JP7267870B2 - 樹脂組成物、電気機器および樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

樹脂組成物、電気機器および樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電気絶縁に用いる樹脂組成物およびこれを適用した変圧器等の電気機器に関する。
従来、変圧器、電動機、開閉機器、変換器、制御機器、家電機器、車載機器または鉄道搭載機器等には、電気絶縁材料として樹脂組成物(絶縁樹脂)が用いられている。一般に、樹脂組成物は、熱伝導率が低いため、電気絶縁性かつ熱伝導性に優れる添加剤(フィラー)を添加することが一般的である。
例えば、特許文献1(特開2014-015540号公報)には、「(a)脂環族ジカルボン酸からなる単位と、(b)炭素数8以上のジアミンからなる単位と、(c)下記(c-1)~(c-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の共重合成分からなる単位と、((c-1)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸。(c-2)前記(b)のジアミンより炭素数の少ないジアミン。(c-3)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸。)を、含有し、かつ、結晶化ピーク温度Tpc-1と、ガラス転移温度Tg、融解ピーク温度Tpm、Tpm-1に関して、所定の要件を満たす共重合ポリアミド(A)と、ガラス繊維(B)と、ガラス繊維(B)以外の無機充填材(C)とを含有するポリアミド樹脂組成物」が開示されている(要約参照)。
特開2014-015540号公報
特許文献1には、吸水後の剛性や高温使用下での剛性が良好な樹脂組成物を提供するために、特定の条件を満足する共重合ポリアミドと、ガラス繊維と、当該ガラス繊維以外の無機充填材とを含有する組成物について記載されている。添加によりポリアミド樹脂組成物の、結晶化ピーク温度を上昇させたり、結晶化ピークの補外開始温度と補外終了温度との差を小さくしたり、得られる成形品の球晶を微細化又はサイズの均一化させたりする効果が得られる造核剤としてタルク、窒化ホウ素、マイカ等が好ましいとされている。さらに、造核剤効果を高めるために、平均粒径が0.01~10μmが好ましいとされており、また、造核剤の含有量を、共重合ポリアミド100質量部に対して、0.001質量部以上とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の耐熱性が良好に向上することが開示されている。
樹脂組成物の特性は、複数の材料の配合や材料の大きさによる相互作用に変化するところ、特許文献1には、造核剤の添加量は単に増加させればよいとされ、また、造核剤の含有量を、共重合ポリアミド100質量部に対して、1質量部以下とすることにより、靭性に優れるとされているが、耐圧性については考慮されていない。
すなわち、特許文献1は数十V(ボルト)かつ数A(アンペア)程度の少電力の弱電用電気機器を対象としており、産業分野ではこれらに比べて大容量の強電用電気機器に対応する絶縁樹脂組成物の特性が考慮されていない。例えば、産業分野の変圧器であれば、数十kVA(ボルトアンペア)以上の容量のものが利用されており特別高圧ではさらに大きな容量となる。すなわち、こうした強電用電気機器の絶縁樹脂部材には電気的な耐圧が求められ、かつ、絶縁樹脂部材は電気機器を覆うためその重量が大きくなるため、できるだけ薄く電気機器を覆いつつも絶縁性を高める必要があるが、この点は特許文献1において考慮されていない。
従って、電気絶縁に用いる樹脂組成物およびこれを適用した電気機器において、高耐圧化を実現することが望まれる。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
一実施の形態に係る樹脂組成物は、ベースポリマと添加剤とを含む樹脂組成物において、前記添加剤は、窒化ホウ素と弾性部材とを含み、前記窒化ホウ素は、アスペクト比が2以上である六方晶窒化ホウ素一次粒子により構成され、前記弾性部材は、コア層と前記コア層の外周に配置されたシェル層とを有する弾性粒子により構成され、前記コア層の弾性率と前記シェル層の弾性率とは、互いに異なり、前記弾性粒子の粒径は、前記六方晶窒化ホウ素一次粒子の粒径よりも小さい。
一実施の形態によれば、電気絶縁に用いる樹脂組成物およびこれを適用した電気機器において、高耐圧化を実現することができる。
一実施の形態に係る樹脂組成物の断面模式図である。 一実施の形態に係る樹脂組成物を構成する窒化ホウ素の拡大模式図である。 一実施の形態に係る樹脂組成物を構成する弾性部材の拡大断面模式図である。 一実施の形態に係る樹脂組成物を適用した変圧器を示す断面模式図である 一実施の形態に係る樹脂組成物を適用した電動機を示す断面模式図である。 第1実施例に係る樹脂組成物において、コアシェルゴムの粒径と窒化ホウ素の沈殿量との関係を表すグラフである。 第1実施例に係る樹脂組成物において、コアシェルゴムの粒径と絶縁耐圧との関係を表すグラフである。 第2実施例に係る樹脂組成物において、コアシェルゴムの重量比率と窒化ホウ素の沈殿量との関係を表すグラフである。 第2実施例に係る樹脂組成物において、コアシェルゴムの重量比率と絶縁耐圧との関係を表すグラフである。 第2実施例に係る樹脂組成物において、コアシェルゴムの重量比率と破壊靭性との関係を表すグラフである。 第3実施例に係る樹脂組成物において、窒化ホウ素のアスペクト比と絶縁耐圧との関係を表すグラフである。 第4実施例に係る樹脂組成物において、窒化ホウ素の粒径と絶縁耐圧との関係を表すグラフである。 第5実施例に係る樹脂組成物において、窒化ホウ素の重量比率と絶縁耐圧との関係を表すグラフである。 検討例に係る樹脂組成物を構成する窒化ホウ素の重合反応を表す拡大模式図である。
(検討事項)
実施の形態を説明する前に、本発明者らが検討した事項について図を用いて説明する。図14は、検討例に係る樹脂組成物を構成する窒化ホウ素の重合反応を表す拡大模式図である。
検討例に係る樹脂組成物は、ベースポリマと、添加剤として窒化ホウ素とを含んでいる。この点で、検討例に係る樹脂組成物は、後述の図1に示す樹脂組成物10と同様である。一方、検討例に係る樹脂組成物は、図1に示す樹脂組成物10と異なり、前記添加剤として弾性部材を含んでいない。
このような電気絶縁に用いられる樹脂組成物に電圧を加えたとき、樹脂組成物を絶縁破壊させない耐性を、耐圧性と呼ぶ。本発明者らは、この耐圧性に注目し、以下の課題を確認している。
電気機器を小型化・低コスト化するためには、例えば電気絶縁材料として使用している樹脂組成物の量(体積)を低減する必要がある。ただし、樹脂組成物の量を低減した場合には、特に耐圧性が低下するため、その分、添加剤により樹脂組成物の耐圧性を向上させることが必要である。
窒化ホウ素は、電気絶縁に用いられる樹脂組成物の添加剤として、特に耐圧性を向上させることができる。しかし、本発明者らの検討によれば、樹脂組成物の耐圧性を高めるために、単に窒化ホウ素の添加量を多くしても樹脂組成物の所定量以上の耐圧性を向上させることができない場合があることを確認した。
