以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る有害物質を含む塗装材の除去システムの概念を示すブロック図である。
図1に示すように除去システム100は、ここでは図示しない建造物200の壁面210に塗装されたアスベストなどの有害物質を含有する塗装材220を除去するためのものである。
塗装材220は壁面210にだけ塗装されるものではなく、ここでは図示しない床面230や、天井、柱、屋根などの露出面が塗装される場合もある。なお、本実施の形態では、除去システム100で壁面210に塗装された塗装材220を除去する場合を例として以下を説明する。
除去システム100は、ここでは図示しない作業者300が把持して壁面210に塗装された塗装材220を剥離するための剥離装置110、および剥離装置110で壁面210から剥離した塗装材220を吸引するためのバキューム装置120を備え、剥離装置110とバキューム装置120との間には、剥離装置110で剥離させた空気に含まれる塗装材220の粉塵を集塵して浄化するための集塵清浄手段130を備えており、剥離装置110、バキューム装置120、および集塵清浄手段130は、吸引ホース140(150a~150d)を介して接続されている。
また、集塵清浄手段130は、たとえば剥離装置110で剥離させた空気に含まれる塗装材220の粉塵を集塵するための集塵装置A130、および集塵装置A130で集塵した空気をさらに浄化するための空気清浄装置B130で構成されている。
また除去システム100は、剥離装置110、集塵装置A130、および空気清浄装置B130を備えた第1系統の除去系統と、同様に剥離装置110、集塵装置A130、および空気清浄装置B130を備えた第2系統の除去系統とを備え、各系統の除去装置は、第1系統、および第2系統への除去系統を切替えるための切替手段150に接続されている。
さらに、第1系統および第2系統の各々の除去装置は、複数の剥離装置110を備えることができ、この場合、一端側にバキューム装置120側に接続される単口部161と、他端側に複数の剥離装置110が接続される複口部162とを備える分岐装置160を介して複数の剥離装置110が集塵装置A130に接続される。
次に各装置の詳細を作業者300が把持する先端側の剥離装置110から、後端側のバキューム装置120に向かって順に説明する。
剥離装置110は、作業者300が把持して壁面210に塗装された塗装材220を剥離するためのものであり、たとえば円盤状の研削砥石を回転させて壁面210に押し当てることで塗装材220を研削し、研削により壁面210から剥離した粉塵を吸引することが可能な吸引式グラインダーや、塗装材220を研削するための研削粒体を壁面210に衝突させることで塗装材220を研削し、研削により壁面210から剥離した粉塵を吸引することが可能なショットブラストなどが挙げられる。剥離装置110の詳細例は後述する。
剥離装置110は可撓性を有する材料で形成された吸引ホース140を介して集塵装置A130に接続される。また図1では、複数の剥離装置110が集塵装置A130を接続される例として説明し、複数の剥離装置110はそれぞれ、吸引ホース140aを介して分岐装置160に接続されている。
なお、接続する剥離装置110の数量は、吸引するバキューム装置120の能力によって任意に設定され、分岐装置160が分岐する分岐口を増減させることで任意に設定することができる。
分岐装置160は、複数の剥離装置110を集塵装置A130に接続するための分岐手段であって、たとえばバキューム装置120側の分岐装置160の一端に吸引ホース140bを介して集塵装置A130が接続される単口部161と、剥離装置110側の他端に複数の吸引ホース140aを介して複数の剥離装置110が接続される複口部162とを備えた分岐栓である。
図1の分岐装置160は他端側に4つの複口部162が設けられており、それぞれの複口部162に吸引ホース140aを介して剥離装置110が接続されている。これにより、複数の作業者300で同時に研削作業を行うことができる。なお、分岐装置160を介さずに剥離装置110を直接集塵装置A130に吸引ホース140を介して接続して、単体の剥離装置110で研削作業を行うようにしてもよい。
集塵装置A130は、剥離装置110で剥離させた空気に含まれる塗装材220の粉塵を集塵するための装置であって、吸引ホース140b、分岐装置160、および吸引ホース140aを介して剥離装置110に、また吸引ホース140cを介して空気清浄装置B130に接続されている。
集塵装置A130は、たとえばバグフィルターと呼ばれる微細な粉塵や煤塵、微細な有害物質などを除去する集塵フィルターA131を着脱自在に内蔵したレシーバータンクであって、集塵フィルターA131と、集塵フィルターA131を内部に格納する集塵タンク本体132と、集塵タンク本体A132の内側に設置されて集められた粉塵をためる集塵袋A133とを備えている。
また、集塵タンク本体A132には、吸引ホース140bが接続される吸引口A134と、吸引ホース140cが接続される排気口A135とが設けられており、吸引口A134側と排気口A135側とが集塵フィルターA131によって分離されている。
集塵フィルターA131は主にガラス繊維などの細かい繊維を筒状に形成した「ろ布」などで構成されており、集塵フィルターA131の内側から、吸引ホース140bが接続された吸引口A134より吸引された塗装材220の粉塵が含まれる空気を通すことで、ろ布に粉塵が吸着し、排気から有害物質である塗装材220が除去される。
また、集塵フィルターA131の内側から、空気を勢いよく通すことで、払い落とされた粉塵が集塵袋A133に貯まり、集塵フィルターA131を通して粉塵が除去された空気は、集塵タンク本体A132に集塵フィルターA131を介して吸引口A134と反対側に設けられた排気口A135より排気され、排気口A135に接続された吸引ホース140cを介して空気清浄装置B130に送られる。
空気清浄装置B130は、集塵装置A130で集塵した空気をさらに浄化するため装置であって、吸引ホース140cを介して集塵装置A130に、また吸引ホース140dを介してバキューム装置120に接続されている。
空気清浄装置B130は、たとえばHEPAフィルターと呼ばれる空気中からゴミ、塵埃などを取り除くことで清浄空気にするHEPAフィルターB131を着脱自在に内蔵した装置であって、HEPAフィルターB131と、HEPAフィルターB131を内部に格納する装置本体B132とを備えている。
また、装置本体B132には、吸引ホース140cが接続される吸引口B133と、吸引ホース140dが接続される排気口B134とが設けられており、吸引口B133側と排気口B134側とがHEPAフィルターB131によって分離されている。
HEPAフィルターB131の例として挙げるHEPAフィルターは、JIS(Japanese Industrial Standards)によって「定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルター」として規定されたフィルターである。
このHEPAフィルターのようなHEPAフィルターB131に、吸引ホース140cが接続された吸引口B133より吸引された空気を通すことで、集塵装置A130で補修されることなく吸引ホース140cを介して排気された空気に含まれる微細な塗装材220の粉塵を除去することができる。
