以下に、本発明の実施の形態に係る圧縮機駆動装置および空気調和装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る圧縮機駆動装置1を含む空気調和装置100の構成例を示す図である。空気調和装置100は、圧縮機駆動装置1と、冷凍サイクル30と、を備える。冷凍サイクル30は、圧縮機2a,2bと、四方弁32と、熱交換器33aと、膨張装置34と、熱交換器33bと、を備える。図1に示すように、冷凍サイクル30では、圧縮機2a,2b、四方弁32、熱交換器33a、膨張装置34、熱交換器33b、四方弁32、圧縮機2a,2bの順に冷媒配管を介して各構成が接続されることで冷媒回路31が構成される。
圧縮機2aは、冷凍サイクル30の冷媒を圧縮する圧縮機構21aと、圧縮機構21aを動作させる圧縮機モータ22aと、を備える。圧縮機2bは、冷凍サイクル30の冷媒を圧縮する圧縮機構21bと、圧縮機構21bを動作させる圧縮機モータ22bと、を備える。圧縮機モータ22a,22bは、U相、V相、およびW相の三相巻線を有する三相モータである。以降の説明において、圧縮機2a,2bを区別しない場合は圧縮機2と称し、圧縮機構21a,21bを区別しない場合は圧縮機構21と称し、圧縮機モータ22a,22bを区別しない場合は圧縮機モータ22と称することがある。圧縮機2a,2bは、同一の冷媒回路31上に、並列に接続されている。圧縮機2a,2bは、それぞれ別の冷媒回路に接続されていてもよい。また、空気調和装置100において、圧縮機2の台数は2台に限らず、3台以上であってもよい。なお、「冷媒」については「液冷媒」と表記してもよく、以降においても同様とする。
圧縮機駆動装置1は、冷凍サイクル30、具体的には、圧縮機2a,2bを駆動対象としている。本実施の形態では、圧縮機駆動装置1が、空気調和装置100の冷媒回路31を流れる冷媒を圧縮する例について説明するが、一例であり、これに限定されない。圧縮機駆動装置1は、空気調和装置100以外の装置、例えば、冷蔵庫、除湿器、ヒートポンプ装置を用いる給湯機、乾燥洗濯機、冷凍装置などの冷媒回路を対象にすることも可能である。また、図1に示す冷凍サイクル30の構成は一例であり、これに限定されない。図1とは異なる構成の冷凍サイクル30であっても、圧縮機駆動装置1を空気調和装置100に適用した場合と同様の効果が得られる。
圧縮機駆動装置1は、圧縮機モータ22aに電気的に接続され、圧縮機モータ22aを駆動するインバータ11aと、圧縮機モータ22bに電気的に接続され、圧縮機モータ22bを駆動するインバータ11bと、インバータ11a,11bを駆動する駆動信号を生成し、インバータ11a,11bを制御するインバータ制御部12と、を備える。インバータ11aは、電力源3に接続され、電力源3の電力を所望の電圧に変換して圧縮機モータ22aに印加する。具体的には、インバータ11aは、圧縮機モータ22aのU相の巻線に電圧Vuを印加し、V相の巻線に電圧Vvを印加し、W相の巻線に電圧Vwを印加する。また、インバータ11bは、電力源3に接続され、電力源3の電力を所望の電圧に変換して圧縮機モータ22bに印加する。具体的には、インバータ11bは、圧縮機モータ22bのU相の巻線に電圧Vuを印加し、V相の巻線に電圧Vvを印加し、W相の巻線に電圧Vwを印加する。以降の説明において、インバータ11a,11bを区別しない場合はインバータ11と称することがある。
電力源3は、電池、バッテリなどを含む直流電源でもよいし、三相または単相の交流電源から供給される交流電力を直流電力へ変換する周知のコンバータとリアクトルと平滑コンデンサとを含む交直電力変換器でもよい。周知のコンバータは、ダイオードブリッジでもよい。圧縮機駆動装置1は、先述の交直電力変換器とインバータ11との間の直流母線に周知のDC(Direct Current)-DCコンバータのような昇圧回路を挿入し、直流電圧を昇圧するような構成でもよい。また、圧縮機駆動装置1は、先述の交直電力変換器、昇圧回路などを含むような構成でもよい。
図2は、実施の形態1に係る圧縮機駆動装置1を構成するインバータ11の構成例を示す図である。図1から、圧縮機駆動装置1、および圧縮機駆動装置1に接続される構成の部分を抜粋したものである。図2に示すように、インバータ11a,11bは、ブリッジ結線されたスイッチング素子、および各スイッチング素子の各々に並列接続された還流ダイオードを有している。
インバータ11a,11bには、インバータ11a,11bを制御するインバータ制御部12が電気的に接続されている。インバータ制御部12は、インバータ11a,11bを駆動するための制御演算、制御処理などを行い、各インバータ11用の駆動信号であるPWM(Pulse Width Modulation)信号UP,VP,WP,UN,VN,WNを生成してインバータ11a,11bへ出力する。
インバータ11aでは、PWM信号UPによってスイッチング素子UP1が駆動され、PWM信号VPによってスイッチング素子VP1が駆動され、PWM信号WPによってスイッチング素子WP1が駆動され、PWM信号UNによってスイッチング素子UN1が駆動され、PWM信号VNによってスイッチング素子VN1が駆動され、PWM信号WNによってスイッチング素子WN1が駆動される。インバータ11aは、圧縮機モータ22aのU相、V相、およびW相の各巻線に印加する三相の電圧Vu,Vv,Vwを発生させる。
インバータ11bでは、PWM信号UPによってスイッチング素子UP2が駆動され、PWM信号VPによってスイッチング素子VP2が駆動され、PWM信号WPによってスイッチング素子WP2が駆動され、PWM信号UNによってスイッチング素子UN2が駆動され、PWM信号VNによってスイッチング素子VN2が駆動され、PWM信号WNによってスイッチング素子WN2が駆動される。インバータ11bは、圧縮機モータ22bのU相、V相、およびW相の各巻線に印加する三相の電圧Vu,Vv,Vwを発生させる。
インバータ制御部12は、インバータ11a,11bを個別に制御し、各々のインバータ11a,11bが出力すべき電圧を出力するためのPWM信号をインバータ11a,11bへ個別に出力する。
インバータ制御部12は、インバータ11a,11bを制御して圧縮機2a,2bを運転させる運転モードとして、通常運転モードおよび加熱運転モードの2つの運転モードを有している。インバータ制御部12は、通常運転モードでは、圧縮機モータ22a,22bを駆動するための駆動信号としてPWM信号を生成してインバータ11a,11bに出力する。インバータ制御部12は、加熱運転モードでは、通常運転モードとは異なり、運転待機中の圧縮機モータ22a,22bを回転駆動させないように通電することによって圧縮機モータ22a,22bの加熱を行い、圧縮機2a,2b内部に滞留した冷媒を温め気化させて排出させる。
