JP7261701B2 - 使用後活性炭の処理方法、及び四塩化チタンの製造方法 - Google Patents
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Description
「使用前活性炭」は、未使用の活性炭、又は四塩化チタンが捕捉されていない状態の活性炭を意味する。すなわち、使用前活性炭は四塩化チタンに含まれる不純物を捕捉可能である。
「使用後活性炭」は、四塩化チタンに含まれていた不純物、特に砒素やアンチモンが捕捉された活性炭である。使用後活性炭は四塩化チタンも捕捉された状態であってよい。
「破過」は、活性炭に砒素又はアンチモン等の不純物がそれ以上吸着されなくなった状態を意味する。すなわち、破過した活性炭は四塩化チタン中の不純物除去能が失われた活性炭である。
使用前活性炭に通液させる「四塩化チタン」は、砒素を0.1質量ppm以上含み、アンチモンを1.0質量ppm以上含んでいるものを意味する。公知の四塩化チタン製造装置に備わる精留塔の塔頂液又は塔底液はこの条件を満たす場合が多い。よって、使用前活性炭に通液させる「四塩化チタン」は、前記塔頂液又は塔底液としてよい。
砒素又はアンチモンを含有したチタン鉱石を使用して塩化炉で生成される四塩化チタンは、粗四塩化チタンと呼称される場合もあり、砒素又はアンチモン等の不純物が含有されている。四塩化チタンの製造においては、各設備を介して、四塩化チタンの不純物量が低減される。精留塔で精製された精製四塩化チタンは、酸化チタンや触媒の製造等に使用されることを勘案して、砒素又はアンチモン等の不純物の量が低減され、高純度であることが望まれている。
以下、各実施態様について、図面を用いて説明する。
本発明に係る使用後活性炭の処理方法の一実施形態においては、図1に示すように、熱処理工程S11と、アルカリ処理工程S21とを含む。以下、各工程を説明する。使用後活性炭は、四塩化チタンに含有される砒素又はアンチモン等の不純物の量を低減するために、使用前活性炭に液体四塩化チタンを通液することで得られる。該使用後活性炭は、例えば、砒素又はアンチモン等の不純物がそれ以上吸着されない破過した活性炭であってよい。
熱処理工程S11においては、使用後活性炭に残存した液体四塩化チタン(沸点:136.4℃)を気化させるため、当該使用後活性炭を140℃以上に加熱する。熱処理工程S11においては、大気中の水分と接触することにより発生する塩化水素ガスが外部に排出されることを抑制するという観点から、使用後活性炭から四塩化チタンを十分に排出させることが望ましい。熱処理工程を経ることにより、白煙の発生を抑制して、製造ラインで使用された使用後活性炭を安全に取り出すことができる。
なお、前記熱媒の温度又は流量は、容器内の温度を四塩化チタンの沸点以上に加熱できるように、容器内の容量を勘案して適宜調整すればよい。
なお、キャリアガスの流量は、使用後活性炭が充填された容器内の容量又は活性炭の量を勘案して適宜調整すればよい。
以上、熱処理工程S11を実施して使用後活性炭に残存する四塩化チタン量を効率的に低減できる。熱処理工程S11実施後は使用後活性炭を大気と接触させても白煙発生は良好に抑制される。すなわち、使用後活性炭を大気環境においてより安全に取扱い可能となる。
アルカリ処理工程S21においては、四塩化チタンからの不純物の分離に使用された使用後活性炭を、アルカリ処理液と接触させる。そうすることで、使用後活性炭中の砒素又はアンチモン等の不純物量を低減でき、不純物をアルカリ処理液に移行することができると考えられる。
