JP7264374B2 - 複合構造体、複合構造体の製造方法、及び蓄熱方法 - Google Patents
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Description
[1]金属材料からなる内部構造部と、前記内部構造部を内包する、炭化ケイ素を主成分とするセラミックスからなるシームレスな外殻部と、前記内部構造部と前記外殻部の間に配置される中間層と、(i)前記内部構造部と前記中間層の間、又は(ii)前記中間層と前記外殻部の間に配置される緩衝層と、を備えた複合構造体。
[2]前記緩衝層が、(1)(i)前記内部構造部と前記中間層の間、若しくは(ii)前記中間層と前記外殻部の間に配置される空隙、又は(2)(ii)前記中間層と前記外殻部の間に配置される、前記内部構造部及び前記外殻部に比して熱膨張係数が小さい材料で形成された低熱膨張層である前記[1]に記載の複合構造体。
[3]前記外殻部よりも内側の部分の全体積に占める、前記緩衝層の割合が、2~50体積%である前記[1]又は[2]に記載の複合構造体。
[4]前記中間層が、窒化ホウ素及び炭素の少なくともいずれかの材料で形成されている前記[1]~[3]のいずれかに記載の複合構造体。
[5]前記金属材料の融点が、1,500℃以下である前記[1]~[4]のいずれかに記載の複合構造体。
[6]前記金属材料が、銅、アルミニウム、ニッケル、及び鉄からなる群より選択される少なくとも一種の金属である前記[5]に記載の複合構造体。
[7]前記金属材料が、ケイ素を含有する前記[1]~[6]のいずれかに記載の複合構造体。
[8]蓄熱体として用いられる前記[1]~[7]のいずれかに記載の複合構造体。
[9]前記[1]~[8]のいずれかに記載の複合構造体の製造方法であって、下記工程(i)又は工程(ii)と、得られた前記被焼成体の少なくとも前記被覆層を加熱して前記外殻部を形成する工程と、を有し、前記第一の被覆材料が、ケイ素の融点以下の温度で昇華又は焼失する材料であり、前記第二の被覆材料が、ケイ素の融点以下の温度で収縮若しくは圧潰する材料、又は前記内部構造部及び前記外殻部に比して熱膨張係数が小さい材料である複合構造体の製造方法。
[工程(i)]:前記金属材料からなる成形体の外周面を第一の被覆材料で被覆した後、前記中間層を構成する材料で被覆し、さらに、炭化ケイ素を含む被覆層で被覆して被焼成体を得る工程。
[工程(ii)]:前記金属材料からなる成形体の外周面を、前記中間層を構成する材料で被覆した後、第一の被覆材料又は第二の被覆材料で被覆し、さらに、炭化ケイ素を含む被覆層で被覆して被焼成体を得る工程。
[10]前記第一の被覆材料が、ナフタレン、シュウ酸、ヨウ素、パラジクロロベンゼン、サリチル酸、テレフタル酸、及びセルロース繊維からなる群より選択される少なくとも一種であり、前記第二の被覆材料が、アルミナ-シリカファイバー、アルミナファイバー、アルカリアースシリケートファイバー、カーボンファイバー、ジルコニアファイバー、溶融シリカ、β-スポジュメン、チタン酸アルミニウム、及びコーディエライトからなる群より選択される少なくとも一種である前記[9]に記載の複合構造体の製造方法。
[11]前記被覆層が炭素をさらに含み、前記被焼成体の少なくとも前記被覆層をケイ素と接触させた状態で加熱し、反応焼結により前記外殻部を形成する前記[9]又は[10]に記載の複合構造体の製造方法。
[12]前記[8]に記載の複合構造体を前記内部構造部の溶融点以上の温度に加熱して、前記複合構造体に蓄熱させる工程を有する蓄熱方法。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の複合構造体は、金属材料からなる内部構造部と、内部構造部を内包する、炭化ケイ素を主成分とするセラミックスからなるシームレスな外殻部と、内部構造部と外殻部の間に配置される中間層と、(i)内部構造部と中間層の間、又は(ii)中間層と外殻部の間に配置される緩衝層とを備える。以下、本発明の複合構造体の詳細について説明する。
