JP7269208B2 - 電力変換器、電力変換器の制御方法、電力システム、電力システムの制御方法およびプログラム - Google Patents

電力変換器、電力変換器の制御方法、電力システム、電力システムの制御方法およびプログラム Download PDF

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Description

本発明は、電力変換器、電力変換器の制御方法、電力システム、電力システムの制御方法およびプログラムに関する。
化石エネルギーや原子力エネルギーに依存した大規模電力ネットワークの代替手段として、地産地消の電力を使用した電力ネットワークが注目されている。地産地消の電力を使用した電力ネットワークには、再生可能エネルギーを用いて発電する発電装置である太陽光発電装置(PhotoVoltaic:PV)、定置型蓄電装置、電気自動車(Electric Vehicle:EV)等、多種多様な機器が接続される。上記各機器は、直流電源であるので、直流(DC)での電力ネットワーク(DCグリッド)を構築する検討が進められている。
DCグリッドの制御方法として、上記各機器に接続された電力変換器が、中央制御部の指示に基づいて、上記各機器を定電流制御や定電圧制御をすることで、DCグリッドのDCバスの電力量を集中制御する方法がある。上記集中制御方法は、DCグリッド全体を簡易に制御することができるものの、電力の急激な需給変動に円滑に対応することが難しいという問題があった。また、上記集中制御方法は、特に、広範囲にわたって複数箇所で定電圧制御を行うと、電圧制御が不安定化して、DCバスの電圧の振動等の可能性があった。また、複数箇所での定電圧制御では、各機器の電力融通の負荷分担ができない、すなわち、各機器の電力供給能力に応じて各機器が協調してDCバスへ定電圧にて電力を供給することができないという問題があった。
そこで、各電力変換器に、自端の電力(P)と自端の電圧(V)に基づいた参照関数を付与し、自律分散的に制御させることによって、DCグリッドを制御することが行われている(特許文献1~3)。DCバスに要求される電力量に応じて目標電圧値に垂下特性を持たせる、すなわちドループ特性を持たせた参照関数が用いられる場合、当該制御はドループ制御と呼ばれる場合がある。各電力変換器が自律分散的にドループ制御されることによって、DCバスに要求される電力量に応じて各機器の電力融通の負荷分担を実施しつつ、DCバスの電圧を安定化できる。
特許第6371603号 国際公開第2019/103059号 特開2018-29408号公報
公知の技術では、バス電圧の動作点を変更するなど、バス電圧が変化した場合、電力変換器の電力変換特性も変化しまうおそれがある。電力変換特性が変化した場合には、負荷分担も変化するおそれがある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、安定した電力変換特性を実現できる電力変換器、電力変換器の制御方法、電力システム、電力システムの制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
本発明の一態様は、バスに接続され、入力された電力を変換して出力する電力変換部と、前記電力変換部の前記バスに接続された側の電気特性値の測定値を取得する測定部と、前記電気特性値の関数であり、垂下特性を有するドループ関数にて構成された参照関数に基づいて、前記測定値と制御目標値との差分が許容範囲以下となるように前記電力変換部の電力変換特性を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、所定のシフト条件が成立している場合、前記制御目標値を所望の変化量だけ変化させるとともに、前記変化量に応じて、前記参照関数を、該参照関数が表される座標空間において電気特性値軸の方向にシフトする電力変換器である。
前記制御部は、前記制御目標値を減少させる場合は、前記参照関数を前記電気特性値軸の負の向きにシフトし、前記制御目標値を増加させる場合は、前記参照関数を前記電気特性値軸の正の向きにシフトするものでもよい。
前記制御部は、前記制御目標値を、所望の動作目標値との差分が許容誤差範囲内になるように変化させるものでもよい。
前記動作目標値は、所定の目標値であるものでもよい。
前記所定のシフト条件は、前記測定値が所定の定常状態を示す条件であるものでもよい。
前記参照関数は、外部からの指令に基づいて切り替えられまたは更新されるものでもよい。
前記参照関数を切り替え可能または更新可能に記憶する記憶部を備えるものでもよい。
本発明の一態様は、複数の、前記電力変換器と、前記複数の電力変換器のそれぞれに接続されたバスと、前記複数の電力変換器のそれぞれに接続された、電力の供給、消費または充電が可能な電力要素と、を備える電力システムである。
前記複数の電力変換器のそれぞれの制御部において、前記制御目標値の変化量が等しいものでもよい。
前記複数の電力変換器のそれぞれの制御部において、前記所定のシフト条件が等しいものでもよい。
前記複数の電力変換器のそれぞれの制御部において、前記参照関数のシフトの仕方が等しいものでもよい。
前記複数の電力変換器の少なくとも一つの参照関数を切り替えるまたは更新する指令を出力する中央制御装置を備え、前記中央制御装置は、当該電力システムの電力状況に基づいて、前記指令を出力するものでもよい。
前記中央制御装置は、前記複数の電力変換器から取得した情報に基づいて、前記指令を出力するものでもよい。
本発明の一態様は、電力変換器の制御方法であって、前記電力変換器の、バスに接続された側の電気特性値の測定値を取得する取得ステップと、前記電気特性値の関数であり、垂下特性を有するドループ関数にて構成された参照関数に基づいて、前記測定値と制御目標値との差分が許容範囲以下となるように前記電力変換器の電力変換特性を制御する制御ステップと、所定のシフト条件が成立している場合、前記制御目標値を所望の変化量だけ変化させるとともに、前記変化量に応じて、前記参照関数を、該参照関数が表される座標空間において電気特性値軸の方向にシフトするシフトステップと、を備える、電力変換器の制御方法である。
本発明の一態様は、複数の電力変換器と、前記複数の電力変換器に接続されたバスと、前記複数の電力変換器のそれぞれに接続された、電力の供給、消費または充電が可能な電力要素と、を備える電力システムの制御方法であって、前記電力変換器のそれぞれにおいて、バスに接続された側の電気特性値の測定値を取得する取得ステップと、前記電力変換器のそれぞれにおいて、前記電気特性値の関数であり、垂下特性を有するドループ関数にて構成された参照関数に基づいて、前記測定値と制御目標値との差分が許容範囲以下となるように前記電力変換器の電力変換特性を制御する制御ステップと、前記電力変換器のそれぞれにおいて、所定のシフト条件が成立している場合、前記制御目標値を所望の変化量だけ変化させるとともに、前記変化量に応じて、前記参照関数を、該参照関数が表される座標空間において電気特性値軸の方向にシフトするシフトステップと、を備える電力システムの制御方法である。