例えば、アルカリ処理液としてアルカリ土類金属の水酸化物を含む処理液、特に水酸化カルシウム懸濁液を使用した場合、使用後活性炭が水酸化カルシウム懸濁液と接触すると、使用後活性炭中の砒素又はアンチモンは、水酸化カルシウム懸濁液に移行した後沈殿すると考えられる。その結果、使用後活性炭は砒素又はアンチモンが低減される。さらに、前記砒素又はアンチモンはアルカリ処理液中で濃化しにくいため、アルカリ処理液の処分も簡便である。なお、使用後活性炭が水酸化カルシウム懸濁液と接触すると、水に可溶な砒素又はアンチモンと水酸化カルシウム懸濁液との反応により水に不溶な砒素化合物又はアンチモン化合物が生成されると考えられる。よって、アルカリ処理液で処理された活性炭は、水に可溶な砒素量又はアンチモン量も低減されると考えられる。
また、アルカリ処理液としてアルカリ金属の水酸化物を含む処理液、特に水酸化ナトリウム溶液を使用した場合、使用後活性炭と水酸化ナトリウム溶液との接触により、使用後活性炭中の砒素又はアンチモンは、砒酸ナトリウム及びアンチモン酸ナトリウムとなり水酸化ナトリウム溶液中に移行すると考えられる。その結果、使用後活性炭は砒素又はアンチモンが低減される。
水酸化カルシウム懸濁液を使用した場合、水酸化ナトリウム溶液を使用した場合に比べて、使用後活性炭由来の砒素又はアンチモンの固形物としての回収が容易になる。
また、使用後活性炭をアルカリ処理液と接触させる際は、アルカリ処理液の温度管理が不要であり、例えば室温で実施すればよい。
更に、アルカリ処理液のモル濃度は、下限側としては0.10mol/L以上であることが好ましく、0.15mol/L以上であることがより好ましい。なお、アルカリ処理液の濃度は、上限側としては典型的に4.0mol/L以下である。アルカリ処理液が懸濁液である場合、懸濁液のモル濃度は、溶媒1L中に、懸濁液に含まれる成分量がすべて溶解していると仮定したときの全成分のモル数[mol]で表した濃度を意味する。すなわち、懸濁液のモル濃度は溶解成分量の濃度ではない。
図2Aに示す回収装置5は、洗浄装置1と分離設備2とを備える。図2Bに示す洗浄装置1は、容器本体10と、容器本体10の上部を閉じる上蓋20と、アルカリ処理液を供給するために容器本体の上部側に設けられた液供給管30と、使用後活性炭を供給するために上蓋20に設けられた供給孔40と、アルカリ処理液及び使用後活性炭を撹拌するために、上蓋20から緩衝材55を介して挿通された撹拌軸51と撹拌翼52を有する撹拌機50と、アルカリ処理液及び使用後活性炭を含有する混合スラリーを排出するために容器本体10の底部側に排出口61を有する液排出管60とを備える。
まず、容器本体10内には、液供給管30からアルカリ処理液が供給されて、供給孔40から使用後活性炭が供給される。そうすることで、容器本体10に貯留されたアルカリ処理液に使用後活性炭が浸漬される。次に、アルカリ処理液及び使用後活性炭を含有する混合スラリーMSは、撹拌翼52で撹拌される。そうすることで、アルカリ処理液が効率的に使用後活性炭と接触されるので、当該使用後活性炭から不純物が液側に移行しやすくなる。次に、混合スラリーMSは、バルブVを開けてポンプP1により排出口61から吸い上げられて液排出管60を通って分離設備2に送液される。送液された混合スラリーMSは、分離設備2に備わるろ過フィルター等により、ろ液と残渣に分離される。この残渣には、砒素又はアンチモン等の不純物量が低減された活性炭が主として含まれる。このアルカリ処理工程S21後の活性炭を処理後活性炭として回収できる。
なお、水酸化カルシウム懸濁液で使用後活性炭をアルカリ処理した場合、上記残渣には、処理後活性炭と、砒素又はアンチモン等の不純物を含有した消石灰とを含む。そこで、当該残渣から当該消石灰等の不純物を除去するため、遠心式、振動ふるい式、沈降式等の湿式分級により処理後活性炭と当該消石灰等の不純物とを分画することが可能である。
本発明に係る四塩化チタンの製造方法の一実施形態においては、先述した使用後活性炭の処理方法により、四塩化チタンからの不純物の分離に使用された使用後活性炭を、アルカリ処理液と接触させるアルカリ処理工程S21(図1参照。)を含む。すなわち、本発明の一実施形態においては、図3に示すように、分離工程S101と、熱処理工程S111(先述した熱処理工程S11に相当する。)と、アルカリ処理工程S121(先述したアルカリ処理工程S21に相当する。)と、再使用工程S131とを含む。なお、先述した使用後活性炭の処理方法と重複する説明を割愛する。
