1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置(1)は、モータ(20)の目標回転速度(Rtg)を指示する速度指令信号(Sc)に基づいて、前記モータの回転速度を制御するための駆動制御信号(Sd)を生成する制御回路部(4)と、前記駆動制御信号に基づいて、前記モータを駆動するモータ駆動部(2)とを備え、前記制御回路部は、前記目標回転速度が閾値(Rth)より低い場合に、前記モータの回転速度が前記目標回転速度に一致するように前記駆動制御信号を生成する速度フィードバック制御を行い、前記目標回転速度が前記閾値より高い場合に、前記モータに流れる電流(Ir)が、前記モータの回転速度に対応して算出される目標電流値(Itg)に近づくように前記駆動制御信号を生成する最大風量制御を行うことを特徴とする。
〔2〕上記モータ駆動制御装置において、前記制御回路部は、前記モータの回転位置を示す位置検出信号(Sh)に基づいて、前記モータの実回転速度を算出するとともに、予め記憶された前記モータの回転速度と前記目標電流値との対応関係を示す対応関係情報(471)と算出した前記実回転速度に基づいて、前記目標電流を算出してもよい。
〔3〕上記モータ駆動制御装置において、前記モータは、ファン(100)におけるインペラ(21)を回転させ、前記対応関係は、前記ファンの静圧が所定値(Pb)より低い領域での前記モータの回転速度と前記目標電流値との関係を示していてもよい。
〔4〕上記モータ駆動制御装置において、前記制御回路部は、前記最大風量制御において、前記モータに流れる電流(Ir)が前記目標電流値(Itg)より高い場合に、前記モータの回転速度(Rr)が増加するように前記駆動制御信号を生成し、前記モータに流れる電流(Ir)が前記目標電流値(Itg)より低い場合に、前記モータの回転速度(Rr)が低下するように前記駆動制御信号を生成してもよい。
〔5〕上記モータ駆動制御装置において、前記制御回路部は、前記最大風量制御において、前記モータに流れる電流(Ir)が前記目標電流値(Itg)を基準とする所定範囲(M)より高い場合に、前記モータの回転速度を増加させ、前記モータに流れる電流(Ir)が前記所定範囲(M)内にある場合に、前記モータの回転速度を変化させず、前記モータに流れる電流が前記所定範囲(M)より低い場合に、前記モータの回転速度を低下させるように前記駆動制御信号を生成してもよい。
〔6〕上記モータ駆動制御装置において、前記制御回路部は、前記位置検出信号(Sh)に基づいて前記実回転速度(Rr)を算出する回転速度算出部(42)と、前記回転速度算出部によって算出された前記実回転速度(Rr)が前記速度指令信号(Sc)で指示された前記目標回転速度(Rtg)に一致するように第1制御信号(Sp1)を生成する速度制御部(43)と、前記回転速度算出部によって算出された前記実回転速度(Rr)に基づいて、前記目標電流値(Itg)を算出する目標電流値算出部(47)と、前記モータに流れる電流の電流値を取得する電流値取得部(46)と、前記目標回転速度(Rtg)が前記閾値(Rth)より高い場合に、前記モータに流れる電流(Ir)が前記目標電流値(Itg)に近づくように第2制御信号(Sp2)を生成する最大風量制御部(44)と、前記第1制御信号と前記第2制御信号とに基づいて、前記駆動制御信号(Sd)を生成する駆動制御信号生成部(45)と、を有していてもよい。
〔7〕本発明の代表的な実施の形態に係るファン(100)は、モータ(20)と、モータ(20)の回転力によって回転可能に構成されたインペラ(21)と、前記モータの駆動を制御するモータ駆動制御装置(1)とを備え、前記モータ駆動制御装置は、前記モータの目標回転速度(Rtg)を指示する速度指令信号(Sc)に基づいて、前記モータの回転速度を制御するための駆動制御信号(Sd)を生成する制御回路部(4)と、前記駆動制御信号に基づいて、前記モータを駆動するモータ駆動部(2)とを有し、前記制御回路部は、前記目標回転速度(Rtg)が閾値(Rth)より低い場合に、前記モータの回転速度(Rr)が前記目標回転速度(Rtg)に一致するように前記駆動制御信号を生成する速度フィードバック制御を行い、前記目標回転速度(Rtg)が前記閾値(Rth)より高い場合に、前記モータに流れる電流(Ir)が、前記モータの回転速度に対応して算出される目標電流値(Itg)に近づくように前記駆動制御信号(Sd)を生成する最大風量制御を行うことを特徴とする。
〔8〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御方法は、モータ(20)の目標回転速度(Rtg)を指示する速度指令信号(Sc)に基づいて前記モータの駆動を制御するための駆動制御信号(Sd)を生成し、前記駆動制御信号に基づいて、前記モータを駆動する方法であって、前記目標回転速度(Rtg)が閾値(Rth)より低い場合に、前記モータの回転速度(Rr)が前記目標回転速度(Rtg)と一致するように前記駆動制御信号を生成する第1ステップ(S3)と、前記目標回転速度(Rtg)が前記閾値(Rth)より高い場合に、前記モータに流れる電流(Ir)が前記モータの回転速度に対応して算出される目標電流値(Itg)に近づくように前記駆動制御信号を生成する第2ステップ(S4~S14)と、を含むことを特徴とする。
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
図1は、本発明の実施の形態に係るファンの構成を示すブロック図である。
