JP7268461B2 - ヒ化ガリウム基板、エピタキシャル基板、ヒ化ガリウム基板の製造方法およびエピタキシャル基板の製造方法 - Google Patents
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Description
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」とも記す)について、図面を参照しながら詳細に説明する。本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。さらに、本明細書において化合物などを化学式で表す場合、原子比を特に限定しないときは従来公知のあらゆる原子比を含むものとし、必ずしも化学量論的範囲のもののみに限定されるべきではない。たとえば「AlGaAs」と記載されている場合、AlGaAsを構成する原子比はAl:Ga:As=0.5:0.5:1に限られず、従来公知のあらゆる原子比が含まれる。このことは、「AlGaAs」以外の化合物の記載についても同様である。
本実施形態に係るヒ化ガリウム基板(以下、「GaAs基板」とも記す)は、主面を有するGaAs基板である。上記GaAs基板は、上記主面の表面から深さ1nmまでの領域(以下、この領域を「極表面」とも記す)をXPS分析により測定した場合、上記領域におけるAsの原子数に対するGaの原子数の比が0.8以上1以下となる。このような特徴を備えるGaAs基板は、その主面の表面の平滑性が高まるため、上記主面の表面にエピタキシャル膜を形成した場合、エピタキシャル膜の膜表面におけるLPDの個数を低減させることができる。
(Asの原子数に対するGaの原子数の比、およびGaAs量に対する酸化物量の比の算出方法)
以下、放射光をX線源としたXPS分析を用いてGaAs基板の極表面におけるAsの原子数に対するGaの原子数の比、およびGaAs量に対する酸化物量の比を算出する方法を、図1および図2に基づいて説明する。まず従来公知のGaAs基板の製造方法、または後述するGaAs基板の製造方法を実行することによりGaAs基板を得る。このGaAs基板における主面の表面に対し、エネルギーが150eVであるX線を用いて上記XPS分析を実行する。
本実施形態に係るGaAs基板は、上記主面が(100)面から0°以上15°以下のオフ角を有する面であることが好ましい。上記主面が(100)面から0°以上15°以下のオフ角を有する面である場合、GaAs基板において電気的特性および光学的特性に優れる方位を有する面に、LPDの個数が低減したエピタキシャル膜を形成することができる。もってLPDの個数を低減させた効果を、GaAs基板のデバイス特性の向上に有効に生かすことができる。GaAs基板は、上記主面が(100)面から0°以上6°以下のオフ角を有する面であることがより好ましい。GaAs基板は、上記主面が(100)面から2°±0.2°(1.8~2.2°)のオフ角を有する面であることが最も好ましい。
本実施形態に係るGaAs基板は、75mm以上300mm以下の直径を有する円盤状の形状であることが好ましい。すなわち本開示は、75mm以上300mm以下の直径を有する大型のGaAs基板を提供することができる。GaAs基板は、100mm以上150mm以下の直径を有する円盤状の形状であることがより好ましい。これにより75mm以上の直径を有する大型のGaAs基板に対し、その主面の表面にエピタキシャル膜を形成した場合、エピタキシャル膜の膜表面におけるLPD数を低減させることができる。
さらにGaAs基板は、算術平均粗さ(Ra)で表される基板の主面の表面粗さが0.1nm以下であることが好ましい。これによりGaAs基板における主面の表面の平滑性をより向上させることができるため、LPDの個数がより一層低減したエピタキシャル膜を形成することができる。GaAs基板の主面は、上記表面粗さが0.05nm以下であることがより好ましい。