またHEPAフィルターB131を通して粉塵が除去された空気は、装置本体B132にHEPAフィルターB131を介して吸引口B133と反対側に設けられた排気口B134より排気され、排気口B134に接続された吸引ホース140d、および切替手段150を介してバキューム装置120に送られる。
なお、上記のように空気清浄装置B130の全行程で、剥離装置110で剥離させた空気に含まれる塗装材220の粉塵を集塵装置A130で集塵することで、ほとんどの塗装材220の粉塵を集塵装置A130で除去することができるため、空気清浄装置B130への過度の負担がかからなくなり、空気清浄装置B130が備えるHEPAフィルターB131の交換頻度を低減させることができる。
切替手段150は、上記の剥離装置110、集塵装置A130、および空気清浄装置B130を備えた第1系統の除去系統への吸引と、同様に剥離装置110、集塵装置A130、および空気清浄装置B130を備えた第2系統の除去系統への吸引とを切替えるための切替弁であって、一端側にはバキューム装置120が、他端側には第1系統の除去系統が備える吸引ホース140dと第2系統の除去系統が備える吸引ホース140dとが接続されている。
この切替手段150を切替えることで、第1系統の除去系統への吸引と第2系統の除去系統への吸引とを切替えることができる。切替手段150で除去系統を切替えることでの有害物質を含む塗装材の除去方法についての詳細は後述する。
また切替手段150は、各系統の除去装置とバキューム装置120との接続部分に、各系統の除去装置への吸引を切替える切替弁だけでなく、各系統の後端部、つまり空気清浄装置B130とバキューム装置120との間に設けられる開閉弁であってもよい。
なお、本実施の形態では第1系統の除去系統、および第2系統の除去系統を備えた有害物質を含む塗装材の除去システムを例として説明するが、これ以上の系統、たとえば第3系統の除去装置、第4系統の除去装置と多系統の除去装置を備えた除去システムを構成することもできる。
バキューム装置120は、剥離装置110で壁面210から剥離した塗装材220を吸引するための吸引装置であって、切替手段150に接続されており、またここでは図示しない電源装置400の電力供給により吸引動作を行う。
バキューム装置120は、装置本体121の内部に、バキューム装置120に取り込まれた空気を清浄化するフィルター122、ルーツブロワー123、電動モーター124、および吐出サイレンサー125を備え、これらの内部機器は排気管126によって接続されている。
バキューム装置120は、切替手段150によって任意に切替えられた第1系統、または第2系統の除去系統から吸引を行い、空気清浄装置B130で浄化された空気をさらにフィルター122を通すことによって、塗装材220を完全に除去した状態で吐出サイレンサー125に伝わり、排気音が低減された状態で外気に排出することができる。また、空気清浄装置B130で浄化された空気をさらにフィルター122を通すことによって、バキューム装置120への負荷を低減することができる。
バキューム装置120では、電動モーター124が駆動することで、ルーツブロワー123が回転し、排気管126を通じて装置本体121内部の気体が排出されることで、切替手段150に接続された吸引口127に吸引力を発生させている。
この吸引力により、切替手段150を介して接続された第1系統、または第2系統の除去系統の吸引ホース140dを通って空気清浄装置B130に伝わり、空気清浄装置B130から吸引ホース140cを通って集塵装置A130に伝わり、集塵装置A130から吸引ホース140bを通って分岐装置160に伝わって分岐され、分岐装置160から吸引ホース140aを通って剥離装置110が壁面210から剥離した塗装材220を吸引する。
なお、バキューム装置120の吸引能力は、装置本体121内部で回転させるルーツブロワー123の数量や大きさによって変化し、ルーツブロワー123による吸引は装置本体121内の真空圧を高くすることができるため、塗装材220の吸引作業を効率よくおこなうことができる。また、吸引力が高いため、バキューム装置120を剥離装置110から離れた場所に設置しても吸引が可能となり、また複数の剥離装置110により吸引も可能となる。
本実施の形態の有害物質を含む塗装材の除去システム100では、集塵装置A130が備える集塵フィルターA131、空気清浄装置B130が備えるHEPAフィルターB131、およびバキューム装置120が備えるフィルター122の3段階のフィルターで塗装材220を除去できるので、より清浄化された空気を外気に排出することができる。
次に、第1系統、および第2系統の除去系統を備え、第1系統、または第2系統の除去系統への吸引を切替える切替手段150として、切替弁を備えた有害物質を含む塗装材の除去システムにより、壁面210に塗装された塗装材220を除去する際の作業手順を説明する。
まず剥離装置110、集塵装置A130、および空気清浄装置B130を備えた第1系統の除去系統で吸引が行えるように切替手段150を切替えて、バキューム装置120と第1系統の除去系統とが接続された状態にする。なお、このとき第2系統の除去系統では、切替手段150によって接続が遮断され、吸引が行えない状態となる。
次に、装置操作担当の作業者310は、バキューム装置120が接続された電源装置400の電源を投入してバキューム装置120を起動させる。これにより、バキューム装置120で吸引力が発生し、接続された第1系統の剥離装置110に取り付けられた吸引ホース140aの先端から吸引が開始される。
次に、研削作業を行う複数の作業者320は、それぞれの剥離装置110を起動させる。第1系統の剥離装置110が起動することで、作業者320は、壁面210の塗装された塗装材220を壁面210から剥離させることができる。これにより、第1系統の剥離装置110が塗装材220を研削して除去する作業が開始される。
この研削作業により壁面210から剥離された塗装材220の粉塵が、吸引ホース140aの先端開口から吸引される。この吸引された塗装材220の粉塵は、まず、吸引ホース140aを通って分岐装置160で合流し、吸引ホース140bを通って集塵装置A130へ流入する。この流入した塗装材220の粉塵は、集塵装置A130が備える集塵フィルターA131によって捕集される。
このとき集塵装置A130が備える集塵フィルターA131を通過した微細な塗装材220の粉塵は、吸引ホース140cを通って空気清浄装置B130へ流入する。この空気清浄装置B130に流入した微細な塗装材220の粉塵は、空気清浄装置B130が備えるHEPAフィルターB131ほぼ完全に捕集される。
このような作業者320による研削作業が行われると、やがて集塵装置A130での集塵能力が限界になり、集塵装置A130が備える集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換が必要になってくる。
従来では、ここでバキューム装置120が接続された電源装置400の電源を作業者310が切ってバキューム装置120の駆動を停止させて、作業者320による研削作業を中止し、集塵装置A130が備える集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換を作業者310などが行っていた。
