JP7262502B2 - 冷間工具鋼および該鋼を用いた工具及び金型 - Google Patents
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そこで、これまでに硬度・耐摩耗性と靭性・疲労特性とを兼備することを志向した提案がなされている。
質量%で、
C:0.60~1.00%、
Si:0.50~1.30%、
Mn:0.20~0.70%、
Cr:5.0~12.0%、
Mo:0.50~3.00%、
Mo+1/2W:0.50~3.00%(なお、Wは任意的成分である。)、
V:0.10~1.00%、
残部Fe及び不可避不純物からなり、
鍛錬成形比4.0S以上に圧鍛したときに
式(1):α=([Cr]a-[Cr]b)/[Cr]
式(2):β=([Mo+0.5W]a-[Mo+0.5W]b)/[Mo+0.5W]
式(3):γ=([C]a-Ceqa)-([C]b-Ceqb)
における式(1)の値αが0.8以下、式(2)の値βが1.4以下、式(3)の値γが1.0以下となる、冷間工具鋼である。
ただし、式(1)~(3)中の[ ]の元素表記は、
鍛錬成形比4.0S以上に圧鍛したときの中周部(D/4部)における、
[元素] :当該元素の添加質量%、
[元素]a:当該元素の濃化部の質量%、
[元素]b:当該元素の非濃化部の質量%、のことであり、
C当量のCeqa及びCeqbは、
Ceqa=0.06×[Cr]a+0.063×[Mo]a+0.033×[W]a+0.2×[V]a、
Ceqb=0.06×[Cr]b+0.063×[Mo]b+0.033×[W]b+0.2×[V]b、
であり、
ここに濃化部とは偏析部の断面組織において面積が20μm2以上の一次炭化物を含まない基地部(マトリクス)をいう。
Cは、鋼中への固溶および炭化物形成にて工具鋼に必要な高硬さを付与させる成分である。この観点からCは少なくとも0.60%は必要である。Cは1.00%を超えると、粗大炭化物を多く形成し易くなり、濃化部の偏析を助長し、靭性を低下させる。そこで、Cは0.60~1.00%とする。好ましくはCは0.70~0.90%である。
Siは製鋼での脱酸効果、焼入性、固溶強化に寄与する成分である。この観点からSiは少なくとも0.50%は必要である。Siは1.30%を超えると靭性が低下する。そこで、Siは0.50~1.30%とする。好ましくはSiは0.60~1.20%である。
Mnは製鋼での脱酸効果、焼入性に寄与する成分である。この観点からMnは少なくとも0.20%は必要である。Mnは0.70%を超えると靭性が低下する。そこで、Mnは、0.20~0.70%である。好ましくはMnは0.25~0.60%である。
Crは焼入性の向上と焼戻硬さの確保に必要な成分である。Crが5.0%未満であると、これらの効果が不十分である。他方、Crが12.0%を超えると、粗大炭化物を多く形成し易くなり、濃化部の偏析を助長し、靭性を低下させる。そこで、Crは5.0~12.0%である。好ましくはCrは6.5~10.0%である。さらに、より好ましくは、Crは6.9~9.0%である。
Moは焼入性改善と、焼戻硬さ向上に寄与する成分である。WはMoと似た効果を奏し、焼入性改善と、焼戻硬さ向上に寄与する任意的付加的成分である。WがMoと同様の効果を得るためには、WはMoの1/2の量で換算してMoと置換することができる。そこで、Mo単体であってもよいが、MoにWが組み合わさってもよい。それらの効果を得るためには、Mo+1/2Wは少なくとも0.50%は必要である。Mo+1/2Wは3.0%を超えると左記の効果は飽和し、過剰添加は濃化部の偏析を助長し、靭性を低下させる。そこで、Mo+1/2Wの合計量は、0.50~3.00%であり、好ましくは、0.70~2.50%であり、さらに、より好ましくは、1.00~2.20%である。なおMoのみの場合は、Moは0.50~3.00%である。好ましくはMoは、0.70~2.50%であり、さらに、より好ましくは、Moは1.00~2.20%である。
Vは焼戻し時に微細かつ硬質な析出硬化物を形成し二次硬化に寄与する成分である。その効果を得るためにはVは少なくとも0.10%は必要である。他方、Vは1.00%を超えると、過剰となって粗大炭化物の形成を促し、靭性の低下を招く。そこで、Vは0.10~1.00%とする。好ましくはVは0.20~0.80%である。さらに、より好ましくは、Vは0.40~0.70%である。
