以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は基本的に模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合がある。
図1及び図2には、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキン1が示されている。ナプキン1は、その使用者すなわち着用者が排泄した経血等の体液を吸収するのに用いられる物品であり、体液を吸収保持する吸収性コア40を具備する吸収体4と、吸収体4の肌対向面側に配され、着用者の肌と接触し得る液透過性の表面シート2と、吸収体4の非肌対向面側に配された防漏性の裏面シート3とを具備する。ナプキン1は、図1に示すように、着用者の前後方向に対応し、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向Xと、これに直交する横方向Yとを有し、また縦方向Xにおいて、着用者の膣口などの排泄部に対向する排泄部対向部(排泄ポイント)を含む縦中央域Mと、縦中央域Mよりも着用者の前側(腹側)に配される前方域Fと、縦中央域Mよりも着用者の後側(背側)に配される後方域Rとを有する。
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収体4)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側、すなわち相対的に着用者の肌から遠い側に向けられる面である。なお、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、すなわち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味する。
ナプキン1は、図1に示すように、縦方向Xに長い形状の吸収性本体5と、吸収性本体5における縦中央域Mの縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部5W,5Wとを有している。吸収性本体5は、ナプキン1の主体をなす部分であり、前記の表面シート2、裏面シート3及び吸収体4を具備し、縦方向Xにおいて前方域F、縦中央域M及び後方域Rの3つに区分される。
なお、本発明の吸収性物品における縦中央域は、ナプキン1のように吸収性物品がウイング部を有する場合には、該吸収性物品の縦方向(長手方向、図中のX方向)においてウイング部を有する領域に相当し、ナプキン1を例にとれば、一方のウイング部5Wの縦方向Xに沿う付け根と他方のウイング部5Wの縦方向Xに沿う付け根とに挟まれた領域である。ナプキン1においては、一対のウイング部5W,5Wは、ナプキン1を横方向Yに二分して縦方向Xに延びる縦中心線を基準として左右対称に形成されており、一方のウイング部5Wの前方域Fに近い側の付け根と他方のウイング部5Wのそれとは、縦方向Xにおいて同位置に存する。また、ウイング部を有しない吸収性物品(例えば使い捨ておむつ)における縦中央域は、該吸収性物品を縦方向に三等分したときに中間に位置する領域に相当する。
ナプキン1においては、吸収体4は、液吸収性を有し、経血等の体液を吸収保持する吸収性コア40と、該吸収性コア40の外面を被覆する液透過性のコアラップシート41とを含んで構成されている。吸収性コア40は、吸収性本体5と同様に、図1に示す如き平面視において縦方向Xに長い形状をなしており、吸収性コア40の長手方向は、ナプキン1の縦方向Xに一致し、吸収性コア40の幅方向は、ナプキン1の横方向Yに一致している。吸収体4(吸収性コア40)は、図1に示すように、ナプキン1(吸収性本体5)の縦方向Xの略全長にわたっており、前方域Fから縦中央域Mを介して後方域Rにわたって延在している。吸収性コア40とコアラップシート41との間は、ホットメルト型接着剤等の接着剤により接合されていてもよい。
コアラップシート41は、1)1枚のシートのみから構成されてもよく、2)複数枚のシートを含んで構成されていてもよい。前記1)のコアラップシート41は、例えば、吸収性コア40の横方向Yの長さの2倍以上3倍以下の幅を有する1枚の連続したシートであり、吸収性コア40の肌対向面の全域を被覆し、且つ吸収性コア40の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、その延出部が、吸収性コア40の下方に巻き下げられて、吸収性コア40の非肌対向面の全域を被覆する。前記2)のコアラップシート41は、例えば、吸収性コア40の肌対向面を被覆する1枚の肌側コアラップシートと、該肌側コアラップシートとは別体で、吸収性コア40の非肌対向面を被覆する1枚の非肌側コアラップシートとの2枚を含んで構成される。
図2に示すように、表面シート2は、吸収体4の肌対向面の全域を被覆している。一方、裏面シート3は、吸収体4の非肌対向面の全域を被覆し、更に吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、後述するサイドシート6とともにサイドフラップ部を形成している。前記サイドフラップ部は、ナプキン1における、吸収体4から横方向Yの外方に延出する部材からなる部分である。裏面シート3とサイドシート6とは、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁からの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。表面シート2及び裏面シート3それぞれと吸収体4との間は接着剤によって接合されていてもよい。表面シート2、裏面シート3としては、生理用ナプキン等の吸収性物品に従来使用されている各種のものを特に制限なく用いることができる。表面シート2としては、例えば、液透過性を有する単層又は多層構造の不織布を用いることができ、該不織布として、カード法により製造された不織布(例えば、エアスルー不織布)、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布を例示できる。表面シート2を構成する不織布には、界面活性剤等の親水化剤を用いた親水化処理が施されていてもよい。裏面シート3としては、防漏性を有するシート、すなわち、液不透過性(液を全く通さない性質)又は液難透過性(液不透過性とまでは言えないものの、液を通し難い性質)を有するシートを用いることができ、例えば、透湿性の樹脂フィルムを用いることができる。
本実施形態においては、表面シート2は図2に示すように、着用者の肌側に向かって突出する凸部21を肌対向面に複数有している。凸部21の周辺には凹部22が形成され、表面シート2の肌対向面には、複数の凸部21と凹部22とからなる凹凸形状が付与されている。この肌対向面の凹凸形状は、少なくとも表面シート2の肌対向面における、ナプキン1の着用時の着用者の肌と接触し得る部位に存在し、該肌対向面の全域に存在してもよい。このような表面に凹凸形状を有する表面シート(凹凸表面シート)は、典型的には、原反シート(凹凸が付与されていない表面シートの製造中間体)に対してエンボス加工などの圧搾加工を部分的に施すことによって製造することができ、凹凸表面シートにおける圧搾加工が施された部分が凹部22、圧搾加工が施されていない部分が凸部21である。凹部22は、圧搾加工によって表面シート2の形成材料が圧密化されており、圧搾加工が施されていない凸部21よりも高密度である。
凹凸表面シートである表面シート2は、肌対向面に着用者の肌側に向かって突出する凸部21が複数形成されており、その凹凸形状の肌対向面がナプキン1の着用者の肌と接した場合には、凸部21の頂部及びその近傍の領域が部分的に接触するため、表面シート2の肌対向面が肌に全面的に接触することに起因するべたつき感やムレ、擦れに起因する刺激感が低減される。また、着用者から排泄された液が、着用者の肌に付着し難くなり、不快な濡れ感が低減される。
表面シート2の肌対向面における凸部21の形成パターン(凸部の形状及び配置)は特に限定されず、この種の吸収性物品における凹凸表面シートにおけるパターンを適宜採用できる。図3には、本発明に適用可能な凹凸表面シートの一実施形態であり、ナプキン1の表面シート2として使用可能な表面シート2Aが示されている。
表面シート2Aは、図3に示すように、着用者の肌に近い側に位置する肌側繊維層23と、着用者の肌から遠い側に位置する非肌側繊維層24とを有する2層構造の不織布である。両繊維層23,24は、部分的に形成された多数の接合部25によって厚み方向Zに一体化されている。表面シート2Aにおいては、肌側繊維層23における複数の接合部25どうし間に位置する部分が、凸状に隆起して肌対向面側に中実の凸部21を形成し、接合部25を含む凸部21以外の部分が凹部22である。中実構造の凸部21は、大きさの異なる2種類の凸部21A,21Bを含む。大凸部21Aは、小凸部21Bに比して高さが高く且つ平面視における面積が大きい。両凸部21A,21Bは、何れも平面視において円形状をなし、また、縦方向X及び横方向Yの何れの方向での断面においても頂部を有する形状を有している。両凸部21A,21Bは、縦方向X及び横方向Yの双方に交差する方向に交互に配されている。また、複数の大凸部21Aが横方向Yに所定間隔を置いて間欠配置されて大凸部列を形成していると共に、複数の小凸部21Bが横方向Yに所定間隔を置いて間欠配置されて小大凸部列を形成しており、且つ該大凸部列と該小凸部列とが縦方向Xに交互に配されている。接合部25は、熱を伴うエンボス加工によって形成され、平面視X字状又はY字状をなしている。
表面シート2Aにおいて、肌側繊維層23は非熱収縮性繊維を主体とする不織布、非肌側繊維層24は、熱収縮性繊維を主体とする不織布である。肌側繊維層23の主体をなす非熱収縮性繊維としては、実質的に熱収縮性を有しないものか、前記熱収縮繊維よりも熱収縮温度が高い繊維を用いることができる。非肌側繊維層24の主体をなす熱収縮性繊維としては、熱可塑性ポリマー材料からなり且つ熱収縮性を有するものが好適に用いられる。そのような繊維の例としては、潜在捲縮性繊維が挙げられる。前記潜在捲縮性繊維は、加熱される前においては、従来の不織布用の繊維と同様に取り扱うことができ、且つ所定温度で加熱することによって螺旋状の捲縮が発現して収縮する性質を有する繊維である。非肌側繊維層24中の熱収縮性繊維の含有割合は40質量%以上100質量%以下であることが好ましい。前記潜在捲縮性繊維は、例えば、収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏心芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型の複合繊維からなる。その例としては、特開平9-296325号公報や特許第2759331号公報に記載のものが挙げられる。非肌側繊維層24は、例えば、前記潜在捲縮性繊維を含む繊維層を肌側繊維層23と熱融着させる時点か又は該熱融着後に、加熱により該潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させ、収縮させることで形成される。表面シート2Aの如き、肌対向面に大きさの異なる2種以上の凸部を有する凹凸不織布としては、例えば特開2015-186543号公報に記載のものを用いることができる。
前記サイドフラップ部は、図1に示すように、縦中央域Mにおいて横方向Yの外方に向かって大きく張り出しており、これにより吸収性本体5の縦方向Xに沿う左右両側に、一対のウイング部5W,5Wが延設されている。ウイング部5Wは、図1に示す如き平面視において、下底(上底よりも長い辺)が吸収性本体5の側部側に位置する略台形形状を有しており、その非肌対向面には、該ウイング部5Wをショーツ等の着衣に固定する固定手段としてのウイング部粘着部(図示せず)が設けられている。なお、ウイング部5Wは、ショーツ等の着衣のクロッチ部の非肌対向面(外面)側に折り返されて用いられるため、前記ウイング部粘着部の形成面であるウイング部5Wの非肌対向面は、その使用時には着用者の肌側に向けられ、肌対向面となる。また、吸収性本体5の非肌対向面すなわち裏面シート3の非肌対向面には、ナプキン1(吸収性本体5)をショーツ等の着衣に固定する固定手段としての本体粘着部(図示せず)が設けられている。前記ウイング部粘着部及び前記本体粘着部は、それぞれ、その使用前においてはフィルム、不織布、紙等からなる剥離シート(図示せず)によって被覆されている。また、吸収性本体5の肌対向面すなわち表面シート2の肌対向面における縦方向Xに沿う両側部には、平面視において吸収体4の縦方向Xに沿う左右両側部に重なるように、一対のサイドシート6,6が吸収性本体5の縦方向Xの略全長にわたって配されている。一対のサイドシート6,6は、それぞれ縦方向Xに延びる図示しない線状の接合部にて、接着剤等の公知の接合手段によって表面シート2等の他の部材に接合されている。
