以下、本発明の実施形態に係る研削装置について、添付図面を参照して説明する。図1に、実施形態に係る研削装置100についての模式的な正面図を示す。
研削装置100は、研削ホルダ200と、砥石300と、研削ホルダ200に向けて研削液を供給する供給部400と、研削ホルダ200を回転駆動させるスピンドル500とを備えている。供給部400は、研削液が貯留されたタンク部410と、タンク部410と研削ホルダ200との間に接続され、研削液を研削ホルダ200に移送する供給管420と、タンク部410に貯留された研削液を供給管420に供給するポンプ430と、供給管420における所定の箇所を所定の位置に位置決めするための位置決めブロック440とを備えている。
研削ホルダ200は、回転可能に構成された軸部材210と、軸部材210を周方向全体に亘って囲む非回転部材220と、砥石300を保持することが可能な砥石保持部材230とを備えている。研削ホルダ200についての斜視図を図2に示す。図2には、研削ホルダ200のみについて示され、図2に示される砥石保持部材230は砥石300を保持していない。ここで、研削ホルダ200は、砥石300には含まれず、砥石300を保持するためのホルダのことをいうものとする。ここでは、研削ホルダ200は、軸部材210と、非回転部材220と、砥石保持部材230とから構成され、径方向の内側から砥石300を保持可能に構成されている。また、研削ホルダ200は、砥石300を保持しながら、砥石300に向けて研削液を供給する研削液の流路を内部に備えている。
研削ホルダ200の軸部材210における軸方向の一端側には、テーパ状に形成されたテーパ部211が設けられている。テーパ部211は、スピンドル500に保持されることが可能に構成されている。テーパ部211がスピンドル500に保持されることにより、軸部材210がスピンドル500に対し回転可能に取り付けられる。本実施形態では、研削ホルダ200において、テーパ部211を保持するスピンドル500に近い側のことを一端側といい、砥石300を保持する砥石保持部材230に近い側のことを他端側というものとする。
軸部材210における軸方向の他端側には、砥石300を保持することが可能な砥石保持部材230が設けられている。砥石保持部材230は、軸方向の中央部に凹部231が形成されている。凹部231は、砥石保持部材230における半径方向外側に、周方向の全体に亘って形成されている。凹部231の内部に、砥石300における径方向の内側に突出した突出部を嵌め込むことにより、砥石保持部材230が砥石300を保持することが可能に構成されている。
軸部材210におけるテーパ部211の他端側の位置には、非回転部材220が取り付けられている。非回転部材220は、軸部材210の径方向の外側に、軸部材210の周方向の全体に亘って取り付けられている。軸部材210と非回転部材220との間には、後述するベアリングが取り付けられている。これにより、軸部材210が非回転部材220に対し回転可能に構成されている。
非回転部材220は、内部に研削液の流路が形成された流路部材221を備えている。流路部材221は、非回転部材220における径方向の外側に取り付けられている。流路部材221は、周方向に部分的に取り付けられている。流路部材221には、研削液の流路に対し研削液を流入させる流路部材入口222が形成されている。
図3に、研削ホルダ200の砥石保持部材230によって砥石300が保持された、研削工具600についての斜視図を示す。ここで、研削ホルダ200が砥石300を保持したものを、研削工具600というものとする。本実施形態では、砥石300は、円盤状に形成される。砥石300には、径方向の中央に軸方向に沿って貫通する穴が形成されている。砥石300は、砥石保持部材230よりも大きな径を有している。砥石300における径方向の内側の部分が砥石保持部材230によって保持されることにより、砥石保持部材230の径方向の外側の位置で砥石300が保持される。
砥石300は、軸部材210に対し同軸となるように、砥石保持部材230に取り付けられている。軸部材210が回転すると、それに伴って砥石300が回転する。砥石300における径方向の外側の位置には、軸方向に平行な外周面310が形成されている。外周面310は、砥石300の周方向の全体に亘って形成されている。
