以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
《実施例1》
(画像形成装置)
図2は電子写真技術を用いた画像形成装置Aの一例の概略構成を示す模式的断面図である。本実施例では画像形成装置Aはパソコン等の外部ホスト装置200から制御回路部(CPU)100に入力したプリントジョブに対応した画像形成動作を実行してトナー像を形成した画像形成物をプリントアウトするモノクロプリンタである。
画像形成装置Aにおいて、記録媒体であるシート状の記録材P(シート:以下、用紙と記す)にトナー像を形成する画像形成部A1は、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、ドラムと記す)1を有する。ドラム1は矢印の時計方向に所定の周速度で回転駆動される。また、画像形成部A1はドラム1の周囲にドラム回転方向に沿ってドラム1に作用するプロセス機器としての、帯電ローラ1a、レーザスキャナ1b、現像装置1c、転写ローラ1d、クリーニング装置1eを有する。以上の画像形成部A1の電子写真プロセスや作像動作は周知であるからその説明は省略する。
尚、記録材Pは、画像形成装置によってトナー像が形成され得るシート状の記録媒体(メディア)である。便宜上、記録材(シート)Pの扱いを、通紙、給紙、排紙、通紙部、非通紙部など紙に纏わる用語を用いて説明するが記録材は紙に限定されるものではない。
用紙カセット2に収納されている用紙Pが給送ローラ3の回転によって所定の制御タイミングにて1枚分離給送される。その用紙Pが、搬送路a、レジストローラ対4、搬送路bの経路を通ってドラム1と転写ローラ1dの当接部である転写部(転写ニップ部)5に所定の制御タイミングにて導入される。用紙Pは転写部5にて挟持搬送される過程でドラム1の表面に形成されているトナー像の転写を順次に受ける。
転写部5を出た用紙Pはドラム1の面から分離されて搬送路cを通って定着装置(加熱定着装置:画像加熱装置)6に導入されて用紙上(記録材上)トナー像(画像)の熱圧定着処理を受ける。定着装置6を出た用紙Pは搬送路dを通って画像形成物として排出トレイ7に排出される。Paは用紙搬送方向である。
(定着装置)
ここで、定着装置6について、正面(前面)とは用紙Pの導入口側の面、背面(後面)とはその反対側の面、左右とは定着装置6を正面から見て左(L)又は右(R)である。長手方向とは回転体の軸線方向又は母線方向、短手方向とは長手方向に直交する方向である。上下とは重力方向において上又は下である。定着装置6の構成部材についても同様である。
また、上流側と下流側は用紙搬送方向Paにおいて上流側と下流側である。一端側と他端側は長手方向において一端側と他端側であり、本実施例においては、左側を一端側(非駆動側、手前側)とし、右側を他端側(駆動側(駆動力を受ける側)、奥側)としている。用紙Pの幅とは用紙面における用紙搬送方向Paに直交する方向の用紙寸法である。
図3は定着装置6の外観斜視模式図であり、背面側と一端側と上面側とから見ている。
図4は同装置6の他端側部分の外観斜視模式図である。図5は図3の定着装置6から装置フレームの上面側に配設されている送風冷却機構30を取り除いた状態を示した図である。図6は図3における(6)-(6)線矢視の断面模式図である。図7は図5の装置の一部切り欠きの正面模式図である。図8は定着アセンブリの分解斜視模式図である。図9は主として定着装置についての制御系統のブロック図である。
この定着装置6はフィルム加熱方式の画像加熱装置である。この定着装置6は、大別して、定着フィルム13を備えた定着アセンブリ(定着部材)10と、弾性を有する加圧ローラ(定着部材)20と、これらを収容した装置フレーム(装置筐体)25と、送風冷却機構30と、を有する。以下、定着アセンブリ10を単にアセンブリ10と記す。一対の回転体としての定着フィルム13(加熱回転体:第1の回転体)と加圧ローラ20(加圧回転体:第2の回転体)との協働によりニップ部(定着ニップ部)Nが形成される(図6、図7)。
ニップ部Nは未定着トナー像を担持している用紙Pを挟持搬送してトナー像を熱と圧力で定着する部分である。ニップ部Nにおいて定着フィルム(定着ベルト)13が用紙Pの未定着トナー像を担持している面に対して接触する。
アセンブリ10は、図6に示すように、円筒状(無端状:エンドレスベルト状)の定着フィルム13、ヒータ11、ヒータ11を保持する断熱ホルダ12、加圧ステイ(金属ステイ)14、定着フランジ15(L・R)などによる組立体である。図8はこのアセンブリ10の分解斜視模式図であり、加圧ローラ20も一緒に描いてある。
(1)定着フィルム
加熱回転体としての定着フィルム(定着ベルト、可撓性スリーブ:以下、フィルムと記す)13は、可撓性・耐熱性を有する薄肉無端状の伝熱部材であり、自由状態においては自身の弾性によりほぼ円筒状を呈する。
フィルム13は、クイックスタートを可能にするために、総厚200μm以下の厚みの耐熱性フィルムである。ポリイミド・ポリアミドイミド・PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の耐熱性樹脂、あるいは耐熱性、高熱伝導性を有するSUS(ステインレス鋼)・Al・Ni・Cu・Zn等の純金属、あるいは合金を基層として形成されている。
樹脂製の基層の場合は熱伝導性を向上させるために、BN・アルミナ・Al等の高熱伝導性粉末を混入してあってもよい。また、長寿命の定着装置を構成するために充分な強度を持ち、耐久性に優れたフィルム13として、総厚100μm以上の厚みが必要である。よって、フィルム13の総厚としては100μm以上200μm以下が最適である。
さらに、オフセット防止や用紙の分離性の確保のために表層にはPTFE・PFA・FEP・ETFE・CTFE・PVDF等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂等の離型性の良好な耐熱樹脂が混合ないし単独で被覆され離型性層(離型層)が形成される。本実施例では、表層は、PTFE及びPFAを少なくとも含む材料で構成している。
ここで、PTFEはポリテトラフルオロエチレンであり、PFAはテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体であり、FEPはテトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体である。また、ETFEはエチレンテトラフルオロエチレン共重合体であり、CTFEはポリクロロトリフルオロエチレンであり、PVDFはポリビニリデンフルオライドである。
被覆の方法としては、フィルム13の外面をエッチング処理した後に離型性層をディッピングするか、粉体スプレー等の塗布であってもよい。あるいは、チューブ状に形成された樹脂をフィルム13の表面に被せる方式であってもよい。又は、フィルム13の外面をブラスト処理した後に、接着剤であるプライマ層を塗布し、離型性層を被覆する方法であってもよい。
(2)ヒータ
ヒータ11は通電により有効発熱領域幅W11(図7)の全長部が急峻に昇温する低熱容量の細長の板状発熱体であり、本実施例ではセラミックヒータである。このヒータ11は、細長薄板状の熱伝導が良好なAlN(窒化アルミニウム)などの基板上(セラミック基板)にAg・Pdなどの導電ペーストを厚膜印刷し焼成することで発熱体(抵抗発熱体、通電発熱抵抗層)を形成する。
そして、発熱体の上に摺動絶縁部材として50~60μm程度の厚さのガラスコーティング層が一体となって設けられたセラミックヒータを構成する。本実施例においてはガラスコーティング層側がヒータ表面側であり、フィルム内面に接する。
発熱体は基板の長手に沿って装置に使用可能な最大幅サイズの用紙の幅に対応する長さもしくはそれよりも所定に長い長さにて形成されている。この発熱体の長さ範囲がヒータ11の有効発熱領域幅W11である。ヒータ11において、基板を挟んで発熱体が設けられている側と反対側の基板上(ヒータ背面側)には、温度検知素子としてのチップ状のサーミスタ(第1のサーミスタ)18(図6・図8)が設けられている。このサーミスタ18はバネ等の加圧手段(不図示)により基板(ヒータ背面)に対して所定の圧力で固定されている。
(3)断熱ホルダ
断熱ホルダ(ヒータ保持部材:以下、ホルダと記す)12は、フィルム13の長手方向
(幅方向)に沿って長い部材であり、液晶ポリマー・フェノール樹脂・PPS・PEEK等の耐熱性樹脂により形成さる。熱伝導率が低いほどヒータ11の熱を奪熱する事がなく、効率的にフィルム13に熱を伝えることができるので、樹脂層中にガラスバルーンやシリカバルーン等のフィラーを内包してあってもよい。ヒータ11はホルダ12の下面にホルダ長手に沿って形成されている溝部12a(図8)に表面側を外向きにして嵌め込まれて保持されている。また、ホルダ12はフィルム13の回転を案内する役目も持つ。
(4)加圧ステイ