インバータ制御部12は、加熱運転モードでは、圧縮機モータ22a,22bに直流電流、または圧縮機モータ22a,22bが追従できない高周波電流を流すことによって、圧縮機モータ22a,22bに発生する熱を利用して、圧縮機2a,2b内部に滞留した冷媒を加熱する。本実施の形態において、加熱運転モードによって圧縮機モータ22a,22bを回転駆動させないように通電して加熱を行うことを拘束通電と呼ぶ。また、圧縮機モータ22a,22bに直流電流を流して拘束通電を実施することを直流通電と呼ぶ。直流通電は、直流電流を用いた通電である。なお、インバータ制御部12は、直流通電に替えて、圧縮機モータ22a,22bに対して、規定された範囲内の運転周波数の低周波電流を用いた通電である低周波通電を実施してもよい。また、圧縮機モータ22a,22bに高周波電流を流して拘束通電を実施することを高周波通電と呼ぶ。高周波通電は、圧縮機モータ22が追従できない運転周波数の電流であって、低周波電流よりも高い運転周波数の高周波電流を用いた通電である。
次に、加熱運転モードにおけるインバータ制御部12の動作について説明する。インバータ制御部12は、圧縮機2a,2bの運転待機中において、インバータ制御部12の内部演算、または空気調和装置100を制御する外部からの不図示のコントローラなどの上位制御部からの信号に基づいて、圧縮機2a,2bへの加熱要否を判断する。インバータ制御部12は、加熱要と判断した場合、加熱運転モードに移行し、圧縮機モータ22a,22bに直流電流または圧縮機モータ22a,22bが追従できない高周波電流を流すように制御を行い、当該制御に基づく駆動信号をインバータ11a,11bへ出力する。インバータ制御部12は、加熱不要と判断した場合、インバータ11a,11bへ駆動信号を出力せず、インバータ11a,11bの運転待機状態を維持する。
インバータ制御部12は、圧縮機2a,2bへの加熱要否の判断において、圧縮機2a,2bが冷凍サイクル30の各構成の中で最も熱容量が大きく、周囲温度の上昇に対して遅れて温度が上昇するので相対的に温度が低くなること、および、最も温度の低い箇所で凝縮して溜まり込んでいく冷媒の性質を鑑みる。インバータ制御部12は、例えば、圧縮機2a,2bが運転待機状態に入ってからの周囲温度の変化に基づいて圧縮機2a,2b内部の冷媒滞留状態を推定し、推定結果に基づいて圧縮機2a,2bへの加熱要否を判断すればよい。インバータ制御部12は、周囲温度について、例えば、圧縮機2a,2bの周囲に設けられた図示しない周知の温度センサによって検出することが可能である。
次に、先述の通り定義した直流通電および高周波通電の詳細について、主に各通電方式におけるインバータ制御部12からインバータ11a,11bに出力される駆動信号であるPWM信号の生成方法について説明する。
圧縮機モータ22a,22bが三相モータの場合、一般的には、U相、V相、およびW相の各位相は、互いに120°(=2π/3)ずつ異なる。そのため、U相、V相、およびW相に対する三相の電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を、式(1)から式(3)のように位相が2π/3ずつ異なる正弦波と定義する。ここで、V*は電圧指令、θは電圧位相指令である。
Vu*=V*・sinθ …(1)
Vv*=V*・sin(θ-2π/3) …(2)
Vw*=V*・sin(θ+2π/3) …(3)
インバータ制御部12は、電圧指令V*および電圧位相指令θに基づいて、式(1)から式(3)を用いて各電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を算出する。インバータ制御部12は、各電圧指令Vu*,Vv*,Vw*と、規定された周波数で振幅値が±Vdc/2のキャリア信号(以下、基準信号とする)とを比較し、相互の大小関係に基づいて、PWM信号UP,VP,WP,UN,VN,WNを生成する。Vdcは、インバータ11a,11bから見て電力源3側に相当する直流母線側の電圧である。
なお、インバータ制御部12は、式(1)から式(3)を用いて単純な三角関数で各電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を求めているが、先述の方法以外の二相変調、三次高調波重畳変調、空間ベクトル変調といった他の方法を用いて、各電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を求めてもよい。
ここで、インバータ11aを例にして説明すると、電圧指令Vu*がキャリア信号よりも大きい場合には、PWM信号UPはスイッチング素子UP1をオン、PWM信号UNはスイッチング素子UN1をオフにする駆動信号とする。逆に、電圧指令Vu*がキャリア信号よりも小さい場合には、PWM信号UPはスイッチング素子UP1をオフ、PWM信号UNはスイッチング素子UN1をオンにする駆動信号とする。他の信号についても同様であり、インバータ制御部12において、電圧指令Vv*とキャリア信号との比較によってPWM信号VP,VNが決定され、電圧指令Vw*とキャリア信号との比較によってPWM信号WP,WNが決定される。
一般的なインバータは相補PWM方式を採用しており、インバータ11では、PWM信号UPとPWM信号UN、PWM信号VPとPWM信号VN、およびPWM信号WPとPWM信号WNは、周知の短絡防止時間を除くと、それぞれ理想的に互いに論理反転した関係となる。周知の短絡防止時間は、同相のP側およびN側のスイッチング素子が同時にオフになる期間、すなわちデッドタイムである。そのため、インバータ11において、各スイッチング素子のスイッチングパターンは全部で8通りとなる。
図3は、実施の形態1に係る圧縮機駆動装置1のインバータ11a,11bにおける8通りのスイッチングパターンを示す図である。図3では、PWM信号UP,VP,WP,UN,VN,WNについて、対応するスイッチング素子をオンさせるときの信号を「1」とし、対応するスイッチング素子をオフさせるときの信号を「0」としている。図3において、各スイッチングパターンで発生する電圧ベクトルにV0からV7の符号を付している。また、各電圧ベクトルの電圧の方向を±U,±V,±Wで表し、電圧が発生しない場合には0で表している。
ここで、+Uとは、U相を介して圧縮機モータ22へ流入し、V相およびW相を介して圧縮機モータ22から流出する+U相方向の電流を発生させる電圧である。また、-Uとは、V相およびW相を介して圧縮機モータ22へ流入し、U相を介して圧縮機モータ22から流出する-U相方向の電流を発生させる電圧である。±V,±Wについても同様である。
圧縮機駆動装置1は、図3に示すスイッチングパターンを組み合わせることによって、インバータ11a,11bから所望の電圧を出力し、圧縮機モータ22a,22bに電圧を印加することができる。圧縮機駆動装置1は、例えば、通常の圧縮動作を行う通常運転モードでは、数Hzから数kHzの範囲で動作させることが一般的である。ここで、圧縮機駆動装置1は、後述のように電圧位相指令θを固定値にすることによって、加熱運転モードにおける直流通電を行うことができる。また、圧縮機駆動装置1は、インバータ11のキャリア信号の周波数(以下、キャリア周波数とする)に同期して電圧位相指令θを180°反転させたり、電圧位相指令θを通常運転モードよりも高速で変化させたりすることによって、加熱運転モードにおける高周波通電を行うことができる。
