JP7262353B2 - 脱イオン水の製造方法および製造システム - Google Patents
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Description
B(OH)3+H2O ⇔ B(OH)4 -+H+
イオン化していない分子(中性分子)の形態はB(OH)3であり、これはカチオン交換膜を容易に通過し得る。
電気式脱イオン水製造装置を用いて脱イオン水を製造する、脱イオン水の製造方法であって、
前記電気式脱イオン水製造装置が、
対向する陰極と陽極との間に少なくとも一つの脱塩処理部が設けられ、
前記脱塩処理部は、イオン交換体が充填された脱塩室と、該脱塩室の両隣に設けられる一対の濃縮室とを有し、前記一対の濃縮室のそれぞれに少なくともアニオン交換体が充填され、
前記脱塩室は、前記一対の濃縮室のうちの前記陰極側の濃縮室にカチオン交換膜を介して隣接するとともに、前記一対の濃縮室のうちの前記陽極側の濃縮室にアニオン交換膜を介して隣接し、
前記脱塩室に被処理水を通水して前記脱塩室から脱イオン水を得る電気式脱イオン水製造装置であり、
1μg-B/L以上のホウ素を含み、かつホウ素以外の全アニオン濃度が10μg-CaCO3/L以上である供給水を、少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室に供給する、脱イオン水の製造方法が提供される。
対向する陰極と陽極との間に少なくとも一つの脱塩処理部が設けられ、
前記脱塩処理部は、イオン交換体が充填された脱塩室と、該脱塩室の両隣に設けられる一対の濃縮室とを有し、前記一対の濃縮室のそれぞれに少なくともアニオン交換体が充填され、前記脱塩室は、前記一対の濃縮室のうちの前記陰極側の濃縮室にカチオン交換膜を介して隣接するとともに、前記一対の濃縮室のうちの前記陽極側の濃縮室にアニオン交換膜を介して隣接し、
前記脱塩室に被処理水を通水して前記脱塩室から脱イオン水を得る電気式脱イオン水製造装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置の、少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室に、1μg-B/L以上のホウ素を含み、かつホウ素以外の全アニオン濃度が10μg-CaCO3/L以上である供給水を供給するホウ素含有水供給手段と
を備える、脱イオン水の製造システムが提供される。
脱塩室23内には、被処理水に含まれるイオンを捕捉するために、イオン交換体(アニオン交換体および/またはカチオン交換体)が充填される。特に、被処理水に含まれるホウ素等の弱酸成分のアニオンを捕捉し、被処理水から除去する観点からは、脱塩室23に、少なくともアニオン交換体が充填されていることが好ましい。図1に示した例では、脱塩室23内には、アニオン交換体とカチオン交換体とが混床(MB)となって充填されている。しかし、アニオン交換体のみが脱塩室23に充填されていてもよい。あるいは、一つ以上のアニオン交換体床(アニオン交換体からなる床)と、一つ以上のカチオン交換体床(カチオン交換体からなる床)とが、脱塩室23に設けられていてもよい。この場合は、脱塩室から最終的に排出される処理水中の弱酸成分濃度を低くするために、被処理水が最後に通過するイオン交換体がアニオン交換体となる順序で、アニオン交換体床とカチオン交換体床が脱塩室に充填されていることが好ましい。アニオン交換体としては例えばアニオン交換樹脂(AER)が使用され、カチオン交換体としては例えばカチオン交換樹脂(CER)が使用される。
一対の濃縮室22および24にはそれぞれ、スケール生成を抑制するために、少なくともアニオン交換体、典型的にはアニオン交換樹脂(AER)が充填される。濃縮室22内および濃縮室24内のイオン交換体はそれぞれ、アニオン交換体からなっていてもよく、あるいは、アニオン交換体と、カチオン交換樹脂(CER)などのカチオン交換体とからなっていてもよい。濃縮室24内のイオン交換体のうち、アニオン交換体の割合は5割以上が好ましく、より好ましくは10割(全てアニオン交換体)である。濃縮室22内のイオン交換体のうちのアニオン交換体の割合についても同様である。