本発明者らはその原因を次のように分析した。図14には、窒化ホウ素の結晶構造の一部を示している。添加剤として特に好ましい窒化ホウ素は、常圧相窒化ホウ素の一次粒子である。常圧相窒化ホウ素の一次粒子は、マイカ、シリコンまたはアルミナ等の耐圧性を有する添加剤の中で電気的に安定である。常圧相窒化ホウ素の結晶構造は六方晶であり、グラファイトに類似した六角網目の層状構造をとる。そのため、常圧相窒化ホウ素の粒子形状は、鱗片状が安定な形状であり、アスペクト比が2以上となる。鱗片状とは、異方性を有する形状を指す。また、鱗片状とは、外縁が直線状の形状ではなく凹凸を有する形状を指す。鱗片状とは、フレーク状の形状である。鱗片状の物質のアスペクト比は鱗片状の形状のうちいずれかの角度の平面図でみた際の長手方向の長さと短手方向の長さとを比較した値をいう。例えば、電子顕微鏡で撮像した際に長手方向長さと短手方向の長さの比が2以上:1であれば、アスペクト比は2以上である。
ここで、「一次粒子」とは、粒子の最小構成単位である結晶体(微結晶)を意味する。また、「アスペクト比」とは、粒子の長径と短径(または厚さ)との比(=長径/短径(または厚さ))である。「平均アスペクト比」は、電子顕微鏡等で撮像した撮像範囲中の結晶体のアスペクト比を平均したアスペクト比を指す。「粒径」とは、粒子の平均長径を意味する。また、添加剤として用いる窒化ホウ素を、「六方晶窒化ホウ素一次粒子」または単に「窒化ホウ素」と呼ぶこととする。これらの定義は、以下、実施の形態においても同様である。
図14に示すように、窒化ホウ素12a,12bは、ホウ素14と窒素15とが互いに正六角形の頂点に配置された六員環構造を有している。窒化ホウ素12bは、窒化ホウ素12aのホウ素14と窒素15とを互いに入れ替えたものである。窒化ホウ素12aのホウ素14(窒素15)と窒化ホウ素12bの窒素15(ホウ素14)とは互いに逆の電荷を有しているため、窒化ホウ素12aと窒化ホウ素12bとの間には、水素結合と同程度の大きさの引力が生じる。この引力が、六方晶窒化ホウ素一次粒子同士の重合・凝集を促進する。すなわち、樹脂組成物に添加する窒化ホウ素の添加量を多くした場合には、この機構により窒化ホウ素同士が重合・凝集して窒化ホウ素(二次粒子)が生成し、樹脂組成物内に沈殿・析出することになる。その結果、沈殿・析出した窒化ホウ素に電界集中して絶縁破壊が起こり、樹脂組成物の耐圧性が向上しないと考えられる。
なお、例えば粒子形状が球状である平均アスペクト比が2未満である窒化ホウ素にあっては、粒子形状が鱗片状である平均アスペクト比が2以上の窒化ホウ素に比べて、窒化ホウ素同士の重合・凝集が起こりにくいが、電気的な安定性は高くないため、樹脂組成物の耐圧性を高めにくいため、実施は可能であるが、平均アスペクト比が2以上であるとよい。
以上より、窒化ホウ素を添加した樹脂組成物において、窒化ホウ素同士の重合・凝集を低減し、高耐圧化を実現することが望まれる。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なときを除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
<第1実施形態に係る樹脂組成物の主要な特徴および効果>
図1は、第1実施形態に係る樹脂組成物の断面模式図である。図2は、第1実施形態に係る樹脂組成物を構成する窒化ホウ素の拡大模式図である。図3は、第1実施形態に係る樹脂組成物を構成する弾性部材の拡大断面模式図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る樹脂組成物10は、ベースポリマ11と添加剤とを含む。前記添加剤は、窒化ホウ素12と、弾性部材13とを含む。
第1実施形態に係る窒化ホウ素12は、平均アスペクト比が2以上である複数の六方晶窒化ホウ素一次粒子により構成され、図2に示すように、ホウ素14と窒素15とが互いに正六角形の頂点に配置された六員環構造を有している。以下、複数の六方晶窒化ホウ素一次粒子を六方晶窒化ホウ素一次粒子12という場合がある。
図3に示すように、第1実施形態に係る弾性部材13は、複数の弾性粒子により構成されている。以下、複数の弾性粒子を弾性粒子13という場合がある。弾性粒子13は、コア層16とコア層16の外周に配置されたシェル層17とを有する。そして、コア層16の弾性率とシェル層17の弾性率とは、互いに異なっている。
第1実施形態に係る樹脂組成物10において、複数の弾性粒子13の平均粒径は、複数の六方晶窒化ホウ素一次粒子12の平均粒径よりも小さい。
第1実施形態に係る樹脂組成物10は、以上の特徴的な構成を有することで、窒化ホウ素を添加した樹脂組成物において、窒化ホウ素同士の重合・凝集を抑制し、高耐圧化を実現することができる。以下、その理由について説明する。
今般、本発明者らは、図1に示すように、樹脂組成物10の添加剤として、窒化ホウ素12に加えて、弾性部材13を添加することによって、窒化ホウ素12の重合・凝集を抑制できることを見出した。このことは、次に示すブラウン運動理論によって説明できる。
ベースポリマ11に添加剤を混練する(練り混ぜて均一に分散させる)際において、添加剤の粒径が小さい場合には、ブラウン運動によって拡散していくと考えられる。具体的には、ブラウン運動の理論によれば、拡散係数Dは次式で与えられる。
D=kT/6πμa ・・・(式1)
式1において、kはボルツマン定数、Tは温度、μはベースポリマの粘性、aは粒子の直径(粒径)である。式1より、粒径aが小さいほど、拡散係数Dが大きくなることがわかる。従って、ベースポリマ11に窒化ホウ素12を添加して混練する際に、六方晶窒化ホウ素一次粒子12の平均粒径よりも小さい平均粒径を有する弾性粒子13をさらに添加すると、弾性粒子13が六方晶窒化ホウ素一次粒子12よりも激しくブラウン運動する。その結果、六方晶窒化ホウ素一次粒子12と六方晶窒化ホウ素一次粒子12との間に弾性粒子13が入り込み、前述した窒化ホウ素同士の重合・凝集反応を抑制することができる。このとき、(式1)から、弾性粒子の一秒後の到達距離は、室温での、樹脂の母材であるエポキシ樹脂と同等のサイズとなり、弾性粒子が大きく移動することがわかる。
特に、今般、本発明者らによれば、弾性粒子13の構成を、弾性率の異なるコア層16とシェル層17とのコア/シェル構造とすることによって、樹脂組成物10中に複数の弾性粒子13を効果的に分散させることができることがわかった。すなわち、弾性粒子13が樹脂組成物10中に分散することによって、窒化ホウ素12同士の重合・凝集反応をより効果的に抑制することができる。
さらには、コア層16をベースポリマ11よりも弾性率の小さい(すなわち柔軟性が高い)材料(エラストマ)により構成し、かつ、シェル層17をベースポリマ11との相溶性の高い材料により構成することによって、エラストマ成分を樹脂組成物10中に効果的に分散させることができ、その結果、樹脂組成物10の靭性を高め、耐クラック性を向上させることができる。
