JP7265711B2 - 電池の製造方法 - Google Patents

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ここでの開示は、電池の製造方法に関する。
特開2019-102194号公報には、扁平角型の蓄電池の注液口に注液ノズルを挿入して電解液を注液する装置が開示されている。ここで開示されている装置の注液ノズルは、扁平角型の蓄電池の注液口に挿入された際に、蓄電池の第1の幅狭側側面に対向するように構成された第1の吐出口と、蓄電池の第1の幅狭側側面に対向するように構成された第2の吐出口とを有している。そして、第1の吐出口と第2の吐出口とでは、その開口面積が、吐出口と、吐出口と対向する幅狭側側面との距離が長い方が大きいように構成されている。かかる構成によれば、電解液の注液を短い時間で行なうことが可能になるとされている。
特開2008-204649号公報には、蓄電池の注液口に装着し蓄電池に電解液を注液する注液ノズルを貫通する中空部と該中空部内を真空引きする吸引部とを有する、蓄電池用注液装置が開示されている。当該装置では、注液ノズルの下部側面に穿設の開口孔を覆う摺動子が、中空部に摺動自在にかつ液密に設けられている。当該装置によれば、蓄電池に電解液を注液後、蓄電池から電解液注液装置を離脱する際に、蓄電池が汚染されることが防止されるとされている。
特開2019-102194号公報 特開2008-204649号公報
ここでは、電池の製造方法は、電解液を電池ケースに注入する注液工程において、注液時間を短縮できることが望ましい。
ここで開示される電池の製造方法は、以下の(a)~(c)の工程を含む。(a)注液口を有する電池ケースに、電極体が収容された電池組立体を用意する。(b)筒状のノズル管部と、ノズル管部の側面に周方向に沿って開口した長穴からなるノズル孔と有する注液ノズルを備えた注液装置を用意する。(c)ノズル孔が電池ケース内に到達するように、注液ノズルを電池ケースに挿し込み、ノズル孔から電池ケース内に電解液を注入する。
ここで開示される電池の製造方法によれば、電解液を電池ケースに注入する注液工程において、注液時間を短縮できる。
図1は、ここで開示される蓄電池用の注液装置100の全体構成を示す模式図である。 図2は、蓄電池200を示す斜視図である。 図3は、蓄電池200の側面図である。 図4は、蓄電池200の注液口240に挿入された注液ノズル10を示す模式図である。 図5は、ノズル孔12を正面から見た注液ノズル10の側面図である。 図6は、注液ノズル10の断面図である。 図7は、注液工程おける電池ケース210内の圧力と、注液ノズル10から供給される電解液の量を経時的に示すグラフである。
以下、ここで開示される電池の製造方法の一実施形態を説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。本発明は、特に言及されない限りにおいて、ここで説明される実施形態に限定されない。図面における寸法関係(長さ、幅、厚さなど)は必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。本明細書において数値範囲を示す「X~Y」のような表記は、特に言及されない限りにおいて「X以上Y以下」を意味する。
本明細書において「蓄電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス一般を指す用語であって、一次電池、二次電池等を含む概念である。「二次電池」とは、リチウムイオン二次電池、金属リチウム二次電池、ナトリウム二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のいわゆる蓄電池(いわゆる化学電池)のほか、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(いわゆる物理電池)をも包含する概念である。
図1は、ここで開示される蓄電池用の注液装置100の全体構成を示す模式図である。注液装置100は、図1に示されているように、注液ノズル10と、電解液タンク20と、注液通路30と、収容チャンバ40と、排気通路50と、真空ポンプ60と、加圧装置70とを備えている。