図4には、ナプキン1が具備する吸収体4の一実施形態である吸収体4Aが示され、図5~11には、吸収体4Aの具体例である吸収体4A1~4A5が示されている。吸収体4Aの前方域F及び後方域Rの横方向Yに沿う断面(横断面)は、それぞれ、図5~7に示す吸収体4A1、4A2又は4A3と同じであり得、また、吸収体4Aの縦方向Xに沿う断面(縦断面)は、図8に示す吸収体4A4又は図10に示す吸収体4A5と同じであり得、また、吸収体4Aの縦中央域Mの横断面は、図9に示す吸収体4A4又は図11に示す吸収体4A5と同じであり得る。
図12には、ナプキン1が具備する吸収体4の他の一実施形態である吸収体4Bが示され、図13~16には、吸収体4Bの具体例である吸収体4B1~4B4が示されている。吸収体4Bは、縦中央域Mの吸収性コア40に後述する溝状凹部42が存在する点で吸収体4Aと異なるが、それ以外は吸収体4Aと同様に構成されている。吸収体4Bの前方域F及び後方域Rの横断面は、それぞれ、図5~7に示す吸収体4A1、4A2又は4A3と同じであり得、また、吸収体4Bの縦断面は、図8に示す吸収体4A4又は図10に示す吸収体4A5と同じであり得、また、吸収体4Bの縦中央域Mの横断面は、図13~16に示す吸収体4B1、4B2、4B3又は4B4と同じであり得る。
図17には、ナプキン1が具備する吸収体4の他の一実施形態である吸収体4Cが示されている。吸収体4Cは、縦中央域Mの吸収性コア40の溝状凹部42のパターン(平面視形状及び配置)以外は、吸収体4B(図12参照)と同様に構成されている。
なお、吸収体4は、ナプキン1に組み込まれた状態では、図2に示すように、後述する表面凹陥部7及び裏面凹陥部8が形成されているが、図4~17に示す吸収体では、これら凹陥部7,8の図示を省略している。以下では、吸収体4A、4A1、4B、4B1、4Cなどの、本発明に係る吸収体の実施形態を総合して「吸収体4」ともいう。
吸収体4が具備する吸収性コア40には、図4~7及び図12~17に示すように、該吸収性コア40の肌対向面45及び非肌対向面46の少なくとも一方に開口を有し且つ所定方向に延在する、溝状凹部42が存在する。溝状凹部42は、吸収性コア40を構成する材料(コア形成材料)が存在しない空間部である。ここでいう、「コア形成材料が存在しない」には、コア形成材料が全く存在しない形態のみならず、空間部として認識できる程度のごく少量のコア形成材料が存在する形態も包含される。
本発明において、溝状凹部42は、前方域Fの吸収性コア40(吸収性コア40における前方域Fに位置する部分)及び後方域Rの吸収性コア40(吸収性コア40における後方域Rに位置する部分)の少なくとも一方に存在する。すなわち、前方域F及び後方域Rの吸収性コア40の少なくとも一方は、溝状凹部42が存在する溝状凹部存在領域を有している。縦中央域Mの吸収性コア40(吸収性コア40における縦中央域Mに位置する部分)は、後述する所定の条件を満たすことを前提として、溝状凹部42が存在する溝状凹部存在領域を有していてもよく、あるいは溝状凹部42が存在せず溝状凹部存在領域を有していなくてもよい。
前記溝状凹部存在領域においては、溝状凹部42が1つのみ配置されているか、又は溝状凹部42が複数分散配置されている。典型的には後者であり、吸収体4Aないし4Cも後者である。例えば、前方域F又は後方域Rに溝状凹部42が1つのみ配置されている場合、その1つの溝状凹部42自体が溝状凹部存在領域である。また、前方域F又は後方域Rに溝状凹部42が複数分散配置されている場合、特に図示の形態のように、その複数の溝状凹部42が、縦方向Xに延びる縦凹部42Xと、これに交差(直交)する方向に延びる横凹部42Yとを含む場合、その複数の溝状凹部42からなる溝状凹部存在領域の範囲は、前方域F及び後方域Rのそれぞれにおいて、縦方向Xの最も前方に位置する溝状凹部42の前端から最も後方に位置する溝状凹部42の後端までを縦方向長さとし、横方向Yの一方側の最も外側に位置する溝状凹部42の外側縁から、横方向Yの他側の最も外側に位置する溝状凹部42の外側縁までを横方向長さとする、平面視四角形の範囲である。
吸収体4Aにおいては、図4に示すように、溝状凹部42は、前方域F及び後方域Rの双方の吸収性コア40に存在し、縦中央域Mの吸収性コア40には存在していない(図9及び図11参照)。吸収体4Aにおいては、前方域F及び後方域Rそれぞれの全域が前記溝状凹部存在領域である。
吸収体4Bにおいては、図12に示すように、溝状凹部42は、前方域F及び後方域Rの吸収性コア40のみならず、縦中央域Mの吸収性コア40にも存在している。より具体的には、吸収体4Bにおいては、吸収性コア40の全体に溝状凹部42が存在し、後述する縦中央域Mの吸収性コア40の肉厚部47に溝状凹部42が存在している(図13~16参照)。斯かる吸収体4Bの構成は、吸収体4Cも有している(図17参照)。吸収体4B,4Cにおいては、その全域が前記溝状凹部存在領域である。
溝状凹部42には、吸収性コア40を厚み方向に貫通していない非貫通型と、吸収性コア40を厚み方向に貫通する貫通型とが包含される。前方域F、縦中央域M及び後方域Rそれぞれにおいて、溝状凹部42は、貫通型でもよく、非貫通型でもよい。吸収性コア40に貫通型の溝状凹部42と非貫通型の溝状凹部42とが混在してもよいが、典型的には、どちらか一方の溝状凹部42のみが存在する。
吸収体4A1(図5参照)、吸収体4B1(図13参照)及び吸収体4B2(図14参照)において、溝状凹部42は非貫通型であり、吸収性コア40の非肌対向面46に開口を有するとともに、該開口とは反対側に底部を有する。非貫通型の溝状凹部42の底部は、吸収性コア40の平面視(吸収性コア40の厚み方向の投影視)において該溝状凹部42と重なる部分であり、コア形成材料を含んで構成される。
吸収体4A2(図6参照)、吸収体4B3(図15参照)及び吸収体4B4(図16参照)において、溝状凹部42は非貫通型であり、吸収性コア40の肌対向面45に開口を有するとともに、該開口とは反対側に底部を有する。
吸収体4A3(図7参照)において、溝状凹部42は貫通型であり、底部を有していない。吸収性コア40における平面視で貫通型の溝状凹部42と重なる部分は、その全体が空間部であり、いわゆる貫通孔である。
溝状凹部42が非貫通型の場合、吸収性コア40の溝状凹部42の存在領域(吸収体4Aでは前方域F及び後方域Rの吸収性コア40、吸収体4B,4Cでは吸収性コア40全体)の肌対向面45側又は非肌対向面46側には、該溝状凹部42の存在領域の面方向(厚み方向と直交する方向)の全域にわたって溝状凹部42が存在しない連続層44が偏在する(図5、図6、図13~16参照)。連続層44における、平面視(すなわち吸収体4の厚み方向の投影視)で溝状凹部42(縦凹部42X、横凹部42Y)と重なる部分は、非貫通型の溝状凹部42の底部を構成する。複数の小吸収部43は、連続層44を介して一体となっている。
吸収体4A1(図5参照)、吸収体4B1(図13参照)及び吸収体4B2(図14参照)では、連続層44が吸収性コア40の肌対向面45側に偏在しており、肌対向面45は、連続層44によって形成され実質的に凹凸の無い平坦面であるのに対し、非肌対向面46は、溝状凹部42の開口からなる凹部と小吸収部43からなる凸部とで構成される凹凸形状を有し、凹凸面である。一方、吸収体4A2(図6参照)、吸収体4B3(図15参照)及び吸収体4B4(図16参照)では、連続層44が吸収性コア40の非肌対向面46側に偏在しているため、吸収性コア40の肌対向面45は凹凸面、非肌対向面46は平坦面である。
吸収体4A3(図7参照)では、溝状凹部42が貫通型であるため、吸収性コア40の溝状凹部42の存在領域には連続層44は存在しない。したがって、吸収体4A3における複数の小吸収部43は一体となっておらず、それぞれ分離可能に個々独立に存在している。これら複数の小吸収部43は、それぞれ、接着剤等の接合手段を介して、コアラップシート41に接合されており、これにより、複数の小吸収部43の所定の配置が維持されている。
吸収性コア40において、溝状凹部42と平面視で重なる部分は、その周囲(具体的には後述する小吸収部43)に比べて坪量が低い、すなわち周囲に比べてコア形成材料の単位面積当たりの質量が少ない。ここでいう「坪量が低い」には、貫通型の溝状凹部42のように、溝状凹部42と平面視で重なる部分にコア形成材料が存在せず、該部分の坪量がゼロの場合を含む。
本発明において、溝状凹部42は、図4及び図12に示すように、縦方向Xに延びる縦凹部42Xと、該縦凹部42Xと交差する方向に延びる横凹部42Yとを有し、吸収性コア40における、縦凹部42Xの開口及び横凹部42Yの開口が形成されている面側が、複数の小吸収部43に区分されている。より具体的には、吸収体4においては、複数の縦凹部42Xが横方向Yに間欠配置されているとともに、複数の横凹部42Yが縦方向Xに間欠配置されており、複数の縦凹部42Xと複数の横凹部42Yとが直交しており、小吸収部43は、図4及び図12に示す如き平面視において四角形形状を有している。
本発明において、(A)縦中央域Mの吸収性コア40には小吸収部43が存在しないか、又は(B)縦中央域Mの吸収性コア40に小吸収部43が存在し、且つ前方域F若しくは後方域Rと縦中央域Mとで小吸収部43の面積が異なる。
吸収体4Aは前記(A)の形態の具体例である。吸収体4Aでは、図4に示すように、複数の縦凹部42Xは、それぞれ、前方域F又は後方域Rの吸収性コア40の縦方向Xの一端から他端にわたって連続し、複数の横凹部42Yは、それぞれ、吸収性コア40の横方向Yの一端から他端にわたって連続している。吸収体4Aでは、縦中央域Mの吸収性コア40に溝状凹部42(縦凹部42X、横凹部42Y)が存在せず、自ずと、小吸収部43も存在しない。吸収体4Aでは、前方域Fと後方域Rとで小吸収部43の面積は同じである。
前記の「小吸収部の面積」とは、吸収性コア40を、該吸収性コア40における溝状凹部42の開口形成面側から平面視した場合の、小吸収部43の面積である。例えば図5に示す吸収体4A1では、吸収性コア40の非肌対向面46が溝状凹部42の開口形成面であるので、吸収体4A1における小吸収部43の面積は、該非肌対向面46側から平面視した場合のものである。なお、図7に示す吸収体4A3のように、溝状凹部42が貫通型の場合、すなわち吸収性コア40の肌対向面45及び非肌対向面46の双方が溝状凹部42の開孔形成面である場合、小吸収部43の面積は、肌対向面45側から平面視した場合及び非肌対向面46側から平面視した場合のうち、該面積が大きい方とする。
また、前記の「小吸収部の面積が同じ」とは、比較する2つの領域のうちの一方(例えば前方域F)における複数の小吸収部43のうちで面積が最小のものの面積(最小面積)と、他方(例えば後方域R)における複数の小吸収部43のうちで面積が最大のものの面積(最大面積)とを比較した場合において、前者(最小面積)と後者(最大面積)との比率が、前者/後者として、0.7以上1以下である場合を意味し、好ましくは0.9以上1以下である。なお、所定領域(前方域F、縦中央域M、後方域R)における複数の小吸収部43から最大面積、最小面積を選択するに際しては、その複数の小吸収部43はそれぞれ実質的に欠損の無いものとし、例えば吸収性コア40の周縁と平面視で重なるなどして一部欠損している小吸収部43を含まないものとする。
吸収体4B,4Cは何れも前記(B)の形態の具体例である。吸収体4B,4Cでは、図12及び図17に示すように、複数の縦凹部42Xは、それぞれ、前方域F、縦中央域M又は後方域Rの吸収性コア40の縦方向Xの一端から他端にわたって連続し、複数の横凹部42Yは、それぞれ、吸収性コア40の横方向Yの一端から他端にわたって連続している。吸収体4B,4Cでは、前方域F、縦中央域M及び後方域Rそれぞれに小吸収部43が複数散在しているところ、前方域Fと後方域Rとで小吸収部43の面積は同じであるが、前方域F又は後方域Rと縦中央域Mとでは小吸収部43の面積が異なる。
