JP7267527B2 - 新規肝癌マーカー - Google Patents

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Description

本発明は、肝癌の診断に関する。
生体試料中、特に血清中の腫瘍マーカーは、癌のスクリーニングといった癌の補助的な診断方法や、手術後の予後判断材料や治療効果の判断材料として使用されている。肝癌マーカーは代表的なものとしてAFP(α-fetoprotein)やPIVKA(protein induced by vitamin K absence)-IIが挙げられるが、感度や特異性が高いとは言えず、より優れた感度および特異性を有する肝癌マーカーが望まれていた。
プロテインキナーゼC(PKC)はセリンスレオニンキナーゼであり、タンパク質分子のセリンおよびスレオニン残基のヒドロキシル基をリン酸化する酵素である。PKCには、その活性化にジアシルグリセロール(DAG)とカルシウムイオン(CA2+)を要する在来型PKCアイソザイム(α、βI、βII、γ)と、その活性化にDAGのみを要する新型PKCアイソザイム(δ、ε、θ、η)等が存在する。
新型PKCアイソザイムであるプロテインキナーゼCデルタ(PKCδ)は、約78キロダルトンの細胞内シグナル伝達キナーゼであり、様々な細胞内で発現していることが周知であった。しかしながら、PKCδが細胞外において局在することに関する報告はこれまでになく、PKCδが細胞外に存在しているかは不明であった。
さらに、ヒトの血液中のPKCδを測定した報告もこれまでになく、PKCδがヒト血液中から検出できるかについても不明であった。
また、細胞外に放出されるタンパク質の機能を理解する上で、そのタンパク質の局在を知ることは大きな手がかりとなるが、細胞外で検出される細胞内タンパク質のいくつかは、細胞膜にも局在することが知られている(非特許文献2および特許文献1)。しかしながら、PKCδが細胞膜に局在することについては不明であった。
ここで、グリピカン3(GPC3)は、肝癌細胞の細胞膜に特異的に発現するヘパラン硫酸プロテオグリカンの一種としてすでに報告されている(非特許文献3および非特許文献4)。GPC3は約60キロダルトンの糖タンパク質であり、肝細胞癌の約80%に発現している。しかしながら、これまでに細胞外のPKCδとGPC3との関連性については不明であった。
特開2014-6129号公報
Scientific Report 2017; 7; 5583 Scientific Report 2016; 6; 21410 Cancer Research 1997; 57; 5179-5184 Journal of Cell Biology 1998; 141; 1407-1414
本発明は、肝癌診断の新規マーカーを提供することを課題とする。
本発明者らは、PKCδが癌の発生・進展にどのように関わるかについて検討したところ、肝癌細胞であるHepG2、Hep3BおよびHuH7を用いて解析した結果、これらの肝癌細胞の培養液中に細胞外に放出されたPKCδ(以下、「細胞外のPKCδ」と記す)が高率に検出されることを見出した。
また、ヒト肝癌患者の血清を用いて検討したところ、ヒト肝癌患者血清中においてPKCδが検出できること、およびヒト肝癌患者血清には健常人血清と比較してPKCδの量が高いことを見出した。
また、肝癌細胞について細胞膜にPKCδが局在しているかを調べたところ、PKCδが細胞膜に局在していること、および胃癌細胞または大腸癌細胞と比較して、細胞膜に多量にPKCδが局在していることを見出した。
さらに、肝癌細胞の細胞膜上において、GPC3とPKCδとが結合すること、および固定細胞やブロック標本の免疫染色により、細胞外のPKCδとGPC3との結合を可視的に検出できることを見出した。
上記のような知見に基づき、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]被検対象由来の生体試料における細胞外のPKCδタンパク質の量を測定する工程を含む、肝癌診断のためのデータ取得方法。
[2]細胞外のPKCδタンパク質の量が健常者におけるレベルより高い場合に肝癌に罹患している可能性が高いという基準により、肝癌を診断するためのものである、[1]に記載の方法。
[3]細胞外のPKCδタンパク質の量を測定するために使用される前記生体試料が血清である、[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記測定する工程が、免疫測定法による、[1]~[3]の何れかに記載の方法。
[5]前記測定する工程が、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法による、[4]に記載の方法。
[6]前記被検対象が、ヒトである、[1]~[5]の何れかに記載の方法。
[7]細胞外のPKCδタンパク質の量を測定する試薬を含む、肝癌診断用キット。
[8]細胞外のPKCδタンパク質の量を測定する試薬が、少なくとも抗PKCδ抗体を含む、[7]に記載のキット。
