JP7267172B2 - 細胞培養用立体足場、その製造方法、それを用いた細胞播種方法及び細胞培養方法 - Google Patents
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Description
また、本発明の製造方法によれば、バインダー成分や熱圧着手段を用いることなく、ゼラチン不織布とゼラチンフィルムが一体化された積層体で構成された細胞培養用立体足場を得ることができる。
また、本発明の細胞播種方法によれば、足場内部に細胞が侵入しやすく、かつ足場からの細胞の脱落を抑制することができる。
また、本発明の細胞培養方法によれば、細胞の3次元培養を行うことができる。
圧縮変形率(%)=100-{(H2/H1)×100}
また、ノズル吐出口3の後方に位置し、ノズル吐出口3とは非接触状態の流体噴射口5から前方に向けて圧力流体7を噴射させる。流体噴射口5にはコンプレッサー6から圧力流体(例えば圧空)が供給される。流体噴射口5とノズル吐出口3との距離は5~30mmが好ましい。
押し出された紡糸液は圧力流体7に随伴されてゼラチン繊維8となり、巻き取りロール11上に配置されたゼラチンフィルム10上でゼラチン不織布9となって堆積される。この時、堆積された繊維は水分を含んでいたり、完全には固化していないので、繊維交点の少なくとも一部において接している繊維が互いに溶着するとともに、不織布を構成するゼラチン繊維がゼラチンフィルムと溶着してゼラチン不織布とゼラチンフィルムが一体化する。なお、巻き取りロールに変えてネット等の他の捕集手段を用いてもよい。
<平均繊維径>
膨潤後の足場を光学顕微鏡(株式会社キーエンス社製、型番BZ-X700)で観察し、任意に選択した50本の繊維を用いて、膨潤後の平均繊維径を測定した。
<厚み>
積層体の断面を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製FlexSEM1000、100倍及び500倍)で観察し、得られた走査型電子顕微鏡写真から任意に選択した10か所のゼラチンフィルム層厚み、ゼラチン不織布の厚み、及び積層体の厚みを計測し、平均値を算出した。
<目付(単位面積あたりの質量)>
ゼラチン不織布の目付はJIS L 1913に準じて測定した。
<見掛密度>
ゼラチン不織布の密度は不織布の厚み及び目付に基づいて算出した。
<細孔径>
ゼラチン不織布の細孔径は、Wrotnowskiの仮定に基づいて、下記計算式(1)にて算出することができる。
<積層体(細胞培養用立体足場)の作製>
ゼラチンとして新田ゼラチン社製(ゼリー強度262g、原料:アルカリ処理牛骨)を使用し、ゼラチン:水=92.5:7.5の質量比(ゼラチン濃度7.5質量%)とし、温度60℃で溶解した。このゼラチン水溶液を、ポリテトラフルオロエチレンフィルム(膜厚50μm)上に、TP技研株式会社製バーコーターNo.20で塗布し、室温で一晩風乾させることによりゼラチンフィルムを得た。
次いで、ゼラチンとして新田ゼラチン社製(ゼリー強度262g、原料:アルカリ処理牛骨)を使用し、ゼラチン:水=3:5の質量比(ゼラチン濃度37.5質量%)とし、温度60℃で溶解した。60℃における粘度は960~970mPa・sであった。このゼラチン水溶液を紡糸液とし、図10に示す製造装置を使用して、巻き取りロール上に配置されたゼラチンフィルム上にゼラチン繊維を集積して不織布にすることで積層体を製造した。紡糸液の温度は60℃、ノズル直径(内径)250μm、吐出圧0.2MPa、ノズル高さ5mm、エアー圧力0.375MPa、エアー温度100℃、流体噴射口とノズル吐出口との距離は5mm、捕集距離50cmとした。積層体は室温で一晩風乾し、次いで加熱脱水架橋させた。架橋条件は温度140℃、48時間とした。
得られた積層体を精製水で膨潤後に直径7mmの円柱に打ち抜き、細胞培養用立体足場を作製した。