吸収体4B,4Cでは、図12及び図17に示すように、縦中央域Mは、前方域F及び後方域Rに比べて、小吸収部43の面積が大きい。すなわち、前方域F又は後方域Rにおいて面積が最小の小吸収部43の面積(最小面積)と、縦中央域Mにおいて面積が最大の小吸収部43の面積(最大面積)とを比較した場合において、前者(最小面積)と後者(最大面積)との比率が、前者/後者として、好ましくは0.7未満、より好ましくは0.5以下である。吸収体4B(図12参照)では、縦中央域Mの複数の小吸収部43(欠損しているものを除く)は互いに面積が同じあるため、各小吸収部43の面積が「最大面積」であるのに対し、吸収体4C(図17参照)では、縦中央域Mの複数の小吸収部43どうしで面積が異なり、具体的には、縦中央域Mの中央に位置する小吸収部43が最も面積が大きいので、この中央の小吸収部43の面積が「最大面積」である。
吸収体4A1(図5参照)、吸収体4B1(図13参照)及び吸収体4B2(図14参照)では、吸収性コア40の非肌対向面46側が、互いに直交する複数の縦凹部42X及び横凹部42Yによって複数の小吸収部43に区分されている。
吸収体4A2(図6参照)、吸収体4B3(図15参照)及び吸収体4B4(図16参照)では、吸収性コア40の肌対向面45側が、互いに直交する複数の縦凹部42X及び横凹部42Yによって複数の小吸収部43に区分されている。
吸収体4A3(図7参照)では、前方域F又は後方域Rの吸収性コア40の全体が、互いに直交する複数の縦凹部42X及び横凹部42Yによって複数の小吸収部43に区分されている。
吸収性コア40における溝状凹部42は、コア形成材料が全く存在しないか又はごく少量しか存在しないので、折れ曲がりの起点となり易い。更に、溝状凹部42と平面視で重なる部分(以下、「溝状凹部42の存在部」ともいう。)は、溝状凹部42が非貫通型の場合は、周囲に比べてコア形成材料が少ない部分、溝状凹部42が貫通型の場合は、コア形成材料が存在しない空間部であり、何れのタイプの溝状凹部42であっても、溝状凹部42の非存在部(小吸収部43)に比べて剛性が低く、そのため、ナプキン1の着用時において、吸収性コア40が屈曲するときの可撓軸となりやすく、屈曲誘導部として作用し得る。したがって、吸収体4(吸収性コア40)は、ナプキン1の着用時において、溝状凹部42を屈曲誘導部として着用者の身体形状の沿うように変形することが可能である。そのため、ナプキン1はフィット性に優れ、着用者に良好な着用感を与えるとともに、経血等の体液の漏れが効果的に抑制し得る。また、吸収性コア40に、溝状凹部42が縦方向X及び横方向Yに延在していることにより、溝状凹部42が形成されていない場合に比べて、体液の吸収時間の短縮化が図られるとともに、体液の面方向への拡散性が向上し、ナプキン1の液吸収性が向上し得る。
溝状凹部42を有する吸収性コア40は、この種の吸収性物品の吸収性コアの製造方法と同様に、公知の積繊装置を用いて製造することができる。積繊装置は、典型的には、外周面に集積用凹部を有する回転ドラムを備え、回転ドラムを回転させつつ、その外周面にコア形成材料を飛散状態にて供給し、コア形成材料を集積用凹部の底面からの吸引により集積用凹部内に積繊させ、この集積用凹部内の積繊物を、集積用凹部に対向配置させた吸引手段からの吸引により集積用凹部から離型して、吸引手段上に転写する装置である。斯かる構成の積繊装置において、集積用凹部の通気性の底面の一部に非又は難通気性部材を配置する等して、該底面の一部を非又は難通気性部とすることにより、コア形成材料の積繊時に該非又は難通気性部にコア形成材料が積繊し難くなり、該非又は難通気性部におけるコア形成材料の積繊量が、該底面の他の部位に比して少なくなる。したがってこのような、集積用凹部の底面の一部が非又は難通気性部となっている回転ドラムを備えた積繊装置を用いて常法に従って吸収性コアを製造することにより、該非又は難通気性部に対応する部位が溝状凹部42、該底面の他の部位に対応する部位が小吸収部43となり、溝状凹部42を有する吸収性コア40が得られる。
このように、集積用凹部にコア形成材料を吸引する際の吸引力を部分的に異ならせることによって形成された吸収性コア40は、コア形成材料の積繊量が部分的に異なり、具体的には、溝状凹部42の存在部(吸収性コア40における溝状凹部42と平面視で重なる部分)は、コア形成材料の単位面積当たりの質量(坪量)が相対的に小さく(坪量ゼロを含む)、溝状凹部42の非存在部すなわち小吸収部43は、該坪量が相対的に大きい。
吸収性コア40が溝状凹部42及び小吸収部43を有することによる作用効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、吸収性コア40の各部の寸法等は以下のように設定することが好ましい。
溝状凹部42の長さ方向と直交する方向の長さ(幅)、例えば、縦方向Xに延びる縦凹部42Xであれば、横方向Yの長さ(幅)は、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは3.0mm以上、そして、好ましくは10.0mm以下、より好ましくは5.0mm以下である。
図4、図12及び図17に示す如き小吸収部43、すなわち「互いに交差(直交)する溝状凹部42X,42Yによって区分された小吸収部43」、換言すれば「溝状凹部42で包囲された小吸収部43」の面積は、好ましくは25mm2以上、より好ましくは50mm2以上、そして、好ましくは1000mm2以下、より好ましくは500mm2以下である。
小吸収部43の単位面積2500mm2当たりの数は、好ましくは2個以上、より好ましくは5個以上、そして、好ましくは100個以下、より好ましくは50個以下である。
小吸収部43(吸収性コア40における小吸収部43と平面視で重なる部分)の坪量は、その周囲の「吸収性コア40における溝状凹部42と平面視で重なる部分」の坪量よりも大きいことを前提として、好ましくは150g/m2以上、より好ましくは200g/m2以上、そして、好ましくは800g/m2以下、より好ましくは750g/m2以下である。
連続層44の単位面積当たりの質量(坪量)は、好ましくは30g/m2以上、より好ましくは50g/m2以上、そして、好ましくは160g/m2以下、より好ましくは150g/m2以下である。
吸収性コア40の溝状凹部42の存在領域の肌対向面45側又は非肌対向面46側に、該存在領域の面方向の全域にわたって溝状凹部42が存在しない連続層44が偏在する場合(図5~6及び図13~16参照)、溝状凹部42の深さD(図5及び図13参照)は、吸収性コア40の厚みT(図5及び図13参照)に対して、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、そして、好ましくは98%以下、より好ましくは80%以下である。
吸収性コア40は、コア形成材料を主体として構成される。コア形成材料には少なくとも、吸水性繊維12Fと、繊維11Fを含む繊維塊11とが含まれる。繊維塊11の構成繊維11Fは、典型的には合成繊維である。ナプキン1における吸収性コア40は、図5等に示すように、繊維塊11及び吸水性繊維12Fに加えて更に、粒子状の吸水性ポリマー13を含有する。
ナプキン1の主たる特徴部分の1つとして、吸収体4の主体をなす吸収性コア40が繊維塊11を含有する点が挙げられる。以下では、主に吸収性コア40について説明するが、吸収性コア40は、実質的には吸収体4そのものとも言えるものであり、以下の吸収性コア40についての説明は、特に断らない限り、吸収体4の説明として適宜適用される。本発明に係る吸収体には、コアラップシートを含まず吸収性コアのみで構成された形態が包含されるところ、斯かる形態の吸収体では、吸収体と吸収性コアとは同じ意味である。
本明細書において「繊維塊」とは、複数の繊維がまとまって一体となった繊維集合体のことである。本発明で用いる繊維塊はその製造方法を問わず、例えば、一定の大きさを有する合成繊維シートをカッター等により切断して得られたシート片の如き、定形の繊維集合体でもよく、あるいは、特許文献2に記載の不織布片の如き、合成繊維を主体とする不織布を細片状に粉砕し、あるいはむしり取ったり引きちぎり取ったりして製造された不定形の繊維集合体でもよい。本発明では、吸収体(吸収性コア)は、i)繊維塊として定形の繊維集合体のみを含む形態でもよく、ii)繊維塊として不定形の繊維集合体のみを含む形態でもよく、あるいはiii)繊維塊として定形の繊維集合体と不定型の繊維集合体とが混ざった形態でもよいが、好ましくは前記i)の形態が用いられる。不定形の繊維集合体は、構成繊維がランダムに配向しているために、表面のあちこちから繊維が突出するなどして表面が荒れているため、該繊維集合体同士がそれらの全面に亘って絡み合い、その結果、各繊維集合体の動きの自由度が制限されて柔軟性が低下するおそれがある。本実施形態の繊維塊11は、後述するように定形の繊維集合体である。
繊維塊11は、前述したとおり、複数の繊維11Fが塊状に集積されて一体化された繊維集合体であり、その形態を保持した状態で吸収性コア40中に複数存在する。そして繊維塊11は、その繊維集合体の形態に起因して、主として、吸収性コア40の柔軟性、クッション性、圧縮回復性、保形性の向上に寄与する。
吸水性繊維12Fは、吸収性コア40中に複数存在しており、それら複数の吸水性繊維12Fは互いに交絡し得るものの、繊維塊11の構成繊維11Fのように集積されておらず、個々独立に存在することが好ましい。吸水性繊維12Fは主として、吸収性コア40の液吸収性の向上に寄与し、また、吸収性コア40の保形性の向上にも寄与する。
吸水性繊維12Fとしては、この種の吸収性物品の吸収体の形成材料として従来使用されている吸水性繊維を用いることができ、例えば、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材パルプ、綿パルプや麻パルプ等の非木材パルプ等の天然繊維;カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。吸水性繊維12Fの主たる役割が吸収体4の液吸収性の向上である点に鑑みれば、吸水性繊維12Fとしては、セルロース系繊維が特に好ましい。
吸水性ポリマー13は、吸水性ポリマーの小片として吸収性コア40中に複数存在し、主として、吸収性コア40内の液吸収性の向上に寄与する。吸水性ポリマー13の小片の形状は特に制限されず、例えば、球状、塊状、俵状、繊維状、不定形状であり得る。吸水性ポリマー13の平均粒子径は、好ましくは10μm以上、より好ましくは100μm以上、そして、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下である。吸水性ポリマー13としては、一般に、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物を用いることができる。その例としては、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリメタクリル酸及びその塩が挙げられ、具体的には、アクアリックCA、アクアリックCAW(ともに(株)日本触媒社製)等のアクリル酸重合体部分ナトリウム塩が挙げられる。
吸収性コア40においては、複数の繊維塊11と吸水性繊維12Fとが単に混在しているだけでなく、繊維塊11同士又は繊維塊11と吸水性繊維12Fとが互いに交絡している。なお、後述するように、ナプキン1においては、吸収体4の肌対向面及び非肌対向面に凹陥部7,8が形成されているところ(図2等参照)、以下の繊維塊11同士等の「交絡」についての説明は、特に断らない限り、吸収性コア40における凹陥部7,8が形成されていない部分(低密度部9)について適用される。吸収性コア40における凹陥部7,8の形成部は、繊維塊11同士等が交絡している場合があり得るが、凹陥部7,8の形成方法如何によっては、繊維塊11同士等が交絡していない場合があり得る。