図4に、スピンドル500に取り付けられた状態の研削ホルダ200について、一部を破断して内部の構成を示した斜視図を示す。スピンドル500は、径方向の内側の内径部510と、径方向の外側の外径部520とを備えている。内径部510は、外径部520に対し回転軸Oを中心に回転可能に構成されている。スピンドル500における内径部510を回転させることにより、外径部520が保持された状態で内径部510を回転させることができる。本実施形態では、内径部510をモータ(図示せず)によって回転駆動させることにより、内径部510に取り付けられた軸部材210を、回転軸Oを中心に回転させることができる。
スピンドル500の内径部510には、凹部511が形成されている。凹部511の内部に、軸部材210におけるテーパ部211が嵌め込まれることにより、軸部材210がスピンドル500に取り付けられている。そのため、外径部520に対し内径部510を回転させることにより、研削ホルダ200がスピンドル500によって保持された状態で、軸部材210を、回転軸Oを中心に回転させることができる。
径方向における軸部材210と非回転部材220との間には、ベアリング250が配置されている。ベアリング250によって軸部材210と非回転部材220との間が摺動可能となるように、軸部材210及び非回転部材220が配置されている。従って、非回転部材220が回転しないように支持された状態で、軸部材210が回転することができる。
非回転部材220の流路部材221には、流路部材入口222から回転軸Oに向かって延びる研削液の非回転部材流路223が形成されている。軸部材210は、内部に研削液が流通する軸部材流路212を有している。軸部材流路212は、軸方向に延びる軸方向流路213を有している。軸方向流路213は、回転軸Oの延びる方向に延びて形成されている。
また、軸部材流路212は、軸部材210の径方向に延び、軸方向流路213の一端側に連通する第1径方向流路214を備えている。後述するように、軸部材210には複数の第1径方向流路214が形成され、本実施形態では例えば軸部材210に4つの第1径方向流路214が形成されている。第1径方向流路214は、径方向の成分を有して斜めに延びている。つまり、「径方向に延びる」とは、径方向の成分を有して延びていればよい。なお、第1径方向流路214は、必ずしも径方向と同じ方向に延びていなくてもよい。このように、第1径方向流路214は、径方向の成分を有して延びていればよく、回転軸Oに垂直な方向に延びていなくてもよい。本実施形態では、第1径方向流路214は、径方向の成分を有し回転軸Oに向かう方向に対し傾いた方向に延びている。具体的には、第1径方向流路214は、軸部材210の径方向の外側から内側に向かうにつれて回転軸Oの軸方向の他端側に向かうように、軸方向に対し傾いて形成されている。
また、軸部材流路212は、径方向に延び軸方向流路213の他端側に連通する第2径方向流路215を備えている。本実施形態では、第2径方向流路215についても同様に、径方向の成分を有して斜めに延びている。つまり、第2径方向流路215が、軸部材210の径方向の内側から外側に向かうにつれて回転軸Oの軸方向の他端側に向かうように、軸方向に対し傾いて形成されている。このように、第2径方向流路215についても、径方向の成分を有して延びていればよく、回転軸Oに垂直な方向に延びていなくてもよい。
軸方向流路213の径と、第1径方向流路214の径と、第2径方向流路215の径とを比較したときに、軸方向流路213の径は、第1径方向流路214及び第2径方向流路215の径よりも大きくなるように形成されている。つまり、3つの流路のうち、軸方向流路213の径が最も大きくなるように構成されている。
図5に示されるように、研削液が砥石300に向けて供給される際には、軸方向流路213における他端側の端部は、プラグ270によって塞がれる。図5は、軸部材210における他端側の端部についての断面図である。軸方向流路213の他端側の端部がプラグ270によって塞がれるので、軸方向流路213を通って供給される研削液が第2径方向流路215を通って砥石300に向けて供給される。
