JP7267527B2 - 新規肝癌マーカー - Google Patents
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Description
さらに、ヒトの血液中のPKCδを測定した報告もこれまでになく、PKCδがヒト血液中から検出できるかについても不明であった。
また、ヒト肝癌患者の血清を用いて検討したところ、ヒト肝癌患者血清中においてPKCδが検出できること、およびヒト肝癌患者血清には健常人血清と比較してPKCδの量が高いことを見出した。
[1]被検対象由来の生体試料における細胞外のPKCδタンパク質の量を測定する工程を含む、肝癌診断のためのデータ取得方法。
[2]細胞外のPKCδタンパク質の量が健常者におけるレベルより高い場合に肝癌に罹患している可能性が高いという基準により、肝癌を診断するためのものである、[1]に記載の方法。
[3]細胞外のPKCδタンパク質の量を測定するために使用される前記生体試料が血清である、[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記測定する工程が、免疫測定法による、[1]~[3]の何れかに記載の方法。
[5]前記測定する工程が、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法による、[4]に記載の方法。
[6]前記被検対象が、ヒトである、[1]~[5]の何れかに記載の方法。
[7]細胞外のPKCδタンパク質の量を測定する試薬を含む、肝癌診断用キット。
[8]細胞外のPKCδタンパク質の量を測定する試薬が、少なくとも抗PKCδ抗体を含む、[7]に記載のキット。
[9]さらに、GPC3タンパク質の量を測定する試薬を含む、[7]または[8]に記載のキット。
[10]PKCδおよびGPC3を含むスクリーニング系に医薬候補物質を添加する工程、PKCδとGPC3との相互作用を測定する工程、及び前記相互作用を変化させる物質を選択する工程を含む、肝癌治療薬のスクリーニング方法。
[11]血中PKCδの腫瘍マーカーとしての使用。
細胞外のPKCδタンパク質とは、細胞外に存在するPKCδタンパク質を意味し、細胞外の液中に存在するPKCδタンパク質および細胞膜に結合して細胞外に存在するPKCδタンパク質を含む。
免疫測定法は、酵素免疫定量法に従い定量検出する方法や、蛍光免疫測定法、化学発光免疫測定法等で測定する方法等が好ましい。酵素免疫定量法は、標識イムノアッセイ法のうち、酵素を標識物質として用いる検出方法である。また、イムノソルベントを用いる、ELISA法を選択することが、特に好ましい。
サンドイッチ法において、免疫複合体を形成させる順序は特に限定されない。固定化抗体に対して、PKCδを含む生体試料、二次抗体の順で添加して結合させてもよいし、まずPKCδを含む生体試料と二次抗体とを混合して複合体を形成させたものを固定化抗体に対して添加して結合させてもよい。
また、各抗体は一般的に用いられているマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、トリ由来のもの等が使用できるがこれらに限定されず、PKCδに特異的に結合する抗体であれば何れも使用できる。
市販されている抗PKCδ抗体としては、例えばマウス抗PKCδモノクローナル抗体(BD、クローン14)を使用することができ、この抗体はPKCδの配列番号1の114番目~289番目のアミノ酸で表されるPKCδタンパク質の一部を認識する抗体である。
これらのうち、感度および操作の簡便さの観点から酵素が好ましく、西洋わさび過酸化酵素(HRP)、アルカリフォスファターゼ(AP)、グルコースオキシダーゼ(GOD)等がより好ましい。標識物質としてHRPを用いる場合はTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)等を、APを用いる場合はAMPPD(3-(2’-スピロアダマンタン)-4-メトキシ-4-(3’’-ホスホリルオキシ)フェニル-1,2-ジオキセタン・2ナトリウム塩)、9-(4-クロロフェニルチオホスホリルオキシメチリデン)-10-メチルアクリダン二ナトリウム塩等を基質として使用することができる。また、標識物質としては、他にFITC(fluorescein isothiocyanate)、ローダミン等の蛍光色素等も使用することができる。
定量の際は、例えば、予め既知の濃度の試料で検量線(標準曲線)を作成しておき、測定値を検量線に照合して試料中のPKCδ濃度を算出することができる。
固定化抗体の固相への固定化後は非特異吸着を防ぐため、スキムミルク、アルブミン、カゼイン等で適宜ブロッキングしてもよい。
本発明において、抗原-抗体反応を行う時間、本発明の方法を行う温度、試料や試薬の希釈液および洗浄液の組成やpH等は特に限定されず、一般的に行われるELISA法に適用する条件でよい。