なお、シェル層17の成分がベンゼン環を含む場合には、窒化ホウ素の六員環との相互作用が大きくなるため、弾性粒子13が六方晶窒化ホウ素一次粒子12の周囲に配置されやすくなる。その結果、窒化ホウ素同士の重合・凝集反応をさらに効果的に抑制するとともに、六方晶窒化ホウ素一次粒子12と弾性粒子13との結びつきが強く耐熱性をさらに向上させることが可能となる。
以上より、第1実施形態に係る樹脂組成物10にあっては、窒化ホウ素12を多量に添加した場合であっても、窒化ホウ素12の重合・凝集を抑制し、高耐圧化を実現することができる。
また、図1に示すように、第1実施形態に係る樹脂組成物10にあっては、好ましい構成として、樹脂組成物10中において、樹脂組成物10中において、複数の弾性粒子13のそれぞれの間には、六方晶窒化ホウ素一次粒子12が介在している。すなわち、第1実施形態に係る窒化ホウ素12は、樹脂組成物10中において、六方晶窒化ホウ素一次粒子として存在し、窒化ホウ素の凝集体(二次粒子)としては存在しないため、樹脂組成物10の耐圧性を向上させることができる。さらに、いいかえれば、複数の弾性粒子13が高耐熱性および高熱伝導性を有する窒化ホウ素12のネットワークで結びついているため、弾性部材13の耐熱性を向上させることができる。
また、第1実施形態に係る樹脂組成物10にあっては、好ましい構成として、複数の弾性粒子13の形状は球状であり、複数の弾性粒子13の平均粒径は、複数の六方晶窒化ホウ素一次粒子12の粒径の1/10以上1/5以下である。ここで、「球状」とは、アスペクト比(長径と短径の比)が1以上2未満である。このような構造とすることで、弾性粒子13と弾性粒子13との間の相互作用が最も小さくなり、複数の弾性粒子13同士が反発して凝集しにくく、かつ、ブラウン運動によって拡散しやすい。その結果、窒化ホウ素の重合・凝集を効果的に抑制することができる。より、好ましくはアスペクト比(長径と短径の比)が1以上1.5未満であることをいう。このような構造とすることで、弾性粒子13がさらに球に近くなる。その結果、窒化ホウ素の重合・凝集を、より効果的に抑制することができる。このときの弾性粒子の凝集量は、アスペクト比(長径と短径の比)が1以上2未満の場合の75%となる。
また、第1実施形態に係る樹脂組成物10にあっては、好ましい構成として、後述の実施例(図12)に示すように、複数の窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)12の平均粒径(図3に示す半径r1の2倍)は、1μm以上15μm以下である。このような構成とすることで、樹脂組成物の耐圧性をさらに向上させることができる。また、複数の窒化ホウ素12の平均粒径は、好ましくは2μm以上13μm以下である。このような構成とすることで、平均粒径が1μm以上15μm以下の場合よりも、耐圧がピークとなる5μmに近づき、耐圧性を10%向上させることができる。5μmで耐圧がピークをもつのは、これより小さいと、窒化ホウ素同士が凝集・重合し、大きいと絶縁破壊を抑止しないためである。また、複数の窒化ホウ素12の平均粒径は、より好ましくは4μm以上10μm以下である。このような構成とすることで、平均粒径が2μm以上13μm以下の場合よりも、さらに耐圧がピークとなる5μmに近づき、耐圧性を10%向上させることができる。
そして、好ましい構成として、後述の実施例(図11)に示すように、複数の窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)12の平均アスペクト比は、3以上である。このような構成とすることで、樹脂組成物の耐圧性をさらに向上させることができる。複数の窒化ホウ素12の平均アスペクト比は、好ましくは3.5以上である。このような構成とすることで、絶縁破壊耐性の材料の面積比率が高まり、平均アスペクト比が3以上の場合よりも樹脂組成物の耐圧性を10%向上させることができる。複数の窒化ホウ素12の平均アスペクト比は、より好ましくは4以上である。このような構成とすることで、平均アスペクト比が3.5以上の場合よりも樹脂組成物の耐圧性を10%向上させることができる。各数値範囲を限定する意義(効果)については、後述の実施例にて詳述する(以下同じ)。
また、第1実施形態に係る樹脂組成物10にあっては、好ましい構成として、後述の実施例(図6および図7)に示すように、複数の弾性粒子13の平均粒径は、0.1μm以上2.4μm以下であり、このような構成とすることで、樹脂組成物の耐圧性をさらに向上させることができる。複数の弾性粒子13の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上2μm以下であり、このような構成とすることで、弾性粒子の最大半径が小さくなり、窒化ボロンの凝集・沈殿をより阻害し、樹脂組成物の耐圧性を、平均粒径が0.1μm以上2.4μm以下に比較して10%向上させることができる。複数の弾性粒子13の平均粒径は、より好ましくは、0.1μm以上1μm以下である。このような構成とすることで、弾性粒子の最大半径がさらに小さくなり、窒化ボロンの凝集・沈殿をより阻害し、樹脂組成物の耐圧性を、平均粒径が0.1μm以上2.0μm以下の場合と比較して10%向上させることができる。
また、第1実施形態に係る樹脂組成物10にあっては、好ましい構成として、後述の実施例(図13)に示すように、窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)12の樹脂組成物10中の重量比率は、0.5重量%以上30重量%以下であり、このような構成とすることで、樹脂組成物の耐圧性をさらに向上させることができる。窒化ホウ素12の樹脂組成物中の重量比率は、好ましくは1重量%以上20重量%以下である。このような構成とすることで、重量比率が0.5重量%以上30重量%以下の場合より、耐圧がピークとなる6重量%に近づき、耐圧性を10%向上させることができる。重量比率が6重量%で耐圧がピークをもつのは、これより小さいと、窒化ホウ素が絶縁破壊を抑止せず、これより大きいと、窒化ホウ素同士が、凝集・重合するためである。窒化ホウ素12の樹脂組成物10中の重量比率は、より好ましくは2重量%以上10重量%以下である。このような構成とすることで、重量比率が1重量%以上20重量%以下の場合より、耐圧がピークとなる6重量%にさらに近づき、耐圧性を10%向上させることができる。
また、第1実施形態に係る樹脂組成物10にあっては、好ましい構成として、後述の実施例(図8、図9および図10)に示すように、弾性部材(弾性粒子)13の樹脂組成物10中の重量比率は、1重量%以上10重量%以下であり、このような構成とすることで、樹脂組成物の耐圧性および耐クラック性をさらに向上させることができる。弾性部材13の樹脂組成物10中の重量比率は、好ましくは1重量%以上7重量%以下であり、このような構成とすることで、重量比率が1重量%以上10重量%以下の場合より、耐圧性およびクラック耐性がピークとなる3重量%に近づき、樹脂組成物の耐圧性および耐クラック性を10%向上させることができる。重量比率が3重量%で耐圧およびクラック耐性がピークをもつのは、これより小さいと、絶縁破壊を抑止せず、これより大きいと、弾性部材同士が、凝集・重合するためである。弾性部材13の樹脂組成物中の重量比率は、より好ましくは1重量%以上5重量%以下である。このような構成とすることで、重量比率が1重量%以上7重量%以下の場合より、耐圧性およびクラック耐性がピークとなる3重量%にさらに近づき、樹脂組成物の耐圧性および耐クラック性を10%向上させることができる。