しかし、本実施の形態の有害物質を含む塗装材の除去システム100では、第1系統の除去系統で吸引が行えるように接続されていた切替手段150を切替えて、第2系統の除去系統で吸引が行えるようにバキューム装置120と第2系統の除去系統とが接続された状態にすることで容易に第2系統の除去系統で吸引が行えるようにすることができる。
具体的には、集塵装置A130での集塵能力が限界になり、集塵装置A130が備える集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換が必要になった場合、まず作業者320は手元の第1系統の剥離装置110の電源を切り、第2系統の剥離装置110を手にして研削作業の準備を行う。
このときに作業者310は、切替手段150を切替える準備を行い、作業者320による剥離装置110の持ちかえ作業が終わった後に、第1系統の除去系統で吸引が行えるように接続されていた切替手段150を切替えて、第2系統の除去系統で吸引が行えるようにバキューム装置120と第2系統の除去系統とが接続された状態にする。
作業者310による切替手段150の切替作業が完了すると、それぞれの作業者320は手持ちの第2系統の剥離装置110を起動させる。第2系統の剥離装置110が起動することで、作業者320は、壁面210の塗装された塗装材220を壁面210から剥離させることができる。
これにより、容易に第2系統の剥離装置110で塗装材220を研削して除去する作業を開始することができ、作業者320はほとんど作業を中止することなく研削作業を続けることができる。
またバキューム装置120の電源を切る必要がないため、バキューム装置120の内圧を維持したまま、作業者320は連続して研削作業を行うことができる。これによりバキューム装置120が正常に吸引を行えるまで待機する時間が不要になり、塗装材220の除去作業の実働時間を向上させることができる。
作業者310による第1系統から第2系統の除去系統への切替手段150の切替作業が完了し、第2系統での作業者320による研削作業が開始されると、吸引が停止されている第1系統における集塵能力が低下した集塵装置A130の集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換を行う。
これにより、現在研削作業を行っている第2系統の除去系統の集塵装置A130で集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換が必要になった場合でも、第2系統の除去系統で吸引が行えるように接続されていた切替手段150を切替えて、第1系統の除去系統で吸引が行えるようにバキューム装置120と第1系統の除去系統とが接続された状態にすることで、容易に第1系統の除去系統で吸引が行えるようにすることができる。
以上のように、作業者310が切替手段150を切替えるだけで、第1系統から第2系統の除去系統が切替えられるので、作業者320は、研削作業を止めることなく、塗装材220の除去作業を続けることができる。
なお、第1系統および第2系統の剥離装置110を、作業者320が作業する同じ場所に配置することもできるし、第1系統および第2系統の剥離装置110を異なる作業場所に配置し、作業者310が切替手段150を切替えると同時に、作業者320が第1系統の剥離装置110が配置された場所から、第2系統の剥離装置110が配置された場所に移動して次の研削作業を行うようにしてもよい。
また第1系統および第2系統の剥離装置110を、作業者320が作業する同じ場所に配置する際は、第1系統の剥離装置110と第2系統の剥離装置110とを識別できるように、剥離装置110にラベルを貼り付けたり、第1系統と第2系統とを識別可能な色の吸引ホース140aで接続したりするとよい。
次に、第1系統、および第2系統の除去系統を備え、第1系統、または第2系統の除去系統への吸引を切替える切替手段150として、第1系統の空気清浄装置B130とバキューム装置120との間に設けられた開閉弁161と第2系統の空気清浄装置B130とバキューム装置120との間に設けられた開閉弁162を備えた有害物質を含む塗装材の除去システムにより、壁面210に塗装された塗装材220を除去する際の作業手順を説明する。なお、前述の作業手順と同様の作業手順や工程については、適宜その作業の説明を省略する。
まず剥離装置110、集塵装置A130、および空気清浄装置B130を備えた第1系統の除去系統で吸引が行えるように開閉弁161を開栓して、バキューム装置120と第1系統の除去系統とが接続された状態にする。また開閉弁162を閉栓して、バキューム装置120と第2系統の除去系統とが切断された状態にする。
次に、装置操作担当の作業者310はバキューム装置120を起動させ、作業者320は第1系統の剥離装置110を起動させ、第1系統の剥離装置110が塗装材220を研削して除去する作業が開始される。
このような作業者320による研削作業が行われると、やがて集塵装置A130での集塵能力が限界になり、集塵装置A130が備える集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換が必要になってくる。
そこで、第1系統の除去系統で吸引が行えるように開栓されていた開閉弁161を閉栓し、次に第2系統の除去系統で吸引が行えるように開閉弁162を開栓してバキューム装置120と第2系統の除去系統とが接続された状態にすることで容易に第2系統の除去系統で吸引が行えるようにすることができる。
具体的には、集塵装置A130での集塵能力が限界になり、集塵装置A130が備える集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換が必要になった場合、まず作業者320は手元の第1系統の剥離装置110の電源を切り、第2系統剥離装置110を手にして研削作業の準備を行う。
このときに作業者310は、第1系統の開閉弁161を閉栓する準備を行い、作業者320による剥離装置110の持ちかえ作業が終わった後に、第1系統の除去系統で吸引が行えるように開栓されていた開閉弁161を閉栓し、第2系統の除去系統で吸引が行えるように第2系統の開閉弁162を開栓してバキューム装置120と第2系統の除去系統とが接続された状態にする。
作業者320による開閉弁161および開閉弁162による切替作業が完了すると、それぞれの作業者320は手持ちの第2系統の剥離装置110を起動させる。第2系統の剥離装置110が起動することで、作業者320は、壁面210の塗装された塗装材220を壁面210から剥離させることができる。
これにより、容易に第2系統の剥離装置110で塗装材220を研削して除去する作業を開始することができ、作業者320はほとんど作業を中止することなく研削作業を続けることができる。
またバキューム装置120の電源を切る必要がないため、バキューム装置120の内圧を維持したまま、作業者320は連続して研削作業を行うことができる。これによりバキューム装置120が正常に吸引を行えるまで待機する時間が不要になり、塗装材220の除去作業の実働時間を向上させることができる。