本実施形態に係るエピタキシャル基板は、上記ヒ化ガリウム基板(GaAs基板)と、上記GaAs基板の主面に形成されたエピタキシャル膜とを含むことが好ましい。このような特徴を備えるエピタキシャル基板は、従来に比べて主面の表面の平滑性が向上したGaAs基板に対し、エピタキシャル膜を成長させることができるので、エピタキシャル膜の膜表面におけるLPDの個数を低減させることができる。このようなエピタキシャル基板は、たとえば後述するエピタキシャル基板の製造方法を実行することにより得ることができる。
エピタキシャル基板は、上述のように、GaAs基板の主面に形成されたエピタキシャル膜を含むことが好ましい。特にエピタキシャル基板は、上記エピタキシャル膜における上記ヒ化ガリウム基板側とは反対側の膜表面に長径が10μm以上のLPDが存在し、上記膜表面1cm2当たりの上記LPDの個数が100個以下であることがより好ましい。この場合、エピタキシャル膜の膜表面におけるLPDの個数をより一層低減させることができる。長径が10μm以上のLPDの個数は、上記膜表面1cm2当たり50個以下であることがより好ましい。この数値は0(ゼロ)であることが最も好ましい。本明細書において「LPD」とは、エピタキシャル基板に向けてレーザー光(アルゴンイオン)を照射した場合において、エピタキシャル膜の膜表面に現れる凹部および凸部を意味する。さらにLPDの「長径」とは、上記LPDの外郭線上において最も離れた2点間の距離を意味する。
本実施形態に係るエピタキシャル基板において、そのエピタキシャル膜の膜表面に存在するLPDについては、表面検査装置(商品名:「Surf Scan 6220」、KLA-Tencor社製)を用いることにより観察することができ、かつその個数を求めることができる。具体的な観察方法(LPDの個数の測定方法)は、以下のとおりである。
本実施形態に係るヒ化ガリウム基板(GaAs基板)の製造方法は、ヒ化ガリウム基板前駆体から、主面を有するGaAs基板を得るための洗浄工程を有する。上記洗浄工程は、上記ヒ化ガリウム基板前駆体を、有機溶剤で洗浄する工程(有機洗浄工程)と、上記ヒ化ガリウム基板前駆体を、塩基性化合物を0.1質量%以下含むアルカリ性溶液で洗浄する工程(アルカリ洗浄工程)と、上記ヒ化ガリウム基板前駆体を、水で洗浄する工程(水洗浄工程)と、上記ヒ化ガリウム基板前駆体に対し、その表面に付着した上記水をイソプロピルアルコールに置換する工程(IPA置換工程)と、上記ヒ化ガリウム基板前駆体に対し、イソプロピルアルコール蒸気を用いて加熱乾燥することにより上記GaAs基板を得る工程(IPA蒸気加熱乾燥工程)とを含む。上記塩基性化合物は、金属元素を含まない有機化合物および金属元素を含まない無機化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
(研磨工程S1)
GaAs基板の製造方法は、まず研磨工程S1を含むことが好ましい。研磨工程S1は、GaAs単結晶から切り出されたGaAs基板前駆体の表面を研磨する工程である。研磨工程S1により、GaAs基板前駆体の表面が鏡面化される。研磨工程S1における研磨方法としては、従来公知の方法を用いることができ、各種の機械的研磨、化学的研磨などの研磨方法を用いることができる。
GaAs基板の製造方法は、GaAs基板前駆体を有機溶剤で洗浄する工程(有機洗浄工程S2)を含む。有機洗浄工程S2は、研磨工程S1において表面が鏡面化されたGaAs基板前駆体に対し、その表面に付着した研磨剤中の異物を洗浄する工程である。有機洗浄工程S2における洗浄方法としては、従来公知の方法を用いることができる。有機洗浄工程S2に用いる有機溶剤としては、従来公知の有機溶剤を用いることができ、たとえばトリクレン、アセトン、メタノールからなる群より選ばれる1種を単独で用いることができ、あるいは2種以上を併用することができる。
