスター発生などを抑制できる等の効果を奏する。
さらに、溶融部を確認することによって、溶融部が形成されている部分が加熱されて被圧入部が形成されたこと、被圧入部が形成されている位置などを容易に確認できると共に、溶融部を目印にして接合部材を被圧入部に圧入できる。
請求項6記載のダイカストユニットは、請求項1から5のいずれかに記載のアルミニウム合金ダイカストに接合部材が固定されたものである。圧入表面の一部が凹んだ部分に接合部材が嵌まり、接合部材の反対側に位置する圧入裏面の一部が突出している。このダイカストユニットによれば、請求項1から5のいずれかに記載のアルミニウム合金ダイカストの奏する効果と同様の効果を奏する。
請求項7記載のダイカストユニットの製造方法によれば、加熱工程において、アルミニウム合金ダイカストの一部を加熱し、その加熱部分の圧入裏面の中心が420℃以上になったら加熱を終了することで、加熱部分を被圧入部とする。このように、接合部材が圧入されない被圧入部以外の部位への加熱を不要にしつつ、接合部材が圧入される被圧入部の延性を加熱によって向上できる。被圧入部以外の部位を加熱しないことで、被圧入部以外の部位の耐力を確保できると共に、加熱に伴う被圧入部以外の部位の変形やブリスターの発生を抑制できる等の効果を奏する。
但し、加熱工程の条件によっては、加熱工程後から所定時間が経過すると被圧入部の延性が低下することがあり、被圧入部の圧入表面に接合部材を圧入して被圧入部の圧入裏面が延び変形したときに、被圧入部の圧入裏面に割れが発生し易くなることがある。そこで、圧入工程では、加熱工程後から所定時間以内に、被圧入部の圧入表面に接合部材を圧入し、被圧入部の圧入裏面を延び変形させる。その結果、接合部材が圧入されるときに被圧入部の圧入裏面を割れ難くできる。
請求項8記載のダイカストユニットの製造方法によれば、請求項7記載のダイカストユニットの製造方法の奏する効果に加え、次の効果を奏する。加熱工程では、加熱部分の圧入裏面の中心が50℃以下の状態から420℃以上になるまでの加熱時間が60秒以内であるので、加熱されて形成された被圧入部以外の部位への熱影響を抑制できる。その結果、加熱部分にガスが巻き込まれたとしても、加熱部分(被圧入部)にブリスターを発生し難くできると共に、被圧入部以外の部位の変形やブリスターの発生をより抑制できる等の効果を奏する。また、アルミニウム合金ダイカストの全体を数時間加熱する場合と比べて、1個のアルミニウム合金ダイカストへの加熱時間を短縮できるので、少ない加熱設備で多くの製品を加熱処理できる。
(a)は一実施形態におけるダイカストユニットを含む接合体の斜視図であり、(b)は図1(a)のIb-Ib線における接合体の断面図である。 接合体の製造方法を示す説明図である。 (a)は合金1におけるアルミニウム合金ダイカストの各部の硬さを示す説明図であり、(b)は合金2におけるアルミニウム合金ダイカストの各部の硬さを示す説明図であり、(c)は合金3におけるアルミニウム合金ダイカストの各部の硬さを示す説明図であり、(d)は合金4におけるアルミニウム合金ダイカストの各部の硬さを示す説明図であり、(e)は合金5におけるアルミニウム合金ダイカストの各部の硬さを示す説明図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず図1(a)及び図1(b)を参照して、一実施形態におけるダイカストユニット10を含む接合体1を説明する。図1(a)は接合体1の斜視図であり、図1(b)は図1(a)のIb-Ib線における接合体1の断面図である。
図1及び図2に示すように、接合体1は、ダイカストユニット10と、ダイカストユニット10に固定される相手側部材2と、を備えている。相手側部材2は、鋼製の部材であり、略板状の部位がダイカストユニット10に固定される。相手側部材2の略板状の部位とは、厚さが略一定であり、表裏の両面が平坦面や曲面などから形成されているものを示す。相手側部材2の略板状の部位の厚さが5mm以下であることが好ましい。
ダイカストユニット10は、アルミニウム合金ダイカスト11と、複数の接合部材20と、を備えている。アルミニウム合金ダイカスト11は、ダイカスト法によって形成されたアルミニウム合金製の部材である。このアルミニウム合金は、質量比で、7.5~11.5%のSiと、0.1~0.6%のMgと、0.2~0.9%のMnと、0.2%以下のTiと、0.1%以下のSrと、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる(残部が実質的にAlからなる)。なお、0.2%以下のTiとは、Tiが全く含有されていない場合(Tiが0%の場合)を含む。0.1%以下のSrとは、Srが全く含有されていない場合(Srが0%の場合)を含む。
Siが7.5%以上なので、アルミニウム合金ダイカスト11の鋳造時に溶湯の流動性を確保できる。Siが11.5%より多いと、アルミニウム合金ダイカスト11の延性が低下する。Mgは、アルミニウム合金ダイカスト11の耐力を調整するためのものである。Mgが多いと、アルミニウム合金ダイカスト11の延性が低下する。さらに、Mgが多いと鋳造時の溶湯中のMgが酸化し易くなり、アルミニウム合金中の金属Mgの成分管理が難しくなる。Mgを0.6%以下にすることで、Mgの成分管理をし易くして、アルミニウム合金ダイカスト11の耐力を適切に調整できる。
Mnが0.2%以上なので、アルミニウム合金ダイカスト11の鋳造時に、溶湯と金型との反応を抑制できる。溶湯と金型との反応をより抑制するためには、Mnを0.4%以上にすることが好ましい。また、Mnが0.9%以下なので、Mnによるアルミニウム合金ダイカスト11の延性の低下を抑制できると共に、溶湯保持中でのスラッジの発生を抑制できる。
さらに、0.04~0.2%のTiや、0.006~0.1%のSrを添加することで、アルミニウム合金ダイカスト11の延性を向上できる。0.04%より低いTiや、0.006%より低いSrは不可避的不純物であり、アルミニウム合金ダイカスト11の物性に殆ど影響がない。また、不可避的不純物には、Cu,Fe,Znなどが含まれる。なお、アルミニウム合金ダイカスト11が自動車ボディ等に使われる場合、耐食性上、Cuは0.2%以下、Feは0.3%以下、Znは0.1%以下であることが好ましい。