注液ノズル10と電解液タンク20とは、注液通路30によって接続されている。注液通路30には、注液通路30を開閉するための注液バルブ32が設けられている。電解液タンク20は、電解液(図示せず)を収容している。注液通路30は、収容チャンバ40を貫通するように設けられている。
収容チャンバ40は、蓄電池200が収容可能な収容空間を有している。図1に示された形態では、収容チャンバ40は、チャンバ蓋体42とチャンバ本体44とを備えている。チャンバ蓋体42とチャンバ本体44とは、開閉可能なように構成されている。チャンバ蓋体42とチャンバ本体44とが閉じられた場合には、収容チャンバ40内の気密性が確保される。
収容チャンバ40には、排気通路50が取り付けられている。排気通路50には、排気バルブ52が設けられている。収容チャンバ40には、真空ポンプ60が接続されている。収容チャンバ40と真空ポンプ60との間には、真空バルブ62が設けられている。収容チャンバ40内は、真空ポンプ60によって所要の減圧状態に調整される。収容チャンバ40には、加圧装置70が接続されている。収容チャンバ40と加圧装置70との間には、加圧バルブ72が設けられている。収容チャンバ40内には、加圧装置70によって不活性ガス(例、希ガス等)が供給される。そして、収容チャンバ40内を大気圧または加圧状態にすることができるように構成されている。なお、真空ポンプ60および加圧装置70は、それぞれ、排気通路50に接続されていてもよい。
収容チャンバ40内には、固定台(図示せず)が設けられており、この固定台に蓄電池200が配置される。本実施形態では、蓄電池200は、例えば、リチウムイオン二次電池である。しかしながら蓄電池200は、電解液を使用するものであればその種類には特に制限はなく、リチウムイオン二次電池以外の蓄電池であってよい。また、蓄電池200の構造は、ここで例示されるものに限定されない。
図2は、蓄電池200を示す斜視図である。図3は、蓄電池200の側面図である。図3では、電池ケース210のケース本体214が切断され、蓄電池200の内部が露見した状態で図示されている。蓄電池200は、図2に示すように、電池ケース210と、電極体220とを備えている。蓄電池200では、電池ケース210内に電解液が収容されている。なお、図1に示されているように、電池ケース210に電解液が注入される注液工程では、注液口240を有する電池ケース210に、電極体220が収容された電池組立体が用意される。換言すると、電池ケース210の内部に電解液が注入される前の、蓄電池200の電池組立体が用意される。
ここで、電池ケース210は、蓋212とケース本体214とから構成されている。ここで用意された電池ケース210は、扁平角型の電池ケースであり、略直方体の角型のケース本体214が用いられている。
図2および図3に示されているように、ケース本体214は、4つの側面214a~214dと、底面214eとを備えている。4つの側面214a~214dは、互いに対向する幅が狭い一対の面(面積の狭い面)と、互いに対向する幅が広い一対の面(面積の広い面)とから構成されている。すなわち、電池ケース210は、面積の狭い、第1の幅狭側側面214aおよび第2の幅狭側側面214b、ならびに面積の広い、第1の幅広側側面214cおよび第2の幅広側側面214dを有している。ケース本体214は、底面214eに対向した面が開口しており、蓋212が装着されている。
蓋212には、安全弁230および注液口240が設けられている。安全弁230は、電池ケース210の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定されている感圧式の安全機構である。安全弁230は、正確に動作させるために、蓋212の中央に設けられていてもよい。一方、注液口240は、安全弁230の隣に配置されている。注液口240は、注液後にシール材240aが取付けられて封止される。図1に示されているように、注液工程では、注液口240は、封止されていない状態にある。