<ベースポリマの詳細>
以下、第1実施形態に係る樹脂組成物10を構成するベースポリマ11について詳細に説明する。
第1実施形態に係る樹脂組成物10において、好ましい構成として、ベースポリマ11は、エポキシ樹脂である。このように、ベースポリマ11を熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂とすることで、樹脂組成物の耐圧性を向上させることができる。
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば、その種類は特に限定されない。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル、ブタジエンなどの二重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのエポキシ樹脂のなかでは、耐熱性の観点から極性を有するエポキシ樹脂が好ましく、エポキシ樹脂のプレポリマの主骨格はビスフェノールA型であることがより好ましい。
<窒化ホウ素の詳細>
第1実施形態に係る樹脂組成物10を構成する窒化ホウ素12について詳細に説明する。前述したように、第1実施形態に係る窒化ホウ素12は、常圧相窒化ホウ素の一次粒子である。常圧相窒化ホウ素の結晶構造は六方晶であり、グラファイトに類似した六角網目の層状構造をとる。そのため、常圧相窒化ホウ素の粒子形状は、鱗片状が最も安定な形状であり、平均アスペクト比が2以上となる。
<弾性部材の詳細>
以下、第1実施形態に係る樹脂組成物10を構成する弾性部材13について詳細に説明する。
前述したように、図3に示す第1実施形態に係る弾性部材(弾性粒子)13は、コア層16とコア層16の外周に配置されたシェル層17とを有し、コア層16の弾性率とシェル層17の弾性率とが互いに異なる。より具体的には、コア層16の弾性率は、シェル層17の弾性率よりも高い。コア層の直径(図3に示す半径r2の2倍)およびシェル層の層厚(図3に示す半径差r3の2倍)は、いずれも0.1μmオーダーである。
コア層16の構成成分としては、特に限定されるものではないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。好ましくはn-ブチルアクリレート、エチルアクリレートである。これらの単量体には、2個以上のビニル性官能基を持つ単量体が含まれてもよい。特に限定されるものではないが、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。好ましくはアリルメタクリレートである。また、ブタジエン-アクリロニトリル-スチレン(ABS)、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)、メチルメタクリレート-ブチルアクリレート-スチレン(MAS)、オクチルアクリレート-ブタジエン-スチレン(OABS)、アルキルアクリレート-ブタジエン-アクリロニトリル-スチレン(AABS)、ブタジエン-スチレン(SBR)及びメチルメタクリレート-ブチルアクリレート-シロキサンをはじめとするシロキサン等の粒子状弾性体、又はこれらを変性したゴム等が挙げられる。
シェル層17の構成成分としては、特に限定されるものではないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。好ましくはメチルメタクリレート、エチルアクリレートである。単量体には、2個以上のビニル性官能基を持つ単量体が含まれてもよい。特に限定されるものではないが、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。好ましくはアリルメタクリレートである。ベースポリマ11の構成成分であるエポキシ樹脂との界面接着性を向上させるために、シェル層17の構成成分として、極性の高い官能基をもつ単量体を導入してもよい。極性の高い官能基の例としては、エポキシ基、水酸基、アミド基、イミド基、アミン基、イミン基、カルボン酸基、無水カルボン酸基等が挙げられる。
コア層16/シェル層17の比率(重量比)は、例えば40/60~95/5であり、より好ましくは60/40~85/15である。コア層16の比率が低下すると、樹脂組成物10の靭性が劣る場合があるため好ましくない。一方、シェル層17の比率が低下すると、樹脂組成物中で重合体粒子が分散しにくくなり、耐圧性が向上しない場合がある。
<その他>
後述の実施例に示すように、第1実施形態に係る樹脂組成物10は、添加剤として、ベースポリマの硬化反応を促進する酸無水物、ベースポリマの硬化反応を開始するラジカル重合開始剤、製品に適用する際に他の材料との接合性を高めるカップリング剤、添加剤を分散させやすくする分散剤等を添加してもよい。
酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水アルケニル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、無水シクロペンタンテトラカルボン酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等が挙げられる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン系化合物等が挙げられる。カップリング剤としては、例えば、シランカップリンング剤等が挙げられる。分散剤としては、例えばノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
<第1実施形態に係る樹脂組成物の適用例>
以下、第1実施形態に係る樹脂組成物10を適用した電気機器の例について説明する。すなわち、第1実施形態に係る樹脂組成物10が電気機器の電気絶縁を必要とする箇所に適用されている例である。
<適用例1>
図4は、第1実施形態に係る樹脂組成物10を適用した変圧器20を示す断面模式図である。
図4に示すように、第1実施形態に係る変圧器20は、導線(巻線)21と、導線21の周囲に配置された樹脂組成物10と、樹脂組成物10の周囲に配置された絶縁紙22と、絶縁紙22の周囲に配置された絶縁材23とを有している。なお、絶縁材23を樹脂組成物10によって構成してもよい。この導線21には高圧の交流電圧が印加される。
このような構成を有する変圧器20にあっては、運転時の温度変化、または輸送時の温度変化によって樹脂組成物10に対して局所的に熱応力が発生する可能性がある。この点、第1実施形態に係る樹脂組成物10にあっては、耐圧性だけでなく耐クラック性も向上させることができるため、このような熱的・電気的ストレスが大きい変圧器20に好適に適用することができる。
<適用例2>