アルミニウム合金ダイカスト11は、相手側部材2と重ねられる連結部12を備え、連結部12以外の形状が自由に設定されている。連結部12は、相手側部材2に面する表面12aと、表面12aとは厚さ方向の反対側に位置する裏面12bと、を備える略板状に形成されている。略板状の連結部12とは、厚さが略一定であり、表面12aや裏面12bが平坦面や曲面などから形成されているものを示す。
連結部12は、厚さが5mm以下に形成されていることが好ましい。上記組成のアルミニウム合金製のアルミニウム合金ダイカスト11では、鋳造後に熱処理しない場合、表面12aや裏面12bを延び変形させたときに、表面12aや裏面12bに割れが生じ易い。
接合部材20は、アルミニウム合金ダイカスト11の連結部12と相手側部材2とを接合するための部材であり、本実施形態ではセルフピアスリベット(自己穿孔型リベット)からなる。接合部材20は、鋼などの金属材料からなり、下孔が設けられていない異種材料の板状部材同士を接合するのに適している。
接合部材20は、略円板状の頭部21と、その頭部21から突出する軸部としての円筒部22とを備え、軸心Cに関して軸対称に形成されている。円筒部22は、軸心Cに垂直な断面における内周面および外周面が円形状の筒状の部材である。詳しくは後述するが、相手側部材2と連結部12とを重ねた部分に、この接合部材20を表面12a側(相手側部材2側)から圧入する(打ち込む)ことで、円筒部22が相手側部材2を貫通すると共に、円筒部22が先端へ向かうにつれて拡径しながら連結部12に食い込み、接合部材20が相手側部材2及び連結部12に固定される。
連結部12は、接合部材20が圧入される被圧入部13と、被圧入部13の縁に連なる本体部14と、を備え、この被圧入部13と本体部14とが一体成形されている。なお、アルミニウム合金ダイカスト11のうち連結部12以外の部位も本体部14の一部である。各図面には被圧入部13と本体部14との境界Bを2点鎖線で示している。なお、図1(b)及び図2では説明の都合上、被圧入部13と本体部14との境界Bの位置を接合部材20に寄せて図示している。
被圧入部13は、表面12aの一部であって接合部材20が圧入される圧入表面13aと、裏面12bの一部であって圧入表面13aとは反対側の圧入裏面13bと、を備えている。本体部14は、表面12aの一部を含み圧入表面13aの縁に連なる本体表面14aと、裏面12bの一部を含み圧入裏面13bの縁に連なる本体裏面14bと、を備えている。
圧入表面13aの一部は、接合部材20の圧入に伴って凹み、その凹んだ部分に相手側部材2及び接合部材20の一部が嵌まっている。圧入裏面13bのうち接合部材20の反対側に位置する部分がその周囲に対して突出し、軸心Cに垂直な断面における外形形状が円形状の突出部15が被圧入部13に形成されている。
この接合体1の製造方法について図1(a)、図1(b)及び図2を参照して説明する。図2は接合体1の製造方法を示す説明図である。まず、アルミニウム合金の溶湯を用いて、ダイカスト法により所定形状のアルミニウム合金ダイカスト11を鋳造成型する(成型工程)。また、図2に示すように、鋳造後のアルミニウム合金ダイカスト11の連結部12の表面12a及び裏面12bは、凹凸が殆どない滑らかな面により形成されている。
成型工程後、アルミニウム合金ダイカスト11の連結部12の一部を加熱し、その加熱部分の裏面12bの中心(裏面12bと軸心Cとの交点)が420℃以上になったら加熱を終了することで、加熱された連結部12の一部を被圧入部13とする(加熱工程)。なお、アルミニウム合金ダイカスト11は熱伝導率が高く、連結部12の厚さが5mm以下であれば、連結部12のうち表面12aや裏面12b、内部のどこを加熱しても、その加熱部分の中心が厚さ方向に亘って略均一な温度まで加熱される。例えば、連結部12の表面12aを外部加熱し、その熱影響で裏面12bの中心を420℃以上まで加熱しても良い。但し、5mmよりも厚い連結部12を外部加熱する場合には、熱エネルギーの削減などのために、裏面12bを直接加熱することが好ましい。図1における境界Bに囲まれた部分が被圧入部13であり、境界Bの外側であって加熱範囲から離れていて材料特性が殆ど変化しなかった部位が本体部14である。
なお、加熱部分の裏面12b(圧入裏面13b)の中心が420℃以上になったら加熱を終了するとは、加熱部分の圧入裏面13bの中心が420℃以上になった後、その加熱部分の圧入表面13a又は圧入裏面13bからの深さが10μm以上の部位が融けないよう、60秒以内に加熱を終了することとする。加熱工程では、連結部12のうち接合部材20が圧入される部分の近傍の材料特性を変化させれば良いので、高温で長時間保持する必要がない。よって、アルミニウム合金ダイカスト11の製造時に必要な熱エネルギーを削減するために、加熱部分が420℃になった瞬間に加熱を終了することが好ましい。なお、加熱時間にもよるが、加熱部分の圧入裏面13bの中心が550℃までは、その加熱部分を殆ど融けないようにできる。
本実施形態では、連結部12の一部へハロゲン光を円形範囲に投光する光加熱を用いて連結部12を加熱している。なお、連結部12の一部へハロゲン光を矩形範囲に投光し、複数の接合部材20が並んで圧入される予定の箇所を一度に加熱しても良い。また、その他の加熱方法としては、連結部12へのレーザ光の照射によるレーザ加熱、電磁誘導により連結部12に生じたうず電流による誘導加熱、連結部12に直接電流を流す抵抗加熱、高温の媒体を連結部12に接触させることによる接触加熱などが例示される。
加熱部分の圧入裏面13bの中心の温度は、試験片としての連結部12の圧入裏面13bの中心に熱電対を埋め込む等により、加熱手段の出力に対する試験片の中心の昇温速度を予め計測し、その昇温速度と加熱時間とから算出する。また、加熱部分の裏面12bの中心の温度を放射温度計で測定しても良い。また、加熱部分の圧入裏面13bに接触式表面温度計を設置して温度測定しても良い。この場合、接触面圧を一定に保つ機構を用いることにより再現性のある測定が可能となる。