本実施の形態に係るファン100は、インペラ(羽根車)を回転させることによって風を発生させる装置である。ファン100は、機器の内部で発生する熱を外部へ排出し、その機器の内部を冷却する冷却装置の一つとして利用可能である。ファン100は、例えば、軸流ファンである。
図1に示すように、ファン100は、モータ20と、モータ20を駆動するモータ駆動制御装置1と、モータ20の回転力によって回転可能に構成されたインペラ21とを備えている。
本実施の形態において、モータ20は、例えば、コイルLu,Lv,Lwを有する3相のブラシレスモータである。モータ駆動制御装置1は、モータ20の回転を制御するための装置である。モータ駆動制御装置1は、モータ20を構成する3相のコイルLu,Lv,Lwに周期的に駆動電流を流すことで、モータ20を回転させる。
具体的に、モータ駆動制御装置1は、モータ駆動部2と、制御回路部4と、電流検出部6とを有している。なお、図1に示されているモータ駆動制御装置1の構成要素は、全体の一部であり、モータ駆動制御装置1は、図1に示されたものに加えて、他の構成要素を有していてもよい。
本実施の形態において、モータ駆動制御装置1の少なくとも一部が、一つの半導体装置(IC:Integrated Circuit)としてパッケージ化されている。例えば、制御回路部4やモータ駆動部2等の回路が、それぞれ別個の半導体装置として実現されている。
なお、モータ駆動制御装置1は、その全部がパッケージ化された半導体装置であってもよいし、モータ駆動制御装置1の全部又は一部と他の装置とが一緒にパッケージ化されて、1つの半導体装置を構成していてもよい。
モータ駆動部2は、制御回路部4から出力された駆動制御信号Sdに基づいて、モータ20に駆動信号を出力し、モータ20を駆動させる。モータ駆動部2は、モータ20の複数相のコイルLu,Lv,Lwを選択的に通電する。
具体的には、モータ駆動部2は、インバータ回路2a及びプリドライブ回路2bを有する。プリドライブ回路2bは、制御回路部4から出力された駆動制御信号Sdに基づいて、インバータ回路2aを駆動するための出力信号を生成し、インバータ回路2aに出力する。インバータ回路2aは、プリドライブ回路2bから出力された信号に基づいて、モータ20が備えるコイルLu,Lv,Lwを通電させる。
具体的には、インバータ回路2aは、例えば、電源電圧(直流電源)Vccの両端に設けられた2つのスイッチング素子の直列回路の対が、コイルLu,Lv,Lwの各相(U相、V相、W相)に対してそれぞれ配置されて構成されている。2つのスイッチング素子の各対において、スイッチング素子同士の接続点に、モータ20の各相の端子が接続されている(不図示)。プリドライブ回路2bは、出力信号として、例えば、インバータ回路2aの各スイッチング素子に対応する6種類の信号Vuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlを出力する。これらの信号Vuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlが出力されることで、それぞれの信号Vuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlに対応するスイッチング素子がオン、オフ動作を行う。これにより、モータ20に駆動信号が出力されて、モータ20の各相のコイルLu,Lv,Lwに電流が流れる(不図示)。
電流検出部6は、モータ20に流れる電流、すなわちモータ20のコイルLu,Lv,Lwに流れる電流(以下、「モータ電流」とも称する。)を検出するための機能部である。電流検出部6は、モータ20のモータ電流に応じた電圧Vsを出力する。なお、電流検出部6の構成については後述する。
制御回路部4は、例えば、マイクロコンピュータ、デジタル回路、およびアナログ回路等によって構成されている。制御回路部4には、モータ20の駆動を指示する各種の信号が入力される。制御回路部4は、これらの信号に基づいてモータ20の駆動制御を行う。例えば、モータ20の駆動を指示する信号として、速度指令信号Scが上位装置等の制御回路部4の外部に設けられた装置から制御回路部4に入力される。
速度指令信号Scは、モータ20の回転速度に関する信号である。例えば、速度指令信号Scは、モータ20の目標回転速度Rtgに対応するデューティ比のPWM(パルス幅変調)信号である。なお、速度指令信号Scとして、クロック信号が入力されてもよい。
また、制御回路部4には、位置検出素子5から位置検出信号Shが入力される。位置検出素子5は、例えば、モータ20に配置されたホール素子であり、位置検出信号Shはホール素子5から出力されるホール信号である。位置検出信号Shは、モータ20の回転位置を示す信号、すなわち、モータ20のロータ(不図示)の回転に対応する信号である。以下、位置検出素子5を「ホール素子5」とも称する。
制御回路部4は、位置検出信号Shからモータ20のロータの実回転速度に関する情報を得て、モータ20の駆動を制御する。
なお、図1では、ファン100に一つのホール素子5が配置される場合を例示しているが、ファン100に配置されるホール素子5の個数は特に制限されない。例えば、三つのホール素子5が互いに略等間隔で、モータ20の回転子の周囲に配置されていてもよい。
