JP7256741B2 - 感作レシピエントの腎移植における抗体関連型拒絶反応の予防における抗c5抗体の有効性 - Google Patents

感作レシピエントの腎移植における抗体関連型拒絶反応の予防における抗c5抗体の有効性 Download PDF

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Description

本発明は、抗体関連型拒絶反応(AMR:antibody mediated rejection)の分野に関連する。
固形臓器移植は、末期の腎疾患患者の治療に対して、いまだ最も有効な治療方法である。2008年には米国で80,000人を超える患者が腎移植の待機リストに掲載されていたが、移植を受けられたのはこれら患者のうちたった五分の一だけであった。利用可能な臓器の不足に加えて、感作レシピエントの数も腎移植成功の障害となっている。
the Organ Procurement and Transplantation Network(UNOS)の腎移植待機リストに掲載されている潜在レシピエントのおよそ三分の一が感作状態とみなされている(Panel Reactive Antibody [PRA]スコア>10%と定義される)。これらの患者は、ドナーに特異的な一連のヒト白血球抗原(HLAまたはDSA)に対する抗体が過去に形成されている。感作は、輸血、妊娠、および/または過去の臓器移植を介してドナー抗原に前もって暴露されることから発生し得る。DSAの存在により、AMRが生じ得る。AMRには以下の三つのタイプが報告されている:(a)血行再建術の数分以内に現れる超急性拒絶、(b)移植後数日から数週以内に現れるAMR、および(c)ドナー特異的抗体の「新たな(デノボ(de novo))」生成の後に発生する、多くは移植のときから数カ月から数年で発生する慢性抗体関連型拒絶反応。
感作された腎移植レシピエントに対する新たな脱感作方法に関し、いくつかのセンターでは移植後一年で90%を超える早期成功率を報告している。この方法にはIVIgおよび血漿交換が含まれる。しかしながらAMRは依然として深刻な課題であり、データでは、AMRを発症させた患者では長期にわたり同種移植片の機能と生存率が損なわれていることが示唆されている。ゆえにAMRの予防は、感作された腎移植患者における、実現し得る最良の転帰の達成に非常に重要である。
現在のところ、AMRの予防に適用される、FDAに承認済みの治療剤は無い。
本開示は、生体ドナーに対し感作されたヒト腎移植レシピエントが抗体関連型拒絶反応を発症させる可能性を低下させる方法を提供する。
ある態様において、本発明方法は、生体ドナーを選択すること、腎移植レシピエントを選択することであって、当該レシピエントは、当該ドナーに感作されていること、脱感作療法を移植前にレシピエントに施すこと、当該ドナーの腎臓を、当該レシピエントに移植すること、そして抗補体C5抗体、またはその抗原結合断片の治療有効量を当該レシピエントに投与すること、当該抗補体C5抗体、またはその抗原結合断片は、腎同種移植の再かん流の前に投与され、および移植後に段階的な投薬スケジュールで投与されること、を含む。一部の実施形態において、抗補体C5抗体は、エクリズマブである。
本開示を制限することなく、本開示の多数の実施形態を説明の目的で以下に記載する。
項1 ヒト腎移植レシピエントにおいて抗体関連型拒絶反応(AMR)を低減させる方法であって、当該方法は、抗C5抗体またはその抗原結合断片の治療有効量を、腎同種移植の再かん流後に段階的な投薬スケジュールで、当該レシピエントに投与することであって、当該レシピエントはヒト生体ドナーに対し感作されており、そして当該レシピエントは移植前に約二週間以上の脱感作療法を受けること、を含む方法。
項2 当該レシピエントが移植前に約二週間の脱感作療法を受ける、項1に記載の方法。
項3 当該レシピエントが移植前に約三週間の脱感作療法を受ける、項1に記載の方法。
項4 当該レシピエントが移植前に約四週間の脱感作療法を受ける、項1に記載の方法。
項5 当該段階的投薬スケジュールが、腎同種移植再かん流の約1時間前に投与される約1200mgの投与量の抗体、移植後約1日目、約7日目、約14日目、約21日目、および約28日目で投与される約900mgの投与量の抗体、ならびに移植後約5週、約7週、および約9週で投与される約1200mgの投与量の抗体を含む、項1~4のいずれかに記載の方法。
項6 当該レシピエントの医療歴が、過去のHLAへの暴露を含む、項1~5のいずれかに記載の方法。
項7 当該過去のHLAへの暴露が、過去の固形臓器もしくは組織の同種移植、妊娠、輸血、または過去の特定ドナーHLAへの暴露の内の一つまたは複数を含む、項1~6のいずれかに記載の方法。
項8 当該脱感作療法が、免疫グロブリン大量静注療法(IVIg:intravenous immuno-globulin treatment)を含む、項1~7のいずれか一つに記載の方法。
項9 当該脱感作療法が、血漿交換治療を含む、項1~8のいずれか一つに記載の方法。
項10 当該レシピエントが、標準的治療(SOC)と比較して低減されたAMRを経験する、および/または当該レシピエントが、SOCと比較して低減された移植片喪失を経験する、項1~9のいずれか一つに記載の方法。
項11 当該レシピエントが、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある低レベルの循環抗ドナー特異的抗体を経験する、項1~10のいずれか一つに記載の方法。
項12 当該レシピエントが、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、臨床的に意義のある低レベルの循環抗ドナー特異的抗体を経験する、項1~11のいずれか一つに記載の方法。
項13 当該レシピエントが、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある低レベルの急性組織損傷の形態的エビデンスを経験する、項1~12のいずれか一つに記載の方法。
項14 当該レシピエントが、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、臨床的に意義のある低レベルの急性組織損傷の形態的エビデンスを経験する、項1~13のいずれか一つに記載の方法。
項15 当該レシピエントが、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ9週目で、臨床的に意義のある移植臓器の生着率の上昇を経験する、項1~14のいずれか一つに記載の方法。
項16 当該レシピエントが、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ12カ月目で、臨床的に意義のある移植臓器の生着率の上昇を経験する、項1~15のいずれか一つに記載の方法。
項17 当該レシピエントが、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ9週目で、生存率の上昇を経験する、項1~16のいずれか一つに記載の方法。
項18 当該レシピエントが、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ12カ月目で、生存率の上昇を経験する、項1~17のいずれか一つに記載の方法。
項19 当該レシピエントが、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ36カ月目で、生存率の上昇を経験する、項1~18のいずれか一つに記載の方法。
項20 当該レシピエントが、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある抗体関連型拒絶反応の組織学的エビデンスの低さを経験する、項1~19のいずれか一つに記載の方法。
項21 当該レシピエントが、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、臨床的に意義のある抗体関連型拒絶反応の組織学的エビデンスの低さを経験する、項1~20のいずれか一つに記載の方法。
項22 当該レシピエントが、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある、生検上の慢性AMRを含む病理学的変化の低さを経験する、項1~21のいずれか一つに記載の方法。
項23 当該レシピエントが、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、臨床的に意義のある、生検上の慢性AMRを含む病理学的変化の低さを経験する、項1~22のいずれか一つに記載の方法。
項24 当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、血漿交換治療の必要性が低下する、項1~23のいずれか一つに記載の方法。
項25 当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、血漿交換治療の必要性が低下する、項1~24のいずれか一つに記載の方法。
項26 当該レシピエントが、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後に、臨床的に意義のある臓器移植後臓器機能障害の低下を経験する、項1~25のいずれか一つに記載の方法。
項27 当該レシピエントが、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある透析の必要性の低下を経験する、項1~26のいずれか一つに記載の方法。
項28 当該レシピエントが、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、臨床的に意義のある透析の必要性の低減を経験する、項1~27のいずれか一つに記載の方法。
項29 当該レシピエントが、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、安定的な腎機能を経験する、項1~28のいずれか一つに記載の方法。
項30 当該レシピエントが、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、安定的な腎機能を経験する、項1~29のいずれか一つに記載の方法。
項31 ヒト腎移植レシピエントにおいて抗体関連型拒絶反応(AMR)を低減させる方法であって、抗C5抗体またはその抗原結合断片の治療有効量を、腎同種移植の再かん流後に段階的な投薬スケジュールで当該レシピエントに投与することであって、当該レシピエントは、ヒト生体ドナーに感作されており、および当該レシピエントは、移植前に約二週間の脱感作療法を受けており、
当該レシピエントは、移植後のおよそ最初の9週の間、移植後のおよそ最初の12カ月の間、および/または移植後のおよそ最初の36か月の間、
以下のうちの一つまたは複数を経験すること、を含む方法:抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、臨床的に意義のある低レベルの循環抗ドナー特異的抗体、臨床的に意義のある低レベルの急性組織損傷の形態的エビデンス、臨床的に意義のある抗体関連型拒絶反応の組織学的エビデンスの低さ、高生存率の上昇または生存率の上昇、臨床的に意義のある抗体関連型拒絶反応の組織学的エビデンスの低さ、臨床的に意義のある生検上の慢性AMRを含む病理学的変化の低さ、血漿交換治療の必要性の低下、臨床的に意義のある透析の必要性の低下。
項32 当該抗C5抗体またはその抗原結合断片は、静脈内注入を介して投与される、抗1~31のいずれか一つに記載の方法。
項33 当該抗C5抗体またはその抗原結合断片は、皮下に投与される、抗1~32のいずれか一つに記載の方法。
項34 当該レシピエントの抗C5抗体またはその抗原結合断片の血漿レベルは、移植後のおよそ最初の週の間、約50~約100μg/mLに維持される、項1~33のいずれか一つに記載の方法。
項35 当該レシピエントの抗C5抗体またはその抗原結合断片の血漿レベルは、移植後のおよそ最初の9週の間、約50~約100μg/mLに維持される、項1~34のいずれか一つに記載の方法。
項36 当該レシピエントに、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、およびプレドニゾンからなる群から選択される一つまたは複数の免疫抑制剤を投与することをさらに含む、項1~35のいずれか一つに記載の方法。
項37 当該抗C5抗体がエクリズマブである、項1~36のいずれか一つに記載の方法。
項38 当該抗C5抗体がBNJ441である、項1~36のいずれか一つに記載の方法。
項39 当該抗C5抗体がBNJ421である、項1~36のいずれか一つに記載の方法。
項40 当該抗C5抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ配列番号1、2、および3に記載されるCDR1、CDR2、およびCDR3重鎖配列を含み、ならびにそれぞれ配列番号4、5、および6に記載されるCDR1、CDR2、およびCDR3軽鎖配列を含む、項1~36のいずれか一つに記載の方法。
項41 当該抗C5抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ配列番号7に記載される配列を有するVドメインと、配列番号8に記載される配列を有するVドメインを含む、項1~36のいずれか一つに記載の方法。
項42 当該抗C5抗体またはその抗原結合断片が、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖定常領域を含む、項1~36のいずれか一つに記載の方法。
項43 当該抗C5抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ配列番号10および配列番号11に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖全体を含む、項1~36のいずれか一つに記載の方法。
項44 当該抗C5抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ配列番号19、18および3に記載されるCDR1、CDR2、およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に記載されるCDR1、CDR2、およびCDR3軽鎖配列を含む、項1~36のいずれか一つに記載の方法。
項45 当該抗C5抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ配列番号12に記載される配列を有するVドメインと、配列番号8に記載される配列を有するVドメインを含む、項1~36のいずれか一つに記載の方法。
項46 当該抗C5抗体またはその抗原結合断片が、配列番号13に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖定常領域を含む、項1~36のいずれか一つに記載の方法。
項47 当該抗C5抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ配列番号14および配列番号11に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖全体を含む、項1~36のいずれか一つに記載の方法。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
ヒト腎移植レシピエントにおいて抗体関連型拒絶反応(AMR)を低減させる方法であって、抗C5抗体またはその抗原結合断片の治療有効量を、腎同種移植の再かん流後に段階的な投薬スケジュールで前記レシピエントに投与することであって、前記レシピエントはヒト生体ドナーに対し感作されており、そして前記レシピエントは移植前に約二週間以上の脱感作療法を受けること、を含む方法。
(項目2)
前記レシピエントが移植前に約二週間の脱感作療法を受ける、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記レシピエントが移植前に約三週間の脱感作療法を受ける、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記レシピエントが移植前に約四週間の脱感作療法を受ける、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記段階的投薬スケジュールが、腎同種移植再かん流の約1時間前に投与される約1200mgの投与量の抗体、移植後約1日目、約7日目、約14日目、約21日目、および約28日目で投与される約900mgの投与量、ならびに移植後約5週、約7週、および約9週で投与される約1200mgの投与量を含む、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記レシピエントの医療歴が、過去のHLAへの暴露を含む、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記過去のHLAへの暴露が、過去の固形臓器もしくは組織の同種移植、妊娠、輸血、または過去の特定ドナーHLAへの暴露の内の一つまたは複数を含む、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記脱感作療法が、免疫グロブリン大量静注療法(IVIg:intravenous immuno-globulin treatment)を含む、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記脱感作療法が、血漿交換治療を含む、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記レシピエントが、標準的治療(SOC)と比較し低減されたAMRを経験する、および/または前記レシピエントが、SOCと比較して低減された移植片喪失を経験する、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記レシピエントが、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある低レベルの循環抗ドナー特異的抗体を経験する、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記レシピエントが、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、臨床的に意義のある低レベルの循環抗ドナー特異的抗体を経験する、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記レシピエントが、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある低レベルの急性組織損傷の形態的エビデンスを経験する、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記レシピエントが、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、臨床的に意義のある低レベルの急性組織損傷の形態的エビデンスを経験する、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記レシピエントが、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ9週目で、臨床的に意義のある移植臓器の生着率の上昇を経験する、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記レシピエントが、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ12か月目で、臨床的に意義のある移植臓器の生着率の上昇を経験する、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記レシピエントが、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ9週目で、生存率の上昇を経験する、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記レシピエントが、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ12カ月目で、生存率の上昇を経験する、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記レシピエントが、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ36カ月目で、生存率の上昇を経験する、項目1~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記レシピエントが、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある抗体関連型拒絶反応の組織学的エビデンスの低さを経験する、項目1~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記レシピエントが、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、臨床的に意義のある抗体関連型拒絶反応の組織学的エビデンスの低さを経験する、項目1~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記レシピエントが、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある、生検上の慢性AMRを含む病理学的変化の低さを経験する、項目1~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記レシピエントが、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、臨床的に意義のある、生検上の慢性AMRを含む病理学的変化の低さを経験する、項目1~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記レシピエントは、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、血漿交換治療の必要性が低下する、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記レシピエントは、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、血漿交換治療の必要性が低下する、項目1~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記レシピエントが、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後に、臨床的に意義のある臓器移植後臓器機能障害の低下を経験する、項目1~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記レシピエントが、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある透析の必要性の低下を経験する、項目1~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記レシピエントが、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、臨床的に意義のある透析の必要性の低下を経験する、項目1~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記レシピエントが、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、安定的な腎機能を経験する、項目1~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記レシピエントが、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、安定的な腎機能を経験する、項目1~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
ヒト腎移植レシピエントにおいて抗体関連型拒絶反応(AMR)を低減させる方法であって、抗C5抗体またはその抗原結合断片の治療有効量を、腎同種移植の再かん流後に段階的な投薬スケジュールで前記レシピエントに投与することを含む方法であって、前記レシピエントは、ヒト生体ドナーに感作されており、および前記レシピエントは、移植前に約二週間以上の脱感作療法を受けており、
前記レシピエントは、移植後のおよそ最初の9週の間、移植後のおよそ最初の12カ月の間、および/または移植後のおよそ最初の36か月の間、前記抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、臨床的に意義のある低レベルの循環抗ドナー特異的抗体、臨床的に意義のある低レベルの急性組織損傷の形態的エビデンス、臨床的に意義のある抗体関連型拒絶反応の組織学的エビデンスの低さ、高生存率の上昇または生存率の上昇、臨床的に意義のある抗体関連型拒絶反応の組織学的エビデンスの低さ、臨床的に意義のある生検上の慢性AMRを含む病理学的変化の低さ、血漿交換治療の必要性の低下、臨床的に意義のある透析の必要性の低下、のうちの一つまたは複数を経験すること、を含む方法。
(項目32)
前記抗C5抗体またはその抗原結合断片は、静脈内注入を介して投与される、項目1~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記抗C5抗体またはその抗原結合断片は、皮下に投与される、項目1~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記レシピエントの抗C5抗体またはその抗原結合断片の血漿レベルは、移植後のおよそ最初の週の間、約50~約100μg/mLに維持される、項目1~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記レシピエントの抗C5抗体またはその抗原結合断片の血漿レベルは、移植後のおよそ最初の9週の間、約50~約100μg/mLに維持される、項目1~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記レシピエントに、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、およびプレドニゾンからなる群から選択される一つまたは複数の免疫抑制剤を投与することをさらに含む、項目1~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記抗C5抗体がエクリズマブである、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記抗C5抗体がBNJ441である、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記抗C5抗体がBNJ421である、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記抗C5抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ配列番号1、2、および3に記載されるCDR1、CDR2、およびCDR3重鎖配列を含み、ならびにそれぞれ配列番号4、5、および6に記載されるCDR1、CDR2、およびCDR3軽鎖配列を含む、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記抗C5抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ配列番号7に記載される配列を有するV ドメインと、配列番号8に記載される配列を有するV ドメインを含む、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記抗C5抗体またはその抗原結合断片が、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖定常領域を含む、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記抗C5抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ配列番号10および配列番号11に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖全体を含む、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記抗C5抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ配列番号19、18および3に記載されるCDR1、CDR2、およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に記載されるCDR1、CDR2、およびCDR3軽鎖配列を含む、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記抗C5抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ配列番号12に記載される配列を有するV ドメインと、配列番号8に記載される配列を有するV ドメインを含む、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記抗C5抗体またはその抗原結合断片が、配列番号13に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖定常領域を含む、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記抗C5抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ配列番号14および配列番号11に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖全体を含む、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
図1は、生体ドナー腎移植のレシピエントにおけるAMRを低減または予防する試験デザインを概略的に図示する。
定義
本明細書に使用される場合、「補体介在性損傷」という用語は、補体活性化が観察可能な、または計測可能な形で病態の原因となる病態を指す。例えば、補体介在性損傷は、補体活性化を介した細胞の破壊を特徴とし得る。