本発明の一態様は、プロセッサに、電力変換器の制御方法を実行させるプログラムであって、前記電力変換器の、バスに接続された側の電気特性値の測定値を取得する取得ステップと、前記電気特性値の関数であり、垂下特性を有するドループ関数にて構成された参照関数に基づいて、前記測定値と制御目標値との差分が許容範囲以下となるように前記電力変換器の電力変換特性を制御する制御ステップと、所定のシフト条件が成立している場合、前記制御目標値を所望の変化量だけ変化させるとともに、前記変化量に応じて、前記参照関数を、該参照関数が表される座標空間において電気特性値軸の方向にシフトするシフトステップと、を実行させるプログラムである。
本発明の一態様は、プロセッサに、複数の電力変換器と、前記複数の電力変換器に接続されたバスと、前記複数の電力変換器のそれぞれに接続された、電力の供給、消費または充電が可能な電力要素と、を備える電力システムの制御方法を実行させるプログラムであって、前記電力変換器のそれぞれにおいて、バスに接続された側の電気特性値の測定値を取得する取得ステップと、前記電力変換器のそれぞれにおいて、前記電気特性値の関数であり、垂下特性を有するドループ関数にて構成された参照関数に基づいて、前記測定値と制御目標値との差分が許容範囲以下となるように前記電力変換器の電力変換特性を制御する制御ステップと、前記電力変換器のそれぞれにおいて、所定のシフト条件成立している場合、前記制御目標値を所望の変化量だけ変化させるとともに、前記変化量に応じて、前記参照関数を、該参照関数が表される座標空間において電気特性値軸の方向にシフトするシフトステップと、を実行させるプログラムである。
本発明の一態様は、複数の電力変換器と、前記複数の電力変換器に接続されたバスと、前記複数の電力変換器のそれぞれに接続された、電力の供給、消費または充電が可能な電力要素と、前記複数の電力変換器および電力の需要情報を保有する外部サーバと情報通信可能な中央制御装置と、を備える電力システムの制御方法であって、前記電力変換器のそれぞれにおいて、バスに接続された側の電気特性値の測定値を取得する取得ステップと、前記電力変換器のそれぞれにおいて、前記電気特性値の関数であり、垂下特性を有するドループ関数にて構成された参照関数に基づいて、前記測定値と制御目標値との差分が許容範囲以下となるように前記電力変換器の電力変換特性を制御する制御ステップと、前記電力変換器のそれぞれにおいて、所定のシフト条件成立している場合、前記制御目標値を所望の変化量だけ変化させるとともに、前記変化量に応じて、前記参照関数を、該参照関数が表される座標空間において電気特性値軸の方向にシフトするシフトステップと、当該電力システムの電力状況に関する情報を取得するステップと、前記外部サーバから前記需要情報を取得するステップと、前記電力状況に関する情報と前記需要情報とに基づいて、前記複数の電力変換器の少なくとも一つの参照関数を切り替えるまたは更新するステップと、を備える電力システムの制御方法である。
本発明によれば、安定した電力変換特性を実現できる電力変換器、電力変換器の制御方法、電力システムおよび電力システムの制御方法を実現できる。
図1は、実施形態1に係る電力システムの構成を示す図である。 図2は、図1に示す電力変換器の構成を示す図である。 図3は、図2に示す制御部の構成を示す図である。 図4は、電力変換特性を示す参照関数の一例を示す図である。 図5は、参照関数のシフトの一例を示す図である。 図6は、参照関数のシフトの別の一例を示す図である。 図7は、状態遷移図の一例を示す図である。 図8は、電力システムの制御方法の一例を示すシーケンス図である。
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には適宜同一の符号を付している。
(実施形態1)
<電力システムの構成>
図1は、実施形態1に係る電力システムの構成を示す図である。電力システム100は、複数の電力変換器11、12、13、14と、複数の電力要素である蓄電装置21、PV装置22、負荷23、商用電力系統24と、バス30とを備えている。さらに、電力システム100は、EMS(Energy Management System)40を備える。EMS40は中央制御装置の一例である。
電力変換器11、12、13はDC/DC変換器であり、電力変換器14はAC/DC変換器である。電力変換器11、12、13、14は有線または無線により情報通信を行う機能を有する。電力変換器11、12、13、14の構成や機能については後に詳述する。
バス30は、電力システム100ではDCバスであり、電力変換器11、12、13、14に接続される。電力システム100では、DCグリッドを含む電力ネットワークが構成されている。
蓄電装置21は、一例として電力の供給、消費および充電が可能な定置型蓄電装置であり、電力変換器11に接続される。定置型蓄電装置は、常設される設備内蓄電装置の一例である。電力変換器11は、蓄電装置21が供給したDC電力の電圧を変換してバス30に出力し、かつバス30から供給されたDC電力の電圧を変換して蓄電装置21に出力し、充電させる機能を有する。なお、蓄電装置21は、定置型蓄電装置に限らず、電気自動車に搭載される非定置型の蓄電装置でもよい。
PV装置22は、電力の発電および供給が可能な太陽光発電装置であり、電力変換器12に接続される。太陽光発電装置は、再生可能エネルギーを用いて発電する発電装置の一例である。電力変換器12は、PV装置22が供給したDC電力の電圧を変換してバス30に出力する機能を有する。
負荷23は、電力変換器13に接続される。負荷23は、たとえばICT(Information and Communication Technology)装置を含む。負荷23は、たとえば定格電圧が380Vであるが、動作電圧範囲はたとえば260V~400Vと広く、定格電圧は動作電圧範囲の中心よりも上限側に位置する。
商用電力系統24は、電力変換器14に接続される。電力変換器14は、商用電力系統24が供給したAC電力をDC電力に変換してバス30に出力する。なお、バス30から供給されたDC電力をAC電力に変換して商用電力系統24に出力してもよい。バス30から商用電力系統24への電力の出力は逆潮流とも呼ばれる。
EMS40は、電力システム100の状態を統合的に管理する機能を有する。EMS40は、制御部41と、記憶部42と、通信部43とを備えている
制御部41は、EMS40の機能の実現のための各種演算処理を行うものであり、たとえばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサを含んで構成される。制御部41の機能は、制御部41が記憶部42から各種プログラムを読み出して実行することで、機能部として実現される。
記憶部42は、制御部41が演算処理を行うために使用する各種プログラムやデータなどが格納される、たとえばROM(Read Only Memory)を備えている。また、記憶部42は、制御部41が演算処理を行う際の作業スペースや制御部41の演算処理の結果などを記憶するなどのために使用される、たとえばRAM(Random Access Memory)を備えている。記憶部42は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を備えていてもよい。