[9]さらに、GPC3タンパク質の量を測定する試薬を含む、[7]または[8]に記載のキット。
[10]PKCδおよびGPC3を含むスクリーニング系に医薬候補物質を添加する工程、PKCδとGPC3との相互作用を測定する工程、及び前記相互作用を変化させる物質を選択する工程を含む、肝癌治療薬のスクリーニング方法。
[11]血中PKCδの腫瘍マーカーとしての使用。
本発明によれば、高精度な肝癌診断のためのマーカーが提供される。細胞外のPKCδは血清中でも測定可能であるため、簡便な肝癌検査が可能となる。
細胞培養上清におけるPKCδの検出。(A)細胞外液中ヘパリン結合性分子の回収と網羅的解析法。HepG2細胞を24時間培養した後、培養上清を回収した。その後、死細胞やゴミを除くため、300Gで5分遠心し、上清成分を回収し、さらに2000Gで10分遠心して上清成分を得た。上清をセファロースビーズの結合したヘパリンビーズで反応させ、遠心操作で結合分子を沈降させた。ビーズを洗浄バッファーで洗った後、質量分析にかけて網羅的なプロテオミクス解析を行った。(B)0.1%FBS含有培地で培養したHepG2細胞を24時間培養した後、培養上清を回収した。遠心操作で死細胞やゴミを除去した後、ヘパリンビーズで結合因子の沈降操作を行った。沈降成分を洗浄し、ウエスタンブロッティングを行った(写真)。Importinα1は陽性コントロールとして、E‐cadherinは死細胞の可能性を除去する目的とする陰性コントロールとして使用した。(C)HepG2細胞を通常培養条件(10%FBS含有培地)で4、24、または48時間培養した。その後、培養上清を回収し、ウエスタンブロッティングを行った(写真)。Nucleolinは陽性コントロールとして、E‐cadherinは死細胞の可能性を除去する目的とする陰性コントロールとして使用した。(D)0.1%FBS含有培地で培養した様々なヒト癌細胞株の培養上清を用いたウエスタンブロッティング(写真)。tubulinは、内在性コントロールとして使用した。 ヒト血清におけるPKCδの検出。健常人4例と肝癌患者4例の血清を用いて、ウエスタンブロッティングを行った(写真)。1ウェルあたり血清1μlが含まれている。Ponceau Sは内部標準として置いた。 ELISA法による血清PKCδ濃度の測定。肝癌患者(19例)、慢性肝炎または肝硬変の患者(16例)および健常人(8例)の血清を採取後、100倍希釈して用いてELISA法によりPKCδ濃度を測定した。 (A)HepG2細胞を用いたPKCδ局在の透過電子顕微鏡写真。HepG2細胞を薄切後、一次抗体としてマウス抗PKCδモノクローナル抗体(BD、クローン14)で染色し、二次抗体として10nmの粒径の金コロイドが結合した抗マウスIgGで染色した。矢印は細胞膜表面に局在するPKCδを示す。 (B)細胞膜PKCδの検出。様々なヒト癌細胞株におけるPKCδの表面発現をフローサイトメトリー法により解析した。実線及びPKCδのヒストグラムは、マウス抗PKCδモノクローナル抗体(BD、クローン14)による染色後、Alexa Fluor 488結合ロバ抗マウスIgGで染色することによって得られた。灰色の領域は、アイソタイプ一致のマウスIgGの染色によって得られた背景の蛍光を示す対照ヒストグラムである。(C)HepG2細胞を用いた細胞膜PKCδの検出。細胞を回収後、PBS(実線)かHeparinase(点線)で30分処理した後、PKCδの表面発現をフローサイトメトリー法により解析した。PKCδのヒストグラムはマウス抗PKCδモノクローナル抗体(BD、クローン14)による染色後、Alexa Fluor 488結合ロバ抗マウスIgGで染色することによって得られた。灰色の領域は、アイソタイプ一致のマウスIgGの染色によって得られた背景の蛍光を示す対照ヒストグラムである。 (A)HepG2細胞のライセートを用いた免疫沈降のウエスタンブロッティング(写真)。上部はマウス抗PKCδモノクローナル抗体(BD、クローン14)またはコントロールIgGで免疫沈降して、PKCδまたはGPC3でウエスタンブロッティングした。下部はマウス抗GPC3モノクローナル抗体(アブカム(abcam))またはコントロールIgGで免疫沈降後、PKCδまたはGPC3でウエスタンブロッティングした。(B-D)細胞外のPKCδとGPC3との結合検出。(B) HepG2細胞を固定後、マウス抗PKCδ抗体(BD、クローン14)およびラビット抗GPC3抗体(アブカム(abcam))の組み合わせで反応させた。相互作用の検出には、近接ライゲーションアッセイ法を行い、検出には共焦点レーザー顕微鏡(LSM880、ツァイス社(Zeiss))を用いた。(CおよびD)HepG2細胞を低接着性ディッシュに播種し、細胞塊(スフェロイド)を形成させた。その後、凍結標本を作成し、固定後に、アイソタイプ一致のマウスIgGおよびウサギIgGの組み合わせ(C)、またはマウス抗PKCδ抗体(BD、クローン14)およびラビット抗GPC3抗体(アブカム(abcam))の組み合わせ(D)で反応させ、近接ライゲーションアッセイを行った。スケールバーは10μmを示す。 (E)HepG2細胞を用いたPKCδとGPC3局在の走査型電子顕微鏡写真。HepG2細胞は、一次抗体はマウス抗PKCδモノクローナル抗体(BD、クローン14)およびラビット抗GPC3抗体(アブカム(abcam))による染色後、10nmの粒径の金コロイドが結合した抗マウスIgGおよび20nmの粒径の金コロイドが結合した抗ラビットIgGで染色した。細矢印は細胞膜表面に局在するPKCδを示す。太矢印は細胞膜表面に局在するGPC3を示す。