例えば、脱塩室23に、ホウ素およびシリカからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む被処理水を通水して、脱イオン水を製造することができる。脱塩室に供給する被処理水中のこれら成分の濃度は問わないが、例えば、被処理水のホウ素濃度が1μg-B/L以上の場合に本発明は好適である。被処理水のホウ素以外の全アニオン濃度も特に限定されないが、例えば10μg-CaCO3/L以上である。
少なくとも、陽極11に最も近い濃縮室22以外の濃縮室に供給する供給水、本形態では少なくとも濃縮室24に供給する供給水は、ホウ素を含み、かつホウ素以外の全アニオン濃度が10μg-CaCO3/L以上である。典型的には、陽極11に最も近い濃縮室22にも同様の水を供給することができる。したがって全ての濃縮室(22および24)に同様の供給水を供給することができる。ただし、陽極11に最も近い濃縮室22にはこれらの条件を満たさない供給水を供給してもよい。ホウ素以外の全アニオン濃度は、塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン、遊離炭酸、シリカ(SiO2、Si(OH)4、Si(OH)3O-)の合計濃度である。
10×100(CaCO3の分子量)/(2×35.5(Clの原子量))+10×100(CaCO3の分子量)/(2×62(NO3の分子量))=22.1
濃縮室(少なくとも、陽極11に最も近い濃縮室22以外の濃縮室24)に供給する供給水のホウ素濃度は特に限定されず、この供給水がホウ素を含んでいれば本発明の効果が得られる。例えば、一般的にはこの供給水のホウ素濃度は1μg-B/L以上、特には5μg-B/L以上である。また、濃縮室24から脱塩室23へのホウ素の移動を抑制する観点からは、この供給水のホウ素濃度は好ましくは50μg-B/L以下、より好ましくは20μg-B/L以下、さらに好ましくは10μg-B/L以下である。
一般的に、EDI装置の電流密度が高いほど、EDI装置の脱イオン性能は向上する。しかし、濃縮室24から脱塩室23へのホウ素の移動は、電流密度の増加に伴って増加する傾向がある。ホウ素濃度が低い処理水を得ようとする場合に、このようなホウ素の移動の影響が大きくなる。したがって、本発明は電流密度が高い場合に特に有用である。本発明によれば、例えば、電流密度が0.1A/dm2以上、特には1A/dm2以上の場合であっても、ホウ素濃度が例えば100ng-B/L未満、特には10ng-B/L未満、中でも1ng-B/L未満の処理水を安定して得ることが可能である。電流密度の上限値は、特に限定されないが、例えば2.0A/dm2とすることができる。EDI装置を複数用いる場合、それぞれのEDI装置において、電流密度を上記範囲にすることができる。処理水は、例えば、18MΩ・cm以上の水質を有する。
本発明に係る脱イオン水製造システムは、EDI装置と、ホウ素含有水供給手段とを備える。ホウ素含有水供給手段は、少なくとも、陽極11に最も近い濃縮室以外の濃縮室(濃縮室24)に、ホウ素を含み、かつホウ素以外の全アニオン濃度が10μg-CaCO3/L以上である供給水を供給する手段である。陽極11に最も近い濃縮室22にも、ホウ素含有水供給手段から同様の供給水を供給することができる。ホウ素含有水供給手段は、逆浸透膜を含むことができ、また、少なくとも、陽極11に最も近い濃縮室以外の濃縮室(濃縮室24の入口に、典型的には全ての濃縮室の入口に、逆浸透膜の透過側を連通させる流路を含むことができる。逆浸透膜の透過水として、ホウ素を含み、かつホウ素以外の全アニオン濃度が10μg-CaCO3/L以上である供給水を得、この供給水を前記流路を経て濃縮室に供給することができる。逆浸透膜として、脱イオン水製造の分野で公知のものを用いることができる。また、逆浸透膜に、脱イオン水製造の分野で公知の前処理を適宜施した水を供給することができる。