図4は、実施の形態1に係る圧縮機駆動装置1の直流通電時の各信号波形の例を示す図である。電圧位相指令θ=0°に設定すると、図4に示すように、Vu*=0、Vv*=-0.5V*、Vw*=0.5V*となり、インバータ制御部12は、基準信号と比較した結果、図4に示すようなPWM信号UP,VP,WP,UN,VN,WNを生成し、インバータ11a,11bに出力する。インバータ11a,11bは、PWM信号UP,VP,WP,UN,VN,WNに従ってスイッチング素子をオンオフし、図3に示す電圧ベクトルV0(0電圧)、V1(+W電圧)、V5(-V電圧)、V7(0電圧)の電圧を出力する。これにより、インバータ11a,11bは、圧縮機モータ22a,22bに対して、平均的にW相を介して圧縮機モータ22a,22bへ流入し、V相を介して圧縮機モータ22a,22bから流出するような直流電流を流すことが可能となる。図4の例では、平均的に三相のうちの二相、ここではV相およびW相が通電相となり、残りの一相、ここではU相が無通電相となる。
インバータ制御部12は、電圧位相指令θ=0°以外の位相に固定し、三相とも通電相となるような直流電流を流してもよいが、三相のうち二相を通電相とすることで、単位時間当たりの発熱量の総量が上がり短時間で効果的に発熱させることができる。
ただし、インバータ制御部12は、電圧位相指令θを固定値で連続通電を行った場合、圧縮機モータ22a,22bの特定部分のみが発熱することになる。そのため、インバータ制御部12は、時間の経過と共に電圧位相指令θを逐次変化させることで、圧縮機モータ22a,22bを特定部分に偏ることがなく均一に加熱することができる。
インバータ制御部12は、無通電相を直流通電のタイミング毎に入れ替えるためには、電圧位相指令θの値を60°の整数倍に設定すればよく、逐次無通電相を遷移させることができ、圧縮機モータ22a,22bの部位による発熱ムラを抑制することができる。インバータ制御部12は、直流通電を実施する場合、三相のうち二相を通電相とし、残り一相を無通電相とし、無通電相になる相を入れ替えながら実施するように制御する。
図5は、実施の形態1に係る圧縮機駆動装置1の高周波通電時の各信号波形の例を示す図である。図5は、キャリア周波数に同期して電圧位相指令θを180°すなわちπ反転させることにより、キャリア周波数に等しい高周波通電を実施する例を示している。この場合、例えば、U相、V相、およびW相に対する三相の電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を、式(4)から式(6)のように表すことができる。
Vu*=V*・sinθ …(4)
Vv*=V*・sin(θ+π) …(5)
Vw*=V*・sin(θ+π) …(6)
インバータ制御部12は、式(4)から式(6)において、例えば、電圧位相指令θを図5におけるキャリア信号の山の頂点から谷の頂点に至るまでの期間において電圧位相指令θ=90°、山の頂点から谷の頂点に至るまでの期間において電圧位相指令θ=270°といったようにキャリア周波数fcの半周期、すなわち0.5/fc毎に電圧位相指令θを180°反転させる。これにより、インバータ制御部12は、キャリア信号に同期して反転する電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を得ることができる。
電圧位相指令θ=90°の場合はVu*=V*、Vv*=Vw*=-V*となり、電圧位相指令θ=270°の場合はVu*=-V*、Vv*=Vw*=V*となり、インバータ制御部12は、基準信号と比較した結果、図5に示すようなPWM信号UP,VP,WP,UN,VN,WNを生成し、インバータ11a,11bに出力する。インバータ11a,11bは、PWM信号UP,VP,WP,UN,VN,WNに従ってスイッチング素子をオンオフし、図3に示す電圧ベクトルV0(0電圧)、V4(+U電圧)、V7(0電圧)、V3(-U電圧)、V0(0電圧)の順で変化し、この変化が繰り返される電圧を出力する。
図6は、実施の形態1に係る圧縮機駆動装置1の高周波通電時の電圧ベクトルの変化、および各電圧ベクトルに対応するインバータ11の各スイッチング素子のオンオフ状態を示す図である。図6では、破線の丸で囲まれたスイッチング素子がオンであり、それ以外のスイッチング素子がオフであることを示している。また、図6において、電圧ベクトルの変化順序を示す太矢印の回転方向、すなわち電圧ベクトルV0→V4→V7→V3→V0の回転方向は、図5の例に対応している。
インバータ制御部12は、図6に示す例では、1キャリア周期で図6に示す4つの回路状態を遷移するように、PWM信号UP,VP,WP,UN,VN,WNを生成する。これにより、インバータ制御部12は、インバータ11a,11bを介して、1キャリア周期を1周期とする高周波電流を圧縮機モータ22a,22bに流すことができる。
図6に示すように、V0,V7ベクトル印加時、圧縮機モータ22a,22bの線間が短絡状態となり、インバータ11a,11bから電圧が出力されない。この場合、圧縮機モータ22a,22bのインダクタンスに蓄えられたエネルギーが電流となって短絡回路中を流れる。また、V4ベクトル印加時には、U相を介して圧縮機モータ22a,22bへ流入し、V相およびW相を介して圧縮機モータ22a,22bから流出する+U相方向の電流(+Iu)が、圧縮機モータ22a,22bの巻線に流れる。V3ベクトル印加時には、V相およびW相を介して圧縮機モータ22a,22bへ流入し、U相を介して圧縮機モータ22a,22bから流出する-U相方向の電流(-Iu)が、圧縮機モータ22a,22bの巻線に流れる。この場合、U相に流れる電流の大きさはその他のV相およびW相に流れる電流の2倍となり、主にU相に高周波電流が流れる動作となる。
すなわち、V4ベクトル印加時と、V3ベクトル印加時とでは、逆方向の電流が圧縮機モータ22a,22bの巻線に流れる。そして、電圧ベクトルがV0,V4,V7,V3,V0…の順で繰り返し変化するため、+U相方向の電流(+Iu)と-U相方向の電流(-Iu)とが交互に圧縮機モータ22a,22bの巻線に流れることになる。この結果、インバータ制御部12は、図6に示すようにV4ベクトルとV3ベクトルとが1キャリア周期の間に現れるため、キャリア信号の周波数に同期した高周波電圧を圧縮機モータ22a,22bの巻線に印加でき、高周波電流を流すことができる。
また、インバータ11a,11bからV4ベクトルの電圧とV3ベクトルの電圧とが交互に出力され、+U相方向の電流(+Iu)と-U相方向の電流(-Iu)とが交互に圧縮機モータ22a,22bの巻線に流れるため、正逆のトルクが瞬時に切り替わる。このため、正逆のトルクが相殺され、インバータ制御部12は、ロータの振動を抑えた電圧の印加が可能となる。
インバータ制御部12は、例えば、V0(0電圧)、V2(+V電圧)、V7(0電圧)、V5(-V電圧)、V0(0電圧)の順で繰り返し変化させてインバータ11a,11bから電圧を出力させるように制御することで、主にV相に高周波電流を流すことができる。また、インバータ制御部12は、例えば、V0(0電圧)、V1(+W電圧)、V7(0電圧)、V6(-W電圧)、V0(0電圧)の順で繰り返し変化させてインバータ11a,11bから電圧を出力させるように制御することで、主にW相に高周波電流を流すことができる。インバータ制御部12は、一連の電圧ベクトルの選択動作を適宜変更することによって、圧縮機2a,2bを特定部分に偏ることがなく均一に加熱することができる。