吸収性コア40においては、複数の繊維塊11が吸収性コア40中の構成繊維(繊維11F,12F)との絡み合いによって結合して1つの繊維塊連続体を形成している。また、複数の繊維塊11同士が交絡しているとともに、繊維塊11と吸水性繊維12Fとが交絡して結合していてもよい。更に通常は、複数の吸水性繊維12F同士も互いに交絡している。吸収性コア40に含有されている複数の繊維塊11の少なくとも一部は、他の繊維塊11あるいは吸水性繊維12Fと交絡している。吸収性コア40においては、それに含有されている複数の繊維塊11の全部が互いに交絡して1つの繊維塊連続体を形成している場合があり得るし、複数の繊維塊連続体が互いに非結合の状態で混在している場合があり得る。
吸収性コア40においては、吸収性コア40の柔軟性などを高め得る繊維塊11が含有されていることに加え、繊維塊11同士又は繊維塊11と吸水性繊維12Fとの間も互いに交絡によって結合しているため、吸収性コア40は外力への即応性が一層優れ、柔軟性、クッション性、圧縮回復性に優れる。吸収性コア40は、ナプキン1の着用時に様々な方向から受ける外力(例えばナプキン1の着用者の体圧)に対してしなやかに変形し、ナプキン1を着用者の身体にフィット性よく密着させ得る。このような吸収性コア40の優れた変形-回復特性は、吸収性コア40が圧縮された場合のみならず、ねじれた場合でも同様に発現し得る。すなわち、ナプキン1に組み込まれた吸収性コア40は、ナプキン1の着用時において着用者の両大腿部間に挟まれた状態で配置されるため、着用者の歩行動作の際の両大腿部の動きによって、縦方向Xに延びる仮想的な回転軸周りにねじられる場合があるが、そのような場合でも、吸収性コア40は高い変形-回復特性を備えているため、両大腿部からのねじれを促すような外力に対して容易に変形・回復し、したがってヨレにくく、ナプキン1に着用者の身体に対する高いフィット性を付与し得る。
吸収性コア40では、繊維塊11同士又は繊維塊11と吸水性繊維12Fとが交絡しているところ、ここでいう、繊維塊11同士等の「交絡」には、下記形態A及びBが包含される。
形態A:繊維塊11同士等が、融着ではなく、繊維塊11の構成繊維11F同士の絡み合いによって結合している形態。
形態B:吸収性コア40の自然状態(外力が加わっていない状態)では、繊維塊11同士等は結合していないが、吸収性コア40に外力が加わった状態では、繊維塊11同士等が構成繊維11F同士の絡み合いによって結合し得る形態。ここでいう、「吸収性コア40に外力が加わった状態」とは、例えば、吸収性コア40が適用された吸収性物品(本実施形態ではナプキン1)の着用中において、吸収性コア40に変形力が加わった状態である。
このように、吸収性コア40においては、形態Aのように、繊維塊11は、他の繊維塊11又は吸水性繊維12Fと、繊維同士の絡み合いすなわち「交絡」によって結合している他、形態Bのように、他の繊維塊11又は吸水性繊維12Fと交絡し得る状態でも存在している。斯かる繊維の交絡による結合が、前述した吸収性コア40の作用効果を一層有効に発現するのに重要なポイントの1つとなっている。特に、吸収性コア40は、形態Aの「交絡」を有している方が保形性の点から好ましい。繊維の交絡による結合は、接着成分や融着が無く、繊維同士の絡み合いのみによってなされているため、繊維の融着による結合に比して、交絡している個々の要素(繊維塊11、吸水性繊維12F)の動きの自由度が高く、そのためその個々の要素は、それらからなる集合体としての一体性を維持し得る範囲で移動し得る。このように、吸収性コア40は、それに含有されている複数の繊維塊11同士あるいは繊維塊11と吸水性繊維12Fとが比較的ゆるく結合していることで、外力を受けたときに変形が可能な、緩やかな保形性を有しており、保形性とクッション性及び圧縮回復性等とが高いレベルで両立されている。そして、斯かる高品質の吸収性コア40を具備するナプキン1は、着用者の身体にフィット性良く密着し、着用感に優れる。
吸収性コア40における繊維塊11を介した結合態様の全てが「交絡」である必要はなく、吸収性コア40の一部に交絡以外の他の結合態様、例えば接着剤による接合などが含まれていてもよい。ただし、例えば公知の防漏溝等、吸収性物品の他の部材と一体となった結果として吸収性コア40に形成された「繊維塊11を介した融着」を吸収性コア40から排除した残りの部分、すなわち、未加工の吸収性コア40そのものでは、繊維塊11同士の結合、又は繊維塊11と吸水性繊維12Fとの結合が「繊維の交絡」のみでなされていることが望ましい。
吸収性コア40においては、繊維塊11は、吸収性コア40の全体に均一に分布していない。具体的には「繊維塊11及び吸水性繊維12Fの合計含有質量に対する繊維塊11の含有質量の比率」(以下、「繊維塊占有率」ともいう。)として規定すると、吸収性コア40の各部の繊維塊占有率は、前方域F及び後方域Rよりも縦中央域Mの方が大きい。
繊維塊占有率は、吸収性コア40(吸収体4)の所定の測定対象部位について、該測定対象部位に存する繊維塊11及び吸水性繊維12Fそれぞれの含有量を質量で測定し、そうして測定された繊維塊11の含有質量を、吸水性繊維12F及び繊維塊11それぞれの含有質量の合計値で除して100分率で表したものである。すなわち、繊維塊占有率(質量%)={繊維塊11の含有質量/(吸水性繊維12Fの含有質量+繊維塊11の含有質量)}×100である。
ナプキン1は、前述した構成を有することにより、すなわち、1)前方域F及び後方域Rの少なくとも一方の吸収性コア40に溝状凹部42が存在することで複数の小吸収部43が存在し、縦中央域Mの吸収性コア40については、2-1)溝状凹部42が存在せず小吸収部43も存在しないか、又は2-2)溝状凹部42が存在することで複数の小吸収部43が存在するとともに、前方域F及び後方域Rの少なくとも一方と縦中央域Mとで小吸収部43の面積が異なり、3)吸収性コア40が、合成繊維11Fを含む繊維塊11と吸水性繊維12Fとを含有し、4)複数の繊維塊11同士又は繊維塊11と吸水性繊維12Fとが互いに交絡しており、且つ5)「縦中央域Mの吸収性コア40の繊維塊占有率>前方域F及び後方域Rそれぞれの吸収性コア40の繊維塊占有率」なる大小関係が成立していることにより、着用時にヨレにくく、着用感が良好で、液吸収性に優れる。
より具体的には、吸収性コア40は、少なくとも前方域F及び後方域Rに屈曲誘導部(可撓軸)として作用し得る溝状凹部42が存在することに起因して、ナプキン1の着用時に着用者の身体形状に沿って変形しやすい。また、溝状凹部42は、経血等の体液の導通路及び体液を一時的に保持するストック層として機能し、体液の面方向への拡散を促進する。
また、吸収性コア40においては、前記の「縦中央域Mの吸収性コア40の繊維塊占有率>前方域F及び後方域Rそれぞれの吸収性コア40の繊維塊占有率」なる大小関係の成立により、縦中央域Mの吸収性コア40は、前方域F及び後方域Rと比べて、パルプ繊維などの一般的なコア形成材料よりもクッション性等に優れる状態で繊維塊11を相対的に多く含有しているため、吸収性コア40の他の部位よりも着用者の身体に対する密着性やクッション性を良好に発揮し易い。そのため、縦中央域Mの吸収性コア40は、ナプキン1の着用者の身体の動きに追従性良く密着することができ、それによってナプキン1の着用感及び液吸収性が向上し得る。また、縦中央域Mの吸収性コア40は、通常、ナプキン1の着用時において着用者の両大腿部間に挟まれるため、着用者の歩行動作の際の両大腿部の動きによって、縦方向Xに延びる仮想的な回転軸周りにねじられやすく、前方域Fや後方域Rの吸収性コア40に比して、外力が強く作用しやすく、本来的にヨレが生じやすい部位であるが、ナプキン1では前記の大小関係が成立し、クッション性、圧縮回復性、保形性などの向上に寄与し得る繊維塊11が縦中央域Mの吸収性コア40に比較的多く配置されているため、着用時に吸収体4がヨレる不都合が効果的に防止される。特にナプキン1においては、吸収体4が、繊維塊11及び吸水性繊維12Fをはじめとするコア形成材料を含有する吸収性コア40と、吸収性コア40の外面を被覆するコアラップシート41とを具備することで、コア形成材料が一体化されているため、前述した繊維塊11の偏在による作用効果と相俟って、ナプキン1の着用時における吸収体4のヨレがより一層確実に防止され得る。
また、繊維塊11の構成繊維11Fは、合成繊維を含んでいる。合成繊維は吸水性繊維と比べて吸水性が低いため、体液を吸収して湿潤後も保形性に優れ、したがってナプキン1は、体液を吸収した後も、繊維塊11による作用効果を発現し得る。また、吸収性コア40においては複数の繊維塊11同士又は繊維塊11と吸水性繊維12Fとが互いに交絡しているため、吸収性コア40はこの点でも保形性に優れており、乾燥状態はもとより、体液を吸収して湿潤状態となった後もヨレにくい。以上の作用効果が相俟って、ナプキン1は優れたフィット性、着用感及び液吸収性を発揮し得る。
なお、本発明において、縦中央域Mの吸収性コア40における小吸収部43(溝状凹部42)に関して、前記の2-1)又は2-2)の形態を採用している理由は、縦中央域Mの吸収性コア40の密着性やクッション性等を高めるためである。すなわち吸収性コア40において、縦中央域Mは、繊維塊占有率が前方域F及び後方域Rよりも大きいため、前方域F及び後方域Rよりも繊維塊11の機能が発揮し易い部位であるところ、このような吸収性コア40に前記の2-1)又は2-2)の形態を採用することにより、前方域F及び後方域Rは外力に対して相対的に変形しやすくなり、縦中央域Mは外力に対して相対的に変形しにくくなる。したがって、ナプキン1の着用時には、前方域F及び後方域Rが溝状凹部42によって自由に変形することで、外力が縦中央域Mに伝わるのを阻害しつつ、縦中央域Mは変形しにくい構造なので、縦中央域Mでの着用者への密着性とクッション性が有効に発揮される。縦中央域Mの吸収性コア40に小吸収部43を設ける場合は、吸収体4B(図12参照)及び吸収体4C(図17参照)のように、縦中央域Mは、前方域F及び後方域Rに比べて、小吸収部43の面積が大きいことがより好ましい。
前述した作用効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、縦中央域Mの吸収性コア40の繊維塊占有率は、前方域F及び後方域Rそれぞれのそれよりも高いことを前提として、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
前方域F及び後方域Rの吸収性コア40の繊維塊占有率は、それぞれ、縦中央域Mのそれよりも低いことを前提として、好ましくは50質量%以下、より好ましくは10質量%以下であり、0質量%、すなわち吸水性繊維12Fを含有する代わりに繊維塊11を全く含有しなくてもよい。また、前方域Fの吸収性コア40と後方域Rの吸収性コア40とで繊維塊占有率は同じでもよく、異なっていてもよい。
前方域F、縦中央域M及び後方域Rそれぞれの吸収性コア40において、繊維塊占有率は縦方向Xにおいて変化せずに一定でもよく、あるいは前方域F及び後方域Rそれぞれから縦中央域Mに向かうに従って漸次増加してもよい。例えば、前方域F及び後方域Rそれぞれの吸収性コア40においては、縦方向Xの外方から内方に向かうに従って繊維塊占有率が漸次増加し、縦中央域Mの吸収性コア40においては、縦方向Xに関しては変化せずに一定である形態でもよい。斯かる形態において、縦中央域Mの吸収性コア40は、縦方向X以外の他の方向、例えば厚み方向に関しては繊維塊占有率が変化し得る。
吸収性コア40において、繊維塊11の分布は、前記の「縦中央域Mの繊維塊占有率>前方域F及び後方域Rそれぞれの繊維塊占有率」なる大小関係が成立することを前提として特に限定されず、例えば、前方域F、縦中央域M及び後方域Rそれぞれにおいて、繊維塊11が全体に均一に分布してもよく、一部に偏在してもよい。後者の場合、繊維塊11は、吸収性コア40の厚み方向の一部(例えば、肌対向面45側又は非肌対向面46側)に偏在してもよい。図5~7に示す吸収体4では、繊維塊11が他のコア形成材料(吸水性繊維12F及び吸水性ポリマー13)とともに、前方域F又は後方域Rの吸収性コア40の全体に均一に分布している。図9、図11及び図13~16に示す吸収体4では、繊維塊11が縦中央域Mの吸収性コア40の肌対向面45側又は非肌対向面46側に偏在している。繊維塊11が偏在している形態に関して更に具体的に説明すると、図9、図13及び図15に示す形態では、縦中央域Mにおいて繊維塊11が吸収性コア40の肌対向面45側に偏在(吸水性繊維12F及び吸水性ポリマー13が非肌対向面46側に偏在)し、図11、図14及び図16に示す形態では、縦中央域Mにおいて繊維塊11が吸収性コア40の非肌対向面46側に偏在(吸水性繊維12F及び吸水性ポリマー13が肌対向面45側に偏在)している。