加圧ステイ(以下、ステイと記す)14は、フィルム13の長手方向に沿って長く、加圧ローラ20からの反力を受ける剛性部材であり、高い圧力を掛けられても撓みにくい材質であることが望ましい。本実施例においては金属ステイであり、横断面U字形のSUS304の型材を用いている。ステイ14は、ホルダ12の上面側に配設されてホルダ12と接触し、アセンブリ10全体の撓みや捩れを抑制する。
(5)定着フランジ
フィルム13は、上記のヒータ11、ホルダ12、ステイ14の組立体に対してルーズに外嵌(外挿)されている。ステイ14の両端部14a(図8)はそれぞれフィルム13の両端部の開口部から外方に突出している。そのステイ14の両端部14aに対してそれぞれ一端側と他端側の定着フランジ(以下、フランジと記す)15(L・R)が嵌着されている。フィルム13はその嵌着されたフランジ15(L・R)の対向する端部規制面(鍔座部)15a間に位置している。
フランジ15(L・R)はアセンブリ10におけるフィルム13の長手方向への移動および周方向の形状を規制する規制部材であり、PPS・液晶ポリマー・フェノール樹脂等の耐熱樹脂のモールド形成品である。フランジ15(L・R)は、それぞれ、端部規制面15a、内周規制面15b、被押圧部(加圧受部)15cを有する。
(6)加圧ローラ
加圧ローラ20は、SUS・SUM(硫黄及び硫黄複合快削鋼鋼材)・Al等の金属製芯金21の外側に、弾性ソリッドゴム層、弾性スポンジゴム層、あるいは弾性気泡ゴム層等の弾性層22からなる弾性ローラである。
ここで、弾性ソリッドゴム層は、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱ゴムで形成したものである。また、弾性スポンジゴム層は、より断熱効果を持たせるためにシリコーンゴムを発泡して形成したものである。また、弾性気泡ゴム層は、シリコーンゴム層内に中空のフィラー(マイクロバルーン等)を分散させ、硬化物内に気体部分を持たせて断熱効果を高めたものである。この上にパーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)等の離型性層を形成してあってもよい。
加圧ローラ20は装置フレーム(以下、フレームと記す)25の一端側と他端側の側板25(L・R)の間において、芯金21の一端側と他端側がそれぞれ軸受23を介して回転可能に支持されている。
アセンブリ10は側板25(L・R)との間において、加圧ローラ20の上側にヒータ11の側を加圧ローラ20に対向させて加圧ローラ20に平行に配列されている。アセンブリ10におけるフランジ15(L・R)はそれぞれの被押圧部15cが側板25(L・R)に対称に形成されたガイド穴25aに対して加圧ローラ20の方向へスライド移動可能に係合されている。
そして、フランジ15(L・R)は、それぞれ、被押圧部15cにおいて一端側と他端側の加圧機構26(L・R)の加圧アーム26aにより加圧ローラ20に向かう方向へ所定の加圧力を受ける。その加圧力により、アセンブリ10のフランジ15(L・R)、ステイ14、ホルダ12、ヒータ11の全体が加圧ローラ20の方向に加圧される。そのため、ヒータ11とホルダ12の一部とがフィルム13を介して加圧ローラ20に対して弾性層22の弾性に抗して所定の加圧力で押圧される。これによりフィルム13と加圧ローラ20との間に用紙搬送方向Paに関して所定幅のニップ部Nが形成される。
図3・図4を参照して、フレーム25の一端側と他端側の側板25(L・R)の外側には、それぞれ、一端側と他端側の加圧機構26(L・R)が配設されている。この両加圧機構26(L・R)は鏡面対称構成の同一機構である。
加圧機構26(L・R)はそれぞれ加圧レバー(以下、レバーと記す)26aと加圧ばね(以下、ばねと記す)26bを有する。レバー26aは基部側が側板26(L・R)に対して軸部26cを中心に揺動可能に取り付けられている。レバー26aは軸部26cからフランジ15(L・R)の被押圧部15cの上側を経由して軸部26c側とは反対側に延びている。
ばね26bはレバー26aをフランジ15(L・R)の被押圧部15cに当接させて加圧する方向に軸部26cを中心に回動付勢する弾性部材である。本実施例においては、ばね26bはレバー26aの自由端部26dと側板26(L・R)に植設されたピン軸26eとの間に張設されている。従って、レバー26aはばね26bの引っ張り力によりフランジ15(L・R)の被押圧部15cに対して当接して所定の加圧力を与える。
レバー26aは側板25(L・R)に対して回動自在に支持されているのでばね26bの引っ張り力によって軸部26cまわりに回動モーメントが発生して、フランジ15(L・R)が加圧ローラ20方向へ所定の加圧力で押圧される。
(7)定着動作
加圧ローラ20の芯金21の他端側(駆動側)には同心一体に駆動ギア27(図4・図8)が配設されている。このギア27に対して、制御回路部100(図9)により制御される定着モータ駆動回路111にて駆動される定着モータ(駆動源)M1の駆動力が駆動伝達機構(不図示)を介して伝達される。これにより、加圧ローラ20が駆動回転体として図6において矢印R20の反時計方向に所定の速度で回転駆動される。
加圧ローラ20が回転駆動されることで、ニップ部Nにおいてフィルム13に加圧ローラ20との摩擦力で回転トルクが作用する。加圧ローラ20は、フィルム13を回転させる回転体として機能する。フィルム13は、加圧ローラ20に従動回転する。これにより、フィルム13はその内面がニップ部Nにおいてヒータ11とホルダ12の一部に密着して摺動(摺接)しながら、ヒータ11・ホルダ12・ステイ14の組み立て体の外回りを図6において矢印R13の時計方向に従動回転する。フィルム13の回転周速度は加圧ローラ20の回転周速度とほぼ対応している。
フランジ15(L・R)の端部規制面15aは回転するフィルム13の端面(コバ面)
13a(図8)と接触することでフィルム13の長手方向(スラスト方向)への移動を規制する。内周規制面15bはフィルム13の端部の内周面を内側から支持するガイド面であり、フランジ15(L・R)の内面側に円弧状の凸縁部として配設されている。フィルム13とヒータ11との間には、フッ素系やシリコーン系の耐熱性グリース等の潤滑材を介在させることにより、摩擦抵抗を低く抑え、滑らかにフィルム13が回転可能(移動可能)となる。
また、制御回路部100はヒータ駆動回路112を制御してヒータ11に対する通電を開始する。ヒータ駆動回路112からヒータ11への給電経路は図には省略したけれども、ヒータ駆動回路112とヒータ11とを電気的に接続させた配線とコネクタ28(図7)を介してなされる。この通電によりヒータ11はその有効発熱領域W11(図7)の全長域が急峻に昇温する。
このヒータ11の温度がヒータ11の背面に配設されている第1のサーミスタ18により検知され、その検知温度情報がA/D変換器103を介して制御回路部100に入力する。また、ヒータ11で加熱されながら回転しているフィルム13の内面の温度が第2と第3のサーミスタ19a・19b(図7・図8)で検知され、それらの検知温度情報がそれぞれA/D変換器103を介して制御回路部100に入力する。
制御回路部100は第1~第3のサーミスタ18・19a・19bから入力する検知温度情報(出力)に応じてヒータ駆動回路112からヒータ11の発熱体に印加する電圧のデューティー比や波数等を決定し適切に制御する。これにより、ニップ部Nにおける温度が所定の定着設定温度に立ち上げられて、温調される。
上記の定着装置状態において、画像形成部A1から未定着トナー像が形成された用紙Pがフレーム25の正面側の導入口25b(図6)から定着装置内に導入され、ニップ部Nで挟持搬送される。用紙Pはニップ部Nを挟持搬送される過程でヒータ11の熱がフィルム13を介して付与される。未定着トナー像はヒータ11の熱によって溶融され、ニップ部Nにかかっている圧力によって用紙Pに対して固着像として熱圧定着される。そして、ニップ部Nを出た用紙Pは装置フレーム25の背面側の排出口25cから定着装置外に排出される。
なお、フレーム25の内部には、導入口25bからニップ部Nへ至る間に用紙ガイド部材、用紙センサ等が配設されており、ニップ部Nから排出口25bへ至る間に用紙ガイド部材、排紙ローラ対、用紙センサ等が配設されているが、図には省略した。
ここで、本実施例において、定着装置6に対する用紙Pの搬送はいわゆる中央基準搬送でなされる。ここで、中央基準搬送とは、サイズの異なる用紙を搬送する際に、各用紙の幅方向(記録材の搬送方向と直交する方向)の用紙の中心(記録材の幅方向の中心)が略一致するように搬送する方法のことである。図7において、Oはその基準線(中央基準線:仮想線)である。
WPmaxは装置に使用可能な最大幅の用紙の通紙領域幅(通過領域幅)である。本実施例において、装置に使用可能な最大幅の用紙の幅は330mmである。WPminは装置に使用可能な最小幅の用紙の通紙領域幅である。本実施例において、装置に使用可能な最小幅の用紙の幅ははがき幅100mmである。中央基準通紙で最小幅の用紙を搬送する場合、幅方向においてWPminの両外側(一端側と他端側の両方)に、非通紙部が存在する。