本発明は、被検対象由来の生体試料における細胞外のPKCδタンパク質の量を測定する工程を含む、肝癌診断のためのデータ取得方法を提供する。
被検対象とは、肝癌を起こす可能性のある動物であれば何でもよいが、好ましくは哺乳類動物であり、さらに好ましくはヒトである。
PKCδタンパク質は、被検対象に由来するタンパク質であればよいが、具体的には、下記に示すアミノ酸配列を含むタンパク質が例示される。さらにPKCδタンパク質には、該タンパク質と同様の肝癌関連性を有するタンパク質断片、類似体、および変異体も包含される。
PKCδタンパク質のアミノ酸配列は、被検対象がヒトである場合は、配列番号1のアミノ酸配列が例示される。また、このアミノ酸配列において、1または数個(例えば1~20個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質でもよい。また、被検対象として異なる動物を使用する場合は、該動物由来のホモログタンパク質が測定対象となる。
細胞外のPKCδタンパク質とは、細胞外に存在するPKCδタンパク質を意味し、細胞外の液中に存在するPKCδタンパク質および細胞膜に結合して細胞外に存在するPKCδタンパク質を含む。
健常者とは、一般には、特定の慢性疾患を有していない者と定義される。本発明においては、該定義通りでの意味で用いられてもよいが、肝癌を有していないが他の疾患は有している者の意味で用いられてもよい。
細胞外のPKCδタンパク質の量に関し、「レベル」とは、上記測定法による実際の測定値すなわち実測値でもよく、陰性対照の測定値等で補正した補正値でもよく、または相対指数で補正したインデックス値等でもよい。これらは単なる例示に過ぎず、これらの値に限定されることはなく、他の値を採用することもできる。
肝癌は、肝細胞癌、胆管細胞癌、混合型肝癌、転移性肝癌、肝芽腫、および線維層板型肝細胞癌(Fibrolamellar HCC)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、肝癌との文言は、肝臓における疾患部位、病期等において、特に限定されることはなく、何れの疾患部位、病期等をも包含するものである。
生体試料とは、被検対象から採取した、体液、細胞、組織等が含まれる。また、体液には、血液、リンパ液、組織液、体腔液、脳脊髄液等が含まれる。細胞外のPKCδを測定するためには、この中では、血液試料が好ましく、血液には、血清、血漿等が含まれるが、血清を用いることがより好ましい。すなわち、血清中に放出されたPKCδタンパク質は肝癌の好適な指標となりうる。
PKCδタンパク質の測定法は特に限定されず、公知のタンパク質測定方法が使用できるが、PKCδタンパク質に対する抗体を使用した免疫測定法が好適に使用できる。
免疫測定法は、酵素免疫定量法に従い定量検出する方法や、蛍光免疫測定法、化学発光免疫測定法等で測定する方法等が好ましい。酵素免疫定量法は、標識イムノアッセイ法のうち、酵素を標識物質として用いる検出方法である。また、イムノソルベントを用いる、ELISA法を選択することが、特に好ましい。
ELISA法とは、直接法、間接法、およびサンドイッチ法が例示されるが、何れの方法も使用することができる。
ELISA法における直接法とは、当該分野に周知の手法を指す。すなわち、固相に固定化された生体試料中のPKCδに、標識化された抗体を結合させて、標識物質を検出する手法である。
ELISA法における間接法とは、当該分野に周知の手法を指す。すなわち、固相に固定化された生体試料中のPKCδに、一次抗体を結合させて免疫複合体を固相表面上に形成させた後、さらに、一次抗体を認識する標識化二次抗体を用いて標識物質を検出する手法である。
ELISA法におけるサンドイッチ法とは、当該分野に周知の手法を指す。すなわち、固相に固定化された固定化抗体(一次抗体)に、被検対象由来である生体試料中のPKCδを捕捉させ、さらに捕捉されたPKCδに標識化された二次抗体を結合させて、前記二種類の抗体が結合した免疫複合体を固相表面上に形成させた後、標識物質を検出する手法である。なお、標識化されていない二次抗体を用い、さらに二次抗体を認識する標識化三次抗体を用いて、検出感度を上げてもよい。
サンドイッチ法において、免疫複合体を形成させる順序は特に限定されない。固定化抗体に対して、PKCδを含む生体試料、二次抗体の順で添加して結合させてもよいし、まずPKCδを含む生体試料と二次抗体とを混合して複合体を形成させたものを固定化抗体に対して添加して結合させてもよい。
抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体のいずれでもよいが、安定した品質の抗体を安定して供給するためには、モノクローナル抗体であることが好ましい。F(ab’)などのモノクローナル抗体の断片でもよい。
また、各抗体は一般的に用いられているマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、トリ由来のもの等が使用できるがこれらに限定されず、PKCδに特異的に結合する抗体であれば何れも使用できる。
血清等の試料中のPKCδを測定するためには、細胞外に存在するPKCδを認識できる抗体であれば、PKCδのいかなるドメインを認識する抗体を使用してもよい。抗PKCδ抗体は、市販されているものを使用することもできるし、当業者に周知慣用のモノクローナル抗体作製方法により入手したものを使用してもよい。
市販されている抗PKCδ抗体としては、例えばマウス抗PKCδモノクローナル抗体(BD、クローン14)を使用することができ、この抗体はPKCδの配列番号1の114番目~289番目のアミノ酸で表されるPKCδタンパク質の一部を認識する抗体である。
抗PKCδ抗体は、市販されているものを使用することもできるし、当業者に周知慣用のモノクローナル抗体作製方法により入手したものを使用してもよい。
標識化二次抗体は、一次抗体を認識するものであれば特に限定されず使用できる。例えば、一次抗体がラビット抗体である場合は標識化抗ラビットIgG抗体を、一次抗体がマウス抗体である場合は標識化抗マウスIgG抗体を、二次抗体として用いることができる。
標識物質は、酵素、放射線同位元素、蛍光物質、発光物質、金コロイド等が挙げられる。
これらのうち、感度および操作の簡便さの観点から酵素が好ましく、西洋わさび過酸化酵素(HRP)、アルカリフォスファターゼ(AP)、グルコースオキシダーゼ(GOD)等がより好ましい。標識物質としてHRPを用いる場合はTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)等を、APを用いる場合はAMPPD(3-(2’-スピロアダマンタン)-4-メトキシ-4-(3’’-ホスホリルオキシ)フェニル-1,2-ジオキセタン・2ナトリウム塩)、9-(4-クロロフェニルチオホスホリルオキシメチリデン)-10-メチルアクリダン二ナトリウム塩等を基質として使用することができる。また、標識物質としては、他にFITC(fluorescein isothiocyanate)、ローダミン等の蛍光色素等も使用することができる。
測定対象物質の検出・定量方法は、標識の方法によって異なり、当業者に周知慣用の方法で行うことができ、特に限定されない。例えば、標識物質としてHRP、AP、GOD等を用いた場合は、発色基質や発光基質を添加することで、吸光度や発光強度の変化を測定して測定対象物質を定量することができる。また、標識物質として蛍光物質を用いた場合は、その蛍光強度を測定することで測定対象物質を定量することができる。また、標識物質として放射性同位元素を用いた場合は、放射能を測定することで測定対象物質を定量することができる。また、標識物質として金コロイドを用いた場合は、吸光度を測定することで測定対象物質を定量することができる。
定量の際は、例えば、予め既知の濃度の試料で検量線(標準曲線)を作成しておき、測定値を検量線に照合して試料中のPKCδ濃度を算出することができる。
固定化抗体を固定化する固相は、通常ELISA法に用いられるものであれば特に限定されず、その形態はマルチウェルプレート、シャーレ、微粒子等が挙げられ、またその素材はポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、磁性素材等が挙げられる。
固定化抗体の固相への固定化量は、抗原-抗体反応および標識物質の検出を妨げない限り、また検体中のPKCδ量に対して過度に少なくない限り、特に限定されない。
固定化抗体の固相への固定化後は非特異吸着を防ぐため、スキムミルク、アルブミン、カゼイン等で適宜ブロッキングしてもよい。
二次抗体溶液の濃度は、抗原-抗体反応を妨げない限り、また検体中のPKCδ量に対して過度に少なくない限り、特に限定されない。
本発明において、抗原-抗体反応を行う時間、本発明の方法を行う温度、試料や試薬の希釈液および洗浄液の組成やpH等は特に限定されず、一般的に行われるELISA法に適用する条件でよい。
肝癌に罹患している可能性が高いと評価する「基準」としては、細胞外のPKCδタンパク質の量が健常者におけるレベルより高い場合に肝癌に罹患している可能性が高いと評価する基準、または一定の測定値以上を示すときに肝癌に罹患している可能性が高いと評価する基準等が挙げられる。
肝癌の診断においては、他の肝癌マーカーと組み合わせてもよい。他の肝癌マーカーとしては、例えば、GPC(グリピカン)3が例示される。GPC3の測定はPKCδタンパク質と同様のELISA法で行うことができ、GPC3の量が健常者におけるレベルより高い場合に肝癌に罹患している可能性が高いと評価する基準、または一定の測定値以上を示すときに肝癌に罹患している可能性が高いと評価する基準等により、肝癌の判定データが提供される。GPC3と組み合わせることでより精密な診断データを得ることができる。