GPC3のアミノ酸配列は、例えば、配列番号2のアミノ酸配列が例示される。また、このアミノ酸配列において、1または数個(例えば1~20個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質でもよい。また、被検対象として異なる動物を使用する場合は、該動物由来のホモログタンパク質が測定対象となる。
例えば、細胞外のPKCδタンパク質の量が健常者におけるレベルより高いときや、あらかじめ定められた値以上のときに肝癌と診断し、肝癌治療薬の投与や肝癌手術の施術等を行うことができる。
本発明のスクリーニング方法は、PKCδおよびGPC3を含むスクリーニング系に医薬候補物質を添加する工程、PKCδとGPC3との相互作用を測定する工程、及び前記相互作用を変化させる物質を選択する工程を含む、肝癌治療薬のスクリーニング方法である。
また、キットには、さらに、反応用容器、反応用緩衝液、洗浄液、標準物質などが含まれてもよい。
さらに、標識化二次抗体、標識が酵素である場合その基質、BSA等のブロッキング剤等の試薬を含めることもできる。
さらに、抗GPC3抗体など、他の肝癌マーカーを検出するための試薬を含んでもよい。
さらに、手順や診断基準を記載した添付文書を含んでもよい。
細胞培養
肝癌細胞株(HepG2、Hep3BおよびHuH7)、大腸癌細胞株(HCT116およびSW480)、および胃癌細胞株AGSをDMEMまたはRPMI1640培地(ナカライ(Nacalai))に、10%ウシ胎仔血清(FBS)(Gibco BRL)、ペニシリン(100units/ml)、およびストレプトマイシン(100μg/ml)(ナカライ(Nacalai))を含む条件で培養した。全ての細胞株は、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の細胞バンク(JCRB)から入手し、加湿された5%CO2、37℃の条件下で生育した。
該細胞株は、10%あるいは0.1%のFBSを含有した液体培地で生育した。回収した培地は、死細胞や残渣の除去を目的に、300gで5分間遠心した。上澄みを回収した後、さらに、2000gで10分間遠心し、その上澄みを培養上清として回収した。
遠心処理後の培養上清1mlに、TCA(シグマ(Sigma))111μlを添加してボルテックスした。培養上清中のタンパク質は、20000gで45分間、4℃の条件で遠心することで沈殿させた。さらに、氷冷アセトン1mlを加えてボルテックスし、20000gで10分間、4℃の条件で遠心操作を行い、タンパク質を再度沈殿させた。この洗浄操作は合計2回行った。沈殿させたタンパク質は、数分間風乾したのち、水26μlに懸濁した。
血液検体は、本人から文章で同意を取得できる20歳以上の成人を対象に、東京慈恵会医科大学附属病院および共同研究施設で、肝癌(肝細胞癌、胆管細胞癌、混合型肝癌、転移性肝癌、肝芽腫、およびFibrolamellar HCC)患者、および健常なドナーから取得した。採血は、インフォームドコンセントを取得後に、院内消化器・肝臓内科の外来または病棟で実施され、血清は直ちに遠心操作で分離された後、-80℃で凍結した。
全細胞溶解液(ライセート)の調製は他に記載されているように行った(非特許文献1)。タンパク質サンプルをポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS‐PAGE)で展開し、ニトロセルロース膜に転写した。その後、対応する抗体で特異的抗原を反応させ、次いで、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合の二次IgG(サンタクルズ(Santacruz))と反応させた。洗浄後のニトロセルロース膜を増強化学発光法(ECL法)により可視化した。
2×103個のHepG2細胞を超低接着表面6ウェルプレート(コーニング(corning))に播種した。培地は、DMEM‐Ham’s F‐12(ナカライ(Nacalai))に、EGF(組換えヒト上皮細胞増殖因子)、FGF(組換えヒト線維芽細胞増殖因子)、組換えヒトインスリン、およびB27無血清サプリメント(サーモ(Thermo))を添加したものを用いた。スフェロイド形成は、5日後に位相差顕微鏡を用いて確認した。
該癌細胞株を通常培養条件で培養皿上にて生育した後、0.02%EDTA溶液に浸すことで、培養皿から細胞を剥がした。剥離した細胞は、氷冷下に置き、マウス抗PKCδモノクローナル抗体(BD、クローン14)、またはアイソタイプマウスコントロールIgG(サンタクルズ(Santacruz))で1時間反応させた。次いで、Alexa Fluor 488結合抗マウスIgG(サーモ(Thermo))と1時間氷冷下で反応させた。表面抗原の検出は、MACSQuant(ミルテニー(Miltenyi))を用いた。
細胞材料またはスフェロイドの凍結標本は、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定操作を行った。固定後の作業は、Duolink 近接ライゲーションアッセイキット(シグマ(Sigma))の手順書通りに行った。標本の観察には、共焦点レーザー顕微鏡(LSM880、ツァイス(Zeiss))を用いた。