ヒータ11の有効発熱領域幅W11は、通紙領域幅WPmaxと等しいか、通紙領域幅WPmaxよりも所定に大きい設定である。第1のサーミスタ18は中央基準線Oにほぼ対応するヒータ背面位置にヒータ背面に接触させて配設させてある。
第2のサーミスタ19aはフィルム13のニップ部Nよりもフィルム回転方向下流側の内面であって、中央基準線Oにほぼ対応する位置のフィルム内面に接してフィルム温度を検知する。第3のサーミスタ19bはフィルム13のニップ部Nよりもフィルム回転方向下流側の内面であって、通紙領域幅WPmaxの端部の内側に対応する位置のフィルム内面に接してフィルム温度を検知する。
即ち、第2のサーミスタ19aは装置に使用可能な大小各種幅サイズのどの用紙も通紙部となる通紙領域幅WPmin内に対応するフィルム部分の温度を検知する。第3のサーミスタ19bは最大幅の用紙よりも幅狭の用紙を通紙したときの非通紙部に対応するフィルム部分の温度を検知する(図7)。
第2と第3のサーミスタ19a・19bはそれぞれ細長いばね部材19c・19d(図8)の先端部に支持されている。ばね部材19c・19dの基部はそれぞれホルダ12に固定されている。即ち、第2と第3のサーミスタ19a・19bはそれぞれフィルム13の内面に弾性的に接触して摺動するようにばね部材19c・19dにより支持されている。そして、第2と第3のサーミスタ19a・19bは自然状態においてフィルム13の取り付け時の投影形状外側に先端がばね性を持って突出するように取り付けられている。
さらに、金属製のステイ14にはフィルム13のアースをとる目的で、第2のサーミスタ19aの近傍においてフィルム13の内面に接触するアース部材19e(図8)が設けられる。アース部材19eは細長いばね部材であり、基部がステイ14に電気的に導通しており、先端部がフィルム13の内面に弾性的に接触して摺動する。このアース部材19eも第2と第3のサーミスタ19a、19bと同様に自然状態においてフィルム13の取り付け時の投影形状外側に先端がばね性を持って突出するように取り付けられている。
(送風冷却機構)
送風冷却機構30を説明する。送風冷却機構30は、装置に使用可能な最大幅の用紙よりも小さい幅(幅狭)の用紙を連続通紙した際に生じる、アセンブリ10の非通紙部昇温を送風により冷却する冷却手段である。この送風冷却機構30は、送風口を有するダクトと、加熱回転体であるフィルム13の所定の領域を冷却するために、ダクトを介して送風口に向かって空気を吹き込むファンを有する。また、送風冷却機構30は、送風口を閉じるための閉じ位置にて送風口を閉じるための第1の面を有する第1のシャッタ部材と、送風口を閉じるための閉じ位置にて前記送風口を閉じるための第2の面を有する第2のシャッタ部材を有する。
送風冷却機構30はフレーム25の上面板(天板)25Uの上側に支持部材(不図示)に支持されて所定に近設されている。送風冷却機構30は、上面側が吸気口面であり、下面側が送風口面とされており、送風口面を上面板25Uの上面に所定に対向させて近設されている。
図10は図3における送風冷却機構30の分解斜視図であり、吸気口面から見ている。図11は図3における送風冷却機構30を裏返して送風口面側を上向きにして見た斜視図であり、後述するシャッタ機構34(L・R)はシャッタ閉状態となっている。図12は図11の裏返しの送風冷却機構30の分解斜視図である。図13はシャッタ機構34(L・R)のみの斜視図であり、シャッタ機構34(L・R)の内側を見ている。
図14は図11の送風冷却機構30からシャッタ機構34(L・R)のシャッタ部材36L・37L、36R・37Rを取り除いた送風冷却機構部分を示す斜視図であり、送風口側を見ている。
図5に示すように、上面板25Uは左半部側と右半部側とにそれぞれアセンブリ10の非通紙部に対して送風冷却機構30により冷却風を作用させるための左右方向に長い2つの窓穴38(L・R)を有する。この2つの窓穴38(L・R)は用紙Pの中央基準搬送の基準線に対して左右に対称的に配置されている。
窓穴38(L・R)は、図7に示すように、それぞれ、アセンブリ10の上面部に対向して位置しており、且つ、装置に使用可能な最小幅の用紙を通紙した際における左側の非通紙領域幅WLと右側の非通紙領域幅WRとに対応して位置している。本実施例において、窓穴38(L・R)の幅寸法(長さ寸法)W38はそれぞれ115mm[(330mm-100mm)/2]である。
送風冷却機構30はダクト32を有する。ダクト32は左側と右側にそれぞれ左右方向に長い2つのダクト32(L・R)を有する。ダクト32(L・R)は下面側にそれぞれ上面板25Uの窓穴38(L・R)に対応する左右方向に長い送風口(排気口)31(L・R)を有する(図12・図14)。ダクト32(L・R)の上面側はそれぞれ吸気口面として開放されている。
左側ダクト32Lの内部には、このダクト32Lに冷却風を送風する2つの左側冷却ファン33(L1・L2)が左と右に並べて配設されている。また、左側ダクト32Lには、それぞれの冷却ファン33(L1・L2)の風を送風口へ31Lに導入するように、冷却ファン33(L1・L2)の間に対応する位置に仕切りが設けられている。また、右側ダクト32Rの内部には、このダクト32Rに冷却風を送風する右側冷却ファン33(R1・R2)が右と左に並べて配設されている。また、右側ダクト32Rにも、同様に、冷却ファン33(R1・R2)の間に対応する位置に仕切りが設けられている。
また、送風冷却機構30は左側ダクト32Lの送風口31Lと右側ダクト32Rの送風口31Rの開口幅をそれぞれ調節する開口幅調節機構としてのシャッタ機構34を有する。シャッタ機構34は、左側ダクト32Lから送風される冷却風の冷却範囲を制限するための左側シャッタ機構34Lと、右側ダクト32Rから送風される冷却風の冷却範囲を制限するための右側シャッタ機構34Rで構成されている。
左側シャッタ機構34Lは、アセンブリ10の長手中央側に配置された内シャッタ部材36L(第1のシャッタ部材)と、アセンブリ10の長手方向外側に配置された外シャッタ部材37L(第2のシャッタ部材)の2枚のシャッタ部材を有する。また、左側シャッタ機構34Lは、内シャッタ部材36Lに回転可能に支持されたシャッターピニオンギア35Lと、駆動ピニオンギア41と、ダクト32Lに形成されたラック形状(ラック歯)
43Lと、シャッターモータM2と、で構成されている。
内シャッタ部材36Lはこれに形成されているガイド部47Lが送風口31Lの長手に沿って形成されたつば状の内シャッタ規制部45Lに嵌合してダクト32Lに配設されており、規制部45Lの長手に沿ってスライド移動可能である。
外シャッタ部材37Lはこれに形成されているガイド部48Lが送風口31Lの長手に沿って形成されたつば状の外シャッタ部材規制部46Lに嵌合してダクト32Lに配設されており、規制部46Lの長手に沿ってスライド移動可能である。
また、外シャッタ部材37Lは内シャッタ部材36Lの長手方向に形成されたつば状の外シャッタ部材規制部49Lに嵌合している。
同様に、右側シャッタ機構34Rは、アセンブリ10の長手中央側に配置された内シャッタ部材36R(第1のシャッタ部材)と、アセンブリ10の長手方向外側に配置された外シャッタ部材37R(第2のシャッタ部材)の2枚のシャッタ部材を有する。また、右側シャッタ機構34Rは、内シャッタ部材36Rに回転可能に支持されたシャッターピニオンギア35Rと、駆動ピニオンギア41と、ダクト32Rに形成されたラック形状(ラック歯)43Rと、シャッターモータM2と、を有する。
内シャッタ部材36Rはこれに形成されているガイド部47Rが送風口31Rの長手に沿って形成されたつば状の内シャッタ規制部45Rに嵌合してダクト32Rに配設されており、規制部45Rの長手に沿ってスライド移動可能である。
外シャッタ部材37Rはこれに形成されているガイド部48Rが送風口31Rの長手に沿って形成されたつば状の外シャッタ部材規制部46Rに嵌合してダクト32Rに配設されており、規制部46Rの長手に沿ってスライド移動可能である。
また、外シャッタ部材37Rは内シャッタ部材36Rの長手方向に形成されたつば状の外シャッタ部材規制部49Rに嵌合している。
上記の左右のシャッタ機構34(L・R)において、駆動ピニオンギア41とシャッターモータM2は両機構34(L・R)で共通の構成部材である。シャッタ機構34(L・R)の駆動ピニオンギア41の駆動源となるシャッターモータM2は左側ダクト32Lと右側ダクト32Rとの間の中央付近に配置されている。内シャッタ部材36(L・R)にはラック形状42(L・R)が設けられており、各々のラック形状42L・42Rは駆動ピニオンギア41と噛み合っている。
また、左右のダクト32(L・R)に設けられたラック形状43(L・R)は、各々の内シャッタ部材36(L・R)に回転可能に支持されるシャッターピニオンギア35(L・R)と噛み合うように配置されている。