通信部43は、有線または無線により情報通信を行う通信モジュールを含んで構成されている。通信部43は、インターネット回線網や携帯電話回線網などから構成されるネットワークNWを経由して、電力変換器11、12、13、14や外部サーバ200と情報通信を行う。
なお、外部サーバ200は、電力システム100の外部に設けられたサーバである。外部サーバ200は、たとえば、他の電力システムにおいてEMSとして機能するように構成された情報処理装置や、データベースを備え、EMS40に対してデータサーバとして機能する情報処理装置である。外部サーバ200は、電力システム100の運用に影響を及ぼす可能性のある各種情報を記憶している。
<電力変換器の構成>
つぎに、電力変換器11の具体的構成について説明する。図2は、電力変換器11の構成を示す図である。
電力変換器11は、電力変換部11aと、センサ11bと、制御部11cと、通信部11dとを有する。
電力変換部11aは、放電している蓄電装置21から入力されたDC電力の電圧を変換してバス30に出力するDC/DC変換を行う。電力変換部11aは、バス30から入力されたDC電力の電圧を変換して蓄電装置21に出力し、充電することもできる。電力変換部11aは、たとえばコイル、コンデンサ、ダイオード、スイッチング素子などを含む電気回路で構成されている。スイッチング素子はたとえば電界効果コンデンサや絶縁ゲート型バイポーラトランジスタである。電力変換部11aは、たとえばPWM(Pulse Width Modulation)制御によって電力変換特性を制御することができる。
センサ11bは、電力変換部11aのバス30に接続された側の電力の電気特性値を測定する。したがって、センサ11bは、電力変換器11に入力されるまたは電力変換器11から出力する電力の電気特性値を測定する。センサ11bは、電流値、電圧値、電力値などを測定することができる。センサ11bは、測定値を取得する測定部の一例である。センサ11bは、電気特性値の測定値を制御部11cに出力する。
制御部11cは、電力変換器11の主に電力変換機能の実現のために、電力変換部11aの動作を制御するための各種演算処理を行うプロセッサと記憶部とを含んで構成される。プロセッサおよび記憶部は、それぞれ、制御部41、記憶部42の構成として例示したものを用いることができる。制御部11cの機能は、プロセッサが記憶部から各種プログラムを読み出して実行することで、機能部として実現される。たとえば、制御部11cは、参照関数に基づいて、電力変換部11aの電力変換特性を制御する。具体的には、制御部11cは、PWM制御のための操作量(たとえば、デューティ比)の情報を含むPWM信号を電力変換部11aに出力し、電力変換部11aをPWM制御する。なお、制御部11cは、操作量を電力変換部11aに直接的に出力してもよいし、図示しない他の機能部(たとえばループ制御部)を介して電力変換部11aに出力してもよい。
通信部11dは、有線または無線により情報通信を行う通信モジュールと、通信モジュールの動作を制御する通信制御部とを含んで構成されている。通信部11dは、ネットワークNWを経由して、EMS40と情報通信を行う。通信部11dは、たとえば、EMS40から指令を受信し、制御部11cに出力する。通信部11dは、たとえば、制御部11cから入力された電力状況に関する情報をEMS40に送信する。なお、電力状況に関する情報がセンサ11bの測定値である場合は、通信部11dは、たとえば、センサ11bから入力された測定値をEMS40に送信してもよい。
図3は、制御部11cの構成を示す図である。制御部11cは、プログラムの実行によってソフトウェア的に実現される機能部である操作量設定部11caおよび判定部11cbと、記憶部11ccとを備えている。
操作量設定部11caは、センサ11bから入力された測定値と、判定部11cbから入力された判定情報と、記憶部11ccに記憶されたドループ関数情報と、に基づいて操作量を設定して電力変換部11aに出力する。ここで、ドループ関数情報とは、参照関数を構成するドループ関数を特定するための各種情報であるが、後に詳述する。判定部11cbは、センサ11bから入力された測定値と、記憶部11ccに記憶されたドループ関数情報と、場合によってはさらに通信部11dから入力された指令と、に基づいて判定情報を生成し、操作量設定部11caに出力する。また、記憶部11ccまたは操作量設定部11caは、電力状況に関する情報やドループ関数情報などの情報を通信部11dに出力する。
なお、他の電力変換器12、13、14は、電力変換器11と同様の構成を有している。ただし、電力変換器14の電力変換部は、商用電力系統24から入力されたAC電力をDC電力に変換してバス30に出力したり、バス30から入力されたDC電力をAC電力に変換して商用電力系統24に出力したりする、いわゆるインバータである。
<参照関数の特性>
つぎに、電力変換器11、12、13、14の各制御部が電力変換部の電力変換特性を制御する基となる参照関数について説明する。図4は、電力変換器11、12、13、14の各電力変換特性を示す参照関数の一例を示す図である。図4は、各電力変換部のバス30側の電力(P)と電圧(V)との関係であるV-P特性を示す図であり、各電力変換部の電力変換特性を示している。このように、参照関数は、電圧値の関数であり、電圧軸と電力軸とを座標軸とする座標空間で表され得る。電圧値は電気特性値の一例であり、電圧軸は電気特性値軸の一例である。なお、Pは、電力変換部がバス30に電力を供給する場合(たとえば蓄電装置21の放電状態の場合)は正値であり、バス30から電力を供給される場合(たとえば蓄電装置21の充電状態の場合)は負値である。
電力変換器11、12、13、14の各制御部は、電力変換部の電力変換特性を、それぞれ線DL1、DL2、DL3、DL4で示される参照関数の特性となるように制御する。すなわち、各制御部は、Vの値とPの値とで定義される動作点がそれぞれ線DL1、DL2、DL3、DL4上に位置するように電力変換部を制御する。電力変換器11を例に説明すると、制御部11cは、センサ11bによる電力の測定値Poと、ドループ関数情報と、に基づいて制御目標電圧値Vref(制御目標値の一例)を決定し、センサ11bによる電圧の測定値VoとVrefとの差分が許容範囲以下になるように操作量を設定するフィードバック制御を実行する。フィードバック制御は、たとえば記憶部11ccに記憶された比例ゲイン、積分時間、微分時間などのパラメータを読み出して実行されるPID制御等の、公知の手法を用いて実行できる。また、許容範囲はフィードバック制御の精度に影響するパラメータであり、たとえば記憶部11ccに記憶されており、適宜読み出して使用される。
電力変換器11の電力変換特性を表す線DL1は、途中で屈曲した直線状または曲線状の線である。この参照関数は、入力値の区間に応じて定義された、互いに垂下特性が異なる複数のドループ関数が接続して構成されている。具体的には、線DL1は、互いに垂下特性が異なる5つのドループ関数を表す線が接続して構成されている。