なお、本明細書において、「肌対向面側」は、当該領域(例えば、前方域F、縦中央域M又は後方域R)の吸収性コア40を厚み方向に二等分した場合の肌対向面45寄りの部位であり、「非肌対向面側」は、斯かる場合の非肌対向面46寄りの部位である。
縦中央域Mの吸収性コア40において、繊維塊占有率は、肌対向面45側よりも非肌対向面46側の方が大きいことが好ましい。このように、縦中央域Mの吸収性コア40の厚み方向に関して繊維塊占有率について特定の大小関係が成立することにより、クッション性やヨレにくさの向上効果などの、主に繊維塊11による作用効果が増強され、前述した構成、特に「縦中央域Mの繊維塊占有率>前方域F及び後方域Rそれぞれの繊維塊占有率」なる大小関係の成立による作用効果と相俟って、ヨレにくさ及び着用感が一層向上し得る。またこの場合、縦中央域Mの吸収性コア40の肌対向面45側は、非肌対向面46側に比べて、吸水性繊維12Fの単位面積当たりの質量(坪量)が大きくなり得るところ、吸収性コア40においてナプキン1の着用者が排泄した体液を最初に受ける部位である、縦中央域Mの吸収性コア40の肌対向面45側に、吸水性に優れる吸水性繊維12Fが比較的多量に含有されていることにより、この部位の液引き込み力(毛管力)が向上し、延いては吸収性コア40の液吸収性が向上する。
縦中央域Mにおいて、吸収性コア40の非肌対向面46側の繊維塊占有率は、吸収性コア40の肌対向面45側のそれよりも高いことを前提として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%、すなわち非肌対向面46側は、繊維塊11を含有する代わりに吸水性繊維12Fを全く含有しなくてもよい。
縦中央域Mにおいて、吸収性コア40の肌対向面45側の繊維塊占有率は、非肌対向面46側のそれよりも低いことを前提として、好ましくは50質量%以下、より好ましくは10質量%以下であり、0質量%、すなわち吸水性繊維12Fを含有する代わりに繊維塊11を全く含有しなくてもよい。
縦中央域Mの吸収性コア40で前記の「非肌対向面46側の繊維塊占有率>肌対向面45側の繊維塊占有率」なる大小関係が成立する場合、1)肌対向面45側及び非肌対向面46側それぞれにおいて、繊維塊占有率は厚み方向に変化せずに一定でもよく、あるいは、2)肌対向面45側から非肌対向面46側に向かうに従って繊維塊占有率が漸次増加してもよい。前記2)の形態では、吸収性コア40の厚み方向において、吸収性コア40の肌対向面45及びその近傍では、繊維塊11は存在しないか又は縦中央域Mの吸収性コア40において最低の繊維塊占有率で存在し、吸収性コア40の非肌対向面46及びその近傍では、繊維塊11は縦中央域Mの吸収性コア40において最高の繊維塊占有率で存在する。吸収性コア40の前方域F及び後方域Rについても、前記1)又は2)の形態があり得る。
前記1)の形態に特有の利点として、吸収性コアの肌対向面側と非肌対向面側とで、各々独立した機能に設計し易い点が挙げられる。また、前記2)の形態に特有の利点として、吸水性繊維と繊維塊との混合比率が吸収体の厚み方向で緩やかに変化するため、吸収性コアに外力が加わった場合でも繊維塊を介在する交絡状態が厚み方向に亘って維持され易く、使用中において吸収性コアのクッション性が良好に維持され易い点が挙げられる。
前述したとおり、前記の「縦中央域Mの繊維塊占有率>前方域F及び後方域Rそれぞれの繊維塊占有率」なる大小関係が成立しさえすれば、吸収性コア40における繊維塊11の分布は特に限定されないが、縦中央域Mの吸収性コア40で前記の「非肌対向面46側の繊維塊占有率>肌対向面45側の繊維塊占有率」なる大小関係を成立させる観点から、少なくとも縦中央域Mの吸収性コア40では、図11、図14及び図16に示すように、繊維塊11が吸収性コア40の非肌対向面46側に偏在することが好ましい。縦中央域Mの吸収性コア40としては、特に図14に示す形態、すなわち、「溝状凹部42が吸収性コア40の非肌対向面46に開口を有する非貫通型であって、吸収性コア40の肌対向面45側に連続層44が偏在し、且つ繊維塊11が吸収性コア40の非肌対向面46側に偏在し、吸水性繊維12Fが肌対向面45側(連続層44)に偏在する形態」が好ましい。また、前方域F及び後方域Rの吸収性コア40でも、繊維塊11が吸収性コア40の非肌対向面46側に偏在し、前記の大小関係が成立することが好ましい。
前述した、吸収性コア40における繊維塊11の偏在は、繊維塊11の単位面積当たりの質量(坪量)を用いて規定することもできる。
すなわち、前記の「縦中央域Mの繊維塊占有率>前方域F及び後方域Rそれぞれの繊維塊占有率」なる大小関係に関連して、「縦中央域Mの繊維塊11の坪量>前方域F及び後方域Rそれぞれの繊維塊11の坪量」なる大小関係が成立することが好ましい。
また、縦中央域Mの吸収性コア40において、前記の「非肌対向面46側の繊維塊占有率>肌対向面45側の繊維塊占有率」なる大小関係に関連して、「非肌対向面46側の繊維塊11の坪量>肌対向面45側の繊維塊11の坪量」なる大小関係が成立することが好ましい。
縦中央域Mの吸収性コア40の繊維塊11の坪量と前方域F及び後方域Rそれぞれのそれとの比率は、前者/後者として、好ましくは1.1以上、より好ましくは10以上である。前方域F及び後方域Rに繊維塊11が含まれなくてもよいので、前記比率の上限値は規定していない。
縦中央域Mの吸収性コア40の繊維塊11の坪量は、前方域F及び後方域Rそれぞれのそれよりも大きいことを前提として、好ましくは32g/m2以上、より好ましくは80g/m2以上、そして、好ましくは640g/m2以下、より好ましくは480g/m2以下である。
前方域F及び後方域Rそれぞれの繊維塊11の坪量は、縦中央域Mのそれよりも小さいことを前提として、好ましくは320g/m2以下、より好ましくは240g/m2以下であり、0g/m2であってもよい。
縦中央域Mにおいて、吸収性コア40の非肌対向面46側の繊維塊11の坪量と肌対向面45側のそれとの比率は、前者/後者として、好ましくは1.1以上、より好ましくは10以上である。縦中央域Mでは肌対向面45側に繊維塊11が含まれなくてもよいので、前記比率の上限値は規定していない。
縦中央域Mの吸収性コア40の非肌対向面46側の繊維塊11の坪量は、肌対向面45側のそれよりも大きいことを前提として、好ましくは32g/m2以上、より好ましくは80g/m2以上、そして、好ましくは640g/m2以下、より好ましくは480g/m2以下である。
縦中央域Mの吸収性コア40の肌対向面45側の繊維塊11の坪量は、非肌対向面46側のそれよりも小さいことを前提として、好ましくは320g/m2以下、より好ましくは240g/m2以下であり、0g/m2であってもよい。
前述した作用効果をより一層確実に奏させるようにし、着用時のヨレ防止と着用感及び液吸収性の向上とを確実に奏させるようにする観点から、吸収性コア40は、縦中央域Mに、該吸収性コア40が含有する全ての繊維塊11の90質量%以上を含有することが好ましく、95質量%以上が存在することがより好ましく、100質量%、すなわち吸収性コア40が含有する繊維塊11の全部が縦中央域Mに存在してもよい。
また、吸収性コア40は、縦中央域Mの厚みが、前方域F及び後方域Rの厚み以上であることが好ましい。このような構成では、以下の長所がある。まず、縦中央域Mが着用者の排泄部に密着し易くなる。また、吸収性コア40では繊維塊占有率が前方域F及び後方域Rよりも縦中央域Mの方が大きいので、繊維塊11の坪量が縦中央域Mで前方域F及び後方域Rよりも大きくなる。このために、縦中央域Mでのクッション性が高くなり、着用感が一層良好となる。
前方域F及び後方域Rは、縦中央域Mの横方向Yの中央(縦中央域Mの吸収性コア40を横方向Yに二等分して縦方向Xに延びる仮想直線と重なる位置)に比べて、吸収性コア40の厚みが小さいことが好ましい。これにより、ナプキン1の着用時において吸収性コア40の前後域F,Rがショーツ等の着衣になじんで追従しやすくなり、前述した「縦中央域Mの繊維塊占有率(繊維塊11の坪量)>前方域F及び後方域Rそれぞれの繊維塊占有率(繊維塊11の坪量)」なる大小関係の成立と相俟って、着用者の前身頃や臀部側の着用感がより一層向上し、ナプキン1の着用感の良さがより一層際立つようになる。吸収性コア40において、縦中央域Mの横方向Yの中央の厚みと、前方域F又は後方域Rの厚みとの比率は、後者/前者として、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、そして、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下である。
吸収体4(4A,4B,4C)には、図8及び図10に示すように、縦中央域Mの吸収性コア40に、周囲に比べて厚みが大きく且つ使用者の肌側又は非肌側に突出した肉厚部47が存在する。そのため、ナプキン1における平面視で肉厚部47と重なる部分(縦中央域Mの少なくとも一部)は、ナプキン1の着用者の肌側すなわち表面シート2側か、又は着用者の非肌側すなわち裏面シート3側に突出し得る。
吸収体4A、4B及び4Cでは、図4及び図12に示すように、縦中央域Mの縦方向Xの中央部(縦中央域Mにおける、前方域F及び後方域Rそれぞれの近傍を除く部分)が、その横方向Yの全長(すなわち全幅)にわたって肉厚部47であり、また、前方域F及び後方域Rそれぞれの全体が、肉厚部47に比べて厚みが小さい肉薄部48である。吸収体4A4(図8参照)では、肉厚部47がナプキン1の着用者の肌側(表面シート2側)に突出し、吸収体4A5(図10参照)では、肉厚部47がナプキン1の着用者の非肌側(裏面シート3側)に突出している。なお、吸収体4A5は、図10に示すように、吸収体4における肉厚部47を挟んで縦方向Xの前後に位置する部分(肉薄部48)が自重により垂れ下がり、結果として吸収体4A4と同様に、肉厚部47を含む、縦中央域Mの吸収体4の縦方向Xの中央部が、着用者の肌側に突出した状態となっている。肉厚部47が着用者の非肌側に突出し、その肉厚部47の縦方向Xの前後(前方域F及び後方域R)に肉薄部48が存在する形態では、図10に示す如くに、肉厚部47を中心とした縦中央域Mの少なくとも一部が着用者の肌側に突出した形態となり得る。
縦中央域Mの吸収性コア40に肉厚部47が存在することにより、ナプキン1における平面視で肉厚部47と重なる部分、典型的には縦中央域Mの横方向Yの中央部が、膣口等の着用者の排泄部に密着するため、縦中央域Mと中心として、ナプキン1の着用者の身体に対する密着性や追従性が向上し、前述した構成(溝状凹部42の存在、繊維塊11の含有及び交絡、縦方向Xでの繊維塊占有率の大小関係の成立など)による作用効果と相俟って、ナプキン1の着用感及び液吸収性がより一層向上し得る。
肉厚部47による作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、吸収性コア40の肉厚部47の厚み(肉厚部47の厚みが一定でない場合は最大厚み)は、好ましくは3mm以上30mm以下、より好ましくは4mm以上20mm以下である。また、本発明の吸収性物品が生理用ナプキンの場合、吸収性コア40の肉厚部47の厚みは、好ましくは3mm以上、より好ましくは4mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは8mm以下である。なお、肉厚部47が溝状凹部42を有する場合には、肉厚部47の厚みは、該肉厚部47における小吸収部43の厚みである。
肉厚部47をその突出している側(吸収性コア40の肌対向面45側又は非肌対向面46側)から平面視したときの該肉厚部47の面積は、吸収性コア40の同一の側の全体の面積に対して、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、そして、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下である。
吸収性コア40の肉薄部48の厚み(吸収性コア40における肉厚部47以外の部分の厚み)は、好ましくは1mm以上25mm以下、より好ましくは2mm以上15mm以下である。また、本発明の吸収性物品が生理用ナプキンの場合、肉薄部48の厚みは、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、そして、好ましくは8mm以下、より好ましくは6mm以下である。なお、肉薄部48が溝状凹部42を有する場合には、肉薄部48の厚みは、該肉薄部48における小吸収部43の厚みである。