シャッターモータ(パルスモータ)M2の出力ギアMGにより駆動ピニオンギア41が正逆回転駆動される。このギア41の正逆回転駆動に連動して左右のダクト32(L・R)の送風口31(L・R)を開閉するように左右のシャッタ機構34(L・R)のそれぞれの内外のシャッタ部材36(L・R)、37(L・R)が後述するように開閉移動する。即ち、本実施例においては駆動ピニオンギア41が左右のシャッタ機構34(L・R)の内外のシャッタ部材36(L・R)、37(L・R)に対して駆動源となるシャッターモータM2(出力ギアMG)の駆動を伝達する駆動部材である。
左右のシャッタ機構34(L・R)の内外のシャッタ部材36(L・R)、37(L・R)は、通紙される用紙Pの幅に対応した位置に移動するように制御される。これにより、左右のダクト32(L・R)の送風口31(L・R)、即ち、上面板25Uにおける左右の窓穴38(L・R)が通紙される用紙幅に対応した最適な開口幅に調整されて、アセンブリ10の非通紙部昇温する範囲に対して送風冷却がなされる。
シャッタ開閉動作に関して説明する。右側のシャッタ機構34Rの外シャッタ部材37Rには、折り曲げ縁部において、各種幅サイズの用紙に対応して決められた複数のセンサフラグ39(図3・図10において破線で囲まれている部分)が設けられている。また、そのセンサフラグ39のエッジ部を検出する第1と第2のフォトセンサ40A・40Bが右側ダクト32Rに固定して配置されている。その第1と第2のフォトセンサ40A・40Bによるセンサフラグ39のエッジ部検知情報が図9のようにA/Dコンバータ300を介して制御回路部100に入力される。
本実施例において、上記のセンサフラグ39と第1と第2のフォトセンサ40A・40Bがシャッタの開口位置を検知する検知手段である。制御回路部100は外部ホスト装置200等から入力した、使用する用紙の幅サイズ情報に対応したセンサフラグ39のエッジ部が第2のフォトセンサ40Bで検出されるようにシャッターモータM2をシャッターモータ駆動回路400によって制御する。即ち、シャッターモータM2を正回転制御(CW)または逆回転制御(CCW)して、左右のシャッタ機構34L・34Rを駆動させる。
そして、第2のフォトセンサ40Bにより、通紙使用される用紙Pの幅サイズ情報に対応したセンサフラグ39のエッジ部が検出された時点で、その時間を起点として数msec間だけシャッターモータM2の駆動し、停止させる。これにより、左右のシャッタ機構34(L・R)の外シャッタ部材37(L・R)の外側のエッジ部が、通紙使用される用紙の幅に対応した位置に移動される。
次に、本実施例の定着装置6における左右の冷却ファン33(L1・L2、R1・R2)の動作について説明する。画像形成時に、定着装置6に通紙使用可能な最大幅の用紙Pのサイズよりも幅の小さいサイズの用紙を連続定着した場合、非通紙域の温度が上昇する。第3サーミスタ19bは、非通紙部域に対応するフィルム部分の内面温度を検知している。
制御回路部100は第3サーミスタ19bが予め定めた閾値温度以上の温度を検知したら、シャッターモータ駆動回路400(図9)を制御する。即ち、シャッターモータM2により左右のシャッタ機構34(L・R)の内外のシャッタ部材36(L・R)、37(L・R)を連続通紙されている幅狭用紙の幅に対応した位置に移動させる。また、制御回路部100は、冷却ファン駆動回路500(図9)を制御して、左右のダクト32(L・R)における冷却ファン33(L1・L2、R1・R2)の動作を開始させる。
これにより、アセンブリ10の非通紙部が冷却ファンの冷却風により冷却されることで、定着装置6の非通紙域の温度上昇が抑制される。
そして、第3のサーミスタ19bの検知温度が予め定めた閾値温度よりも下降したら、冷却ファン33(L1・L2、R1・R2)の動作を停止させる。この冷却ファンの第3のサーミスタ19bの検知温度によるON-OFF制御の温度レンジは、冷却ファンの動作状況により、変更するように制御されている。
本実施例での冷却ファン33(L1・L2、R1・R2)のON-OFF制御の温度レンジは、例えば、B4サイズ用紙(縦送り:257mm×364mm)を連続通紙した場合には次のように制御している。
すなわち、通紙中に、第3のサーミスタ19bの検知温度が200℃(動作開始温度)になったら冷却ファン33(L1・L2、R1・R2)の動作を開始させる。そして、アセンブリ10の非通紙部が冷却ファンの冷却風により冷却されて、第3のサーミスタ19bの検知温度が190℃(動作停止温度)に降温したら冷却ファンの動作を停止させる。
(シャッタ開閉動作構成)
次に、本実施例の特徴となるシャッタの開閉動作の構成に関して、図1、図15から図19を用いて、詳細に説明する。左側のシャッタ機構34Lと右側のシャッタ機構34Rにおけるシャッタ開閉動作については同様な動きである。ただし、動作方向は左右のシャッタ機構34(L・R)において互いに逆関係となる。以下においては、右側のシャッタ構成34Rのシャッタ開閉動作を代表して詳細に説明することとする。
まず、シャッタの開動作について説明する。図15は、シャッタ機構34Rを吸気側から見た図(機構34Rを内側から見た図)である。図16はシャッタ機構34Rを送風口側から見た図(機構34Rを外側から見た図)である。また、図17には、内シャッタ部材36R、外シャッタ部材37R、及び、ダクト32Rの関係を示す。
図15の(a)と図16の(a)はシャッタ機構34Rのシャッタ全閉状態時を示している。この状態において、ダクト32Rの送風口31Rは全閉位置(閉じ位置)に移動している内シャッタ部材36R及び外シャッタ部材37Rにより全幅に亘って閉鎖されている。
即ち、送風口31Rとこれに対向している窓穴38Rとが全幅に亘って非連通状態に保持されている。シャッタ機構34Rは、フィルム13からの輻射熱によって冷却ファン33が故障するのを防ぐために、冷却ファン33(L1・L2、R1・R2)による冷却が不要な場合(例えば最大幅の用紙を定着しているとき)にこの全閉位置に位置する。
尚、本実施例では、全閉位置にて送風口31Rは十分に閉鎖されている構成としたが、わずかに隙間が空いている状態を閉じ位置としてもよい。すなわち、内シャッタ部材36R及び外シャッタ部材37Rが制御回路部100の制御により可動できる範囲の中で、最も送付口31Rが遮蔽されている状態を、閉じ位置と定義する。
このシャッタ全閉状態において、シャッターモータM2がCW方向(図15、図16において矢印D方向)に回転駆動される。そうすると、シャッターモータM2の出力ギアMGに噛み合った駆動ピニオンギア41が矢印E方向(図15では時計回り)に回転する。そして、駆動ピニオンギア41と噛み合った、内シャッタ部材36Rに形成されたラック形状42Rが駆動ピニオンギア41の回転によって力を受ける。
図17に示すように、内シャッタ部材36Rに形成されたガイド部47Rがダクト32Rのアセンブリ10の長手方向に形成されたつば状の内シャッタ規制部45Rに嵌合している。そのために、内シャッタ部材36Rは、図15の(b)、図16の(b)ように、アセンブリ10の長手方向の中央側に向かって矢印F方向に移動する。
内シャッタ部材36Rは、シャッターピニオンギア35Rを回転可能に支持する支持部361Rを有し、内シャッタ部材36Rがアセンブリ10の長手方向に移動することで、支持部361Rも一体となってアセンブリ10の長手方向に移動する。内シャッタ部材36Rの支持部361Rに回転可能に支持されたシャッターピニオンギア35Rは、ダクト32Rに形成されたラック形状43Rと噛み合っている。
ラック形状43Rはダクトに固定されているので、内シャッタ部材36Rがアセンブリ10の長手方向に移動してもラック形状43Rは、動かない。そのため、内シャッタ部材36Rがアセンブリ10の長手方向に移動することで、シャッターピニオンギア35Rは、図15のように矢印G方向(図15では反時計回り)に回転する。そして、外シャッタ部材37Rのラック形状44Rは、シャッターピニオンギア35Rに噛み合っている。
そのため、シャッターピニオンギア35Rが内シャッタ部材36Rと共に移動しながら回転すると、ラック形状44Rは、シャッターピニオンギア35Rを介してアセンブリ10の長手方向に移動する力を受ける。これによって、内シャッタ部材36Rが長手方向(F方向)に移動するのと連動して、外シャッタ部材37Rも同じ方向(H方向)に移動する。
外シャッタ部材37Rに形成されたガイド部48Rがダクト32Rのアセンブリ10の長手方向に形成されたつば状の外シャッタ部材規制部46Rに嵌合している。また、外シャッタ部材37Rが内シャッタ部材36Rのアセンブリ10の長手方向に形成されたつば状の外シャッタ部材規制部49Rに嵌合している。そのために、外シャッタ部材37Rは、アセンブリ10の長手中央方向(矢印H方向)に内シャッタ部材36Rの移動量に加えて、シャッターピニオンギア35Rの回転により移動させられた量、すなわち内シャッタ部材36Rの2倍の移動量だけ移動する。