砥石保持部材230の内部には、砥石300を保持したときに、砥石300よりも内側に、軸部材210、砥石保持部材230及び砥石300によって画成された第2周状領域232が形成されている。第2周状領域232の径方向の内側は、軸部材210の外周面によって画成されている。第2周状領域232の径方向の外側は、砥石300の内周面によって画成されている。第2周状領域232の軸方向の一端側及び他端側は、砥石保持部材230によって画成されている。第2周状領域232は、軸部材210の外側の位置に形成されている。第2周状領域232は、軸部材210の周方向の全体に亘って形成されている。
本実施形態では、砥石保持部材230は、一端側に形成された一端側砥石保持部材233と、他端側に形成された他端側砥石保持部材234とを備えている。一端側砥石保持部材233と、他端側砥石保持部材234とは、互いに近接、離間する方向に移動可能である。砥石保持部材230が砥石300を保持する際には、一端側砥石保持部材233と他端側砥石保持部材234との間に砥石300の突出部311を挟んだ状態で、一端側砥石保持部材233と他端側砥石保持部材234とを近接させる。本実施形態では、ボルト(図示せず)によってボルト締めを行うことによって一端側砥石保持部材233と他端側砥石保持部材234とを近接させている。これにより、砥石保持部材230が砥石300を保持することができる。第2周状領域232は、一端側砥石保持部材233と他端側砥石保持部材234との間の隙間として形成されると共に、第2径方向流路215に連通する位置に形成されている。
図6に、第2周状領域232の周辺部分についての断面図を示す。図6は、図4におけるVI-VI線に沿う断面図である。図6に示されるように、第2周状領域232は、径方向についての、軸部材210と砥石300との間に形成されている。従って、第2周状領域232は、軸部材210の径方向の外側の位置に、周方向の全体に亘って形成されている。また、第2周状領域232は、砥石300の内側の位置に、周方向の全体に亘って形成されている。
軸部材210と非回転部材220との間には、第1周状領域240が形成されている。第1周状領域240は、軸部材210を周方向全体に亘って覆うように設けられている。第1周状領域240は、非回転部材流路223を第1径方向流路214に連通させるように構成されている。
図7(a)、(b)に、第1周状領域240の周辺部分についての断面図を示す。図7(a)、(b)は、図4におけるVII-VII線に沿う断面図である。図7(a)は、軸部材210における4つの第1径方向流路214のうち、1つの第1径方向流路214が、非回転部材流路223の延長線上の位置に配置された状態についての、第1周状領域240の周辺部分についての断面図である。図7(b)は、軸部材210における4つの第1径方向流路214のいずれもが、非回転部材流路223の延長線上の位置にない状態についての、第1周状領域240の周辺部分についての断面図である。
図7(a)、(b)に示されるように、第1周状領域240の径方向の外側の位置には、シール部材260が設けられている。シール部材260は、径方向における軸部材210と非回転部材220との間の位置に、非回転部材流路223に面した位置を除いて、周方向の全域に亘って設けられている。
図8(a)に軸部材210にシール部材260が取り付けられた状態についての軸部材210及びシール部材260についての斜視図を示し、図8(b)にシール部材260についての斜視図を示し、図8(c)に図8(a)におけるVIIIC-VIIIC線に沿う断面図を示し、図8(d)に図8(a)におけるVIIID-VIIID線に沿う断面図を示す。図8(a)に示されるように、本実施形態では、シール部材260は、軸部材210の径方向の外側を囲み、1つの部材によって構成されている。シール部材260は、弾性体によって形成されており、本実施形態ではゴムによって形成されている。従って、シール部材260は、配置されるスペースに合わせ、容易に変形することが可能に構成されている。また、図8(b)に示されるように、シール部材260は、外側は円筒状の形状を有すると共に、中央に軸部材210が配置されるための穴261が形成されている。従って、シール部材260は、内部に空洞262を有した円環状に形成されている。