加熱工程では、連結部12の一部を短時間加熱すれば良く、その加熱時間が短い程、加熱に必要なエネルギーを低減できると共に、加熱方法の自由度を向上できる。また、アルミニウム合金ダイカスト11の全体を加熱しないので、アルミニウム合金ダイカスト11の全体を加熱する大型の熱処理炉や、その熱処理炉を配置するための大型の建屋を不要にできる。
さらに、加熱部分(被圧入部13)の加熱時間によるが、その加熱時に本体部14が変形することを抑制できる。加熱時に本体部14が変形しなければ、その変形を防止するための治具で加熱時に本体部14を保持することを不要にできると共に、その変形を矯正する工程を不要にできる。また、加熱部分の加熱時間によるが、本体部14にガスが鋳包まれていても、加熱部分の加熱によって本体部14にブリスターを発生し難くできる。
特に、加熱部分の圧入裏面13bの中心が50℃以下の状態から420℃以上になるまでの加熱時間が60秒以内であれば、より好ましくはその加熱時間が20秒以内であれば、本体部14への熱影響をより抑制できる。これにより、本体部14の変形やブリスターの発生をより抑制できる。さらに、加熱時間が短いので、加熱部分にガスが巻き込まれていても、加熱部分にブリスターを発生し難くできる。そして、加熱時間が短いので、アルミニウム合金ダイカスト11の全体を数時間加熱する場合と比べて、1個のアルミニウム合金ダイカスト11への加熱時間を短縮でき、少ない加熱設備で多くの製品を加熱処理できる。
また、ブリスターが発生しなければ、ブリスターの原因となるガスが本体部14に鋳包まれないように、高真空ダイカスト法などの特殊ダイカスト法でアルミニウム合金ダイカスト11を鋳造する必要がなくなって、大きな真空装置や金型内の真空シールなどを省略できる。さらに、溶湯と反応してガス化する離型剤中の潤滑成分などの使用量や、溶湯と反応してガス化するチップ潤滑剤の使用量を減らしたりする必要がなくなって、生産速度を速くしても鋳造トラブルを生じ難くでき、不良の少ないアルミニウム合金ダイカスト11の時間当たりの生産数を増加できる。このようにアルミニウム合金ダイカスト11の鋳造方法の自由度を向上できる。
さらに、図2に示すよう、加熱部分の圧入裏面13bの中心が420℃以上になるまでの昇温時間が短くなるように、高出力のレーザ加熱で連結部12の裏面12bの一部を加熱した場合には、その加熱された部分の極表層が溶融し、加熱された圧入裏面13bに溶融部13cが形成される。なお、連結部12の表面12aの一部を加熱して圧入表面13aに溶融部13cを形成しても良い。
溶融部13cは、一度溶融した後に冷却されたことによって結晶構造が周囲の部位に対して異なっている部位である。そして、加熱条件にもよるが、溶融部13cは、周囲の部位に対して白色化する。このように、加熱工程後のアルミニウム合金ダイカスト11を確認し、周囲の部位に対して結晶構造が異なる溶融部13cがあれば、アルミニウム合金ダイカスト11の製造方法を確認しなくても、その溶融部13cが形成された裏面12bの一部を高出力で短時間に加熱して、被圧入部13を形成したことを確認できる。熱伝導率が高いアルミニウム合金ダイカスト11の一部を短時間で加熱して被圧入部13を形成できるので、アルミニウム合金ダイカスト11の製造時に必要な熱エネルギーを削減できると共に、被圧入部13の加熱に伴う本体部14への熱影響を抑制して本体部14の変形やブリスター発生などを抑制できる。さらに、接合部材20が圧入される被圧入部13に白色の溶融部13cが形成されているので、その溶融部13cを目印にして、接合部材20を被圧入部13に圧入できる。
加熱工程では、連結部12の一部に加熱を施すことで、その加熱部分以外に熱が奪われて、加熱終了後に加熱部分が自然空冷される。アルミニウム合金ダイカスト11の熱伝導率が高いので、加熱部分の熱が加熱されていない部分に奪われ易く、自然空冷によって十分に早期に連結部12の加熱部分を冷却できる。
次いで、加熱工程後から所定時間以内に、図2に示すように、被圧入部13と相手側部材2とを重ねた部分に接合部材20を圧入表面13a側から圧入する(圧入工程)。相手側部材2及び被圧入部13に圧入する前の接合部材20の円筒部22は、外径が略一定であり、先端側の内径が先端へ向かって次第に拡径している。
圧入工程では、連結部12の裏面12bを下方から支持するダイ31と、連結部12及び相手側部材2をダイ31に上方から押し付けるシリンダ36と、相手側部材2及び被圧入部13に接合部材20を圧入する(打ち付ける)パンチ37とが用いられる。ダイ31は、連結部12が置かれる設置面32に、底を有する丸穴状の凹部33が設けられている。凹部33の内径は、設置面32との境界部で最も大きくなっている。この凹部33の内径や深さは、相手側部材2及び被圧入部13に圧入する前の円筒部22の各寸法や素材、連結部12や相手側部材2の各寸法や素材に応じて適切な値が設定される。
圧入工程では、凹部33の全体を被圧入部13の圧入裏面13bで塞ぐ。そのため、加熱工程では、接合部材20の圧入位置の誤差を考慮し、凹部33よりも広い範囲の連結部12の一部を加熱して被圧入部13を形成する。
シリンダ36は、凹部33と同心状に位置する円筒状の部材である。シリンダ36は、設置面32と対向して凹部33の周囲に配置されている。パンチ37は、図示しない駆動装置によってシリンダ36内を軸方向に移動する円柱状の部材である。
圧入工程では、シリンダ36と設置面32との間に連結部12及び相手側部材2を挟んだ状態で、圧入表面13aの上方にある接合部材20の円筒部22を、相手側部材2及び被圧入部13へパンチ37により打ち込む。これにより、下孔のない相手側部材2を円筒部22が貫通し、接合部材20及び相手側部材2によって下方へ押された被圧入部13が凹部33の底へ向かって塑性変形(絞り変形)する。そして、圧入裏面13bが凹部33に沿って延び変形し、圧入裏面13bの一部が円形状に突出して突出部15を形成しつつ、円筒部22の先端が拡径変形しながら被圧入部13に食い込む。その結果、図1(b)に示すように、相手側部材2と連結部12とが接合部材20によって接合され、ダイカストユニット10及び接合体1が製造される。