なお、積層体において、ゼラチン不織布の目付は150g/m2、ゼラチン繊維の膨潤後の平均繊維径は47μm、孔径は119.6~157.1μmであった。
<細胞播種>
(1)上記で得られた積層体(細胞培養用立体足場)を液体培地(Gibco社製のMEM Alpha basic)中に30分間静置して、液体培地で膨潤させた。
(2)膨潤後の積層体をゼラチンフィルムがウェルの底面に接するようにウェル底面の直径が6.3mmの96ウェルプレート中に設置した。70%エタノールで洗浄し、PBSで洗浄することで積層体を殺菌した。
(3)積層体をつついて、確実にウェル底面・壁面に密着させて泡がないようにした。
(4)マウス由来の繊維芽細胞様MC3T3-E1細胞を液体培地(Gibco社製 MEM Alpha basic)に1×106cells/mLになるように懸濁して得られた細胞懸濁液を積層体のゼラチン不織布の表面上に100μL滴下した。温度37℃、5%CO2のインキュベーター中で4時間静置培養して細胞を積層体に接着させた後、液体培地100μLをさらに添加した。
(5)ウェル底面にピントを合わせて光学顕微鏡(オリンパス社製、型番CKX53)で明視野観察し、積層体の反り、及びウェル底面及び壁面への密着性を観察した。
(6)積層体を慎重に除去し、ウェル底面に落ちた細胞を光学顕微鏡(株式会社キーエンス社製、型番BZ-X700)で明視野観察した。ウェル底面を明視野観察写真において、1/4面積(即ち90°)分を抽出し、細胞の接着面積をImage Jで測定し、ウェルの1/4面積の中の細胞接着面積の割合を算出した。
(7)積層体を4%パラホルムアルデヒド(PFA)固定し、50℃の送風乾燥機で2~3時間乾燥した後、ゼラチンフィルム部を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製FlexSEM1000、500倍)で観察し、ゼラチンフィルムの破れの有無を確認した。
(8)積層体を4%PFA固定後、さらにリン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後、OCTコンパウンド(サクラファインテックジャパン社)で包埋後、液体窒素で凍結し、凍結状態で、円柱状の積層体の直径と垂直方向(積層体の最大割面)を10μm厚になるように切片を作製した。切片の作製にはクライオフィルム(ライカマイクロシステムズ社製、型番「2C(9)」)を用いた。凍結切片をヘマトキシリンエオジン染色し、足場内の細胞分布の仕方を光学顕微鏡(株式会社キーエンス社製、型番「BZ-X700」)で観察した。
ゼラチンフィルム作製時のゼラチン水溶液の濃度を5質量%とした以外は、実施例1と同様にして、細胞培養用立体足場を作製し、細胞播種を行った。
ゼラチンフィルム作製時にTP技研株式会社製バーコーターNo.10を使用した以外は、実施例2と同様にして、細胞培養用立体足場を作製し、細胞播種を行った。
ゼラチンフィルム作製時にTP技研株式会社製バーコーターNo.40を使用した以外は実施例2と同様にして、細胞培養用立体足場を作製し、細胞播種を行った。
ゼラチンとして新田ゼラチン社製(ゼリー強度262g 原料:アルカリ処理牛骨)を使用し、ゼラチン:水=3:5の質量比(ゼラチン濃度37.5質量%)とし、温度60℃で溶解した。60℃における粘度は960~970mPa・sであった。このゼラチン水溶液を紡糸液とし、図10に示す製造装置を使用して、巻き取りロール上に直接ゼラチン繊維を集積して長繊維不織布を製造した。紡糸液の温度は60℃、ノズル直径(内径)250μm、吐出圧0.2MPa、ノズル高さ5mm、エアー圧力0.375MPa、エアー温度100℃、流体噴射口とノズル吐出口との距離は5mm、捕集距離50cmとした。長繊維不織布は室温で一晩風乾し、次いで加熱脱水架橋させた。架橋条件は温度140℃、48時間とした。
得られたゼラチン不織布の目付は150g/m2、ゼラチン繊維の膨潤後の平均繊維径は47μm、孔径は119.6~157.1μmであった。