なお、制御回路部4には、このような位置検出信号Shに加えて、又は位置検出信号Shに代えて、モータ20の回転状態に関する他の情報が入力されるように構成されていてもよい。例えば、モータ20の回転子の回転に対応するFG信号として、回転子の側にある基板に設けたコイルパターンを用いて生成される信号(パターンFG)が入力されるようにしてもよい。また、モータ20の各相(U、V、W相)に誘起する逆起電圧を検出する回転位置検出回路の検出結果に基づいてモータ20の回転状態が検知されるように構成されていてもよい。エンコーダやレゾルバなどを設け、それによりモータ20の回転速度等の情報が検出されるようにしてもよい。
制御回路部4は、上述した速度指令信号Sc、位置検出信号Shおよび電圧Vs等に基づいて、モータ20の回転速度を制御するための駆動制御信号Sdを生成する。
駆動制御信号Sdは、例えば、PWM(パルス幅変調)信号である。制御回路部4は、モータ駆動部2にPWM(パルス幅変調)信号である駆動制御信号Sdを供給することにより、モータ駆動部2により通電される複数相のコイルLu,Lv,Lwの通電相を所定の順序で切り替えながら、モータ20の回転速度を調整してファン100の風量を制御する。
本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1は、ファン100の静圧が所定値以下の領域において、ファン100の風量が制限されるように、モータ20の回転速度を制御する。
図2は、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によるファン100の風量制御を説明するための図である。
図2において、横軸は風量Qを表し、縦軸は静圧Pを表している。図2には、速度指令信号Scによって指示される目標回転速度Rtgを変化させたときの、目標回転速度Rtg毎のP-Qカーブがそれぞれ示されている。
図2において、参照符号201_minは、目標回転速度Rtgを最小値Rminに設定したときのファン100のP-Qカーブを表し、参照符号201_maxは、目標回転速度Rtgを最大値Rmaxに設定したときのファン100のP-Qカーブを表し、参照符号201_xは、目標回転速度Rtgを上記最大値と上記最小値との間の値に設定したときのP-Qカーブを表している。
上述したように、ファンは、要求される動作範囲において所望の風量が得られるように設計される。例えば、図2において、ファンに対して要求される動作範囲が参照符号200で示される範囲であったとする。この場合、図2に示すP-Qカーブを有するファンは、要求された動作範囲200が目標回転速度を最大値Rtg_maxに設定したときのP-Qカーブよりも下の領域(静圧が低い領域)に存在しているので、要求された仕様を満足していると言える。
一方で、上述したように、ファンは、要求された動作範囲以外の領域、すなわち静圧が所定値以下の領域では、風量よりも静音性が重要視される。例えば、図2において、静圧がPb以下の領域では、風量よりも静音性が重要となる。
しかしながら、従来のファンは、速度指令信号Scで指示された目標回転速度になるようにモータの回転数を制御しており、圧力損失(静圧)によって風量は変化する。そのため、静圧が低い領域においても風量が大きくなり、騒音が大きくなる傾向がある。
例えば、図2に示すように、従来のファンが参照符号201_maxで示されるP-Qカーブで動作するように設計されている場合を考える。この場合、従来のファンは、フリーエア状態において目標回転速度が“Rtg_max”に設定されたとき、動作範囲200で要求される風量qr1からqr2の範囲を大きく超える風量qmaxを発生させる。
しかしながら、上述したように、動作範囲200以外の領域では、要求される風量qr1からqr2の範囲を大きく超える風量は不要である。
そこで、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1は、静圧が所定値より低い領域において、速度指令信号Scによって指示された目標回転速度Rtgに関わらずファン100の風量が制限されるように、モータ20の回転速度を制御する。
具体的には、図2に示すように、モータ駆動制御装置1は、静圧が所定値Pbより低い範囲では、目標回転速度Rtgが所定値Rx(最小値Rmin<Rx<最大値Rmax)に設定されているときの最大風量の点Aから目標回転速度Rtgが最大値Rmaxに設定されているときの最大風量の点Bまでを結ぶライン(以下、「最大風量制御ライン」とも称する。)Cに沿うようにファン100の風量を制御する。
より具体的には、モータ駆動制御装置1は、最大風量制御ラインCにおけるモータ20の回転速度とモータ電流との対応関係に基づいてモータ20の回転速度を調整することにより、静圧が所定値Pbより低い範囲では、ファン100の風量を最大風量制御ラインCに沿うように制御する。
図3は、図2の最大風量制御ラインCにおけるモータ20の回転速度とモータ電流の対応関係を示す図である。
図3に示される特性(グラフ)500は、図2の最大風量制御ラインCにおけるモータ20の回転速度(実回転速度Rr)およびモータ電流(実電流値Ir)の関係を表している。図3の特性500におけるA点は、図2の最大風量制御ラインCにおけるA点に対応し、図3の特性500におけるB点は、図2の最大風量制御ラインCにおけるB点に対応している。
特性500は、以下に示す方法により取得することができる。
例えば、ファン100(モータ20)の目標回転速度Rtgを設定可能な最小値Rminから設定可能な最大値Rmaxまで変化させたときの各目標回転速度における静圧(P)、風量(Q)、モータ20の回転速度(実回転速度Rr)、およびモータ電流(実電流値Ir)を予め測定しておく。なお、このとき、ファン100の後述する最大風量制御は無効にしておく。