蓋212には、正極端子250と負極端子260とが取り付けられている。これらはそれぞれ、電池ケース210内に収容されている電極体220と電気的に接続されている。
電極体220は、いわゆる電池要素である。電極体220は、正極シート21と、負極シート22と、第1セパレータ23と、第2セパレータ24とを備えている。正極シート21と、負極シート22と、第1セパレータ23と、第2セパレータ24とは、それぞれ帯状のシートである。第1セパレータ23と第2セパレータ24は、特に区別を要さない場合には、適宜に「セパレータ」と称する。
正極シート21と、第1セパレータ23と、負極シート22と、第2セパレータ24とは、順に長手方向に向きを揃えて重ねられ、かつ、短手方向に沿って設定された捲回軸WL(図1参照)周りに捲回されている。このように電極体220は、長尺の帯状の第1セパレータ23または第2セパレータ24を介在させて、正極シート21と負極シート22とが重ねられて捲回されている。図2では、部分的に電極体220が破断され、内部が露見した状態で図示されている。
正極シート21は、帯状の正極集電箔21aと、正極活物質層21bとを有している。帯状の正極集電箔21aには、所要の耐性を備えた金属箔、例えば、アルミニウム箔が用いられている。正極集電箔21aの片側の長辺に沿って未形成部21a1が設定されている。正極活物質層21bは、未形成部21a1を除いて正極集電箔21aの上に形成されている。正極シート21の未形成部21a1は、捲回軸WLに沿った片側において、第1セパレータ23および第2セパレータ24からはみ出ている。
この実施形態では、概ね一定の幅で設定された未形成部21a1を除いて、正極活物質粒子を含む正極活物質層21bが両面に形成されている。正極集電箔21aで正極活物質層21bが形成されていない未形成部21a1は、電極体220の正極集電部となりうる。正極活物質粒子は、蓄電池200の正極活物質として機能しうる粒子である。例えば、蓄電池200がリチウムイオン二次電池である場合には、正極活物質粒子には、リチウム遷移金属複合材料のように、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを吸収しうる材料が用いられうる。リチウムイオン二次電池の正極活物質は、一般的に種々提案されており、特にリチウム遷移金属複合材料に限定されない。正極活物質層21bは、正極活物質粒子がバインダで接合されており、正極活物質粒子間に電解液が含浸しうる間隙を有する層で構成されている。
負極シート22は、帯状の負極集電箔22aと、負極活物質層22bとを有している。帯状の負極集電箔22aには、所要の耐性を備えた金属箔、例えば、銅箔が用いられている。負極集電箔22aの片側の長辺に沿って未形成部22a1が設定されている。負極活物質層22bは、未形成部22a1を除いて負極集電箔22aの上に形成されている。負極シート22の未形成部22a1は、捲回軸WLに沿って正極シート21の未形成部21a1とは反対側において、第1セパレータ23および第2セパレータ24からはみ出ている。
この実施形態では、概ね一定の幅で設定された未形成部22a1を除いて、負極活物質粒子を含む負極活物質層22bが両面に形成されている。負極集電箔22aで負極活物質層22bが形成されていない未形成部22a1は、電極体220の負極集電部となりうる。負極活物質粒子は、蓄電池200の負極活物質として機能しうる粒子である。例えば、蓄電池200がリチウムイオン二次電池である場合には、負極活物質粒子には、天然黒鉛のように、充電時にリチウムイオンを吸蔵し、充電時に吸蔵したリチウムイオンを放電時に放出しうる材料が用いられうる。リチウムイオン二次電池の負極活物質粒子は、一般的に種々提案されており、特に天然黒鉛に限定されない。負極活物質層22bは、負極活物質粒子がバインダで接合されており、負極活物質粒子間に電解液が含浸しうる間隙を有する層で構成されている。
第1セパレータ23および第2セパレータ24には、例えば、所要の耐熱性を有する多孔質の樹脂シートが用いられる。第1セパレータ23および第2セパレータ24は、電解質が通過しうる程度の細孔を有しているとよい。第1セパレータ23および第2セパレータ24のようなセパレータシートについても種々提案されており、特に限定されない。正極シート21の正極活物質層21bは、第1セパレータ23または第2セパレータ24が介在した状態で、負極シート22の負極活物質層22bに覆われているとよい。負極シート22の負極活物質層22bは、第1セパレータ23と第2セパレータ24とによって、さらに覆われているとよい。