本明細書に使用される場合、「低減させる」という用語は、統計的に有意な量での低下を指す。例えば一つの実施形態において、低減とは、活性の部分的もしくは完全な阻害、または活性の低下もしくは減少を指す。一つの実施形態において、「低減させる」とは、参照レベルと比較して少なくとも10%までの減少を意味し、例えば参照サンプルと比較して、少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、または少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、または少なくとも約45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約55%、または少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または100%を含むそれ以下までの減少を意味するか、または参照レベルと比較してBOUT 10~100%の任意の減少を意味する。
本明細書に使用される場合、「発生率の低下」および「機能の改善」という用語は、有益な効果、例えば基準を越える向上または改善を指す。しばしば基準を超える改善は統計的に有意である。例えば「発生率の低下」および「機能の改善」とは、参照レベルと比較して少なくとも約10%の向上を指す場合があり、例えば少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または100%を含むそれ以下までの改善を指す場合があり、または参照レベルと比較して10~100%の任意の改善、または参照レベルと比較して、少なくとも約2倍、または少なくとも約3倍、または少なくとも約4倍、または少なくとも約5倍、または少なくとも約6倍、または少なくとも約7倍、または少なくとも約8倍、または少なくとも約9倍、または少なくとも約10倍の改善、または約2倍~10倍以上の任意の改善を指す場合がある。
本明細書に使用される場合、「安定的な腎機能」とは、Modification of Diet in Renal Disease 7(MDRD7)または血清クレアチニンによる糸球体ろ過率(計算値)により推測され得る腎機能を指す。概して、安定的な腎機能とは、糸球体ろ過率および血清クレアチニンにより推定される反復計測値の間で、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、2%未満、1%未満、または0.5%未満まで変化する腎機能を指す。例えば糸球体ろ過率および/または血清クレアチニンの1回、2回、3回、4回またはそれ以上の反復計測値は、腎機能に変化が存在するか否かを決定するために必要とされる場合がある。
本明細書に使用される場合、「移植」という用語は、臓器、例えば腎臓のヒトまたは非ヒト動物レシピエントにおける交換を指す。交換の目的は、ホストの罹患した臓器または組織を取り除き、ドナーの健康な臓器または組織とそれを交換することである。ドナーとレシピエントが同種である場合、移植は「同種移植」として知られる。ドナーとレシピエントが異なる種である場合、移植は「異種移植」として知られる。移植実施に必要な技術は、移植される臓器の性質によって大きく変化し、依存する。治療戦略としての移植の成功は、多くの起こりうる生理的な転帰に依存する。例えばホストは、抗体依存性の超急性拒絶反応メカニズムにより、細胞介在性の急性拒絶により、または慢性の変性プロセスにより新たな臓器を拒絶する場合がある。
レシピエントに関連して使用される「感作された」という用語は、例えば提供された臓器などの外来性組織に対し反応する抗体レベルが異常に高いレシピエントを指す。
本明細書に使用される場合、「脱感作」という用語は、循環DSAの量を減少させることによって、ドナー臓器に対して感作されたレシピエントへの腎移植を容易にするために使用されるDSA低減技術を指す。技術としては、例えば血漿交換(PP)による直接的な抗体除去、イムノグロブリン大量静注療法(この用語は免疫グロブリン大量静注療法と相互交換可能に使用される)(IVIg)を使用した免疫調節、そして様々な免疫抑制剤を使用してB細胞を枯渇させる試みが挙げられる。
本明細書に使用される場合、「拒絶」という用語は、臓器移植レシピエントの免疫反応が、移植された臓器、細胞または組織に対して、当該臓器の正常な機能を損なう、または破壊するのに充分な反応を仕掛けるプロセスを指す。免疫システムの反応は、特異的(抗体およびT細胞依存性)または非特異的(貪食、補体依存性など)なメカニズム、またはその療法を含み得る。
「有効量」という用語は、望ましい生物学的、治療的、および/または予防的な結果をもたらす剤の量を指す。
「例えば」および「(例えば)~など(等)の」という語およびそれらと文法的に同等なものに関して、「限定されない」という語句は、別段の明示がない限り、以下に従うことが理解される。本明細書で使用される場合、「約」という語は、実験誤差による変動を考慮することを意味する。本明細書に報告されるすべての測定値は、別段の明示がない限り、「約」という語が明文で用いられていても用いられていなくても、「約」という語によって変形されるものと理解される。本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに本発明で使用するための材料が本明細書に記載されていない限り、複数の指示対象を含み、その他に、当該分野で公知の他の適切な方法および材料もまた使用され得る。
本明細書で使用される場合、「対象(subject)」または「患者」という用語は相互交換可能に使用され、ヒト患者を含む。レシピエントまたはドナーは、対象である。
本明細書に使用される場合、「約二週間以上の脱感作療法」という用語は概して、約11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、もしくは31日の治療、または約2~約3、約3~約4、約2~約4、約1.5~2.5、約2.5~約3.5もしくは約3.5~約4.5週の治療をレシピエントが受けることを指す。同様に「約2週」とは、約11、12、13、14、15、16、もしくは17日、または約1.5~約2.5週を指す場合があり、「約3週」とは、約18、19、20、21、22、23、もしくは24日、または約2.5~約3.5週を指す場合があり、そして「約4週」とは、約25、26、27、28、29、30、もしくは31日、または約3.5~約4.5週を指す場合がある。
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解される意味と同じ意味を有する。本発明で使用するための方法および材料が本明細書に記載されており、当技術分野で公知のその他の適切な方法および材料も使用できる。材料、方法、および実施例は単に例示的なものであり、限定することを意図していない。本明細書に記載されるすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリー、およびその他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。矛盾する場合、定義を含めて本明細書が考慮される。
抗体関連型拒絶反応(AMR)
抗体関連型拒絶反応(AMR)、同種移植に対する抗体の作用から生じた拒絶反応は、腎移植成功にとって大きな障害である。この型の拒絶は重度で急速な同種移植片の機能障害と喪失をもたらす。Takemoto SK et al.Am J Transplant.2004 Jul;4(7):1033-41;McKenna RM et al.Transplantation.2000 Feb 15;69(3):319-26;Feucht HE,Opelz G.Kidney Int.1996 Nov;50(5):1464-75;およびMauiyyedi S et al.J Am Soc Nephrol.2002 Mar;13(3):779-87。
AMRの根底にある最も普遍的なメカニズムは、過去の抗原暴露を起源とする既往反応である。これらドナー特異的抗体(DSA:donor specific antibody)反応は通常、安定的であり、高レベルのDSAの急速な産生と、急性の同種移植片の機能障害を生じさせる。Singh N,Pirsch J,Samaniego M.Transplant Rev(Orlando).2009 Jan;23(1):34-46。AMRにおける損傷のメカニズムには、抗原-抗体の相互作用、補体活性化と炎症、そしてその結果としてのドナー組織の損傷を生じさせるDSAの産生を開始させる抗原が含まれる。Trpkov K et al.,Transplantation.1996 Jun 15;61(11):1586-92。
DSAの主要標的は、ドナー臓器の微小環境内の内皮細胞である。これにより補体カスケードが活性化され、毛細血管への損傷が始まる。補体活性化により、腎同種移植片の尿細管周囲毛細血管のC4d沈着が生じる。Collins AB et al.J Am Soc Nephrol.1999 Oct;10(10):2208-14;Halloran PF.Am J Transplant.2003 Jun;3(6):639-40.このC4d沈着は、AMR発生の重要な診断基準である。
移植臓器の生着率に対するAMRの影響は劇的であり、LeFaucheurおよびGlotzの研究において近年示されたように、初期の炎症状態が解消された後にも長く継続する。この単一施設試験の感作レシピエントの大規模コホートにおいて、調査者は、AMR治療が成功したレシピエントと、AMRが発生しなかったレシピエントの同種移植片の生着率を比較した。Lefaucheur and Glotz Trends in Transplant 4.2010,4;pp.3-10。
同種移植片の生着率に対するAMRの影響は、AMR治療が成功した場合であっても、表1のデータに示されているとおりである。ドナーに対し感作された、死後ドナー腎レシピエントのこの単一施設試験のデータを、AMRを発症したレシピエントと、発症しなかったレシピエントで移植腎の生着率を比較した。結果は、レシピエントが持続的なDSAを有し続けたか否かに関係が無かった。この結果から、AMRを発症したら治療介入するよりも、AMRの炎症病変を予防することが、移植にとって液性免疫障壁を越えるための重要な因子であるという概念が強く支持される。Lefaucheur and Glotz Trends in Transplant 4.2010,[page numbers?]。六週以内にAMRが発生した二例のエピソードを除けば、AMRは移植の四週以内に最も多く発生した。これは、超初期臨床イベントとしてのAMRを解説する、多くの研究者らによる文献における複数の報告と一致している。Montgomery RA,Zachary AA.Pediatr Transplant.2004 Dec;8(6):535-42;Thielke JJ et al.Transplantation.2009 Jan 27;87(2):268-73;Truong LD et al.,Arch Pathol Lab Med.2007 Aug;131(8):1200-8。
表1:AMRを伴う、および伴わないDSA+DD腎移植レシピエントの同種移植片の生着率
Figure 0007256741000001
これら追加報告の重要な結果を表2に要約する。Stegallらは、脱感作後に腎移植を受け、AMRを発症した19人の腎移植レシピエント群を報告している。すべてのAMR発症は移植後の最初の六週以内であり、最も多くは四週以内であった。Stegall MD et al,Am J Transplant.2006 Feb;6(2):346-51。Montgomeryらは、AMRのすべての症例が、移植後の最初の10日以内に発生したという別の62名の患者群を報告した。Montgomery RA,Zachary AA.Pediatr Transplant.2004 Dec;8(6):535-42。臨床的背景にかかわらず共通するテーマは、AMRの大部分の症例は、移植後、非常に早期に発生していると報告されていることである。
表2:腎移植におけるAMRに関する公表文献
Figure 0007256741000002
これらのデータから、AMRは、移植後早期に発症する病変であり、移植後、最初の一か月の間の急性炎症性AMR病変の予防の重要性が提示される。
AMRの脱感作プロトコール、予防と治療
DSA低減技術(脱感作)は、循環DSAの量を減少させることによって、ドナー臓器に対して感作されたレシピエントへの腎移植を容易にするために使用される。感作された生体ドナー移植を容易にするためのDSA低減技術は、進化し続けている。広範な文献のレビューにより、血漿交換(PP)を使用した直接的な抗体除去、免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)を使用した免疫調節、そして様々な免疫抑制剤を使用してB細胞を枯渇させる試みを含む、一連の技術が明らかとなっている。血漿交換とIVIgは良く研究されており、それら両方とも、臨床試験において有効であることが示されている。この結果は、JordanおよびPescovitzによる近年の報告で支持されており、当該報告では、米国の三か所の熟達した移植センターで行われた、移植前脱感作に対する血漿交換とIVIgを比較している。これらのグループは、IVIg治療の追加を伴う、または伴わない血漿交換(血漿を換える)を行っている。Jordan SC,Pescovitz MD.Clin J Am Soc Nephrol.2006 May;1(3):421-32。
AMRにおける補体系の役割
AMRは、DSAがドナー臓器の結果内皮上の受容体に結合したときに開始される非制御状態の補体介在性損傷から生じ得る。この抗体-抗原相互作用により、補体カスケードの活性化が生じ、その結果として、補体分解産物のC5aとC5bが産生される。C5aは、強力なアナフィラトキシンであり、炎症性メディエーターである一方で、C5bは、細胞膜障害複合体としても知られるC5b-9最終補体複合体の形成に必要な構成要素である。C5b-9は、白血球と血管細胞のアクチベーターであり、貯蔵顆粒からのメディエーターの分泌と、血小板α顆粒から細胞膜へのP-セレクチンの転位を刺激する。P-セレクチンは、血管内皮への単球と血小板の付着を開始させ、炎症性メディエーター産生の共刺激分子としての役割を果たす。さらにC5b-9で活性化された内皮細胞は、IL-8、組織因子、および単球遊走因子1(MCP-1)を合成する。これは組織損傷部位へのマクロファージ補充に重要な化学走化性因子である。
補体活性化は、補体タンパク質の副産物を測定することにより立証することができる。いくつかの補体成分が抗体-抗原複合体に結合し、一方で他の補体成分は、局所環境中に見出され得る。例えばC4dは、補体カスケードの基部の安定的な補体成分であるが、免疫組織学的技術により炎症に近い部分の組織標本において局在があり、同種移植生検標本の補体活性化マーカーとして使用されている。
HLA抗原
HLA分子は、膜結合型糖たんぱく質であり、処理済みの抗原性ペプチドに結合し、T細胞にそれらを提示する。HLA抗原の本質的な役割は自己認識の制御であり、すなわち微生物に対する防御である。産生された抗原の構造、及びその機能に応じて、HLA抗原にはHLAクラスIとクラスIIの二種のクラスがある。
HLAクラスI抗原は、身体のすべての有核細胞上に発現される。さらにそれらは血漿中にも可溶型で存在し、血小板の表面上に吸着する。赤血球もHLAクラスI抗原を吸着する。
HLAクラスII抗原の組織分布は、Bリンパ球、マクロファージ、内皮細胞および活性化Tリンパ球をはじめとする「免疫能力のある」細胞に限定されている。通常はHLAクラスIIを発現しない細胞上でのHLAクラスIIの発現は、インターフェロン-γのようなサイトカインに刺激され、移植状況下では急性移植片拒絶と関連する。
T細胞とB細胞の間でHLA発現には重要な違いがあり、これがクロスマッチの解釈に影響を与える。T細胞は構造的にHLAクラスIIを発現しない。ゆえにT細胞クロスマッチの結果は概して、HLAクラスIに対する抗体のみを反映している。B細胞はHLAクラスIとクラスIIの両方を発現する。これゆえ、陽性B細胞クロスマッチは、陽性T細胞クロスマッチよりも解釈が困難である。これはHLAクラスI、II、またはその両方に指向された抗体に起因し得る。T細胞クロスマッチ陽性という状況でのB細胞クロスマッチ陰性は、技術的なエラーが示唆される。自己抗体に起因するものではない陽性T細胞クロスマッチが背景にある中での移植は、かなり予後不良となる可能性がある。
B細胞CDCクロスマッチは、T細胞CDCクロスマッチのように超急性拒絶反応(HAR:hyper acute rejection)の予測指標ではない。B細胞クロスマッチは多くの場合、転帰の重大性を決定するまでの時間が多くあるときに、生体移植前の免疫的評価の一部として行われる。たとえば抗原被覆ビーズ(Luminex社、以下に検討される)などのより特異的な手段により決定されるDSA存在に関する情報と併せることで、B細胞CDCクロスマッチの結果はより意義深いものとなり得る。B細胞クロスマッチが陽性であり、クラスIまたはクラスII抗原に対する抗体が検出されない場合、この結果は擬陽性である可能性があり、一方で検出可能なDSAの存在下での陽性結果は、その特定されたDSAが補体を活性化することができるという点で機能的に関連し得るということの現れであり、拒絶反応リスクの増加と関連づけられていた。
クロスマッチ技術
クロスマッチは、所与のドナー移植片の急性血管拒絶反応を発生させる可能性があるレシピエントを特定する試みにおいて開発された。HARという現象は、前もって形成されたドナーに対する抗体の結果であり、ドナー特異的抗体(DSA)とも呼称されている。そうした抗体は通常、過去のHLA暴露の結果として、一般的には妊娠、輸血または過去の移植の結果として、形成されている。
すでに形成されていた抗体が、移植された腎臓中の血管内皮上に発現されたHLA抗原に結合することにより、補体カスケードの活性化とその結果としての血栓形成と移植片の梗塞がもたらされ、拒絶反応が生じる。
補体依存性細胞障害(CDC:Complement-Dependent Cytotoxicity)クロスマッチ
CDCクロスマッチは、ドナーリンパ球(HLA抗原を含有)上にレシピエントの血清(ドナー特異的抗HLA抗体を含有する可能性がある)を置くことを含む。細胞障害性反応(「陽性」とみなされる)は、すでに形成されたDSAの存在を示唆するものである。
検査の読み取り結果は、顕微鏡により決定された、生細胞に対する死細胞の割合である。ゆえにこの結果は、死細胞の割合に対しスコア化することが可能であり、0は死細胞無し、スコア2、4および6は溶解レベルの上昇を表している。この基準ではスコア2は低レベルの陽性であり、およそ20%の溶解(一般的に、陽性結果のカットオフとして扱われる)と一致する。スコア8は、全ての細胞が溶解していることを表し、起こり得る最も強力な反応を示唆している。スコアリングシステムを使用することで、反応強度の半定量的分析が可能になる。反応強度を決定する別の方法は、レシピエント血清の連続二倍希釈を使用したクロスマッチを繰り返すことである(しばしば「titered crossmatch」としても知られている)。この方法では希釈は通常、2、4、8、16、32、64分の1などまで行われる。
フロークロスマッチ技術
フロークロスマッチには、CDCクロスマッチと同じ初期基礎成分(すなわちドナーリンパ球とレシピエント血清)の使用が含まれる。この二つを混ぜ、その後、フルオレセイン標識されたヒトIgGに対する抗体(抗ヒトIgGフルオレセインイソチオシアネート[FITC])とともにインキュベートされる。このフルオレセイン標識抗体が、レシピエント血清中のIgG抗体すべてに結合する。その後、血清中のDSAがドナーリンパ球に結合した場合、これをフローサイトメトリーで検出することが可能である。
読み取り結果は、陽性または陰性としてシンプルに報告される場合もあり、またはさらに定量化されることもできる。対照を越えるフルオレセイン強度は、チャンネルシフトとも呼称され、これが報告される場合がある。一般的に、50を超える平均チャンネルシフトは、抗体が存在することを示唆し、150を超える場合には、非常に高リスクであることを示唆し、特別な事情がある場合を除き、腎移植は禁忌となる。300を超えるチャンネルシフトは通常、陽性細胞障害性クロスマッチと相関する。
ルミネックス(Luminex)検査
ルミネックス検査は、特定された抗体のHLA特異性を規定するという点で、CDCとフロークロスマッチを越える大きな利点をもたらす検査である。CDCクロスマッチが陽性または陰性という状況の中で、ルミネックスにより検出されるDSAの存在は、移植片生着率と急性拒絶反応リスクという点で予後的な重要性を有すると思われる。しかしながら陰性フロークロスマッチとDSAの重要性を決定するには不充分なデータしか存在していない。
ゆえに陽性結果は、ルミネックスビーズアッセイの蛍光度に基づいて弱、中程度、または強と格付けされ得る。この結果は、メジアン蛍光インデックス(MFI:median fluorescence index)としてスコア化されることもできる。しかしルミネックスビーズアッセイは、HLAの定性的な割当に対してのみ承認されている。MFIは、抗体力価に直接転換することはできない。その理由は、MFIはシンプルに結合抗体のマーカーを表しているに過ぎず、血清中の抗体濃度、抗原の立体構造と幾何学的配置、そして各抗原に対する抗体親和性をはじめとするいくつかの因子により影響を受けるためである。
糸球体ろ過量率
糸球体ろ過率(GFR:Glomerular filtration rate)は、腎臓がどの程度良好に機能しているかを測定するために使用される検査である。具体的には、糸球体を血液が毎分どのくらい通過するかを推定する。糸球体は、腎臓中の小さなフィルターであり、血液から老廃物をろ過する。GFRは、患者の腎疾患のステージを決定するために使用される場合もある。
GFRは、任意の溶質が自由にろ過され、腎臓により再吸収も分泌もされない場合に、クリアランス率と等しい。このように測定された率は、計測可能な血液量に由来する尿中の物質量である。GFRは、以下の式から算出され得る:
Figure 0007256741000003
尿濃度と尿量の積は、尿が集められている間に排泄された物質の質量に等しい。この質量を血漿濃度で割ることにより、血漿量が与えられる。そしてこの質量は元々上述の期間の間に元々由来していなければならない。GFRは、典型的には時間当たりの単位体積で記録される。例えば一分当たりのミリリットル(mL/分)である。
推定糸球体ろ過率(eGFR)を使用して、初期腎損傷がスクリーニングおよび検出され、ならびに腎臓の状態がモニタリングされる。これはクレアチニンテストを依頼し、推定糸球体ろ過率を算出することにより実施される。
eGFRは、Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration(CKD-EPI)方程式を使用して血清クレアチンから算出されてもよい。
CKD-EPI方程式は、以下の一つの方程式として表される:
eGFR=141 x min(Scr/κ,1)α X max(Scr/κ,1)-1.209 X 0.993年齢X 1.018[女性の場合]X 1.159[アフリカ系アメリカ人の場合]。
Scrは血清クレアチニン(mg/dL)であり、κは女性は0.7、男性は0.9であり、αは女性は-0.329、男性は-0.411であり、minは、Scr/κの最小値または1を示し、maxはScr/κの最大値または1を示す。
あるいは、推定糸球体ろ過率は、以下に表されるModification of Diet in Renal Disease(MDRD)7計算を使用して算出されてもよい。
MDRD 7 方程式(MDRD7)=170×[血清クレアチニン(mg/dL)]-0.999×[年齢]-0.176×[0.762患者が女性の場合]×[1.18患者が黒人の場合]×[血清尿素窒素濃度(mg/dL)]-0.170×[血清アルブミン濃度(g/dL)]0.318。
ヒトのGFRまたはeGFRは、表3を利用して、そのヒトの臨床履歴と症候状態と関連づけて解釈されなければならない。
表3:GFRおよび腎損傷
Figure 0007256741000004
拒絶反応のBanff分類
Banff分類は、腎同種移植病変の五個のカテゴリーを特徴とする。(1)AMR、(2)急性拒絶反応の疑い、(3)急性拒絶反応、(4)慢性硬化性同種移植腎症、および(5)その他-拒絶反応に起因するとはみなされない変化。
腎同種移植におけるAMRの診断は現在、2007年のthe Banff conference on Allograft Pathologyの開催中に確立された基準に基づいており、以下の三つの基本的特徴を含む:(1)急性または慢性的な組織損傷の形態的エビデンス、(2)尿細管周囲毛細血管におけるC4dの免疫病理学的染色、および(3)ドナーヒトリンパ球抗原に対する循環抗体の存在、またはドナー内皮細胞上に発現される他の抗原に対する循環抗体の存在。
腎同種移植生検ごとにC4d染色を行うべきと推奨されている。C4d染色は、尿細管周囲毛細血管中に沈着が存在しているときにのみ陽性とみなされる。C4dは、以下の四つのカテゴリーで半定量的にスコア化される:
(1)C4d染色無し((尿細管周囲)毛細血管の0%)
(2)C4d染色は最小限((尿細管周囲)毛細血管の0~10%)
(3)C4d染色は限局的((尿細管周囲)毛細血管の10~50%)
(4)C4d染色は広範性((尿細管周囲)毛細血管の50%超)
抗C5抗体
本明細書に記載の抗C5抗体は、補体成分のC5(例えばヒトC5)に結合し、C5aおよびC5bへのC5の切断を阻害する。本明細書で開示されている方法での使用に適した抗C5a抗体(またはそれから誘導されるV/Vドメイン)は、当技術分野で周知の方法を使用して生成することができる。あるいは、当技術分野で認識されている抗C5抗体を使用できる。C5に結合する、これら当技術分野で認識されている抗体のいずれかと競合する抗体もまた使用できる。
抗C5抗体の例は、それぞれ配列番号10および11に示される配列を有する重鎖と軽鎖を含有するエクリズマブ、またはその抗原結合断片およびそのバリアントである。エクリズマブ(ソリリス(登録商標)としても知られる)は、米国特許第6,355,245号に記載される。
エクリズマブ(注入用のh5G1.1-mAb溶液)はヒト化モノクローナル抗体であり、ヒト補体C5タンパク質に特異的な独自の結合特異性を有する。1324個のアミノ酸から構成され、分子量はおよそ148kDaであるエクリズマブは、ヒト補体成分C5を認識するマウスモノクローナル抗体(m5G1.1-mAb)から誘導された。抗体のヒト化は、マウス抗体の相補性決定領域(CDR)を、ヒト抗体由来の可変重鎖および軽鎖のフレームワーク領域へと移植することにより実現された。h5G1.1-mAbの定常領域は、ヒトκ軽鎖とハイブリッドIgGヒト重鎖を含む。重鎖CHドメイン、ヒンジ領域、およびCHドメインの最初の29アミノ酸は、ヒトIgGから誘導された。一方でCHドメインの残りの部分とCHドメインは、ヒトIgGに由来する。エクリズマブは発作性夜間ヘモグロビン尿症と、非定型溶血性尿毒症性症候群の治療に対してFDAと欧州医薬品庁(EMA)により承認されており、他の補体介在性疾患でも研究されている。Hillmen P et al.N Engl J Med.2006 Sep 21;355(12):1233-43;Richards SJ et al.Cytometry B Clin Cytom 2007 Sep;72(5):291-8;Nurnberger Jet al.N Engl J Med.2009 Jan 29;360(5):542-4。
他の実施形態では、抗体は、エクリズマブの重鎖および軽鎖のCDRまたは可変領域を含む。したがって一つの実施形態では、抗体は、配列番号7に記載される配列を有するエクリズマブのV領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号8に記載される配列を有するエクリズマブのV領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号1、2、および3に記載される配列を有する重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメイン、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に記載される配列を有する軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号7および8に記載されるアミノ酸配列を有するVおよびVL領域を含む。
別の例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号14および11で示す配列を有する重鎖および軽鎖を含む抗体BNJ441であるか、またはその抗原結合断片およびバリアントである。BNJ441(ALXN1210としても知られる)は、PCT/US2015/019225および米国特許第9,079,949号に記載される。BNJ441は、エクリズマブと構造的に関連するヒト化モノクローナル抗体(ソリリス(登録商標))である。BNJ441はヒト補体タンパク質C5に選択的に結合し、補体活性化の間にC5がC5aとC5bに切断されることを阻害する。この阻害により、炎症促進性メディエーターのC5aの放出と、細胞溶解性孔形成膜障害性複合体C5b-9の形成が妨害される一方で、微生物のオプソニン化と免疫複合体のクリアランスに必須である、補体活性化の基部または早期成分(例えばC3およびC3b)は保全される。
他の実施形態では、抗体は、BNJ441の重鎖および軽鎖のCDRまたは可変領域を含む。したがって1つの実施形態では、抗体は、配列番号12に記載された配列を有するBNJ441のV領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、配列番号8に記載された配列を有するBNJ441のV領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18および3に記載された配列を有する重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、それぞれ配列番号4、5、および6に記載された配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12および配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有するVHおよびVL領域を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号13に記載されるアミノ酸配列を有するBNJ441の重鎖定常領域を含んでもよい。
別の例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号10および11で示す配列を有する重鎖および軽鎖を含む抗体BNJ421であるか、またはその抗原結合断片およびバリアントである。