吸収性コア40の各部の厚みは、以下の方法で測定される。なお、吸収性コア40(吸収体4)全体の厚み、ナプキン1の厚みなども以下の方法に準じて測定することができる。
<厚みの測定方法>
吸収性コア(吸収体)を水平な場所にシワや折れ曲がりがないように静置し、該吸収性コアから測定対象部位(例えば、吸収性コアの肌対向面側又は非肌対向面側)を切り出して測定サンプルとする。そして、測定サンプルにおける5cN/cm2の荷重下での厚みを測定する。具体的には、厚みの測定に、例えば、厚み計PEACOCK DIAL UPRIGHT GAUGES R5-C(OZAKI MFG.CO.LTD.製)を用いる。このとき、厚み計の先端部と測定サンプルとの間に、荷重が5cN/cm2となるように大きさを調整した平面視円形状又は正方形状のプレート(厚み5mm程度のアクリル板)を配置して、厚みを測定する。厚み測定では、測定サンプルにおける任意の10箇所を測定し、それら10箇所の厚みの平均値を算出して、測定サンプルの厚みとする。
なお、本発明において、肉厚部47は縦中央域Mの吸収性コア40に存在すればよく、その配置は図示の形態に限定されない。例えば吸収体4A、4B及び4Cでは、肉厚部47は縦中央域Mの吸収性コア40の全幅にわたって存在しているが、縦中央域Mの吸収性コア40の横方向Yの中央部のみに存在してもよい。また吸収体4A、4B及び4Cでは、肉厚部47は縦中央域M以外の部位には存在しないが、縦中央域M以外の部位に存在してもよく、例えば、肉厚部47が縦中央域Mから前方域F及び/又は後方域Rにわたって延在してもよい。典型的には、肉厚部47は、少なくとも吸収性コア40の横方向Yの中央部に存在する。
前記の「縦中央域Mの吸収性コア40の横方向Yの中央(中央部)の厚み>前方域F又は後方域Rの吸収性コア40の厚み」なる大小関係を成立させる観点から、吸収体4A(図4参照)、吸収体4B(図12参照)及び吸収体4C(図17参照)のように、吸収性コア40の肉厚部47は、縦中央域Mの吸収性コア40の横方向Yの中央に位置し、且つ前方域F及び後方域Rには存在しないことが好ましい。
また、肉厚部47が縦中央域Mの吸収性コア40の横方向Yの中央部に存在し、該中央部よりも横方向Yの外方、すなわち縦中央域Mの吸収性コア40の横方向Yの両側部には存在しない場合において、前記の「縦中央域Mの吸収性コア40の横方向Yの中央(中央部)の厚み>前方域又は後方域Rの吸収性コア40の厚み」なる大小関係が成立する場合には、「縦中央域Mの吸収性コア40の横方向Yの両側部の厚み>前方域Fの吸収性コア40の厚み、後方域Rの吸収性コア40の厚み」なる大小関係も成立することが好ましい。
吸収性コア40における吸水性繊維12Fの坪量は、好ましくは32g/m2以上、より好ましくは80g/m2以上、そして、好ましくは640g/m2以下、より好ましくは480g/m2以下である。
吸収性コア40における吸水性ポリマー13の坪量は、好ましくは5g/m2以上、より好ましくは10g/m2以上、そして、好ましくは200g/m2以下、より好ましくは100g/m2以下である。
前述したとおり、吸収体4(吸収性コア40)は、回転ドラムを備えた公知の積繊装置を用いて常法に従って製造することができる。吸収体4には前述したとおり、コア形成材料(繊維塊11、吸水性繊維12F、吸水性ポリマー13)が吸収性コア40の全体に均一分布する形態と、吸収性コア40の一部に繊維塊11(吸水性繊維12F)が偏在する形態とが含まれるが、何れの形態でも公知の積繊装置を用いて常法に従って製造することができる。特に、後者の繊維塊11(吸水性繊維12F)が吸収性コア40の一部に偏在する形態は、公知の積繊装置を用いた吸収体の製造方法において、繊維塊11や吸水性繊維12Fの回転ドラム上での積繊順序などを適宜調整することで製造可能である。
本実施形態のナプキン1においては、図1及び図2に示すように吸収性本体5に、表面シート2、コアラップシート41(肌側コアラップシート)及び吸収体4(吸収性コア40)が該吸収体4の非肌対向面側(裏面シート3側)に一体的に凹陥した表面凹陥部7が、少なくとも縦中央域Mに形成されている。表面凹陥部7は、吸収体4(吸収性コア40)貫通しておらず、表面シート2の肌対向面に開口を有するとともに、該開口とは反対側に底部を有する。ナプキン1の肌対向面に形成された表面凹陥部7は、経血等の体液の面方向の移動を阻害する機能を有する。
ナプキン1においては、表面凹陥部7は、図1に示すように、縦中央域Mにおいて縦方向Xに延在している。より具体的には、表面凹陥部7は、縦方向Xに延びる左右一対の表面縦凹陥部7X,7Xと、横方向Yに延びる前後一対の表面横凹陥部7Y,7Yとを含んで構成されている。
一対の表面縦凹陥部7X,7Xは、それぞれ、縦中央域Mの縦方向Xの全長にわたって延在し、更に前方域F及び後方域Rに延出しており、全体として連続線状をなしている。
一対の表面横凹陥部7Y,7Yのうちの一方は、少なくとも一部が前方域Fに位置し、他方は少なくとも一部が後方域Rに位置しており、何れも平面視において縦方向Xの外方に向かって凸のU字状ないし弧状の連続線状をなし、且つそのU字状ないし弧状の頂部がナプキン1の横方向Yの中央に位置している。
表面凹陥部7を構成する各凹陥部7X,7Y同士は、それらの長さ方向の端部にて連結しており、表面凹陥部7全体として平面視において閉じた環状、より具体的には長楕円形状をなしている。縦中央域Mにおける、一対の表面縦凹陥部7X,7Xで囲まれた領域は、縦中央域Mの中央部に位置し、前記排泄部対向部(排泄ポイント)を含む。
ナプキン1においては、図2に示すように、表面凹陥部7と平面視で重なる位置に、コアラップシート41(非肌側コアラップシート)及び吸収性コア40が該吸収性コア40の肌対向面側(表面シート2側)に一体的に凹陥した裏面凹陥部8が、少なくとも縦中央域Mに形成されている。裏面凹陥部8は、吸収体4(吸収性コア40)を貫通しておらず、吸収体4の非肌対向面に開口を有するとともに、該開口とは反対側に底部を有する。表面凹陥部7と裏面凹陥部8とは、底部を共有している。
本実施形態においては、裏面凹陥部8は、平面視において表面凹陥部7と略同形状・同寸法であり、表面凹陥部7と同様の閉じた環状をなしている。すなわち裏面凹陥部8は、縦方向Xに延び、表面縦凹陥部7Xと平面視で重なり且つこれと平面視形状が同じである左右一対の裏面縦凹陥部8X,8Xと、横方向Yに延び、表面横凹陥部7Yと平面視で重なり且つこれと平面視形状が同じである前後一対の裏面横凹陥部8Y,8Y(図示せず)とを含んで構成され、各凹陥部8X,8Yがそれらの長さ方向の端部にて連結して、裏面凹陥部8全体として平面視において閉じた環状(長楕円形状)をなしている。
表面凹陥部7は、ナプキン1より具体的には吸収性本体5に対し、その肌対向面側(表面シート2側)から圧搾加工を施すことによって形成されており、その形成方法から「圧搾部」と言うことができる。また、裏面凹陥部8は、吸収体4に対し、その非肌対向面側(非肌側コアラップシート側)から圧搾加工を施すことによって形成されており、やはり「圧搾部」と言うことができる。圧搾部である両凹陥部7,8は、吸収体4における両凹陥部7,8の周囲に比して密度が高い。すなわち、吸収性本体5は、凹陥部7,8に対応する高密度部と、両凹陥部7,8が形成されていない低密度部9とを有し、これにより面方向に密度差が生じている。
両凹陥部7,8を形成するための圧搾加工は、吸収体4(吸収性コア40)に含まれるコア形成材料の溶融、特に繊維塊11の構成繊維として好ましく用いられる熱可塑性繊維の溶融を伴う方法を利用してもよいし、コア形成材料の溶融を伴わない方法を利用してもよい。コア形成材料の溶融を伴う圧搾加工として、具体的には、熱を伴うエンボス加工、超音波エンボス等の公知のエンボス加工が挙げられる。コア形成材料の溶融を伴う圧搾加工によって形成された表面凹陥部7の底部、すなわち空間部である表面凹陥部7と平面視で重なる部分では、表面シート2、コアラップシート41(肌側コアラップシート)及び吸収性コア40が熱融着されて一体化し得る。また、コア形成材料の溶融を伴う圧搾加工によって形成された裏面凹陥部8の底部、すなわち空間部である裏面凹陥部8と平面視で重なる部分では、コアラップシート41(非肌側コアラップシート)及び吸収性コア40が熱融着されて一体化し得る。前述したとおり、裏面凹陥部8と表面凹陥部7とで底部を共有しているので、その両凹陥部7,8共通の底部には、表面凹陥部7側から順に、表面シート2、肌側コアラップシート、吸収性コア40及び非肌側コアラップシートが互いに熱融着されて一体化した状態で存在し得る。
表面凹陥部7の幅(凹陥部の長さ方向と直交する方向の長さ)は特に制限されないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。裏面凹陥部8の幅についても同じ範囲に設定することができる。
図1及び図2に示すように、ナプキン1より具体的には吸収性本体5には、低密度部9が存在する。低密度部9は、表面凹陥部7及び裏面凹陥部8の何れも形成されていない部分であり、凹陥部7,8に比して密度が低い。本実施形態においては前述したとおり、両凹陥部7,8はそれぞれ平面視において略同形状・同寸法であり、閉じた環状(長楕円形状)をなしているところ、低密度部9は、その凹陥部7,8の閉じた環の中及び外の双方に存在している。少なくとも吸収性本体5の周縁部及び縦中央域Mの中央部(前記排泄部対向部及びその近傍)は、低密度部9である。
なお、低密度部9、特に、縦中央域Mの横方向Yの両側部を通って縦方向Xに延在する一対の表面縦凹陥部7X,7X(裏面縦凹陥部8X,8X)に挟まれた領域(縦中央域Mの横方向Yの中央部)に、エンボス加工等の圧搾加工によって形成された圧搾部が部分的に存在してもよい。その場合、低密度部9(具体的には例えば、一対の表面縦凹陥部7X,7Xに挟まれた領域)の全面積に占める、該低密度部9に存在する全ての圧搾部の面積の合計の割合は、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。なお、本実施形態のナプキン1では、一対の表面縦凹陥部7X,7Xに挟まれた低密度部9には圧搾部は存在しない。
吸収性コア40は、繊維塊11を含有することで、これを含有しない通常の吸収性コア40に比して、保形性、クッション性等の特性が向上しているところ、更に厚み方向に圧搾されて高密度化された表面凹陥部7を有することで、斯かる特性が一層向上しており、例えば、ナプキン1の着用者の両大腿部によって加えられる横方向Yへの強力な圧縮力の如き外力を受けても型崩れし難く、外力に対して即応性良く変形し、また、その外力が解除されれば速やかに復元し得る。
また、ナプキン1においては、相対的に密度の高い凹陥部7,8と相対的に密度の低い低密度部9とが面方向に併存していることに起因して、面方向に密度差が生じており、その密度差によって体液が面方向に拡散されやすくなされている。すなわちナプキン1は、着用者が排泄した体液を速やかに面方向に拡散することができ、そのため、吸収性コア40が本来的に有する吸収性能を有効に活用して、高い液防漏性を発現し得る。
特にナプキン1は、図1に示すように、表面凹陥部7が縦中央域Mのみならず、前方域F及び後方域Rにも存在しているため、ナプキン1全体の保形性や面方向の液拡散性等が高められている。
また、低密度部9には、複数の繊維塊11がその本来の外形形状をほぼ維持した状態で存在していることに起因して、複数の繊維塊11同士間に形成された空間部が多数存在し、それらの多数の空間部が、低密度部9が有する優れたクッション性の発現に寄与しているとともに、体液の一時ストック部としても機能し得る。ナプキン1は、このような体液の一時ストック部として機能し得る低密度部9を、排泄された体液が集中しがちな部位である縦中央域Mに有しているため、優れた液吸収能を有し、高い液防漏性を発現し得るとともに、その高い液引き込み性により、表面シート2の肌対向面での液残りを低減し、不快な濡れ感やべたつき感を抑制し得る。