複合構造体を構成する内部構造部は金属材料によって形成されており、主として内部蓄熱体として機能する部分である。複合構造体を1,000~1,500℃の温度域の廃熱を回収して再利用する蓄熱体として用いる場合を考慮すると、内部構造部を構成する金属材料の融点は1,500℃以下であることが好ましく、1,000~1,400℃であることがさらに好ましい。このような金属材料としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、及び鉄などを挙げることができる。これらの金属材料は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
複合構造体を構成する外殻部は、炭化ケイ素を主成分として含有するセラミックスによって形成されている。このセラミックスに主成分として含まれる炭化ケイ素は、例えば、反応焼結によって形成することができる。複合構造体は、このようなセラミックスによって形成された外殻部によって内部構造部を被覆したものであるため、良好な昇温特性を有するとともに、優れた機械的強度を示す。外殻部を形成するセラミックスに含まれる炭化ケイ素の量は特に限定されないが、50体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがさらに好ましい。
複合構造体は、内部構造部と外殻部の間に配置される中間層をさらに備える。後述する複合構造体の製造方法では、金属材料からなる成形体の外周面を被覆層等で順次被覆した被焼成体を所定温度に加熱する。このため、所定箇所に中間層を配置することで、加熱に伴って溶融した金属材料の膨張により生ずる応力を緩衝することができる。すなわち、中間層は、金属材料の膨張により生ずる応力を緩和する緩衝層としての機能を具備する。また、中間層を配置することで、加熱に伴って溶融した金属材料が外部に流出しやすくなるのを抑制することも期待される。すなわち、中間層は、遮蔽層としての機能をも具備する。中間層を配置することで、得られる複合構造体に欠損等が生じにくくなるとともに、得られる複合構造体の熱伝導性等の特性を向上させることができる。
複合構造体は、所定の箇所に配置される緩衝層をさらに備える。緩衝層が配置される箇所は、具体的には、(i)内部構造部2と中間層6の間(図1)であるか、又は(ii)中間層6と外殻部4の間(図2)である。後述する複合構造体の製造方法では、金属材料からなる成形体の外周面を被覆層等で順次被覆した被焼成体を所定温度に加熱する。このため、所定箇所に緩衝層を配置することで、加熱に伴って溶融した金属材料の膨張により生ずる応力を緩衝することができる。
次に、本発明の複合構造体の製造方法について説明する。本発明の複合構造体の製造方法は、上述の複合構造体を製造する方法であり、被焼成体を得る工程(工程(1))と、得られた被焼成体の少なくとも被覆層を加熱して外殻部を形成する工程(工程(2))とを有する。工程(1)は、具体的には、下記工程(i)又は工程(ii)である。以下、本発明の複合構造体の製造方法の詳細について説明する。
[工程(i)]:金属材料からなる成形体の外周面を第一の被覆材料で被覆した後、中間層を構成する材料で被覆し、さらに、炭化ケイ素を含む被覆層で被覆して被焼成体を得る工程。
[工程(ii)]:金属材料からなる成形体の外周面を、中間層を構成する材料で被覆した後、第一の被覆材料又は第二の被覆材料で被覆し、さらに、炭化ケイ素を含む被覆層で被覆して被焼成体を得る工程。
[工程(i)]
工程(i)では、まず、金属材料からなる成形体の外周面を第一の被覆材料で被覆する。成形体を構成する金属材料としては、内部構造部を形成するための前述の金属材料と同様のものを挙げることができる。第一の被覆材料は、ケイ素の融点以下の温度で昇華又は焼失する材料である。後述の工程(2)で加熱して焼成すると、第一の被覆材料は昇華又は焼失するので、内部構造部と中間層の間に空隙(緩衝層)を形成することができる。したがって、金属材料の加熱膨張により生じた応力を緩衝層で緩衝(吸収、緩和)することができるので、外殻部に亀裂等の不具合が生じにくくなり、高い歩留まりで複合構造体を製造することができる。