別の例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号20および11で示す配列またはその抗原結合断片およびそのバリアントを有する重鎖および軽鎖を含む。
他の実施形態では、抗体は、BNJ421の重鎖および軽鎖のCDRまたは可変領域を含む。したがって1つの実施形態では、抗体は、配列番号12に記載された配列を有するBNJ421のV領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、配列番号8に記載された配列を有するBNJ421のV領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18および3に記載された配列を有する重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、それぞれ配列番号4、5、および6に記載された配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12および配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有するVおよびV領域を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を有するBNJ421の重鎖定常領域を含んでもよい。
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許第8,241,628号および第8,883,158号に記載される7086抗体である。一つの実施形態では、抗体は、7086抗体の重鎖および軽鎖のCDRまたは可変領域を含んでもよい。別の実施形態では、抗体またはその断片は、それぞれ配列番号21、22、および23に記載された配列を有する重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、それぞれ配列番号24、25、および26に記載された配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3ドメインを含んでもよい。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号27に記載される配列を有する7086抗体のV領域と、配列番号28に記載される配列を有する7086抗体のV領域を含んでもよい。
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許第8,241,628号および第8,883,158号にさらに記載される8110抗体である。一つの実施形態では、抗体は、8110抗体の重鎖および軽鎖のCDRまたは可変領域を含んでもよい。抗体またはその断片は、それぞれ配列番号29、30、および31に記載された配列を有する重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、それぞれ配列番号32、33、および34に記載された配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3ドメインを含んでもよい。別の実施形態では、抗体は、配列番号35に記載される配列を有する8110抗体のV領域と、配列番号36に記載される配列を有する8110抗体のV領域を含んでもよい。
CDRの正確な境界は、異なる方法に従って様々に定義されている。一部の実施形態では、軽鎖可変ドメインまたは重鎖可変ドメイン内のCDRまたはフレームワーク領域の位置は、Kabatらの[(1991)“Sequences of Proteins of Immunological Interest.”NIH Publication No.91-3242,U.S.Department of Health and Human Services,Bethesda,MD]に定義されているとおりであり得る。このような場合には、CDRは、「Kabat CDR(カバットCDR)」(例えば、「Kabat LCDR2」または「Kabat HCDR1」など)と称することができる。一部の実施形態では、軽鎖可変領域または重鎖可変領域のCDRの位置は、(1989)Nature 342:877-883に定義されるとおりであり得る。したがって、これらの領域は、「Chothia CDR」(例えば、「Chothia LCDR2」または「Chothia HCR3」)と称することができる。一部の実施形態では、軽鎖可変領域および重鎖可変領域のCDRの位置は、KabatとChothiaとを(Kabat-Chothia)組み合わせた定義によって規定されているとおりとすることができる。このような実施形態では、これらの領域を「Kabat-ChothiaコンビCDR」と称することがある。Thomasら[(1996)Mol Immunol 33(17/18):1389-1401]は、KabatおよびChothiaの定義に従うCDR境界の特定を例示する。
抗体がタンパク質抗原に結合しているか否か、および/または、タンパク質抗原に対する抗体の親和性を決定する方法は、当技術分野において公知である。例えば、タンパク質抗原への抗体の結合は、ウェスタンブロット、ドットブロット、表面プラズモン共鳴(SPR)法(例えば、BIAcoreシステム;Pharmacia Biosensor AB社、スウェーデン、ウプサラおよびニュージャージー州ピスカタウェイ)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの様々な技術を使用して検出および/または定量化することができる。例えば、Benny K.C.Lo(2004)“Antibody Engineering:Methods and Protocols,” Humana Press(ISBN:1588290921);Johne et al.(1993)J Immunol Meth 160:191-198;Jonsson et al.(1993)Ann Biol Clin 51:19-26;およびJonsson et al.(1991)Biotechniques 11:620-627を参照のこと。
一つ実施形態では、抗体は、本明細書に記載される抗体と同じC5上のエピトープとの結合に競合するか、および/または本明細書に記載される抗体と同じC5a上のエピトープに結合する。二つ以上の抗体に言及して「同じエピトープに結合する」という語は、所与の方法によって決定されるように、抗体がアミノ酸残基のうちの同一セグメントに結合することを意味する。抗体が、本明細書に記載される抗体と「C5上の同じエピトープ」に結合しているか否かを決定する技術としては、例えば、エピトープの原子解析が提供される抗原抗体複合体の結晶のX線解析などのエピトープマッピング法、および水素/重水素交換質量分析法(HDX-MS)が挙げられる。その他の方法には、抗原配列内のアミノ酸残基の修飾に起因する結合の喪失が、エピトープ成分の表れとしばしばみなされるものである、ペプチド抗原断片または抗原の突然変異型のバリエーションに対する抗体の結合を監視することがある。さらに、エピトープマッピングのための計算的なコンビナトリアル法も使用することができる。これらの方法は、コンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリから特定の短いペプチドをアフィニティ単離する、関心の抗体の能力に依存している。同じVおよびVまたは同じCDR1、2および3配列を有する抗体は、同じエピトープに結合することが予想される。
「標的との結合に別の抗体と競合する」抗体は、他の抗体の該標的への結合を阻害(一部または完全に)する抗体を指す。二つの抗体が、標的への結合に関して相互に競合するか否か、すなわち、一方の抗体が、もう一方の抗体の標的への結合を阻害するかどうか、そしてどの程度まで阻害するかを、公知の競合実験を使用して決定することができる。特定の実施形態では、抗体は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%だけ、別の抗体と競合して、該別の抗体の標的への結合を阻害する。阻害または競合のレベルは、どの抗体が「阻害している抗体」(すなわち、最初に標的と共にインキュベートされた低温抗体)であるかによって、異なるものでありうる。競合抗体は、同じエピトープ、オーバーラップするエピトープ、または隣接し合うエピトープ(例えば、立体障害から明らかなように)に結合する。本明細書に記載され、本明細書に記載される方法で使用される抗C5抗体、またはその抗原結合断片は、当技術分野において認識される様々な技術を使用して生成することができる。
モノクローナル抗体は、当業者によく知られている様々な技術によって得られ得る。簡潔に述べると、所望の抗原で免疫化された動物由来の脾臓細胞は、通常、骨髄腫細胞との融合によって不死化される(Kohler&Milstein,Eur.J.Immunol.6:511-519(1976)を参照されたい)。代替的な不死化法としては、エプスタイン・バーウイルス、癌遺伝子、またはレトロウイルス、または当技術分野で周知の他の方法を用いた形質転換が挙げられる。単一の不死化細胞から生じるコロニーは、抗原に対して所望の特異性および親和性をもつ抗体の産生のためにスクリーニングされ、かかる細胞によって産生されるモノクローナル抗体の産生量は、脊椎動物宿主の腹膜腔への注射を含めた様々な技術によって増強されてもよい。あるいは、Huse,et al.,Science 246:1275-1281(1989)により概説される一般的なプロトコルに従って、ヒトB細胞からのDNAライブラリをスクリーニングすることによって、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片をコードするDNA配列を単離してもよい。
ヒトC5に対する任意の抗体(任意の種類の抗体を含む)、その抗原結合断片およびバリアント、抗体または断片を含むタンパク質が、本開示の範囲内にある。
「抗体」という語は当技術分野で公知である。「抗体」という語は、「免疫グロブリン」という用語と相互交換可能に使用される場合がある。簡潔に述べると、それは、二つの軽鎖ポリペプチドと二つの重鎖ポリペプチドとを含む全抗体を指すことができる。全抗体には、IgM、IgG、IgA、IgD、及びIgE抗体を含む異なる抗体アイソタイプが含まれる。「抗体」という語は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ化抗体またはキメラ抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体(primatized antibody)、脱免疫化抗体、および完全ヒト抗体を含む。抗体は、例えば、ヒトなどの哺乳動物、非ヒト霊長類(例えば、オランウータン、ヒヒ、またはチンパンジー)、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、アレチネズミ(gerbil)、ハムスター、ラット、およびマウスなどの種々の種のいずれかにおいて作られるか、またはそれらに由来しうる。抗体は、精製抗体または組換え抗体とすることができる。
抗体はまた、少なくとも一つの免疫グロブリンドメインを含む改変タンパク質または抗体様タンパク質とすることができる(例えば、融合タンパク質)。改変タンパク質または抗体様タンパク質はまた、二重特異性抗体もしくは三重特異性抗体、または二量体、三量体もしくは多量体の抗体、またはダイアボディ、DVD-Ig、CODV-Ig、Affibody(登録商標)もしくはNanobody(登録商標)とすることができる。
「抗体断片」、「抗原結合断片」という語、または類似の語は、当技術分野で公知であり、例えば、標的抗原(例えば、ヒトC5)に結合して該標的抗原の活性を阻害する能力を保持する抗体の断片を指す。かかる断片としては、例えば、一本鎖抗体、一本鎖Fv断片(scFv)、Fd断片、Fab断片、Fab’断片、またはF(ab’)2断片が挙げられる。scFv断片は、scFvの由来となる抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域との両方を含む一本鎖ポリペプチドである。さらに、細胞内抗体(intrabody)、ミニボディ(minibody)、トリアボディ(triabody)、およびダイアボディもまた、抗体の定義内に含まれ、本明細書に記載の方法での使用に適合する。例えば、Todorovska et al.(2001)J Immunol Methods 248(1):47-66;Hudson and Kortt(1999)J Immunol Methods 231(1):177-189;Poljak(1994)Structure 2(12):1121-1123;Rondon and Marasco(1997)Annual Review of Microbiology 51:257-283を参照されたい。抗原結合断片は、重鎖ポリペプチドの可変領域、および軽鎖ポリペプチドの可変領域も含みうる。従って、抗原結合断片は、抗体の軽鎖ポリペプチドおよび重鎖ポリペプチドのCDRを含むことができる。
「抗体断片」という語はまた、例えば、ラクダ化された(camelized)単一ドメイン抗体等である単一ドメイン抗体を含み得る。例えば、Muyldermans et al.(2001)Trends Biochem Sci 26:230-235;Nuttall et al.(2000)Curr Pharm Biotech 1:253-263;Reichmann et al.(1999)J Immunol Meth 231:25-38;PCT出願国際公開第94/04678号および第94/25591号、ならびに米国特許第 6,005,079号を参照されたい。「抗体断片」という語はまた、単一ドメイン抗体が形成されるように修飾を有する二つのVドメインを含む単一ドメイン抗体を含む。
プロトコール
本開示は、ヒト腎移植レシピエントにおいて抗体関連型拒絶反応(AMR)を低減させる方法を提供するものであり、当該方法は、抗C5抗体またはその抗原結合断片の治療有効量を、腎同種移植の再かん流後に段階的な投薬スケジュールで、当該レシピエントに投与することであって、当該レシピエントはヒト生体ドナーに対し感作されており、そして当該レシピエントは移植前に約二週間以上の脱感作療法を受けること、を含む。
本開示は、ヒト腎移植レシピエントにおいて抗体関連型拒絶反応(AMR)を低減させる方法をさらに提供するものであり、当該方法は、抗C5抗体またはその抗原結合断片の治療有効量を、腎同種移植の再かん流後に段階的な投薬スケジュールで当該レシピエントに投与することであって、当該レシピエントは、ヒト生体ドナーに感作されており、および当該レシピエントは、移植前に約二週間の脱感作療法を受けており、当該レシピエントは、移植後のおよそ最初の9週の間、移植後のおよそ最初の12カ月の間、および/または移植後のおよそ最初の36か月の間、以下のうちの一つまたは複数を経験すること、を含む:抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、臨床的に意義のある低レベルの循環抗ドナー特異的抗体、臨床的に意義のある低レベルの急性組織損傷の形態的エビデンス、臨床的に意義のある抗体関連型拒絶反応の組織学的エビデンスの低下、高生存率の上昇または生存率の上昇、臨床的に意義のある抗体関連型拒絶反応の組織学的エビデンスの低さ、臨床的に意義のある生検上の慢性AMRを含む病理学的変化の低さ、血漿交換治療の必要性の低下、臨床的に意義のある透析の必要性の低下。
本開示はさらに、抗C5抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物を、およそ週に4回、週に2回、週に1回、2週ごとに1回、3週ごとに1回、4週ごとに1回、5週ごとに1回、6週ごとに1回、8週ごとに1回、12週ごとに1回の投与頻度で、または治療反応がある限りはより低い頻度で、対象に投与することを含む方法を提供する。
ある実施形態において、本方法は、生体ドナーを選択すること、腎移植レシピエントを選択することであって、当該レシピエントは、当該ドナーに感作されていること、脱感作療法を移植前にレシピエントに施すこと、当該ドナーの腎臓を、当該レシピエントに移植すること、そして抗補体C5抗体、またはその抗原結合断片の治療有効投与量を当該レシピエントに投与すること、を含む。
ドナーとレシピエントの両方が、ヒトであってもよい。
ある実施形態において、レシピエントの医療歴は、以下の感作イベントのうちの少なくとも一つを含む:過去の固形臓器または組織の同種移植、妊娠、輸血、および過去の特定ドナーHLAへの暴露。ある実施形態において、当該レシピエントの医療歴は、過去のHLAへの暴露を含む。ある実施形態において、レシピエントは、脱感作療法を行う前に、ドナー特異的抗体を有している。ある実施形態において、当該過去のHLAへの暴露は、過去の固形臓器もしくは組織の同種移植、妊娠、輸血、または過去の特定ドナーHLAへの暴露の内の一つまたは複数を含む。
ある実施形態において、脱感作療法は、血漿交換治療を含む。多くの場合、脱感作療法は、免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)を含む。
脱感作療法の期間は、少なくとも約1日、約1週間、または約2週間であってもよい。
ある実施形態において、抗C5抗体またはその抗原結合断片の治療有効投与量は、腎同種移植再かん流の約1時間前に投与される約1200mgの投与量を含む、段階的な投薬スケジュールで投与される。多くの場合、抗C5抗体またはその抗原結合断片の投与量は、移植後約1日目、約7日目、約14日目、約21日目、および約28日目で投与される約900mgの投与量を含む。抗C5抗体またはその抗原結合断片の有効投与量は、移植後約5週目、約7週目、および約9週目で投与される約1200mgの投与量を含んでもよく。抗C5抗体またはその抗原結合断片の有効投与量は、腎同種移植再かん流の約1時間前に投与される約1200mgの投与量を含んでもよく、約900mgの投与量が、移植後約1日目、約7日目、約14日目、約21日目、および約28日目で投与され、そして1200mgの投与量が、移植後約5週目、約7週目、および約9週目で投与される。一部の実施形態では、治療有効投与量は、移植当日の1200mgの投与量を含み、そして以下の移植後の日での900mgのエクリズマブを含む:1、7、14(±2日)および21(±2日)。治療有効投与量は通常、以下の移植後の週での1200mgのエクリズマブの投与もさらに含む:5週目(±2日)、7週目(±2日)、および9週目(±2日)。
ある実施形態において、移植当日に抗C5抗体(例えばエクリズマブ)が、腎同種移植再かん流前に投与されてもよい。しばしば抗C5抗体(例えばエクリズマブ)は、腎同種移植再かん流の約30分~約3時間前に投与される。ある実施形態において、抗C5抗体(例えばエクリズマブ)は、腎同種移植再かん流の約1時間前に投与される。
ある実施形態において、抗C5抗体(例えばエクリズマブ)の1日目の投与量は、腎同種移植再かん流の約18時間~約30時間後に投与される。ある実施形態において、1日目の投与量は、腎同種移植再かん流の約24時間に投与される。
ある実施形態において、当該レシピエントの抗C5抗体またはその抗原結合断片の血漿レベルは、移植後のおよそ最初の週の間、約50~約100μg/mLに維持される。一部の実施形態において、当該レシピエントの抗C5抗体またはその抗原結合断片の血漿レベルは、移植後のおよそ最初の9週の間、約50~約100μg/mLに維持される。抗体の血漿レベルを測定する方法および決定する方法は、当分野に公知である。
ある実施形態において、当該レシピエントは、補体依存性細胞障害性クロスマッチ陽性の既往を有する。当該レシピエントは、約300~約500の平均チャンネルシフトのB細胞フローサイトメトリークロスマッチを有してもよい。場合により、当該レシピエントは、約300~約500の平均チャンネルシフトのT細胞フローサイトメトリークロスマッチを有する。
当該レシピエントは、単一抗原ビーズアッセイにより特定されたドナー特異的抗体を、約3000を超える単一平均蛍光強度で有する。当該レシピエントは、約3000~約6000の単一平均蛍光強度を有してもよい。場合により、当該レシピエントは、約3000~約12000の単一平均蛍光強度を有する。
AMRの診断は、循環抗ドナー特異的抗体と、急性組織損傷の形態的エビデンスの存在に基づいてもよい。急性組織損傷のエビデンスは、生検に基づいてもよい。AMRの診断は、移植生検上でBanffクラスIIまたはIIIのAMRと一致する組織学的所見を示すレシピエントに基づいてもよい。
本開示方法は、当該レシピエントに少なくとも一種の免疫抑制剤の投与をさらに含んでもよい。例示的な免疫抑制剤としては、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、およびプレドニゾンが挙げられる。
さらなる実施形態において、当該方法は、当該レシピエントに血漿交換を施す工程を含んでもよい。当該方法は、当該レシピエントに免疫グロブリンを投与する工程も含んでもよい。一部の実施形態において、当該方法は、当該レシピエントに血漿交換治療と免疫グロブリン治療の両方を施す工程を含んでもよい。
当該レシピエントにおけるAMRの症状は、急性移植片機能障害、(移植後の底を越えるクレアチニンの上昇)を含んでもよく、および多くの場合、以下の三つのうちの二つを含む:循環ドナー特異的抗体の存在、移植片生検上のBanffクラスIIまたはIIIのAMRに一致する組織学的所見、および移植片生検上の尿細管周囲毛細血管のc4d陽性。
当該レシピエントは、18~75歳のヒトの成人であってもよい。
転帰
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある低レベルの循環抗ドナー特異的抗体を経験する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12か月の間に、臨床的に意義のある低レベルの循環抗ドナー特異的抗体を経験する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある低レベルの急性組織損傷の形態的エビデンスを経験する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12か月の間に、臨床的に意義のある低レベルの急性組織損傷の形態的エビデンスを経験する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後約9週目で、臨床的に意義のある移植片生着率の上昇を経験する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後約12か月目で、臨床的に意義のある移植片生着率の上昇を経験する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後約9週目で、生存率の上昇を経験する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後約12か月目で、生存率の上昇を経験する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後約36か月目で、生存率の上昇を経験する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある抗体関連型拒絶反応の組織学的エビデンスの低さを経験する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12か月の間に、臨床的に意義のある抗体関連型拒絶反応の組織学的エビデンスの低さを経験する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある、生検上の慢性AMRを含む病理学的変化の低さを経験する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12か月の間に、臨床的に意義のある、生検上の慢性AMRを含む病理学的変化の低さを経験する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、血漿交換治療の必要性が低下する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12か月の間に、血漿交換治療の必要性が低下する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後に臨床的に意義のある臓器移植後臓器機能障害の低下を経験する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある透析の必要性の低下を経験する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12か月の間に、臨床的に意義のある透析の必要性の低下を経験する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、安定的な腎機能を経験する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法において、当該レシピエントは、当該抗体またはその抗原結合断片を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12か月の間に、安定的な腎機能を経験する。
ある実施形態において、本開示方法は、少なくとも六カ月間の腎同種移植片の生着をもたらす。ある実施形態において、腎同種移植片は、少なくとも一年間生着する場合がある。ある実施形態において、腎同種移植片は、少なくとも三年間生着する。腎同種移植片は、少なくとも五年間生着する場合がある。当該方法は、レシピエントの残りの人生の間、腎同種移植片を生着させる場合がある。
組成物および製剤
本開示は、抗C5抗体またはその抗原結合断片を患者(腎移植レシピエント)に投与することを含む方法を提供するものであり、この場合において当該抗C5抗体またはその抗原結合断片は、医薬組成物内に含有される。これら医薬組成物は適切な担体、賦形剤、および適切な輸送、送達、耐性をもたらす他の剤とともに製剤化される。多くの適切な製剤が、以下のすべての薬剤師に公知の処方に見出すことができる:Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PA。これら製剤はたとえば粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、オイル、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有小胞(例えばLIPOFECTIN(商標))、DNA複合体、無水吸収ペースト、水中油および油中水のエマルション、エマルションカルボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固形ゲル、およびカルボワックスを含有する半固形混合物を含む。Powell et al.”Compendium of excipients for parenteral formulations” PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238-311も参照のこと。
様々な送達システムが公知であり、例えばリポソーム、微粒子、マイクロカプセル、変異型ウイルスを発現することができる組み換え細胞、受容体介在性エンドサイトーシスでの封入などを使用して医薬組成物を投与することができる。(例えばWu et al.,1987,J.Biol.Chem.262:4429-4432を参照)。投与経路は、任意の適切な経路であってもよく、限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、気管内、硬膜外、および経口の経路が挙げられる。組成物は、任意の簡便な経路、例えば注入またはボーラス注射により、上皮または皮膚粘膜を介した吸収(例えば経口粘膜、直腸粘膜、腸管粘膜など)を介した吸収により投与されてもよく、および他の生物活性剤とともに投与されてもよい。
本明細書に開示される医薬組成物は、標準的な針とシリンジを用いて皮下または静脈内に送達されることができる。さらに皮下送達に関しては、ペン送達デバイスが、本発明の医薬組成物の送達に容易に応用できる。そのようなペン送達デバイスは、再使用可能またはディスポーザブルであってもよい。再使用可能なペン送達デバイスは概して、医薬組成物が入った交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物のすべてが投与され、そのカートリッジは空になった時点で、その空のカートリッジは容易に廃棄され、医薬組成物が入った新たなカートリッジと交換されることができる。その後、ペン送達デバイスは再使用されることができる。ディスポーザブルのペン送達デバイスには、交換可能なカートリッジはない。むしろディスポーザブルなペン送達デバイスは、そのデバイス内の容器中に保持された医薬組成物で前もって充填されている。その容器の医薬組成物が空になった時点で、デバイス全体が廃棄される。
多くの再使用可能なペンおよびオートインジェクター送達デバイスが、本発明医薬組成物の皮下送達に応用できる。例としては数例ではあるが、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.、ウッドストック、イギリス)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems社、バーグドーフ、スイス)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(イーライリリー社、インディアナポリス、インディアナ州)、NOVOPEN(商標)I、IIおよびIII(Novo Nordisk社、コペンハーゲン、デンマーク)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk社、コペンハーゲン、デンマーク)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson社、フランクリンレークス、ニュージャージー州)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(サノフィ-アベンティス社、フランクフルト、ドイツ)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明医薬組成物の皮下送達に応用できるディスポーザブルのペン送達デバイスの例としては、数例ではあるが、SOLOSTAR(商標)ペン(サノフィ-アベンティス社)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk社)、およびKWIKPEN(商標)(イーライリリー社)、SURECLICKTMオートインジェクター(Amgen社、サザンオークス、カリフォルニア州)、PENLETTM(Haselmeier社、,シュトゥットガルト、ドイツ)、EPIPEN(Dey,L.P.)、およびHUMIRATM Pen(Abbott Labs社、アボットパーク、イリノイ州)が挙げられるが、これらに限定されない。