次に、静圧(P)および風量(Q)の測定データを用いて、図2のように目標回転速度毎にP-Qカーブを描く。次に、描いたP-Qカーブを用いて、静圧が所望の値(例えばPb)より低い領域において風量が制限されるように、最大風量制御ラインCを設定する。最大風量制御ラインCの設定方法は、上述の通りである。
次に、各目標回転速度におけるモータ20の実回転速度Rrおよびモータ電流の実電流値Irの測定データの中から、最大風量制御ラインCにおける実回転速度Rrおよび実電流値Irの測定データを抽出する。そして、抽出した測定データに基づいて、実回転速度Rrと実電流値Irとの対応関係をプロットする。これにより、モータ20の回転速度とモータ電流との対応関係を表す特性500を得ることができる。
上述したように、特性500は、ファン100が図2に示したP-Qカーブの最大風量制御ラインCに沿って動作したときの、モータ20の回転速度とモータ電流との関係を表している。したがって、特性500を満足するようにモータ20の回転速度およびモータ電流を制御することにより、ファン100を最大風量制御ラインCに沿って動作させることが可能となる。
そこで、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1は、モータ20のモータ電流の実電流値が特性500で表されるモータ電流の目標値(以下、「目標電流値Itg」と称する。)に近づくように、モータ20の回転速度を調整することにより、ファン100を最大風量制御ラインCに沿って動作させて、ファン100の最大風量を制限する。
以下、ファン100の最大風量を制限するための機能を実現するためのモータ駆動制御装置1の構成について、詳細に説明する。
図4は、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1の構成を示すブロック図である。
図4には、モータ駆動制御装置1を構成する機能ブロックのうち、上述したファン100の最大風量を制限するための機能に関連する機能ブロックが図示されている。
モータ駆動制御装置1における制御回路部4は、速度指令信号Scによって指定されたモータ20の目標回転速度Rtgが閾値Rthより低い場合(例えば、Rtg<Rthの場合)には、モータ20の回転速度(実回転速度Rr)が目標回転速度Rtgに一致するように駆動制御信号Sdを生成する速度フィードバック制御を行う。
一方、目標回転速度Rtgが閾値Rthより高い場合(例えば、Rtg≧Rthの場合)には、制御回路部4は、モータ20に流れる電流(モータ電流)がモータ20の回転速度(実回転速度)に対応して算出される目標電流値Itgに近づくように、駆動制御信号Sdを生成する最大風量制御を行う。
具体的に、制御回路部4は、速度フィードバック制御および最大風量制御を実現するための機能ブロックとして、目標回転速度取得部41、回転速度算出部42、速度制御部43、最大風量制御部44、駆動制御信号生成部45、電流値取得部46、目標電流値算出部47、および比較部(CMP)48を有している。
目標回転速度取得部41は、例えばモータ駆動制御装置1の外部に存在する上位装置から出力された速度指令信号Scからモータ20の目標回転速度Rtgの情報を取得し、速度制御部43および最大風量制御部44に与える。
例えば、速度指令信号Scが、デューティ比によって目標回転速度Rtgを表すPWM信号である場合、目標回転速度取得部41は、入力された速度指令信号ScとしてのPWM信号のデューティ比を解析し、そのデューティ比に対応する回転速度を算出して、目標回転速度Rtgとして出力する。例えば、目標回転速度取得部41は、PWM信号のデューティ比と目標回転速度との対応関係を表すテーブルを有しており、目標回転速度取得部41は、入力された速度指令信号Scのデューティ比に対応する目標回転速度を上記テーブルから読み出すことにより、速度指令信号Scから目標回転速度Rtgの情報を取得する。
目標回転速度取得部41は、例えば、マイクロコントローラの外部インターフェース回路等とCPUのプログラム処理とによって実現されている。
回転速度算出部42は、位置検出素子5から出力された位置検出信号Shに基づいて、モータ20の回転速度(単位時間当たりの回転数)を算出する。回転速度算出部42は、位置検出信号Shを用いてモータ20のロータの実際の回転速度を算出し、実回転速度Rrとして速度制御部43および目標電流値算出部47に与える。
回転速度算出部42は、例えば、目標回転速度取得部41と同様に、マイクロコントローラの外部インターフェース回路等とCPUのプログラム処理とによって実現されている。
速度制御部43は、目標回転速度取得部41から出力された目標回転速度Rtgと、回転速度算出部42によって算出されたモータ20の実回転速度Rrとに基づいて、駆動制御信号SdとしてのPWM信号のデューティ比を指定するPWM指令信号(第1制御信号の一例)Sp1を生成する。
具体的に、速度制御部43は、実回転速度Rrが目標回転速度Rtgに一致するようにPWM指令信号Sp1を生成する。例えば、速度制御部43は、実回転速度Rrと目標回転速度Rtgとの差分を算出し、当該差分がゼロになるように駆動制御信号SdとしてのPWM信号のデューティ比を算出する。そして、速度制御部43は、算出したデューティ比の情報をPWM指令信号Sp1として出力する。