GaAs基板の製造方法は、GaAs基板前駆体を、塩基性化合物を0.1質量%以下含むアルカリ性溶液で洗浄する工程(アルカリ洗浄工程S3)を含む。アルカリ洗浄工程S3は、具体的には、有機洗浄工程S2において表面が洗浄されたGaAs基板前駆体を、塩基性化合物を0.1質量%以下含むアルカリ性溶液を用いて洗浄するとともに、このアルカリ性溶液中でGaAs基板前駆体に対して超音波を与える工程である。
GaAs基板の製造方法は、GaAs基板前駆体を水で洗浄する工程(水洗浄工程S4)を含む。水洗浄工程S4は、具体的には、アルカリ洗浄工程S3において表面が洗浄されたGaAs基板前駆体を、水を用いて洗浄する工程である。水洗浄工程S4における水を用いた洗浄方法は、特に制限されないが、GaAs基板前駆体の表面の酸化を抑制するため、電気抵抗率が0.1MΩ・cm以上である純水を用いて上記表面を洗浄することが好ましい。純水の電気抵抗率は、15MΩ・cm以上であることがより好ましい。さらに純水は、たとえば溶存酸素濃度(DO)が100ppb以下であることが好ましく、50ppb以下であることがより好ましい。純水の全有機炭素(TOC)は、40ppb以下であることが好ましい。
GaAs基板の製造方法は、GaAs基板前駆体に対し、その表面に付着した上記水をイソプロピルアルコールに置換する工程(IPA置換工程S5)を含む。IPA置換工程S5は、具体的には水洗浄工程S4の後に、GaAs基板前駆体をIPAで満たされた槽に数回、数分間浸漬することにより、GaAs基板前駆体の表面に付着した水をイソプロピルアルコールに置換する工程である。IPA置換工程S5は、たとえばIPAで満たされた槽に2回、5分間GaAs基板前駆体を浸漬することにより、その表面に付着した水をイソプロピルアルコールに置換することができる。IPA置換工程S5では、IPAで満たされた槽に循環濾過装置を取り付け、これを作動することにより槽に満たされたIPAを常時濾過し続けることが好ましい。
GaAs基板の製造方法は、GaAs基板前駆体に対し、イソプロピルアルコール蒸気を用いて加熱乾燥することによりGaAs基板を得る工程(IPA蒸気加熱乾燥工程S6)を含む。IPA蒸気加熱乾燥工程S6は、具体的には、IPA置換工程S5の後に、従来公知のIPA蒸気乾燥装置を用い、GaAs基板前駆体を82.5℃以上のIPA蒸気雰囲気中で乾燥させる工程である。これにより、主面の表面におけるGa:Asで表される原子数の比が1:1に近いGaAs基板を得ることができる。特に、極表面におけるAsの原子数に対するGaの原子数の比が、0.8以上1以下であるGaAs基板を得ることができる。
GaAs基板の製造方法は、GaAs基板に対し、上記主面の表面から深さ1nmまでの領域をXPS分析する工程(XPS分析工程S7)をさらに含むことが好ましい。XPS分析工程S7は、具体的には、上記洗浄工程を経ることにより得たGaAs基板に対し、上述した放射光をX線源として用いたXPS分析を実行する工程である。XPS分析工程S7では、上述したようにGaAs基板の主面の表面に対し、エネルギーが150eVである軟X線を用いてXPS分析を実行することができる。これによりGaAs基板に対し、主面の表面から深さ1nmまでの領域(極表面)におけるAsの原子数に対するGaの原子数の比が0.8以上であるか否かを評価することができる。上記XPS分析工程S7を実行した場合、上記GaAs基板の製造方法により得たGaAs基板は、極表面におけるAsの原子数に対するGaの原子数の比が、0.8以上1以下となる。XPS分析工程S7において、GaAs基板の極表面におけるAsの原子数に対するGaの原子数の比は、上述した算出方法を用いて求めた上記a~dの値を計算式(1)に代入することによって求めることができる。
上述のようにGaAs基板の製造方法により得たGaAs基板は、主面の表面から深さ1nmまでの領域(極表面)に存在するAsの原子数に対するGaの原子数の比が0.8以上1以下となる。このようなGaAs基板の主面にエピタキシャル膜を成長させた場合、上記エピタキシャル膜は、長径が10μm以上のLPDの個数を、膜表面1cm2当たり100以下とすることができる。もってLPDの個数が低減したエピタキシャル膜を形成することが可能なGaAs基板を得ることができる。