このように製造されたアルミニウム合金ダイカスト11及びダイカストユニット10によれば、加熱工程により加熱された圧入裏面13bの4か所以上のロックウェル硬さHRFを平均した被圧入部13の平均硬さが、加熱工程時に加熱されなかった本体表面14a又は本体裏面14bの4か所以上のロックウェル硬さHRFを平均した本体部14の平均硬さよりも小さくなっている。基本的に平均硬さが小さい程、その物体の延性が高くなるので、被圧入部13の圧入表面13aに接合部材20を圧入して圧入裏面13bが延びる場合に、本体部14に対して延性が向上した被圧入部13の圧入裏面13bを割れ難くできる。また、本体部14は加熱されていないので、加熱による本体部14の耐力低下を防ぎ所定の耐力を確保できる。
さらに、被圧入部13の平均硬さが、本体部14の平均硬さに対して10%以上小さい値であること、即ち加熱工程による熱処理前の平均硬さに対する熱処理後の平均硬さの変化率が10%以上であることが好ましい。これにより、本体部14の耐力を確保しつつ、被圧入部13の延性をより向上して被圧入部13をより割れ難くできる。
ロックウェル硬さHRFは、JIS Z2245:2016(ISO 6508-1:2015)に準拠して測定する。具体的には、支持台(図示せず)に置いたアルミニウム合金ダイカスト11やダイカストユニット10の表面12a(本体表面14a)又は裏面12b(圧入裏面13bや本体裏面14b)に、直径1.5875mmの球状の圧子(図示せず)を押し付け、押付荷重を98.07N→588.4N→98.07Nと変化させたときのくぼみの深さの変化からロックウェル硬さHRFを測定する。
なお、被圧入部13や本体部14の平均硬さに対して、その平均硬さを算出するための各測定位置のロックウェル硬さHRFが10%以上異なる場合には、その10%以上異なるロックウェル硬さHRFを除外し、被圧入部13や本体部14の平均硬さを算出し直す。これは、アルミニウム合金ダイカスト11の鋳造時の大きな欠陥に由来する硬さの局所的な変化や、測定時の操作ミスなどを排除するためである。また、一部のロックウェル硬さHRFを除外して、ロックウェル硬さHRFの測定位置が3か所以下になる場合には測定位置を増やして、平均硬さを算出し直す。
また、被圧入部13と本体部14との境界Bは、肉眼では確認できないため、被圧入部13や本体部14の各面のロックウェル硬さHRFの測定範囲を下記の通り決定し、その測定範囲内の任意位置をロックウェル硬さHRFの測定位置とする。まず、アルミニウム合金ダイカスト11に接合部材20が圧入(固定)された状態のダイカストユニット10では、突出部15の裏面12bの全体が圧入裏面13bなので、突出部15の裏面12bを被圧入部13のロックウェル硬さHRFの測定範囲とする。例えば、軸心Cに垂直な方向から見た突出部15の直径(突出部15の最大径)が約10mmである場合には、軸心Cから約4mm離れた位置の裏面12bのロックウェル硬さHRFを測定し、被圧入部13の平均硬さを算出する。
次にダイカストユニット10における本体部14のロックウェル硬さHRFの測定範囲について説明する。加熱工程では連結部12の一部を加熱するので、連結部12から十分に離れた位置のアルミニウム合金ダイカスト11を、本体部14のロックウェル硬さHRFの測定範囲とする。なお、連結部12以外の部位が小さかったり、連結部12の範囲が分からない場合などには、突出部15の直径の2倍以上軸心Cから離れた部分の表面12a又は裏面12bであって境界Bの外側を、本体部14のロックウェル硬さHRFの測定範囲とする。さらに、複数の突出部15が並んでいる場合には、複数の突出部15の各軸心Cを結んだ線から突出部15の最大径の2倍以上離れた部分を、本体部14のロックウェル硬さHRFの測定範囲とする。これは、複数の突出部15が形成される位置(複数の接合部材20が圧入される位置)の矩形範囲を加熱工程時にまとめて加熱することがあるため。
次に接合部材20が圧入される前のアルミニウム合金ダイカスト11における被圧入部13や本体部14の各面のロックウェル硬さHRFの測定範囲について説明する。この場合、接合体1やダイカストユニット10を製造するための図面や指示書、アルミニウム合金ダイカスト11に設けられた接合部材20の圧入位置の目印などから、接合部材20の圧入位置の中心と、圧入前の接合部材20の円筒部22(圧入される部分)の外径寸法とを特定する。
圧入位置の中心を中心点として円筒部22の外径寸法を直径とする円形範囲内を、被圧入部13のロックウェル硬さHRFの測定範囲とする。接合部材20が圧入される予定の連結部12から十分に離れた位置のアルミニウム合金ダイカスト11を、本体部14のロックウェル硬さHRFの測定範囲とする。なお、連結部12以外の部位が小さかったり、連結部12の範囲が分からない場合などには、圧入位置の中心を中心点として円筒部22の外径寸法の4倍以上離れた部分を、本体部14のロックウェル硬さHRFの測定範囲とする。これは、突出部15の最大径が円筒部22の外形寸法の2倍程度であるため。
さらに、複数の接合部材20の圧入位置の中心が並んでいる場合には、その中心を結んだ線から円筒部22の外径寸法の4倍以上離れた部分を、本体部14のロックウェル硬さHRFの測定範囲とする。なお、本体部14の平均硬さに対する被圧入部13の平均硬さの変化率が3%以下である場合には、接合部材20の圧入位置の中心、又は、複数の接合部材20の圧入位置の中心を結んだ線から円筒部22の外径寸法の8倍以上離れた部分を、本体部14のロックウェル硬さHRFの測定範囲とし、被圧入部13の平均硬さを算出し直す。
また、被圧入部13の圧入表面13a又は圧入裏面13bに白色の溶融部13cが形成されている場合には、溶融部13cによって白色化した範囲を、被圧入部13のロックウェル硬さHRFの測定範囲とすることができる。また、白色化した範囲の直径の2倍以上白色化したところから離れた部分を、本体部14のロックウェル硬さHRFの測定範囲とすることができる。