これによって、外シャッタ部材37Rと内シャッタ部材36Rは、互いに重なる領域が増えるように開かれる。ここで、定着フィルム13の長手方向に関し、外シャッタ部材37Rと内シャッタ部材36Rにより遮蔽されていない送風口31Rの幅を開口幅と称する。
また、閉じ位置(本実施例では、全閉位置)に位置するときに、外シャッタ部材37Rが送風口31Rを覆っている面を面α、閉じ位置(本実施例では、全閉位置)に位置するときに、内シャッタ部材36Rが送風口31Rを覆っている面を面βとする。このとき、開口幅と外シャッタ部材37Rと内シャッタ部材36Rの関係は次のようになる。
開口幅が第1の幅であるとき、外シャッタ部材37Rと内シャッタ部材36Rは互いに重なる領域が存在するので、図16(b)のように定着フィルム側からみたとき、面αの一部と面βの一部がオーバーラップする。そして、開口幅が第1の幅より大きい第2の幅であるとき、外シャッタ部材37Rと内シャッタ部材36Rはさらに互いに重なる領域が増える。よって、開口幅が第2の幅であるとき、図16(b)のように定着フィルム側からみたとき、面αの一部と面βの一部がオーバーラップしつつ、そのオーバーラップする面積が第1の幅のときよりも大きい。
言換すると、内シャッタ部材36Rは送風口31Rを閉じるための閉じ位置にて送風口を閉じるための第1の面を有する。外シャッタ部材37Rは送風口31Rを閉じるための閉じ位置にて送風口を閉じるための第2の面を有する。内シャッタ部材36R及び外シャッタ部材37Rは、閉じ位置と、送風口の開口幅を第1の幅にするための第1の開き位置と、送風口の開口幅を第1の幅よりも大きい第2の幅にするための第2の開き位置と、を取り得るように移動可能である。
そして、第2の開き位置に位置するときに第1の面と第2の面が互いに重なり合う面積は、第1の開き位置に位置するときに第1の面と第2の面が互いに重なり合う面積よりも大きくなるように移動する。
上記のような内シャッタ部材36Rと外シャッタ部材37Rの開き移動動作によりダクト32Rの送風口31Rがアセンブリ10の長手端部側から長手中央側に向って開口されていく。その開口幅に対応して送風口31Rと窓穴38Rとが連通する。
内シャッタ部材36Rと外シャッタ部材37Rが十分に閉じた位置にいるときは、外シャッタ部材37Rのガイド部48Rの大半はダクト32Rのつば状の外シャッタ部材規制部46Rに規制されている。内外のシャッタ部材36R・37Rの上記の開き移動動作により送風口31Rの開口量が大きくなるのに伴って、外シャッタ部材37Rに形成されたガイド部48Rのダクト42Rに形成された外シャッタ部材規制部46Rに規制される部分が短くなっていく。そして、内シャッタ部材36Rのアセンブリ10の長手方向に形成されたつば状の外シャッタ部材規制部49Rに規制される部分が長くなっていく。
次に、シャッタの閉動作について説明する。シャッタ閉動作は、上記のシャッタ開動作の逆の動作である。シャッタ閉動作の詳細を以下に示す。図18はシャッタ機構34Rを吸気側から見た図(機構34Rを内側から見た図)であり、シャッタが全閉と全開のほぼ中間の開き位置にある状態時を示している。また、図19はシャッタ機構34Rを送風口側から見た図(機構34Rを外側から見た図)であり、図18と同様にシャッタが全閉と全開のほぼ中間の開き位置にある状態時を示している。
図18と図19のシャッタ開き状態において、シャッターモータM2がCCW方向(矢印J方向)に回転駆動される。そうすると、シャッターモータM2の出力ギアMGに噛み合った、駆動ピニオンギア41が矢印K方向に回転する。駆動ピニオンギア41と噛み合った、内シャッタ部材36Rに形成されたラック形状42Rが駆動ピニオンギア41の回転することによって力を受ける。
内シャッタ部材36Rに形成されたガイド部47Rがダクト32Rのアセンブリ10の長手方向に形成されたつば状の内シャッタ規制部45Rに嵌合している。そのために、内シャッタ部材36Rはアセンブリ10の長手方向の外側に向かって矢印L方向に移動する。
内シャッタ部材36Rがアセンブリ10の長手方向に移動することで、内シャッタ部材36Rの支持部361Rも移動する。内シャッタ部材36Rの支持361Rに回転可能に支持されたシャッターピニオンギア35Rは、ダクト32Rに形成されたラック形状43Rと噛み合っている。ラック形状43Rはダクトに固定されているので、内シャッタ部材36Rがアセンブリ10の長手方向に移動してもラック形状43Rは、動かない。そのため、内シャッタ部材36Rがアセンブリ10の長手方向に移動することで、シャッターピニオンギア35Rは、矢印M方向(図18において時計回り)に回転する。
そして、外シャッタ部材37Rのラック形状44Rは、シャッターピニオンギア35Rに噛み合っている。そのために、シャッターピニオンギア35Rが回転すると、ラック形状44Rは、シャッターピニオンギア35Rを介してアセンブリ10の長手方向(L方向)に移動する力を受ける。これによって、内シャッタ部材36Rが長手方向に移動するのと連動して、外シャッタ部材37Rも同じ方向(N方向)に移動する。
外シャッタ部材37Rに形成されたガイド部48Rがダクト32Rのアセンブリ10の長手方向に形成されたつば状の外シャッタ部材規制部46Rに嵌合している。また、外シャッタ部材37Rは内シャッタ部材36Rのアセンブリ10の長手方向に形成されたつば状の外シャッタ部材規制部49Rに嵌合している。
そのために、外シャッタ部材37Rはアセンブリ10の長手方向の外側に向かって矢印N方向に内シャッタ部材36Rの移動量に加えて、シャッターピニオンギア35Rの回転により移動させられた量、即ち、内シャッタ部材36Rの2倍の移動量だけ移動する。これによって、外シャッタ部材37Rと内シャッタ部材36Rは、互いに重なる領域が減るように閉じられる。
上記のような内シャッタ部材36Rと外シャッタ部材37Rの閉じ移動動作によりダクト32Rの送風口31Rがアセンブリ10の長手中央側から長手端部側に向って閉口されていく。その閉口幅に対応して送風口31Rと窓穴38Rとが連通する。
内シャッタ部材36Rと外シャッタ部材37Rが十分に開いた位置にいるときは、外シャッタ部材37Rのガイド部48Rが十分に内シャッタ部材36Rのアセンブリ10の長手方向に形成されたつば状の外シャッタ部材規制部49Rに規制されている。内外のシャッタ部材36R・37Rの閉じ移動動作により送風口31Rの開口量が小さくなるに伴って、外シャッタ部材37Rに形成されたガイド部48Rの、内シャッタ部材36Rに形成された外シャッタ部材規制部49Rに規制される部分が短くなっていく。そして、ダクト32Lに形成された外シャッタ部材規制部46Rに規制される部分が長くなっていく。
本実施例では、左右のシャッタ機構34L・34Rのシャッタ全閉状態においては、図1の(a)に示すように、330mm幅までの範囲を覆う。シャッタ全開状態においては、図1の(b)に示すように、100mmの範囲まで開口することが可能となる。よって、幅サイズ330mmからはがき幅100mmまでの用紙を通紙した場合においても、シャッタ位置を調整し、冷却範囲を冷却調整することが可能になる。
よって、本実施例の送風冷却機構30ように、使用する用紙の幅サイズに応じて移動する左右の各々シャッタ機構34(L・Rの)シャッタを複数枚のシャッタ部材が開閉動作時に重なり合いながら移動する構成にする。これによって、シャッタの開口動作に伴って、シャッタが冷却規制する面積が縮小し、シャッタの最大開口幅を拡大することが可能となり、冷却ファンによる定着部材端部の冷却範囲の制御幅を拡大することが可能になる。よって、はがきや封筒といった小サイズ用紙を通紙した際にも生産性を下げることなく、通紙することが可能になる。
《実施例2》
図20は本実施例2における送風冷却機構の要部の模式図である。本実施例2においても実施例1と同様に定着装置6に対する用紙Pの搬送は用紙幅中心のいわゆる中央基準搬送でなされる。そのため、実施例1の図14と同様に、ダクト32にはダクト長手方向において一端部側の送風口31Lと他端部側の送風口31Rを有する。そして、その各送風口31(L・R)の開口幅を装置に導入される用紙の幅方向長さに応じて変更するシャッタが配置される。
本実施例2においては、その一端部側と他端部側のシャッタはそれぞれ1枚ずつのシャッタ部材90(L・R)で構成されている(片側1枚のシャッタ構成)。図20の(a)はそのシャッタ部材90(L・R)が移動機構(不図示)により全閉位置に移動されており、送風口31(L・R)がそれぞれシャッタ部材90(L・R)により十分に閉じられている状態時を示している。
図20の(b)は(a)の全閉位置に位置しているシャッタ部材90(L・R)がそれぞれ移動機構(不図示)によりダクト32の長手中央部の全開位置に移動されており、送風口31(L・R)がそれぞれ十分に開かれている状態時を示している。
本実施例2においては、シャッタの開口動作にとも伴って一端部側と他端部側の2枚のシャッタ部材90(L・R)が内外に重なるように動作する。図20の(b)は一端部側と他端部側のシャッタ部材90(L・R)がそれぞれダクト30の長手中央部の全開位置にて一端部側のシャッタ部材90Lが外側、他端部側のシャッタ部材90Rが内側となって重なっている。