作業者310による第1系統から第2系統の除去系統への開閉弁161および開閉弁162による切替作業が完了し、第2系統での作業者320による研削作業が開始されると、吸引が停止されている第1系統における集塵能力が低下した集塵装置A130の集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換を行う。
以上のように、作業者310が開閉弁161および開閉弁162の開閉で接続を切替えられるので、作業者320は、研削作業を止めることなく、塗装材220の除去作業を続けることができる。
次に、第1系統、第2系統、および図示しない第3系統の除去系統を備え、第1系統、第2系統、または第3系統の除去装置への吸引を切替える切替手段150として、切替弁を備えた有害物質を含む塗装材の除去システムにより、壁面210に塗装された塗装材220を除去する際の作業手順を説明する。
まず剥離装置110、集塵装置A130、および空気清浄装置B130を備えた第1系統、および第2系統の除去系統で吸引が行えるように切替手段150を切替えて、バキューム装置120と第1系統の除去系統とが接続された状態にする。なお、このとき第3系統の除去装置では、切替手段150によって接続が遮断され、吸引が行えない状態となる。
また、この場合の切替手段150は、任意の除去系統の接続または切断を自在に設定でき、複数の除去系統を接続状態、またはすべての除去系統を切断状態にすることができるものとして説明する。
次に、装置操作担当の作業者310は、バキューム装置120が接続された電源装置400の電源を投入してバキューム装置120を起動させる。これにより、バキューム装置120で吸引力が発生し、接続された第1系統、および第2系統の剥離装置110に取り付けられた吸引ホース140aの先端から吸引が開始される。
次に、第1系統の研削作業を行う複数の作業者320および第2系統の研削作業を行う複数の作業者330は、それぞれの剥離装置110を起動させる。第1系統および第2系統の剥離装置110が起動することで、作業者320および作業者330は、壁面210の塗装された塗装材220を壁面210から剥離させることができる。これにより、第1系統および第2系統の剥離装置110が塗装材220を研削して除去する作業が開始される。
このような作業者320による研削作業が行われると、やがて第1系統または第2系統の集塵装置A130での集塵能力が限界になり、第1系統または第2系統の集塵装置A130が備える集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換が必要になってくる。なお、ここでは第1系統の集塵装置A130での集塵能力が限界になり、第1系統の集塵装置A130が備える集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換する例で以下を説明する。
第1系統の集塵装置A130での集塵能力が限界になり、第1系統の集塵装置A130が備える集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換が必要になった場合、まず第1系統の作業者320は手元の第1系統の剥離装置110の電源を切り、第3系統の剥離装置110を手にして研削作業の準備を行う。第3系統の剥離装置110が第1系統の剥離装置110と異なる位置に配置されている場合には、作業者320は移動して第3系統の剥離装置110を手にして研削作業の準備を行う。
このときに作業者310は、切替手段150によって第1系統を切断する準備を行い、作業者320による剥離装置110の持ちかえ作業が終わった後に、第1系統の除去系統で吸引が行えるように接続されていた切替手段150を切断し、第3系統の除去装置で吸引が行えるように第3系統の剥離装置110とバキューム装置120とが接続された状態にする。
作業者310による切替手段150の切替作業が完了すると、それぞれの作業者320は手持ちの第3系統の剥離装置110を起動させる。第3系統の剥離装置110が起動することで、作業者320は、壁面210の塗装された塗装材220を壁面210から剥離させることができる。
これにより、容易に第3系統の剥離装置110で塗装材220を研削して除去する作業を開始することができ、作業者320はほとんど作業を中止することなく研削作業を続けることができる。
またバキューム装置120の電源を切る必要がないため、バキューム装置120の内圧を維持したまま、作業者320は連続して研削作業を行うことができる。これによりバキューム装置120が正常に吸引を行えるまで待機する時間が不要になり、塗装材220の除去作業の実働時間を向上させることができる。
作業者310による接続された第1系統の除去系統の剥離装置110を切断し、第3系統の除去系統への剥離装置110を接続する切替作業が完了し、第3系統での作業者320による研削作業が開始されると、吸引が停止されている第1系統における集塵能力が低下した集塵装置A130の集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換を行う。
以上のように、作業者310が切替手段150で任意の除去系統の接続を切替えられるので、作業者320は、研削作業を止めることなく、塗装材220の除去作業を続けることができる。
また第1系統の集塵装置A130と第2系統の集塵装置A130とが同時に集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換の必要が予測される場合には、さらに第2系統の除去系統を用意し、切替手段150の切替作業で第1系統を第3系統に、また第2系統を第4系統に切替えることで、作業者320はほとんど作業を中止することなく研削作業を続けることができる。
なお、上記の説明では、集塵装置A130の集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換を行う例で説明したが、集塵装置A130よりも交換頻度は少ないが、空気清浄装置B130のHEPAフィルターB131を交換する場合にも同様に、切替手段150や開閉弁161および開閉弁162による切替操作で、作業者320はほとんど作業を中止することなく研削作業を続けることができる。
図2は、剥離装置の一例である吸引式グラインダーの構成を示す断面図である。
図2に示すように、剥離装置110の一例である吸引式グラインダーA110は、ここでは図示しない回転駆動させるモーター部を備えた本体部A111、本体部A111より突出して本体部A111が備えるモーター部の回転駆動により回転するモーター軸A112、モーター軸A112の先端に連結された円盤状の研削砥石A113、および本体部A111からモーター軸A112と研削砥石A113とを覆うように設けられた金属製のカバー部A114を備えている。
本体部A111の一方の先端側は、カバー部A114の中心部に本体部A111の径と同じ径で形成された貫通孔に差し込まれて固定されている。また、本体部A111の先端側から突出するように設けられたモーター軸A112の先端に連結された研削砥石A113の研削面A113aは、カバー部A114の開口部A114aから露出するように設けられている。
研削砥石A113は、たとえば円盤状の砥石であって、研削面A113aに凹凸を多数備え、酸化アルミニウムやケイ素などの硬質材で円盤状に形成されたものである。また、研削砥石A113は、本体部A111に組み込まれたモーター部による回転駆動で回転し、壁面210に塗装された塗装材220を剥離することができる。