電力変換器12の電力変換特性を表す線DL2は、途中で屈曲した直線状または曲線状の線である。この参照関数は、入力値の区間に応じて定義された、互いに垂下特性が異なる複数のドループ関数が接続して構成されている。具体的には、線DL2は、互いに垂下特性が異なる3つのドループ関数を表す線が接続して構成されている。
電力変換器13の電力変換特性を表す線DL3は、負荷23の消費電力に対応する負の値の電力値をとる直線状の線である。
電力変換器14の電力変換特性を表す線DL4は、途中で屈曲した直線状または曲線状の線である。この参照関数は、入力値の区間に応じて定義された、互いに垂下特性が異なる複数のドループ関数が接続して構成されている。具体的には、線DL4は、互いに垂下特性が異なる3つのドループ関数を表す線が接続して構成されている。
線DL1、DL2、DL3、DL4で示される参照関数に基づく電力変換器11、12、14の電力変換特性の制御についてより具体的に説明する。なお、これらの制御は、電力変換器11、12、14のそれぞれにおいて、自らの測定値に基づいて実行されるものであり、以下では自端制御と適宜記載する。
まず、電力変換器14は、バス30側の電圧が比較的高く、電力需要が比較的少ない第1状態に対応する電圧である場合、電力をバス30に供給しないように電力値を略ゼロとする制御を行う。また、電力変換器14は、バス30側の電圧が比較的低く、電力需要が比較的多い第2状態に対応する電圧である場合、バス30へ供給する電力が所定値を超えないように制御を行う。商用電力系統24では、所定値はたとえば商用電力系統24に対する契約電力に基づいて設定され、契約電力を超えないように電力変換器14の制御が実行される。また、電力変換器14は、バス30側の電圧が第1状態と第2状態との間の第3状態に対応する電圧である場合、電圧の低下に応じてバス30に供給する電力が増加するように制御を実行し、電力の安定供給を実現する。
また、電力変換器11は、バス30側の電圧が第1状態に対応する電圧である場合は蓄電装置21を充電し、第2状態に対応する電圧である場合は蓄電装置21から電力を供給し、第3状態に対応する電圧である場合は蓄電装置21の充放電しないように制御を実行する。
また、電力変換器12は、バス30側の電圧が第2状態および第3状態に対応する電圧である場合は一定値の電力をバス30へ出力し、第1状態に対応する電圧である場合は、電圧値に応じて一定値もしくは電圧値に応じた電力をバス30に出力するまたは電力の入出力を停止する、ように制御を実行する。電力変換器12は、PV装置22からその発電量に応じた電力が入力されると、その発電量にてバス30への出力電力が最大になるように動作させるMPPT(Maximum Power Point Tracking)方式の制御が実行されてもよい。本実施形態では、第1状態に対応する電圧であって電圧値に応じた電力をバス30に出力する場合にMPPT方式の制御が実行され得る。
なお、図4において、電圧範囲VRは、電力システム100におけるバス30の電圧の制御範囲を示している。すなわち、電力変換器11、12、13、14は、電圧範囲VRにおいて好適なフィードバック制御が可能である。電圧範囲VRは、たとえば負荷23の動作電圧範囲に対応する。
また、電圧VB1、VB2はバス30に接続された側の電圧(以下、バス30の電圧、バス電圧とも記載する)の一例である。電圧TVは、電力変換器11、12、13、14および負荷23の定格電圧である。電力変換器11、12、13、14が定格電圧で動作するように制御されれば、電力変換器11、12、13、14が効率良く電力変換を実行できる。定格電圧は電力変換器の定格値の一例である。そこで、電力システム100では、バス30の電圧が電圧TVとなるように、電力変換器11、12、13、14の制御が実行されることが好ましい。
バス30の電圧が電圧TVのとき、蓄電装置21は線DL1により充放電されず、PV装置22は線DL2により発電した電力をバス30に供給し、商用電力系統24は線DL4により電力をバス30に供給する。負荷23は線DL3により電力を消費する。すなわち電圧TVでは、蓄電装置21、PV装置22、商用電力系統24に対して所定の負荷分担状態が実現される。負荷分担状態は、バス電圧と各電力変換器における参照関数とによって定まる。
ここで、バス電圧が変化した場合、公知の電力変換器11、12、13、14の個別の自端制御では負荷分担状態が変化してしまう。公知の自端制御では、全体の負荷分担状態を考慮しながらの協調制御が実行されないからである。また、バス30の電圧が、電圧範囲VRにおいて比較的高電圧の電圧VB1が制御目標値になるように制御されている場合、擾乱などによって電圧VB1から電圧変動DVのように変動すると、高電圧側に変動した場合には電圧範囲VRの範囲を超えてしまい、バス30が異常過電圧となってしまうおそれがある。またバス30の電圧が、電圧範囲VRにおいて比較的低電圧の電圧VB2が制御目標値になるように制御されている場合、異常過電圧は発生しにくいが、電力変換器11、12、13、14の電力変換効率が、定格電圧の場合よりも低下し、電力損失が増大する場合がある。
そこで、電力システム100では、電力変換器11、14においては、各制御部はたとえば以下の制御を行う。なお、以下の例では、バス30の電圧が電圧範囲VRにある場合について説明する。この場合、図4に示すように、電圧範囲VRでは電力変換器12、13の参照関数は電圧に依らず電力が一定なので、以下の制御は行わなくてよい。
具体的には、電力変換器11、14の各制御部は、所定のシフト条件が成立している場合、制御目標値を所望の変化量だけ変化させるとともに、その変化量に応じて、参照関数を、該参照関数が表される座標空間において電圧軸の方向にシフトする。
図5は、参照関数のシフトの一例を示す図である。図5では、初期状態では、電力変換器11は線DL11で示される参照関数(ドループ関数)に基づいて電力変換を実行する。また、電力変換器14は線DL41で示される参照関数に基づいて電力変換を実行する。また、電力変換器12、13は、それぞれ線DL12、DL13で示される参照関数に基づいて電力変換を実行する。また、電力変換器11、12、13、14は制御目標値を電圧VB31として制御を実行しているとする。このときバス電圧の値は、電圧VB31からの差分が許容範囲以下の値となっているが、場合によってはバス30の電圧値が擾乱していることもある。なお、電圧VB31の値はたとえば400Vである。
まず、電力変換器11、14の各制御部は、電圧の測定値について所定のシフト条件が成立しているかを判定する。所定のシフト条件とは、たとえば測定値が所定の定常状態を示す条件である。定常状態とは、測定値が安定した状態であることを意味する。測定値が安定した状態とは、擾乱などの変動が収まった状態であり、たとえば、単位時間当たりの測定値の変化量が所定値以下であり、変動が少ない状態と規定することができる。たとえば、測定値をVとすると、Vの時間微分であるdV/dtが所定値以下、またはdV/dt≒0である場合、変動が少ない状態といえる。また、測定値が安定した状態とは、所定の測定期間にて、測定値の変化が所定の範囲に収まっておる状態と規定してもよい。