この実施形態では、電極体220は、いわゆる捲回電極体である。電極体220は、図3に示されているように、扁平な形状を有している。電極体220は、図3に示されているように、捲回軸WL周りに、一対の平坦部220a,220bと、一対のR部220c,220dとを備えている。平坦部220a,220bは、平坦な形状を有する部分である。平坦部220a,220bは、捲回軸WLを挟んで互いに平行となっている。一対のR部220c,220dは、捲回軸WL周りにおいて、一対の平坦部220a,220bを繋ぐ湾曲した部分である。
捲回軸WLに沿った片側では、正極シート21の未形成部21a1がセパレータ23,24からはみ出ている。また、捲回軸WLに沿った反対側では、負極シート22の未形成部22a1がセパレータ23,24からはみ出ている。捲回軸WLに沿った片側で、正極シート21の未形成部21a1がセパレータ23,24からはみ出た部分を第1側部220eという。第1側部220eとは反対側で、負極シート22の未形成部22a1がセパレータ23,24からはみ出た部分を、第2側部220fという。捲回軸WL方向からみると、第1側部220eでは、正極シート21の未形成部21a1は、螺旋状に巻かれている。第2側部220fでは、負極シート22の未形成部22a1は、螺旋状に巻かれている。
平坦部220aに対応した中間部分では、正極シート21の未形成部21a1と負極シート22の未形成部22a1とは、それぞれ平坦部220aに直交する方向に集約され、かつ、正極端子250,負極端子260が溶接されている。このため、平坦部220aに対応した中間部分では、正極シート21の未形成部21a1のシート間の間隙と、負極シート22の未形成部22a1のシート間の間隙は、それぞれ閉じられている。これに対してR部220c,220dに対応した部分では、正極シート21の未形成部21a1のシート間の間隙と、負極シート22の未形成部22a1のシート間の間隙はそれぞれ維持されている。つまり、第1側部220eでは、螺旋状に巻かれた正極シート21の未形成部21a1のシート間に間隙がある。第2側部220fでは、螺旋状に巻かれた負極シート22の未形成部22a1のシート間に間隙がある。電極体220のような捲回電極体では、かかる捲回軸WL方向の第1側部220eと第2側部220fのシート間の間隙から、電極体220内部に電解液が含浸していく。
ここで提案される、注液ノズル10は円筒形状をしており、注液ノズル10のノズル径は、注液口240の開口径よりも小さい。注液装置100は、注液ノズル10を蓋212よりも低い位置に下降させることにより、注液ノズル10を蓄電池200の注液口240内に挿入可能なように構成されている。図4は、蓄電池200の注液口240に挿入された注液ノズル10を示す模式図である。なお、図1および図4に、注液装置100の注液ノズル10が蓄電池200の注液口240に挿入された状態が示されている。図5は、ノズル孔12を正面から見た注液ノズル10の側面図である。図6は、注液ノズル10の断面図である。
図4および図5に示されているように、注液装置100の注液ノズル10は、筒状のノズル管部11と、ノズル管部11の側面に周方向に沿って開口した長穴からなるノズル孔12と有している。ノズル孔12は、ノズル管部11の概ね先端において、ノズル管部11の側面に開口している。ノズル孔12は、軸方向に比べて周方向に沿って長く開口した長穴である。なお、ノズル管部11の側面には、ノズル孔12が複数配置されていてもよい。例えば、図6に示されているように、ノズル孔12は、ノズル管部11の軸周りに対象となる位置に2つ配置されていてもよい。この実施形態では、ノズル管部11は、蓋212と、電極体220のR部220cとの空間に挿し込まれる。蓋212と電極体220のR部220cとの間には、捲回軸WL方向に沿った細長い空間が形成されている。ここで、ノズル孔12は、捲回軸WL方向に沿った方向に向けられているとよい。