本実施形態のアルミニウム合金ダイカスト11を構成するアルミニウム合金は、質量比で、7.5~11.5%のSiと、0.1~0.6%のMgと、0.2~0.9%のMnと、0.2%以下のTiと、0.1%以下のSrと、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる。このようなアルミニウム合金製のアルミニウム合金ダイカスト11では、初晶Alと、初晶Al以外の結晶とが形成されている。この初晶Al以外の結晶の円形度が大きく1に近い程(真円に近い程)、その初晶Al以外の結晶の近傍での亀裂の発生を抑制できる。そのため、所定部位の初晶Al以外の結晶の円形度を平均した平均円形度が大きい程、その所定部位の延性を向上できる。初晶Al以外の結晶の中でも特に共晶Si結晶の量が多いため、所定部位のうち少なくとも共晶Si結晶の平均円形度が大きい程、その所定部位の延性を向上できる。
ここで、初晶Al以外の結晶の平均円形度の測定方法について説明する。なお、被圧入部13の初晶Al以外の結晶の平均円形度の測定範囲は、上述した被圧入部13のロックウェル硬さHRFの測定範囲と略同一とする。本体部14の初晶Al以外の結晶の平均円形度の測定範囲は、上述した本体部14のロックウェル硬さHRFの測定範囲と略同一とする。
まず、被圧入部13や本体部14を切断し、その切断面の初晶Al以外の結晶が測定可能になるまで研磨する。次いで、その研磨した部分のうち表面12a(本体表面14a)又は裏面12b(圧入裏面13bや本体裏面14b)からの深さが0.02~0.5mmの範囲の被圧入部13や本体部14を金属顕微鏡で観察し、試験片毎に縦40μm×横30μmの視野の画像を2視野分取得する。1つの視野の画像に対して画像処理を施し、その視野内の複数の初晶Al以外の結晶の周囲長および面積をそれぞれ測定する。そして、(4π×面積)/(周囲長)で示される初晶Al以外の結晶の円形度を算出し、1つの視野内の複数の初晶Al以外の結晶の円形度を平均して、更に視野毎に平均した初晶Al以外の結晶の円形度を2視野で平均し、被圧入部13や本体部14の初晶Al以外の結晶の平均円形度を算出する。
圧入裏面13bからの深さが0.02mm~0.5mmの範囲における被圧入部13の初晶Al以外の結晶の平均円形度が、本体表面14a又は本体裏面14bからの深さが0.02~0.5mmの範囲における本体部14の初晶Al以外の結晶の平均円形度よりも大きい。平均円形度が大きい部分の延性が高いので、被圧入部13と比べて本体部14の耐力を確保しつつ、本体部14に対して被圧入部13の延性を高くして被圧入部13を割れ難くできる。
さらに、圧入裏面13bからの深さが0.02mm~0.5mmの範囲における被圧入部13の初晶Al以外の結晶の平均円形度が0.48以上であることが好ましい。これにより、被圧入部13の延性をより向上でき、被圧入部13をより割れ難くできる。
本実施形態のアルミニウム合金ダイカスト11を構成するアルミニウム合金は、質量比で、7.5~11.5%のSiと、0.1~0.6%のMgと、0.2~0.9%のMnと、0.2%以下のTiと、0.1%以下のSrと、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる。このような組成のアルミニウム合金では、鋳造後のアルミニウム合金ダイカスト11に熱処理を施さないと、アルミニウム合金ダイカスト11の延性が低く、アルミニウム合金ダイカスト11に接合部材20が圧入されて延びた部分に割れが発生し易くなる。
そのため、上記の通り、被圧入部13の平均硬さが本体部14の平均硬さよりも小さくなっていたり、被圧入部13の平均円形度が本体部14の平均円形度よりも大きくなっていたりして、被圧入部13の延性が本体部14の延性よりも高くなっていれば、アルミニウム合金ダイカスト11の製造方法を確認しなくても、接合部材20が圧入される被圧入部13を割れ難くするために鋳造後の被圧入部13に熱処理を施して、接合部材20が圧入されない本体部14に熱処理を施さずに、アルミニウム合金ダイカスト11を製造したことが分かる。その結果、被圧入部13の加熱に伴う本体部14への熱影響を抑制して本体部14の変形やブリスター発生を抑制できる等の上述した効果が得られる。
但し加熱条件によっては、加熱工程後から所定時間が経過すると、被圧入部13の延性が低下し、被圧入部13の圧入表面13aに接合部材20を圧入して圧入裏面13bが延び変形したときに、圧入裏面13bに割れが発生し易くなることがある。そこで、圧入工程では、加熱工程後から所定時間以内に、圧入表面13aに接合部材20を圧入し、圧入裏面13bを延び変形させる必要がある。これにより、接合部材20が圧入されるときに圧入裏面13bを割れ難くできる。
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
(試験片の作成)
表1に示す組成のアルミニウム合金の溶湯を用いて高真空ダイカスト法により、合金1~7の試験片として、板厚3.2mmの連結部12を有するアルミニウム合金ダイカスト11をそれぞれ複数個形成した。なお、表1に示す各数値は質量比(%)であり、表1では0.01%未満の成分を「<0.01」として示した。また、表1では、0.01%未満の不可避的不純物の記載と、残部であるAlの記載とを省略した。その不純物としてはNi、Cr、Pb、Sn等が挙げられる。
Figure 0007270056000001
(試験1)
鋳造後の合金1~5の連結部12の一部を、ハロゲン光を円形範囲(直径24mm)に投光するフィンテック社製のハロゲンヒータ「HSH-160/f40」を用いて2.5kWで加熱した(加熱工程)。この加熱工程によって合金1~5の連結部12にそれぞれ、加熱された被圧入部13と、加熱された部分から十分に離れた本体部14とを形成した。被圧入部13及び本体部14の厚さはいずれも3.2mmである。
なお、加熱工程では、加熱温度(加熱時間)や加熱後の冷却条件などを変更し、合金1~5の試験片を複数種類作成した。なお、ハロゲンヒータによる加熱開始から約20秒で、連結部12の裏面12bの中心の加熱部分が厚さ方向の全体に亘って500℃に達するので、20秒以内に加熱を終了した。これにより、合金1~5毎に加熱部分の裏面12bの中心を400~500℃まで加熱した。加熱の終了後は、室温約20~30℃で自然空冷、又は、水温約20~30℃の水槽を用いた水冷により、室温と略同一になるまで冷却した。