図8(b)~(d)に示されるように、シール部材260においては、空洞262における内側の一部が開口されている。従って、空洞262は、内側で外部に連通した形状となっている。また、図8(b)、(c)に示されるように、シール部材260における非回転部材流路223の延長線上の位置には、研削液をシール部材260の内部に流通させるためのシール部材入口263が形成されている。
シール部材260は、非回転部材220の内側の面に接着されて取り付けられている。従って、軸部材210の回転を許容しながら、シール部材260自体は非回転部材220に対し移動しないように、軸部材210と非回転部材220との間に取り付けられている。
シール部材260が軸部材210の外側に配置された状態で非回転部材220がシール部材260を覆うように取り付けられることで、シール部材260が軸部材210と非回転部材220との間に挟まれて配置される。図4に示されるように、シール部材260が径方向に挟まれて配置されると、軸部材210の周方向の全体に亘って、軸部材210と非回転部材220との間の隙間が塞がれる。具体的には、非回転部材流路223と第1径方向流路214とが連通する連通位置を挟んで、軸部材210と非回転部材220との間の隙間における、連通位置の一端側と他端側との両方が、シール部材260によって塞がれる。また、シール部材260は周方向の全体に亘って配置されているので、シール部材260は、軸部材210と非回転部材220との間の隙間を、周方向の全体に亘って塞いでいる。シール部材260が、軸部材210と非回転部材220との間の隙間を塞ぐので、シール部材260、軸部材210及び非回転部材220によって囲まれた領域としての第1周状領域240がそこに形成される。
このように構成された研削装置100において、砥石300に向けて研削液が供給されたときの研削液の流れについて説明する。
砥石300に向けて研削液が供給される際には、ポンプ430が駆動され、タンク部410に貯留された研削液が供給管420を通って研削ホルダ200に移送される。供給管420を通って研削ホルダ200に供給された研削液は、図2の流路部材入口222を通って、図4の流路部材221における非回転部材流路223に流入する。
非回転部材流路223に供給された研削液は、一旦第1周状領域240に流入する。第1周状領域240に貯留された研削液は、軸部材210の第1径方向流路214に流入し、第1径方向流路214の内部を通って軸部材210の径方向の内側へ供給される。第1径方向流路214の内部を通る研削液は、軸方向流路213に流入し、軸方向流路213の内部を一端から他端に向かう方向へ供給される。
研削液が軸方向流路213の内部を通って軸方向流路213における他端側の端部に到達すると、研削液はプラグ270の位置で流れの方向を変えて第2径方向流路215に流入する。第2径方向流路215を流れる研削液は、第2周状領域232に流入し、第2周状領域232の内部に一旦貯留される。
第2周状領域232に貯留された研削液は、径方向の外側に向かって流れ、図6に示されるように砥石300の内部に流入する。つまり、第2周状領域232は、第2径方向流路215と砥石300の内周面312との間を接続している。砥石300の内部に流入した研削液は、砥粒同士の間を抜けて、砥石300の内部でさらに径方向の外側に向かって流れる。砥石においては、通常、砥粒同士の間には、研削液の流通可能な隙間が多く存在する。そのため、砥石300の径方向の内側から外側に向けて研削液を供給することにより、砥石300を径方向に横断して研削領域に研削液を供給することができる。研削液が砥石300の内部を流れ、砥石300の外周面310に到達すると、そこで研削液が砥石300における研削領域に供給される。研削液が研削領域に供給されると、研削液によって研削領域が冷却される。また、研削液によって研削屑が研削領域の周辺から押し流されて、研削屑が研削領域の周辺から排出される。