従って、本実施例2のシャッタ構成の場合も、実施例1と同様に、シャッタが冷却規制範囲を小さくしながら、シャッタの開口動作を行うことが可能となり、シャッタによるダクト開口幅を拡大することが可能となる。
《実施例3》
実施例1や同2では、定着装置6に対する用紙Pの搬送は用紙幅中心の所謂中央基準搬送でなされる。即ち、用紙Pの通紙領域がアセンブリ10の長手中央位置を基準として通紙される。図21のように片側端部を基準に用紙の通紙領域がある場合(用紙の搬送が用紙の一側端を基準とするいわゆる片側基準搬送)においても、実施例1と同2と同様に、アセンブリ10の非通紙部昇温が発生する。
この場合においても、実施例1と同2と同様に送風冷却機構部30を配置することで非通紙部昇温の抑制が可能となる。但し、実施例1と同2とは異なり、図21のように片側他方のみにダクト32Aが必要となるために、シャッタ機構34も片側のみで十分となる。
本実施例においては、実施例1で示す右側のシャッタ機構34Rと同様な構成で、アセンブリ10の長手方向に延長した内シャッタ部材36A、外シャッタ部材37Aで構成する。これにより、1枚のシャッタ構成で開口動作を行った場合よりも、送風冷却機構部30を小サイズにすることが可能となる。
《実施例4》
送風冷却機構において、左右のシャッタ部材が1枚組のシャッタ構成ではシャッタ部材はダクトに対して摩擦を発生させながら摺動することになる。そのため、参考例として、図41に示す様に、ダクト132と左シャッタ部材134Lおよび右シャッタ部材134Rとの摩擦を小さくするために、左シャッタ部材134Lと右シャッタ部材134RにそれぞれリブC、リブDを設けることが考えられる。それによって、両シャッタ部材134
(L・R)はリブCとリブDの面だけでダクト132の送風口面(面E)、ダクトガイド面(面F)と摺動するため、摺動抵抗を小さくすることができる。
これに対して、前述の実施例1~3の送風冷却機構30のシャッタ構成においては、シャッタの最大開口幅を拡大するために、内シャッタ部材と外シャッタ部材を備える。内外のシャッタ部材は重なり合いながら移動するため、内シャッタ部材と外シャッタ部材の間に摺動抵抗が発生する恐れがある。そのため、シャッタ部材とダクトの摺動抵抗を小さくするだけでなく、内シャッタ部材と外シャッタ部材の摺動抵抗を小さくすると、より好ましい。
しかしながら、内シャッタ部材と外シャッタ部材の間にシャッタの開閉方向に沿ったリブを設けた場合は、そのリブにより内外のシャッタ部材の間に隙間が生じ、隙間から風が漏れ、通紙域を冷却してしまう恐れがある。
本実施例4と次の実施例5はその対策例である。実施例4や5の送風冷却機構30であれば、内シャッタ部材を以下の実施例で説明する形状にすることで内シャッタ部材と外シャッタ部材の隙間から通紙領域に向かって風が漏れるのを抑制しつつ、外シャッタ部材との接触面積を小さくすることができる。それによって摺動抵抗を小さくすることができる。
(内シャッタ部材と外シャッタ部材の構成)
本実施例4における内シャッタ部材と外シャッタ部材の構成について説明する。前述の図13に示す様に、左右の各シャッタ機構34(L・R)において、内シャッタ部材36
(L・R)は駆動ピニオンギア41とラック42(L・R)で連結されている。駆動ピニオンギア41がシャッターモータM2によって回転駆動されることで駆動が伝達されて内シャッタ部材36(L・R)が移動する。
また、内シャッタ部材36(L・R)にはそれぞれシャッターピニオンギア35(L・R)が設けられている。これらのシャッターピニオンギア35(L・R)はそれぞれ外シャッタ部材37(L・R)のラック44(L・R)とダクト32(L・R)の固定ラック43(L・R)に噛み合って連結している。
シャッターピニオンギア35(L・R)は、内シャッタ部材36(L・R)が移動する際にダクト32(L・R)の固定ラック43(L・R)に沿って回転する。その回転によって、内シャッタ部材36(L・R)の移動方向と同じ方向に外シャッタ部材37(L・R)のラック44(L・R)を押し出す構成になっている。
それによって、外シャッタ部材37(L・R)は内シャッタ部材36(L・R)の2倍の移動量でダクト32(L・R)の送風口31(L・R)を移動することができる。この構成により、外シャッタ部材37(L・R)は内シャッタ部材36(L・R)よりも排気口外側に移動し、左右それぞれ2枚のシャッタ部材でダクト排気口全長域の開口幅を調整することができる。
図22に内シャッタ部材36(L・R)をダクト送風口側からみたときの状態(内シャッタ外面図)、図23に外シャッタ部材37(L・R)をダクト吸気口側から見たときの状態(外シャッタ部材内面図)を示す。
シャッタ開閉時、外シャッタ部材37(L・R)の面52の裏面と内シャッタ部材36
(L・R)の面50は摺動しながら移動することになる。そこで、摺動摩擦を減らすために、図22に示す様に、外シャッタ部材37(L・R)の面52の裏面と対向する領域51は、領域60に対し、外シャッタ部材37(L・R)の面52の裏面からの距離が離れるように、凹形状になっている。
本実施例では、内シャッタ部材36(L・R)のダクト送風口側の面50及び領域60に対して領域51の厚みを薄くしている。これによって、領域51は、外シャッタ部材37(L・R)の面52の裏面と接触する面積が小さくなるため、摺動摩擦を低減させることができる。一方、面50と領域60は、外シャッタ部材37(L・R)の面52の裏面と摺動する。
ここで、当接部60は、内シャッタ部材36(L・R)の開閉方向と直交する方向(図22のX軸方向)において、送風口31(L・R)の開口を覆うように連続して、設けることが好ましい。内シャッタ部材36(L・R)の開閉方向と直交する方向において不連続であると、その隙間から、通紙領域に向かって冷却ファン33(L1・L2、R1・R2)の風が漏れる恐れがある。
また、当接部60は、閉じ位置において、外シャッタ部材37(L・R)とオーバーラップする領域に設けることが好ましい。即ち、図22に示すように、当接部60は、フィルムの長手方向に関し、内シャッタ部材36(L・R)の外側の端部に設けることが好ましい。内シャッタ部材36(L・R)及び外シャッタ部材37(L・R)の開閉動作に伴い、常に外シャッタ部材37(L・R)に当接できるためである。
尚、当接部60だけではなく、内シャッタ部材36(L・R)及び外シャッタ部材37
(L・R)の開閉方向に平行な向きに摺動する面として、面50を設ける。これにより、開閉動作時に、内シャッタ部材36(L・R)が傾いて領域51が外シャッタ部材37(L・R)と摺動するのを抑制することができる。
ここで、領域51に対する当接部60及び面50の高さは、0.5mm以上とする。
《実施例5》
図24~図26は本実施例5の構成説明図である。図24に内シャッタ部材36(L・R)をダクト送風口側からみたときの状態(内シャッタ部材外面図)、図25に外シャッタ部材37(L・R)をダクト吸気口側から見たときの状態(外シャッタ部材外面図)を示す。
実施例3では、図22に示す様に、内シャッタ部材36(L・R)の駆動ピニオンギア41からより離れた方の端部の領域60は厚みを薄くしていない。すなわち、本実施例4では、内シャッタ部材36(L・R)の領域51、領域60の間に、摺動抵抗を減らすための凹凸はなくてもよい。
そして、本実施例4では、図24のように、外シャッタ部材37(L・R)の面52(外シャッタ部材の摺動面側)において、駆動ピニオンギア41側の端部70にリブ53を設けている。リブ53の厚みは、内シャッタ部材36(L・R)の面50と面51の厚みの差と同じ値にすることが好ましい。ここで、面52に対するリブ53の高さは、0.5mm以上とする。
ここで、リブ53は、外シャッタ部材37(L・R)の開閉方向と直交する方向(図24のX軸方向)において、送風口31(L・R)の開口を覆うように連続して、設けることが好ましい。外シャッタ部材37(L・R)の開閉方向と直交する方向において不連続であると、その隙間から、通紙領域に向かって冷却ファン33(L1・L2、R1・R2)の風が漏れる恐れがある。
また、リブ53は、閉じ位置において、内シャッタ部材36(L・R)とオーバーラップする領域に設けることが好ましい。即ち、図25に示すように、リブ53は、フィルムの長手方向に関し、外シャッタ部材37(L・R)の内側の端部に設けることが好ましい。内シャッタ部材36(L・R)及び外シャッタ部材37(L・R)の開閉動作に伴い、常に内シャッタ部材36(L・R)に当接できるためである。
即ち、複数枚のシャッタ部材同士(本実施例では外シャッタ部材と内シャッタの2枚のシャッタ部材同士)が摺動しながら開閉動作を伴う機構の場合において、少なくとも1枚のシャッタ部材が摺動面から厚みを薄くした面を摺動面側に持つ。そして、その対向にあるシャッタ部材が摺動面から厚みを厚くした面を摺動面側に持つことを特徴としている。