洞への直接投与に関しては、本明細書に開示される医薬組成物は例えばマイクロカテーテル(例えば内視鏡とマイクロカテーテル)、エアロゾライザー、粉末ディスペンサー、ネブライザー、または吸入器などを使用して投与されてもよい。当該方法は、抗C5抗体またはその抗原結合断片を、エアロゾル化製剤中で、その必要のある対象に投与することを含む。例えばエアロゾル化抗C5抗体またはその抗原結合断片は、患者の喘息を治療するために投与されてもよい。エアロゾル化抗体は、例えばUS8178098に記載されるように調製することができる。当該文献はその全体で本明細書に組み込まれる。
ある状況において、医薬組成物は制御放出システム中で送達されることができる。一つの実施形態において、ポンプが使用されてもよい(1990,Science 249:1527-1533;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照)。別の実施形態において、高分子材料を使用することもできる。Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),1974,CRC Pres.,Boca Raton,Floridaを参照のこと。さらに別の実施形態において、制御放出システムは、組成物の標的に近接して置くことができ、ゆえに必要とするのはわずかな全身投与量のみである(例えばGoodson,1984,in Medical Applications of Controlled Release,supra,vol.2,pp.115-138を参照のこと)。他の制御放出システムは、Langer,1990,Science 249:1527-1533による概説に検討されている。
注射用調製物は、静脈内、皮下、皮内、および筋肉内注射、点滴などの剤型を含んでもよい。これら注射用調製物は、公知の方法により調製されてもよい。例えば注射用調製物は、上述の抗体またはその塩を、慣例的に注射用に使用されている滅菌水性媒体中で、または油性媒体中で溶解させ、懸濁させ、または乳化させるこよにろい調製されてもよい。注射用水性媒体として例えば生理学的食塩水、グルコースおよび他の助剤を含有する等張液があり、それらはアルコール(例えばエタノール)、ポリアルコール(たとえばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えばポリソルベート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加物)]などの適切な可溶化剤と併用して使用されてもよい。油性媒体としては、例えばゴマ油、大豆油などが利用されており、それらは安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と併用して使用されてもよい。そのように調製される注射物は、適切なアンプル内に充填されることが好ましい。
上述の経口用途または非経口用途用の医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するようにされた単位用量での剤型に調製されてもよい。そのような単位用量の剤型としては例えば、錠剤、丸剤、カプセル、注射液(アンプル)、座薬などが挙げられる。
本明細書に開示される方法に従い患者に投与される抗体の投与量は、患者の年齢と大きさ、症状、状態、投与経路などに応じて変化し得る。好ましい投与量は、典型的には、体重または身体の表面積に従い算出されるであろう。状態の重篤度に応じて、治療頻度と期間が調節され得る。抗C5抗体またはその抗原結合断片を含有する医薬組成物の有効用量および投与スケジュールは、経験的に決定されてもよい。たとえば患者の進行状況を定期評価によりモニタリングすることができ、投与量はそれに従い調整することができる。さらに、種間での用量スケーリングは、当分野に公知の方法を使用して行うことができる(例えばMordenti et al.,1991,Pharmaceut.Res.8:1351)。
抗C5抗体またはその抗原結合断片は、固定投与量として投与されることができ、または1キログラム当たりのミリグラム投与量(mg/kg)で投与されることができる。限定の意図は全くないが、例示的な用量範囲としては例えば1~100μg/kg、0.5~50μg/kg、0.1~100μg/kg、0.5~25μg/kg、1~20μg/kg、および1~10μg/kg、1~100mg/kg、0.5~50mg/kg、0.1~100mg/kg、0.5~25mg/kg、1~20mg/kg、および1~10mg/kgが挙げられる。抗C5抗体またはその抗原結合断片の例示的な用量としては限定されないが、0.1μg/kg、0.5μg/kg、1.0μg/kg、2.0μg/kg、4μg/kg、および8μg/kg、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、4mg/kg、および8mg/kgが挙げられる。
本明細書に開示される方法に従い対象に投与される抗C5抗体またはその抗原結合断片の量は、概して、治療有効量である。本明細書に使用される場合、「治療有効量」という文言は、レシピエントが、治療を行わない場合と比較して、抗体関連型拒絶反応を発生させるであろう可能性を低下させる抗C5抗体またはその抗原結合断片の量を意味する。
抗C5抗体またはその抗原結合断片の治療有効量は、約100mg~約2500mg、例えば約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、および約2000mgであってもよい。ある実施形態において、600mg、900mg、1200mgまたは1500mgの抗C5抗体またはその抗原結合断片が投与される。
ある実施形態において、抗C5抗体またはその抗原結合断片は、静脈内注入を介して、または皮下に投与される。
ある実施形態において、本明細書に開示される方法は、レシピエントに、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、およびプレドニゾンからなる群から選択される一つまたは複数の免疫抑制剤を投与することをさらに含む。
キット
本開示は、抗C5抗体もしくはその抗原結合断片、またはその組成物(または単位剤型および/または製造品)を含有するキットを提供するものであり、本明細書に開示される使用方法に関する説明書をさらに含んでもよい。本明細書に記載のキットは、市販およびユーザーの見地から望ましい他の物質をさらに含んでもよく、他の緩衝剤、希釈剤、充填剤、針、シリンジ、および本明細書に記載されるいずれか方法を実施するための説明書を備えた添付文書が挙げられる。
実施例1:脱感作療法を必要とする生体ドナー腎移植レシピエントのAMRの予防における、エクリズマブの安全性および有効性を決定するための無作為化、非盲検、多施設試験
無作為化、多施設、非盲検の第II相の二群並行試験が行われ、移植前の脱感作療法を必要とする生体ドナー腎移植の感作レシピエントにおけるAMRリスク低減でのエクリズマブの安全性および有効性が示された。
本試験の主目的は、移植前の脱感作療法を必要とする生体ドナー腎移植の感作レシピエントにおいてAMRを予防するエクリズマブの安全性および有効性が示すことであった。第二の目的は、プラセボと比較したエクリズマブの総合的な安全性と忍容性の特徴解析、および移植片機能、対象の生存率と移植臓器の生着率、生検により明らかにされる急性拒絶反応を含む、追加の有効性測定値による、プラセボと比較したエクリズマブの有効性の特徴解析である。
脱感作され、移植審査を通過した対象を、治療群またはSOC対照群のいずれかに無作為化した。エクリズマブ治療群患者は、移植後9週間、エクリズマブ(被験薬剤)を投与された。SOC対照群患者は、各参加試験施設でのSOC選択に従いAMRに対する予防的療法が投与された。
以下は、本実施例において使用され得る略語の表である。
表4:略語表
Figure 0007256741000005
Figure 0007256741000006
Figure 0007256741000007
治験の全般的デザイン
適切にスクリーニングされた患者が本試験に登録された後、患者は移植前に約二週間の脱感作療法を受けることが見込まれた。個々の患者に行われた脱感作療法の実際の長さは、患者の移植チームの臨床的判断に基づいた。脱感作され、治験責任医師による移植審査を通過した患者を、本試験の治療群またはSOC対照群のいずれかに無作為化した。全ての患者が、標準的な免疫抑制療法、予防的薬物投与、および移植後の治療を受けた。主要エンドポイント決定に対するAMR診断は、「正当な理由がある」腎生検に基づいた。さらにあらかじめ決められた時点で、プロトコールの生検が全ての患者に対し行われた。全ての患者が、標準的な検査値、DSA力価、TFXM、BFXM、補体依存性細胞障害(CDC)、推定糸球体ろ過率(eGFR)、ならびに主要エンドポイントおよび副次的エンドポイントならびに安全性の評価のための他の臨床的および検査的パラメーターに関し、スクリーニングを受けた。データの一次解析は、全ての患者が移植後12か月に達した後に行われた。しかしながら両試験群とも、移植後18か月、24か月および36か月で追加の経過観察を受けて、患者の生存率および移植片生着率、腎疾患ならびに疾患状態が評価された。
試験期間(年)
本試験は、完了までおよそ5年が必要となると推定された。以下は、本試験の予測主要タイムラインであった:(a)最初の患者が登録されたと推定される日付2011年第4四半期、(b)最後の患者が、最初に来院したと推定される日付:2013年第4四半期、(c)最後の患者が完了したと推定される日付:2014年第4四半期、および(d)最後の患者の3年の追跡調査データ収集を完了したと推定される日付:2016年第4四半期。
本試験の完全な登録には北アメリカ、EUおよびオーストラリアのおよそ45か所の腎移植センターを必要とするであろうと推定された。
スクリーニング/登録:
試験サイトの選択基準により生体ドナー腎移植を受け、以下に規定されるように生体ドナーに対して感作された患者が候補であるとみなされ、本試験の登録の対象となった。登録対象の候補者は、インフォームドコンセント用紙(ICF)に署名を行い、試験サイトの現地検査室と、確認のために中央検査室に送付された二重標本で、基準スクリーニングを受けた。中央検査室標本の値は、その候補者が本試験のエントリーとその後の脱感作の登録基準に合致していることの確認に利用された。
感染性疾患のスクリーニング:
移植前の感染性疾患評価を、全ての患者に対し、スクリーニング分析の一部として実施した。患者の疫学的リスク、過去の医療歴、および/または現在進行中の感染エビデンスを決定するための評価は、移植準備において行われた。この評価は、感染性疾患(ID)専門の医師により行われるのが好ましい。
評価には、アスペルギルスのリスク因子を含めた。過去の医療歴により決定される疫学的リスク因子が特定された患者のプレスクリーニング検査には、胸部CTと、ID専門家の所見および/または推奨により必要とみなされた場合に誘発喀痰培養および血清ガラクトマンナン検査を含む微生物検査が含まれた。
髄膜炎菌(N.meningitidis)ワクチン接種
試験対象患者基準のすべてが合致し、および試験除外患者基準が一つも合致しなかった場合、患者は髄膜炎菌(N.meningitidis)に対しワクチン接種された(ワクチンメーカーにより規定される能動的接種期間内にまだワクチン接種されていなかった場合)。全ての患者が、インフォームドコンセントへの署名後、可能な限りすぐにワクチン接種され、その30日後に再ワクチン接種された。30日目のブースターワクチン接種の前に患者が脱感作に成功していた場合、試験センターは、当該患者が、エクリズマブの最初の投与の少なくとも14日前に初回のワクチン接種を受けていた場合には、移植へと進める。ブースター投与は、初回投与の30日後に投与された。患者が、本試験の登録前に、ワクチンメーカーに規定される能動的接種期間内に過去にワクチン接種をされていた場合には、患者が同意書に署名した後に必要とされるのはブースター投与のみであった。もし30日間のブースターワクチンが、移植後の最初の週内となる場合、ブースターワクチンは、移植後の第二の週まで延期された。髄膜炎菌(N.meningitidis)の四価複合体化ワクチンを、本試験に必須とした。個々の臨床試験センターは、エクリズマブ治療の間に患者へ予防的抗生物質投与を行う選択肢を有していた。髄膜炎菌ワクチンに対する免疫反応を評価する副試験が、選択されたセンターで20名の患者に対し行われた。
脱感作のスクリーニング
本試験の登録は、生体腎移植の候補者であり、以下に詳述された三つの基準パラメーターに従い自身の生体ドナーに対し感作された患者に制限された。これらの基準に合致した患者が本試験を継続し、脱感作へと進められた。
DSA、CDCおよびフロークロスマッチの現地検査室分析のために二重サンプルが集められ、中央検査室標本を使用して、試験適格性と脱感作に関して患者を選択した。
感作イベント(過去のヒト白血球抗原[HLA]への暴露に関し、治験責任医師が記入した病歴により決定)。例えば(包括的なリストではないが):(a)過去の固形臓器または組織の同種移植、(b)妊娠、(c)輸血、および(d)過去のドナーHLAへの暴露。
臨床病歴が、ドナー特異的抗体(DSA)暴露と合致していた場合には:(a)DSAは、メーカーの添付文書により記載されるとおりに単一抗原ビーズ(SAB)アッセイを本試験の中央検査室で行うことにより特定された(Luminex LabScreenアッセイ)。
SABによるDSAが存在した場合、次に患者は中央検査室に従い陽性補体依存性細胞障害性(CDC)クロスマッチ(現在または過去)、または陽性B細胞フロークロスマッチ(BFXM)および/もしくはT細胞フロークロスマッチ(TFXM)を受ける。
無作為化
適切に脱感作され、PIおよび現地センターの標準的なプラクティスにより移植の安全性が決定されたすべての患者は、治療群またはSOC対照群のいずれかに1:1で無作為化された。エクリズマブ治療群:患者は同種移植再かん流のおよそ一時間前にエクリズマブの一回投与を受け、移植後9週間、エクリズマブで治療された。SOC対照群:AMR予防に関する移植センターのSOCで、患者は移植後に治療された。さらに無作為化は、(a)PPおよび免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)、(b)PP単独、(c)IVIg単独を使用した移植前脱感作プロトコールにより階層化された。
脱感作プロトコール
対象患者基準のすべてが合致し、および除外対象患者基準が一つも合致せず、ならびに中央検査室で取得された結果から適格性が確認された患者は、移植センターのSOCプロトコールである血漿交換法(PP)および/または免疫グロブリン大量静注療法IVIgを使用して当該患者の生体ドナーに対し脱感作された。
リツキシマブは、薬剤-薬剤の相互作用の可能性があったため、移植前脱感作療法の一部としては全ての患者で禁忌とされた。
各移植センターは、脱感作プロトコールとして当該センターのSOCを選択した。選択された脱感作プロトコールは、試験期間を通じて、当該センターの全ての患者に対して等しく使用されなければならない。脱感作プロセスの完了は、移植センターの臨床診療に基づいた。
脱感作が行われた後、全ての患者は、当該移植センターの標準的な診療によって移植の安全性を決定された。この評価には、以下の内の少なくとも一つが含まれた:CDCクロスマッチ、細胞系フロークロスマッチ、またはSAB(単一抗原ビーズ)検査。
現地検査室の検査サンプルは、脱感作の後、および移植前に取得され、脱感作と、移植審査の通過が評価された。二重サンプルが取得され、中央検査室に送付された。現地検査室の標本は、治験責任医師により使用され、移植の適合性を判断された。中央検査室と現地検査室の両方からのルミネックス系SABアッセイの結果が集められ、本試験データベースに入れられた。
主要エンドポイント
主要複合エンドポイントは、a)生検により明らかとされるAMR、b)移植片喪失、c)患者の死、またはd)追跡調査の喪失、の発生として規定される、9週目での移植後治療の失敗率である。
AMDの診断は、腎同種移植片の機能障害と、「正当な理由」により行われる生検に基づいた。組織学的診断は、AMRに関するBanff2007の基準(添付文書を参照)に基づいており、中央病理検査室により決定された。本試験に関し、以下に規定されるように、レベルIIおよびレベルIIIのAMRのみが、受容された:(a)循環抗ドナー特異的抗体の存在、急性組織損傷の形態的エビデンス、例えば(型/グレード)、(b)Banff2007のレベルII-毛細血管および/または糸球体の炎症(ptc/g>0)および/または血栓症、(c)Banff2007のレベルIII-動脈-v3、(d)副次的エンドポイント。
本試験の副次的エンドポイントは、以下を含んだ:移植後9週~12カ月目の間に発生したAMRの累積発生率(Banff2007基準に合致する任意のグレードのAMR);1)生検により明らかとなるAMR、2)移植片喪失、3)患者の死、または4)移植後12カ月目での追跡調査の喪失、の発生として規定される治療失敗率;移植後6カ月目および12か月目の移植片生着率と患者生存率;移植後14日目、ならびに3か月目および12か月目での他の臨床所見を伴わない、生検プロトコール上でのAMRの組織学的エビデンス;移植後14日目、ならびに3か月目および12か月目でのプロトコール生検上での慢性AMRを含む全般的な病理学的変化;移植後12カ月目での累積PP治療回数;移植後12カ月目で脾臓摘出術を必要とする患者の累積発生数;臓器移植後臓器機能障害(DGF)(術後高カリウム血症、急性肺浮腫、または併発疾患による体液過剰以外の理由による、移植後最初の一週内での透析の必要回数として規定される)の発生率;移植後7日~12か月の間の透析の累積発生率と期間;移植後4週~12か月の間の、Modification of Diet in Renal Disease 7(MDRD7)により(算出される)推定糸球体ろ過率により測定される、安定的な腎機能;PPまたは透析が行われておらず、20%以内の変化である、少なくとも2日あけて測定された少なくとも3回の連続的な測定値として規定される血清クレアチニン。
患者数:推定で90名の患者が登録され、本試験に無作為化され、一群当たりおよそ45名の患者が登録された。これは主要有効性エンドポイント変数に関する、二群二項式比率試験(two-arm binomial proportion study)に基づいた。90名の移植患者を得るために、本試験は、130名の患者を適格性と特定し、登録して、90名の患者を無作為化すると推定された。さらに詳細に関しては、統計およびデータ解析の項を参照のこと。
治療割当と治療期間
患者は移植前に現地移植センターのプラクティスに従い脱感作療法を受けた。脱感作が行われた後、全ての患者は、当該移植センターの標準的な診療によって移植の安全性を決定された。この評価には、以下の内の少なくとも一つが含まれた:CDCクロスマッチ、細胞系フロークロスマッチ、またはSAB(単一抗原ビーズ)検査。
患者は移植後12カ月目まで主要エンドポイントと副次的エンドポイントに関して追跡され、DSA、腎機能、ならびに患者の生存率および移植片生着率に関しては移植後36カ月目まで追跡された。
治療の最初の9週間の間に臨床的に重大な、生検により明らかになるAMRと診断された患者は、治療失敗とみなされた。治験医師は、他の剤に加えてエクリズマブを用いたAMRの治療を行うことが許可された。9週目の治療期間の間にAMRが発生した場合の、エクリズマブ試験群およびSOC試験群の両方に対する投与指示書を参照のこと。加えて、9週後に診断されたAMRに関しては、治験医師は、AMR治療レジメンの一部としてエクリズマブを使用してもよい。9週間の治療期間後にAMRが発生した場合の、エクリズマブ試験群およびSOC試験群の両方に対する投与指示書を参照のこと。
エクリズマブ治療群
エクリズマブのすべての投与が、35~45分にわたる継続的な注入としてIV投与された。治療は、移植手順の間に開始され、以下のように継続された:エクリズマブ1200mg(4バイアル)が、腎同種移植再かん流のおよそ1時間前に手術室で投与された(0日目);エクリズマブ900mg(3バイアル)が、移植後1日目、7日目、14日目(±2日)、21日目(±2日)、および28日目(±2日)に投与された。エクリズマブ1200mg(4バイアル)が、移植後5週目(±2日)、7週目(±2日)、9週目(±2日)に投与された。エクリズマブ治療群において、PPおよび/またはIVIgを使用して、いずれかのときに発生し、診断されたAMRが治療された。この設定において、本被験薬剤は、以下のガイドラインに従い投与され続けなければならない。
SOC対照群
SOC対照群に無作為化された患者は、以下の任意の組み合わせを含む現地移植センターのプロトコールに従い、移植後AMRに対する予防的治療を受けた:PPおよび/またはIVIg。リツキシマブは、PIの裁量による拒絶反応の治療を除き、すべての患者で禁忌とされた。SOC治療は、センター固有の原則の上、所与のセンターですべての患者に均一に行われた。SOC群の患者がAMRと診断された場合、一次選択療法(PPおよび/またはIVIg)で治療された。患者らは、他の治療法と併用してエクリズマブで治療された。
投与量調整基準
エクリズマブは、上に列記されるように、移植に対する時間に応じて固定された投与量として静脈内に投与された。
投与量調整および投与中止の安全性基準
エクリズマブの投与の間に有害事象が発生した場合、治験責任医師の裁量で注入を減速させるか、または中止した。注入を減速させた場合、総注入時間は二時間を超えなかった。有害反応は、CRFのAE頁上に記録された。
注入反応(Infusion Reactions)
すべてのタンパク質製品と同様に、エクリズマブの投与は、アナフィラキシーまたは他の過敏正反応を含む注入反応を生じさせる場合がある。患者は注入の完了後、少なくとも一時間、注入反応の兆候または症状をモニタリングされた。重度の注入反応を示した全患者でエクリズマブの投与が中断され、適切な医学的治療が施された。注入反応は、CRFのAE頁上に記録された。
試験終了の基準
データ監視委員会は、患者のリスク-利益比の監視に従事し、スポンサーに対し以下の推奨を行うことができた:(a)エクリズマブ治療群の登録と投与の継続、(b)低投与量でのエクリズマブ治療群の登録、(c)エクリズマブ治療群で患者モニタリング回数の増加、(d)エクリズマブ治療群での投与中止の推奨。
試験手順
一般情報
移植レシピエントは、移植後追跡として採用された試験サイトのSOCに従い治療を受けた。各サイトの治験責任医師は、試験期間中のこれらレシピエントの治療管理に関し直接的な責任を負った。
検査室の情報
サイトは、以下の検査に関し、現地検査室を利用した:血液学的パネル;化学的パネル;尿タンパク質/クレアチニン比に関するスポット尿中検査;タクロリムストラフ(Tacrolimus Trough);活性化部分プロトロンビン時間(aPTT)、PT(プロトロンビン時間)および国際標準比(INR);フィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物(血漿交換治療後の検査室のルーチンの一部としてCRF上に集められなければならない);eGFR(MDRD 7);出産可能な女性に対し血清妊娠検査(適用除外の項0を参照);ルーチン管理に対するBFXMおよび/またはTFXM(現地検査室[もし利用可能であれば]、および中央検査室[必須]);CDC(現地検査室[もし利用可能であれば]、および中央検査室);Luminex LabScreenによるDSA(現地および中央検査室)。
中央検査室の情報
中央検査室は、所定の時に集められた(表5~8の評価スケジュールを参照のこと)BFXM、TFXM、CDC、およびLuminex LabScreenによるDSAの盲検化解析に対し責任を負った。PK/PDサンプルは、試験終了まで取得および保存を目的としてサイトによりACM Laboratoriesへと送付された。
中央病理検査室の情報
すべてのプロトコールおよび「正当な理由がある」腎生検は、サイトの現地病理検査室により処理され、解析された。処理されたスライドと、免疫組織化学試験用のパラフィン包埋非染色スライドは、独立した病理学者パネルによる盲検化レビューを行うために中央病理画像センターへと送付された。中央病理検査室に関するスライドの処理とレビューに関する追加的詳細は、病理検査室マニュアルに見いだされた。
臨床評価
臨床評価は、移植サイトのプロトコールに従い術後期間に日常的に行われ、および試験期間を通じて様々な時点でも行われた。これら評価には、患者の健康状態、腎機能、および新たな診断の評価が含まれた。
出産可能な女性患者
出産可能であった女性候補は、妊娠検査(血清ベータ-hCG)陰性であり、移植後期間、エクリズマブの中止後少なくとも5カ月の間、医学的に承認された避妊レジメンを実施した。女性患者は、投与前少なくとも1年間、更年期であったか、または外科的に不妊(すなわち子宮または卵巣が無い)である場合には避妊要求から免除された。卵管が閉じられていたか、卵管結索されていたか、または卵管切断されていた女性は、FSHレベルの確認が無ければ外科的に不妊とはみなされなかった。注記:出産可能な年齢でも末期の腎疾患(ESRD)の女性は無月経であり得たが、それでも移植前の避妊または外科的不妊に対する全ての標準に合致しなければならない。
来院のタイミングと来院の失敗
移植前、移植直後、移植後延長期間、および長期転帰段階の間の臨床評価スケジュールは、表8、9、10および11に記載される。現実的でロジスティクスな理由のために、割り当てられた来院期間は、試験の最初の9週間の後にはよりフレキシブルになるように設計された。全ての症例において、試験来院が失敗した場合、または割り当てられた来院期間外であった場合、適切な用紙上にプロトコールの逸脱を記載することが期待された。
標準的治療患者のAMR予防的試験来院
SOC対照群に無作為化された患者は、試験サイトのプロトコールに従い、移植後AMRに対する予防的治療を受けた。この治療には、PPとIVIgを任意の組み合わせで含んだが、禁忌薬剤は回避された。患者は、評価スケジュールのとおりに全ての試験来院を完了することが要求されたが、試験サイトのSOCプロトコールにより決定された時点で予防的治療を受けた。SOCの予防的治療の時点は、評価スケジュールの来院スケジュールと対応していても、していなくてもよい。ゆえにSOC予防的治療上の情報すべてが指定されたCRF上に収集され、治療のタイプ、投与の時間と日付、および治療期間が含まれた。SOC患者の試験来院に関する他のすべての情報は、評価スケジュール中に特定される日に完了した。
治療前段階
以下の手順をスクリーニング期間中に実施した:
移植前の-8週~-3週
インフォームドコンセント;デモグラフィック;医療歴;バイタルサイン、身長及び体重を含む完全身体検査;対象/除外基準に基づく適格性の決定;感染性疾患のスクリーニング 12リード心電図(ECG);血液学的パネル;化学的パネル;尿検査;aPTT、PTおよびINR;出産可能な女性に対しては適用除外のための血清妊娠検査);髄膜炎菌(N.meningitides)に対するワクチン接種;BFXMおよび/またはTFXM(サンプルは現地検査室[利用可能であれば]と中央検査室[必須]へ);現地検査室および中央検査室での検査用のドナー血液を採取;CDC(サンプルは現地検査室[もし利用可能であれば]と中央検査室へ);Luminex LabScreenによるDSA(サンプルは現地検査室と中央検査室へ);併用薬の記録;AEの評価。
本試験のエントリー基準は、スクリーニング時のDSA、CDC、BFXM、およびTFXMの中央検査室データにより決定された。
移植前-3週~-1週(移植前-21日目、-14日目、-7日目)
患者が脱感作される時間の長さは、治験責任医師の意見の中で、移植が許可され得るDSAレベルに達するまでの時間に依存した。患者が-2週目までにこれらDSAレベルに達した場合、-1週目の来院は、以下のすべての検査室がそう結論づけた場合には省略された。その後患者は多くの場合、0週目(-1日目)の来院へと進んだ。現地検査室標本データは、患者管理の目的で使用された。
全ての患者が、インフォームドコンセントへの署名後、可能な限りすぐにワクチン接種され、ワクチン使用の現行の医療ガイドラインに従い、30日後に再ワクチン接種された。30日のブースターワクチン接種の前に患者が脱感作に成功していた場合、試験センターは、当該患者が、エクリズマブの最初の投与の少なくとも14日前に初回のワクチン接種を受けていたこと、その後ブースター投与が、初回投与の30日後に投与されたことを確認した。患者が、本試験の登録前に過去にワクチン接種をされていた場合には、患者が同意書に署名した後に必要とされるのはブースター投与のみであった。もし30日間のブースターワクチンが、移植後の最初の週内となる場合、ブースターワクチンは、移植後の第二の週まで延期された。髄膜炎菌(N.meningitidis)の四価複合体化ワクチンを、本試験に必須とした。個々の臨床試験センターは、エクリズマブ治療の間の任意のときに患者へ予防的抗生物質投与を行う選択肢を有していた。
移植前のPPおよびIVIgは、患者が髄膜炎菌(N.meningitidis)に対するワクチン接種を受けた少なくとも48時間後に開始された。データ、用量、期間、および検査室の値は、フィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物を含め、CRFに集められた。
簡略化された身体検査には、バイタルサインおよび体重;患者が「感作された」基準に合致したことの決定;Luminex LabScreenによるDSA(サンプルは現地および中央検査室へ);併用薬の記載;およびAEの評価が含まれた。脱感作療法の投与に関する全ての情報は、指定された症例報告書(CRF)上に収集され、治療のタイプ、投与の時間と日付、および治療期間が含まれた。
以下の来院および手順は、各移植センターのSOCによる脱感作後の移植基準に合致した患者にたいしてのみ適用可能であった。
移植前0週(移植前-1日目)
患者が脱感作され、治験責任医師による移植審査を通過した時点で、以下の手順が移植の1日前に完了された:簡略化された身体検査、バイタルサインおよび体重を含む;対象/除外基準適合評価;BFXMおよび/またはTFXM(サンプルは現地検査室[利用可能であれば]と中央検査室[必須]へ);CDC(サンプルは現地検査室[もし利用可能であれば]と中央検査室へ);Luminex LabScreenによるDSA(サンプルは現地検査室と中央検査室へ);試験群への無作為化(エクリズマブ治療群とSOC対照群);併用薬の記録;AEの評価;髄膜炎菌(N.meningitides)の兆候および症状がある患者への指示;患者に、治験製品、緊急連絡先情報、ならびに髄膜炎菌(N.meningitides)の兆候および症状に関する記載とともに、患者が臨床試験に参加することを説明する患者特定と安全性カード(Patient Identification and Safety Card)を提供すること。