また、カバー部A114の開口部A114aの周端部には、ブラシA115が所定の長さで壁面210または塗装材220と接するように設けられており、このブラシA115が開口部A114aの周端で壁面210または塗装材220と接することで、剥離した塗装材220の粉塵の飛散を防止することができる。
カバー部A114の一部には、内部の空間と連通し、吸引ホース140aと連結するための連結孔A114bが設けられている。また連結孔A114bには、吸引ホース140aの先端が連結される。
吸引式グラインダーA110では、作業者320が本体部A111を把持した状態で、本体部A111に組み込まれたモーター部を駆動させる。次に、作業者320は吸引式グラインダーA110を壁面210に塗装された塗装材220に開口部A114aを向けて接近させる。
次に、作業者320はブラシA115の先端を壁面210に塗装された塗装材220に押し当てながら、回転する研削砥石A113の研削面A113aで壁面210に塗装された塗装材220を研削する。
このとき、連結孔A114bに接続された吸引ホース140aから、バキューム装置120の吸引動作により、カバー部A114およびブラシA115で密閉されたカバー部A114内部の空気が吸引され、これと同時に研削により剥離された塗装材220の粉塵が吸引ホース140aの先端方向から後端方向に向かって吸引される。
図3は、剥離装置の一例である吸引式ショットブラストの構成を示す断面図である。
図3に示すように、剥離装置110の一例である吸引式ショットブラストB110は、
塗装材220を研削するための研削粒体B111を壁面210に衝突させることで塗装材220を研削し、研削により壁面210から剥離した粉塵を吸引するためのものであり、ノズルヘッドB112、粒体回収分離タンクB113、および加圧タンクB114を備えている。
ノズルヘッドB112は、研削粒体B111を壁面210に向かって噴射するための筒状の噴射ノズルB112aと、研削粒体B111を壁面210に衝突させることで研削した塗装材220を回収するための連結孔B112bとを備えた金属製のカバー部B112cで構成される。
筒状の噴射ノズルB112aの一方の先端側は、カバー部B112cの中心部に噴射ノズルB112aの径と同じ径で形成された貫通孔に差し込まれて固定されている。
また、カバー部B112cの開口部B112dの周端部には、ブラシB112eが所定の長さで壁面210または塗装材220と接するように設けられており、このブラシB112eが開口部B112dの周端で壁面210または塗装材220と接することで、剥離した塗装材220の粉塵の飛散を防止することができる。
また噴射ノズルB112aは、カバー部B112cの中心部から開口部B112dの中心に向かって固定されており、ブラシB112eで囲まれた領域の中心に研削粒体B111を噴射するようになっている。
カバー部B112cの一部には、内部の空間と連通し、吸引ホースB115を介して粒体回収分離タンクB113と連結するための連結孔B112bが設けられている。また連結孔B112bには、吸引ホースB115の先端が連結される。
粒体回収分離タンクB113は、研削された塗装材220の粉塵と研削粒体B111とを回収し、回収した塗装材220の粉塵と研削粒体B111と分離するためのものである。
回収された研削粒体B111は塗装材220の粉塵と比較して重量があるため、粒体回収分離タンクB113の下部に設けられた加圧タンクB114に落下して回収される。塗装材220の粉塵は、粒体回収分離タンクB113に連接された吸引ホース140aによって吸引される。
加圧タンクB114に回収された研削粒体B111は、エアー圧力が加えられた後に、ブラストホースB116を介して、ノズルヘッドB112に圧送される。ノズルヘッドB112に再び圧送された研削粒体B111は、噴射ノズルB112aから壁面210に向かって噴射される。このように、研削粒体B111は、ノズルヘッドB112、粒体回収分離タンクB113、および加圧タンクB114内を循環する。
吸引式ショットブラストB110では、作業者320がノズルヘッドB112を把持し、ノズルヘッドB112の開口部B112dを壁面210に塗装された塗装材220に押し当てる。
ノズルヘッドB112を壁面210に押し当てた状態で、加圧タンクB114を駆動させると、研削粒体B111は、ノズルヘッドB112、粒体回収分離タンクB113、および加圧タンクB114内を循環して壁面210に塗装された塗装材220を研削する。
このとき、連結孔B112bに接続された吸引ホースB115から、バキューム装置120の吸引動作により、カバー部B112cおよびブラシB112eで密閉されたカバー部B112c内部の空気が吸引され、これと同時に研削により剥離された塗装材220の粉塵と研削粒体B111とが吸引ホースB115の先端方向から後端方向に向かって吸引される。
吸引ホースB115を介して吸引された塗装材220の粉塵と研削粒体B111とは、粒体回収分離タンクB113で分離されて、塗装材220の粉塵は吸引ホース140aの先端方向から後端方向に向かって吸引される。
図4は、第1の実施の形態に係る有害物質を含む塗装材の除去システムの全体を示す断面図である。
図4に示すように、有害物質を含む塗装材の除去システム100は、作業者320が把持して使用する剥離装置110、バキューム装置120、集塵装置A130、空気清浄装置B130、吸引ホース140(150a~150d)、および切替手段150を備えており、バキューム装置120は電源装置400により電源の供給を受けている。
集塵装置A130および空気清浄装置B130は、たとえば密閉状の収納室600の床上に配置され、空気清浄装置B130および電源装置400は、収納室600とは別の室外などに配置されている。
収納室600は、集塵装置A130および空気清浄装置B130を密閉する加工物であり、これにより、集塵装置A130での集塵能力が限界になり、集塵装置A130が備える集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換、または空気清浄装置B130での空気清浄能力が限界になり、空気清浄装置B130が備えるHEPAフィルターB131の交換が必要になり、これらの交換作業を行う際に、塗装材220の粉塵が外気に飛散しないようにするためのものである。
収納室600は、たとえば、直方体形状に組み立てられた骨組みを、ビニールやポリエチレン製などの樹脂製のシートで覆うとよい。また収納室600を構成するシートの必要な箇所には、吸引ホース140bや吸引ホース140dを貫通する貫通孔を設けるとよい。
また、集塵フィルターA131や集塵袋A133またはHEPAフィルターB131を交換する際に、作業者310が出入りするための人通孔を設けることもできる。人通孔は人通孔を閉口する扉部を設け、面ファスナーや線ファスナーを用いて骨組みを覆うシートと着脱可能に固定することで収納室600の密閉性を維持することができる。
また、有害物質を含む塗装材の除去システム100では、収納室600に収納室600内の気圧を低下させるための負圧装置500を配置することもできる。