透過電子顕微鏡観察の場合、細胞材料は4%PFAで固定した後、超薄切し、各抗体を用いて染色した(H-7500,HITACHI)。また、走査電子顕微鏡観察は、表面観察のために2種類の抗体を用いて行った(Regulus8200,HITACHI)。
肝癌に特異的な新規腫瘍マーカーを探索する目的で、肝癌細胞株の細胞外液中からヘパリン-セファロースビーズを用いて核移行タンパク質を効率よく回収する系を構築し、質量分析にかけた後、無標識サンプル間比較解析が可能な定量性プロテオミクス開発システム(2-Dimentional Image Converted Analysis of LCMS;2DICAL)で解析したところ、プロテインキナーゼCデルタ(PKCδ)の同定に成功した(図1Aと図1B)。PKCδは約78キロダルトンの細胞内シグナル伝達キナーゼとして周知であるが、細胞外領域での局在に関する報告はこれまでにない。本発明者らは、肝癌細胞株を用いて、ウエスタンブロッティングで通常培養時(10%FBS含有条件)の上清成分中のPKCδの測定を行った。その結果、培養上清中に約78 キロダルトン(全長に相当)のPKCδが検出された(図1C)。この培養上清中のPKCδ量は培養時間に依存して増加した。
PKCδは、ヒトでは現在10種類のアイソフォームが報告されている。細胞外放出されるPKCアイソフォームが他にあるかを調べるために、HepG2細胞の培養上清中におけるPKCαおよびPKCβI/IIの検出の有無を調べた。PKCαおよびPKCβI/IIは、PKCの代表的なアイソフォームとして知られている。結果として、いずれのアイソフォームも検出されず、検出限界以下であった(図1C)。このことから、PKCδは細胞外放出されるPKCアイソフォームであることが示唆された。
細胞外のPKCδは、10%FBS含有培養条件でも検出できたが、解析に際して、いくつか問題点もある。一つ目は、測定時にバックグラウンドが高くなりやすく、PKCδの明瞭な検出が困難であるという問題である。また、二つ目として、培養上清成分の濃縮が極めて難解であることが挙げられる。これらは、FBSが含む高濃度のタンパク質成分に起因していると予想される。そこで、本発明者らは、これらの課題を克服するために、FBS濃度を減少させた条件でのPKCδ検出を試みた。その結果、FBSの濃度を0.1%で培養した培養上清でも、通常培養(10%FBS)と同様にPKCδを検出できることがわかった(データ示さず)。また、0.1%FBS含有培地の培養上清では、TCAを用いた効率的な濃縮が容易であった。ここで、「効率的な濃縮」とは、沈降操作により得られたほとんどの沈殿物を水溶液で可溶化できることに加え、高い再現性があることを意図する。さらに、濃縮物をウエスタンブロッティングした結果、PKCδの明確なシグナルが検出された(図1D)。また、培養時間に関しても、4時間から48時間のインキュベーションにおいて、十分再現性の高いPKCδ検出が可能であることも確認できた。これらの結果から、培養上清中のPKCδの検出系として、0.1%FBS含有の液体培地を用いることでPKCδの明確な検出ができることがわかった。
PKCδの細胞外放出の癌種特異性を調べる目的で、肝癌細胞株3株(HepG2、Hep3BおよびHuH7)、胃癌細胞株1株(AGS)、または大腸癌細胞株(HCT116およびSW480)を0.1%FBS含有培地で48時間生育し、その培養上清を得た。培養上清成分は、TCA沈殿法で濃縮した。ウエスタンブロッティングを行ったところ、細胞培養上清中のPKCδの検出は、胃癌や大腸癌の細胞株と比べて、肝癌細胞株3株すべてにおいて明らかに高くなることがわかった(図1D)。この実験で用いた癌細胞株6株はすべて、ほぼ同程度のPKCδ発現を有していることは確認済みである(図1D)。このことから、PKCδの細胞外放出は、肝癌で高率に起きていることが示唆された。
ヒトの血液中のPKCδを測定した報告はこれまでにない。そこで、本発明者らは、ヒトの血清を用いた血中のPKCδの検出を試みた。ウエスタンブロッティングの結果、肝癌患者血清(4例)すべてにおいて、血中のPKCδが高く検出されることがわかった(図2)。また、健常人の血清(4例)においても微弱ながらPKCδが検出されることがわかった(図2)。このことから、血中のPKCδは、肝癌患者で高値となることが示された。
血中のPKCδが肝癌のバイオマーカーであるかを調べるため、酵素結合吸着検定法(ELISA)による濃度測定を行った。ELISAの実施には、MyBioSource社のHuman Protein Kinase C delta ELISAキット(製品コードMBS761964)を使用した。アッセイで用いる血清濃度は、MyBioSource社キットに含まれるリコンビナントPKCδを利用した標準曲線と比較検討し、100倍希釈が至適と判断した(この際、血清希釈液は、キットに含まれる希釈液を使用)。また、ELISAの操作方法は、MyBioSource社キットが指定するプロトコールに従った。