移植直後段階
BFXM、TFXM(もし可能であれば)およびDSAに関する現地検査室標本データは、患者管理の目的で使用される。
本試験の間、患者は、全ての時点で、髄膜炎菌の「アラート」症状を詳細に記載するカードを携帯した。早急に医学的な注意を必要とするトリガーは、以下の症状のうちのいずれかであった:悪心および嘔吐を伴う頭痛;発熱を伴う頭痛;首および背中の硬直を伴う頭痛;103°F(39.4℃)以上の発熱;発熱と発疹;精神錯乱;インフルエンザ様症状を伴う重篤な筋肉痛、および光への過敏性。
移植0日目/0週目
全ての患者に対し、以下が移植当日に完了された:腎移植手順;バイタルサインおよび体重を含む完全身体検査;12リードECG;血液学的パネル;完全化学的パネル;尿検査;aPTT、PTおよびINR;BFXMおよび/またはTFXM(サンプルは現地[もし利用可能であれば]および中央検査室[必須]へ);Luminex LabScreenによるDSA(サンプルは現地および中央検査室へ);腎機能/透析の必要性を評価;腎同種移植片の生検(再かん流後);現地で検査されたスライドは、デジタル化と独立した病理検査のために中央病理へと送付;併用薬の記録;免疫抑制薬の記録;およびAEの評価。
治療群患者に対してのみ、以下が完了される:エクリズマブ1200mg(4バイアル)を、腎同種移植の再かん流のおよそ一時間前に投与;そして基準およびピークPKとPDの収集(基準サンプルは、被験薬剤注入の5~90分前に採取されなければならない;ピークサンプルは、被験薬剤注入完了の60分後に採取されるものとする)。
SOC対照群患者に対してのみ、以下のみが行われる:試験サイトのSOCプロトコールに従い、移植後AMRに対する予防的治療。サイト固有期間のPPおよびIVIgを含んでもよく、および試験来院日と正確には相関しなくともよい。フィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物を、CRFにPP後のルーチン検査の一部として記録した。
移植後1日目/0週目
全ての患者に対し、以下が移植後一日目に完了された:バイタルサインおよび体重を含む簡略化された身体検査;拒絶反応に対する評価を含む臨床評価(現地検査室結果からの評価、および治験責任医師により行われた評価または移植センターで適切に任命された指定人により行われた評価);血液学的パネル;完全化学的パネル;aPTT、PTおよびINR;タクロリムストラフ;BFXMおよび/またはTFXM(サンプルは現地[もし利用可能であれば]および中央検査室[必須]へ);Luminex LabScreenによるDSA(サンプルは現地および中央検査室へ);腎機能/透析の必要性を評価;併用薬の記録;免疫抑制薬の記録;およびAEの評価。
治療群患者に対してのみ、以下が完了された:エクリズマブ900mg(3バイアル)を投与;トラフおよびピークのPKとPDの収集(トラフサンプルは被験薬剤注入の5~90分前に採取された;ピークサンプルは、被験薬剤注入完了の60分後に採取されるものとした)。
SOC対照群患者に対してのみ、以下:試験サイトのSOCプロトコールに従い、移植後AMRに対する予防的治療。サイト固有期間のPPおよびIVIgが含まれ、および試験来院日と正確には相関しない場合もあった。フィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物を、CRFにPP後のルーチン検査の一部として記録。
移植後2~6日目/0週目
全ての患者に対し、以下が完了された:バイタルサインおよび体重を含む簡略化された身体検査;拒絶反応の評価を含む臨床評価;血液学的パネル;簡略化された化学的パネル;aPTT、PTおよびINR(2日目と3日目のみ);タクロリムストラフ;腎機能/透析の必要性を評価;併用薬の記録;免疫抑制薬の記録;およびAEの評価。
SOC対照群患者に対してのみ、以下が行われた:試験サイトのSOCプロトコールに従い、移植後AMRに対する予防的治療。サイト固有期間のPPおよびIVIgを含んでもよく、および試験来院日と正確には相関しなくともよい。そしてフィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物を、CRFにPP後のルーチン検査の一部として記録した。
移植後7日目/1週目
全ての患者に対し、以下が完了された:バイタルサインおよび体重を含む簡略化された身体検査;拒絶反応の評価を含む臨床評価;血液学的パネル;完全化学的パネル;尿検査;尿タンパク質/クレアチニン比のためのスポット尿検査;タクロリムストラフ;BFXMおよび/またはTFXM(サンプルは現地[もし利用可能であれば]および中央検査室[必須]へ);Luminex LabScreenによるDSA(サンプルは現地および中央検査室へ);腎機能/透析の必要性を評価;併用薬の記録;免疫抑制薬の記録;およびAEの評価。
治療群患者に対してのみ、以下が完了された:エクリズマブ、900mg(3バイアル)が投与された。トラフおよびピークのPKとPDの収集(トラフサンプルは被験薬剤注入の5~90分前に採取された;ピークサンプルは、被験薬剤注入完了の60分後に採取されるものとした)。
SOC対照群患者に対してのみ、以下:試験サイトのSOCプロトコールに従い、移植後AMRに対する予防的治療。サイト固有期間のPPおよびIVIgを含んでもよく、および試験来院日と正確には相関しなくともよい。フィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物を、CRFにPP後のルーチン検査の一部として記録した。
延長移植後段階
全ての患者が、移植後14日目~12カ月目、定期的な間隔で試験来院のために確認され続けた。BFXM、TFXM(もし可能であれば)およびDSAに関する現地検査室標本データは、患者管理の目的で使用された。
移植後14日目/2週目
全ての患者に対し、以下が完了された:バイタルサインおよび体重を含む簡略化された身体検査;拒絶反応の評価を含む臨床評価;血液学的パネル;簡略化された化学的パネル;aPTT、PTおよびINR;タクロリムストラフ;BFXMおよび/またはTFXM(サンプルは現地[もし利用可能であれば]および中央検査室[必須]へ);Luminex LabScreenによるDSA(サンプルは現地および中央検査室へ);腎機能/透析の必要性を評価;腎同種移植片の生検(現地で検査されたスライドを中央病理に送付);併用薬の記録;免疫抑制薬の記録;およびAEの評価。
治療群患者に対してのみ、以下が完了された(±2日):エクリズマブ、900mg(3バイアル)の投与;トラフおよびピークのPKとPDの収集(トラフサンプルは被験薬剤注入の5~90分前に採取されなければならない;ピークサンプルは、被験薬剤注入完了の60分後に採取された)。
SOC対照群患者に対してのみ、以下が行われた:試験サイトのSOCプロトコールに従い、移植後AMRに対する予防的治療。サイト固有期間のPPおよびIVIgを含んでもよく、および試験来院日と正確には相関しなくともよい。フィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物を、CRFにPP後のルーチン検査の一部として記録した。
移植後21日目/3週目
全ての患者に対し、以下が完了された:バイタルサインおよび体重を含む簡略化された身体検査;拒絶反応の評価を含む臨床評価;血液学的パネル;簡略化された化学的パネル;aPTT、PTおよびINR;タクロリムストラフ;BFXMおよび/またはTFXM(サンプルは現地[もし利用可能であれば]および中央検査室[必須]へ);Luminex LabScreenによるDSA(サンプルは現地および中央検査室へ);腎機能/透析の必要性を評価;併用薬の記録;免疫抑制薬の記録;およびAEの評価。
治療群患者に対してのみ、以下が完了された(±2日):エクリズマブ、900mg(3バイアル)の投与。この投与に対して、PK/PD評価は必要とされなかった。
SOC対照群患者に対してのみ、以下が行われた:試験サイトのSOCプロトコールに従い、移植後AMRに対する予防的治療。サイト固有期間のPPおよびIVIgを含んでもよく、および試験来院日と正確には相関しなくともよい。フィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物を、CRFにPP後のルーチン検査の一部として記録した。
移植後28日目/4週目
全ての患者に対し、以下が完了された:バイタルサインおよび体重を含む簡略化された身体検査;拒絶反応の評価を含む臨床評価;血液学的パネル;簡略化された化学的パネル;尿検査;尿タンパク質/クレアチニン比のためのスポット尿検査;aPTT、PTおよびINR;タクロリムストラフ;BFXMおよび/またはTFXM(サンプルは現地[もし利用可能であれば]および中央検査室[必須]へ);Luminex LabScreenによるDSA(サンプルは現地および中央検査室へ);腎機能/透析の必要性を評価;eGFR(MDRD 7);併用薬の記録;免疫抑制薬の記録;およびAEの評価。
治療群患者に対してのみ、以下が完了された(±2日):エクリズマブ900mg(3バイアル)を投与;トラフおよびピークのPKとPDの収集(トラフサンプルは被験薬剤注入の5~90分前に採取されなければならない;ピークサンプルは、被験薬剤注入完了の60分後に採取された)。
SOC対照群患者に対してのみ、以下が行われた:試験サイトのSOCプロトコールに従い、移植後AMRに対する予防的治療。サイト固有期間のPPおよびIVIgを含んでもよく、および試験来院日と正確には相関しなくともよい。そしてフィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物を、CRFにPP後のルーチン検査の一部として記録した。
移植後35および49日目/5週目および7週目
全ての患者に対し、以下が完了された:バイタルサインおよび体重を含む簡略化された身体検査;拒絶反応の評価を含む臨床評価;ScrおよびBUN;タクロリムストラフ;腎機能/透析の必要性を評価;併用薬の記録;免疫抑制薬の記録;およびAEの評価。
治療群患者に対してのみ、以下が完了された(±2日):エクリズマブ、1200mg(4バイアル)の投与;トラフおよびピークのPKとPDの収集(トラフサンプルは被験薬剤注入の5~90分前に採取されなければならない;ピークサンプルは、被験薬剤注入完了の60分後に採取された)。
SOC対照群患者に対しては、以下のみ:試験サイトのSOCプロトコールに従い、移植後AMRに対する予防的治療。サイト固有期間のPPおよびIVIgを含んでもよく、および試験来院日と正確には相関しなくともよい。そしてフィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物を、CRFにPP後のルーチン検査の一部として記録した。
移植後56日目/8週目
全ての患者に対し、以下が完了された:バイタルサインおよび体重を含む簡略化された身体検査(本試験サイトの標準的治療ごとに任意選択);拒絶反応の評価を含む臨床評価;血液学的パネル;簡略化された化学的パネル;タクロリムストラフ;腎機能/透析の必要性を評価;eGFR(MDRD 7);その他の必要とされる情報(治験責任医師または移植センターの適切な指定人により電話で患者から取得される);併用薬の記録;免疫抑制薬の記録;およびAEの評価。
SOC対照群患者に対してのみ、以下が行われた:試験サイトのSOCプロトコールに従い、移植後AMRに対する予防的治療。サイト固有期間のPPおよびIVIgを含んでもよく、および試験来院日と正確には相関しなくともよい。そしてフィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物を、CRFにPP後のルーチン検査の一部として記録した。
移植後63日目/9週目
全ての患者に対し、以下が完了された:バイタルサインおよび体重を含む簡略化された身体検査;拒絶反応の評価を含む臨床評価;血液学的パネル;簡略化された化学的パネル;尿検査;尿タンパク質/クレアチニン比のためのスポット尿検査;タクロリムストラフ;BFXMおよび/またはTFXM(サンプルは現地[もし利用可能であれば]および中央検査室[必須]へ);Luminex LabScreenによるDSA(サンプルは現地および中央検査室へ);腎機能/透析の必要性を評価;eGFR(MDRD 7);併用薬の記録;免疫抑制薬の記録;およびAEの評価。
治療群患者に対してのみ、以下が完了された(±2日):エクリズマブ1200mg(4バイアル)を投与;ならびにトラフおよびピークのPKとPDの収集(トラフサンプルは被験薬剤注入の5~90分前に採取された;ピークサンプルは、被験薬剤注入完了の60分後に採取された)。
SOC対照群患者に対してのみ、以下が行われた:試験サイトのSOCプロトコールに従い、移植後AMRに対する予防的治療。サイト固有期間のPPおよびIVIgが含まれてもよく、および試験来院日と正確には相関しない場合もあった。フィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物を、CRFにPP後のルーチン検査の一部として記録。
移植後12週目/3か月目
全ての患者に対し、以下が完了された:バイタルサインおよび体重を含む完全身体検査;拒絶反応の評価を含む臨床評価;血液学的パネル;簡略化された化学的パネル;尿検査;尿タンパク質/クレアチニン比のためのスポット尿検査;タクロリムストラフ;BFXMおよび/またはTFXM(サンプルは現地[もし利用可能であれば]および中央検査室[必須]へ);Luminex LabScreenによるDSA(サンプルは現地および中央検査室へ);腎機能/透析の必要性を評価;eGFR(MDRD 7);腎同種移植片の生検(現地で検査されたスライドをデジタル化と独立した病理検査のために中央病理に送付)併用薬の記録;免疫抑制薬の記録;およびAEの評価。
SOC対照群患者に対してのみ、以下が行われた:試験サイトのSOCプロトコールに従い、移植後AMRに対する予防的治療。サイト固有期間のPPおよびIVIgを含んでもよく、および試験来院日と正確には相関しなくともよい。そしてフィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物を、CRFにPP後のルーチン検査の一部として記録した。
移植後17および21週目/4および5カ月目
全ての患者に対し、以下が完了された:バイタルサインおよび体重を含む簡略化された身体検査(本試験サイトの標準的治療ごとに任意選択);拒絶反応の評価を含む臨床評価(現地検査室結果からの評価、および治験責任医師により行われた評価または移植センターで適切に任命された指定人により行われた評価);ScrおよびBUN;タクロリムストラフ;腎機能/透析の必要性を評価;その他の必要とされる情報(治験責任医師または移植センターの適切な指定人により電話で患者から取得される);併用薬の記録;免疫抑制薬の記録;およびAEの評価。
SOC対照群患者に対してのみ、以下が行われた:試験サイトのSOCプロトコールに従い、移植後AMRに対する予防的治療。サイト固有期間のPPおよびIVIgを含んでもよく、および試験来院日と正確には相関しなくともよい。そしてフィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物を、CRFにPP後のルーチン検査の一部として記録した。
移植後26週目/6か月目
全ての患者に対し、以下が完了された:バイタルサインおよび体重を含む完全身体検査;拒絶反応の評価を含む臨床評価;血液学的パネル;簡略化された化学的パネル;尿検査;尿タンパク質/クレアチニン比のためのスポット尿検査;aPTT、PTおよびINR;タクロリムストラフ;BFXMおよび/またはTFXM(サンプルは現地[もし利用可能であれば]および中央検査室[必須]へ);Luminex LabScreenによるDSA(サンプルは現地および中央検査室へ);腎機能/透析の必要性を評価;eGFR(MDRD 7);併用薬の記録;免疫抑制薬の記録;およびAEの評価。
SOC対照群患者に対してのみ、以下が行われた:試験サイトのSOCプロトコールに従い、移植後AMRに対する予防的治療。サイト固有期間のPPおよびIVIgを含んでもよく、および試験来院日と正確には相関しなくともよい。そしてフィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物を、CRFにPP後のルーチン検査の一部として記録してもよい。
移植後30および34週目/7および8カ月目
全ての患者に対し、以下が完了された:バイタルサインおよび体重を含む簡略化された身体検査(本試験サイトの標準的治療ごとに任意選択);拒絶反応の評価を含む臨床評価(現地検査室結果からの評価、および治験責任医師により行われた評価または移植センターで適切に任命された指定人により行われた評価);ScrおよびBUN;タクロリムストラフ;および腎機能/透析の必要性を評価;その他の必要とされる情報(治験責任医師または移植センターの適切な指定人により電話で患者から取得される);併用薬の記録;免疫抑制薬の記録;およびAEの評価。
SOC対照群患者に対してのみ、以下が行われた:試験サイトのSOCプロトコールに従い、移植後AMRに対する予防的治療。サイト固有期間のPPおよびIVIgが含まれてもよく、および試験来院日と正確には相関しない場合もあった。フィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物を、CRFにPP後のルーチン検査の一部として記録。
移植後38週目/9か月目
全ての患者に対し、以下が完了された:バイタルサインおよび体重を含む簡略化された身体検査(本試験サイトの標準的治療ごとに任意選択);拒絶反応の評価を含む臨床評価(現地検査室結果からの評価、および治験責任医師により行われた評価または移植センターで適切に任命された指定人により行われた評価);血液学的パネル;簡略化された化学的パネル;タクロリムストラフ;および腎機能/透析の必要性を評価;eGFR(MDRD 7)。その他の必要とされる情報(治験責任医師または移植センターの適切な指定人により電話で患者から取得される);併用薬の記録;免疫抑制薬の記録;およびAEの評価。
SOC対照群患者に対してのみ、以下が行われた:試験サイトのSOCプロトコールに従い、移植後AMRに対する予防的治療。サイト固有期間のPPおよびIVIgが含まれてもよく、および試験来院日と正確には相関しない場合もあった。フィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物を、CRFにPP後のルーチン検査の一部として記録。
移植後44および48週目/10および11カ月目
全ての患者に対し、以下が完了された:バイタルサインおよび体重を含む簡略化された身体検査(本試験サイトの標準的治療ごとに任意選択);拒絶反応の評価を含む臨床評価(現地検査室結果からの評価、および治験責任医師により行われた評価または移植センターで適切に任命された指定人により行われた評価);ScrおよびBUN;タクロリムストラフ;腎機能/透析の必要性を評価;その他の必要とされる情報(治験責任医師または移植センターの適切な指定人により電話で患者から取得される);併用薬の記録;免疫抑制薬の記録;およびAEの評価。
SOC対照群患者に対してのみ、以下が行われた:試験サイトのSOCプロトコールに従い、移植後AMRに対する予防的治療。サイト固有期間のPPおよびIVIgを含んでもよく、および試験来院日と正確には相関しなくともよい。そしてフィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物を、CRFにPP後のルーチン検査の一部として記録してもよい。
移植後52週目/12カ月目-試験一次解析時点
全ての患者に対し、以下が完了された:バイタルサインおよび体重を含む完全身体検査;拒絶反応の評価を含む臨床評価;血液学的パネル;簡略化された化学的パネル;尿検査;尿タンパク質/クレアチニン比のためのスポット尿検査;aPTT、PTおよびINR;タクロリムストラフ;BFXMおよび/またはTFXM(サンプルは現地[もし利用可能であれば]および中央検査室[必須]へ);Luminex LabScreenによるDSA(サンプルは現地および中央検査室へ);腎機能/透析の必要性を評価;eGFR(MDRD 7);腎同種移植片の生検(現地で検査されたスライドをデジタル化と独立した病理検査のために中央病理に送付)併用薬の記録;免疫抑制薬の記録;およびAEの評価。
SOC対照群患者に対してのみ、以下が行われた:試験サイトのSOCプロトコールに従い、移植後AMRに対する予防的治療。サイト固有期間のPPおよびIVIgを含んでもよく、および試験来院日と正確には相関しなくともよい。そしてフィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物を、CRFにPP後のルーチン検査の一部として記録してもよい。
長期転帰段階
追加の試験来院は、長期追跡データのために18カ月目、24カ月目、および36か月目に行われた。このデータは、主要有効性解析の目的のために使用されなかった。
移植後18および24か月目
全ての患者に対し、以下が行われた:最後の来院からの間の拒絶反応症状の発現、患者の生存率、移植片の消失、ならびに腎疾患および疾患状態の評価;化学的パネル;タクロリムストラフ;他の免疫抑制レベル;AEの評価。
移植後36か月目
全ての患者に対し、以下が行われた:最後の来院からの間の拒絶反応症状の発現、患者の生存率、移植片生着率;腎疾患および疾患状態の評価;化学的パネル;タクロリムストラフ;他の免疫抑制レベル;BFXMおよび/またはTFXM(サンプルは中央検査室のみへ);Luminex LabScreenによるDSA(サンプルは中央検査室のみへ);腎同種移植片の生検(現地で検査されたスライドを中央病理検査室へ);およびAEの評価。
試験終了の定義:試験の終了は、最後に来院した最終患者として定義される。
持続性DSAレベルの治療
DSAは治療が行われている間、治療期間の最後(9週目)ならびに3、6、12、および36カ月目に両試験群で現地検査室および中央検査室の両方で解析された。9週目の中央検査室の結果のみ、現地センターに提供される。レシピエントが中央検査室および/または現地検査室の臨床検査により測定されたときに陽性DSA、ならびに/または陽性BFXMおよび/もしくはTFXMを維持している場合(9週目の結果)、PPおよび/またはIVIgを使用して、以下のようにDSAを低減させてもよい:
SOC群:PPおよび/またはIVIgは、治験責任医師の臨床的判断ごとに投与される。追加の医薬品(エクリズマブ、リツキシマブ、ボルテゾミブ)は、持続性DSAの治療に許可されない。
エクリズマブ群:PPおよび/またはIVIgは、治験責任医師の臨床的判断ごとに投与された。PP後のブースターとしての追加のエクリズマブは、9~10週目の間のみ投与されてもよい。この場合、エクリズマブ(600mg)は、PPの各治療後1時間以内に投与された。例えばリツキシマブおよびボルテゾミブなどの他の医薬品は、持続性DSAの治療に許可されなかった。
エクリズマブ追加は、術後10週目を越えて延長する持続性DSAの治療には許可されなかった。9週目の前に、エクリズマブ群の患者は、被験製品、用量および投与方法ならびに参照治療、用量および投与方法と題されたセクションの治療割当ガイドラインに従い治療された。
新鮮凍結血漿を用いた治療
PPとは関連せずFFPを患者が受けた場合、エクリズマブを投与された患者は、FFP投与の1時間後にエクリズマブ(600mg)の追加投与をさらに受ける。
早期中止
スクリーニング失敗
スクリーニング段階の間に試験基準に合致しなかった患者、および/または脱感作プロトコールに進めなかった患者は、スクリーニング失敗とみなされた。これらの患者は、追跡調査されることなく試験を中止された。
医療社会的失敗または脱感作失敗
移植を受けることができない:
スクリーニングを受けた患者で、他の医学的または社会的理由が発生し、その後の腎移植を受けられなかった患者は、試験を中止された。スクリーニング失敗の理由を記載して、中止CRF用紙は完了した。
脱感作失敗:
プロトコールは、本試験の治療群へのエントリーの前に、DSAの特異的な低下を必要としなかった。脱感作完了後に本試験治療群への患者のエントリーを進行させる決定は、治験責任医師の判断であった。治験医師が、脱感作完了後に患者が本試験を継続するべきではないと決定した場合、患者の離脱決定の理由を記載して中止CRF用紙は完了した。
脱感作失敗とみなされた他の患者は、試験目的を満たすために必要に応じて交換された。
時期尚早な中止および離脱
早期終了、離脱または中止:
早期中止または離脱の理由は、適切なCRFに完全に記載された。
患者が本試験の間の任意のときに、エクリズマブ試験薬を中断した場合、その患者は追加の試験来院を行い、最後の投与後2カ月間、2週ごと(最大4来院)に安全性の追跡調査が行われた。これらの来院は、移植センターごとの腎移植の維持のためのルーチン追跡来院と同時であってもよい。最後の来院には、評価スケジュールの12か月目の来院に列記されたすべての評価を含んだ。
評価スケジュール
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Figure 0007256741000009
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患者の選択および離脱:全ての患者が、以下の対象/除外基準を順守した。
患者対象基準:18歳以上の男性または女性の患者;腎移植を生体ドナーから受ける、ステージIVまたはステージVの慢性腎疾患の患者であり、その患者はドナーに感作されており、移植前の脱感作を必要とする。過去のHLAへの暴露の履歴。例えば(包括的リストではないが):a)過去の固形臓器または組織の同種移植;b.妊娠;c.輸血;d.特定ドナーHLAへの過去の暴露;SABアッセイ(Luminex LabScreenアッセイ)によるDSAの存在、メーカーの添付文書に解説されるとおりであり、本試験の中央検査室で行われる;中央検査室による、陽性CDCクロスマッチ(現在または過去)または陰性CDCクロスマッチと陽性BFXMおよび/またはTFXMを有する;インフォームドコンセント用紙を理解することができ、試験手順の順守する意思がある;出産可能な女性患者は、妊娠検査陰性(血清ベータhCG)でなければならず、ならびに有効で、信頼性があり、医学的に承認された避妊レジメンをエクリズマブ治療の間、および治療中止後最大5か月間実施しなければならない。
患者除外基準:本試験登録前のいずれかの時点でエクリズマブを用いた治療を受けた;生体ドナーとABO不適合;重度心疾患の病歴(例えばNew York Heart Association [NYHA] Functional Class IIIまたはIV、無作為化の6か月以内に心筋梗塞、治療継続を要する心室頻脈、不安定狭心症、または他の重大な心血管系疾患);過去の脾臓摘出術;既知の出血性疾患;任意の急性細菌性または他の感染性疾患であり、治験医師の意見で臨床的に重大であり、移植に禁忌であるもの;任意の他の治験に参加している、またはスクリーニングの30日以内に被験薬剤またはデバイスに暴露された;スクリーニング前の3か月以内にリツキシマブ(リツキサン(登録商標))を投与された;スクリーニング前の3か月以内にボルテゾミブ(ベルケイド(登録商標))を投与された;スクリーニング前の6か月以内にアレムツズマブ(キャンパス(登録商標))を投与された;ネズミ科タンパク質または製品賦形剤の内の一つに対する過感受性;過去一年以内の薬物依存またはアルコール依存の病歴;消散していない髄膜炎菌性疾患;消散していない細菌性または真菌性の感染;B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)の活動性感染;妊娠または授乳;現在癌であるか、またはスクリーニング前の5年以内に癌の病歴、ただし皮膚の非転移性の基底細胞癌または扁平上皮細胞癌の治療が成功した患者は除く;上皮内子宮頸癌;上皮内乳癌または除去により治癒されると決定された他の上皮内病変;治験医師の意見において、本試験の患者の参加に干渉し得る、患者にさらなるリスクを課す、または患者の評価を悪化させる任意の医学的状態。
患者離脱基準
患者の医学的治療に害を与えることなく、任意の理由で任意のときに本試験から離脱する権利を有することを患者に知らせた。患者は、以下の理由のうちのいずれかで、本試験から離脱される:患者の要求;患者にプロトコールの順守の意思がない、または順守ができない;治験医師および/または医療モニターの判断での医学的理由。患者被験薬剤および/または患者の離脱理由は、患者のCRFおよび原記録に記録された。移植完了後に本試験から降りた患者は、本試験の最終来院に対し予定された検査と評価を完了した。有害事象(AE)を理由として患者が中断された場合、当該事象は、消散されるまで、または治験責任医師の意見において患者が医学的に安定したと決定されるまで追跡された。プロトコールに特定された安全性追跡調査手順を実施するためにあらゆる努力を行った。最終評価のために戻ることができなかった患者は、試験サイトのスタッフから連絡をとり、プロトコールを順守させようと試みた。AEまたはSAEを理由として離脱した任意の患者に関する追跡データを取得することは極めて重要であったため、追跡調査の適正評価の文書化は、2度の電話の呼び出しと、その後の患者の最後の既知の住所に宛てた1通の書留郵便からなる。いずれの場合でも、プロトコールに特定された安全性追跡調査手順を実施するためにあらゆる努力を行った。本試験または被験薬剤に関係のない理由で本試験の参加を中止した患者(例えば離脱同意書、追跡調査中にロスト)は、必要に応じて本試験の目的を満たすために取り換えられた。取り換えられた患者は、固有の特定番号を割り当てられた。
患者の治療
移植後免疫抑制および併用薬
無作為化を経て、腎移植を受けた患者は、同種移植片機能の維持と、感染からの防御のために免疫抑制薬と予防用薬剤を投与されることが必要とされた。加えて、例えば高血圧、脂質異常症、糖尿病および疼痛などの併発疾患を管理するための医薬が使用された。これらの疾患は、個々の試験サイトのSOCプラクティスに従って管理された。
移植レシピエントに投与された医薬品は以下であった:
導入療法:
サイモグロブリン(1.5mg/kg x 4回投与[6mg/kgが推奨され、最大で7.5mg/kgまで使用され得る])
免疫抑制維持:
タクロリムス;1~12か月目の間、トラフレベルを4~11ng/mLに維持する。カルシニューリン阻害剤の回避または離脱のプロトコールは許可されなかった。ミコフェノール酸モフェチル(MMF;セルセプト(登録商標)/腸溶ミコフェノール酸(EC-MPA;マイフォーティック(登録商標));MMF:1グラム BID(患者の不耐性に対し、漸減されてもよく、または投与スケジュールを変更してもよい);EC-MPA:720mg BID(患者の不耐性に対して、漸減されてもよく、または投与スケジュールを変更してもよい);上記のジェネリック製剤は、本試験の目的に受容可能である;移植センターSOCによるプレドニゾン、しかし移植後3か月までに一日5mgまで減少させた;ステロイド回避または離脱のプロトコールは許可されなかった。