電力変換器11、14の各制御部は、所定のシフト条件が成立していると判定した場合は、制御目標値を所望の変化量だけ変化させる。たとえば、図5の場合は、制御目標値を電圧VB31から電圧VB32まで減少させるように変化させる。このときの変化量は、電圧V31と電圧TVとの差分に等しい、または電圧VB32と電圧TVとの差分が許容誤差範囲内になるような変化量である。たとえば電圧TVが380Vの場合、変化量は20V±(許容誤差)である。許容誤差範囲は、当該制御の精度および安定性に影響するパラメータであり、許容誤差範囲が大きすぎると制御の精度が低下し、小さすぎると制御の安定性が低下する。許容誤差範囲は、たとえば各制御部の記憶部に記憶されており、適宜読み出して使用される。電圧TVは動作目標値の一例である。上述したように、動作目標値はたとえば定格値であり、定格電圧である。ただし、動作目標値は定格電圧に限られず、たとえば電圧範囲VRの上限値に対してより大きいマージンをとるために定格電圧よりも低い電圧値としてもよい。さらには、動作目標値は、たとえば効率を重視した定格のバス電圧値のように、何らかの基準に基づく判断によって決定された所定の目標値でもよい。なお、本実施形態では、電力変換器11、14でシフト条件が等しいので、電力変換器11、14において制御目標値は同時に変化を開始する。また、本実施形態の電力変換器11、14では、変化量が等しいとする。
つづいて、電力変換器11、14の各制御部は、参照関数を電圧軸の負の向きにシフトする。このシフト量は、制御目標値の変化量に応じた量であり、たとえば制御目標値の変化量と同じ値である。具体的には、電力変換器11の制御部11cは、参照関数(ドループ関数)を線DL11で示される参照関数から線DL12で示される参照関数にシフトする。同様に、電力変換器14の制御部は、参照関数を線DL41で示される参照関数から線DL42で示される参照関数にシフトする。
参照関数のシフトの仕方は、たとえば参照関数に電圧値を加減算して参照関数を更新することによる。加減算の仕方は、所定のタイミングでシフト量に相当する電圧値を一度に加減算したり、参照関数が時間的に連続してシフトするように、所定の時間内で電圧値を徐々に加減算したりすることができる。また、参照関数のシフトの仕方は、参照関数の切り替えによってもよい。参照関数のシフトの仕方は、たとえば加減算のスピードによっても調整できる。
本実施形態の電力変換器11、14では、参照関数のシフトの仕方が等しい。これにより、電力変換器11、14において、参照関数は、座標空間における互いの位置関係を維持したままシフトする。
その後、電力変換器11の制御部11cは、センサ11bによる電力の測定値Poと、シフト後の参照関数のドループ関数情報と、に基づいて制御目標電圧値Vrefを電圧VB32とし、センサ11bによる電圧の測定値VoとVrefとの差分が許容範囲以下になるように操作量を設定するフィードバック制御を実行する。電力変換器14の制御部も、センサによる電力の測定値Poと、シフト後の参照関数のドループ関数情報と、に基づいて制御目標電圧値Vrefを電圧VB32とし、センサ11bによる電圧の測定値VoとVrefとの差分が許容範囲以下になるように操作量を設定するフィードバック制御を実行する。
上記のように構成された電力変換器11では、制御目標値を所望の変化量だけ、たとえば動作目標値まで変化させ、その変化量に応じて参照関数をシフトするので、変化させた制御目標値と、シフトさせた参照関数との関係が一定の関係に維持される。その結果、電力変換器11では、安定した電力変換特性を実現できる。同様に、電力変換器14でも、制御目標値を所望の変化量だけ変化させ、その変化量に応じて参照関数をシフトするので、制御目標値と参照関数との関係が一定の関係に維持され、安定した電力変換特性を実現できる。特に、電力変換器11、14において、制御目標値の変化量、シフト条件、および参照関数のシフトの仕方が等しければ、それぞれが自端制御を実行しながらも、負荷分担状態が、より好適に一定の関係に維持され、ひいては電力システム100の全体において負荷分担状態が、より好適に一定の関係に維持される。
また、本実施形態では、電力変換器11、14における制御目標値を減少させるので、電圧範囲VRにおける高電力側のマージンが広くなり、異常過電圧の発生を抑制できる。また、電力変換器11、14では、制御目標値を電力変換器11、14の定格電圧またはそれに近い値にしているので、低電力損失にて効率良く電力変換を実行できる。また、本実施形態では、電力変換器11、14は所定のシフト条件が成立している場合に制御目標値を変化させるので、変化後の制御目標値やシフト後の参照関数は、シフト条件に応じた好適な状態、たとえば安定した状態になりやすい。
図6は、参照関数のシフトの別の一例を示す図である。図6では、初期状態では、電力変換器11は線DL13で示される参照関数(ドループ関数)に基づいて電力変換を実行する。また、電力変換器14は線DL43で示される参照関数に基づいて電力変換を実行する。また、電力変換器12、13は、それぞれ線DL12、DL13で示される参照関数に基づいて電力変換を実行する。また、電力変換器11、12、13、14は制御目標値を電圧VB41として制御を実行しているとする。電圧VB41の値はたとえば350Vである。
まず、電力変換器11、14の各制御部は、電圧の測定値について所定のシフト条件が成立しているかを判定する。所定のシフト条件とは、たとえば測定値が所定の定常状態を示す条件である。
電力変換器11、14の各制御部は、所定のシフト条件が成立していると判定した場合は、制御目標値を所望の変化量だけ変化させる。たとえば、図6の場合は、制御目標値を電圧VB41から電圧VB42まで増加させるように変化させる。このときの変化量は、電圧V41の電圧値と電圧TVの電圧値との差分に等しい、または電圧VB42と電圧TVとの差分が許容誤差範囲内になるような変化量である。たとえば電圧TVが380Vの場合、変化量は30V±(許容誤差)である。
つづいて、電力変換器11、14の各制御部は、参照関数を電圧軸の正の向きにシフトする。このシフト量は、制御目標値の変化量に応じた量であり、たとえば制御目標値の変化量と同じ値である。具体的には、電力変換器11の制御部11cは、参照関数(ドループ関数)を線DL13で示される参照関数から線DL14で示される参照関数にシフトする。同様に、電力変換器14の制御部は、参照関数を線DL43で示される参照関数から線DL44で示される参照関数にシフトする。
その後、電力変換器11の制御部11cは、センサ11bによる電圧の測定値Voと、シフト後の参照関数のドループ関数情報と、に基づいて制御目標電圧値Vrefを電圧VB14とし、VoとVrefとの差分が許容範囲以下になるように操作量を設定するフィードバック制御を実行する。電力変換器14の制御部も、センサによる電圧の測定値Voと、シフト後の参照関数のドループ関数情報と、に基づいて制御目標電圧値Vrefを電圧VB44とし、VoとVrefとの差分が許容範囲以下になるように操作量を設定するフィードバック制御を実行する。
図6に示す状態が実行される場合でも、電力変換器11、14では、安定した電力変換特性を実現できる。特に、電力変換器11、14において、制御目標値の変化量、シフト条件、および参照関数のシフトの仕方が等しければ、それぞれが自端制御を実行しながらも、負荷分担状態の関係が一定の関係に維持され、ひいては電力システム100の全体において負荷分担状態が、より好適に一定の関係に維持される。