本実施形態に係るエピタキシャル基板の製造方法は、上記ヒ化ガリウム基板(GaAs基板)の製造方法により製造されたGaAs基板の上記主面に、エピタキシャル膜を形成する工程を含む。このような特徴を備えるエピタキシャル基板の製造方法は、膜表面のLPDの個数が低減したエピタキシャル膜がGaAs基板上に形成されたエピタキシャル基板を得ることができる。
〔試料1〕
<GaAs基板の製造>
(GaAs基板前駆体の準備)
垂直ブリッジマン(VB)法で成長させたGaAs単結晶を、その厚みが1mmとなるようにワイヤーソーでスライスし、そのエッジ部を研削して外形を整えることにより、GaAs基板前駆体を2枚準備した。さらに、ワイヤーソーで生じたソーマークを除去するために、上記GaAs基板前駆体の主面を平面研削機で研削し、かつ外周の面取り部をゴム砥石で研磨することにより上記GaAs基板前駆体を直径100mmとした。
クリーンルーム(クラス100)内で、GaAs基板前駆体の表面を、塩素系研磨剤およびシリカパウダーの混合物を含む硬質研磨布により研磨した。次にGaAs基板前駆体の表面を、INSEC NIB研磨剤(株式会社フジミインコーポレーテッド製)で研磨することにより鏡面化した。さらに、表面を鏡面化したGaAs基板前駆体を、メタノールを用いて洗浄した。
アンモニア、過酸化水素および水を準備し、これらからアンモニアの濃度が0.1質量%であり、過酸化水素の濃度が0.02質量%となるアルカリ性溶液を調製した。このアルカリ性溶液を30℃に加温した上で、枚葉式の洗浄方法として上記GaAs基板前駆体の表面に対してスプレーすることにより洗浄した。同時に、このGaAs基板前駆体の全面に対し、アルカリ性溶液を通じて超音波を出力600Wで付与した。これにより、GaAs基板前駆体の表面をアルカリ洗浄した。
次に、GaAs基板前駆体のアルカリ洗浄された表面を、電気抵抗率が15MΩ・cmの純水に5分間浸漬することにより洗浄した。
上述の純水で洗浄したGaAs基板前駆体を、IPAで満たされた槽に2回、5分間ずつ浸漬することにより、GaAs基板前駆体の表面に付着した水をIPAに置換した。この場合において、IPAで満たされた槽にはポア径が0.1μmであるフィルターを備えた循環濾過装置を取り付け、これを作動することにより槽に満たされたIPAを濾過し続けた。
次に、IPA置換工程を経たGaAs基板前駆体を、IPA蒸気乾燥装置内に配置することにより、82.5℃以上のIPA蒸気雰囲気中で乾燥させた。これにより試料1のGaAs基板を製造した。試料1のGaAs基板は、100mmの直径を有する円盤状の形状を備える。試料1のGaAs基板の主面は、(100)面から2°のオフ角を有する。試料1のGaAs基板は、上述のとおりGaAs基板前駆体が2枚準備されたことから、2枚製造された。
上記GaAs基板の2枚のうち1枚に対し、その主面上に常法の有機金属気相エピタキシャル成長法(OMVPE)法を用い、エピタキシャル膜として厚さ3μmのGaAs膜を成長させることにより、試料1のエピタキシャル基板を得た。
<GaAs基板の製造>
GaAs基板前駆体を準備するための原料となるGaAs単結晶が、試料1において原料としたGaAs単結晶と表面状態が異なること以外、試料1のGaAs基板と同じ製造方法を適用することにより試料2のGaAs基板を得た。試料2のGaAs基板は、100mmの直径を有する円盤状の形状を備える。試料2のGaAs基板の主面は、(100)面から2°のオフ角を有する。試料2のGaAs基板も2枚製造された。
試料2のGaAs基板の2枚のうち1枚に対し、その主面上に常法の有機金属気相エピタキシャル成長法(OMVPE)法を用い、エピタキシャル膜として厚さ3μmのInGaAs膜を成長させることにより、試料2のエピタキシャル基板を得た。
<GaAs基板の製造>