本実施形態では、研削液が供給管420を通って非回転部材流路223に供給されると、軸部材210の第1径方向流路に流入する前に、一旦第1周状領域240に貯留される。図7(a)、(b)を参照して、第1周状領域240の内部での研削液の流れについて説明する。図7(a)に示されるように、非回転部材流路223の延長線上に軸部材210における第1径方向流路214の入口がある場合には、非回転部材流路223を流れる研削液の大部分は、そのまま第1径方向流路214の内部に流入する。第1径方向流路214の内部に流入しなかった研削液は、第1周状領域240に流入して軸部材210の周方向に沿って流れる。そのため、第1周状領域240に貯留されていた研削液が、第1周状領域240に流入した研削液によって押され、非回転部材流路223の延長線上にある第1径方向流路214以外の第1径方向流路214にも研削液が流入する。
また、図7(b)に示されるように、非回転部材流路223の延長線上に第1径方向流路214の入口がない場合には、第1周状領域240に流入した研削液は2方向に分岐し、それぞれ軸部材210の周方向に沿って流れる。そのため、第1周状領域240に貯留されていた研削液が、流入した研削液によって押され、4つの第1径方向流路214のそれぞれの内部に研削液が流入する。
いずれにせよ、研削液が一旦第1周状領域240に流入することにより、第1周状領域240に貯留されていた研削液が第1周状領域240に流入してきた研削液によって押し出され、第1径方向流路214の内部に流入する。このように、第1周状領域240が形成されていることにより、第1周状領域240に流入する研削液の流量に応じた量の研削液が第1径方向流路214の内部に流入する。従って、第1径方向流路214の内部に一定の流量で研削液を供給し続けることができ、砥石300に向けて途切れなく研削液を供給し続けることができる。砥石300に向けて研削液を途切れなく供給し続けることができるので、研削によって得られる製品の品質を向上させることができる。
また、本実施形態では、第1周状領域240は、周方向の全体に亘って形成されているので、十分な量の研削液を第1周状領域240の内部に貯留させることができる。従って、砥石300に向けて供給する研削液を切らすことなく、研削液を連続して砥石300に向けて供給し続けることができる。
また、本実施形態では、研削液は、一旦第1周状領域240に貯留されてから第1径方向流路214に供給されるので、研削液を回転する軸部材210の側方から供給する構成であっても第1径方向流路214に途切れなく研削液を供給し続けることができる。そのため、スピンドル500に対し流路を形成する等の大掛かりな構成の変更を行うことなく、砥石300に対し途切れなく研削液を供給し続けることのできる研削装置100を提供することができる。従って、簡易な構成の変更によって砥石300に対し途切れなく研削液を供給し続けることのできる研削装置100を提供することができる。研削液の流路の大掛かりな構成の変更が必要ないので、製造コストを少なく抑えることができる。
また、本実施形態の研削装置100によれば、本発明の適用されていない既存の研削装置に対し、簡易な構成の変更を行うことによって、本発明の適用された研削装置100にすることができる。例えば、砥石の外側から供給管が砥石の研削領域に向けて研削液を吹き付ける形式の研削装置が既存の装置として有る場合に、既存の装置に対し、供給管を流路部材入口222に取り付ける。こうすることにより、砥石に途切れなく研削液を供給し続けることのできる研削装置とすることができる。スピンドルに対し流路を形成する等の構成の変更を行うことなく、簡易な構成の変更で砥石に対し途切れなく研削液を供給し続けることができるので、砥石に対し途切れなく研削液を供給し続けることのできる研削装置に容易に変更させることができる。そのため、既存の装置の大部分をそのまま用いながら砥石に対し途切れなく研削液を供給し続けることのできる研削装置とすることができ、汎用性の高い研削装置とすることができる。
また、軸部材210の軸部材流路212を通して径方向の内側から砥石300の内部に研削液が供給され、砥石300の内部を通して研削領域に研削液が供給されるので、研削液を研削領域に効率的に供給することができる。そのため、無駄に排出される研削液の量を少なく抑えることができ、研削液の消費量を少なく抑えることができる。また、研削領域に確実に研削液を供給することができるので、研削によって得られる製品の品質を向上させることができる。