図3は、健常人と慢性肝炎または肝硬変の患者と肝癌患者の血中のPKCδ濃度の測定結果である。血中PKCδ濃度は健常人と慢性肝炎または肝硬変の患者とでは差はみられなかったが、肝癌患者では有意に増加していた。これらの結果から、血中のPKCδが、肝癌を判別、診断するバイオマーカーとなることが示された。
細胞外に放出されるタンパク質の機能を理解する上で、局在を知ることは大きな手がかりとなる。また、細胞外で検出される細胞内タンパク質のいくつかは、細胞膜に局在することも知られている(非特許文献2および特許文献1)。これらの知見から、本発明者らは、PKCδが細胞膜表面に局在するのではないかと仮説を立てた。この仮説を検証するため、透過型免疫電子顕微鏡観察を試みた。結果として、PKCδは細胞内だけでなく、細胞膜にも局在した(図4A)。また、生きた細胞を用いたフローサイトメトリー解析を実施した。図4Bで示すように、肝癌細胞株HepG2、Hep3BおよびHuH7では、細胞表面においてPKCδの発現が強く観測された。その一方で、培養上清でPKCδの検出量が低かった胃癌細胞株AGSおよび大腸癌細胞株HCT116およびSW480では、PKCδの細胞膜局在がほとんど観測されなかった。これらの結果を合わせて、PKCδが肝癌細胞の表面にも局在することが示された。
さらに、PKCδの細胞膜局在は細胞膜ヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合に依存するかどうかを検証するため、ヘパラン硫酸の分解酵素であるへパリナーゼ処理による細胞膜上のPKCδの細胞膜局在をフローサイトメトリー解析で確認した。その結果、コントロールと比較して、へパリナーゼ処理した細胞膜上のPKCδ量は減少した(図4C)。この結果は、PKCδがヘパラン硫酸プロテオグリカンを介して細胞膜に結合することを示唆している。
グリピカン3(GPC3)は、肝癌細胞の細胞膜に特異的に発現するヘパラン硫酸プロテオグリカンの一種としてすでに報告されている(非特許文献3および非特許文献4)。この知見をもとに本発明者らは、PKCδがGPC3と結合するのではないかと考え、実際に相互作用の有無を調べた。図5Aでは、免疫沈降法を利用してPKCδとGPC3の結合を生化学的に検証した。結果的には、PKCδで免疫沈降した場合にGPC3との結合が確認でき、逆にGPC3で免疫沈降した場合にPKCδとの結合の確認ができた。また、分子間相互作用を可視化できる細胞染色法である近接ライゲーションアッセイ(シグマ(Sigma))を行った。図5B-Dで示すように、PKCδ‐GPC3間相互作用は、HepG2細胞のシングルセルレベルで明瞭に観察された。さらに、HepG2細胞のスフェロイドを用いた解析から、このPKCδ‐GPC3間相互作用がスフェロイドの表層部に強調して見られることがわかった(図5Cおよび5D)。さらに、PKCδとGPC3との相互作用は走査型免疫電子顕微鏡観察から可視的に確認できた(図5E)。GPC3は肝癌細胞の増殖に寄与することがすでに知られていることから、PKCδは、GPC3と細胞膜上で相互作用することで、腫瘍形成において何らかの役割を果たしている可能性が高い。
Claims (11)
- 被検対象由来の生体試料における細胞外のPKCδタンパク質の量を測定する工程を含む、肝癌診断のためのデータ取得方法。
- 細胞外のPKCδタンパク質の量が健常者におけるレベルより高い場合に肝癌に罹患している可能性が高いという基準により、肝癌を診断するためのものである、請求項1に記載の方法。
- 細胞外のPKCδタンパク質の量を測定するために使用される前記生体試料が血清である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記測定する工程が、免疫測定法による、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
- 前記測定する工程が、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法による、請求項4に記載の方法。
- 前記被検対象が、ヒトである、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
- 細胞外のPKCδタンパク質の量を測定する試薬を含む、肝癌診断用キット。
- 細胞外のPKCδタンパク質の量を測定する試薬が、少なくとも抗PKCδ抗体を含む、請求項7に記載のキット。
- さらに、GPC3タンパク質の量を測定する試薬を含む、請求項7または8に記載のキット。
- PKCδおよびGPC3を含むスクリーニング系に医薬候補物質を添加する工程、PKCδとGPC3との相互作用を測定する工程、及び前記相互作用を変化させる物質を選択する工程を含む、肝癌治療薬のスクリーニング方法。
- 血中PKCδの腫瘍マーカーとしての使用。
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