免疫抑制療法の導入と維持は、全センターで、および両試験群で等しく行われなければならない。
感染性疾患:
以下が推奨された:禁忌でない限りは肺炎球菌ワクチン、PCP、CMVおよび真菌に対する移植片周囲予防、ならびに移植片周囲の抗生物質適用範囲に関するIDの医療アドバイス。センターによりいずれのルーチンな感染症予防療法が行われたとしても、本試験の過程を通じてセンター内で均一に使用され、CRFに記録された。
制限される医薬品/治療:
以下の医薬品/治療は、その使用により所見が損なわれ、またはエクリズマブと相互作用し得るために制限されたが、以下に概略される場合は除く:本試験両群のスクリーニング前および移植後、6か月以内のアレムツズマブ(キャンパス(登録商標))の使用;本試験両群に対し、バシリキシマブ(シムレクト(登録商標))導入療法の使用;本試験両群のスクリーニング前および移植後、3か月以内のボルテゾミブ(ベルケイド(登録商標))の使用。ボルテゾミブは、第一選択療法に反応しなかったAMRのサルベージ療法として治験責任医師が決定した場合には使用されてもよい;本試験両群のスクリーニング前および移植後、3か月以内のリツキシマブ(リツキサン(登録商標))の使用;リツキシマブは、第一選択療法に反応しなかったAMRのサルベージ療法として治験責任医師が決定した場合には使用されてもよい;任意の時点での(血漿交換の代わりの)免疫吸着の使用;エクリズマブ治療群において移植後最初の9週間の間の予防的PPまたはIVIgの使用
DSAおよび細胞系クロスマッチの評価
患者は、以下のように循環DSAおよび細胞系クロスマッチ(XM)の評価に関するルーチンの移植後モニタリングを受けた:プロトコールに従い、DSA(Luminex LabScreen)と、BFXMおよび/またはTFXMを含む細胞系クロスマッチのモニタリングが中央検査室により0、1、7、14、21、28日目、9週目、ならびに3、6および12か月目に行われた。中央検査室は患者の治療に関して盲検化された;DSA、BFXMおよびTFXMの検査は36か月目にも収集されたが、主要有効性解析には含まれなかった。それらは中央検査室へと送付され、長期追跡調査の目的に対してのみ使用された;二重サンプルが、DSA、および/または細胞系XM(もし利用可能であれば)のために移植センターの現地検査室に送付され、患者管理を円滑化した。中央検査室データは、患者管理の目的で使用されなかった。患者管理用の中間サンプルは、移植センターのHLA現地検査室で解析され、以下の検査の内のいずれかを含み得た:DSA、CDC、BFXMおよびTFXM(もし利用可能であれば)。二重サンプルは中央検査室には必要無かった。
治療コンプライアンス
エクリズマブ治療群の患者は、制御された状況下、例えば病院、外来クリニック、または短期滞在型治療室などでエクリズマブをIV投与され、それにより治験医師の管理下での被験薬剤投与のコンプライアンス順守が確実化された。試験サイトの治験コーディネーターは、全ての治験参加者が確実に、治験プロトコールのコンプライアンス順守に必要とされる特定の治療レジメンに関する情報を適切に与えられるようにした。
無作為化および盲検化
対象/除外基準に合致した患者は脱感作療法を受け、治験責任医師による移植審査を通過し、腎移植前にエクリズマブ治療群またはSOC群のいずれかに無作為化された。無作為化のスキームによって、確実に患者が本試験のエクリズマブ治療群とSOC群に1:1ベースで等しく割り当てられた。さらに患者は、PPおよびIVIg;PP単独;ならびにIVIg単独を使用した移植前脱感作プロトコールにより階層化された。
本試験は非盲検試験であり、ゆえに治療割り当ては治験医師に盲検化されなかった。しかし中央病理学者は、患者の識別とその治療レジメンに対し盲検化された。
被験薬剤物質と管理
被験薬剤:エクリズマブは10mg/mLの溶液濃度で30mLバイアル中に供給された。各一本のエントリー30mLバイアルは10mg/mLの溶液濃度を含有し、指定された30mLを引き抜くのに十分な溶液があった。
被験薬剤のパッケージトラベリング:被験薬剤のエクリズマブは、連邦、州および地域当局に応じて必要とされる全ての必須書類が受領された時点で、サイトに送付された。各キットには、内容物を解説する一つのパネルラベルと、薬剤師が患者番号とイニシャルを記録するためのスペースがあった。バイアルが損傷していた場合、薬局はただちに業者に知らせなければならない。エクリズマブは、安全で、アクセス制限された保管エリアに保管された。
被験薬剤の保管:被験薬剤(エクリズマブ)のバイアルは使用時まで元の箱の中で、2~8℃(36~46°F)の冷蔵条件下で、遮光して保管された。バイアルは、箱に印字された有効期限後には使用されなかった。
被験薬剤の調製:本被験薬剤の注入液は、無菌技術を使用して調製された。エクリズマブの各バイアルは、30mLの製品溶液中、300mgの活性成分を含有した。エクリズマブは、以下の工程を使用して5mg/mLの最終混合液濃度まで希釈された:バイアルから滅菌シリンジ内へ、必要量のエクリズマブを引き抜く;注入バッグに推奨投与量を移す;適切な量(薬剤量と等量の希釈液)の0.9%塩化ナトリウム注射溶液、USP;0.45% 塩化ナトリウム注射溶液、USP;5%デキストロースの水溶液の注射溶液、USP;またはリンゲル注射溶液、USPを注入バッグに加えることにより5mg/mLの最終濃度までエクリズマブを希釈した。最終混合エクリズマブ5mg/mLの注入量は、600mg用量に対して120mL、900mg用量に対して180mL、または1200mg用量に対して240mLであった。
表9:エクリズマブおよび希釈剤の量
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希釈したエクリズマブ溶液を含む注入バッグをゆっくりと反転させて、薬液と希釈剤を確実に充分に混合させた。空のバイアルと、残渣が入ったバイアルは、破壊前の治験モニターによる検査用に保管されたか、または被験薬剤に関する現地サイトの薬局の標準的な操作手順に従い処理された。
投与前に混合液を室温に調整させた(18~25℃、64~77°F)混合液は電子レンジで加熱されず、常温以外の他の熱源で加熱されなかった。エクリズマブ混合液は、投与前に粒子状物質および変色について目視検査された。
溶液の投与および安定性
エクリズマブ混合液は、35分以上(35~45分の範囲)をかけてIV注入により投与された。被験薬剤が患者に投与される間、注入バッグを遮光する必要はなかった。サイトの判断で、希釈された被験薬剤は自重で、シリンジ型ポンプで、または注入ポンプで投与された。患者は注入後1時間、モニタリングされた。
エクリズマブ混合液は2~8℃(36~46°F)および室温で24時間安定である。エクリズマブが患者の来院よりも4時間を超えて先に調製された場合、希釈された物質は2~8℃で保管された。
被験薬剤の投与中にAEが発生した場合、注入は当該事象の性質と重篤度に応じて治験医師の判断で減速させるか、または中止された。有害事象は、患者の原書面およびCRFに収集された。
被験薬剤のアカウンタビリティー
日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)の医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)ガイドラインは、治験責任医師に、スポンサーから送付される被験薬剤が、確実に責任者(例えば薬剤師)に受領されるよう要求した。さらに以下のガイドラインも順守された:被験薬剤の送付が記録された;被験薬剤が安全および適切に処理され、保管された;被験薬剤はプロトコールに従う患者に対してのみ投薬された;使用されなかった被験薬剤はスポンサーに戻されたか、または未使用被験薬剤の別手段による処分に関する標準的手順が行われた。
被験薬剤の貨物がサイトで受領されたら、薬剤師は内容物を確認し、貨物に添付されたパッキングインボイスに署名し、治験モニターによるレビュー用に原本を保管した。署名されたコピーを、パッキングリストに掲載された問い合わせ先にファックスして、二重コピーを薬局のバインダーに保管した。
アカウンタビリティーのログおよび目録のログは、被験薬剤の受領、投薬および処分を包含する現行の、および正確な目録の薬剤師による維持を補助するために提供された。本試験の間、以下の情報がアカウンタビリティ-のログに記録された:患者番号、薬剤が投薬された患者のイニシャル、キット番号、被験薬剤が調製され、投薬された日付と時刻、被験薬剤を調製した薬剤師または指定人のイニシャル。サイトは、薬剤供給の現在までに総計を保管した。空のバイアルと、残渣が入ったバイアルは、破壊前の治験モニターによる検査用に保管されたか、または被験薬剤に関する現地サイトの薬局の標準的な操作手順に従い処理された。
治験モニターは、本試験の間の目録を検査した。さらに目録記録はいつでも規制機関、現地規制当局、または独立監査人の視察に対し、容易に利用可能であった。
被験薬剤の処理と処分
薬剤の目録と、被験薬剤のアカウンタビリティーの記録は、治験医師/薬剤師により保管された。本試験期間を通じて、被験薬剤のアカウンタビリティーが文書化された。以下のガイドラインに従った:治験医師は、本試験の患者を除く、いずれの人物にも被験薬剤を供給しないことに同意した;治験医師/薬剤師は、薬局または制御された保管条件下にある、鍵のかかった安全な保管施設に被験薬剤を保管し、治験医師に承認された者または試験薬剤を投薬する指定人のみアクセス可能であった;被験薬剤の目録は、治験医師/薬剤師により保管された;目録には、受領した物質、および投薬されたときと、投薬された患者に関する明確な記録の詳細が含まれた。
本試験の結論が出た時、または終了時に、治験医師/薬剤師は最終的な薬品供給目録を作成し、その目録の結果を、薬剤アカウンタビリティー記録に記録した。送達記録および使用されたまたは返却された被験薬剤の記録も照合された。送達と返却の適切な用紙に、試験サイトの責任者が署名した。
使用された、または未使用の被験薬剤は、薬剤アカウンタビリティーがスポンサーまたは指定人により作成された後に、標準的な組織手順に従い、試験センターで破壊された。試験薬剤の破壊に関する標準的な組織手順のコピーが要求に応じてスポンサーまたは指定人に提供された。サイトで破壊されなかった未使用の被験薬剤は、試験終了時、または期限切れのときにスポンサーまたは指定人に返却された。
有効性評価
腎同種移植片の評価
すべてのプロトコールおよび「正当な理由がある」腎生検は、サイトの現地病理検査室により処理され、解析された。処理されたスライドと、二つの免疫組織化学試験用のパラフィン包埋非染色スライドも、独立し、盲検化された病理学者によるレビューを行うために中央病理画像センターへと送付された。
腎生検は、以下の状況で取得された:正当な理由のある同種移植片の生検:生検は、基準(移植日)からのDSAの上昇の有無にかかわらず、以下の基準の内の少なくとも一つに基づいた同種移植片の機能障害の臨床兆候があった場合に実施された;0日目の移植直後のクレアチニンと比較して、移植後の最初の週の三連続日において、一日当たり10%未満の血清クレアチニンの減少;底値から30%以上の血清クレアチニン上昇。底地は、移植後の最初の一週間で最も低い血清クレアチニンとして規定された;乏尿症;AMRの臨床上の疑い;プロトコールの生検:医学的な禁忌でない限りは、以下の時点での生検が義務付けられた:再かん流後(術中);移植後14日目;移植後3か月目;移植後12か月目;移植後36か月目(長期追跡調査の場合のみ;主要有効性解析には含まれない);プロトコールの腎生検を使用して、他の副次的エンドポイントが評価され、さらに組織検査ベースでのみ明らかなAMRの無症状症例の評価が行われた。プロトコールの生検は、移植センターで検査され、臨床管理に使用された。現地で検査されたスライドは、中央病理検査室に送付された。
抗体関連型拒絶反応の症状の治療
本試験の9週目から12か月目でのAMRの累積発生率はそれぞれ主要および副次的エンドポイントであった。以下のガイドラインがAMRの治療に使用された。
移植後の治療期間中のAMR発生に関する
エクリズマブ治療群:
移植後の最初の9週間の間に患者が生検により明らかな(現地病理検査により)、臨床上重大な(現地検査室によるクレアチニン上昇)AMRの診断があった場合、当該患者は治療失敗とみなされた(生検基準に関する以下の評価基準の項を参照)。AMRの治療に対して患者は少なくとも3回のPPおよび/またはIVIgの治療セッションを受け、その後に治験責任医師により当該患者のエクリズマブ治療の継続が決定され、次いで、以下のエクリズマブの追加的用量が使用された:
エクリズマブ 600mg(2バイアル)が、各PPセッションの完了から1時間以内、および新鮮凍結血漿(FFP)注入または他のタンパク質置換療法の少なくとも1時間前に投与された(投与は35~45分にわたりIVで行われた)。経験則、およびPP状況下でのエクリズマブのPK-PDモデリング計算から予測されるように、エクリズマブのレベルを50~100μg/mLに維持するためにこれが行われた。
AMRは、少なくとも5週間、または血清クレアチニンが拒絶反応前の基準クレアチニンの10%以内に戻るまで、または少なくとも24時間離して行われた三回の連続検査での20%未満の変動として規定される、新たな安定的基準血清クレアチニンに達するまで、エクリズマブで治療された。急性AMRに対しエクリズマブで治療された最大週数は9週であった。
SOC対照群:
移植後の最初の9週間の間に患者が生検により明らかな(現地病理検査により)、臨床上重大な(現地検査室によるクレアチニン上昇)AMRの診断があった場合、当該患者は治療失敗とみなされた。AMRと診断された患者は、最初にPPおよび/またはIVIgを受けた。追加治療(PP/IVIg治療失敗後のAMR治療)は、治験責任医師の判断であり、エクリズマブを含み得た。その後エクリズマブが使用された場合、以下のガイドラインに従い投与されなければらない(週数は、AMR診断後のエクリズマブの最初の投与の日から算出された):最初の投与量1200mg(1日目)、その後;毎週900mgを4回投与(1週目)、その後;毎週900mgを4回投与から(2、3および4週目;±2日)、その後;5週目の始まりから一週おきに1200mgを5週目、7週目および9週目に(±2日)。投与は35~45分にわたりIVで行われた。
患者がエクリズマブの投与を受けながらPPで治療継続された場合、その後、エクリズマブ 600mg(2バイアル)が、各PPセッションの完了から1時間以内、および新鮮凍結血漿(FFP)注入または他のタンパク質置換療法の少なくとも1時間前に投与された。経験則、およびPP状況下でのエクリズマブのPK-PDモデリング計算から予測されるように、エクリズマブのレベルを50~100μg/mLに維持するためにこれが行われた。
AMRは、少なくとも5週間、または血清クレアチニンが拒絶反応前の基準クレアチニンの10%以内に戻るまで、または少なくとも24時間離して行われた三回の連続検査での20%未満の変動として規定される、新たな安定的基準血清クレアチニンに達するまで、エクリズマブで治療された。急性AMRに対しエクリズマブで治療された最大週数は9週であった。
PP後のエクリズマブの追加的投与は、以下のように使用された:エクリズマブ 600mg(2バイアル)が、各PPセッションの完了から1時間以内、および新鮮凍結血漿(FFP)注入または他のタンパク質置換療法の少なくとも1時間前に投与された。エクリズマブのレベルを50~100μg/mLに維持するためにこれが行われ、経験則、およびPP状況下でのエクリズマブのPK-PDモデリング計算から予測された。投与は35~45分にわたりIVで行われた。
9週目治療期間の後に発生するAMRに関する
9週目の後にいずれか試験群で発生したAMRの症状は、現地SOCプロトコールに従い、および治験責任医師の判断で治療された(禁止医薬品は除く)。エクリズマブを使用して、両群のAMRが治療された。
エクリズマブ治療群に関し、投与は以下であった(週数は、AMR診断後のエクリズマブの最初の投与の日から算出された):最初の投与量900mg(1日目)、もしエクリズマブの最後の投与から7日以内に投与された場合;最初の投与量1200mg(1日目)、もしエクリズマブの最後の投与から7日後に投与された場合;毎週900mgを4回投与(1週目)、その後;毎週900mgを4回投与(2、3および4週目;±2日)、その後;5週目の始まりから一週おきに1200mgを5週目、7週目および9週目に(±2日)。
SOC対照群に関しては、投与は以下であった(週数は、AMR診断後のエクリズマブの最初の投与の日から算出された):最初の投与量1200mg(1日目)、その後;毎週900mgを4回投与(1週目)、その後;毎週900mgを4回投与(2、3および4週目;±2日)、その後;5週目の始まりから一週おきに1200mgを5週目、7週目および9週目に(±2日)。
安全性評価
データ監視委員会
独立DMCは、高リスク腎移植の経験がある少なくとも3名の臨床医から構成された。その主要な機能は、患者の安全性を確保することであったため、DMCは、全ての安全性データを閲覧することができ、データ管理専門家がDMCに参加し、全ての必要とされるデータの時宜にかなった送付を確保した。さらにDMCは必要の場合に統計学者および/または疫学者に連絡を取った。
DMCの広範な検討事項は、蓄積されつつあった安全性および有効性のデータを監視すること、および患者の安全性を確保するために試験実施と投与計画に関する決定を行うことであった。DMCの業務の詳細および責任は、設立趣意書に特定された。
安全性パラメーター
デモグラフィック/医療歴
収集されるデモグラフィック情報には、生年月日、性別、人種および/または民族性のデータが含まれた。
収集される医療歴情報には、全ての進行中の疾患、および関連する/重大な医療歴が含まれた(すべての主要な入院期間と外科手術を含む)。腎移植に関連する症状および/または当該疾患の基礎にある病因を、医療歴の用紙に列記した。本試験経過の間のこれら兆候または症状のいずれかの悪化は、AEとして収集された。
以下のバイタルサインが収集された:体温(℃)、心拍(拍数/分)、呼吸数(息/分)および血圧(mmHg)。身長(cm)および体重(kg)は、スクリーニング時に収集された。スクリーニング後の来院には、体重の収集のみが含まれた。
完全身体検査は、以下の検査からなる:全身外観、皮膚、頭部、耳、眼、鼻および喉(HEENT)、心血管系、肺、腹部/消化管、神経系、リンパ節、脊椎、四肢、および筋骨格系。尿生殖器系の検査は、別の臨床医により1年以内に別検査が実施され、患者記録に文書化されていた場合には実施されなかった。
簡略化された身体検査は、評価スケジュールで特定された時点で完了された。これら検査に含まれる身体系は、治験医師の判断および/または患者の症状に基づいた。
12リードECGが実施された。収集されたデータには、心拍、PR、QRS、およびQT間隔(補正および未補正)ならびに任意の異常性が含まれた。
検査室評価
血液学
血液学パネルには、全血球計算値(CBC)が含まれ、白血球百分率と血小板数が伴った。CBCには、赤血球(RBC)、白血球(WBC)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)および平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)が含まれる。
血液化学パネル
血液化学には、ナトリウム、カリウム、二酸化炭素、塩化物、血液尿素窒素、クレアチニン、グルコース、カルシウム、マグネシウム、リン、アルカリホスファターゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、総ビリルビンおよび直接ビリルビン、総タンパク質、アルブミン、尿酸ならびに総コレステロールが含まれた。
凝固
凝固検査には、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、プロトロンビン時間(PT)、国際標準比(INR)、ならびにフィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物が含まれた。
尿検査
尿検査には、顕微鏡検査と、尿タンパク質/クレアチニン比のスポット尿検査とともに、尿検査試験紙によるタンパク質、グルコース、ケトン類、潜血、およびWBCが含まれる。
妊娠スクリーニング
スクリーニング時、妊娠検査(血清ベータhCG)が、出産可能なすべての女性に対し完了された。
有害事象および重大な有害事象
有害事象
AEは、試験治療との因果関係とは関わりなく、本試験に登録された患者における、任意の有害な医学的な出来事として定義された。患者は、インフォームドコンセントに署名した後いつでも、任意の症状が発現した場合に治験責任医師または副治験医師に連絡をとるよう指示された。臨床所見がAEであったか否かについて何らかの疑念があった場合、当該事象は記録及び報告されなければならない。
治療下で発現した有害事象(TEAE)は、被験品に暴露される前には存在しなかった何らかの事象、または治験薬の暴露後に強度または頻度のいずれかが悪化した、既に存在していた何らかの事象として定義された。
有害事象は、ICH国際医薬用語集(MedDRA)の基本語(preferred term)に割り当てられ、治療群ごとの発生率として一覧にされた。
安全性評価は、SAEと、血液学、血液化学、凝固パラメーターおよび尿検査結果の定期的なモニタリングを含む全ての有害事象のモニタリングと記録からなる。さらにバイタルサイン、健康状態および体重測定の定期的なモニタリングが実施された。
患者は、インフォームドコンセントに署名した後いつでも、任意の症状が発現した場合に治験責任医師または副治験医師に連絡をとるよう指示された。臨床所見がAEであったか否かについて何らかの疑念があった場合、当該事象は記録及び報告されなければならない。
重篤な有害事象
重篤な有害事象は、任意の試験段階の間(すなわち基準時、治療時、または追跡期間)に、治験薬、競合品またはプラセボの任意の投与時に発生するAEであり、以下の内の一つまたは複数を満たすものであった:死に至る、直ちに生命を脅かす。「生命を脅かす」という用語は、患者が、当該事象の時に死のリスクにあったことを意味する。仮に、もしさらに重度であった場合に死に至り得る事象は指さない。患者の入院または、すでに入院している期間の延長が必要とされる。持続的もしくは重大な傷害または無能力をもたらす。先天性異常または出生異常をもたらす。
死をもたらさらないが、生命を脅かす、または入院を必要とする重要な医学的事象は、適切な医学的判断に基づき、それらが患者を脅かし、本定義に列記される転帰のうちの一つとならないように医学的または外科的介入を必要とし得る場合、SAEとみなされた。そうした医学的事象の例としては、緊急治療室または自宅での集中治療を必要とするアレルギー性気管支痙攣、患者の入院にはつながらなかった血液悪液質もしくは痙攣、または薬物依存症もしくは薬物乱用の発症が挙げられる。
他の対象となる有害事象
他の対象となる有害事象は、臨床試験報告書の安全性データの評価の間に、薬剤安全性臨床医、およびさらには臨床試験チームの臨床医により特定された。SAE、および患者の本試験の中止につながるAE以外の、特定の臨床的意義のある重大なAEは、他の対象AEとして分類された。他の対象有害事象の各々に対し、談話が臨床試験報告書に記載され、含まれた。
本試験に対する他の対象有害事象は、以下を含む:入院または抗感染治療を必要とした、またはそれとは別に治験医師により重大とみなされた臨床的に重大な感染症の累積発生率(培養、生検、ゲノム所見または血清学的所見により確認される);CMV疾患の累積発生率;BKウイルス疾患の累積発生率;被包性細菌感染の累積発生率;PTLD(移植後リンパ増殖性疾患)の累積発生率;悪性腫瘍の累積発生率;Banff2007の任意のグレードの基準に合致する、生検で明らかな急性細胞性拒絶反応の累積発生率;チモグロブリンまたは他のリンパ球枯渇剤に反応しない重度の急性細胞性拒絶反応を発症する患者の割合;AMR以外の理由による同種移植片喪失の累積発生率;および患者の全生存期間。
被験薬剤との関係性
治験医師または医療資格を有する指定人が、各AEについて治験薬との関係性を決定した(無関係、可能性は低い、可能性あり、可能性が高い、または確定的)。無関係:この関係性は、治験薬と報告された事象の間に関連性が無かったことを示唆した。可能性は低い:この関係性は、臨床像が治験薬以外の原因と高度に一致したが、寄与を絶対的確実性で無かったことにはできず、治験薬とAEの間の関係性を完全な信頼で排除することはできないことを示唆した。可能性あり;この関係性は、治験薬を用いた治療がおそらくAEの原因または寄与していたことを示唆した。すなわち当該事象は薬物投与時からの合理的な時系列に従い、および/または治験薬に対する公知の反応パターンに従ったが、他の因子により発生する場合もあり得る。可能性が高い;この関係性は、治験薬投与と当該事象の合理的な時系列が存在し、当該事象と治験薬が関連する可能性を示唆した。これは、治験薬の既知の薬理学的作用、治験薬もしくは薬物群に対して公知の、もしくは過去に報告された有害反応、または治験責任医師の臨床経験に基づく判断に基づいた。確定的:治験薬と、他の状態(同時に発生した病気、同時に発生した投薬反応、または疾患状態の進行/発現)の時間的関係性が、当該事象を説明するように思われ、既知の薬学的プロファイル、中断での改善、再投与での再発と一致する。
有害事象の記録
患者から自発的に報告された、および/または本試験関係者からの未解決問題に応答した、または観察によって明らかにされた有害事象は、試験サイトで本試験の間に記録された。検査室の値、血圧、および脈拍における臨床的に重大な変化は、AEとして報告される必要があった。SAEを構成する、または被験薬剤投与の中止につながる異常値は、AEとして報告され、記録されなければならない。有害事象または重篤な有害事象とみなされた任意の異常な検査所見;治験医師は、ただ異常な結果だけではなく、診断、兆候または症状を報告することを強く推奨された。2~4週間以内および次回の予定されたモニタリング来院の前に、すべての重篤でない有害事象が電子症例報告書に記入された。
AEに関する情報は、ICFの署名から収集された。SAEの情報は、試験終了までICFの署名から収集された。AEの医学的用語は、可能な場合には標準的な医学的用語で報告された。各AEについて、治験医師は、発症(日付と時刻)、解決策(日付と時刻)、強度、因果関係、とられた行動、重篤な転帰(該当する場合)、およびそれが患者の本試験中止の原因となったかどうかを評価し、記録した。
強度は以下の尺度に従って評価した:軽度(兆候または症状の認識、しかし耐容が容易);中程度(通常の活動の阻害原因となるのに十分な不快感);重度(無力化、通常の活動を行うことができず、全身薬物療法または他の治療を必要とし得る)
重篤と重度のAEを識別することが重要である。重大度は、強度の大きさである。重大な強度のAEは、重篤とはみなされない場合がある。
被験薬剤の投与の間に患者が妊娠していたことが判明した場合、被験薬剤は直ちに中止された。さらに本試験期間中の任意の時点で妊娠した全ての女性に対し、ファーマコビジランスが通知された。ファーマコビジランスは、治験医師に、「妊娠報告書および転帰用紙/母乳栄養」のコピーを供給した。患者は、たとえ患者が本試験を中断していたとしても、妊娠の転帰が判明するまで追跡された(自然流産、選択的中絶、正常な出産、または先天性異常)。妊娠の転帰が判明した時点で、用紙は完了し、ファーマコビジランスに返却された。追加の追跡調査が必要とされた場合、治験医師に情報提供が求められた。
治験薬が避妊薬の有効性を妨げている可能性があるとの疑いがない限り、妊娠自体は有害事象と見なされなかった。
先天性異常/出生異常のすべての報告は、SAEである。自然流産は、SAEとして報告され、処理された。合併症を伴わない選択的中絶は、AEとして処理されなかった。
治験医師は、治験薬との関連性、またはその臨床的重大性にかかわりなく、本試験中に観察された、または報告されたすべてのAEおよびSAEを報告する責を負う。
患者が同意書を提出した後に発生した全てのAEは、患者の原/カルテ、および適切なCRFに詳細に報告され、満足のいく解決策に従うか、または治験責任医師もしくは副治験医師が当該事象を慢性的であるとみなすまで、または患者が安定しているとみなすまで追跡された。AEの記載には、発生した日付、解決した日付、強度、重篤度、およびAEと治験薬が関係する可能性が含まれた。
報告された追加情報には、任意の必要とされた治療または評価、および転帰が含まれた。全ての報告されたAEは、適切な解決策に従った。患者がスクリーニングされたときに存在したが悪化しなかった任意の医学的状態は、AEとして報告されなかった。しかし本試験中の任意の時点での悪化は、AEとして記録された。
統計およびデータ解析
データ解析の概論
継続的なデータについては、平均、標準偏差、メジアン、最小値および最大値が報告された。カテゴリーデータについては、割合と頻度が報告された。
欠測データ
デモグラフィック、レシピエント、ドナー、および移植に関連する情報の欠測データ、および検査室データに関する欠測データは、欠けているものとして処理された;データ補完方法は計画されなかった。事象エンドポイントまでの時間に関する欠測データは、以下の表に従ってイベントを正しい打ち切りとしてコード化した。
表10:イベントデータ解析までの時間をコード化する欠測データイベント
Figure 0007256741000019
データセットの解析
一つの解析セットが規定された;安全性セット。安全性セットは、無作為化され、移植されたすべての患者を含んだ。
全ての安全性および有効性解析は、安全性セットを使用して実施された。
大規模なスクリーニングおよび脱感作手順が登録と移植の間に行われたため、安全性データは、登録されたが移植されなかった任意の患者については別個に収集され、要約された。
有効性解析
全てのエンドポイントの一次解析は、全ての患者が移植後12か月に達した後に行われた。患者は、患者生存率および移植片生着率、腎疾患、ならびに疾患状態に関する追加の追跡データの収集のために、18、24、および36ヶ月目に継続して追跡された。
主要有効性の変数および解析
主要有効性複合エンドポイントは、1)生検により明らかとされるAMR、2)移植片喪失、3)患者の死、または4)追跡調査の喪失、の発生として規定される、9週目での移植後治療の失敗率であった。
AMDの診断は、腎同種移植片の機能障害と、「正当な理由」により行われる生検に基づいた。組織学的診断は、AMRに関するBanff2007の基準に基づいており、中央病理検査室により決定された。本試験に関しては、レベルIIおよびレベルIIIのAMRのみが以下に定義されるように受容された:循環抗ドナー特異的抗体の存在、急性組織損傷の形態的エビデンス、例えば(タイプ/グレード)。Banff 2007 レベルII-毛細血管および/または糸球体の炎症(ptc/g>0)および/または血栓症;Banff 2007 レベルIII-動脈-v3.