また、本実施形態では、軸部材210と非回転部材220との間にシール部材260を配置することにより、第1周状領域240が形成されている。従って、簡易な構成によって第1周状領域240を形成することができる。
なお、シール部材260は、軸部材210の周方向の全体に亘って、軸部材210と非回転部材220との間の隙間を塞ぐことができるのであればよい。そのため、シール部材は、図8(a)~(d)に示されるような1つの部材によって形成されていなくてもよい。図9(a)~(c)に示されるように、シール部材は、軸部材210の回転軸Oの軸方向に分割された構成であってもよい。
図9(a)に、軸部材210の回転軸Oの軸方向に分割された構成を有するシール部材280が軸部材210に取り付けられた状態のシール部材280及び軸部材210の斜視図を示し、図9(b)に、軸部材210に取り付けられた状態のシール部材280及び軸部材210の断面図を示し、図9(c)に、シール部材280が軸部材210と非回転部材220との間に配置された状態の、シール部材280及び軸部材210の断面図を示す。シール部材280は、一端側に配置された一端側シール部材281と、他端側に配置された他端側シール部材282とに分割されている。
非回転部材流路223と第1径方向流路214とが連通する連通位置を挟むように、一端側シール部材281と、他端側シール部材282とが取り付けられている。これにより、軸部材210と非回転部材220との間の隙間における非回転部材流路223と第1径方向流路214との連通位置を挟んで、連通位置の一端側と他端側が塞がれている。これにより、シール部材280、軸部材210及び非回転部材220によって周方向の全体に亘って囲まれた第1周状領域240が画成される。このように、シール部材280、軸部材210及び非回転部材220によって周方向の全体に亘って囲まれた第1周状領域240を形成することができるのであれば、シール部材は1つの部材によって形成されていなくてもよい。シール部材は、分割された2つの部材によって形成されていてもよい。少なくとも軸部材210と非回転部材220との間の隙間の一端側及び他端側を塞ぐことができるのであれば、シール部材は2つに分割されていてもよい。また、シール部材は、軸部材210と非回転部材220との間の隙間の一端側及び他端側を塞ぐことができるのであれば、3つ以上の複数に分割されていてもよい。
また、本実施形態では、砥石保持部材230の内部に第2周状領域232が形成されている。従って、軸部材210の第2径方向流路215からの研削液は、一旦第2周状領域232に流入し、第2周状領域232の内部に貯留されてから砥石300の内部に流入する。その際、第2周状領域232に貯留されていた研削液が第2周状領域232に流入してきた研削液によって押し出され、砥石300の内部に流入する。このとき、一旦第2周状領域232に貯留された研削液が砥石300に向かって供給されるので、第2周状領域232から砥石300に向けて周方向に均一に研削液を供給することができる。そのため、第2径方向流路215の位置に関係なく、周方向において、均一に、偏りなく、砥石300に向けて研削液を供給することができる。これにより、砥石300の研削領域において、部分的に研削液の供給が不足することを抑えることができる。また、砥石300における周方向の全体に亘って、研削領域に研削液を途切れなく供給し続けることができる。
研削が行われる際には、砥石300の外周面310の全周が研削に用いられる。従って、研削の際には、砥石300の外周面310の全体に亘って研削液が供給されることが望ましい。本実施形態では、研削液を一旦第2周状領域232に貯留させることにより、砥石300の外周面310の周方向の全体に亘って研削液を供給することができる。従って、砥石300における周方向の全体に亘って、砥石300の外周面310の全体に研削液を供給し続けることができる。これにより、研削によって得られる製品の品質を向上させることができる。