実施例3の構成の場合、内シャッタ部材36(L・R)の駆動ピニオンギア41からより離れた方の端部60の厚みを厚く保つことで、内シャッタ部材36(L・R)と外シャッタ部材37(L・R)の隙間を塞いでいる。それにより冷却ファン33(L1・L2、R1・R2)の風が内シャッタ部材36(L・R)と外シャッタ部材37(L・R)の隙間から漏れることが防止される。即ち、ファンの風が図25に示す矢印Sの向きに漏れることによってアセンブリ10の非通紙域だけでなく通紙域に風が当たり温度が下がることを防いでいる。
本実施例5の構成の場合、内シャッタ部材36(L・R)の駆動ピニオンギア41からより離れた方の端部60の厚みを薄くし、外シャッタ部材37(L・R)の駆動ピニオンギア41側端部70にリブ53を設ける。この構成により、内シャッタ部材36(L・R)と外シャッタ部材37(L・R)の隙間を塞いでいる。これにより、冷却ファン33(L1・L2、R1・33R2)の風が上記の隙間から、図26に示す矢印Sの向きに漏れて、アセンブリ10の非通紙域だけでなく通紙域に風が当たり温度が下がることを防ぐことができる。
《実施例6》
送風冷却機構30において、駆動ピニオンギア41に対して左右のシャッタのラック42(L・R)の位置がずれていると、左右のシャッタによるダクト送風口31(L・R)の開口幅が異なってしまう。例えば、片側のシャッタは開口部を十分に閉じているが、もう片側のシャッタは開口部が閉じ切れていないということが発生する。そのため、駆動ピニオンギア41に対して左右のシャッタのラック42(L・R)の位相を合わせて組み立てる必要がある。
そのため、参考例として、図42に示す様にすることが考えられる。左右のシャッタがそれぞれ1枚構成の場合の左シャッタ部材134Lと右シャッタ部材134Rの組み立てを考える。駆動ピニオンギア41に設けられた印410aと410bに対して、左シャッタ部材134Lのラック142Lに設けられた印420Lと右シャッタ部材134Rのラック142Rに設けられた印420Rを目視で合わせる(△の頂点の位置を対向にする)。
しかしながら、実施例1のように、シャッタの最大開口幅を拡大するために左右にそれぞれ複数枚のシャッタ部材を備えた送風冷却機構30においては次のような事情がある。即ち、最も内側にあるシャッタ部材の位相がずれると、それに追従して移動する外側のシャッタ部材のずれ量が図42の参考例のシャッタ機構に比べて大きくなる。また、片側の複数のシャッタ部材についてもそれぞれ位相のずれがあると、シャッタ部材間に隙間が発生したり、開口幅を閉じきれないということが発生したりする。
このようにシャッタ部材の枚数が増えると位相合わせが必要な個所が増えるだけでなく、より精度が必要になるが、図42の参考例の様に目視によって位相合わせを行おうとすると、作業性がよくなく、位相のずれが発生しやすいという課題がある。
本実施例6はその対策構成例である。本実施例のようなシャッタ機構構成もしくはシャッタ機構の組み立て方法であれば、左右にそれぞれ複数のシャッタ部材を持つ構成であっても、左右のシャッタ部材の位相を合わせて組み立てる際に、図42の参考例の方法よりも作業性を向上させることができる。そして、精度が良い位相合わせを行いつつ組み立てることができる。
(片側二枚組シャッタ構成の組み立て)
本実施例6における送風冷却機構30の構成と組み立て方法について説明する。実施例1における送風冷却機構部30は左右のシャッタ機構34(L・R)にそれぞれ内シャッタ部材36(L・R)と外シャッタ部材37(L・R)の2枚ずつのシャッタ部材を持つ
(片側二枚組シャッタ構成)。そのため、全4枚のシャッタ部材がダクト32(L・R)の送風口31(L・R)に対して所定の位置に移動し、かつ、左右対称に移動するために、組み立て時に4枚のシャッタ部材の位相を合わせる必要がある。
組み立て時の位相合わせを容易に行うために、図27の(a)に示すシャッタ組み立て用の治具101を使用する。治具101はベース治具101aと中央治具101bで構成されている。図27の(b)に示すように、ベース治具101aの長手中央部は溝穴部105とされており、この溝穴部105に対して中央治具101bが嵌め込まれてベース治具101aから取り外し可能(着脱可能)に装着される。
中央治具101bの上面側(表面側)には4本のピン102(a・b・c・d)が配置されている。ピン102aは後述するように左側シャッタ機構34Lの内シャッタ部材36Lと外シャッタ部材37Lの位相合わせに使用される。ピン102bは後述するように右側シャッタ機構34Rの内シャッタ部材36Rと外シャッタ部材37Rの位相合わせに使用される。また、ピン102cとピン102dはそれぞれ後述するように内シャッタ部材36Lのラック42Lと内シャッタ部材36Rのラック42Rと駆動ピニオンギア41とダクト32L・32Rの位置決めに使用される。
図27の(b)に示すように、ベース治具101aの溝穴部105の面には2つのボス103(a・b)が設けられている。図27の(c)は中央治具101bの下面側(裏面側)を見ている図である。中央治具101bの下面側には上記のボス103a、103bにそれぞれ対応する2つの穴104(a・b)が設けられている。中央治具101bをベース治具101aの溝穴部15に取り付ける際は、上記のボス103aと穴104a及びボス103bと穴104bをそれぞれ対応させて嵌合させる。これにより中央部治具101bが溝穴部15に対してずれ止めされて装着される。
組み立ての際は、図28の(a)のように、左側シャッタ機構34Lの内シャッタ部材36Lを外シャッタ部材37Lの内側に嵌め入れる。この場合、内シャッタ部材36Lの外シャッタ部材規制部49Lを外シャッタ部材37Lのガイド48Lに沿ってスライドして嵌め入れる。これにより両シャッタ部材36L・37Lを重ね合わせた状態に組み立てる。
また、同図の(b)のように、右側シャッタ機構34Rの内シャッタ部材36Rを外シャッタ部材37Rの内側に嵌め入れる。この場合、内シャッタ部材36Rの外シャッタ部材規制部49Rを外シャッタ部材37Rのガイド48Rに沿ってスライドして嵌め入れる。これにより両シャッタ部材36R・37Rを重ね合わせた状態に組み立てる。
上記のようにして重ね合わせて組み立てた内シャッタ部材36(L・R)と外シャッタ部材37(L・R)について、吸気口面側(シャッタ内面側)を上、送風口面側(シャッタ外面側)を下とする。そして、左右の組み立て体を、図29に示す様に、内シャッタ部材36Lのラック42Lが内シャッタ部材36Rの吸気口面側よりも上側に、内シャッタ部材36Rのラック42Rが内シャッタ部材36Lの吸気口面側よりも上側になるように交差させて配置する。
このとき、内シャッタ部材36Lの位置決め穴352Lと外シャッタ部材37Lの位置決め穴351Lの位置を略同心とし、また、内シャッタ部材36Rの位置決め穴352Rと外シャッタ部材37Rの位置決め穴351Rの位置を略同心とする。
この状態で、図30に示す様に、ベース治具101aに中央治具101bを装着した治具101の中央治具101bに対して左側シャッタ機構34Lと右側シャッタ機構34Rを取り付ける。このとき取り付け要領として、
1)治具101のピン102aが、略同心に位置している外シャッタ部材37Lの位置決め穴351Lと内シャッタ部材36Lの位置決め穴352Lに下から上に入って貫通するように
2)治具101のピン102bが、略同心に位置している外シャッタ部材37Rの位置決め穴351Rと内シャッタ部材36Rの位置決め穴352Rに下から上に入って貫通するように
3)治具101のピン102cが、内シャッタ部材36Lのラック42Lの位置決め穴353Lに下から上に入って貫通するように
4)治具101のピン102dが、内シャッタ部材36Rのラック42Rの位置決め穴353Rに下から上に入って貫通するようにして取り付ける。
次に、図31示す様に、内シャッタ部材36Lのシャッターピニオンギア軸354Lと内シャッタ部材36Rのシャッターピニオンギア軸354Rに、それぞれシャッターピニオンギア35L・35Rを取り付ける。
シャッターピニオンギア35(L・R)は、それぞれ、外シャッタ部材37Lのラック44Lと外シャッタ部材37Rのラック44Rに噛み合って連結する。そして、内シャッタ部材36(L・R)が移動する際に、内シャッタ部材36Lと内シャッタ部材36Rの移動方向と同じ方向に向かって外シャッタ部材37Lのラック44Lと外シャッタ部材37Rのラック44Rを押し出す構成になっている。
そのため、外シャッタ部材37Lと外シャッタ部材37Rは内シャッタ部材36Lと内シャッタ部材36Rの2倍の移動量で、ダクト32Lの送風口31Lとダクト32Rの送風口31Rを移動することができる。
この構成により、外シャッタ部材37Lと外シャッタ部材37Rは、ダクト32Lの送風口31Lとダクト32Rの送風口31Rにおいて、内シャッタ部材36Lと内シャッタ部材36Rよりも外側に移動する。即ち、左右それぞれ2枚のシャッタでダクト32L・32Rの送風口31L・31Rの全長域の開口幅を調整することができる。