たとえば、負圧装置500は密閉された収納室600の内部に配置され、密閉された収納室600内の空気を吸引し、負圧装置500から収納室600の外部に排出された排気ホース510を介して密閉された収納室600内の空気を排気する。
これにより、密閉された収納室600内部の気圧を外気よりも低下させることができる。このため、たとえば集塵フィルターA131や集塵袋A133またはHEPAフィルターB131を交換する際に、塗装材220の粉塵が収納室600内で飛散したとしても、収納室600の内部気圧が外気よりも低下しているため、外気が収納室600の内部に入り込むことはあるが、収納室600内の空気が外気に移動することがなく、飛散した塗装材220の粉塵が外気に漏出することはない。
また、集塵フィルターA131や集塵袋A133またはHEPAフィルターB131を交換する際に作業者310が出入りしても、収納室600内の空気が外気に移動することがなく、安全に集塵フィルターA131や集塵袋A133またはHEPAフィルターB131の交換作業を行うことができる。
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態の有害物質を含む塗装材の除去システムは、フィルター等の交換時の作業工程が異なる以外は、第1の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
図5は、第2の実施の形態に係る有害物質を含む塗装材の除去システムの概念を示すブロック図である。
図5に示すように除去システム100は、ここでは図示しない建造物200の壁面210に塗装されたアスベストなどの有害物質を含有する塗装材220を除去するためのものである。なお、本実施の形態では、除去システム100で壁面210に塗装された塗装材220を除去する場合を例として以下を説明する。
除去システム100は、ここでは図示しない作業者300が把持して壁面210に塗装された塗装材220を剥離するための剥離装置110、および剥離装置110で壁面210から剥離した塗装材220を吸引するためのバキューム装置120を備え、剥離装置110とバキューム装置120との間には、剥離装置110で剥離させた空気に含まれる塗装材220の粉塵を集塵して浄化するための集塵清浄手段130を備えており、剥離装置110、バキューム装置120、および集塵清浄手段130は、吸引ホース140(150a~150d)を介して接続されている。
また、集塵清浄手段130は、たとえば剥離装置110で剥離させた空気に含まれる塗装材220の粉塵を集塵するための集塵装置A130、および集塵装置A130で集塵した空気をさらに浄化するための空気清浄装置B130で構成されている。
また除去システム100は、剥離装置110、集塵装置A130、および空気清浄装置B130を備えた第1系統の除去系統と、集塵装置A130、および空気清浄装置B130を備えた第2系統の除去系統とを備え、各系統の除去装置は、第1系統、および第2系統への除去系統を切替えるための切替手段150に接続されている。
さらに、第1系統の除去系統は、複数の剥離装置110を備えることができ、この場合、一端側にバキューム装置120側に接続される単口部161と、他端側に複数の剥離装置110が接続される複口部162とを備える分岐装置160を介して複数の剥離装置110が集塵装置A130に接続される。
次に第1系統の各装置の詳細を作業者300が把持する先端側の剥離装置110から、後端側のバキューム装置120に向かって順に説明する。
剥離装置110は、作業者300が把持して壁面210に塗装された塗装材220を剥離するためのものである。
分岐装置160は、複数の剥離装置110を集塵装置A130に接続するための分岐手段である。
集塵装置A130は、剥離装置110で剥離させた空気に含まれる塗装材220の粉塵を集塵するための装置であって、吸引ホース140b、分岐装置160、および吸引ホース140aを介して剥離装置110に、また吸引ホース140cを介して空気清浄装置B130に接続されている。
さらに吸引ホース140bの途中には、吸引ホース140bを開栓または閉栓し、集塵装置A130閉栓した場所で切り離すことができるジョイント部170を備えている。ジョイント部170は、吸引ホース140bの途中に設けることもできるが、吸引ホース140bと集塵装置A130との接合部分に設けることもできる。
ジョイント部170は、集塵装置A130側に接続された吸引ホース140b-1の端部に設けられた雄ジョイント部171と、分岐装置160側に接続された分岐装置160の端部に設けられた雌ジョイント部172とで構成され、雄ジョイント部171と雌ジョイント部172とが結合することで、吸引ホース140b-1と吸引ホース140b-2とが接続され、一連の吸引ホース140を構成することができる。
たとえばジョイント部170は、両口ジョイントの継ぎ手であって、開口された状態で雄ジョイント部171と雌ジョイント部172とを切断し、雄ジョイント部171と雌ジョイント部172との開口部にメクラ栓などで蓋をするようにしてもよい。
空気清浄装置B130は、集塵装置A130で集塵した空気をさらに浄化するため装置であって、吸引ホース140cを介して集塵装置A130に、また吸引ホース140dを介してバキューム装置120に接続されている。
切替手段150は、上記の剥離装置110、集塵装置A130、および空気清浄装置B130を備えた第1系統の除去系統への吸引と、集塵装置A130、および空気清浄装置B130を備えた第2系統の除去系統への吸引と、第1系統の除去系統への吸引と第2系統の除去系統への吸引とを停止して閉栓した状態と、を切替えるための切替弁であって、一端側にはバキューム装置120が、他端側には第1系統の除去系統が備える吸引ホース140dと第2系統の除去系統が備える吸引ホース140dとが接続されている。
この切替手段150を切替えることで、第1系統の除去系統への吸引と第2系統の除去系統への吸引とを切替えることができる。切替手段150で除去系統を切替えることでの有害物質を含む塗装材の除去方法についての詳細は後述する。
なお、本実施の形態では第1系統の除去系統、および第2系統の除去系統を備えた有害物質を含む塗装材の除去システムを例として説明するが、これ以上の系統、たとえば第3系統の除去装置、第4系統の除去装置と多系統の除去装置を備えた除去システムを構成することもできる。
バキューム装置120は、剥離装置110で壁面210から剥離した塗装材220を吸引するための吸引装置であって、切替手段150に接続されており、またここでは図示しない電源装置400の電力供給により吸引動作を行う。
次に、第1系統、および第2系統の除去系統を備え、第1系統、または第2系統の除去系統への吸引を切替える切替手段150として、切替弁を備えた有害物質を含む塗装材の除去システムにより、壁面210に塗装された塗装材220を除去する際の作業手順を説明する。
次に第2系統の各装置の詳細を先端側から後端側のバキューム装置120に向かって順に説明する。また第1系統の除去系統と同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
集塵装置A130は、剥離装置110で剥離させた空気に含まれる塗装材220の粉塵を集塵するための装置であって、剥離装置110が接続される側に吸引ホース140b-1が接続され、吸引ホース140b-1の端部に雄ジョイント部171が吸引ホース140b-1を閉栓した状態で設けられている。