以上、圧縮機駆動装置1の高周波通電動作の一例を示したが、インバータ制御部12は、先述の三相の電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を表す式(1)から式(3)における電圧位相指令θを0°から360°の範囲で連続的に変化させ、変化する周期を短くすることによって、高周波電圧の周波数を増加させ、高周波通電を行うようにしてもよい。
インバータ制御部12は、式(1)から式(3)における電圧位相指令θを0°から360°の範囲で連続的に高速で変化させると、各電圧指令Vu*,Vv*,Vw*はそれぞれ120°位相差の正弦波となる。インバータ制御部12は、各電圧指令Vu*,Vv*,Vw*と基準信号とを比較することでPWM信号UP,VP,WP,UN,VN,WNが得られ、時間の変化とともに電圧ベクトルが変化するため、圧縮機モータ22a,22bに高周波電流を流すことが可能となる。この方法では、三相電流がバランスして高周波電流が流れることから、インバータ制御部12は、圧縮機2a,2bを特定部分に偏ることがなく均一に加熱することができる。
インバータ制御部12は、先述とは反対に、電圧位相指令θの変化する周期を長くすれば、低周波通電を実現できる。特に0Hzに近づくに従って、圧縮機モータ22a,22bのインピーダンス成分において抵抗成分が支配的となるため、低周波通電による加熱効果は、直流通電による加熱効果と同等となる。
拘束通電は、直流通電、低周波通電、高周波通電などに関係なく圧縮機2a,2bの運転待機中に行われるため、周囲に音の発生源がなく、拘束通電に起因する音が人間に対して耳障りとならない、さらに望ましくは可聴周波数帯域外となるようにすることが望ましい。拘束通電に起因する音が有する周波数成分は、主にキャリア周波数に係る成分、高周波通電の高周波電圧の周波数に係る成分、低周波通電の低周波電圧の周波数に係る成分などである。高周波通電の高周波電圧の周波数に係る成分および低周波通電の低周波電圧の周波数に係る成分は、すなわち、電圧位相指令θを変化させる周波数に係る成分である。
一般的なインバータの場合、キャリア周波数は、インバータのスイッチング素子のスイッチングスピードによって上限が決まる。スイッチングスピードの上限は、周知のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の場合は20kHz程度であり、ワイドギャップ半導体であるSiC、GaN、ダイヤモンドの場合は数百kHzである。
高周波通電において、キャリア周波数に等しい前者の高周波通電の場合、人間の可聴周波数帯域内で特に敏感とされる1kHzから5kHzの範囲を外した5kHz以上が望ましく、さらに望ましくは、人間の可聴周波数上限を超える20kHz以上が望ましい。ただし、先述のIGBTの場合、スイッチングスピードの上限が20kHz程度であり、人間の可聴周波数上限を超える設定が難しいことから、5kHzから20kHzの設定とする。
また、三相の電圧指令Vu*,Vv*,Vw*がキャリア周波数に同期しない後者の高周波通電方式の場合、高周波電圧の周波数、すなわち電圧位相指令θを変化させる周波数がキャリア周波数の1/10程度以上になると、高周波電圧の波形出力精度が悪化し、直流成分が重畳するなど影響を及ぼすおそれがある。この点を鑑みて、高周波電圧の周波数をキャリア周波数の1/10以下とすると、例えば、キャリア周波数が20kHzの場合、高周波電圧の周波数が2kHz以下となり、高周波電圧の周波数が可聴周波数帯域内で、かつ、特に敏感とされる1kHzから5kHzの範囲となるため、圧縮機モータの電磁音による騒音が懸念される。
ワイドギャップ半導体の場合、キャリア周波数が数百kHzまで上げられ、高周波電圧の周波数をキャリア周波数の1/10以下としても数十kHzに設定できる。このことから、式(1)から式(3)に基づく高周波通電方式は、高周波電圧の周波数を可聴周波数帯域外に設定できるインバータのスイッチング素子にワイドギャップ半導体を用いた場合に好適となる。
低周波通電において、望ましくは特に敏感とされる下限側1kHz以下、さらに望ましくは、人間の可聴周波数下限より低い20Hz以下が適している。以上のことから、インバータ制御部12において、直流通電または低周波通電における運転周波数は0Hz以上1kHz未満とし、高周波通電における運転周波数は5kHz以上とする。なお、直流通電または低周波通電における運転周波数の0Hz以上1kHz未満については、直流通電の場合が運転周波数0Hzであり、低周波通電の場合が0Hzより大きく1kHz未満の範囲である。
ここまでで、インバータ11a,11bによって圧縮機モータ22a,22bに対して直流通電および高周波通電を行う方法について説明した。次に、本実施の形態の特徴である、複数の圧縮機モータ22a,22bに対して、運転待機中に直流通電および高周波通電の通電方式を用いて、適切に拘束通電を行う方法について説明する。
複数の圧縮機で構成される装置、例えば、空気調和装置の場合、拘束通電を行うにあたり、圧縮機の台数に比例して運転待機中における圧縮機内部の冷媒への加熱に必要な電力の総量が増加する。特に、高周波通電を行う加熱方式の場合、加熱効率が高いものの、複数台の圧縮機に対して同時に高周波の電圧を印加すると、高周波電力の発生量およびノイズも大きくなり、装置の外部に存在する他の装置に対してノイズによる影響を及ぼすおそれがある。また、直流電圧を供給する直流通電の場合、加熱量を大きく取れるものの、加熱効率に課題があり、複数台の圧縮機に対して同時に直流通電を行うと待機電力の総量が増加する。したがって、運転待機中に複数の圧縮機に同時に拘束通電を行い、冷媒を気化させる際には、適切に直流通電と高周波通電とを使い分ける必要がある。
ここで、各通電方式の特徴を述べた上で、圧縮機駆動装置1において、複数台の圧縮機に対して同時に拘束通電を行う一連の流れ、および主旨について説明する。
直流通電の場合、インバータ制御部12は、圧縮機モータ22a,22bに対して直流電流を流すことにより、直流電流の大きさの2乗と圧縮機モータ22a,22bの各々を構成する巻線の抵抗値とに比例した銅損を圧縮機モータ22a,22bの巻線に発生させ、銅損による発熱によって圧縮機2a,2bの内部に滞留した冷媒を加熱することができる。インバータ制御部12は、圧縮機モータ22a,22bに流す電流の大きさをインバータ11a,11bを用いて制御することで、発熱量を制御でき、特に通常運転モードおよび高周波通電の場合と比較して、低い電圧で大きな電流、すなわち大きな発熱量を得ることができ、圧縮機2a,2bの内部に滞留した冷媒を短時間で排出できる。
しかし、近年のモータは、高効率設計によって巻線の抵抗値が小さくなる傾向があり、従来よりも巻線の抵抗値が小さくなった分、十分な加熱量を得るためには、直流電流を増加させる必要がある。このため、圧縮機2への加熱に寄与しない、かつ、通電電流に比例して増加するインバータ11a,11bの損失も増大して圧縮機2a,2bの加熱効率が悪化し、消費電力が増加する。そのため、直流通電は、運転待機中に長時間、かつ、何台もの圧縮機を同時に冷媒加熱するのに適した通電方式ではない。
一方、高周波通電の場合、インバータ制御部12は、インバータ11a,11bから圧縮機2a,2bに高周波電流を流すことによって、圧縮機モータ22a,22bを構成する固定子、回転子などの材料である磁性体に渦電流損、ヒステリシス損といった鉄損を発生させ、圧縮機2a,2b内部に滞留した冷媒を加熱することができる。