また、図31に示す様に、駆動ピニオンギア41を取り付ける。図32に示す様に、駆動ピニオンギア41は、シャッターモータM2の出力ギアGMと噛み合う歯車411と、内シャッタ部材36Lのラック42Lと内シャッタ部材36Rのラック42Rに噛み合う歯車412と、中心穴413と、を持つ段ギアである。また、駆動ピニオンギア41は、中央治具101bのピン102cとピン102dが入る穴414(a・b)を持つ。
駆動ピニオンギア41を取り付ける際は、穴414aと414bに中央治具101bのピン102cとピン102dが入るように駆動ピニオンギア41の位置を揃え、歯車412を中央治具101b側に向けて取り付ける。なお、ピン102cとピン102dを、穴414aと414bのどちらに入れても構わない。
次に、ダクト32(L・R)を取り付ける。図33はダクト32(L・R)の送風口側の面(ダクト下面)を示している。実施例1の図14等で既に説明したように、ダクト32には、アセンブリ10を冷却するための風が通る送風口31(L・R)が設けられている。また、ダクト32には、内シャッタ部材36Lの規制部45L、内シャッタ部材36Rの規制部45R、外シャッタ部材37Lの規制部46L、外シャッタ部材37Rの規制部46Rが設けられている。
また、図33に示すように、ダクト32には、シャッターピニオンギア35Lと噛み合うラック43L、シャッターピニオンギア35Rと噛み合うラック43R、駆動ピニオンギア軸80が設けられている。また、駆動ピニオンギア軸80の傍には、治具101のピン102cとピン102dが入る穴81(a・b)が設けられている。
そして、図28~図32の手順・要領にて中央治具101bに左右のシャッタ機構34L・34Rを取り付けた治具101に対して図33のダクト32を、図34のように駆動ピニオンギア軸80を向けて対向させる。そして、ラック43Lと同43Rが、シャッターピニオンギア35Rと同35Lに連結するように、ダクト32の治具101に対する対向方向を調整する。
そして、ダクト32の穴81(a・b)に、それぞれ中央治具101bのピン102cとピン102dが入り、駆動ピニオンギア41の中心穴413にダクト32の駆動ピニオンギア軸80が入るよう位置を揃えながらダクト32を治具101に取り付ける。図35はダクト32を治具101に取り付けた状態を示している。
このようにして、ダクト32を治具101に取り付けた後に、図36のように、中央治具101bを内シャッタ部材36、外シャッタ部材37、駆動ピニオンギア41、ダクト32ごとベース治具101aから取り外す。
そして、ダクト32から内シャッタ部材36と外シャッタ部材37と駆動ピニオンギア41が落ちないように、中央治具101bとダクト32で、内シャッタ部材36と外シャッタ部材37と駆動ピニオンギア41を挟むようにして持ち反転させる。この反転体を、図37に示す様に、ベース治具101a上に中央治具101bごと置く。
次に、図38に示す様に、中央治具101bだけを、内シャッタ部材36、外シャッタ部材37、駆動ピニオンギア41、ダクト32からピン102(a・b・c・d)を抜いて取り外す。
続いて、図39に示す様に、外シャッタ部材37(L・R)をそれぞれダクト32(L・R)の送風口31(L・R)が閉じる矢印Q方向にスライドさせる。これにより、内シャッタ部材36Lと内シャッタ部材36Rを連動して移動させ、内シャッタ部材36Lと内シャッタ部材36Rの間隔を広げる。このとき内シャッタ部材36Lと内シャッタ部材36Rの間隔は、後述するシャッタ移動規制部材82が内シャッタ部材36Lと内シャッタ部材36Rの間に入る以上に広げる。
そして、図40に示す様に、シャッタ移動規制部材82を駆動ピニオンギア41上に取り付け、ビス等の締結部材でダクト32の駆動ピニオンギア軸80に固定する。シャッタ移動規制部材82は駆動ピニオンギア41がダクト32から外れないよう抑える役割を持つ。また、同規制部材82は内シャッタ部材36(L・R)と外シャッタ部材37(L・R)の可動域を制限する。この制限により、内シャッタ部材36(L・R)と外シャッタ部材37(L・R)がダクト32(L・R)から外れることを防止する役割を持つ。
内シャッタ部材36(L・R)と外シャッタ部材37(L・R)を取り外す場合は、シャッタ移動規制部材82を外し、外シャッタ部材37(L・R)の位置を固定部材82の位置より内側にスライドさせる。これにより、連動して内シャッタ部材36(L・R)もスライド移動し、ダクト32(L・R)の内シャッタ規制部45(L・R)から内シャッタ部材36(L・R)のガイド47(L・R)が外れるため、取り外すことができる。
上記した送風冷却機構30の構成および組み立て方法をまとめると次の通りである。
(1)記録材上の画像を加熱する定着部材10を有する定着装置6に用いられる送風冷却機構30である。定着部材10の設定された領域を冷却するための送風口31を有するダクト32と、送風口31の開口幅を装置に導入される記録材Pの幅方向長さに応じて変更すシャッタと、シャッタに駆動を伝える駆動部材41と、を有する。
シャッタは複数枚のシャッタ部材36・37にて構成されており、シャッタの開口動作に伴って複数枚のシャッタ部材が移動することによってシャッタの送風口31の開口幅を変更する面の面積が縮小する構成である。
ダクト32と複数枚のシャッタ部材36・37と駆動部材41にはそれぞれに所定の位置に、組み立ての際に複数枚のシャッタ部材36・37と駆動部材41の位相合わせのための位置決め用の穴81・351・352・353・414が配設されている。
(2)上記(1)の送風冷却機構の組み立て方法であって、所定の位置に複数のピン102を有し、ダクト32と複数枚のシャッタ部材36・37と駆動部材41を一義的に位置決めさせる治具101を用いる。ダクト32と複数枚のシャッタ部材36・37と駆動部材41のそれぞれ配設されている位置決め用の穴を対応するピン102に係合させて位置決めすることで、複数枚のシャッタ部材36・37と駆動部材41の位相合わせをする。
以上の様に、送風冷却機構30の組み立てにおいて、組み立て治具101を使用し、内シャッタ部材36(L・R)と外シャッタ部材37(L・R)と駆動ピニオンギア41の位相合わせを行いながら組み立てる。これにより、シャッタの位相合わせを図41の参考例の方法よりも簡潔に行うことができる。
《その他の実施例》
(1)以上、本発明の実施例について説明したが、各実施例で例示した寸法・条件等の数値は一例であって、この数値に限定されるものではない。本発明を適用できる範囲において、数値は適宜選択できる。また、本発明を適用できる範囲において実施例に記載の構成を適宜変更してもよい。例えばローラ定着方式、IH定着方式の定着装置と実施例の様な送風冷却機構とを組み合わせても良い。
(2)複数枚のシャッタ部材を3枚以上にすることもできる。
また、シャッタ部材として展開・畳み込み可能な蛇腹式部材(アコーデオン式部材)を用いることもできる。この蛇腹式シャッタもの開口動作に伴ってシャッタの送風口31の開口幅を変更する面の面積が縮小する。
(3)実施例に示したフルム加熱方式の定着装置6におけるフィルム13は、ヒータ11と断熱ホルダ12によってその内面を支持され、加圧ローラ20によって駆動される構成に限られない。例えば、フィルム13は、複数のローラに架け渡されてこれらの複数のローラのいずれかによって駆動されるユニット方式であってもよい。
(4)フィルム13とニップ部Nを形成する加圧部材20は、ローラ部材には限られない。例えば、複数のローラにベルトを架け渡した加圧ベルトユニット(これも定着部材である)を用いてもよい。
(5)定着装置6として用紙上に形成された未定着トナー像を加熱して定着する装置を例にして説明したがこれに限られない。例えば、用紙に仮定着されたトナー像を加熱し再定着することにより画像のグロス(光沢度)を増大させる装置(この場合も定着装置と呼ぶことにする)であってもよい。即ち、例えば、半定着済みのトナー画像を用紙に定着させる装置や、定着済みの画像に対して加熱処理を施す装置であってもよい。したがって、画像形成装置に搭載される定着装置6は、例えば、画像の光沢や表面性を調節する表面加熱装置であってもよい。
(6)プリンタAを例に説明した画像形成装置は、モノクロの画像を形成する画像形成装置に限られず、カラーの画像を形成する画像形成装置でもよい。また画像形成装置は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、複写機、FAX、及び、これらの機能を複数備えた複合機等、種々の用途で実施できる。
(7)以上の説明では、便宜上、記録材(シート)Pの扱いを、通紙、給紙、排紙、通紙部、非通紙部など紙に纏わる用語を用いて説明するが記録材は紙に限定されるものではない。記録材Pは、画像形成装置によってトナー像が形成され得るシート状の記録媒体(メディア)である。例えば、定型あるいは不定型の普通紙、薄紙、厚紙、上質紙、コート紙、封筒、葉書、シール、樹脂シート、OHPシート、印刷用紙、フォーマット紙等が挙げられる。