得られた長繊維不織布を精製水で膨潤後に直径φ7mmの円柱に打ち抜き、細胞培養用立体足場を作製した。
上記で得られた細胞培養用立体足場を用いた以外は、実施例1と同様にして細胞播種を行った。
図11に、実施例1において、足場に細胞を播種し、4時間静置して細胞をゼラチン不織布に接着させた後の足場の切片(足場断面)をヘマトキシリンエオジン染色し、光学顕微鏡で観察した全体像の写真(10倍で観察し、ソフトウェア上で連結)を示した。図11において、スケールは1mmである。図12に、ゼラチン不織布部分の拡大写真を示した。図12において、スケールは100μmである。図13に、ゼラチンフィルム部分の拡大写真を示した。図13において、スケールは100μmである。図11~13から明らかなように、積層体のゼラチン不織布の表面上に播種した細胞が足場内部まで侵入している。
2 紡糸液
3 ノズル吐出口
4、6 コンプレッサー
5 流体噴射口
7 圧力流体
8 ゼラチン繊維
9 ゼラチン不織布
10 ゼラチンフィルム
11 巻き取りロール
12 保温容器
20 製造装置
Claims (8)
- ゼラチンを主成分とするゼラチン不織布及びゼラチンを主成分とするゼラチンフィルムを含む積層体で構成された細胞培養用立体足場において、
前記ゼラチン不織布を構成するゼラチン繊維は、膨潤後の平均繊維径が2μm以上400μm以下であり、繊維交点が少なくとも部分的に溶着しており、
前記ゼラチンフィルムは、前記ゼラチン不織布の一方の表面に積層され、前記ゼラチン不織布を構成するゼラチン繊維と部分的に溶着しており、
前記ゼラチン不織布は、厚みが0.1mm以上2.0mm以下であり、
前記ゼラチン不織布は、目付が10g/m 2 以上600g/m 2 以下であり、
前記ゼラチン不織布の厚みTnと前記ゼラチンフィルムの厚みTfとの比Tf/Tnが1.0×10 -3 以上7.5×10-3以下であることを特徴とする細胞培養用立体足場。 - 前記ゼラチン不織布及びゼラチンフィルムは、熱脱水架橋されている請求項1に記載の細胞培養用立体足場。
- 前記ゼラチンフィルムは、厚みが0.5μm以上10μm以下である請求項1又は2に記載の細胞培養用立体足場。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞培養用立体足場の製造方法であって、
ゼラチンを含む紡糸液をノズル吐出口から空気中に押し出し、
前記ノズル吐出口の後方に位置し、前記ノズル吐出口とは非接触状態の流体噴射口から前方に向けて圧力流体を噴射し、
前記押し出された紡糸液を前記圧力流体に随伴させて繊維形成させ、ゼラチンを主成分とするゼラチンフィルム上に前記繊維形成した繊維を集積させてゼラチン不織布とすることで、前記ゼラチンフィルムと前記ゼラチン不織布の積層体を得ることを特徴とする細胞培養用立体足場の製造方法。 - 前記積層体を熱脱水架橋する請求項4に記載の細胞培養用立体足場の製造方法。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞培養用立体足場を用いた細胞播種方法であって、
培養容器中に膨潤後の細胞培養用立体足場をゼラチンフィルムが培養容器の内底面に接するように配置する工程、及び
細胞培養用立体足場のゼラチン不織布上に細胞懸濁液を滴下する工程を含むことを特徴とする細胞播種方法。 - 前記培養容器の内面が親水化処理されており、前記細胞培養用立体足場の膨潤後のサイズLsと前記細胞培養用立体足場を配置して細胞培養を行う培養容器の内底面のサイズLbの比Ls/Lbが1.05倍以上1.3倍以下である請求項6に記載の細胞播種方法。
- 請求項6又は7に記載の細胞播種方法において、細胞培養用立体足場のゼラチン不織布上に細胞懸濁液を滴下して3~4時間静置した後、液体培地を添加して細胞培養を行う細胞培養方法。
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