また、インバータ制御部12は、高周波電流の周波数を高くすることによって、鉄損が増加して発熱量を大きくすることができ、さらには、圧縮機モータ22a,22bのインダクタンスによるインピーダンスを高くすることができる。そのため、インバータ制御部12は、高周波電流を抑制することができ、インバータ11a,11bの損失を低減しつつ、圧縮機2a,2b内部に滞留した冷媒への高効率な加熱が可能となる。高周波通電は、待機電力が小さく、運転待機中に長時間冷媒加熱を行うのに適した通電方式である。
しかし、加熱効率が高い反面、複数台の圧縮機2に対して同時に高周波の電圧を印加すると高周波電力の発生量、およびノイズも大きくなり、装置の外部に存在するその他の装置、特に電子機器に対してノイズによる影響を及ぼすおそれがある。また、鉄損が小さい圧縮機モータ22a,22bを用いた場合、発熱量が小さくなり、滞留した冷媒を温め気化させて排出するのに必要な発熱量を得られないケースもある。
したがって、インバータ制御部12は、直流通電または高周波通電のいずれの拘束通電方式においても、複数台の圧縮機2に対して同時に同じ通電方式で加熱すると、先述のような課題が生じる。このことから、複数の圧縮機2を拘束通電によって加熱する場合、インバータ制御部12は、例えば、インバータ11aを用いて圧縮機2aを直流通電で加熱する際、並行してインバータ11bを用いて圧縮機2bを高周波通電で加熱するように制御する。すなわち、インバータ制御部12は、並行して複数の圧縮機2を同時に拘束通電によって加熱する場合、圧縮機2毎に通電方式を異なるようにする。これにより、インバータ制御部12は、2つの通電方式の各々のメリットが適切に得られ、また、各方式の課題に係る影響も小さくすることができる。なお、直流通電については、同等の加熱効果が得られる先述の低周波通電に置き換えてもよい。
インバータ制御部12は、圧縮機2の台数が3台以上の場合、少なくとも1台の圧縮機2は直流通電で加熱し、残りの圧縮機2のうち少なくとも1台の圧縮機2は高周波通電で加熱する。インバータ制御部12は、残りの圧縮機2については、効率面の影響が支配的であれば高周波通電で加熱し、ノイズの影響が支配的であれば直流通電で加熱するように、メリットと課題のバランスを鑑みながら個別に拘束通電方式を選択すればよい。このような圧縮機2の台数が3台以上の場合の好適な実施の形態については後述する。
ただし、先述の通り、拘束通電方式によって圧縮機2の加熱量に差異がある。そのため、加熱対象の圧縮機2に対して常に同じ拘束通電方式で加熱すると、通電方式の差異によって圧縮機2毎に発熱量が異なり、加熱バラツキが発生する。各圧縮機2に対して個体差なく均一に加熱するため、インバータ制御部12は、例えば、インバータ11aを用いて圧縮機2aを直流通電で加熱し、並行して、インバータ11bを用いて圧縮機2bを高周波通電で加熱することを、予め定められた期間T1の間実施し、期間T1経過後に拘束通電方式を入れ替える。すなわち、インバータ制御部12は、次に、インバータ11aを用いて圧縮機2aを高周波通電で加熱し、並行して、インバータ11bを用いて圧縮機2bを直流通電で加熱することを期間T1の間実施する。インバータ制御部12は、各圧縮機2に対して、直流通電または低周波通電と、高周波通電とを交互に実施するように制御する。これにより、インバータ制御部12は、各圧縮機2における発熱量の総量を同じにできることから、各々の圧縮機2の加熱量を平均化でき、圧縮機2毎にバラツキの無い冷媒加熱が可能となる。
図7は、実施の形態1に係る圧縮機駆動装置1の運転待機中の冷媒加熱動作を示すフローチャートである。圧縮機2a,2bの運転待機中において、インバータ制御部12は、内部演算または空気調和装置100を制御するコントローラなどの外部の上位制御部からの信号に基づいて、圧縮機2a,2bへの加熱が必要か否かを判断する(ステップS1)。インバータ制御部12は、加熱不要と判断した場合(ステップS1:No)、圧縮機2a,2bの運転待機中状態を維持する。インバータ制御部12は、加熱が必要と判断した場合(ステップS1:Yes)、加熱運転モードに移行し、1回目の拘束通電として、インバータ11aを用いて第1の圧縮機である圧縮機2aに直流通電を開始し、並行して、インバータ11bを用いて第2の圧縮機である圧縮機2bに高周波通電を開始する(ステップS2)。
インバータ制御部12は、1回目の拘束通電開始後、予め定められた期間T1が経過したか否かを判断する(ステップS3)。インバータ制御部12は、予め定められた期間T1が経過していない場合(ステップS3:No)、1回目の拘束通電の状態を維持する。インバータ制御部12は、期間T1の間、先述の通り、高周波通電における一連の電圧ベクトルの選択動作を適宜変更し、また、直流通電において時間の経過とともに電圧位相指令θを逐次変化させることで、圧縮機2a,2bを特定部分に偏ることがなく均一に加熱する。インバータ制御部12は、予め定められた期間T1が経過した場合(ステップS3:Yes)、1回目の拘束通電を停止、すなわち、インバータ11aを用いた圧縮機2aへの直流通電、およびインバータ11bを用いた圧縮機2bへの高周波通電を停止する(ステップS4)。インバータ制御部12は、2回目の拘束通電として、インバータ11aを用いて第1の圧縮機である圧縮機2aに高周波通電を開始し、並行して、インバータ11bを用いて第2の圧縮機である圧縮機2bに直流通電を開始する(ステップS5)。
インバータ制御部12は、2回目の拘束通電開始後、予め定められた期間T1が経過したか否かを判断する(ステップS6)。インバータ制御部12は、予め定められた期間T1が経過していない場合(ステップS6:No)、2回目の拘束通電の状態を維持する。インバータ制御部12は、期間T1の間、先述の通り、高周波通電における一連の電圧ベクトルの選択動作を適宜変更し、また、直流通電において時間の経過とともに電圧位相指令θを逐次変化させることで、圧縮機2a,2bを特定部分に偏ることがなく均一に加熱する。インバータ制御部12は、予め定められた期間T1が経過した場合(ステップS6:Yes)、2回目の拘束通電を停止、すなわち、インバータ11aを用いた圧縮機2aへの高周波通電、およびインバータ11bを用いた圧縮機2bへの直流通電を停止する(ステップS7)。インバータ制御部12は、通常運転モードに移行しない場合、ステップS1に戻って、先述と同様の動作を繰り返し実施する。インバータ制御部12は、直流通電または低周波通電の実施期間が、高周波通電の実施期間と同じになるように制御する。
以上、圧縮機駆動装置1の運転待機中の冷媒加熱動作処理における一連の流れの説明である。なお、インバータ制御部12は、直流通電については、同等の加熱効果が得られる先述の低周波通電に置き換えてもよい。
このように、インバータ制御部12は、運転待機中の複数の圧縮機2の内部の冷媒を加熱する場合、複数の圧縮機2のうち少なくとも1つの圧縮機2が備える圧縮機モータ22に対して、直流電流を用いた直流通電または低周波電流を用いた低周波通電を実施し、複数の圧縮機のうち他の圧縮機が備える圧縮機モータに対して高周波電流を用いた高周波通電を実施するように制御する。
つづいて、圧縮機駆動装置1が備えるインバータ制御部12のハードウェア構成について説明する。図8は、実施の形態1に係る圧縮機駆動装置1が備えるインバータ制御部12を実現するハードウェア構成の一例を示す図である。インバータ制御部12は、プロセッサ201及びメモリ202により実現される。