図5は、第1実施形態に係る樹脂組成物10を適用した電動機30を示す断面模式図である。
図5に示すように、第1実施形態に係る電動機30は、導線31と、導線31の周囲に配置された樹脂組成物10とを有している。この導線31には、高圧の交流電圧が印加される。
このような構成を有する電動機30にあっては、運転時の温度変化、または輸送時の温度変化によって樹脂組成物10に対して局所的に熱応力が発生する可能性がある。この点、第1実施形態に係る樹脂組成物10にあっては、耐圧性だけでなく耐クラック性も向上させることができるため、このような熱的・電気的ストレスが大きい電動機30に好適に適用することができる。
<その他の適用例>
以上で説明した適用例の他にも、第1実施形態に係る樹脂組成物10は、開閉機器、変換器、制御機器、家電機器、車載機器または鉄道搭載機器等の電気機器に好適に適用することができ、例えば電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)やインバータの一部または全部を覆う樹脂として実施できる。第1実施形態に係る樹脂組成物10は、強電用電気機器(産業機器)により好適に適用することができる。産業機器とは、変圧器を含む静止誘導機器、電動機、同期機、開閉機器、圧縮機、電力変換器(インバータやコンバータ)、制御機器のような産業分野で用いられ自走手段を有さない機器である。また、本発明は、家電機器、車載機器または鉄道搭載機器等にも実施可能である。自走手段を有する自動車のECUや自動車と鉄道向けインバータは高温に晒され、内部のチップも高温となるため本発明の樹脂組成物は有効である。また、エレベータやクレーンのような吊り上げ機器の制御機器やインバータを覆う樹脂としても実施可能である。
<第1実施形態に係る樹脂組成物の製造方法>
以下、第1実施形態に係る樹脂組成物10の製造方法について説明する。第1実施形態に係る樹脂組成物10の製造方法は、ベースポリマと添加剤とを混練し、混練物を生成する工程((a)混練工程)と、前記混練物を成型し、成形物を生成する工程((b)成形工程)と、前記成形物を加熱し、前記樹脂組成物を生成する工程((c)硬化工程)とを有している。
(a)混練工程では、図1に示すベースポリマ11と添加剤である窒化ホウ素12および弾性部材13とを混練するが、前述したように、弾性部材13を構成する弾性粒子がブラウン運動によってベースポリマ11中を拡散し、混練物中において窒化ホウ素12を構成する六方晶窒化ホウ素一次粒子同士の重合・凝集を抑制することができる。これにより、前記(b)成形工程および前記(c)硬化工程を経て生成された図1に示す樹脂組成物10において、耐圧性を向上させることができる。
なお、第1実施形態に係る樹脂組成物の製造方法において、好ましい形態として、前記(b)成形工程は、塗布、真空注型、大気注型、加圧注型または射出注型のいずれか1つによって行われる。すなわち、第1実施形態に係る樹脂組成物は、あらゆる成形法で成形することが可能であるため、樹脂組成物の製造効率を向上させることができる。
特に、前記(b)成形工程において、塗布によってシート状の成形物を生成する場合には、従来、樹脂成分のみが表面に集まり、添加物が沈降する等によって、ベースポリマと添加物とが成形物中で分離するという問題があった。その結果、本来樹脂組成物中に分散した窒化ホウ素同士によって形成されるヒートパスが形成されず、望まれる放熱性能が達成できないという虞があった。
この点、第1実施形態に係る樹脂組成物の製造方法にあっては、前記(a)混練工程でベースポリマ11と添加剤とが混練されてから、ベースポリマ11が前記(c)硬化工程で硬化するまでの間、弾性部材13を構成する弾性粒子がブラウン運動を続ける。そのため、前記(b)成形工程において、いずれの成形法(特に塗布)を用いた場合でも、添加剤が成形物中で分離するという事態を防止することができる。
(変形例)
以下、第1実施形態に係る変形例について、説明する。
<変形例1>
第1変形例(以下、変形例1)に係る樹脂組成物は、基本的には第1実施形態に係る樹脂組成物と同様に構成されているが、変形例1に係る樹脂組成物は、さらに、スチレンおよび/またはN-フェニルマレイミドを含む点で、第1実施形態に係る樹脂組成物と相違している。「スチレンおよび/またはN-フェニルマレイミド」とは、スチレン単独でも、N-フェニルマレイミド単独でも、または、これらを併用してもよいという意味である。
スチレンおよびN-フェニルマレイミドは、ベースポリマの硬化反応の触媒として用いられる物質であるが、本発明者らは、今般、添加剤として窒化ホウ素および弾性部材とともに添加することで、六方晶窒化ホウ素一次粒子同士の重合・凝集をさらに抑制することを見出した。そのため、変形例1に係る樹脂組成物にあっては、図1に示す第1実施形態に係る樹脂組成物10に比べて、さらに高耐圧性を向上させることができる。
なお、六方晶窒化ホウ素一次粒子同士の重合・凝集を抑制する効果としては、スチレン単独でも、N-フェニルマレイミド単独でもよいが、これらを併用した方がより好ましい。スチレンおよび/またはN-フェニルマレイミドの樹脂組成物中の重量比率は、特に限定されるものではないが、0.1重量%以上6重量%以下であることが好ましい。
なお、ベースポリマの硬化後には、樹脂組成物中にスチレンおよび/またはN-フェニルマレイミドの硬化生成物が生成する。これらの硬化生成物は高耐熱性を有しているため、樹脂組成物の耐熱性をさらに向上させることもできる。
<変形例2>
第2変形例(以下、変形例2)に係る樹脂組成物は、基本的には第1実施形態に係る樹脂組成物と同様に構成されているが、変形例2に係る樹脂組成物は、さらに劈開マイカを含む点で、第1実施形態に係る樹脂組成物と相違している。
マイカは、樹脂組成物の耐圧性を向上させる添加剤である。特に、マイカはその表面で絶縁破壊が進展するため、マイカのなかでも表面積が大きい壁開マイカを用いることで、絶縁破壊の進展速度を小さくすることができ、樹脂組成物の絶縁破壊耐性がさらに向上する。そのため、変形例2に係る樹脂組成物にあっては、図1に示す第1実施形態に係る樹脂組成物10に比べて、さらに高耐圧性を向上させることができる。
なお、劈開マイカは、変形例1のスチレンおよび/またはN-フェニルマレイミドと併用することも可能である。劈開マイカの樹脂組成物中の重量比率は、特に限定されるものではないが、1重量%以上50重量%以下(例えば10重量%)であることが好ましい。
<変形例3>
第3変形例(以下、変形例3)に係る樹脂組成物は、基本的には第1実施形態に係る樹脂組成物と同様に構成されているが、変形例3に係る樹脂組成物は、さらにシリカを含む点で、第1実施形態に係る樹脂組成物と相違している。
シリカは、樹脂組成物の耐熱性およびクラック耐性を向上させる添加剤である。
高熱伝導性を付与する添加剤として樹脂組成物に添加する結晶性シリカの中には、湿式と乾式との2種の方法において製造したものが存在する。一般的に乾式製造の方が表面におけるOH基や残留水が少なく、絶縁樹脂製造における水の悪影響(硬化阻害、副反応の誘発)を避けることが可能となる。また、この効果により絶縁樹脂の熱伝導度を高めるのにも役立つ。