注液工程では、図1に示されているように、電池ケース210に電極体220が収容された電池組立体が、収容チャンバ40の所定位置に置かれる。この際、電池ケース210の注液口240は、上方に向けられている。次に、注液工程では、図1に示されているように、ノズル孔12が電池ケース210内に到達するように、注液ノズル10が電池ケース210に挿し込まれる。ノズル管部11は、注液口240に対して垂直になるように電池ケース210内に挿入される。この際、ノズル管部11の外形は、注液口240の内径よりも小さく、ノズル管部11は、非接触で、注液口240に挿入される。ノズル孔12は、電池ケース210の蓋よりも下に配置される。また、図4に示されているように、注液ノズル10の先端と蓋212との距離K1は、大凡8mm~15mm程度としてもよい。また、注液ノズル10の軸方向において、ノズル孔12の中心と、注液ノズル10の先端までの距離K2は、1mm~5mmとしてもよい。ノズル孔12は、ノズル管部11の側面に周方向に沿って開口した長穴からなる。
この場合、図5に示されているように、ノズル孔12の中心を通るノズル管部11の軸方向に沿った、ノズル孔12の開口幅m1と、ノズル孔12の中心を通るノズル管部11の周方向に沿った、ノズル孔12の開口幅m2との比(m2/m1)は、例えば、1.1~4.0程度(例えば、1.2以上、さらには1.5以上、また3.0以下、さらには2.5以下程度)に設定されるとよい。具体的には、m1:m2=1:2としてもよい。例えば、m1を0.6mmとし、m2を1.2mmとしてもよい。比(m2/m1)は、ノズル孔12からスムーズに注液されるとの観点で、予め試験を行なうなどして定められるとよい。
図7は、注液工程おける電池ケース210内の圧力と、注液ノズル10から供給される電解液の量を経時的に示すグラフである。ここで、グラフ(a)は、注液工程おける電池ケース210内の圧力C1と、注液ノズル10から供給される電解液の量Q1の経時的な変化が示されている。ここでは、図1と図7を適宜に参照図面として説明する。
図7の下部に示されたグラフ(b)は、一次注液までの液面の変化を示すグラフである。このうち、b1のグラフは、ノズル孔12が丸穴であり、ノズル管部11に対してノズル孔12が1つ形成された形態において、ノズル孔12が向けられた側の電極体220の側部の液面の変化が示されている。b2のグラフは、b1のグラフに対してノズル孔12が向けられた側とは反対側の電極体220の側部の液面の変化が示されている。b3のグラフは、ノズル孔12が長穴(図5参照)であり、ノズル管部11に対してノズル孔12が1つ形成された形態において、ノズル孔12が向けられた側の電極体220の側部の液面の変化が示されている。b4のグラフは、b3のグラフに対してノズル孔12が向けられた側とは反対側の電極体220の側部の液面の変化が示されている。例えば、液面の変化や、電池ケース210内での電解液の挙動は、例えば、幅広側側面を透明とした電池ケースを用意して、注液工程での電池ケース210内の電解液の流れや泡の発生を観察するとよい。
図7のグラフ(b)で示されているように、ノズル孔12が丸穴の場合、電極体220の捲回軸WL方向の両側部の液面の差が大きい(b1,b2)。一次注液で電池ケース210に注液された電解液がスムーズに入っていないことが伺える。これに対して、ノズル孔12が長穴の場合、電極体220の捲回軸WL方向の両側部の液面の差が小さい(b3,b4)。このため、一次注液で電池ケース210に注液された電解液がスムーズに入っていることが伺える。