また、前記排泄部対向部が存在する縦中央域Mにクッション性等に優れる低密度部9が存在していることで、縦中央域Mは、体液吸収前の乾燥状態はもとより、体液吸収後の湿潤状態であっても、低密度部9の作用によって柔軟でクッション性に富む。
前述したように、縦中央域Mにおいて、吸収性コア40の肌対向面45側と非肌対向面46側とで、繊維塊占有率が異なる場合、表面凹陥部7は、繊維塊11と平面視において重なり、且つ縦中央域Mでは、繊維塊占有率が吸収性コア40の肌対向面45側と異なる領域にまで及んでいることが好ましい。より具体的には例えば、縦中央域Mの吸収性コア40において、前記の「非肌対向面46側の繊維塊占有率>肌対向面45側の繊維塊占有率」なる大小関係が成立する場合において、表面凹陥部7(表面縦凹陥部7X、表面横凹陥部7Y)は、繊維塊11と平面視において重なり、且つ縦中央域Mでは、非肌対向面46側にまで及んでいることが好ましい。なお、ここでいう、縦中央域Mの吸収性コア40の肌対向面45側は、前述したとおり、縦中央域Mの吸収性コア40を厚み方向に二等分した場合の肌対向面45寄りの部位であり、非肌対向面46側は、斯かる場合の非肌対向面46寄りの部位である。斯かる構成により、前述の凹陥部7,8と低密度部9とによる作用効果(保形性の向上効果や面方向の液拡散性の向上効果等)が一層の向上し、着用時の吸収体4のヨレがより一層確実に防止され得る。
なお、前記の構成は、吸収性コア40の肌対向面45側と非肌対向面46側とで繊維塊11の坪量が異なる場合にも適用できる。すなわち例えば、縦中央域Mの吸収性コア40において、前記の「非肌対向面46側の繊維塊11の坪量>肌対向面45側の繊維塊11の坪量」なる大小関係が成立する場合において、表面凹陥部7(表面縦凹陥部7X、表面横凹陥部7Y)は、繊維塊11と平面視において重なり、且つ縦中央域Mでは、非肌対向面46側にまで及んでいることが好ましい。
また、縦中央域Mにおいて、横方向Yの両側部の表面凹陥部7(より具体的には一対の表面縦凹陥部7X,7X)に挟まれた領域(以下、「横方向内方領域」ともいう。)は、該領域の横方向Yの外方(すなわち表面凹陥部7及びその横方向Yの外方。以下、「横方向外方領域」ともいう。)に比べて、繊維塊11の単位面積当たりの質量(坪量)が大きいことが好ましい。ナプキン1においては、図1及び図2に示すように、前記横方向内方領域は低密度部9である。斯かる構成により、縦中央域Mにおける表面凹陥部7(表面縦凹陥部7X)での吸液速度を確保しつつ、縦方向Xの前後への液拡散性を促進することが可能となり、横漏れが効果的に抑制され得る。前記横方向外方領域と前記横方向内方領域との繊維塊11の坪量の比率は、前者<後者を前提として、前者(横方向外方領域)/後者(横方向内方領域)として、好ましくは0以上、より好ましくは0.1以上、そして、好ましくは1.0未満、より好ましくは0.9以下である。
なお、縦中央域Mにおける前記横方向内方領域と前記横方向外方領域との境界である表面凹陥部7(表面縦凹陥部7X)は、縦方向Xに延在するものであるところ、ここでいう「延在」には、図1に示す如く、表面凹陥部7が縦方向Xに連続線状に延びている場合のみならず、複数の表面凹陥部7が縦方向Xに間欠配置され、それら複数の表面凹陥部7が全体として縦方向Xに延在しているように見える場合が含まれる。後者の場合、縦方向Xにおいて最も近接する2個の表面凹陥部7の縦方向Xにおける離間距離は、30mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましい。後者の場合の具体例として、平面視所定形状の表面凹陥部7が縦方向Xに複数間欠配置され、それら複数の表面凹陥部7が縦方向Xに破線状に延在する形態を例示できる。縦方向Xに間欠配置された複数の裏面凹陥部8についても同様である。
縦中央域Mにおいて、表面凹陥部7(表面縦凹陥部7X)と肉厚部47とが平面視で重なることが好ましい。ナプキン1では、図2に示すように、肉厚部47が縦中央域Mの吸収性コア40の全幅にわたって存在しているので、斯かる構成を有している。またナプキン1では、裏面凹陥部8(裏面縦凹陥部8X)と肉厚部47とが平面視で重なっている。このように、縦中央域Mで表面凹陥部7(裏面凹陥部8)と肉厚部47とが平面視で重なることにより、ナプキン1における肉厚部47を中心とした部分が着用者の身体に一層密着するようになり、着用感及び液吸収性が一層向上し得る。斯かる構成に加えて更に、縦中央域Mで前記の「横方向内方領域の繊維塊11の坪量>横方向外方領域の繊維塊11の坪量」なる大小関係が成立すると、繊維塊11によるクッション性等の向上効果が加わるため、肉厚部47のクッション性が高まるなどして、着用感及び液吸収性がより一層向上し得る。
前述した、凹陥部7,8及び低密度部9に起因する作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、ナプキン1の各部の寸法等は以下のように設定することが好ましい。
縦中央域Mにおける、吸収体4(吸収性コア40)の縦方向Xに沿う側縁と凹陥部7,8(縦凹陥部7X,8X)との横方向Yにおける離間距離W1(図1参照)は、好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上、そして、好ましくは25mm以下、より好ましくは20mm以下である。なお、吸収体4の横方向Yの長さ(幅)が一定ではない場合には、離間距離W1は、吸収体4の幅が最も広い部分での測定値とする。
縦中央域Mの低密度部9の横方向Yの長さすなわち幅W2(図1参照)は、好ましくは20mm以上、より好ましくは25mm以上、そして、好ましくは70mm以下、より好ましくは65mm以下である。
ナプキン1においては、凹陥部7,8の深さは、その長さ方向の全長にわたって一定でもよく、部分的に異なっていてもよい。また、線状の凹陥部7,8の形状・配置等は図示の形態に制限されず、この種の吸収性物品において防漏溝などと呼ばれるものと同様に設定できる。線状の凹陥部7,8は、平面視形状が直線及び/又は曲線を含んで構成されてよく、また、連続線でも破線でもよい。破線状の凹陥部7,8の一例として、深さが異なる2種類の表面凹陥部7(裏面凹陥部8)が一方向に交互に間欠配置された形態を例示できる。また、凹陥部7,8のパターン(平面視形状及び配置)は、図1に示す凹陥部7,8の如き、平面視線状のものに限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、三角形、星形、ハート形等の点状(ドット状)であってもよい。
以下、繊維塊11について更に説明する。図18には、繊維塊11の典型的な外形形状が示されている。繊維塊11は四角柱形状より具体的には直方体形状をなしている。繊維塊11は、相対向する2つの基本面(base plane)111と、該2つの基本面111を連結する骨格面(body plane)112とを備えている。基本面111及び骨格面112は何れも、この種の繊維を主体とする物品における表面の凹凸度合いを評価する際に適用されるレベルで、実質的に凹凸が無いと認められる部分である。
繊維塊11では、骨格面112は、基本面111に比して、繊維端部の単位面積当たりの数が多いことが好ましい。このような繊維塊11は、原料繊維シートをカッター等によって切断して得られるところ、その骨格面112は、該原料繊維シートの切断によって形成された切断面である。そして、このことに起因して、繊維塊11の製造時の切断面である骨格面112には、繊維塊11の構成繊維11Fの切断端部からなる繊維端部が、該骨格面112の全体に多数存在し、骨格面112は、基本面111(すなわち繊維塊11の製造時の非切断面)に比べて、構成繊維11Fの繊維端部の単位面積当たりの数が多い。
繊維塊11の各面(基本面111、骨格面112)に存在する繊維端部は、該繊維塊11が、吸収性コア40に含まれる他の繊維塊11や吸水性繊維12Fとの間に交絡を形成するのに有用である。また一般に、繊維端部の単位面積当たりの数が多いほど交絡性が向上し得るので、吸収性コア40の保形性などの諸特性の向上に繋がり得る。そして、繊維塊11の各面における繊維端部の単位面積当たりの数は均一ではなく、斯かる繊維端部の単位面積当たりの数に関しては「骨格面112>基本面111」なる大小関係が成立することから、繊維塊11を介した他の繊維(他の繊維塊11、吸水性繊維12F)との交絡性は該繊維塊11の面によって異なり、骨格面112は基本面111に比して交絡性が高い。すなわち、骨格面112を介しての他の繊維との交絡による結合の方が、基本面111を介してのそれよりも結合力が強く、1個の繊維塊11において、基本面111と骨格面112とで他の繊維との結合力に差が生じ得る。一般に、斯かる結合力が強いほど、その結合されている繊維の動きの自由度が制限され、吸収性コア40全体として強度(保形性)が向上する反面、柔らかさが低下する傾向がある。
このように、吸収性コア40においてはそれに含まれている複数の繊維塊11それぞれが、その周辺の他の繊維(他の繊維塊11、吸水性繊維12F)に対して、2種類の結合力を持って交絡しており、これにより吸収性コア40は、適度な柔らかさと強度(保形性)とを兼ね備えたものとなる。そして、このような優れた特性を有する吸収性コア40を、吸収性物品の吸収体として常法に従って用いた場合には、該吸収性物品の着用者に快適な着用感を提供することができるとともに、着用時における着用者の体圧等の外力によって吸収性コア40が破壊される不都合が効果的に防止される。
原料繊維シートをミルカッターのような切断機によって不定形に切断するなどして製造された不織布片(繊維塊)では、基本面111や骨格面112のような「面」を持った定形のシート片状の繊維塊とはなっておらず、しかも、その製造時において繊維塊全体に切断処理の外力が加わるため、構成繊維の繊維端部が繊維塊全体にランダムに形成される。そのようにして製造された繊維塊と比較して、前述した本実施形態の繊維塊11は、構成繊維11Fの繊維端部による作用効果が十分に発現され易い。
前述した繊維端部による作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、基本面111(非切断面)の繊維端部の単位面積当たりの数N1と、骨格面112(切断面)の繊維端部の単位面積当たりの数N2との比率は、N1<N2を前提として、N1/N2として、好ましくは0以上、より好ましくは0.05以上、そして、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.60以下である。より具体的には、N1/N2は0以上0.90以下が好ましく、0.05以上0.60以上がより好ましい。
基本面111の繊維端部の単位面積当たりの数N1は、好ましくは0個/mm2以上、より好ましくは3個/mm2以上、そして、好ましくは8個/mm2以下、より好ましくは6個/mm2以下である。
骨格面112の繊維端部の単位面積当たりの数N2は、好ましくは5個/mm2以上、より好ましくは8個/mm2以上、そして、好ましくは50個/mm2以下、より好ましくは40個/mm2以下である。
基本面111、骨格面112の繊維端部の単位面積当たりの数は、以下の方法により測定される。
<繊維塊の各面における繊維端部の単位面積当たりの数の測定方法>
測定対象の繊維を含む部材(繊維塊)を紙両面テープ(ニチバン株式会社製ナイスタックNW-15)を用いて、測定片を試料台に貼り付ける。次いで測定片を白金コーティングする。コーティングには日立那珂精器株式会社製イオンスパッタ装置E-1030型(商品名)を用い、スパッタ時間は120秒とする。測定片の切断面を、JEOL(株)製のJCM-6000型の電子顕微鏡を用いて、倍率100倍にて基本面及び骨格面を観察する。この倍率100倍の観察画面においては、測定対象面(基本面又は骨格面)の任意の位置に縦1.2mm、横0.6mmの長方形領域を設定し、且つ該長方形領域の面積が、該観察画面の面積の90%以上を占めるように観察角度などを調整した上で、該長方形領域内に含まれる繊維端部の個数を測定する。但し、倍率100倍の観察画面において、繊維塊の測定対象面が1.2mm×0.6mmよりも小さく、該観察画面全体に占める前記長方形領域の面積の割合が90%未満となる場合には、観察倍率を100倍より大きくした上で、前記と同様に、該測定対象面における前記長方形領域内に含まれる繊維端部の数を測定する。ここで個数測定の対象となる「繊維端部」は、繊維塊の構成繊維の長さ方向端部であり、測定対象面から該構成繊維の長さ方向端部以外の部分(長さ方向中間部)が延出していても、該長さ方向中間部は個数測定の対象としない。そして下記式により、繊維塊の測定対象面(基本面又は骨格面)における繊維端部の単位面積当たりの数を算出する。10個の繊維塊それぞれについて、前記手順に従って、基本面及び骨格面それぞれにおける繊維端部の単位面積当たりの数を測定し、それら複数の測定値の平均値を、当該測定対象面における繊維端部の単位面積当たりの数とする。