冷却完了(加熱工程)後、合金1~5の試験片の圧入表面13a及び本体表面14aに板厚1.2mmのSPCC製の相手側部材2を重ね、ダイ31、シリンダ36及びパンチ37を用いて圧入表面13a及び本体表面14aそれぞれに接合部材20を圧入し、圧入工程を行った。接合部材20には、長さ5mmで外径5.3mmの円筒部22を有するセルフピアスリベットを用いた。ダイ31の凹部33の最大径は10mmとし、凹部33の深さは1.0mmとした。
試験片への接合部材20の圧入後、圧入裏面13b及び本体裏面14bそれぞれに割れが生じているか否かを確認した。この割れの有無は、圧入裏面13b及び本体裏面14bへ浸透液を塗布して浸透液を割れに染み込ませ、割れに染み込んでいない浸透液を除去した後に、現像剤を圧入裏面13b及び本体裏面14bに塗布して浸透液をにじみ出させる浸透探傷試験によって判断した。なお、圧入裏面13b及び本体裏面14bの割れの有無は、浸透探傷試験に限らず、渦電流探傷試験や超音波探傷試験によって判断しても良い。
圧入工程後の全ての試験片の本体裏面14bには割れが発生した。圧入裏面13bに割れが発生しなかった試験片に関し、加熱工程時に加熱された圧入裏面13bの中心の温度を、加熱後に水冷した場合と自然空冷した場合とに分けて合金1~5毎に表2に示した。
Figure 0007270056000002
表2から、合金1~5は、連結部12の一部(加熱部分)の裏面12bの中心を420℃以上になるまで加熱した後、自然空冷して被圧入部13を形成することで、圧入工程時に被圧入部13を割れ難くできることが分かった。さらに、加熱部分の裏面12bの中心を460℃以上になるまで加熱した後、水冷することで、圧入工程時に被圧入部13を割れ難くできることが分かった。さらに、加熱部分の裏面12bの中心が500℃以上になったら加熱を終了することで、冷却方法に関わらず全ての合金1~5において、圧入工程時に被圧入部13をより割れ難くできることが分かった。
なお、加熱工程から16時間以内に圧入工程を行ったときに割れが発生しなかった条件と同一条件で作成し加熱した合金1~5の試験片には、加熱工程から16時間以上経過した後に圧入工程を行ったときに、被圧入部13の圧入裏面13bに割れが生じたものがあった。ここから、合金1~5では、加熱工程後から16時間以内に圧入工程を行うことで、被圧入部13を割れ難くできることが分かった。
(試験2)
次に、被圧入部13の圧入裏面13bに割れが発生しなかった合金1~5の全ての試験片について、圧入裏面13bにおける加熱中心から4mmの位置のロックウェル硬さHRFと、本体部14の本体表面14a又は本体裏面14bのロックウェル硬さHRFとを測定した。また、合金1~5毎に、全ての試験片の本体部14のロックウェル硬さHRFを平均して本体部14の平均硬さを算出した。この平均硬さは、1つのダイカストユニット10やアルミニウム合金ダイカスト11の本体部14の複数か所のロックウェル硬さHRFを平均した本体部14の平均硬さと略同一とみなすことができる。
同様に、合金1~5毎に、全ての試験片の圧入裏面13bにおける加熱中心から4mmの位置のロックウェル硬さHRFを平均して被圧入部13の平均硬さを算出した。この平均硬さは、1つのダイカストユニット10やアルミニウム合金ダイカスト11の被圧入部13の複数か所のロックウェル硬さHRFを平均した被圧入部13の平均硬さと略同一とみなすことができる。
図3(a)の横軸のAの位置に、合金1の本体部14のロックウェル硬さHRFの最大値から最小値を示し、その本体部14の平均硬さを白抜きの四角で示した。同様に、図3(b)には合金2、図3(c)には合金3、図3(d)には合金4、図3(e)には合金5における、本体部14のロックウェル硬さHRFの最大値から最小値と、本体部14の平均硬さとを示した。なお、図3(a)~図3(e)の各グラフでは、左側の第1縦軸をロックウェル硬さHRF(Hardness(HRF))とした。
また、図3(a)の横軸のBの位置に、割れが発生しなかった合金1の被圧入部13のロックウェル硬さHRFの最大値から最小値を示し、その割れが発生しなかった被圧入部13の平均硬さを白抜きの四角で示した。同様に、図3(b)には合金2、図3(c)には合金3、図3(d)には合金4、図3(e)には合金5における、割れが発生しなかった被圧入部13のロックウェル硬さHRFの最大値から最小値と、割れが発生しなかった被圧入部13の平均硬さとを示した。
被圧入部13に割れが発生しなかった同一の試験片毎に、本体部14のロックウェル硬さHRFに対する被圧入部13のロックウェル硬さHRFの変化率((A-B)/A)を算出した。そして、図3(a)~図3(e)の横軸のCの位置にそれぞれ、合金1~5の変化率の最大値から最小値を示し、合金1~5の変化率の平均を黒丸で示した。なお、図3(a)~図3(e)の各グラフでは、右側の第2縦軸を変化率(Percemt change(%))とした。また、各合金1~5において、この変化率の平均は、本体部14の平均硬さに対する被圧入部13の平均硬さの変化率と略同一である。
図3(a)~図3(e)に示した試験結果を参照すると、Aに示した連結部12(本体部14)の平均硬さが72HRF以上では圧入工程時に連結部12に割れが発生したが、Bに示した連結部12(被圧入部13)の平均硬さが68HRF以下では圧入工程時に連結部12に割れが発生しなかった。
ここから、本体部14の平均硬さよりも、圧入工程時に延び変形する被圧入部13の平均硬さを小さくすることで、圧入工程時に被圧入部13を割れ難くできることが分かった。さらに、本体部14の平均硬さよりも被圧入部13の平均硬さが14%以上小さければ(変化率の平均が14%以上であれば)、圧入工程時に被圧入部13をより割れ難くできることが分かった。さらに、本体部14の平均硬さに対する被圧入部13の平均硬さの変化率が22%以上であれば、圧入工程時に被圧入部13をより割れ難くできることが分かった。