集塵装置A130からバキューム装置120までは第1系統の除去系統と同様の構成であるため説明を省略する。
次に、第1系統、および第2系統の除去系統を備え、第1系統、または第2系統の除去系統への吸引を切替える切替手段150として、切替弁を備えた有害物質を含む塗装材の除去システムにより、壁面210に塗装された塗装材220を除去する際の作業手順を説明する。
まず剥離装置110、集塵装置A130、および空気清浄装置B130を備えた第1系統の除去系統で吸引が行えるように切替手段150を切替えて、バキューム装置120と第1系統の除去系統とが接続された状態にする。なお、このとき第2系統の除去系統では、切替手段150によって接続が遮断され、吸引が行えない状態となる。
次に、装置操作担当の作業者310は、バキューム装置120が接続された電源装置400の電源を投入してバキューム装置120を起動させる。これにより、バキューム装置120で吸引力が発生し、接続された第1系統の剥離装置110に取り付けられた吸引ホース140aの先端から吸引が開始される。
次に、研削作業を行う複数の作業者320は、それぞれの剥離装置110を起動させる。第1系統の剥離装置110が起動することで、作業者320は、壁面210の塗装された塗装材220を壁面210から剥離させることができる。これにより、第1系統の剥離装置110が塗装材220を研削して除去する作業が開始される。
このような作業者320による研削作業が行われると、やがて集塵装置A130での集塵能力が限界になり、集塵装置A130が備える集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換が必要になってくる。
そこで、本実施の形態の有害物質を含む塗装材の除去システム100では、第1系統の除去系統で吸引が行えるように接続されていた切替手段150を切替えて、第2系統の除去系統で吸引が行えるようにバキューム装置120と第2系統の除去系統とが接続された状態にすることで容易に第2系統の除去系統で吸引が行えるようにすることができる。
具体的には、第1系統の集塵装置A130での集塵能力が限界になり、第1系統の集塵装置A130が備える集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換が必要になった場合、まず作業者320は手元の第1系統の剥離装置110の電源を切る。
次に作業者310は、切替手段150を切替えて、第1系統の除去系統への吸引と第2系統の除去系統への吸引とを停止して閉栓した状態にする。
その後、切替手段150の閉栓作動によりバキューム装置120による吸引動作が停止したら、作業者310が、第1系統の除去系統に接続されている剥離装置110をジョイント部170で切断する。
このとき、ジョイント部170は吸引ホース140bを閉栓した状態で、雄ジョイント部171と雌ジョイント部172とを切り離すとよい。これは、雄ジョイント部171と雌ジョイント部172とが共に閉栓した状態で切り離されることで、雄ジョイント部171では、塗装材220の粉塵が集塵装置A130側から逆流することを防止でき、また雌ジョイント部172では、塗装材220の粉塵が剥離装置110側から流入することを防止することができるからである。
次に、第1系統のジョイント部170で切断した雌ジョイント部172を、第2系統の雄ジョイント部171に接続する。これにより、第1系統の除去系統では剥離装置110がジョイント部170で切り離され、切り離れた剥離装置110が第2系統のジョイント部170で接続され、以後第2系統の剥離装置110として使用される。
次に、第2系統の吸引ホース140bで閉栓状態にあるジョイント部170を開栓し、作業者310は切替手段150を切替えて、バキューム装置120と第2系統の除去系統とが接続された状態にする。
作業者310による切替手段150の切替作業が完了すると、それぞれの作業者320は手持ちの第2系統の剥離装置110を起動させる。第2系統の剥離装置110が起動することで、作業者320は、壁面210の塗装された塗装材220を壁面210から剥離させることができる。
これにより、容易に第2系統の剥離装置110で塗装材220を研削して除去する作業を開始することができ、作業者320はほとんど作業を中止することなく研削作業を続けることができる。また、第1の実施の形態に係る有害物質を含む塗装材の除去システム100と比較して、手持ちの剥離装置110を持ち替える必要がなくなるため、より塗装材220の除去作業の実働時間を向上させることができる。
またバキューム装置120の電源を切る必要がないため、バキューム装置120の内圧を維持したまま、作業者320は連続して研削作業を行うことができる。これによりバキューム装置120が正常に吸引を行えるまで待機する時間が不要になり、塗装材220の除去作業の実働時間を向上させることができる。
作業者310による第1系統から第2系統の除去系統への切替手段150の切替作業が完了し、第2系統での作業者320による研削作業が開始されると、吸引が停止されている第1系統における集塵能力が低下した集塵装置A130の集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換を行う。
これにより、現在研削作業を行っている第2系統の除去系統の集塵装置A130で集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換が必要になった場合でも、第2系統の除去系統で吸引が行えるように接続されていた切替手段150を切替えて閉栓状態にし、第2系統の剥離装置110を閉栓状態にしたジョイント部170で切り離してから第1系統の除去系統に接続し、さらに切替手段150を切替えて第1系統の除去系統で吸引が行えるようにバキューム装置120と第1系統の除去系統とが接続された状態にすることで、容易に第1系統の除去系統で吸引が行えるようにすることができる。
以上のように、作業者310が切替手段150を切替え、第1系統の除去系統から第2系統の除去系統へと剥離装置110を付け替えるだけで、第1系統から第2系統の除去系統が切替えられるので、作業者320は、研削作業を止めることなく、塗装材220の除去作業を続けることができる。
次に、第1系統、第2系統、および図示しない第3系統の除去系統を備え、第1系統、第2系統、または第3系統の除去装置への吸引を切替える切替手段150として、切替弁を備えた有害物質を含む塗装材の除去システムにより、壁面210に塗装された塗装材220を除去する際の作業手順を説明する。
なお、ここでは、図5に示すように、第1系統の除去系統にはジョイント部170より先端側に剥離装置110が接続されており、第2系統の除去系統にはジョイント部170で閉栓され、さらに第3系統の除去装置にはジョイント部170より先端側に剥離装置110が接続されたものとして説明する。
まず剥離装置110、集塵装置A130、および空気清浄装置B130を備えた第1系統、および第3系統の除去装置で吸引が行えるように切替手段150を切替えて、バキューム装置120と第1系統および第3系統の除去装置とが接続された状態にする。なお、このとき第2系統の除去系統では、切替手段150によって接続が遮断され、吸引が行えない状態となる。