電流値取得部46は、モータ20に流れる電流の電流値を算出する機能部である。電流値取得部46は、例えば、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路を含む。例えば、電流値取得部46は、ΔΣ変調型のアナログ/デジタル変換回路であって、専用ロジック回路によって構成されている。電流値取得部46は、電流検出部6から入力されたアナログ信号を、ΔΣ変調方式によりデジタル信号に変換する。
ここで、電流検出部6は、上述したように、制御対象としてのモータ20に流れる電流(モータ電流)に応じた電圧Vsを出力する回路である。例えば図3に示すように、電流検出部6は、モータ駆動部2を介してモータ20のコイルLu,Lv,Lwとグラウンド電位との間に直列に接続された抵抗Rsを含み、抵抗Rsの両端に発生した電圧Vsを、モータ20のモータ電流の検出値として出力する。
電流値取得部46は、電流検出部6から出力されたアナログ信号である電圧Vsをデジタル信号に変換し、モータ20のモータ電流の実電流値Irとして出力する。
目標電流値算出部47は、回転速度算出部42によって算出された実回転速度Rrに基づいて、目標電流値Itgを算出する。例えば、目標電流値算出部47は、モータ20の回転速度とモータ電流との対応関係を表す対応関係情報471を記憶する記憶部470を有しており、記憶部470から読み出した対応関係情報471を用いて、実回転速度Rrから目標電流値Itgを算出する。
上述したように、目標電流値Itgは、ファン100の風量を最大風量制御ラインCに沿って制御するためのモータ電流の目標値である。
対応関係情報471は、例えば、図3の特性500を表す数式を含む情報である。例えば、予め、最大風量制御ラインCにおけるモータ20の実回転速度Rrと実電流値Irの測定データを用いて回帰分析を行うことにより、回転速度とモータ電流の関係式(例えば、一次関数)を導出し、導出した関係式を対応関係情報471として記憶部470に予め記憶しておく。
目標電流値算出部47は、最大風量制御において、記憶部470から対応関係情報471としての回転速度とモータ電流の関係式を読み出し、その関係式に回転速度算出部42によって算出されたモータ20の実回転速度Rrを代入することにより、モータ20の目標電流値Itgを算出する。
なお、対応関係情報471は、上述した関係式に限られず、例えば、モータ電流と回転速度との対応関係を示すテーブル(ルックアップテーブル)等であってもよい。
比較部48は、目標回転速度Rtgと閾値Rthとを比較し、比較結果を出力する。
閾値Rthは、ファン100の制御モード(速度フィードバック制御と最大風量制御)の切り替えの基準となるパラメータである。例えば、図2に示す最大風量制御ラインCに沿ってファン100を制御する場合、A点におけるモータ20の回転速度を閾値Rthとして設定すればよい。
比較部48は、目標回転速度取得部41から出力された目標回転速度Rtgが閾値Rthより大きい場合に、例えばハイ(High)レベルの判定信号Scmpを出力する。一方、比較部48は、目標回転速度取得部41から出力された目標回転速度Rtgが閾値Rthより小さい場合に、例えばロー(Low)レベルの判定信号Scmpを出力する。
最大風量制御部44は、比較部48の判定信号Scmpに基づいて、駆動制御信号SdとしてのPWM信号のデューティ比を指定するPWM指令信号(第2制御信号の一例)Sp2を生成する。具体的に、最大風量制御部44は、比較部48によって目標回転速度Rtgが所定の閾値Rthより高いと判定された場合に、モータ電流の実電流値Irが目標電流値Itgに近づくようにPWM指令信号Sp2を生成する。一方、比較部48によって目標回転速度Rtgが所定の閾値Rthより低いと判定された場合には、最大風量制御部44は、PWM指令信号Sp2を生成しない。
最大風量制御部44は、目標電流値算出部47によって算出された目標電流値Itgと電流値取得部46によって算出された実電流値Irとに基づいて、PWM指令信号Sp2を生成する。
具体的には、最大風量制御部44は、実電流値Irが目標電流値Itgより高い場合に、モータ20の回転速度Rrが増加するようにPWM指令信号Sp2を生成し、実電流値Irが目標電流値Itgより低い場合に、モータ20の回転速度Rrが低下するようにPWM指令信号Sp2を生成する。
より具体的には、最大風量制御部44は、モータ20の実電流値Irが目標電流値Itgを基準とする所定範囲より高い場合に、モータ20の回転速度を増加させ、実電流値Irが所定範囲内にある場合に、モータ20の回転速度を変化させず、実電流値Irが所定範囲より低い場合に、モータの回転速度を低下させるようにPWM指令信号Sp2を生成する。
図5Aおよび図5Bは、最大風量制御を説明するための図である。図5Aには、モータ電流の実電流値Irに基づく、モータ20の回転速度の調整方法の一例が示され、図5Bには、目標電流値Itgに基づく、モータ20の動作点の調整方法の一例が示されている。
なお、図5Aにおいて、|X|<|Y|,|Z|である。
例えば、図5Aに示すように、Itg-X<Ir<Itg+Xである場合、すなわち、モータ電流の実電流値Irが範囲Mmにある場合には、最大風量制御部44は、モータ20の回転速度を変化させない。例えば、図5Bにおいて、モータ20が動作点cで動作しているとき、ファン100が最大風量制御ラインCに沿って動作していると判断することができる。この場合には、最大風量制御部44は、直前に出力したPWM指令信号Sp2と同じデューティ比の情報を含むPWM指令信号Sp2を出力する。