また、研削装置100によって研削が行われる際には、軸部材210は回転軸Oを中心に回転している。従って、第2径方向流路215を流れる研削液は、遠心力によって径方向外側に向けて大きな流速を有した状態で第2周状領域232に流入する。研削液が径方向外側に向かって大きな流速を有して第2周状領域232に流入するので、第2周状領域232に貯留された研削液は第2周状領域232から砥石300に向けて大きな流速を有した状態で砥石300に流入する。そのため、研削液が砥石300の外周面に効率的に供給され、研削液を研削領域に効率的に供給することができる。また、研削液が砥石300の内部に流入すると、研削液は第2周状領域232に貯留されているときよりも径方向の外側に位置しているので、遠心力の作用がさらに大きくなる。従って、研削液にさらに大きな遠心力が作用し、砥石300内部の研削液は、さらに径方向外側に向けて大きな流速を有した状態で径方向外側に向けて流れる。従って、研削液を研削領域にさらに効率的に供給することができる。
また、本実施形態では、第1径方向流路214が、軸部材210の径方向の外側から内側に向かうにつれて回転軸Oの軸方向の他端側に向かうように、軸方向に対し傾いて形成されている。第1径方向流路214が、軸部材210の回転軸Oにおける軸方向に対し緩やかに傾いて形成されているので、研削液が軸方向流路213及び第1径方向流路214を流れる際の抵抗を少なく抑えることができる。また、第1径方向流路214が、回転軸Oの軸方向に対し傾いて形成されているので、研削液が第1径方向流路214から軸方向流路213に合流する際の抵抗を少なく抑えることができる。
研削液が軸方向流路213及び第1径方向流路214を流れる際の抵抗を少なく抑えることができるので、軸方向流路213及び第1径方向流路214を通って流れる研削液の流量を確保することができる。十分な量の研削液を砥石300に向けて供給し続けることができるので、砥石300に向けて途切れなく研削液を供給し続けることができる。
また、第1径方向流路214が、軸部材210の径方向の外側から内側に向かうにつれて回転軸Oの軸方向の他端側に向かうように、軸方向に対し傾いて形成されているので、第1径方向流路214を流れる研削液に作用する遠心力を小さく抑えることができる。研削液が第1径方向流路214の内部を流れる際の流れの方向は、軸部材210の径方向の外側から内側に向かうにつれて回転軸Oの軸方向の他端側に向かうように、軸方向に対し傾いている。従って、研削液に遠心力が作用しても、遠心力の作用する方向が研削液の流れの方向に対し傾いているので、遠心力による流れへの抵抗の大きさが限定される。従って、研削液を砥石300に向けて効率的に供給することができる。
また、本実施形態では、第2径方向流路215が、軸部材210の径方向の内側から外側に向かうにつれて回転軸Oの軸方向の他端側に向かうように、軸方向に対し傾いて形成されている。第2径方向流路215が、軸部材210の回転軸Oにおける軸方向に対し緩やかに傾いて形成されているので、研削液が軸方向流路213及び第2径方向流路215を流れる際の抵抗を少なく抑えることができる。また、第2径方向流路215が回転軸Oに対し傾いて形成されているので、研削液が軸方向流路213から第2径方向流路215に合流する際の抵抗を少なく抑えることができる。
研削液が軸方向流路213及び第2径方向流路215を流れる際の抵抗を少なく抑えることができるので、軸方向流路213及び第2径方向流路215を通って流れる研削液の流量を確保することができる。十分な量の研削液を砥石300に向けて供給し続けることができるので、砥石300に向けて途切れなく研削液を供給し続けることができる。
また、本実施形態では、軸方向流路213の径は、第1径方向流路214及び第2径方向流路215の径よりも大きくなるように形成されている。軸方向流路213の径が、第1径方向流路214及び第2径方向流路215の径よりも大きいので、研削液が第1径方向流路214から軸方向流路213に流入する際の抵抗及び研削液が軸方向流路213から第2径方向流路215に流入する際の抵抗を少なく抑えることができる。