一方、湿式製造の破砕シリカは、その表面にOH基が多く露出する傾向があり、このOH基と水とが水素結合により多数結合する。水は1分子あたり20kJ/mol以上のエネルギーで発熱的に結合しており、この水を除去するには100℃以上で一昼夜にわたる乾燥工程を必要とする。また水の存在は、エポキシ樹脂の重合にとっては望ましくない効果を与える。そのため、樹脂組成物の耐熱性およびクラック耐性を向上させる添加剤としては、乾式製造されたシリカの方が湿式製造されたシリカよりも好ましい。
また、樹脂組成物に添加するシリカとして、結晶性シリカだけでなく、(溶融)球状シリカを含んでもよい。球状シリカとすることで、線膨張係数を低減し、低減効果が等方的となり、線膨張係数の樹脂組成物の製造方向による依存性を小さくすることができる。
そのため、変形例3に係る樹脂組成物にあっては、図1に示す第1実施形態に係る樹脂組成物10に比べて、さらに耐熱性とクラック耐性をさらに向上させることができる。
なお、シリカは、変形例1のスチレンおよび/またはN-フェニルマレイミド、または、変形例2の劈開マイカと併用することも可能である。シリカの樹脂組成物中の重量比率は、特に限定されるものではないが、10重量%以上80重量%以下であることが好ましい。
<変形例4>
第4変形例(以下、変形例4)に係る樹脂組成物は、基本的には第1実施形態に係る樹脂組成物と同様に構成されているが、変形例4に係る樹脂組成物は、さらにエラストマを含む点で、第1実施形態に係る樹脂組成物と相違している。
エラストマは、樹脂組成物のクラック耐性を向上させる添加剤である。エラストマとしては、非反応性エラストマ(例えば、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ポリブタジエンやクロロプレンゴム等の液状ゴム、シリコーンオイル、シリコーンゴム、カルボキシル或はエポキシ変性の架橋NBR、アクリルゴム、ウレタンゴム、熱可塑性ポリエステルエラストマ等)、反応性エラストマ(カルボキシル変性のブタジエン-アクリロニトリル共重合体(CTBN)、アミノ変性のブタジエン-アクリロニトリル共重合体(ATBN)、主鎖にカルボキシル基を含有するNBR、カルボキシル変性ポリブタジエン、液状ポリサルファイド、変性シリコーンウレタンプレポリマ等)が挙げられる。
また、エラストマの形状として、平均アスペクト比が2以上のもの(例えば鱗片状)が好ましい。こうすることで、沈降やほかの数密度を上げることによるクラック進展阻害作用が期待できる。
以上より、変形例4に係る樹脂組成物にあっては、図1に示す第1実施形態に係る樹脂組成物10に比べて、さらにクラック耐性をさらに向上させることができる。
(実施例)
以下、実施例を示して本発明を説明する。なお、以下の実施例は本発明の具体的な説明のためのものであって、本発明の範囲がこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術思想の範囲内において、自由に変更可能である。
<実施例の原材料>
ベースポリマの一例としては、エポキシ樹脂(製品名EPICLON840、DIC(株)社製)を用いた。窒化ホウ素としては、六方晶窒化ホウ素一次粒子を用いた。弾性部材としては、コア層が無機物からなり、シェル層がポリマからなるコアシェルゴムを用いた。
<実施例の製造方法>
基本的には、前述した第1実施形態に係る樹脂組成物の製造方法に沿って、実施例に係る樹脂組成物を作製した。具体的には、エポキシ樹脂(ベースポリマ)と、窒化ホウ素と、コアシェルゴム(弾性部材)と、酸無水物と、ラジカル重合開始剤と、カップリング剤と、分散剤とを攪拌器で十分攪拌・混練し、混練物を生成した。その後、この混練物を塗布により成形し、成形物とした後に、加熱して硬化し、実施例に係る樹脂組成物を作製した。
<平均粒径および平均アスペクト比>
ここで、実施例における窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)および弾性部材(弾性粒子)の平均粒径および平均アスペクト比の測定方法の一例について説明する。まず、シート状の樹脂組成物の断面を電子顕微鏡(走査電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡)または光学顕微鏡で測定し、その画像から50個の測定対象粒子を任意に選択した。その後、各粒子の長径および短径を測定した。実施例においては、この長径の平均を平均粒径とし、長径/短径の平均を平均アスペクト比とした。なお、六方晶窒化ホウ素一次粒子が屈曲した形状を有する場合には、屈曲箇所で当該一次粒子を2つに分け、分けられた2つの部位について長径を測定し、長径の大きな方の部位から算出される長径および短径を当該一次粒子の長径および短径とした。アスペクト比の算出方法は撮像範囲全ての粒子の平均でもよく、また撮像範囲のうちの所定の領域の平均値を用いてもよい。
<実施例1>
図6は、第1実施例(以下、実施例1)に係る樹脂組成物において、コアシェルゴムの粒径と窒化ホウ素の沈殿量との関係を表すグラフである。図7は、実施例1に係る樹脂組成物において、コアシェルゴムの粒径と絶縁耐圧との関係を表すグラフである。
実施例1は、コアシェルゴムの粒径を変化させた場合における、窒化ホウ素の沈殿量および樹脂組成物の絶縁耐圧への影響を調べたものである。実施例1では、窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)の平均粒径を5μm、窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)の平均アスペクト比を6、窒化ホウ素の樹脂組成物中の重量比率を6重量%、コアシェルゴム(弾性部材)の樹脂組成物中の重量比率を3重量%とした。
図6に示すグラフの縦軸「窒化ホウ素の沈殿量」は、添加した窒化ホウ素が全て沈殿したと仮定したときの重量を1(基準)として、エポキシ樹脂(ベースポリマ)を溶媒に溶出させて取り除いた際に残る沈殿物の重量を測定し、相対的に表したものである(図8についても同様)。また、図7に示すグラフの縦軸「絶縁耐圧」は、コアシェルゴムの平均粒径を3μmとしたときの樹脂組成物の絶縁耐圧を1(基準)として、絶縁耐圧を相対的に表したものである。
図6に示すように、コアシェルゴムの平均粒径を3μm以上とすると、添加した窒化ホウ素がほぼ全部沈殿物として析出することがわかる。一方、コアシェルゴムの平均粒径を0.1μm以上2.4μm以下とすれば、窒化ホウ素の沈殿量を半減(全部沈殿したときの1/2)することができる。そして、好ましくは、コアシェルゴムの平均粒径を0.1μm以上2μm以下とすれば、窒化ホウ素の沈殿量を全部沈殿したときの1/4とすることができる。より好ましくは、コアシェルゴムの平均粒径を0.1μm以上1μm以下とすれば、窒化ホウ素の沈殿量をほぼ0とすることができる。