また、電力変換器11、14では、制御目標値を電力変換器11、14の定格電圧またはそれに近い値にしているので、低電力損失にて効率良く電力変換を実行できる。
<状態遷移>
図7は、電力変換器11の制御部11cにおける参照関数(ドループ関数)の状態遷移図の一例である。なお、電力変換器14の制御部における参照関数の状態遷移図も同様のものでよい。
状態S1は、参照関数が初期の状態であることを示す。状態S2は、参照関数が電圧軸の正の方向にシフトする(上シフトする)状態であることを示す。状態S3は、参照関数が電圧軸の負の方向にシフトする(下シフトする)状態であることを示す。状態S4は、参照関数が、シフトが停止した状態であることを示す。また、Vは、測定値であるバス電圧である。V_ref0は、制御目標電圧値の初期値である。V_ref0_shiftは、V_ref0から変化させた制御目標電圧値である。dV/dtは、測定値であるバス電圧の時間微分である。dV/dt≒0はバス電圧が定常状態であることを示す。
状態S1において、V<V_ref0かつdV/dt≒0の条件が成り立つと、参照関数は状態S2に遷移する。また、状態S1において、V>V_ref0かつdV/dt≒0の条件が成り立つと、参照関数は状態S3に遷移する。
状態S2において、V<V_ref0かつdV/dt≒0の条件が成り立っている間、参照関数は上シフトを続ける。一方、V>V_ref0かつdV/dt≒0の条件が成り立つと参照関数は状態S3に遷移する。他方、V≒V_ref0またはV_ref0_shiftが成り立つと参照関数は状態S4に遷移し、シフトは停止する。
状態S3において、V>V_ref0_shiftかつdV/dt≒0の条件が成り立っている間、参照関数は下シフトを続ける。一方、V<V_ref0_shiftかつdV/dt≒0の条件が成り立つと参照関数は状態S2に遷移する。他方、V≒V_ref0またはV_ref0_shifが成り立つと参照関数は状態S4に遷移し、シフトは停止する。
状態S4において、V>V_ref0_shiftかつdV/dt≒0の条件が成り立つと参照関数は状態S3に遷移する。一方、V<V_ref0_shiftかつdV/dt≒0の条件が成り立つと参照関数は状態S2に遷移する。
<ドループ関数情報>
上述した参照関数を表す線、たとえば線DL1、DL11、DL12、DL13、DL14は、ドループ関数情報によって特定される。ドループ関数情報は、たとえば、横軸をP、縦軸をVとした座標におけるドループ関数の境界の座標情報、ドループ関数の切片情報、傾き(すなわち垂下係数)の情報、形状(直線、曲線など)の情報が含まれている。
<制御方法>
つぎに、電力変換器11、12、13、14の制御方法および電力システム100の制御方法について説明する。電力システム100では、上述したように、電力変換器11、12、13、14が個別に自律分散的に制御を行う自端制御が実行され得る。また、電力システム100では、EMS40が、電力システム100の電力状況に応じて電力変換器11、12、13、14を協調制御する集中制御が実行され得る。なお、たとえば、自端制御は比較的短い周期で繰り返し実行され、集中制御は自端制御の周期よりも長い間隔で実行される。自端制御は一次制御とも呼ばれ、集中制御は二次制御とも呼ばれる。これらの制御方法は、たとえば、各電力変換器またはEMS40において、プログラムがプロセッサに実行させる。
<自端制御>
自端制御における電力変換器の制御方法について、まず電力変換器11を例に説明する。まず、制御部11cは、電力変換器11の、バス30に接続された側の電圧の測定値を取得する取得ステップを実行する。つづいて、制御部11cは、参照関数に基づいて、測定値と制御目標値との差分が許容範囲以下となるように電力変換器11の電力変換特性を制御する制御ステップを実行する。
また、制御部11cは、所定のシフト条件が成立している場合、制御目標値を所望の変化量だけ変化させるとともに、その変化量に応じて、参照関数を電圧軸の方向にシフトするシフトステップを実行する。
また、電力システム100では、電力変換器14においても、制御部は、電力変換器11と同様に、取得ステップ、制御ステップおよびシフトステップを実行する。一方、電力変換器12、13においては、制御部は、取得ステップおよび制御ステップを実行するが、シフトステップは実行しなくてよい。電力変換器12、13では、電圧範囲VRにおいて電圧に依らず電力が一定であるからである。
つぎに、制御部11cが実行する取得ステップおよび制御ステップの内容の一例についてさらに具体的に説明する。
はじめに、操作量設定部11caは、センサ11bから測定値を取得する。つづいて、操作量設定部11caは、記憶部11ccから参照関数についてのドループ関数情報を取得する。つづいて、操作量設定部11caは、判定部11cbから判定情報を取得する。つづいて、操作量設定部11caは、判定情報に基づく制御方法でのフィードバック制御を実行するための操作量を、測定値およびドループ関数情報に基づいて設定し、電力変換部11aに出力する。これにより電力変換部11aの制御が実行される。
<集中制御>
つぎに、集中制御について説明する。以下に示す例では、電力変換器11、12、13、14の外部に設けられたEMS40が、電力変換器11、12、13、14が制御に用いる参照関数を指令によって切り替えるまたは更新することによって、集中制御を実行する。ここで、参照関数を指令によって切り替えるとは、電力変換器11、12、13、14のそれぞれの記憶部が、複数の参照関数を記憶しており、指令によって制御に使用する参照関数を切り替えることを意味する。また、参照関数を指令によって更新するとは、指令が参照関数に関する情報を含んでおり、指令によって参照関数の一部または全体を更新することを意味する。電力変換器11、12、13、14のそれぞれの記憶部は、参照関数を切り替え可能または更新可能に記憶している。
たとえば、EMS40と電力変換器11、12、13、14との情報通信がTCP/IPプロトコルに従う場合、参照関数の更新を行う指令信号のIPパケットのデータ部分に、ドループ関数情報が含まれる。ドループ関数情報は、上述したように、ドループ関数の境界の座標情報、ドループ関数の切片情報、傾き(すなわち垂下係数)の情報、または形状(直線、曲線など)の情報であり、データ部分にはこれらの情報のうち更新する対象となる情報がデータ列として含まれる。更新に使用されるドループ関数情報はEMS40の記憶部42に記憶されており、制御部41が適宜読み出して用いる。
電力変換器11、14では、集中制御によって切り替えまたは更新された参照関数に基づいて、さらに自端制御において、制御目標値を変化させるとともに、参照関数を電圧軸の方向にシフトすることができる。
つぎに、集中制御として電力システム100の制御方法の一例について、図8のシーケンス図を参照して説明する。
はじめに、ステップS201において、EMS40は、自装置のタイマーを発呼し、計時を開始する。