EDI装置を2段以上、被処理水の流れに関して直列に接続し、RO透過水を1段目のEDI装置の脱塩室および濃縮室に供給することができる。このとき、1段目のEDI装置の脱塩室23から得られる処理水を、2段目のEDI装置の濃縮室24に供給すると、1段目のEDI装置の濃縮室24よりも2段目のEDI装置の濃縮室24のほうがホウ素以外の全アニオン濃度が低いため、2段目のEDI装置において濃縮室24から脱塩室23へのホウ素の移動現象が顕著に起こりやすい。3段目以降も同様である。このような現象を避けるためには、2段目以降のEDI装置の濃縮室24にも、RO透過水を供給することが好ましい。すなわち、EDI装置を被処理水の流れに関して直列に2つ以上設ける場合、それぞれのEDI装置において、逆浸透膜の透過水を、濃縮室(少なくとも、陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室24。典型的には全ての濃縮室)への供給水として用いることが好ましい。そのために、それぞれのEDI装置の、濃縮室(少なくとも、陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室。典型的には全ての濃縮室)の入口に、前記逆浸透膜の透過側を連通させる流路(後述するライン110、112および113)を用いることができる。
図6に示す構成を有するEDI装置を用い、カチオン交換膜33を通してのホウ素の透過量を評価した。この装置は、次の点を除いて、図1に示す装置と同様の構成を有していた。ホウ素以外のアニオン成分としては、炭酸を使用した。
・脱塩室23の陽極側に位置する濃縮室が、陽極11を有し、陽極室を兼ねる濃縮室51であった。この濃縮室51にはカチオン交換樹脂を充填した。
・濃縮室51と脱塩室23とを隔てる膜として、アニオン交換膜ではなく、カチオン交換膜52を用いた。
・脱塩室23に、カチオン交換樹脂を充填した。ホウ素を捕捉しないカチオン交換樹脂を脱塩室23に充填することにより、脱塩室23からホウ素を排出しやすくなる。
・陰極室25の出口水を、濃縮室51に供給した。
・濃縮室24にホウ素および炭酸含有水を供給し、脱塩室23および陰極室25にホウ素を含まない水を供給した。
・濃縮室51:寸法 縦50×横40×厚さ10mm、CER充填
・脱塩室23:寸法 縦50×横40×厚さ10mm、CER充填
・濃縮室24:寸法 縦50×横40×厚さ10mm、AER充填
・陰極室25:寸法 縦50×横40×厚さ10mm、AER充填
・CER:強酸性カチオン交換樹脂(粒径:0.5mm、母体:スチレン・ジビニルベンゼン共重合体)
・AER:強塩基性アニオン交換樹脂(粒径:0.5mm、母体:スチレン・ジビニルベンゼン共重合体)
・ホウ素非含有水:超純水(比抵抗18.2MΩ・cm、ホウ素濃度20ng-B/L未満)
・ホウ素および炭酸含有水:上記ホウ素非含有水に、ホウ素を250μg-B/Lで添加し、かつホウ素以外の全アニオン濃度および全炭酸濃度が表1に示す値となるように炭酸を添加したもの
・各室から排出される水の流量:6L/h
・印加電流密度:1.0A/dm2。
なお、「ホウ素および炭酸含有水」は、上記のように超純水にホウ素および炭酸を添加したものなので、表1に示される各例において、ホウ素以外の全アニオン濃度は実質的に全炭酸濃度と等価である。
12 陰極
21 陽極室
22、24 濃縮室
23 脱塩室
25 陰極室
26 第1小脱塩室
27 第2小脱塩室
31、33、52 カチオン交換膜(CEM)
32、34 アニオン交換膜(AEM)
36 中間イオン交換膜(IIEM)
51 陽極室を兼ねる濃縮室
100 逆浸透膜装置
101 1段目のEDI装置
101a 1段目のEDI装置の脱塩室
101b 1段目のEDI装置の濃縮室
102 2段目のEDI装置