GPC3のアミノ酸配列は、例えば、配列番号2のアミノ酸配列が例示される。また、このアミノ酸配列において、1または数個(例えば1~20個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質でもよい。また、被検対象として異なる動物を使用する場合は、該動物由来のホモログタンパク質が測定対象となる。
細胞外のPKCδの測定結果をもとに肝癌を診断することができ、その結果をもとに、肝癌治療薬の投与や肝癌手術の施術等、治療方針を策定することができる。
例えば、細胞外のPKCδタンパク質の量が健常者におけるレベルより高いときや、あらかじめ定められた値以上のときに肝癌と診断し、肝癌治療薬の投与や肝癌手術の施術等を行うことができる。
また、本発明の他の態様においては、肝癌におけるPKCδとGPC3との相互作用の関与が示唆されたため、PKCδとGPC3との相互作用に基づく肝癌治療薬のスクリーニング方法が提供される。
本発明のスクリーニング方法は、PKCδおよびGPC3を含むスクリーニング系に医薬候補物質を添加する工程、PKCδとGPC3との相互作用を測定する工程、及び前記相互作用を変化させる物質を選択する工程を含む、肝癌治療薬のスクリーニング方法である。
医薬候補物質としては特に制限はなく、例えば、低分子合成化合物であってもよいし、天然物に含まれる化合物であってもよい。また、ペプチドであってもよい。スクリーニングには個々の被検物質を用いてもよいが、これらの物質を含む化合物ライブラリーを用いてもよい。候補物質の中からPKCδとGPC3の相互作用を変化させるものを選択することにより、肝癌の治療薬を得ることができる。ここで、「変化」とは相互作用を阻害すること、および相互作用を低下させることを含む。
スクリーニング系はインビトロの系であってもよいし、細胞系であってもよい。インビトロのスクリーニング系として具体的には、PKCδとGPC3を用いたプルダウンアッセイや表面プラズモン共鳴現象を利用した検出法などが挙げられる。また、細胞系としては、免疫沈降やTwo Hybridシステムなどが挙げられる。
本発明の他の態様は、細胞外のPKCδタンパク質の量を測定する試薬を含む、肝癌の診断キットを提供する。細胞外のPKCδタンパク質の量を測定する試薬としては、上述したような抗PKCδ抗体のようなPKCδに特異的に結合する物質が例示される。
本発明のキットは、抗GPC3抗体などのGPC3タンパク質の量を測定する試薬を含んでもよい。
また、キットには、さらに、反応用容器、反応用緩衝液、洗浄液、標準物質などが含まれてもよい。
さらに、標識化二次抗体、標識が酵素である場合その基質、BSA等のブロッキング剤等の試薬を含めることもできる。
さらに、抗GPC3抗体など、他の肝癌マーカーを検出するための試薬を含んでもよい。
さらに、手順や診断基準を記載した添付文書を含んでもよい。
本発明の他の態様は、血中PKCδの腫瘍マーカーとしての使用に関する。ここで腫瘍は肝癌に限定されず、血中PKCδが増加する癌全般に適用できる。
実施例は、開示する目的のために記載されており、本発明の範囲を制限する意図はない。
本開示および実施例で言及されているが明白に記載されていない、分子生物学、細胞生物学および免疫学の方法は、当業者に周知である従来からの方法を用いる。そのような技術としては、「Methods in Molecular Biology」 Humana出版;「Molecular Cloning: A Laboratory Manual、second edition」(Sambrookら著、1989年)Cold Spring Harbor 出版;「Cell Biology:A Laboratory Not ebook」(J.E. Cellis編、1998年)Academic出版;「Current Protocols in Molecular Biology」(F.M.Ausubel ら編、1987年);「Short Protocols in Molecular Biology」(Wiley、Sons著、1999年);「Introduction to Cell and Tissue Culture」(J.P. Mather、P.E.Roberts著、1998年)Plenum出版;「Animal Cell Culture」(R.I.Freshney編、1987年;「Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures」(A.Doyle、J.B.Griffiths、D.G.Newell編、1993年‐1998年)J.Wiley and sons;「Handbook of Experimental Immunology」(F.M.Ausubelら編、1987年);「Current Protocols in Immunology」(J.E.Coliganら編、1991年);「Methods in Enzymology」(Academic Press)などの文献で十分に説明されている。