主要有効性変数は、上記の複合エンドポイントの定義を満たす患者が治療失敗と見なされ、その他すべての患者が治療成功と見なされた場合の二値転帰変数であった。エクリズマブ治療群とSOC対照群の間の移植後9週目の治療失敗の発生率における、観察された差異は、治療差異に対する95%信頼区間(CI)で算出された。本試験は第II相臨床試験であったが、真の治療差異(π-π)が0であるという帰無仮説の検定を、移植前脱感作プロトコルにより階層化されたCochran-Mantel-Haenszel検定を使用して行った(サンプルサイズと検定力の検討事項を参照)。
副次的有効性変数と解析
本試験の副次的有効性エンドポイントは、以下を含んだ:移植後9週~12カ月目の間に発生したAMRの累積発生率(Banff2007基準に合致する任意のグレードのAMR);1)生検により明らかとなるAMR、2)移植片喪失、3)患者の死、または4)移植後12カ月目での追跡調査の喪失、の発生として規定される治療失敗率;移植後6カ月目および12か月目の移植片生着率と患者生存率;移植後14日目、ならびに3か月目および12か月目での他の臨床所見を伴わない、生検プロトコール上でのAMRの組織学的エビデンス;移植後14日目、ならびに3か月目および12か月目でのプロトコール生検上での慢性AMRを含む全般的な病理学的変化;移植後12カ月目での累積PP治療回数;移植後12カ月目で脾臓摘出術を必要とする患者の累積発生数;臓器移植後臓器機能障害(DGF)(術後高カリウム血症、急性肺浮腫、または併発疾患による体液過剰以外の理由による、移植後最初の一週内での透析の必要回数として規定される)の発生率;移植後7日~12か月の間の透析の累積発生率と期間;移植後4週~12か月の間の、Modification of Diet in Renal Disease 7(MDRD7)により(算出される)推定糸球体ろ過率により測定される腎機能;PPまたは透析が行われておらず、20%以内の変化である、少なくとも2日あけて測定された少なくとも3回の連続的な測定値として規定される血清クレアチニン。
上記に列記される移植後の各時点での患者の生存率および移植片生着率、遅延AMRの累積発生率、他の臨床所見が無い生検で明らかなAMRの累積発生率、ならびにリンパ球枯渇剤を用いた治療を必要とする、生検で明らかな重度の急性細胞性拒絶反応の累積発生率は、積極限推定量(カプランマイヤー)法を使用して推定され、移植前脱感作プロトコールにより階層化されたZ検定を使用して治療群間で比較された。点推定値に加えて、治療群間の割合推定および割合差異に対する95%CIが提供された。
移植後12か月目での治療失敗の発生率は、95%CIで各治療群に提供された。治療群は、移植前脱感作プロトコールにより階層化されたCochran-Mantel-Haenszel検定を使用して比較される。
移植後PP治療の累積数は、移植前脱感作プロトコールにより階層化された比例オッズモデルを使用して治療群間で比較された。オッズ比(エクリズマブとSOC対照群)および95%CIが、それぞれ関連の強さと精度の尺度として提供された。
プロトコール生検上での組織学的エビデンスのみで診断されたAMRの治療発生率が、95%CIとともに各治療群について提供された。治療群は、移植前脱感作プロトコールにより階層化されたCochran-Mantel-Haenszel検定を使用して比較された。使用された実際の治療は要約され、または列記された。
脾臓摘出術を必要とする患者の割合、DGFの発生率、および移植後7日を超える透析の発生率が、95%CIとともに各治療群に提供された。治療群は、移植前脱感作プロトコールにより階層化されたCochran-Mantel-Haenszel検定を使用して比較された。
移植後7日を超える透析期間、およびAMRの診断後に血清クレアチニンが底値より30%超高かった日数を、当該モデル中の移植前脱感作プロトコールを含む順位付けデータのANOVAを使用して治療群間で比較した。
14日目、ならびに3および12ヶ月目のプロトコール生検で見つかった慢性AMR、および4週目~12か月目の腎機能の変化を含む全体的な病理学的変化を、当該モデル中の移植前脱感作プロトコールを含む混合効果線形回帰を用いて治療群間で比較した。
亜群解析
亜群解析を行って、Luminex LabScreenによ決定される、登録時のCDC状態(過去または現在)および抗体レベルの検査結果に基づいて、転帰に何らかの差異が存在するか否かを調査した。
安全性解析
安全性評価は、SAEを含む全てのAE、血液検査結果、血液化学検査結果、および尿検査結果、バイタルサイン、健康状態、および体重測定結果の定期的なモニタリングの要約からなる。
被験薬剤との関連性にかかわりなく、すべてのAE(重篤および非重篤)が、MedDRA(バージョン10.1以上)を使用して器官別大分類および基本語により分類された。各治療群内の発生率は、各器官別大分類と基本語に対して一覧にされた。
上記に加えて、以下の特定の安全性評価が、移植後9週目および12か月目で各治療群について要約された:入院または抗感染治療を必要とする、またはそれとは別に治験医師により重大とみなされた臨床的に重大な感染症の累積発生率(培養、生検、ゲノム所見または血清学的所見により確認される);CMV疾患の累積発生率(発生率および%);BKウイルス疾患の累積発生率(発生率および%);被包性細菌感染の累積発生率;PTLDの累積発生率;悪性腫瘍の累積発生率;Banff2007の任意のグレードの基準に合致する、生検で明らかな急性細胞性拒絶反応の累積発生率;チモグロブリンまたは他のリンパ球枯渇剤に反応しない重度の急性細胞性拒絶反応を発症する患者の割合;AMR以外の理由による同種移植片喪失の累積発生率;および患者の全生存期間。
中間解析:主要および副次的有効性変数の正式な統計中間解析は予定されていなかった。
長期転帰データ収集
拒絶反応症状発生、移植片喪失、患者生存率、腎疾患および疾患状態の中間評価を行うための長期追跡調査データ収集の目的のために、全ての患者が18、24、および36か月目に来院した。以下の情報が収集され、要約された:化学的パネル(BUNおよびsCrを含む);タクロリムストラフレベル;他の免疫抑制レベル;DSA、BFXMおよびTFXM(36か月目のみ);腎同種移植片の生検(36か月目のみ)。これらのデータは、主要有効性解析の一部とはみなされなかった。
サンプルサイズと検定力の検討事項
主要有効性複合エンドポイントは、1)生検により明らかとされるAMR、2)移植片喪失、3)患者の死、または追跡調査の喪失、の発生として規定される、9週目での移植後治療の失敗率であった。サンプルサイズと検定力の検討事項は、以下の仮定での主要有効性変数に基づいた:SOC対照群における移植後9週目での複合エンドポイント治療失敗率、π=36.3%(以下の表14を参照);エクリズマブ治療群における移植後9週目での複合エンドポイント治療失敗率、π=10%(51);帰無仮説、H:θ=π-π=0;別の仮説、H::θ=π-π< -36.3%;I型エラー、α=0.05(両側有意検定);統計検定=フィッシャーの直接確率検定;無作為化比率=1:1。
主要有効性エンドポイント解析は、Cochran-Mantel-Haenszel検定を使用して行われたが、転帰に対する階層化の関係性が不明であったため、サンプルサイズの算出にはフィッシャーの直接確率検定が使用された。0.050両側有意性レベルを用いたフィッシャーの直接確率検定は80%を超える検定力を有し、各群のサンプルサイズが45であったときに、対照群の失敗率のπ=0.363と、治療群の失敗率のπ=0.100の間に有意差を検出した。
治療失敗の36.3%の背景率(主要有効性変数)は、文献(表14を参照)から取得されたAMR発生率のプール分析から導き出され、40人の患者が元々のプロトコール対象基準の下でプロトコールに登録され、患者の3分の1が修正が行われた場合の元の基準にも合致すると仮定した。ランダム効果モデルを使用することで、本発明者らはAMRの背景率が34.8%であったこと(95% CI=26.3%-44.3%)を見出した。これは複合エンドポイントの一部として移植後9週目の移植片喪失と患者の死に関する不確実性を考慮すると40%まで増加した。これは、より控えめな移植後9週目の治療失敗の背景率の推定を提供していると感じられた。陽性補体依存性細胞障害性(CDC)クロスマッチ(現在または過去)、または陽性B細胞フロークロスマッチ(BFXM)および/もしくはT細胞フロークロスマッチ(TFXM)を有する患者について、本発明者らはSOC群において失敗率が30%まで低下すると予測する。サンプルサイズの算出により、40名の患者が元々のプロトコールの対象基準条件下でプロトコールに登録され、修正が実行されても、およそ3分の1の患者がまだ元の基準に合致するであろうと推測された。
髄膜炎菌ワクチンに対する免疫反応を評価する副試験が、選択されたセンターで20名の患者に対し行われた。
表11:生体ドナー腎移植の脱患者レシピエントにおける、AMRの背景率
Figure 0007256741000020
Banff 基準 2007 改訂 Solez Ket al.Am J Transplant.2008 Apr;8(4):753-60

MDRD 7(推定GFR)
Figure 0007256741000021
Modification of Diet in Renal Disease(MDRD)7 Calculation Poge U et al.,Am J Transplant.2005 Jun;5(6):1306-11:
MDRD 7 方程式(MDRD7)=170×[血清クレアチニン(mg/dL)]-0.999×[年齢]-0.176×[0.762患者が女性の場合]×[1.18患者が黒人の場合]×[血清尿素窒素濃度(mg/dL)]-0.170×[血清アルブミン濃度(g/dL)]0.318。
臨床検査リスト
表12:化学、凝固、血液、尿、妊娠、およびHLAの検査
Figure 0007256741000022
実施例2:脱感作療法を必要とする生体ドナー腎移植レシピエントのAMRの予防における、エクリズマブの安全性および有効性を決定するための無作為化、非盲検、多施設試験
本試験は、102名の患者が登録され、エクリズマブ群(N=51)、SOC群(N=51)であった。本試験に含まれた患者は、腎移植待機リストに3.4年のメジアンで記載されていた(0.1~22.2年の範囲)。
本試験の主要目的は、1)生検により明らかとされるAMR、2)移植片喪失、3)患者の死、または4)追跡調査の喪失、の発生として規定される、主要エンドポイントである治療失敗率により評価される、最初の9週目でのエクリズマブの有効性を評価することであった。主要有効性エンドポイント決定に対するAMR診断は、「正当な理由がある」腎生検に基づいた。さらにあらかじめ決められた時点で、プロトコール生検が全ての患者に対し行われる。
9週の主要有効性エンドポイントは、フィッシャーの直接確率検定を使用して評価された。α=0.05(両側)、80%の検定力、36.3%の対照失敗率、および10%の治療失敗率に対する検定力計算の推定では、45名の患者が各治療群に必要である。規定の主要エンドポイントに基づき、すべての患者が9週目で治療失敗または治療成功のいずれかに分類されることを考慮し、追跡調査の喪失も含めると、患者は誰も主要エンドポイントのデータを欠測してはならない。両側仮説検定を、全てのエンドポイントに対して0.05のI型エラー率で使用した。単一の主要有効性エンドポイントであるため、多重度の調製は必要とされなかった。主要有効性エンドポイントに対する現地病理検査と中央病理検査の結果の効果を説明するために、予定された感度解析が行われた。
現在のところ、1年の転帰を含む、主要エンドポイントと関連したこれらデータを越える有効性解析は行われていない。
生検評価
本試験において、各サイトの現地病理学者により評価された生検結果が、治療決定の基礎であった。現地で検査されたスライドは、中央病理画像解析委託研究機関(CRO)であるBiomedical Systemsにも送付され(まさに同じスライド、またはデジタル化されたもののいずれか)、その後、そこから二名の独立した盲検化病理学者によるレビューのためのデジタル化スライドが提供された(中央病理検査)。複合主要エンドポイントの一部としての生検により明らかなAMRの評価は、中央病理検査に基づいた。二名の中央病理学者の間での一致により、または一致がなされなかった場合には第三の盲検化病理学者の裁定により、一つの診断が為された。生検レビューに基づく急性AMRには以下の4つのカテゴリー分類の可能性があった:病変無し(clean)(急性AMR無し)、グレードI、グレードII、またはグレードIII。しかし治療失敗の主要エンドポイントには、二値評価が含まれており、そのため病変無しとグレードIは、「急性AMR=無」としてカテゴライズされ、グレードIIとグレードIIIは「急性AMR=有」としてカテゴライズされた。中央病理学者による生検結果が、病理学者AはグレードII、病理学者BはグレードIIIであった場合、彼らは一致したとみなされ、裁定は必要とされなかった。グレードIの症例は「急性AMR=無」カテゴリーに含まれるが、本試験が設計された時点では、急性AMRの組織学的特徴の理解を裏付ける臨床経験がほとんどなかった。ゆえに、Banff基準が、本試験の焦点である重度の急性抗体依存性補体介在性拒絶反応(SAACR)の特定に限定されないことも十分には認識されていなかった。生検上のグレードIの病変は臨床上意義のある診断であるという事実は、臨床経験が蓄積されるにつれて明らかとなった。AMR専門家は、早期急性AMRのグレードIの症例は臨床的に意義があると指摘している。その理由は、早期の臨床診断によって、その組織病変が発現する時間が短縮化されるためであり、専門家らは、未治療で放置された場合、グレードIの急性AMRは、より進行し、グレードIIおよびグレードIIIの事象と類似した転帰につながるとの予測を認めている。この理由のために、以下の追加解析は、本解析におけるグレードI急性AMR評価を含む。
以下に提供されるデータには、中央病理検査に基づく主要エンドポイント、ならびに主要エンドポイントに対する感度解析を含む。主要エンドポイントの元々の解析には、移植片喪失を伴う5名のSOC患者が存在した。治験医師が後に実際には移植片喪失していなかった患者のデータ補正を確認したため、この数は現在のデータでは1名にまで減少している。
複合指標を構成する個々の構成要素とともに、主要エンドポイントの結果を、表13に提示する。治療失敗率は、エクリズマブ群とSOC群の間で有意差が無かった(p=0.760)。SOC群において移植片喪失の数は多かったが、イベント数は少なく、さらなる解釈は限定される。注意すべきは、本試験は、エクリズマブ群に対しては10%、SOC群に対しては36.3%の予測治療失敗率に基づいて検定されたことである。エクリズマブ群では予測された確率が観察されたが、SOC群では予測よりもずっと低い確率が観察された(13.7%)。
表13:主要エンドポイント
Figure 0007256741000023
データ理解を改善するために、いくつかの感度解析が行われた。表14は、複合主要エンドポイントの解析を要約するものであるが、統計解析計画に概要される、あらかじめ規定された解析である現地病理学者の生検結果を使用している。注意すべきは、現地病理検査に基づく治療失敗率は、中央病理検査に基づく治療失敗率とは異なっていたことであり、主にSOC群において、より多くの急性AMR症例が診断されている。
表14:現地病理検査を使用した主要エンドポイント
Figure 0007256741000024
表15は、中央病理検査と現地病理検査の両方のグレードI AMRを含む感度解析の概要である。主要エンドポイントに対して事前に規定されていないが、この分析は中央病理検査と現地病理検査の違いがグレードIとIIの症例解釈における潜在的な差異に主に起因するか否かをさらに理解するために行われた。さらに上述のように、AMR専門家は、早期急性AMRのグレードIの症例は臨床的に意義があると指摘している。その理由は、早期の臨床診断によって、その組織病変が発現する時間が短縮化されるためであり、未治療で放置された場合、グレードIの急性AMRは、より進行し、グレードIIおよびグレードIIIの事象と類似した転帰につながると予測される。ゆえにエクリズマブの治療効果を最も理解するためには、この構成要素の理解が重要であると考えられた。主要エンドポイントと同様に、評価が現地病理検査に基づいた場合に急性AMR発生率の上昇が指摘され、この違いはグレードI、IIおよびIIIにわたって発生していた。
表15:グレードIのAMRを含む主要エンドポイント、中央病理検査と現地病理検査
Figure 0007256741000025
中央病理検査と現地病理検査で治療失敗率に大きな違いが観察されたことを考慮して、すべての病理検査結果の評価が行われた。この評価には、9週間の主要エンドポイント期間にわたって評価された全生検が包含されており、および正当な理由の生検とプロトコールに従う生検が含まれた。総数で241個の生検がこの期間に集められた。評価は、AMRグレードによるものであり、中央病理検査結果の全体、ならびに個々の中央病理学者の結果を評価した。上述のように、二名の主要中央病理学者の一致、または第三の中央病理学者の裁定のいずれかに基づく中央病理検査評価から、一つの診断結果が得られた。
評価された241個の生検の各々に対する、現地検査室、および中央検査室全体のグレード化スコアを表16において、カッパ係数とともに示す。この係数は、現地検査室と中央検査室全体のスコアの間の一致レベルを測定するものであり、偶然による一致予測を説明するものである。比較的多数の生検(75.5%)が、中央病理学者全体および現地病理学者の両方により「病変無し(clean)」(グレードIのAMR未満)として評価された。しかしながら現地病理検査室または中央病理検査室全体のいずれかが生検をグレードI、IIまたはIIとしてカテゴライズした場合、多くはほとんど一致しなかった。全体として一致のカッパスコアは、0.225であり、これは一般的にはまずまず(fair)またはわずか(slight)とみなされるにすぎない。この一致しない生検には、現地では病変無しと評価されたが中央ではグレードIIまたはIIIと解析された4個、そして現地ではグレードIIまたはIIIと評価されたが中央病理学者には病変無しとカテゴライズされた21個の生検が含まれた。
表16:AMRの病理学的グレード化の結果:現地と中央の病理検査
Figure 0007256741000026
主要エンドポイントに対して、各生検は一つの中央病理検査室スコアしかなかったが、現地病理検査室と中央病理検査室の間の不一致をさらに把握するために、二名の中央病理学者のデータの比較を行い、中央病理学者間の一致の程度を決定した。表17の現地と中央の生検結果の比較と同じように、生検が病変無しと分類された場合には、二名の中央病理学者の間には比較的良好な一致があった(中央病理学者の両名により、86.3%が病変無しと記載された)。しかし上述の現地と中央の病理検査結果と類似して、グレードIよりも大きい場合には、二名の中央病理学者の間で違いが記載される場合が多くあった。これには、中央のリーダーBが病変無しとしたが、リーダーAはグレードII(9症例)およびグレードIII(1症例)と分類した10個の生検、そしてリーダーAは病変無しとしたが、リーダーBはグレードIIと分類した3症例が含まれた。上述のように、二名の主要中央リーダーの間に不一致があった場合(急性AMR=有に対し、急性AMR=無)、不一致の裁定に責を負う第三の中央リーダーによるレビューを使用して、合意が得られた。
表17:中央病理学者によるAMRのグレード化の結果:個々の主要病理学者
Figure 0007256741000027
上記の不一致の程度に応じて、241個の生検に対するグレードは、三名の病理学者(一名は現地病理学者、二名は主要中央病理学者)のクロス集計により要約され、それらの間にある違いが把握された。表18は、本評価の結果を示す。
全ての病理学者の間で、または二名の中央病理学者の間で病変無しと合意された生検以外では、診断の一致はほとんど無かった。中央病理学者の間で、少なくとも一名の病理学者により、生検がグレードI、IIまたはIIIの急性AMRの閾値に合致する場合、その生検のうちたった6個(18%)のみが診断一致し、一方で27個(82%)は一致しなかった。病変無しとグレードI、およびグレードIIとグレードIIIの二値転帰であることを考慮すると、14個(42%)の生検評価が一致し、19個(58%)が一致しなかった。
表18:現地および中央での急性AMRのグレード化の結果(正当な理由がある生検、およびプロトコールによる生検):病理学者による比較とグレード
Figure 0007256741000028
これらのデータを鑑み、腎移植外科医、腎移植専門医、および病理学者を含む、急性AMRの専門家集団が集められ、不一致の程度が検討された。現地と中央の病理学者に対して提供された情報の間の不一致として特定された一つの態様は、各症例に対し、急性AMRの診断を確認または除外するためにその二群が有していたデータ量であった。プロトコールでは、急性AMR診断は、生検所見に基づく急性組織損傷の形態的エビデンスとともに、腎同種移植片の機能障害と、循環DSAの存在を含む「正当な理由」で実施された生検に基づき行われるべきであるとまとめられていた。しかしながら現地病理学者のみが、例えば同種移植片の機能障害や、各症例に対し正当な理由で生検が行われたか否かを含む詳細などの臨床情報にアクセスできた。さらには、専門家ならびに中央病理学者との検討により、臨床診療において、急性AMRの診断には、病理学的構成要素に加えてこれらの臨床的構成要素の評価が含まれることが明らかとなった。
この情報を鑑み、中央病理学者に生検サブセットを再評価させることが決定され、各症例に対する臨床情報が提供されることによって、中央病理学者間の一致が多くなるかどうか、および再評価された生検をどのようにして現地病理診断と比較するかが決定された。この再評価において、病理学者は、画像化CROにより提供されたものと同じであり、治療群に関して盲検化が維持された生検スライドをレビューした。
解析は、現地病理学者に利用可能であった臨床情報を使用した、盲検化された中央生検再評価に基づいた。
この項は、中央検査室の生検の再評価において実施されたプロセスについて説明し、修正された生検データを提供する。
生検再評価の主目的は、病理学者間の不一致の根幹にある原因の把握に努めることであったため、急性AMR診断の基礎であり、元々の電子データ収集の一部ではなかったBanff基準の詳細は文書化されるべきであると決定された。これらのデータがあることで、Alexionは、当該基準喉の構成要素が、診断の違いの原因であったかを把握することができる。この目的のために、Banff 2007;Solez K et al.Am J Transplant.2008 Apr;8(4):753-60)に概要される急性AMR基準のすべてが含まれるスプレッドシートが、中央病理学者との協力で設計された。
このスプレッドシートの準備が行われている間に、中央病理学者が、Alexionプログラム生検の評価に関し、Banff基準の内の一つを変えたことも明らかとなった。3名の中央病理学者は、本試験の生検のいずれかを読み取る前に、彼らの間で同意文書を作成し、彼ら全員が同様の方法で生検評価に臨んだことの確認が得られるようにしたことも判明した。この同意文書は、急性AMRの診断は、以下を必要とすることをまとめていた:ptc2レベル以上の好中球および/もしくは単核細胞を伴う毛細管炎、g2以上の好中球を伴う糸球体炎、糸球体血栓症、または動脈/細動脈のフィブリノイド壊死、ならびにIHCによるレベル2以上のC4d染色(>10%)(C4d2)。
しかしながらこの定義は、毛細管炎および/もしくは糸球体炎(0より大きいptc/g)、ならびに/または血栓症の存在のみを必要とするバンフ基準(およびそのプロトコール)よりも大きな要件を規定するものである。病理学者とこの状況を検討した際に、彼らは移植の日付と関連した生検の日付を有してはいないため、生検を「読み過ぎる」ことを回避するためにこの変更を(Alexionの許可または通知無しに)行ったと伝えた。ゆえに生検再評価に対して行われた追加解析には、各症例に対する臨床情報と、Banff基準とプロトコール基準に中央病理学者が厳密に従うという要件が含まれる。
生検再評価の最初の計画は、現地および中央の病理学者の両方が「病変無し」と異論なくカテゴライズされなかった全ての生検に焦点を当てることであった。すべての病理学者の間で病変無しと異論なく評価された生検は178個あり、病変無しと異論なくカテゴライズされず、再評価を行う生検は63個が残された。さらに「病変無し」と異論なく評価された37個の追加生検が内部対照として無作為に選択され、総数で100個の生検となった(63と37)。
中央病理学者によって元の生検に適用された尿細管周囲毛細管炎と糸球体炎に対して高くなった要件に関する学習が行われた後、さらに9個の「病変無し」の生検が100個の生検に加えられた。これら最後の9個の生検は、過去に病変無しとして異論なくスコア化されており、中央検査室評価によりC4d陽性として評価された「正当な理由のある」生検であったために選択された。これにより、「正当な理由にある」生検のみに基づいた、主要エンドポイントに影響を及ぼす能力を有する生検が、この評価に含まれることが保証された。画像化CROは、これら109個の生検を病理学者のためにリロードし、各症例に関する以下の臨床情報を提供した。生検の日付(移植後の日数);生検の理由;腎疾患の主原因;腎疾患の診断日;経時的クレアチニン;経時的DSA;タクロリムスレベル;免疫抑制剤;および感染の有害事象のリスト。
診断補助に重要であるとみなされた臨床情報の詳細が、中央病理学者により特定された。追加解析の結果は、現地病理学者に利用可能であった臨床情報を使用した、盲検化された中央生検再評価に基づいた。生検再評価の結果を、以下の表に提示する。現地病理学者と、両名の中央病理学者により「病変無し」とみなされた、再評価されなかった132個の生検があった。
表19は、再評価生検のデータを使用した主要エンドポイント解析を要約する。新たな解析では急性AMR患者の数が増加しており、エクリズマブ群とSOC群のそれぞれで1名と4名の患者が増加した。エクリズマブ群の治療失敗率は、SOC群で観察された失敗率の二分の一よりも若干多かったが、その差は統計的に有意ではなかった。
表19:主要エンドポイント:生検再評価
Figure 0007256741000029
表20は、中央病理検査室の再評価生検データと、現地病理検査室の過去のデータを使用したグレードIのAMRを含む主要エンドポイントの比較を示す。再評価に基づくと、エクリズマブ群とSOC群のそれぞれで1件および6件の急性AMR事象がさらに追加され、エクリズマブ群とSOC群の間の治療失敗率に対する差異は、統計的に有意であった。
表20:グレードIのAMRを含む主要エンドポイント、中央病理検査と現地病理検査:生検再評価
Figure 0007256741000030