また、SiやMg等、Al以外の添加物が多い程、被圧入部13及び本体部14の平均硬さが大きくなっていた。そのため、上記一実施形態におけるアルミニウム合金の組成範囲において、SiやMg等の添加物を多くすることで、アルミニウム合金ダイカスト11の連結部12の強度を向上できることが分かった。
さらに、上記一実施形態におけるアルミニウム合金の組成範囲において、Siが多い程、被圧入部13に割れが発生しない平均硬さが大きく、Mgが多い程、平均硬さの変化率が大きくなっていた。即ち、Mgを増やしても被圧入部13の割れ難さはあまり変化しなかった。
逆にSiの質量比を多くすることで、本体部14に対して被圧入部13を割れ難くしつつ、被圧入部13近傍の強度を向上させて接合部材20を抜け難くすることができることが分かった。よって、Siの質量比10.0%以上のアルミニウム合金を用いたダイカストユニット10では、被圧入部13を十分に割れ難くしつつ、接合部材20を抜け難くできる。
次に、圧入工程後の合金1~5の試験片に対して、自動車製造ラインの塗装工程で行われるベークハード処理を模して170℃で20分間加熱を施した。このベークハード処理後の試験片についても、被圧入部13及び本体部14のロックウェル硬さHRFを測定し、それぞれの平均硬さを算出し、それぞれの変化率を算出した。図3(a)~図3(e)の横軸のDの位置に、ベークハード処理後(After BH)の本体部14のロックウェル硬さHRFの最大値から最小値を示し、ベークハード処理後の本体部14の平均硬さを白抜きの四角で示した。
図3(a)~図3(e)の横軸のEの位置に、ベークハード処理後の被圧入部13のロックウェル硬さHRFの最大値から最小値を示し、ベークハード処理後の被圧入部13の平均硬さを白抜きの四角で示した。図3(a)~図3(e)の横軸のFの位置に、ベークハード処理後の変化率((D-E)/D)の最大値から最小値を示し、その変化率の平均を黒三角で示した。なお、図3(a)~図3(e)のA~Cにはベークハード処理前(Before BH)の各部の硬さや変化率が示されている。
ベークハード処理後には、ベークハード処理前と比べて、本体部14の平均硬さがあまり変化せず、被圧入部13の平均硬さが大きくなった。そのため、ベークハード処理後のダイカストユニット10を確認して、本体部14の平均硬さに対する被圧入部13の平均硬さの変化率が10%以上である場合、ベークハード処理前の圧入工程時に被圧入部13が割れ難くなっていた。
(試験3)
次に、試験1と同様に、種々の条件で加熱した合金6,7の複数の試験片の被圧入部13及び本体部14にそれぞれ接合部材20を圧入して、圧入裏面13bや本体裏面14bに割れが生じているか否かを確認した。さらに、その合金6,7の複数の試験片において、被圧入部13及び本体部14それぞれの初晶Al以外の結晶の平均円形度を、ULEAD Systems社製の画像処理ソフト「PhotoImpact8」を用いて上記一実施形態で説明した通りの方法で測定した。
表3に、被圧入部13や本体部14の初晶Al以外の結晶の平均円形度と、圧入裏面13bや本体裏面14bの割れの有無との関係を示した。なお、表3の「割れ」の項目について、「○」は圧入裏面13bや本体裏面14bに割れが生じなかったこと、「×」は圧入裏面13bや本体裏面14bに割れが生じたことを示している。また、被圧入部13を形成するときの加熱条件に応じて、被圧入部13の初晶Al以外の結晶の平均円形度が変化した。
Figure 0007270056000003
合金6では、割れなかった被圧入部13の初晶Al以外の結晶の平均円形度の値が0.48~0.66であり、割れた本体部14の初晶Al以外の結晶の平均円形度の値が0.31~0.42であった。また、合金7では、被圧入部13の初晶Al以外の結晶の平均円形度の値が0.53であり、本体部14の初晶Al以外の結晶の平均円形度の値が0.38であった。このように、接合部材20を圧入したときに割れない被圧入部13の初晶Al以外の結晶の平均円形度は、本体部14の初晶Al以外の結晶の平均円形度よりも大きかった。特に、被圧入部13の初晶Al以外の結晶の平均円形度が0.48以上であれば、被圧入部13を割れ難くできた。
以上、実施形態および実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態および上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、連結部12の厚さや形状、連結部12以外のアルミニウム合金ダイカスト11の形状、相手側部材2や接合部材20の各部の寸法や形状などを適宜変更しても良い。連結部12に重ねて接合される相手側部材2を複数枚にしても良い。また、相手側部材2を連結部12に重ねていない状態で、被圧入部13の圧入表面13aに接合部材20を圧入しても良い。この場合、接合部材20に相手側部材2をスポット溶接などできる。また、連結部12の全体が被圧入部13となるように加熱工程を行っても良い。
上記形態および上記実施例では、接合部材20がセルフピアスリベットである場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。接合部材は、アルミニウム合金ダイカスト11と相手側部材2とを接合するために、アルミニウム合金ダイカスト11の圧入表面13aに圧入され、その圧入時に圧入裏面13bが延び変形するものであれば良い。セルフピアスリベット以外の接合部材としては、円筒部22の代わりに棒状部材を圧入するFDS(登録商標)やRIVTAC(登録商標)、めねじ部を有するピアスナットや圧入ナットなどが挙げられる。ピアスナットや圧入ナットは、アルミニウム合金ダイカスト11に固定された後、めねじ部に取り付けられるボルト等を介して相手側部材2をアルミニウム合金ダイカスト11に接合する。
また、圧入表面13aに相手側部材2を重ね、相手側部材2の一部を圧入表面13aに圧入させるクリンチング接合によって、相手側部材2を被圧入部13に固定しても良い。この場合、圧入表面13aに圧入された相手側部材2の一部を接合部材とする。