<材料および方法>
細胞培養
肝癌細胞株(HepG2、Hep3BおよびHuH7)、大腸癌細胞株(HCT116およびSW480)、および胃癌細胞株AGSをDMEMまたはRPMI1640培地(ナカライ(Nacalai))に、10%ウシ胎仔血清(FBS)(Gibco BRL)、ペニシリン(100units/ml)、およびストレプトマイシン(100μg/ml)(ナカライ(Nacalai))を含む条件で培養した。全ての細胞株は、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の細胞バンク(JCRB)から入手し、加湿された5%CO、37℃の条件下で生育した。
培養上清の回収
該細胞株は、10%あるいは0.1%のFBSを含有した液体培地で生育した。回収した培地は、死細胞や残渣の除去を目的に、300gで5分間遠心した。上澄みを回収した後、さらに、2000gで10分間遠心し、その上澄みを培養上清として回収した。
トリクロロ酢酸(TCA)沈殿
遠心処理後の培養上清1mlに、TCA(シグマ(Sigma))111μlを添加してボルテックスした。培養上清中のタンパク質は、20000gで45分間、4℃の条件で遠心することで沈殿させた。さらに、氷冷アセトン1mlを加えてボルテックスし、20000gで10分間、4℃の条件で遠心操作を行い、タンパク質を再度沈殿させた。この洗浄操作は合計2回行った。沈殿させたタンパク質は、数分間風乾したのち、水26μlに懸濁した。
患者血清
血液検体は、本人から文章で同意を取得できる20歳以上の成人を対象に、東京慈恵会医科大学附属病院および共同研究施設で、肝癌(肝細胞癌、胆管細胞癌、混合型肝癌、転移性肝癌、肝芽腫、およびFibrolamellar HCC)患者、および健常なドナーから取得した。採血は、インフォームドコンセントを取得後に、院内消化器・肝臓内科の外来または病棟で実施され、血清は直ちに遠心操作で分離された後、-80℃で凍結した。
SDS‐PAGEおよびウエスタンブロッティング
全細胞溶解液(ライセート)の調製は他に記載されているように行った(非特許文献1)。タンパク質サンプルをポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS‐PAGE)で展開し、ニトロセルロース膜に転写した。その後、対応する抗体で特異的抗原を反応させ、次いで、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合の二次IgG(サンタクルズ(Santacruz))と反応させた。洗浄後のニトロセルロース膜を増強化学発光法(ECL法)により可視化した。
スフェロイドの形成
2×10個のHepG2細胞を超低接着表面6ウェルプレート(コーニング(corning))に播種した。培地は、DMEM‐Ham’s F‐12(ナカライ(Nacalai))に、EGF(組換えヒト上皮細胞増殖因子)、FGF(組換えヒト線維芽細胞増殖因子)、組換えヒトインスリン、およびB27無血清サプリメント(サーモ(Thermo))を添加したものを用いた。スフェロイド形成は、5日後に位相差顕微鏡を用いて確認した。
フローサイトメトリー
該癌細胞株を通常培養条件で培養皿上にて生育した後、0.02%EDTA溶液に浸すことで、培養皿から細胞を剥がした。剥離した細胞は、氷冷下に置き、マウス抗PKCδモノクローナル抗体(BD、クローン14)、またはアイソタイプマウスコントロールIgG(サンタクルズ(Santacruz))で1時間反応させた。次いで、Alexa Fluor 488結合抗マウスIgG(サーモ(Thermo))と1時間氷冷下で反応させた。表面抗原の検出は、MACSQuant(ミルテニー(Miltenyi))を用いた。
近接ライゲーションアッセイ
細胞材料またはスフェロイドの凍結標本は、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定操作を行った。固定後の作業は、Duolink 近接ライゲーションアッセイキット(シグマ(Sigma))の手順書通りに行った。標本の観察には、共焦点レーザー顕微鏡(LSM880、ツァイス(Zeiss))を用いた。
免疫電子顕微鏡解析
透過電子顕微鏡観察の場合、細胞材料は4%PFAで固定した後、超薄切し、各抗体を用いて染色した(H-7500,HITACHI)。また、走査電子顕微鏡観察は、表面観察のために2種類の抗体を用いて行った(Regulus8200,HITACHI)。
<実施例1:細胞外液中におけるPKCδの検出>