繊維塊の測定対象面(基本面又は骨格面)における繊維端部の単位面積当たりの数(個数/mm2)=長方形領域(1.2×0.6mm)に含まれる繊維端部の個数/該長方形領域の面積(0.72mm2)
繊維塊11の基本面111が、図18に示すように、平面視において四角形形状をなしている場合、吸収性コア40における繊維塊11の均一分散性の向上の観点から、その四角形形状の一辺(短辺)111aは、該繊維塊11(11A)を含有している吸収体4の厚みと同等か又はこれに比して短いことが好ましい。一辺(短辺)111aの長さと吸収体4の厚みとの比率は、前者/後者として、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.08以上、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下である。
吸収体4(吸収性コア40)の厚みは、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、そして、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下である。
繊維塊11の各部の寸法等は以下のように設定することが好ましい。繊維塊11の各部の寸法は、後述する繊維塊11の外形形状の特定作業の際の電子顕微鏡写真などに基づいて測定することができる。
基本面111が図18に示す如き四角形形状の場合、その一辺(短辺)111aの長さL1は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは6mm以下、更に好ましくは5mm以下である。
繊維塊11が平面視長方形形状の場合には、基本面111の他の一辺(長辺)111bの長さL2は、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは1mm以上、更に好ましくは2mm以上、そして、好ましくは30mm以下、より好ましくは15mm以下、更に好ましくは10mm以下である。
平面視長方形形状の基本面111の長辺111bの長さL2は、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは1mm以上、更に好ましくは2mm以上、そして、好ましくは30mm以下、より好ましくは15mm以下、更に好ましくは10mm以下である。
なお、基本面111が図18に示すように、繊維塊11が有する複数の面のうちで最大面積を有する面である場合、長辺111bの長さL2は、繊維塊11の最大差し渡し長さに一致する。
一辺(短辺)111aの長さL1と他の一辺(長辺)111bの長さL2との比率は、L1/L2として、好ましくは0.003以上1以下、より好ましくは0.025以上1以下である。特に好ましい繊維塊11として、基本面111のアスペクト比が1又は1に近いもの、すなわち基本面111の平面視形状が正方形又はそれに準じる形状のものが挙げられる。斯かる繊維塊11を吸収性コア40に用いると、吸収性コア40が嵩高くなる傾向があり、クッション性等が向上し得る。
繊維塊11の厚みT、すなわち2つの対向する基本面111間の長さTは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは6mm以下である。
繊維塊11のサイズは特に制限されず、吸収性コア40のクッション性、通液性などを考慮して適宜設定し得る。繊維塊11が有する複数の面のうちで面積が最大の面である、基本面111の面積は、繊維塊11のサイズの指標となり得る。繊維塊11の基本面111の面積は、好ましくは1mm2以上、より好ましくは5mm2以上、そして、好ましくは100mm2以下、より好ましくは50mm2以下である。
図19には、本発明に係る繊維塊11の一例を模式的に示した図が示されている。繊維塊11は図19に示すように、本体部110と、該本体部110から外方に延出する繊維11Fを含んで構成され且つ該本体部110に比して繊維密度の低い(単位面積当たりの繊維の数が少ない)、延出繊維部113とを有するものが包含され得る。なお、吸収性コア40には、延出繊維部113を有しない繊維塊11、すなわち本体部110のみからなる繊維塊11も包含され得る。延出繊維部113は、前述した、繊維塊11の各面(基本面111、骨格面112)に存在する繊維端部の一種を含みうるものであり、それは、該繊維端部のうち、繊維塊11の各面から外方に延出した繊維端部である。
延出繊維部113は主として、吸収性コア40に含有されている複数の繊維塊11同士あるいは繊維塊11と吸水性繊維12Fとの交絡性の向上に寄与し、吸収性コア40の保形性の向上に直接的にかかわる他、繊維塊11の吸収性コア40における均一分散性などにも影響して、本体部110に因る作用効果を間接的に補強し得る。
繊維塊11は図19に示すように、延出繊維部113の一種として、本体部110、より具体的には骨格面112から外方へ延びる複数の繊維11Fを含む延出繊維束部113Sを有する。繊維塊11が有する延出繊維部113のうちの少なくとも1つは、この延出繊維束部113Sであり得る。延出繊維束部113Sは、骨格面112から延出する複数の繊維11Fが寄り集まって構成されたもので、延出繊維部113に比して、本体部110の骨格面112からの延出長さが長い点で特徴付けられる。延出繊維束部113Sは、基本面111にも存在し得るが、典型的には図19に示すように骨格面112に存在し、基本面111には全く存在しないか、存在したとしてもその数は骨格面112よりも少数である。その理由は、延出繊維部113が、原料繊維シートの切断面である骨格面112に主に存在する理由と同じであり、前述したとおりである。繊維塊11がこのような、長くて太い大型の延出繊維部113とも言うべき延出繊維束部113Sを有していることで、繊維塊11同士あるいは繊維塊11と吸水性繊維12Fとの交絡がより一層強まり、結果として、繊維塊11の存在に起因する本発明の所定の効果がより一層安定的に奏されるようになる。また、延出繊維束部113Sが熱融着部を有していると、延出繊維束部113S自体の強度が向上することに起因して、延出繊維束部113Sを介して交絡している繊維塊11同士あるいは繊維塊11と吸水性繊維12Fとの交絡がより一層強まるため、好ましい。
繊維塊11の構成繊維11Fとしては、合成繊維が用いられる。そして、吸収体4が乾燥状態及び湿潤状態のいずれの状態でも保形性、柔軟性、クッション性、圧縮回復性、ヨレにくさなどにおいて優れた効果を発現し得るようにする観点から、繊維塊11は、複数の熱可塑性繊維が互いに熱融着した3次元構造を有することが好ましい。またこのような、複数の熱融着部が3次元的に分散した繊維塊11を得るために、繊維塊11の構成繊維11Fとしては、熱融着性を有する合成繊維が好ましい。そのような熱融着性合成繊維として、熱可塑性繊維を例示でき、特に非吸水性の熱可塑性繊維が好ましい。前述したように、延出繊維束部113Sは熱融着部を有していることが好ましいところ、繊維塊11の構成繊維11Fとして熱可塑性繊維を用いることで、斯かる延出繊維束部113Sの好ましい形態を得ることも可能となる。複数の熱融着部が3次元的に分散した繊維塊11を得るためには、その原料繊維シートが同様に構成されていればよく、また、そのような複数の熱融着部が3次元的に分散した原料繊維シートは、前述したように、熱可塑性繊維を主体とするウエブや不織布に、熱風処理などの熱処理を施すことによって製造することができる。
繊維塊11の構成繊維11Fの素材として好適な非吸水性の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、繊維11Fは、1種類の合成樹脂(熱可塑性樹脂)又は2種類以上の合成樹脂を混合したブレンドポリマーからなる単一繊維でもよく、あるいは複合繊維でもよい。ここでいう複合繊維は、成分の異なる2種類以上の合成樹脂を紡糸口金で複合し、同時に紡糸して得られる合成繊維(熱可塑性繊維)で、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造で、単繊維内で相互接着しているものをいう。複合繊維の形態には、芯鞘型、サイドバイサイド型等があり、特に制限されない。
なお、測定対象の吸収体(吸収性コア)が吸収性物品等の他の物品の構成部材として用いられており、該吸収体を取り出して評価測定する場合において、該吸収体が、接着剤、融着などによって他の構成部材に固定されている場合には、その固定部分を、繊維の接触角に影響を与えない範囲で、コールドスプレーの冷風を吹き付ける等の方法で接着力を除去してから取り出す。この手順は、本明細書中の全ての測定において共通である。
また、繊維塊11を構成する構成繊維11Fは、非吸水性すなわち水分(尿や経血などの体液)を吸収し難い性質を有することが好ましい。これは、繊維塊11と併用される吸水性繊維12Fが文字どおりの吸水性を有することと著しい対照をなす。繊維11Fが吸水性に乏しい非吸水性繊維であることで、吸収性コア40が乾燥状態である場合のみならず、体液を吸収して湿潤状態にある場合でも、前述した繊維塊11の存在に起因する作用効果(保形性、柔軟性、クッション性、圧縮回復性、ヨレにくさなどの向上効果)が安定的に奏されるようになる。したがって、原料繊維としては、非吸水性の合成繊維であることが好ましい。
本明細書において、「吸水性」という用語は、例えば、パルプは吸水性と言ったように、当業者にとって容易に理解できるものである。同様に、熱可塑性繊維は非吸水性であることも、容易に理解され得る。一方で、繊維の吸水性の程度は下記方法により測定される水分率の値によって、相対的な吸水性の違いが比較できるとともに、より好ましい範囲も規定できる。吸水性繊維としては、斯かる水分率が6%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。一方で、非吸水性繊維は、斯かる水分率が6%未満であることが好ましく、4%未満であることがより好ましい。
<水分率の測定方法>
水分率は、JIS P8203の水分率試験方法を準用して算出した。すなわち、繊維試料を温度40℃、相対湿度80%RHの試験室に24時間静置後、その室内にて絶乾処理前の繊維試料の重量W(g)を測定した。その後、温度105±2℃の電気乾燥機(例えば、株式会社いすゞ製作所製)内にて1時間静置し、繊維試料の絶乾処理を行った。絶乾処理後、温度20±2℃、相対温度65±2%の標準状態の試験室にて、旭化成(株)製サランラップ(登録商標)で繊維試料を包括した状態で、Siシリカゲル(例えば、豊田化工(株))をガラスデシゲータ内(例えば、(株)テックジャム製)に入れて、繊維試料が温度20±2℃になるまで静置する。その後、繊維試料の恒量W’(g)を秤量して、次式により繊維試料の水分率を求める。水分率(%)=(W-W’/W’)×100
以上、本発明をその実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に制限されることなく適宜変更が可能である。
例えば、図1に示すナプキン1では、表面凹陥部7を構成する表面縦凹陥部7Xと表面横凹陥部7Yとがそれらの長さ方向の端部にて連結し、表面凹陥部7全体として閉じた環状を形成していたが、表面凹陥部7を構成する各凹陥部同士は連結していなくてもよく、表面縦凹陥部7Xと表面横凹陥部7Yとが隙間をあけて近接配置されていてもよい。表面凹陥部7と平面視で重なる裏面凹陥部8についても同様である。
また、前述した実施形態のナプキン1では、凹凸形状を有する表面シートを有していたが、これに代えて、凹凸形状を有さない平坦な表面シートを有してもよい。
本発明の吸収性物品は、人体から排出される体液(尿、軟便、経血、汗等)の吸収に用いられる物品を広く包含し、前述した生理用ナプキンの他、生理用ショーツ、止着テープを有するいわゆる展開型の使い捨ておむつ、パンツ型の使い捨ておむつ、失禁パッド等が包含される。