GaAs基板前駆体を準備するための原料となるGaAs単結晶が、試料1および試料2においてそれぞれ原料としたGaAs単結晶と表面状態が異なること以外、試料1のGaAs基板と同じ製造方法を適用することにより試料3のGaAs基板を得た。試料3のGaAs基板は、100mmの直径を有する円盤状の形状を備える。試料3のGaAs基板の主面は、(100)面から2°のオフ角を有する。試料3のGaAs基板も2枚製造された。
試料3のGaAs基板の2枚のうち1枚に対し、その主面上に常法の有機金属気相エピタキシャル成長法(OMVPE)法を用い、エピタキシャル膜として厚さ3μmのAlGaAs膜を成長させることにより、試料3のエピタキシャル基板を得た。
<GaAs基板の製造>
GaAs基板前駆体を準備するための原料となるGaAs単結晶が、試料1~試料3においてそれぞれ原料としたGaAs単結晶と表面状態が異なり、かつGaAs基板前駆体の直径を150mmとしたこと以外、試料1のGaAs基板と同じ製造方法を適用することにより試料4のGaAs基板を得た。試料4のGaAs基板は、150mmの直径を有する円盤状の形状を備える。試料4のGaAs基板の主面は、(100)面から6°のオフ角を有する。試料4のGaAs基板も2枚製造された。
試料4のGaAs基板の2枚のうち1枚に対し、その主面上に常法の有機金属気相エピタキシャル成長法(OMVPE)法を用い、エピタキシャル膜として厚さ3μmのGaAs膜を成長させることにより、試料4のエピタキシャル基板を得た。
<GaAs基板の製造>
GaAs基板前駆体を準備するための原料となるGaAs単結晶が、試料1~試料4においてそれぞれ原料としたGaAs単結晶と表面状態が異なり、かつGaAs基板前駆体の直径を150mmとしたこと以外、試料1のGaAs基板と同じ製造方法を適用することにより試料5のGaAs基板を得た。試料5のGaAs基板は、150mmの直径を有する円盤状の形状を備える。試料5のGaAs基板の主面は、(100)面から6°のオフ角を有する。試料5のGaAs基板も2枚製造された。
試料5のGaAs基板の2枚のうち1枚に対し、その主面上に常法の有機金属気相エピタキシャル成長法(OMVPE)法を用い、エピタキシャル膜として厚さ3μmのInGaAs膜を成長させることにより、試料5のエピタキシャル基板を得た。
<GaAs基板の製造>
GaAs基板前駆体を準備するための原料となるGaAs単結晶が、試料1~試料5においてそれぞれ原料としたGaAs単結晶と表面状態が異なり、かつGaAs基板前駆体の直径を150mmとしたこと以外、試料1のGaAs基板と同じ製造方法を適用することにより試料6のGaAs基板を得た。試料6のGaAs基板は、150mmの直径を有する円盤状の形状を備える。試料6のGaAs基板の主面は、(100)面から6°のオフ角を有する。試料6のGaAs基板も2枚製造された。
試料6のGaAs基板の2枚のうち1枚に対し、その主面上に常法の有機金属気相エピタキシャル成長法(OMVPE)法を用い、エピタキシャル膜として厚さ3μmのAlGaAs膜を成長させることにより、試料6のエピタキシャル基板を得た。
<GaAs基板の製造>
試料1のGaAs基板の製造方法においてアルカリ洗浄工程を行わなかったこと以外、試料1のGaAs基板と同じ製造方法を適用することにより試料101のGaAs基板を得た。すなわち試料101のGaAs基板については、GaAs基板前駆体を準備するための原料となるGaAs単結晶を試料1と同じとした。試料101のGaAs基板も2枚製造された。
試料101のGaAs基板の2枚のうち1枚に対し、試料1のエピタキシャル基板と同じ製造方法を適用することにより試料101のエピタキシャル基板を得た。
<GaAs基板の製造>
試料2のGaAs基板の製造方法においてアルカリ洗浄工程を行わなかったこと以外、試料2のGaAs基板と同じ製造方法を適用することにより試料102のGaAs基板を得た。すなわち試料102のGaAs基板については、GaAs基板前駆体を準備するための原料となるGaAs単結晶を試料2と同じとした。試料102のGaAs基板も2枚製造された。