工程(ii)では、まず、金属材料からなる成形体の外周面を、中間層を構成する材料(中間層用材料)で被覆する。具体的には、窒化ホウ素や炭素等の中間層用材料の粉末を適当な分散媒(水、エタノール等)に分散させて得られるスラリーを塗布すればよい。成形体を構成する金属材料としては、内部構造部を形成するための前述の金属材料と同様のものを挙げることができる。成形体の外周面を中間層用材料で被覆した後、第一の被覆材料又は第二の被覆材料でさらに被覆する。次いで、炭化ケイ素を含む被覆層で被覆することで、被焼成体を得ることができる。
工程(2)では、工程(1)で得た被焼成体の少なくとも被覆層を加熱する。具体的には、被覆層が炭素をさらに含むとともに、図3(E)及び図4(C)に示すように、ケイ素を入れた容器に被焼成体30,40を入れ、所定の温度に加熱することが好ましい。ケイ素の融点は約1,400℃であるため、1,500℃前後に加熱することでケイ素は溶融して溶融ケイ素50となる。これにより、被焼成体30,40の被覆層22,34をケイ素に接触させた状態で加熱することができる。溶融状態となったケイ素(溶融ケイ素50)は被覆層22,34に浸透するとともに、炭素と反応焼結して炭化ケイ素が形成される。これにより、炭化ケイ素を主成分とするセラミックスからなる外殻部4が形成され、複合構造体10を得ることができる(図3(F)及び図4(D))。
次に、本発明の蓄熱方法について説明する。本発明の蓄熱方法は、前述の複合構造体を蓄熱体として使用する方法である。すなわち、本発明の蓄熱方法は、前述の複合構造体(蓄熱体)を内部構造部の溶融点以上の温度に加熱して、複合構造体に蓄熱させる工程(蓄熱工程)を有する。
(実施例1~8、比較例1)
内部構造部となる直径12mmの金属銅の球体を用意した。この球体の表面に、有機バインダーを接着剤として使用してナフタレンの粉末を付与し、任意の厚さ(0~2.14mm)のナフタレン層を形成した。次いで、スラリー状及び粉末状の窒化ホウ素(BN)をナフタレン層の上に塗布し、厚さ約1mmのBN層を形成し、コア成形体を得た。
内部構造部となる直径12mmの金属銅の球体を用意した。この球体の表面に、スラリー状及び粉末状の窒化ホウ素(BN)を塗布し、厚さ約1mmのBN層を形成した。次いで、有機バインダーを接着剤として使用して溶融シリカの粉末をBN層上に付与し、任意の厚さ(0~2.14mm)の溶融シリカ層を形成してコア成形体を得た。
(緩衝層割合の測定)
以下に示す手順にしたがって、室温条件下における、外殻部よりも内側の部分の全体積に占める、緩衝層の割合(緩衝層割合)を測定した。測定結果を表1及び2に示す。緩衝層割合を測定するには、まず、製造後の複合構造体の中心を通る線上で一直線に切断加工して断面の写真を撮影する。次いで、撮影した写真を画像処理して算出した緩衝層の面積から、緩衝層割合を求めた。
製造直後の複合構造体(n=100)の外殻部に亀裂が生じているか否かを目視にて確認した。また、製造した複合構造体(n=100)を約1,000℃に加熱した炉内に投入し、1時間保持した後、冷却した。加熱及び冷却のサイクルを10サイクル実施した後、外殻部に亀裂が生じているか否かを目視にて確認した。結果を表1及び2に示す。
製造した複合構造体の中心部に直径0.5mmの穴をあけた。あけた穴を通じて、その先端が内部構造部の中心に位置するように熱電対を挿入した。約1,150℃に加熱した炉内に熱電対を挿入した状態の複合構造体を投入した。中心部の温度がほぼ一定となるまでの時間(到達時間)を測定し、昇温特性の指標とした。到達時間の測定結果を表1及び2に示す。