つづいて、ステップS202において、EMS40は、電力変換器11、12、13、14のそれぞれに、自端計測情報を要求する。自端計測情報とは、電力システム100の電力状況に関する情報の一例であって、電力変換器11、12、13、14のそれぞれのセンサによって測定された測定値や、測定時刻を含む。
つづいて、ステップS203において、電力変換器11、12、13、14はそれぞれ、自端計測情報をEMS40に送信する。EMS40はそれぞれの自端計測情報を記憶部42に記憶する。
つづいて、ステップS204において、EMS40は、電力システム100の電力状況に関する情報の一例として、外部サーバ200に、電力システム100の運用に影響を及ぼす可能性のある各種情報を要求する。本例では、EMS40は外部サーバ200に発電量・需要予測情報を要求する。発電量・需要予測情報は、電力システム100における発電量の予測情報や電力の需要予測情報を含み、たとえば電力システム100が設置されている地域の季節や現在の天気、今後の天気予報などの情報を含んでもよい。また、外部サーバ200が他の電力システムのEMSとして機能する場合、当該他の電力システムの運用状態が、電力システム100の運用に影響を及ぼす可能性がある場合は、発電量・需要予測情報は、当該他の電力システムにおける発電量の予測情報や電力の需要予測情報を含むものでもよい。
つづいて、ステップS205において、外部サーバ200は、EMS40に、発電量・需要予測情報を送信する。EMS40は発電量・需要予測情報を記憶部42に記憶する。
つづいて、ステップS206において、EMS40の制御部41は、送信されてきた各情報、すなわち電力システム100の電力状況に関する情報等を記憶部42から読み出して、これに基づいて、電力システム100の運用最適化計算を実行する。
運用最適化計算は、様々な条件に適用するよう実行される。たとえば、電力システム100が、バス30が所定の電圧の動作点となるように制御されているとする。この状態において、EMS40が、発電量・需要予測情報により、太陽光発電装置であるPV装置22が設置された地域の今後の天気が晴天であって発電量が増加すると予想され、かつPV装置22に接続された電力変換器12から取得した自端計測情報から、PV装置22に電力供給の点で余裕があると判定したとする。この場合、EMS40は、当該動作点にて定置型蓄電装置である蓄電装置21が充電されるように、蓄電装置21に接続された電力変換器11の参照関数を更新すると判定する。また、EMS40は、当該更新と同時に、商用電力系統である商用電力系統24から電力供給されないように、商用電力系統24に接続された電力変換器14の参照関数を更新すると判定する。なお、参照関数は更新ではなく切替でもよい。
また、運用最適化計算は、ピークカットや夜間電力の活用等、商用電力系統である商用電力系統24の契約電力を超えないようにする観点や電気料金の適正化の観点からも条件設定され、実行することもできる。
また、EMS40の記憶部42は、学習済モデルを格納しており、EMS40は、運用最適化計算を学習済モデルを用いて実行してもよい。学習済モデルは、たとえば、電力システム100の電力状況に関する情報とそれに対応する電力変換器11、12、13、14に対する参照関数の切替や更新の結果とを教師データとして、ニューラルネットワークを用いた深層学習によって生成された学習済モデルを用いることができる。
つづいて、ステップS207において、EMS40は、電力変換器11、12、13、14のうち更新対象の電力変換器に、参照関数(ドループ関数)の更新指令を出力し、更新するステップを実行する。つづいて、ステップS208において、EMS40は、タイマーをリセットする。つづいて、電力変換器11、12、13、14は、ステップS209において、それぞれ自端制御を実行する。これらの自端制御は、電力システム100の電力状況を反映した自端制御であり、電力変換器11、12、13、14が協調制御されることとなる。さらには、電力変換器11、14では、自端制御における、制御目標値を変化させるとともに、参照関数を電圧軸の方向にシフトする制御が実行されるので、電力変換器11、12、13、14が協調制御されつつ、安定した電力変換特性が実現される。また、集中制御においてたとえばドループ関数を更新する際に、バス電圧や出力の変動が発生する可能性がある。これに対して、上記に例示した自端制御によって電圧維持範囲にマージンを取ることができるので、当該マージンを、ドループ関数更新による変動に耐えるマージンに設定することで、電力変換特性やバス電圧や出力の安定性が向上する。
以上説明した電力変換器11、12、13、14の制御方法および電力システム100の制御方法によれば、安定した電力変換特性を実現できる。
なお、上記実施形態において、電気特性値として、電力値に換えて電流値を用いてもよい。この場合、たとえば参照関数は電流(I)と電圧(V)との関係であるV-I特性として定義される。この場合、センサ11bによる電流の測定値Ioと、ドループ関数情報と、に基づいて目標電圧Vrefを決定する。
また、上記実施形態では、参照関数は3~5のドループ関数を接続して構成されているが、それ以外の数のドループ関数で構成されてもよい。
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
11、12、13、14 :電力変換器
11a :電力変換部
11b :センサ
11c、41 :制御部
11ca :操作量設定部
11cb :判定部
11cc、42 :記憶部
11d、43 :通信部
21 :蓄電装置
22 :PV装置
23 :負荷
24 :商用電力系統
30 :バス
40 :EMS
100 :電力システム
200 :外部サーバ
NW :ネットワーク

Claims (17)

  1. バスに接続され、入力された電力を変換して出力する電力変換部と、
    前記電力変換部の前記バスに接続された側の電気特性値の測定値を取得する測定部と、
    前記電気特性値の関数であり、垂下特性を有するドループ関数にて構成された参照関数に基づいて、前記測定値と制御目標値との差分が許容範囲以下となるように前記電力変換部の電力変換特性を制御する制御部と、
    を備え、
    前記制御部は、前記測定値が所定の定常状態を示す条件が成立している場合、前記制御目標値を所望の変化量だけ変化させるとともに、前記変化量に応じて、前記参照関数を、該参照関数が表される座標空間において電気特性値軸の方向にシフトし、
    前記測定値が所定の定常状態を示す条件とは、前記バスの電圧値の擾乱がおさまって前記測定値が安定した定常状態を示す条件である
    電力変換器。
  2. 前記制御部は、前記制御目標値を減少させる場合は、前記参照関数を前記電気特性値軸の負の向きにシフトし、前記制御目標値を増加させる場合は、前記参照関数を前記電気特性値軸の正の向きにシフトする
    請求項1に記載の電力変換器。
  3. 前記制御部は、前記制御目標値を、所望の動作目標値との差分が許容誤差範囲内になるように変化させる
    請求項1または2に記載の電力変換器。
  4. 前記動作目標値は、所定の目標値である
    請求項3に記載の電力変換器。
  5. 前記参照関数は、外部からの指令に基づいて切り替えられまたは更新される