式(1):α=([Cr]a-[Cr]b)/[Cr]
式(2):β=([Mo+0.5W]a-[Mo+0.5W]b)/[Mo+0.5W]
式(3):γ=([C]a-Ceqa)-([C]b-Ceqb)
における式(1)の値αが0.8以下、式(2)の値βが1.4以下、式(3)の値γが1.0以下となる、冷間工具鋼である。
ただし、式(1)~(3)中の[ ]の元素表記は、
鍛錬成形比4.0S以上に圧鍛したときの中周部(D/4部)における、
[元素] :当該元素の添加質量%、
[元素]a:当該元素の濃化部の質量%、
[元素]b:当該元素の非濃化部の質量%、のことであり、
濃化部と非濃化部のCeq(C当量)は、それぞれ
Ceqa=0.06×[Cr]a+0.063×[Mo]a+0.033×[W]a+0.2×[V]a、
Ceqb=0.06×[Cr]b+0.063×[Mo]b+0.033×[W]b+0.2×[V]b。
ここで、濃化部とは、偏析部の断面組織において面積が20μm2以上の一次炭化物を含まない基地部(マトリクス)のことをいう。
さて、上に示した式(1)、式(2)、式(3)は、圧鍛した際のCr、Mo+0.5W、Cの濃化部と非濃化部における濃度の違い、すなわち偏析度合いを表すものである。それぞれの式で規定する上限値を超えると、偏析が激しくなり、靭性を阻害することとなる。焼入焼戻しにおける二次炭化物の析出分布量に大きな差が生じ、亀裂・割れの伝播を助長するからである。そこで、式(1)の値は、0.8以下とする。好ましくは、式(1)の値は0.7以下である。また、式(2)の値は1.4以下とする。好ましくは式(2)は1.2以下である。また、式(3)の値は1.0以下とする。好ましくは式(3)は0.8以下である。
※2:硬さの単位はHRC。1030℃で30分保持後に空冷による焼入れを実施。その後、500~570℃で60分保持後に空冷する焼戻しを2回繰り返した。
それらの硬さをロックウェル硬度計で測定し、最高硬さによる評価を行った。A+、A、B、Cの順に高い硬度を有する。61.0HRC以上を「A」とし、特に63.0HRC以上を「A+」と評価した。60.0HRC以上61.0HRC未満は「B」、60.0HRC未満は「C」と評価した。
※3:靭性はシャルピー衝撃試験にて評価した。試験片形状は10R-2mmCノッチ試験片とした。A+、A、Cの順に優れた靭性を有する。焼なまし材中周部より、鍛伸材長手方向と平行に約15mm×15mm×60mmの素材を割出し、最高硬さが得られた条件で焼入焼戻しを実施した。15.0J/cm2以上を「A」とし、特に22.0J/cm2以上を「A+」と評価した。15.0J/cm2未満は「C」と評価した。
各試験片について、1030℃で30分保持後に空冷による焼入れを実施した。その後、500~570℃で60分保持後に空冷する焼戻しを2回繰り返した。
それらの硬さをロックウェル硬度計で測定し、最高硬さによる評価を行った。A+、A、B、Cの順に高い硬度を有する。61.0HRC以上を「A」とし、特に63.0HRC以上を「A+」と評価した。60.0HRC以上61.0HRC未満は「B」、60.0HRC未満は「C」と評価した。
シャルピー衝撃試験にて靭性を評価した。試験片形状は10R-2mmCノッチ試験片とした。A+、A、Cの順に優れた靭性を有する。焼なまし材中周部より、鍛伸材長手方向と平行に約15mm×15mm×60mmの素材を割出し、最高硬さが得られた条件で焼入焼戻しを実施した。15.0J/cm2以上を「A」とし、特に22.0J/cm2以上を「A+」と評価した。15.0J/cm2未満は「C」と評価した。
比較例No.20とNo.21はSKD11鋼であるところ、Cが過多であることから、粗大な一次炭化物の凝集に加え、偏析度合いも顕著であるために靭性が低いものとなった。なお、500~570℃での焼戻しでは、60HRC程度の硬さにとどまることとなった。
比較鋼No.22はC量が過多であるため、非常に高い硬度が得られる一方で、式(1)の値が示すように、Crの偏析を助長し靭性が低いものとなった。
比較鋼No.23はC量が過少であるため、十分な硬度が得られなかった。
比較鋼No.24はSi量が過多であるため、マトリクスの延性が低下し、十分な靭性が得られなかった。