プロセッサ201は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)、またはシステムLSI(Large Scale Integration)である。メモリ202は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)といった不揮発性または揮発性の半導体メモリを例示できる。またメモリ202は、これらに限定されず、磁気ディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)でもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、圧縮機駆動装置1において、インバータ制御部12は、冷媒の滞留防止のために圧縮機2の運転待機中に複数の圧縮機2を加熱して冷媒を気化させる場合、異なる拘束通電方法で複数の圧縮機2を同時に加熱することとした。これにより、圧縮機駆動装置1は、複数の圧縮機2と接続する場合においても、圧縮機2の数の増加に伴う高周波通電によるノイズの増大を抑制してノイズに起因する自装置または他装置の誤動作を防止でき、直流通電による待機電力の増大を抑制することができる。
また、インバータ制御部12は、同一の圧縮機2に対して、直流通電と高周波通電とを交互に行うことで、各々の圧縮機2の加熱量を平均化でき、圧縮機2毎にバラツキの無い冷媒加熱を行うことができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、インバータ制御部12は、2台の圧縮機2に対して同時に拘束通電を行う場合、高周波通電を行う期間および直流通電を行う期間は同じ期間T1であった。実施の形態2では、直流通電が短時間で大きな発熱量を得られる一方、圧縮機2の加熱に寄与しない、かつ、通電電流に比例して増加するインバータ損失が大きく長時間通電には適切でない特質を鑑みて、高周波通電を行う期間T1に対して直流通電を行う期間を、期間T1より短くする。
実施の形態2において、空気調和装置100の構成は、実施の形態1のときの空気調和装置100の構成と同様である。図9は、実施の形態2に係る圧縮機駆動装置1の運転待機中の冷媒加熱動作を示すフローチャートである。圧縮機2a,2bの運転待機中において、インバータ制御部12は、内部演算または空気調和装置100を制御するコントローラなどの外部の上位制御部からの信号に基づいて、圧縮機2a,2bへの加熱が必要か否かを判断する(ステップS11)。インバータ制御部12は、加熱不要と判断した場合(ステップS11:No)、圧縮機2a,2bの運転待機中状態を維持する。インバータ制御部12は、加熱が必要と判断した場合(ステップS11:Yes)、加熱運転モードに移行し、1回目の拘束通電として、インバータ11aを用いて第1の圧縮機である圧縮機2aに直流通電を開始し、並行して、インバータ11bを用いて第2の圧縮機である圧縮機2bに高周波通電を開始する(ステップS12)。
インバータ制御部12は、1回目の拘束通電開始後、予め定められた期間T0が経過したか否かを判断する(ステップS13)。期間T0は、先述の期間T1よりも短い期間とする。インバータ制御部12は、予め定められた期間T0が経過していない場合(ステップS13:No)、1回目の拘束通電の状態を維持する。インバータ制御部12は、期間T0の間、先述の通り、直流通電において時間の経過とともに電圧位相指令θを逐次変化させることで、圧縮機2aを特定部分に偏ることがなく均一に加熱する。インバータ制御部12は、予め定められた期間T0が経過した場合(ステップS13:Yes)、インバータ11aを用いた第1の圧縮機である圧縮機2aへの直流通電を停止する(ステップS14)。
インバータ制御部12は、予め定められた期間T1が経過したか否かを判断する(ステップS15)。インバータ制御部12は、予め定められた期間T1が経過していない場合(ステップS15:No)、インバータ11bを用いた圧縮機2bへの高周波通電の状態を維持する。インバータ制御部12は、期間T1の間、先述の通り、高周波通電における一連の電圧ベクトルの選択動作を適宜変更することで、圧縮機2bを特定部分に偏ることがなく均一に加熱する。インバータ制御部12は、予め定められた期間T1が経過した場合(ステップS15:Yes)、インバータ11bを用いた第2の圧縮機である圧縮機2bへの高周波通電を停止する(ステップS16)。インバータ制御部12は、2回目の拘束通電として、インバータ11aを用いて第1の圧縮機である圧縮機2aに高周波通電を開始し、並行して、インバータ11bを用いて第2の圧縮機である圧縮機2bに直流通電を開始する(ステップS17)。
インバータ制御部12は、2回目の拘束通電開始後、予め定められた期間T0が経過したか否かを判断する(ステップS18)。インバータ制御部12は、予め定められた期間T0が経過していない場合(ステップS18:No)、2回目の拘束通電の状態を維持する。インバータ制御部12は、期間T0の間、先述の通り、直流通電において時間の経過とともに電圧位相指令θを逐次変化させることで、圧縮機2bを特定部分に偏ることがなく均一に加熱する。インバータ制御部12は、予め定められた期間T0が経過した場合(ステップS18:Yes)、インバータ11bを用いた第2の圧縮機である圧縮機2bへの直流通電を停止する(ステップS19)。
インバータ制御部12は、予め定められた期間T1が経過したか否かを判断する(ステップS20)。インバータ制御部12は、予め定められた期間T1が経過していない場合(ステップS20:No)、インバータ11aを用いた圧縮機2aへの高周波通電の状態を維持する。インバータ制御部12は、期間T1の間、先述の通り、高周波通電における一連の電圧ベクトルの選択動作を適宜変更することで、圧縮機2aを特定部分に偏ることがなく均一に加熱する。インバータ制御部12は、予め定められた期間T1が経過した場合(ステップS20:Yes)、インバータ11aを用いた第1の圧縮機である圧縮機2aへの高周波通電を停止する(ステップS21)。インバータ制御部12は、通常運転モードに移行しない場合、ステップS11に戻って、先述と同様の動作を繰り返し実施する。インバータ制御部12は、直流通電または低周波通電の実施期間が、高周波通電の実施期間より短くなるように制御する。
以上、圧縮機駆動装置1の運転待機中の冷媒加熱動作処理における一連の流れの説明である。なお、インバータ制御部12は、直流通電については、同等の加熱効果が得られる先述の低周波通電に置き換えてもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、圧縮機駆動装置1において、インバータ制御部12は、冷媒の滞留防止のために圧縮機2の運転待機中に複数の圧縮機2を加熱して冷媒を気化させる場合、異なる拘束通電方法で複数の圧縮機2を同時に加熱するが、高周波通電に対して直流通電を行う期間を短くすることとした。これにより、圧縮機駆動装置1は、加熱効率に課題のある特徴を有する直流通電の時間を短縮でき、必要とする加熱量以上の加熱を防止し、待機電力の増大を抑制することができる。
実施の形態3.