一方、Ir>Itg+Zである場合、すなわち、モータ電流の実電流値Irが範囲Hにある場合、最大風量制御部44は、モータ20の回転速度を低下させるようにPWM指令信号Sp2を生成する。例えば、図5Bにおいて、モータ20が動作点aで動作しているとき、ファン100が最大風量制御ラインCに沿って動作していない(ファン100に対する圧力抵抗が大きい)と判断することができる。この場合には、図5Bに示すように、最大風量制御部44は、ファン100の動作点を“a”から特性500上の“ax”に遷移させるように、モータ20の回転速度を増加させるPWM指令信号Sp2を生成する。例えば、直前に出力したPWM指令信号Sp2で指定されたデューティ比が50%であり、デューティ比の単位調整幅が0.1%である場合、最大風量制御部44は、“(50-0.1)%”のデューティ比を示すPMW指令信号Sp2を出力する。
また、Ir<Itg-Yの場合、すなわちモータ電流の実電流値Irが範囲Lにある場合には、最大風量制御部44は、モータ20の回転速度を低下させるようにPWM指令信号Sp2を生成する。例えば、図5Bにおいて、モータ20が動作点bで動作しているとき、ファン100が最大風量制御ラインCに沿って動作していない(ファン100に対する圧力抵抗が小さい)と判断することができる。この場合には、図5Bに示すように、最大風量制御部44は、ファン100の動作点を“b”から特性500上の“bx”に遷移させるように、モータ20の回転速度を低下させるPWM指令信号Sp2を生成する。例えば、直前に出力したPWM指令信号Sp2で指定されたデューティ比が50%であり、デューティ比の単位調整幅が0.1%である場合、最大風量制御部44は、“(50+0.1)%”のデューティ比を示すPMW指令信号Sp2を出力する。
なお、図5Aに示すように、Itg+X<Ir<Itg+Zである範囲MhおよびItg-Y<Ir<Itg-Xである範囲Mlにおいては、Itg-X<Ir<Itg+Xである範囲Mmと同様に、最大風量制御部44は、モータ20の回転速度を変化させないように制御してもよい。これにより、最大風量制御において、回転速度を変化させないモータ20の動作点の範囲を、範囲Mmから範囲M(=Mh+Mm+Ml)に拡大することができる。なお、|Y|=|Z|であってもよいし、|Y|≠|Z|であってもよい。
駆動制御信号生成部45は、モータ20の駆動を制御するための駆動制御信号Sdを生成する機能部である。駆動制御信号生成部45は、速度制御部43から出力されたPWM指令信号Sp1と最大風量制御部44から出力されたPWM指令信号Sp2とに基づいて、駆動制御信号Sdを生成する。
具体的に、駆動制御信号生成部45は、比較部48によって目標回転速度Rtgが閾値Rthより小さいと判定された場合に、速度制御部43から出力されたPWM指令信号Sp1で指定されたデューティ比のPWM信号を生成し、駆動制御信号Sdとして出力する。一方、比較部48によって目標回転速度Rtgが閾値Rthより大きいと判定された場合に、駆動制御信号生成部45は、最大風量制御部44から出力されたPWM指令信号Sp2で指定されたデューティ比のPWM信号を生成し、駆動制御信号Sdとして出力する。
例えば、駆動制御信号生成部45は、最大風量制御部44からPWM指令信号Sp2が出力されていない場合には、速度制御部43から出力されたPWM指令信号Sp1で指定されたデューティ比のPWM信号を生成して駆動制御信号Sdとして出力し、最大風量制御部44からPWM指令信号Sp2が出力されている場合には、PWM指令信号Sp1ではなく、最大風量制御部44から出力されたPWM指令信号Sp2で指定されたデューティ比のPWM信号を生成して駆動制御信号Sdとして出力する。
上述した速度制御部43、最大風量制御部44、駆動制御信号生成部45、目標電流値算出部47、および比較部48は、例えば、マイクロコントローラ(CPU)のプログラム処理によって実現されている。なお、駆動制御信号生成部45は、専用ロジック回路によって実現されていてもよい。
次に、ファン100の風量制御方法の流れについて説明する。
図6は、実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によるファン100の風量制御の流れを示すフロー図である。
先ず、上位装置から制御回路部4に対して速度指令信号Scが入力されると、制御回路部4の目標回転速度取得部41が速度指令信号Scから目標回転速度Rtgの情報を取得する(ステップS1)。
次に、制御回路部4は、比較部48によって、ステップS1で取得した目標回転速度Rtgが閾値Rthより大きいか否かを判定する(ステップS2)。目標回転速度Rtgが閾値Rthより小さい場合(ステップS2:No)には、制御回路部4は、速度フィードバック制御を行う(ステップS3)。すなわち、上述したように、駆動制御信号生成部45が、速度制御部43によって生成されたPWM指令信号Sp1に基づいて、駆動制御信号Sdを生成することにより、モータ20の実回転速度Rrが目標回転速度Rtgに一致するようにモータ20が動作する。なお、このとき、最大風量制御部44は、PWM指令信号Sp2を生成しない。
一方、ステップS2において、目標回転速度Rtgが所定の閾値Rthより大きい場合(ステップS2:Yes)には、制御回路部4は、最大風量制御を開始する(ステップS4)。
最大風量制御において、先ず、制御回路部4は、モータ20の実回転速度Rrの情報を取得する(ステップS5)。すなわち、上述したように、目標電流値算出部47が、回転速度算出部42によって算出されたモータ20の実回転速度Rrの情報を取得する。