また、図7に示すように、コアシェルゴムの平均粒径を小さくしていくと、絶縁耐圧が向上していくことがわかる。コアシェルゴムの平均粒径を0.1μm以上2.4μm以下とすれば、コアシェルゴムの平均粒径を3μmとしたときの樹脂組成物の絶縁耐圧に比べて1.25倍以上とすることができる。そして、好ましくは、コアシェルゴムの平均粒径を0.1μm以上2μm以下とすれば、コアシェルゴムの平均粒径を3μmとしたときの樹脂組成物の絶縁耐圧に比べて1.4倍以上とすることができる。より好ましくは、コアシェルゴムの平均粒径を0.1μm以上1μm以下とすれば、コアシェルゴムの平均粒径を3μmとしたときの樹脂組成物の絶縁耐圧に比べて1.5倍以上とすることができる。
以上より、実施例1に係る樹脂組成物から、コアシェルゴム(弾性粒子)の平均粒径を上記範囲とすることで、窒化ホウ素の沈殿・析出を抑止できることが示された。
<実施例2>
図8は、第2実施例(以下、実施例2)に係る樹脂組成物において、コアシェルゴムの重量比率と窒化ホウ素の沈殿量との関係を表すグラフである。図9は、実施例2に係る樹脂組成物において、コアシェルゴムの重量比率と絶縁耐圧との関係を表すグラフである。図10は、実施例2に係る樹脂組成物において、コアシェルゴムの重量比率と破壊靭性との関係を表すグラフである。
実施例2は、コアシェルゴムの樹脂組成物中の重量比率を変化させた場合における、窒化ホウ素の沈殿量、樹脂組成物の絶縁耐圧および破壊靭性への影響を調べたものである。実施例2では、窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)の平均粒径を6μm、窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)の平均アスペクト比を6、窒化ホウ素の樹脂組成物中の重量比率を6重量%、コアシェルゴム(弾性粒子)の平均粒径を1μmとした。
図9に示すグラフの縦軸「絶縁耐圧」は、コアシェルゴムを添加しない場合(重量比率が0重量%)の樹脂組成物の絶縁耐圧を1(基準)として、絶縁耐圧を相対的に表したものである。
図10に示すグラフの縦軸「破壊靭性」は、コアシェルゴムを添加しない場合(重量比率が0重量%)の樹脂組成物の破壊靭性を6(基準)として、破壊靭性を相対的に表したものである。
図8に示すように、コアシェルゴムを添加しない場合(重量比率が0重量%)には、添加した窒化ホウ素がほぼ全部沈殿物として析出することがわかる。一方、コアシェルゴムの重量比率を1重量%以上10重量%以下とすれば、窒化ホウ素の沈殿量を半減(全部沈殿したときの1/2)することができる。そして、好ましくは、コアシェルゴムの重量比率を1重量%以上7重量%以下とすれば、窒化ホウ素の沈殿量を全部沈殿したときの1/4とすることができる。より好ましくは、コアシェルゴムの重量比率を1重量%以上5重量%以下とすれば、窒化ホウ素の沈殿量をほぼ0とすることができる。
また、図9に示すように、コアシェルゴムの重量比率を1重量%以上10重量%以下とすれば、コアシェルゴムを添加しない場合の絶縁耐圧に比べて1.25倍以上とすることができる。そして、好ましくは、コアシェルゴムの重量比率を1重量%以上7重量%以下とすれば、コアシェルゴムを添加しない場合の絶縁耐圧に比べて1.3倍以上とすることができる。より好ましくは、コアシェルゴムの重量比率を1重量%以上5重量%以下とすれば、コアシェルゴムを添加しない場合の樹脂組成物の絶縁耐圧に比べて1.4倍以上とすることができる。
また、図10に示すように、コアシェルゴムの重量比率を1重量%以上10重量%以下とすれば、コアシェルゴムを添加しない場合の破壊靭性に比べて1.25倍以上とすることができる。そして、好ましくは、コアシェルゴムの重量比率を1重量%以上7重量%以下とすれば、コアシェルゴムを添加しない場合の破壊靭性に比べて1.3倍以上とすることができる。より好ましくは、コアシェルゴムの重量比率を1重量%以上5重量%以下とすれば、コアシェルゴムを添加しない場合の樹脂組成物の破壊靭性に比べて1.4倍以上とすることができる。
以上より、実施例2に係る樹脂組成物から、コアシェルゴム(弾性部材)の重量比率を上記範囲とすることで、窒化ホウ素の沈殿・析出を抑止できることが示された。そして、実施例2に係る樹脂組成物から、コアシェルゴム(弾性部材)の添加により、耐圧性だけでなく耐クラック性も向上させることができることが示された。
<実施例3>
図11は、第3実施例(以下、実施例3)に係る樹脂組成物において、窒化ホウ素のアスペクト比と絶縁耐圧との関係を表すグラフである。
実施例3は、窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)のアスペクト比を変化させた場合における、樹脂組成物の絶縁耐圧への影響を調べたものである。実施例3では、窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)の平均粒径を6μm、窒化ホウ素の樹脂組成物中の重量比率を6重量%、コアシェルゴム(弾性粒子)の平均粒径を1μm、コアシェルゴム(弾性部材)の樹脂組成物中の重量比率を3重量%とした。
図11に示すグラフの縦軸「絶縁耐圧」は、窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)の平均アスペクト比が1である場合の樹脂組成物の絶縁耐圧を1(基準)として、絶縁耐圧を相対的に表したものである。
図11に示すように、窒化ホウ素の平均アスペクト比を2以上とすれば、樹脂組成物の絶縁耐圧が向上する。特に、窒化ホウ素の平均アスペクト比を3以上とすれば、窒化ホウ素の平均アスペクト比が1である場合の絶縁耐圧に比べて1.1倍以上とすることができる。そして、好ましくは、窒化ホウ素の平均アスペクト比を3.5以上とすれば、窒化ホウ素の平均アスペクト比が1である場合の絶縁耐圧に比べて1.25倍以上とすることができる。より好ましくは、窒化ホウ素の平均アスペクト比を4以上とすれば、窒化ホウ素の平均アスペクト比が1である場合の絶縁耐圧に比べて1.4倍以上とすることができる。なお、窒化ホウ素の平均アスペクト比の上限は特に限定されるものではないが、平均アスペクト比を8以上とした場合には、樹脂組成物の絶縁耐圧が飽和し、その向上は緩やかになっていくものと考えられる。
以上より、実施例3に係る樹脂組成物から、窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)の平均アスペクト比を上記範囲とすることで、窒化ホウ素の沈殿・析出を抑止できることが示された。
<実施例4>
図12は、第4実施例(以下、実施例4)に係る樹脂組成物において、窒化ホウ素の粒径と絶縁耐圧との関係を表すグラフである。
実施例4は、窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)の粒径を変化させた場合における、樹脂組成物の絶縁耐圧への影響を調べたものである。実施例4では、窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)の平均アスペクト比を6、窒化ホウ素の樹脂組成物中の重量比率を6重量%、コアシェルゴム(弾性粒子)の平均粒径を1μm、コアシェルゴム(弾性部材)の樹脂組成物中の重量比率を3重量%とした。