    請求項1~のいずれか一つに記載の電力変換器。
  6. 前記参照関数を切り替え可能または更新可能に記憶する記憶部を備える
    請求項に記載の電力変換器。
  7. 複数の、請求項1~のいずれか一つに記載の電力変換器と、
    前記複数の電力変換器のそれぞれに接続されたバスと、
    前記複数の電力変換器のそれぞれに接続された、電力の供給、消費または充電が可能な電力要素と、
    を備える電力システム。
  8. 前記複数の電力変換器のそれぞれの制御部において、前記制御目標値の変化量が等しい
    請求項に記載の電力システム。
  9. 前記複数の電力変換器のそれぞれの制御部において、前記測定値が所定の定常状態を示す条件が等しい
    請求項またはに記載の電力システム。
  10. 前記複数の電力変換器のそれぞれの制御部において、前記参照関数のシフトの仕方が等しい
    請求項のいずれか一つに記載の電力システム。
  11. 前記複数の電力変換器の少なくとも一つの参照関数を切り替えるまたは更新する指令を出力する中央制御装置を備え、
    前記中央制御装置は、当該電力システムの電力状況に基づいて、前記指令を出力する
    請求項10のいずれか一つに記載の電力システム。
  12. 前記中央制御装置は、前記複数の電力変換器から取得した情報に基づいて、前記指令を出力する
    請求項11に記載の電力システム。
  13. 電力変換器の制御方法であって、
    前記電力変換器の、バスに接続された側の電気特性値の測定値を取得する取得ステップと、
    前記電気特性値の関数であり、垂下特性を有するドループ関数にて構成された参照関数に基づいて、前記測定値と制御目標値との差分が許容範囲以下となるように前記電力変換器の電力変換特性を制御する制御ステップと、
    前記測定値が所定の定常状態を示す条件が成立している場合、前記制御目標値を所望の変化量だけ変化させるとともに、前記変化量に応じて、前記参照関数を、該参照関数が表される座標空間において電気特性値軸の方向にシフトするシフトステップと、
    を備え
    前記測定値が所定の定常状態を示す条件とは、前記バスの電圧値の擾乱がおさまって前記測定値が安定した定常状態を示す条件である
    電力変換器の制御方法。
  14. 複数の電力変換器と、前記複数の電力変換器に接続されたバスと、前記複数の電力変換器のそれぞれに接続された、電力の供給、消費または充電が可能な電力要素と、を備える電力システムの制御方法であって、
    前記電力変換器のそれぞれにおいて、バスに接続された側の電気特性値の測定値を取得する取得ステップと、
    前記電力変換器のそれぞれにおいて、前記電気特性値の関数であり、垂下特性を有するドループ関数にて構成された参照関数に基づいて、前記測定値と制御目標値との差分が許容範囲以下となるように前記電力変換器の電力変換特性を制御する制御ステップと、
    前記電力変換器のそれぞれにおいて、前記測定値が所定の定常状態を示す条件が成立している場合、前記制御目標値を所望の変化量だけ変化させるとともに、前記変化量に応じて、前記参照関数を、該参照関数が表される座標空間において電気特性値軸の方向にシフトするシフトステップと、
    を備え
    前記測定値が所定の定常状態を示す条件とは、前記バスの電圧値の擾乱がおさまって前記測定値が安定した定常状態を示す条件である
    電力システムの制御方法。
  15. プロセッサに、
    電力変換器の制御方法を実行させるプログラムであって、
    前記電力変換器の、バスに接続された側の電気特性値の測定値を取得する取得ステップと、
    前記電気特性値の関数であり、垂下特性を有するドループ関数にて構成された参照関数に基づいて、前記測定値と制御目標値との差分が許容範囲以下となるように前記電力変換器の電力変換特性を制御する制御ステップと、
    前記測定値が所定の定常状態を示す条件が成立している場合、前記制御目標値を所望の変化量だけ変化させるとともに、前記変化量に応じて、前記参照関数を、該参照関数が表される座標空間において電気特性値軸の方向にシフトするシフトステップと、
    を実行させ、前記測定値が所定の定常状態を示す条件とは、前記バスの電圧値の擾乱がおさまって前記測定値が安定した定常状態を示す条件であるプログラム。
  16. プロセッサに、
    複数の電力変換器と、前記複数の電力変換器に接続されたバスと、前記複数の電力変換器のそれぞれに接続された、電力の供給、消費または充電が可能な電力要素と、を備える電力システムの制御方法を実行させるプログラムであって、
    前記電力変換器のそれぞれにおいて、バスに接続された側の電気特性値の測定値を取得する取得ステップと、
    前記電力変換器のそれぞれにおいて、前記電気特性値の関数であり、垂下特性を有するドループ関数にて構成された参照関数に基づいて、前記測定値と制御目標値との差分が許容範囲以下となるように前記電力変換器の電力変換特性を制御する制御ステップと、
    前記電力変換器のそれぞれにおいて、前記測定値が所定の定常状態を示す条件が成立している場合、前記制御目標値を所望の変化量だけ変化させるとともに、前記変化量に応じて、前記参照関数を、該参照関数が表される座標空間において電気特性値軸の方向にシフトするシフトステップと、
    を実行させ、前記測定値が所定の定常状態を示す条件とは、前記バスの電圧値の擾乱がおさまって前記測定値が安定した定常状態を示す条件であるプログラム。
  17. 複数の電力変換器と、前記複数の電力変換器に接続されたバスと、前記複数の電力変換器のそれぞれに接続された、電力の供給、消費または充電が可能な電力要素と、前記複数の電力変換器および電力の需要情報を保有する外部サーバと情報通信可能な中央制御装置と、を備える電力システムの制御方法であって、
    前記電力変換器のそれぞれにおいて、バスに接続された側の電気特性値の測定値を取得する取得ステップと、
    前記電力変換器のそれぞれにおいて、前記電気特性値の関数であり、垂下特性を有するドループ関数にて構成された参照関数に基づいて、前記測定値と制御目標値との差分が許容範囲以下となるように前記電力変換器の電力変換特性を制御する制御ステップと、
    前記電力変換器のそれぞれにおいて、前記測定値が所定の定常状態を示す条件が成立している場合、前記制御目標値を所望の変化量だけ変化させるとともに、前記変化量に応じて、前記参照関数を、該参照関数が表される座標空間において電気特性値軸の方向にシフトするシフトステップと、
    当該電力システムの電力状況に関する情報を取得するステップと、
    前記外部サーバから前記需要情報を取得するステップと、
    前記電力状況に関する情報と前記需要情報とに基づいて、前記複数の電力変換器の少なくとも一つの参照関数を切り替えるまたは更新するステップと、
    を備え
    前記測定値が所定の定常状態を示す条件とは、前記バスの電圧値の擾乱がおさまって前記測定値が安定した定常状態を示す条件である
    電力システムの制御方法。
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