次に、目標電流値算出部47が、目標電流値Itgを算出する(ステップS6)。具体的には、目標電流値算出部47が、ステップS5で取得した実回転速度Rrの情報と、記憶部470に記憶されている対応関係情報471とに基づいて、上述した手法により目標電流値Itgを算出する。
次に、最大風量制御部44が、モータ20の実電流値Irを取得する(ステップS7)。具体的には、上述したように、最大風量制御部44が、電流値取得部46によって算出されたモータ電流の実電流値Irの情報を取得する。
次に、最大風量制御部44は、Itg-X<Ir<Itg+Xであるか否か、すなわちステップS7で取得した実電流値Irが範囲Mにあるか否かを判定する(ステップS8)。
ステップS8において、実電流値Irが範囲Mにある場合(ステップS8:Yes)には、最大風量制御部44は、モータ20の回転速度を変化させない(ステップS13)。例えば、最大風量制御部44は、直前に出力したPWM指令信号Sp2と同じデューティ比を示すPWM指令信号Sp2を出力する。
一方、ステップS8において、実電流値Irが範囲Mにない場合(ステップS8:No)には、最大風量制御部44は、Ir<Itg-Yであるか否か、すなわち実電流値Irが範囲Lにあるか否かを判定する(ステップS9)。
ステップS9において、実電流値Irが範囲Lにある場合(ステップS9:Yes)には、最大風量制御部44は、モータ20の回転速度を増加させる(ステップS11)。例えば、最大風量制御部44は、直前に出力したPWM指令信号Sp2が示すデューティ比から所定幅(例えば、0.1%)だけ増加させたデューティ比を示すPWM指令信号Sp2を出力する。
一方、ステップS9において、実電流値Irが範囲Lにない場合(ステップS9:No)には、最大風量制御部44は、Itg+Z<Irであるか否か、すなわち実電流値Irが範囲Hにあるか否かを判定する(ステップS10)。
ステップS10において、実電流値Irが範囲Hにある場合(ステップS10:Yes)には、最大風量制御部44は、モータ20の回転速度を低下させる(ステップS12)。例えば、最大風量制御部44は、直前に出力したPWM指令信号Sp2が示すデューティ比から所定幅(例えば、0.1%)だけ低下させたデューティ比を示すPWM指令信号Sp2を出力する。
一方、ステップS10において、実電流値Irが範囲Hにない場合(ステップS10:No)には、最大風量制御部44は、Itg+X<Ir<Itg+ZまたはItg-X<Ir<Itg-Yである、すなわちItgが範囲MhまたはMlにあると判定し、モータ20の回転速度を変化させない(ステップS13)。
ステップS11~S13の後、制御回路部4は、PWM指令信号Sp2に基づいて駆動制御信号Sdを生成する(ステップS14)。具体的には、駆動制御信号生成部45が、ステップS11~S13において最大風量制御部44から出力されたPWM指令信号Sp2で指定されたデューティ比のPWM信号を生成し、駆動制御信号Sdとして出力する。
ステップS3,S14の後、制御回路部4は、モータ20の停止の指示の有無を判定する(ステップS15)。ステップS15において、モータ20の停止の指示が無い場合(ステップS15:No)、上述した処理(S1~S15)を繰り返し実行する。一方、ステップS15において、モータ20の停止の指示を受け取った場合(ステップS15:Yes)、制御回路部4は風量制御の処理を終了する。
図7は、本実施の形態に係るファンにおけるモータの回転速度と目標回転速度との関係を示す図である。
図7において、横軸は目標回転速度Rtgを示し、縦軸はモータ20の実回転速度Rrを表している。
図7に示すように、従来のファンは、参照符号600に示すように回転速度が目標回転速度Rtgに一致するようにモータを制御する。すなわち、従来のファンは、目標回転速度Rtgに比例して風量が増加するようにモータを制御するため、例えば、図2の参照符号201_maxで示されるP-Qカーブのように、静圧(圧力抵抗)が低い領域においても、目標回転速度Rtgに比例して風量が増加する。
一方、本実施の形態に係るファン100は、目標回転速度Rtgが閾値Rthより低い範囲では、従来のファンと同様に、ファン(モータ)の回転速度が目標回転速度Rtgに一致するようにモータ20を制御するが、目標回転速度Rtgが閾値Rthより高い範囲では、参照符号601に示すように、目標回転速度Rtgによらず、回転速度が設定された最大回転速度、すなわち閾値Rthを超えないようにモータ20を制御する。
すなわち、本実施の形態に係るファン100は、目標回転速度Rtgが閾値Rthより高い範囲では、上述したように、図2に示す最大風量制御ラインC上の回転速度とモータ電流との関係からモータ20の実回転速度に対応する目標電流値Itgを算出し、モータ電流が目標電流値Itgに近づくようにモータ20の回転速度を制御する。これにより、ファン100は、静圧が低い領域(図2のP-Qカーブにおける静圧がPbより低い範囲)における最大風量を制限することができる。
以上、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1は、速度指令信号Scによって指示された目標回転速度Rtgが閾値Rthより低い場合に、モータ20の回転速度が目標回転速度Rtgに一致するように駆動制御信号Sdを生成する速度フィードバック制御を行い、目標回転速度Rtgが閾値Rthより高い場合に、モータ20の実電流値Irが、モータ20の回転速度に対応して算出される目標電流値Itgに近づくように駆動制御信号Sdを生成する最大風量制御を行う。なお、本発明における最大風量制御は、目標回転速度Rtgが閾値Rthより高い場合において、モータ20の回転速度と圧力損失との関係性に応じて、最大風量が所望の値になるように制御するものであり、必ずしも、風量を一定に維持するように制御するものではない。したがって、本発明の最大風量制御は、従来のいわゆる風量一定制御とは制御方法およびその効果が異なるものである。