試料102のGaAs基板の2枚のうち1枚に対し、試料2のエピタキシャル基板と同じ製造方法を適用することにより試料102のエピタキシャル基板を得た。
<GaAs基板の製造>
試料3のGaAs基板の製造方法においてアルカリ洗浄工程を行わなかったこと以外、試料3のGaAs基板と同じ製造方法を適用することにより試料103のGaAs基板を得た。すなわち試料103のGaAs基板については、GaAs基板前駆体を準備するための原料となるGaAs単結晶を試料3と同じとした。試料103のGaAs基板も2枚製造された。
試料103のGaAs基板の2枚のうち1枚に対し、試料3のエピタキシャル基板と同じ製造方法を適用することにより試料103のエピタキシャル基板を得た。
〔GaAs基板に対するXPS分析〕
<XPS分析工程>
佐賀県立九州シンクロトロン光研究センター内の住友電気工業株式会社専用ビームラインの一つである「BL17」を利用することにより、エネルギーが150eVであるX線を準備した。このX線を試料1~試料6および試料101~試料103のGaAs基板における主面の表面に対してそれぞれ照射することにより、上記GaAs基板の主面の表面から深さ1nmまでの領域である極表面を対象としてXPS分析を実行した。上記XPS分析において、GaAs基板から放出される光電子の運動エネルギーの分布等については、上記高分解能XPS分析装置(商品名:「R3000」、Scienta Omicron社製)を用いて測定した。
試料1~試料6および試料101~試料103のエピタキシャル基板におけるエピタキシャル膜の膜表面に対し、上述した測定方法に基づいて表面検査装置(商品名:「Surf Scan 6220」、KLA-Tencor社製)を用いて観察することにより、エピタキシャル膜の膜表面1cm2当たりにおける長径10μm以上のLPDの個数を求めた。結果を表1に示す。試料1~試料6が実施例であり、試料101~試料103が比較例である。
表1によれば、試料1~試料6のGaAs基板は、主面の表面から深さ1nmまでの領域(極表面)におけるAsの原子数に対するGaの原子数の比が0.8以上1以下であり、この場合において上記GaAs基板の主面に形成したエピタキシャル膜は、膜表面1cm2当たり長径10μm以上のLPDの個数が100以下であった。一方、試料101~試料103のGaAs基板は、上記極表面におけるAsの原子数に対するGaの原子数の比が0.8未満であり、この場合において上記GaAs基板の主面に形成したエピタキシャル膜は、膜表面1cm2当たり長径10μm以上のLPDの個数が100を超えた。
Claims (12)
- 主面を有するヒ化ガリウム基板であって、
前記ヒ化ガリウム基板は、前記主面の表面から深さ1nmまでの領域をXPS分析により測定した場合、前記領域におけるAsの原子数に対するGaの原子数の比が0.9より大きく1以下となる、ヒ化ガリウム基板。 - 主面を有するヒ化ガリウム基板であって、
前記ヒ化ガリウム基板は、前記主面の表面から深さ1nmまでの領域をXPS分析により測定した場合、前記領域におけるAsの原子数に対するGaの原子数の比が0.8以上1以下となり、
前記ヒ化ガリウム基板は、前記領域におけるGaAsの個数をGaAs量とし、前記領域におけるGa酸化物の個数およびAs酸化物の個数の和を酸化物量とした場合、前記GaAs量に対する前記酸化物量の比が2.7以下である、ヒ化ガリウム基板。 - 前記XPS分析は、エネルギーが150eVであるX線を用いて実行される、請求項1または請求項2に記載のヒ化ガリウム基板。
- 前記ヒ化ガリウム基板は、前記主面が(100)面から0°以上15°以下のオフ角を有する面である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のヒ化ガリウム基板。