図12に示すグラフの縦軸「絶縁耐圧」は、窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)の平均粒径を20μmとした場合における樹脂組成物の絶縁耐圧を1(基準)として、絶縁耐圧を相対的に表したものである。窒化ホウ素の平均粒径を20μmとすると、コアシェルゴムの添加の有無にかかわらず、窒化ホウ素が全て沈殿・析出する。
図12に示すように、窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)の平均粒径を1μm以上15μm以下とすれば、窒化ホウ素の平均粒径が20μmである場合の絶縁耐圧に比べて1.1倍以上とすることができる。そして、好ましくは、窒化ホウ素の平均粒径を2μm以上13μm以下とすれば、窒化ホウ素の平均粒径が20μmである場合の絶縁耐圧に比べて1.25倍以上とすることができる。より好ましくは、窒化ホウ素の平均粒径を4μm以上10μm以下とすれば、窒化ホウ素の平均粒径が20μmである場合の絶縁耐圧に比べて1.4倍以上とすることができる。
以上より、実施例4に係る樹脂組成物から、窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)の平均粒径を上記範囲とすることで、窒化ホウ素の沈殿・析出を抑止できることが示された。
<実施例5>
図13は、第5実施例(以下、実施例5)に係る樹脂組成物において、窒化ホウ素の重量比率と絶縁耐圧との関係を表すグラフである。
図13に示すグラフの縦軸「絶縁耐圧」は、窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)を添加しない場合(重量比率が0重量%)の樹脂組成物の絶縁耐圧を1(基準)として、絶縁耐圧を相対的に表したものである。
図13に示すように、窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)の重量比率を0.5重量%以上30重量%以下とすれば、窒化ホウ素を添加しない場合の絶縁耐圧に比べて1.1倍以上とすることができる。そして、好ましくは、窒化ホウ素の重量比率を1重量%以上20重量%以下とすれば、窒化ホウ素を添加しない場合の絶縁耐圧に比べて1.3倍以上とすることができる。より好ましくは、窒化ホウ素の重量比率を2重量%以上10重量%以下とすれば、窒化ホウ素を添加しない場合の樹脂組成物の絶縁耐圧に比べて1.4倍以上とすることができる。
以上より、実施例5に係る樹脂組成物から、窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)の平均粒径を上記範囲とすることで、窒化ホウ素の沈殿・析出を抑止できることが示された。
本発明は前記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
10 樹脂組成物
11 ベースポリマ
12,12a,12b 窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素一次粒子)
13 弾性部材(弾性粒子)
14 ホウ素
15 窒素
16 コア層
17 シェル層
20 変圧器
21 導線(巻線)
22 絶縁紙
23 絶縁材
30 電動機
31 導線

Claims (14)

  1. エポキシ樹脂を含むベースポリマと添加剤とを含む樹脂組成物において、
    前記添加剤は、窒化ホウ素と弾性部材とを含み、
    前記窒化ホウ素は、粒径が2μm以上15μm以下、アスペクト比が2以上である六方晶窒化ホウ素一次粒子により構成され、
    前記弾性部材は、コア層と前記コア層の外周に配置されたシェル層とを有する弾性粒子により構成され、
    前記コア層の弾性率と前記シェル層の弾性率とは、互いに異なり、
    前記弾性粒子の粒径は、前記六方晶窒化ホウ素一次粒子の粒径よりも小さい、樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載の樹脂組成物において、
    前記樹脂組成物中において、前記弾性粒子のそれぞれの間には、前記六方晶窒化ホウ素一次粒子が介在している、樹脂組成物。
  3. 請求項1に記載の樹脂組成物において、
    前記弾性粒子の形状は、球状であり、
    前記弾性粒子の前記粒径は、前記六方晶窒化ホウ素一次粒子の前記粒径の1/10以上1/5以下である、樹脂組成物。
  4. 請求項1に記載の樹脂組成物において、
    前記六方晶窒化ホウ素一次粒子の前記粒径は、4μm以上10μm以下であり、
    前記六方晶窒化ホウ素一次粒子の前記アスペクト比は、4以上である、樹脂組成物。
  5. 請求項1に記載の樹脂組成物において、
    前記弾性粒子の前記粒径は、0.1μm以上2μm以下である、樹脂組成物。
  6. 請求項1に記載の樹脂組成物において、
    前記窒化ホウ素の前記樹脂組成物中の重量比率は、2重量%以上10重量%以下である、樹脂組成物。
  7. 請求項1に記載の樹脂組成物において、
    前記弾性部材の前記樹脂組成物中の重量比率は、1重量%以上5重量%以下である、樹脂組成物。
  8. 請求項1に記載の樹脂組成物において、
    前記添加剤は、さらにスチレンおよび/またはN-フェニルマレイミドを含む、樹脂組成物。
  9. 請求項1に記載の樹脂組成物において、
    前記添加剤は、さらに劈開マイカを含む、樹脂組成物。
  10. 請求項1に記載の樹脂組成物において、
    前記添加剤は、さらにシリカを含む、樹脂組成物。
  11. 請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の樹脂組成物が、電気絶縁を必要とする箇所に適用されている、電気機器。
  12. 請求項11に記載の電気機器において、
    前記電気機器は、変圧器、開閉機器、電動機、変換器、制御機器、家電機器、車載機器または鉄道搭載機器のいずれか1つである、電気機器。
  13. エポキシ樹脂を含むベースポリマと添加剤とを含む樹脂組成物の製造方法であって、
    前記添加剤は、窒化ホウ素と弾性部材とを含み、
    前記窒化ホウ素は、粒径が2μm以上15μm以下、アスペクト比が2以上である六方晶窒化ホウ素一次粒子により構成され、
    前記弾性部材は、コア層と前記コア層の外周に配置されたシェル層とをそれぞれ有する弾性粒子により構成され、
    前記コア層の弾性率と前記シェル層の弾性率とは、互いに異なり、
    前記弾性粒子の粒径は、前記六方晶窒化ホウ素一次粒子の粒径よりも小さく、
    前記ベースポリマと前記添加剤とを混練し、混練物を生成する(a)工程と、
    前記混練物を成型し、成形物を生成する(b)工程と、
    前記成形物を加熱し、前記樹脂組成物を生成する(c)工程と、
    を有する、樹脂組成物の製造方法。
  14. 請求項13に記載の樹脂組成物の製造方法において、
    前記(b)工程は、塗布、真空注型、大気注型、加圧注型または射出注型のいずれか1つによって行われる、樹脂組成物の製造方法。
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