実施の形態1,2では、圧縮機駆動装置1が具体的に2台の圧縮機2に接続される場合について説明した。実施の形態3では、圧縮機駆動装置が3台以上の圧縮機2に接続される場合について説明する。
図10は、実施の形態3に係る圧縮機駆動装置1aを構成するインバータ11の構成例を示す図である。圧縮機駆動装置1aは、インバータ11a,11bと、圧縮機モータ22cに電気的に接続され、圧縮機モータ22cを駆動するインバータ11cと、インバータ11a,11b,11cを制御するインバータ制御部12aと、を備える。圧縮機駆動装置1aは、圧縮機2を3台備える図示しない空気調和装置が備える圧縮機駆動装置である。図10では、3台の圧縮機2に接続される圧縮機駆動装置1aの例を示している。図10に示すように、インバータ11a,11b,11cは、ブリッジ結線されたスイッチング素子、および各スイッチング素子の各々に並列接続された還流ダイオードを有している。また、インバータ11a,11b,11cは、電力源3に接続される。インバータ11cは、インバータ11a,11bと同様の構成である。また、インバータ11cに接続される圧縮機モータ22cは、圧縮機モータ22a,22bと同様の構成である。
以降の説明において、インバータ11a,11b,11cを区別しない場合はインバータ11と称し、圧縮機モータ22a,22b,22cを区別しない場合は圧縮機モータ22と称することがある。また、説明の便宜上、圧縮機モータ22cを備える図示しない圧縮機2を圧縮機2cとする。圧縮機2a,2b,2cを区別しない場合は圧縮機2と称することがある。
図10では、電力源3から出力される電力を求めるための構成として、直流母線に母線電圧、すなわち電力源3の電圧を計測するための電圧検出部4、および母線電流を検出する電流検出部5が圧縮機駆動装置1aに接続される例を示しているが、電力源3から出力される電力を求めるための構成は、図10の例に限定されない。また、図10では、電流検出部5は、母線負側ではなく母線正側に接続されていてもよい。
本実施の形態において、インバータ制御部12aは、圧縮機駆動装置1aに3台以上の圧縮機2が接続され、圧縮機2の運転待機中に圧縮機2内部の冷媒へ加熱する場合、次のような制御を行う。すなわち、インバータ制御部12aは、複数ある圧縮機2のうち、1台の圧縮機2に備わる圧縮機モータ22に対して直流通電を実施するように制御する。また、インバータ制御部12aは、もう1台の圧縮機2に備わる圧縮機モータ22に対して高周波通電を実施するように制御する。また、インバータ制御部12aは、残りの圧縮機2に備わる圧縮機モータ22に対しては、電力源3から出力される電力に基づいて通電方式を選択するように制御する。
図11は、実施の形態3に係る圧縮機駆動装置1aの運転待機中の冷媒加熱動作を示すフローチャートである。圧縮機2a,2b,2cの運転待機中において、インバータ制御部12aは、内部演算または空気調和装置100を制御するコントローラなどの外部の上位制御部からの信号に基づいて、圧縮機2a,2b,2cへの加熱が必要か否かを判断する(ステップS31)。インバータ制御部12aは、加熱不要と判断した場合(ステップS31:No)、圧縮機2a,2b,2cの運転待機中状態を維持する。インバータ制御部12aは、加熱が必要と判断した場合(ステップS31:Yes)、加熱運転モードに移行し、1回目の拘束通電として、インバータ11aを用いて第1の圧縮機である圧縮機2aに直流通電を開始し、並行して、インバータ11bを用いて第2の圧縮機である圧縮機2bに高周波通電を開始し、インバータ11cを用いて第3の圧縮機である圧縮機2cに高周波通電を開始する(ステップS32)。
インバータ制御部12aは、直流通電を行う圧縮機2を1台、高周波通電を行う圧縮機2を2台とすることで、高効率、すなわち、待機電力を小さくする制御を優先する。なお、インバータ制御部12aは、許容される待機電力に対して、拘束通電に必要な電力源3から出力される電力が小さい場合、許容される待機電力まで拘束通電で使用する電力を増やし、発熱量を増やすようにしてもよい。具体的には、インバータ制御部12aは、高周波通電を行う圧縮機2台のうちの1台を直流通電へ変更すればよい。
インバータ制御部12aは、加熱運転モード移行後、電力源3から出力される電力である出力電力を求め、電力源3の出力電力と、許容される電力W0とを比較する(ステップS33)。インバータ制御部12aは、電力源3の出力電力について、電圧検出部4で検出された母線電圧である電力源3の電圧の値と、電流検出部5で検出された母線電流の値とを取り込み、演算処理を行って求めることができる。なお、インバータ制御部12aは、各インバータ11の出力側に計測部を設けて、拘束通電で使用される電力の計測結果を用いてもよい。インバータ制御部12aは、電力源3の出力電力が許容される電力W0より小さい場合(ステップS33:Yes)、インバータ11bによる圧縮機2bへの高周波通電を直流通電に変更する(ステップS34)。インバータ制御部12aは、ステップS33:Yesの場合、インバータ11cによる圧縮機2cへの高周波通電を直流通電へ変更してもよい。
なお、インバータ制御部12aは、ステップS34による変更によって、電力源3の出力電力が許容される電力W0を超過した場合、インバータ11bによる圧縮機2bへの直流通電を再度高周波通電へ戻してもよいし、あらかじめ変更により電力W0を超えても問題ないように電力W0の値にマージンを持たせてもよい。インバータ制御部12aは、電力源3の出力電力が許容される電力W0以上の場合(ステップS33:No)、ステップS34の動作を省略する。
インバータ制御部12aは、1回目の拘束通電開始後、予め定められた期間T1が経過したか否かを判断する(ステップS35)。インバータ制御部12aは、予め定められた期間T1が経過していない場合(ステップS35:No)、1回目の拘束通電の状態を維持する。インバータ制御部12aは、予め定められた期間T1が経過した場合(ステップS35:Yes)、1回目の拘束通電を停止する(ステップS36)。インバータ制御部12aは、期間T1について、加熱運転モードに移行したステップS32の時点を基準にしているが、通電方式を変更したステップS34の時点を基準にしてもよい。インバータ制御部12aは、期間T1の間、先述の通り、高周波通電における一連の電圧ベクトルの選択動作を適宜変更し、また、直流通電において時間の経過とともに電圧位相指令θを逐次変化させることで、圧縮機2a,2b,2cを特定部分に偏ることがなく均一に加熱する。
図11に示すフローチャートは、1回目の拘束通電開始から期間T1経過後に拘束通電を停止させる処理までを記載しているが、これに限定されない。インバータ制御部12aは、この後、実施の形態1,2と同様、各々の圧縮機の加熱量を平均化させる目的で、各圧縮機に対する拘束通電方式を入れ替えて、図11に示すフローチャートを繰り返し実施してもよい。
例えば、インバータ制御部12aは、2回目のフローチャートの処理のステップS32において、2回目の拘束通電として、インバータ11bを用いて第2の圧縮機である圧縮機2bに直流通電を開始し、並行して、インバータ11cを用いて第3の圧縮機である圧縮機2cに高周波通電を開始し、インバータ11aを用いて第1の圧縮機である圧縮機2aに高周波通電を開始する。また、インバータ制御部12aは、ステップS34において変更対象を第3の圧縮機である圧縮機2cとする。次に、インバータ制御部12aは、3回目のフローチャートの処理のステップS32において、3回目の拘束通電として、インバータ11cを用いて第3の圧縮機である圧縮機2cに直流通電を開始し、並行して、インバータ11aを用いて第1の圧縮機である圧縮機2aに高周波通電を開始し、インバータ11bを用いて第2の圧縮機である圧縮機2bに高周波通電を開始する。また、インバータ制御部12aは、ステップS34において変更対象を第1の圧縮機である圧縮機2aとする。
このように、複数の圧縮機2の数が3以上の場合、インバータ制御部12aは、複数の圧縮機2のうち、1つの圧縮機2が備える圧縮機モータ22に対して直流通電または低周波通電を実施する。インバータ制御部12aは、他の1つの圧縮機2が備える圧縮機モータ22に対して高周波通電を同時に実施し、残りの圧縮機2が備える圧縮機モータ22については電力源3から出力される電力に基づいて通電方式を選択する。
以上、圧縮機駆動装置1aの運転待機中の冷媒加熱動作処理における一連の流れの説明である。なお、インバータ制御部12aは、直流通電については、同等の加熱効果が得られる先述の低周波通電に置き換えてもよい。
また、図11に示すフローチャートでは、加熱運転モード移行時の状態として、直流通電を行う圧縮機2を1台、高周波通電を行う圧縮機2を2台としていたが、これに限定されない。インバータ制御部12aは、発熱量を優先し、直流通電を行う圧縮機2を2台、高周波通電を行う圧縮機2を1台として、拘束通電時の電力源3の出力電力と許容される電力W0とを比較して、各通電方式の台数を調整してもよい。
また、インバータ制御部12aは、圧縮機2が4台以上の構成においても、例えば、加熱運転モード移行時の状態を、直流通電を行う圧縮機2を2台、高周波通電を行う圧縮機2を2台として、拘束通電時の電力源3の出力電力と許容される電力W0とを比較して、各通電方式の台数を調整してもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、圧縮機駆動装置1aにおいて、インバータ制御部12aは、圧縮機駆動装置1aに接続される圧縮機2が3台以上の場合において、拘束通電に必要な電力を、許容される待機電力の範囲内で各圧縮機2に対する拘束通電の発熱量を最大限に確保することができる。
実施の形態4.