102a 2段目のEDI装置の脱塩室
102b 2段目のEDI装置の濃縮室
Claims (10)
- 電気式脱イオン水製造装置を用いて脱イオン水を製造する、脱イオン水の製造方法であって、
前記電気式脱イオン水製造装置が、
対向する陰極と陽極との間に少なくとも一つの脱塩処理部が設けられ、
前記脱塩処理部は、イオン交換体が充填された脱塩室と、該脱塩室の両隣に設けられる一対の濃縮室とを有し、前記一対の濃縮室のそれぞれに少なくともアニオン交換体が充填され、
前記脱塩室は、前記一対の濃縮室のうちの前記陰極側の濃縮室にカチオン交換膜を介して隣接するとともに、前記一対の濃縮室のうちの前記陽極側の濃縮室にアニオン交換膜を介して隣接し、
前記脱塩室に被処理水を通水して前記脱塩室から脱イオン水を得る電気式脱イオン水製造装置であり、
1μg-B/L以上のホウ素を含み、かつホウ素以外の全アニオン濃度が10μg-CaCO3/L以上である供給水を、少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室に供給する、脱イオン水の製造方法。 - 前記供給水の全炭酸濃度が10μg-CO2/L以上である、請求項1に記載の脱イオン水の製造方法。
- 前記供給水の全炭酸濃度が800μg-CO2/L以上である、請求項2に記載の脱イオン水の製造方法。
- 前記電気式脱イオン水製造装置を、0.1A/dm2以上の電流密度で運転する、請求項1~3のいずれか一項に記載の脱イオン水の製造方法。
- 前記脱塩室に充填されたイオン交換体が、少なくともカチオン交換体を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の脱イオン水の製造方法。
- 逆浸透膜の透過水を、前記供給水として用いる、請求項1~5のいずれか一項に記載の脱イオン水の製造方法。
- 前記電気式脱イオン水製造装置を、前記被処理水の流れに関して直列に2つ以上設け、
それぞれの電気式脱イオン水製造装置において、逆浸透膜の透過水を、前記供給水として用いる、請求項6に記載の脱イオン水の製造方法。 - 対向する陰極と陽極との間に少なくとも一つの脱塩処理部が設けられ、
前記脱塩処理部は、イオン交換体が充填された脱塩室と、該脱塩室の両隣に設けられる一対の濃縮室とを有し、前記一対の濃縮室のそれぞれに少なくともアニオン交換体が充填され、
前記脱塩室は、前記一対の濃縮室のうちの前記陰極側の濃縮室にカチオン交換膜を介して隣接するとともに、前記一対の濃縮室のうちの前記陽極側の濃縮室にアニオン交換膜を介して隣接し、
前記脱塩室に被処理水を通水して前記脱塩室から脱イオン水を得る電気式脱イオン水製造装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置の、少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室に、1μg-B/L以上のホウ素を含み、かつホウ素以外の全アニオン濃度が10μg-CaCO3/L以上である供給水を供給するホウ素含有水供給手段と
を備える、脱イオン水の製造システム。 - 前記ホウ素含有水供給手段が、
逆浸透膜と、
前記電気式脱イオン水製造装置の、少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室の入口に、前記逆浸透膜の透過側を連通させる流路と
を含む、請求項8に記載の脱イオン水の製造システム。 - 前記電気式脱イオン水製造装置が、前記被処理水の流れに関して直列に2つ以上接続され、
前記ホウ素含有水供給手段が、
それぞれの前記電気式脱イオン水製造装置の、少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室の入口に、前記逆浸透膜の透過側を連通させる流路を含む、請求項9に記載の脱イオン水の製造システム。
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