比較鋼No.25はMn量が過多であるため、マトリクスが脆化し、十分な靭性が得られなかった。
比較鋼No.26はCr量が過少であるため、十分な硬度が得られなかった。
比較鋼No.27はCr量が過多であるため、式(1)の値が示すようにCrの偏析が顕著になり、靭性が低いものとなった。
比較鋼No.28はMo量が過多であるため、式(2)の値が示すようにMoの偏析が顕著になり、靭性が低いものとなった。
比較鋼No.29はMo量が過少であるため、十分な硬度が得られなかった。
比較鋼No.30はV量が過少であるため、十分な硬度が得られなかった。
比較鋼No.31はV量が過多であるため、十分な靭性が得られなかった。
比較鋼No.32の化学成分値は本発明の範囲内であるが、式(1)の値が示すように偏析度合いが大きく、靭性が不足するものとなった。
Claims (3)
- 質量%で、
C:0.60~1.00%、
Si:0.50~1.30%、
Mn:0.20~0.70%、
Cr:5.0~12.0%、
Mo:0.50~3.00%、
Mo+1/2W:0.50~3.00%(なお、Wは任意的成分である。)、
V:0.10~1.00%、
残部Fe及び不可避不純物からなり、
鍛錬成形比4.0S以上に圧鍛したときに
式(1):α=([Cr]a-[Cr]b)/[Cr]
式(2):β=([Mo+0.5W]a-[Mo+0.5W]b)/[Mo+0.5W]
式(3):γ=([C]a-Ceqa)-([C]b-Ceqb)
における式(1)の値αが0.8以下、式(2)の値βが1.4以下、式(3)の値γが1.0以下となる、冷間工具鋼。
ただし、式(1)~(3)中の[ ]の元素表記は、
鍛錬成形比4.0S以上に圧鍛したときの中周部(D/4部)における、
[元素] :当該元素の添加質量%、
[元素]a:当該元素の濃化部の質量%、
[元素]b:当該元素の非濃化部の質量%、のことであり、
C当量のCeqa及びCeqbは、
Ceqa=0.06×[Cr]a+0.063×[Mo]a+0.033×[W]a+0.2×[V]a、
Ceqb=0.06×[Cr]b+0.063×[Mo]b+0.033×[W]b+0.2×[V]bであり、
ここに濃化部とは偏析部の断面組織において面積が20μm2以上の一次炭化物を含まない基地部(マトリクス)をいう。 - 請求項1に記載の冷間工具鋼を用いた工具。
- 請求項1に記載の冷間工具鋼を用いた金型。
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JP2021045004A JP7262502B2 (ja) | 2021-03-18 | 2021-03-18 | 冷間工具鋼および該鋼を用いた工具及び金型 |
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---|---|---|---|---|
JP2014145100A (ja) | 2013-01-28 | 2014-08-14 | Sanyo Special Steel Co Ltd | 合金添加量を低減した冷間工具鋼 |
JP2018003146A (ja) | 2016-07-08 | 2018-01-11 | 山陽特殊製鋼株式会社 | 優れた靭性及び高温強度を有する高硬度マトリクスハイス |
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2021
- 2021-03-18 JP JP2021045004A patent/JP7262502B2/ja active Active
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JP2014145100A (ja) | 2013-01-28 | 2014-08-14 | Sanyo Special Steel Co Ltd | 合金添加量を低減した冷間工具鋼 |
JP2018003146A (ja) | 2016-07-08 | 2018-01-11 | 山陽特殊製鋼株式会社 | 優れた靭性及び高温強度を有する高硬度マトリクスハイス |
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