また、本実施形態では、研削液が軸部材210内部の軸部材流路212を流れる際の抵抗が少なく抑えられているので、供給部400のポンプ430を高性能なものにしなくても済む。本実施形態では、研削液が、非回転部材220の内部の非回転部材流路223及び軸部材210内部の軸部材流路212を流れるにも関わらず、これらの流路を流れる際の流れの抵抗が少なく抑えられるので、ポンプ430への負荷が少なく済む。従って、ポンプ430の性能を高いものにしなくても済む。ポンプ430を高性能なものに変更する必要がないので、簡易な構成の変更で砥石に対し途切れなく研削液を供給し続けることができる。そのため、既存のポンプをそのまま用いながら砥石に対し途切れなく研削液を供給し続けることができるので、さらに汎用性の高い研削装置とすることができる。
また、本実施形態では、砥石300は、砥石保持部材230よりも大きな径を有した円盤状に形成されている。従って、第2周状領域232が砥石300の内周面に接している。そのため、軸部材210の第2径方向流路215から第2周状領域232を介して砥石300に向けて研削液を供給することができ、簡易な構成で第2周状領域232を形成することができる。
なお、上記実施形態では、第2周状領域232が砥石300の内周面に接している構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。第2周状領域が砥石から離れた位置関係となるように、砥石保持部材及び砥石が構成されてもよい。研削液が砥石の内部に供給される前に、一旦第2周状領域の内部に貯留されることができるのであれば、第2周状領域は砥石から離れた位置に形成されていてもよい。その場合、第2周状領域から砥石に向けて研削液を供給するための流路が砥石保持部材に形成されていてもよい。
また、上記実施形態では、砥石が円盤状に形成されると共に、径方向の中央に軸方向に沿って貫通する穴が形成された形状を有している形態について説明した。しかしながら、本発明は上記実施形態に限定されず、砥石は、他の形状を有していてもよい。軸部材の回転軸Oから径方向に離れた位置に研削液が供給されるのであれば、砥石の形状は平面視したときに円形の形状を有した円盤状でなくてもよい。すなわち、砥石の形状は、研削工具を回転軸Oに沿って見たときに、円形の形状を有した円盤状でなくてもよい。例えば、砥石を平面視したとき(回転軸Oに沿って見たとき)に砥石が円弧状の形状を有した砥石であってもよい。その際、砥石を保持していない部分から研削液が漏れないように、軸部材における砥石を保持していない部分が塞がれていてもよい。このように、砥石の形状としての「円盤状」は、砥石を回転軸Oに沿って見たときに部分的な円形のものを含むものであってもよく、円弧状の形状を有するものを含むものであってもよい。
また、上記実施形態では、軸部材210の内部に、4つの第1径方向流路214と、4つの第2径方向流路215とが形成されている形態について説明した。しかしながら、本発明は上記実施形態に限定されず、軸部材210の内部に、4つ以外の数の第1径方向流路214と、4つ以外の第2径方向流路215とが形成される形態であってもよい。ただし、排出側の第2径方向流路215の合計の流路面積が流入側の第1径方向流路214の合計の流路面積よりも小さく形成された場合には、流路の抵抗が大きくなり、砥石300に向けて研削液を効率的に供給することが難しくなる場合がある。従って、第2径方向流路215の合計の流路面積は、第1径方向流路214の合計の流路面積以上の大きさであることが望ましい。また、第2径方向流路215の合計の流路面積が、第1径方向流路214の合計の流路面積と同じであることがより望ましい。こうすることにより、第1径方向流路214に供給された研削液を、第2径方向流路215を介して砥石300に向けて効率的に供給することができる。このように、第1径方向流路214に供給された研削液を、第2径方向流路215を介して砥石300に向けて効率的に供給することができるのであれば、第1径方向流路214及び第2径方向流路215の数はいくつであってもよい。また、第1径方向流路214に供給された研削液を、第2径方向流路215を介して砥石300に向けて効率的に供給することができるのであれば、第1径方向流路214及び第2径方向流路215についての流路面積及び回転軸Oに対する傾き角は適宜設定されればよい。