また、グラフ(c)には、注液終了後の液面の変化が示されている。図7に示された例では、図4に示すように、注液ノズル10にはノズル孔12が1つ形成されており、ノズル孔12は、負極の未形成部22a1が配置された電極体220の第2側部220fに向けて配置されている。ここで、c1のグラフは、ノズル孔12が丸穴であり、ノズル管部11に対してノズル孔12が1つ形成された形態における、注液終了後の液面の変化が示されている。c2のグラフは、ノズル孔12が長穴であり、ノズル管部11に対してノズル孔12が1つ形成された形態における、注液終了後の液面の変化が示されている。c1のグラフとc2のグラフに示されているように、ノズル孔12が長穴である場合には、丸穴である場合に比べて、注液終了後に液面がスムーズに下がっている。これは、電解液が電極体220にスムーズに含浸していることが伺える。これは、本発明者の知見によれば、ノズル孔12が長穴である場合には、丸穴である場合に比べて、電池ケース210内での泡の発生が抑制されている。注液終了後に液面がスムーズに下がっているのは、このことに起因していると推察される。
まず、真空バルブ62が開かれ、真空ポンプ60によって収容チャンバ40内を減圧状態にする。この際、電池ケース210内も同様に減圧状態になる。さらには、電極体220内の微細な間隙も空気が抜けて、減圧された状態になる(t1)。ここでは、大気圧に対して、例えば、-95kPa~-85kPa程度にまで減圧されるとよい。収容チャンバ40内が予め定められた減圧状態になると、真空バルブ62を閉じる。次に、注液バルブ32が開かれる(t2)。注液バルブ32が開かれると、電解液タンク20から注液通路30を通じて注液ノズル10に電解液が供給される。電池ケース210内が減圧されているため、電解液は、注液ノズル10のノズル孔12から勢いよく吐出される。
蓋212と電極体220のR部220cとの間には、ノズル管部11の軸方向に対して狭い空間が形成されている。また、電池ケース210内の省スペース化の要請から、蓋212と電極体220のR部220cとの間の空間は、捲回軸WL方向に沿って細長く狭い。この実施形態では、ノズル孔12は、捲回軸WL方向に向けられている。電解液は、ノズル孔12が向けられた方向において、捲回軸WL方向の第1側部220eまたは第2側部220fへ勢いよく送られる。
第1側部220eまたは第2側部220fに送られた電解液は、第1側部220eまたは第2側部220fのシート間の間隙から電極体220内部に含浸していく。この際、電極体220の内部には、負圧が形成されており、電極体は電極体220の内部に引き込まれていく。しかしながら、電極体220内部の隙間は狭く、電解液は、毛細管現象のような作用によって、電極体220内に含浸していく。この際、電解液が電極体220内に含浸していく速度よりも、ノズル孔12から供給される速度の方が早いため、注液が進むと電池ケース210内は電解液で満たされていく。注液工程では、ある程度、電池ケース210内が電解液で満たされたところで、一度、注液を止める(t3)。注液を止めるタイミングは、注液口240から電解液が溢れる前のタイミングとなるように設定される。ここまでの注液は、一次注液と称されうる。
この段階では、電池ケース210内は電解液で満たされているが、電極体220の内部、特に中央部までは電解液が含浸しておらず、減圧された際に形成された負圧状態で維持されている。その後、収容チャンバ40が大気開放される(t4)。すると、電池ケース210内の電解液が大気圧の作用で押される。電極体220の内部は、負圧状態で維持されているので、電極体220の外に留まっていた電解液が、一気に電極体220に含浸していく。このため、電池ケース210内の電解液の液面が一気に下がる。それに合わせて注液を再開し、電池ケース210内に予め定められた量の電解液を注入する(t5)。ここでの注液は、二次注液と称されうる。かかる二次注液により、注液工程が終了する。
この実施形態では、ノズル孔12は、ノズル管部11の側面に周方向に沿って開口した長穴からなる。このため、ノズル孔12が丸穴である場合に比べて、ノズル孔12に広い開口面積が確保できる。ノズル孔12に広い開口面積が確保されているので、キャビテーションの発生が抑制される。キャビテーションの発生が抑制されるので、蓋212と電極体220のR部220cとの間が泡で満たされにくい。泡の発生が抑制されるので、電池ケース210内で電解液が流れやすく、一次注液で電解液が溢れにくく、より多くの電解液を注入できる。また、キャビテーションの発生が抑制されるので、電解液の吐出の速度が減少することが抑制される。この実施形態では、ノズル孔12から吐出される電解液の速度が減少することが抑制される。このように、この実施形態では、ノズル孔12がノズル管部11の側面に周方向に沿って開口した長穴からなるので、一次注液、二次注液の時間をそれぞれ短縮でき、より短時間で注液を終えることができる。