強度試験機を使用し、製造した複合構造体に圧縮荷重を付与した。複合構造体が破壊した時点の荷重(圧壊荷重)を測定し、機械的強度の指標とした。圧壊荷重の測定結果を表1及び2に示す。
4:外殻部
6:中間層
8,28:緩衝層
10,20:複合構造体
12:(金属材料からなる)成形体
14:粉体層
16:粉体被覆物
18:チャンバー
19:回転混合器
22,34:被覆層
30,40:被焼成体
32a,32b:外殻成形体
42:嵌合部
50:溶融ケイ素
60:第一の被覆材料
62:中間層用材料
64:成形体
80:内部蓄熱体
92,94:外殻
100:蓄熱体
Claims (10)
- 金属材料からなる内部構造部と、
前記内部構造部を内包する、炭化ケイ素を主成分とするセラミックスからなるシームレスな外殻部と、
前記内部構造部と前記外殻部の間に配置される中間層と、
(i)前記内部構造部と前記中間層の間、又は(ii)前記中間層と前記外殻部の間に配置される緩衝層と、を備え、
前記中間層が、窒化ホウ素及び炭素の少なくともいずれかの材料で形成されており、
前記緩衝層が、(1)(i)前記内部構造部と前記中間層の間、若しくは(ii)前記中間層と前記外殻部の間に配置される空隙、又は
(2)(ii)前記中間層と前記外殻部の間に配置される、前記内部構造部及び前記外殻部に比して熱膨張係数が小さい材料で形成された低熱膨張層である複合構造体。 - 前記外殻部よりも内側の部分の全体積に占める、前記緩衝層の割合が、2~50体積%である請求項1に記載の複合構造体。
- 前記金属材料の融点が、1,500℃以下である請求項1又は2に記載の複合構造体。
- 前記金属材料が、銅、アルミニウム、ニッケル、及び鉄からなる群より選択される少なくとも一種の金属である請求項3に記載の複合構造体。
- 前記金属材料が、ケイ素を含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の複合構造体。
- 蓄熱体として用いられる請求項1~5のいずれか一項に記載の複合構造体。
- 請求項1~6のいずれか一項に記載の複合構造体の製造方法であって、
下記工程(i)又は工程(ii)と、
得られた前記被焼成体の少なくとも前記被覆層を加熱して前記外殻部を形成する工程と、を有し、
前記第一の被覆材料が、ケイ素の融点以下の温度で昇華又は焼失する材料であり、
前記第二の被覆材料が、ケイ素の融点以下の温度で収縮若しくは圧潰する材料、又は前記内部構造部及び前記外殻部に比して熱膨張係数が小さい材料である複合構造体の製造方法。
[工程(i)]:前記金属材料からなる成形体の外周面を第一の被覆材料で被覆した後、前記中間層を構成する材料で被覆し、さらに、炭化ケイ素を含む被覆層で被覆して被焼成体を得る工程。
[工程(ii)]:前記金属材料からなる成形体の外周面を、前記中間層を構成する材料で被覆した後、第一の被覆材料又は第二の被覆材料で被覆し、さらに、炭化ケイ素を含む被覆層で被覆して被焼成体を得る工程。 - 前記第一の被覆材料が、ナフタレン、シュウ酸、ヨウ素、パラジクロロベンゼン、サリチル酸、テレフタル酸、及びセルロース繊維からなる群より選択される少なくとも一種であり、
前記第二の被覆材料が、アルミナ-シリカファイバー、アルミナファイバー、アルカリアースシリケートファイバー、カーボンファイバー、ジルコニアファイバー、溶融シリカ、β-スポジュメン、チタン酸アルミニウム、及びコーディエライトからなる群より選択される少なくとも一種である請求項7に記載の複合構造体の製造方法。 - 前記被覆層が炭素をさらに含み、
前記被焼成体の少なくとも前記被覆層をケイ素と接触させた状態で加熱し、反応焼結により前記外殻部を形成する請求項7又は8に記載の複合構造体の製造方法。 - 請求項6に記載の複合構造体を前記内部構造部の溶融点以上の温度に加熱して、前記複合構造体に蓄熱させる工程を有する蓄熱方法。
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