レビューの各セットを通じて報告された患者が、一貫して特定されていたか否かを把握するために、急性AMRであると記録された各患者の診断に関する患者別レビュー(グレードIの急性AMRの除外および含有の両方)が行われた。その結果は、元の中央検査室生検、再評価中央検査室生検、および現地検査室生検の診断の間で比較された。
中央検査室生検の再評価で特定された患者は概して、元の中央検査室生検評価で特定された患者と同じ患者を含んでいた。さらにこれら患者の大部分は、現地検査室の生検評価でも特定された。このことは重要な見解であり、三つの異なる評価についてグレード間である程度の不一致があったとしても、そして現地病理学者がより多くの症例を特定していたとしても、三つの異なる評価間での一致が再評価を支持しているだけではなく、全体として現地生検評価の結果を支持している。
以下の表21および22は、中央検査室の元の生検データ、中央検査室の再評価生検データ、および現地検査室の生検データに対する個々の患者レベルでの患者ごとの急性AMR診断をエクリズマブ群とSOC群のそれぞれに関して提示する。各行は固有の患者を示しており、したがって、所与の行に対し、患者番号が二つ以上の列にある場合、それは生検評価間の一致を示す。
エクリズマブ群
エクリズマブ群において、再評価された中央生検データは、元の中央生検データと一致していた。最初に特定されたすべての患者が、再評価でも特定され、再評価では一名の患者が追加で特定された。これは、グレードIのAMRが解析に含まれたか、除外されたかにかかわらず、当てはまった。
グレードIを除外した再評価中央検査室データと現地検査室データを比較すると、2名の患者が中央病理検査室で特定されたが、彼らは現地病理検査室では特定されなかった(患者1と5)。しかしながらグレードIの症例が検討された場合には、患者1が追加された。したがって、再評価中央病理検査により診断された、それぞれグレードIを除外、および含む場合の6名中4名、および6名中5名の患者が、現地病理検査室で診断された。
標準的治療群
SOC群において、再評価中央検査室生検データは概して、元の中央検査室生検データと一致していた。元の生検評価で特定された5名中4名、および7名中6名が、それぞれグレードIを除外および含む症例を検討したときに、再評価において特定された。それぞれグレードIを除外する、および含む場合に、5名および7名の追加の患者が、元の中央検査室生検の再評価で特定された。
グレードIを除外した再評価中央検査室データと現地検査室データを比較すると、1名の患者が中央病理検査室で特定されたが、彼らは現地病理検査室では特定されなかった(患者20)。グレードIを含む再評価中央検査室データと現地検査室データを比較すると、2名の患者が中央病理検査室で特定されたが、彼らは現地病理検査室では特定されなかった(患者13と20)。まとめると、再評価中央病理検査により診断された、それぞれグレードIを除外、および含む場合の9名中8名、および13名中11名の患者が、現地病理検査室でも診断された。
中央検査室生検評価と現地検査室生検評価の要約
中央検査室生検の再評価で特定された患者は概して、元の中央検査室生検評価で特定された患者と同じ患者を含んでいた。さらにこれら患者の大部分は、現地検査室の生検評価でも特定された。このことは重要な見解であり、三つの異なる評価についてグレード間である程度の不一致があったとしても、そして現地病理学者がより多くの症例を特定していたとしても、三つの異なる評価間での一致が再評価を支持しているだけではなく、全体として現地生検評価の結果を支持している。
表21:急性AMRエンドポイントデータの患者ごとの比較:中央病理検査室生検データおよび再評価した中央病理検査室生検データ、ならびに現地病理検査室生検データ
Figure 0007256741000031
表22:急性AMRエンドポイントデータの患者ごとの比較:中央病理検査室生検データおよび再評価した中央病理検査室生検データ、ならびに現地病理検査室生検データ
Figure 0007256741000032
上述のように、生検再評価の主目的の一つは、現地病理検査室と中央病理検査室の間の不一致、および二名の中央病理学者の間の不一致のさらなる把握であった。表23は、プロトコールによる生検、および正当な理由による生検の両方に対する、再評価された中央病理検査室と比較した元の現地病理検査室の結果の概要である。中央病理検査室と現地病理検査室の結果の間には差異があり続けていた。しかし一致の評価である単純カッパスコアは、現在の比較において、まずまず、またはわずかとみなされる0.225(95% CI 0.111-0.338)から、中等度と見なされる0.496(95% CI 0.374-0.618)まで増加した。
表23:AMRの病理学的グレード化の結果:現地と中央の病理検査:生検再評価
Figure 0007256741000033
表24は、再評価した生検データを使用した、個々の中央病理学者の間の比較を概要する。一致レベルは、再評価生検データのほうが高く、単純カッパスコアの過去のスコアが0.372(95% CI 0.220-0.523)であったのに対し、0.457(95% CI 0.335-0.580)と改善されたことにより明らかであった。しかし中央病理学者の内の一人には病変無しと報告されたが、他の病理学者にはグレードIIまたはIIIと記載された14個の生検があった。カッパスコア(0.457)に基づいた中央病理学者間の一致レベルは、中央病理検査室と現地病理検査室の全体での一致レベル(0.496)よりも低かった。
表24:中央病理学者によるAMRのグレード化の結果:個々の主要病理学者:生検再評価
Figure 0007256741000034
表25は、「三人」の病理学者(それぞれ現地の病理学者と、二名の中央検査室の主要病理学者)の再評価生検データを使用したクロス集計を提示する。この再評価において、241個の生検のうち、191個が少なくとも一名の中央病理学者により病変無しとみなされた一方で、元の評価では208個が病変無しであった。中央病理学者を比較すると、少なくとも一名の病理学者により生検がグレードI、IIまたはIIIの急性AMRの閾値に合致する場合、50個のうち14個(28%)の生検が診断と一致し、一方で元の評価では33個のうち6個(18%)が一致した。病変無しとグレードI、およびグレードIIとグレードIIIの二値転帰であることを考慮すると、50個中28個(56%)の生検評価が一致し、一方で元の評価では33個中14個(42%)が一致した。
表25:現地および中央での急性AMRのグレード化の結果(正当な理由がある生検、およびプロトコールによる生検):病理学者による比較とグレード:生検再評価
Figure 0007256741000035
結論
主要エンドポイントは、中央病理検査室による正当な理由のある生検の評価に基づいた。元の評価に記載された不一致のレベルは、本評価に基づく試験結果が正確であったかのかという大きな課題をもたらした。高度に感作された患者の移植における専門家との協議により、中央病理学者による生検サブセットの再評価が行われた。その再評価で、当該病理学者は、現地病理学者に利用可能であった特定の臨床情報を利用した。重要なことは、再評価の間、治療レジメンに対する中央病理学者の盲検化は維持されたことである。さらに中央病理学者は、元の評価では従わなかった、Banff基準に関するプロトコールの厳密な基準に従った。再評価結果は、中央病理学者間の一致レベルの上昇をもたらし、ならびに現地と中央の病理検査室間の一致レベルの上昇ももたらした。しかしながら、個々の中央病理学者間の一致は、中央病理検査室と現地病理検査室の全体での一致レベルよりも低かった。この結果は、治療決定が現地病理検査に基づき為されることを鑑みると特に、現地病理検査よりも中央病理検査を使用することの付加的価値についての疑問を投げかけるものである。
再評価によって付加された結果は、再評価によって生じた追加の急性AMR診断に起因する、エクリズマブ群とSOC群の間で記載される治療失敗率の差が大きくなったことであった。主要エンドポイントにおけるこの差異は統計的有意差には届かなかったが、急性AMRの専門家からの情報提供に基づき現地病理検査結果と再評価中央病理検査結果の両方にグレードI生検を含めることで、SOCよりもエクリズマブ群のほうが支持されるという統計的に有意な利益が示された。
再評価で診断された急性AMRの追加症例が、中央病理学者が臨床情報をレビューした能力によるものか、またはプロトコールに要求されるBanff基準に厳密に従ったことによるものなのか、その基準の詳細のすべてが元々の評価で収集されたわけではなかった事を考えると、決定することは不可能である。三つすべての生検評価を検討してみると、元々の中央検査室生検評価で特定された患者は、再評価生検ならびに現地評価生検でも特定され続けていた。重要なことは、データ全体で、エクリズマブが、特にグレードI、IIおよびIIIのすべてが考慮されたときに、急性AMRの予防に意義のある効果を有していたことが示されたことである。グレードIの症例は本試験の主要エンドポイントに含まれなかったが、本試験が設計された時点では、急性AMRの組織学的特徴の理解を裏付ける臨床経験がほとんどなかった。初期の急性病変に関する現在の発明者らの理解を考慮すると、正当な理由のある生検に基づき診断された場合は、患者の転帰と関連し、もし未処置のままであれば、より高グレードの急性AMRへと進行することが予測される病変の早期の特定をもたらすと考えられる。
表26:配列表
Figure 0007256741000036
Figure 0007256741000037
Figure 0007256741000038
Figure 0007256741000039
Figure 0007256741000040

Claims (49)

  1. ヒト腎移植レシピエントにおいて抗体関連型拒絶反応(AMR)を低減させるための、抗C5抗体またはその抗原結合断片を含む組成物であって、腎同種移植の再かん流後に段階的な投薬スケジュールで前記レシピエントに投与されることを特徴とし、前記レシピエントはヒト生体ドナーに対し感作されており、そして前記レシピエントは移植前に、11~56日の期間にわたって脱感作療法を受け、前記レシピエントは、前記レシピエントがAMRを有さない限り、移植後に少なくとも9週間にわたって脱感作療法を受けず、
    ここで、前記段階的な投薬スケジュールが、腎同種移植再かん流の30分~3時間前に投与される1200mgの投与量の抗体、腎同種移植再かん流の18~30時間後と、移植後7日目、14日目、21日目および28日目に投与される900mgの投与量、ならびに、移植後5週目、7週目および9週目に投与される1200mgの投与量を含むことを特徴とし、そして
    前記抗C5抗体がエクリズマブ、BNJ441またはBNJ421である、組成物。
  2. 前記レシピエントが移植前に約二週間の脱感作療法を受ける、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記レシピエントが移植前に約三週間の脱感作療法を受ける、請求項1に記載の組成物。
  4. 前記レシピエントが移植前に約四週間の脱感作療法を受ける、請求項1に記載の組成物。
  5. ヒト腎移植レシピエントにおいて抗体関連型拒絶反応(AMR)を低減させるための、抗C5抗体またはその抗原結合断片を含む組成物であって、腎同種移植の再かん流後に段階的な投薬スケジュールで前記レシピエントに投与されることを特徴とし、前記レシピエントはヒト生体ドナーに対し感作されており、そして前記レシピエントは移植前に、11~56日の期間にわたって脱感作療法を受け、前記レシピエントは、前記レシピエントがAMRを有さない限り、移植後に少なくとも9週間にわたって脱感作療法を受けず、前記段階的投薬スケジュールが、腎同種移植再かん流の約1時間前に投与される約1200mgの投与量の抗体、移植後約1日目、約7日目、約14日目、約21日目、および約28日目で投与される約900mgの投与量、ならびに移植後約5週、約7週、および約9週で投与される約1200mgの投与量を含むことを特徴とし、そして
    前記抗C5抗体がエクリズマブ、BNJ441またはBNJ421である、組成物。
  6. 前記レシピエントの医療歴が、過去のHLAへの暴露を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
  7. 前記過去のHLAへの暴露が、過去の固形臓器もしくは組織の同種移植、妊娠、輸血、または過去の特定ドナーHLAへの暴露の内の一つまたは複数を含む、請求項6に記載の組成物。
  8. 前記脱感作療法が、免疫グロブリン大量静注療法(IVIg:intravenous
    immuno-globulin treatment)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
  9. 前記脱感作療法が、血漿交換治療を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
  10. 前記レシピエントが、標準的治療(SOC)と比較し低減されたAMRを経験する、および/または前記レシピエントが、SOCと比較して低減された移植片喪失を経験する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
  11. 前記レシピエントが、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある低レベルの循環抗ドナー特異的抗体を経験する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
  12. 前記レシピエントが、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、臨床的に意義のある低レベルの循環抗ドナー特異的抗体を経験する、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
  13. 前記レシピエントが、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある低レベルの急性組織損傷の形態的エビデンスを経験する、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
  14. 前記レシピエントが、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、臨床的に意義のある低レベルの急性組織損傷の形態的エビデンスを経験する、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
  15. 前記レシピエントが、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ9週目で、臨床的に意義のある移植臓器の生着率の上昇を経験する、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
  16. 前記レシピエントが、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ12か月目で、臨床的に意義のある移植臓器の生着率の上昇を経験する、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
  17. 前記レシピエントが、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ9週目で、生存率の上昇を経験する、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
  18. 前記レシピエントが、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ12カ月目で、生存率の上昇を経験する、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
  19. 前記レシピエントが、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ36カ月目で、生存率の上昇を経験する、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
  20. 前記レシピエントが、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある抗体関連型拒絶反応の組織学的エビデンスの低さを経験する、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
  21. 前記レシピエントが、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、臨床的に意義のある抗体関連型拒絶反応の組織学的エビデンスの低さを経験する、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
  22. 前記レシピエントが、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある、生検上の慢性AMRを含む病理学的変化の低さを経験する、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
  23. 前記レシピエントが、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、臨床的に意義のある、生検上の慢性AMRを含む病理学的変化の低さを経験する、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
  24. 前記レシピエントは、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、血漿交換治療の必要性が低下する、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
  25. 前記レシピエントは、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、血漿交換治療の必要性が低下する、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
  26. 前記レシピエントが、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後に、臨床的に意義のある臓器移植後臓器機能障害の低下を経験する、請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物。
  27. 前記レシピエントが、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、臨床的に意義のある透析の必要性の低下を経験する、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物。
  28. 前記レシピエントが、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、臨床的に意義のある透析の必要性の低下を経験する、請求項1~27のいずれか一項に記載の組成物。
  29. 前記レシピエントが、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の9週の間に、安定的な腎機能を経験する、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物。
  30. 前記レシピエントが、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、移植後のおよそ最初の12カ月の間に、安定的な腎機能を経験する、請求項1~29のいずれか一項に記載の組成物。
  31. ヒト腎移植レシピエントにおいて抗体関連型拒絶反応(AMR)を低減させるための、抗C5抗体またはその抗原結合断片を含む組成物であって、腎同種移植の再かん流後に段階的な投薬スケジュールで前記レシピエントに投与されることを特徴とし、前記レシピエントは、ヒト生体ドナーに感作されており、および前記レシピエントは、移植前に、11~56日の期間にわたって脱感作療法を受けており、前記レシピエントは、前記レシピエントがAMRを有さない限り、移植後に少なくとも9週間にわたって脱感作療法を受けず、
    前記レシピエントは、移植後のおよそ最初の9週の間、移植後のおよそ最初の12カ月の間、および/または移植後のおよそ最初の36か月の間、前記組成物を用いた治療を行わない場合と比較して、臨床的に意義のある低レベルの循環抗ドナー特異的抗体、臨床的に意義のある低レベルの急性組織損傷の形態的エビデンス、臨床的に意義のある抗体関連型拒絶反応の組織学的エビデンスの低さ、高生存率の上昇または生存率の上昇、臨床的に意義のある抗体関連型拒絶反応の組織学的エビデンスの低さ、臨床的に意義のある生検上の慢性AMRを含む病理学的変化の低さ、血漿交換治療の必要性の低下、臨床的に意義のある透析の必要性の低下、のうちの一つまたは複数を経験し、
    ここで、前記段階的な投薬スケジュールが、腎同種移植再かん流の30分~3時間前に投与される1200mgの投与量の抗体、腎同種移植再かん流の18~30時間後と、移植後7日目、14日目、21日目および28日目に投与される900mgの投与量、ならびに、移植後5週目、7週目および9週目に投与される1200mgの投与量を含むことを特徴とし、そして
    前記抗C5抗体がエクリズマブ、BNJ441またはBNJ421である、組成物。
  32. 静脈内注入を介して投与されることを特徴とする、請求項1~31のいずれか一項に記載の組成物。
  33. 皮下に投与されることを特徴とする、請求項1~32のいずれか一項に記載の組成物。
  34. 前記レシピエントの抗C5抗体またはその抗原結合断片の血漿レベルは、移植後のおよそ最初の週の間、約50~約100μg/mLに維持される、請求項1~33のいずれか一項に記載の組成物。
  35. 前記レシピエントの抗C5抗体またはその抗原結合断片の血漿レベルは、移植後のおよそ最初の9週の間、約50~約100μg/mLに維持される、請求項1~34のいずれか一項に記載の組成物。
  36. 前記レシピエントに、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、およびプレドニゾンからなる群から選択される一つまたは複数の免疫抑制剤がさらに投与されることを特徴とする、請求項1~35のいずれか一項に記載の組成物。
  37. 前記抗C5抗体がエクリズマブである、請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物。
  38. 前記抗C5抗体がBNJ441である、請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物。
  39. 前記抗C5抗体がBNJ421である、請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物。
  40. 前記抗C5抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ配列番号1、2、および3に記載されるCDR1、CDR2、およびCDR3重鎖配列を含み、ならびにそれぞれ配列番号4、5、および6に記載されるCDR1、CDR2、およびCDR3軽鎖配列を含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物。
  41. 前記抗C5抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ配列番号7に記載される配列を有するVドメインと、配列番号8に記載される配列を有するVドメインを含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物。
  42. 前記抗C5抗体またはその抗原結合断片が、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖定常領域を含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物。
  43. 前記抗C5抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ配列番号10および配列番号11に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖全体を含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物。
  44. 前記抗C5抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ配列番号19、18および3に記載されるCDR1、CDR2、およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に記載されるCDR1、CDR2、およびCDR3軽鎖配列を含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物。
  45. 前記抗C5抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ配列番号12に記載される配列を有するVドメインと、配列番号8に記載される配列を有するVドメインを含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物。
  46. 前記抗C5抗体またはその抗原結合断片が、配列番号13に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖定常領域を含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物。
  47. 前記抗C5抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ配列番号14および配列番号11に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖全体を含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物。
  48. 前記レシピエントが移植前に、11~31日の期間にわたって脱感作療法を受ける、請求項1~47のいずれか一項に記載の組成物。
  49. 前記移植前の脱感作療法が毎週投与される、請求項1~48のいずれか一項に記載の組成物。
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