本発明者の知見によれば、ノズル孔12は、単に穴の径を大きくする場合は、流れの剥離が発生して、穴を大きくしても実際に液が流れる断面積はその穴径よりも小さくなる傾向がある。また、ノズル孔12において、流れ剥離が生じると、液の流れが下向きになり、既に電池の中に存在する電解液と撹拌が起こり、電池ケース210内で泡が発生する原因になる。これに対して、ノズル孔12が横長の穴であると、流れの剥離の発生が小さく抑えられる。例えば、実際に液が流れる断面積と穴径が同じくらいになる。また、横長穴にして、液の流れが下向きになりにくく、液を水平方向に飛ばすことができる。このため、電池ケース210内で、電解液の撹拌が少なく抑えられて、泡の発生が少なく抑えられる。
注液ノズル10は、例えば、図6に示されているように、ノズル孔12は、ノズル管部11の軸周りに対象となる位置に2つ配置されていてもよい。この場合、注液工程では、2つのノズル孔12が捲回軸WL方向に沿って、電極体220の第1側部220eと第2側部220fとに向けられているとよい。これにより、電極体220の第1側部220eと第2側部220fとに向けて、電解液が吐出されるので、よりスムーズに注液が行える。この場合、2つのノズル孔12は、同じ大きさとしてもよい。
以上のとおり、ここで開示される電池の製造方法は、以下の(a)~(c)を含む。(a)注液口240を有する電池ケース210に、電極体220が収容された電池組立体を用意する。(b)注液ノズル10を備えた注液装置を用意する。ここで、注液ノズル10は、筒状のノズル管部11と、ノズル管部11の側面に周方向に沿って開口した長穴からなるノズル孔12と有する。(c)ノズル孔12が電池ケース210内に到達するように、注液ノズル10を電池ケース210に挿し込み、ノズル孔12から電池ケース210内に電解液を注入する。ここで開示される電池の製造方法によれば、電解液を電池ケース210に注入する注液工程において、注液時間を短縮できる。また、注液工程において、電解液が電池ケース210から溢れにくい。このため、注液工程の作業がスムーズに行なわれやすい。
以上、ここで開示される電池の製造方法について、種々説明した。特に言及されない限りにおいて、ここで挙げられた電池の製造方法の実施形態などは、本発明を限定しない。また、ここで開示される電池の製造方法は、種々変更でき、特に限定されない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされうる。また、ここで特段言及されない電池の製造方法の構成については、矛盾が生じない限りにおいて、種々、公知の構成が採用されうる。
10 注液ノズル
11 ノズル管部
12 ノズル孔
20 電解液タンク
30 注液通路
32 注液バルブ
40 収容チャンバ
42 チャンバ蓋体
44 チャンバ本体
50 排気通路
52 排気バルブ
60 真空ポンプ
62 真空バルブ
70 加圧装置
72 加圧バルブ
100 注液装置
200 蓄電池
210 電池ケース
212 蓋
214 ケース本体
214a 幅狭側側面
214b 幅狭側側面
214c 幅広側側面
214d 幅広側側面
214e 底面
220 電極体
220a,220b 平坦部
220c,220d R部
220e 第1側部
220f 第2側部
230 安全弁
240 注液口
240a シール材
250 正極端子
260 負極端子
WL 捲回軸

Claims (1)

  1. 注液口を有する電池ケースに、電極体が収容された電池組立体を用意し、
    筒状のノズル管部と、前記ノズル管部の側面に周方向に沿って長く開口した長穴からなるノズル孔と有する注液ノズルを備えた注液装置を用意し、
    前記ノズル孔が前記電池ケース内に到達するように、前記注液ノズルを前記電池ケースに挿し込み、前記ノズル孔から前記電池ケース内に電解液を注入する、
    電池の製造方法。
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