肝癌に特異的な新規腫瘍マーカーを探索する目的で、肝癌細胞株の細胞外液中からヘパリン-セファロースビーズを用いて核移行タンパク質を効率よく回収する系を構築し、質量分析にかけた後、無標識サンプル間比較解析が可能な定量性プロテオミクス開発システム(2-Dimentional Image Converted Analysis of LCMS;2DICAL)で解析したところ、プロテインキナーゼCデルタ(PKCδ)の同定に成功した(図1Aと図1B)。PKCδは約78キロダルトンの細胞内シグナル伝達キナーゼとして周知であるが、細胞外領域での局在に関する報告はこれまでにない。本発明者らは、肝癌細胞株を用いて、ウエスタンブロッティングで通常培養時(10%FBS含有条件)の上清成分中のPKCδの測定を行った。その結果、培養上清中に約78 キロダルトン(全長に相当)のPKCδが検出された(図1C)。この培養上清中のPKCδ量は培養時間に依存して増加した。
PKCδは、ヒトでは現在10種類のアイソフォームが報告されている。細胞外放出されるPKCアイソフォームが他にあるかを調べるために、HepG2細胞の培養上清中におけるPKCαおよびPKCβI/IIの検出の有無を調べた。PKCαおよびPKCβI/IIは、PKCの代表的なアイソフォームとして知られている。結果として、いずれのアイソフォームも検出されず、検出限界以下であった(図1C)。このことから、PKCδは細胞外放出されるPKCアイソフォームであることが示唆された。
<実施例2:0.1%FBS含有培地を用いた細胞外のPKCδ検出方法の確立>
細胞外のPKCδは、10%FBS含有培養条件でも検出できたが、解析に際して、いくつか問題点もある。一つ目は、測定時にバックグラウンドが高くなりやすく、PKCδの明瞭な検出が困難であるという問題である。また、二つ目として、培養上清成分の濃縮が極めて難解であることが挙げられる。これらは、FBSが含む高濃度のタンパク質成分に起因していると予想される。そこで、本発明者らは、これらの課題を克服するために、FBS濃度を減少させた条件でのPKCδ検出を試みた。その結果、FBSの濃度を0.1%で培養した培養上清でも、通常培養(10%FBS)と同様にPKCδを検出できることがわかった(データ示さず)。また、0.1%FBS含有培地の培養上清では、TCAを用いた効率的な濃縮が容易であった。ここで、「効率的な濃縮」とは、沈降操作により得られたほとんどの沈殿物を水溶液で可溶化できることに加え、高い再現性があることを意図する。さらに、濃縮物をウエスタンブロッティングした結果、PKCδの明確なシグナルが検出された(図1D)。また、培養時間に関しても、4時間から48時間のインキュベーションにおいて、十分再現性の高いPKCδ検出が可能であることも確認できた。これらの結果から、培養上清中のPKCδの検出系として、0.1%FBS含有の液体培地を用いることでPKCδの明確な検出ができることがわかった。
<実施例3:多種の癌細胞株を用いた培養上清中のPKCδの検出>
PKCδの細胞外放出の癌種特異性を調べる目的で、肝癌細胞株3株(HepG2、Hep3BおよびHuH7)、胃癌細胞株1株(AGS)、または大腸癌細胞株(HCT116およびSW480)を0.1%FBS含有培地で48時間生育し、その培養上清を得た。培養上清成分は、TCA沈殿法で濃縮した。ウエスタンブロッティングを行ったところ、細胞培養上清中のPKCδの検出は、胃癌や大腸癌の細胞株と比べて、肝癌細胞株3株すべてにおいて明らかに高くなることがわかった(図1D)。この実験で用いた癌細胞株6株はすべて、ほぼ同程度のPKCδ発現を有していることは確認済みである(図1D)。このことから、PKCδの細胞外放出は、肝癌で高率に起きていることが示唆された。
<実施例4:ヒト血清を用いた血中のPKCδの検出>
ヒトの血液中のPKCδを測定した報告はこれまでにない。そこで、本発明者らは、ヒトの血清を用いた血中のPKCδの検出を試みた。ウエスタンブロッティングの結果、肝癌患者血清(4例)すべてにおいて、血中のPKCδが高く検出されることがわかった(図2)。また、健常人の血清(4例)においても微弱ながらPKCδが検出されることがわかった(図2)。このことから、血中のPKCδは、肝癌患者で高値となることが示された。
<実施例5:肝癌患者血清を用いた血中のPKCδの検討>
血中のPKCδが肝癌のバイオマーカーであるかを調べるため、酵素結合吸着検定法(ELISA)による濃度測定を行った。ELISAの実施には、MyBioSource社のHuman Protein Kinase C delta ELISAキット(製品コードMBS761964)を使用した。アッセイで用いる血清濃度は、MyBioSource社キットに含まれるリコンビナントPKCδを利用した標準曲線と比較検討し、100倍希釈が至適と判断した(この際、血清希釈液は、キットに含まれる希釈液を使用)。また、ELISAの操作方法は、MyBioSource社キットが指定するプロトコールに従った。
図3は、健常人と慢性肝炎または肝硬変の患者と肝癌患者の血中のPKCδ濃度の測定結果である。血中PKCδ濃度は健常人と慢性肝炎または肝硬変の患者とでは差はみられなかったが、肝癌患者では有意に増加していた。これらの結果から、血中のPKCδが、肝癌を判別、診断するバイオマーカーとなることが示された。
<実施例6:肝癌細胞株における細胞膜上のPKCδの局在>