実施の形態4では、圧縮機駆動装置に接続される圧縮機モータ22が独立巻線型モータの場合について説明する。
従来、独立巻線型モータは、各相巻線の両端にそれぞれ2台インバータが接続され、2台のインバータの合成電圧によって駆動する。そのため、独立巻線型モータは、先述の1台のインバータで駆動する圧縮機モータと比較して、高い電圧が印加され、モータ出力を大きく取ることができ、圧縮機2の大容量化に適している。一方で、独立巻線型モータは、大容量化に伴って、運転待機中の圧縮機内部の冷媒への加熱に必要な電力の総量、およびノイズも大きくなり、これらの課題が顕著となる傾向となる。
図12は、実施の形態4に係る圧縮機駆動装置1bに接続される圧縮機モータ22d,22eが独立巻線型モータである場合の圧縮機駆動装置1bおよび圧縮機モータ22d,22eの構成例を示す図である。圧縮機駆動装置1bは、圧縮機モータ22dに電気的に接続され、圧縮機モータ22dを駆動するインバータ11a,11bと、圧縮機モータ22eに電気的に接続され、圧縮機モータ22eを駆動するインバータ11c,11dと、インバータ11a,11b,11c,11dを制御するインバータ制御部12bと、を備える。圧縮機駆動装置1bは、圧縮機2を2台備える図示しない空気調和装置が備える圧縮機駆動装置である。図12では、2台の圧縮機2に接続される圧縮機駆動装置1bの例を示している。図12に示すように、インバータ11a,11b,11c,11dは、ブリッジ結線されたスイッチング素子、および各スイッチング素子の各々に並列接続された還流ダイオードを有している。また、インバータ11a,11b,11c,11dは、電力源3に接続される。インバータ11dは、インバータ11a,11b,11cと同様の構成である。
以降の説明において、インバータ11a,11b,11c,11dを区別しない場合はインバータ11と称し、圧縮機モータ22d,22eを区別しない場合は圧縮機モータ22と称することがある。また、説明の便宜上、圧縮機モータ22dを備える図示しない圧縮機2を圧縮機2dとし、圧縮機モータ22eを備える図示しない圧縮機2を圧縮機2eとする。圧縮機2d,2eを区別しない場合は圧縮機2と称することがある。
圧縮機モータ22dは、U相、V相、およびW相の各相の巻線の両端が開放され、各巻線の両端に個別にインバータ11a,11bが接続された独立巻線型モータである。圧縮機モータ22eは、U相、V相、およびW相の各相の巻線の両端が開放され、各巻線の両端に個別にインバータ11c,11dが接続された独立巻線型モータである。
図12に示す圧縮機駆動装置1bでは、インバータ11a,11bが独立巻線型モータである圧縮機モータ22dの巻線の両端に接続され、インバータ11c,11dが独立巻線型モータである圧縮機モータ22eの巻線の両端に接続されている。インバータ制御部12bは、インバータ11a,11b,11c,11dを制御する。インバータ制御部12bは、2つのインバータ11を用いて1つの圧縮機モータ22を駆動する。具体的には、インバータ制御部12bは、インバータ11a,11bを用いて圧縮機モータ22dを駆動し、インバータ11c,11dを用いて圧縮機モータ22eを駆動する。
実施の形態1から実施の形態3のように独立巻線型モータである圧縮機モータ22d,22eに拘束通電を行う場合、インバータ制御部12bは、両端に接続される2つのインバータ11の合成電圧が圧縮機モータ22d,22eに印加されることを鑑みて、直流通電および高周波通電のいずれの場合でも、以下のような制御を行う。
具体的には、インバータ制御部12bは、例えば、圧縮機モータ22dに拘束通電を行う場合、一方のインバータ11aには拘束通電方式に応じて先述の実施の形態と同様に動作させ、他方のインバータ11bの出力電圧をインバータ11aの出力電圧に対して極性を反転させるように制御すればよい。すなわち、インバータ制御部12bは、言い換えると、2台のインバータ11の間で電圧位相指令θを180°をずらせばよい。インバータ制御部12bが、インバータ11c,11dを用いて圧縮機モータ22eに拘束通電を行う場合も同様である。
これを電圧ベクトルの選択方法で説明すると、インバータ制御部12bは、一方のインバータ11が電圧ベクトルV0の電圧を出力し、他方のインバータ11が電圧ベクトルV7の電圧を出力するように選択する。また、インバータ制御部12bは、一方のインバータ11が電圧ベクトルV1の電圧を出力し、他方のインバータ11が電圧ベクトルV6の電圧を出力するように選択する。また、インバータ制御部12bは、一方のインバータ11が電圧ベクトルV2の電圧を出力し、他方のインバータ11が電圧ベクトルV5の電圧を出力するように選択する。また、インバータ制御部12bは、一方のインバータ11が電圧ベクトルV3の電圧を出力し、他方のインバータ11が電圧ベクトルV4の電圧を出力するように選択する。ただし、2台のインバータ11の合成電圧は1台のインバータ11の出力電圧の2倍になるため、インバータ制御部12bは、冷媒加熱に必要な発熱量となるように電圧指令V*を適宜調整する。
また、インバータ制御部12bは、各圧縮機2の加熱量を平均化し、圧縮機2毎にバラツキの無い冷媒加熱を行えるように、実施の形態1から実施の形態3と同様、圧縮機モータ22dと圧縮機モータ22eとの間で、直流通電および高周波通電を入れ替えて拘束通電を行うようにすればよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、圧縮機駆動装置1bにおいて、インバータ制御部12bは、圧縮機モータ22d,22eが独立巻線型モータであっても、冷媒の滞留防止のため圧縮機2の運転待機中に複数の圧縮機2を加熱して冷媒を気化させる場合、異なる拘束通電方法で複数の圧縮機2を同時に加熱することとした。これにより、圧縮機駆動装置1bは、複数の圧縮機2と接続する場合においても、圧縮機2の数の増加に伴う高周波通電によるノイズの増大を抑制してノイズに起因する自装置または他装置の誤動作を防止でき、直流通電による待機電力の増大を抑制することができる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。