分離工程S101は、公知の製造方法により製造された四塩化チタンを使用前活性炭に通液させることで、四塩化チタンからの不純物を分離する。前記四塩化チタンは、上述のとおり、精留塔の塔頂側から回収した塔頂液、精留塔の塔底側から回収した塔底液であってよい。なお、分離工程において不純物量が低減された四塩化チタンは、例えば塩化炉により生成された四塩化チタンとともに精留塔に導入可能である。すなわち、本発明に係る四塩化チタンの製造方法の一実施形態においては、塔頂液や塔底液である四塩化チタンの再利用が可能である。
再使用工程S131においては、アルカリ処理工程S121で回収後、活性炭を再度、使用しうる。すなわち、先述した不純物を含む四塩化チタンをアルカリ処理によって再生させた使用前活性炭に通液させることで、再度、四塩化チタンから不純物を分離する。
まず、図4Aに示すように、タンク110と、蒸留ヘッド120と、活性炭(味の素ファインテクノ社製、商品名:ホクエツCL-H)が充填された活性炭充填層135を有する活性炭充填容器130と、丸底フラスコ140、170と、リービッヒ冷却器150と、アダプター160と、ポンプP2を備える蒸留装置100を組み立てた。次に、塩化炉および精留塔を使用する公知の製造方法により、塔底側から回収した液体四塩化チタンを得た。該四塩化チタンはアンチモンを28.0質量ppm、砒素を0.3質量ppm含んでいた。
試験例1においては、栓C1を閉じて栓C2を開けた後、アルゴンガス(アルゴン量99.99体積%)を使用後活性炭に0.1L/minで連続的に通気しながら、ヒーターで加熱して、活性炭充填容器内を140℃で2時間加熱保持した。その後、ヒーターによる加熱およびアルゴンガスの供給を停止し、活性炭充填容器130を空冷後、使用後活性炭を大気に開放した。その結果、目視にて白煙が確認されなかった。
試験例2においては、活性炭充填容器内を200℃で加熱保持したこと以外、試験例1と同様に実施した。その結果、目視にて白煙が確認されなかった。
試験例3においては、アルゴンガスを通気しなかったこと以外、試験例2と同様に実施した。その結果、目視にて微量の白煙が確認された。白煙の発生量は、注視した場合に微量目視される程度であった。
試験例4においては、アルゴンガスを通気せず、かつ活性炭充填容器内を加熱保持しなかったこと以外、試験例1と同様に実施した。その結果、目視にて大量の白煙が確認された。
試験例5においては、活性炭充填容器内を加熱保持しなかったこと以外、試験例1、2と同様に実施した。その結果、目視にて大量の白煙が確認された。
次に、実施例1~3及び比較例1~2においては、先述した試験例2に基づき熱処理した使用後活性炭を、表2に示すアルカリ処理条件に従って処理した。
実施例1においては、1000mL容器に70gの使用後活性炭を入れて、更に420gの1.0mol/L水酸化ナトリウム溶液を入れた。そして、室温にて24時間静置した。このとき、使用後活性炭に対する当該水酸化ナトリウム溶液の割合は、質量比で6であった。
<振蕩条件>
振蕩方式:往復振蕩
振蕩速度:振幅200回/min
振蕩時間:6時間
温度:室温
<遠心分離条件>
遠心加速度:3000G
遠心分離時間:20分
実施例2においては、1000mL容器に70gの使用後活性炭を入れて、更に420gの1.0mol/L水酸化ナトリウム溶液を入れた。そして、容器内を室温で撹拌機(撹拌速度:300rpm)にて2時間撹拌した。このとき、使用後活性炭に対する当該水酸化ナトリウム溶液の割合は、質量比で6であった。
実施例3においては、5000mL容器に80gの使用後活性炭を入れて、更に5040gの0.15mol/L水酸化カルシウム懸濁液を入れた。そして、容器内を室温で撹拌機(撹拌速度:300rpm)にて2時間撹拌した。このとき、使用後活性炭に対する当該水酸化カルシウム溶液の割合は、質量比で63であった。