上記形態および上記実施例では、接合部材20がセルフピアスリベットである場合に適した、被圧入部13の圧入裏面13bを割れ難くできる平均硬さや平均円形度の条件について説明した。セルフピアスリベット以外の接合部材を用いる場合には、圧入裏面13bを割れ難くできる最適な条件を適宜変更しても良い。
上記形態では、セルフピアスリベットである接合部材20がアルミニウム合金ダイカスト11に圧入されたダイカストユニット10に適するように、接合部材20の圧入時に延び変形した突出部15の裏面12bを被圧入部13のロックウェル硬さHRFの測定範囲とした。セルフピアスリベット以外の接合部材を用いる場合、裏面12bのうち接合部材20の圧入時に延び変形した部分が狭いことがあり、ロックウェル硬さHRFの測定範囲として適さないことがある。この場合には、接合部材20の圧入時に延び変形した部分に限りなく近い位置の裏面12bを、被圧入部13のロックウェル硬さHRFの測定範囲とする。
上記形態では、ダイ31の凹部33の底が平坦であり、突出部15の先端部分(図1(b)下側の端面)が平坦である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。凹部33の底の中央に円錐状または円錐台状の突起を設け、突出部15の軸心C近傍を凹ませても良い。
上記形態では、質量比で、7.5~11.5%のSiと、0.1~0.6%のMgと、0.2~0.9%のMnと、0.2%以下のTiと、0.1%以下のSrと、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金によってアルミニウム合金ダイカスト11が形成されている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。上記組成範囲から外れたアルミニウム合金によってアルミニウム合金ダイカスト11を形成しても良い。
10 ダイカストユニット
11 アルミニウム合金ダイカスト
13 被圧入部
13a 圧入表面
13b 圧入裏面
13c 溶融部
14 本体部
14a 本体表面
14b 本体裏面
20 接合部材

Claims (8)

  1. 質量比で、7.5~11.5%のSiと、0.1~0.6%のMgと、0.2~0.9%のMnと、0.2%以下のTiと、0.1%以下のSrと、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金製のアルミニウム合金ダイカストであって、
    接合部材が圧入される圧入表面と、前記圧入表面の反対側に位置する圧入裏面とを有する被圧入部と、
    前記圧入表面の縁に連なる本体表面と、前記圧入裏面の縁に連なる本体裏面とを有して前記被圧入部と一体成形されている本体部と、を備え、
    前記圧入裏面のロックウェル硬さHRFを平均した前記被圧入部の平均硬さは、前記本体表面または前記本体裏面のロックウェル硬さHRFを平均した前記本体部の平均硬さよりも小さいアルミニウム合金ダイカスト。
  2. 前記被圧入部の前記平均硬さは、前記本体部の前記平均硬さに対して10%以上小さい値である請求項1記載のアルミニウム合金ダイカスト。
  3. 質量比で、7.5~11.5%のSiと、0.1~0.6%のMgと、0.2~0.9%のMnと、0.2%以下のTiと、0.1%以下のSrと、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金製のアルミニウム合金ダイカストであって、
    接合部材が圧入される圧入表面と、前記圧入表面の反対側に位置する圧入裏面とを有する被圧入部と、
    前記圧入表面の縁に連なる本体表面と、前記圧入裏面の縁に連なる本体裏面とを有して前記被圧入部と一体成形されている本体部と、を備え、
    前記圧入裏面からの深さが0.02mm~0.5mmの範囲における前記被圧入部の初晶Al以外の結晶の平均円形度が、前記本体表面または前記本体裏面からの深さが0.02mm~0.5mmの範囲における前記本体部の初晶Al以外の結晶の平均円形度よりも大きいアルミニウム合金ダイカスト。
  4. 前記圧入裏面からの深さが0.02mm~0.5mmの範囲における前記被圧入部の初晶Al以外の結晶の平均円形度が0.48以上である請求項3記載のアルミニウム合金ダイカスト。
  5. 前記圧入表面または前記圧入裏面は、周囲の部位に対して結晶構造が異なる溶融部を備えている請求項1から4のいずれかに記載のアルミニウム合金ダイカスト。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載のアルミニウム合金ダイカストに接合部材が固定されたダイカストユニットであって、
    前記圧入表面の一部が凹んだ部分に前記接合部材が嵌まり、前記接合部材の反対側に位置する前記圧入裏面の一部が突出しているダイカストユニット。
  7. 質量比で、7.5~11.5%のSiと、0.1~0.6%のMgと、0.2~0.9%のMnと、0.2%以下のTiと、0.1%以下のSrと、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金製のアルミニウム合金ダイカストと、前記アルミニウム合金ダイカストの圧入表面に圧入される接合部材と、を備えるダイカストユニットの製造方法であって、
    前記アルミニウム合金ダイカストの一部を加熱し、その加熱部分のうち前記圧入表面の反対側の圧入裏面の中心が420℃以上になったら加熱を終了することで、前記加熱部分を被圧入部とする加熱工程と、
    前記加熱工程後から所定時間以内に、前記被圧入部の前記圧入表面に前記接合部材を圧入し、前記被圧入部の前記圧入裏面を延び変形させる圧入工程と、を備えているダイカストユニットの製造方法。
  8. 前記加熱工程では、前記加熱部分の圧入裏面の中心が50℃以下の状態から420℃以上になるまでの加熱時間が60秒以内である請求項7記載のダイカストユニットの製造方法。
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