また、この場合の切替手段150は、任意の除去系統の接続または切断を自在に設定でき、複数の除去系統を接続状態、またはすべての除去系統を切断状態にすることができるものとして説明する。
次に、第1系統の装置操作担当の作業者310は、バキューム装置120が接続された電源装置400の電源を投入してバキューム装置120を起動させる。これにより、バキューム装置120で吸引力が発生し、接続された第1系統、および第3系統の剥離装置110に取り付けられた吸引ホース140aの先端から吸引が開始される。
次に、第1系統の研削作業を行う複数の作業者320および第3系統の研削作業を行う複数の作業者340は、それぞれの剥離装置110を起動させる。第1系統および第3系統の剥離装置110が起動することで、作業者320および作業者340は、壁面210の塗装された塗装材220を壁面210から剥離させることができる。これにより、第1系統および第3系統の剥離装置110が塗装材220を研削して除去する作業が開始される。
このような作業者320による研削作業が行われると、やがて第1系統または第3系統の集塵装置A130での集塵能力が限界になり、第1系統または第3系統の集塵装置A130が備える集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換が必要になってくる。なお、ここでは第3系統の集塵装置A130での集塵能力が限界になり、第3系統の集塵装置A130が備える集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換する例で以下を説明する。
第3系統の集塵装置A130での集塵能力が限界になり、第3系統の集塵装置A130が備える集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換が必要になった場合、まず、まず作業者340は手元の第3系統の剥離装置110の電源を切る。
次に作業者310は、切替手段150を切替えて、第2系統の除去系統への吸引と第3系統の除去装置への吸引とを停止して閉栓した状態にする。
その後、切替手段150の閉栓作動によりバキューム装置120による第3系統への吸引動作が停止したら、作業者310が、第3系統の除去装置に接続されている剥離装置110をジョイント部170で切断する。
このとき、ジョイント部170は吸引ホース140bを閉栓した状態で、雄ジョイント部171と雌ジョイント部172とを切り離すとよい。これは、雄ジョイント部171と雌ジョイント部172とが共に閉栓した状態で切り離されることで、雄ジョイント部171では、塗装材220の粉塵が集塵装置A130側から逆流することを防止でき、また雌ジョイント部172では、塗装材220の粉塵が剥離装置110側から流入することを防止することができるからである。
次に、第3系統のジョイント部170で切断した雌ジョイント部172を、第2系統の雄ジョイント部171に接続する。これにより、第3系統の除去装置では剥離装置110がジョイント部170で切り離され、切り離れた剥離装置110が第2系統のジョイント部170で接続され、以後第2系統の剥離装置110として使用される。
次に、第2系統の吸引ホース140bで閉栓状態にあるジョイント部170を開栓し、作業者310は切替手段150を切替えて、バキューム装置120と第2系統の除去系統とが接続された状態にする。
作業者310による切替手段150の切替作業が完了すると、それぞれの作業者320は手持ちの第2系統の剥離装置110を起動させる。第2系統の剥離装置110が起動することで、作業者320は、壁面210の塗装された塗装材220を壁面210から剥離させることができる。
これにより、容易に第2系統の剥離装置110で塗装材220を研削して除去する作業を開始することができ、作業者320はほとんど作業を中止することなく研削作業を続けることができる。
またバキューム装置120の電源を切る必要がないため、バキューム装置120の内圧を維持したまま、作業者320は連続して研削作業を行うことができる。これによりバキューム装置120が正常に吸引を行えるまで待機する時間が不要になり、塗装材220の除去作業の実働時間を向上させることができる。
作業者310による第3系統から第2系統の除去系統への切替手段150の切替作業が完了し、第2系統での作業者320による研削作業が開始されると、吸引が停止されている第3系統における集塵能力が低下した集塵装置A130の集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換を行う。
これにより、現在研削作業を行っている第1系統の除去系統の集塵装置A130で集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換が必要になった場合でも、第1系統の除去系統で吸引が行えるように接続されていた切替手段150を切替えて閉栓状態にし、第1系統の剥離装置110を閉栓状態にしたジョイント部170で切り離してから第3系統の除去装置に接続し、さらに切替手段150を切替えて第3系統の除去装置で吸引が行えるようにバキューム装置120と第1系統の除去系統とが接続された状態にすることで、容易に第3系統の除去装置で吸引が行えるようにすることができる。
以上のように、作業者310が切替手段150を切替え、第3系統の除去装置から第2系統の除去系統へと剥離装置110を付け替えるだけで、第3系統から第2系統の除去系統が切替えられるので、作業者320は、研削作業を止めることなく、塗装材220の除去作業を続けることができる。
なお、上記の説明では、集塵装置A130の集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換を行う例で説明したが、集塵装置A130よりも交換頻度は少ないが、空気清浄装置B130のHEPAフィルターB131を交換する場合にも同様に、切替手段150や開閉弁161および開閉弁162による切替操作で、作業者320はほとんど作業を中止することなく研削作業を続けることができる。
また、本実施の形態では、第1系統の除去系統と第2系統の除去系統とを、あらかじめ分岐装置160以端の1の剥離装置110に接続しておくこともできる。具体的には、、第1系統の除去系統と第2系統の除去系統とを1つの系統に1に収束する収束手段を備えたジョイント部170として設け、ジョイント部170以端に分岐装置160を介した剥離装置110を接続する。
これにより、剥離装置110とバキューム装置との間には第1系統の集塵清浄手段130と、第2系統の集塵清浄手段130とが接続された状態になる。このように接続すると、たとえば第1系統の集塵清浄手段130の集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換行う際に、切替手段150を切替えるだけで除去系統が切替えられ、ジョイント部170を接続し直す手間が省ける。
なお、収束手段を備えたジョイント部170やジョイント部170の前後に、集塵清浄手段130から剥離装置110方向へ気体が逆流してしまうことを防止する逆止弁を設けることで、集塵フィルターA131や集塵袋A133の交換時に、塗装材220の粉塵が逆流してしまうことを防止することができる。