比較例1においては、1000mL容器に60gの使用後活性炭を入れて、更に360gの脱イオン水を入れた。そして、室温にて24時間静置した。このとき、使用後活性炭に対する当該脱イオン水の割合は、質量比で6であった。
比較例2においては、1000mL容器に60gの使用後活性炭を入れて、更に360gの脱イオン水を入れた。そして、容器内を室温で撹拌機(撹拌速度:300rpm)にて2時間撹拌した。このとき、使用後活性炭に対する当該脱イオン水の割合は、質量比で6であった。
実施例1~3においては、比較例1~2と比べて、使用後活性炭をアルカリ処理液と接触させたことで、使用後活性炭に吸着した不純物である砒素やアンチモンをアルカリ処理液に所定量移行することができたと考えられる。また、実施例1~3においては、比較例1~2と比べて、アルカリ処理液で処理した活性炭は水に可溶な砒素量を低減できたと考えられる。特に、実施例3においては、使用後活性炭に水酸化カルシウム懸濁液を接触したことで、使用後活性炭に吸着した砒素が水酸化カルシウムと結合したことで、固形物となったと考えられる。
以上より、実施例1~3においてアルカリ処理された活性炭を、四塩化チタン中の不純物を分離するために再度使用しても良いし、廃棄することも可能であると考えられる。なお、実施例3では洗浄液(浸出液)成分の分析サンプルでも活性炭中残分(振盪後)の分析サンプルでも砒素量およびアンチモン量が少なかった。実施例3では浸漬処理中に固形分(沈殿)が生成しており、この固形分中に砒素およびアンチモンが移行したと考えられた。
2 分離設備
5 回収装置
10 容器本体
20 上蓋
30 液供給管
40 供給孔
50 撹拌機
51 撹拌軸
52 撹拌翼
55 緩衝材
60 液排出管
61 排出口
100、105 蒸留装置
110 タンク
120 蒸留ヘッド
130 活性炭充填容器
135 活性炭充填層
140、170 丸底フラスコ
150 リービッヒ冷却器
160 アダプター
180 ヒーター
C1、C2 栓
MS 混合スラリー
P1、P2 ポンプ
S101 分離工程
S11、S111 熱処理工程
S21、S121 アルカリ処理工程
S131 再使用工程
V バルブ
Claims (8)
- 四塩化チタンからの不純物の分離に使用された使用後活性炭を、アルカリ処理液と接触させるアルカリ処理工程を含み、
前記アルカリ処理液は、水酸化カルシウムを含む処理液である、使用後活性炭の処理方法。 - 前記使用後活性炭(A)に対する前記アルカリ処理液(B)の割合(B/A)は、質量比で3以上である、請求項1に記載の使用後活性炭の処理方法。
- 前記アルカリ処理工程の前に、前記使用後活性炭を140℃以上に加熱する熱処理工程を更に含む、請求項1又は2に記載の使用後活性炭の処理方法。
- 前記熱処理工程では、前記使用後活性炭に対しキャリアガスを連続的に通気する、請求項3に記載の使用後活性炭の処理方法。
- 前記キャリアガスは、アルゴン、ヘリウム、及び窒素からなる群から選ばれる1種以上を99体積%以上含む、請求項4に記載の使用後活性炭の処理方法。
- 前記不純物が砒素を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用後活性炭の処理方法。
- 前記アルカリ処理液は、溶媒が水である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用後活性炭の処理方法。
- 前記四塩化チタンは、精留塔から得られる塔頂液及び/又は塔底液である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用後活性炭の処理方法。
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