これによれば、上述したように、目標回転速度Rtgが閾値Rthより低い範囲では、ファン100の風量が指示された目標回転速度Rtgに比例して増加するようにモータ20が駆動される一方で、目標回転速度Rtgが閾値Rthより高い範囲では、ファン100の風量が静圧に応じて変化するようにモータ20が駆動される。
具体的には、上述したように、目標回転速度Rtgが閾値Rthより高い範囲において、モータ駆動制御装置1は、予め記憶されたモータ20の回転速度と目標電流値Itgとの対応関係情報471を用いて、モータ20の位置検出信号(ホール信号)Shに基づいて算出したモータ20の実回転速度Rrに対応する目標電流値Itgを算出し、モータ20の実電流値Irが目標電流値Itgに近づくように、モータ20の回転速度を制御する。
ここで、対応関係情報471を、ファン100の静圧が所定値より低い領域でのモータ20の回転速度と目標電流値Itgとの関係を示す情報とすることにより、ファン100の静圧が所定値より低い領域では、指定された目標回転速度Rtgによらず、対応関係情報471で規定されたモータ20の回転速度と目標電流値Itgとの関係を満足するように、モータ20の回転速度が制御される。例えば、対応関係情報471が、図2に示したP-Qカーブにおける最大風量制御ラインC上の特性を満たすように設定しておくことにより、ファン100の静圧がPbより低い領域では、指定された目標回転速度Rtgによらず、最大風量制御ラインCを満たすように風量を制御することができる。
すなわち、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によれば、静圧が所定値より高い領域では、要求される動作範囲において十分な風量を確保することができ、静圧が所定値より低い領域では、指定された目標回転速度Rtgによらず風量を抑えて、ファン100の騒音の発生と消費電力の増大を抑えることができる。
また、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1は、最大風量制御において、モータ20の実電流値Irが目標電流値Itgより高い場合に、モータ20の回転速度が増加するように駆動制御信号Sdを生成し、モータ20の実電流値Irが目標電流値Itgより低い場合に、モータ20の回転速度が低下するように駆動制御信号Sdを生成する。
これによれば、指示された目標回転速度Rtgが閾値Rthより高い場合において、図5Bに示すように、モータ20の動作点がモータ20の実電流値Irと実回転速度Rrとが特性500を満たすように制御することが容易となる。
また、モータ駆動制御装置1は、最大風量制御において、モータ20の実電流値Irが目標電流値Itgを基準とする範囲Mmより高い場合に、モータ20の回転速度を増加させ、モータ20の実電流値Irが範囲Mm内にある場合に、モータ20の回転速度を変化させず、モータ20の実電流値Irが範囲Mmより低い場合に、モータ20の回転速度を低下させるように駆動制御信号Sdを生成する。
これによれば、モータ20の動作点が最大風量制御ラインCに近づいた状況において、回転速度が過剰に変更されることによってファン100の風量が不安定になることを防止することが可能となる。
特に、図5Aおよび図5Bに示すように、最大風量制御において、モータ20の回転速度を変化させない動作点の範囲を、範囲Mmから範囲M(=Mh+Mm+Ml)に拡大することにより、回転速度の過剰な変更をより効果的に防止することができ、ファン100の風量を更に安定させることが可能となる。
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施の形態では、最大風量制御ラインC上のモータ電流と回転速度との間の特性500を表す関係式やテーブルを対応関係情報471とする場合を例示したが、これに限られない。例えば、特性500を基準とし、その基準にオフセット量を加算または減算する補正を行い、補正後の特性を表す関係式やテーブル等を対応関係情報471として用いてもよい。
また、上記実施の形態では、図5Aに示すように、範囲Mhおよび範囲Mlにおいて、モータ20の回転速度を変化させない場合を例示したが、これに限られない。例えば、範囲Mhおよび範囲Mlにおいて、範囲Hおよび範囲Lの調整幅より小さい調整幅でモータ20の回転速度を低下させてもよい。例えば、範囲Hおよび範囲Lにおける駆動制御信号Sdのデューティ比の調整幅を“±0.5%”とした場合に、範囲Mhおよび範囲Mlにおける駆動制御信号Sdのデューティ比の調整幅を“±0.1%”としてもよい。
また、上記実施の形態では、速度指令信号ScがPWM信号であって、そのPWM信号のデューティ比によって目標回転速度を指定する場合を例示したが、これに限られない。例えば、速度指令信号Scはアナログ信号であって、そのアナログ信号の電圧レベルによって目標回転速度を指定してもよい。
また、上記実施の形態において、モータ20が三相のブラシレスモータである場合を例示したが、モータ20の種類や相数等はこれに限定されない。例えば、単相のブラシレスモータであってもよい。
また、上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。