細胞外に放出されるタンパク質の機能を理解する上で、局在を知ることは大きな手がかりとなる。また、細胞外で検出される細胞内タンパク質のいくつかは、細胞膜に局在することも知られている(非特許文献2および特許文献1)。これらの知見から、本発明者らは、PKCδが細胞膜表面に局在するのではないかと仮説を立てた。この仮説を検証するため、透過型免疫電子顕微鏡観察を試みた。結果として、PKCδは細胞内だけでなく、細胞膜にも局在した(図4A)。また、生きた細胞を用いたフローサイトメトリー解析を実施した。図4Bで示すように、肝癌細胞株HepG2、Hep3BおよびHuH7では、細胞表面においてPKCδの発現が強く観測された。その一方で、培養上清でPKCδの検出量が低かった胃癌細胞株AGSおよび大腸癌細胞株HCT116およびSW480では、PKCδの細胞膜局在がほとんど観測されなかった。これらの結果を合わせて、PKCδが肝癌細胞の表面にも局在することが示された。
<実施例7:細胞外のPKCδとヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合>
さらに、PKCδの細胞膜局在は細胞膜ヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合に依存するかどうかを検証するため、ヘパラン硫酸の分解酵素であるへパリナーゼ処理による細胞膜上のPKCδの細胞膜局在をフローサイトメトリー解析で確認した。その結果、コントロールと比較して、へパリナーゼ処理した細胞膜上のPKCδ量は減少した(図4C)。この結果は、PKCδがヘパラン硫酸プロテオグリカンを介して細胞膜に結合することを示唆している。
<実施例8:細胞外のPKCδとGPC3との結合>
グリピカン3(GPC3)は、肝癌細胞の細胞膜に特異的に発現するヘパラン硫酸プロテオグリカンの一種としてすでに報告されている(非特許文献3および非特許文献4)。この知見をもとに本発明者らは、PKCδがGPC3と結合するのではないかと考え、実際に相互作用の有無を調べた。図5Aでは、免疫沈降法を利用してPKCδとGPC3の結合を生化学的に検証した。結果的には、PKCδで免疫沈降した場合にGPC3との結合が確認でき、逆にGPC3で免疫沈降した場合にPKCδとの結合の確認ができた。また、分子間相互作用を可視化できる細胞染色法である近接ライゲーションアッセイ(シグマ(Sigma))を行った。図5B-Dで示すように、PKCδ‐GPC3間相互作用は、HepG2細胞のシングルセルレベルで明瞭に観察された。さらに、HepG2細胞のスフェロイドを用いた解析から、このPKCδ‐GPC3間相互作用がスフェロイドの表層部に強調して見られることがわかった(図5Cおよび5D)。さらに、PKCδとGPC3との相互作用は走査型免疫電子顕微鏡観察から可視的に確認できた(図5E)。GPC3は肝癌細胞の増殖に寄与することがすでに知られていることから、PKCδは、GPC3と細胞膜上で相互作用することで、腫瘍形成において何らかの役割を果たしている可能性が高い。
以上の結果から、細胞外のPKCδが肝癌特異的なバイオマーカーであることが示唆された。

Claims (11)

  1. 被検対象由来の生体試料における細胞外のPKCδタンパク質の量を測定する工程を含む、肝癌診断のためのデータ取得方法。
  2. 細胞外のPKCδタンパク質の量が健常者におけるレベルより高い場合に肝癌に罹患している可能性が高いという基準により、肝癌を診断するためのものである、請求項1に記載の方法。
  3. 細胞外のPKCδタンパク質の量を測定するために使用される前記生体試料が血清である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記測定する工程が、免疫測定法による、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
  5. 前記測定する工程が、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法による、請求項4に記載の方法。
  6. 前記被検対象が、ヒトである、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
  7. 細胞外のPKCδタンパク質の量を測定する試薬を含む、肝癌診断用キット。
  8. 細胞外のPKCδタンパク質の量を測定する試薬が、少なくとも抗PKCδ抗体を含む、請求項7に記載のキット。
  9. さらに、GPC3タンパク質の量を測定する試薬を含む、請求項7または8に記載のキット。
  10. PKCδおよびGPC3を含むスクリーニング系に医薬候補物質を添加する工程、PKCδとGPC3との相互作用を測定する工程、及び前記相互作用を変化させる物質を選択する工程を含む、肝癌治療薬のスクリーニング方法。
  11. 血中PKCδの腫瘍マーカーとしての使用。
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