- 前記ヒ化ガリウム基板は、75mm以上300mm以下の直径を有する円盤状の形状である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のヒ化ガリウム基板。
- 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のヒ化ガリウム基板と、前記ヒ化ガリウム基板の前記主面に形成されたエピタキシャル膜とを含む、エピタキシャル基板。
- 前記エピタキシャル膜における前記ヒ化ガリウム基板側とは反対側の膜表面に長径が10μm以上のLPDが存在し、
前記膜表面1cm2当たりの前記LPDの個数が100個以下である、請求項6に記載
のエピタキシャル基板。 - 前記エピタキシャル膜は、Al1-y-zGayInzAsからなる化合物膜であり、
前記yは、0以上1以下であり、
前記zは、0以上1以下であり、
前記yと前記zとの和は、0以上1以下である、請求項6または請求項7に記載のエピタキシャル基板。 - ヒ化ガリウム基板前駆体から、主面を有するヒ化ガリウム基板を得るための洗浄工程を有するヒ化ガリウム基板の製造方法であって、
前記洗浄工程は、
前記ヒ化ガリウム基板前駆体を、有機溶剤で洗浄する工程と、
前記ヒ化ガリウム基板前駆体を、塩基性化合物を0.1質量%以下含むアルカリ性溶液で洗浄する工程と、
前記ヒ化ガリウム基板前駆体を、水で洗浄する工程と、
前記ヒ化ガリウム基板前駆体に対し、その表面に付着した前記水をイソプロピルアルコールに置換する工程と、
前記ヒ化ガリウム基板前駆体に対し、イソプロピルアルコール蒸気を用いて加熱乾燥することにより前記ヒ化ガリウム基板を得る工程とを含み、
前記塩基性化合物は、金属元素を含まない有機化合物および金属元素を含まない無機化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記ヒ化ガリウム基板は、前記主面の表面から深さ1nmまでの領域をXPS分析により測定した場合、前記領域におけるAsの原子数に対するGaの原子数の比が0.9より大きく1以下となる、ヒ化ガリウム基板の製造方法。 - ヒ化ガリウム基板前駆体から、主面を有するヒ化ガリウム基板を得るための洗浄工程を有するヒ化ガリウム基板の製造方法であって、
前記洗浄工程は、
前記ヒ化ガリウム基板前駆体を、有機溶剤で洗浄する工程と、
前記ヒ化ガリウム基板前駆体を、塩基性化合物を0.1質量%以下含むアルカリ性溶液で洗浄する工程と、
前記ヒ化ガリウム基板前駆体を、水で洗浄する工程と、
前記ヒ化ガリウム基板前駆体に対し、その表面に付着した前記水をイソプロピルアルコールに置換する工程と、
前記ヒ化ガリウム基板前駆体に対し、イソプロピルアルコール蒸気を用いて加熱乾燥することにより前記ヒ化ガリウム基板を得る工程とを含み、
前記塩基性化合物は、金属元素を含まない有機化合物および金属元素を含まない無機化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記ヒ化ガリウム基板は、前記主面の表面から深さ1nmまでの領域をXPS分析により測定した場合、前記領域におけるAsの原子数に対するGaの原子数の比が0.8以上1以下となり、
前記ヒ化ガリウム基板は、前記領域におけるGaAsの個数をGaAs量とし、前記領域におけるGa酸化物の個数およびAs酸化物の個数の和を酸化物量とした場合、前記GaAs量に対する前記酸化物量の比が2.7以下である、ヒ化ガリウム基板の製造方法。 - 前記ヒ化ガリウム基板に対し、前記主面の表面から深さ1nmまでの領域をXPS分析する工程をさらに含む、請求項9または請求項10に記載のヒ化ガリウム基板の製造方法。
- 請求項9から請求項11のいずれか1項に記載のヒ化ガリウム基板の製造方法により製造されたヒ化ガリウム基板の前記主面に、エピタキシャル膜を形成する工程を含む、エピタキシャル基板の製造方法。
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